(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】多官能性オルガノシロキサンの製造方法及びそれを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/05 20060101AFI20220210BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20220210BHJP
C08G 77/08 20060101ALI20220210BHJP
C08G 77/44 20060101ALI20220210BHJP
C08G 77/42 20060101ALI20220210BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20220210BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08L83/05
C08L83/07
C08G77/08
C08G77/44
C08G77/42
C09D183/04
C09J183/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021534181
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019064350
(87)【国際公開番号】W WO2020131369
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョフル、エリック
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ナンクオ
(72)【発明者】
【氏名】ル、カン
(72)【発明者】
【氏名】ニウ、ツェンピン
(72)【発明者】
【氏名】リッチ、デビット
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J040
4J246
【Fターム(参考)】
4J002CP04W
4J002CP12X
4J002CP13X
4J002GJ01
4J038DL031
4J038DL041
4J038DL052
4J038DL111
4J038JC37
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA14
4J038NA10
4J040EK031
4J040EK041
4J040EK062
4J040EK091
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA42
4J246AA11
4J246AB02
4J246AB05
4J246BA020
4J246BA02X
4J246BB020
4J246BB021
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB140
4J246BB142
4J246BB14X
4J246CA010
4J246CA01U
4J246CA01X
4J246CA120
4J246CA12E
4J246CA12U
4J246CA12X
4J246CA240
4J246CA24X
4J246CA400
4J246CA40X
4J246CA460
4J246CA46X
4J246FA14
4J246FA221
4J246FA381
4J246FC161
4J246FC251
4J246FE27
4J246GA01
4J246GA11
4J246GC37
4J246GC38
4J246GD08
4J246HA45
4J246HA46
(57)【要約】
多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを、ホウ素含有ルイス酸を触媒として使用して調製する。多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンは、剥離コーティング組成物に配合することができる。あるいは、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを、硬化性基により更に官能化して、クラスター化官能性オルガノシロキサンを形成することができる。クラスター化官能性オルガノシロキサンは、熱ラジカル硬化接着剤組成物に配合することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成物の調製方法であって、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸;
B)式、
【化1】
[式中、下付き文字nは、2~2,000であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン;及び
C)式、(RHSiO
2/2)
v[式中、下付き文字vは、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基である]の環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質を組み合わせ、それにより、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びH
2を含む副生成物を含む前記生成物を調製する工程を含む、方法。
【請求項2】
A)前記ホウ素含有ルイス酸が、少なくとも1つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下付き文字nが、2~1,000であり、下付き文字vは、4~10であり、各Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、各R
1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2)工程1)中及び/又はその後、前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの形成中に生じた前記H
2を除去する工程を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
3)前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
a)前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、
b)ヒドロシリル化反応触媒、並びに
c)出発物質a)のケイ素結合水素原子と付加反応することが可能な、1分子中に平均して少なくとも1つの脂肪族不飽和基、更に、1分子中に平均して1つ以上の硬化性基を有する反応種、を組み合わせる工程を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応種が、式、R
4
ySiR
5
(4-y)[式中、下付き文字yは、1~3であり、各R
4は、前記付加反応することが可能な脂肪族不飽和基であり、各R
5は、前記硬化性基である]のシランを含み、それにより、クラスター化官能性オルガノシロキサンを含む生成物を調製する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応種が、式、R
6R
7[式中、各R
6は、前記付加反応することが可能な脂肪族不飽和基であり、各R
7は、前記硬化性基である]を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって調製された、生成物。
【請求項10】
単位式、
[(HRSiO
2/2)
v-1(-RSiO
2/2)]
2[O-(R
1
2SiO
2/2)
n]
n’[(HRSiO
2/2)
v-2(-RSiO
2/2)
2]
o’[式中、下付き文字o’は、0~100であり、下付き文字n’=(o’+1)である]の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む、請求項9に記載の生成物。
【請求項11】
各下付き文字o’=0であり、前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンが、式、
【化2】
を有する、請求項10に記載の生成物。
【請求項12】
剥離コーティング組成物における架橋剤又は共架橋剤としての、請求項9~11のいずれか一項に記載の生成物の使用。
【請求項13】
請求項6~8のいずれか一項に記載の方法によって調製された、生成物。
【請求項14】
前記生成物が、単位式、
[(R
8RSiO
2/2)
v-1(-RSiO
2/2)]
2[O-(R
1
2SiO
2/2)
n]
n’[(R
8RSiO
2/2)
v-2(-RSiO
2/2)
2]
o’[式中、各下付き文字o’は、0~100であり、下付き文字n’=(o’+1)であり、各R
8は、H及び硬化性基からなる群から独立して選択され、但し、1分子中に少なくとも1つのR
8は前記硬化性基(H以外)である]のクラスター化官能性オルガノポリシロキサンを含む、請求項13に記載の生成物。
【請求項15】
下付き文字o’=0であり、前記生成物が、式、
【化3】
のクラスター化官能性オルガノポリシロキサンを含む、請求項14に記載の生成物。
【請求項16】
接着剤組成物における接着剤としての、請求項13~15のいずれか一項に記載の生成物の使用。
【請求項17】
硬化性組成物であって、
(I)請求項9、10、11、13、14、又は15のいずれか一項に記載の生成物と、
(II)硬化剤と、を含む、硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2018年12月21日出願の米国特許仮出願第62/783229号の利益を主張するものである。米国特許仮出願第62/783229号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
多官能性オルガノシロキサンの製造方法が開示される。多官能性オルガノシロキサンは、環状シロキサンエンドブロッカーを有する、直鎖状ポリジオルガノシロキサン主鎖を含む。多官能性オルガノシロキサンは、例えば架橋剤として、硬化性組成物において有用である。
【背景技術】
【0003】
環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとビニル末端ポリジオルガノシロキサン又はヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンとの白金触媒による反応を使用する、環状シロキサンエンドブロッカーを有する直鎖状ポリジオルガノシロキサン主鎖を有する多官能性オルガノシロキサン架橋剤の製造方法が、提案されている。これらの方法は、高価である環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの精製が必要であるという欠点をきたす。これらの方法は更に、生成物の構造及び分子量を制御する能力が乏しいという欠点をきたす。
【発明の概要】
【0004】
ホウ素含有ルイス酸を触媒として使用する、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの調製方法が開示される。本方法は、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを官能化して、クラスター化官能性オルガノシロキサンを形成する工程を更に含んでもよい。多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びクラスター化官能性オルガノシロキサンは、硬化性組成物に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に記載の方法によって調製された多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンは、環状SiH官能性エンドブロッカーを有する、直鎖状ポリジオルガノシロキサン主鎖を含む。多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンは、架橋剤として使用することができる。多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンは、剥離コーティング組成物などの硬化性組成物に有用である。
【0006】
多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む生成物の調製方法は、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸;
B)式、
【化1】
[式中、下付き文字nは、2~2,000であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン;及び
C)式、(RHSiO
2/2)
v[式中、下付き文字vは、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基である]の環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質を組み合わせ、それにより、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びH
2を含む副生成物を含む生成物を調製する工程を含む。工程1)において出発物質は、任意選択で、D)溶媒を更に含んでもよい。
【0007】
本方法は、任意選択で、1つ以上の追加の工程を更に含んでもよい。本方法は、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを回収する工程を更に含んでもよい。本方法は、2)工程1)中及び/又はその後、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの形成中に生じたH2を除去する工程、及び/又は3)生成物中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程、を更に含んでもよい。副生成物H2は、任意の簡便な手段、例えばストリッピング及び/又は燃焼によって除去することができる。中和は、E)中和剤を生成物に添加し、その後、生成物を濾過することによって実施することができる。工程2)及び3)は、任意の順序で実施することができる。例えば中和の結果として粒子状副生成物が存在する場合、本方法は、4)中和後、任意の簡便な手段、例えば濾過によってアルミナなどの微粒子を除去する工程を更に含んでもよい。
【0008】
1つ以上の方法工程は、5℃~70℃、あるいは5℃~65℃、あるいは10℃~60℃、あるいは15℃~50℃、あるいは20℃~35℃、あるいは5℃~30℃、あるいは30℃の温度で実施することができる。あるいは、工程1)は、5℃~70℃、あるいは5℃~65℃、あるいは10℃~60℃、あるいは15℃~50℃、あるいは20℃~35℃、あるいは5℃~30℃、あるいは30℃の温度で実施することができる。理論に束縛されるものではないが、本方法、特に工程1)を、比較的低温(例えば、90℃以下、あるいは80℃以下、あるいは70℃以下、あるいは50℃以下)で実施することにより、反応速度、収率、又はその両方の改善をもたらすことができると考えられる。
【0009】
本方法の工程1)、あるいは本方法の工程1)、2)、及び3)に使用される出発物質は、白金族金属触媒を含まなくてもよい。本明細書で使用するとき、「含まない」には、何も含まれないこと、あるいはGCによって検出できない量であること、あるいは本明細書に記載の方法によって作製された多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む剥離コーティング組成物から調製された剥離コーティングの性能問題を引き起こすのに不十分な量であることが含まれる。
【0010】
出発物質A)触媒
本明細書に記載の方法において出発物質A)は、ホウ素含有ルイス酸である。ホウ素含有ルイス酸は、1分子中に少なくとも1つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に1~3つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に2~3つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に3つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物であってもよい。ペルフルオロアリール基は、6~12個の炭素原子、あるいは6~10個の炭素原子、あるいは6個の炭素原子を有してもよい。A)ホウ素含有ルイス酸触媒は、(C5F4)(C6F5)2B;(C5F4)3B;(C6F5)BF2;BF(C6F5)2;B(C6F5)3;BCl2(C6F5);BCl(C6F5)2;B(C6H5)(C6F5)2;B(C6H5)2(C6F5);[C6H4(mCF3)]3B;[C6H4(pOCF3)]3B;(C6F5)B(OH)2;(C6F5)2BOH;(C6F5)2BH;(C6F5)BH2;(C7H11)B(C6F5)2;(C8H14)B(C6F5);(C6F5)2B(OC2H5);又は(C6F5)2B-CH2CH2Si(CH3)からなる群から選択されてもよい。あるいは、ホウ素含有ルイス酸触媒は、式B(C6F5)3のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランであってもよい。このようなホウ素含有ルイス酸は、例えば、Millipore Sigma(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている。出発物質A)の量は、使用される他の出発物質の種類及び量に応じて異なるが、出発物質A)は、出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて、50ppm~6000ppmの量で存在してもよい。あるいは、この量は、同じ基準で50ppm~600ppmであってもよい。
【0011】
出発物質B)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン
出発物質B)は、式B-1)、
【化2】
[式中、下付き文字nは、2~2,000であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンである。あるいは、下付き文字nは、2≦n≦1,000、あるいは5≦n≦900、あるいは5≦n≦50、あるいは5≦n≦15となるような値を有してもよい。あるいは、各R
1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基からなる群から独立して選択されてもよい。好適なアルキル基としては、メチル、エチル、及びプロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)が挙げられる。好適なアルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。好適なアリール基としては、フェニルが挙げられる。好適なハロゲン化アルキル基としては、クロロメチル基、クロロプロピル基、及びトリフルオロプロピル基が挙げられる。あるいは、各R
1は、メチル、ビニル、フェニル、及びトリフルオロプロピルからなる群から独立して選択されてもよい。
【0012】
出発物質B)としての使用に好適なヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンは、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は、環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化など、当該技術分野において公知の方法によって調製することができる。例示的なヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンは、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンである。好適なヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンはまた、例えば、DMS-S12、DMS-S14、DMS-S15、DMS-S21、DMS-S27、DMS-S41、DMS-S32、DMS-S33、DMS-S35、DMS-S42、及びDMS-S45など、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から市販されている。
【0013】
出発物質C)環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
本明細書に記載の方法の出発物質C)は、式C-1)、(RHSiO2/2)v[式中、下付き文字vは、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基である]の環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。あるいは、下付き文字vは、4~10、あるいは4~8であってもよい。あるいは、下付き文字vは、4~6、あるいは4~5、あるいは4の平均値を有してもよい。式C-1)中、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であってもよい。あるいは、Rは、メチル、エチル、又はプロピルであってもよい。あるいは、Rはメチルであってもよい。出発物質C)に好適な環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの例としては、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。好適な環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、当該技術分野において公知であり、例えばDow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
【0014】
出発物質B)及びC)の量は、B)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンのOH含有量及びC)環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンのケイ素結合水素(SiH)含有量など、様々な要因に応じて異なる。しかし、量は、出発物質C)中のSiHの、出発物質B)中のOHに対するモル比(SiH:OH比)を、4:1~40:1、あるいは5:1~20:1、あるいは5:1~10:1とするのに十分である。
【0015】
出発物質D)溶媒
溶媒を、本方法に使用することができる。溶媒により、出発物質A)ホウ素含有ルイス酸などの特定の出発物質の導入を促進することができる。本明細書で使用される溶媒は、出発物質の流動化に役立つがこれらの出発物質のいずれとも本質的に反応しないものである。溶媒は、出発物質の溶解性及び溶媒の揮発性に基づいて選択されてもよい。「溶解性」は、溶媒が出発物質を溶解及び/又は分散させるのに十分であることを指す。「揮発性」は、溶媒の蒸気圧を指す。
【0016】
好適な溶媒は、炭化水素であってもよい。好適な炭化水素としては、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、若しくはキシレン、及び/又は脂肪族炭化水素、例えばヘプタン、ヘキサン、若しくはオクタンが挙げられる。あるいは、溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、又は塩化メチレンであってもよい。
【0017】
溶媒の量は、選択される溶媒の種類、並びに選択される他の出発物質の量及び種類など、様々な要因に応じて異なってもよい。しかし、溶媒の量は、出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて、0.1重量%~99重量%、あるいは2重量%~50重量%の範囲であってもよい。
【0018】
出発物質E)中和剤
出発物質E)は中和剤であり、生成物が生成した後に、任意選択で使用して出発物質A)を中和することができる。アルミナ、トリフェニルアミン、トリフェニルホスフィン、及びフェニルアセチレンは、好適な中和剤である。中和剤は当該技術分野において公知であり、例えばMillipore Sigma(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている。中和剤の量は、出発物質A)の量などの様々な要因に応じて異なるが、出発物質E)は、中和剤のホウ素含有ルイス酸に対する重量比(E:A比)を1:1~1000:1とするのに十分な量で存在してもよい。あるいは、中和剤がトリフェニルホスフィン又はフェニルアセチレンである場合、E:A比は、1:1~20:1であってもよい。あるいは、中和剤がアルミナである場合、E:A比は、100:1~1000:1であってもよい。
【0019】
方法の生成物
上述の方法の生成物は、a)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びH
2を含む副生成物を含む。生成物は、単位式a-1)、
[(HRSiO
2/2)
v-1(-RSiO
2/2)]
2[O-(R
1
2SiO
2/2)
n]
n’[(HRSiO
2/2)
v-2(-RSiO
2/2)
2]
o’[式中、下付き文字v及びn並びに基R及びR
1は、上述のとおりであり、下付き文字o’は、0~100であり、下付き文字n’=(o’+1)である]の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含んでもよい。当業者であれば、出発物質B)及びC)の相対量などの様々な要因に応じて、生成物は、2つ以上の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン種を含んでもよいことについて認識する。多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中に平均して2超の環状部分及び2超の直鎖状部分を有してもよい(o’>0の場合)。あるいは、下付き文字vは5の平均値を有してもよく、下付き文字nは10の平均値を有してもよく、下付き文字n’は1~2であってもよく、下付き文字o’は0~1であってもよい。あるいは、下付き文字vは5であってもよく、下付き文字nは10であってもよく、下付き文字n’は2であってもよく、下付き文字o’は1であってもよい。あるいは、下付き文字o’=0であると、その場合、生成物は、式a-2)、
【化3】
[式中、下付き文字n及びv並びに基R及びR
1は、上述のとおりである]の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む。
当業者であれば、1分子中に2つ以上の直鎖状主鎖及び3つ以上の環状基を有する多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンもまた、方法のために選択された出発物質B)と出発物質C)との比など、様々な要因に応じて生成物中に形成され存在してもよいことについて認識する。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、ホウ素含有ルイス酸を出発物質A)として使用する本明細書に記載の方法を用いることにより、白金触媒を伴う以前の方法よりも、式a-1)の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンに向けより高い選択性が得られたことを見出した。本方法は、所望の場合、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン構造の制御により、架橋を最小限に抑えるという効果をもたらす。例えば、環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンとの比を制御することにより、下付き文字o’=0である、すなわち直鎖状ポリジオルガノシロキサンの末端で酸素原子を介して連結した2つの環状部分を有する、式a-1)の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの量を最大化することができる。例えば、C)環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとB)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンとの比が減少すると、架橋種を形成する見込みが増す。したがって、出発物質B)及びC)は、C:Bのモル比が>6:1となるような量で使用することができる。あるいは、出発物質B)及びC)は、SiH:OHの比が4:1~40:1、あるいは5:1~20:1、あるいは5:1~10:1となるような量で使用することができる。上述の方法によって生成した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンは、剥離コーティング組成物において、例えば架橋剤又は共架橋剤として使用することができる。
【0020】
クラスター化官能性オルガノポリシロキサンの製造方法
あるいは、上述の方法は、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを官能化して、クラスター化官能性オルガノポリシロキサンを形成する工程を更に含んでもよい。上述の方法は、
出発物質を組み合わせる工程であって、当該出発物質が、
上述の生成物、又はa)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、
b)ヒドロシリル化反応触媒、並びに
c)出発物質a)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンのケイ素結合水素原子と付加反応することが可能な、1分子中に平均して少なくとも1つの脂肪族不飽和基を有する反応種、を含み、出発物質c)が1分子中に1つ以上の硬化性基を更に含む、組み合わせる工程を更に含んでもよい。簡潔に述べると、この方法は、米国特許第9,593,209号に記載の方法を修正することによって実施することができる。本明細書で上述の出発物質a)は、反応種及びヒドロシリル化反応触媒(それぞれ、成分c)及びdと記載)と、米国特許第9,593,209号、第8欄第44行~第10欄第47行に記載の量及び条件で組み合わせることができる。
【0021】
出発物質b)ヒドロシリル化反応触媒
多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを官能化してクラスター化官能性オルガノポリシロキサンを形成する方法において、出発物質b)に好適なヒドロシリル化反応触媒は、当該技術分野において公知であり、市販されている。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が挙げられる。このようなヒドロシリル化触媒は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される金属であってもよい。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、このような金属の化合物、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinsonの触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム又は[1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウムなどのロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speierの触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及びマトリックス又はコアシェル型構造にマイクロカプセル化された、上述の化合物と低分子量オルガノポリシロキサン又は白金化合物との錯体であってもよい。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体(Karstedtの触媒)、及びメチルビニルシクロシロキサンの白金錯体(Ashbyの触媒)が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体を含んでもよい。例示的なヒドロシリル化触媒は、米国特許第3,159,601号、同3,220,972号、同3,296,291号、同3,419,593号、同3,516,946号、同3,814,730号、同3,989,668号、同4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号、並びに欧州特許第0 347 895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されているとおり、当該技術分野において公知である。使用される量を十分にして、出発物質a)、b)、及びc)の合計重量に基づいて、1ppm~1,000ppmの白金族金属を提供することができる。
【0022】
出発物質c)反応種
多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを官能化してクラスター化官能性オルガノポリシロキサンを形成するための、上述の出発物質c)反応種は、式c-1)、R4
ySiR5
(4-y)[式中、下付き文字yは1~3であり、各R4は、付加反応することが可能な脂肪族不飽和基であり、各R5は、硬化性官能基を有する有機基である]のシランを含んでもよい。あるいは、下付き文字yは、1~2であってもよい。あるいは、下付き文字yは、1であってもよい。各R4は、アルケニル(ビニル、アリル、及びヘキセニルなど)及びアルキニル(プロピニル又はヘキシニルなど)からなる群から独立して選択されてもよい。各R5は、アクリレート基、アルコール基、アルコキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、メタクリレート基、又はウレタン基を有する、有機基からなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各R5は、アクリレート基を有する有機基、エポキシ基を有する有機基、及びメタクリレート基を有する有機基からなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各R5は、エポキシ基を有する有機基であってもよい。好適なシランは当該技術分野において公知であり、例えば、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)又はGelest,Inc.から市販されている。例示的なシランとしては、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
あるいは、出発物質c)は、ケイ素原子を含有していない有機化合物、例えば、式c-2)、R6R7[式中、各R6は、付加反応することが可能な脂肪族不飽和基であり、各R7は、硬化性基である]のものであってもよい。各R6は、アルケニル(ビニル、アリル、及びヘキセニルなど)及びアルキニル(プロピニル又はヘキシニルなど)からなる群から独立して選択されてもよい。各R7は、アクリレート基、アルコール基、アルコキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、メタクリレート基、及びウレタン基を有する、有機基からなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各R7は、アクリレート基、エポキシ基、及びメタクリレート基を有する、有機基からなる群から選択されてもよい。あるいは、各R7は、エポキシ基を有する有機基であってもよい。式c-2)の好適な化合物の例としては、アリルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルメタクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、c-2)は、アリルグリシジルエーテルであってもよい。あるいは、c-2)は、アリルメタクリレートであってもよい。式c-2)の好適な化合物は当該技術分野において公知であり、例えばMillipore Sigma(St.Louis,Missouri,U.S.A)から市販されている。
【0024】
クラスター化官能性オルガノシロキサンの製造方法に使用される出発物質は、任意選択で、1つ以上の追加の出発物質を更に含んでもよい。追加の出発物質は、米国特許第9,593,209号(第10欄第48行~第16欄第17行)に開示の追加の成分であってもよい。追加の出発物質は、処理剤あり又はなしの充填剤、非反応性樹脂、鎖延長剤、末端封鎖剤、及び触媒阻害剤からなる群から選択される。
【0025】
上述の方法では、a’)クラスター化官能性オルガノポリシロキサンを含む生成物、又はクラスター化官能性オルガノポリシロキサンと充填剤及び/又は非反応性樹脂とのマスターバッチを製造する。生成物は、単位式a’-1)、
[(R
8RSiO
2/2)
v-1(-RSiO
2/2)]
2[O-(R
1
2SiO
2/2)
n]
n’[(R
8RSiO
2/2)
v-2(-RSiO
2/2)
2]
o’[式中、下付き文字v、n、n’、及びo’、並びに基R及びR
1は、上述のとおりであり、各R
8は、H及び硬化性基からなる群から独立して選択され、但し、1分子中に少なくとも1つのR
8は硬化性基である]のクラスター化官能性オルガノシロキサンを含んでもよい。あるいは、1分子中に1~4つ出現するR
8は、硬化性基(水素以外)になる。あるいは、1分子中に1~3つ、あるいは1~2つ、あるいは平均して2つのR
8は、硬化性基(水素以外)である。R
8の硬化性基は、上述の出発物質c)反応種に由来する。R
8の硬化性基は、R
4’SiR
5
(4-y)及びR
6’R
7[式中、R
4’及びR
6’は、出発物質c)の脂肪族不飽和基及び出発物質a)のケイ素結合水素原子のヒドロシリル化反応によって生成した二価炭化水素基である]からなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、下付き文字vは5の平均値を有してもよく、下付き文字nは10の平均値を有してもよく、下付き文字n’は1~2であってもよく、下付き文字o’は0~1であってもよい。あるいは、下付き文字vは5であってもよく、下付き文字nは10であってもよく、下付き文字n’は2であってもよく、下付き文字o’は1であってもよい。当業者であれば、オルガノハイドロジェンシロキサンの製造に使用される出発物質B)及びC)の相対量などの様々な要因に応じて、生成物は、2つ以上のクラスター化官能性オルガノシロキサン種を含んでもよいことについて認識する。クラスター化官能性オルガノシロキサンは、1分子中に平均して2超の環状部分及び2超の直鎖状部分を有してもよい(o’>0の場合)。あるいは、下付き文字o’=0であると、その場合、生成物は、式a’-2)、
【化4】
[式中、R及びR
1、R
8、及び、下付き文字nは、上述のとおりである]のクラスター化官能性オルガノポリシロキサンを含んでもよい。
【0026】
上述のように調製されたクラスター化官能性オルガノシロキサンは、熱ラジカル硬化性接着剤組成物などの接着剤組成物に、例えば添加剤として使用することができる。
【0027】
クラスター化官能性オルガノシロキサンは、例えば、接着剤組成物における添加剤として使用することができる。理論に束縛されるものではないが、a’)クラスター化官能性オルガノシロキサンにより、1)接着剤組成物に対する硬化の高速化(上記のa’)クラスター化官能性オルガノシロキサンを含有していない同等の接着剤組成物と比較したとき)、及び2)接着剤組成物を硬化させることによって調製された接着剤の引張特性及び伸長特性の改善、並びに/又は3)接着剤組成物の架橋性の改善のうちの1つ以上の効果をもたらすことができると考えられる。
【0028】
硬化性組成物
生成物、a)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びa’)クラスター化官能性オルガノポリシロキサンは、硬化性組成物に有用である。硬化性組成物は、
(I)上述の生成物、a)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びa’)クラスター化官能性オルガノポリシロキサン、のうちの1つ以上と、
(II)硬化剤と、を含んでもよい。
【0029】
選択される硬化剤は、出発物質(I)における硬化性置換基の種類及び量に応じて異なる。例えば、a)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンが硬化性組成物に含まれる場合、及び/又はa’)クラスター化官能性オルガノシロキサンが、上述の方法において出発物質c)によって導入された硬化性基に加えて、SiH官能基を有する場合、例えば、硬化性置換基は、SiHであってもよい。あるいは、硬化性置換基は、上述のように、出発物質c)反応種を使用して、a’)クラスター化官能性オルガノシロキサンを製造することによって導入された硬化性基であってもよい。
【0030】
例えば、出発物質(I)がSiH官能基を有する場合、(II)硬化剤は、上述の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを官能化する方法において、出発物質b)について上述したものによって例示されるように、ヒドロシリル化反応触媒であってもよい。
【0031】
例えば、出発物質(I)が、ラジカル硬化性基(エポキシ官能基、アクリレート官能基、又はメタクリレート官能基を有する有機基など)を有するa’)クラスター化官能性オルガノシロキサンを含む場合、硬化剤は、ラジカル開始剤を(II)硬化剤として含んでもよい。ラジカル開始剤は、熱ラジカル開始剤であっても、放射線ラジカル開始剤であっても、レドックス試薬であってもよい。熱ラジカル開始剤としては、過酸化物が挙げられ、これは当該技術分野において公知であり、米国特許第9,593,209号、第16欄第49行~第17欄第26行に開示されているように市販されている。熱ラジカル開始剤は、硬化性組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.01重量%~15重量%、あるいは0.1重量%~5重量%、あるいは0.1重量%~2重量%の量で使用することができる。
【0032】
あるいは、ラジカル開始剤は、放射線光開始剤であってもよい。放射線光開始剤は当該技術分野において公知であり、これには、オニウム塩などのカチオン性光開始剤が挙げられ、放射線光開始剤は、米国特許第9,593,209号、第17欄第27行~第18欄第40行に開示されている。好適な放射線光開始剤は、硬化性組成物中に、硬化性組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.01重量%~15重量%、あるいは0.1重量%~10重量%、あるいは0.1重量%~5重量%、あるいは0.1重量%~2重量%の量で存在してもよい。
【0033】
あるいは、ラジカル開始剤は、米国特許第9,593,209号、第21欄第33行~第53行に開示されているものなどのレドックス試薬であってもよい。
【0034】
あるいは、出発物質(I)が、a’)OH、アルコキシ、又は他の加水分解性基を有する有機基を有する、クラスター化官能性オルガノシロキサンを含む場合、(II)硬化剤は、硬化性組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.001重量%~5重量%の量で縮合反応触媒を含んでもよい。例示的な縮合反応触媒は、米国特許第9,593,209号、第18欄第41行~第19欄第15行に開示されているものである。
【0035】
あるいは、出発物質(I)が、a’)クラスター化官能性オルガノシロキサンを含む場合、(II)硬化剤は、有機ボランアミン錯体を含んでもよい。好適な有機ボランアミン錯体は、例えば、米国特許第9,593,209号、第19欄第16行~第21欄第33行に開示されている。
【0036】
あるいは、出発物質(I)が、イソシアネート官能基又はウレタン官能基を有する有機基を有する、a’)クラスター化官能性オルガノシロキサンを含む場合、(II)硬化剤は、ポリオールなどの2つ以上のカルビノール基を有する化合物、又はアミン官能性化合物を含んでもよい。このような硬化剤の例は、第21欄第54行~第63行に開示されている。
【0037】
あるいは、出発物質(I)が2種類以上の硬化性置換基を有する場合、2種類以上の硬化剤が、硬化性組成物における出発物質(II)として使用することができる。例えば、ラジカル開始剤と縮合反応触媒との組み合わせは、出発物質(I)がラジカル硬化性基及び縮合反応硬化性基の両方、例えばエポキシ及びアルコキシの両方を有する場合、使用することができる。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒と縮合反応触媒との組み合わせは、出発物質(I)がSiH官能基及びアルコキシなどの縮合反応硬化性基の両方を有する場合、使用することができる。
【0038】
硬化性組成物は、任意選択で、1つ以上の追加の出発物質を更に含んでもよい。これらは、(III)架橋剤、(IV)溶媒、(V)接着促進剤、(VI)着色剤、(VII)反応性希釈剤、(VIII)腐食防止剤、(IX)重合阻害剤、(X)充填剤、(XI)充填剤処理剤、(XII)酸受容体、及びこれらの組み合わせによって例示される。好適な追加の出発物質は、米国特許第9,592,209号、第22欄第5行~第29欄第8行に、他の任意選択による成分として記載され、例示されている。他の追加の出発物質を添加することができる。例えば、硬化性組成物は、任意選択で、(XIII)反応性樹脂及びポリマー、(XIV)二重硬化化合物、又はその両方を更に含んでもよい。出発物質のための(XIII)反応性樹脂及びポリマーは当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第9,670,392号、第16欄第21行~第18欄第35行を参照されたい。
【0039】
熱ラジカル硬化性組成物
硬化性組成物は、熱ラジカル硬化性組成物であってもよい。熱ラジカル硬化性組成物は、米国特許第9,670,392号に記載のように、それに記載のクラスター化官能性オルガノシロキサンを、上述の出発物質a’)について記載したように調製されたクラスター化官能性オルガノポリシロキサンと置き換えることによって、製造することができる。熱ラジカル硬化性組成物は、
(I)出発物質a’)として上述したクラスター化官能性オルガノポリシロキサン、又はa’)クラスター化官能性オルガノポリシロキサンを含有する生成物と、
(II)硬化剤であって、
(a)ラジカル開始剤、及び
(b)縮合反応触媒、を含む、硬化剤と、
(III)架橋剤と、
(XIII)反応性樹脂及びポリマーと、を含んでもよい。
【0040】
熱ラジカル硬化組成物は、(XIV)二重硬化化合物(これは、加水分解性基及びフリーラジカル反応性基の両方を有する有機ケイ素化合物である)、(VIII)腐食防止剤、及び(V)接着促進剤を更に含んでもよく、これらの出発物質の全ては上述のとおりである。
【0041】
接着剤組成物
あるいは、硬化性組成物は、接着剤組成物であってもよい。接着剤組成物は、
A)出発物質a’)として上述したクラスター化官能性オルガノポリシロキサン、又はa’)クラスター化官能性オルガノポリシロキサンを含有する生成物であって、クラスター化官能性オルガノポリシロキサンがアクリレート官能基、エポキシ官能基、及び/又はメタクリレート官能基を有する、生成物と、
B)反応性樹脂及びポリマーと、
C)縮合反応触媒と、
D)フリーラジカル開始剤と、を含んでもよい。
【0042】
出発物質B)反応性樹脂及びポリマー
接着剤組成物における出発物質B)は、反応性樹脂及びポリマーである。反応性樹脂及びポリマーは、出発物質として上述した(XIII)反応性樹脂及びポリマーであってもよく、米国特許第9,670,392号を参照されたい。あるいは、反応性樹脂及びポリマーは、2017年8月22日に出願された米国特許仮出願第62/548558号に記載されているように調製されたポリアルコキシ末端封鎖樹脂-ポリマーブレンドであってもよい。ポリアルコキシ末端封鎖樹脂-ポリマーブレンドは、
i)式、(R
2’
3SiO
1/2)及び(SiO
4/2)[式中、各R
2’は、独立して、一価炭化水素基であり、但し、1分子中に少なくとも1つのR
2’は、脂肪族不飽和を有する]の単位を含むシロキサン樹脂であって、0.5:1~1.5:1の範囲で(R
2’
3SiO
1/2)単位(M単位)の、(SiO
4/2)単位(Q単位)に対するモル比(M:Q比)を有する、シロキサン樹脂と、
ii)式、(R
2’
3SiO
1/2)
ii及び(R
2’
2SiO
2/2)
hh(D単位)[式中、下付き文字hhは、20~1000であり、下付き文字iiは、平均値2を有する]の単位を含むポリジオルガノシロキサンと、
iii)アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーであって、単位式、
【化5】
(HR
22
2SiO
1/2)
ppp(R
22
3SiO
1/2)
qqq(HR
22SiO
2/2)
rrr
(R
22
2SiO
2/2)
sss(R
22SiO
3/2)
ttt(HSiO
3/2)
uuu(SiO
4/2)
kk[式中、各D
1は、独立して、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素基を表し、各R
22は、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基、又は1~18個の炭素原子を有する一価ハロゲン化炭化水素基(R
1について上述したものなど)を表し、各R
23は、独立して1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基(R
1について上述したものなど)であり、下付き文字nnnは、0又は1であり、下付き文字oooは、0であり、下付き文字qqq、sss、及びtttは、5≧qqq≧0、5≧sss≧0となり、下付き文字tttは、0又は1となり、下付き文字kkは、0又は1となり、下付き文字nnn>0となり、数量(mmm+ppp+qqq+rrr+sss+ttt+uuu+kk)≦50となるような値を有し、但し、エンドブロッカーにおけるD
1基の>90モル%が直鎖状である]を有する、アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーと、
iv)ヒドロシリル化反応触媒と、の反応生成物を含む。各D
1は、アルキレン基、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、若しくはヘキシレン;アリーレン基、例えばフェニレン;又はアルキルアリーレン基、例えば、
【化6】
によって例示することができる。あるいは、各D
1は、アルキレン基、例えばエチレン又はプロピレン、あるいはエチレンである。
【0043】
出発物質C)縮合反応触媒
上述の接着剤組成物における出発物質C)は、縮合反応触媒である。縮合反応触媒は、シラノール-シラノール縮合反応に有効な通常の縮合触媒から選択されてもよく、当該触媒としては、有機金属化合物、アミン、並びに広範囲の有機及び無機の塩基及び酸が挙げられる。有機金属化合物としては、スズ、チタン、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウム、及びその他の有機化合物が挙げられる。縮合反応触媒は、有機スズ化合物及び有機チタン化合物であってもよい。例示的な有機スズ化合物は、a)カルボン酸の第二スズ塩、例えばi)ジブチルスズジラウレート、ii)ジメチルスズジラウレート、iii)ジ-(n-ブチル)スズビスケトネート、iv)ジブチルスズジアセテート、v)ジブチルスズマレエート、vi)ジブチルスズジアセチルアセトネート、vii)ジブチルスズジメトキシド、viii)カルボメトキシフェニルスズトリスウベレート、ix)ジブチルスズジオクタノエート、x)ジブチルスズジホルメート、xi)イソブチルスズトリセロエート、xii)ジメチルスズジブチレート、xiii)ジメチルスズジネオデコノエート、xiv)ジブチルスズジネオデコノエート、xv)トリエチルスズタートレート、xvi)ジブチルスズジベンゾエート、xvii)ブチルスズトリ-2-エチルヘキサノエート、xviii)ジオクチルスズジアセテート、xix)スズオクチレート、xx)スズオレエート、xxi)スズブチレート、xxii)スズナフテネート、xxiii)ジメチルスズジクロリド;b)有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えばxxiv)スズ(II)ジアセテート、xxv)スズ(II)ジオクタノエート、xxvi)スズ(II)ジエチルヘキサノエート、xxvii)スズ(II)ジラウレート;c)カルボン酸の第一スズ塩、例えばxxviii)第一スズオクトエート、xxix)第一スズオレエート、xxx)第一スズアセテート、xxxi)第一スズラウレート、xxxii)第一スズステアレート、xxxiii)第一スズナフタネート、xxxiv)第一スズヘキサノエート、xxxv)第一スズスクシネート、xxxvi)第一スズカプリレート;及びd)i)~xxxvi)のうちの2つ以上の組み合わせ;からなる群から選択されてもよい。例示的な有機チタン化合物は、i)テトラ-n-ブチルチタネート、ii)テトライソプロピルチタネート、iii)テトラ-t-ブチルチタネート、iv)テトラキス(2-エチルヘキシル)チタネート、v)アセチルアセトネートチタネートキレート、vi)エチルアセトアセテートチタネートキレート、vii)トリエタノールアミンチタネートキレート、viii)トリ-n-ブチルチタネート、並びにix)i)、ii)、iii)、iv)、v)、vi)、vii)、及びviii)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0044】
接着剤組成物中の縮合反応触媒の量は、他の出発物質の選択、任意の追加の出発物質が添加されるかどうか、及び接着剤組成物の最終用途など、様々な要因に応じて異なる。しかし、縮合反応触媒は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.01重量%~25重量%の範囲の量で存在してもよい。あるいは、縮合反応触媒は、0.1%~25%、あるいは0.1%~15%、あるいは0.5%~15%、あるいは0.5%~10%、あるいは0.1%~5%の量で存在してもよい。
【0045】
出発物質D)フリーラジカル開始剤
上述の接着剤組成物における出発物質D)は、フリーラジカル開始剤である。フリーラジカル開始剤は、アゾ化合物又は有機過酸化物化合物を含んでもよい。好適なアゾ化合物としては、アゾベンゼン、アゾベンゼン-p-スルホン酸、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な有機過酸化物化合物としては、ジアルキルパーオキシド、ジアリールパーオキシド、ジアシルパーオキシド、アルキルヒドロパーオキシド、及びアリールヒドロパーオキシドが挙げられる。具体的な有機過酸化物化合物は、出発物質(II)について上述したとおりである。あるいは、有機過酸化物は、ベンゾイルパーオキシド;ジベンゾイルパーオキシド;4-モノクロロベンゾイルパーオキシド;ジクミルパーオキシド;tert-ブチルパーオキシベンゾエート;tert-ブチルクミルパーオキシド;tert-ブチルオキシド2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサン;2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド;ジ-tert-ブチルパーオキシ-ジイソプロピルベンゼン;1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサン-3,2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン;クミル-tert-ブチルパーオキシド;又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせ;によって例示することができる。
【0046】
接着剤組成物に添加されるフリーラジカル開始剤の量は、選択される縮合反応触媒の種類及び量、並びに接着剤組成物における他の出発物質の選択など、様々な要因に応じて異なるが、フリーラジカル開始剤は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.1重量%~5重量%、あるいは0.2重量%~3重量%、あるいは0.5重量%~2重量%の量で存在してもよい。
【0047】
接着剤組成物における追加の出発物質
上述の接着剤組成物は、1つ以上の追加の出発物質(上述の出発物質A)、B)、C)及びD)とは異なり、これらに加えて添加される)を更に含んでもよい。追加の出発物質は、E)二重硬化化合物、F)接着促進剤、G)腐食防止剤、H)レオロジー変性剤、I)乾燥剤、J)架橋剤、K)充填剤、L)スペーサー、M)酸捕捉剤、N)シラノール官能性ポリジオルガノシロキサン、O)蛍光光学増白剤、P)連鎖移動剤、Q)(メタ)アクリレートモノマー、R)ポリアルコキシ末端ポリジオルガノシロキサン、S)着色剤、及びE)、F)、G)、H)、I)、J)、K)、L)、M)、N)、O)、P)、Q)、R)、及びS)のうちの2つ以上からなる群から選択されてもよい。
【0048】
出発物質E)二重硬化化合物
上述の接着剤組成物は、任意選択で、出発物質E)二重硬化化合物を更に含んでもよい。二重硬化化合物は、1分子中に、少なくとも1つの加水分解性基及び少なくとも1つのフリーラジカル反応性基を有する有機ケイ素化合物である。出発物質E)の有機ケイ素化合物は、式、R14
mmR22
nnSiX(4-mm-nn)[式中、R22は上述のとおりであり、R14は硬化性基(アクリレート官能基、エポキシ官能基、又はメタクリレート官能基など)であり、Xは加水分解性基であり、下付き文字mmは、1~2であり、下付き文字nnは、0~2であり、数量(mm+nn)は、2~3である]のシランを含んでもよい。
【0049】
各Xは、独立して、アセトアミド基、アセトキシなどのアシルオキシ基、アルコキシ基、アミド基、アミノ基、アミノキシ基、オキシモ基、ケトキシモ基、及びメチルアセトアミド基から選択されてもよい加水分解性基を表す。Xは、ヒドロキシル基ではない。あるいは、各Xは、アセトキシ基又はアルコキシ基であってもよい。あるいは、各Xは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシなどのアルコキシ基であり、あるいは、メトキシである。
【0050】
あるいは、出発物質E)の有機ケイ素化合物は、単位式、
(XmmR22
(3-mm)SiO1/2)oo(R14R22
2SiO1/2)pp(R22
2SiO2/2)qq(R22XSiO2/2)rr(R14R22SiO2/2)ss(R14SiO3/2)ww(R22SiO3/2)tt(SiO4/2)uu[式中、R22、R14、及びX、並びに下付き文字mmは、上述のとおりであり、下付き文字oo≧0、下付き文字pp≧0、下付き文字qq≧0、下付き文字rr≧0、下付き文字ss≧0、下付き文字ww≧0、下付き文字tt≧0、下付き文字uu≧0であり、但し、数量(oo+rr)≧1、数量(pp+ss+ww)≧1、数量(oo+pp+qq+rr+ss+ww+tt+uu)>2である]のポリオルガノシロキサンを含んでもよい。あるいは、下付き文字ooは、0~100、あるいは0~50、あるいは0~20、あるいは0~10、あるいは1~50、あるいは1~20、あるいは1~10である。あるいは、下付き文字ppは、0~100、あるいは0~50、あるいは0~20、あるいは0~10、あるいは1~50、あるいは1~20、あるいは1~10であってもよい。あるいは、下付き文字qqは、0~1,000、あるいは0~500、あるいは0~200、あるいは0~100、あるいは1~500、あるいは1~200、あるいは1~100である。あるいは、下付き文字rrは、0~100、あるいは0~50、あるいは0~20、あるいは0~10、あるいは1~50、あるいは1~20、あるいは1~10である。あるいは、下付き文字ssは、0~100、あるいは0~50、あるいは0~20、あるいは0~10、あるいは1~50、あるいは1~20、あるいは1~10である。あるいは、下付き文字wwは、0~100、あるいは0~50、あるいは0~20、あるいは0~10、あるいは1~50、あるいは1~20、あるいは1~10である。あるいは、下付き文字ttは、0~1,000、あるいは0~500、あるいは0~200、あるいは0~100、あるいは1~500、あるいは1~200、あるいは1~100である。あるいは、下付き文字uuは、0~1,000、あるいは0~500、あるいは0~200、あるいは0~100、あるいは1~500、あるいは1~200、あるいは1~100である。
【0051】
出発物質E)の例としては、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及びメタクリロキシプロピルジメチルメトキシシランなどのシランが挙げられる。
【0052】
接着剤組成物中の二重硬化化合物の量は、他の出発物質の選択、任意の追加の出発物質が添加されるかどうか、及び組成物の最終用途など、様々な要因に応じて異なる。しかし、二重硬化化合物は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.01重量%~25重量%の範囲の量で存在してもよい。あるいは、二重硬化化合物は、0.1%~25%、あるいは0.1%~15%、あるいは0.5%~15%、あるいは0.5%~10%、あるいは0.1%~5%の量で存在してもよい。
【0053】
出発物質F)接着促進剤
上述の接着剤組成物は、任意選択で、F)接着促進剤を更に含んでもよい。好適な接着促進剤は、遷移金属キレート、ハイドロカルボノオキシシラン、例えば、アルコキシシラン、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせ、アミノ官能性シラン、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。接着促進剤は、式、R15
aaaR16
bbbSi(OR17)4-(aaa+bbb)[式中、各R15は、独立して、少なくとも3個の炭素原子を有する一価有機基であり、R16は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基又はアクリレート基などの接着促進基を有する少なくとも1つのSiC結合置換基を含有し;各R17は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基などの飽和炭化水素基であり;下付き文字aaaは、0~2の範囲の値を有し;下付き文字bbbは、1又は2のいずれかであり、数量(aaa+bbb)は3以下である]を有するシランを含んでもよい。あるいは、接着促進剤は、上述のシランの部分縮合体を含んでもよい。あるいは、接着促進剤は、トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサンなど、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせを含んでもよく、これは、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
【0054】
あるいは、接着促進剤は、不飽和又はエポキシ官能性化合物を含んでもよい。接着促進剤は、不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含んでもよい。例えば、官能性アルコキシシランは、式、R18
cccSi(OR19)(4-ccc)[式中、下付き文字cccは、1、2、又は3であり、あるいは下付き文字cccは、1である]を有してもよい。各R18は、独立して、一価有機基であり、但し、少なくとも1つのR18は、不飽和有機基又はエポキシ官能性有機基である。R18のエポキシ官能性有機基は、3-グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルによって例示される。R18の不飽和有機基は、3-メタクリロイルオキシプロピル、3-アクリロイルオキシプロピル、及びビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレニルなどの不飽和一価炭化水素基によって例示される。各R19は、独立して、1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子を有する飽和炭化水素基である。R19は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルによって例示される。
【0055】
好適なエポキシ官能性アルコキシシランの例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
あるいは、接着促進剤は、上述のようなヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物などのエポキシ官能性シロキサン、又はヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンドを含んでもよい。接着促進剤は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンとの組み合わせを含んでもよい。例えば、接着促進剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物との混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンとの混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの混合物によって例示される。
【0057】
あるいは、接着促進剤は、H2N(CH2)2Si(OCH3)3、H2N(CH2)2Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、及びこれらの組み合わせによって例示されるアミノ官能性アルコキシシランなど、アミノ官能性シランを含んでもよい。
【0058】
あるいは、接着促進剤は、遷移金属キレートを含んでもよい。好適な遷移金属キレートとしては、チタネート、ジルコニウムアセチルアセトネートなどのジルコネート、アルミニウムアセチルアセトネートなどのアルミニウムキレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
あるいは、接着促進剤は、出発物質A)、出発物質B)、若しくは存在する場合、出発物質E)、又はこれらの2つ以上と反応する官能基を有する、トリアジン系化合物を含んでもよい。トリアジン環は、一置換、二置換、又は三置換であってもよく、置換基のうちの少なくとも1つは、反応する官能基である。官能基は、フリーラジカル反応性のもの又は縮合反応性のものであってもよい。フリーラジカル反応性官能基を有するトリアジン化合物の例としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、トリ-(メタクリロキシプロピル)イソシアヌレート、トリアリルオキシトリアジン、トリメタクリロキシトリアジン、トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、及びトリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートが挙げられる。縮合反応性基を有するトリアジン化合物の例としては、2,4,6-トリス(メチルジメトキシシリル)トリアジン、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0060】
接着促進剤の正確な量は、接着剤組成物における他の出発物質の選択及び量などの様々な要因に応じて異なる。しかし、接着促進剤は、存在する場合、接着剤組成物に、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.01~50重量部、あるいは0.01~10重量部、あるいは0.01~5重量部の量で添加することができる。好適な接着促進剤の例は、米国特許第9,156,948号に記載されている。
【0061】
出発物質G)腐食防止剤
接着剤組成物は、任意選択で、出発物質G)腐食防止剤を更に含んでもよい。好適な腐食防止剤の例としては、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、並びにMillipore Sigma製の2-メルカプトベンゾチアゾール、R.T.Vanderbilt(Norwalk,Connecticut,U.S.A.)製の2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体(CUVAN(商標)826)及びアルキルチアジアゾール(CUVAN(商標)484)などの市販の腐食防止剤が挙げられる。好適な腐食防止剤の例は、米国特許第9,156,948号に記載されているものによって例示される。存在する場合、腐食防止剤の量は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.05重量%~0.5重量%であってもよい。
【0062】
出発物質H)レオロジー変性剤
接着剤組成物は、任意選択で、組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、最大5重量%、あるいは1重量%~2重量%の出発物質H)レオロジー変性剤を更に含んでもよい。レオロジー変性剤は市販されている。好適なレオロジー変性剤の例としては、ポリアミド、水素添加ヒマシ油誘導体、金属石鹸、微結晶ワックス、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適なレオロジー変性剤の例は、米国特許第9,156,948号に記載されているものによって例示される。レオロジー変性剤の量は、選択された特定のレオロジー変性剤及び組成物に使用される他の出発物質の選択など、様々な要因に応じて異なる。しかし、レオロジー変性剤の量は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0重量部~20重量部、あるいは1重量部~15重量部、あるいは1重量部~5重量部であってもよい。
【0063】
出発物質I)乾燥剤
上述の組成物は、任意選択で、出発物質I)乾燥剤を更に含んでもよい。乾燥剤は、様々な供給源由来の水を捕捉する。例えば、乾燥剤は、水及びアルコールといった、縮合反応の副生成物を捕捉することができる。好適な乾燥剤の例は、例えば、米国特許第9,156,948号に開示されている。乾燥剤に好適な吸着剤の例は、無機微粒子、例えば、チャバサイト、モルデナイト、及びアナルサイトなどのゼオライト;アルカリ金属のアルミノケイ酸塩、シリカゲル、シリカマグネシアゲル、活性炭、活性アルミナ、酸化カルシウム及びこれらの組み合わせなどのモレキュラーシーブであってもよい。吸着剤は、10μm以下の粒径を有してもよい。吸着剤は、例えば、10Å(オングストローム)以下といった、水及びアルコールを吸着するのに十分な平均孔径を有してもよい。
【0064】
あるいは、乾燥剤は、化学的手段により水及び/又は他の副生成物を捕捉することができる。(出発物質J)として使用される任意のシラン架橋剤に加えて)組成物に添加されるシラン架橋剤の量は、化学的乾燥剤として機能することができるものである。理論に束縛されるものではないが、化学的乾燥剤は、組成物の部を一緒に混合した後に、この組成物を水に触れさせないようにするために、複数部型組成物の乾燥した部に添加することができると考えられる。例えば、乾燥剤として好適なアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。乾燥剤の量は、選択される特定の乾燥剤に応じて異なる。しかし、出発物質I)が化学乾燥剤である場合、この量は、組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0重量部~15重量部、あるいは0重量部~10重量部、あるいは0重量部~5重量部、あるいは0.1重量部~0.5重量部の範囲であってもよい。
【0065】
出発物質J)-架橋剤
上述の組成物は、任意選択で、出発物質J)架橋剤を更に含んでもよい。架橋剤は、加水分解性基を有するシラン架橋剤、又はその部分的若しくは完全加水分解生成物を含み得る。架橋剤は、出発物質B)の加水分解性基と反応性である、1分子中に、平均して2つより多くの置換基を有する。好適なシラン架橋剤の例は、一般式、R20
dddSi(R21)(4-ddd)[式中、各R20は、独立して、アルキル基などの一価炭化水素基であり;各R21は加水分解性置換基であり、上述のXと同じ基であってもよい]を有してもよい。あるいは、各R21は、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アセトアミド基、アセトキシなどのアシルオキシ基、アルコキシ基、アミド基、アミノ基、アミノキシ基、ヒドロキシル基、オキシモ基、ケトキシモ基、又はメチルアセトアミド基であってもよく、下付き文字iiの各例は、0、1、2、又は3であってもよい。シラン架橋剤の場合、下付き文字dddは、2より大きい平均値を有する。あるいは、下付き文字dddは、3~4の範囲の値を有してもよい。あるいは、各R21は、ヒドロキシル、アルコキシ、アセトキシ、アミド、又はオキシムから独立して選択されてもよい。あるいは、シラン架橋剤は、アシロキシシラン、アルコキシシラン、ケトキシモシラン、及びオキシモシランから選択されてもよい。
【0066】
シラン架橋剤は、アルコキシシラン、例えば、ジアルキルジアルコキシシランなどのジアルコキシシラン;アルキルトリアルコキシシランなどのトリアルコキシシラン;テトラアルコキシシラン;又はその部分若しくは完全加水分解生成物によって例示されるもの、又はこれらの別の組み合わせを含んでもよい。好適なトリアルコキシシランの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられ、あるいはメチルトリメトキシシランが挙げられる。好適なテトラアルコキシシランの例としては、テトラエトキシシランが挙げられる。あるいは、シラン架橋剤は、アセトキシシランなどのアシロキシシランを含んでもよい。アセトキシシランとしては、テトラアセトキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、ジオルガノジアセトキシシラン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。例示的なアセトキシシランとしては、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、ブチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、オクチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、架橋剤は、オルガノトリアセトキシシラン、例えば、メチルトリアセトキシシランとエチルトリアセトキシシランとを含む混合物、を含んでもよい。組成物に使用することができるアルコキシ基とアセトキシ基との両方を含有する出発物質J)に好適なシランの例としては、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
あるいは、架橋剤は、H2N(CH2)2Si(OCH3)3、H2N(CH2)2Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、又はこれらの組み合わせ、及びこれらの組み合わせなどのアミノ官能基を含んでもよい。好適なシラン架橋剤の例は、米国特許第9,156,948号に開示されている。
【0068】
あるいは、架橋剤は、多官能性(メタ)アクリレート架橋剤、例えば例示のジ(メタ)アクリレートを含んでもよく、このような架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールビスメタクリロキシカーボネート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジン)プロピオネート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アクリレートを先端に有するウレタン含有プレポリマー、ポリエーテルジアクリレート、及びジメタクリレート、並びにこれらのうちの2つ以上の組み合わせにより例示される。好適な多官能性(メタ)アクリレート架橋剤は、例えば、米国特許第8,304,543号第11段46~65行に開示されている。
【0069】
存在する場合、架橋剤は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.1重量%~10重量%の範囲の量で添加することができる。
【0070】
出発物質K)充填剤
上述の組成物は、任意選択で、K)充填剤を更に含んでもよい。充填剤は、補強充填剤、増量充填剤、伝導性充填剤、又はこれらの組み合わせを含でもよい。例えば、組成物は、任意選択で、出発物質(K1)補強充填剤を更に含んでもよく、これは、存在する場合、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.1重量%~95重量%、あるいは1重量%~60重量%の量で添加することができる。出発物質(K1)の正確な量は、組成物の反応生成物の形態、及び、他の充填剤が添加されるかどうかなど、様々な要因に応じて異なる。好適な補強充填剤の例としては、補強シリカ充填剤(例えば、ヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル及び沈降シリカ)が挙げられる。ヒュームドシリカは、当技術分野において公知であり、市販されており、例えば、Cabot Corporation(Massachusetts,U.S.A.)によってCAB-O-SILという名称で販売されているヒュームドシリカがある。
【0071】
接着剤組成物は、任意選択で、出発物質(K2)増量充填剤を、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.1重量%~95重量%、あるいは1重量%~60重量%、あるいは1重量%~20重量%の範囲の量で更に含んでもよい。増量充填剤の例としては、破砕石英、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム(例えば、軽質炭酸カルシウム)、酸化亜鉛、タルク、珪藻土、酸化鉄、粘土、雲母、白亜、二酸化チタン、ジルコニア、砂、カーボンブラック、グラファイト、又はこれらの組み合わせが挙げられる。増量充填剤は、当該技術分野において既知であり、市販されており、例えば、U.S.Silica(Berkeley Springs,WV)によってMIN-U-SILの名称で販売されている粉砕シリカがある。好適な沈降炭酸カルシウムとしては、Solvay製のWinnofil(商標)SPM、並びにSMI製のUltrapflex(商標)及びUltrapflex(商標)100が挙げられる。好適な充填剤の例は、米国特許第9,156,948号に開示されている。
【0072】
出発物質L)スペーサー
上述の接着剤組成物は、任意選択で、L)スペーサーを更に含んでもよい。スペーサーは、有機粒子、無機粒子又はこれらの組み合わせを含んでもよい。スペーサーは、熱伝導性、導電性、又は両方であってよい。スペーサーは、所望の粒径を有してもよく、例えば、粒径は25μm~125μmの範囲であってもよい。スペーサーは、ガラス又はポリマー(例えば、ポリスチレン)ビーズなどの単分散ビーズを含んでもよい。スペーサーは、アルミナ、窒化アルミニウム、噴霧金属粉、窒化ホウ素、銅及び銀などの熱伝導性充填剤を含んでもよい。スペーサーの量は、粒径分布、部を混合して調製された組成物又はそれから調製された硬化生成物の使用中に加えられる圧力、使用中の温度、及び混合組成物又はそれから調製された硬化生成物の所望の厚さなど、様々な要因に応じて異なる。しかし、組成物は、スペーサーを、組成物中の全出発物質の合計重量に基づいて、0.05重量%~2重量%、あるいは0.1重量%~1重量%の量の含んでもよい。
【0073】
出発物質M)酸捕捉剤
上述の組成物は、任意選択で、M)酸捕捉剤を更に含んでもよい。好適な酸捕捉剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及びこれらの組み合わせなど、本質的に塩基性である様々な無機及び有機化合物が挙げられる。組成物は、組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0重量%~10重量%の酸捕捉剤を含んでもよい。
【0074】
出発物質N)シラノール官能性ポリジオルガノシロキサン
上述の組成物は、任意選択で、N)シラノール官能性ポリジオルガノシロキサンを更に含んでもよい。出発物質N)は、式、HOR22
2SiO(R22
2SiO)eee((HO)R22SiO)fffSiR22
2OH若しくは式、R3SiO(R2SiO)ggg((HO)RSiO)hhhSiR3[式中、R22は、上述のとおりである]、又はこれらの組み合わせのポリジオルガノシロキサンを含んでもよい。下付き文字eeeは、0であっても正の数であってもよい。あるいは、下付き文字eeeは、少なくとも2の平均値を有する。あるいは、下付き文字eeeは、2~2000であってもよい。下付き文字fffは、0であっても正の数であってもよい。あるいは、下付き文字fffは、0~2000の平均値を有してもよい。下付き文字gggは、0であっても正の数であってもよい。あるいは、下付き文字gggは、0~2000の平均値を有してもよい。下付き文字hhhは、少なくとも2の平均値を有する。あるいは、下付き文字hhhは、2~2000の範囲の平均値を有してもよい。
【0075】
出発物質N)は、ポリジオルガノシロキサン、例えば
i)ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ヒドロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
iii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヒドロキシシロキサン)、及び
iv)i)、ii)、及びiii)のうちの2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0076】
出発物質N)としての使用に好適なヒドロキシル末端封鎖ポリジオルガノシロキサンは、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は、環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化などの、当該技術分野において公知の方法によって調製することができる。接着剤組成物に添加される場合、出発物質N)は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.1重量%~20重量%、あるいは0.1重量%~10重量%、あるいは0.1重量%~5重量%の量で存在してもよい。
【0077】
出発物質O)光学増白剤
上述の接着剤組成物は、任意選択で、出発物質O)光学増白剤を更に含んでもよい。好適な光学増白剤は、TINOPAL OBとして市販されている2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)など、市販されている。組成物に添加される場合、光学増白剤は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.1重量%~2重量%の量で存在してもよい。
【0078】
出発物質P)連鎖移動剤
上述の接着剤組成物は、任意選択で、P)連鎖移動剤を更に含んでもよい。接着剤組成物に添加される場合、連鎖移動剤は、組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.01重量%~5重量%、あるいは0.01重量%~2重量%、あるいは0.1重量%~2重量%の量で存在してもよい。
【0079】
出発物質Q)(メタ)アクリレートモノマー
上述の接着剤組成物は、任意選択で、出発物質Q)(メタ)アクリレートモノマーを更に含んでもよい。(メタ)アクリレートモノマーは、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレートメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テラヒドロフルフリルメタクリレート、及びシクロヘキシルメチルメタクリレートによって例示される。接着剤組成物に添加される場合、(メタ)アクリレートモノマーは、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.1重量%~35重量%、あるいは0.1重量%~25重量%、あるいは0.1重量%~15重量%、あるいは0.1重量%~10重量%の量で存在してもよい。
【0080】
出発物質R)ポリアルコキシ末端ポリジオルガノシロキサン
出発物質R)は、上述の出発物質B)の調製によって調製される任意のものに加えての、ポリアルコキシ末端ポリジオルガノシロキサンである。出発物質R)は、シロキサン樹脂を含んでいないことを除いて、出発物質B)について上述したように調製されたポリアルコキシ末端ポリジオルガノシロキサンであってもよい。あるいは、出発物質R)は、白金触媒ヒドロシリル化反応によって調製されたポリアルコキシ末端ポリジオルガノシロキサンであってもよい。
【0081】
出発物質S)着色剤
上述の接着剤組成物は、任意選択で、出発物質S)着色剤を更に含んでもよい。着色剤は、染料であってもカーボンブラックなどの顔料であってもよい。
【0082】
上述の接着剤組成物の出発物質を選択する際、本明細書に記載の特定の出発物質は2つ以上の機能を有してもよいので、出発物質の種類は重複することがある。例えば、特定のアルコキシシランは、架橋剤及び/又は接着促進剤及び/又は乾燥剤として有用である場合がある。特定の粒子は、充填剤及びスペーサーとして有用である場合がある。出発物質を接着剤組成物に添加する場合、追加の出発物質は互いに異なる。
【0083】
接着剤組成物の調製方法
上述の接着剤組成物は、1)出発物質B)i)オルガノシロキサン樹脂、及びB)ii)ポリジオルガノシロキサンを組み合わせ、樹脂ポリマーブレンド(RPB)を形成することによって調製することができる。溶媒は、任意選択で、RPBを均質化するために使用することができる。オルガノシロキサン樹脂などの出発物質のうちの1つ以上は、例えば、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの芳香族炭化水素といった上述のものなどの溶媒に溶解又は分散することができる。溶媒の量は、接着剤組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0重量%~60重量%、あるいは10重量%~50重量%、あるいは20重量%~40重量%であってもよい。上述のように、出発物質B)iii)及びB)iv)をRPBと組み合わせ、変換RPBを形成することができる。方法は、2)変換RPB、並びに及び出発物質A)、C)、及びD)を、混合などの任意の簡便な手段によって組み合わせる工程を更に含んでもよい。上述のような1つ以上の追加の出発物質E)~S)は、工程1)中、工程2)中、又はその両方の最中に添加することができる。出発物質は、20℃~150℃で組み合わせることができる。方法は、工程1)、工程2)又はその両方において、出発物質を50℃~150℃、あるいは60℃~120℃の温度で加熱する工程を更に含んでもよい。圧力は重要ではない。方法は、周囲圧力で実施することができる。
【0084】
剥離コーティング組成物
あるいは、硬化性組成物は、剥離コーティング組成物であってもよい。剥離コーティング組成物は、
(i)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、又は上述の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む上述の方法の当該生成物のうちの生成物と、
(ii)ヒドロシリル化反応することが可能な、1分子中に平均して少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサンと、
(iii)ヒドロシリル化反応触媒と、
(iv)ヒドロシリル化反応抑制剤と、を含む。
【0085】
出発物質(ii)脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサン
剥離コーティング組成物における出発物質(ii)は、ヒドロシリル化反応することが可能な、1分子中に平均して少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基を有する、ポリオルガノシロキサン、あるいは、末端脂肪族不飽和を有する、1分子中に平均して少なくとも2つのケイ素結合基を有するポリオルガノシロキサンである。このポリオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐状、部分的に分岐状、環状、樹脂状(すなわち、三次元網目を有する)であってもよく、又は異なる構造の組み合わせを含んでもよい。ポリオルガノシロキサンは、平均式、R13
aSiO(4-a)/2
[式中、各R13は、一価炭化水素基又は一価ハロゲン化炭化水素基から独立して選択され、但し、各分子中、R13のうちの少なくとも2つは脂肪族不飽和を含み、下付き文字aは、0<a≦3.2となるように選択される]を有してもよい。R13に好適な一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基は、R1について上述したとおりである。ポリオルガノシロキサンについての上述の平均式は、あるいは、(R13
3SiO1/2)b(R13
2SiO2/2)c(R13SiO3/2)d(SiO4/2)e[式中、R13は上述で定義され、下付き文字b、c、d、及びeは、各々独立して、≧0~≦1であり、但し、数量(b+c+d+e)=1である]と記載することができる。当業者であれば、このようなM、D、T、及びQ単位、並びにそれらのモル分率が、上述の平均式中の下付き文字aにどのように影響するかを理解する。T単位(下付き文字dによって示される)、Q単位(下付き文字eによって示される)、又はその両方は、典型的には、ポリオルガノシロキサン樹脂中に存在し、一方、下付き文字cによって示されるD単位は、典型的には、ポリオルガノシロキサンポリマー中に存在する(及びまた、ポリオルガノシロキサン樹脂又は分岐状ポリオルガノシロキサン中に存在してもよい)。
【0086】
あるいは、出発物質(i)は、実質的に直鎖状、あるいは直鎖状のポリオルガノシロキサンを含んでもよい。実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンは、平均式、R13
a’SiO(4-a’)/2[式中、各R13は上述で定義したとおりであり、下付き文字a’は、1.9≦a’≦2.2となるように選択される]を有してもよい。
【0087】
RTで、実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンは、流動性液体であってもよく、又は未硬化ゴムの形態を有してもよい。実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンは、25℃で、10mPa・s~30,000,000mPa・s、あるいは10mPa・s~10,000mPa・s、あるいは100mPa・s~1,000,000mPa・s、あるいは100mPa・s~100,000mPa・sの粘度を有してもよい。粘度は、実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンの粘度に対して適切に選択されたスピンドルを備えたBrookfield LV DV-E粘度計、すなわちRV-1からRV-7を介してRTで測定することができる。
【0088】
あるいは、(ii)ポリオルガノシロキサンが実質的に直鎖状、又は直鎖状である場合、ポリオルガノシロキサンは、平均単位式、(R10R9
2SiO1/2)aa(R10R9SiO2/2)bb(R10
2SiO2/2)cc(R9
3SiO1/2)dd[式中、各R9は、独立して選択された脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R10は、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立して選択され、下付き文字aaは、0、1、又は2であり、下付き文字bbは0以上であり、下付き文字ccは1以上であり、下付き文字ddは、0、1、又は2であり、但し、数量(aa+dd)≧2、数量(aa+dd)=2であり、但し、数量(aa+bb+cc+dd)は、3~2,000である]を有してもよい。あるいは、下付き文字cc≧0である。あるいは、下付き文字bb≧2である。あるいは、数量(aa+dd)は、2~10、あるいは2~8、あるいは2~6である。あるいは、下付き文字ccは、0~1,000、あるいは1~500、あるいは1~200である。あるいは、下付き文字bbは、2~500、あるいは2~200、あるいは2~100である。
【0089】
R9の一価炭化水素基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~10個の炭素原子を有するアリール基、1~6個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、6~10個の炭素原子を有するハロゲン化アリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は7~12個の炭素原子を有するハロゲン化アラルキル基によって例示され、ここでアルキル、アリール、及びハロゲン化アルキルは本明細書に記載のとおりである。あるいは、各R9は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基である。あるいは、各R9は、アルキル基である。あるいは、各R9は、独立して、メチル、エチル、又はプロピルである。各出現するR9が、同じになっても異なるものになってもよい。あるいは、各R9はメチル基である。
【0090】
R10の脂肪族不飽和一価炭化水素基は、ヒドロシリル化反応することが可能である。R10に好適な脂肪族不飽和炭化水素基は、本明細書で定義されるとおりの、ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルによって例示されるアルケニル基、並びに本明細書で定義されるとおりの、エチニル及びプロピニルによって例示されるアルキニル基によって例示される。あるいは、各R10は、ビニル又はヘキセニルであってもよい。あるいは、各R10はビニル基である。上述の(ii-I)の単位式中の下付き文字は、(ii-I)の分岐状シロキサンのアルケニル又はアルキニル含有量が、分岐状シロキサン(ii-I)の重量に基づいて、0.1重量%~1重量%、あるいは0.2重量%~0.5重量%になってもよいのに、十分な値であってもよい。
【0091】
(ii)ポリオルガノシロキサンが実質的に直鎖状、あるいは直鎖状である場合、少なくとも2つの脂肪族不飽和基は、ペンダント位、末端位、又はペンダント及び末端の位置の両方においてケイ素原子に結合することができる。ペンダントケイ素結合脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサンの具体例として、出発物質A)は、平均単位式、
[(CH3)3SiO1/2]2[(CH3)2SiO2/2]cc[(CH3)ViSiO2/2]bb[式中、下付き文字bb及びccは上述で定義したとおりであり、Viはビニル基を示す]を有してもよい。この平均式に関して、任意のメチル基が、異なる一価炭化水素基(アルキル又はアリールなど)で置換されてもよく、任意のビニル基が、異なる脂肪族不飽和一価炭化水素基(アリル又はヘキセニルなど)で置換されてもよい。あるいは、1分子中に平均して少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサンの具体例として、出発物質(ii)は、平均式、Vi(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]ccSi(CH3)2Vi[式中、下付き文字cc及びViは上述で定義されている]を有してもよい。ケイ素結合ビニル基末端のジメチルポリシロキサンは、単独で、又は上述で開示のジメチル,メチル-ビニルポリシロキサンと組み合わせて使用することができる。この平均式に関して、任意のメチル基が、異なる一価炭化水素基で置換されてもよく、任意のビニル基が、任意の末端脂肪族不飽和一価炭化水素基で置換されてもよい。少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基は、ペンダント及び末端の両方にあってもよいので、(ii)ポリオルガノシロキサンは、あるいは、平均単位式、
[Vi(CH3)2SiO1/2]2[(CH3)2SiO2/2]cc[(CH3)ViSiO2/2]bb[式中、下付き文字bb及びcc並びにViは上述で定義されている]を有してもよい。
【0092】
実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンは、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、及び分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーによって例示することができる。
【0093】
あるいは、出発物質(ii)は、以下からなる群から選択される実質的に直鎖状、あるいは直鎖状のポリオルガノシロキサンを含んでもよい。
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
viii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
ix)フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
xi)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xii)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xiii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xiv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xv)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xvi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)及び
xvii)これらの組み合わせ。
【0094】
あるいは、A)ポリオルガノシロキサンは、樹脂状ポリオルガノシロキサンであってもよい。樹脂状ポリオルガノシロキサンは、平均式、R13
a’’SiO(4-a’’)/2[式中、各R13は上述で定義したとおりであり、下付き文字a’’は、0.5≦a’’≦1.7となるように選択される]を有してもよい。
【0095】
樹脂状ポリオルガノシロキサンは、分岐状又は三次元網目状の分子構造を有する。25℃で、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、液体の形態であっても固体の形態であってもよい。あるいは、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、T単位のみを含むポリオルガノシロキサン、T単位を他のシロキシ単位(例えば、M、D、及び/又はQシロキシ単位)と組み合わせて含むポリオルガノシロキサン、又はQ単位を他のシロキシ単位(すなわち、M、D、及び/又はTシロキシ単位)と組み合わせて含むポリオルガノシロキサンによって例示することができる。典型的には、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、T単位及び/又はQ単位を含む。樹脂状ポリオルガノシロキサンの具体例としては、ビニル末端シルセスキオキサン及びビニル末端MDQ樹脂が挙げられる。
【0096】
あるいは、出発物質(ii)は、(ii-I)分岐状シロキサン、(ii-II)シルセスキオキサン、又は(ii-I)及び(ii-II)の両方を含んでもよい。出発物質(ii-I)及び(ii-II)は、組成物が剥離コーティング用途に使用される場合、特に有用である場合がある。
【0097】
出発物質(ii)は、(ii-I)分岐状シロキサンと(ii-II)シルセスキオキサンとの組み合わせであってもよい。この組み合わせは、物理的ブレンド又は混合物であってもよい。分岐状シロキサン及びシルセスキオキサンは、剥離コーティング組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、(ii-I)分岐状シロキサンの量及び(ii-II)シルセスキオキサンの量が合計して総計100重量部になるような、相互の量で存在する。分岐状シロキサンは、50~100重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、0~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~90重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、10~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~80重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、20~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~76重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、24~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~70重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、30~50重量部の量で存在してもよい。理論に束縛されるものではないが、シルセスキオキサン(ii-II)の量が、(ii-I)分岐状シロキサン及び(ii-II)シルセスキオキサンの合計量である100重量部当たり50重量部を超える場合、組成物から形成された剥離コーティングは、移動という欠点をきたす場合があり、シルセスキオキサンが、剥離コーティングと接触している感圧接着剤などの被着体に移動し混入する場合があると考えられる。
【0098】
出発物質(ii-I)分岐状シロキサンは、単位式(ii-I)、(R9
3SiO1/2)p(R10R9
2SiO1/2)q(R9
2SiO2/2)r(SiO4/2)s[式中、各R9は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R10は、アルケニル基又はアルキニル基であり、これらは両方とも上述のとおりであり、下付き文字p≧0、下付き文字q>0であり、15≧r≧995であり、下付き文字s>0である]を有してもよい。
【0099】
(ii-I)の単位式中、下付き文字p≧0である。下付き文字q>0である。あるいは、下付き文字q≧3である。下付き文字rは、15~995である。下付き文字s>0である。あるいは、下付き文字s≧1である。あるいは、下付き文字pについては、22≧p≧0、あるいは、20≧p≧0、あるいは、15≧p≧0、あるいは、10≧p≧0、あるいは、5≧p≧0である。あるいは、下付き文字qについては、22≧q>0、あるいは、22≧q≧4、あるいは、20≧q>0、あるいは、15≧q>1、あるいは、10≧q≧2、あるいは、15≧q≧4である。あるいは、下付き文字rについては、800≧r≧15、あるいは、400≧r≧15である。あるいは、下付き文字sについては、10≧s>0、あるいは、10≧s≧1、あるいは、5≧s>0、あるいは、s=1である。あるいは、下付き文字sは、1又は2である。あるいは、下付き文字s=1である場合、下付き文字pは0であってもよく、下付き文字qは4であってもよい。
【0100】
分岐状シロキサンは、式、(R
9
2SiO
2/2)
m[式中、各下付き文字mは、独立して、2~100である]の少なくとも2つのポリジオルガノシロキサン鎖を有してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、式、(R
9
2SiO
2/2)
o[式中、各下付き文字oは、独立して、1~100である]の4つのポリジオルガノシロキサン鎖に結合した、式、(SiO
4/2)の少なくとも1つの単位を含んでもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、式、
【化7】
[式中、下付き文字uは、0又は1であり、各下付き文字tは、独立して、0~995、あるいは15~995、あるいは0~100であり、各R
11は、独立して選択された一価炭化水素基であり、各R
9は、上述のとおり、独立して選択された、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R
10は、上述のとおりアルケニル及びアルキニルからなる群から独立して選択される]を有してもよい。出発物質(ii-I)に好適な分岐状シロキサンは、米国特許第6,806,339号及び米国特許出願公開第2007/0289495号に開示されているものによって例示される。
【0101】
シルセスキオキサンは、単位式(ii-II)、(R9
3SiO1/2)i(R10R9
2SiO1/2)f(R9
2SiO2/2)g(R9SiO3/2)h([式中、R9及びR10は上述のとおりであり、下付き文字i≧0、下付き文字f>0であり、下付き文字gは、15~995であり、下付き文字h>0である]を有する。下付き文字iは、0~10であってもよい。あるいは、下付き文字iについて、12≧i≧0、あるいは、10≧i≧0、あるいは、7≧i≧0、あるいは、5≧i≧0、あるいは、3≧i≧0である。
【0102】
あるいは、下付き文字f≧1である。あるいは、下付き文字f≧3である。あるいは、下付き文字fについて、12≧f>0、あるいは、12≧f≧3、あるいは、10≧f>0、あるいは、7≧f>1、あるいは、5≧f≧2、あるいは、7≧f≧3である。あるいは、下付き文字gについて、800≧g≧15、あるいは、400≧g≧15である。あるいは、下付き文字h≧1である。あるいは、下付き文字hは、1~10である。あるいは、下付き文字hについて、10≧h>0、あるいは、5≧h>0、あるいは、h=1である。あるいは、下付き文字hは、1~10であり、あるいは、下付き文字hは、1又は2である。あるいは、下付き文字h=1の場合、下付き文字fは3であってもよく、下付き文字iは0であってもよい。下付き文字fの値は、単位式(ii-II)のシルセスキオキサンが、シルセスキオキサンの重量に基づいて、0.1重量%~1重量%、あるいは0.2重量%~0.6重量%のアルケニル含有量となるのに十分であってもよい。出発物質(ii)に好適なシルセスキオキサンは、米国特許第4,374,967号に開示されているものによって例示される。
【0103】
出発物質(ii)は、構造、分子量、ケイ素原子に結合した一価基、及び脂肪族不飽和基の含有量などの少なくとも1つの特性が異なる、組み合わせ又は2つ以上の異なるポリオルガノシロキサンを含んでもよい。剥離コーティング組成物は、剥離コーティング組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、60重量%~98重量%、あるいは60重量%~95重量%の出発物質(ii)を含有してもよい。
【0104】
出発物質(iii)ヒドロシリル化反応触媒
剥離コーティング組成物における出発物質(iii)として使用されるヒドロシリル化反応触媒は、出発物質b)について上述し例示したとおりであってもよい。あるいは、剥離コーティング組成物に使用するためのヒドロシリル化反応触媒は、Karstedtの触媒及びAshbyの触媒からなる群から選択されてもよい。(iii)ヒドロシリル化反応触媒は、触媒量、すなわち、所望の条件でその硬化を促進するのに十分な量(amount)又は分量(quantity)で剥離コーティング組成物中に存在する。(iii)ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、>0.01ppm~10,000ppm、あるいは、>1,000ppm~5,000ppmであってもよい。あるいは、(iii)ヒドロシリル化反応触媒の典型的な触媒量は、0.1ppm~5,000ppm、あるいは1ppm~2,000ppm、あるいは>0~1,000ppmである。あるいは、(iii)ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、剥離コーティング組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0.01ppm~1,000ppm、あるいは0.01ppm~100ppm、あるいは20ppm~200ppm、あるいは0.01ppm~50ppmの白金族金属であってもよい。
【0105】
出発物質(iv)ヒドロシリル化反応抑制剤
出発物質(iv)は阻害剤であり、これを使用して、同じ出発物質を含有しているが阻害剤の加えられていない組成物と比較したとき、剥離コーティング組成物の反応速度を変化させることができる。ヒドロシリル化硬化性組成物の阻害剤は、アセチレン系アルコール、例えばメチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール、並びにこれらの組み合わせ;シクロアルケニルシロキサン、例えば1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンにより例示されるメチルビニルシクロシロキサン、及びこれらの組み合わせ;エン-イン化合物、例えば3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン;トリアゾール、例えばベンゾトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン;ジアルキルフマレート、ジアルケニルフマレート、ジアルコキシアルキルフマレート、マレエート、例えばジアリルマレエート;ニトリル;エーテル;一酸化炭素;アルケン、例えばシクロオクタジエン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;アルコール、例えばベンジルアルコール;並びにこれらの組み合わせにより例示される。あるいは、ヒドロシリル化反応抑制剤は、アセチレン系アルコール(例えば、1-エチニル-1-シクロヘキサノール)、及びマレエート(例えば、ジアリルマレエート、ビスマレエート、又はn-プロピルマレエート)、並びにこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0106】
あるいは、組成物における出発物質(iv)は、シリル化アセチレン系化合物であってもよい。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない組成物又は上述したもののような有機アセチレン系アルコール阻害剤を含有する組成物のヒドロシリル化による反応生成物と比較したとき、組成物のヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。
【0107】
シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びこれらの組み合わせにより例示される。あるいは、出発物質(iv)は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はこれらの組み合わせにより例示される。出発物質(iv)として有用なシリル化アセチレン系化合物は、上述のアセチレン系アルコールを、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることによりシリル化するといった、当該技術分野において公知の方法によって調製することができる。
【0108】
剥離コーティング組成物に添加される阻害剤の量は、組成物の所望の可使時間(ポットライフ)、組成物が一部型組成物であるか又は複数部型組成物であるか、使用される具体的な阻害剤、出発物質(i)及び(ii)の選択及び量など、様々な要因に応じて異なる。しかし、存在する場合、阻害剤の量は、組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0重量%~1重量%、あるいは0重量%~5重量%、あるいは0.001重量%~1重量%、あるいは0.01重量%~0.5重量%、あるいは0.0025重量%~0.025重量%であってもよい。
【0109】
追加の出発物質
剥離コーティング組成物は、任意選択で、(v)アンカー添加剤、(vi)ミスト防止添加剤、(vii)剥離改質剤、(viii)実質的に直鎖状、又は直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び(ix)溶媒、例えば出発物質D)について上述したものから選択される1つ以上の追加の出発物質を更に含んでもよい。
【0110】
(v)アンカー添加剤
出発物質(v)は、アンカー添加剤である。好適なアンカー添加剤は、ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;ビニルアセトキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;並びに1分子中に少なくとも1つの脂肪族不飽和炭化水素基及び少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能性アルコキシシランとの組み合わせ(例えば、物理的なブレンド及び/又は反応生成物)(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせ)、により例示される。あるいは、アンカー添加剤は、ポリオルガノシリケート樹脂を含んでもよい。好適なアンカー添加剤及びその調製方法は、例えば、米国特許第9,562,149号、米国特許出願公開第2003/0088042号、同第2004/0254274号、及び同第2005/0038188号、並びに欧州特許第0 556 023号に開示されている。アンカー添加剤の正確な量は、基材の種類、及びプライマーが使用されるかどうかなど、様々な要因に応じて異なるが、剥離コーティング組成物中のアンカー添加剤の量は、出発物質(ii)100重量部当たり0~2重量部であってもよい。あるいは、アンカー添加剤の量は、出発物質(ii)100重量部当たり0.01~2重量部であってもよい。
【0111】
(vi)ミスト防止添加剤
出発物質(vi)はミスト防止添加剤であり、これを剥離コーティング組成物に添加して、コーティングプロセスにおける、特に高速コーティング装置でのシリコーンミスト形成を低減又は抑制することができる。ミスト防止添加剤はオルガノハイドロジェンケイ素化合物、オキシアルキレン化合物、又は、1分子中に少なくとも3つのケイ素結合アルケニル基を有するオルガノアルケニルシロキサン、及び好適な触媒の反応生成物であってもよい。好適なミスト防止添加剤は、例えば、米国特許出願公開第2011/0287267号、米国特許第8,722,153号、同第6,586,535号、及び同第5,625,023号に開示されている。
【0112】
ミスト防止添加剤の量は、剥離コーティング組成物のために選択される他の出発物質の量及び種類など、様々な要因に応じて異なる。しかし、ミスト防止添加剤の量は、剥離コーティング組成物中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、0重量%~10重量%、あるいは0.1重量%~3重量%であってもよい。
【0113】
(vii)剥離改質剤
出発物質(vii)は剥離改質剤であり、これを剥離コーティング組成物に添加して、剥離力のレベル(剥離コーティングと、それへの被着体、例えば感圧接着剤をはじめとするラベルとの間の接着力)を制御する(減少させる)ことができる。必要とされる剥離力を有する剥離コーティング組成物は、改質剤不含剥離コーティング組成物から、改質剤の濃度を調整することによって配合することができる。好適な剥離改質剤の例としては、トリメチルシロキシ末端ジメチル、フェニルメチルシロキサンが挙げられる。あるいは、剥離改質剤は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン樹脂と、少なくとも1つのヒドロキシル基又は加水分解性基を有するジオルガノポリシロキサンとの縮合反応生成物であってもよい。使用される場合、剥離改質剤は、例えば、出発物質(ii)100部当たり0~85重量部、あるいは25~85重量部で使用することができる。好適な剥離改質剤の例は、例えば、米国特許第8,933,177号及び米国特許出願公開第2016/0053056号に開示されている。
【0114】
(viii)直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
出発物質(viii)は、出発物質(i)とは異なる、実質的に直鎖状、あるいは直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、剥離コーティング組成物に追加の架橋剤として添加することができる。実質的に直鎖状、又は直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式、(HR12
2SiO1/2)v’(HR12SiO2/2)w’(R12
2SiO2/2)x’(R12
3SiO1/2)y’[式中、各R12は、独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字v’は、0、1、又は2であり、下付き文字w’は1以上であり、下付き文字x’は0以上であり、下付き文字y’は、0、1、又は2であり、但し、数量(v’+y’)=2、数量(v’+w’)≧3である]を有する。R12の一価炭化水素基は、R1の一価炭化水素基について上述したとおりであってもよい。数量(v’+w’+x’+y’)は、2~1,000であってもよい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、以下のものによって例示される:
i)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、
ii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
iii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、及び
iv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、並びに
v)i)、ii)、iii)、iv)、及びv)のうちの2つ以上の組み合わせ。好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
【0115】
(ix)溶媒
出発物質(x)は、溶媒である。好適な溶媒としては、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの製造方法において出発物質D)として上述した炭化水素が挙げられる。あるいは、溶媒は、ポリアルキルシロキサン、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、ナフサ、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。好適な蒸気圧を有するポリアルキルシロキサンは、溶媒として使用することができ、これらとしては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、及び他の低分子量ポリアルキルシロキサン、例えば、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,U.S.A)から市販されている、0.5~1.5cStのDOWSIL(商標)200FLUIDS及びDOWSIL(商標)OS FLUIDSが挙げられる。
【0116】
あるいは、出発物質(x)は、有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンなどのケトン;ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素(例えばヘプタン、ヘキサン、又はオクタン);プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はエチレングリコールn-ブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのグリコールエーテル;ミネラルスピリット;ナフサ;又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0117】
溶媒の量は、選択される溶媒の種類、並びに剥離コーティング組成物のために選択される他の出発物質の量及び種類など、様々な要因に応じて異なる。しかし、溶媒の量は、剥離コーティング組成物の全ての出発物質の重量に基づいて、0重量%~99重量%、あるいは2重量%~50重量%であってもよい。溶媒は、例えば混合及び送達を助けるために、剥離コーティング組成物の調製中に添加することができる。溶媒の全て又は一部分は、任意選択で、剥離コーティング組成物の調製後に除去することができる。
【0118】
本明細書に記載の剥離コーティング組成物に更に添加することができる他の任意選択による出発物質としては、例えば、反応性希釈剤、芳香剤、防腐剤着色剤、及び充填剤、例えば、シリカ、石英、又はチョークが挙げられる。
【0119】
剥離コーティング組成物(及び本明細書に記載の他の硬化性組成物)の出発物質を選択する際、本明細書に記載の特定の出発物質は2つ以上の機能を有してもよいので、出発物質の種類は重複することがある。例えば、カーボンブラックといった特定の微粒子は、充填剤として、顔料などの着色剤として、更には難燃剤として有用な場合がある。追加の出発物質を剥離コーティング組成物に添加する場合、追加の出発物質は出発物質(i)~(iv)と異なり、また互いに異なる。
【0120】
あるいは、剥離コーティングは、微粒子を含まなくてもよく、又は限定された量のみの、例えば剥離コーティング組成物の0重量%~30重量%の微粒子(例えば、充填剤及び/若しくは顔料)を含有してもよい。微粒子は、剥離コーティングを適用するのに使用されるコーター装置に凝集するか、又はそうでなければ固着することがある。これらは、光学的透明性が望まれる場合、剥離コーティング及びそれを使用して形成された剥離ライナーの光学特性、例えば透明性を妨げることがある。微粒子は、被着体の接着に不利になることがある。
【0121】
あるいは、本発明の剥離コーティング組成物は、フルオロオルガノシリコーン化合物を含まなくてもよい。硬化中、フルオロ化合物は、その表面張力が低いので、コーティング組成物と基材との界面、例えばポリオルガノシロキサン剥離コーティング組成物/PETフィルム界面に迅速に移動することがあり、フッ素含有バリアを作ることによって、剥離コーティング(剥離コーティング組成物を硬化させることによって調製されたもの)の基材への接着を防止することがあると考えられる。バリアを作ることによって、フルオロ化合物は、任意の出発物質が界面で反応することを防止することがある。更に、フルオロシリコーン化合物は通常高価である。
【0122】
剥離組成物は、上述の(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を含む出発物質を、任意の任意選択による追加の出発物質と共に、任意の添加順序にて、任意選択でマスターバッチにより、任意選択で剪断下、組み合わせることによって調製することができる。
【0123】
基材のコーティング方法
硬化性組成物によりコーティングされた基材の調製方法は、硬化性組成物を基材上に配置する工程を含む。方法は、硬化性組成物を基材上で硬化する工程を更に含む。硬化を、高温、例えば、50℃~180℃、あるいは50℃~120℃、あるいは50℃~90℃で加熱することによって実施して、コーティングされた基材を得ることができる。当業者であれば、硬化性組成物における任意選択による出発物質及び構造体の基材物質の選択など、様々な要因に応じて適切な温度を選択することができるであろう。
【0124】
硬化性組成物は、任意の好適な方法で基材上に配置又は分配することができる。典型的には、硬化性組成物はウェットコーティング技術により、ウェット形態で適用される。硬化性組成物は、i)スピンコーティング;ii)ブラシコーティング;iii)ドロップコーティング;iv)スプレーコーティング;v)ディップコーティング;vi)ロールコーティング;vii)フローコーティング;viii)スロットコーティング;ix)グラビアコーティング;x)メイヤーバーコーティング;又はxi)i)~x)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせ;によって適用することができる。典型的には、硬化性組成物を基材上に配置することにより、基材上にウェット付着物がもたらされ、これがその後硬化されて、基材上に硬化性組成物から形成され硬化したフィルムを含むコーティングされた基材が得られる。
【0125】
基材は限定されず、任意の基材であってもよい。硬化したフィルムは、基材から分離可能であってもよく、又はその選択に応じて、物理的及び/又は化学的に基材に結合されていてもよい。基材は、付着物を硬化するための、一体型ホットプレート又は一体型若しくは独立型の炉にかけられてもよい。基材は、任意選択で、連続的又は非連続的な形状、サイズ、寸法、表面粗さ、及びその他の特性を有してもよい。あるいは、基材は、高温の軟化点温度を有してもよい。しかし、硬化性組成物及び方法は、そのようには限定されない。
【0126】
あるいは、基材は、熱硬化性及び/又は熱可塑性であってもよいプラスチックを含んでもよい。しかし、あるいは、基材は、ガラス、金属、紙、木材、厚紙、板紙、シリコーン、若しくはポリマー物質、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0127】
好適な基材の具体例としては、クラフト紙、ポリエチレンコーティングクラフト紙(PEKコーティング紙)、普通紙などの紙基材;ポリアミド(PA)などのポリマー基材;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステルなどのポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンなどのポリオレフィン;スチレン樹脂;ポリオキシメチレン(POM);ポリカーボネート(PC);ポリメチレンメタクリレート(PMMA);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリフェニレンエーテル(PPE);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン;ポリケトン(PK);ポリエーテルケトン;ポリビニルアルコール(PVA);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリアリレート(PAR);ポリエーテルニトリル(PEN);フェノール樹脂;フェノキシ樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハンなどのセルロース;ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化樹脂;ポリスチレン型、ポリオレフィン型、ポリウレタン型、ポリエステル型、ポリアミド型、ポリブタジエン型、ポリイソプレン型、フルオロ型などの熱可塑性エラストマー;並びにこれらのコポリマー及び組み合わせが挙げられる。
【0128】
硬化性組成物、またはウェット付着物は、典型的には、ある時間にわたり、高温で硬化される。当該時間は、典型的には、硬化性組成物の硬化、すなわち架橋をもたらすのに十分である。当該時間は、0超~8時間、あるいは0超~2時間、あるいは0超~1時間、あるいは0超~30分、あるいは0超~15分、あるいは0超~10分、あるいは0超~5分、あるいは0超~2分であってもよい。当該時間は、使用される高温、選択される温度、所望のフィルム厚さ、硬化性組成物中の任意の水又はキャリアビヒクルの非存在の存在など、様々な要因に応じて異なる。
【0129】
硬化性組成物を硬化させる工程は、典型的には、0.1~50秒、あるいは1秒~10秒、あるいは0.5秒~30秒の滞留時間を有する。選択される滞留時間は、基材の選択、選択される温度、及びライン速度に応じて異なってもよい。本明細書で使用するとき、滞留時間は、硬化性組成物又はウェット付着物が高温にさらされる時間を指す。滞留時間は、硬化性組成物、ウェット付着物、又はその部分的に硬化した反応中間体が、典型的には硬化を開始する高温にさらされなくなった後であっても進行中の硬化がある場合があるので、硬化時間とは区別される。あるいは、コーティングされた物品は、オーブン内のコンベヤーベルト上で調製することができ、滞留時間は、オーブンの長さ(例えばメートル単位)をコンベヤーベルトのライン速度で割ることによって(例えば、メートル/秒)計算することができる。
【0130】
当該時間は、硬化の反復、例えば、第1の硬化及び後硬化に細分でき、第1の硬化は、例えば1時間であり、後硬化は、例えば3時間である。高温は、このような反復において、室温を上回る任意の温度から、独立して選択されてもよく、各反復において同じであってもよい。
【0131】
フィルム及びコーティングされた基材の厚さ及び他の寸法に応じて、コーティングされた基材は、反復プロセスを介して形成することができる。例えば、第1の付着物を形成し、第1の高温に第1の時間にわたってさらして、部分的に硬化した付着物を得ることができる。次いで、第2の付着物を、上述の部分的に硬化した付着物上に配置し、第2の高温に第2の時間にわたってさらして、第2の部分的に硬化した付着物を得ることができる。部分的に硬化した付着物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間に更に硬化する。第3の付着物を、第2の部分的に硬化した付着物上に配置し、第3の高温に第3の時間にわたってさらして、第3の部分的に硬化した付着物を得ることができる。第2の部分的に硬化した付着物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間に更に硬化する。このプロセスを、コーティングされた物品を所望どおりに構築するために、例えば1~50回繰り返すことができる。部分的に硬化した層の複合体は、典型的には、最終後硬化に供され、例えば、上述の高温及び時間にさらされる。各高温及び時間は独立して選択されてもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。物品が反復プロセスを介して形成されるとき、各付着物も、独立して選択されてもよく、硬化性組成物において選択される出発物質、それらの量、又は両方が異なってもよい。あるいは、更に、各反復層は、このような反復プロセスにおいて部分的に硬化されるだけではなく、完全に硬化することができる。
【0132】
あるいは、付着物は、ウェットフィルムを含んでもよい。あるいは、反復プロセスは、部分的に硬化した層の硬化状態に応じて、ウェットオンウェットであってもよい。あるいは、反復プロセスは、ウェットオンドライであってもよい。
【0133】
基材上に硬化性組成物から形成されたフィルムを備えるコーティングされた基材は、フィルム及び基材の相対厚さなどの様々な寸法を有してもよい。フィルムは、最終使用用途に応じて変化し得る厚さを有する。フィルムは、0超~4,000μm、あるいは0超~3,000μm、あるいは0超~2,000μm、あるいは0超~1,000μm、あるいは0超~500μm、あるいは0超~250μmの厚さを有してもよい。しかし、他の厚さ、例えば、0.1~200μmも想到される。例えば、フィルムの厚さは、0.2~175μm;あるいは、0.5~150μm;あるいは、0.75~100μm;あるいは、1~75μm;あるいは、2~60μm;あるいは3~50μm、あるいは、4~40μmであってもよい。あるいは、基材がプラスチックである場合、フィルムは、0超~200μm、あるいは0超~150μm、あるいは0超~100μmの厚さを有してもよい。
【0134】
所望であれば、フィルムは、その最終使用用途に応じて、更なる処理を受けることができる。例えば、フィルムは、酸化物付着(例えば、SiO2付着)、レジスト付着、及びパターニング、エッチング、化学ストリッピング、コロナ若しくはプラズマストリッピング、金属被覆、又は金属付着を受けることができる。このような更なる処理技術は、周知である。このような付着は、化学蒸着(低圧化学蒸着、プラズマ誘起化学蒸着、及びプラズマ補助化学蒸着など)、物理蒸着、又は他の真空蒸着技術であってもよい。多くのこのような更なる処理技術は、高温、特に真空蒸着を伴い、優れた熱的安定性を考慮すると、これに対してフィルムは十分に適している。しかし、フィルムの最終用途に応じて、このような更なる処理によりフィルムを使用することができる。
【0135】
コーティングされた基材は、多様な最終使用用途に使用することができる。例えば、コーティングされた基材は、コーティング用途、包装用途、接着剤用途、繊維用途、布地又は織物用途、建築用途、輸送用途、エレクトロニクス用途、又は電気用途に利用することができる。しかし、硬化性組成物は、コーティングされた基材を調製する以外の最終使用用途、例えばシリコーンゴムなどの物品の調製に使用することができる。
【0136】
あるいは、コーティングされた基材は、例えば、アクリル樹脂型感圧接着剤、ゴム型感圧接着剤、及びシリコーン型感圧接着剤、並びにアクリル樹脂型接着剤、合成ゴム型接着剤、シリコーン型接着剤、エポキシ樹脂型接着剤、及びポリウレタン型接着剤などの任意の感圧接着剤を含む、テープ又は接着剤用の剥離ライナーとして使用することができる。基材の各主表面は、両面テープ又は接着剤のためにその上に配置されたフィルムを有してもよい。
【0137】
あるいは、硬化性組成物が剥離コーティング組成物として配合される場合、剥離コーティング組成物を、出発物質を一緒に混合することによって調製して、例えば、一部型組成物を調製することができる。しかし、SiH官能基を有する出発物質(例えば、出発物質(i)、及び存在する場合(viii))及びヒドロシリル化反応触媒が、別個の部に、その部が使用時(例えば、基材への適用直前)に組み合わされるまで保存される、複数部型組成物として、剥離コーティング組成物を調製することが望ましい場合がある。
【0138】
例えば、複数部型組成物は:
(A)部ベース部であって、(ii)1分子中に平均して少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基を有するポリオルガノシロキサン、iii)ヒドロシリル化反応触媒、並びに存在する場合、アンカー添加剤及び溶媒のうちの1つ以上を含む、ベース部と、
(B)部硬化剤部であって、(ii)1分子中に平均して少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基を有するポリオルガノシロキサン、(i)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、及び存在する場合(viii)実質的に直鎖状、又は直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサン、アンカー添加剤、溶媒を含む、硬化剤部と、を含んでもよい。出発物質(iv)阻害剤は、(A)部、(B)部のいずれか、又はその両方に添加することができる。(A)部及び(B)部は、1:1~10:1、あるいは1:1~5:1、あるいは1:1~2:1の(A):(B)重量比で組み合わせることができる。(A)部及び(B)部は、例えば、剥離コーティング組成物を調製するために部を組み合わせる方法、剥離コーティング組成物を基材に適用する方法、及び剥離コーティング組成物を硬化する方法についての説明書と共に、キットに提供することができる。
【0139】
あるいは、アンカー添加剤が存在する場合、アンカー添加剤は、(A)部若しくは(B)部のいずれかに組み込むことができ、又は別個の(第3の)部に添加することができる。
【0140】
あるいは、剥離コーティング組成物は、
1)ii)1分子中に平均して少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基を有するポリオルガノシロキサン、(i)多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、(iii)ヒドロシリル化反応触媒、(iv)阻害剤、並びに任意選択で、(v)アンカー添加剤、(vi)ミスト防止添加剤、(vii)剥離制御剤、(viii)直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び(ix)溶媒のうちの1つ以上を含む、出発物質を混合し、それにより、剥離コーティング組成物を形成する工程と、
2)混合物を基材上に適用する工程と、を含む、方法によって調製することができる。工程1)は、上述のように、複数部型組成物の(A)部及び(B)部を混合することによって実施することができる。
【0141】
剥離コーティング組成物は、スプレー、ドクターブレード、ディッピング、スクリーン印刷などの任意の簡便な手段によって、又はロールコーター、例えば、オフセットウェブコーター、キスコーター、若しくはエッチングされたシリンダーコーターによって基材に適用することができる。
【0142】
本発明の剥離コーティング組成物は、上述のものなどの任意の基材に適用することができる。あるいは、剥離コーティング組成物は、ポリマーフィルム基材、例えばポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又はポリスチレンフィルムに適用することができる。剥離コーティング組成物は、あるいは、プラスチックコーティング紙、例えば、ポリエチレンでコーティングされた紙、グラシン、スーパーカレンダー紙、又は粘土コーティングクラフトをはじめとする、紙基材に適用することができる。剥離コーティング組成物は、あるいは、金属箔基材、例えばアルミニウム箔に適用することができる。
【0143】
方法は、3)基材を処理した後、剥離コーティング組成物を基材上にコーティングする工程を更に含んでもよい。基材の処理は、プラズマ処理又はコロナ放電処理などの任意の簡便な手段によって実施することができる。あるいは、基材は、プライマーを適用することによって処理することができる。特定の場合では、基材を処理した後、コーティングする場合、剥離コーティングの固着性を改善することができる。
【0144】
剥離コーティング組成物が溶媒を含む場合、方法は、4)溶媒の全て又は一部分を除去するのに十分な時間、50℃~100℃で加熱することなどの任意の従来の手段によって実施することができる、溶媒を除去する工程を更に含んでもよい。方法は、5)剥離コーティング組成物を硬化して、剥離コーティングを基材の表面上に形成する工程を更に含んでもよい。硬化は、100℃~200℃で加熱することなどの任意の従来の手段によって実施することができる。
【0145】
製造コーター条件下で、硬化は、120℃~150℃の空気温度で、1秒~6秒、あるいは1.5秒~3秒の滞留時間で行うことができる。工程4)及び/又は5)の場合の加熱は、オーブン、例えば、空気循環オーブン若しくはトンネル炉内で、又は加熱されたシリンダーの周囲にコーティングされたフィルムを通すことによって実施することができる。
【実施例】
【0146】
これらの実施例は、本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈するべきではない。表1の出発物質を本明細書の実施例で使用した。
【表1】
【0147】
参照例1.ESI-MS分析
各試料を、Fisher HPLCグレードMeCNに希釈することによって約1000ppmで調製した。MeCN希釈試料を、フロー注入分析、陽イオンエレクトロスプレーイオン化MS(FIA ESI MS)によって分析した。機器の質量較正については、分析を実施した同じ日に、誤差のないことが確認された。以下の機器及び条件を使用した。
ESI-MS機器の条件
機器:Agilent 1200UPLCシステム
流量:0.40mL/分
注入量:2.5μL
移動相:水中95%のMeCN
陽イオンESI MS、条件
機器:Agilent 6520四重極/飛行時間型(Q-TOF)タンデム質量スペクトル計
イオン源:デュアルエレクトロスプレーイオン化
モード:陽イオン-MS1
乾燥用ガス温度:300℃
乾燥用ガス流量:5L/分
ネブライザー圧力:60psi
フラグメンター電圧:150V
スキマー電圧:75V
八重極1 RF電圧:750V
キャピラリー電圧:4500V
参照質量:121.0509、922.0098
取得モード:MS1
質量範囲:119~3200Da
走査速度:1スペクトル/秒
参照例2.GPC
【0148】
以下の実験手順を使用し、試料はメチル基を有していた。試料を以下のとおりに調製した。
試料調製:溶出液中10mg/mLとし;時折振盪しながら1時間溶媒和し;試料を、0.45μmのPTFEシリンジフィルタを通して濾過した後、注入する。
ポンプ:Waters515、1.0mL/分の公称流量で
溶出液:HPLCグレードのトルエン
インジェクタ:Waters717、100μLの注入
カラム:2つの(300mm×7.5mm)Polymer Laboratories PLgel 5μm Mixed-Cカラム、PLgel 5μmガードカラム(50mm×7.5mm)が前にある。45℃
検出部:Waters2410差分屈折率検出器、45℃
データシステム:Atlas8.3、Cirrus2.0
較正:580g/モル~2,300,000g/モルの範囲に及ぶ14の狭いポリスチレン標準と比較して、3次多項式曲線に合致させる。
【0149】
以下の実験手順を使用し、試料は、フェニル基又はトリフルオロプロピル基を有していた。
試料調製:溶出液中10mg/mLとし;1時間溶媒和し;溶液を、0.45μmのPTFEシリンジフィルタを通して濾過した後、注入する。
ポンプ:Waters2695、1.0mL/分の公称流量で
溶出液:認定グレードのTHF
インジェクタ:Waters2695、100μLの注入
カラム:2つの(300mm×7.5mm)Polymer Laboratories PLgel 5μm Mixed-Cカラム、PLgel 5μmガードカラム(50mm×7.5mm)が前にある。35℃
検出部:Waters2410差分屈折率検出器、35℃
データシステム:Atlas8.3、Cirrus2.0
較正:580g/モル~2,300,000g/モルの範囲に及ぶ16の狭いポリスチレン標準と比較して、3次多項式曲線に合致させる。
【0150】
参照例3.29Si NMR
試料を分析のために以下のとおりに調製した。3.5~4.5gの料を、4~4.5gのCDCl3に溶解した。総重量は8~9g。試料を、Teflon栓を有するTeflonチューブ(長さ8インチ×外径13.5mm)に移した。29Si NMRデータを、400MHzの1H動作周波数により、Varian Inova NMR(mi-MR-04)スペクトル計で取得した。標準パラメータ(nt=256及びd1=13)を適用した。
【0151】
参照例4.多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの調製の全般手順
SiH(MH-1109、又はストリッピング済MH-1109)の供給源を、機械的撹拌機、熱電対、及びN2バブラーを備えた水冷コンデンサーを用いる、1Lフラスコに入れた。10ppm~100ppmのBCF(3~5%のトルエンに溶解)を、初めに、RTから50℃までの温度でフラスコに添加した。シラノール流体(PA流体、PB流体、又はPI流体)を、激しく撹拌しながら、フラスコにゆっくり添加した。ポット温度上昇及びガス発生によって、反応を記録した。ガス発生が観察されなかった場合、より多くのBCF(10ppm~100ppm)を、フラスコに添加した。この操作を、シラノール流体の添加の終了まで繰り返した。ポット温度を、反応の過程の最中、30℃~60℃で維持した。シラノール流体の添加を完了した後、混合物を、30℃~60℃で更に1~3時間維持した。次いで、加熱を解除し、中性活性アルミナ(BCF触媒の300~1000重量倍)をフラスコに添加した。1~3時間撹拌した後、アルミナを、0.45μmフィルタ膜を通して濾別した。揮発性物質を、ロータリーエバポレーター(<1mmHg)により80℃~100℃で60~90分かけて除去した。得られた生成物を回収し、分析した。
【0152】
表2は、参照例4における全般手順を用いて生成した試料を示している。参照例2に従ってMwを測定し、参照例2に従ってPDを測定し、参照例3に従ってSiH%を測定した。
【表2】
【0153】
参照例1~3における技術に従って試料1を分析した。試料1は、式、
【化8】
[式中、3≦p≦5であり、下付き文字nは、2~10であり、各Rは、メチル、フェニル、又はトリフルオロプロピルであった]を有することが見出された。
試験した試料のGPC結果は、表3に示されている。試料5は、より広い分布を有し、これは、環状部末端とのより多くの架橋を示している。MH-1109のOHに対する比(r)が減少するにつれて、試料5(r=3.0)を試料6(r=1.8)と比較したとき、ポリマーピークは、より広くなった。理論に束縛されるものではないが、MH-1109/OH比が減少することにより、より多くの架橋、又は追加の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン種をもたらすと考えられる。
【0154】
以下の分子量平均はポリスチレン標準と比較したものであり、示されるようにクロマトグラムの部分に対してのものである。
【表3】
【0155】
追加の試料をGPCによって評価した。これらの試料はフェニル基を有していた。MH-1109/OH比(r)=10を有する試料1は、かなり狭い分布を有しており、理論に束縛されるものではないが、これは、主として環状部末端多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む(オルガノハイドロジェンシロキサンの主鎖中に環状部がない)生成物に相当すると考えた。試料1は小さな高分子量のテーリングを有しており、これは、1分子中に2つ以上の直鎖状シロキサン部分、及び1分子中に3つ以上の環状シロキサン部分を有する種に対応することが予想された。MH-1109のOHに対するモル比が、一連の試料1(r=10)、試料2(r=3.35)、及び試料3(r=2.64)に沿って減少するにつれて、ポリマー分布はより広くなった。理論に束縛されるものではないが、これは、1分子のC)環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに対する2つ以上のSiHの追加の反応によるものと考えられ、メチル含有試料について見られたものと同様であった。結果は以下の表4に示されている。
【0156】
【0157】
試料5A.試料5の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの、エポキシ基による官能化
参照例4によって上述のとおりに調製した、表2に試料5として示す、262.5gの多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、及び33.3gのアリルグリシジルエーテルを、機械的撹拌機、熱電対、及びN2バブラーに合わせた水冷コンデンサーを用いる4ツ口フラスコ内で混合した。ポット温度を50℃まで上げた。145μLの0.012%Pt/トルエン溶液をフラスコに添加した。ポット温度を80℃まで徐々に10分かけて上げ、次いで5分で65℃まで下げた。加熱用ブロックを使用して、ポット温度を63℃~65℃で1時間維持した。次いで、揮発性物質を、ロータリーエバポレーターにより、80℃、<1mmHgで50分かけて除去した。内容物をRTまで冷却した後、1.1gのジアリルマレエートをフラスコに添加した。得られた多官能ポリオルガノシロキサンは、0.32%のH(SiHとしての)含有量、及び1分子中に平均して2つのグリシジルオキシプロピル基数を有していた。
【0158】
比較例5.MH-1109とPA流体との、Pt触媒(BCF触媒の代わり)を用いる反応
113.6gのMH-1109を、機械的撹拌機、熱電対、及びN2バブラーを備えた水冷コンデンサーを用いる、1Lフラスコに入れた。0.8mLの2.1%Pt/キシレン溶液を添加し、次いで、154.5gのPA流体を、滴下漏斗を通してフラスコにゆっくり添加した。ポット温度を40℃未満に制御した。30分後、PA流体をフラスコに完全に添加した。粘度増加が観察された。小さな試料をアルミニウムパンに引き抜いた。フード内に1時間55分間置いた後、物質はゲル化した。
【0159】
表2の試料5をアルミニウムパンに入れた。周囲条件下、フード内に置いて5週間後、粘度の可視的変化は観察されなかった。試料5及び比較例5は、本発明のプロセスを用いて製造した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンが、同じヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン及び環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを使用して、但し、異なる触媒及び方法条件により製造した製造した比較オルガノハイドロジェンシロキサンよりも、経時的により良好な安定性を有していたことについて示している。
【0160】
比較例5A.比較例5の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの、エポキシ基による官能化
30gのアリルグリシジルエーテルを添加したこと以外、比較例5を繰り返した。ヒドロシリル化反応からの発熱の結果として、ポット温度は、51℃まで19分以内に徐々に上昇した。ポット温度は、1時間後に23℃まで下がった。1.19gのジアリルマレエートをフラスコに添加し、終夜混合した。次いで、揮発性物質を、ロータリーエバポレーターにより、40℃、<1mmHgで1時間かけて除去した。得られたクラスター化官能性オルガノポリシロキサン(グリシドキシプロピル基及びSiH官能基の両方を有する)は、0.36%のH(SiHとしての)含有量、及び1分子中に平均して2つのグリシドキシプロピル基を有していた。
【0161】
上述のとおりに調製した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを、剥離コーティング組成物に配合した。剥離コーティング組成物を基材上にコーティングし硬化させて、剥離コーティングを形成した。剥離コーティング組成物の調製に使用する出発物質を、以下の表5に示す。得られた剥離コーティング組成物及び剥離コーティングを、以下のとおりに評価した。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0162】
参照例6.剥離コーティング組成物
阻害剤処理分岐状ビニルポリマー及び架橋剤をRTで十分に混合し、120gの得られた混合物を、キャップ付きの250mLガラス瓶に移した。キャップで閉めたガラス瓶を、40℃の水浴にて50~60分間加熱した。次いで、触媒を混合物に導入し、次いで更に混合した。この参照例6に従って調製した剥離コーティング組成物中の各出発物質の量を、以下の表6に示す。
【0163】
表6中の剥離コーティング組成物を、1.3g/m
2の目標コート重量、3本ロールオフセットグラビアコーターで、UPMから市販ノグラシン紙上にコーティングした。得られた試料を、以下の条件のうちの1つで硬化させた。400°Fで1.2秒若しくは2.4秒、又は166℃で1.5秒、2秒、若しくは3秒。
【表6】
【0164】
参照例7.剥離コーティング組成物
剥離コーティング組成物試料F4~F10を以下のとおりに調製した。分岐状ビニルポリマー及び架橋剤を、RTで機械的に混合した。阻害剤を添加し、再度十分に混合した。次いで、触媒を添加し、RTで混合した。剥離コーティング組成物F4~F10中の各出発物質の量を、以下の表7にグラム単位で示す。
【0165】
表7中の剥離コーティング組成物を、1.3g/m
2の目標コート重量で、UPMから市販のグラシン紙上にコーティングした。得られた試料を、以下の条件のうちの1つで硬化させた。166℃で1.5秒若しくは3秒、及び182℃で1.5秒若しくは3秒、又は204℃で1.2秒。
【表7】
【0166】
参照例8.バルク浴寿命試験
剥離コーティング配合物のバルク寿命を、以下の手順を用いることによって試験した。阻害剤処理分岐状ビニルポリマー、架橋剤、及び阻害剤を、RTで十分に混合し、120gの得られた混合物を、キャップ付きの250mLガラス瓶に移した。キャップで閉めたガラス瓶を、40℃の水浴にて50~60分間加熱した。次いで、触媒を混合物に導入し、次いで更に混合した。40℃で粘度が倍増する時間を、バルク浴寿命と定義した。剥離コーティング組成物の試料を、参照例6及び7において上述した出発物質を使用して調製した。粘度を、3番スピンドルを用いBrookfield DV-II粘度計によって測定した。
【0167】
参照例9.薄いフィルムの浴寿命試験.
剥離コーティング組成物の試料を、参照例7において上述したとおりに調製した。薄いフィルムの浴寿命を、以下のとおりに測定した。2ミルのBird Barを使用して、試料を1ミルのPETフィルム上にコーティングした。得られたフィルムを、5分毎にチェックした。フィルムが汚れた時点、又は部分的に硬化した時点を、剥離コーティングの薄いフィルムの浴寿命として定義した。
【0168】
参考8及び9からの浴寿命試験の結果を、以下の表8に示す。
【表8】
【0169】
薄いフィルムの浴寿命及びバルク寿命は、剥離コーティング組成物に重要である。概して、消費者は、剥離コーティング組成物を基材上にコーティングするプロセスが完了する前に、剥離コーティング組成物が硬化しないことを確保するために、薄いフィルムの浴寿命及びバルク浴寿命がより長いことを望む。表9中のデータは、本明細書の新たな方法によって製造した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンにより、市販の架橋剤と比較したときに、同様の薄いフィルムの浴寿命及び同様のバルク浴寿命を有する剥離コーティング組成物が製造されることを示している。本明細書の新たな方法によって製造した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを使用することは、消費者の既存の設備及びプロセスにおける使用に好適である。更にまた、試料F7は、薄いフィルムの寿命がF6(市販の架橋剤を含有する対照)よりも長いこと、及びバルク寿命がF10(Pt触媒SiOH/SiH縮合により調製した比較用の架橋剤を含有する)よりも長いことを示し、これにより、BCF経路により調製したクラスター化官能性オルガノシロキサン試料5Aは、従来の架橋剤3及びPt触媒によるヒドロシリル化反応により調製した従来の架橋剤4よりも、浴寿命の観点から利点を有することが確認された。
【0170】
参照例9.抽出可能分の試験手順
抽出可能%は、剥離コーティングが十分に硬化した程度に対応する。剥離コーティング組成物の硬化性能を測定するために、硬化直後に抽出可能分試験を行った。抽出可能分試験を用いて、溶媒の存在下で、硬化後の剥離コーティングの試料から抽出可能であった非架橋シリコーンの量を特定した。以下の実施例に使用される試験方法は、次のとおりであった。
1.コーティングプロセス(上述)の完了直後に、1.375インチ(3.49cm)のダイカッターを使用して、コーティングされた基材から3枚の試料ディスクを切断した。
2.各試料のシリコーンコート重量は、Oxford Instruments Lab-X 3500 Benchtop XRF分析器を用いて測定した。
3.次いで、各ディスクを、40mLのメチルイソブチルケトン溶媒が入っている個別の100mL瓶に入れた。試料のシリコーン表面が汚染又は損傷されないことを確実とするため、試料ディスクを取り扱う際は常にピンセットを使用した。次いで、溶媒瓶を蓋で覆い、実験室の卓上に30分間静置した。この期間後、ディスクを溶媒から取り出し、シリコーンコーティングされた側を上にして清潔なティッシュペーパー上に置いた。
4.試料の拭き取り又は吸い取りは行わずに、溶媒を試料ディスクから蒸発させた。
5.次いで、各試料ディスクの最終コート重量を決定した。
6.抽出可能パーセントは、以下の式を用いて計算した:
【数1】
W
i=初期コート重量(溶媒導入前)
W
f=最終コート重量(溶媒蒸発後)
【0171】
剥離コーティング組成物を調製し、グラシン紙上にコーティングし、参照例7に記載のとおりに硬化させて、参照例9の方法によって抽出可能分について評価した。結果は、以下の表9に示されている。
【表9】
【0172】
これらの実施例では、試験した条件下、本明細書に記載の方法によって製造した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン(架橋剤試料5)を含む試料配合物F5は、Pt触媒によるヒドロシリル化により製造した市販の架橋剤(従来の架橋剤1)を使用して製造した比較組成物である配合物F4と比較して、より短い滞留時間及び同じ温度で硬化したときに抽出可能分がより少なかった(硬化がより速かった)ことが示されている。理論に束縛されるものではないが、滞留時間が短くなることは、速いコーターライン速度及びより高い製造効率を意味すると考えられる。
【0173】
試料F7は、本明細書に記載の方法によって製造したクラスター化官能性オルガノシロキサン試料5Aを含有し、試料F7は、試料F6(Pt触媒によるヒドロシリル化によって製造した比較用の架橋剤、すなわち従来の架橋剤3を含有する)と比較して、3つの温度及び相対的に長い滞留時間、3秒で、同等の抽出可能%を有していた。相対的に短い滞留時間で、試料F7は、F6に対し、誤差を考慮すると、同等の抽出可能%を示した。試料F7は、試料F10(比較用の架橋剤、すなわち、Pt触媒によるSiH/SiOH縮合経路により調製した従来の架橋剤4)よりも、抽出可能%の観点から利点を示した。概して述べると、本発明の方法によって調製したクラスター化官能性オルガノシロキサンを含有する試料F7は、ビニル末端封鎖二官能性ポリジメチルシロキサンと、MH-1109と、アリルグリシジルエーテルとの間のPt触媒によるヒドロシリル化反応によって調製した架橋剤を含有する試料F6と比較して、同等である。しかし、試料F7は、シラノール末端封鎖二官能性ポリジメチルシロキサンと、MH-1109と、アリルグリシジルエーテルとの間のPt触媒による反応を行った架橋剤を含有する試料F10よりもはるかに良好に機能した。加えて、試料配合物F7に使用するクラスター化官能性オルガノシロキサンは、試料F6及びF10に使用する架橋剤よりもはるかに安価であった。配合物F7に使用する同じクラスター化官能性オルガノシロキサンを、代わりに、従来の架橋剤2と共に共架橋剤(試料F9において)として使用した場合、それは同様に、従来の架橋剤2(試料F8において)とブレンドしたF6における同じ架橋剤と比較して、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって同様の抽出可能%を示した。
【0174】
参照例10.ROR%評価
ROR%は、剥離コーティングが基材に良好に結合されている程度を知らせるものである。摩擦落ち抵抗パーセント(ROR%)試験(固着インデックス(anchorage Index)と呼ばれることもある)では、コーティングされた基材が表面摩耗を受けた後に残った硬化シリコーンの量を測定する。これは、硬化コーティングフィルムが基材に固着される強さを示し、ROR%の値が高いほど良い。コーティングされた基材を硬化オーブンから出してすぐに、ROR%を測定する。コーティングされた各基材から、2つの試料ディスクを調製し、次いでOxford Instruments Lab-X 3500 Benchtop XRF分析器を介して、コーティングされた基材の各試料ディスク中に存在するシリコーンを測定する。次いで、コーティングされた基材の各試料ディスクを、自動摩耗装置を使用して、1.9kgの荷重下でフェルトと接触させて、「テーバー式方法」と同様の方法で、摩耗試験を行った。ROR%を、以下のとおりに計算する。
ROR%=(Wf/Wi)×100
Wi=初期コート重量(摩耗前)
Wf=最終コート重量(摩耗後)
【0175】
剥離コーティング組成物を調製し、グラシン紙上にコーティングし、参照例7に上述したとおりに硬化させた。得られた剥離ライナー試料を、参照例10の方法によってRORについて評価した。結果は表10に示されている。
【表10】
【0176】
理論に束縛されるものではないが、より速いライン速度、及びより高い製造効率)がより短い滞留時間によって可能になるので、消費者は剥離コーティング用途について短い滞留時間を好むものと考えられる。摩擦落ち抵抗は、剥離コーティングが基材に十分に結合されている程度を示すので、短い滞留時間で高い摩擦落ち抵抗(高い初期摩擦落ち抵抗)を有することが望ましい。
【0177】
表10に示すように、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって、本明細書に記載の方法によって製造した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン(架橋剤試料5)を含有する試料配合物F5は、Pt触媒によるヒドロシリル化によって製造した比較用の架橋剤(従来の架橋剤1)を含有する試料配合物F4よりも、高い摩擦落ち抵抗(ROR%)を有するという利点を示した。
【0178】
本明細書に記載の方法によって製造したクラスター化官能性オルガノシロキサン(クラスター化官能性オルガノシロキサン試料5A)を含有する試料配合物F7は、試料配合物F6(比較用の架橋剤、すなわち、Pt触媒によるヒドロシリル化によって製造した従来の架橋剤3を含有する)と比較して、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって同等のROR%を有していた。試料F7は、ROR%の観点から、試料F10(比較用の架橋剤、すなわち、Pt触媒によるSiH/SiOH縮合経路により調製した従来の架橋剤4を含有する)よりもはるかに高いROR%を示した。概して述べると、本明細書に記載の方法によって調製した、試料F7に使用するクラスター化官能性オルガノシロキサンは、ROR%の観点から、試料F6における比較用の架橋剤と比較して同等であり、試料F10における架橋剤よりもはるかに良好であった。
試料配合物F7に使用する同じクラスター化官能性オルガノシロキサンを、従来の架橋剤2と共に共架橋剤(試料配合物F9において)として使用した場合、それは同様に、従来の架橋剤2(試料配合物F8において)とブレンドした試料配合物F6における同じ架橋剤と比較して、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって同様の抽出可能%を示した。
【0179】
参照例11.エージング後ROR%評価
加速エージング後固着性試験を、以下のとおりに実施した。剥離ライナー試料を、85%RH及び65℃で1週間エージングした。追加の剥離ライナー試料を、RTで、一定湿度(RH=51%)及び圧力で1ケ月間及び3ケ月間エージングした。次いで、RORについて、参照例10において上述したとおりに試験した。
【0180】
剥離コーティング組成物を調製し、グラシン紙上にコーティングし、参照例7に上述したとおりに硬化させた。得られた剥離ライナー試料をエージングし、参照例13に従って試験した。結果は、以下の表12及び表13に示されている。
【表11】
【0181】
表11に示すように、本明細書に記載の方法によって製造した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン(架橋剤試料5)を含む試料配合物F5は、Pt触媒によるヒドロシリル化によって製造したオルガノハイドロジェンシロキサン(比較用の架橋剤1)を含む試料配合物F4よりも、試験した全ての温度及び滞留時間にわたってはるかに高い1週間85%RH及び65℃加速試験後摩擦落ち抵抗を有していた。
【0182】
本明細書に記載の方法によって製造したクラスター化官能性オルガノシロキサン(クラスター化官能性オルガノシロキサン試料5A)を含有する試料配合物F7は、試料配合物F6(Pt触媒によるヒドロシリル化によって製造した比較用の架橋剤を含有する)と比較して、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって同等の1週間85%RH及び65℃加速試験後摩擦落ち抵抗を有していた。試料配合物F7は、ROR%の観点から、試料配合物F10(Pt触媒によるSiH/SiOH縮合経路によって調製した比較用の架橋剤を含有する)よりもはるかに高い1週間85%RH及び65℃加速試験後ROR%を示した。概して述べると、BCF経路により調製した試料配合物F7に使用する架橋剤は、1週間85%RH及び65℃加速試験後ROR%の観点から、ビニル末端封鎖二官能性PDMS/MH-1109/アリルグリシジルエーテルの間のPt触媒によるヒドロシリル化反応によって調製した試料配合物F6における架橋剤と比較して同等であったが、シラノール末端封鎖二官能性PDMSとMH-1109とアリルグリシジルエーテルとの間のPt触媒による反応によって製造した試料配合物F10(従来の架橋剤4)における架橋剤よりもはるかに良好であった。
【0183】
F7における同じクラスター化官能性オルガノシロキサンを、従来の架橋剤2と共に共架橋剤(試料F9において)として使用した場合、それは同様に、従来の架橋剤2と(試料F8において)ブレンドしたF6における同じ架橋剤と比較して、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって同様のROR%を示した。これらの実施例は更に、試料配合物F5が、加速試験後固着性及びエージング後固着性試験において試料配合物F4よりも優れた固着性能を有していたこと、並びに試料配合物F7が、試料配合物F10と比較して改善された固着性能を有していたことについて示している。
【表12】
【0184】
表12に示すように、同様に、本明細書に記載の方法によって製造した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン(架橋剤試料5)を含有する試料配合物F5は、比較用の架橋剤(Pt触媒によるヒドロシリル化によって製造した従来の架橋剤1)を含有する試料配合物F4よりも、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって、特により短い滞留時間で、改善された1ケ月RTエージング後ROR%を有していた。本明細書の方法によって製造した多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンは、大きな改善を示した。
【0185】
本明細書に記載の方法によって製造したクラスター化官能性オルガノシロキサンを含有する試料配合物F7は、試料配合物F6(Pt触媒によるヒドロシリル化によって製造した比較用の架橋剤を含有する)と比較して、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって同等の1ケ月RTエージング後ROR%を有していた。試料配合物F7は、ROR%の観点から、試料配合物F10(Pt触媒によるSiH/SiOH縮合経路によって調製した比較用の架橋剤を含有する)よりもはるかに高い1ケ月RTエージング後ROR%を示した。概して述べると、本明細書に記載の方法によって製造した、試料配合物F7に使用するクラスター化官能性オルガノシロキサンは、1ケ月RTエージング後ROR%の観点から、比較架橋剤(ビニル末端封鎖二官能性PDMSと、MH-1109と、アリルグリシジルエーテルとの間のPt触媒によるヒドロシリル化反応によって調製した)を含有する試料配合物F6と比較したとき、同等のROR%を有していたが、比較用の架橋剤(シラノール末端保護二官能性PDMSと、MH-1109と、アリルグリシジルエーテルとの間のPt触媒による反応によって製造した)を含有する試料配合物F10よりもはるかに良好であった。
【0186】
試料配合物F7におけるクラスター化官能性オルガノシロキサンを、従来の架橋剤2と共に共架橋剤(試料F9において)として使用した場合、それは同様に、従来の架橋剤2(試料F8において)とブレンドした試験配合物F6における同じ架橋剤と比較して、試験した全ての温度及び滞留時間にわたって同様の1ケ月RTエージング後ROR%を示した。
【0187】
これらの実施例は更に、試料配合物F5が、加速試験後固着性及びエージング後固着性試験において試料配合物F4よりも優れた固着性能を有していたこと、並びに試料配合物F7が、試料配合物F10と比較して改善された固着性能を有していたことについて示している。
【表13】
【0188】
これらの実施例により、試験した条件下で、本明細書に記載の方法によって製造した生成物(F5における架橋剤試料5及びF7におけるクラスター化官能性オルガノシロキサン試料5A)を各々含有する試料配合物F5及び試料配合物F7は、それぞれPt触媒によるヒドロシリル化によって製造した比較用の架橋剤を各々含有するそれらの類似試料配合物F4(従来の架橋剤1を含有する)及び試料配合物F6(従来の架橋剤3を含有する)よりも高い剥離力を有することが示されている。本明細書に記載の方法によって製造した新たな多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンは、比較的高い剥離力要件の用途に使用する、潜在力のある成功をもたらす架橋剤である。
【0189】
産業上の利用可能性
酸素原子を介して直鎖状ポリジオルガノシロキサンに連結した環状SiH官能性末端基を有する、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの新たな調製方法が開発された。本方法では、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン構造の制御により、所望の場合、上述の式a-2)の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの量を最大化する(及び、上述の単位式a-1)中の下付き文字o’>0となる可能性を低減又は最小化する)という効果がもたらされる。例えば、環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンとの比を制御することにより、(式a-2)に示すように)直鎖状ポリジオルガノシロキサンの末端で酸素原子を介して連結した2つの環状部分を有する多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを得ることができる。上述の実施例は、試験した条件下で、環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(例えば、上述の実施例におけるMH-1109)とヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン(例えば、PA流体、PB流体、又はPI流体)との比が減少するにつれて、下付き文字o’>0である種、例えば、
【化9】
[式中、o’は、それぞれ1又は2である]の種を形成する見込みが高くなる。
結果として、MH-1109/OH比が減少すると共に、Mw及び多分散性(PD)は高くなる。
【0190】
本発明者らは、更に驚くべきことに、本明細書に記載の方法によって調製された多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンにより、剥離コーティング組成物に使用される場合、例えば、米国特許第7,432,338号に記載のプロセスによって調製された市販のオルガノハイドロジェンシロキサンと比較して、1つ以上の効果をもたらすことができることを見出した。環状ポリメチルハイドロジェンシロキサン及びビニル末端ポリジメチルシロキサンの白金触媒によるヒドロシリル化を伴うプロセス(例えば、比較例において上述した従来の架橋剤1及び従来の架橋剤3などの架橋剤を製造するため)、並びに環状ポリメチルハイドロジェンシロキサン及びヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンの白金触媒による付加反応(例えば、比較例5Aの架橋剤を製造するため)を使用して、比較用の架橋剤を製造した。本発明者らは、本明細書に記載の方法によって調製されたこれらの比較用の架橋剤及び本架橋剤を、剥離コーティング組成物に配合し、基材上にコーティングし、硬化させた場合、以下の効果のうちの1つ以上が示されたことを見出した。剥離コーティング組成物は、より良好なバルク浴寿命、薄いフィルムの浴寿命、及び/又は硬化性能を有し、硬化剥離コーティングは、比較用の架橋剤を含有する剥離コーティング組成物及びそれから作製された剥離コーティングよりも少ない低い抽出可能分、より高い固着性、及び/又はより高い剥離力を有していた。
【0191】
用語の定義及び使用
本明細書で使用される略語は、以下の表5における定義を有する。
【表14】
【0192】
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全ての出発物質の量は、総計100重量%である。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、2.0~4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、例えば、2.1~3.5、2.3~3.4、2.6~3.7、及び3.8~4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリール、並びに任意の他の個々の要素及びその中に包含される下位群を包含する。
【0193】
「アルキル」は、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はiso-プロピルを含む)、ブチル(iso-ブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチルを含む)、ペンチル(iso-ペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチルを含む);並びにn-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、及びn-デシル、並びに6個以上の炭素原子を有する分岐状飽和一価炭化水素基が挙げられる。アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子を有する。あるいは、アルキル基は、1~18個の炭素原子、あるいは1~12個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有してもよい。
【0194】
「アラルキル」及び「アルカリール」は、それぞれ、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を指す。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、トリル、キシリル、ジメチルフェニル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、及びフェニルブチルが挙げられる。アラルキル基は、少なくとも7個の炭素原子を有する。単環式アラルキル基は7~12個の炭素原子、あるいは7~9個の炭素原子、あるいは7~8個の炭素原子を有してもよい。多環式アラルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有していてよい。
【0195】
「アルケニル」は、二重結合を有する、分岐状又は非分岐状一価炭化水素基を意味する。アルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルケニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0196】
「アルキニル」は、三重結合を有する、分岐状又は非分岐状一価炭化水素基を意味する。アルキニル基としては、エチニル及びプロピニルが挙げられる。アルキニル基は、少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルキニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0197】
「アリール」とは、環炭素原子からの水素原子の除去により、アレーンから誘導された炭化水素基を意味する。アリールは、フェニル及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。単環式アリール基は、5~9個の炭素原子、あるいは6~7個の炭素原子、あるいは6個の炭素原子を有してもよい。多環式アリール基は、10~17個の炭素原子、あるいは10~14個の炭素原子、あるいは12~14個の炭素原子を有してもよい。
【0198】
「炭素環」及び「炭素環式」は、炭化水素環を指す。炭素環は、単環式でも多環式でもよく、例えば、2環式又は2個を超える環を有するものでもよい。2環式炭素環は、縮合環、橋かけ環又はスピロ多環式環でもよい。炭素環は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式炭素環は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式炭素環は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。炭素環は、飽和(例えば、シクロペンタン又はシクロヘキサン)、部分不飽和(例えば、シクロペンテン又はシクロヘキセン)、又は完全不飽和(例えば、シクロペンタジエン又はシクロヘプタトリエン)であってもよい。
【0199】
「シクロアルキル」は、炭素環を含む飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルによって例示される。シクロアルキル基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式シクロアルキル基は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式シクロアルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。
【0200】
「一価炭化水素基」は、水素原子及び炭素原子からなる一価の基を意味する。一価炭化水素基としては、上述で定義したアルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0201】
「一価ハロゲン化炭化水素基」とは、炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、式としてはハロゲン原子で置換されている一価炭化水素基を意味する。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロアルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロアルケニル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基(又はハロアルキル基)としては、水素原子のうちの1つ以上が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基又はシクロアルキル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、フッ素化アルキル基及びフッ素化シクロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル(CF3)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル);並びに塩素化アルキル基及び塩素化シクロアルキル基(例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、2,2-ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチル)が挙げられる。ハロアルケニル基としては、クロロアリル基が挙げられる。ハロゲン化アリール基としては、クロロベンジル及びフルオロベンジルが挙げられる。
【0202】
用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
【0203】
市販の出発物質の供給元としては、以下が挙げられる。Dow Silicones Corporationは、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)を意味する。Gelestは、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)を意味する。Millipore Sigmaは、(Sigma Aldrich)(St.Louis,Missouri,USA)である。
【0204】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又はダッシュ「-」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0205】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。
【0206】
本発明の代替の実施形態
実施形態1では、生成物の調製方法は、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸;
B)式、
【化10】
[式中、各下付き文字nは、2~2,000であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン;及び
C)式、(RHSiO
2/2)
v[式中、下付き文字vは、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基である]の環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質を組み合わせ、それにより、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びH
2を含む副生成物を含む生成物を調製する工程を含む。
【0207】
実施形態2では、実施形態1に記載の方法は、
工程1)中及び/又はその後、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの形成中に生じたH2を除去する工程、及び/又は
生成物中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程、及び/又は副生成物を除去する工程、及び/又は
多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを回収する工程、からなる群から選択される1つ以上の追加の工程を更に含む。
【0208】
実施形態3では、A)ホウ素含有ルイス酸は、少なくとも1つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物である。
【0209】
実施形態4では、下付き文字nは、2~1,000であり、各R1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基からなる群から選択される。
【0210】
実施形態5では、下付き文字vは、4~10であり、各Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0211】
実施形態6は、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法によって調製された多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む、生成物に関する。
【0212】
実施形態7では、生成物は、単位式、
[(HRSiO2/2)v-1(-RSiO2/2)]2[O-(R1
2SiO2/2)n]n’[(HRSiO2/2)v-2(-RSiO2/2)2]o’[式中、各下付き文字nは、2~2,000であり、各下付き文字vは、独立して、3~12であり、下付き文字o’は、0~100であり、下付き文字n’=(o’+1)であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基であり、各R1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む。
【0213】
実施形態8では、生成物は、式、
【化11】
の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む。
【0214】
実施形態9では、剥離コーティング組成物の調製方法は、(i)実施形態6に記載の生成物又は実施形態7若しくは8に記載の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンと、
(ii)ヒドロシリル化反応することが可能な、1分子中に平均して少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサンと、
(iii)ヒドロシリル化反応触媒と、
(iv)ヒドロシリル化反応抑制剤と、を含む。
【0215】
実施形態10では、方法は、剥離コーティング組成物に、(v)アンカー添加剤、(vi)ミスト防止添加剤、(vii)剥離制御剤、(viii)直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び(ix)溶媒からなる群から選択される1つ以上の追加の出発物質を添加する工程を更に含む。
【0216】
実施形態11では、実施形態9又は10に記載の方法において、出発物質(ii)は、単位式、
(R10R9
2SiO1/2)aa(R10R9SiO2/2)bb(R10
2SiO2/2)cc(R9
3SiO1/2)dd[式中、各R9は、独立して選択された脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R10は、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立して選択され、下付き文字aaは、0、1、又は2であり、下付き文字bbは0以上であり、下付き文字ccは1以上であり、下付き文字ddは、0、1、又は2であり、但し、数量(aa+bb)≧2、数量(aa+dd)=2であり、数量(aa+bb+cc+dd)は、3~2,000である]のポリオルガノシロキサンを含む。
【0217】
実施形態12では、実施形態11に記載の方法において、出発物質(ii)は、
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
viii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
ix)フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
xi)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xii)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xiii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xiv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン
xv)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xvi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)及び
xvii)これらの組み合わせからなる群から選択される、実質的に直鎖状、あるいは直鎖状のポリオルガノシロキサンを含む。
【0218】
実施形態13では、実施形態9~12のいずれか1つに記載の方法において、出発物質(ii)は、式、
【化12】
[式中、下付き文字uは、0又は1であり、各下付き文字tは、独立して、0~995、あるいは15~995であり、各R
11は、独立して選択された一価炭化水素基であり、各R
9は、上述の、独立して選択された、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R
10は、上述のとおりアルケニル及びアルキニルからなる群から独立して選択される]の分岐状シロキサンを含む。
【0219】
実施形態14では、実施形態9~13のいずれか1つに記載の方法において、ヒドロシリル化反応触媒は、Karstedtの触媒及びAshbyの触媒からなる群から選択される。
【0220】
実施形態15では、実施形態9~14のいずれか1つに記載の方法において、ヒドロシリル化反応抑制剤は、アセチレン系アルコール(例えば、1-エチニル-1-シクロヘキサノール)、及びマレエート(例えば、ジアリルマレエート、ビスマレエート、又はn-プロピルマレエート)、並びにこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0221】
実施形態16では、実施形態10~15のいずれか1つに記載の方法において、固着添加剤が存在し、ポリオルガノシリケート樹脂を含む。
【0222】
実施形態17では、実施形態10~16のいずれか1つに記載の方法において、実質的に直鎖状、又は直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンが存在し、
(HR12
2SiO1/2)v’(HR12SiO2/2)w’(R12
2SiO2/2)x’(R12
3SiO1/2)y’[式中、各R12は、独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字v’は、0、1、又は2であり、下付き文字w’は1以上であり、下付き文字x’は0以上であり、下付き文字y’は、0、1、又は2であり、但し、数量(v’+y’)=2、数量(v’+w’)≧3であり、数量(v’+w’+x’+y’)は、2~1,000である]を有する。
【0223】
実施形態18では、実施形態17に記載の方法において、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、
i)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、
ii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
iii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、及び
v)i)~iv)のうちの2つ以上からなる群から選択される。
【0224】
第19の実施形態では、クラスター化官能性オルガノシロキサンの調製方法は、
1)
a)実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法によって調製された生成物、又は実施形態7若しくは8に記載の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、
b)ヒドロシリル化反応触媒、並びに
c)出発物質a)のケイ素結合水素原子と付加反応することが可能な、1分子中に平均して少なくとも1つの脂肪族不飽和基、更に、1分子中に平均して1つ以上の硬化性基を有する反応種、を組み合わせ、それにより、クラスター化官能性オルガノシロキサンを含む、生成物を調製する工程を含む。
【0225】
実施形態20では、接着剤組成物の調製方法は、
1)
A)実施形態19に記載の生成物又はクラスター化官能性オルガノシロキサンと、
B)反応性樹脂及びポリマーと、
C)縮合反応触媒と、
D)フリーラジカル開始剤と、を含む。
【0226】
実施形態21では、実施形態19又は20に記載の方法において、クラスター化官能性オルガノシロキサンは、単位式、
[(R8RSiO2/2)v-1(-RSiO2/2)]2[O-(R1
2SiO2/2)n]n’[(R8RSiO2/2)v-2(-RSiO2/2)2]o’[式中、各下付き文字nは、2~2,000であり、各下付き文字vは、3~12であり、下付き文字o’は、0~100であり、下付き文字n’=(o’+1)であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基であり、各R1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R8は、H及び硬化性基からなる群から独立して選択され、但し、1分子中に少なくとも1つのR8は硬化性基(H以外)である]を有する。
【0227】
実施形態22では、生成物は、式、
式、
【化13】
[式中、各下付き文字nは、独立して、2~2,000であり、各下付き文字vは、独立して、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R
8は、H及び硬化性基からなる群から独立して選択され、但し、1分子中に少なくとも1つのR
8は硬化性基(H以外)である]のクラスター化官能性オルガノシロキサンを含む。
【0228】
実施形態23では、実施形態21又は22における硬化性基は、エポキシ官能基、アクリレート官能基、又はメタクリレート官能基を有する、有機基からなる群から選択される。
【0229】
実施形態24、すなわち実施形態20~23のいずれか1つに記載の方法では、出発物質B)は、
i)式、(R
2’
3SiO
1/2)及び(SiO
4/2)[式中、各R
2’は、独立して、一価炭化水素基であり、但し、1分子中に少なくとも1つのR
2’は、脂肪族不飽和を有する]の単位を含むシロキサン樹脂であって、(R
2’
3SiO
1/2)単位(M単位)の、(SiO
4/2)単位(Q単位)に対するモル比(M:Q比)を0.5:1~1.5:1の範囲で有する、シロキサン樹脂と、
ii)式、(R
2’
3SiO
1/2)
ii及び(R
2SiO
2/2)
hh(D単位)[式中、下付き文字hhは、20~1000であり、下付き文字iiは、平均値2を有する]の単位を含むポリジオルガノシロキサンと、
iii)アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーであって、単位式、
【化14】
(HR
22
2SiO
1/2)
ppp(R
22
3SiO
1/2)
qqq(HR
22SiO
2/2)
rrr
(R
22
2SiO
2/2)
sss(R
22SiO
3/2)
ttt(HSiO
3/2)
uuu(SiO
4/2)
kk[式中、各D
1は、独立して、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素基を表し、各R
22は、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基、又は1~18個の炭素原子を有する一価ハロゲン化炭化水素基(R
1について上述したものなど)を表し、各R
23は、独立して1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基(R
1について上述したものなど)であり、下付き文字nnnは、0又は1であり、下付き文字oooは、0であり、下付き文字qqq、sss、及びtttは、5≧qqq≧0、5≧sss≧0となり、下付き文字tttは、0又は1となり、下付き文字kkは、0又は1となり、下付き文字nnn>0となり、数量(mmm+ppp+qqq+rrr+sss+ttt+uuu+kk)≦50となるような値を有し、但し、エンドブロッカーにおけるD
1基の>90モル%が直鎖状である]を有する、アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーと、
iv)ヒドロシリル化反応触媒と、の反応生成物を含む、ポリアルコキシ末端封鎖樹脂-ポリマーブレンドである。
【0230】
実施形態25、すなわち実施形態20~24のいずれか1つに記載の方法では、出発物質C)は、a)カルボン酸の第二スズ塩、b)有機カルボン酸のスズ(II)塩、c)カルボン酸の第一スズ塩、d)有機チタン化合物、及びe)a)、b)、c)、及びd)有機チタン化合物のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0231】
実施形態26、すなわち実施形態20~25のいずれか1つに記載の方法では、出発物質D)は、アゾ化合物及び有機過酸化物化合物からなる群から選択される。
【0232】
実施形態27、すなわち実施形態20~26のいずれか1つに記載の方法では、接着剤組成物は、E)二重硬化化合物、F)接着促進剤、G)腐食防止剤、H)レオロジー変性剤、I)乾燥剤、J)架橋剤、K)充填剤、L)スペーサー、M)酸捕捉剤、N)シラノール官能性ポリジオルガノシロキサン、O)蛍光光学増白剤、P)連鎖移動剤、Q)(メタ)アクリレートモノマー、R)ポリアルコキシ末端ポリジオルガノシロキサン、S)着色剤、並びにE)、F)、G)、H)、I)、J)、K)、L)、M)、N)、O)、P)、Q)、R)、及びS)のうちの2つ以上からなる群から選択される、追加の出発物質を更に含む。
【0233】
実施形態28では、実施形態27に記載の方法において、E)二重硬化化合物が存在し、当該二重硬化化合物は、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0234】
実施形態29では、実施形態27又は28に記載の方法において、F)接着促進剤が存在し、当該接着促進剤は、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアリルイソシアヌレート、トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0235】
実施形態30では、実施形態27~29のいずれか1つに記載の方法において、G)腐食防止剤が存在し、当該腐食防止剤は、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、アルキルチアジアゾール、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0236】
実施形態31では、実施形態20~30のいずれか1つに記載の方法において、接着剤組成物は、アルコキシシランを更に含む。
【0237】
実施形態32では、アルコキシシランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0238】
実施形態33では、実施形態27~31のいずれか1つに記載の方法において、K)充填剤が存在し、当該充填剤は、ヒュームドシリカを含む。
【0239】
実施形態34では、実施形態27~31のいずれか1つに記載の方法において、L)スペーサーが存在し、当該スペーサーは、ガラスビーズを含む。
【手続補正書】
【提出日】2020-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成物の調製方法であって、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸;
B)式、
【化1】
[式中、下付き文字nは、2~2,000であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン;及び
C)式、(RHSiO
2/2)
v[式中、下付き文字vは、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基である]の環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質を組み合わせ、それにより、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びH
2を含む副生成物を含む前記生成物を調製する工程、
並びに、
2)
a)前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、
b)ヒドロシリル化反応触媒、並びに
c)出発物質a)のケイ素結合水素原子と付加反応することが可能な、1分子中に平均して少なくとも1つの脂肪族不飽和基、更に、1分子中に平均して1つ以上の硬化性基を有する反応種、を組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項2】
A)前記ホウ素含有ルイス酸が、少なくとも1つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下付き文字nが、2~1,000であり、下付き文字vは、4~10であり、各Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、各R
1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2)工程1)中及び/又はその後、前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの形成中に生じた前記H
2を除去する工程を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
3)前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応種が、式、R
4
ySiR
5
(4-y)[式中、下付き文字yは、1~3であり、各R
4は、前記付加反応することが可能な脂肪族不飽和基であり、各R
5は、前記硬化性基である]のシランを含み、それにより、クラスター化官能性オルガノシロキサンを含む生成物を調製する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応種が、式、R
6R
7[式中、各R
6は、前記付加反応することが可能な脂肪族不飽和基であり、各R
7は、前記硬化性基である]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項17~21のいずれか一項に記載の方法によって調製された、生成物。
【請求項9】
単位式、
[(HRSiO
2/2)
v-1(-RSiO
2/2)]
2[O-(R
1
2SiO
2/2)
n]
n’[(HRSiO
2/2)
v-2(-RSiO
2/2)
2]
o’[式中、下付き文字o’は、0~100であり、下付き文字n’=(o’+1)である]の多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンを含む、請求項8に記載の生成物。
【請求項10】
各下付き文字o’=0であり、前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンが、式、
【化2】
を有する、請求項9に記載の生成物。
【請求項11】
剥離コーティング組成物における架橋剤又は共架橋剤としての、請求項8~10のいずれか一項に記載の生成物の使用。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって調製された、生成物。
【請求項13】
前記生成物が、単位式、
[(R
8RSiO
2/2)
v-1(-RSiO
2/2)]
2[O-(R
1
2SiO
2/2)
n]
n’[(R
8RSiO
2/2)
v-2(-RSiO
2/2)
2]
o’[式中、各下付き文字o’は、0~100であり、下付き文字n’=(o’+1)であり、各R
8は、H及び硬化性基からなる群から独立して選択され、但し、1分子中に少なくとも1つのR
8は前記硬化性基(H以外)である]のクラスター化官能性オルガノポリシロキサンを含む、請求項12に記載の生成物。
【請求項14】
下付き文字o’=0であり、前記生成物が、式、
【化3】
のクラスター化官能性オルガノポリシロキサンを含む、請求項13に記載の生成物。
【請求項15】
接着剤組成物における接着剤としての、請求項12~14のいずれか一項に記載の生成物の使用。
【請求項16】
硬化性組成物であって、
(I)請求項8、9、10、12、13、又は14のいずれか一項に記載の生成物と、
(II)硬化剤と、を含む、硬化性組成物。
【請求項17】
生成物の調製方法であって、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸;
B)式、
【化4】
[式中、下付き文字nは、2~2,000であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン;及び
C)式、(RHSiO
2/2)
v[式中、下付き文字vは、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基である]の環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質を組み合わせ、それにより、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びH
2を含む副生成物を含む前記生成物を調製する工程を含み、B)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン及びC)前記環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、SiH:SiOH比が4:1~40:1であるような量で使用される、方法。
【請求項18】
A)前記ホウ素含有ルイス酸が、少なくとも1つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
下付き文字nが、2~1,000であり、下付き文字vは、4~10であり、各Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、各R
1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は1~20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
2)工程1)中及び/又はその後、前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの形成中に生じた前記H
2を除去する工程を更に含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
3)前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程を更に含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成物の調製方法であって、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸;
B)式、
【化1】
[式中、下付き文字nは、2~2,000であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン;及び
C)式、(RHSiO
2/2)
v[式中、下付き文字vは、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基である]の環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質を組み合わせ、それにより、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びH
2を含む副生成物を含む前記生成物を調製する工程、
並びに、
2)
a)前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン、
b)ヒドロシリル化反応触媒、並びに
c)出発物質a)のケイ素結合水素原子と付加反応することが可能な、1分子中に平均して少なくとも1つの脂肪族不飽和基、更に、1分子中に平均して1つ以上の硬化性基を有する反応種、を組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記反応種が、式、R
4
ySiR
5
(4-y)[式中、下付き文字yは、1~3であり、各R
4は、前記付加反応することが可能な脂肪族不飽和基であり、各R
5は、前記硬化性基である]のシランを含み、それにより、クラスター化官能性オルガノシロキサンを含む生成物を調製する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応種が、式、R
6R
7[式中、各R
6は、前記付加反応することが可能な脂肪族不飽和基であり、各R
7は、前記硬化性基である]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法によって調製された、生成物。
【請求項5】
剥離コーティング組成物における架橋剤又は共架橋剤としての、請求項4に記載の生成物の使用。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法によって調製された、生成物。
【請求項7】
接着剤組成物における接着剤としての、請求項6に記載の生成物の使用。
【請求項8】
硬化性組成物であって、
(I)請求項4又は6に記載の生成物と、
(II)硬化剤と、を含む、硬化性組成物。
【請求項9】
生成物の調製方法であって、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸;
B)式、
【化2】
[式中、下付き文字nは、2~2,000であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択される]のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン;及び
C)式、(RHSiO
2/2)
v[式中、下付き文字vは、3~12であり、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基である]の環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質を組み合わせ、それにより、多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン及びH
2を含む副生成物を含む前記生成物を調製する工程を含み、B)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン及びC)前記環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、SiH:SiOH比が4:1~40:1であるような量で使用される、方法。
【請求項10】
2)工程1)中及び/又はその後、前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの形成中に生じた前記H
2を除去する工程を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
3)前記多官能性オルガノハイドロジェンシロキサン中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程を更に含む、請求項1、9又は10のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】