IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハー.ツェー.スタルク タングステン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2022-515332メタタングステン酸アンモニウムの製造方法
<>
  • 特表-メタタングステン酸アンモニウムの製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】メタタングステン酸アンモニウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 41/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
C01G41/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531852
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019086077
(87)【国際公開番号】W WO2020127571
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18213826.3
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318010867
【氏名又は名称】ハー.ツェー.スタルク タングステン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】メッセ-マルクトシェフェル, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】オルブリッヒ, アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーラント, アニャ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ピッテン, フランク
(72)【発明者】
【氏名】セウベルリッヒ, ティーノ
(72)【発明者】
【氏名】シュロア, トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, ユルゲン
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA01
4G048AB03
4G048AC08
(57)【要約】
本発明は、逆浸透セルを使用してメタタングステン酸アンモニウムを製造するための方法、および本発明による方法を実施するための装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタタングステン酸アンモニウム水溶液(A)を少なくとも1つの逆浸透セルに通して、濃縮液(C)および透過液(P)を得ることを特徴とする、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つの逆浸透を、高圧逆浸透セルで、好ましくは50バール以上、好ましくは90バール以上、より好ましくは100バール以上、特に120バール以上、特に150バール以上の圧力下で実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタタングステン酸アンモニウム水溶液(A)は、パラタングステン酸アンモニウム四水和物の焼成、および焼成物の水浸出によって得られることを特徴とする、上記請求項の1つ以上に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液(A)は、前記逆浸透が行われる前に濾過工程にかけられることを特徴とする、上記請求項の1つ以上に記載の方法。
【請求項5】
前記メタタングステン酸アンモニウムは、前記濃縮液(C)を冷却することによって得られることを特徴とする、上記請求項の1つ以上に記載の方法。
【請求項6】
得られた前記透過液を工程サイクルに再利用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が連続的に操作されることを特徴とする、上記請求項のうちの1以上に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が連続的に、かつ1段階で操作されることを特徴とする、上記請求項のうちの1以上に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、多段階で操作されることを特徴とする、上記請求項の1つ以上に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が多段階で操作される場合、前記逆浸透セルが異なる圧力で操作されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液(A)中のメタタングステン酸アンモニウムの濃度が、150~550g/L、好ましくは250~500g/L、より好ましくは200~300g/Lであることを特徴とする、上記請求項の1つ以上に記載の方法。
【請求項12】
前記濃縮液(C)中のメタタングステン酸アンモニウムの濃度が、少なくとも1200g/L、好ましくは少なくとも1500g/Lであることを特徴とする、上記請求項の1つ以上に記載の方法。
【請求項13】
メタタングステン酸アンモニウムを製造するための逆浸透セル、好ましくは高圧逆浸透セルの使用。
【請求項14】
前記逆浸透セルが、らせん状に巻かれた少なくとも1つの膜を含むことを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
少なくとも1つの逆浸透セル、好ましくは高圧逆浸透セルを含むことを特徴とする、請求項1~12の少なくとも1つに記載の方法を実施するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透セルを使用してメタタングステン酸アンモニウムを製造するための方法、および本発明による方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタタングステン酸アンモニウム(AMT)は、とりわけ、触媒の製造のために使用される。メタタングステン酸アンモニウムの製造には様々な方法があり、固相変換および液相変換のカテゴリーに分けられる。一般的に、固相変換ではパラタングステン酸アンモニウム(APT)の熱分解工程を含み、一方、液相変換ではパラタングステン酸アンモニウムの酸性化によるメタタングステン酸アンモニウムへの分解が行われる。
【0003】
ドイツ特許第3743267号は、150~400℃の温度の焼成骨材中でパラタングステン酸アンモニウムを焼成し、その後、得られる焼成生成物を水で浸出することによって強熱減量が5.6~5.9重量%であるメタタングステン酸アンモニウムを製造する方法に関し、所望の強熱減量を得るために、強熱減量が5.6重量%未満の焼成生成物と強熱減量が5.9重量%を超える焼成生成物を、混合物の強熱減量が特許請求の範囲内に入るように比例的に混合することもでき、それによって高い収率が得られる。
【0004】
欧州特許第0193171号は、パラタングステン酸アンモニウムからメタタングステン酸アンモニウムを製造する方法を開示しており、これは、パラタングステン酸アンモニウムを200~400℃の温度で加熱し、加熱したパラタングステン酸アンモニウムを水に溶解してメタタングステン酸アンモニウム水溶液を形成し、メタタングステン酸アンモニウム溶液を蒸発させて濃縮メタタングステン酸アンモニウム溶液を形成し、濃縮メタタングステン酸アンモニウム溶液から不溶物を分離し、濃縮メタタングステン酸アンモニウム溶液からメタタングステン酸アンモニウムを結晶化させることを含む。
【0005】
米国特許第7,794,686号には、個体パラタングステン酸アンモニウムと水との混合物の調製を含むメタタングステン酸アンモニウムの製造方法が記載されている。混合物を陽イオン交換材料と接触させて、混合液のpHを、メタタングステン酸アンモニウムイオンが安定しており、不溶性タングステン酸の形成が防止される範囲まで下げる。次いで、パラタングステン酸アンモニウムの大部分がメタタングステン酸アンモニウム溶液に変換されるまで、混合物をこのpHに維持する。この方法を工業的規模で実施するには、イオン交換体が酸で再生されなければならず、それによって得られたアンモニウム塩の溶液は単に受水中に排出することができず、再利用されなければならないので、使用されるイオン交換体のために非常に複雑であることが分かっている。
【0006】
欧州特許第0200170号には、パラタングステン酸アンモニウムからメタタングステン酸アンモニウムを製造する方法が記載されており、該方法はパラタングステン酸アンモニウムを275~300℃の温度で焼成し、スラリーを形成することを含む。スラリーをその元の体積の20%まで蒸発させて、不溶物を分離して、濃縮メタタングステン酸アンモニウム溶液を得る。最後のステップとして、記載された方法は、濃縮メタタングステン酸アンモニウム溶液からメタタングステン酸アンモニウムを結晶化することを含む。記載された方法では、高い全体的な収率を達成するために、12g/L未満の非常に低い濃度で焼成された材料の浸出を行うことが特に有利であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メタタングステン酸アンモニウムを製造するためのこれらの公知の方法は、蒸発工程が必要であるために、かなりのエネルギー消費でしか実施することができないという点で共通している。したがって、現在、既存の製造方法の持続可能性を高める取り組みが行われている中、より少ないエネルギー消費でメタタングステン酸アンモニウムの製造方法が必要とされている。
【0008】
様々なタングステン酸塩化合物の製造に関連して、多数の代替的な濃縮方法が記載されている。
【0009】
例えば、米国特許第5,178,848号には、モノタングステン酸リチウムの水溶液を陽イオン抽出剤で処理して、溶液のpHを3.5~5.0に下げ、メタタングステン酸リチウムの希釈溶液を得るメタタングステン酸リチウムを製造する方法が開示されている。次のステップでは、水を除去することによって希釈溶液を濃縮し、加熱、真空処理、真空下での加熱、逆浸透、またはこのステップのためのそのような方法の組み合わせによる蒸発を使用することが提案される。望ましくないパラタングステン酸リチウムの形成は、タングステン酸リチウム溶液をコロイド状の三酸化タングステンで飽和させることによって防止される。
【0010】
Journal of Membrane Science 240(2004)1-9に掲載されたJ.-Q. Liuらの、論文「中和-ナノ濾過-結晶化のカップリング処理を用いた純粋なメタタングステン酸アンモニウム(AMT)の新しい調製法の研究(Study on new method of the preparation of pure ammonium metatungstate (AMT) using a coupling process of neutralization - nanofiltration - crystallization)」では、ナノ濾過を用いてメタタングステン酸アンモニウム水溶液を濃縮するメタタングステン酸アンモニウムの製造方法を記載している。
【0011】
タングステン酸の塩のイソポリアニオン特性は、異なる金属塩が基本的に異なる特性を有することを意味し、したがって、原則として、ある金属塩の製造において得られた経験および知識は、他の金属塩の製造において非常に限定された範囲でしか使用することができない。
【0012】
したがって、本発明の目的は従来の方法に代わるものであり、比エネルギー消費を低減するメタタングステン酸アンモニウムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、メタタングステン酸アンモニウムの製造において、逆浸透セルを使用してメタタングステン酸アンモニウム溶液の濃縮を行うことによってこの目的を達成できることが見出された。
【0014】
したがって、本発明は第1の目的は、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(A)を少なくとも1つの逆浸透膜セルに通して、濃縮液(C)および透過液(P)を得るメタタングステン酸アンモニウムの製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る製造装置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
驚くべきことに、逆浸透セルを用いることで、さまざまなイソポリタングステン酸イオンの透過性の違いによる平衡シフトによって膜が目詰まりすることなく、濃いメタタングステン酸アンモニウム溶液が得られることが見出された。これにより、従来のメタタングステン酸アンモニウムの製造に不可欠だった、エネルギーを大量に消費する蒸発工程を省略することができる。さらに、メタタングステン酸アンモニウムの製造における蒸発工程をなくすことにより、メタタングステン酸アンモニウムの製造における主要なボトルネックを排除することができ、その結果、比エネルギー需要が削減されるだけでなく、スループットタイムが短縮されて、生産能力を増加させ、製造コストの低減を実現させることができる。エネルギー需要が削減されると、同時にCO排出量を削減することができ、これは、製造工程の持続可能性に直接寄与する。
【0017】
逆浸透セルの使用は、当業者に一般的に知られている。例えば、国際公開第2004/099087号には、硝酸塩含有廃水を処理するための方法が記載されており、この方法では、固形物や浮遊物を除去し、沈殿およびイオン交換によってアルカリ土類金属および重金属イオンを分離するための予備洗浄後に、より低いpH値でCOを除去し、廃水を少なくとも1つの逆浸透セルおよび/または電気透析セルに通す。好ましくは、多段向流法における逆浸透によって、最大200g/LのNaNO濃度が得られる。
【0018】
本発明の範囲内では、水溶液中のシンプルな無機塩だけでなく、イソポリアニオンを形成している金属にも逆浸透膜を適用できることが初めて見出されたが、この場合、異なる種の間に複雑な平衡が存在する場合があり、これは起こり得る膜のいかなる選択的イオン透過性によっても妨害されてはならない。
【0019】
NaCl、NaNO、NaSO、NHCl、NHNOまたは(NHSOなどのシンプルな塩は、主に水に溶解してシンプルなイオンを形成する。このようなイオンの存在は、溶液の濃度またはpHとは無関係である。複雑なイソポリアニオンを形成する元素としては、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンなどがあり、特にタングステンは事情が異なる。
【0020】
一般に、単量体WO 2-から進行するイソポリタングステン酸塩の形成は、以下の式に従って定式化される。
pH+qWO 2-=[Hp-2r4q-r(2q-p)-+rH
【0021】
平衡は、溶液のpH、濃度および温度に依存する。このような複雑な相互関係のために、イソポリメタレートに逆浸透セルを使用すると、イオン選択的透過性のために、セル内に、タングステン酸またはパラタングステン酸アンモニウムなどのような望ましくない化合物の局所的に析出すると考えられてきた。本発明は、この偏見を克服するものである。本発明では、驚くべきことに、従来技術の懸念に反して、使用された膜の沈殿または目詰まりは観察されなかった。
【0022】
本発明による方法の範囲内で、高圧逆浸透セルを使用することが特に有利であることが見出された。したがって、本発明による方法の一実施形態では、高圧逆浸透セルで、好ましくは50バール以上、好ましくは90バール以上、より好ましくは100バール以上、特に120バール以上、特に150バール以上の圧力下で逆浸透を行うことが好ましい。
【0023】
本発明による方法はさらに、パラタングステン酸アンモニウムを出発点としてメタタングステン酸アンモニウムを得る従来の方法に適用できるという利点を有する。従って、パラタングステン酸アンモニウム四水和物を焼成し、焼成物を水浸出することによってメタタングステン酸アンモニウム水溶液(A)を得る態様が好ましい。
【0024】
メタタングステン酸アンモニウム水溶液(A)から固形物および浮遊物を分離するために、濾過工程を経ることができる。したがって、本発明による工程の好ましい実施形態では、溶液(A)は逆浸透が行われる前に濾過工程に供される。
【0025】
本発明による方法において逆浸透セルを使用することにより、濃縮メタタングステン酸アンモニウム溶液を製造するために通常必要とされるエネルギー集約型の蒸発工程が不要になる。逆浸透法では、エネルギー消費量を大幅に削減した濃縮メタタングステン酸アンモニウム溶液が得られ、さらなる方法の過程で所望の生成物をそこから分離することができ、10%以上のエネルギー節約を達成することができる。したがって、好ましい実施形態では、メタタングステン酸アンモニウムは、逆浸透後に得られた濃縮液(C)を冷却することによって得られる。また、要求品質が低い場合は、例えば、逆浸透によって濃縮された溶液を噴霧乾燥することによって、メタタングステン酸アンモニウムを得ることも可能である。
【0026】
本発明による方法は、特に、そのエネルギー効率および関連する持続可能性を特徴とする。これは、工程制御にも反映される。従って、得られた透過液がサイクルに戻される実施態様が好ましい。このようにして、高い効率を確保しつつ、廃水の発生を低減することができる。驚くべきことに、微量の不純物が母液中で蓄積されている可能性がある場合、多くのサイクルの後に、不純物を分離するために母液の一部を排出するだけでよいことが見出された。これらの母液留分に含まれるタングステンは、メタタングステン酸アンモニウムを製造するための出発化合物であるパラタングステン酸アンモニウムを製造するための工程に完全に戻される。本発明による方法は、連続的、またはバッチ、もしくは不連続的のいずれでも操作することができる。生産設備を効率的に利用するために、本発明による方法は、好ましくは連続的に行われる。
【0027】
逆浸透の効率は驚くほど高いため、工程を一段階で実行することができ、これは、コストおよび時間の節約の観点から特に有利である。好ましい実施形態では、本発明による方法は、1段階の工程として行われる。得られた透過液を用いて焼成された材料を浸出させる、すなわちメタタングステン酸アンモニウム水溶液(A)の製造のために使用されることによって、得られた透過液を製造工程に完全に再利用することによって、この処理の効率がさらに高めることが好ましい。従って、驚くべきことに、逆浸透セルは110バール以上の非常に高い圧力で操作することもでき、それによってメタタングステン酸アンモニウムの濃度が1200g/Lを超える濃縮物を得ることができることが見出された。さらに、本発明による方法により、例えば、透過液に含まれるメタタングステン酸アンモニウムによる生成物の損失が回避されることが見出された。浸出段階で透過液を完全に使用することにより、透過液中のメタタングステン酸アンモニウムを濃縮したり、またはパラタングステン酸アンモニウムを製造するために透過液をさらに上流の処理段階に戻す必要がなくなる。
【0028】
本発明による方法の効率をさらに高めるために、多段階処理、すなわち、2つ以上の逆浸透セルに流すことができる。従って、本発明による方法が多段階で操作される態様が好ましい。驚くべきことに、濃縮液の流れと透過液の流れを反対方向にガイドする通常の手順は、本発明による方法では必要とされないことが見出された。好ましくは直列に接続された複数の逆浸透セルを使用する多段階処理制御は、逆浸透セルを対応する要件に個別に適合させることができるというさらなる利点を有する。したがって、本発明による方法の実施形態としては、本方法が多段階処理で実行される際に逆浸透セルを異なる圧力で動作させることが好ましい。
【0029】
特に、本発明による方法では、逆浸透を利用して濃縮メタタングステン酸アンモニウム溶液を製造し、そこから所望の生成物であるメタタングステン酸アンモニウムを得ることができる。メタタングステン酸アンモニウム水溶液の製造には特別な要件は課されない。むしろ、驚くべきことに、先行技術において有利であると記載されているような、低濃度のメタタングステン酸アンモニウムしか含まない、非常に希釈された溶液も効率的に変換できることが見出された。この場合、まず複数の逆浸透セルを並列に接続し、次に、このようなブロックを段階的に直列に接続することが有利であることが分かった。段数が増えると、1段当たりに並列に接続されるセルの数を減らすことができる。本発明による方法では、いくつかの製造方法で得られたような、特に希釈されたタングステン酸アンモニウム溶液も使用することができる。このような溶液、特に100g/L未満、さらには50g/L未満、または、さらには25g/L未満の希薄なメタタングステン酸アンモニウム溶液を濃縮するために、本発明による方法では、好ましい実施形態として、複数の逆浸透セルを並列に接続して、その結果として得られたブロックを1つの逆浸透セルの上流側で直列に接続する。
【0030】
好ましい実施形態において、逆浸透セルを通過させる前の水溶液(A)中のメタタングステン酸アンモニウムの濃度は、150~550g/L、好ましくは250~500g/L、より好ましくは200~300g/Lである。本発明による逆浸透セルを使用することにより、驚くべきことに、特に高濃度のメタタングステン酸アンモニウム溶液を得ることができ、したがって効率的な処理制御を達成することができる。したがって、浸透セルを通過した後の濃縮液(C)中のメタタングステン酸アンモニウムの濃度が、少なくとも1200g/L、好ましくは少なくとも1500g/Lである実施形態が好ましい。
【0031】
本発明による方法では、水溶液(A)を調製するためのいくつかの方法で得られるような、NHCl、NHNOまたは(NHSOのような少量の外来アンモニウム塩を水溶液(A)が含有していても、重要でないことがさらに見出された。驚くべきことに、外来塩の存在は、本発明による方法に全く悪影響を及ぼさないことが示された。
【0032】
本発明による方法で使用される逆浸透セルには特別な要件は課されない。しかしながら、らせん状に巻かれた形態の膜を含む逆浸透セルが使用される場合、有利であることが見出された。したがって、逆浸透セルが、少なくとも1つの膜をらせん状に巻かれた膜の形態で含有する実施形態が好ましい。
【0033】
本発明の別の目的は、メタタングステン酸アンモニウムの製造における逆浸透セルの使用に関する。特に好ましくは、逆浸透セルが高圧逆浸透セルであり、これは好ましくは、らせん状に巻かれた形態の少なくとも1つの膜を含む。
【0034】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの逆浸透セル、好ましくは高圧逆浸透セルを含む、本発明による方法を実施するための装置に関する。
【0035】
本発明は、図1および以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、これは本発明の概念を限定するものと解釈されるべきではない。
【0036】
攪拌機(2)および熱交換器(3)を備えた貯蔵容器(1)に、まずバルブ(4)を介して、その最大作業容積まで希釈したAMT溶液を満たす。充填完了後、計量ポンプ(5)は貯蔵容器(1)に存在する溶液を、高圧ポンプ(6)に送り、高圧ポンプは、循環ポンプ(7)によって駆動される内部サイクルに、いわゆる供給液を移送し、その中で供給溶液はリサイクル濃縮液と混合され、圧力管において半透膜(9)と支持構造体から成る1つ以上のらせん状に巻かれた膜を含む高圧逆浸透セル(8)に供給される。水は膜を通過し、浸透流(10)として加圧なしでシステム全体から排出される。内部サイクルでは、残りの濃縮液の流れ(11)は、圧力制御装置(12)および制御弁(13)によって、内部サイクル用のリサイクル濃縮液(17)と排出される濃縮液(14)とに分けられる。システムがバッチモードで運転されている場合、ポンプ(7)によって維持される内部サイクルから排出された濃縮液(14)は、バルブ(15)が閉じて、バルブ(16)が開いてた状態で、加圧なしで貯蔵容器(1)に逆流する。貯蔵容器において、バッチモードでは、システム全体から流出する浸透量が外部バランス限界を超えるため、充填レベルが低くなり、その結果、AMT濃度は時間の経過と共に所望の設定値まで上昇し、バッチ式濃縮処理は完了する。内部循環ポンプ(7)、特に高圧ポンプ(6)は、内部サイクルに仕事を供給し、大幅な加熱につながる。この余剰エネルギーの一部は、システム全体からの浸透流と共に、外部バランス限界を介して熱として放散され、残りの部分は、熱交換器(3)を介して、リサイクル濃縮液(14)から取り出される。冷却水の供給を制御する温度制御(18)により、内部サイクルの一定温度が確保される。
【0037】
あるいは説明されたシステムは、バルブ(4)を介して供給液(希釈されたAMT溶液)を貯蔵容器(1)に恒常的に供給し、バルブ(16)が閉じられている間、形成された濃縮液は、開いたバルブ(15)を介して透過液と同様に排出されることで、連続モードで動作させることも可能である。
【実施例
【0038】
貯蔵容器(1)には、密度1.20g/cm(20℃)の希釈されたAMT液500リットルを充填した。濃度は242.5gのAMT/Lであった。圧力制御装置(12)によって制御される110バールの設定圧力で、2.40gのAMT/L(35℃で測定)の密度を有する濃縮物を調製した。AMTの濃度は1682gAMT/Lであった。約427リットルの透過液を分離した。透過液を分析したところ、タングステン含有量は、1.35g/L(0.64%)であり、NH/Wの比率の変化は観察されなかった。ケルダール法で測定したアンモニウム含有量は0.067g/Lであった。透過液の分析結果が示すように、タングステンの損失が少ないため、化学組成に大きな変化はなかった。化学組成が変化しないため、透過液は希釈されたAMT溶液を調製するための操作中に完全にリサイクルすることができた。膜を通過するタングステンの損失が1%未満であることは、本発明による方法に関連する経済的な利点をさらなる利点として示す。
【0039】
説明した例から分かるように、本発明による方法では、タングステンの損失は非常にわずかであり、同時に、高濃度のメタタングステン酸アンモニウムを得ることができる。
図1
【国際調査報告】