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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】繊維の分離
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/34 20060101AFI20220210BHJP
   D06B 3/02 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
D06M11/34
D06B3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021534260
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2019085901
(87)【国際公開番号】W WO2020127453
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1851612-0
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521258108
【氏名又は名称】リニューセル アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】テルンストレーム ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】トラン カールストレーム エイミー
(72)【発明者】
【氏名】リンドストレーム ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】マンソール ザヒール アーマド
【テーマコード(参考)】
3B154
4L031
【Fターム(参考)】
3B154AA02
3B154AA07
3B154AB01
3B154BA60
3B154BB71
3B154BE03
3B154BE05
3B154DA24
4L031AA02
4L031AA17
4L031AA18
4L031AB01
4L031AB21
4L031BA33
4L031CA02
(57)【要約】
例えばリサイクル繊維製品中の繊維の分離方法であって、セルロース繊維及び非セルロース繊維を含む混合物から出発し、次いで、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が200~900ml/gの範囲にあるようにセルロース繊維のセルロース鎖長を低下させ、繊維の凝集体を小さい断片に機械的に破壊し、繊維の濃度を0.1~4重量%に調整し、混合物を浮遊に供して非セルロース繊維を除去する方法が提供される。合成繊維等の非セルロース系繊維は、混合物中のセルロース系繊維を除去することなく、又は実質的に除去することなく、非常に特異的に除去されることが可能である。これにより、非常に高い程度の除去が得られると同時に、セルロース繊維が除去されないかわずかしか除去されないため、収率が高く保たれまる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の分離方法であって、
a)セルロース繊維及び非セルロース繊維を含む混合物を準備する工程と、
b)ISO 5351に従って決定される極限粘度数が200~900ml/gの範囲にあるように、前記セルロース繊維のセルロース鎖長を低下させる工程と、
c)前記繊維の混合物を機械的処理に供して、繊維の凝集体をより小さい断片に破壊する工程と、
d)前記混合物中の繊維の濃度が重量計算で0.1~4重量%の繊維の範囲にあるように、前記混合物中の繊維の濃度を調整する工程と、
e)前記混合物を浮遊に供して、前記非セルロース繊維を除去する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記セルロース繊維の鎖長が、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が300~900ml/gの範囲にあるように低下される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルロース繊維の鎖長が、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が400~600ml/gの範囲にあるように低下される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セルロース繊維の鎖長が、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が少なくとも550ml/gであるように低下される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記セルロース繊維の鎖長が、pH6未満の酸性条件下でのオゾンによる処理によって低下される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記セルロース繊維の鎖長が、pH10超の塩基性条件下での酸素による処理によって低下される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程c)が工程b)の前に行われる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)が粉砕によって行われる請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物中の前記繊維の濃度が、重量計算で0.2~1.5重量%の繊維の範囲にあるように、工程d)の間に調整される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物中の前記繊維の濃度が、重量計算で0.7~1.5重量%の繊維の範囲にあるように、工程d)の間に調整される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物が水性である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記浮遊が、直列に接続された複数のチャンバで行われる請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記浮遊が、異なる気泡サイズを与える複数の空気拡散ノズルを使用して行われる請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程e)の前記浮遊の前に前記混合物が濾過される請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記浮遊の前にフィルタから除外されたものが粉砕され、再び濾過にかけられる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物が、リサイクルされるべき繊維製品で作られている請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維製品が工程a)の前に乾燥状態で粉砕される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物が、工程b)の前に還元性条件及び10超のpHの下で水中で処理される請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記還元性条件が、亜ジチオン酸アニオンの添加によって達成される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
追加の粉砕がウェット状態で行われる請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記非セルロース繊維が、人造ポリマーを含む合成繊維である請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記非セルロース繊維がポリエステルを含む請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記非セルロース繊維がエラスタンを含む請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記非セルロース繊維がポリアクリロニトリルを含む請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
工程e)後の前記混合物が脱水され乾燥される請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
工程e)後の前記混合物が、ビスコース製造プロセスにおいて原料として使用される請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
工程e)後の前記混合物が、リヨセル製造プロセスにおいて原料として使用される請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記非セルロース繊維が回収され、任意でさらに精製される請求項1から請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
工程e)の前記浮遊の前に少なくとも1種の界面活性剤が添加される請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
工程c)及び工程d)のうちの少なくとも1つの前に、追加の浮遊工程が行われる請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記浮遊で分離された凝集体が、前記凝集体を分解するために機械的処理に供される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程a)で提供される前記混合物が、綿及び再生セルロース繊維の少なくとも1つを含む繊維製品である請求項1から請求項31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
工程e)の前記浮遊の前に少なくとも1種の界面活性剤が添加される請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
工程e)における前記浮遊の間の温度が、前記浮遊の少なくとも一部の間、30~90℃の範囲にある請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
工程e)における前記浮遊の間の温度が、前記浮遊の少なくとも一部の間、50~80℃の範囲にある請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
請求項1から請求項35のいずれか1項に記載の方法により得られた材料を含有するセルロース。
【請求項37】
ビスコースの製造プロセスにおける請求項36に記載のリサイクルされるセルロースの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に繊維製品(テキスタイル)リサイクルに関連して、人造ポリマーを含む合成繊維等の非セルロース系繊維を除去することによりセルロース系繊維を精製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、植物の重要な構成要素であり、無水グルコース単位を含む。セルロースは、例えばヤーン又は糸を紡ぐことにより合成繊維を作製するために利用される。リサイクルされたセルロースは再生されて、ヤーン、糸、繊維等を紡ぐために使用されることが可能である。
【0003】
再生セルロース系繊維の製造を含む様々な用途のために、セルロースを溶解する方法がいくつか知られている。このようなプロセスにおいては、高価な化学物質を使用することがある(Ohno H及びFukaya Y(2009) Task specific ionic liquids for cellulose technology Chemistry Letters V38)。
【0004】
国際公開第2013/124265号パンフレットは、セルロースの再生のためのプロセスを開示する。この文献は、セルロースをアルカリ性の工程で、酸素を用いて処理することを開示する。酸素による粘度の低下が言及されている。布のリサイクルが言及されており、重合度を下げるために前処理が望ましい場合がある。また、セルロースはビスコース等の新しい繊維を作製するために使用することができると述べられている。
【0005】
国際公開第2010/1124944号パンフレットは、a)900ml/g未満の粘度を有するセルロースを水溶液と混合して液体を得る工程であって、この液体中のセルロースを含む粒子は最大200nmの直径を有し、上記水溶液の温度は35℃未満であり、その水溶液のpHは12超である工程と、b)上記液体を、i)液体のpHを少なくとも1pH単位で低下させること、ii)温度を少なくとも20℃上昇させることのうち少なくとも1つに供する工程と、c)上記セルロースを加水分解する工程という連続した工程を含むセルロースの加水分解のためのプロセスを開示する。
【0006】
中国特許出願公開第102747622号明細書は、ジーンズからインディゴ色を除去するプロセスを開示する。生地を1:20~30の重量比で水に入れ、85~95℃で加熱し、2~3g/lの水酸化ナトリウム、4~5g/lの剥離剤、3~5g/lのperegal O-25、及び4~5g/lの次亜硫酸ナトリウムを加え、超音波振動を行い、混合溶液を排出し、水を用いて生地を2~3回洗浄する。
【0007】
国際公開第2014/045062号パンフレットは、溶剤の助けを借りてポリエステルを抽出するプロセスを開示する。
【0008】
国際公開第2018/104330号パンフレットは、セルロース繊維を処理する方法であって、還元性添加剤を用いてセルロース繊維を膨潤させ、次いでアルカリ性条件下で酸素を用いて漂白し、及び/又は酸性条件下でオゾンを用いて漂白するためにセルロース繊維が処理される方法を開示する。その後、ビスコース(Viscose)又はリヨセル(Lyocell)プロセスでセルロース系繊維を製造することができる。
【0009】
国際公開第2018/073177号パンフレットは、セルロースを含む繊維製品のリサイクル方法であって、任意に繊維製品を崩壊させる工程と、還元性条件下でセルロースを膨潤させる工程であって、少なくとも1種の還元剤が少なくともこの膨潤の一部の間に存在する工程と、その後、任意の順序で、i)9~13.5の範囲のpHのアルカリ条件下で酸素を用いて材料を漂白する工程、ii)pH6未満の酸性条件下でオゾンを用いて材料を漂白する工程の2つの漂白工程のうちの少なくとも1つを実行する工程とを有する方法を開示する。
【0010】
国際公開第2015/077807号パンフレットは、再生セルロースから成形体を製造する際に使用する再生綿繊維を前処理するプロセスであって、再生綿繊維の前処理が、金属除去段階と酸化的漂白段階を含むプロセスを開示する。
【0011】
それでも、セルロース繊維だけでなく他の繊維も混合している繊維製品をリサイクルするための改良された方法が必要とされている。セルロース繊維以外の繊維を除去することが求められている。セルロース繊維を主成分として含む織物の中には、ポリエステル、エラスタン、アクリル製の繊維、並びに除去したい他の繊維が含まれている場合がある。
【0012】
セルロース繊維以外の繊維は、その繊維の後の使用時の影響が不明であるため、除去することが望まれる。セルロースは、例えば、後続のビスコースプロセス、後続のリヨセルプロセス、後続のカルバセル(CarbaCell)プロセス等に使用することができる。
【0013】
浮遊を用いて古紙から人造ポリマーを除去することは当該技術分野で公知である。しかしながら、そのような人造ポリマーは、繊維製品におけるような繊維の形をしていない。さらに、スクリーンプレート、ドラムスクリーン、振動スクリーン、圧力スクリーニング等の既存の方法は、一般的に古紙から人造ポリマーを除去するのに有効である。
【0014】
セルロース繊維から非セルロース系繊維を除去することに関する1つの問題は、セルロース及びその他の材料がともに繊維の形で存在することである。そのため、繊維同士がかなり絡み合い、分離が困難になってしまう。一方、古紙パルプに含まれる不純物は、合成ポリマー等の非セルロース系材料が繊維の形態にはないため、そのようなことはない。繊維製品の中のセルロースは、古紙の中のセルロース繊維と比較して、より長い繊維や螺旋状のセルロース繊維を有し、表面の性質も異なる。
【0015】
セルロースの再利用を目的とした繊維製品のリサイクルに関する別の難点は、プロセス中にセルロース繊維が短くなりすぎないようにする必要があることである。そうしないと、セルロース繊維が次の工程で使用できなくなったり、次の工程で使用しても経済的でなくなったりする。従って、繊維製品をリサイクルする際には、所望のセルロース構造の割合を高く保つことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2013/124265号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2010/1124944号パンフレット
【特許文献3】中国特許出願公開第102747622号明細書
【特許文献4】国際公開第2014/045062号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2018/104330号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2018/073177号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2015/077807号パンフレット
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Ohno H及びFukaya Y(2009) Task specific ionic liquids for cellulose technology Chemistry Letters V38
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
先行技術の短所の少なくともいくつかを取り除き、セルロース系繊維及び非セルロース系繊維を含む混合物の中の非セルロース系繊維を除去するための改善されたプロセスを提供することが本発明の目的である。
【0019】
所望の構造を維持しつつ、絡み合った繊維を分離することは不可能に思えるかもしれないが、本発明者らは、非セルロース系繊維を除去するために浮遊を使用することが可能な窓を見出した。浮遊法が機能するためには、セルロースの鎖長があるレベル未満になる必要がある。しかしながら、セルロースの意図された用途を考えると、鎖長は短すぎてはいけない。本発明者らは、鎖長を一定の範囲で調整することにより、非セルロース系繊維の除去に浮遊を用いることが可能になることを意外にも見出した。合成ポリマー繊維に絡みついたセルロース繊維に対しては、分解しなければ浮遊を利用することができない。
【0020】
セルロース繊維が非セルロース系繊維と絡み合っているため、この文脈で浮遊を使用できることは予想外であった。
【0021】
第1の態様では、繊維の分離方法であって、
a)セルロース繊維及び非セルロース繊維を含む混合物を準備する工程と、
b)ISO 5351に従って決定される極限粘度数が200~900ml/gの範囲にあるように、上記セルロース繊維のセルロース鎖長を低下させる工程と、
c)上記繊維の混合物を機械的処理に供して、繊維の凝集体をより小さい断片に破壊する工程と、
d)上記混合物中の繊維の濃度が重量計算で0.1~4重量%の繊維の範囲にあるように、その混合物中の繊維の濃度を調整する工程と、
e)上記混合物を浮遊に供して、上記非セルロース繊維を除去する工程と
を含む方法が提供される。
【0022】
第2の態様では、上記の方法を用いて得られた材料を含有するセルロースが提供される。
【0023】
第3の態様では、ビスコースの製造プロセスにおける上記のようなリサイクルされたセルロース系材料(再生セルロース材料)の使用が提供される。
【0024】
本発明の利点は、合成繊維等の非セルロース系繊維を、混合物中のセルロース繊維を除去することなく、又は実質的に除去することなく、非常に特異的に除去できることである。これにより、非常に高い程度の除去が得られると同時に、セルロース繊維が除去されないかわずかしか除去されないため、収率が高く保たれる。セルロース繊維は、ビスコースの製造等に使用できる程度に保存される。除去された非セルロース系繊維を回収できる可能性もある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を開示して詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に開示される特定の化合物、構成、方法工程、基材、及び材料に限定されるものではなく、そのような化合物、構成、方法工程、基材、及び材料は多少異なる可能性があることを理解されたい。また、本明細書で採用されている用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されており、限定することを意図したものではないことも理解されたい。というのも、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるからである。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0027】
他に何も定義されていない場合、本明細書で使用されるあらゆる用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を持つことが意図されている。
【0028】
本明細書で使用する場合の「セルロース系」という用語は、すべての天然セルロース系形態(綿、麻、ジュート等)及びレーヨン等のすべての再生セルロース系形態を指す。特に、セルロースを含むすべての繊維製品が、処理されたセルロース及び変性されたセルロースを含む繊維製品を含めて包含される。これに対して、「非セルロース系」という用語は、セルロースで構成されていない、又は作られていない材料及び繊維を指す。
【0029】
「溶解パルプ」(溶解セルロースと呼ばれることもある)とは、セルロース含有量が高い(90重量%超)漂白木材パルプ又は綿花リンターを意味する。溶解パルプは、輝度が高く、分子量分布が均一である等の特徴を有する。溶解パルプがこのように呼ばれているのは、紙にはならず、溶媒に溶解しているか、誘導体化して均質な溶液にすることで、化学的に完全にアクセス可能な状態にされ、残っている繊維構造が除去されるからである。
【0030】
「極限粘度数」とは、ISO 5351に従って決定される極限粘度数を意味する。同義語として固有粘度という用語が使われることもある。セルロース鎖長はプロセス中に短くなるが、しかしながら、セルロース鎖長の直接測定は迅速かつ効率的に行うことが難しい。極限粘度数はセルロースの鎖長に関連しており、従って、特に例えば鎖長を短くしたい場合には、セルロースの鎖長の間接的な測定値として使用することができる。極限粘度数はセルロースの鎖長に関係することが一般に認められている。鎖長と極限粘度数の間には必ずしも直接的な相関関係はないかもしれないが、本発明の目的のためには、既存の関係で十分である。
【0031】
「混合物」とは、本発明の方法の文脈では、プロセスの対象を意味する。この混合物はプロセス中に変化することは理解される。従って、「混合物」という用語はプロセス全体で使用されるが、出発混合物は最終混合物と同じではない。鎖長の短縮の後、セルロースの鎖長が短くなった混合物となる。機械的処理の後には、繊維の凝集物が減少した混合物となる。繊維濃度の調整後は、一般的に希釈された混合物となる。浮遊法の後には、精製された混合物となる。
【0032】
第1の態様では、繊維の分離方法であって、
a)セルロース繊維及び非セルロース繊維を含む混合物を準備する工程と、
b)ISO 5351に従って決定される極限粘度数が200~900ml/gの範囲にあるように、上記セルロース繊維のセルロース鎖長を低下させる工程と、
c)上記繊維の混合物を機械的処理に供して、繊維の凝集体をより小さい断片に破壊する工程と、
d)上記混合物中の繊維の濃度が重量計算で0.1~4重量%の繊維の範囲にあるように、その混合物中の繊維の濃度を調整する工程と、
e)上記混合物を浮遊に供して、上記非セルロース繊維を除去する工程と
を含む方法が提供される。
【0033】
混合物は、セルロース繊維だけでなく非セルロース繊維も含んでおり、それらの繊維を分離することが望まれる。1つの実施形態では、混合物は、人造ポリマーを含む少量の非セルロース系繊維を有する高分率のセルロース繊維を含む。リサイクル繊維製品には様々な画分があり、一部の画分では、セルロース繊維の含有量が高く、これに例えばポリエステル、エラスタン等の様々な他の繊維の含有量が追加されている。1つの実施形態では、この混合物は、95~99重量%のセルロース繊維及び約1~2重量%のポリエステルを含むリサイクル繊維製品である。
【0034】
ISO 5351に従って決定される極限粘度数が200~900ml/gの範囲にあるように、セルロース繊維のセルロース鎖長を低下させる工程の間、混合物は典型的には水性であり、すなわち繊維は水と混合されている。水は、大規模なプロセスのための最も現実的な溶媒であるが、理論的には他の溶媒を使用することも可能である。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が300~900ml/gの範囲にあるように低下される。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が400~600ml/gの範囲にあるように低下される。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が少なくとも550ml/gであるように低下される。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が少なくとも400ml/gであるように低下される。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が少なくとも500ml/gであるように低下される。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が少なくとも250ml/gであるように低下される。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が700ml/g以下であるように低下される。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が600ml/g以下であるように低下される。繊維製品中のセルロースの極限粘度数は、常に200~900ml/gの範囲よりも高いので、一般的には低下が必要である。
【0035】
セルロースの鎖長を低下させれば、浮遊性を利用できるというのは予想外の知見である。異なる繊維が絡み合っているため、浮遊は使用できないと予想されていた。しかしながら、鎖長を短くしすぎると、セルロースが使用できなくなったり、セルロースの再生の後続工程で使用する魅力がなくなったりする。例えば、リヨセルプロセスについては、約400ml/g以上の極限粘度を持つことが望まれる。カルバセルプロセスについては、250ml/g以上で十分である場合がある。
【0036】
1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、pH6未満の酸性条件下でのオゾンによる処理によって低下される。1つの実施形態では、セルロース繊維の鎖長は、pH10超の塩基性条件下での酸素による処理によって低下される。これら2つの鎖長の低下は、互いの後に組み合わせることができる。オゾンによる処理を使用する利点の1つは、処理中にセルロース鎖が弱くなることである。セルロース繊維の鎖長を低下させる工程b)がオゾンを用いた処理を含み、工程c)が工程b)の後に行われる場合、セルロース繊維は工程b)の間に弱体化されるが、非セルロース繊維は一般に弱体化されず、少なくともセルロース繊維と同じ程度には弱体化されない。続く工程c)の間に、機械的な処理により、上記弱体化したセルロース繊維の破壊が進むが、非セルロース繊維の破壊はより小さい程度にしか進まない。破壊の傾向が改変されることで、工程c)の機械的処理の間にセルロース繊維が短くなり、非セルロース繊維の長さは実質的に変わらない。短くなったセルロース繊維及びある程度保存された非セルロース繊維は、浮遊により非セルロース繊維を分離することを容易にする。従って、1つの実施形態では、工程c)は、工程b)の後に行われ、工程b)は、オゾンによる処理及び任意に他の工程を含む。
【0037】
1つの実施形態では、工程c)は工程b)の前に行われる。セルロース鎖長の低下の工程b)及び機械的処理の工程c)は、任意の順序で行うことができる。工程b)は、当該方法の異なるポイントで行われるいくつかの工程に分割することができる。
【0038】
加えて、工程d)は、工程b)及び工程c)に関して任意の順序で行うことができる。工程d)は、工程b)及びc)の前、間、又は後に行うことができる。工程b)及びc)の最中には繊維濃度を高く保つことがより経済的であるため、工程d)は、ほとんどの場合、希釈であり、従って工程d)は、ほとんどの場合、工程b)及びc)の後、工程e)での浮遊の前に実行される。
【0039】
1つの実施形態では、工程c)は粉砕によって行われる。繊維の断片を細かい断片へと機械的に分離するために、他の機械的処理方法が使用されてもよい。繊維の任意の凝集体は、それらをより小さな断片に破壊するために粉砕される。繊維の混合物が、繊維の凝集体が存在しないようなものであれば、この工程は省略してもよい。ほとんどの繊維混合物、特にリサイクル繊維製品の場合は、凝集体が存在し、機械的処理工程c)を省略することはできない。凝集体は、絡み合った繊維を含む。異なる繊維タイプの凝集体は、浮遊で繊維を分離することを困難にし、又は凝集体でより多くの繊維が除外される可能性があるため、浮遊の収率を低下させる。
【0040】
1つの実施形態では、混合物中の繊維の濃度は、重量計算で0.2~1.5重量%の繊維の範囲にあるように、工程d)の間に調整される。1つの実施形態では、混合物中の繊維の濃度は、重量計算で0.7~1.5重量%の繊維の範囲にあるように、工程d)の間に調整される。別の実施形態では、混合物中の繊維の濃度は、重量計算で0.7~2重量%の繊維の範囲にあるように、工程d)の間に調整される。この濃度の調整は、ほとんどの実施形態では、希釈である。
【0041】
1つの実施形態では、混合物は水性である。水は、当該方法の開始時に繊維と混合される。
【0042】
1つの実施形態では、浮遊は、直列に接続された複数のチャンバで行われる。1つの実施形態では、浮遊は、異なる気泡サイズを与える複数の空気拡散ノズルを使用して行われる。1つの実施形態では、複数のチャンバが使用され、各チャンバには異なるサイズの気泡が供給される。これは、異なるチャンバで異なるサイズの繊維を除去するのに役立つ。
【0043】
1つの実施形態では、工程e)の浮遊の前に混合物は濾過される。このような任意の濾過工程は、絡み合った繊維の残りの大きな凝集体があれば、それが浮遊にさらされないようにすることを確実にできる。1つの実施形態では、浮遊の前にフィルタから除外されたものが粉砕され、再び濾過にかけられる。取り除かれたより大きな凝集体は、粉砕され、再びフィルタに供給される。
【0044】
1つの実施形態では、混合物は、リサイクルされるべき繊維製品で作られている。一般的に、当該プロセスはリサイクルされる繊維製品を対象としているが、他の用途も想定されている。
【0045】
1つの実施形態では、繊維製品は、工程a)の前に乾燥状態で粉砕される。この追加の乾燥工程は、繊維製品を小片に切断及び細断することを含むことができる。
【0046】
1つの実施形態では、混合物は、工程b)の前に還元性条件及び10超のpHの下で水中で処理される。この任意の工程は、工程b)でセルロースの鎖長を低下させる前に行われる。1つの実施形態では、還元性条件は、亜ジチオン酸アニオンの添加によって達成される。1つの実施形態では、亜ジチオン酸ナトリウムが添加される。本発明者らは、高pHでの還元性条件でのこの処理が、セルロース繊維の膨潤を達成し、これが、その後の浮遊中に非セルロース系繊維をセルロース繊維から分離するのに役立つと考えている。
【0047】
1つの実施形態では、還元性条件及び10超のpHの下での水中での処理では、ウェット状態で追加の粉砕が行われる。この追加の粉砕は、1つの実施形態では、還元性条件が存在するときに行われる。
【0048】
1つの実施形態では、非セルロース繊維は、人造ポリマーを含む合成繊維である。人造ポリマーを含む合成繊維の例としては、ナイロン(登録商標)をベースにした繊維、ポリエステルをベースにした繊維、アクリルをベースにした繊維、モダアクリルをベースにした繊維、ポリウレタンをベースにした繊維、及びポリオレフィンをベースにした繊維が挙げられるが、これらに限定されない。このような繊維は、当該技術分野で周知であり、今日広く使用されている。1つの実施形態では、非セルロース系繊維は、ポリエステルを含む。1つの実施形態では、非セルロース繊維は、エラスタンを含む。1つの実施形態では、非セルロース繊維は、ポリアクリロニトリルを含む。セルロースベースの繊維は、一般的に、市販されている繊維製品の中で、より少量の非セルロース系繊維と混合されている。例えば、綿から作られたセルロース繊維は、数パーセントのポリエステルベースの繊維と混合されることが多い。
【0049】
1つの実施形態では、工程e)後の混合物は、脱水され乾燥される。脱水及び乾燥は、例えば真空脱水、プレス及び乾燥を含むパルプ化の技術分野における公知の技術を用いて行われる。
【0050】
この方法から得られた製品は、多くの様々な方法で使用できる。この製品は、セルロースを再生するための原料として、単独で、又は他の材料と混合して使用することができる。特定の場合では、この材料は綿リンターに取って代わることができる。
【0051】
1つの実施形態では、工程e)の後の混合物は、ビスコース製造プロセスにおいて原料として使用される。1つの実施形態では、得られた混合物がビスコースプロセスで使用される予定である場合、ISO 5351に従って決定される極限粘度数は、工程b)において550ml/gよりも高い値に低下される。
【0052】
1つの実施形態では、工程e)の後の混合物は、リヨセル製造プロセスにおいて原料として使用される。1つの実施形態では、得られた混合物がリヨセルプロセスで使用される予定である場合、ISO 5351に従って決定される極限粘度数は、工程b)において400ml/gよりも高い値に低下される。
【0053】
1つの実施形態では、非セルロース系繊維が回収され、任意でさらに精製される。非セルロース系繊維は、1つの実施形態では、回収されて様々な目的に使用される。
【0054】
1つの実施形態では、工程e)の浮遊の前に、少なくとも1種の界面活性剤が添加される。界面活性剤は、任意の表面活性剤である。例としては、親水性の部分及び疎水性の部分を有する化合物が挙げられる。1つの実施形態では、鹸化された脂肪酸が界面活性剤として使用される。多種多様な極性基及び非極性基を有する界面活性剤を浮遊に使用することができる。固体表面を疎水性にすることを主な役割とする界面活性剤は、コレクター(collector)と呼ばれる。浮遊セル内の最上の泡(あぶく)層に必要な安定性を与え、粒子と気泡の付着の速度に影響を与えることを主な役割とする界面活性剤は、フロザー(frother)と呼ばれる。これらは通常、非イオン性界面活性剤であり、膜の薄化速度を高め、粒子-気泡の凝集体の安定性に寄与することができる。さらなる実施形態では、工程e)の浮遊の前又は間に他の添加剤が加えられる。例としては、消泡剤、泡沫安定剤(整泡剤)、及び水の硬度を増加又は減少させるための物質が挙げられるが、これらに限定されない。浮遊に一般的に使用される添加剤が、1つの実施形態では加えられる。
【0055】
1つの実施形態では、工程c)及び工程d)のうちの少なくとも1つの前に、追加の浮遊工程が行われる。これは、追加の予備浮遊として機能し、例えば、より大きな凝集体及び他の不純物を除去する。1つの実施形態では、この予備浮遊からの凝集体が機械的に処理されて、例えば粉砕によってその凝集体が破壊される。1つの実施形態では、追加的な浮遊で分離された凝集体は、その凝集体を分解するために機械的処理に供される。追加的な浮遊は、通常は高繊維濃度である濃度を調整する前に行われる。
【0056】
1つの実施形態では、不要な繊維の除去を改善するために、工程e)の浮遊が繰り返される。
【0057】
1つの実施形態では、工程a)で提供される混合物は、綿及び再生セルロース繊維の少なくとも1つを含む繊維製品である。
【0058】
1つの実施形態では、工程e)における浮遊の間の温度は、浮遊の少なくとも一部の間、30~90℃の範囲にある。1つの実施形態では、工程e)における浮遊の間の温度は、浮遊の少なくとも一部の間、50~80℃の範囲にある。1つの実施形態では、温度は、浮遊の全体にわたって前述の範囲にある。別の実施形態では、温度は浮遊の一部の間、前述の範囲内にある。後者の実施形態は、複数の浮遊工程が一連で実施される場合に関連する可能性がある。温度が30~90℃、好ましくは50~80℃の範囲にあると、水性溶媒の粘度が低くなり、より良い効果が得られる。代替的な実施形態では、浮遊は周囲温度で実施される。
【0059】
第2の態様では、上記の方法により得られた材料を含有するセルロースが提供される。
【0060】
第3の態様では、ビスコースの製造のためのリサイクルされるセルロース系材料の使用が提供される。
【0061】
本発明の他の特徴及び用途、ならびにそれらに関連する利点は、本明細書及び添付の実施例を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【0062】
本発明は、本明細書中に示す特定の実施形態に限定されないということを理解されたい。以下の実施例は説明の目的で提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。というのも、本発明の範囲は添付の請求項及びその均等物によってのみ限定されるからである。
【実施例
【0063】
例1
繊維材料:
繊維:繊維製品生地廃棄物からの非セルロース系繊維をより少量含む綿。この繊維を分解して、漂白した。まず、繊維を織物や紡績構造物から分解し、より短い繊維長に精製した。次に、この繊維を、亜ジチオン酸塩を用いた酸化還元反応、さらにオゾン漂白(酸性条件)及び酸素漂白(アルカリ性条件)で処理した。最後に、節やダマを取り除くために再び繊維を精製した。
【0064】
実験には、1リットルのメスシリンダー(直径90mm、高さ210mm)及び丸いエアストーン(直径80mm、高さ20mm)を使用した。メスシリンダーには、0.5重量%の繊維懸濁液を500ml入れた。エアストーンをシリンダーの底に置き、これにより繊維懸濁液中の気泡の流れを均一にした。浮遊剤を1~2滴添加して、非セルロース系繊維の担体として機能する泡沫を得た。非セルロース系繊維は泡の表面に付着し、泡沫がシリンダーの上部に達すると除去された。
【0065】
この浮遊実験は、同じ繊維混合物を用いて3回繰り返した。結果として得られた残りの非セルロース繊維の含有量は、異なる実験から得られた試料1~3の下表で見ることができる。元の非セルロース系繊維含有量の2つの測定を行った。その結果は表に見ることができる。1回の浮遊工程で、非セルロース系繊維含有量が平均で89.1%減少した。
【0066】
【表1】
【0067】
例2
Voith(フォイト)ラボラトリー浮遊セルDelta 25を使用した。
【0068】
様々な繊維の異なる混合物を使用した。
【0069】
・FM:ホワイトクリッピング(white clipping)からの綿繊維。この繊維は、より少量の非セルロース系繊維、例えばポリエステルを含む。この繊維を分解して、漂白した。まず、繊維を織物や紡績構造物から分解し、より短い繊維長に精製した。次に、この繊維を、亜ジチオン酸塩を用いた酸化還元反応、さらにオゾン漂白(酸性条件)及び酸素漂白(アルカリ性条件)で処理した。最後に、節やダマを取り除くために再び繊維を精製した。
【0070】
・HM+ポリエステル:ホワイトクリッピングを原料とする。バレービーター(valley beater)でパルプを精製し、さらに環境に優しいポリエステルを加えたもの。
【0071】
・HM/FM+ポリエステル:上記FMと同じ繊維に、環境に優しいポリエステルを追加し、さらにバレービーターで精製したもの。
【0072】
表中のSRは、異なる繊維の粉砕度を示す。数字が大きいほど繊維が小さいことを意味する。
【0073】
上記繊維混合物を、パルプ濃度1重量%、浮遊容積24リットル、温度21℃、空気流量11L/分、pH9~10の浮遊セルで実行した。上記の異なる混合物を、それぞれ6分、9分、12分の浮遊時間で実行した。
【0074】
浮遊試料は、鹸化されたオレフィン系脂肪酸を添加した場合と添加しない場合で実行した。浮遊セルに150gの鹸化された脂肪酸を加えた。鹸化された脂肪酸は、0.8重量%の脂肪酸と2重量%のNaOHを反応させて作製した。
【0075】
上記のFM繊維は、機械的な濾過プロセスでも実行し、結果を比較した。この試験をFMスライドパックと呼ぶ。
【0076】
【表2】
【0077】
このように、綿繊維等のセルロース繊維をポリエステル繊維等の他の繊維から分離するには、浮遊が効率的であることがわかる。ポリエステルの除外濃度は60.4重量%と高い。これは、セルロース系繊維の損失が少ないことを意味する。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の分離方法であって、
a)セルロース繊維及び非セルロース繊維を含む混合物を準備する工程と、
b)ISO 5351に従って決定される極限粘度数が200~900ml/gの範囲にあるように、前記セルロース繊維のセルロース鎖長を低下させる工程と、
c)前記繊維の混合物を機械的処理に供して、繊維の凝集体をより小さい断片に破壊する工程と、
d)前記混合物中の繊維の濃度が重量計算で0.1~4重量%の繊維の範囲にあるように、前記混合物中の繊維の濃度を調整する工程と、
e)前記混合物を浮遊に供して、前記非セルロース繊維を除去する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記セルロース繊維の鎖長が、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が300~900ml/gの範囲にあるように低下される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルロース繊維の鎖長が、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が400~600ml/gの範囲にあるように低下される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セルロース繊維の鎖長が、ISO 5351に従って決定される極限粘度数が少なくとも550ml/gであるように低下される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記セルロース繊維の鎖長が、pH6未満の酸性条件下でのオゾンによる処理によって低下される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記セルロース繊維の鎖長が、pH10超の塩基性条件下での酸素による処理によって低下される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程c)が工程b)の前に行われる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)が粉砕によって行われる請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物中の前記繊維の濃度が、重量計算で0.2~1.5重量%の繊維の範囲にあるように、工程d)の間に調整される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物中の前記繊維の濃度が、重量計算で0.7~1.5重量%の繊維の範囲にあるように、工程d)の間に調整される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物が水性である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記浮遊が、直列に接続された複数のチャンバで行われる請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記浮遊が、異なる気泡サイズを与える複数の空気拡散ノズルを使用して行われる請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程e)の前記浮遊の前に前記混合物が濾過される請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記浮遊の前にフィルタから除外されたものが粉砕され、再び濾過にかけられる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物が、リサイクルされるべき繊維製品で作られている請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維製品が工程a)の前に乾燥状態で粉砕される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物が、工程b)の前に還元性条件及び10超のpHの下で水中で処理される請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記還元性条件が、亜ジチオン酸アニオンの添加によって達成される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
追加の粉砕がウェット状態で行われる請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記非セルロース繊維が、人造ポリマーを含む合成繊維である請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記非セルロース繊維がポリエステルを含む請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記非セルロース繊維がエラスタンを含む請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記非セルロース繊維がポリアクリロニトリルを含む請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
工程e)後の前記混合物が脱水され乾燥される請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
工程e)後の前記混合物が、ビスコース製造プロセスにおいて原料として使用される請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
工程e)後の前記混合物が、リヨセル製造プロセスにおいて原料として使用される請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記非セルロース繊維が回収され、任意でさらに精製される請求項1から請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
工程e)の前記浮遊の前に少なくとも1種の界面活性剤が添加される請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
工程c)及び工程d)のうちの少なくとも1つの前に、追加の浮遊工程が行われる請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記浮遊で分離された凝集体が、前記凝集体を分解するために機械的処理に供される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程a)で提供される前記混合物が、綿及び再生セルロース繊維の少なくとも1つを含む繊維製品である請求項1から請求項31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
工程e)の前記浮遊の前に少なくとも1種の界面活性剤が添加される請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
工程e)における前記浮遊の間の温度が、前記浮遊の少なくとも一部の間、30~90℃の範囲にある請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
工程e)における前記浮遊の間の温度が、前記浮遊の少なくとも一部の間、50~80℃の範囲にある請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】