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特表2022-515308車両を所望の曲線経路に追従させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】車両を所望の曲線経路に追従させる方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20220210BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20220210BHJP
   B62D 6/00 20060101ALN20220210BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20220210BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W30/12
B62D6/00
B62D101:00
B62D113:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521986
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2018078907
(87)【国際公開番号】W WO2020083465
(87)【国際公開日】2020-04-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】レイン,レオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイディヤナサン,カールティク・ラマナン
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA04
3D232DA23
3D232DA25
3D232DA46
3D232DD02
3D232EB04
3D232EB16
3D232GG02
3D241AF01
3D241BA12
3D241BA49
3D241BA55
3D241BA62
3D241BB27
3D241BC01
3D241BC02
3D241DA52Z
3D241DB07Z
3D241DB13Z
3D241DB20Z
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、車両(100)を所望の曲線経路(C1)に追従させる方法であって、車両(100)は車両(100)の少なくとも1つの従動車輪軸(40、50)に接続された差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置(10、20、30)を備え、差動装置ロックが作動されるときに、差動装置ロックが作動されるか又は解除されるかのどちらかである差動装置ロックの状態に関する情報を与えるステップ(S1)と、差動装置ロックによって引き起こされる車両(100)のヨーモーメントMdiffを計算するステップ(S2)と、結果として得られるステアリング角が車両(100)の最大許容ステアリング角以下であるようにヨーモーメントMdiffによって引き起こされる所望の曲線経路(C1)からの偏差を補償するステップであって、補償がフィードフォワード補償であるステップ(S3)と、を少なくとも含む方法に関する。本発明は、制御ユニット、車両、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読媒体にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)を所望の曲線経路(C1)に追従させる方法であって、前記車両(100)は、前記車両(100)の少なくとも1つの従動車輪軸(40、50)に接続された差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置(10、20、30)を備え、
前記差動装置ロックが作動されるときに、前記差動装置ロックが作動されるかまたは解除されるかのどちらかである前記差動装置ロックの状態に関する情報を与えるステップ(S1)と、
前記差動装置ロックによって引き起こされる前記車両(100)のヨーモーメントMdiffを計算するステップ(S2)と、
結果として得られるステアリング角が前記車両(100)の最大許容ステアリング角以下であるように前記ヨーモーメントMdiffによって引き起こされる前記所望の曲線経路(C1)からの偏差を補償するステップであって、前記補償がフィードフォワード補償であるステップ(S3)と、を少なくとも含む方法。
【請求項2】
前記所望の曲線経路(C1)についての車両曲線ヨーモーメントMz_curvatureを計算することによって合計の所望のヨーモーメントMを計算するステップであって、前記合計の所望のヨーモーメントMは、Mz_curvature+Mdiffとして定められ、前記結果として得られるステアリング角は前記合計の所望のヨーモーメントMによって与えられる、計算するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両(100)は、半自律運転車または全自律運転車である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記補償は、前記車両(100)の力発生部(210)で実行され、前記力発生部(210)は、前記車両(100)のステアリング、ブレーキング、および推進のうちの少なくとも1つを制御するため前記車両(100)の所望の力およびモーメントを計算するために少なくとも使用される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記車両(100)のモーションサポート装置コーディネータ(220)に前記補償をフィードフォワード補償として与えるステップであって、前記モーションサポート装置コーディネータ(220)は、前記車両(100)のステアリング、ブレーキング、および推進のうちの少なくとも1つを制御するために使用される、前記補償をフィードフォワード補償として与えるステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
計算された前記ヨーモーメントMdiffは、以下のパラメータ、すなわち、
所望の曲線経路(C1)、好ましくは、車両自動化のために予測された経路に基づいている前記所望の曲線経路(C1)、
車両座標系における車両速度、
車輪座標系における車両速度、
前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された車輪の車輪速度、
前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された前記車輪の車輪半径、
前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された前記車輪に及ぼされる垂直抗力、
前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された前記車輪の摩擦係数、および
前記車両(100)の輪距幅
のうちの少なくとも1つに基づいて計算される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
スリップ値が前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの車輪のスリップに関連して特定され、このスリップ値が所定のスリップ閾値以上であるときに、前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの前記差動装置ロックを作動させるステップ(S0)
をさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記車両が摩擦係数閾値よりも低い摩擦係数を有する低摩擦面上を走行しているとき、かつ前記少なくとも1つの差動装置ロックが作動されるとき、前記少なくとも1つの差動装置ロックは、前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの車輪の特定のスリップがスリップ限界よりも低く、好ましくはこのスリップ限界が前記低摩擦面の最大スリップよりも大きいときに、作動させられ続けられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記特定のスリップが前記スリップ限界よりも大きいときに、前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された前記少なくとも1つの差動装置ロックを解除するステップ
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記車両が摩擦係数閾値を上回る特定の摩擦係数を有する高摩擦面上を走行しているとき、かつ前記少なくとも1つの差動装置ロックが作動されるとき、前記少なくとも1つの差動装置ロックは、前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された前記車輪に係る車輪の力の合計が、前記車輪の垂直抗力かける前記特定の摩擦係数よりも低い場合に、作動させられ続けられる、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された前記車輪に係る車輪の力の前記合計が前記車輪の垂直抗力かける前記特定の摩擦係数よりも大きい場合に、前記少なくとも1つの従動車輪軸に接続された前記少なくとも1つの差動装置ロックを解除するステップ
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
車両(100)を所望の曲線経路(C1)に追従させるように制御する制御ユニット(200)であって、請求項1から11のいずれか1項に記載のステップを実行するために構成される制御ユニット(200)。
【請求項13】
車両(100)であって、前記車両(100)の少なくとも1つの従動車輪軸に接続された差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置(10、20、30)を備えるとともに、請求項12に記載の制御ユニット(200)をさらに備える車両(100)。
【請求項14】
前記車両(100)は、半自律または全自律運転車である、請求項13に記載の車両(100)。
【請求項15】
前記車両(100)は、トラック、大型トラック、建設機械車両、またはバスのいずれか1つである、請求項13または14に記載の車両(100)。
【請求項16】
前記車両(100)の少なくとも2つのそれぞれの従動車輪軸(40、50)に接続された少なくとも2つのそれぞれの差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置(10、20、30)を備える、請求項13から15のいずれか1項に記載の車両(100)。
【請求項17】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるときに、請求項1から11のいずれか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記プログラム製品がコンピュータ上で実行されるときに、請求項1から11のいずれか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つの従動車輪軸に接続された差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置を備える車両を所望の曲線経路に追従させる方法に関する。さらに、本発明は、方法を含む制御ユニット、車両、方法のステップを実行する手段を含むコンピュータプログラム、および方法のステップを実行するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス、および建設機械などの大型車両に適用されてよい。本発明は、トラックに関して説明されるが、本発明は、この特定の車両に限定されず、乗用車などの他の車両に使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
車両のステアリング、ブレーキング、および推進は、一般に、車両のドライバーによって制御される。トラック、バスなどを含む今日の最新の車両では、ドライバーは、車線維持支援システム、ブレーキング支援システム等などのドライバー支援システムによって支援もされ得る。
【0004】
そのようなシステムの一例は、米国特許出願公開第2005/0283290(A1)号に見出すことができ、この特許出願は、少なくとも1つの差動装置ロック、およびこれを用いて第1のヨーイングモーメントを発生させることができるとともに、ドライバーステアリング角を無効にすることができる補角、およびこれを用いて第2のヨーイングモーメントを発生させることができるステアリングシステムを有する自動車のステアリング挙動に影響を与えるプロセスに関する。これによって、補角を計算することができ、第1のヨーイングモーメントを補償する第2のヨーイングモーメントを発生させることができる。
【0005】
半自律および全自律運転車を含むより先進の車両の急速な開発により、しかしながら、車両のステアリング機能の自動化をさらに改善することに向けた努力(strive)が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑みて、本発明の目的は、車両を所望の曲線経路に追従させる改善された方法、 および/または所望の曲線経路に追従させるように車両を制御する制御ユニット、および/または車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。第2の態様によれば、この目的は、請求項12に記載の制御ユニットによって達成される。第3の態様によれば、この目的は、請求項13に記載の車両によって達成される。第4の態様によれば、この目的は、請求項17に記載のコンピュータプログラムによって達成される。第5の態様によれば、この目的は、請求項18に記載のコンピュータ可読媒体によって達成される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、上記目的は、車両を所望の曲線経路に追従させる方法であって、車両は、車両の少なくとも1つの従動車輪軸に接続された差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置を備え、
- 差動装置ロックが作動されるときに、差動装置ロックが作動されるかまたは解除されるかのどちらかである差動装置ロックの状態に関する情報を与えるステップと、
- 差動装置ロックによって引き起こされる車両のヨーモーメントMdiffを計算するステップと、
- 結果として得られるステアリング角が車両の最大許容ステアリング角以下であるようにヨーモーメントMdiffによって引き起こされる所望の曲線経路からの偏差を補償する(補償がフィードフォワード補償である)ステップと、を少なくとも含む方法によって実現される。
【0009】
上記方法を提供することによって、車両の所望の曲線経路の改善された追従を提供する。より詳細には、フィードフォワードのやり方で差動装置ロックによって引き起こされるヨーモーメントを補償することは、車両が所望の曲線経路のより良く追従することを可能にすることが分かっている。したがって、結果として得られるステアリング角は、作動された差動装置ロックによって引き起こされるヨーモーメントを補償するだけではなく、所望の曲線経路を追従するように最適化することができる。
【0010】
任意選択で、方法は、
- 所望の曲線経路(C1)についての車両曲線ヨーモーメントMz_曲線を計算することによって合計の所望のヨーモーメントMを計算するステップであって、合計の所望のヨーモーメントMはMz_曲線+Mdiffとして定められ、結果として得られるステアリング角は合計の所望のヨーモーメントMによって与えられる、計算するステップをさらに含んでよい。したがって、結果として得られるステアリング角を取り出すために、差動装置ロックが作動されるときに、両モーメントMz_曲線およびMdiffが計算される必要があり得る。さらに、差動装置ロックが解除されるときに、曲線ヨーモーメントMz_曲線だけが、結果として得られるステアリング角を取り出すために必要とされ得る。言い換えれば、そのような状況において、Mdiffはゼロになる。
【0011】
任意選択で、車両は、半自律運転車または全自律運転車であってよい。すなわち、上記に定められたような方法は、そのような車両に特に適し得ることが分かっている。半自律運転車は、直接的な人間の関与なしで、少なくともステアリング、および適宜、車両のブレーキングおよび推進のうちの少なくとも1つが継続的にまたは断続的に制御される車両を意味し、全自律運転車は、直接的な人間の関与なしで、車両のステアリング、ブレーキング、および推進の全てが継続的に断続的に制御される車両を意味する。実際には、この方法は、所望の車両加速度および車両のための曲線経路の形態で入力される軌跡だけが存在するとともに、例えばステアリングホイール角の形態のドライバー入力がない車両に特に適し得る。
【0012】
任意選択で、補償は、車両の力発生部で実行され、力発生部は、車両のステアリング、ブレーキング、および推進のうちの少なくとも1つを制御するため車両の所望の力およびモーメントを計算するために少なくとも使用されてよい。さらに任意選択で、方法は、車両のモーションサポート装置コーディネータ(motion support device coordinator)に補償をフィードフォワード補償として与えるステップであって、モーションサポート装置コーディネータは、車両のステアリング、ブレーキング、および推進のうちの少なくとも1つを制御するために使用される、補償をフィードフォワード補償として与えるステップをさらに含んでよい。したがって、車両の力発生部における補償を統合し、次いで補償をモーションサポート装置コーディネータへ送ることによって、さらに改善されたより高速な補償が提供され得る。さもなければ、差動装置ロックが作動されることによって引き起こされる経路誤差は、フィードバックループによって解決することができる。しかしながら、これは、車両が本発明によって達成されるものよりもその所望の曲線経路からより多く逸脱するという結果になる。さらに、力発生部は、フィードフォワードのやり方で、必要な縦方向の力(request longitudinal force)Fx_reqを計算することもでき、ここで、必要な縦方向の力は、車両の質量かける必要な加速度に特定の抵抗力を加えたものとして計算され得る。抵抗力は、フィードフォワードのやり方で、すなわち、ヨーモーメントMdiffについてと同様のやり方で、モーションサポートコーディネータ(motion support coordinator)に与えられてよい。抵抗力は、例えば、空気抵抗、道路の傾斜、および車両のロールに関し得る。抵抗力をフィードフォワード部分として含めることによって、所望の加速度は、より正確に達成することができる。同様の論理が、車両を所望の曲線経路に追従させるために使用される。したがって、力発生部およびモーションサポート装置コーディネータが、半自律運転車および/または全自律運転車に使用されることが好ましい。
【0013】
任意選択で、計算されたヨーモーメントMdiffは、以下のパラメータ、すなわち、
- 所望の曲線経路(C1)、好ましくは、車両自動化のために予測された経路に基づいている所望の曲線経路(C1)、
- 車両座標系における車両速度、
- 車輪座標系における車両速度、
- 少なくとも1つの従動車輪軸に接続された車輪の車輪速度、
- 少なくとも1つの従動車輪軸に接続された車輪の車輪半径、
- 少なくとも1つの従動車輪軸に接続された車輪に及ぼされる垂直抗力
- 少なくとも1つの従動車輪軸に接続された車輪の摩擦係数、および
- 車両の輪距幅
のうちの少なくとも1つに基づいて計算されてよい。
【0014】
任意選択で、方法は、
- スリップ値が少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの車輪のスリップに関連して特定され、このスリップ値が所定のスリップ閾値以上であるときに、少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの差動装置ロックを作動させるステップをさらに含んでよい。
【0015】
任意選択で、車両が摩擦係数閾値よりも低い摩擦係数を有する低摩擦面上を走行しているとき、かつ少なくとも1つの差動装置ロックが作動されるとき、少なくとも1つの差動装置ロックは、少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの車輪の特定のスリップがスリップ限界よりも低く、好ましくはこのスリップ限界が低摩擦面の最大スリップよりも大きいときに、作動させられ続けられてよい。これにより、差動装置ロックは、長期間にわたって作動させられることが許可され、より長い時間にわたって車両のために改善されたトラクションを与えることができる。最大スリップは、車輪に対する最大駆動力がそこに作用しており、その後駆動力は減少し、車輪スリップが増加する点として定められてよい。さらに任意選択で、方法は、
- 特定のスリップがスリップ限界よりも大きいときに、少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの差動装置ロックを解除するステップをさらに含んでよい。
【0016】
任意選択で、車両が摩擦係数閾値を上回る特定の摩擦係数を有する高摩擦面上を走行しているとき、かつ少なくとも1つの差動装置ロックが作動されるとき、少なくとも1つの差動装置ロックは、少なくとも1つの従動車輪軸に接続された車輪に係る車輪の力の合計が、車輪の垂直抗力かける特定の摩擦係数よりも低い場合に、作動させられ続けられてよい。これは、差動装置ロックが、車輪軸の回転ワインドアップ(rotational windup)についての危険がある間、より長い時間にわたって作動させられることが許可され得ることを意味する。さらに任意選択で、方法は、
- 少なくとも1つの従動車輪軸に接続された車輪に係る車輪の力の合計が車輪の垂直抗力かける特定の摩擦係数よりも大きい場合に、少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの差動装置ロックを解除するステップをさらに含んでよい。
【0017】
低摩擦面は、氷、雪、砂礫などを含む面であり得る。高摩擦面は、例えば、氷、雪、および/または砂礫で覆われてもいないアスファルト面、コンクリート面などであり得る。表面の摩擦係数は、例えば車両の運転中に測定および推定されてよく、および/またはそれは、車両内または車両外のデータベースから提供されてよい。摩擦の推定は、当業者によく知られており、したがって本明細書においてさらには説明されない。
【0018】
低摩擦面および/または高摩擦面上を走行するときに上記に示されたような少なくとも差動装置ロックを制御することによって、車両安定性が優先されるまで、より長い時間にわたる改善されたトラクションがもたらされ得る。任意選択で、表面が低摩擦または高摩擦面であるか判定するために使用されるような摩擦係数閾値は、同一であってよく、または異なっていてもよい。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、目的は、車両を所望の曲線経路に追従させるように制御する制御ユニットであって、上述したような方法の実施形態のうちのいずれか1つに係るステップを実行するために構成される制御ユニットによって実現される。第2の態様の利点は、第1の態様による方法によって与えられる利点と同様である。第1の態様の全ての実施形態は、第2の態様の全ての実施形態と組み合わせ可能であり、その逆も同じであることにも留意されたい。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、目的は、車両の少なくとも1つの従動車輪軸に接続された差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置を備えるとともに、第2の態様による制御ユニットをさらに備える車両によって与えられる。第3の態様の利点は、第1の態様による方法によって与えられる利点と同様である。第1の態様および第2の態様の全ての実施形態は、第3の態様の全ての実施形態と組み合わせ可能であり、その逆も同じであることにも留意されたい。
【0021】
車両のための差動装置および差動装置ロックは、車両の駆動特性およびトラクションを改善するために使用されるよく知られた機械構成部品であり、したがって本明細書中でさらに説明されない。
【0022】
任意選択で、車両は、半自律または全自律運転車であってよい。
【0023】
任意選択で、車両は、トラック、大型トラック、建設機械車両、またはバスのいずれか1つであってよい。
【0024】
任意選択で、車両は、車両の少なくとも2つのそれぞれの従動車輪軸に接続された少なくとも2つのそれぞれの差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置を備えてよい。
【0025】
本発明の第4の態様によれば、目的は、コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータ上で実行されるときに、上述したような方法のステップを実行するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムによって実現される。
【0026】
本発明の第5の態様によれば、目的は、プログラム製品がコンピュータ上で実行されるときに、上述したような方法のステップを実行するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体によって実現される。
【0027】
本発明のさらなる利点および有利な特徴は、以下の説明および従属請求項に開示されている。
【0028】
添付図面を参照すると、以下は、例として述べられる本発明の実施形態のより詳細な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】トラックの形態の車両を示す図である。
図2】車両の概略図である。
図3】車両の曲線経路である。
図4】本発明の一例示的実施形態による方法のフローチャートである。
図5】本発明の一例示的実施形態による制御ユニットを示す図である。
図6】最大スリップ値(peak slip value)の一例である。
図7】一定値kの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面は、本発明の概略的な例示の実施形態を示しており、したがって、必ずしも原寸に比例していない。図示および説明される実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。図面中のいくつかの詳細は、本発明をよりよく説明および図示するめに誇張され得ることにも留意されたい。同様の参照符号は、別段示されていない限り、明細書全体にわたって同様の要素を指す。
【0031】
図1は、本発明の方法を有利に実装することができるトラック100の形態の車両を示す。図1に示されるようなトラック100は、異なる種類の牽引トレーラーのためのレッカー車である。したがって、本発明は、車両、及び、連結式の車両の組合せとしても知られる車両の組合せに適用できる。しかしながら、本発明は、トラックに使用可能であるだけでなく、少なくとも1つの差動装置ロック付きの少なくとも1つの差動装置を備えるバス、建設機械、乗用車等などの他の車両にも同様に使用することができることに留意されたい。
【0032】
図2は、上から見た車両100、例えばトラックの概略図を示す。この特定の実施形態における車両100は、2つの従動後車輪軸40および50を備える。2つの車輪3および4は、第1の従動車輪軸40に接続され、2つの車輪5および6は、第2の従動車輪軸50に接続されている。第1の差動装置10が、第1の車輪軸40上に設けられ、第2の差動装置20が、2つの車輪軸間に設けられ、第3の差動装置30が、第2の車輪軸50上に設けられている。差動装置10、20、および30は、選択的に作動および解除することができる差動装置ロックを備える。
【0033】
本明細書中に示されるx方向は車両の縦方向に対応し、y方向は車両の横方向に対応し、z方向は車両の垂直方向に対応する。
【0034】
車両100は、車両が曲線経路に従うことを可能にするために角度付けることができる2つの前車輪1および2をさらに備える。さらに、車両100は、図に見られるようにある一定の輪距の幅T(track width T)を有する。
【0035】
それぞれの車輪ごとの車両速度vx,iは、車輪が車両の左側に設けられているのか、または右側に設けられているのかに応じて、以下の2つの式に従って計算することができる。
【数1】

ただし、Rは、車両の経路の曲率半径である。
【0036】
差動装置ロックが作動されるとき、駆動される車輪3から6ごとの角速度は同じであり、すなわち、車輪の角速度(ω)間の以下の関係
ωω,3=ωω,4=ωω,5=ωω,6
を期待することができる。
【0037】
次に、車輪ごとのトラクションスリップλw,iを、以下の式
【数2】
によって計算することができ、ただし、Rは、各車輪の車輪半径である。
【0038】
これより、各車輪における差動装置ロックからの力の寄与は、以下の式
【数3】
に従って計算することができ、ただし、kは、例えば図7に示されるように、表面摩擦係数をトラクションスリップで割ったものとして定められる定数であり、ただし、μはそれぞれの車輪における摩擦係数であり、Fはz方向に作用する垂直抗力であり、μはF/Fziによって定めることができる。
【0039】
少なくとも1つの差動装置ロックによって引き起こされるヨーモーメントMdiffは、車輪の力の合計かける輪距の幅Tの半分、すなわち、
【数4】
として計算することができる。
【0040】
車両100を制御するための所望の力およびモーメントは、
req=[F,F,M
として定めることができ、ただし、Fは、
【数5】
として定めることができ、ただし、mは車両の質量であり、ax,reqはx方向の加速度であり、
ただし、Fは、
【数6】
として定めることができ、ただし、δf,pathは、実際のステアリング角であり、Cαは、車両の横スリップ剛性としても知られるタイヤコーナリング剛性である。
ただし、合計の所望のヨーモーメントMは、
=Mz_curvature+Mdiffとして定めることができる。より詳細には、合計の所望のヨーモーメントMは、
【数7】
として定めることができ、ただし、lは、x軸上の車両の重心と車輪1および2が設けられる車両の前車輪軸との間の距離である。したがって、Mz_curvatureは、ここに、
【数8】
として定められる。
【0041】
以上におけるように、力およびモーメントF、F、およびMを計算することによって、ヨーモーメントMdiffによって引き起こされる所望の曲線経路からの偏差を、結果として得られるステアリング角が車両の最大許容ステアリング角以下となるように好ましくは力発生部において補償することができる。もちろん、最大許容ステアリング角は、車両のタイプに応じて変わり得る。例えば、最大許容ステアリング角は、前車輪が車両の前方方向に対して約±75度に角度付けできることに対応し得る。力発生は、ロックされた、すなわち作動させられた差動装置によって引き起こされるヨーモーメントMdiffを考慮に入れることができ、したがって、車両のステアリング、少なくとも1つの車輪のブレーキング、および推進のうちの少なくとも1つによって所望の曲線経路に追従させるようにヨーを補償する。
【0042】
車両100が摩擦係数閾値よりも低い摩擦係数を有する低摩擦面上を走行している場合、かつ少なくとも1つの差動装置ロックが作動される場合には、少なくとも1つの差動装置ロックは、少なくとも1つの従動車輪軸に接続されている少なくとも1つの車輪の特定のスリップが低摩擦面の最大スリップよりも大きいスリップ限界よりも低いときに、作動させられ続けられてよい。そして、そのような状況において、差動装置ロックは、以下のもの
λω,i<λlim
が満たされるときに、作動させられ続けられる。
【0043】
例えば、λlimは、0.1~0.6、または0.2~0.6、または0.3~0.6などの値であってよく、ただし、λlimは低摩擦面の最大スリップよりも大きいように設定され、0はスリップがないことに対応し、1は完全なスリップに対応する。最大スリップの一例は、図6に示されており、そこでは、最大スリップ42は約0.2のスリップ率で生じることが分かる。上に述べられたように、低摩擦面は、氷、雪、砂礫などを含む面であり得る。さらに、方法は、特定のスリップがスリップ限界よりも大きいときに、少なくとも1つの従動車輪軸に接続されている少なくとも1つの差動装置ロックを解除するステップをさらに含むことができる。
【0044】
さらに、車両が摩擦係数閾値を上回る特定の摩擦係数を有する高摩擦面上を走行している場合、かつ少なくとも1つの差動装置ロックが作動される場合には、少なくとも1つの差動装置ロックは、少なくとも1つの従動車輪軸に接続されている車輪に係る車輪の力の合計が車輪の垂直抗力Fかける特定の摩擦係数よりも低い場合に、作動させられ続けられる。これは、車輪軸の回転ワインドアップの危険がある間、より長い時間にわたって、差動装置ロックが作動させられることが許可され得ることを意味する。そして、そのような状況において、以下のもの、
【数9】
が満たされるときに、差動装置ロックは、作動させられ続けられ、ただし、μは表面の特定の摩擦係数であり、Fは垂直抗力である。さらに、方法は、少なくとも1つの従動車輪軸に接続されている車輪に係る車輪の力の合計が車輪の垂直抗力かける特定の摩擦係数よりも大きい場合に、少なくとも1つの従動車輪軸に接続されている少なくとも1つの差動装置ロックを解除するステップをさらに含んでよい。
【0045】
図3は、車両100のための所望の曲線経路Cを示す。本明細書中に開示されるように車両の結果として得られるステアリング角を制御することによって、車両は、差動装置ロックが作動されるときに補償が実行されない場合に車両がとり得る経路を示す曲線Cよりも、曲線Cによって示される所望の曲線経路により密接に従うことが分かっている。
【0046】
図4は、本発明の方法のフローチャートを示す。ステップS0は、任意選択であり、このことは、箱が破線を備えているという点で示されている。したがって、方法は、以下のステップ、すなわち、
- S0、所定のスリップ閾値以上であるスリップ値が、少なくとも1つの従動車輪軸に接続された少なくとも1つの車輪のスリップに関連して特定されるときに、少なくとも1つの従動車輪軸に接続されている少なくとも1つの差動装置ロックを作動させるステップ、
- S1、差動装置ロックが作動されるときに、差動装置ロックが作動されるかまたは解除されるかのどちらかである差動装置ロックの状態に関する情報を与えるステップ、
- S2、差動装置ロックによって引き起こされる車両100のヨーモーメントMdiffを計算するステップ、
- S3、結果として得られるステアリング角が車両100の最大許容ステアリング角以下であるようにヨーモーメントMdiffによって引き起こされる所望の曲線経路C1からの偏差を補償する(補償はフィードフォワード補償である)ステップを含んでよい。
【0047】
図5は、本発明の一例示的実施形態による制御ユニット200を示す。本実施形態では、制御ユニットは、自律運転車内に設けられ、力発生部210、およびモーション制御デバイスコーディネータ(motion control device coordinator)220を備える。図5は、制御ユニット200が1つのユニットとして与えられることを示すが、もちろん、同じ機能性は、互いのすぐ近くに位置するまたは互いから離れているいくつかのユニットを用いて与えられてもよい。制御ユニットは、例えば、処理ユニット、および/またはメモリユニットを備えることができる。またさらに、制御ユニットは、本発明によるコンピュータプログラム、および/またはコンピュータ可読媒体を含むことができる。この例では、補償は、力発生部からモーションサポート装置コーディネータへフィードフォワード補償として与えられる。
【0048】
本発明は上述したおよび図示した実施形態に限定されず、むしろ、当業者は、添付の特許請求の範囲内で多くの変更および修正がなされてよいことを認識するであろうと理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】