(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】フリードライヒ運動失調症を患う患者における処置及び治療応答の予測
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220209BHJP
A61K 31/335 20060101ALI20220209BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20220209BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20220209BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220209BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220209BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220209BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220209BHJP
G01N 33/52 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/335
A61K31/19
A61K31/7076
A61P43/00 105
A61P25/28
A61P9/04
C12Q1/02
G01N33/52 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537092
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019087060
(87)【国際公開番号】W WO2020136233
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】515028470
【氏名又は名称】フォンダシオン・イマジネ
【氏名又は名称原語表記】FONDATION IMAGINE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ローティグ,アン・アニエス
(72)【発明者】
【氏名】ミュニ,アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】プティ,フロリアーヌ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
2G045BB20
2G045CA17
2G045CA20
2G045DB11
2G045GC10
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ89
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC541
4C084ZC542
4C086AA01
4C086AA02
4C086CA01
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4C086GA17
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4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA36
4C086ZB21
4C086ZC41
4C086ZC54
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA15
4C206ZA36
4C206ZB21
4C206ZC41
4C206ZC54
(57)【要約】
フリードライヒ運動失調症(FRDA)は、鉄硫黄複合体(ISC)構築に関与する、ミトコンドリアタンパク質であるフラタキシンをコードしている、FXN遺伝子内のGAA反復配列伸長によって引き起こされる。フラタキシン欠損症は、異常なISC含有タンパク質、すなわち、呼吸鎖複合体I~III及びアコニターゼをもたらし、患者の脳及び心臓における鉄の蓄積が起こる。ここで、本発明者らは、FRDA線維芽細胞が、鉄の取り込みを制限することができず、大量の細胞質内における鉄の蓄積を誘発し、ミトコンドリアにおいてはより低い程度で蓄積を誘発することを示す。本発明者らはまた、増加したトランスフェリン受容体(TfR1)定常状態レベル及び膜へのTfR1の蓄積を観察し、本発明者らはこれを、パルミトイル化による翻訳後修飾が損なわれていること、並びに、遅延したトランスフェリンの再循環に起因するとした。最後に、本発明者らは、アーテスネート、ジクロロ酢酸、及び補酵素AがTfR1のパルミトイル化を改善させ、よって、フリードライヒ運動失調症を有する患者の処置のための候補分子を代表することを示した。したがって、本発明は、フリードライヒ運動失調症(FRDA)を処置する方法、並びに、FRDAを患う患者が治療応答を達成するであろうかどうかを予測する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TfR1のパルミトイル化を増加させることのできる薬剤の治療有効量を患者に投与する工程を含む、それを必要とする患者におけるフリードライヒ運動失調症(FRDA)を処置する方法。
【請求項2】
前記薬物が、アーテスネート、ジクロロ酢酸、及び補酵素Aからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
i)ある量の鉄を含む培地中で培養された被験者から得られた末梢血単核細胞(PBMC)の細胞内総鉄含量を測定する工程、ii)工程i)で測定された鉄含量を、所定の基準値と比較する工程、及びiii)工程i)における含量測定値と所定の基準値との間の差が検出される場合、被験者は応答を達成するであろうか否かを結論付ける工程を含む、被験者が、TfR1のパルミトイル化を増加させることのできる薬物を用いて応答を達成するであろうかどうかを決定する方法。
【請求項4】
前記薬物が、アーテスネート、ジクロロ酢酸、及び補酵素Aからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
末梢血単核細胞が、総鉄含量を測定する前に0時間、8時間、16時間、24時間、32時間、40時間培養される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
所定の基準値が、処置前の患者から得られた末梢血単核細胞の総鉄含量である、請求項3記載の方法。
【請求項7】
総鉄含量が、前記の所定の基準値より低い場合(典型的には、0.5;1;2;3;4;5;6;7;8;9;又は10倍以上)、患者は、薬物を用いて応答を達成するであろうと結論付けられる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
所定の基準値が、処置前に患者から得られ、薬物の存在下で培養された末梢血単核細胞の総鉄含量である、請求項3記載の方法。
【請求項9】
総鉄含量が、所定の基準値より高い場合(典型的には、0.5;1;2;3;4;5;6;7;8;9;又は10倍以上)、患者は、薬物を用いて応答を達成しないであろうと結論付けられる、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、フリードライヒ運動失調症(FRDA)を処置する方法、並びに、FRDAを患う患者が治療応答を達成するであろうかどうかを予測する方法に関する。
【0002】
発明の背景:
フリードライヒ運動失調症(FRDA)は、進行的な歩行及び四肢の運動失調、脚の腱反射の消失、構音障害、並びに下肢の錐体路の衰弱によって特徴付けられる、頻繁に起こる常染色体劣性変性疾患(出生数50,000人あたり1人)である。肥大型心筋症は、大半のフリードライヒ運動失調症患者に観察される。該疾患を引き起こす遺伝子であるFXNは、210アミノ酸のミトコンドリアタンパク質であるフラタキシンをコードしている。FRDAは主に、突然変異対立遺伝子の98%を占める、フラタキシン遺伝子の第一イントロン内のGAA反復配列伸長によって引き起こされ、その結果、フラタキシン定常状態レベルは低下する。フラタキシンは、鉄硫黄複合体(ISC)構築の第一工程に関与し、ここでは[2Fe-2S]クラスターがIsu1足場タンパク質上に構築される。この第一の工程には、硫黄の還元を可能とする、フェレドキシン還元酵素を含む、他の5つのタンパク質が関与している。しかし、フラタキシン欠損症の結果は、依然として不完全にしか解明されていない。実際に、ミトコンドリア呼吸鎖の欠損が、損なわれた複合体I~IIIの鉄硫黄複合体の構築の原因とされているが(Rotig et al., 1997)、多くの他の特色、すなわち、活性酸素種(ROS)の増加を伴う細胞質を犠牲にしたミトコンドリア内の鉄蓄積(Vaubel and Isaya, 2013)、細胞内鉄代謝の調節不全(Martelli and Puccio, 2014)、SIRT3阻害によって媒介されるミトコンドリアタンパク質の過剰アセチル化(Wagner et al., 2012)、及び増加したスフィンゴ脂質合成(Chen et al., 2016a)は依然として説明されていない。近年、パルミトイル化によるトランスフェリン受容体(TfR1)の調節の新規な機序、及び大脳基底核における鉄蓄積に起因する不均一な容態である、脳の鉄蓄積を伴う神経変性疾患(NBIA)におけるその変化が報告された(Drecourt et al., 2018)。しかしながら、FRDAにおける類似の機序の存在はこれまで調査されてこなかった。
【0003】
発明の概要:
特許請求の範囲によって定義されるように、本発明は、フリードライヒ運動失調症(FRDA)を処置する方法、並びに、FRDAを患う患者が治療応答を達成するであろうかどうかを予測する方法に関する。
【0004】
発明の詳細な説明:
フリードライヒ運動失調症(FRDA)は、鉄硫黄複合体(ISC)構築に関与する、ミトコンドリアタンパク質であるフラタキシンをコードしている、FXN遺伝子内のGAA反復配列伸長によって引き起こされる。フラタキシン欠損症は、異常なISC含有タンパク質、すなわち、呼吸鎖複合体I~III及びアコニターゼをもたらし、患者の脳及び心臓における鉄の蓄積が起こる。ここで、本発明者らは、FRDAの線維芽細胞が、鉄の取り込みを制限することができず、大量の細胞質内における鉄の蓄積を誘発し、ミトコンドリアにおいてはより低い程度で蓄積を誘発することを示す。本発明者らはまた、増加したトランスフェリン受容体(TfR1)定常状態レベル及び膜へのTfR1の蓄積を観察し、本発明者らはこれを、パルミトイル化による翻訳後修飾が損なわれていること、並びに、遅延したトランスフェリンの再循環に起因するとした。最後に、本発明者らは、アーテスネート、ジクロロ酢酸、及び補酵素AがTfR1のパルミトイル化を改善させ、よって、フリードライヒ運動失調症を有する患者の処置のための候補分子を代表することを示した。
【0005】
処置法:
したがって、本発明の第一の目的は、TfR1のパルミトイル化を増加させることのできる薬剤の治療有効量を患者に投与する工程を含む、それを必要とする患者における、フリードライヒ運動失調症(FRDA)を処置する方法に関する。
【0006】
本明細書において使用する「フリードライヒ運動失調症」すなわち「FRDA」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、進行的な歩行及び四肢の運動失調、脚の腱反射の消失、構音障害、並びに下肢の錐体路の衰弱によって特徴付けられる、頻繁に起こる常染色体劣性変性疾患(出生数50,000人あたり1人)を指す。肥大型心筋症は、大半のフリードライヒ運動失調症患者に観察される。該疾患を引き起こす遺伝子であるFXNは、210アミノ酸のミトコンドリアタンパク質であるフラタキシンをコードしている。FRDAは主に、突然変異対立遺伝子の98%を占める、フラタキシン遺伝子の第一イントロン内のGAA反復配列伸長によって引き起こされ、その結果、フラタキシン定常状態レベルは低下する。
【0007】
本明細書において使用する「処置」又は「処置する」という用語は、予防的又は防止的処置、並びに、治癒的な処置又は疾患修飾的な処置(疾患を罹患するリスクのある又は疾患を罹患したと疑われる患者の処置、並びに、病気であるか又は疾患若しくは医学的容態に罹患していると診断されている患者の処置を含む)の両方を指し、臨床的再発の抑制も含む。処置は、医学的障害を有しているか又は最終的に障害に罹患する可能性がある被験者に、障害若しくは再発している障害の発症を予防、治癒、遅延するために、その重症度を低減するために、又はその1つ以上の症状を寛解するために、あるいは、このような処置を行なわない場合に予想される生存期間を超えるように被験者の生存期間を延長するために投与され得る。「治療処方計画」によって、病気の処置パターン、例えば、治療中に使用される投薬パターンを意味する。治療処方計画は、誘導処方計画及び維持処方計画を含み得る。「誘導処方計画」又は「誘導期間」という語句は、疾患の初期処置のために使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。誘導処方計画の一般的目標は、処置処方計画の初期期間中に患者に高いレベルの薬物を提供することである。誘導処方計画は(部分的に又は全体的に)「負荷処方計画」を使用し得、これは医師が維持処方計画中に使用するであろうよりも多くの用量の薬物を投与すること、医師が維持処方計画中に投与するであろうよりも頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含み得る。「維持処方計画」又は「維持期間」という語句は、例えば、長期間(数か月又は数年間)にわたり患者を寛解状態に保つために、病気の処置中に患者の維持のために使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。維持処方計画は、連続的療法(例えば、規則的な間隔で、例えば週1回、月1回、年1回などに薬物を投与する)又は断続的療法(例えば、間断的処置、断続的処置、再発時における処置、又は特定の所定の基準[例えば疾患の顕現など]に到達した場合の処置)を使用し得る。
【0008】
いくつかの実施態様では、前記薬物は、アーテスネート、ジクロロ酢酸、及び補酵素Aからなる群より選択される。
【0009】
いくつかの実施態様では、前記薬物は、アーテスネートである。本明細書において使用する「アーテスネート」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有し、(3R,5aS,6R,8aS,9R,10S,12R,12aR)-デカヒドロ-3,6,9-トリメチル-3,12-エポキシ-12H-ピラノ[4,3-j]-1,2-ベンゾジオキセピン-10-オール、コハク酸水素を指す。該用語は、アーテスネートの個々のいずれかのエナンチオマーを包含する。特に、該用語は、たった1つのエナンチオマー、又はエナンチオマーのラセミ混合物若しくは非ラセミ混合物を指し得る。該用語はまた、アーテスネートの多形及び水和物も含む。該用語はまた、アーテスネートの塩及びエステルも含む。該用語はまた、アーテスネートのプロドラッグ、並びに該プロドラッグのエナンチオマー、ラセミ混合物、非ラセミ混合物、多形、水和物、塩、及びエステルも含む。
【0010】
本明細書において使用する「ジクロロ酢酸」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、式CHCl2COOHで示される化合物として言及される。該用語はまた、ジクロロエタノール酸、ビクロロ酢酸、DCA、BCA、すなわちジクロロ酢酸、ビクロロ酢酸としても知られている。
【0011】
本明細書において使用する「補酵素A」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、脂肪酸の合成及び酸化、並びにクエン酸回路におけるピルビン酸の酸化におけるその役割について特に知られている、補酵素を指す。IUPAC名は、[[2R,3S,4R,5R]-5-(6-アミノプリン-9-イル)-4-ヒドロキシ-3-ホスホノオキシオキソラン-2-イル]メトキシ-ヒドロキシホスホリル][(3R)-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-4-オキソ-4-[[3-オキソ-3-(2-スルファニルエチルアミノ)プロピル]アミノ]ブチル]リン酸水素である。
【0012】
上記のような薬物の「治療有効量」によって、治療効果をもたらすに十分な量を意味する。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の1日総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医師によって決定されるだろうことが理解されるだろう。任意の特定の被験者に対する具体的な治療有効投与量レベルは、処置される障害及び障害の重度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成、被験者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食事;使用される具体的な化合物の投与時刻、投与経路、及び排泄速度;処置期間;使用される具体的なポリペプチドと組み合わせて又は同時に使用される薬物;並びに、医学分野において周知である同様な要因をはじめとする、様々な要因に依存するだろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで次第に用量を増加させることは十分に当分野の技能範囲内である。しかしながら、製品の1日量は、1日あたり成人1人あたり0.01mg~1,000mgまでの幅広い範囲にわたって変動し得る。典型的には、該組成物は、処置される被験者への症候による用量の調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgの活性成分を含有している。医薬品は典型的には、約0.01mg~約500mgの活性成分、好ましくは1mg~約100mgの活性成分を含有している。有効量の薬物は、通常、1日あたり体重1kgあたり0.0002mg/kg~約20mg/kg、特に1日あたり体重1kgあたり約0.001mg/kg~7mg/kgの用量レベルで供給される。
【0013】
本発明によると、前記薬物は、医薬組成物の形で被験者に投与される。典型的には、該薬物は、薬学的に許容される賦形剤、及び場合により持続放出マトリックス、例えば生分解性ポリマーと組み合わせて、治療用組成物を形成し得る。「薬学的に」又は「薬学的に許容される」は、哺乳動物、特にヒトに適宜投与された場合に、有害反応、アレルギー反応、又は他の都合の悪い反応を生じない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、無毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料、又は任意のタイプの製剤化補助剤を指す。経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、又は直腸投与用の本発明の医薬組成物において、活性成分は単独で又は別の活性成分と組み合わせて、単位投与剤形で、慣用的な薬学的支持体との混合物として、動物及びヒトに投与することができる。適切な単位投与剤形は、経口経路剤形、例えば錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤、及び経口用懸濁剤又は液剤、舌下及び頬側投与剤形、エアゾール、埋込剤、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、経皮、くも膜下腔内、及び鼻腔内投与剤形、並びに直腸投与剤形を含む。典型的には、医薬組成物は、注射され得る製剤にとって薬学的に許容されるビヒクルを含有している。これらは、特に、等張で無菌の食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)、又は場合に応じて滅菌水若しくは生理食塩水を添加すると注射液の復元を可能とする乾燥させた、特に凍結乾燥させた組成物であり得る。注射用途に適した医薬剤形としては、無菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び、無菌注射液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、シリンジが容易に扱える程度に流動性でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から防腐されていなければならない。本発明の化合物を遊離塩基又は薬理学的に許容される塩として含む溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中において調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物中において並びに油中において調製され得る。通常の保存及び使用の条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有している。該薬物は、中性形又は塩の形の組成物へと製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられ、これは無機酸、例えば塩酸若しくはリン酸、又はこのような有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などを用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はカルシウム、及びこのような有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどから誘導され得る。担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含有している溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防御は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましいだろう。注射用組成物の吸収延長は、該組成物中に吸収を遅延させる物質、例えばゼラチンを使用することによってもたらされ得る。無菌注射液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要であれば上記に列挙された他のいくつかの成分と共に取り込み、その後、滅菌ろ過することによって調製される。一般的に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基本分散媒体と上記に列挙された成分の中からの必要とされる他の成分とを含有している無菌ビヒクルに取り込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、典型的な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより、以前に滅菌ろ過されたその溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。直接的な注射のためのより濃縮された、又は高度に濃縮された液剤の調製も考えられ、ここでは極めて迅速に浸透し、高濃度の活性薬剤が送達される、溶媒としてのDMSOの使用が想定される。製剤化時に、該液剤は、投与製剤と適合性の様式で、かつ治療的に有効な量で投与されるだろう。該製剤は、様々な剤形で、例えば上記のタイプの注射液で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。水性液剤での非経口投与のために、例えば、液剤は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤は、まず、十分な食塩水又はブドウ糖を用いて等張とすべきである。これらの特定の水性液剤は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与のために特に適している。これに関連して、使用され得る無菌水性媒体は、本開示に鑑みて当業者には公知であろう。用量の幾分の変更が、処置される被験者の容態に依存して必然的に行なわれるだろう。投与責任者は、いずれの事象においても、個々の被験者に対する適切な用量を決定するだろう。
【0014】
治療応答を予測するための方法:
本発明のさらなる目的は、i)ある量の鉄を含む培地中で培養された被験者から得られた末梢血単核細胞(PBMC)の細胞内総鉄含量を測定する工程、ii)工程i)で測定された鉄含量を、所定の基準値と比較する工程、及びiii)工程i)における含量測定値と所定の基準値との間の差が検出される場合、被験者は応答を達成するであろうか否かを結論付ける工程を含む、被験者が、TfR1のパルミトイル化を増加させることのできる薬物を用いて応答を達成するであろうかどうかを決定する方法に関する。
【0015】
したがって、前記方法は、非応答者から応答者を識別するのに特に適している。本明細書において使用する本開示の脈絡における「応答者」という用語は、応答を達成するであろう患者を指す。例えば、歩行及び/又は四肢の運動失調の低減、脚の腱反射の改善、構音障害及び/又は下肢の錐体路の衰弱の低減、並びに、心機能の改善は、患者が応答を達成する特徴を示す。典型的には、応答者又は非応答者としての患者の特徴付けは、標準又はトレーニングセットと参照することによって行なわれ得る。標準は、応答者若しくは非応答者であることが知られている患者のプロファイルであり得るか、又は代替的には、数値であり得る。このような所定の標準は、印刷されたリスト若しくは図、コンピューターソフトウェアプログラム、又は他の媒体などの任意の適切な形態で提供され得る。患者が非応答者であると結論付けられる場合、医師は、任意のさらなる有害な副作用を回避するために治療を中止する決断をすることができる。
【0016】
本発明の方法は、細胞の総鉄含量の減少に関する、患者のより早期の応答を検出するのに特に適している。それ故、総鉄含量の測定は、処置による成功(すなわち応答)の確率を評価する代理マーカーを示す。したがって、本発明の方法は、一旦患者が薬物で処置されると(例えば、処置の1、2、3、4、又は5サイクル後に)行なわれる。
【0017】
いくつかの実施態様では、前記薬物は、アーテスネート、ジクロロ酢酸、及び補酵素Aからなる群より選択される。
【0018】
本明細書において使用する「PBMC」又は「末梢血単核細胞」又は本明細書において使用する「未分画PBMC」という用語は、完全PBMC、すなわち、所与の亜集団について濃縮されていない丸い核を有する白血球集団を指す。臍帯血単核細胞はさらにこの定義に含まれる。典型的には、本発明によるPBMC試料は、接着PBMC(実質的に90%を超える単球からなる)又は非接着PBMC(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、及び樹状前駆細胞を含有している)のみを含有するような選択工程にかけられていない。それ故、本発明によるPBMC試料は、リンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞、NK T細胞)、単球、及びその前駆細胞を含有している。典型的には、これらの細胞は、血液層を分離する、親水性多糖であるフィコールを使用して全血から抽出することができ、PBMCは、血漿層の下にセルリングを形成している。さらに、PBMCは、優先的に赤血球を溶解するであろう、低浸透圧溶解緩衝液を使用して全血から抽出することができる。
【0019】
PBMCの増殖、生存、及び分化に適した任意の培養培地を使用し得る。典型的には、それは、栄養分(炭素源、アミノ酸源)、pH緩衝液及び塩を含有している基礎培地からなり、これに、ヒト又は他の起源の血清及び/又は増殖因子及び/又は抗生物質が補充されてもよい。典型的には、基礎培地は、RPMI 1640、DMEM、IMDM、X-VIVO、又はAIM-V培地であり得、それらは全て、市販されている標準培地である。
【0020】
典型的には、培養培地中の鉄源は、クエン酸鉄アンモニウム(FAC)によってもたらされる。FACは、内在する輸送体又はエンドサイトーシス経路を介して、適時、細胞内に浸透する、可溶形の非トランスフェリン結合鉄(NTBI)である。
【0021】
いくつかの実施態様では、総鉄含量は、当技術分野において公知である任意の方法によって測定される。典型的には、総鉄含量は、(Barbeito et al., Mol Neurodegener. 2010 Nov 10;5:50)から変更されたフェロジンに基づいた鉄アッセイを使用して測定される。
【0022】
典型的には、PMBCは、総鉄含量を測定する前に1;2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;26;27;28;29;30;31;32;33;34;35;36;37;38;39;40;41;42;43;44;45;46;47;48;49;又は50時間培養し、特に、PMBCは、総鉄含量を測定する前に0、8、16、24、32、40時間培養する。
【0023】
いくつかの実施態様では、所定の基準値は閾値である。試験の関数及びベネフィット/リスクのバランス(偽陽性及び偽陰性の臨床結果)に従って、最適な感度及び特異度を得るように、閾値は決定されなければならない。典型的には、最適な感度及び特異度(及びまた閾値)は、実験データに基づいた受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic)(ROC)曲線を使用して決定され得る。例えば、リファレンス群における総鉄含量を決定した後、試験される予定の試料において測定されたレベルの免疫マーカーの統計学的処理のためのアルゴリズム分析を使用し、これにより、試料の分類について有意性を有する分類標準物質を得ることができる。ROC曲線の正式名は、受信者動作特性(receiver operator characteristic)曲線であり、これは、受信者操作特性(receiver operation characteristic)曲線としても知られている。それは主に、生化学的臨床診断試験のために使用される。ROC曲線は、真の陽性率(感度)及び偽の陽性率(1-特異度)の連続変数を反映する総合的な指標である。ROC曲線は、画像合成法を用いて感度と特異度の間の関係を明らかとする。一連の様々なカットオフ値(閾値又は臨界値、すなわち、診断試験の正常な結果と異常な結果との間の境界値)が、一連の感度及び特異度の数値を計算するための連続変数として設定される。次いで、曲線を描くために、感度は縦軸座標として使用され、特異度は横軸座標として使用される。曲線下面積(AUC)が高くなればなるほど、診断の正確度は高くなる。ROC曲線上では、座標図の左上端に最も近い点は、高い感度と高い特異度の数値の両方を有する臨界点である。ROC曲線のAUC値は、1.0~0.5である。AUCが0.5を上回る場合、AUCが1に近づくほど、診断結果はより良好となる。AUCが0.5~0.7である場合、正確度は低い。AUCが0.7~0.9である場合、正確度は中程度である。AUCが0.9より高い場合、正確度は極めて高い。このアルゴリズム法は、好ましくはコンピューターを用いて実施される。当技術分野における既存のソフトウェア又はシステムをROC曲線の描写のために使用し得る:例えば、MedCalc9.2.0.1医学統計ソフトウェア、SPSS9.0、ROCPOWER.SAS、DESIGNROC.FOR、MULTIREADER POWER.SAS、CREATE-ROC.SAS、GB STAT VI0.0(ダイナミック・マイクロシステムズ社、シルバースプリング、メリーランド州、米国)など。
【0024】
いくつかの実施態様では、所定の基準値は、処置前に患者から得られたPBMCの総鉄含量である。該実施態様では、総鉄含量が、前記の所定の基準値より低い場合(典型的には、0.5;1;2;3;4;5;6;7;8;9;又は10倍以上)、患者は、薬物を用いた応答を達成するであろうと結論付けられる。逆に、総鉄含量が、所定の基準値とほぼ同じである場合(又はそれより高い場合)、患者は、薬物を用いた応答を達成しないであろうと結論付けられる。
【0025】
いくつかの実施態様では、所定の基準値は、処置前に患者から得られ、薬物の存在下で培養された、PBMCの総鉄含量である。該実施態様では、総鉄含量が、所定の基準値より高い場合(典型的には、0.5;1;2;3;4;5;6;7;8;9;又は10倍以上)、患者は薬物を用いた応答を達成しないであろうと結論付けられる。逆に、総鉄含量が、所定の基準値とほぼ同じである場合(又はそれより低い場合)、患者は、薬物を用いた応答を達成するであろうと結論付けられる。
【0026】
本発明は、以下の図面及び実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いずれにしても、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】FRDA線維芽細胞の特徴付け。A.GAA反復配列伸長を有する5人の患者(P1~5)及び対照(C1~3)の線維芽細胞における、フラタキシン、並びに鉄恒常性及び抗酸化剤による防御に関与するタンパク質のウェスタンブロット分析。フラタキシン、フェリチン、IRP1(鉄調節タンパク質1)、IRP2、SOD1、及びFBXL5は還元条件で試験され、TfR1、SOD2及びフェレドキシン還元酵素(FDXR)は非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。B.通常培地(+ウシ胎児血清(FBS)、-クエン酸鉄アンモニウム(FAC))又は高い鉄培地(-FBS、+100μMのFAC)中の、対照(C1~3)及びFRDAの線維芽細胞(P1~5)における、MitoSOXを使用したフローサイトメトリーによる、ミトコンドリア活性酸素種(ROS)の測定。データは、対照及び患者におけるMitoSox陽性細胞の比率を示す。C.通常の培地(+FBS、-FAC)中で増殖させた対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の完全線維芽細胞又はミトコンドリア抽出物(D)における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。E.細胞内総鉄含量に対する、ミトコンドリア内鉄含量の比率。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値をB、C、D、及びEの対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。
【
図1B】FRDA線維芽細胞の特徴付け。A.GAA反復配列伸長を有する5人の患者(P1~5)及び対照(C1~3)の線維芽細胞における、フラタキシン、並びに鉄恒常性及び抗酸化剤による防御に関与するタンパク質のウェスタンブロット分析。フラタキシン、フェリチン、IRP1(鉄調節タンパク質1)、IRP2、SOD1、及びFBXL5は還元条件で試験され、TfR1、SOD2及びフェレドキシン還元酵素(FDXR)は非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。B.通常培地(+ウシ胎児血清(FBS)、-クエン酸鉄アンモニウム(FAC))又は高い鉄培地(-FBS、+100μMのFAC)中の、対照(C1~3)及びFRDAの線維芽細胞(P1~5)における、MitoSOXを使用したフローサイトメトリーによる、ミトコンドリア活性酸素種(ROS)の測定。データは、対照及び患者におけるMitoSox陽性細胞の比率を示す。C.通常の培地(+FBS、-FAC)中で増殖させた対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の完全線維芽細胞又はミトコンドリア抽出物(D)における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。E.細胞内総鉄含量に対する、ミトコンドリア内鉄含量の比率。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値をB、C、D、及びEの対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。
【
図1C】FRDA線維芽細胞の特徴付け。A.GAA反復配列伸長を有する5人の患者(P1~5)及び対照(C1~3)の線維芽細胞における、フラタキシン、並びに鉄恒常性及び抗酸化剤による防御に関与するタンパク質のウェスタンブロット分析。フラタキシン、フェリチン、IRP1(鉄調節タンパク質1)、IRP2、SOD1、及びFBXL5は還元条件で試験され、TfR1、SOD2及びフェレドキシン還元酵素(FDXR)は非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。B.通常培地(+ウシ胎児血清(FBS)、-クエン酸鉄アンモニウム(FAC))又は高い鉄培地(-FBS、+100μMのFAC)中の、対照(C1~3)及びFRDAの線維芽細胞(P1~5)における、MitoSOXを使用したフローサイトメトリーによる、ミトコンドリア活性酸素種(ROS)の測定。データは、対照及び患者におけるMitoSox陽性細胞の比率を示す。C.通常の培地(+FBS、-FAC)中で増殖させた対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の完全線維芽細胞又はミトコンドリア抽出物(D)における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。E.細胞内総鉄含量に対する、ミトコンドリア内鉄含量の比率。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値をB、C、D、及びEの対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。
【
図1D】FRDA線維芽細胞の特徴付け。A.GAA反復配列伸長を有する5人の患者(P1~5)及び対照(C1~3)の線維芽細胞における、フラタキシン、並びに鉄恒常性及び抗酸化剤による防御に関与するタンパク質のウェスタンブロット分析。フラタキシン、フェリチン、IRP1(鉄調節タンパク質1)、IRP2、SOD1、及びFBXL5は還元条件で試験され、TfR1、SOD2及びフェレドキシン還元酵素(FDXR)は非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。B.通常培地(+ウシ胎児血清(FBS)、-クエン酸鉄アンモニウム(FAC))又は高い鉄培地(-FBS、+100μMのFAC)中の、対照(C1~3)及びFRDAの線維芽細胞(P1~5)における、MitoSOXを使用したフローサイトメトリーによる、ミトコンドリア活性酸素種(ROS)の測定。データは、対照及び患者におけるMitoSox陽性細胞の比率を示す。C.通常の培地(+FBS、-FAC)中で増殖させた対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の完全線維芽細胞又はミトコンドリア抽出物(D)における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。E.細胞内総鉄含量に対する、ミトコンドリア内鉄含量の比率。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値をB、C、D、及びEの対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。
【
図1E】FRDA線維芽細胞の特徴付け。A.GAA反復配列伸長を有する5人の患者(P1~5)及び対照(C1~3)の線維芽細胞における、フラタキシン、並びに鉄恒常性及び抗酸化剤による防御に関与するタンパク質のウェスタンブロット分析。フラタキシン、フェリチン、IRP1(鉄調節タンパク質1)、IRP2、SOD1、及びFBXL5は還元条件で試験され、TfR1、SOD2及びフェレドキシン還元酵素(FDXR)は非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。B.通常培地(+ウシ胎児血清(FBS)、-クエン酸鉄アンモニウム(FAC))又は高い鉄培地(-FBS、+100μMのFAC)中の、対照(C1~3)及びFRDAの線維芽細胞(P1~5)における、MitoSOXを使用したフローサイトメトリーによる、ミトコンドリア活性酸素種(ROS)の測定。データは、対照及び患者におけるMitoSox陽性細胞の比率を示す。C.通常の培地(+FBS、-FAC)中で増殖させた対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の完全線維芽細胞又はミトコンドリア抽出物(D)における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。E.細胞内総鉄含量に対する、ミトコンドリア内鉄含量の比率。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値をB、C、D、及びEの対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。
【
図2A】FRDA線維芽細胞における鉄恒常性の調節。ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照及びFRDA線維芽細胞の鉄恒常性の転写後調節。TfR1(TFRC、A)及びフェリチン(FTH、B)のmRNAを、ddPCRによって定量し、GUSBmRNAに対する比として表現した。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。試料と対照との間の有意なばらつきは、ホルム・サイダック法を用いた多重比較のための2次元分散分析を使用して全く推定されなかった。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。C.ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。対応のないt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
**及び
***は、それぞれ、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。ns:有意でなない。D.鉄恒常性に関与するタンパク質の定常状態レベル。TfR1、SOD2及びFBXL5は、ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)において、非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験され;フェリチン及びSOD2は、還元条件で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。
【
図2B】FRDA線維芽細胞における鉄恒常性の調節。ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照及びFRDA線維芽細胞の鉄恒常性の転写後調節。TfR1(TFRC、A)及びフェリチン(FTH、B)のmRNAを、ddPCRによって定量し、GUSBmRNAに対する比として表現した。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。試料と対照との間の有意なばらつきは、ホルム・サイダック法を用いた多重比較のための2次元分散分析を使用して全く推定されなかった。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。C.ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。対応のないt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
**及び
***は、それぞれ、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。ns:有意でなない。D.鉄恒常性に関与するタンパク質の定常状態レベル。TfR1、SOD2及びFBXL5は、ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)において、非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験され;フェリチン及びSOD2は、還元条件で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。
【
図2C】FRDA線維芽細胞における鉄恒常性の調節。ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照及びFRDA線維芽細胞の鉄恒常性の転写後調節。TfR1(TFRC、A)及びフェリチン(FTH、B)のmRNAを、ddPCRによって定量し、GUSBmRNAに対する比として表現した。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。試料と対照との間の有意なばらつきは、ホルム・サイダック法を用いた多重比較のための2次元分散分析を使用して全く推定されなかった。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。C.ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。対応のないt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
**及び
***は、それぞれ、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。ns:有意でなない。D.鉄恒常性に関与するタンパク質の定常状態レベル。TfR1、SOD2及びFBXL5は、ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)において、非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験され;フェリチン及びSOD2は、還元条件で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。
【
図2D】FRDA線維芽細胞における鉄恒常性の調節。ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照及びFRDA線維芽細胞の鉄恒常性の転写後調節。TfR1(TFRC、A)及びフェリチン(FTH、B)のmRNAを、ddPCRによって定量し、GUSBmRNAに対する比として表現した。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。試料と対照との間の有意なばらつきは、ホルム・サイダック法を用いた多重比較のための2次元分散分析を使用して全く推定されなかった。対応のないサンプルのt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。C.ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。対応のないt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
**及び
***は、それぞれ、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。ns:有意でなない。D.鉄恒常性に関与するタンパク質の定常状態レベル。TfR1、SOD2及びFBXL5は、ウシ胎児血清非含有のDMEM培地中で低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)で増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)において、非還元条件(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)で試験され;フェリチン及びSOD2は、還元条件で試験された。GAPDHは、ローディング対照として使用された。
【
図3A】FRDA線維芽細胞におけるTfR1の蓄積、及び不完全なTfの再循環。A.対照の線維芽細胞(C1は3つの対照の代表である)及びFRDAの線維芽細胞(P1~5)における、TfR1標識の例。細胞分析は、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。尺度バー、10μm。B.IDEASソフトウェア(アムニス社)を使用した少なくとも20,000個の線維芽細胞上の膜に結合したTfR1シグナルの定量。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。スチューデントt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
**及び
***は、それぞれ、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。C.Tf-RED初期染色に対する比率としての、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞において40分間追跡した、Tf-REDシグナルの相対平均蛍光強度。分析された細胞数は、3回の独立した実験において20を超える。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。ホルム・サイダック多重比較検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
***は<0.001のp値に相当する。
【
図3B】FRDA線維芽細胞におけるTfR1の蓄積、及び不完全なTfの再循環。A.対照の線維芽細胞(C1は3つの対照の代表である)及びFRDAの線維芽細胞(P1~5)における、TfR1標識の例。細胞分析は、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。尺度バー、10μm。B.IDEASソフトウェア(アムニス社)を使用した少なくとも20,000個の線維芽細胞上の膜に結合したTfR1シグナルの定量。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。スチューデントt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
**及び
***は、それぞれ、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。C.Tf-RED初期染色に対する比率としての、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞において40分間追跡した、Tf-REDシグナルの相対平均蛍光強度。分析された細胞数は、3回の独立した実験において20を超える。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。ホルム・サイダック多重比較検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
***は<0.001のp値に相当する。
【
図3C】FRDA線維芽細胞におけるTfR1の蓄積、及び不完全なTfの再循環。A.対照の線維芽細胞(C1は3つの対照の代表である)及びFRDAの線維芽細胞(P1~5)における、TfR1標識の例。細胞分析は、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。尺度バー、10μm。B.IDEASソフトウェア(アムニス社)を使用した少なくとも20,000個の線維芽細胞上の膜に結合したTfR1シグナルの定量。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。スチューデントt検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
**及び
***は、それぞれ、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。C.Tf-RED初期染色に対する比率としての、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞において40分間追跡した、Tf-REDシグナルの相対平均蛍光強度。分析された細胞数は、3回の独立した実験において20を超える。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。ホルム・サイダック多重比較検定を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
***は<0.001のp値に相当する。
【
図4A】FRDA線維芽細胞におけるTfR1のパルミトイル化。A.対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞を、DMSOのみ(左上パネル)又は25μMのCoAを用いて72時間(右上パネル)、5mMのジクロロ酢酸(DCA)を用いて72時間(左下パネル)、25μMのアーテスネートを用いて48時間(右下パネル)処置し、TfR1タンパク質を、マウス抗TfR1抗体を用いて免疫沈降させて、パルミトイル化アッセイを行なった。各条件において、上パネルは、パルミトイル化TfR1レベル(IB:ビオチン)及び免疫沈降した量のTfR1(IB:TfR1)を示す。投入TfR1は、各条件のためのローディング対照として使用される。IP:免疫沈降、IB:イムノブロット。B.25μMのCoAの存在下又は非存在下において、通常のDMEM培地中で72時間増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた多重比較のための2元分散分析を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
***は<0.001のp値に相当する。ns:有意ではない。C.未処置(-DCA)又は5mMのDCAを用いて72時間処置された(+DCA)、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞のミトコンドリアにおける、PDH-E2、リポイル化PDH-E2(PDH-E2-LA)、及びリポイル化α-KGDH(α-KGDH-LA)の定常状態レベル。線維芽細胞のミトコンドリアを、リポ酸に対する抗体(PDH-E2及びα-KGDHに結合するリポ酸を検出する)を用いてのイムノブロットによって分析した。ポリンは、ローディング対照として使用された。
【
図4B】FRDA線維芽細胞におけるTfR1のパルミトイル化。A.対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞を、DMSOのみ(左上パネル)又は25μMのCoAを用いて72時間(右上パネル)、5mMのジクロロ酢酸(DCA)を用いて72時間(左下パネル)、25μMのアーテスネートを用いて48時間(右下パネル)処置し、TfR1タンパク質を、マウス抗TfR1抗体を用いて免疫沈降させて、パルミトイル化アッセイを行なった。各条件において、上パネルは、パルミトイル化TfR1レベル(IB:ビオチン)及び免疫沈降した量のTfR1(IB:TfR1)を示す。投入TfR1は、各条件のためのローディング対照として使用される。IP:免疫沈降、IB:イムノブロット。B.25μMのCoAの存在下又は非存在下において、通常のDMEM培地中で72時間増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた多重比較のための2元分散分析を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
***は<0.001のp値に相当する。ns:有意ではない。C.未処置(-DCA)又は5mMのDCAを用いて72時間処置された(+DCA)、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞のミトコンドリアにおける、PDH-E2、リポイル化PDH-E2(PDH-E2-LA)、及びリポイル化α-KGDH(α-KGDH-LA)の定常状態レベル。線維芽細胞のミトコンドリアを、リポ酸に対する抗体(PDH-E2及びα-KGDHに結合するリポ酸を検出する)を用いてのイムノブロットによって分析した。ポリンは、ローディング対照として使用された。
【
図4C】FRDA線維芽細胞におけるTfR1のパルミトイル化。A.対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞を、DMSOのみ(左上パネル)又は25μMのCoAを用いて72時間(右上パネル)、5mMのジクロロ酢酸(DCA)を用いて72時間(左下パネル)、25μMのアーテスネートを用いて48時間(右下パネル)処置し、TfR1タンパク質を、マウス抗TfR1抗体を用いて免疫沈降させて、パルミトイル化アッセイを行なった。各条件において、上パネルは、パルミトイル化TfR1レベル(IB:ビオチン)及び免疫沈降した量のTfR1(IB:TfR1)を示す。投入TfR1は、各条件のためのローディング対照として使用される。IP:免疫沈降、IB:イムノブロット。B.25μMのCoAの存在下又は非存在下において、通常のDMEM培地中で72時間増殖させた、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた多重比較のための2元分散分析を使用して、患者の数値を、対照値の平均値と比較した。
***は<0.001のp値に相当する。ns:有意ではない。C.未処置(-DCA)又は5mMのDCAを用いて72時間処置された(+DCA)、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞のミトコンドリアにおける、PDH-E2、リポイル化PDH-E2(PDH-E2-LA)、及びリポイル化α-KGDH(α-KGDH-LA)の定常状態レベル。線維芽細胞のミトコンドリアを、リポ酸に対する抗体(PDH-E2及びα-KGDHに結合するリポ酸を検出する)を用いてのイムノブロットによって分析した。ポリンは、ローディング対照として使用された。
【
図5A】アーテスネートによる処置は、FRDA線維芽細胞における、TfR1の蓄積を減少させ、Tfの再循環を改善させる。A.48時間かけて25μMのアーテスネートの補充された又は補充されていない対照の線維芽細胞(C1は、3つの対照の代表である)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)における、TfR1標識の例。細胞分析は、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。尺度バー、10μm。B.IDEASソフトウェア(アムニス社)を使用した、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の少なくとも20,000個の線維芽細胞上の膜に結合したTfR1シグナルの定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。C.トランスフェリンの再循環。Tf-RED初期染色に対する比率としての、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞において40分間追跡した、Tf-REDシグナルの相対平均蛍光強度。分析された細胞数は、3回の独立した実験において20を超える。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。D.48時間かけて25μMのアーテスネートを含むか又は含まない通常のDMEM培地中で増殖させた線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた2元分散分析を、B、C及びDにおいて使用した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。ns:有意ではない。
【
図5B】アーテスネートによる処置は、FRDA線維芽細胞における、TfR1の蓄積を減少させ、Tfの再循環を改善させる。A.48時間かけて25μMのアーテスネートの補充された又は補充されていない対照の線維芽細胞(C1は、3つの対照の代表である)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)における、TfR1標識の例。細胞分析は、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。尺度バー、10μm。B.IDEASソフトウェア(アムニス社)を使用した、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の少なくとも20,000個の線維芽細胞上の膜に結合したTfR1シグナルの定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。C.トランスフェリンの再循環。Tf-RED初期染色に対する比率としての、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞において40分間追跡した、Tf-REDシグナルの相対平均蛍光強度。分析された細胞数は、3回の独立した実験において20を超える。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。D.48時間かけて25μMのアーテスネートを含むか又は含まない通常のDMEM培地中で増殖させた線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた2元分散分析を、B、C及びDにおいて使用した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。ns:有意ではない。
【
図5C】アーテスネートによる処置は、FRDA線維芽細胞における、TfR1の蓄積を減少させ、Tfの再循環を改善させる。A.48時間かけて25μMのアーテスネートの補充された又は補充されていない対照の線維芽細胞(C1は、3つの対照の代表である)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)における、TfR1標識の例。細胞分析は、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。尺度バー、10μm。B.IDEASソフトウェア(アムニス社)を使用した、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の少なくとも20,000個の線維芽細胞上の膜に結合したTfR1シグナルの定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。C.トランスフェリンの再循環。Tf-RED初期染色に対する比率としての、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞において40分間追跡した、Tf-REDシグナルの相対平均蛍光強度。分析された細胞数は、3回の独立した実験において20を超える。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。D.48時間かけて25μMのアーテスネートを含むか又は含まない通常のDMEM培地中で増殖させた線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた2元分散分析を、B、C及びDにおいて使用した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。ns:有意ではない。
【
図5D】アーテスネートによる処置は、FRDA線維芽細胞における、TfR1の蓄積を減少させ、Tfの再循環を改善させる。A.48時間かけて25μMのアーテスネートの補充された又は補充されていない対照の線維芽細胞(C1は、3つの対照の代表である)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)における、TfR1標識の例。細胞分析は、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。尺度バー、10μm。B.IDEASソフトウェア(アムニス社)を使用した、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の少なくとも20,000個の線維芽細胞上の膜に結合したTfR1シグナルの定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。C.トランスフェリンの再循環。Tf-RED初期染色に対する比率としての、対照(C1~3)及びFRDA患者(P1~5)の線維芽細胞において40分間追跡した、Tf-REDシグナルの相対平均蛍光強度。分析された細胞数は、3回の独立した実験において20を超える。データは、3回の独立した実験の平均値±標準誤差である。D.48時間かけて25μMのアーテスネートを含むか又は含まない通常のDMEM培地中で増殖させた線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた2元分散分析を、B、C及びDにおいて使用した。
*、
**及び
***は、それぞれ、<0.5、<0.01、及び<0.001のp値に相当する。ns:有意ではない。
【
図6A】アーテスネートによる処置は、FRDA線維芽細胞における鉄恒常性を改善させる。A.48時間かけて25μMのアーテスネートを含むか又は含まない高い鉄条件(100μMのFAC)中で増殖させた線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた2元分散分析を使用した。
***は、p<0.001に相当する。B.鉄恒常性に関与するタンパク質の定常状態レベル。TfR1、SOD2、及びFBXL5は、48時間かけて25μMのアーテスネートを含むか又は含まない通常のDMEM培地中で増殖させた対照(C1~3)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)において、非還元条件で(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)試験され、IRP1、IPR2、及びフェリチンは、還元条件で試験された。
【
図6B】アーテスネートによる処置は、FRDA線維芽細胞における鉄恒常性を改善させる。A.48時間かけて25μMのアーテスネートを含むか又は含まない高い鉄条件(100μMのFAC)中で増殖させた線維芽細胞における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用した鉄定量。エラーバーは、標準誤差を示す(n=3)。ホルム・シダック多重比較検定を用いた2元分散分析を使用した。
***は、p<0.001に相当する。B.鉄恒常性に関与するタンパク質の定常状態レベル。TfR1、SOD2、及びFBXL5は、48時間かけて25μMのアーテスネートを含むか又は含まない通常のDMEM培地中で増殖させた対照(C1~3)及びFRDA線維芽細胞(P1~5)において、非還元条件で(12%アクリルアミド、ジチオトレイトール(DTT)無し、熱変性無し)試験され、IRP1、IPR2、及びフェリチンは、還元条件で試験された。
【
図7A】FRDA PBMCにおける鉄含量。A.高い鉄培地(100μMのFAC)中で増殖させたPBMC中の鉄含量の測定。鉄含量は、対照(C4~7)、FXN GAA伸長のヘテロ接合型保有者(保有者1~3)、及びFRDA PBMC(P1、P6~P14)における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用して、8時間毎に40時間測定された。B.25μMのアーテスネートを含むか又は含まない高い鉄培地(100μMのFAC)中40時間増殖させたPBMC中の鉄含量。C8~9は対照であり、保有者4~5はFXN GAA伸長のヘテロ接合型保有者であり、P15~16は、複合ヘテロ接合型FXN GAA伸長を有するFRDA患者である。
【
図7B】FRDA PBMCにおける鉄含量。A.高い鉄培地(100μMのFAC)中で増殖させたPBMC中の鉄含量の測定。鉄含量は、対照(C4~7)、FXN GAA伸長のヘテロ接合型保有者(保有者1~3)、及びFRDA PBMC(P1、P6~P14)における、フェロジンに基づいた比色アッセイを使用して、8時間毎に40時間測定された。B.25μMのアーテスネートを含むか又は含まない高い鉄培地(100μMのFAC)中40時間増殖させたPBMC中の鉄含量。C8~9は対照であり、保有者4~5はFXN GAA伸長のヘテロ接合型保有者であり、P15~16は、複合ヘテロ接合型FXN GAA伸長を有するFRDA患者である。
【0028】
実施例:
方法:
診断及び研究の試験のためのインフォームドコンセントが、ヘルシンキ宣言プロトコールに従って全ての被験者から得られ、パリの地域施設内審査委員会によって承認された。
【0029】
患者
患者は、フラタキシン遺伝子の第一イントロン内にGAA反復配列伸長を保有していた。
【0030】
【0031】
細胞培養液
皮膚線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタミン、2.5mMのピルビン酸、100μg/mlのストレプトマイシン、100U/mlのペニシリンの補充された、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、ライフテクノロジーズ社)培地中で37℃で増殖させた。クエン酸鉄アンモニウム(FAC)を用いての処置のために、80%集密度の細胞を、無血清DMEM(すなわちトランスフェリン非含有)中、100μMのFACと共に又は伴わずに72時間インキュベートした。薬物による処置のために、80%集密度の細胞を、DMSO中25μMのアーテスネート(シグマ社)の補充されたDMEM+10%FBS中で48時間、25μMのCoA(シグマ社)の補充されたDMEM+10%FBS中で72時間、5mMのDCA(シグマ社)の補充されたDMEM+10%FBS中で72時間インキュベートした。
【0032】
PBMCの単離及び培養
PBMCを、フィコール(GEヘルスケア社)を使用した密度遠心分離によって8mlの血液試料から単離し、様々な時間をかけて、100μMのFACを用いて処置する前に、通常のDMEM中で2時間増殖させた。
【0033】
ウェスタンブロット
還元性の細胞溶解緩衝液(2μMのジチオトレイトール(DTT)、95℃で5分間かけて変性)又は非還元性の細胞溶解緩衝液(DTT無し、熱変性無し)中で培養された皮膚線維芽細胞を、氷上で掻把によって収集した。ウェスタンブロット分析は、20μgの完全細胞タンパク質抽出物又はミトコンドリアの濃縮された画分に対して、12%アクリルアミドゲル又は4~15%のゲル勾配で行なわれた。免疫検出は、5%又は1%ミルク、0.05%のTween20(シグマ社)を含むPBS中、以下の抗体を使用して行なわれた:ウサギ抗SOD1抗体(アブカム社、ab16831)、ウサギ抗SOD2抗体(アブカム社、ab13533)、マウス抗TfR1抗体(インビトロジェン社、13-6800)、ウサギ抗TfR1抗体(アブカム社、108985)、ウサギ抗フェリチン抗体(アブカム社、ab75973)、ウサギ抗IRP1抗体(アブカム社、ab126595)、ウサギ抗IRP2抗体(アブカム社、ab80339)、ウサギ抗FBXL5抗体(アブカム社、ab140175)、ウサギ抗FDXR抗体(アブカム社、204310)、ウサギ抗FXN抗体(プロテインテック社、14147-1-AP)、ウサギ抗PDH E2サブユニット抗体(アブカム社、ab172617)、ウサギ抗リポ酸抗体(アブカム社、ab58724)、ヤギ抗ビオチン抗体(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、31852)、マウス抗VDAC/ポリン抗体(アブカム社、ab14734)。
【0034】
マウス抗ATP5a(アブカム社、ab14748)、マウス抗ビンキュリン抗体(アブカム社、ab130007)、ウサギ抗TFAM抗体(プロテインテック社、19998-1-AP)、ウサギATP8(プロテインテック社、26723-1-AP)、及びマウス抗GAPDH抗体(ab8245)。ブロットを、蛍光二次抗体(IRDye800CW/680LTヤギ抗ウサギ又は抗マウスIgG(LI-COR社))又は電気化学発光法に基づいた検出の前に(SuperSignal West Dura、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG HRP(アブカム社)、ヤギ抗マウスIgGHRP(アブカム社)、又はロバ抗ヤギIgG HRP(サンタクルツ社))と共にインキュベートした。Image Studio Lite v5.2(LI-CORバイオサイエンシーズ社)を使用したオデッセイ近赤外蛍光イメージングシステム、又はImage Lab v3.0(バイオラッド社)を使用したCDDカメラのいずれかを用いて、シグナルを取得した。
【0035】
MitoSOX
ミトコンドリアスーパーオキシドは、(Mukhopadhyay et al., 2007)から改作されたフローサイトメトリーアッセイによって定量された。線維芽細胞に、10μMのMitoSox Redを20分かけて補充し、トリプシン処理し、新たな培地(通常の培地又はFACを含むDMEM)を用いて中和した。フローサイトメトリーを、ガリオス(ベックマンコールター社)を使用して行なった。MitoSOX Redを488nmにおいて励起した。データは、カルーザソフトウェア(ベックマンコールター社)で少なくとも20,000個の細胞の前方散乱光、側方散乱光、580nm(FL2)チャネルにおいて収集された。細胞片を、分析のために除外した。MitoSOX蛍光の平均強度のヒストグラムは、FL2チャネルに示された。
【0036】
TFRC及びFTHの転写物の定量
全RNAが、製造業者のプロトコールに従って、RNeasyMiniキット(キアゲン社)、及びRNアーゼフリーDNアーゼセット(キアゲン社)により処理されたデオキシリボヌクレアーゼを使用して抽出された。全RNAの濃度及び純度は、-80℃で保存する前に、Nanodrop-8000分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を使用して評価された。その後、mRNAは、ランダムプライミングを使用して、製造業者の説明書に従って、High-Capacity RNA-to-cDNAキット(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を使用して、2μgの完全なRNAから逆転写された。定量RT-PCR(qRT-PCR)を、QX200ドロップレットデジタルPCRシステム(バイオラッド社)を使用したデジタルドロップレットPCR(ddPCR)を用いて実施した。TFRC及びFTH cDNAを、特異的なプライマーを使用して増幅した。β-グルクロニダーゼ(GUSB、NM_000181.3)を、標準化のために使用した。データは、Quantasoft分析ソフトウェア(バイオラッド社)を使用したQX200ドロップレットリーダーで分析された。TFRC及びFTHの発現レベルは、GUSBハウスキーピング遺伝子の平均コピー数に対して標準化された。
【0037】
鉄含量及びイメージングフローサイトメトリー(イメージストリーム)
線維芽細胞を、ウシ胎児血清非含有DMEM培地(すなわちトランスフェリン非含有)中で1時間かけて欠乏状態とし、トリプシンのように細胞表面に位置するTfR1を破壊することなくそれらを収集するために5mMのEDTAで処理し、その後、TfR1の内部移行を回避するために抗TfR1抗体を用いて4℃で標識した。この条件では、膜に結合したTfR1のみが定量される。細胞選別は、生細胞の選択を可能とする、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。
【0038】
総鉄含量を、(Barbeito et al., 2010)から変更されたフェロジンに基づいた鉄アッセイを使用して測定した。イメージングフローサイトメトリーのために、線維芽細胞を、ウシ胎児血清非含有DMEM培地中で1時間かけて欠乏状態とし、トリプシンのように細胞表面に位置するTfR1を破壊することなくそれらを収集するために5mMのEDTAで処理し、冷PBSで3回洗浄し、その後、TfR1の内部移行を回避するために抗TfR1抗体(A24)(Moura et al., 2004)を用いて氷上で1時間かけて標識した。この条件では、膜に結合したTfR1のみが定量される。二次染色を、氷上で30分間、Alexa fluor488ヤギ抗マウス抗体(ライフテクノロジーズ社)を使用して行なった。細胞を洗浄し、全容量50μl中で5分間かけてヘキストを用いて染色し、直接取得を行った。細胞分析は、生細胞の選択を可能とする、ヘキスト陽性シグナルに基づいた。試料を、フローサイトメトリーと、詳細な細胞イメージング及び機能的研究とを合わせたイメージストリームISX mkII(アムニス社、ミリポア、シアトル、WA州)にかけ、全ての取得のために40倍の拡大率を使用した。データを、INSPIREソフトウェア(アムニス社)を使用して取得し、IDEAS(商標)ソフトウェア(バージョン6.2アムニス社)を使用して少なくとも20,000個の事象に対して分析した。スペクトル補正を、単一に染色された試料を使用して行なった。特別なマスクが、TfR1の膜局在化の分析のために設計された。このマスクは、完全な明視野マスクから5ピクセル減退したものと、1ピクセル膨張した明視野マスクの結果であり、その結果、ドーナツ様のマスクが得られた。結果は、平均ピクセル強度値として表現され、これは、表面積に対して標準化された強度である。
【0039】
共焦点顕微鏡
Tfの再循環のために、線維芽細胞を、実験の24時間前に、マイクロスライドガラス底(IBIDI社)上に30%の集密度で広げた。その後、細胞を、ウシ胎児血清非含有DMEM培地中で1時間欠乏状態とし、37℃で30分間かけてTf-RED(12.5μg/mL)を添加した。細胞をPBSで洗浄し、その後、スピニングディスク式共焦点顕微鏡(ツァイス顕微鏡)を使用したライブイメージング取得のために通常の培地中でインキュベートした。スライドを、5%CO2下、37℃のインキュベーションチャンバーに入れた。少なくとも20個の細胞が、63倍の油浸対物レンズを使用した条件によって、Zenソフトウェアを使用して、40分間の間に、1分あたりの細胞の写真で取得された。核領域(NR)は、Icyソフトウェアv1.9を使用して規定された。各NRを2倍拡大して、関心対象の核周囲領域(PNROI)を作成した。その後、PNROIマスクを、定量的な平均蛍光粒子強度を得るために、スポット検出器プラグインによってREDチャネルに適用した。少なくとも8ピクセルサイズの粒子のみが考慮された。平均強度値は、表面積に対して標準化された。データは、0分の時点におけるTf初期シグナルに対する比率で表現された。
【0040】
パルミトイル化アッセイ
培養された皮膚線維芽細胞のTfR1パルミトイル化は、(Ba et al., 2012)から変更された。簡潔に言えば、細胞を氷上のDTT非含有細胞溶解緩衝液中で溶解し、内因性TfR1を、プロテインG磁気ビーズ(バイオラッド社)と共に、マウス抗TfR1抗体(ライフテクノロジーズ社、136890)を用いて一晩かけて免疫沈降させた。PBSで洗浄した後、ビーズを連続的に、50mMのN-エチルマレイミド(NEM)と共に室温で2時間、1Mのヒドロキシルアミン及び50mMのHPDP-ビオチン(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)と共に暗闇で2時間インキュベートした。試料を12%のアクリルアミドゲルに流し、ビオチンで標識されたTfR1レベルは、CCDカメラ(バイオラッド社)及びImageLabソフトウェアv3.0(バイオラッド社)によるChemidoc技術を使用して、非還元条件でイムノブロットによって決定された。
【0041】
ミトコンドリア単離
ミトコンドリアは、分画遠心分離によって、Mito単離緩衝液(320mMのスクロース、10mMのトリスHCl(pH7.5)、EDTA中のプロテアーゼ阻害剤混合液と共に)中で(Metodiev et al., 2009)に記載のように単離された。ミトコンドリアは、タンパク質分析のためにMito単離緩衝液に再懸濁されたか、又は鉄定量のために乾燥ペレットで保存された。
【0042】
統計
全ての統計分析は、ホルム・シダック法を用いた多重比較のための、両側の対応のないt検定又は一元分散分析を使用して、GraphPad Prism5.0(グラフパッドソフトウェア)を用いて行なわれた。*、**及び***は、それぞれ、<0.05、<0.01、及び<0.001のP値に相当する。ns:非有意。
【0043】
結果
FRDA線維芽細胞におけるフラタキシン、TfR1及びIRPの特徴付け
FRDA患者の培養された皮膚線維芽細胞中のフラタキシン定常状態レベルは、対照値の30~68%まで減少した(GAA反復配列伸長>2.1kb、
図1A)。フェレドキシン還元酵素(FDXR)定常状態レベルも減少し、このことは、FRDA線維芽細胞における2つのタンパク質の同時調節を示唆する(
図1A)。
【0044】
細胞内の鉄は主に、TfR1により媒介されるエンドサイトーシスによる、トランスフェリンに結合した鉄の取り込みによって移入される。細胞内の鉄の恒常性は、鉄調節タンパク質1~2(IRP1~2)の関与する転写後機序によって調節される。IRPは、転写後レベルでいくつかの鉄に関連した遺伝子、特にTfR1及びフェリチンを調節する。FRDA線維芽細胞のウェスタンブロット分析は、TfR1(1.6倍の増加)、IRP1及びIRP2(それぞれ2.2倍及び2.4倍、
図1A)の増加した定常状態レベルを示し、ミトコンドリア鉄硫黄複合体機構の破壊後に以前に報告されているような鉄欠乏状態を模倣することを示した(Muhlenhoff et al., 2015)。逆説的に、フェリチンの定常状態レベルも、FRDA線維芽細胞において増加し(2.1倍)、これは、上昇したTfR1及びIRP1~2と矛盾し、細胞内の鉄の過剰負荷を示唆する。不安定な鉄プールを反映する鉄センサータンパク質である、F-box/ロイシンリッチリピートタンパク質5(FBXL5)も同様に増加し、これもまた細胞質内の鉄の過剰負荷を支持する。一貫して、細胞質内スーパーオキシドジスムターゼSOD1は増加し(232%の平均増加)、このことは、細胞質内の鉄の過剰負荷におそらく関連した細胞質内ストレスを示唆する(
図1C)。ミトコンドリアスーパーオキシドジスムターゼSOD2は、2倍の増加を示し、FRDA線維芽細胞におけるミトコンドリアへの鉄の過剰負荷によっておそらくトリガーされた、重度の酸化ストレスを反映する(
図1A)。一貫して、ミトコンドリア活性酸素種の2.5倍の増加が、MitoSOXを使用してFRDA線維芽細胞においてフローサイトメトリーによって検出された(
図1B)。
【0045】
FRDA線維芽細胞は、鉄の取り込みを調節できなかった。
上昇したフェリチン及びFBXL5の定常状態レベルは、(Barbeito et al., 2010)から変更されたフェロジンに基づいた鉄アッセイを使用して、FRDA線維芽細胞における鉄含量を評価することを促した。基礎条件では、細胞内総鉄は、対照と比較してFRDA線維芽細胞において3~4倍高かったが(
図1C)、ミトコンドリア抽出物における鉄含量は、対照と比較してFRDAにおいてたった2倍高いだけであった(
図1D)。ミトコンドリア内の鉄は、対照における総鉄の主に1~1.5%を占めたが、FRDA線維芽細胞においては僅か0.6~0.8%であった(
図1E)。したがって、FRDA線維芽細胞は主に、細胞質内に鉄を蓄積し、ミトコンドリアにおいてはより程度が低く、このことは、細胞内総鉄は、FRDA線維芽細胞内の実際のミトコンドリア内の鉄プールを反映しないことを示唆する。
【0046】
細胞内鉄は、低い鉄条件(ウシ胎児血清(FBS)無し、すなわちトランスフェリンに結合した鉄がない)、又はクエン酸鉄アンモニウム(FAC)によってもたらされる高い鉄条件のいずれかにおいて定量された。FACは、内在輸送体又はエンドサイトーシス経路を介して適時、細胞内に浸透する、可溶形の非トランスフェリン結合鉄(NTBI)である。低い鉄条件(FACもなければFBSもない)では、FRDA線維芽細胞は、対照と比較して2~4倍高い鉄含量を示した(
図2A)。しかしながら、FACと共に3日間インキュベートした後、FRDA線維芽細胞は、大きな細胞内鉄増加(32~42倍の変化)を示したが、対照線維芽細胞は10倍の増加を示した(
図2A)。これは、呼吸鎖の欠損に起因しなかった。なぜなら、二対立遺伝子SURF1突然変異を有する患者における細胞内鉄レベルは、同じ条件で増殖させた対照と類似していたからである(
図2A)。これらのデータは、培養されたFRDA線維芽細胞が、鉄取り込みを調節することができず、高い鉄条件で増殖された場合に大きな鉄の過剰負荷を示すことを示唆した。
【0047】
鉄調節タンパク質(IRP)は、細胞内鉄含量のセンサーである。細胞質内鉄が増加すると、IRP1はアコニターゼに変換され、一方、IRP2は鉄結合タンパク質FBXL5によってユビキチン化及びプロテアソームによる分解に標的化される。減少したIRP1~2は、TfR1をダウンレギュレートし、鉄の取り込みを制限し、一方、フェリチンはアップレギュレートされ、細胞質内への鉄の貯蔵が可能となる。FRDA線維芽細胞の大きな鉄過剰負荷を考慮して、本発明者らは、鉄恒常性の転写後調節を調べた。低い鉄条件(-FAC)又は高い鉄条件(+FAC)のいずれかで3日間増殖させた線維芽細胞中の、TfR1(TFRC)及びH-フェリチン(FTH)のmRNAを、デジタルドロップレットPCR(ddPCR)によって定量した。TFRCmRNAレベルは、低い鉄条件(-FAC)で増殖させた対照及びFRDAの線維芽細胞において類似し、高い鉄条件で減少し、このことは、TFRC転写物の正常なダウンレギュレーションを示唆する(
図2B)。フェリチンmRNAは、高い鉄条件で増殖させた対照及びFRDAの線維芽細胞において同時に増加した(
図2C)。これらの結果は、FRDAの線維芽細胞におけるTfR1及びフェリチンの効率的な転写後調節を示唆する。
【0048】
一貫して、ウェスタンブロット分析は、高い鉄条件(+FAC)で増殖させた対照細胞において、低いレベルのTfR1が、鉄が蓄積するのを防ぎ、H-フェリチン及びL-フェリチンのレベルも増加し、これにより鉄の貯蔵が可能となったことを示した(
図2D)。細胞内鉄の増加は、高いレベルのSOD1~2によって示されるように、強力な細胞質内及びミトコンドリア内の活性酸素種の過剰産生を誘発した。これらの条件では(+FAC)、FRDA線維芽細胞は、高い定常状態のフェリチンレベルにも関わらず、TfR1含量をダウンレギュレートできず、増加さえした。類似の結果が、FBXL5を用いて観察された(
図2D)。鉄の過剰負荷の脈絡において、TfR1及びフェリチンが合わせて増加することは逆説的である。なぜなら、貯蔵された鉄は、TfR1レベル及び金属の移入をダウンレギュレートするはずだからである。この結果は、TfR1が、FRDA線維芽細胞においてIRPの調節を回避するようであることを示唆する。TfR1の転写後調節が影響を受けないことを思い出すと、これらの結果は、NBIAにおいて以前に記載されているように(Drecourt et al., 2018)、FRDAにおけるTfR1の異常な翻訳後調節を示唆する。
【0049】
TfR1は、FRDA線維芽細胞の細胞表面に蓄積する。
本発明者らは、TfR1の増加した定常状態レベルが、NBIAにおいて観察されているような、FRDAにおける膜へのTfR1の蓄積に関連している可能性があると仮説を立てた。TfR1の量は、フローサイトメトリーと詳細な細胞イメージング及び機能的研究とを合わせた、アムニス社のイメージストリーム(X)マークIIを使用した次世代イメージングフローサイトメトリーを使用した免疫蛍光によって定量された。この分析は、対照と比較して、FRDA線維芽細胞の細胞表面において増加した量のTfR1を示した(
図3A)。IDEASソフトウェア(アムニス社)を使用した、基礎条件で増殖させた20,000個を超える線維芽細胞におけるTfR1の定量は、患者におけるTfR1シグナルの有意な増加を明らかとした(
図3B)。これらの結果は、鉄の過剰負荷及び正しい転写後のダウンレギュレーションにも関わらず、FRDAの線維芽細胞は、細胞膜においてTfR1を蓄積し、それらが鉄の取り込みを調節するのを妨害することを示す。
【0050】
FRDAの線維芽細胞における遅延したトランスフェリンの再循環
スピニングディスク方式共焦点顕微鏡を使用して、患者及び対照の線維芽細胞におけるトランスフェリン(Tf)-Alexa555の染色の核周囲の免疫蛍光強度を評価した。Tf-Alexa555のパルスチェイスのT0の時点において、Tfの染色は、患者及び対照の細胞において類似していた。対照の線維芽細胞は、Tf再循環に起因するTf染色の急速な減少を示した(
図3C)。対照的に、Tf再循環は、FRDAの線維芽細胞において有意に遅延していた。なぜなら、核の周囲に集合した特定のシグナルは、Tf-Alexa555の10分間のインキュベート後に減少できず、さらにそれより後に遅延したからである(
図3C)。
【0051】
FRDAの線維芽細胞におけるTfR1のパルミトイル化
TfR1は、チオエステル結合を介したCys
62及びCys
67へのS-アシル基の共有結合による付着によって翻訳後修飾され、パルミテートは主な脂肪酸ドナーである。減少したパルミトイル化は、TfR1のエンドサイトーシス及び鉄の取り込みを増加させることが以前に示されている(Alvarez et al., 1990)。さらに、NBIA線維芽細胞において近年、不完全なTfR1のパルミトイル化が報告され、ここでは鉄の恒常性も変化している(Drecourt et al., 2018)。FRDA患者の培養細胞を研究することにより、TfR1のパルミトイル化の、対照値の僅か16~22%までの劇的な減少が判明し、このことは、フラタキシンの欠損が、依然として不明な理由から、TfR1のパルミトイル化に深刻な影響を及ぼすことを示唆する(
図4A)。アセチル-補酵素A(CoA)は、パルミトイルトランスフェラーゼのためのアセチル基の唯一のドナーである。本発明者らは、CoA生合成に関与する2つのNBIA遺伝子(PANK2及びCRAT)において二対立遺伝子の突然変異を有する培養線維芽細胞にCoAを添加することにより、TfR1のパルミトイル化は増加したことを以前に報告し、このことは、損なわれたCoAの生合成が二次的にTfR1のパルミトイル化を変化させることを示唆する(Drecourt et al., 2018)。細胞は、細胞外源からCoAを得ることができる。なぜなら、CoAは、エクトヌクレオチドピロホスファターゼによって細胞外で加水分解されることができ、これにより、膜透過性の4’-ホスホパンテテインを産生し、細胞内でCoAに変換されることができるからである(Srinivasan et al., 2015)。培養細胞に25μMのCoAを72時間かけて補充することにより、FRDA線維芽細胞においてTfR1のパルミトイル化は増加し(2.1倍から3.2倍の増加、
図4A)、このことはフラタキシンの欠損が、CoAプールを制限し、二次的にTfR1のパルミトイル化に影響を及ぼすことを示唆する。CoAの補充はまた、FRDAの線維芽細胞におけるTfR1の定常状態レベルを減少させた(
図4A)。さらに、対照とは異なって、高い鉄条件(+FAC)で増殖させ、25μMのCoAを72時間かけて補充されたFRDA線維芽細胞は、細胞内鉄含量の1.6倍~2.4倍の減少を示した(
図4B)。このことは、フラタキシンの欠損と、CoAの利用可能性と、TfR1のパルミトイル化と、鉄の恒常性との間の直接的な関連を示唆する。
【0052】
FRDA線維芽細胞において損なわれたTfR1のパルミトイル化は、不完全なピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)のリポイル化に関連している
リポ酸シンターゼ(LIAS)は[4Fes-4S]クラスター含有タンパク質であり、リポ酸(LA)合成の重要な酵素である。LAは、3つのピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)サブユニットとの1つである、ジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ(DLAT又はPDH-E2)をはじめとする、いくつかのミトコンドリアタンパク質の補因子である。鉄硫黄複合体の生合成に関与する様々な遺伝子(NFU1、IBA57、ISCA2及びFDX1L)において二対立遺伝子の突然変異を有する患者の培養された線維芽細胞は、DLAT及び他のミトコンドリアタンパク質の損なわれたリポイル化、並びに減少したPDH活性を示す(Lebigot et al., 2017)。
【0053】
さらに、マウスにおけるFXNの欠損(Martelli et al., 2015)及びHeLa細胞におけるFXNのノックダウンにより、PDH及びα-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(α-KGDH、Tong et al. 2018)の非常に不完全なリポイル化が起こった。本発明者らはまた、FRDA線維芽細胞における、PDH-E2及びα-KGDHの変化したリポイル化、並びにPDH-E2サブユニットの減少した定常状態レベルを観察した(
図4C)。CoAの補充がTfR1のパルミトイル化を改善したことを考えると、本発明者らは、フラタキシンの欠損が、不完全なPDHのリポイル化を介してTfR1のパルミトイル化に影響を及ぼし得るという仮説を立てた。なぜなら特に、アセチルCoAは、主に、ミトコンドリア内のPDH複合体によるピルビン酸の酸化的脱炭酸によって産生されるからである。PDH複合体を不活化するPDHキナーゼ(PDHK)の阻害剤であるジクロロ酢酸(DCA)は、ピルビン酸の酸化及びアセチルCoAのプールを増加させることが知られている。FRDA線維芽細胞に5mMのDCAを72時間かけて補充することにより、CoAとちょうど同じようにTfR1のパルミトイル化は有意に増加し(
図4A)、このことは、減少したPDHの活性が実際に、TfR1のパルミトイル化のために利用可能なCoAのプールに影響を及ぼすことを実証する。DCAはまた、FRDA線維芽細胞におけるTfR1の定常状態レベルを有意に減少させた(
図4A)。さらに、DCAの補充は、完全に又は部分的に、FRDA線維芽細胞において、PDH-E2の定常状態レベルを救出し、PDH及びα-KGDHのリポイル化を変化させた。なぜなら、おそらくリポ酸の前駆体であるオクタン酸は、脂肪酸の酸化を通して合成されるからである。
【0054】
アーテスネートは、FRDA線維芽細胞における、TfR1のパルミトイル化、Tfの再循環、及び鉄の過剰負荷を救出する
アーテスネートは、TfR1のパルミトイル化により細胞内の鉄の恒常性を変化させ、膜のTfR1を減少させることが知られている(Ba et al., 2012)。25μMのアーテスネートを48時間かけて培養培地に加えることにより、FRDA線維芽細胞における、TfR1のパルミトイル化は対照の80%まで増強され、TfR1の定常状態レベルは有意に減少した(
図4A)。イメージングフローサイトメトリーは、アーテスネートが、FRDA線維芽細胞における膜のTfR1を有意に減少させ(15~30%の減少)、一方、それは対照細胞においては僅かに増加した(1.1倍から1.3倍、
図5A及び5B)ことを示した。
【0055】
トランスフェリンの再循環に対するアーテスネートの効果を調べるために、FRDA細胞及び対照細胞における、Tf-Alexa555染色の免疫蛍光強度を記録した。アーテスネートは、FRDA線維芽細胞において対照値までTfシグナルを迅速に減少させ、遅延したTfの再循環を完全に救出し、核周囲のTf染色は消失した(
図5C)。一貫して、鉄の過剰負荷は、基礎条件で増殖させたFRDA線維芽細胞へのアーテスネートの補充から48時間後に、初期の細胞内鉄含量の62~79%まで低下した(
図5D)。アーテスネートで処置された対照細胞は、Tf再循環の僅かな遅延、及び軽度であるが有意でない鉄含量の増加を示すことが注記されるべきである(
図5C及び5D)。25μMのアーテスネートを、高い鉄条件(100μMのFAC)で増殖させたFRDA培養線維芽細胞に添加することにより、細胞内鉄含量は71~79%減少し、鉄の取り込み及び取扱いを調節する患者の細胞の能力の壮大な救出を示す(
図6A)。特に、アーテスネートはまた、高い鉄条件で増殖させた対照細胞の鉄含量も減少させた(
図6A)。
【0056】
ウェスタンブロット分析は、FRDA線維芽細胞へのアーテスネートの補充が、TfR1を減少させ、これはアーテスネート非含有培地中の対照値の136%に達したことを確認した(
図6B)。さらに、フェリチン及びFBXL5の定常状態レベルは、対照値に戻り、これは減少した鉄含量と平行し、これはおそらく、減少したSOD2によって示唆されるように活性酸素種の産生を減少させた。IRP1~2は、アーテスネートによる処置によって修飾されなかった。対照細胞では、アーテスネートによる処置によるTfR1の僅かな増加はおそらく、僅かであるが有意でないTfR1のパルミトイル化の減少から起こり得る。それにも関わらず、フェリチン、FBXL5は修飾されなかった。
【0057】
アーテスネートは、FRDA患者の末梢血単核細胞における鉄の過剰負荷を低減する
患者及び対照における、高い鉄条件で40時間増殖させた末梢血単核細胞(PBMC)の細胞内総鉄含量を定量した。24時間後、FRDA患者のPBMCの鉄含量は、対照よりもはるかに高く、最終的に40時間後に2倍になった(
図7A)。このことは、PBMCもまた、高い鉄条件において鉄の取り込みを調節することができないことを示唆した。3つのヘテロ接合型保有者のPBMCの鉄含量は、高い鉄培地中で40時間インキュベートした後でさえ、対照値と類似していた。25μMのアーテスネートをPBMC培養培地に添加することにより、FRDAのPBMC及び対照のPBMCの両方において鉄含量は2倍減少した(
図7B)。
【0058】
考察:
ここで、本発明者らは、FRDA患者の培養線維芽細胞において、攪乱された細胞内鉄の恒常性、及び不完全なトランスフェリン受容体(TfR1)のパルミトイル化を報告する。細胞質区画及びミトコンドリア区画の両方が、大量の鉄を異常に蓄積していることが判明した。本発明者らはまた、リポ酸シンターゼにおける損なわれた鉄硫黄複合体の構築のために、PDH複合体のリポイル化が不完全であったことを観察した。PDH複合体の不完全なリポイル化は、次にアセチルCoAのプールを劇的に減少させ、TfR1のパルミトイル化の二次的異常を引き起こした。これにより、膜へのTfR1の蓄積が起こり、FRDA線維芽細胞の鉄の取り込みの調節及びTfの再循環を妨げた。最後に、本発明者らは、アーテスネートが、FRDA線維芽細胞において、TfR1のパルミトイル化を改善させ、膜のTfR1を減少させ、Tf再循環及び鉄の過剰負荷を救出したことを示す。同様に、ジクロロ酢酸及びCoAもまたTfR1のパルミトイル化を増加させた。
【0059】
フリードライヒ運動失調症における鉄の調節不全は、昔から認識され、細胞質内の鉄の欠乏と共に、ミトコンドリアにおける鉄の蓄積を特色とすると一般的に考えられている。ここで、本発明者らは、鉄が大量に細胞質内に蓄積し、ミトコンドリアにはより少ない程度で蓄積することを示す。増加したフェリチン及びFBXL5の定常状態レベルは、鉄の蓄積に平行し、上昇したSOD1~2は、おそらく鉄の過剰負荷に関連した、増加した活性酸素種の産生を示唆した。細胞質内の鉄含量は、以前に滅多に評価されたことはなく、本発明者らの知る限りでは、フラタキシン欠損症の様々な細胞及び動物モデルにおいて正式に定量されていない。いわれていたようなミトコンドリアを犠牲にした細胞質内の鉄の欠乏は、細胞質内の定量を行なわずに主に、ミトコンドリアにおける鉄の過剰負荷に基づいていたが(Babcock et al., 1997; Puccio et al., 2001)、増加したTfR1及び減少したフェリチンの定常状態レベルは、鉄応答性エレメントに結合しているIRP1の活性化に関連していた(Martelli et al., 2015; Telot et al., 2018; Whitnall et al., 2012)。驚くべきことには、本発明者らの研究において、本発明者らは、蓄積している鉄は、ミトコンドリア内よりも細胞質内の方が比較的より多いことを発見した。増加したレベルのフェリチンがFRDA患者の心臓(Ramirez et al., 2012)及びMCK条件付フラタキシンノックアウトマウスの筋肉(Whitnall et al., 2012)に認められることを心に銘記すべきであり、このことは、鉄の蓄積が組織間で変動することを示唆する。
【0060】
細胞内の鉄恒常性は主に、TfR1mRNAの減少を可能とし、よって、高い鉄条件における鉄の取り込みを制限する、転写後機序によって調節される。鉄調節タンパク質/鉄応答エレメントによるこの転写後調節は、FRDA線維芽細胞において正常に機能した。なぜなら、TFRC転写物は、高い鉄条件における鉄の取り込みを制限するために効率的にダウンレギュレートされたからである。それ故、FRDA線維芽細胞において増加したTfR1定常状態レベル及び膜へのTfR1の蓄積は、別のレベルの調節、すなわち、以前にNBIAにおいて報告されているようなTfR1の翻訳後調節を指し示した(Drecourt et al., 2018)。
【0061】
TfR1は、S-アシル化、特にパルミトイル化によって翻訳後修飾される。なぜなら、パルミテート(C16:0)は、S-アシル化タンパク質に対する主な脂質ドナーであるからである。TfR1のパルミトイル化レベルは、細胞内の鉄を制御することが知られている。なぜなら、TfR1のパルミトイル化の主要な部位であるCys62及びCys67の突然変異は、増加したTfR1の内部移行及び鉄の過剰負荷を引き起こしたからである。ここで、本発明者らは、FRDA線維芽細胞における不完全なTfR1のパルミトイル化、並びに続く膜及び細胞質内におけるTfR1の蓄積のエビデンスを提供する。パルミトイル化によるTfR1の翻訳後調節は、細胞内鉄含量を迅速に調節するので、本発明者らは、この調節系が、FRDAにおいて損なわれ、少なくとも部分的には、疾患の機序の原因となるという仮説を立てる。本発明者らは以前に、不完全なTfR1のパルミトイル化は、NBIAにおけるPANK2及びCRATの突然変異に関連した障害されたCoA合成に起因するとした(Drecourt et al., 2018)。PANK2及びCRATは、CoA合成に直接関与しているので、FRDA培養線維芽細胞へのCoAの補充後の増加したTfR1パルミトイル化及び減少した鉄含量は、フラタキシンの欠損が、CoA/アセチル-CoAのプールの二次的減少を誘発することを強く示唆する。鉄硫黄複合体の生合成機構の他の欠陥として、フラタキシンの欠損は、ミトコンドリアのリポ酸合成酵素をはじめとする、様々な細胞内タンパク質に影響を及ぼし、結果として、ピルビン酸脱水素酵素及びαケトグルタル酸デヒドロゲナーゼの少なくともジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(DLAT)サブユニットのリポイル化は減少する(Lebigot et al., 2017; Martelli et al., 2015; Tong et al., 2018)。アセチル-CoAは主に、ピルビン酸の脱炭酸によってミトコンドリア内で産生され、CoAプールは、不完全なDLATリポイル化のために、FRDA線維芽細胞において減少すると予想される。ジクロロ酢酸によるピルビン酸デヒドロキナーゼの抑制後に増加したTfR1のパルミトイル化は、この仮説を支持する。
【0062】
FRDA線維芽細胞はまた、遅延したTfの再循環によって示される、不完全なエンドソーム回路網を示した。障害されたエンドソーム再循環により、本発明者らは、鉄の過剰負荷が、増加した膜のTfR1の量だけでなく、コーティングされていない小胞内に貯蔵された細胞質内の鉄の放出が損なわれていることから生じ得るという仮説を立てる。パルミトイル化は、タンパク質の親油性を増加させ、その輸送、安定性、及び細胞内分布を調節することが知られている。多くのエンドソーム再循環タンパク質がパルミトイル化されているので、他の依然として決定されていないエンドソームタンパク質の改変されたパルミトイル化が、TfR1の再循環を変化させ得、鉄の過剰負荷の原因となり得る可能性がある。
【0063】
FRDA線維芽細胞におけるTfR1の異常なパルミトイル化の同定は、疾患の病態生理に対してさらなるレベルの複雑性を与える。一方、それは、フラタキシン欠損症の様々な臨床結果の解明を助ける。なぜなら、鉄硫黄複合体含有タンパク質の時間経過及び/又は組織特異的発現は、実際に臓器における発症を制御し得、なぜ呼吸鎖の欠損症が、FRDA患者の心臓に見られるのに、筋肉又は線維芽細胞に見られないかを説明する(Rotig et al., 1997)。細胞内鉄含量に影響を及ぼすことが知られている(Jeong et al., 2015)アセチルCoA又はSIRT3の抑制(Wagner et al., 2012)のための様々な組織必要条件もまた、FRDAの組織特異的発現の原因であり得る。これを支持して、呼吸鎖の欠損は、7週令のフラタキシン欠損マウスの心臓において観察され、一方、鉄の過剰負荷は、3週間後に出現した(Puccio et al., 2001)。
【0064】
フラタキシン欠損の他の結果もまた、ミトコンドリアのアセチルCoAプールを二次的に減少させる原因となり得る。ISCUの欠損について示されているように(Tong et al., 2018)、ミトコンドリアのアコニターゼ活性の低下した組織は、クエン酸を蓄積し、これは、アセチルCoAカルボキシラーゼを活性化し、それ故、マロニルCoAの形成を誘導することによってアセチルCoAプールを低下させる。マウスにおいて報告されたSIRT3デアセチラーゼの抑制は、それらの活性を減少させることが知られているいくつかのミトコンドリアタンパク質の過剰アセチル化を誘発する(Wagner et al., 2012)。SIRT3の主な標的の1つであるミトコンドリアアセチルCoAシンセターゼ2の過剰アセチル化は、アセチルCoA合成を低下させ得る。同じ方針で、鉄の蓄積は、スフィンゴ脂質及びパルミトイルCoAの合成、並びにアシルCoAの消費を増加させ得、次いで、TfR1のパルミトイル化に必要とされるパルミトイルCoA及びアシル-CoAプールを低下させる(Chen et al., 2016a)。実際に、PANK2の突然変異に関連した損なわれたCoAの生合成の場合と同じように(Siudeja et al., 2011)、フラタキシンの欠乏は、全体的なヒストンのアセチル化を減少させる(Tong et al., 2018)。
【0065】
最後に、本発明者らはまた、アーテスネート、CoA及びジクロロ酢酸が、TfR1のパルミトイル化を有意に誘導し、TfR1の定常状態レベル及び膜へのTfR1の蓄積を減少させたことを示す。アーテスネートは、Tfの再循環を救出し、FRDA線維芽細胞が鉄の取り込みを調節する能力を回復させた。アーテスネートは、強力な抗癌特性を有する。なぜなら、それは癌細胞にとって毒性である、鉄の欠乏を誘発するからである(Lai et al., 2013)。それは、熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされたマラリアを処置するためにも使用される。その安全性プロファイル及び薬物動態は、神経変性疾患において評価されていないが、数百万人の被験者が、アルテミシニンの投与を受け、非常に僅かな副作用を伴った(Efferth and Kaina, 2010)。本発明者らのデータは、FRDAにおいて可能性ある治療アプローチとして、TfR1のパルミトイル化を増加させるこの化合物及び他の薬物が考察されるべきであることを示唆する。なぜなら、特に鉄により媒介される毒性は、FRDAのショウジョウバエモデルにおける神経変性の原因であることが示されているからである(Chen et al., 2016b)。FRDA患者のPBMCは、FRDA-iPSC心筋細胞において観察されているような、高い鉄条件における鉄の取り込みを調節することができなかったので(Lee et al., 2014)、本発明者らは、鉄の恒常性及びTfR1の免疫蛍光のインビボでのモニタリングが、FRDA患者における将来の臨床試験をモニタリングするための有用な早期の評価項目として捉えることができると考える。
【0066】
参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が属する技術分野の最先端技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照によりここに組み入れられる。
【表2】
【国際調査報告】