(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】閉じた容器において消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための基質
(51)【国際特許分類】
A01G 24/30 20180101AFI20220209BHJP
A01G 24/44 20180101ALI20220209BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20220209BHJP
A01G 18/20 20180101ALI20220209BHJP
A01G 18/64 20180101ALI20220209BHJP
【FI】
A01G24/30
A01G24/44
A01G9/00 J
A01G18/20
A01G18/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536354
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019086371
(87)【国際公開番号】W WO2020127779
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521269470
【氏名又は名称】ライク・ズワーン・ザードテールト・エン・ザードハンデル・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カリン・コング
(72)【発明者】
【氏名】ヤネット・ダイアナ・ファン・デル・ラーケン
【テーマコード(参考)】
2B011
2B022
2B327
【Fターム(参考)】
2B011BA13
2B011EA03
2B022AB11
2B022BA23
2B022BB02
2B327NC02
2B327NC05
2B327NC24
2B327NC36
2B327NC41
2B327NC42
(57)【要約】
開示されているのは、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための基質、容器、および方法と、基質を生産するための方法と、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための基質の使用とである。基質は、多孔質構造を有するポリマ繊維ベースの本体であって、野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を受け入れるための播種材料受入表面を備える、ポリマ繊維ベースの本体を備え、ポリマ繊維ベースの本体は、ポリエチレンテレフタレート、PET、繊維材料を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じた容器において消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための基質であって、
多孔質構造を有するポリマ繊維ベースの本体であって、前記野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を受け入れるための播種材料受入表面を備える、ポリマ繊維ベースの本体を備え、
前記ポリマ繊維ベースの本体は、ポリエチレンテレフタレート、PET、繊維材料だけから作られる、基質。
【請求項2】
前記野菜、キノコ、またはハーブの前記播種材料をさらに備える、請求項1に記載の基質。
【請求項3】
前記基質の表面の少なくとも一部に提供される生体適合性接着剤をさらに備え、前記播種材料の少なくとも一部は、前記生体適合性接着剤を使用して前記基質の前記播種材料受入表面に少なくとも一部で固定される、請求項2に記載の基質。
【請求項4】
種子マットをさらに備え、前記播種材料は、前記種子マットによって包囲される、または、前記種子マットに少なくとも一部固定される、請求項3に記載の基質。
【請求項5】
前記種子マットは、前記生体適合性接着剤を使用して前記播種材料受入表面に固定される、請求項4に記載の基質。
【請求項6】
前記ポリマ繊維ベースの本体は実質的に無菌である、請求項1から5のいずれか一項に記載の基質。
【請求項7】
前記PET繊維材料は、5~40kg/m
3、好ましくは10~20kg/m
3、より好ましくは14~19kg/m
3の範囲での密度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の基質。
【請求項8】
前記PET繊維材料は熱的に結合された不織のPET繊維材料である、請求項1から7のいずれか一項に記載の基質。
【請求項9】
前記ポリマ繊維ベースの本体は、0.6~4cm、好ましくは0.8~3.5cmの範囲での厚さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の基質。
【請求項10】
消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための容器であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の前記基質と、
前記播種材料受入表面に提供される前記野菜、キノコ、またはハーブの前記播種材料と、
前記播種材料受入表面と反対の前記基質の一部と接触している成長媒体と、
前記容器を閉じる透過性の膜と
を備える容器。
【請求項11】
前記透過性の膜は、酸素および二酸化炭素を透過させることができ、且つ病原体を遮断するように構成される、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための閉じた容器での使用のための基質を生産する方法であって、
多孔質構造を有するポリマ繊維ベースの本体であって、前記野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を受け入れるための播種材料受入表面を備えるポリマ繊維ベースの本体を提供するステップを含み、
前記ポリマ繊維ベースの本体は、ポリエチレンテレフタレート、PET、繊維材料から成る、方法。
【請求項13】
前記提供するステップは、前記ポリマ繊維ベースの本体を殺菌するステップであって、好ましくは、前記ポリマ繊維ベースの本体にイオン化放射を照射することで実施される、ステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマ繊維ベースの本体にイオン化放射を前記照射することは、1~25kGy、好ましくは1~10kGyの範囲での線量で、コバルト60放射線源からのガンマ線照射を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための方法であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の前記基質の前記播種材料受入表面に前記野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を配置するステップと、
成長媒体を容器へと提供するステップと、
前記基質を前記容器へと配置するステップであって、前記基質と前記成長媒体とは接触している、ステップと、
前記容器を透過性の膜で閉じるステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記基質に播種材料を配置する前記ステップの前に、前記基質を殺菌するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記配置するステップは、生体適合性接着剤層を前記基質に提供し、生体適合性接着剤によって前記播種材料を前記基質の表面に少なくとも一部で固定するステップを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記野菜、キノコ、またはハーブを、前記閉じた容器において適切な成長条件の下で成熟まで成長させるステップと、
前記容器を小売店へと移送するステップと
をさらに含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
容器と、
請求項1から9のいずれか一項に記載の前記基質と、
前記容器を閉じるための透過性の膜と
を備えるキット。
【請求項20】
野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を備える、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
閉じた容器において消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の基質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許開示は、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための基質、容器、および方法と、基質を生産するための方法と、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための基質の使用とに関する。本特許開示は、詳細には、野菜、キノコ、またはハーブ、および、それらの播種および植え付けの材料が、閉じた容器において成長することができる基質に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、キノコ、およびハーブが、従来から、温室または畑において専門の栽培者によって生産されている。収穫の後、生産物は、例えば販売業者または小売店などに輸送される。輸送時間のため、収穫物はその鮮度を失い、品質が悪化し始める可能性があり、専門の輸送および保管の施設を必要とする。
【0003】
特許文献WO2014/056869A1は、野菜、ハーブ、およびキノコを生産する新しい方法を記載しており、植物は、成長媒体が提供された閉じた容器において成長させられる。播種材料が基質に配置され、基質は容器に配置される。成長媒体が容器に加えられる。その後、容器は、酸素および二酸化炭素などの成長に関連する物質の交換を許容するが、病原体などの望ましくない物質を遮断する半透過性の膜で閉じられる。
【0004】
基質は、しばしば酸素に対して十分な透過性ではない。また、基質は根を成長させるのに常に十分とは限らない。さらに、基質は、容器の底に位置する成長媒体の基質の上に向けての十分に素早い輸送を提供しない可能性があり、そのため、成長する野菜、ハーブ、およびキノコに十分な成長媒体が提供されない。
【0005】
特許文献WO2004/098270A1は、生分解性セルロース繊維、複合バインダ繊維、および、任意選択でのバインダの繊維パッドを含む成長媒体を使用する水耕植物の成長を記載している。成長媒体は、合成もしくはセルロースのいずれか、または両方のマトリクス繊維と、それぞれのマトリクス繊維のための親和性を有する複合バインダ繊維と、任意選択での第2の種類のバインダとの結合された繊維パッドを含み得る。複合構造で使用される繊維とされたふわっとしたセルロース繊維は、木材セルロース、コットンリンターパルプ、化学修飾セルロース、または高度に精製されたセルロース繊維から選択される。ふわっとした繊維は、ポリエステル、PET、ナイロン、ポリエチレン、またはポリプロピレンなどの合成繊維と混合されてもよい。成長媒体における木材の繊維またはセルロースの材料などの生物学的材料の使用は、例えば微生物の成長により、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを閉じた容器で生産するのに適していない。さらに、閉じた容器での用途に必要とされる厚さを有するセルロースを備える基質、またはそのようなセルロースから成る基質を殺菌することが困難であることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2014/056869A1
【特許文献2】WO2004/098270A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
向上した基質を提供することが、本特許開示の数ある目的のうちの1つである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、閉じた容器において消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための基質であって、多孔質構造を有するポリマ繊維ベースの本体であって、野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を受け入れるための播種材料受入表面を備えるポリマ繊維ベースの本体を備え、前記ポリマ繊維ベースの本体は、ポリエチレンテレフタレート、PET、繊維材料だけから作られる、または、ポリエチレンテレフタレート、PET、繊維材料から成る、基質が提供される。
【0009】
PET繊維材料を有する基質が、根などを貫いて成長させ、基質の下側から成長材料受入表面への成長媒体の輸送を十分に許容するだけの多孔質性であり、酸素を透過させることができることが分かった。ポリマ繊維ベースの本体はPET繊維材料から成る。別の言い方をすれば、ポリマ繊維ベースの本体はPET繊維材料だけから作られる。有利には、これは基質の生産工程を単純化する。また、PET繊維材料だけの使用は、基質の比較的高い無菌状態を獲得および保持するのに有益であることが分かった。これは、特に、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するために閉じた容器で使用されるとき、とても有利である。
【0010】
好ましくは、ポリマ繊維ベースの本体は、例えば殺菌工程によって殺菌されるとき、実質的に無菌である。本明細書における実質的に無菌とは、容器における成長時間(例えば2~4週間)の間に、作物が、成長を害する病原体および汚染物なしで成長する基質が得られていることを意味している。実質的に無菌であるポリマ繊維ベースの本体は、具体的には、特に成長媒体がバクテリア成長を促進する栄養物を含むとき、関連する技術の容器において病原体による成長媒体の汚染の高い危険性があるため、特に有利である。PET繊維材料は遮音および防音などの他の遠く離れた分野で使用されるが、驚くべきことに、第1の態様による基質が容易に殺菌され、閉じた容器において使用されるときに実質的に無菌のままであることが分かった。有利には、PET繊維材料の基質は再利用でき、したがって持続可能な基質を提供できる。
【0011】
さらに、PET繊維材料の基質は、概して水を含む成長媒体と反応せず、食品において使用するのが安全である。本出願による基質は、有益に一体のままであり、したがって、成長した製品を、食べられない物質の実質的にないままにする。
【0012】
実施形態における基質は複数の基質を備える。各々の基質は、そこで成長させられる作物と、その作物のそれぞれの成長時間とに依存して異なり得る。容器は任意選択で区分けされ、各々の区分けは、複数の基質のうちのそれぞれ1つを受け入れるための底部を有する。
【0013】
成長媒体は、水と、無機物(多量の塩類および少量の塩類)、糖類、微量元素、ビタミン、およびアミノ酸から成る群からの成分のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0014】
実施形態では、基質は、野菜、キノコ、またはハーブの播種材料をさらに備える。好ましくは、播種材料は、種子、苗、細かく刻まれて分離された植物材料、植物不定胚、不定芽もしくは腋芽またはそれらの一部、胞子、および菌糸体のうちの少なくとも1つを含む。最も好ましくは、播種材料は野菜またはハーブの複数の種子である。
【0015】
消費者のために準備される野菜の例は、具体的にはレタス、エンダイブ、ルッコラ、ラムズレタス、コーンサラダ、トウチシャ、フダンソウ、ホウレンソウ、またはダイコンといった葉物の野菜である。野菜は、クレス、ビートの芽、アルファルファ、ブロッコリの芽、豆の芽、フェンネルの芽、キャベツの芽、ニンニクの芽、ニラの芽、エンドウの芽、ヒヨコ豆の芽、ダイコンの芽などの芽の野菜であってもよい。キノコの例は、マッシュルーム、ヒラタケ、フクロタケ、シイタケ、およびアンズタケである。ハーブの例は、アサツキ、パセリ、バジル、ディル、コリアンダ、シラントロ、ミント、オレガノ、ローズマリー、タイム、マジョラム、レモンバーム、タラゴン、セージである。
【0016】
実施形態では、基質は、基質に表面の少なくとも一部に提供される生体適合性接着剤層をさらに備える。播種材料の少なくとも一部が生体適合性接着剤を用いて基質の播種材料受入表面に少なくとも一部固定されることが好ましい。
【0017】
好ましくは、基質は種子マットをさらに備え、播種材料は、種子マットによって包囲される、または、種子マットに少なくとも一部固定される。任意選択で、種子マットは、生体適合性接着剤を使用して播種材料受入表面に固定される。この方法では、複数の種子のうちの少なくとも1つが、基質の種子受入表面に少なくとも一部で固定される。特に、種子マットなしでルッコラなどのより小さい種子で作物を成長させようとするとき、種子はPET繊維材料の小孔に落下する可能性があり、そのため種子マットの使用は、本開示による基質との組み合わせで特に有益である。
【0018】
実施形態では、PET繊維材料は5~40kg/m3の密度を有する。この範囲では、この範囲外と比較して、PET繊維材料は、液体成長媒体が播種材料受入表面の反対の基質の一部または表面から播種材料受入表面へと輸送できるように、十分に密であるが、発芽する種子の根がPET繊維材料を貫いて容易に成長できるように、過度に密ではない。好ましくは、PET繊維材料の密度は10~20kg/m3である。最も好ましくは、PET繊維材料の密度は14~19kg/m3である。例は16.7kg/m3および17.5kg/m3である。17.5kg/m3の範囲は十分に強く軽いPET繊維材料を提供するが、その厚さは、容器の高さの最大で30%が基質によって使用されるように選択され得る。
【0019】
繊維材料がより密になると、繊維材料の小孔の大きさがより小さくなり、例えば毛細管作用により液体レベルがより高くなり、そのため、より厚い繊維材料が、播種材料の高さにおいて適切な水分レベルを有するために必要とされる。また、より大きい密度の繊維材料は液体の成長媒体のより多くを吸収する可能性があり、そのため、より多くの成長媒体が必要とされる。より小さい密度の繊維材料はより大きい小孔の大きさを有し、毛細管作用による液体レベルはより低くなり、そのためより薄い繊維材料が必要とされる。しかしながら、より小さい密度のより薄い繊維材料は、より弱くなり、基質の移動ため、より劣る保護を提供する可能性がある。
【0020】
好ましくは、基質は、0.6~4cm、好ましくは0.8~3.5cmの範囲での厚さを有する。好ましい厚さは、14~19kg/m3の密度を有するPET繊維材料と組み合わされるのに特に適切である。また、基質は、合理的な大きさとされた容器(例えば、12cmの高さを有する)において、基質がこの例では容器の高さの30%未満を占めるような十分な薄さである。基質の厚さは、成長させられる作物およびその作物の成長時間に依存する。
【0021】
実施形態では、PET繊維材料は熱的に結合される。この方法では、接着剤などは必要とされず、そのため、食品にとって追加の潜在的な汚染物がPET繊維材料へ導入されない。
【0022】
実施形態では、PET繊維材料は不織のPET繊維材料(不織PET布)である。不織布は繊維から作られる布帛状材料であり、繊維は、化学的、機械的、熱的、または溶媒による処理によって一体に結合できる。熱的に結合された不織のPET繊維材料は、増加した強度を有するため好ましいとされる。また、この材料は適度にふわっとした多孔質の材料であり、それを通じて成長媒体を輸送させるのに有益であり、それを通じて根を成長させるのに適している。繊維製品製造産業では、不織という用語は、織られていないかまたは編まれていない布帛を言い表すために典型的には使用される。
【0023】
第2の態様によれば、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための閉じた容器での使用のための基質を生産する方法であって、多孔質構造を有するポリマ繊維ベースの本体であって、野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を受け入れるための播種材料受入表面を備えるポリマ繊維ベースの本体を提供するステップを含み、ポリマ繊維ベースの本体は、ポリエチレンテレフタレート、PET、繊維材料を備える、方法が提供される。
【0024】
好ましくは、提供するステップは、ポリマ繊維ベースの本体を殺菌するステップを含む。
【0025】
実施形態では、殺菌するステップは、ポリマ繊維ベースの本体にイオン化放射を照射することで実施される。代替で、蒸気または任意の他の適切な殺菌の方法が使用され得る。
【0026】
好ましくは、ポリマ繊維ベースの本体にイオン化放射を照射することは、1~25kGyの範囲での平均線量で、コバルト60放射線源からのガンマ線照射を含む。より好ましいのは、1~10kGyの範囲での平均線量である。有益には、PET繊維材料は、欧州食品安全機関によって勧告されている食品包装についての上限である最大で10kGyの放射の平均線量を必要とする。
【0027】
第2の態様の方法の特徴および利点のいずれも他の態様のいずれかに適用可能であることは、理解されるものである。
【0028】
第3の態様によれば、第2の態様による、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための閉じた容器での使用のための基質を生産する方法によって得られる基質が提供される。
【0029】
第4の態様によれば、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための容器であって、第1の態様による基質と、播種材料受入表面に提供される野菜、キノコ、またはハーブの播種材料と、播種材料受入表面と反対の基質の一部と接触している成長媒体と、容器を閉じる透過性の膜とを備える容器が提供される。
【0030】
透過性の膜は、好ましくは、酸素および二酸化炭素などの成長に関連する物質の交換を許容するが、病原体および汚染物などの望ましくない物質を遮断する。汚染物および病原体の例は、ウイルス、バクテリア、菌類、原生生物、または昆虫である。
【0031】
好ましくは、容器および/または透過性の膜は透明なプラスチックから作られる。この方法では、播種材料および植物またはそれらから成長する他の材料は、可視光などの光を適切に受け入れることができる。透明なプラスチックは、好ましくはPETから作られる。
【0032】
第1、第2、および第3の態様による基質および方法のいずれか1つを含む、第4の態様による容器のいずれも、先に概説されたような基質の利点を考慮して、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するために特に有益であることは、理解されるものである。
【0033】
さらなる態様によれば、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための方法であって、先の態様のいずれか1つによる基質の播種材料受入表面に野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を配置するステップと、第4の態様によるものなど、成長媒体を容器へと提供するステップと、基質を容器へと配置するステップであって、基質と成長媒体とは接触している、ステップと、容器を透過性の膜で閉じるステップとを含む方法が提供される。
【0034】
基質のおかげで、例えば、基質が無菌であって閉じた容器での使用に適するため、消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブは小さな損失率で生産される。
【0035】
方法は、好ましくは、基質に種子を配置するステップの前に、基質を殺菌するステップを含む。
【0036】
実施形態では、配置するステップは、生体適合性接着剤層を基質に提供するステップを含み、生体適合性接着剤によって複数の種子を基質の表面に少なくとも一部で固定する。
【0037】
方法は、野菜、キノコ、またはハーブを、閉じた容器において適切な成長条件の下で成熟まで成長させるステップと、容器を小売店へと移送するステップとを好ましくは含む。
【0038】
他の態様では、例えば第4の態様による任意の1つの容器といった容器と、先の態様のいずれかによる基質のうちのいずれか1つと、野菜、キノコ、またはハーブの播種材料と、容器を閉じるための透過性の膜とを備えるキットが提供される。
【0039】
なおも他の態様によれば、閉じた容器において消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産する方法での、先の態様のいずれか1つによる基質のうちのいずれか1つの使用が提供される。
【0040】
添付の図面が、本開示の装置の現在好ましいとされている非限定の例示の実施形態を示すために使用されている。本開示の特徴および目的の上記および他の利点がより明らかとなり、本開示は、添付の図面との組み合わせで読まれるとき、以下の詳細な記載からより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本開示の実施形態による基質を備える容器の斜視図である。
【
図2】
図1による基質を備え、膜で閉じられ、成熟した葉物の野菜を伴う容器の斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態による播種材料または種子を伴う基質の斜視図である。
【
図4】
図3において指示されているような
図3の基質の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
容器2は基質1を備える。基質1は、
図3において図示されているように、多孔質構造32を有するポリマ繊維ベースの本体を備える。ポリマ繊維ベースの本体は、野菜、キノコ、またはハーブの播種材料6(例えば、種子)を受け入れるための播種材料受入表面8を備える。基質1のポリマ繊維ベースの本体は、播種材料受入表面8と反対の成長媒体摂取側10をさらに備える。成長媒体摂取側10は、基質が容器に配置されるとき、容器2の底部12の内側と接触している。
【0043】
半透過性の膜とも称される透過性の膜4は、酸素および二酸化炭素を透過させることができるが、病原体および/または汚染物を遮断する。
図1の構成において、膜4は容器2にまだ配置されていない。膜4は、具体的には容器2の平らな周縁22において、容器2に配置でき、容器を閉じるために容器に熱結合され得る。閉じた容器2が
図2に示されている。
【0044】
適切な成長媒体が、容器2を閉じる前に容器2に加えられる。成長媒体は、基質が容器に配置される前(好ましい)または後のいずれかに加えられ得る。前が好ましいとされるが、それは、直立した容器で使用しているときに上側となる播種材料受入表面8に成長媒体が接触しないためである。成長媒体は、水を含み、さらに、無機物(多量の塩類および少量の塩類)、糖類、微量元素、ビタミン、およびアミノ酸から成る群からの成分のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0045】
図2の閉じた容器2では、種子は発芽しており、葉物の野菜30へと成長しており、少なくとも一部で成熟している。容器は開けられ、野菜が取り出され、消費され得る。
【0046】
図3は、実施形態による基質1を示している。基質は、基質1の播種材料受入表面8に堆積させられた播種材料6(例えば、種子)を備える。基質は、0.6~4cmの範囲にあり得る厚さtを有する。この例では、厚さは12mmであり、PET繊維材料は約17kg/m
3の密度を有する。基質の大きさは、図では、厚さおよび密度の組み合わせにおいて誇張されているが、基質1は、容器2の高さhの30%未満である厚さtを有し、そのため、成長する植物30のための部屋がある。この例では、hは12cmである。この例での成長する植物30はフリルレタスである。高さhは、どの植物30また他の作物が容器2において成長させられるかに依存する。
【0047】
PET繊維材料は、実施形態では、熱的に結合される不織PET材料である。適切には、基質1の播種材料受入表面8は、種子の発芽に適する表面の均一性を有する。表面8における平均的な小孔の大きさは約1mmである。
【0048】
成長媒体が容器に加えられるとき、基質1は、
図4に示されているように、流体高さ34が基質1の特定の高さに到達する状態で一部沈められる。成長媒体は、成長媒体摂取側10においてPETの基質1によって吸収され、多孔質構造32を通じて、矢印36によって指示されているように、播種材料受入表面8および播種材料6に向けて上向きに拡散する(例えば、毛細管作用を介して)。そのため、成長媒体は、水および任意選択で栄養物を必要とする種子または他の生体物質(例えば、根)に到達する。成長媒体は成長材料によって徐々に使用され、流体高さ34は低下する。流体高さ34は、播種材料および/または成長する作物が沈むのを回避するために、高すぎるべきではない。必要とされる流体の量は、成長する作物の種類に依存する。基質と比べた相対的な流体高さは、基質の厚さtを変えることで変更できる。
【0049】
本発明は本実施形態に限定されない。保護の範囲は、以下の請求項の内容によって、多くの変形が実現可能であるそれら請求項の範囲内で確立される。
【0050】
本開示は、以下の条項をさらに含む。
【0051】
1. 閉じた容器において消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための基質であって、
多孔質構造を有するポリマ繊維ベースの本体であって、野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を受け入れるための播種材料受入表面を備える、ポリマ繊維ベースの本体を備え、
ポリマ繊維ベースの本体は、ポリエチレンテレフタレート、PET、繊維材料を備える、基質。
【0052】
2. 基質は、野菜、キノコ、もしくはハーブの播種材料をさらに備える、および/または、
ポリマ繊維ベースの本体はPET繊維材料から成る、条項1に記載の基質。
【0053】
3. 基質の表面の少なくとも一部に提供される生体適合性接着剤をさらに備え、播種材料の少なくとも一部は、生体適合性接着剤を使用して基質の播種材料受入表面に少なくとも一部で固定される、条項2に記載の基質。
【0054】
4. 種子マットをさらに備え、播種材料は、種子マットによって包囲される、または、種子マットに少なくとも一部固定される、条項3に記載の基質。
【0055】
5. 種子マットは、生体適合性接着剤を使用して播種材料受入表面に固定される、条項4に記載の基質。
【0056】
6. ポリマ繊維ベースの本体は実質的に無菌である、条項1から5のいずれか一項に記載の基質。
【0057】
7. PET繊維材料は、5~40kg/m3、好ましくは10~20kg/m3、より好ましくは14~19kg/m3の範囲での密度を有する、条項1から6のいずれか一項に記載の基質。
【0058】
8. PET繊維材料は熱的に結合された不織のPET繊維材料である、条項1から7のいずれか一項に記載の基質。
【0059】
9. ポリマ繊維ベースの本体は、0.6~4cm、好ましくは0.8~3.5cmの範囲での厚さを有する、条項1から8のいずれか一項に記載の基質。
【0060】
10. 消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための容器であって、
条項1から9のいずれか一項に記載の基質と、
播種材料受入表面に提供される野菜、キノコ、またはハーブの播種材料と、
播種材料受入表面と反対の基質の一部と接触している成長媒体と、
容器を閉じる透過性の膜と
を備える容器。
【0061】
11. 透過性の膜は、酸素および二酸化炭素を透過させることができ、且つ病原体を遮断するように構成される、条項10に記載の容器。
【0062】
12. 消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための閉じた容器での使用のための基質を生産する方法であって、
多孔質構造を有するポリマ繊維ベースの本体であって、野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を受け入れるための播種材料受入表面を備えるポリマ繊維ベースの本体を提供するステップを含み、
ポリマ繊維ベースの本体は、ポリエチレンテレフタレート、PET、繊維材料を備え、
提供するステップは、ポリマ繊維ベースの本体を殺菌するステップを含む、方法。
【0063】
13. 殺菌するステップは、ポリマ繊維ベースの本体にイオン化放射を照射することで実施される、条項12に記載の方法。
【0064】
14. ポリマ繊維ベースの本体にイオン化放射を照射することは、1~25kGy、好ましくは1~10kGyの範囲での線量で、コバルト60放射線源からのガンマ線照射を含む、条項13に記載の方法。
【0065】
15. 条項12から14のいずれか一項に記載の方法によって得られる基質。
【0066】
16. 消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための方法であって、
条項1から9および条項15のいずれか一項に記載の基質の播種材料受入表面に野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を配置するステップと、
成長媒体を容器へと提供するステップと、
基質を容器へと配置するステップであって、基質と成長媒体とは接触している、ステップと、
容器を透過性の膜で閉じるステップと
を含む方法。
【0067】
17. 基質に播種材料を配置するステップの前に、基質を殺菌するステップをさらに含む、条項16に記載の方法。
【0068】
18. 配置するステップは、生体適合性接着剤層を基質に提供し、生体適合性接着剤によって播種材料を基質の表面に少なくとも一部で固定するステップを含む、条項16または17に記載の方法。
【0069】
19. 野菜、キノコ、またはハーブを、閉じた容器において適切な成長条件の下で成熟まで成長させるステップと、
容器を小売店へと移送するステップと
をさらに含む、条項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
20. 容器と、
条項1から9および条項15のいずれか一項に記載の基質と、
前記容器を閉じるための透過性の膜と
を備えるキット。
【0071】
21. 野菜、キノコ、またはハーブの播種材料を備える、条項20に記載のキット。
【0072】
22. 閉じた容器において消費者のために準備される野菜、キノコ、またはハーブを生産するための、条項1から9および条項15のいずれか一項に記載の基質の使用。
【符号の説明】
【0073】
1 基質
2 容器
4 透過性の膜
6 播種材料
8 播種材料受入表面
10 成長媒体摂取側
12 底部
22 周縁
30 野菜、成長する植物
32 多孔質構造
34 流体高さ
h 容器の高さ
t 基質の厚さ
【国際調査報告】