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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】調整可能な屈折力を備えるレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/14 20060101AFI20220209BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220209BHJP
【FI】
G02B3/14
G02B7/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537048
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2019086837
(87)【国際公開番号】W WO2020136139
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】18248279.4
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518044871
【氏名又は名称】オプトチューン コンシューマー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】スモルカ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】アシュヴァンデン マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼ ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ビエルン サンギュ
(72)【発明者】
【氏名】パシェイダー ロマン
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA10
(57)【要約】
本発明は調整可能な屈折力を有するレンズ(1)に関し、レンズ(1)は容器(2)を備え、容器は、透明な流体(F1)で満たされたレンズ容積と、透明な前記流体で満たされ、レンズ容積に接続されたリザーバ容積(R1)と、容器の側壁を形成するフレーム構造(3)であって、レンズ容積(V)の少なくとも一部分を収容する第一の凹部(30)を備え、リザーバ容積の少なくとも一部分を収容する第二の凹部(31)を備える、フレーム構造と、フレーム構造に接続された弾性変形可能で透明な膜(4)と、膜に接続されたレンズ成形要素(5)であって、調整可能な曲率を有する膜のエリア(4a)を画定する円周縁(50a)を備える、レンズ成形要素と、フレーム構造に接続された透明な底壁(6)であって、レンズ容積が膜のエリアと底壁との間に配置されるようになっている、透明な底壁と、リザーバ容積に隣接する弾性変形可能な壁部材(4b)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能な屈折力を有するレンズ(1)であって、前記レンズ(1)は容器(2)を含み、前記容器(2)は、
・透明な流体(F1)で満たされたレンズ容積(V)と、
・透明な前記流体(F1)で満たされ、前記レンズ容積(V)に接続されたリザーバ容積(R1)と、
・前記容器(2)の側壁を形成するフレーム構造(3)であって、前記フレーム構造は、前記レンズ容積(V)の少なくとも一部分を収容する第一の凹部(30)を備え、前記フレーム構造(3)は、前記リザーバ容積(R1)の少なくとも一部分を収容する第二の凹部(31)を備える、フレーム構造と、
・前記フレーム構造(3)に接続された弾性変形可能で透明な膜(4)と、
・前記膜(4)に接続されたレンズ成形要素(5)であって、前記レンズ成形要素(5)が、調整可能な曲率を有する前記膜(4)のエリア(4a)を画定する円周縁(50a)を備える、レンズ成形要素と、
・前記フレーム構造(3)に接続された透明な底壁(6)であって、前記レンズ容積(V)が前記膜(4)の前記エリア(4a)と前記底壁との間に配置されるようになっている、透明な底壁と、
・前記リザーバ容積(R1)に隣接する弾性変形可能な壁部材(4b)と、
を備える、レンズ。
【請求項2】
弾性変形可能な前記壁部材(4b)は、流体(F1)を前記リザーバ容積(R1)から前記レンズ容積(V)内にポンピングして前記膜(4)の前記エリア(4a)の曲率を変化させ、それと共に前記レンズ(1)の屈折力を変化させるように変形させるように構成され、および/または前記壁部材(4b)は、流体(F1)を前記レンズ容積(V)から前記リザーバ容積(R1)内にポンピングして前記膜(4)の前記エリア(4a)の曲率を変化させ、それと共に前記レンズ(1)の屈折力を変化させるように変形されるように構成される、請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記レンズ(1)は、前記壁部材(4b)を押すこと、または前記壁部材(4b)を引っ張ることによって、前記壁部材(4b)を変形させるために、変形可能な前記壁部材(4b)に接続されたピストン構造(70)を備える、請求項1または2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記ピストン構造(70)は、前記ピストン構造(70)を移動させるために、アクチュエータ(80)に接続されるように構成される、請求項3に記載のレンズ。
【請求項5】
前記ピストン構造(70)は、弾性変形可能な前記壁部材(4b)に接続された八角形の底部表面(70b)を備える、請求項3または4に記載のレンズ。
【請求項6】
前記ピストン構造(70)は、前記底部表面(70b)および対向する八角形の頂部表面(70a)を備えるプレートによって形成され、前記頂部表面(70a)は、アクチュエータ(80)の一部分を受け入れるように構成された穴(70c)を備える、請求項5に記載のレンズ。
【請求項7】
前記リザーバ容積(R1)は、八角形の断面積を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項8】
前記容器(2)の前記リザーバ容積(R1)は、前記レンズ(1)の光軸(A)に垂直な方向において、前記容器(2)の前記レンズ容積(V)に横方向に隣接して配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項9】
前記フレーム構造(3)は、少なくとも1つのモノリシックプレート部材(3a)によって形成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項10】
前記フレーム構造(3)は、互いの上に積み重ねられたシート(300、301)からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項11】
前記フレーム構造(3)は、前記膜(4)に接続されたトップシート(300)と、前記トップシート(300)に接続された更なるシート(301)とを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項12】
前記更なるシート(301)が前記トップシート(300)の内径よりも小さい内径を備え、前記容器(2)の前記フレーム構造(3)の内側(3e)が段部(3f)を形成するようになる、請求項11に記載のレンズ。
【請求項13】
前記底壁(6)は、透明プレート(61)によって形成される、請求項1~12のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項14】
前記レンズ(1)は、前記フレーム構造(3)に接続された透明で弾性変形可能な更なる膜(60)を備え、前記更なる膜(60)は、前記底壁(6)によって構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項15】
前記底壁(6)は、前記更なる膜(60)上に配置された透明プレート(61)を備え、前記更なる膜(60)が前記フレーム構造(3)と前記透明プレート(61)との間に配置されるようになる、請求項14に記載のレンズ。
【請求項16】
前記レンズ成形要素(5)は、前記円周縁(50a)を形成する第一の貫通開口部(50)を備え、前記第一の貫通開口部(50)は、前記膜(4)の前記エリア(4a)によって閉鎖される、請求項1~15のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項17】
前記膜(4)の前記エリア(4a)を保護するために、前記レンズ成形要素(5)は、前記膜(4)が前記フレーム構造(3)と前記レンズ成形要素(5)との間に配置され、特に前記レンズ成形要素(5)が前記膜(4)の前記エリア(4a)を越えて前記レンズ(1)の光軸(A)の方向に突出するように、前記フレーム構造(3)に接続される、請求項1~16のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項18】
前記レンズ成形要素(5)が前記フレーム構造(3)に接続され、前記レンズ成形要素(5)が前記フレーム構造(3)と前記膜(4)との間に配置されるようになっている、請求項1~16のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項19】
前記フレーム構造(3)の前記第一の凹部(30)は、前記レンズ成形要素(5)の前記第一の貫通開口部(50)の前記円周縁(50a)の内径(D1)よりも大きい内径(D2)を備える、請求項16または17に記載のレンズ。
【請求項20】
前記レンズ成形要素(5)は、前記膜(4)の外側(40a)または前記膜(4)の内側(40b)に取り付けられるリング部材であり、前記リング部材は、前記円周縁(50a)を形成する貫通開口部(50)を備え、前記貫通開口部(50)は、前記膜(4)の前記エリア(4a)によって閉鎖される、請求項1~15のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項21】
前記レンズ成形要素(5)は、第二の貫通開口部(51)を備え、前記第二の貫通開口部(51)は、弾性変形可能な前記壁部材(4b)によって閉鎖される、請求項1~19のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項22】
前記第二の貫通開口部(51)は、八角形の形状を有する、請求項21に記載のレンズ。
【請求項23】
前記容器(2)の弾性変形可能な前記壁部材(4b)は、前記膜(4)によって形成される、請求項1~22のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項24】
弾性変形可能な前記壁部材(4b)は、前記底壁(6)の一部分を形成し、特に、弾性変形可能な前記壁(4b)は、前記更なる膜(60)によって形成される、請求項1~22のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項25】
前記膜(4)が、前記膜(4)の前記エリア(4a)の重力誘起コマ収差を低減するために、前記更なる膜(60)よりも厚い厚さを有する、請求項24に記載のレンズ。
【請求項26】
前記フレーム構造(3)は、温度の上昇に伴う前記流体(F1)の容積の増加および温度の上昇に伴う前記流体(F1)の屈折率の低下に起因する前記レンズ(1)の屈折力の変化を低減するために、温度の上昇に伴って膨張するように構成される、請求項1~25のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項27】
温度の上昇に伴う前記流体(F1)の容積の増加に伴う前記レンズ(1)の屈折力の増加と温度の上昇に伴う前記流体(F1)の屈折率の低下とをバランスさせるために、前記リザーバ容積(R1)は、前記リザーバ容積(R1)を減少させるように前記フレーム構造(3)の前記第二の凹部(31)の傾斜した内側(3d)によって画定され、および/または、前記レンズ容積(V)と前記リザーバ容積(R1)との間に流れ接続を提供するチャネル(32)は、前記レンズ(1)の光軸(A)に沿った高さ(H)を含み、この高さ(H)は、前記レンズ容積(V)の高さ(H1)および/または前記レンズ(1)の光軸(A)に沿った前記リザーバ容積(R1)の高さ(H2)よりも小さく、および/または、前記チャネル(32)は、前記リザーバ容積(R1)の直径(D4)および/または前記レンズ容積(V)の直径(D2)よりも小さい、前記レンズ(1)の光軸(A)に垂直な幅(W)を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項28】
前記容器(2)が、前記レンズ(1)の屈折力の熱ドリフトを補償するために、前記リザーバ容積(R1)に隣接する弾性変形可能な壁領域(60a)を備え、前記レンズ(1)が、前記レンズ(1)の屈折力の熱ドリフトを打ち消すために、弾性変形可能な前記壁領域(60a)を変形するように構成された補償アクチュエータ(81)を備える、請求項1~27のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項29】
前記レンズ(1)は、レンズ(1)の温度を測定するための温度センサ(90)を備え、前記レンズ(1)は、レンズ(1)の屈折力の熱ドリフトを打ち消すために、前記温度を示す温度センサ(90)の出力信号を使用して補償アクチュエータ(81)を制御するように構成される、請求項28に記載のレンズ。
【請求項30】
前記流体が1.2~1.4の範囲の屈折率(nOL)を備え、および/または透明で弾性変形可能な前記膜(4)が1.3~1.6の範囲の屈折率(nmembrane)を備え、および/または前記透明プレート(61)が1.4~1.6の範囲の屈折率(nglass)を備える、請求項1~29のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項31】
前記容器(2)は、透明な更なる流体(F2)で満たされた更なるレンズ容積(V2)を囲み、前記更なるレンズ容積(V2)は、透明で弾性変形可能な分離膜(62)によって前記レンズ容積(V)から分離され、その結果、前記更なる流体(F2)は、前記レンズ容積(V)の前記流体(F1)と前記底壁(6)との間に配置され、前記膜(4)の前記エリア(4a)の重力誘起コマ収差を補償するために、前記更なる流体(F2)は、密度(ρ2)および屈折率(n)を備え、前記更なる流体(F2)の密度(ρ)は、前記流体(F1)の密度(ρ)よりも小さく、前記更なる流体(F2)の屈折率(n)は、前記流体(F1)の屈折率(n)よりも大きい、請求項1~30のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項32】
前記容器(2)は、前記容器(2)の前記レンズ容積(V)に接続された更なるリザーバ容積(R2)を備え、前記容器(2)は、前記容器(2)の前記更なるリザーバ容積(R2)に隣接する弾性変形可能な更なる壁部材(4c)を備える、請求項1~31のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項33】
前記容器(2)の前記リザーバ容積(R1)および前記更なるリザーバ容積(R2)は、前記レンズ(1)の光軸(A)に垂直な方向に互いに面し、前記レンズ容積(V)の両側に配置される、請求項32に記載のレンズ。
【請求項34】
前記レンズ(1)の前記容器(2)の前記フレーム構造(3)が、前記容器(2)の更なる前記リザーバ容積(R2)の少なくとも一部分を収容するための第三の凹部(33)を備え、前記第三の凹部(33)は、前記容器(2)の前記更なる壁部材(4c)によって、特に前記レンズ(1)の前記容器(2)の前記底壁(6)によって閉鎖されることを特徴とする、請求項32または33に記載のレンズ。
【請求項35】
前記レンズ成形要素(5)は、第三の貫通開口部(52)を備え、前記第三の貫通開口部(52)は、弾性変形可能な前記壁部材(4c)によって閉鎖される、請求項32~34のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項36】
前記第三の貫通開口部(52)は、八角形の形状を有する、請求項35に記載のレンズ。
【請求項37】
前記更なる壁部材(4c)は、透明で弾性変形可能な前記膜(4)によって形成される、請求項32~36のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項38】
前記レンズ(1)は、前記更なる壁部材(4c)を押すこと、または前記更なる壁部材(4c)を引っ張ることによって、前記更なる壁部材(4c)を変形させるために、前記更なる壁部材(4c)に接続された更なるピストン構造(72)を備える、請求項32~37のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項39】
前記更なるピストン構造(72)は、前記更なるピストン構造(72)を移動させるために、更なるアクチュエータ(80)に接続されるように構成される、請求項38に記載のレンズ。
【請求項40】
前記レンズ(1)は、前記ピストン構造(70)に作用して、流体(F1)を前記リザーバ容積(R1)から前記レンズ(1)のレンズ容積(V)に、または前記レンズ容積(V)から前記リザーバ容積(R1)にポンピングし、前記膜(4)の前記エリア(4a)の曲率を変化させ、それともに前記レンズの屈折力を変化させるように構成されたアクチュエータ(80)を備える、請求項3~39のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項41】
前記アクチュエータ(80)は、支持構造(82)と、前記ピストン構造(70)に接続された可動子(83c)とを備え、前記可動子は、前記支持構造(82)に対して第一の運動方向(B1)に移動し、その結果、前記ピストン構造(70)が前記可動子(83c)によって前記容器(2)の弾性変形可能な前記壁部材(4b)に対して押され、前記リザーバ容積(R1)から前記レンズ容積(V)内に流体(F1)をポンピングするように、前記支持構造(82)に対して第二の運動方向(B2)に移動し、その結果、前記可動子(83c)が前記ピストン構造(70)を介して前記容器(2)の弾性変形可能な前記壁部材(4b)を引っ張り、前記レンズ容積(V)から前記リザーバ容積(R1)内に流体(F1)をポンピングするように構成される、請求項40に記載のレンズ。
【請求項42】
前記支持構造(82)は、前記容器(2)、特に前記レンズ成形要素(5)に取り付けられる、請求項41に記載のレンズ。
【請求項43】
前記可動子(83c)は、電気コイル(83)を備え、前記電気コイル(83)は、前記電気コイル(83)において生成された電流が第一の電流方向(I1)に流れる第一の一部分(83a)を備え、前記電気コイル(83)は、前記電気コイル(83)において生成された電流が、前記第一の電流方向(I1)とは反対の第二の電流方向(I2)に流れる第二の一部分(83b)を備える、請求項41または42に記載のレンズ。
【請求項44】
第一および第二の磁石構造(84、85)が前記支持構造(82)に取り付けられ、前記電気コイル(83)が前記2つの磁石構造(84、85)の間に配置されるようになっており、各磁石構造(84、85)は、第一の磁化(M1)を有する第一の一部分(84a、85a)と、前記第一の磁化(M1)と反対に配向される第二の磁化(M2)を有する第二の一部分(84b、85b)とを備える、請求項43に記載のレンズ。
【請求項45】
前記第一の磁石構造(84)の前記第一の一部分(84a)が前記第二の磁石構造(85)の前記第一の一部分(85a)に対向し、前記電気コイル(83)の前記第一の一部分(83a)が前記第一の磁石構造(84)の前記第一の一部分(84a)と前記第二の磁石構造(85)の前記第一の一部分(85a)との間に配置され、前記第一の磁石構造(84)の前記第二の一部分(84b)が前記第二の磁石構造(85)の前記第二の一部分(85b)に対向し、前記電気コイル(83)の前記第二の一部分(83b)が前記第一の磁石構造(84)の前記第二の一部分(84b)と前記第二の磁石構造(85)の前記第二の一部分(85b)との間に配置される、レンズ請求項44に記載のレンズ。
【請求項46】
前記磁石構造(84、85)の第一の一部分(84a、85a)の第一の磁化(M1)は、前記第一の電流方向(I1)に垂直に延び、前記磁石構造(84、85)の第二の一部分(84a、85a)の第二の磁化(M2)は、前記第二の電流方向(I2)に垂直に延び、その結果、電流が前記電気コイル(83)を通って流れるとき、前記電気コイル(83)の各部分(83a、83b)にローレンツ力(FL)が作用するようになり、前記ローレンツ力は、前記第一および第二の電流方向(I1、I2)の向きに応じて、前記可動子(83c)を前記第一の運動方向(B1)または前記第二の運動方向(B2)に移動させる、請求項41および請求項44または45に記載のレンズ。
【請求項47】
前記レンズ(1)は、前記更なるピストン構造(72)に作用して、前記更なるリザーバ容積(R2)から前記レンズ容積(V)に、または前記レンズ容積(V)から前記更なるリザーバ容積(R2)に流体(F1)をポンピングし、前記膜(4)の前記エリア(4a)の曲率を変化させ、それとともに前記レンズの屈折力を変化させるように構成された更なるアクチュエータ(80)を備える、請求項38もしくは39、または請求項38に従属する場合の請求項40~46のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項48】
前記レンズ成形要素は、前記円周縁(50a)を形成するフレーム構造(3)によって形成され、前記レンズ(1)は、前記膜(4)を保護するために前記膜(4)の上に配置された保護プレート部材(5)を備える、請求項1~47のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項49】
前記レンズ成形要素(5)は、シリコン、特に結晶シリコンから形成される、請求項1~48のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項50】
光学装置であって、前記光学装置(10)は、請求項1~49のいずれか一項に記載のレンズ(1)を備え、前記光学装置(1)は鏡筒(100)を備え、前記鏡筒(100)は前記鏡筒(100)の内部空間(105)を囲む円周壁(104)を備え、少なくとも1つの剛性レンズ(103)が、前記鏡筒(100)の前記内部空間(103)内に配置され、前記鏡筒(100)の円周壁(104)が、前記レンズ(1)の前記膜(4)の前記エリア(4a)が前記鏡筒(100)の前記少なくとも1つの剛性レンズ(103)に面するように、形状適合方式で前記レンズ(1)の前記容器(2)を受け入れるように構成された第一のスロット(101)を備え、特に前記レンズ(1)の前記レンズ成形要素(5)が、前記レンズ(1)の前記容器(2)を前記鏡筒(100)の前記第一のスロット(102)に挿入する際に、前記レンズ(1)の前記膜(4)の前記エリア(4a)を保護するように構成される、光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整可能な屈折力(または焦点距離)を有するレンズに関する。特に、このレンズは、望遠対物レンズ、広角対物レンズ、マクロ対物レンズまたはズーム対物レンズのような光学装置での使用に適している。
【背景技術】
【0002】
このような光学ズームシステムは、特に、2つの基本的な特性、すなわち、調整可能な焦点距離または屈折力(焦点屈折力とも呼ばれる屈折力は、焦点距離の逆数に等しい)と、固定画像平面を備える。従来の光学ズームシステムは、通常、互いに変位させることができるいくつかのレンズアセンブリを備える。ここで、光学ズームシステムの焦点距離は、レンズアセンブリの前記変位によって連続的に調整される。特に、個々のレンズアセンブリは、適切なズーミングを提供するために複雑な機械式/電動式システムが必要となるように、予め定められた方法で変位されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記に基づいて、本発明が解決すべき問題は、比較的小さな設置スペースを備え、光学ズーム装置の鏡筒に対して容易に設置が可能であるとともに、レンズの屈折力を調整するための正確な作動を可能にする改良されたレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴を有するレンズによって解決される。
【0005】
本発明の好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項に記載され、以下に記載される。
【0006】
請求項1によれば、調整可能な屈折力を有するレンズが開示され、前記レンズは容器を備え、前記容器は、
・透明な流体で満たされたレンズ容積と、
・前記透明な流体で満たされ、前記レンズ容積に接続されたリザーバ容積と、
・前記容器の側壁を形成するフレーム構造であって、前記フレーム構造は、前記レンズ容積の少なくとも一部分を収容する(特に貫通開口部の形態の)第一の凹部を備え、前記フレーム構造は、前記リザーバ容積の少なくとも一部分を収容する第二の凹部を備える、フレーム構造と、
・前記フレーム構造に接続された弾性変形可能で透明な膜と、
・前記膜に接続されたレンズ成形要素であって、前記レンズ成形要素が、調整可能な曲率を有する前記膜のエリアを画定する周縁部(例えば、円形縁部)を備える、レンズ成形要素と、
・前記フレーム構造に接続された透明な底壁であって、前記レンズ容積が前記膜の前記エリアと前記底壁との間に配置されるようになっている、透明な底壁と、
・前記リザーバ容積に隣接する弾性変形可能な壁部材と、
を備える。
【0007】
特に、本明細書に記載されるすべての実施形態において、透明流体、特に更なる流体(下記参照)は、それぞれ、好ましくは、透明な液体である。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、弾性変形可能な前記壁部材は、流体を前記リザーバ容積から前記レンズ容積内にポンピングして前記膜の前記エリアの曲率を変化させ、それと共に前記レンズの屈折力を変化させるように変形させるように構成され、または前記壁部材は、流体を前記レンズ容積から前記リザーバ容積内にポンピングして前記膜の前記エリアの曲率を変化させ、それと共に前記レンズの屈折力を変化させるように変形されるように構成される。
【0009】
さらに、本発明の一実施形態によれば、弾性変形可能な前記壁部材は、流体を前記リザーバ容積から前記レンズ容積内にポンピングして前記膜の前記エリアの曲率を増加させ、それと共に前記レンズの屈折力を増大させるように変形させるように構成され、または前記壁部材は、流体を前記レンズ容積から前記リザーバ容積内にポンピングして前記膜の前記エリアの曲率を減少させ、それと共に前記レンズの屈折力を減少させるように変形されるように構成される。
【0010】
特に、レンズが収束している場合(例えば、レンズの前記エリアが凸である場合)、屈折力は正であり、一方、レンズが発散している場合には屈折力は負である(例えば、レンズの前記エリアが凹である場合)。特に、膜の前記エリアの曲率を増加させることは、例えば、膜の前記エリアが平坦な状態から凸状態へ、または凸状態からより顕著な凸状態へ、または凹状態からあまり顕著でない凹状態へ、平坦な状態または凸状態へ変化することを意味することができる。さらに、レンズの前記エリアの曲率を減少させることは、前記エリアが、平坦な状態から凹状態へ、または凹状態からより顕著な凹状の状態へ、または凸状態からあまり顕著でない凸状態へ、平坦な状態へ、または凹状態へと変化することを意味することができる。
【0011】
さらに、本発明の一実施形態によれば、レンズは、壁部材を押すこと、または壁部材を引っ張ることによって壁部材を変形させるために、前記変形可能な壁部材に接続された(特に接着された)ピストン構造を備える。
【0012】
さらに、本発明の一実施形態によれば、ピストン構造は、ピストン構造を移動させるためのアクチュエータに接続されるように構成される。
【0013】
特に、一実施形態では、ピストン構造は、弾性変形可能な壁部材に接続された八角形の底部表面を備える。底部表面はまた、異なる形状を有してもよい。好ましくは、底部表面は、底部表面に平行なリザーバ容積の断面および/または底部表面に平行な弾性変形可能な壁部材の形状に対応する形状を備える。
【0014】
さらに、本発明の一実施形態によれば、ピストン構造は、前記底部表面と、対向する八角形頂部表面とを備えるプレートによって形成され、頂部表面は、(例えば、ピストン構造に対してアクチュエータを位置決めおよび/または接続するために)アクチュエータの一部分を受け入れるように構成された穴(例えば、止まり穴または貫通穴)を備える。貫通穴の場合、その穴は、ピストン構造の頂部表面から底部表面まで延びる。
【0015】
さらに、一実施形態によれば、リザーバ容積は、八角形の断面積(例えば、プレート/ピストン構造の前記表面に平行である)を備える。リザーバ容積は、他の断面形状(上記参照)を有することもできる。
【0016】
さらに、本発明の一実施形態によれば、容器のリザーバ容積は、レンズの光軸に垂直な方向に容器のレンズ容積に横方向に隣接して配置され、特に、容器は、前記方向に細長い形状を備える。
【0017】
さらに、本発明の一実施形態によれば、フレーム構造は、少なくとも1つのモノリシックプレート部材によって、特に射出成形部品の形態で形成される。代替的な実施形態によれば、フレーム構造は、互いの上に積み重ねられたシート(特に金属シート)から構成される。
【0018】
特に、一実施形態によれば、フレーム構造は、膜に接続されたトップシートと、トップシートに接続された少なくとも1つの更なるシートとを備える。一実施形態では、少なくとも1つの更なるシートは、トップシートと比較して、リザーバ容積の領域および/またはレンズ容積の領域において、より小さい内径を備えることができ、容器のフレーム構造の内側が段部を形成するようになる。
【0019】
さらに、本発明の一実施形態によれば、底壁は、平坦で透明な剛性プレートによって形成される。特に、このプレートは、ガラスまたはポリマーから形成することができる。あるいは、底壁は、ガラスまたはポリマーから形成され得る剛性レンズによって形成され得るか、またはそれを含み得る。
【0020】
さらに、代替的に、容器の底壁は、フレーム構造に接続された透明で弾性変形可能な更なる膜を備えることができる。
【0021】
さらに、一実施形態によれば、透明壁は、更なる膜上に配置された透明剛性プレート(または剛性レンズ)を含み、その結果、更なる膜は、フレーム構造と底壁の透明プレート(または剛性レンズ)との間に配置される。特に、底壁の透明プレートは、円形プレートであってもよい。特に、透明プレートまたは剛性レンズ(容器の底壁)が剛性であり得るという事実は、底壁の弾性変形可能な膜よりも剛性であることを意味する。底部の剛性プレートは、全て、他の光学特性を含んでもよい。特に、底壁の剛性プレートは、任意の透明光学要素とすることができる。
【0022】
さらに、一実施形態によれば、レンズ成形要素は、例えば、平坦なプレートとして形成され、膜の前記エリアを画定するための前記円周縁を形成する第一の貫通開口部を備え、第一の貫通開口部は、膜の前記エリアによって閉鎖される。
【0023】
特に、一実施形態では、膜の曲率調整可能エリアを保護するために、レンズ成形要素は、膜がフレーム構造とレンズ成形要素との間に配置され、特にレンズ成形要素がレンズの光軸に沿って膜の前記エリアを越えて突出するように、フレーム構造に接続される。
【0024】
特に、レンズ成形要素は、レンズの光軸に沿って膜の前記エリアから突出しているので、容器を鏡筒のスロットに形状適合方式で鏡筒の光軸に垂直に挿入することができ、鏡筒のスロットに容器を挿入する際に、鏡筒が膜の前記エリアに接触できないようになっている。特に、前記スロットは、鏡筒の開口部に隣接する鏡筒の端部に配置することもできる。
【0025】
さらに、本発明の一実施形態によれば、レンズ成形要素は、レンズ成形要素がフレーム構造と膜との間に配置されるようにフレーム構造に接続される。
【0026】
また、本発明の一実施の形態によれば、フレーム構造の第一の凹部は、レンズ成形要素の第一の貫通開口部の円周縁の内径よりも大きい内径を備える。これは、膜が、レンズ成形要素の円周縁から内側に突出し、フレーム構造の部分からは突出しておらず、最後の接触線である円周縁がレンズの膜の前記エリアの形状を規定するようにすることを保証する。
【0027】
さらに、一実施形態によれば、レンズ成形要素は、レンズ成形部材が特に流体に浸漬されるように、容器内の流体から離れて面する膜の外側に、または膜の内側(この内側は、特に外側から離れて面する)に取り付けられるリング部材であり、リング部材は、前記円周縁を形成する貫通開口部を備え、特に、貫通開口部は、膜の前記エリアによって閉鎖される。
【0028】
さらに、本発明の一実施形態によれば、レンズ成形要素は、第二の貫通開口部を含み、第二の貫通開口部は、弾性変形可能な壁部材によって(例えば、膜によっても)覆われる。
【0029】
さらに、本発明の一実施形態によれば、レンズ成形要素の第二の貫通開口部は、八角形の形状を有する。
【0030】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、容器の弾性変形可能な壁部材は、膜によって形成され、すなわち、膜は、特に、フレーム構造の両方の凹部にわたって延在し、レンズ容積およびリザーバ容積を覆う。
【0031】
さらに、本発明の代替実施形態によれば、弾性変形可能な壁部材は、透明で弾性変形可能な膜の前記エリアが配置される側とは反対側のレンズの容器の側に配置されてもよく、また容器の前記底壁の一部分を形成してもよく、特に、弾性変形可能な壁部材は、容器の底壁の一部である更なる膜によって形成されてもよい。
【0032】
ここで、特に、フレーム構造は、容器の側壁の一部分を形成する第一のフレーム要素を備えることができ、第一のフレーム要素は、フレーム構造の第一の凹部の一部分およびフレーム構造の第二の凹部の一部分を形成し、前記凹部のこれらの一部分は、レンズ容積と容器の側方容積との間の流れ接続を提供するように接続される。さらに、フレーム構造は、フレーム構造の第一の凹部の一部分およびフレーム構造の第二の凹部の一部分を形成する隣接する平行な第二のフレーム要素を備え、これらの凹部の一部分は分離される。特に、第二のフレーム要素の第一の凹部の一部分は、容器の前記底壁によって覆われ、第二のプレートの第二の凹部の一部分は、ピストン構造(上記参照)が接続される弾性変形可能な部材(底壁の一部分を形成する)によって覆われる。特に、底壁は、第二のフレーム要素の第一および第二の凹部の両方の一部分を覆い(かつ、リザーバ容積の弾性変形可能な壁部材を形成する)更なる膜を備え、底壁の透明剛性プレートは、第二のフレーム要素の第一の凹部の一部分を覆い、更なる膜は、底壁の透明剛性プレートと第二のフレーム要素との間に配置される。
【0033】
さらに、本発明の一実施形態によれば、膜は、膜のエリアの重力誘起コマ収差を低減するために、更なる膜よりも大きな厚さ(または膜の予歪みまたは異なる材料、特に異なるポリマーによる大きな剛性)を備える。
【0034】
さらに、本発明の一実施形態によれば、フレーム構造は、温度の上昇に伴う流体の容積の増加および温度の上昇に伴う流体の屈折率の低下に起因するレンズの屈折力の変化を低下させるために、温度の上昇に伴って、(例えば、主にレンズの光軸に沿って)膨張するように構成される。
【0035】
さらに、本発明の一実施形態によれば、温度の上昇に伴う流体の容積の増加に起因するレンズの屈折力の増加と、温度の上昇に伴う流体の屈折率の低下による屈折力の低下とをバランスさせるために、リザーバ容積は、リザーバ容積を減少させるように、フレーム構造の第二の凹部の傾斜した内側によって画定され(または、フレーム構造の内側に段部を備え)、および/または、レンズ容積とリザーバ容積との間の流れ接続を提供するチャネルは、レンズの光軸に沿った高さを含み、この高さは、レンズ容積の高さおよび/またはレンズの光軸に沿ったリザーバ容積の高さよりも小さく、および/または、前記チャネルは、リザーバ容積の直径および/またはレンズ容積の直径よりも小さいレンズの光軸に垂直な幅を備える。
【0036】
さらに、本発明の一実施形態によれば、容器は、レンズの屈折力の熱ドリフトを補償するために、リザーバ容積に隣接する弾性変形可能な壁領域を備え、レンズは、レンズの屈折力の熱ドリフトを打ち消すために、弾性変形可能な前記壁領域を変形させるように構成された補償アクチュエータを備える。
【0037】
さらに、本発明の一実施形態によれば、レンズは、レンズの温度(特に、リザーバおよび/またはレンズ容積内の流体)を測定するための温度センサを備え、レンズは、レンズの屈折力の熱ドリフトを打ち消すために、前記温度を示す温度センサの出力信号を使用して補償アクチュエータを制御するように構成される。温度センサは、レンズ成形要素またはフレーム構造に位置させることができ、特に、この要素またはフレーム構造が熱伝導性である(例えば、金属から形成される)場合に、そのようにすることが位置させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、流体は、1.2~1.4の範囲の屈折率(nF)を備え、および/または透明で弾性変形可能な膜(nmembrane)は、1.3~1.6の範囲の屈折率を備え、および/または(底壁の)透明プレートは、1.4~1.6の範囲の屈折率(nbottom)を備える。
【0039】
さらに、本発明の一実施形態によれば、容器は、透明な更なる流体で満たされた更なるレンズ容積を囲み、更なるレンズ容積は、透明で弾性変形可能な分離膜によってレンズ容積から分離され、その結果、更なる流体は、レンズ容積の流体と底壁との間に配置され、膜の前記エリアの重力誘起コマ収差を少なくとも部分的に補償するために、更なる流体は、密度および屈折率を備え、更なる流体の密度は、流体の密度よりも小さく、更なる流体の屈折率は、流体の屈折率よりも大きい。
【0040】
ここで、特に、フレーム構造は、容器の側壁の一部分を形成する第一のフレーム要素を備えることができ、第一のフレーム要素は、フレーム構造の第一の凹部の一部分およびフレーム構造の第二の凹部の一部分を形成し、前記凹部のこれらの一部分は、レンズ容積と容器の側方容積との間の流れ接続を提供するように接続される。さらに、フレーム構造は、更なる流体を受け入れるための更なるレンズ容積を収容する凹部を備える隣接する平行な第二のフレーム要素を備え、前記分離膜は、第一のフレーム要素と第二のフレーム要素との間に配置される。さらに、特に、第二のフレーム要素の凹部は、容器の前記底壁によって覆われる。これにより、第二のフレーム要素は、コマ収差補正プレートを形成する。
【0041】
さらに、本発明の一実施形態によれば、レンズの容器は、(例えば、更なるチャネルを介して)容器のレンズ容積に接続された更なるリザーバ容積を備え、容器は、容器の更なるリザーバ容積に隣接する弾性変形可能な更なる壁部材を備える。
【0042】
具体的には、一実施形態では、容器のリザーバ容積および更なるリザーバ容積は、レンズの光軸に垂直な方向に互いに面し、レンズ容積の両側に配置される。
【0043】
さらに、一実施形態によれば、第一のレンズの容器のフレーム構造は、容器の更なるリザーバ容積の少なくとも一部分を収容するための第三の凹部を備え、第三の凹部は、容器の更なる壁部材によって、特に第一のレンズの容器の底壁によって覆われる。
【0044】
さらに、一実施形態によれば、レンズ成形要素は、第三の貫通開口部を備え、第三の貫通開口部は、弾性変形可能な更なる壁部材によって(例えば、膜によっても)覆われる。
【0045】
具体的には、一実施形態では、第三の貫通開口部は、八角形の形状(または、更なるリザーバ容積の断面の形状に特に対応する別の形状)を有する。
【0046】
さらに、一実施形態によれば、更なる壁部材は、透明で弾性変形可能な膜によって形成される。
【0047】
さらに、一実施形態によれば、レンズは、更なる壁部材を押すこと、または更なる壁部材を引っ張ることによって、更なる壁部材を変形させるために、前記更なる壁部材に接続された(特にボンド結合または接着された)更なるピストン構造を備える。
【0048】
特に、更なるピストン構造は、更なるピストン構造を移動させるために、更なるアクチュエータに接続されるように構成される。
【0049】
特に、一実施形態によれば、更なるピストン構造は、弾性変形可能な更なる壁部材に接続された八角形の底部表面を備える。
【0050】
さらに、更なるピストン構造は、前記底部表面および対向する八角形頂部表面を備えるプレートによって形成され、頂部表面は、更なるアクチュエータの一部分を受け入れるように構成された穴(例えば、止まり穴または貫通穴)を備える。
【0051】
さらに、特に、更なるリザーバ容積は、更なるピストン構造を形成するプレートの前記表面に平行な八角形の断面積を含む。
【0052】
さらに、本発明の一実施形態によれば、レンズは、更なるピストン構造に作用して、流体を更なるリザーバ容積から第一のレンズのレンズ容積内に、またはレンズ容積から更なるリザーバ容積内にポンピングし、それによって、膜の前記エリアの曲率を変化させ、それとともにレンズの屈折力を変化させるように構成される更なるアクチュエータを備える。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、更なるアクチュエータも、レンズの容器に対して別個に組み立てられるように構成される。
【0054】
特に、更なるアクチュエータは、以下のアクチュエータ、すなわち、ボイスコイルまたはローレンツ力モータ、ピエゾ駆動、スクリュー駆動、熱活性アクチュエータ、SMA(形状記憶合金)アクチュエータ、リラクタンス力アクチュエータのうちの一つであり得る。
【0055】
さらに、本発明の実施形態によれば、ピストン構造に作用するために使用されるアクチュエータは、支持構造と、ピストン構造に接続された可動子とを備え、可動子は、支持構造に対して第一の運動方向に移動し、ピストン構造が可動子によって容器の弾性変形可能な壁部材に対して押され、リザーバ容積からレンズ容積内に流体をポンピングするように、支持構造に対して第二の運動方向に移動し、可動子がピストン構造を介して容器の弾性変形可能な壁部材を引っ張り、レンズ容積からリザーバ容積へ流体をポンピングするように構成される。
【0056】
特に、2つの運動方向は、互いに反対方向を向いており、レンズの光軸と平行である。特に、可動子は、ピストン構造に一体的に接続されるか、またはピストン構造の穴と係合することができる(上記参照)。
【0057】
特に、可動子がピストン構造を弾性変形可能な壁部材に押しつけると、壁部材はくぼみ(dent)を大きくし、したがって、リザーバ容積からレンズ容積内に流体を押し出し、その結果、レンズの前記エリアが対応する凸形状を展開し、レンズの屈折力が増加する。さらに、可動子がピストン構造を引っ張ると、ピストン構造は、弾性変形可能な壁部材を引っ張り、次いで、壁部材が外側に膨らみ、したがって、レンズ容積からリザーバ容積内に流体をポンピングし、その結果、レンズのエリアの凸曲率が減少し、それに伴って、屈折力も減少する。
【0058】
特に、一実施形態によれば、支持構造は、容器、特にレンズ成形要素に取り付けられる。したがって、ピストン構造の作動の基準点は、熱ドリフト(例えば、容器の熱膨張)の影響を受けない。したがって、アクチュエータは、レンズから熱的に分離される(例えば、アクチュエータの電気コイルからの加熱)。
【0059】
特に、支持構造は、アクチュエータのハウジングを形成することができる。
【0060】
さらに、本発明の一実施の形態によれば、可動子は、電気コイルを備え、電気コイルは、コイルに発生した電流が第一の電流方向に流れる第一の一部分を備え、電気コイルは、コイルに発生した電流が第一の電流方向と逆向きの第二の電流方向に流れる第二の一部分を備える。
【0061】
さらに、本発明の一実施形態によれば、第一および第二の磁石構造は、コイルが2つの磁石構造の間に配置されるように支持構造に取り付けられ、各磁石構造は、第一の磁化を有する第一の一部分と、第一の磁化と反対方向を向く第二の磁化を有する第二の一部分とを備える。
【0062】
さらに、本発明の一実施形態によれば、第一の磁石構造の第一の一部分は、第二の磁石構造の第一の一部分に対向し、コイルの第一の一部分は、第一の磁石構造の第一の一部分と第二の磁石構造の第一の一部分との間に配置され、第一の磁石構造の第二の一部分は、第二の磁石構造の第二の一部分に対向し、コイルの第二の一部分は、第一の磁石構造の第二の一部分と第二の磁石構造の第二の一部分との間に配置される。
【0063】
さらに、本発明の一実施形態によれば、磁石構造の第一の一部分の第一の磁化は、第一の電流方向に垂直に延び、磁石構造の第二の一部分の第二の磁化は、第二の電流方向に垂直に延び、その結果、電流が電気コイルを通って流れるとき、コイルの各部分にローレンツ力が作用するようになり、ローレンツ力は、第一および第二の電流方向の向き(すなわち、電気コイルの極性)に応じて、可動子を第一の運動方向または第二の運動方向に移動させる。
【0064】
さらに、本発明の一実施形態によれば、レンズは、更なるピストン構造に作用して、リザーバ容積からレンズ容積に、またはレンズ容積からリザーバ容積に流体をポンピングし、膜の前記エリアの曲率を変化させ、それとともにレンズの屈折力を変化させるように構成された、更なるアクチュエータを備える。特に、更なるアクチュエータは、前記電気コイルおよび2つの磁石構造を備える上述の特定のアクチュエータとして構成することができる。特に、一実施形態では、更なるアクチュエータは、支持構造と、また更なるピストン構造に接続された可動子を備え、可動子は、更なるアクチュエータの支持構造に対して第一の運動方向に移動し、その結果、更なるピストン構造が更なるアクチュエータの可動子によって、レンズの容器の弾性変形可能な更なる壁部材に押され、更なるリザーバ容積からレンズ容積内に流体をポンピングするように、更なるアクチュエータの支持構造に対して第二の運動方向に移動し、その結果、更なるアクチュエータの可動子が、更なるピストン構造を介して、レンズの容器の弾性変形可能な更なる壁部材を引っ張り、レンズ容積から更なるリザーバ容積内に流体をポンピングするように構成される。
【0065】
さらに別の実施形態によれば、レンズのレンズ成形要素は、フレーム構造自体によって形成することもでき、フレーム構造自体は、次いで、前記円周縁を含み、ここで、レンズは、膜がフレーム構造と保護プレート部材との間に挟まれるように、膜を保護するために膜の上に配置された保護プレート部材を含む。好ましくは、保護プレート部材は、レンズ容積に関連付けられた第一の凹部と位置合わせされた第一の貫通開口部と、リザーバ容積に関連付けられた第二の凹部と位置合わせされた第二の貫通開口部とを備える。好ましくは、膜は、フレーム構造、特にフレーム構造の前記トップシートに接着される。さらに、特に、レンズ成形要素は、上述のフレーム構造の前記トップシートによって形成することができ、前記トップシートは、前記円周縁を含む。好ましくは、トップシートは、非常に正確に形成することができる材料で形成される。
【0066】
特に、レンズ成形要素がフレーム構造によって(例えば、トップシートによって)形成される場合、フレーム構造(特にトップシートの)の前記円周縁は、好ましくは、保護プレート部材の対応する貫通開口部の内径よりも小さい内径を備える。レンズ形状要素が膜の上に配置され、フレーム構造が膜の下に配置される場合、レンズ形状要素の円周縁は、好ましくは、フレーム構造の対応する第一の凹部の内径よりも小さい内径を有する。
【0067】
更なる実施形態によれば、レンズ成形要素は、シリコンから(例えば、シリコンウェーハ材料から)、特に、結晶シリコンから形成される。これによって、曲げられたレンズ成形要素の結果である非点収差またはコマ収差のような波面誤差を低減する整形器の非常に良好な平坦性を達成することが可能になる。シリコン材料は、例えば、チャネルを作製するために、ストップ層または規定されたエッチング時間およびリソグラフィマスクを使用して、部分的にエッチングすることができる。具体的には、一実施形態では、レンズ容積とリザーバ容積とを接続する前記チャネルの少なくとも一部分が、トップシートにエッチングされる。
【0068】
本発明のさらに別の態様によれば、光学装置が開示され、光学装置は、本発明によるレンズを含む。
【0069】
光学装置の一実施形態によれば、光学装置は鏡筒を備え、鏡筒は鏡筒の内部空間を囲む円周壁を備え、少なくとも1つの剛性レンズ(または複数の剛性レンズ)は、鏡筒の前記内部空間に配置され、鏡筒の円周壁は、レンズの光軸に垂直に延在する挿入方向にレンズの容器を受け入れるように、形状適合方式で構成される第一のスロットを備え、その結果、レンズの膜の前記エリアが鏡筒の少なくとも1つの剛性レンズに面するように(すなわち、容器の光軸が鏡筒の光軸と整列するように)なっている。好ましい実施形態によれば、レンズのレンズ成形要素は、レンズの容器を鏡筒の第一のスロットに挿入する際に、レンズの膜の前記エリアを保護するように構成される。
【0070】
特に、第一のスロットは、前記鏡筒の端部において、鏡筒の開口部に隣接する鏡筒の端部に配置することもできる。ここで、特に、第一のスロットは、鏡筒の端部において、鏡筒の周壁の凹部によって形成することができる。
【0071】
特に、鏡筒の第一のスロットは、形状適合方式でレンズの容器を受容するように構成され、その結果、光は、レンズの膜の前記エリア、レンズ容積内の流体、およびレンズの容器の底壁を介して、少なくとも1つの剛性レンズおよびレンズの容器を通って鏡筒を通過することができるようになっている。
【0072】
特に、レンズは、それを鏡筒に接着することによって鏡筒に固定されるように構成され、特に、第一のスロットは、レンズが第一のスロットに挿入されるときに、鏡筒に対してレンズの機械的な遊びを可能にする。これにより、鏡筒に対するレンズの最終固定前に、鏡筒に対するレンズの整列が可能となり、高い光学品質(製造誤差)を実現する。
【0073】
さらに、一実施形態によれば、容器が鏡筒のスロット内に前記方向に挿入されると、弾性変形可能な壁部材に接続されるピストン構造が鏡筒の外側に配置される(したがって、アクチュエータの設置が容易になる)。
【0074】
特に、一実施形態によれば、鏡筒は、(特に鏡筒の光軸に垂直な)正方形断面、矩形断面または円形断面のうちの1つを含む。
【0075】
さらに、一実施形態によれば、鏡筒(特に周壁)は、直方体または円筒形の形状を備える。
【0076】
ここで、光学装置の更なる実施形態によれば、光学装置は、光学ズーム装置であり、(すなわち、請求項1~44のいずれか一項に記載されるように)本発明による更なるレンズを備える。
【0077】
鏡筒の円周壁は、レンズの光軸に垂直に延在する挿入方向に、更なるレンズの容器を受け入れるように、形状適合方式で構成される第二のスロットを備え、その結果、更なるレンズの膜の前記エリアが鏡筒の少なくとも1つの剛性レンズ(すなわち、更なるレンズの光軸が鏡筒の光軸と整列する)、および/または更なるレンズの膜の前記エリア(更なるレンズの容器が第二のスロットに挿入される場合)に面するようになり、更なるレンズのレンズ成形要素は、第二のレンズの容器が第二のスロットに挿入されると、更なるレンズの膜の前記エリアを保護するように構成される。
【0078】
特に、鏡筒の第二のスロットは、形状適合方式で更なるレンズの容器を受容するように構成され、その結果、光は、更なるレンズの膜の前記エリア、更なるレンズのレンズ容積内の流体、および更なるレンズの容器の底壁を介して、光が少なくとも1つの剛性レンズおよび更なるレンズの容器を通って鏡筒を通過することができるようになっている。
【0079】
さらに、一実施形態によれば、前記挿入方向において鏡筒の第二のスロットに更なるレンズの容器が挿入されると、更なるレンズの弾性変形可能な壁部材に接続される更なるレンズのピストン構造が、前記鏡筒の外側に配置される(したがって、更なるアクチュエータの設置が容易に行える)。特に、第二のスロットは、鏡筒の前記端部において、鏡筒の開口部に隣接する鏡筒の端部に配置することができる。ここで、特に、第二のスロットは、鏡筒の端部において、鏡筒の周壁の凹部によって形成することができる。第一のスロットは、前記開口部/第一のスロットからさらに離れて配置することができる。
【0080】
さらに、本発明によるレンズは、
・光学ズームカメラモジュール(本発明による2つ以上のレンズ、上記も参照)、
・調整可能な望遠鏡、ビームエキスパンダ、コリメータ(2つ以上の液体レンズ)、
・カメラのオートフォーカス(AF)(望遠、広角、折畳み望遠など)、
・カメラ用マクロフォーカス(望遠、広角、折畳み望遠など)、
・連続拡大観察、オートフォーカス、一定の作動距離(本発明による2つ以上のレンズ)を有する顕微鏡、
・オートフォーカス、光学ズーム、マクロ(バーコードリーダー、マシンビジョン等)によるIOTビジョン、
・作動距離(高速オートフォーカス)の異なるレーザ投影
などの様々な異なる用途に使用することができる。
【0081】
有利なことに、本発明によるレンズによって、+/-100dptから+/-200dptまでの非常に大きな屈折力範囲が可能になり、これは、特にそのようなレンズが光学ズーム装置に使用される場合に、非常に有益である。
【0082】
以下では、本発明の更なる特徴および実施形態を、特許請求の範囲に添付された図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】本発明によるレンズの実施形態の分解図を示す。
図2】本発明によるレンズの屈折力を調整する原理を示し、(A)は、レンズの実施形態の概略断面およびレンズの容器の構成要素を示し、(B)は、レンズの初期屈折力を示し、(C)および(D)は、レンズの異なる屈折力に対応する膜のエリアの異なる撓みを示す。
図3】レンズのレンズ成形要素によるレンズの膜の保護を実証するために、複数の剛性レンズを含む鏡筒に挿入されたレンズの実施形態の概略断面図を示す。
図4】本発明によるレンズのアクチュエータの一実施形態を示し、(A)は初期屈折力状態を示し、(B)および(C)はレンズの異なる屈折力に対応するレンズの膜のエリアの異なる撓みを示す。
図5】変形可能な壁部材の自由(膜)長さを示す斜視図(A)および概略断面図(B)を示し、壁部材は、レンズの流体をリザーバ容積からレンズ容積に、またはその逆にポンピングするために、ピストン構造によって変形可能である。
図6】屈折力対ピストン構造のストローク(プッシャストローク)(A)、屈折力対膜の伸張(伸張)(B)を示す。
図7図1に示す本発明によるレンズの実施形態のフレーム構造の上面図を示す。
図8図1に示す実施形態の斜視図(A)、断面図(B)、および概略断面図(C)を示し、フレーム構造によって囲まれたレンズ容積の直径に対するレンズ成形要素の縁部の好ましい寸法を実証する。
図9】2つの異なる温度についてのレンズの実施形態の概略的な断面(A)を示し、屈折力(屈折力)が流体の温度に依存すること(B)を示す。
図10】本発明によるレンズのフレーム構造の上面図(A)と、屈折率変化効果に対して熱容積膨張効果をバランスさせるために減少した総容積からなるレンズの概略断面図とを示す。
図11】レンズの流体の容積の熱的に誘発された増加を補償するために、温度(B)とともに膨張するフレーム構造を使用して、屈折力(A)の熱ドリフトを補償する可能性を示す。
図12】本発明に係るレンズの一実施形態を示し、ここでは、補償アクチュエータを用いて、レンズの屈折力における熱ドリフトを活補償することができ、(A)は、低温に対する屈折力を補正する補償アクチュエータを示し、(B)は、高温に対する屈折力を補正する補償アクチュエータを示し、さらに、(C)は、レンズの個々の構成要素を示す。
図13】本発明の一実施形態による鏡筒への本発明による1つまたは2つのレンズの挿入を示す。
図14】本発明によるレンズの一実施形態による好ましい屈折率整合を示す。
図15】液体レンズにおける重力誘起コマ収差の効果を示し、前記収差は、本発明によるレンズの一実施形態に従って、より硬い膜を使用して低減することができる。
図16】本発明によるレンズの実施形態を示し、このレンズは、重力誘起コマ収差を補償するための更なる流体(例えば、液体)で満たされた更なるレンズ容積を備える、
図17】本発明によるレンズの代替実施形態を示し、(A)は、レンズの膜の光学活性エリアの異なる状態を示し、(B)は、レンズの容器の個々の構成要素を示す。
図18】本発明によるレンズの更なる代替実施形態を示し、(A)は、レンズの膜の光学活性エリアの異なる状態を示し、(B)は、レンズの容器の個々の構成要素を示す。
図19】本発明によるレンズの更なる代替実施形態を示し、(A)は、レンズの膜の光学活性エリアの異なる状態を示し、(B)は、レンズの容器の個々の構成要素を示す。
図20】本発明によるレンズの実施形態を示し、レンズのフレーム構造は、複数のシートを備える。
図21図20に示す実施形態の変形例を示し、シートは、フレーム構造の内側に段部を形成する。
図22】本発明によるレンズの一実施形態を示し、フレーム構造によって画定されるリザーバ容積は、傾斜した内側を備える。
図23】本発明によるレンズの一実施形態を示し、レンズ成形要素は、レンズの膜の外側に取り付けられるリング部材として形成される。
図24】本発明によるレンズの一実施形態を示し、レンズ成形要素は、レンズの膜の内側に取り付けられるリング部材として形成される。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、特に光学ズーム装置に使用するための、本発明によるレンズ1の実施形態を示す。特に、レンズ1は、好ましくは、平坦で細長い(例えば直方体の)容器2を備える。容器2は、透明流体(例えば、非圧縮性透明液体)F1で満たされたレンズ容積Vと、透明流体F1で満たされ、レンズ容積Vに(例えば、チャネル32を介して)接続されたリザーバ容積R1と、容器2の側壁を形成するフレーム構造3とを備え、フレーム構造3は、レンズ容積Vの少なくとも一部分を収容するための貫通開口部の形態の第一の凹部30を備え、フレーム構造3は、リザーバ容積R1の少なくとも一部分を収容するための第二の凹部31(例えば、貫通開口部の形態の)を備える。特に、図1に示すように、フレーム構造は、モノリシックプレート部材(例えば、射出成形部品の形態)として形成されるが、幾つかの部品(例えば、金属シートの積層)から形成されてもよい。
【0085】
さらに、容器2は、フレーム構造3に接続された弾性変形可能で透明な膜4と、膜4に接続されたレンズ成形要素5であって調整可能な曲率を有する膜4のエリア4aを画定する円周縁(好ましくは円形)50aを備える、レンズ成形要素5と、フレーム構造3に接続された少なくとも部分的に透明な底壁6であって、レンズ容積Vが膜4の前記エリア4aと前記底壁との間に配置されるようになっている底壁6と、リザーバ容積R1に隣接する弾性変形可能な壁部材4bとを備える。
【0086】
特に、レンズ1は、膜4に対して反対側でフレーム構造3に接続された透明で弾性変形可能な更なる膜60を備え、更なる膜60は、底壁6によって構成される。
【0087】
さらに、底壁6は、更なる膜60上に配置された透明な剛性プレート61を備えることができ、その結果、更なる膜60は、フレーム構造3と、円形を備え得る剛性プレート61との間に配置される。
【0088】
有利なことに、膜4、60は、それぞれの構成要素間の界面を形成し、それぞれ機械的バッファとして作用する。
【0089】
さらに、それぞれの膜4、60の両側の材料の異なる熱膨張係数は、温度変化の間、可撓性膜層4、60によって緩衝される。さらに、それぞれの膜4、60は、(例えば、レンズの落下の場合に)衝撃を吸収するのに役立つ。最後に、それぞれの膜4、60は、個々の構成要素間の明確な距離を達成するのを助けることができる。
【0090】
特に、例えば図1に示すように、レンズ成形要素5は、平坦なプレートとして形成され、前記円周縁50aを形成する第一の(例えば円形の)貫通開口部50を含み、第一の貫通開口部50は、膜4の前記エリア4aによって閉鎖される。
【0091】
好ましい実施形態によれば、膜4は、フレーム構造3とレンズ成形要素5との間に配置される。これにより、膜4を保護することができ、そのことは、以下でさらに説明する。
【0092】
レンズ1は、以下の材料から形成することができる。具体的には、ピストン構造70は、金属(磁性または非磁性)、またはポリマーなどのプラスチック材料から形成することができる。さらに、レンズ成形要素5は、金属(磁性または非磁性)、プラスチック材料(例えば、ポリマー)、ガラス、またはシリコンから形成することができる。さらに、フレーム構造3も、金属もしくはプラスチック材料(例えば、ポリマー)、またはシリコンから形成することもできる。
【0093】
底壁6(例えば、透明プレート61)は、少なくとも一方の側(例えば、外側および/または内側)に反射防止(AR)コーティングを含むことができ、および/またはレンズ形状(すなわち、平坦ではなく、凸面または凹面を含む)を含むこともできる。
【0094】
図2は、本発明によるレンズ1の屈折力調整の動作原理を示す。好ましくは、レンズ成形要素5およびフレーム構造3は、光学的整合を確実にするために固定され、ピストン構造(また、プッシャプレートと表記される)70は、リザーバ容積からレンズ容積Vへ、またはその逆へ非圧縮性液体F1をポンピングするために使用される。特に、光軸A方向におけるフレーム構造3の高さは、レンズ1の膜4のエリア4aの最大撓みを規定している。
【0095】
特に、レンズ1の屈折力を調整するために、一実施形態に従って膜4によって形成されることが好ましい弾性変形可能な壁部材4bは、(例えば、図2(B)に示されるような平坦な初期状態から開始して)変形されて、流体F1をリザーバ容積R1からレンズ容積Vに、またはその逆にポンピングするように構成され、その結果、流体F1は、それに応じて膜4のエリア4aに作用し、エリア4aをさらに膨らませて、レンズ1の屈折力を増加させるか(図2(C)を参照)、または(流体F1がレンズ容積からリザーバ容積R1にポンピングされる場合)前記エリア4aの曲率を低下させて、屈折力を低下させる(例えば、図2(D))。特に、変形可能な壁部材4bに作用するために、レンズ1は、好ましくは、ピストン構造70を備え、ピストン構造70は、好ましくは、壁部材4bを押すこと(レンズの屈折力の増大をもたらす)ことによって、または壁部材を引っ張ること(屈折力の低下をもたらす)ことによって、壁部材4bを変形させるために、前記変形可能な壁部材4bに接着される。このようにして、レンズ1の屈折力を連続的に調整することができる。
【0096】
さらに、図3に示されるように、固定レンズ成形要素5(フレーム構造3に関して)は、図2と関連して説明される作動中に、他の構成要素(例えば、ここでは鏡筒100)に対して有利に光学的整合を保証する。
【0097】
特に、レンズ成形要素5は、フレーム構造3/容器2に固定され、その結果として他の光学構成要素に組み立てられる。これは、レンズ1の屈折力が変化したとき、レンズ成形要素5およびフレーム構造3が移動または偏心せずに、作動中に他の光学構成要素との位置合わせが正確に維持されることを意味する。
【0098】
特に、本発明によるレンズ1は、容器2のリザーバ容積R1が容器2のレンズ容積Vに対して挿入方向に対して横方向に隣接して配置されていることから、レンズ1の光軸Aに対して垂直な挿入方向に容易に鏡筒100に挿入することができる(図13(A)および(B)も参照)。したがって、レンズ容積を鏡筒100のレンズ103と整列させることができる一方で、リザーバ容積R1およびピストン構造70は、鏡筒100の外側に配置され、後述されるアクチュエータ80を容易に取り付けることができる。
【0099】
例えば、図1図3および図13に示すように、レンズ成形要素5とフレーム構造3との間に膜4を配置できることから、アセンブリ時に、エリア4aの初期撓みがゼロでない場合でも、レンズ成形要素5によって膜4を効率よく保護することができる。さらに、レンズの背面は、それぞれのレンズ1、1’の容器2よりもわずかに広いそれぞれのスロット101、102を有することによって保護することができる。その結果、膜4を破壊/引っ掻くことなく、それぞれのレンズ1、1’/容器2を鏡筒100内に滑り込ませることができる。
【0100】
特に、鏡筒100のスロット101にレンズ1の容器2が挿入される際に、鏡筒100が膜4の前記エリア4aと接触しないように嵌合する形態で、鏡筒100の関連スロット101に容器2を鏡筒100の光軸A’に対して垂直に挿入できるレンズ1の光軸Aの方向に、レンズ成形要素5が膜4の前記エリア4aから突出することにより、膜4のエリア4aの保護が確保される。
【0101】
さらに、図4は、可動コイル83および固定磁石構造84、85に基づくアクチュエータ80を含む可能な作動原理を示す。しかしながら、レンズ1の有益な設計のために、任意の適切なアクチュエータを使用してレンズを作動させることができ、レンズ1を組み立てた後に、特に鏡筒100にレンズ1を挿入した後に、組み立てることができる(例えば、図3および図13参照)。他の可能なアクチュエータは、ボイスコイルモータ、ピエゾ駆動、スクリュー駆動、熱活性アクチュエータ、SMA(形状記憶合金)アクチュエータ、リラクタンス力アクチュエータである。
【0102】
特に、アクチュエータ80は、レンズ成形要素5に固定されていることが好ましい。したがって、作動のための基準点は、熱ドリフト(例えば、容器2の熱膨張)に影響されず、アクチュエータ80は、レンズ1から熱的に分離される(例えば、コイル83からの加熱)。特に、本発明の一実施形態によれば、コイルは、流体F1から離間している。さらに、一実施形態によれば、流体F1は、ピストン構造70によってコイルから熱的に分離される。
【0103】
特に、図4に示されるように、アクチュエータ80は、支持構造82を備え、この支持構造は、アクチュエータのハウジングを形成することができ、好ましくは、レンズ成形要素5および/またはレンズのフレーム構造3にアクチュエータを取り付けるように構成される。このために、フレーム構造3は、例えば、図1および図7に示される突出部3cを備えることができ、この突出部は、支持構造82と係合することができ、したがって、ピストン構造70に対するアクチュエータ80の適切な位置決めを確実にすることもできる。
【0104】
さらに、アクチュエータは、ピストン構造70に接続された可動子83を備え、可動子は、支持構造82に対して第一の運動方向B1に移動し、ピストン構造70が可動子83によって容器2の弾性変形可能な壁部材4bに対して押され、リザーバ容積R1からレンズ容積V内に流体F1をポンピングするように、支持構造82に対して第二の運動方向B2に移動し、可動子83がピストン構造70を介して容器2の弾性変形可能な前記壁部材4bを引っ張り、レンズ容積Vからリザーバ容積R1内に流体F1をポンピングするように構成される。
【0105】
特に、2つの運動方向B1,B2は、互いに反対方向を向いており、レンズ1の光軸Aと平行である。特に、可動子83は、ピストン構造70に一体的に接続されるか、またはピストン構造70の穴70cと係合することができる。
【0106】
特に、可動子83がピストン構造70を壁部材4bに押し付けると、壁部材4bは、くぼみを大きくし、したがって、リザーバ容積R1から流体F1をレンズ容積V内に押し出し、その結果、レンズ1の膜4の前記エリア4aが対応する凸形状を展開し、レンズ1の屈折力が増大する。さらに、可動子83がピストン構造70を引っ張ると、ピストン構造70は、壁部材4bを引っ張り、次いで、壁部材が外側に膨らみ、したがって、レンズ容積Vからリザーバ容積R1に流体F1をポンピングし、その結果、レンズ1の膜4のエリア4aの凸曲率が減少し、それに伴って、屈折力も減少する。したがって、図4(B)と図4(C)とに示す状態間の任意の中間的な撓み状態を連続的に実現することができる。
【0107】
特に、可動子83は、電気コイル84を備え、電気コイルは、コイル84で生成された電流が第一の電流方向I1に流れる第一の一部分84aを備え、電気コイル84は、コイル84で生成された電流が第一の電流方向I1と逆向きの第二の電流方向I2に流れる第二の一部分84bを備える。
【0108】
さらに、アクチュエータ80は、コイル83が2つの磁石構造84、85の間に配置されるように支持構造82に取り付けられる第一および第二の磁石構造84、85を備え、各磁石構造84、85は、第一の磁化M1を有する第一の一部分84a、85aと、第一の磁化M1と反対の第二の磁化M2を有する第二の一部分84b、85bとを備える。磁石構造84、85は、別個の磁石から組み立てることができ、または前記磁化M1、M2を受けるように磁化することができる。
【0109】
さらに、図4(A)に示すように、第一の磁石構造84の第一の一部分84aは、第二の磁石構造85の第一の一部分85aに面し、コイル83の第一の一部分83aは、第一の磁石構造84の第一の一部分84aと第二の磁石構造85の第一の一部分85aとの間に配置され、第一の磁石構造84の第二の一部分84bは、第二の磁石構造85の第二の一部分85bに面し、コイル83の第二の一部分83bは、第一の磁石構造84の第二の一部分84bと第二の磁石構造85の第二の一部分85bとの間に配置される。
【0110】
この構成により、磁石構造84、85の第一の一部分84a、85aの第一の磁化M1は、第一の電流方向I1に本質的に垂直に延び、磁石構造84、85の第二の一部分84b、85bの第二の磁化M2は、第二の電流方向I2に本質的に垂直に延び、その結果、電流がコイル83を通って流れるとき、コイル83の各部分83a、83bにローレンツ力が作用するようになり、ローレンツ力は、第一および第二の電流方向I1、I2の向き(すなわち、電気コイルの極性)に応じて、第一の運動方向B1または第二の運動方向B2に、可動子83を移動させる。
【0111】
さらに、図5は、変形可能な壁部材4bを特定の量だけ変形させるために必要なアクチュエータ(例えば80)の力を減少させるように、リザーバ容積R1の形状をどのように選択できるかを示している。特に、力は、適切な自由膜長Lfreeを選択することによって減少させることができ、ピストン構造70の形状は、好ましくは、膜破裂の危険性を最小にするために、自由膜エリア上の大きな応力を防止するように設計される。特に、Lfreeを増やすと力が減り、ストロークが増える。
【0112】
応力低減を達成するための理想的な形状は、丸いプッシャプレート70および丸いリザーバ容積Vであろう。しかしながら、図5に示すように、ピストン構造のリザーバ容積および底部表面70bの八角形形状によって、比較的低い膜応力に対して比較的大きなリザーバ容積サイズを達成することが可能になり、それとともに、フレーム構造3の最小の外形寸法が得られる。これは、同じ外形寸法および利用可能なアクチュエータ力に対して、レンズ1の屈折力範囲を最適化するのに有益である。
【0113】
したがって、一実施形態によれば、ピストン構造70は、好ましくは、壁部材4b/膜4に作用するために、八角形の底部表面70bを備えるプレートによって形成される。頂部表面70cも、八角形の形状を備えてもよい。さらに、リザーバ容積R1は、好ましくは、プレート/ピストン構造70の前記底部表面70bに平行な八角形の断面積を備える。
【0114】
図6は、アクチュエータ力を低減するためのピストン構造の70底部表面70bの最適なサイズを示す。
【0115】
特に、図6の左側は、運動方向B1、B2(押し込みストローク)における、ピストン構造70の屈折力(屈折力)対ストロークを示す。それによれば、大きな表面70bの場合、特定の屈折力に到達するためには、かなり小さなストロークのみが必要である。しかしながら、これには、アクチュエータの力を大きくする必要がある(レンズ1を薄くすることができる)。
【0116】
より小さな表面70bの場合、より大きな容器高さを必要とする特定の屈折力に到達するためには、かなり大きなストロークが必要である(アクチュエータは、より弱くなり得る)。
【0117】
さらに、右側は、屈折力(屈折力)対膜4のエリア4aの伸張(伸張)を示す。
【0118】
それによれば、大きな表面70bのプッシャプレートは、短い自由膜(Lfree)と、膜エリア4a上の大きな伸張とになり、したがって、高い力をもたらす。
【0119】
これらの関係により、特定の設計パラメータが与えられたとき、移動とアクチュエータ力の間の最適を見出すことができる。特に、小さな表面70bは、低い力、長い移動、および高いフレーム構造3/容器2をもたらす。一方、大きな表面70bは、高い力、短い移動および比較的低い容器/フレーム構造高さをもたらす。
【0120】
図7の実施形態に示されるように、レンズ1のフレーム構造3/容器2の特定の設計は、最小の外形寸法を有しながら、最大限のクリアアパーチャを達成することを可能にする。これは、最小の外形寸法によって、フットプリントを減少させ、空間を節約することが可能になり、同時に、最大のクリアアパーチャが、良好な光学品質を保証するので、有益である。最大のポンプリザーバサイズは、膜4上の伸張を減少させることを可能にする(アクチュエータによって必要とされる力がより小さい)。図7に示すフレーム構造3は、射出成形、機械加工、レーザ切断または金属シートの積層によって製造することができる。特に、レンズ容積は、直径D2を有する円形断面を含み、一方、フレーム構造は、レンズ容積Vの少なくとも一部分に沿って一定の壁厚D5を達成するために、フレーム構造の端部で湾曲した外壁を備える。さらに、レンズ容積は、フレーム構造3のチャネル32を介して、レンズ容積の前記直径よりも大きい(例えば、対角線)直径D5を有するリザーバ容積R1に接続される。特に、リザーバ容積R1は、八角形の形状を有する。
【0121】
さらに図8に図示されるように、平坦なプレートとしてのレンズ成形要素の特定の設計は、円形貫通開口部50と、その円形縁部50aを備え、レンズ1の屈折力を調整するために使用される膜のエリア4aの形状/境界を正確に規定することを可能にする(それに対応するもの、例えば、球形、曲率を与えることによって)。特に、一例として、直径D1は、5mmとすることができる。また、一例として、厚さD3は、0.3mmとすることができる。
【0122】
特に、レンズ成形要素5は、0.2rmsλ@530nmよりも小さい所望の波面誤差でレンズの形状を規定することができる。好ましくは、凹部50は、最小の非点収差を達成するために、より小さい50μmの丸みを有する。さらに、縁部50aは、好ましくは2μmのピーク・ツー・バレーよりも小さい平坦性を備え、これも最小の非点収差を達成することを可能にする。特に、レンズ成形要素5は、他の平坦なシート材料からの金属から製造することができる。
【0123】
さらに、膜4のエリア4aに対する適切な境界条件を確保するために、フレーム構造3の第一の凹部30は、レンズ成形要素5の第一の貫通開口部50の(同軸)円周縁50aの内径D1よりも大きいことが好ましい内径D2を備える。
【0124】
さらに、図9に示すように、流体F1の屈折率は、温度の上昇に伴って減少し、温度の上昇に伴ってレンズの屈折力の低下をもたらす。
さらに、光学流体(例えば、液体)F1の容積は、温度の上昇に伴って増加し、温度の上昇に伴って屈折力の増加をもたらす。
【0125】
したがって、同じ初期屈折力に対して、レンズ1は、レンズ1のフルチューニング範囲に到達するために、より高温または低温で異なるアクチュエータストロークを必要とする。このようなドリフトは、アクチュエータ80によって補償されて、初期屈折力状態を回復することができる。
【0126】
図10に示す実施形態によれば、レンズ1の光学特性における温度誘起変化は、レンズ1のレンズ容積Vおよびリザーバ容積R1に対する適切な寸法を使用して低減されてもよい。
【0127】
特に、屈折率変化効果に対する容積膨張効果のバランスをとるために、レンズ1の総容積V、R1を最小限に抑えることができる。これは、容器2内に傾斜した側壁3dを設けて、総容積を減少させることによって達成することができる。さらに、リザーバ容積とレンズ容積との間の液体チャネル32の容積の減少を使用することもできる。チャネル32の容積のこのような縮小は、液体レンズの適切な作動速度(摩擦)を維持することができるようになされる(チャネルが小さいほど、作動速度が小さい)。その結果、液体レンズの作動速度および熱ドリフトを調整することができる。
【0128】
特に、温度の上昇に伴う流体Fの容積の増大によるレンズ1の屈折力の増大と、温度の上昇に伴う流体F1の屈折率の低下による屈折力の低下とをバランスさせるために、リザーバ容積R1を、リザーバ容積を小さくするように、一実施形態によるフレーム構造3の第二の凹部31の内側3dを傾けて区切る。さらに、レンズ容積Vとリザーバ容積R1との間に流れ接続を提供するチャネル32には、レンズ1の光軸Aに沿った高さHが与えられ、その結果、その高さHは、レンズ容積Vの高さH1よりも小さく、および/またはレンズ1の光軸Aに沿ったリザーバ容積R1の高さH2よりも小さくなり、前記バランスさせることを支持/達成する。さらに、チャネル32には、レンズ1の光軸Aに垂直な幅Wを与えることができ、その幅は、リザーバ容積R1の直径D4および/またはレンズ容積Vの直径D2よりも小さく、前記バランスさせることを達成/支持する。
【0129】
さらに、図11に示すように、レンズ1の容器2は、レンズ1の屈折力の受動的な温度ドリフト補償を提供するように構成されてもよい。それによれば、フレーム構造3の材料は、流体F1の材料に対して、フレーム構造3が十分に高い熱膨張係数を有するように選択することができる(例えば、適切なプラスチック材料)。そして、フレーム構造は、光学流体F1の膨張が補償され、膜4のエリア4aの撓み状態が維持され得るように、温度とともに膨張することができる。
【0130】
特に、一実施形態によれば、フレーム構造3は、温度の上昇に伴う流体F1の容積の増加および特に温度の上昇に伴う流体F1の屈折率の低下によるレンズ1の屈折力の変化を低減させるために、温度の上昇に伴って、レンズの光軸Aに沿って主に膨張するように構成される。
【0131】
図11と関連して説明した受動補償スキームの代替として、図12に示すように、補償アクチュエータ81を使用して、能動的な温度補償を達成することもできる。特に、補償アクチュエータ81は、同じリザーバ容積R1に作用する。実際のアクチュエータ80が屈折力を調整する間、補償アクチュエータ81は、レンズ1の温度が変化した場合に、特定の初期屈折力状態が維持されることを保証する。
【0132】
特に、補償アクチュエータ81は、温度センサ90および温度較正されたドリフト補正作動スキームを使用して、レンズ1の初期屈折力状態を回復するように構成される。特に、補償アクチュエータ81は、通常より長い時間スケールで熱変化が生じるので、低速移動アクチュエータ(例えば、スクリュー駆動)とすることができる。さらに、補償アクチュエータ81は、熱活性アクチュエータ(例えば、負の熱膨張材料)とすることができる。
【0133】
特に、図12に示す特定の実施形態によれば、容器2は、レンズ1の屈折力の前記熱ドリフトを補償するために、リザーバ容積R1に隣接する弾性変形可能な壁領域60aを備え、補償アクチュエータ81は、レンズ1の屈折力の前記熱ドリフトを打ち消すために、弾性変形可能な前記壁領域60aを変形するように構成される。さらに、温度センサ90は、レンズ1の温度(特に、リザーバ容積R1内および/またはレンズ容積V内の流体F1の温度)を測定するように構成され、レンズ1は、レンズ1の屈折力の熱ドリフトを相殺するために、前記温度を示す温度センサ90の出力信号を使用して補償アクチュエータ81を制御するように構成される。
【0134】
さらに、図14は、レンズ1の屈折率整合および反射防止コーティングの提供を示す。好ましくは、光学流体または液体F1は、光学誤差および分散を低減するために、大きいアッベ数を含む。特に、反射防止(AR)コーティングは、膜4の外側、特にエリア4aに設けられ、多重反射、ゴースト、およびフレアを妨げる。
【0135】
さらに、膜4と流体F1(OL)との間の屈折率整合は、光学流体または液体F1から膜60からプレート61(例えば、ガラス)への屈折率整合とともに、提供することができる(膜は、光学流体/液体F1およびガラスの屈折率を支持する)。
【0136】
さらに、反射防止コーティングは、好ましくは、プレート(例えば、ガラス)61の外側または両側にも設けられる。
【0137】
特に、流体F1は、流体は、1.2~1.4の範囲の屈折率(nOL)を備え、および/または透明で弾性変形可能な膜4または60(nmembrane)は、1.3~1.6の範囲の屈折率を備え、および/または(底壁6の)透明剛性プレート61は、1.4~1.6の範囲の屈折率(nglass)を備える。
【0138】
さらに、図15は、液体レンズ1を使用する場合に遭遇し得る重力効果を示す。特に、レンズ1の形状は、光学液体/流体F1および膜4に作用する重力によって規定される。レンズ1が垂直状態(水平光軸)に傾いた場合、流体F1は垂れ下がり、コマ型収差(重力コマ)を導く。したがって、薄い/柔らかい膜4は高い重力コマ収差をもたらし、一方、厚い/硬い膜4は重力コマ収差を低減する。
【0139】
したがって、本発明の一実施形態によれば、レンズ1の前記エリア4aを形成する膜4は、膜4のエリア4aの重力誘起コマ収差を低減するために、レンズの更なる膜60よりも厚い厚さを備える。より薄い膜60は、ここで、例えば、図17に関連して示されるように、レンズ1を調整するために使用され得る。
【0140】
特に、図16に示す実施形態によれば、2つの光学液体/流体F1、F2は、コマ収差補正のために使用することができる。特に、この実施形態では、2つの異なる光学液体/流体F1、F2は、薄い分離膜62によって分離され、これらの流体F1、F2の屈折率、容積、および密度と、両方の膜4、62の厚さ/剛性は、重力コマ収差を低減するように最適化される。
【0141】
特に、図16に示されるように、容器2は、透明な(コマ補正)更なる流体F2で満たされた更なるレンズ容積V2を囲み、更なるレンズ容積V2は、前記透明で弾性変形可能な分離膜62によってレンズ容積Vから分離され、その結果、更なる流体F2は、レンズ容積Vの流体F1と底壁6との間に配置され、膜4の前記エリア4aの重力誘起コマ収差を少なくとも部分的に補償するために、更なる流体F2は、密度ρおよび屈折率nを備え、更なる流体F2の密度ρは、流体F1の密度ρよりも小さく、更なる流体F2の屈折率nは、流体F1の屈折率nよりも大きく、その結果、補償が達成される(膜4および62の物質の特性を与えられた場合)。
【0142】
ここで、特に、フレーム構造3は、容器2の側壁の一部分を形成する第一のフレーム要素3aを備えることができ、第一のフレーム要素3aは、フレーム構造3の第一の凹部30の一部分と、フレーム構造3の第二の凹部31の一部分とを形成し、ここで、前記凹部30、31のこれらの一部分は、レンズ容積Vと容器2のリザーバ容積R1との間の流れ接続を提供するように(例えば、チャネル32を介して)接続される。さらに、フレーム構造3は、更なるレンズ容積V2を収容する凹部34を備える隣接する平行な第二のフレーム要素3bを備え、前記分離膜62は、第一のフレーム要素3aと第二のフレーム要素3bとの間に配置される。第二のフレーム要素3bの凹部30の円周縁は、膜4のエリア4aのコマ収差が補償されるように、更なる流体に作用する重力によって変形するように構成された分離膜のエリア62aを画定する。これは、上述した流体F1および更なる流体F2(膜4および62が与えられる)の密度および屈折率の適切な選択によって達成される。さらに、特に、第二のフレーム要素3bの凹部33は、容器2の前記底壁6によって(例えば、更なる膜60および剛性プレート61によって)覆われる。
【0143】
図17は、更なる代替のレンズ設計を示し、特に、前記エリア4aは、重力コマ収差を低減するために(更なる膜60と比較して)比較的厚い膜4によって形成され、一方、より薄い更なる膜60は、作動力を低減するようにポンプ作動エリア(変形可能な壁部材)4bを形成するために使用される。
【0144】
)特に、フレーム構造3は、容器2の側壁の一部分を形成する第一のフレーム要素3aを備えることができ、第一のフレーム要素3aは、フレーム構造3の第一の凹部30の一部分およびフレーム構造3の第二の凹部31の一部分を形成し、前記凹部30、31のこれらの一部分は、レンズ容積と容器の側方容積との間の流れ接続を提供するように(例えば、チャネル32を通して)接続される。さらに、フレーム構造3は、フレーム構造3の第一の凹部30の一部分およびフレーム構造3の第二の凹部31の一部分を形成する隣接する平行な第二のフレーム要素3bを備え、これらの凹部の一部分は分離されている。特に、第二のフレーム要素3bの第一の凹部30の一部分は、容器の底壁6によって覆われ、第二のプレート要素3bの第二の凹部31の一部分は、ピストン構造70(上記参照)が接続される弾性変形部材4b(底壁6の一部分をなす)によって覆われている。特に、底壁6は、第二のフレーム要素3bの第一および第二の凹部30,31の両方の一部分を覆い、(また、リザーバ容積R1の弾性変形可能な壁部材4bを形成する)更なる膜60を備え、底壁6の透明剛性プレート61は、第二のフレーム要素3bの第一の凹部30の一部分を覆い、更なる膜60は、底壁6の透明剛性プレート61と第二のフレーム要素3bとの間に配置されている。
【0145】
図18は、レンズ1の容器2の更なる代替設計を示す。ここでは、例えば、図1に示すようにレンズ成形要素5とフレーム構造3との間に膜4を配置するのではなく、レンズ成形要素5の上に膜4を配置し、レンズ成形要素5をフレーム構造3と膜4との間に配置するようにしている。さらに、プレート61(例えば、ガラス)は、膜4とは反対側のフレーム構造全体を覆っている。特に、この設計によって、容器2の容易な製造が可能になる。
【0146】
さらに、図19は、レンズ1の容器2の更なる代替設計を示す。ここで、レンズ1は、それぞれ専用のアクチュエータ80によって作動させることができる2つのリザーバ容積R1、R2および2つのピストン構造70、72を備える(しかしながら、単一のアクチュエータが両方のピストン構造70、72に作用してもよい)。2つのアクチュエータ(例えば、80)を使用することは、個々のアクチュエータに必要な力がより少なく、個々のアクチュエータに必要なストロークがより少ないため、有益であり得る。
【0147】
特に、図19に示されるように、レンズ1は、(例えば、図1に関連して説明された特徴に加えて)第二の貫通開口部51を備えるレンズ成形要素5を備えることができ、第二の貫通開口部51は、更なる弾性変形可能な壁部材4cによって(例えば、膜4によって)覆われる。
【0148】
また、ここでも、第二の貫通開口部51は、八角形の形状を有することが好ましい。
他の形状も可能である。
【0149】
特に、容器2のリザーバ容積R1と更なるリザーバ容積R2とは、レンズ1の光軸Aと直交する方向に面し、レンズ容積Vの両側に配置されている。
【0150】
特に、レンズ1の容器2のフレーム構造3は、更なるリザーバ容積R2の少なくとも一部分を収容するための第三の凹部33を備えることができ、第三の凹部33は、容器2の更なる壁部材4cによって、特にレンズ1の容器2の底壁6によって(他方の側から)覆われる。
【0151】
好ましくは、レンズ成形要素5は、また第三の貫通開口部52も備え、第三の貫通開口部52は、弾性変形可能な壁部材4cによって(例えば、膜4によって)覆われる。特に、第三の貫通開口部52も八角形の形状を有する。
【0152】
さらに、レンズ1は、更なるアクチュエータ(例えば、80)を備えることができ、更なるアクチュエータは、更なるリザーバ容積R2からレンズ容積Vに、あるいはレンズ容積Vから更なるリザーバ容積R2に流体F1をポンピングする壁部材4cに接続された更なるピストン構造72に作用して、膜4の前記エリア4aの曲率を変化させ、それによってレンズ1の屈折力を変化させるように構成されている。
【0153】
また、ここでは、更なるアクチュエータは、ボイスコイルモータ、ピエゾ駆動、スクリュー駆動、熱活性アクチュエータ、SMA(形状記憶合金)アクチュエータ、リラクタンス力アクチュエータのうちの一つであり得る。特に、更なるピストン部材72に作用する更なるアクチュエータは、図4に関連して上述したアクチュエータ80として構成することができる。
【0154】
最後に、図13に示されるように、本発明によるレンズ1は、鏡筒100を備える光学装置10に使用するのに特に適しており、鏡筒100は鏡筒100の内部空間105を囲む円周壁104を備え、少なくとも1つの剛性レンズ103(または複数の剛性レンズ)は、鏡筒100の前記内部空間105に配置され、鏡筒100の円周壁104は、レンズ1の膜4の前記エリア4aが鏡筒100の少なくとも1つの剛性レンズ103に面するように(すなわち、容器Aの光軸が鏡筒100の光軸A’と整列するように)、形状適合方式でレンズ1の容器2を受け入れるように構成された第一のスロット101を備え、レンズ1のレンズ成形要素5は、レンズ1の容器2を第一のスロット101に挿入する際に、レンズ1の膜4の前記エリア4aを保護するように構成される。
【0155】
特に、鏡筒100の第一のスロット102は、(例えば、レンズ1の光軸Aおよび鏡筒100の光軸A’に垂直な挿入方向にレンズ1の容器2をスロット101内に挿入することによって)形状適合方式でレンズ1の容器2を受け入れるように構成され、その結果、光は、レンズ1の膜4の前記エリア4a、レンズ容積V内の流体F1、およびレンズ1の容器2の底壁6を介して、少なくとも1つの剛性レンズ103およびレンズ1の容器100を通って、鏡筒100を通過することができるようになる。特に、容器2が鏡筒100の第一のスロット101に挿入されると、弾性変形可能な壁部材4bに接続されたピストン構造70が鏡筒100の外側に配置される。
【0156】
同様に、多数のレンズ1(例えば、2つ以上)を光学ズーム装置10の構成要素として使用/提供することができ、各レンズ1は、対応するスロット101、102を通して鏡筒100内に挿入することができ、一方、それぞれの膜4は、本明細書で説明するように、対応するレンズ成形要素5によって保護される。そのような光学ズーム装置10は、図4に関連して説明されたように、またはレンズ1に関して本明細書で特許請求されるように、各レンズ1、1’のためのアクチュエータ80を備えることができる。有利には、これらのアクチュエータ80は、それぞれのレンズ1、1’が鏡筒100に挿入されたときに、それぞれのレンズ1、1’に容易に取り付けることができる。
【0157】
図20図22は、本発明によるレンズ1の更なる実施形態を示す。
【0158】
図20は、本発明によるレンズ1の実施形態を示し、これは、特に、折り畳みカメラ装置、テレ装置、またはズーム装置に使用するためのものである。特に、前述のように、レンズ1は、好ましくは、平坦で細長い(例えば直方体の)容器2を備える。容器2は、透明流体(例えば、非圧縮性透明液体)F1で満たされたレンズ容積Vと、透明流体F1で満たされ、レンズ容積Vに(例えば、チャネル32を介して)接続されたリザーバ容積R1と、容器2の側壁を形成するフレーム構造3とを備え、フレーム構造3は、レンズ容積Vの少なくとも一部分を収容するための貫通開口部の形態の第一の凹部30を備え、フレーム構造3は、リザーバ容積R1の少なくとも一部分を収容するための第二の凹部31(例えば、貫通開口部の形態の)を備える。特に、図1とは対照的に、フレーム構造3は、ここでは、複数のシート300、301、例えば、ここでは、トップシート300と、更なるシート301から構成され、これらのシートは、互いの上に配置されている。
【0159】
図21に示すこの実施形態の変形例では、更なるシート301は、容器2のフレーム構造3の内側3eが段部3fを形成するように、トップシート300に対して形成することができる(例えば、更なるシート301は、トップシート300と比較して、リザーバ容積R1の領域および/またはレンズ容積Vの領域において、より小さい内径を備えることができる)。
【0160】
あるいは、図22に示すように、シート状構造の代わりに、傾斜した内部3d(例えば、リザーバ容積R1に隣接する)を備える単一のプレート部材によってフレーム構造を形成することができる。このような傾斜した内部3dまたは段部3fは、レンズ1の屈折力の温度依存性を減少させるために使用することができる。さらに、段部3eを用いて、フレーム構造3とレンズ成形要素5との干渉を低減することができる(図21参照)。
【0161】
さらに、図20図22に示すそれぞれの容器2は、フレーム構造3(例えば、図21のトップシート300)に接続された弾性変形可能で透明な膜4と、膜4に接続されたレンズ成形要素5とを備え、レンズ成形要素5は、調整可能な曲率を有する膜4のエリア4aを画定する円周縁(好ましくは円形)50aを備える。しかしながら、レンズ成形要素5は、フレーム構造3によって、特にトップシート300によって形成することもでき、これは、調整可能な曲率を有する膜4のエリア4aを画定する円周縁50aを備える。ここで、図20および図22に示すトッププレート部材5は、次に、フレーム構造3と保護プレート部材5との間に配置された膜4を有することによって膜4を保護するために、膜4の上に配置された保護プレート部材5を形成する。次いで、保護プレート部材5は、光の通過を可能にするために第一の凹部30と位置合わせされた第一の貫通開口部50と、第二の凹部31と位置合わせされた第二の貫通開口部51とをさらに備える。好ましくは、膜4は、フレーム構造3、特にフレーム構造3のトップシート300に接着される。
【0162】
特に、それぞれのレンズ成形要素5、3、または300は、シリコンから(例えば、シリコンウェーハ材料から)、特に、結晶シリコンから形成される。これによって、曲げられたレンズ成形要素の結果である非点収差またはコマ収差のような波面誤差を低減するそれぞれのレンズ成形要素の非常に良好な平坦性を達成することが可能になる。さらに、レンズ容積Vとリザーバ容積R1とを接続するチャネル32の少なくとも一部分をトップシート300内にエッチングすることができる。
【0163】
さらに、図20図22に示されるそれぞれのレンズ1は、好ましくは、フレーム構造3(例えば、更なるシート301)に接続された少なくとも部分的に透明な底壁6を備え、レンズ容積Vが膜4の前記エリア4aと前記底壁6との間に配置されるようになっている。さらに、それぞれのレンズ1は、好ましくは、リザーバ容積R1に隣接する弾性変形可能な壁部材4bを備える。
【0164】
特に、レンズ1は、膜4に対して反対側でフレーム構造3(例えば、更なるシート301)に接続された透明で弾性変形可能な更なる膜60を備えることができ、更なる膜60は底壁6によって構成される。
【0165】
さらに、底壁6は、更なる膜60の上に配置され得る透明な剛性プレート61を備え得、その結果、更なる膜60は、フレーム構造3と、円形を備え得る剛性プレート61との間に配置される。容器2は、剛性プレート31に隣接する更なる剛性底部要素63を備えてもよく、底部要素63は不透明であってもよい。また、ここで、膜4、60は、それぞれの構成要素間の界面を形成し、それぞれ機械的バッファとして作用することができる。
【0166】
さらに、図23および図24に示すように、レンズ成形要素5は、貫通穴を備えるプレート状構造の代わりに、リング部材5によって形成することもできる。
【0167】
図23によれば、レンズ成形部材5は、膜4が特にリング部材5の周りに延びる自由部分を含むように、膜の外側40aに取り付けることができる。このようなリング部材5は、金属またはシリコンから形成することができる。
【0168】
原則として、レンズ成形部材5は、膜4とともに移動することができるが、フレーム構造3とレンズ成形要素との間の自由膜長が比較的短いために、流体F1(例えば、液体)がレンズ容積V内にポンピングされるか、またはリザーバ容積R1に移送されるとき、レンズ成形要素/リング部材5はほとんど移動しない。
【0169】
図24は、図23のレンズ1の代替実施形態を示し、図24では、レンズ成形要素/リング部材5は、レンズ1の膜4の内側40aに取り付けられている。
【0170】
レンズ成形要素5は、フレーム構造3の段部上に配置することができる。さらに、リング部材5は、リング部材5の周りのフレーム構造よりもわずかに高くすることができ、その結果、膜4は、レンズ成形要素5をわずかに押圧し(膜4の予歪み)、機械的な遊びが抑制される。
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
図4(C)】
図5(A)】
図5(B)】
図6
図7
図8(A)】
図8(B)】
図8(C)】
図9
図10
図11
図12
図13(A)】
図13(B)】
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2021-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能な屈折力を有するレンズ(1)であって、前記レンズ(1)は容器(2)を含み、前記容器(2)は、
・透明な流体(F1)で満たされたレンズ容積(V)と、
・透明な前記流体(F1)で満たされ、前記レンズ容積(V)に接続されたリザーバ容積(R1)と、
・前記容器(2)の側壁を形成するフレーム構造(3)であって、前記フレーム構造は、前記レンズ容積(V)の少なくとも一部分を収容する第一の凹部(30)を備え、前記フレーム構造(3)は、前記リザーバ容積(R1)の少なくとも一部分を収容する第二の凹部(31)を備える、フレーム構造と、
・前記フレーム構造(3)に接続された弾性変形可能で透明な膜(4)と、
・前記膜(4)に接続されたレンズ成形要素(5)であって、前記レンズ成形要素(5)が、調整可能な曲率を有する前記膜(4)のエリア(4a)を画定する円周縁(50a)を備える、レンズ成形要素と、
・前記フレーム構造(3)に接続された透明な底壁(6)であって、前記レンズ容積(V)が前記膜(4)の前記エリア(4a)と前記底壁との間に配置されるようになっている、透明な底壁と、
・前記リザーバ容積(R1)に隣接する弾性変形可能な壁部材(4b)と、
を備え
弾性変形可能な前記壁部材(4b)は、前記底壁(6)の一部分を形成し、特に、弾性変形可能な前記壁(4b)は、更なる膜(60)によって形成され、前記膜(4)が、前記膜(4)の前記エリア(4a)の重力誘起コマ収差を低減するために、前記更なる膜(60)よりも厚い厚さを有し、
前記容器(2)は、透明な更なる流体(F2)で満たされた更なるレンズ容積(V2)を囲み、前記更なるレンズ容積(V2)は、透明で弾性変形可能な分離膜(62)によって前記レンズ容積(V)から分離され、その結果、前記更なる流体(F2)は、前記レンズ容積(V)の前記流体(F1)と前記底壁(6)との間に配置され、前記膜(4)の前記エリア(4a)の重力誘起コマ収差を補償するために、前記更なる流体(F2)は、密度(ρ2)および屈折率(n2)を備え、前記更なる流体(F2)の密度(ρ2)は、前記流体(F1)の密度(ρ1)よりも小さく、前記更なる流体(F2)の屈折率(n2)は、前記流体(F1)の屈折率(n1)よりも大きい
レンズ。
【請求項2】
弾性変形可能な前記壁部材(4b)は、流体(F1)を前記リザーバ容積(R1)から前記レンズ容積(V)内にポンピングして前記膜(4)の前記エリア(4a)の曲率を変化させ、それと共に前記レンズ(1)の屈折力を変化させるように変形させるように構成され、および/または前記壁部材(4b)は、流体(F1)を前記レンズ容積(V)から前記リザーバ容積(R1)内にポンピングして前記膜(4)の前記エリア(4a)の曲率を変化させ、それと共に前記レンズ(1)の屈折力を変化させるように変形されるように構成され
前記レンズ(1)は、前記壁部材(4b)を押すこと、または前記壁部材(4b)を引っ張ることによって、前記壁部材(4b)を変形させるために、変形可能な前記壁部材(4b)に接続されたピストン構造(70)を備え、
前記ピストン構造(70)は、前記ピストン構造(70)を移動させるために、アクチュエータ(80)に接続されるように構成される、請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記容器(2)の前記リザーバ容積(R1)は、前記レンズ(1)の光軸(A)に垂直な方向において、前記容器(2)の前記レンズ容積(V)に横方向に隣接して配置される、請求項1または2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記フレーム構造(3)は、少なくとも1つのモノリシックプレート部材(3a)によって形成される、請求項1~のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項5】
前記フレーム構造(3)は、前記膜(4)に接続されたトップシート(300)と、前記トップシート(300)に接続された更なるシート(301)とを備え
前記更なるシート(301)が前記トップシート(300)の内径よりも小さい内径を備え、前記容器(2)の前記フレーム構造(3)の内側(3e)が段部(3f)を形成するようになる、請求項1~のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項6】
前記レンズ(1)は、前記フレーム構造(3)に接続された透明で弾性変形可能な更なる膜(60)を備え、前記更なる膜(60)は、前記底壁(6)によって構成され
前記底壁(6)は、前記更なる膜(60)上に配置された透明プレート(61)を備え、前記更なる膜(60)が前記フレーム構造(3)と前記透明プレート(61)との間に配置されるようになる、請求項1~のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項7】
前記レンズ成形要素(5)は、前記円周縁(50a)を形成する第一の貫通開口部(50)を備え、前記第一の貫通開口部(50)は、前記膜(4)の前記エリア(4a)によって閉鎖される、請求項1~のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項8】
前記フレーム構造(3)の前記第一の凹部(30)は、前記レンズ成形要素(5)の前記第一の貫通開口部(50)の前記円周縁(50a)の内径(D1)よりも大きい内径(D2)を備える、請求項に記載のレンズ。
【請求項9】
前記レンズ成形要素(5)は、前記膜(4)の外側(40a)または前記膜(4)の内側(40b)に取り付けられるリング部材であり、前記リング部材は、前記円周縁(50a)を形成する貫通開口部(50)を備え、前記貫通開口部(50)は、前記膜(4)の前記エリア(4a)によって閉鎖される、請求項1~のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項10】
前記レンズ成形要素(5)は、第二の貫通開口部(51)を備え、前記第二の貫通開口部(51)は、弾性変形可能な前記壁部材(4b)によって閉鎖される、請求項1~のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項11】
前記フレーム構造(3)は、温度の上昇に伴う前記流体(F1)の容積の増加および温度の上昇に伴う前記流体(F1)の屈折率の低下に起因する前記レンズ(1)の屈折力の変化を低減するために、温度の上昇に伴って膨張するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項12】
温度の上昇に伴う前記流体(F1)の容積の増加に伴う前記レンズ(1)の屈折力の増加と温度の上昇に伴う前記流体(F1)の屈折率の低下とをバランスさせるために、前記リザーバ容積(R1)は、前記リザーバ容積(R1)を減少させるように前記フレーム構造(3)の前記第二の凹部(31)の傾斜した内側(3d)によって画定され、および/または、前記レンズ容積(V)と前記リザーバ容積(R1)との間に流れ接続を提供するチャネル(32)は、前記レンズ(1)の光軸(A)に沿った高さ(H)を含み、この高さ(H)は、前記レンズ容積(V)の高さ(H1)および/または前記レンズ(1)の光軸(A)に沿った前記リザーバ容積(R1)の高さ(H2)よりも小さく、および/または、前記チャネル(32)は、前記リザーバ容積(R1)の直径(D4)および/または前記レンズ容積(V)の直径(D2)よりも小さい、前記レンズ(1)の光軸(A)に垂直な幅(W)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項13】
前記容器(2)が、前記レンズ(1)の屈折力の熱ドリフトを補償するために、前記リザーバ容積(R1)に隣接する弾性変形可能な壁領域(60a)を備え、前記レンズ(1)が、前記レンズ(1)の屈折力の熱ドリフトを打ち消すために、弾性変形可能な前記壁領域(60a)を変形するように構成された補償アクチュエータ(81)を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項14】
前記容器(2)は、前記容器(2)の前記レンズ容積(V)に接続された更なるリザーバ容積(R2)を備え、前記容器(2)は、前記容器(2)の前記更なるリザーバ容積(R2)に隣接する弾性変形可能な更なる壁部材(4c)を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項15】
前記容器(2)の前記リザーバ容積(R1)および前記更なるリザーバ容積(R2)は、前記レンズ(1)の光軸(A)に垂直な方向に互いに面し、前記レンズ容積(V)の両側に配置される、請求項14に記載のレンズ。
【請求項16】
前記更なる壁部材(4c)は、透明で弾性変形可能な前記膜(4)によって形成される、請求項14または15に記載のレンズ。
【請求項17】
前記レンズ(1)は、前記更なる壁部材(4c)を押すこと、または前記更なる壁部材(4c)を引っ張ることによって、前記更なる壁部材(4c)を変形させるために、前記更なる壁部材(4c)に接続された更なるピストン構造(72)を備え
前記更なるピストン構造(72)は、前記更なるピストン構造(72)を移動させるために、更なるアクチュエータ(80)に接続されるように構成される、請求項14~16のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項18】
前記レンズ成形要素(5)は、シリコン、特に結晶シリコンから形成される、請求項1~17のいずれか一項に記載のレンズ。
【請求項19】
光学装置であって、前記光学装置(10)は、請求項1~18のいずれか一項に記載のレンズ(1)を備え、前記光学装置(1)は鏡筒(100)を備え、前記鏡筒(100)は前記鏡筒(100)の内部空間(105)を囲む円周壁(104)を備え、少なくとも1つの剛性レンズ(103)が、前記鏡筒(100)の前記内部空間(103)内に配置され、前記鏡筒(100)の円周壁(104)が、前記レンズ(1)の前記膜(4)の前記エリア(4a)が前記鏡筒(100)の前記少なくとも1つの剛性レンズ(103)に面するように、形状適合方式で前記レンズ(1)の前記容器(2)を受け入れるように構成された第一のスロット(101)を備え、特に前記レンズ(1)の前記レンズ成形要素(5)が、前記レンズ(1)の前記容器(2)を前記鏡筒(100)の前記第一のスロット(102)に挿入する際に、前記レンズ(1)の前記膜(4)の前記エリア(4a)を保護するように構成される、光学装置。
【国際調査報告】