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特表2022-515271組換え水痘帯状疱疹ウイルスワクチン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】組換え水痘帯状疱疹ウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/25 20060101AFI20220209BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 33/08 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/685 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/01 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/717 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220209BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220209BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20220209BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220209BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220209BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20220209BHJP
   C07K 14/04 20060101ALN20220209BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20220209BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
A61K39/25
A61P31/22 ZNA
A61K39/39
A61K33/08
A61K33/42
A61K31/685
A61K31/7016
A61K31/19
A61K31/215
A61K31/01
A61K31/717
A61K31/575
A61K47/64
C12N15/13
C12N15/38
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K14/705
C07K14/04
C07K16/00
C07K19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537120
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2020090200
(87)【国際公開番号】W WO2021103434
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201911203663.2
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521275666
【氏名又は名称】北京▲緑▼竹生物技▲術▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING LUZHU BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3 Guangtong Street, Tongzhou Industrial Developmen Zone, Beijing 101113 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コン, ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ペイ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ペン, リン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, スァイ
(72)【発明者】
【氏名】ス, レイタオ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン, クン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC35
4C076DD30
4C076DD34
4C076DD63
4C076EE32
4C076EE53
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA79
4C085CC08
4C085CC21
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF02
4C085GG03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086EA22
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA01
4C206DA03
4C206DB06
4C206MA05
4C206MA13
4C206MA21
4C206MA24
4C206MA28
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC75
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA03
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
【要約】
本発明は、弱毒生VZV株(OKA株)遺伝子の組換え糖タンパク質gEの細胞外領域のアミノ酸配列と、ヒト免疫グロブリンのFc断片によって形成された融合タンパク質を含む組換え水痘帯状疱疹ウイルスワクチンを開示し、さらに、前記融合タンパク質の調製、応用、及び対応する組換え遺伝子、真核生物発現ベクターなどを含み、本発明の融合タンパク質は、良好な免疫原性を有し、高レベルの血清中和抗体の産生を誘導することができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒生VZV株(OKA株)遺伝子の組換え糖タンパク質gEの細胞外領域のアミノ酸配列と、ヒト免疫グロブリンのFc断片によって形成される融合タンパク質を含み、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は配列番号1である組換え水痘帯状疱疹ウイルスワクチ製剤。
【請求項2】
さらにワクチンアジュバントを含む請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項3】
前記ワクチンアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント、リン酸アルミニウムアジュバント、又は水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムアジュバントの混合物から選択される請求項2に記載のワクチン製剤。
【請求項4】
各投与ユニットには、5~200μgの融合タンパク質が含まれている請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項5】
各投与ユニットには、10~100μgの融合タンパク質が含まれている請求項4に記載のワクチン製剤。
【請求項6】
各投与ユニットには、20~60μgの融合タンパク質が含まれている請求項5に記載のワクチン製剤。
【請求項7】
ホスファチジルコリン、レシチン、3D-MPL、長鎖脂肪酸(エステル)、鉱油、植物油、メチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びコレステロールを含むリポソームの組成物を含み、これらに限定されない免疫原性を高めることができる他の物質も含まれている請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項8】
凍結乾燥製剤である請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項9】
前記凍結乾燥製剤は、使用前に水酸化アルミニウムアジュバント懸濁液を添加して溶解させ、均一に混合した後、筋肉内又は皮下に注射する請求項8に記載のワクチン製剤。
【請求項10】
請求項1に記載の融合タンパク質を発現させることができ、DNA配列が配列番号2である組換え遺伝子。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン製剤に関し、特に生体の免疫系を誘導して、組換え水痘・帯状疱疹ウイルス糖タンパク質E融合タンパク質に対する中和抗体を産生できるワクチン製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus、VZV)は、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)のα-ヘルペスウイルス亜科の一種であり、直径150~200nmの2本鎖DNAウイルスであり、形態学的には、核酸コア、タンパク質コート、及びエンベロープで構成される同心円構造である。VZVゲノムは約125kbの線状2本鎖DNA分子であり、約100kbのユニークな長い断片(UL)と約5.4kbのユニークな短い断片(US)を含み、これらの断片は6.8kbの末端と内部の反復配列で分離されていて、全部で72のオープンリーディングフレーム(Open reading frames、ORF)があり、ウイルス複製、転写、パッケージング、放出などの生物活性に関連するタンパク質分子、及び宿主細胞と相互作用するタンパク質をコードする上、gB、gC、gE、gH、gI、gK、gL及びgMの8つの糖タンパク質をコードし、これらの糖タンパク質は、ウイルスの成熟とパッケージングにおいて非常に重要な役割を果たしている。その中で、gE(glycoprotein E、gE)はORF68遺伝子によってコードされ、当該遺伝子は1872個の塩基で構成され、VZVゲノムの短い断片領域に位置し、コードされたgEには、623個のアミノ酸(amino acid、AA)が含まれている。そのN末端は544個AAの親水性細胞外領域(シグナルペプチドを含む)であり、C末端は17AAの膜貫通疎水性領域と62AAの細胞内領域である。gEは、I型膜タンパク質に属し、感染性VZV粒子の産生に不可欠な糖タンパク質である上、ウイルスエンベロープ及び感染した細胞膜上で抗原性が最も高い、含有量が最も豊富な糖タンパク質である同時に、VZV粒子の表面、宿主細胞の細胞膜及び細胞質にも広く存在し、細胞性免疫及び液性免疫を誘導することができる。
【0003】
VZVウイルスの糖タンパク質Eには、2つのエピトープクラスターであるe1とc1が含まれ、異なる地域からのVZV株の間で、これらの抗原決定クラスターは安定しており、非常に保守的であり、ワクチン抗原候補サブユニットに適している。gEは、VZVウイルス粒子の表面、感染された細胞の表面及び細胞質内に存在し、ウイルスが成熟になるさまざまな段階に対応してさまざまな糖を含むポリペプチドの形で存在する。gE分子には輸送シグナルが含まれており、ウイルスタンパク質の組み立てとゴルジ体のエンベロープの形成に関与する。回復期の水痘や帯状疱疹患者の血清において、VZV抗体は主に、gB、gH及びgEの3つの糖タンパク質、特にgEを主な標的としている。gEは生体が特異性液性免疫及び細胞性免疫を産生するように誘導し、ウイルスの攻撃から生体を保護することができる。gEにはリン酸化された高マンノースO-鎖及びN-鎖複合糖鎖が含まれており、gIと協力してヒトIgGのFc断片に結合でき、gEとgIは共有結合して、感染された細胞の表面でFc受容体として機能している。
【0004】
VZVは、一次感染時に呼吸器粘膜上皮を介して局所リンパ節に侵入して複製し、ウイルスに感染されたリンパ球は、リンパ循環により、血液循環に入り、末梢血単核白血球を感染し、ウイルスは血流とともに皮膚に広がり、臨床症状は水痘である。水痘が治癒された後、ウイルスは頭蓋大脳神経節、脊髄の後根神経節、自律神経細胞、又は腸管神経節に潜伏する。生体の抵抗が減少すると、潜伏ウイルスは再活性化され、複製され、末梢神経に沿って皮膚に移動し、帯状疱疹として臨床的に現れる。
【0005】
VZVは伝染性が高く、水痘又は帯状疱疹の患者が唯一の感染源であり、VZVは主に空気飛沫と直接接触によって広がる。水痘の患者は、発疹が現れる2日前に唾液又は眼液を介してウイルスを排泄する。水痘又は帯状疱疹の患者の水疱液には、感染性ウイルス粒子が含まれて、呼吸中に発生する飛沫は、感受性の高い人に吸入された後に感染する可能性があり、皮膚病変の小胞液と直接接触することによっても感染する可能性があり、皮膚病変が多いほど、感染性が高くなる。感受性の高い人が感染した後、水痘が発生する可能性はあるが、帯状疱疹は直接引き起こされることはない。
【0006】
血清疫学的調査によると、出産可能年齢の女性の95%~97%が、血清抗VZV抗体が陽性であるため、乳児が生後6か月以内に水痘ウイルス感染症にかかる可能性は非常に低い。血清抗体が陰性の成人、血清抗体が陰性の妊婦から生まれた新生児、免疫不全の人、妊娠4~5ヶ月目に水痘にかかった妊婦の胎児及び出産前後に水痘にかかった母親から生まれた新生児のすべてがVZVの重度の一次感染を起こしやすい。高齢者、免疫不全の人、妊娠中に水痘かかった母親から生まれた子供及び出生後1年に水痘にかかった子供は、帯状疱疹を発症するリスクが高くなる。
【0007】
北米とヨーロッパ地域の若者では95%以上が血清VZV抗体陽性であるため、帯状疱疹にかかるリスクがある。統計が人口ベースに基づいている場合、帯状疱疹の発生率は3~5/千人・年であり、そのうちアジア太平洋地域が3~10/千人・年、韓国が10.4/千人・年、日本が10.9/千人・年、中国大陸と台湾はそれぞれが3.4~5.8/千人・年と4.89~5.67/千人・年である。現在、アフリカ地域での帯状疱疹の発生率に関するデータはない。
【0008】
帯状疱疹の患者の約13%~47%は、主に神経系と眼に関係する合併症又は後遺症を持っている。神経系の合併症には、帯状疱疹後神経痛(PHN)、Ramsay-Hunt症候群、Bell顔面神経麻痺、髄膜炎、脊髄炎、及び一過性脳虚血又は脳卒中が含まれる。眼の合併症は主に眼の帯状疱疹である。
【0009】
PHNは帯状疱疹の最も一般的な後遺症であり、国際的に認められている定義では、発疹が現れてから90日以上痛みが続くというものである。PHNの約30%~50%は1年以上持続し、少数は10年も持続することもある。帯状疱疹患者の約5%~30%がPHNを患っており、複数の文献報告では10%~20%であり、中国大陸地区では8.6%~13.8%である。PHNの発生率は、患者の年齢とともに増加し、50歳以上の患者では約8%、80歳以上の患者では33%に達する。PHNの素因として比較的明確であるのは、高齢、重度の前駆症状、重度の発疹、重度の痛み、免疫力の低下がある。三叉神経の疲れ、SLEに伴う、糖尿病、又は神経精神障害のある人もPHNの影響を受けやすくなっている。
【0010】
帯状疱疹眼症(HZO)は、潜伏性的なVZVが再活性化され、複製された後、三叉神経の眼神経への巻き添えに引き起こされる。人口をベースとしての統計に基づくと、HZOの発生率は30.9人/10万人であり、65歳以上の人口では104.6人/10万人である。帯状疱疹患者をベースとしての統計に基づくと、HZOの発生率は10%~20%であり、年齢とともに増加する。HZOの臨床症状は、順次眼瞼炎、角膜炎、結膜炎、強膜炎、ブドウ膜炎、又は急性進行性網膜壊死である。米国のHZO患者の約2.5%が眼の損傷を持っており、それらの6%が失明を引き起こしている。HZO患者の約半数が皮膚の損傷を持っており、約21%が最終的にPHNに発展している。
【0011】
高齢の患者や免疫不全の患者には、帯状疱疹に再発が見られ、皮膚病変の広がりや、細菌感染症の伴いや疣贅状の増殖があり、ウイルス耐性を引き起こす可能性もある。重症の場合、肺、胃腸管、脳、その他の臓器にも波及して、帯状疱疹の発疹が現れる前に肝炎、膵炎、肺炎、心筋炎、食道炎、又は消化性潰瘍が発生するため、誤診され易い。
【0012】
VZVの弱毒株(OKA株)を接種した人、又はVZVに自然感染した人は防御免疫を得ることができる。OKA株生弱毒化ワクチンは、米国FDA、中国国家医療製品管理局、欧州連合、及びその他の機関によって、野生型水痘ウイルスによる子供への感染を防ぐための子供へのワクチン接種が承認され、高用量のOKA株生弱毒化ワクチンを、肋間神経痛などの帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる疾病を予防又は軽減するために、50歳以上の高齢者に使用するのは、米国FDA及び欧州連合によって承認されている。現在、欧州連合と米国を含む60以上の国と地域が、免疫機能が正常な50歳以上の人口に、帯状疱疹とPHNを予防するために、Zostavaxを接種することを推奨している。ワクチン接種方法は、上腕の三角筋領域にワクチンの単回投与(0.65mL、19,400PFUのウイルスを含む)を皮下注射することである。頭痛や注射の局所反応などの副作用がまれに発生することがある。大規模な多施設臨床試験によると、帯状疱疹の発生率は、ワクチン接種後に免疫機能が正常な50~59歳の人口では69.8%減少したが、60歳以上の人口では、帯状疱疹の発生率、PHN発生率、及び疾病負荷はそれぞれ51.3%、66.5%及び61.1%減少した。Zostavaxの予防効果は、ワクチン接種者の年齢とともに徐々に低下し、重度の免疫抑制と妊婦は、また、ワクチン接種の禁忌である。したがって、より安全性、効果的なワクチンを調製する必要性は、特に緊急である。GSKによって開発されたVZVgE組換えタンパク質とAS01Bアジュバントによって調製された帯状疱疹サブユニットワクチンは、免疫機能が正常な50歳以上の人へのワクチン接種は、帯状疱疹とPHNの発生率をそれぞれ97.2%と91.2%減少させ、70歳以上の人へのワクチン接種は、それぞれ89.8%と88.8%の発生率を減少させ、効果が弱毒生ワクチンZostavaxよりも優れていて、より良い応用の見通しが可能である。組換えVZVウイルスgEワクチンは、QS21、3D-MPL、及びホスファチジルコリンなどの油性アジュバントが含まれるAS01B希釈剤を使用し、その効果はVZV生弱毒化ワクチンZostavaxよりも大幅に優れているが、注射部位に一時的な結節や、結節の解消には長い時間がかかるという最大の欠点を有する。
【0013】
特許文献1は、水痘・帯状疱疹ウイルスの短縮型糖タンパク質Eの組換え発現方法とその応用を開示した。当該方法によると、膜貫通領域と細胞内領域が削除され、Hisタグが追加された水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の短縮型糖タンパク質E(gpE)の遺伝子を宿主細胞に導入し、発現により組換え水痘・帯状疱疹ウイルスの短縮型糖タンパク質Eが得られる。当該発現方法は、標的タンパク質の発現レベルを上げるのに役たち、下流の精製作業を簡素化し、タンパク質の大量生産を容易に実現する方法である。そして、捕捉抗原として当該組換えタンパク質を使用すると、血漿サンプルにおける抗水痘帯状疱疹ウイルスの特定免疫グロブリンの間接ELISA検出に使用でき、VZV感染症の臨床診断の精度を向上でき、また、VZV特異的免疫グロブリンのハイスループット検出を必要とする他の分野で使用できる。この方法は原核生物発現の非グリコシル化タンパク質のであるため、主にVZVの以前の感染の検出に使用され、血清中和VZV抗体を生成するために複雑なグリコシル化を必要とする免疫組成物又はヒトワクチンの調製には適していない。李福民らは、PCR方法を使用してVZV糖タンパク質E遺伝子を増幅する方法を開示し、それを真核生物の発現ベクターpcDNA3.1にクローニングし、二重酵素消化及び配列決定法で識別した。結果増幅された標的遺伝子には、約1.9KBの長さの完全長糖タンパク質E遺伝子が含まれ;そして糖タンパク質E遺伝子の組換え発現ベクターの構築に成功した(非特許文献1)。伊興旭らは、VZVgE細胞外ドメイン遺伝子を含む真核生物発現プラスミドpCDNA3.1-gEの構築を開示し、シーケンシング後、COS-7細胞をリポソームトランスフェクションし、VZVgEを安定的に発現する細胞株をG418でスクリーニングした。VZVgEのmRNAはRT-PCR法で検出され、イムノブロッティング及び間接免疫蛍光法により、gEの免疫反応性を検出し、発現した産物をNi++-NTAカラムで精製し、ELISAプレートにコーティングし、127人の0~10歳の正常な子供の血清におけるVZV-IgG抗体のレベルを検出した。結果VZVgE細胞外ドメイン遺伝子を安定して発現するCOS-7細胞株のスクリーニングに成功し、gEのmRNAはRT-PCRによって検出され、発現したgEは免疫反応性を有し、発現されたgEが免疫反応性を有すること、COS-7細胞株とその培養上清液はすべてがgEタンパク質の発現があり、発現レベルは約0.632g/mL、純度は約90%であることがイムノプリンティング及び間接免疫蛍光により同定された。ELISA試験では、127個の0~10歳の子供血清におけるVZV-IgG抗体が検出され、総陽性率は81.89%であり、特異度と感度はそれぞれ93.75%と88.24%だった(非特許文献2)。VZV糖タンパク質Eに関するこれらの研究は、主にタンパク質の真核細胞発現の実現に焦点を当てており、発現産物の純度は非常に低く、実際の検出ニーズを満たすことしかできず、ヒトワクチンの品質要件を満たすにはほど遠いし、発現産物の精製に関する後続研究が見られず、ヒト用ワクチンに関する報告もない。
【0014】
李春明らは、ヒト二倍体細胞(2BS株)にOka株VZV(VZV-Oka)を感染させ、ゲノムDNAを抽出し、テンプレートとして使用し、gE537標的断片をPCR増幅し、ベクターpCI-neoにクローニングし、組換え真核生物発現プラスミドpCI-neo-gE537-Hisを構築した。大量の増幅後、プラスミドを抽出し、293FT細胞にトランスフェクトし、一過性に発現させ、ニッケルカラムで精製して、標的タンパク質gE537-Hisを得る方法を開示した。精製された産物は、約90KDaの相対分子量でマウス抗gE糖タンパク質モノクローナル抗体のバンドに特異的に結合することができ、mAb-10及びmAb-12抗gEモノクローナル抗体と反応することがでる(非特許文献3)。伊興旭は、VZVgE遺伝子の細胞外ドメインのクローニングと発現の方法を開示し、具体的には、臨床的に収集された帯状疱疹患者の皮膚小水疱液をウイルス分離のために単層のヒト胚性線維芽細胞に接種し、ウイルス分離を実行する;分離されたウイルス株に対して特徴的な細胞変性効果(Cytopathic effect、CPE)、間接蛍光抗体法及びDNAシーケンシングの同定をする。確認されたVZVの臨床分離株をインビトロで培養し、VZVgE遺伝子の細胞外ドメイン断片をPCRで増幅して、原核生物発現プラスミドgE-pET-32a(+)と真核生物発現プラスミドgE-pCDNA3.1/myc-His(-)をそれぞれ構築し、シーケンシング後、原核生物プラスミドをE.coli BL21(DE3)コンピテントセルに形質転換し、イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside、IPTG)で誘導して、VZVgE原核生物発現融合タンパク質を得た。組換えタンパク質の特異性は、SDS-PAGE電気泳動及びウエスタンブロッティングによって同定され、Ni++-NTAカラムを使用して発現されたタンパク質は、精製され、カラム上でリフォールディングされた。真核生物プラスミドをリポソームで媒介してCOS-7細胞にトランスフェクトし、VZVgEタンパク質を安定的に発現する細胞株をG418でスクリーニングし、発現産物をNi++-NTAカラムで精製した;VZVgE遺伝子のmRNAをRT-PCRで検出し、ウエスタンブロットと間接免疫蛍光でgE融合タンパク質の免疫反応性を検出した。ニュージーランドのウサギを、精製された原核生物の発現gEタンパク質と真核生物の発現gEタンパク質でそれぞれ免疫して、ウサギ抗VZVgEポリクローナル抗体を得た(非特許文献4)。上記の結果では、動物細胞におけるVZVgEの発現を達成したが、得られた発現産物の純度は低いことを示している。
【0015】
Fc受容体は多くの自然免疫細胞の表面に発現しているため、DCターゲティングの研究にも広く使用されており、受容体が結合するさまざまな抗体サブタイプに応じて、Fc受容体はFcαR(IgA)、Fcα/γR(IgA及びIgM)、FcεR(IgE)及びFcγR(IgG)に分類される。また、Fc受容体は親和性に応じて高親和性受容体と低親和性受容体に分けられ、高親和性受容体はモノクローナル抗体に結合し、低親和性抗体はポリクローナル抗体に結合する。DCを標的とする研究では、FcγRを標的とする応用が最も初期であり、公開されている多くの研究は、FcγR標的がin vitroでの抗原提示の効率を大幅に向上でき、抗原とMHCIIへの結合を促進でき、FcγRを標的とする抗原は最終的にCD4T細胞に提示され、TH1シグナル伝達経路を活性化した(非特許文献5)。
【0016】
VZVgE(又は他の病原性微生物に由来する抗原)とDC受容体モノクローナル抗体Fc断片を融合して発現し、このように構築された融合タンパク質はDCsによって内在化され、エンドサイトーシス経路では、Fc組換えタンパク質又はFc結合タンパク質が細胞内プロテアーゼによって分解され、形成された抗原ペプチドはMHC-1及び/又はMHC-II分子にロードできる。このようなFcの媒介した方法の優れた利点は、抗原が抗原提示細胞に直接送達できるため、抗原提示の効率が向上し、また、この方法では、DCの表面にある特定の受容体を標的とすることにより、特定のシグナル伝達経路を選択的に活性化することもできる(非特許文献6)。
【0017】
本発明は、VZVウイルスgEタンパク質のペプチド鎖をコードする膜外領域をヒト免疫グロブリンのCH2-CH3領域をコードする遺伝子と連結し、標的遺伝子を真核細胞発現ベクターに挿入し、CHO細胞をトランスフェクトし、VZVを含むgE-Fc融合タンパク質の発現に成功した。組換えタンパク質は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーカラム及びモレキュラーシーブクロマトグラフィーにより精製され、そしてウイルス不活化によりウイルス汚染の可能性を排除して、高度に精製された融合タンパク質が得られた。当該融合タンパク質のFc断片は、人体の免疫系の樹状細胞の表面にあるFc受容体に結合でき、樹状細胞の抗原提示効率を高め、免疫後に高力価の血清中和抗体を産生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】中国特許102517302A
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Practical Journal of Clinical Medicine、2006年02期
【非特許文献2】Journal of Anhui Medical University、2015年03期
【非特許文献3】Chinese Journal of Biologicals、2016年11期
【非特許文献4】Anhui Medical University 修士及び博士論文
【非特許文献5】Dai X, Jayapal M, Tay HK, Reghunathan R, et al . Differential signal transduction, membrane trafficking, and immune effector functions mediated by FcγRI versus FcγRIIa. Blood.2009;114:318-27.
【非特許文献6】Caminschi I, Shortman K. Boosting antibody responses by targeting antigens to dendritic cells. Trends in immunology.2012;33:71-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、帯状疱疹及び/又は帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防及び/又はその重症度を軽減するための方法に関し、当該方法には、弱毒生VZV(OKA株)、又は完全に不活化されたVZVと組み合わせるVZV抗原又はその組換え免疫原性誘導体gEタンパク質を含む免疫原性組成物を個体に供給することが含まれる。
【0021】
また、本発明は、帯状疱疹の再活性化及び/又は帯状疱疹後神経痛を予防又は改善するための方法に関し、当該方法には、アジュバントと組み合わせたgE融合タンパク質又はその免疫原性誘導体又は免疫原性断片を含む免疫原性組成物又はワクチンを必要とする個体に配達することが含まれる。
【0022】
従来技術における上記の問題を考慮して、本発明の目的の1つは、哺乳類における高純度の水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質Eの発現による産物を得るために、水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質E-Fc遺伝子融合タンパク質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の上記の目的を達成するために、本発明によって使用される技術的解決策は以下の通りである。
組換え水痘・帯状疱疹ウイルスワクチ製剤であって、弱毒生VZV株(OKA株)遺伝子の組換え糖タンパク質gEの細胞外領域のアミノ酸配列と、ヒト免疫グロブリンのFc断片によって形成される融合タンパク質を含み、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は配列番号1である。
【0024】
本発明の前記ワクチン製剤は、さらにワクチンアジュバントを含み、前記ワクチンアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント、リン酸アルミニウムアジュバント、又は水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムアジュバントの混合物から選択される。
【0025】
本発明の前記ワクチン製剤は、各投与ユニットに5~200μgの融合タンパク質が含まれている。
【0026】
本発明の前記ワクチン製剤は、各投与ユニットには、10~100μgの融合タンパク質が含まれている。
【0027】
本発明の前記ワクチン製剤は、各投与ユニットには、20~60μgの融合タンパク質が含まれている。
【0028】
本発明の前記ワクチン製剤は、さらに、ホスファチジルコリン、レシチン、3D-MPL、長鎖脂肪酸(エステル)、鉱油、植物油、メチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びコレステロールを含むリポソームの組成物を含み、これらに限定されない免疫原性を高めることができる他の物質も含まれている。
【0029】
本発明の前記ワクチン製剤は、凍結乾燥製剤である。前記凍結乾燥製剤は、使用前に水酸化アルミニウムアジュバント懸濁液を添加して溶解させ、均一に混合した後に筋肉内又は皮下に注射する。
【0030】
本発明はさらに、本発明の前記融合タンパク質を発現でき、そのDNA配列が配列番号2である組換え遺伝子を提供する。
【0031】
本発明の前記融合タンパク質(以下、gE-Fc又はVZVgEと略す)発現ベクターは、gE-Fc融合遺伝子を真核生物の哺乳類細胞発現ベクターに挿入することによって形成される。
【0032】
本発明の前記融合タンパク質は、人体の免疫系を効率的に誘発して免疫応答を生じさせることができる外因性抗原又はその誘導体であり、前記免疫応答とは、生体の免疫系が応答して高力価の血清中和抗体を産生するように誘導することである。このような応答は、集団における帯状疱疹疾患の発生率を減らすことができ、又は帯状疱疹によって引き起こされる肋間神経痛などの痛みや症状を軽減できる。血清中和抗体レベル又はVZVgE(グリコシル化タンパク質)ELISA抗体レベル測定などの当技術分野の一般的な技術を使用して免疫応答の改善を評価し又は、既知の臨床基準を使用して臨床症状又は徴候レベルの改善を評価する。
【0033】
好ましい実施形態として、上記の発現産物は、アルミニウムアジュバント又は免疫原性を高める他の薬物と混合して調製でき、50歳以上高齢者の帯状疱疹によって引き起こされる肋間神経痛などの感染症の予防に使用でき、同時に、乳児の水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症の予防にも使用できる。
【0034】
さまざまなウイルスの防御抗原と同様に、VZVの防御抗原も糖タンパク質、特に糖タンパク質gEのようなVZVの主要なグリコシル化タンパク質は、その多様なグリコシル化形態は、VZVの主要な中和抗原を形成し、既存の研究では、gEタンパク質に対する血清抗体がVZVを中和できることが確認されている。
【0035】
他の適切な抗原には、さらに例えばgB、gH、gC、gI、IE63(例えば、HuangなどJ.Virol.1992、66:2664、SharpなどJ.Inf.Dis.1992、165:852、Debrus、JVirol.1995May;69(5):3240-5及びその中の参考文献を参照)、IE62(ArvinなどJ.Immunol.1991146:257、Sabella J Virol.1993Dec;67(12):7673-6及びその中の参考文献を参照)、ORF4又はORF10(ArvinなどViralImmunol.2002 15:507.)などの様々な糖タンパク質も含まれるが、VZV膜上でのこれらの糖タンパク質の存在量は、gEの存在量よりも低く、VZV中和抗体を産生するための生体の主要な供給源を構成していない。
【0036】
本発明は、哺乳動物発現系におけるVZV糖タンパク質E遺伝子の高効率発現を実現し、アミノ酸配列を変更せずに、CHO細胞の優先コドンである最適化コドンに従って、VZV糖タンパク質Eの細胞外領域遺伝子を合成し、gE-Fc融合遺伝子を構築した後、これを使用して真核生物の発現ベクターを構築し、それをCHOK1細胞にトランスフェクトし、Protein AアフィニティークロマトグラフィーHPLCを使用してそのタンパク質発現状況を検出し、ELISAを使用してVZVgEとヒト抗水痘ウイルス特異的免疫グロブリンの結合活性を検出して、CHO細胞におけるVZV糖タンパク質E遺伝子の分泌及び発現が実現できたことを実証した。高度に精製されたVZVgE免疫ウサギとBALB/Cマウスの免疫血清がOKA株ウイルスを中和する血清中和試験で、発現したVZVgE-Fcタンパク質は、良好な免疫原性を有し、2回の免疫後、高力価の血清中和抗体を産生できたことが証明された。
【0037】
VZVgE抗原の投与量は、明らかな有害な副作用なしに免疫防御応答を引き起こすように生体を誘導できる投与量である必要がある。使用される抗原の量は、使用されるアジュバントとその存在方法によって異なる。一般に、各用量には約2~1000μgのVZVgEが含まれると予想される;人体に使用する場合、注射回数を減少させるためにアルミニウムアジュバントを吸着に使用でき、アルミアジュバントを使用して吸着する場合、5~200μgのVZVgEを使用すれば、高力価の中和抗体を産生できることが予想され、好ましい用量は約10~100μgであることができ、適切な免疫用量は約10μg、25μg、50μg、100μgVZVgE、又は約200μgVZVgEであることができ、成人の最適用量は50μg又は100μgVZVgEであることができ;乳幼児の最適用量は10μg、20VZVgEであることができる。
【0038】
本発明のワクチン製剤の投与方法は、例えば、局所、鼻腔内、粘膜、皮内、腹腔内、皮下及び筋肉内注射投与を含む。
【0039】
本発明のワクチン製剤は、任意選択で、アジュバント及び/又は(他の)適切な担体と組み合わされる。
【0040】
予防接種の強化プログラムを使用する場合、又は複数回ワクチン接種プログラムの場合は、2、3、4回又はそれ以上の予防接種を使用することができる。強化を刺激するのに適したプロトコールには、各予防接種の間に1、2、3又は6ヶ月の間隔があることが含まれる。
VZVgE被膜外領域の配列は、本発明の附属書1に記載されている配列の一部を有し、VZVgEの完全な配列は、ウイルス研究で最初に公開された(Virus Research、HaumontなどVol.40、1996p199-204)。
【0041】
文脈で明示されていない限り、以下で言及されるVZVgE又はgEには、切断して得られたVZVgE又はVZVgE-FCの他の断片又は誘導体が含まれる。
【0042】
gE又はその誘導体又は断片は、液体又は凍結乾燥されていて、一方では、gE又はその誘導体gE-Fc又はその断片、ポリマーは、アルミニウムアジュバントを含む懸濁液の中に存在でき、又は他の免疫増強剤成分(例えばQs21、コレステロール、鉱油、植物油、魚油、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル及び3D-MPLアジュバントなど。)を含む溶液又は懸濁液の中に存在できる。
【0043】
gE又はその誘導体は、ポリ乳酸マイクロキャリア、又はグリコリド/ラクチド共重合体によって形成されたマイクロキャリアにカプセル化でき、形成されたマイクロキャリアを筋肉又は皮下に注射した後、カプセル化された組換えタンパク質薬物を一定期間かけて徐々に放出して、生体の免疫系を刺激して抗体を産生ようにすることができる。
【発明の効果】
【0044】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する:
1.本発明は、哺乳動物細胞(CHO)を用いて分泌型gE-Fc融合タンパク質を効率的に発現し、得られる標的産物はグリコシル化タンパク質であり、発現産物は主に二量体であり、その次が単量体である;各二量体型分子には4個分子のgEが含まれ、本発明によって産生される融合タンパク質は、分子量が大きく、免疫原性が強い。
【0045】
2.本発明のgE-Fcは、VZVgE外膜領域とヒト免疫グロブリンFc断片(CH2-CH3領域)の融合タンパク質であり、市販のProteinAアフィニティークロマトグラフィーパッキングを使用することにより、高効率の予備分離と精製を実行でき、環境汚染物質の排出を最小限に抑え、これは環境にやさしい分離プロセスであり、後続のステップでのイオン交換クロマトグラフィー、分子サイズ排除クロマトグラフィーなどによる標的タンパク質に対するさらなる精製に有利である;
3.本発明のCHO細胞によって発現される組換えgE-Fc融合タンパク質は、グリコシル化タンパク質であり、天然のgEタンパク質の空間構造を維持したので、良好な免疫原性を有し、大規模な促進の見通し及び利点を有する。
【0046】
4.本発明によって提供されるgE-Fc融合タンパク質のFcは、ヒト免疫系に存在する抗原提示細胞の表面上のFc受容体に結合して、gE抗原を主導的に提示できる。動物の免疫原性実験の結果は、本発明の組換えCHO細胞によって産生されたgE-Fcタンパク質を抗原として使用して、油性アジュバント及び免疫刺激剤を使用せずにウサギとマウスを免疫した後でも、高力価の血清中和抗体を産生できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】VZVgE-Fcプラスミド酵素切断した産物のアガロースゲル電気泳動検出 レーン1:DL10000 DNA Marker(10000bp、7000bp、4000bp、2000bp、1000bp、500bp及び250bp) レーン2-3:プラスミドpUC57-gE-Fcの酵素切断産物 レーン4-5:プラスミドpXC-K383Lの酵素切断産物。
図2】VZVgE-Fc組換えプラスミドコロニーのPCRによる陽性クローンのスクリーニング レーン1:DL10000 DNA Marker(10000bp、7000bp、4000bp、2000bp、1000bp、500bp及び250bp) レーン2-7:コロニーPCRによるスクリーニングで、ランダムに選んだ6つのクローンgE-Fc-1~6。
図3】プラスミド発現ベクターの線形化し、酵素切断産物のアガロースゲル電気泳動検出 レーン1:DL10000 DNA Marker(10000bp、7000bp、4000bp、2000bp、1000bp、500bp及び250bp) レーン2:プラスミドpXC4-VZVgE-Fc レーン3:線形化されたプラスミドVZVgE-Fc-straight。
図4】アフィニティークロマトグラフィーで精製した組換えVZVgEタンパク質のHPLC-SECクロマトグラム。
図5】組換えVZVgEタンパク質のHPLC-SECクロマトグラム。
図6】各用量のVZVgEアルミニウムアジュバントワクチンで免疫されたマウスの血清抗体価(幾何平均抗体価GMT)。
図7】組換えVZVgEアルミニウムアジュバント吸着ワクチンでBALB/Cマウスの免疫後の血清中和抗体価の測定。
図8】異なる用量のVZVgEアルミニウムアジュバントワクチンでBALB/Cマウスを免疫した後の中和抗体の幾何平均抗体価。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0049】
実施例1、プラスミド発現ベクターの構築:
1.遺伝子配列の供給源
本発明の前記水痘帯状疱疹ウイルスEタンパク質(VZVgE)は、gEタンパク質の細胞外領域(ECD、31-546aa)であり、合計516個のアミノ酸を有する;FcセグメントはヒトIgG1Fcであり、合計232個のアミノ酸がある(付録:アミノ酸配列1)。水痘帯状疱疹ウイルスEタンパク質遺伝子とヒトIgG1のFcの遺伝子を直列に接続し(付録:DNA配列2)、南京キングスレイバイオテクノロジー株式会社に委託し、合成されたVZVgE-Fc融合タンパク質遺伝子配列をpUC57-1.8Kベクターへ接続させ、合成された遺伝子には、酵素切断制限部位、Kozak配列、シグナルペプチド、標的遺伝子(2244bp)、及び終止コドンが含まれ、全長は合計2355bpである。組換え遺伝子は、チャイニーズハムスター卵巣細胞Cricetulus griseus(CHO細胞)での発現を促進するために、合成中にコドン最適化された。
【0050】
2.VZVgE-Fc遺伝子を含む発現プラスミドの構築
キングスクリプトバイオテクノロジー株式会社から提供された組換え遺伝子を含むグリセロール株をLB(Amp)培地に接種し、37℃、180rpmで15時間培養し、プラスミドpUC57-gE-FcをTaKaRa MiniBEST Plasmid Purification Kit Ver.4.0を使用して抽出した;HindIII及びEcoRを使用してpUC57-gE-Fcプラスミドを2種類の酵素で切断(Double Digestion)して、標的遺伝子断片gE-Fc-H/E(サイズ約2300bp)を取得し、哺乳動物細胞発現プラスミドpXC-K383Lを酵素で切断して、ベクター断片pXC-H/E(サイズ約7000bp)を取得する;酵素で切断した産物のアガロースゲル電気泳動検出は図1に示す。
【0051】
TaKaRa MiniBest Agarose Gel Extraction Kitを使用して、標的断片を回収する(図1の矢印で示す)。粘着末端ライゲーション技術を使用して、回収された酵素で切断した産物gE-Fc-H/E及びpXC-H/Eを、TaKaRa DNA Ligation Kit LONG(TaKaRa)によって16℃で6時間ライゲーションした後、コンピテントDH5αに形質転換し、37℃で15時間の逆培養する;コロニーPCRで2つのクローンであるgE-Fc-1及びgE-Fc-2をスクリーニングした(図2);pXC-FとpXC-Rをプライマーとして使用し、プラスミドgE-Fc-1をテンプレートとして使用して標的遺伝子をPCR増幅させ、サイズは約2400bpである;増幅産物は北京華大遺伝子によって遺伝子配列測定を完成し、2つの反応が追加されて配列決定が完了した;ソフトウェアBioEdit7.0.9.0を使用して配列結果を分析すると、クローンされたgE-Fc-1の配列と設計された配列は完全に一致していた。配列プライマーは次のとおりである。
pXC-F:5’-TAACAGACTGTTCCTTTCCATG-3’
pXC-R:5’GTAAAACCTCTACAAATGTGGT-3’
1-F:5’-AGCACATCTGCCTGAAGC-3’
1-F1:5’-GCTTATTGTCTGGGCATCT-3’
クローンのgE-Fc-1を300mlLB(Amp)培地に接種し、37℃、180rpmで16時間培養し、大量/大型のプラスミド抽出キット(北京ボメッド遺伝子工学株式会社)を使用して、プラスミドpXC-VZVgE-Fcを抽出する;プラスミドはエンドヌクレアーゼPvuI(TaKaRa)によって線形化された後、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを使用して抽出及び精製し、エタノールによる沈殿の後、1mlの滅菌TEバッファー(TaKaRa)に再溶解した。プラスミドpXC-VZVgE-Fc及び線形化されたプラスミドVZVgE-Fc-straightのゲル電気泳動検出は図3に示す。
【0052】
実施例2.安定的なクローン株の確立及びスクリーニング
無菌層流ワークベンチで、遺伝子パルス発生器Xcell(Bio-Rad)の穿孔電圧を300V電圧、900μFの単一パルス、及び無限抵抗に設定し、4mmのギャップのある使い捨て電気ショックカップ(Bio-Rad)を取り出し、40μgの線形化されたプラスミドDNA(100μl)及び0.7mlのCHO K1細胞懸濁液(1.5×10cells/ml)を加え、線形化されたプラスミドVZVgE-Fc-straightは、エレクトロトランスフェクション法によってCHOK1細胞内にトランスフェクトされ、電気ショックカップ内の細胞を三角培養フラスコに移し、30mlのCD CHO液体培地(GIBCO)を加え、36~37℃、5%COシェーカーで培養し、135rpm/分間で24時間のインキュベーション後、低速で遠心分離して細胞を収集し、50μM MSXを含むCDCHO培地に交換し(グルタミンを含まない)、限界希釈法により、細胞を96ウェル平底培養プレートに移し、培養プレートを37℃、10%COのインキュベーターに入れて培養し、倒立顕微鏡で観察し、モノクローナル細胞の細孔を標識し、その後ELISAの方法(ヤギ抗ヒトIgG+発現産物VZVgE-Fc+ヤギ抗ヒトIgG-HRP)及びprotein A HPLC方法を使用して、より高い発現レベルのモノクローナル株をスクリーニングし、継続的な継代培養し、検出して、最後に、標的遺伝子の発現が高い3つの細胞クローン株が得られ、クローン番号はそれぞれ5B3、8D8及び12C3である;流加培養試験とHPLCにより、培養上清中の組換えタンパク質の発現の量を検出して、スケールアップ試験用に5B3クローン株を選択した。
【0053】
実施例3.標的産物の発現及び精製
得られた5B3クローン株を500mlのCD CHO培養液を入れた2L三角フラスコに接種し、通気性のある瓶のキャップを締め、回転シェーカーで36~37℃、5%CO、135r/minで培養し、4日間の培養後、5B3細胞を2.0L CD Opti-CHO培養液を含む5L自動バイオリアクターに移し、培養パラメーターを60r/min、温度36.5℃、pH7.0~pH7.4、溶存酸素DO 40%~60%に設定し、毎日サンプルを取って細胞の生存率、細胞密度、及びグルコース含有量を検出すると、4日間の培養後、生存細胞密度は5×10~7×10cells/mlに増加し、200ml~300mlのCD Efficient Feed Cを追加してから、1日おきに1回追加し、培地中のグルコース含有量を毎日測定し、グルコース含有量が11.1mmole/L未満の場合は、グルコース含有量が22mmole/Lに達するまで、蠕動ポンプを介して自動バイオリアクターに40%グルコース溶液を追加する;12~14日間培養して、生細胞の割合が60%~70%に低下した時点で、培養を停止し、12000r/minで遠心分離(又は3M深層濾過器を使用)して細胞と細胞破片を除去し、細胞培養物上清を収集する。培養物上清を0.45μmフィルターメンブレンで濾過し、濾液を40mM PBS(pH7.4、150mM NaCl)であらかじめ平衡化したProtein Aゲルクロマトグラフィーカラム(MabselectTM Sure,MabSelectTM Sure LX,MabCaptureTM A,AT Besterose Aなど)に通し、次に40mM PBSを使用してA280がベースラインレベルに戻るまで2~4個カラム容量のフローウォッシュをする;フローウォッシュを100mMグリシン-塩酸バッファー(又はクエン酸-クエン酸ナトリウムバッファー、酢酸-酢酸ナトリウムバッファー、pH3.0~4.0)に変更し、コンジュゲートを溶出し、収集した溶出物を室温(18~25℃)で30分間(低pHでウイルスを不活化)静置し、その後0.2M NaHP0でpHを7.4~8.0に調整し、0.45μmフィルターメンブレンで濾過し、不溶性粒子をさらに除去する。Protein Aアフィニティークロマトグラフィーで精製して得られたタンパク質溶液は、島津LC-20AT HPLC(BioCore SEC-500、7.8mm×30cm、蘇州Naweiバイオテクノロジー株式会社)の検出によると、メインピーク(二量体)の割合が約65%~78%を占め、モノマーは約20%~30%を占め、メインピークの前にまだ一部のポリマー産物があり、比率は一般的に10%未満であり、クロマトグラムを図4に示す。
【0054】
次に、収集した標的産物を含むタンパク質溶液を、20mM PB(pH7.4~8.0)バッファーで平衡化されたDEAE Sepharose4 Fast Flow(又はQ Sepharose4Fast Flow,NanoGel 50Q、Besterose DEAE,Besterose Q,POROS Q,POROS XQ等)にロードした後、A280がベースラインレベルに戻るまでカラムを20mM PBバッファーでフローウォッシュし、異なる濃度のNaCl溶液を順番に使用してグラジエント溶出を行い、標的タンパク質VZVgEを収集し、1.0MNaCl溶液で陰イオン交換クロマトグラフィーカラムのカラム1個の容量を再生し、最後に、20mM PB(pH7.4~8.0)バッファーで平衡化して予備する。
【0055】
得られたVZVgEは、さらにSephacryl S400 HR、又はその他の適切なモレキュラーシーブクロマトグラフィーカラムで精製され、標的の産物を収集し、滅菌、濾過した後に、2~8℃で保存する。
【0056】
精製されたVZVgEは、島津LC-20ATHPLCによって純度が試験され、移動相は40mMPBS(0.5M NaSO、pH7.5を含む)で、流量0.750ml/minであり、分析カラムはBioCoreSEC500(7.8×300mm、ナウェイテクノロジー株式会社、又はTSK 5000 SWxl、東洋ソーダ株式会社)であり、A280の試験結果は、VZVgEの純度が98%以上であることを示し、結果を図5に示し、相対分子量は約400KDaである。
【0057】
実施例4ホルムアルデヒドによる標的産物の不活性化
実施例3で得られた組換えVZVgEを20mM PBS(pH7.2~8.0、135mM NaCl)で100μg/ml~1000μg/mlに希釈し、38%ホルムアルデヒド溶液を溶液総量の0.1%(v/v)まで加え、37℃で72時間静置し、この期間中1日2回振とうし、よく混合してから、溶液を2~8℃で静置した。
【0058】
実施例5β-プロピオラクトンによる標的産物の不活性化
実施例3で得られた組換えVZVgE溶液を2~8℃に冷却し、秤量した後、溶液の重量の0.1%~0.01%の最終濃度になるまでβ-プロピオラクトンを添加し、2~8℃でまた72時間静置し、この期間中、毎日2回振ってよく混ぜる。72時間後に、β-プロピオラクトンを乳酸に完全に変換させるために、VZVgE溶液を37℃に加熱して4時間維持させ、次に溶液を2~8℃で静置した。
【0059】
実施例6標的産物からのホルムアルデヒド又はβ-プロピオラクトンの除去
実施例5又は実施例6で得られた組換えVZVgEを含むタンパク質溶液を、20mMのPB(pH7.2~8.0、又は20mMのTris-HCl溶液pH7.2~8.0)で適切に希釈して、溶液中のNaClの濃度を50mM以下になるまで下げ、次にVZVgEを含む溶液を20mMPB(又は20mM Tris-HCl、pH7.2~8.0)で平衡化されたDEAE Sepharose 4FFカラムに流した後、20mM PB(又は20mM Tris-HCl溶液、PH7.2~8.0)でA280がベースラインレベルに完全に戻るまでフローウォッシュを続け、4個カラム容量に相当する液量のフローウォッシュを続け、0.4M NaCl(20mMPB又は20mMTris-HCl溶液を含み、pH7.5)を含む溶出液を使用して、ゲルに結合したVZVgEを溶出させ、標的産物を含む溶液を収集し、0.2μm孔径の滅菌フィルターメンブレンで濾過し、収集した濾液がワクチン原液である。
【0060】
実施例7アルミニウムアジュバントを含むワクチンの調製
実施例6で得られたワクチン原液を、20mM Tris-HCl(pH7.2~7.5,135~150mMの NaClを含む)で10μg/ml~800μg/mlに希釈し、室温で等量の水酸化アルミニウムアジュバント懸濁液(アルミニウム含有量0.2~1.5mg/ml)と混合し、2~8℃で静置する。
【0061】
アルミニウムアジュバントを含むワクチン溶液を2~8℃から取り出し、無菌状態で2mlのバイアル瓶(又はプレフィルドガラスシリンジ)に分装し、各瓶は0.5mL(又は1.0mL)にし、密封後は2~8℃で光を避けて保管した。
【0062】
次の表は、VZVgE含有量の異なる容量が1000mlであるのワクチンの調製を例として取り上げ、(左から1列目は、調製した各1mlワクチンにおける抗原含有量であり、右から1列目は、通常の筋肉内注射用の0.5mlワクチンの抗原含有量である)、VZVgEを含む濃度が800μg/mlのワクチン原液を使用して、アルミニウムを含むアジュバントワクチンを調製し、調製方法は以下のとおりである。
【0063】
表1、異なる抗原含有量のVZVgEアルミニウムアジュバントワクチン溶液の調製
【表1】
【0064】
実施例8組換えのVZVgE融合タンパク質の凍結乾燥
実施例6で得られたワクチン原液を、20mMのTris-HCl(pH7.2~7.5、135mM NaClを含む)で40μg/ml~800μg/mlに希釈し、10%スクロース(又は10%トレハロース、10%マンニトール、10ラクトース)最終濃度が3%になるまで溶液を追加し、分けて入れる溶液におけるVZVgEの濃度を20μg/ml(又は50、80、100、200、400μg/ml)に調整し、均一に混合した後、2mlのガラスバイアル瓶に分装し、各瓶10mlずつ、ブチルゴムを半打栓した後、凍結乾燥チャンバーに送り、予備凍結の温度を-40~-45℃に設定して、4時間凍結した後、真空及び凍結乾燥を開始し、自動加熱プログラムを使用して温度を制御し、温度を-40~-25℃から6時間加熱し、-25~-5℃から4時間加熱し、0~5℃で1時間維持し、25℃で1時間維持し、35℃で6~8時間維持し、次に、真空状態で(又は高純度窒素又はアルゴンガスを吹き入れ、栓を押し込む)ブチルゴム栓をしっかり押し込む。
【0065】
栓をしたバイアルを自動凍結乾燥機から取り出し、自動キャッピング機に送り、アルミキャップをロックする。次に2~8℃の冷蔵に移して保存する。
【0066】
使用前に、使い捨て滅菌注射器を使用して、注射用水1.0ml又は水酸化アルミニウムアジュバント懸濁液を凍結乾燥VZVgEが入っているバイアルに注入し、穏やかに混合し、約5分後、目に見える粒子が存在しないワクチンになる。ワクチンは、溶解した直後、又は遅くとも30分以内に使用する必要がある。本発明のワクチンは皮下又は筋肉内注射に使用され、静脈内注射は厳禁である。
【0067】
実施例9動物免疫実験
VZVgE100μg/mlを含むアルミニウムアジュバント吸着のワクチンを2~8℃の冷蔵から取り出し、20mM Tris-HClで、VZVgE8μg/ml、2μg/mlを含む溶液に希釈し、次に、等容量のアルミニウムアジュバントを添加して、VZVgE4μg/ml、1μg/mlを含む(又はVZVgEを2μg/ml、0.5μg/0.5mlを含む)動物実験用のアルミニウムアジュバントワクチンに調製した。
【0068】
4~6週齢の雌のBALB/Cをランダムに各グループに8匹ずつ5つのグループに分け、対照グループの各マウスに0.5mlのアルミニウムアジュバントを腹腔内注射し;4つの実験グループは、0.5mlのアルミニウムアジュバント吸着を含むVZVgE抗原50、10、2、0.5μgを、それぞれ腹腔内注射し、各用量グループに、8匹のマウスを注射する;初回免疫後、2週間に1回免疫して、合計4回免疫し、第2回目、第3回目の免疫から7日後に、尾静脈から採血し、血清を分離した後、-70℃で凍結保存し、第4回目の免疫から7日後に心臓から採血し、血清を分離し、分離後-70℃で凍結保存した。
【0069】
ELISA抗体力価検出:組換えVZVgE-Hisタンパク質を炭酸緩衝液で1μg/mlに希釈し、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar)をウェルあたり100μlでコーティングし、37℃で1時間静置した後、2~8℃で一晩静置する;96ウェルプレート内の液体を捨て、20mM PBSで3回洗浄し、次に200μlのブロッキング溶液(2%ウシ血清アルブミン、成分V)を各ウェルに加え、室温で60分間ブロックする;ウェル内のブロッキング溶液を吸引し、20mM PBS-T溶液で3回洗浄し、1:50(又は1:500、又は1:1000)に前希釈したマウス血清を96ウェルマイクロタイタープレートの第1列目のウェルに加え、次に2倍系列の倍希釈を行い、陰性対照は、アルミニウムアジュバントのみを使用して腹腔内免疫したマウスの血清(1:100)であり、37℃で60分間反応させ、ウェル内のブロッキング溶液を吸引し、20mM PBS-T溶液を使用して3回洗浄した;ヤギ抗マウスIgG-HRPコンジュゲートを取り出し、酵素コンジュゲート希釈液1:100(希釈液にはヒトIgG 1mg/mlが含まれ)で希釈し、室温で30分間前反応させてから、96ウェルマイクロタイタープレートに加え,ウェルあたり100μlであり、37℃で30分間反応させる;ウェル内のブロッキング溶液を吸引した後、20mM PBS-T溶液を使用して3回洗浄し、各ウェルに100μlのTMB発色溶液を加え、10分後に50μlの停止溶液を加えて反応を停止させ、次にTECAN Infinit 200マイクロプレートリーダーを使用してA450吸光度値を測定し、陰性対照グループの混合血清A450の3倍をCut-Off値とし(陰性対照A450の値が0.100未満の場合、0.100として計算)、免疫後の血清の力価を判定する。各実験グループのマウスの血清における抗VZVgE抗体価の幾何平均値と標準偏差を以下の表2に示す;2回免疫後、抗体陽転(seroconversion)しなかった最低用量グループ(0.5μg)の1匹マウスを除いて、すべてのマウスが抗体陽転(seroconversion)である;各グループの実験動物に対する測定の抗体力価の統計分析では、各用量グループの実験マウスは3回免疫した後、血清抗体価は2回の免疫した後より明らかに高く、第4回目の免疫後も血清抗体価は、部分的に上昇はあるが、その上昇は明らかではない;第2回目、3回目、4回目の免疫後、3つの高用量グループマウスの血清力価に有意差がなく、血清における抗体価にも有意差がない。各用量のVZVgEアルミニウムアジュバントワクチンでBALB/Cマウスを免疫した後の血清抗体価は図6に示す。
【0070】
血清の中和抗体価の測定:VZVウイルスは、ヒト胚の肺二倍体細胞に細胞融合病変を生じさせることができるウイルスであるため、ウイルスプラーク減少中和試験で血清希釈度の異なる抗体の中和能を検出し、ウイルスの数を50%減らす血清力価を計算できる。血清抗体中和ウイルス実験は、免疫された血清中のVZVウイルスを中和できる抗体の存在の有無を検出するための最も直接的な実験であり、当該実験には、操作が複雑で、感度が低く、人員が多く、時間がかかり、設備を使用して自動的に読み、判断できないなどの欠点があり、さらに、ED50の計算には専門のデータ処理ソフトウェアが必要であり、上記の不便さにより、血清中和抗体の測定にこの実験を使用する人はほとんどいない。当該実験に使用される血清の量が多いため、最後の免疫後に収集したマウスの血清に対してのみ中和抗体の測定を行った。
【0071】
この試験は、平底の96ウェルマイクロタイタープレートで実行されるVZV血清中和試験であり、細胞マトリックスはVZVに敏感なMRC-5細胞である(ATCCから購入)。-70℃の冷蔵庫から凍結保存した血清を取り出し、室温で溶かした後、無菌浄化作業台で試験する血清を、10%FBSを含む199培地(GIBCO)で、まず1:10に希釈し、次に、96ウェルプレートで4倍段階希釈を実行し、合計7つの希釈度があり、各希釈度は2つのウェルで測定され、陽性対照血清はウサギ抗VZVgE血清であり、陰性対照血清は、アルミニウムアジュバント(1:10希釈)で免疫したマウスの混合血清であり、各96ウェルプレートには、6つウェルのウイルス液体のコントロールウェルと6つウェルの細胞コントロールを設置し;試験対象とする希釈された血清を一定量のOKA株ウイルス(ATCC、USAから購入)と混合し、96ウェルマイクロプレートカバーをカバーし、マイクロプレートシェーカーで30秒振とうし、次に、10%CO、37℃インキュベーター(10%)に30分間入れて反応させる。
【0072】
増殖で覆われた単層のMRC-5細胞(ATCC、世代25~38代)を二酸化炭素インキュベーターから取り出し、T75培養瓶(Corning)内の培地液は、100グレードの清潔な作業台で吸引され、5mlの0.25%パンクレリパーゼ(GIBCO)溶液を添加して、単層に増殖したMRC-5細胞を消化し、室温で3分間作用させ、パンクレリパーゼ溶液を吸引した後、10mlの細胞培養液を加え、細胞培養瓶の内面をやさしくブロー・ビートして、MRC-5細胞を分散させ、一定量の細胞培養液を加えて細胞懸濁液を作る。試験対象とする血清を含む96ウェルマイクロプレートをインキュベーターから取り出し、細胞懸濁液をマルチチャンネルピペットで加え、マイクロプレートを覆い、マイクロプレート発振器上で30秒間振動させ、37℃の二酸化炭素インキュベーター(10%)に入れて3~4日間培養し、48時間後、毎日倒立顕微鏡で各ウェルの細胞病変を観察して、各穴のプラークの数を正確に数えて記録した。96時間後、12連ピペットを使用してウェル内の液体を、0.1%次亜塩素酸ナトリウムを含む廃液タンクへ吸引して、0.1%クリスタルバイオレットを加えて1時間染色し、脱色後、マイクロウェルプレートを吸収紙上に逆バックバックし、室温で乾燥させる。
【0073】
各血清の各希釈度のプラーク数をEXCEL2016表に入力し、ウイルス溶液ウェル内のプラークの平均数(6ウェルの平均値、25~30個/ウェル)を100%とし、各希釈度における血清のプラーク減少数を計算し、それをパーセンテージに変換し、次に、Prism5.0ソフトウェアを使用して、データのED50値を計算、このED50値は、プラークの数が50%減少した血清力価であり、4つの用量グループにおける各マウスの血清中和抗体力価であるED50の決定曲線は、図7を参照し、各用量グループにおける血清中和抗体価の幾何平均抗体価及び中和抗体力価の分布は、表3を参照する;各用量グループにおけるVZV血清中和抗体価の幾何平均抗体価の比較は図8を参照し、図からは、中和抗体価が他の3グループより明らかに低い最低用量グループを除いて、他の3つの各グループの血清中和抗体価はいずれも比較的に高いレベルに達したことか分かる。
【0074】
表2、異なる用量のVZVgEアルミニウムアジュバントワクチンで免疫されたBALB/Cマウスの血清抗体価(ELISA)
【表2】
【0075】
表3.異なる用量のVZVgEアルミニウムアジュバント吸着ワクチンでBALB/Cマウスを免疫した後の血清中和抗体価
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2022515271000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
Fc受容体は多くの自然免疫細胞の表面に発現しているため、DCターゲティングの研究にも広く使用されており、受容体が結合するさまざまな抗体サブタイプに応じて、Fc受容体はFcαR(IgA)、Fcα/γR(IgA及びIgM)、FcεR(IgE)及びFcγR(IgG)に分類される。また、Fc受容体は親和性に応じて高親和性受容体と低親和性受容体に分けられ、高親和性受容体はモノクローナル抗体に結合し、低親和性受容体はポリクローナル抗体に結合する。DCを標的とする研究では、FcγRを標的とする応用が最も初期であり、公開されている多くの研究は、FcγR標的がin vitroでの抗原提示の効率を大幅に向上でき、抗原とMHCIIへの結合を促進でき、FcγRを標的とする抗原は最終的にCD4T細胞に提示され、TH1シグナル伝達経路を活性化した(非特許文献5)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
従来技術における上記の問題を考慮して、本発明の目的の1つは、哺乳類における高純度の水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質Eの発現による産物を得るために、水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質E-Fc融合タンパク質の遺伝子を提供することである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
図1】VZVgE-Fcプラスミド酵素切断した産物のアガロースゲル電気泳動検出 レーン1:DL10000 DNA Marker(10000bp、7000bp、4000bp、2000bp、1000bp、500bp及び250bp) レーン2-3:プラスミドpUC57-gE-Fcの酵素切断産物 レーン4-5:プラスミドpXC-K383Lの酵素切断産物。
図2】VZVgE-Fc組換えプラスミドコロニーのPCRによる陽性クローンのスクリーニング レーン1:DL10000 DNA Marker(10000bp、7000bp、4000bp、2000bp、1000bp、500bp及び250bp) レーン2-7:コロニーPCRによるスクリーニングで得られた6つのクローンgE-Fc-1~6。
図3】プラスミド発現ベクターの線形化し、酵素切断産物のアガロースゲル電気泳動検出 レーン1:DL10000 DNA Marker(10000bp、7000bp、4000bp、2000bp、1000bp、500bp及び250bp) レーン2:プラスミドpXC4-VZVgE-Fc レーン3:線形化されたプラスミドVZVgE-Fc-straight。
図4】アフィニティークロマトグラフィーで精製した組換えVZVgEタンパク質のHPLC-SECクロマトグラム。
図5】組換えVZVgEタンパク質のHPLC-SECクロマトグラム。
図6】各用量のVZVgEアルミニウムアジュバントワクチンで免疫されたマウスの血清抗体価(幾何平均抗体価GMT)。
図7】組換えVZVgEアルミニウムアジュバント吸着ワクチンでBALB/Cマウスの免疫後の血清中和抗体価の測定。
図8】異なる用量のVZVgEアルミニウムアジュバントワクチンでBALB/Cマウスを免疫した後の中和抗体の幾何平均抗体価。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
実施例8組換えのVZVgE融合タンパク質の凍結乾燥
実施例6で得られたワクチン原液を、20mMのTris-HCl(pH7.2~7.5、135mM NaClを含む)で40μg/ml~800μg/mlに希釈し、10%スクロース(又は10%トレハロース、10%マンニトール、10ラクトース)最終濃度が3%になるまで溶液を追加し、分けて入れる溶液におけるVZVgEの濃度を20μg/ml(又は50、80、100、200、400μg/ml)に調整し、均一に混合した後、2mlのガラスバイアル瓶に分装し、各瓶10mlずつ、ブチルゴムを半打栓した後、凍結乾燥チャンバーに送り、予備凍結の温度を-40~-45℃に設定して、4時間凍結した後、真空及び凍結乾燥を開始し、自動加熱プログラムを使用して温度を制御し、温度を-40~-25℃から6時間加熱し、-25~-5℃から4時間加熱し、0~5℃で1時間維持し、25℃で1時間維持し、35℃で6~8時間維持し、次に、真空状態で(又は高純度窒素又はアルゴンガスを吹き入れ、栓を押し込む)ブチルゴム栓をしっかり押し込む。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
実施例9動物免疫実験
VZVgE100μg/mlを含むアルミニウムアジュバント吸着のワクチンを2~8℃の冷蔵から取り出し、20mM Tris-HClで、VZVgE8μg/ml、2μg/mlを含む溶液に希釈し、次に、等容量のアルミニウムアジュバントを添加して、VZVgE4μg/ml、1μg/mlを含む(又はVZVgEを2μg/0.5ml、0.5μg/0.5mlを含む)動物実験用のアルミニウムアジュバントワクチンに調製した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
ELISA抗体力価検出:組換えVZVgE-Hisタンパク質を炭酸緩衝液で1μg/mlに希釈し、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar)をウェルあたり100μlでコーティングし、37℃で1時間静置した後、2~8℃で一晩静置する;96ウェルプレート内の液体を捨て、20mM PBSで3回洗浄し、次に200μlのブロッキング溶液(2%ウシ血清アルブミン、成分V)を各ウェルに加え、室温で60分間ブロックする;ウェル内のブロッキング溶液を吸引し、20mM PBS-T溶液で3回洗浄し、1:50(又は1:500、又は1:1000)に前希釈したマウス血清を96ウェルマイクロタイタープレートの第1列目のウェルに加え、次に2倍系列の倍希釈を行い、陰性対照は、アルミニウムアジュバントのみを使用して腹腔内免疫したマウスの血清(1:100)であり、37℃で60分間反応させ、ウェル内の溶液を吸引し、20mM PBS-T溶液を使用して3回洗浄した;ヤギ抗マウスIgG-HRPコンジュゲートを取り出し、酵素コンジュゲート希釈液1:100(希釈液にはヒトIgG 1mg/mlが含まれ)で希釈し、室温で30分間前反応させてから、96ウェルマイクロタイタープレートに加え,ウェルあたり100μlであり、37℃で30分間反応させる;ウェル内の溶液を吸引した後、20mM PBS-T溶液を使用して3回洗浄し、各ウェルに100μlのTMB発色溶液を加え、10分後に50μlの停止溶液を加えて反応を停止させ、次にTECAN Infinit 200マイクロプレートリーダーを使用してA450吸光度値を測定し、陰性対照グループの混合血清A450の3倍をCut-Off値とし(陰性対照A450の値が0.100未満の場合、0.100として計算)、免疫後の血清の力価を判定する。各実験グループのマウスの血清における抗VZVgE抗体価の幾何平均値と標準偏差を以下の表2に示す;2回免疫後、抗体陽転(seroconversion)しなかった最低用量グループ(0.5μg)の1匹マウスを除いて、すべてのマウスが抗体陽転(seroconversion)である;各グループの実験動物に対する測定の抗体力価の統計分析では、各用量グループの実験マウスは3回免疫した後、血清抗体価は2回の免疫した後より明らかに高く、第4回目の免疫後も血清抗体価は、部分的に上昇はあるが、その上昇は明らかではない;第2回目、3回目、4回目の免疫後、3つの高用量グループマウスの血清力価に有意差がない。各用量のVZVgEアルミニウムアジュバントワクチンでBALB/Cマウスを免疫した後の血清抗体価は図6に示す。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2022515271000001.app
【国際調査報告】