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特表2022-515265金属部品を製造するための多層精密打抜きプロセスおよびそのようなプロセスを実行するための精密打抜き装置
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  • 特表-金属部品を製造するための多層精密打抜きプロセスおよびそのようなプロセスを実行するための精密打抜き装置 図1
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  • 特表-金属部品を製造するための多層精密打抜きプロセスおよびそのようなプロセスを実行するための精密打抜き装置 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】金属部品を製造するための多層精密打抜きプロセスおよびそのようなプロセスを実行するための精密打抜き装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/02 20060101AFI20220209BHJP
   B21D 39/03 20060101ALI20220209BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B21D28/02 D
B21D28/02 C
B21D39/03 B
H02K15/02 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537052
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(85)【翻訳文提出日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2019025484
(87)【国際公開番号】W WO2020135926
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】1043111
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シプケ コープマンス
(72)【発明者】
【氏名】テオドリュス マルティニュス ヘンリキュス ヤンセン
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP07
5H615SS03
5H615SS13
(57)【要約】
本発明は、相互に積み重ねられた、好ましくは本質的に同一の個々の層(50)から構成される多層基本材料(51)から金属部品を同時に打ち抜くためのプロセスに関する。金属部品のそのような打抜きに先立って、多層基本材料(51)には、プレスロックパンチ(101)とアンビル(103)との間で多層基本材料(51)の局所的な塑性変形によって連結部(1)が設けられ、それによって、個々の層(50)は3つの空間的次元すべてにおいて相互に固定される。本発明によれば、連結部(1)は、打ち抜かれるべき金属部品(10)の(仮想)輪郭の外側で多層基本材料(51)に設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打抜き装置(90)によって層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法であって、前記打抜き装置(90)には、それぞれキャビティ(71;81)を画定するブランクホルダ(70)および打抜きダイ(80)が設けられており、前記キャビティ(71;81)は、該キャビティ(71;81)内に収容された打抜きパンチ(30)およびカウンタパンチ(40)を用いて打ち抜かれるべき前記金属部品(10;11)の周形状に対応した周形状を有し、一方では、前記ブランクホルダ(70)と前記打抜きダイ(80)とが、他方では、前記打抜きパンチ(30)と前記カウンタパンチ(40)とが、共に相互にかつ互いに相対的に移動可能であり、前記層状基本材料(51)は、一方では、前記ブランクホルダ(70)と前記打抜きダイ(80)との間にクランプされ、他方では、前記打抜きパンチ(30)と前記カウンタパンチ(40)との間にクランプされ、次いで、前記打抜きパンチ(30)が、前記カウンタパンチ(40)によって支持された状態で前記層状基本材料(51)の一連の層(50)を貫通して移動させられ、それによって、複数の前記金属部品(10;11)を囲む前記基本材料(51)から単一の前記金属部品(10;11)を前記層(50)ごとに切り離す、層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法において、
前記金属部品(10;11)を切り離すことに先立って、前記層状基本材料(51)の前記層(50)は、切断されるべき前記金属部品(10;11)の外周、すなわち、輪郭(14)の外側に前記層(50)間で3次元の塑性変形による連結部(1)を実現することによって相互に固定されることを特徴とする、層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法。
【請求項2】
前記層状基本材料(51)の前記層(50)は、相互に少なくとも実質的に等しい厚さを有するか、少なくとも実質的に同じ材料組成を共有するか、またはその両方であることを特徴とする、請求項1記載の、層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法。
【請求項3】
前記層状基本材料(51)は、最大0.3mmの層厚を有する少なくとも3枚の前記層(50)を備え、かつ最大1.2mmの前記層状基本材料(51)の総厚を備えることを特徴とする、請求項1または2記載の、層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法。
【請求項4】
前記層状基本材料(51)の前記層(50)には、コーティング、特に電気的絶縁コーティングが設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の、層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法。
【請求項5】
1つまたは複数の前記連結部(1)はそれぞれ、前記層状基本材料(51)に少なくとも1つの凹み(2)を備えることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の、層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法。
【請求項6】
前記打抜き装置(90)の前記ブランクホルダ(70)には、前記金属部品(10;11)の切離し中に前記連結部(1)の前記少なくとも1つの凹み(2)内に挿入される少なくとも1つのピンが設けられていることを特徴とする、請求項5記載の、層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法。
【請求項7】
1つまたは複数の前記連結部(1)はそれぞれ、前記層状基本材料(51)の実質的に長方形の張出部(4)を備え、前記張出部(4)は、切り離された長辺(5)および曲げられた短辺(6)を有し、切断された前記長辺(5)間の幅は、幅方向での各々の前記連結部(1)の前記凹み(2)の寸法よりも大きいことを特徴とする、請求項5または6記載の、層状基本材料(51)から金属部品(10;11)を打ち抜くための方法。
【請求項8】
打抜き装置(90)であって、それぞれキャビティ(71;81)を画定するブランクホルダ(70)および打抜きダイ(80)が設けられており、前記キャビティ(71;81)は、該キャビティ(71;81)内に収容された打抜きパンチ(30)およびカウンタパンチ(40)を用いて打ち抜かれるべき金属部品(10;11)の周形状に対応した周形状を有し、一方では、前記ブランクホルダ(70)と前記打抜きダイ(80)とが、他方では、前記打抜きパンチ(30)と前記カウンタパンチ(40)とが、共に相互にかつ互いに相対的に移動可能である、打抜き装置(90)において、
前記打抜き装置(90)には、突起(102)を画定するプレスロックパンチ(101)と、凹部(104)を画定する対向配置されたアンビル(103)とがさらに設けられており、前記プレスロックパンチ(101)と前記アンビル(103)とは相互に移動可能であることを特徴とする、打抜き装置(90)。
【請求項9】
前記アンビル(103)に対して相対的な前記プレスロックパンチ(101)の移動は、前記打抜きパンチ(30)の移動または前記打抜きダイ(80)に対して相対的な前記ブランクホルダ(70)の移動に関連付けられていることを特徴とする、請求項8記載の打抜き装置(90)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属部品の打抜きのためのプロセス、特に多層精密打抜きプロセスに関する。精密打抜きプロセス自体は一般的に知られており、金属部品の製造、特にストリップまたはプレート形状の基本材料から金属部品を切り出すために広く適用されている。既知の精密打抜きプロセスでは、金属部品の少なくとも2次元輪郭は、対応する形状の打抜きパンチを基本材料に押し付けて貫通させることによって形作られ、この基本材料は、打抜き装置の打抜きダイとブランクホルダとの間にクランプされている。打抜きダイおよびそのブランクホルダは、打抜きパンチを収容するように形作られたそれぞれのキャビティを画定する。打抜きダイのキャビティの輪郭を画定する打抜きダイの縁部は、そのような基本材料が打抜きダイに対する打抜きパンチの移動によって徐々にキャビティに押し込まれると、基本材料に刻み込み、最終的には完全に切り通す。精密打抜きプロセスは、打抜きパンチに対向して位置するカウンタパンチがあり、このカウンタパンチで基本材料の打抜きパンチとは反対側を押すという点で、より従来式の打抜きプロセスと区別される。
【0002】
前者の既知の打抜きプロセスの生産速度を高めるために、当該技術分野では、層状基本材料を適用すること、すなわち、実際の打抜き、すなわち基本材料の切断に先立って基本材料の2枚以上の層を互いに積み重ねることが提案されている。この場合、単一の打抜きパンチを用いた1回の打抜きストロークで層状基本材料の層数に対応する複数の金属部品を形成することができる。特開昭57-156657号公報は、そのような多層打抜きプロセスの初期の例、特に、精密打抜きのカウンタパンチを含まない前記従来の変形例を教示している。この文献によれば、特に2枚の金属ストリップと、これらの間に挟まれた絶縁材料の第3のストリップとからなる3層のスタックが打抜き装置に供給され、続いて2つの相互に絶縁されたロータ部品がそのような層状基本材料から打抜きパンチによって同時に打ち抜かれる。さらに、特開昭57-156657号公報は、ストリップの長さ方向に垂直な方向に、層状基本材料の3つの層すべてを通って突出する突起を層状基本材料に設けることを教示している。これらの既知の突起は、層状基本材料が各打抜きストロークの間に打抜き装置内で断続的に前進するときに、層状基本材料の個々の層が互いに相対的にスライドするのを防ぐために設けられている。特に、そのような既知の突起はそれぞれ、層状ストリップの縁区域を下向きに曲げることによって形成され、この縁区域は、層状ストリップの側縁部への2つの比較的近接した切込みの間に画定される。
【0003】
多層打抜きプロセスは、そのような薄い厚さの基本材料を使用することによる、電気モータのステータ積層体またはロータ積層体用の個々の薄板などの比較的薄い厚さの金属部品の生産に特に関連する。特に、そのような層状基本材料を適用することにより、本質的に層状基本材料に適用される層の数に比例する、打抜きプロセスの生産速度を増加させることができる。多層打抜きの前記多層精密打抜きプロセスの変化形は、さらに薄い金属部品を取り扱うために、すなわち、従来の打抜きプロセスで可能であるものよりもさらに薄い基本材料の層を取り扱うために、最近、国際公開第2017/174215号で提案されている。
【0004】
本開示によれば、既知の層状基本材料は、多層精密打抜きプロセスにおけるその適用を考慮して改善することができる。特に、本開示によれば、層状基本材料の既知の突起は、従来の打抜きプロセスと同様に、精密打抜きプロセスではうまく機能しない可能性がある。
【0005】
本開示は、既知の突起が、積み重ねられた層、すなわち、層状基本材料のストリップのそれらの主面の平面内で連結を提供するが、該平面に垂直には連結を提供しないという洞察から逸脱し、かつそれに依存している。言い換えれば、既知の突起は、層状基本材料の個々の層が、その長さ方向および幅方向で互いにスライドするのを防ぐが、それらの高さ、すなわち厚さの方向で個々の層が分離するのは防がない。さらに、本開示は、精密打抜きプロセスの特定の特徴、すなわち、金属部品が打抜きパンチによって切断された後、層状基本材料および打抜きダイが、これら層状基本材料と打抜きダイとの間にギャップを作製するために離間移動させられ、このギャップを通して金属部品が、その後、精密打抜き装置から除去されることを考慮する。特に、打抜きダイに対する層状基本材料のそのような移動によって、層状基本材料は、もはやその高さ方向に支持されず、そして、例えば層状基本材料の前記断続的な前進によって、典型的には層状基本材料にその高さ方向で振動も発生する。結果として、層状基本材料の個々の層の相互整列は、結果として最適に維持されない可能性がある。
【0006】
本開示によれば、層状基本材料は、その長さ、幅、および高さ方向のすべてにおいて該層状基本材料の個々の層の間に連結部を作製するために局所的に塑性変形させられ、これは、そのような連結部を有する層状基本材料の区域が、打抜きダイとブランクホルダとの間または精密打抜き装置の打抜きパンチとカウンタパンチとの間で前進させられるのに先立って行われる。連結部は、基本材料から打ち抜かれるべき金属部品の仮想輪郭の外側に形成され、これには、これらの金属部品の機械的および/または電気的特性が、プレスロックに関連する前記塑性変形によって劣化しないという利点がある。また、この場合、電気的絶縁コーティングなど、層状基本材料の個々の層に設けられたコーティングは、金属部品の位置に無傷で保持される。本開示のこれらの後者の態様は、電気モータのステータ薄板およびロータ薄板に特に関連している。
【0007】
塑性変形によるそのような連結方法自体は、一般的に、2枚のシート金属層の3次元すべてにおける連結のためであることが知られており、以下、プレスロックと呼ばれることに留意されたい。当技術分野では、そのようなプレスロック方法および/またはその変化形は、クリンチングとも呼ばれる。その既知の用途で必要となるであろう過度の(塑性)変形のために、2枚を超えるシート金属層のプレスロックは実施されない。しかしながら、本開示によれば、多層精密打抜きの特定の状況において、プレスロックは、驚くべきことに、シート金属の3枚以上の層を接合および連結するためにも適切であることが見出され、それは、これらの層が0.2mm~1.2mmの範囲内の合計厚さを有し、かつそれらの個々の厚さが0.1mm~0.3mmの範囲内にあり、好ましくは0.2mmを超えない場合である。
【0008】
既知のプレスロック方法は、層状基本材料を挟んで反対側に配置されたプレスロックパンチおよびアンビルであり、それらの間の層状基本材料を本明細書で連結部と呼ばれるキー付き接続部に塑性変形させるために一緒にプレスされるプレスロックパンチおよびアンビルを必要とする。既知の多層精密打抜きプロセスと組み合わせて、既知のプレスロック方法は、アンビルに対するプレスロックパンチの移動が、打抜きダイに対するブランクホルダまたは打抜きパンチの移動、すなわち打抜き装置の開閉と有利に調和され得るという利点を有する。好ましくは、これらの相対移動は、相互に調和されるだけでなく、一緒に引き起こされる。言い換えれば、プレス接合は、多層精密打抜きプロセスに有利に統合することができ、したがって、本開示による新規の多層精密打抜きプロセスを実施することができる。
【0009】
さらに、本開示によれば、複数の同時に作動させられるプレスロックパンチおよびアンビルの対を使用することによって、複数の連結部が同時に作製される。これは、層状基本材料の個々の層の連結が、打抜きプロセスおよび/または打抜き装置の生産速度を損なうことなく、より安定しているという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下では、本開示による多層精密打抜きプロセスおよび装置を、例示的な実施形態により、図面を参照してさらに説明する。
図1】典型的な打抜き金属部品の概略平面図であり、該打抜き金属部品は、電気モータのロータ用の薄板のスタック用、すなわち積層体用の電磁鋼から作られた単一の薄板である。
図2A】金属部品を形成するための多層打抜き装置およびプロセスを例示する概略図である。
図2B】金属部品を形成するための多層打抜き装置およびプロセスを例示する概略図である。
図2C】金属部品を形成するための多層打抜き装置およびプロセスを例示する概略図である。
図2D】金属部品を形成するための多層打抜き装置およびプロセスを例示する概略図である。
図2E】金属部品を形成するための多層打抜き装置およびプロセスを例示する概略図である。
図2F】金属部品を形成するための多層打抜き装置およびプロセスを例示する概略図である。
図3】多層打抜きプロセスで使用される層状基本材料を概略的に描いた断面図であり、この層状基本材料には、その個々の層間に連結部が設けられている。
図4A】層状基本材料の個々の層を連結するための簡略化されたプレスロック装置およびプロセスを例示する概略図である。
図4B】層状基本材料の個々の層を連結するための簡略化されたプレスロック装置およびプロセスを例示する概略図である。
図5】層状基本材料の個々の層間の連結部の代替的な実施形態を概略的に描いた斜視図である。
図6】プレスロックのプロセスステップを含む、新規の多層打抜きプロセスの概略代表図である。
【0011】
図1は、打抜きプロセス、特に本明細書で論じられる多層打抜きプロセスを用いて適切に生産され得る金属部品10の例を提供する。この例では、金属部品10は、ロータ積層体用、すなわち電気モータのロータディスクのスタック用の個々のロータディスク11の形態をとる。この特定の例では、ロータディスク11には、一次孔または中央孔12、およびロータディスク11の周囲に沿って配置された複数の二次孔13が設けられている。ロータディスク11の外側輪郭、すなわち境界、ならびにロータディスク11の中央孔12および二次孔13の輪郭が形成され、すなわち、基本材料、特に電磁鋼から、同時に1回の切断で、すなわち打抜き装置90の単一のストロークで切り出されるか、または打抜きプロセスの別々のステージにおいて順次行われる複数の部分的な切断で切り出される。電気モータでは、ロータディスク11(のスタック)の中央孔12はロータシャフトを収容し、ロータディスク11(のスタック)の前記二次孔13は磁石を収容する。多くの場合、いわゆる渦電流損失を低減するために、ロータスタック内の個々のロータディスク11間に電気的絶縁層が設けられ、この電気的絶縁層は場合によっては、打抜き前のロータディスク11用の基本材料の少なくとも片面に適用される電気的絶縁コーティングの形態である。
【0012】
図1に例示されるロータディスク11の正確なサイズまたは正確な輪郭は、本開示の文脈内では関係がないことに留意されたい。むしろ、本開示は、異なる形状のロータディスク11だけでなく、電気モータのステータ積層体のステータリング構成要素(図示せず)にも適用可能であり、さらには以下に説明する多層精密打抜きプロセスで少なくとも部分的に形成される部品11である限り、一般的な金属部品10にも適用可能である。
【0013】
図2A~2Fは、ロータディスク11または一般的な金属部品10を生産するための多層打抜きプロセスを例示する概略図である。図2A~2Fはそれぞれ、2枚以上(ここでは4枚)の相互に積み重ねられた層、すなわち基本材料のストリップ50を備える層状基本材料51からそのような金属部品10を切り出すために使用される打抜き装置90の簡略化された断面を表す。打抜き装置90は、打抜きパンチ30、カウンタパンチ40、ブランクホルダ70、および打抜きダイ80を含む。ブランクホルダ70および打抜きダイ80はそれぞれ、それぞれのキャビティ71または81を画定し、キャビティ71には打抜きパンチ30が、キャビティ81にはカウンタパンチ40が収容され、これらのキャビティ71,81は、金属部品10(の輪郭)に対応するように形作られている。カウンタパンチ40を使用するこの特定のタイプの打抜きプロセス/打抜き装置90は、それ自体、すなわち精密打抜きとして知られている。
【0014】
図2Aでは、打抜き装置90が第1の開状態で示され、この状態では、打抜きパンチ30はブランクホルダ70内に完全に後退し、カウンタパンチ40は打抜きダイ80内に完全に後退し、ブランクホルダ70および打抜きダイ80は、破線矢印によって概略的に示されるように、層状基本材料51を挿入しかつ/または打抜き装置90に対して層状基本材料51の長さ方向に沿って前進させるのに少なくとも十分なように、互いに分離されられている。
【0015】
図2Bでは、ブランクホルダ70と打抜きダイ80とが互いに向かって移動させられて、ブランクホルダ70と打抜きダイ80との間に層状基本材料51がクランプされた後の打抜き装置90が示されている。
【0016】
図2Cでは、打抜きパンチ30とカウンタパンチ40とが互いに向かって移動させられて、打抜きパンチ30とカウンタパンチ40との間に層状基本材料51がクランプされた後の打抜き装置90が示されている。
【0017】
図2Dおよび2Eでは、打抜きダイ80に対する打抜きパンチ30およびカウンタパンチ40の組合せの強制的な相対運動によって、層状基本材料51の各ストリップ50からの金属部品10を切り出すステップが例示されている。特に、図2Dでは、そのような切出し中の打抜き装置90が示され、図2Eでは、金属部品10が完全に切り出された後、すなわち、層状基本材料51から切り離された後の打抜き装置90が示されているが、これらの金属部品10は、打抜きパンチ30とカウンタパンチ40との間に保持されたままである。
【0018】
図2Fでは、打抜き装置90は、第2の開状態で示され、この第2の開状態では、打抜きパンチ30は、ブランクホルダ70内に完全に後退し、カウンタパンチ40は、打ち抜かれた金属部品10を打抜きダイ80のキャビティ81から上向きに押し出した後、打抜きダイ80から突出し、これにより打抜き装置90からの金属部品10の取出しを可能にしている。そのような取出しの後、打抜き装置90は、図2Aなどに示されるその第1の開状態に戻る。
【0019】
図2Fに例示されるように、打抜き装置90の第2の開状態では、しかしながら実際にはその第1の開状態でも、層状基本材料51の個々のストリップ50は、それらの厚さ方向で、すなわち、層状基本材料51の高さ方向Hで互いに分離する傾向にある。その結果、個々のストリップ50の、これらの長さ方向および幅方向における相互整列が損なわれる可能性があり、あるいは少なくとも打抜き装置には、層状基本材料51が打抜きダイ80から持ち上げられかつ/または打抜きダイ80に対して前進させられる際に層状基本材料51を支持しかつガイドするための追加の手段(例示せず)が装備されなければならない。さらに、打抜き装置90の第2の開状態において、また図2Fに実線矢印によっても例示されるように、打ち抜かれた金属部品10は個別に取り出されるか、あるいは少なくとも個別の、すなわちバラ部品として取り出される。
【0020】
本開示によれば、前者の多層打抜きプロセスを改善することができる。特に、層状基本材料51の個々のストリップ50の同期および相互整列は、層状基本材料51が打抜き装置90の打抜きパンチ30とカウンタパンチ40との間に挿入される前に、ストリップ50の局所的な塑性変形によって、すなわち、いわゆるプレスロックによって、ストリップ50間に連結部1を作製することによって、これらのストリップ50をその長さ、幅、および厚さ方向のすべてにおいて(すなわち、3つの空間的/物理的次元すべてにおいて)、相互連結することによって有利に実現することができる。
【0021】
そのような連結部1の可能な実施形態は、層状基本材料51の拡大断面図で図3に概略的に例示されている。連結部1のこの例では、連結部1は本質的に、円対称である蟻継ぎ形状の接合部3として形作られ、その結果、連結部1は、3次元すべてにおいてストリップ50の相対移動を防ぐ。
【0022】
図4Aおよび4Bには、プレスロック方法の例、特に図3の連結部1を形成するためのプレスロック方法が概略的に例示されている。この特定のプレスロック方法の第1のステップ(図4Aに示されている)では、層状基本材料51が、突起102を有するプレスロックパンチ101と凹部104を画定するアンビル103との間に挿入される。プレスロック方法の第2のステップ(図4Bに示されている)では、プレスロックパンチ101の突起102が層状基本材料51に押し込まれ、それによって凹み2が層状基本材料51に形成され(図3を参照)、そして、基本材料51は、アンビル103の凹部104内に下向きに変位し、それによって突出する張出部4が層状基本材料51に形成されるだけでなく(図3を参照)、横方向にも変位し、それによって前記蟻継ぎ形状の接合部3が形成される。
【0023】
とりわけ、プレスロック方法の正確な実現は、本開示の文脈内では関係がないことに留意されたい。むしろ、本開示は、層状基本材料51の標的化された、すなわち局所的かつ制御された塑性変形によって、3次元すべてにおいて層状基本材料51の個々の層/ストリップ50の相互連結を実現するいかなるプレスロック方法にも関する。例えば、平面アンビルを利用するプレスロック方法も知られており、このプレスロック方法では、プレスロックパンチの周りにいくらかの半径方向クリアランスをもってリングが配置される。プレスロック方法のこの実現において、その前記第2のステップにおいて、基本材料51は、プレスロックパンチと前記リングとの間を横方向および上方に塑性的に流れ、プレスロックパンチとリングとの間に環状の張出部を形成する。また、プレスロック方法のさらなるプロセスステップにおいて、2つの平坦な表面間で層状基本材料51を張出部4の位置で圧縮することによって、連結部1の張出部4を除去することが知られている。さらに、連結部1は、円対称で形成される必要はなく、例えば、主に楕円形、正方形、または長方形の形状で形成されてもよい。特に、長方形の連結部1の場合、長方形の張出部4は、その長辺5を剪断しながら、その短辺6を曲げることによって形成される。図5では、そのような長方形の連結部1がその断面図で概略的に例示されている。連結部1のこの実現において、個々の層50;50-T,50-Bのそれらの厚さ方向における相対移動は、層状基本材料51の上層50-Tで張出部4の剪断された長辺5が層状基本材料51の下層50-Bの剪断された長辺5を捕捉することによってブロックされる。図5では、層状基本材料が2つの個別の層/ストリップ50-T,50-Bを有して例示されているが、例示された長方形の連結部1は、3枚以上の層/ストリップ50を接合するのに適している。
【0024】
好ましくは、上記のプレスロック方法は、多層精密打抜きプロセスの一部として、すなわち、多層精密打抜きプロセスのプロセスステージとして実行される。この場合、第1のプレスロックステップ(図4A)は、第1の多層精密打抜きステップ(図2A)と同期されるのに対し、第2のプレスロックステップ(図4B)は、好ましくは、層状基本材料51からの金属部品10の切出し(図2D)と同期する。プレスロックを含むそのような新規の多層打抜きプロセスは、図1に例示されるロータディスク11に関連して図6に概略的に例示されている。
【0025】
層状基本材料51の平面図で図6に例示されているように、すなわち層状基本材料51の高さ方向Hで下向きに見た場合、2つの連結部1(1a,1b)が、新規の多層打抜きプロセスのプレスロックステージで層状基本材料51に設けられる。一旦形成されると、連結部1は、層状基本材料51と共に、層状基本材料51の前記の断続的な前進によって、打抜きステージに移送される。この打抜きステージでは、金属部品10(図6ではロータディスク11として図示されている)は、層状基本材料51から、全体的に1回の完全な切断(例示せず)で、または金属部品10の(輪郭の)複雑さに応じて2回以上順次行われる部分的な切断で、切り出される。特に、図6に例示されるように、第1の部分的な切断では、ロータディスク11の中央孔12および二次孔13が形成され、その後、第2の部分的な切断では、ロータディスクの外周14が形成され、それにより、ロータディスク11は層状基本材料51から切り離され、層状基本材料51内に空間15が残される。これらの第1および第2の部分的な切断中、第1の部分的な切断と第2の部分的な切断との間、かつ第1および第2の部分的な切断後に、層状基本材料51の個々の層50は、有利には、連結部1によって一体として一緒に保持される。本開示によれば、連結部1は、金属部品10の外周14の外側に形成され、したがって、有利には、金属部品10は連結部1によって影響を受けないままである。
【0026】
本開示は、前述の説明の全体および添付図面のすべての詳細に加えて、添付の特許請求の範囲のすべての特徴にも関係しかつそれらを含む。特許請求の範囲における括弧付きの参照は、その範囲を限定するものではなく、各参照はそれぞれの特徴の拘束力のない例として提供されているに過ぎない。別々に特許請求された特徴は、場合によっては、特定の製品または特定のプロセスに別々に適用され得るが、そのような特徴の2つ以上の任意の組合せを同時に適用することも可能である。
【0027】
本開示によって表される1つまたは複数の発明は、本明細書で明示的に言及される実施形態および/または実施例に限定されるものではなく、特に関連技術の当業者が想到し得るそれらの直接的な改善、修正、および実際の適用をも包含する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】