(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ディスプレイ基板製造用ポリアミック酸組成物およびこれを利用してディスプレイ用基板を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20220210BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220210BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20220210BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220210BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08L79/08 A
B32B27/34
C08K5/54
G09F9/00 342
C08G73/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537159
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2019016798
(87)【国際公開番号】W WO2020138743
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0168515
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0061188
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギョン・ヒョン・ロ
(72)【発明者】
【氏名】イク・サン・イ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
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5G435
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、前記非晶質または結晶質シリコンとの接着力が0.05~0.1N/cmのポリアミック酸組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアンヒドリド系単量体および芳香族ジアミン系単量体が重合されたポリアミック酸重合体を含み、
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体は、ビフェニル構造を有する第1成分、および1個のベンゼン環を有する第2成分およびベンゾフェノン構造を有する第3成分を含み、
ポリアミック酸組成物は、非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、前記非晶質または結晶質シリコンとの接着力が0.05~0.1N/cmであり、
非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、波長308nmのレーザーを150mJ/cm
2で照射した後に測定された接着力が0.01N/cm以下である、ポリアミック酸組成物。
【請求項2】
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して、第1成分の含量が50モル%~70モル%であり、前記第2成分の含量が20モル%~40モル%である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項3】
芳香族ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して前記ベンゾフェノン構造を有する成分の含量が1モル%超過~7モル%未満である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項4】
前記第1成分は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BPDA)および2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボキシリックジアンヒドリド(a-BPDA)よりなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項5】
前記第2成分は、ピロメリチックジアンヒドリド(PMDA)である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項6】
前記第3成分は、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BTDA)である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項7】
前記芳香族ジアミン系単量体は、1個のベンゼン環を有するジアミン成分をそれの全体モル数に対して50モル%超過で含む、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項8】
前記1個のベンゼン環を有するジアミン成分は、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエンおよび3,5-ジアミノ安息香酸よりなる群から選択される1種以上である、請求項7に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項9】
前記1個のベンゼン環を有するジアミン成分は、1,4-ジアミノベンゼンである、請求項7に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項10】
シラン系カップリング剤およびシリコン系界面活性剤のうち少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項11】
前記シラン系カップリング剤は、
ポリアミック酸組成物のポリアミック酸固形分の重量に対して0.01~0.05重量%で含まれ;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane,APTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(Aminopropyltriethoxysilane)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル-ジメトキシメチルシラン(3-(2-aminoethylamino)propyl-dimethoxymethylsilane)、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン(3-Glycidoxypropyldimethoxymethylsilane)および2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン(2-(3,4-epoxycyclohexyl)trimethoxysilane)よりなる群から選択される1種以上を含む、請求項10に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項12】
前記シリコン系界面活性剤は、ポリアミック酸組成物のポリアミック酸固形分の重量に対して0.001~0.02重量%で含まれる、請求項11に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項13】
ポリアミック酸組成物は、23℃で測定した粘度が3,000~7,000cPである、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項14】
前記ポリアミック酸組成物で製造されたポリイミド樹脂は、
ガラス転移温度が490℃以上であり、
熱分解温度が555℃以上であり、
熱膨張係数が8ppm/℃以下である、請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項15】
前記ポリイミド樹脂は、引張強度が350MPa以上であり、伸率が20%以上であり、透過率が60%以上である、請求項14に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項16】
非晶質または結晶質シリコン基板上に請求項1に記載のポリアミック酸組成物を塗布する段階を含むディスプレイ基板の製造方法。
【請求項17】
前記ポリアミック酸組成物を20℃~40℃で第1熱処理する段階;
前記ポリアミック酸組成物を40℃~200℃で第2熱処理する段階;および
前記ポリアミック酸組成物を200℃~500℃で第3熱処理する段階を含み、
前記第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理段階を通じて、前記ポリアミック酸組成物は、ポリアミック酸のアミック酸基が閉環、脱水反応したイミド基を含むポリイミド樹脂を生成し、有機溶媒が揮発して硬化し、
前記第3熱処理が完了すると、前記ポリイミド樹脂が前記非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化して接着される、請求項16に記載のディスプレイ基板の製造方法。
【請求項18】
前記第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理段階は、それぞれ独立して、3℃/min~7℃/minの範囲で選択される2つ以上の可変的な昇温速度、または前記範囲で選択される一つの不変的な昇温速度で行われる、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記ポリイミド樹脂上に薄膜トランジスター(TFT)を形成させる段階および
前記非晶質または結晶質シリコン基板にレーザーを所定の時間の間照射して、前記ポリイミド樹脂から前記非晶質または結晶質シリコン基板を除去する段階を含み、
前記レーザー照射後に測定されたポリイミド樹脂と非晶質または結晶質シリコン基板の間の接着力が0.01N/cm以下である、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年12月24日付け韓国特許出願第10-2018-0168515号と2019年5月24日付け韓国特許出願第10-2019-0061188号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ディスプレイ基板製造用ポリアミック酸組成物およびこれを利用してディスプレイ用基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイ装置は、大面積が容易であり、薄型および軽量化が可能な平板ディスプレイ(Flat Panel Display;FPD)に急速に発展している。このような平板ディスプレイには、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、有機発光表示装置(Organic Light Emitting Display;OLED)または電気泳動素子などがある。
【0004】
最近では、このような平板ディスプレイの応用と用途をさらに拡張するために、可撓性基板を適用したフレキシブルディスプレイが開発されている。このようなディスプレイは、スマートフォン、タブレットパソコンなどのモバイル機器に主に適用されており、その応用分野が拡張されている。
【0005】
フレキシブルディスプレイを構成するディスプレイ基板は、可撓性基板(flexibility substrate)上に薄膜トランジスター(TFTs on Plastic;TOP)素子構造を形成させる工程により製造され得る。ただし、前記工程が300℃以上または400℃以上の高温で行われるところ、有機高分子素材の中でも最高水準の耐熱性および機械的特性と共に、柔軟な特性を有するポリイミド系素材が可撓性基板として好適に活用されている。
【0006】
典型的に、ディスプレイ基板は、(i)非晶質または結晶質シリコンからなる犠牲層上にポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を塗布し、硬化させて、可撓性基板であるポリイミド樹脂を形成し、(ii)その後、ポリイミド樹脂からなる可撓性基板上に前記薄膜トランジスター素子構造を形成する工程を行い、(iii)このような工程が完了すると、所定の波長を有するレーザーを利用して犠牲層を可撓性基板から剥離することによって製造され得る。
【0007】
所望の品質を内在したディスプレイ基板の製造には、多様な工程的変数が複合的に作用できるが、特に重要な一つは、可撓性基板であるポリイミド樹脂が犠牲層に対して適切な水準で接着されることである。
【0008】
前述した適切な水準とは、ポリイミド樹脂上に薄膜トランジスター素子構造を形成する過程でポリイミド樹脂と犠牲層の接着状態および形態が強固に維持されるものの、この工程後の犠牲層の除去時には、ポリイミド樹脂から前記犠牲層が容易に剥離され得る水準を意味する。
【0009】
もし、犠牲層に対するポリイミド樹脂の接着力が不良であれば、ポリイミド樹脂上に薄膜トランジスターを形成する過程でポリイミド樹脂または犠牲層が脱落する深刻な問題が発生することができる。
【0010】
反対に、前記接着力が一定水準を超えて過多である場合には、レーザーで犠牲層を剥離する過程でポリイミド樹脂と犠牲層の一部分が接着された状態を維持したり、犠牲層に由来した灰(ash)がポリイミド樹脂に接着されていることがある。これによって、剥離過程でポリイミド樹脂が損傷されることがあり、剥離されて収得されたディスプレイ基板の品質が低下することがある。また、強い接着状態を維持する犠牲層を完全に剥離させるためにレーザーのエネルギーを増幅すると、ポリイミド樹脂または薄膜トランジスター素子構造が損傷または破壊され得る。
【0011】
したがって、上述した技術的問題を解消できる新規のポリイミド系素材が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記で認識された従来の問題を一挙に解消できる新規のポリアミック酸組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の一態様によれば、ポリアミック酸組成物は、非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、すなわちポリイミド樹脂に変換されると、前記非晶質または結晶質シリコンとの接着力が0.05~0.1N/cmでありうる。
【0014】
このような接着力は、前記ポリアミック酸組成物に由来したポリイミド樹脂上に薄膜トランジスター素子構造を形成する過程でポリイミド樹脂と犠牲層である非晶質または結晶質シリコンの接着状態および形態が強固に維持されるものの、この工程後の犠牲層の除去時に、ポリイミド樹脂から前記犠牲層が容易に剥離され得るので、特に好ましい。
【0015】
このような態様によって、上述した問題が解消され得、本発明は、その具現のための具体的な実施様態を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実施様態において、本発明は、
芳香族ジアンヒドリド系単量体および芳香族ジアミン系単量体が重合されたポリアミック酸重合体を含み、
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体は、ビフェニル構造を有する第1成分、および1個のベンゼン環を有する第2成分およびベンゾフェノン構造を有する第3成分を含み、
ポリアミック酸組成物は、非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、前記非晶質または結晶質シリコンとの接着力が0.05~0.1N/cmであり、
非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、波長308nmのレーザーを150mJ/cm2で照射した後に測定された接着力が0.01N/cm以下のポリアミック酸組成物を提供する。前記接着力は、ASTM D 3359によって、硬化した前記ポリアミック酸組成物の幅が1cmになるように非晶質または結晶質シリコン基板に付着し、20mm/minの剥離速度および180°の剥離角度で剥離しつつ測定した接着力でありうる。
【0017】
一実施様態において、本発明は、ポリアミック酸組成物を利用してディスプレイ基板を製造する方法であって、
【0018】
以下では、本発明による「ポリアミック酸組成物」および「ディスプレイ基板を製造する方法」の順に発明の実施様態をより詳細に説明する。
【0019】
これに先立って、本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈すへきものではなく、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0020】
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい1つの実施例に過ぎないものであり、本発明の技術的思想を全部代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例が存在し得ることを理解しなければならない。
【0021】
本明細書で単数の表現は、文脈上明白に相異に意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「具備する」または「有する」等の用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解されなければならない。
【0022】
本明細書で「ジアンヒドリド(二無水物;dianhydride)」は、その前駆体または誘導体を含むものと意図されるが、これらは、技術的にはジアンヒドリドではないことがあるが、それにもかかわらず、ジアミンと反応してポリアミック酸を形成するのであり、このポリアミック酸は、さらにポリイミドに変換され得る。
【0023】
本明細書で「ジアミン」は、その前駆体または誘導体を含むものと意図されるが、これらは、技術的にはジアミンではないことがあるが、それにもかかわらず、ジアンヒドリドと反応してポリアミック酸を形成するのであり、このポリアミック酸は、さらにポリイミドに変換され得る。
【0024】
本明細書で量、濃度、または他の値またはパラメーターが範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値の列挙として与えられる場合、範囲が別途開示されるかに関係なく、任意の一対の任意の上側範囲の限界値または好ましい値および任意の下側範囲の限界値または好ましい値で形成されたすべての範囲を具体的に開示するものと理解されなければならない。数値の範囲が本明細書で言及される場合、別途記述されないと、例えば、超過、未満などの限定用語がないと、その範囲は、その終点値およびその範囲内のすべての整数と分数を含むものと意図される。本発明の範疇は、範囲を定義するときに言及される特定値に限定されないものと意図される。
【0025】
ポリアミック酸組成物
本発明によるポリアミック酸組成物は、
芳香族ジアンヒドリド系単量体および芳香族ジアミン系単量体が重合されたポリアミック酸重合体を含み、
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体は、ビフェニル構造を有する第1成分、および1個のベンゼン環を有する第2成分およびベンゾフェノン構造を有する第3成分を含み、
ポリアミック酸組成物は、非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、前記非晶質または結晶質シリコンとの接着力が0.05~0.1N/cmであり、
非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、波長308nmのレーザーを150mJ/cm2で照射した後に測定された接着力が0.01N/cm以下でありうる。
【0026】
具体的に、本発明のポリアミック酸組成物は、有機溶媒と、芳香族ジアンヒドリド系単量体と芳香族ジアミン系単量体が重合されて製造されたポリアミック酸と、を含むことができる。
【0027】
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体は、ビフェニル構造を有する第1成分、および1個のベンゼン環を有する第2成分およびベンゾフェノン構造を有する第3成分を含むことができる。
【0028】
前記芳香族ジアミン系単量体は、1個のベンゼン環を有するジアミン成分をそれの全体モル数に対して50モル%超過で含むことができ、具体的にそれの全体モル数に対して60モル%以上または70モル%~100モル%で含むことができる。
【0029】
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して、第1成分の含量は、50モル%~70モル%でありうる。具体的に第1成分の含量は、ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して50モル%~65モル%、55モル%~70モル%、55モル%~65モル%、57モル%~62モル%または58モル%~60モル%でありうる。
【0030】
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して、前記第2成分の含量は、20モル%~40モル%でありうる。具体的に第2成分の含量は、ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して20モル%~35モル%、25モル%~40モル%、25モル%~35モル%、30モル%~40モル%、32モル%~38モル%または35モル%~38モル%でありうる。
【0031】
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して、前記第3成分の含量は、1モル%超過~7モル%未満でありうる。具体的に、第3成分の含量は、2モル%~5モル%または3モル%~5モル%でありうる。
【0032】
このようなポリアミック酸組成物は、非晶質または結晶質シリコン基板上に硬化した状態で、前記非晶質または結晶質シリコンとの接着力が0.05~0.1N/cmでありうる。具体的に、前記非晶質または結晶質シリコンとの接着力が0.05~0.09N/cm、0.06~0.1N/cm、または0.06~0.09N/cmでありうる。
【0033】
前記ポリアミック酸組成物は、また、熱処理により硬化してポリイミド樹脂を形成することができる。前記ポリアミック酸組成物が20℃~550℃または20℃~500℃で熱処理されてポリイミド樹脂が製造され得、このようなポリアミック酸組成物で製造されたポリイミド樹脂は、下記のような優れた物性を内在することができる。
・8ppm/℃以下の熱膨張係数
・490℃以上のガラス転移温度
・555℃以上の熱分解温度
・350MPa以上の引張強度
・20%以上の伸率
・60%以上の透過率
【0034】
一つの例示において、本発明によるポリイミド樹脂の熱膨張係数は、7.7ppm/℃以下、7.5ppm/℃以下、6~8ppm/℃または6ppm/℃~7ppm/℃でありうる。
【0035】
また、本発明によるポリイミド樹脂のガラス転移温度は、495℃以上、500℃以上、490℃~520℃、490℃~510℃または500℃~550℃であり得、本発明によるポリイミド樹脂の熱分解温度は、ガラス転移温度は、560℃以上、555℃~600℃または555℃~580℃でありうる。
【0036】
また、本発明によるポリイミド樹脂の引張強度は、350MPa以上、360MPa以上、370MPa以上、350~400MPaまたは360~390MPaであり得、本発明によるポリイミド樹脂の伸率は、22%以上、20%~30%、20%~28%または22%~26%であり得、本発明によるポリイミド樹脂の透過率は、60%~70%、60%~65%または60%~62%でありうる。
【0037】
これと関連して、以上の物性を全部満足できる本発明のポリアミック酸組成物およびこれによって製造されたポリイミド樹脂の場合、ディスプレイ基板の素材として好適に利用され得る。
【0038】
これらの物性が全て発現することができるポリイミド樹脂とこれを具現するポリアミック酸組成物は、今まで知られていない新規のポリイミド系素材であって、それの構成を非制限的な例を通じて以下でさらに詳細に説明する。
【0039】
<接着力>
一般的に、前記非晶質または結晶質シリコン基板は、非制限的にディスプレイ基板の製造に利用され得、特に、ディスプレイ基板の製造時に可撓性基板に接着されてから除去される犠牲層として利用され得る。この際、本発明のポリアミック酸組成物は、前記非晶質または結晶質シリコン基板上に硬化してポリイミド樹脂を形成することができ、前記ポリイミド樹脂は、可撓性基板として好適に利用され得る。
【0040】
前記犠牲層として非晶質または結晶質シリコン基板は、薄膜トランジスター(TFT)素子構造を形成する工程でポリイミド樹脂に接着された状態で存在し、この工程後に、非晶質または結晶質シリコン基板にレーザーを照射すると、非晶質または結晶質シリコン基板とポリイミド樹脂の接着状態が解除されて互いに剥離され得る。
【0041】
ただし、注目すべきことは、前記接着力が本発明に記載された範囲から少しくらい外れる場合、ポリイミド樹脂またはポリイミド樹脂に形成された薄膜トランジスター素子が大きく損傷され得る点である。
【0042】
例えば、前記接着力をわずかに超過する場合は、レーザーを利用した非晶質または結晶質シリコン基板の処理にもかかわらず、前記非晶質または結晶質シリコン基板の少なくとも一部がポリイミド樹脂と接着された状態を維持する非好適な様態につながることができる。このような様態で、接着状態が維持されたポリイミド樹脂の一部分は、非晶質または結晶質シリコン基板により破断され得る。
【0043】
また、非晶質または結晶質シリコン基板に由来した灰(ash)がポリイミド樹脂に接着されていることがある。
【0044】
他の態様において、さらに高エネルギーのレーザーを利用して非晶質または結晶質シリコン基板の剥離を誘導することを考慮できるが、この場合は、ナノメートル~マイクロメートル単位の厚さを有するポリイミド樹脂と薄膜トランジスター素子構造に高エネルギーのレーザーが影響を与えることによって、これらの損傷、例えば樹脂および/またはトランジスター素子の分解、変形、破断を誘発することができる。また、高エネルギーのレーザーは、非晶質または結晶質シリコン基板に由来する灰を相対的にさらに多く生成することができ、前記灰は、異物として作用して例えばトランジスター素子の品質を阻害することができる。
【0045】
前記接着力を満たす場合は、約300℃以上または約400℃以上の高温でポリイミド樹脂と非晶質または結晶質シリコン基板の接着状態が良好に維持され得る。
【0046】
これは、ポリイミド樹脂が可撓性基板として利用されることを難しくする主要な理由であって、ポリイミド樹脂上に薄膜トランジスター素子構造を形成させる工程が約300℃以上の高温で行われるためである。本発明の範囲に比べて相対的に低い接着力の下では、ポリイミド樹脂の少なくとも一部が剥離されて浮き上がった状態が誘発されたり、または剥離された一部が巻かれてカール(curl)を形成することができ、この場合、前記工程の進行が不可能である。
【0047】
整理すると、ポリイミド樹脂と非晶質または結晶質シリコン基板間の接着力がきわめて限定的であり、最も好ましい範囲に属することが重要であり、本発明は、このような好ましい範囲を上記のように提供する。また、本発明のポリアミック酸組成物は、硬化した状態で非晶質または結晶質シリコン基板に対して前記範囲の接着力を発現することができる。
【0048】
さらに本発明のポリアミック酸組成物は、非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化した状態で、波長308nmのレーザーを150mJ/cm2で照射した後に測定された接着力が0.01N/cm以下でありうる。前記レーザー照射後の接着力は、非常にわずかな水準であって、非晶質または結晶質シリコン基板と接着状態が実質的に維持され得ない水準であり得、これに伴い、例えば、薄膜トランジスター素子構造を形成させる工程後に、前記ポリアミック酸組成物由来のポリイミド樹脂が非晶質または結晶質シリコン基板から容易に剥離され得、その形態も完全に維持され得る。
【0049】
本発明は、ポリアミック酸組成物を硬化してポリイミド樹脂を形成し、この状態で接着力をテストする方法を提供する。
【0050】
前記テスト方法は、横1cm*縦10cmの非晶質または結晶質シリコン基板上にポリアミック酸組成物を塗布し、熱処理して、約10μm~20μmまたは13μm~17μmのポリイミド樹脂薄膜を形成した状態で、ポリイミド樹脂の端部に幅1cmのテープを付着し、このテープを利用して基板からポリイミド樹脂を剥離しながら、これに要求された力を測定する。
【0051】
レーザー処理後、接着力を測定する方法は、下記の方法が利用され得る:
横1cm*縦10cmの非晶質または結晶質シリコン基板上にポリアミック酸組成物を塗布し、熱処理して、厚さが約10μm~20μmまたは13μm~17μmのポリイミド樹脂薄膜を形成した状態で、前記非晶質または結晶質シリコン基板に波長308nmのレーザーを照射した後、ポリイミド樹脂の端部に幅1cmのテープを付着し、このテープを利用して基板からポリイミド樹脂を剥離しながら、これに要求された力を測定する。
【0052】
硬化したポリアミック酸組成物の接着力が本発明に記載された限定的且つ最も好ましい範囲を満足できることは、ベンゾフェノン構造を有する第3成分の使用が主要な理由でありうる。
【0053】
具体的に、本発明のポリアミック酸組成物は、ベンゾフェノン構造を有する第3成分によりポリアミック酸の高分子鎖がベンゾフェノン構造を含むことができ、このベンゾフェノン構造は、ポリアミック酸高分子鎖が変換されたポリイミド高分子鎖にも維持され得る。前記ベンゾフェノン構造は、非晶質または結晶質シリコン基板の表面に存在するヒドロキシ基のような極性官能基と相互作用を通じて接着力を向上させることができ、第3成分の構造とこれの含量が本発明の範囲を満たす場合、非晶質または結晶質シリコン基板のような接着対象体との接着力が所望の水準に発現するのに主要に作用することができる。
【0054】
通常のポリイミド樹脂の接着力がきわめて低い方に属し、例えば、非晶質または結晶質シリコン基板に対しては、0.05N/cm未満の低い接着力を有することができる。これは、ポリイミド樹脂が非晶質または結晶質シリコン基板との接触界面に表面脆弱層(WBL;Weak Boundary Layer)を含むことが一つの原因といえる。表面脆弱層は、様々な形態があるが、そのうちの一つは、接触界面でポリイミド樹脂の少なくとも一部が非晶質または結晶質シリコン基板を支持せず、浮き上がった形態でありうる。
【0055】
前記浮き上がった形態は、例えば、ポリイミド樹脂と非晶質または結晶質シリコン基板の間の界面で作用する引力が弱いか、ポリアミック酸組成物からポリイミド樹脂に変換されるときに揮発する水分および/または有機溶媒などにより発生することができる。
【0056】
前記第3成分は、ベンゾフェノン構造が非晶質または結晶質シリコン基板に存在する極性官能基と相互作用を通じてポリイミド樹脂の接着水準を向上させることができる。
【0057】
また、第3成分のベンゾフェノン構造は、ポリアミック酸組成物からポリイミド樹脂に変換される初期時点に水分および/または有機溶媒の揮発が容易になされるに有利であり得、これに伴い、第3成分は、変換が完了したポリイミド樹脂が非晶質または結晶質シリコン基板から浮き上がる現象を抑制するのに有利に作用することができる。
【0058】
結果的に、第3成分は、ポリイミド樹脂においてこのような表面脆弱層が形成されるのを最小化するのに有利に作用して、ポリイミド樹脂が所望の水準の接着力を有するのに関係し得る。
【0059】
ただし、上述した利点だけを考慮して第3成分を一定量以上で利用することは好ましくないが、非晶質または結晶質シリコン基板に対するポリイミド樹脂の接着力が顕著に増加して0.1N/cmを容易に超過することができるためである。
【0060】
また、第3成分の使用は、ポリイミド樹脂のガラス転移温度の低下および熱膨張係数を過度に増加させることができ、これは、例えば無機物との化学的/物理的相互作用で製造されるディスプレイ基板の製造に好ましくない
【0061】
したがって、前記第3成分の含量は、ポリイミド樹脂の接着力が0.05~0.1N/cmの範囲に属することができ、ガラス転移温度と熱膨張係数が非好適な様態で具現されない範囲で特に慎重に選択されなければならない。
【0062】
これに対する一例として、前記芳香族ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して、前記第3成分の含量は、1モル%超過~7モル%未満であり得、具体的に、第3成分の含量は、2モル%~5モル%または3モル%~5モル%でありうる。
【0063】
本発明においてベンゾフェノン構造を有する前記第3成分は、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(BTDA)でありうる。
【0064】
<その他物性>
ベンゾフェノン構造を有する第3成分は、カルボニル基を基準として一対のベンゼン環が屈曲されることができて、分子構造の観点から相対的に柔軟な単量体であり得、柔軟な単量体は、ポリアミック酸組成物に由来するポリイミド樹脂の熱膨張係数を増加するのに助けになり得る。
【0065】
しかし、非晶質または結晶質シリコンを含んで、多くの無機系物質の熱膨張係数は、9ppm/℃以下または8ppm/℃以下と小さい方に属し、無機系物質に接着され得るポリイミド樹脂が非常に大きい熱膨張係数を有することは、寸法安定性の観点から非常に好ましくないことがある。
【0066】
熱膨張係数は、一般的に、分子構造の観点から剛直な単量体を使用するときに減少することができる。分子構造の観点から剛直というのは、ジアミン基またはカルボキシル基の間の主鎖が1個のベンゼン環からなり、主鎖が屈曲されにくい分子構造を意味し得る。
【0067】
前記第2成分は、このように1個のベンゼン環を有する成分、ピロメリチックジアンヒドリド(PMDA)であり得、本発明のポリアミック酸組成物に由来するポリイミド樹脂が低い熱膨張係数を有するのに有利に作用することができる。
【0068】
ただし、このような剛直な構造を有するピロメリチックジアンヒドリドのみを第3成分と組み合わせて使用する場合、ポリイミド樹脂の熱膨張係数が6ppm/℃未満または1ppm/℃以下と過度に低くなることがあり、ポリアミック酸組成物から変換されたポリイミド樹脂がこわれやすいブリトル(brittle)特性を示すことができ、相対的に低い伸率を有することができる。
【0069】
これより、本発明では、芳香族ジアンヒドリド系単量体として、第2成分および第3成分と共に第1成分をさらに含む点に注目しなければならない。
【0070】
ビフェニル構造を有する前記第1成分は、第2成分に比べて剛直な分子構造ではないが、さらに柔軟な構造であり、第3成分に対してはさらに剛直な分子構造を有すると見ることができ、結果的に剛直性または柔軟性に対する分子構造的観点から、第1成分は、第2成分と第3成分との間にある物質でありうる。
【0071】
本発明のポリアミック酸組成物は、前記第1成分によって、20%以上の伸率を有することができ、このような伸率は、例えば、薄膜トランジスター素子構造を形成させる工程に好適に作用することができる。
【0072】
また、第1成分、第2成分および第3成分が組み合わせられることによって、本発明のポリアミック酸組成物に由来したポリイミド樹脂は、8ppm/℃以下、7.7ppm/℃以下、7.5ppm/℃以下、6~8ppm/℃または6ppm/℃~7ppm/℃の適正な熱膨張係数を有することができ、490℃以上の優れたガラス転移温度、具体的に495℃以上、500℃以上、490℃~520℃、490℃~510℃または500℃~550℃のガラス転移温度を有し、350MPa以上の引張強度、具体的に360MPa以上、370MPa以上、350~400MPaまたは360~390MPaの引張強度を有することができる。
【0073】
上述したところが具現されるためには、第1成分および第2成分が好ましい含量で組み合わせられることが特に重要であり、これより、本発明は、前記第1成分と第2成分の好ましい含量を提供する。
【0074】
これに対する一つの例として、前記芳香族ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して、第1成分の含量は、50モル%~70モル%、50モル%~65モル%、55モル%~70モル%、55モル%~65モル%、57モル%~62モル%または58モル%~60モル%でありうる。
【0075】
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体の全体モル数に対して、前記第2成分の含量は、20モル%~40モル%、20モル%~35モル%、25モル%~40モル%、25モル%~35モル%、30モル%~40モル%、32モル%~38モル%または35モル%~38モル%でありうる。
【0076】
前記第1成分の含量が前記範囲を満たすと、ポリイミド樹脂は、適正水準の伸率、熱膨張係数およびガラス転移温度を示すことができる。
【0077】
前記芳香族ジアンヒドリド系単量体は、以上説明した第1成分~第3成分の他にも他のジアンヒドリド成分を一部さらに含むこともできる。
【0078】
このようなジアンヒドリド成分は、非制限的に、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボキシリックジアンヒドリド(a-BPDA)、オキシジフタリックジアンヒドリド(ODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンヒドリド(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンヒドリド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンヒドリド、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンヒドリド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンヒドリド、p-フェニレンビス(トリメリチックモノエステル酸アンヒドリド)、p-ビフェニレンビス(トリメリチックモノエステル酸アンヒドリド)、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンヒドリド、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボキシリックジアンヒドリド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンヒドリド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンヒドリド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンヒドリド、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンジアンヒドリド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボキシリックジアンヒドリド、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンヒドリドなどを挙げることができる。
【0079】
一方、前記1個のベンゼン環を有するジアミン成分は、ジアミン基の間の主鎖が1個のベンゼン環からなり、主鎖が屈曲されにくい分子構造を有することができる。
【0080】
上記で説明したように、非晶質または結晶質シリコンを含んで、多くの無機系物質の熱膨張係数が相対的に小さい方であり、これに適用されるポリイミド樹脂は、無機系物質と類似した熱膨張係数を有することが好ましい。
【0081】
前記1個のベンゼン環を有するジアミン成分は、熱膨張係数を低下させることができる点から好ましく、他の観点から、ポリイミド樹脂のガラス転移温度の向上にも有利に作用することができる。また、相対的に低含量で使用される第2成分による熱膨張係数の上昇を前記ジアミン成分が相殺できる観点も、好ましい因子として認識され得る。
【0082】
前記1個のベンゼン環を有するジアミン成分は、1,4-ジアミノベンゼン(PPD),1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエンおよび3,5-ジアミノ安息香酸から選択される1種以上を含む成分が前記ジアミン成分として選択され得る。
【0083】
このうちでも、引張強度の向上に有利であり、前記ピロメリチックジアンヒドリドと組み合わせられて熱膨張係数を好ましい水準に誘導するのに有利に作用できる1,4-ジアミノベンゼンが、前記1個のベンゼン環を有するジアミン成分として好ましい。
【0084】
前記芳香族ジアミン系単量体は、1個のベンゼン環を有するジアミン成分をそれの全体モル数に対して50モル%超過、60モル%以上または70モル%~100モル%で含むことができる。
【0085】
前記ジアミン成分の含量が前記範囲を満たすと、ポリイミド樹脂は、適正水準の伸率、熱膨張係数およびガラス転移温度を示すことができる。
【0086】
前記芳香族ジアミン系単量体は、以上説明したジアミン成分の他にも他のジアンヒドリド成分を一部さらに含むこともできる。
【0087】
このようなジアミン成分は、非制限的に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(またはオキシジアニリン、ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(またはメチレンジアニリン、MDA)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメチルベンジジン(またはo-トリジン)、2,2’-ジメチルベンジジン(またはm-トリジン)、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(または、TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(またはTPE-Q)1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンジェン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよび2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンを例に挙げることができる。
【0088】
以上説明したように、本発明によるポリアミック酸組成物は、第3成分によりディスプレイ基板を具現するのに好ましい接着力を有し、これに加えて第1成分と第2成分が組み合わせられることによって、ポリイミドに要求される多様な特性が適正な水準でありうる。
【0089】
<添加物>
本発明によるポリアミック酸組成物は、シラン系カップリング剤およびシリコン系界面活性剤のうち少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0090】
前記シラン系カップリング剤は、それの一部がポリアミック酸組成物のアミック酸基またはアミック酸基が変換されたポリイミド樹脂のイミド基に結合され、他の一部が無機系物質、例えばシリコン系物質、例えば、非晶質または結晶質シリコン基板に存在する酸素またはケイ素と結合され得る。
【0091】
このような作用によって、前記シラン系カップリング剤は、0.05~0.1N/cmの範囲内で、ポリアミック酸組成物の硬化に由来したポリイミド樹脂の接着力を上昇させることができる。
【0092】
ただし、前記シラン系カップリング剤の過量使用は、ポリアミック酸組成物に由来したポリイミド樹脂の物性低下を誘発することができるので、きわめて制限的な含量で使用されることが好ましい。
【0093】
これに対する例として、前記シラン系カップリング剤は、ポリアミック酸組成物のポリアミック酸固形分の重量に対して0.01~0.05重量%、0.01~0.03重量%または0.018~0.022重量%で前記ポリアミック酸組成物に含まれ得る。
【0094】
本発明のポリアミック酸組成物に好適に含まれ得るシラン系カップリング剤は、非制限的に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane,APTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(Aminopropyltriethoxysilane)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル-ジメトキシメチルシラン(3-(2-aminoethylamino)propyl-dimethoxymethylsilane)、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン(3-Glycidoxypropyldimethoxymethylsilane)および2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン(2-(3,4-epoxycyclohexyl)trimethoxysilane)よりなる群から選択される1種以上を含むことができ、特に好ましくは、アミン基を含んで、ポリアミック酸組成物のアミック酸基またはアミック酸基が変換されたポリイミド樹脂のイミド基に結合されることが容易な3-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランおよび3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル-ジメトキシメチルシランよりなる群から選択される1種以上を含むことができ、最も好ましくは、ポリアミック酸組成物に由来するポリイミド樹脂の物性低下を防止するのに有利になり得る3-アミノプロピルトリメトキシシランでありうる。
【0095】
前記シリコン系界面活性剤は、例えば、ポリアミック酸組成物を無機系基板などに塗布するとき、流動性を有する前記ポリアミック酸組成物が基板上によく広がるようにして均一な厚さで製膜されるようにするのに好適に作用することができる。
【0096】
しかし、前記界面活性剤が過度な含量で含まれると、ポリアミック酸組成物の少なくとも一部が結合する現象が発生して製膜を難しくすることができ、前記ポリアミック酸組成物の硬化に由来したポリイミド樹脂の物性低下を誘発することができ、反対に、少量含まれた界面活性剤は、前述した製膜関連利点に役に立たないので好ましくない。
【0097】
これにより、好ましい界面活性剤の含量は、ポリアミック酸組成物のポリアミック酸固形分重量に対して0.001~0.02重量%であり得、0.005~0.015重量%または0.008~0.012重量%でありうる。
【0098】
前記界面活性剤の種類は、特に限定されないが、シリコン系界面活性剤が好ましい。前記シリコン系界面活性剤は、商業的に容易に入手することができ、例えば、BYK社の「BYK-378」がシリコン系界面活性剤として使用され得る。ただし、前記例示は、発明の実施を助けるためのものであり、本発明に使用され得る界面活性剤が以上の例示に限定されるものではない。
【0099】
前記ポリアミック酸組成物は、また、アセティックアンヒドリド(AA)、プロピオン酸アンヒドリド、および乳酸アンヒドリド、キノリン、イソキノリン、β-ピコリン(BP)およびピリジンから選択される少なくとも1種の硬化促進剤をさらに含むことができる。
【0100】
このような硬化促進剤は、ポリアミック酸組成物を製膜した後、ポリイミド樹脂に変換するとき、ポリアミック酸に対する脱水作用を通じて閉環反応を促進して、所望のポリイミド樹脂を収得するのに助けになり得る。
【0101】
前記硬化促進剤は、ポリアミック酸のうちアミック酸基1モルに対して0.05モル~20モルで含まれ得る。
【0102】
前記硬化促進剤が前記範囲を満たすと、脱水および/または閉環反応を促進して薄い薄膜の形態でキャストすることができ、強度に優れたポリイミド樹脂を製造することができる。
【0103】
前記ポリアミック酸組成物に由来するポリイミド樹脂の摺動性、熱伝導性、ループ硬度などのポリイミド樹脂の様々な特性を改善する目的でポリアミック酸組成物は、充填材をさらに含むことができる。
【0104】
前記充填材は、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0105】
前記充填材の平均粒径は、特に限定されるものではなく、改質しようとするポリイミド樹脂特性と添加する充填材の種類によって決定することができる。一つの例として、前記充填材の平均粒径は、0.05μm~100μm、0.1μm~75μm、0.1μm~50μmまたは0.1μm~25μmでありうる。
【0106】
平均粒径がこの範囲を満たすと、改質効果に優れ、ポリイミド樹脂の表面性およびこれの機械的特性を誘発することができる。
【0107】
また、充填材の添加量に対しても特に限定されるものではなく、改質しようとするポリイミド樹脂の特性や充填材の粒径などによって決定することができる。
【0108】
一つの例として、充填材の添加量は、ポリアミック酸組成物100重量部に対して0.01重量部~100重量部、0.01重量部~90重量部または0.02重量部~80重量部てある。
【0109】
充填材の添加量がこの範囲を満たすと、充填材による改質効果に優れ、ポリイミド樹脂の機械的特性が向上することができる。充填材の添加方法は、特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法を利用できることはもちろんてある。
【0110】
<ポリアミック酸組成物の製造方法>
前記ポリアミック酸組成物を成すポリアミック酸を製造する方法は、例えば、
(1)ジアミン系単量体全量を有機溶媒中に入れ、その後、ジアンヒドリド系単量体をジアミン系単量体と実質的に等モルになるように添加して重合する方法;
(2)ジアンヒドリド系単量体全量を有機溶媒中に入れ、その後、ジアミン系単量体をジアンヒドリド系単量体と実質的に等モルになるように添加して重合する方法;
(3)ジアミン系単量体のうち一部の成分を有機溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアンヒドリド系単量体のうち一部の成分を約95モル%~105モル%の割合で混合した後、残りのジアミン系単量体成分を添加し、これに連続して残りのジアンヒドリド系単量体成分を添加して、ジアミン系単量体およびジアンヒドリド系単量体が実質的に等モルになるようにして重合する方法;
(4)ジアンヒドリド系単量体を有機溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアミン化合物のうち一部の成分を95モル%~105モルの割合で混合した後、他のジアンヒドリド系単量体成分を添加し、連続して残りのジアミン系単量体成分を添加して、ジアミン系単量体およびジアンヒドリド系単量体が実質的に等モルになるようにして重合する方法;および
(5)有機溶媒中で一部のジアミン系単量体成分と一部のジアンヒドリド系単量体成分をいずれか一つが過量になるように反応させて、第1重合物を形成し、また、他の有機溶媒中で一部のジアミン系単量体成分と一部のジアンヒドリド系単量体成分をいずれか一つが過量になるように反応させて第2重合物を形成した後、第1、第2重合物を混合し、重合を完結する方法であり、この際、第1重合物を形成するとき、ジアミン系単量体成分が過剰の場合、第2重合物ではジアンヒドリド系単量体成分を過量とし、第1重合物においてジアンヒドリド系単量体成分が過剰の場合、第2重合物ではジアミン系単量体成分を過量として、第1、第2重合物を混合して、これらの反応に使用される全体ジアミン系単量体成分とジアンヒドリド系単量体成分が実質的に等モルになるようにして重合する方法などが挙げられる。
【0111】
ただし、前記方法は、本発明の実施を助けるための例示であって、本発明の範疇がこれらに限定されるものではなく、公知のいかなる方法を使用することができることはもちろんてある。
【0112】
前記有機溶媒は、ポリアミック酸が溶解することができる溶媒であれば、特に限定されないが、一つの例として、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)でありうる。
【0113】
前記非プロトン性極性溶媒の非制限的な例として、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)およびジグリム(Diglyme)等が挙げられ、これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用され得る。
【0114】
場合によっては、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を使用して、ポリアミック酸の溶解度を調節することもできる。
【0115】
一つの例として、本発明のポリアミック酸組成物の製造に特に好適に使用され得る有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン、N,N’-ジメチルホルムアミドおよびN,N’-ジメチルアセトアミドでありうる。
【0116】
このように製造されたポリアミック酸組成物は、23℃で測定した粘度が3,000cP~7,000cP、3,500cP~6,500cPまたは4,000cP~5,500cPでありうる。前記粘度は、23℃の温度および0.5rpmの回転速度の条件でRV-7番スピンドルでブルックフィールド粘度計で測定した粘度でありうる。本出願において前記ポリアミック酸組成物は、固形分の含量が5~30%、10~25%または12~20%の範囲内でありうる。ポリアミック酸組成物の粘度が前記範囲を満たす場合、ポリアミック酸組成物の流動性を向上させて塗布工程を円滑にし、ポリイミド樹脂の接着力を向上させることができる。
【0117】
ポリアミック酸組成物を利用したディスプレイ基板の製造方法
本発明は、前述した実施様態のポリアミック酸組成物を利用してディスプレイ基板を製造する方法を提供する。
【0118】
具体的に前記方法は、非晶質または結晶質シリコン基板上に前記ポリアミック酸組成物を塗布する段階を含むことができる。
【0119】
また、本出願の製造方法は、前記ポリアミック酸組成物を20℃~40℃で第1熱処理する段階;
前記ポリアミック酸組成物を40℃~200℃で第2熱処理する段階;および
前記ポリアミック酸組成物を200℃~500℃で第3熱処理する段階を含むことができる。
【0120】
前記第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理段階を通じて、前記ポリアミック酸組成物は、ポリアミック酸のアミック酸基が閉環、脱水反応したイミド基を含むポリイミド樹脂を生成し、有機溶媒が揮発して硬化し、前記第3熱処理が完了すると、前記ポリイミド樹脂が前記非晶質または結晶質シリコン基板上で硬化して接着され得る。
【0121】
一つの具体的な例において、前記非晶質または結晶質シリコン基板上に前記ポリアミック酸組成物を塗布する段階は、前記ポリアミック酸組成物が硬化した後に生成されるポリイミド樹脂の厚さが0.5μm~20μm、2μm~18μmまたは2~5μmになるように前記ポリアミック酸組成物を塗布することができる。
【0122】
一つの具体的な例において、前記第1熱処理、第2熱処理および第3熱処理段階は、それぞれ独立して、3℃/min~7℃/minの範囲で選択される2つ以上の可変的な昇温速度、または前記範囲で選択される一つの不変的な昇温速度で行われ得る。
【0123】
本発明による製造方法は、
前記ポリイミド樹脂上に薄膜トランジスター(TFT)を形成させる段階および
前記非晶質または結晶質シリコン基板にレーザーを所定の時間の間照射して、前記ポリイミド樹脂から前記非晶質または結晶質シリコン基板を除去する段階をさらに含むことができ、
前記レーザー照射後に測定されたポリイミド樹脂と非晶質または結晶質シリコン基板の間の接着力が0.01N/cm以下でありうる。
【0124】
前記レーザー照射後の接着力は、非常にわずかな水準であって、非晶質または結晶質シリコン基板と接着状態が実質的に維持され得ない水準であり得、これに伴い、例えば、薄膜トランジスター素子構造を形成させる工程後に前記ポリアミック酸組成物由来のポリイミド樹脂が非晶質または結晶質シリコン基板から容易に剥離され得、その形態も完全に維持され得る。
【0125】
前記非晶質または結晶質シリコン基板を除去する段階で、レーザーは、LLO(laser lift off、レーザー剥離)法により行われ得る。
【0126】
前記レーザーのエネルギー密度(E/D)が180mJ/cm2以下であり得、好ましくは、150mJ/cm2以下でありうる。
【発明の効果】
【0127】
以上説明したように、本発明によるポリアミック酸組成物は、ベンゾフェノン構造を有する第3成分により、非晶質または結晶質シリコン基板に最も好ましい接着力を発現することができる。
【0128】
本発明によるポリアミック酸組成物は、また、特定成分を含むジアンヒドリド系単量体とジアミン系単量体の組合せにより、例えばディスプレイ基板の製造に要求される多様な物性が適正な水準で内在したポリイミド樹脂を具現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0129】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をさらに詳述することとする。ただし、このような実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるものではない。
【0130】
<実施例1>
NMPが満たされた40℃の反応器に芳香族ジアンヒドリド系単量体としてBPDA(第1成分)、PMDA(第2成分)、BTDA(第3成分)および芳香族ジアミン系単量体としてPPDを下記表1に示したモル比で添加し、約30分間撹拌して、ポリアミック酸を重合した。
【0131】
これに、下記の物質を添加し、約2時間の間熟成工程を進めて、最終ポリアミック酸組成物を製造した。この際、ポリアミック酸組成物の粘度は、約5,100cPであった。
・シラン系カップリング剤:3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.02重量%(ポリアミック酸固形分の重量を基準)
・シリコン系界面活性剤:BYK社の「BYK-378」0.01重量%(ポリアミック酸固形分の重量を基準)
・添加剤:イソキノリン10重量%(ポリアミック酸固形分の重量を基準)
【0132】
<実施例2>
BPDA(第1成分)、PMDA(第2成分)およびBTDA(第3成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で粘度が約5,000cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0133】
<実施例3>
BPDA(第1成分)、PMDA(第2成分)およびBTDA(第3成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で粘度が約5,100cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0134】
<実施例4>
BPDA(第1成分)、PMDA(第2成分)およびBTDA(第3成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で粘度が約4,800cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0135】
<比較例1>
芳香族ジアンヒドリド系単量体の成分としてBTDA(第3成分)を除外し、BPDA(第1成分)およびPMDA(第2成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で粘度が約4,800cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0136】
<比較例2>
芳香族ジアンヒドリド系単量体の成分としてBTDA(第3成分)を除外し、BPDA(第1成分)およびPMDA(第2成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で粘度が約5,300cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0137】
<比較例3>
芳香族ジアンヒドリド系単量体の成分としてBTDA(第3成分)を除外し、BPDA(第1成分)およびPMDA(第2成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で粘度が約4,750cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0138】
<比較例4>
芳香族ジアンヒドリド系単量体の成分でBTDA(第3成分)を除外し、BPDA(第1成分)およびPMDA(第2成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で粘度が約4,950cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0139】
<比較例5>
BPDA(第1成分)、PMDA(第2成分)およびBTDA(第3成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で粘度が約5,100cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0140】
<比較例6>
BPDA(第1成分)、PMDA(第2成分)およびBTDA(第3成分)のモル比を下記表1に示したモル比に変更して添加したことを除いて、実施例1と同じ方法で約5,100cPのポリアミック酸組成物を製造した。
【0141】
【0142】
<実験例1:ポリイミド樹脂の接着力テスト>
実施例1~4および比較例1~6で製造されたポリアミック酸組成物を横1cm*縦10cmの非晶質シリコン基板に30μmでキャストし、20℃~460℃の温度範囲で乾燥させて、平均厚さが約15~17μmの薄膜形態のポリイミド樹脂および非晶質シリコン基板が接着された積層体を製造した。
【0143】
このように製造された積層体に対して下記方法を利用してポリイミド樹脂の第1接着力(レーザー処理前)、カール(curl)テストおよび第2接着力(レーザー処理後)を評価した。
・第1接着力:ポリイミド樹脂の端部に幅1cmのテープを付着し、このテープを利用して基板からポリイミド樹脂を剥離しながら、これに要求された力を測定する。
・カールテスト:製造された積層体を約400℃の温度下に約1時間の間熱処理した後、非晶質シリコン基板上でポリイミド樹脂のエッジ部位にカールが発生するかを確認した。
・第2接着力:非晶質シリコン基板に波長308nmのレーザーを150mJ/cm2で照射した後、ポリイミド樹脂の端部に幅1cmのテープを付着し、このテープを利用して基板からポリイミド樹脂を剥離しながら、これに要求された力を測定する。
・前記接着力は、ASTM D 3359によって、20mm/minの剥離速度および180°の剥離角度で剥離しながら測定した。
【0144】
【0145】
<実験例2:ポリイミド樹脂の物性テスト>
実施例1~5および比較例1~6で製造されたポリアミック酸組成物をステンレス系支持体に薄膜の形態で塗布後、20℃~350℃の温度範囲で熱処理し、次いで、支持体から剥離して、平均厚さがそれぞれ約15~17μmのフィルム形態のポリイミド樹脂を製造した。
【0146】
このように製造されたポリイミド樹脂に対して下記のような方法で物性をテストし、その結果を下記表3に示した。
(1)熱膨張係数(CTE)
熱膨張係数は、TMAを利用して100~350℃の範囲で測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、TMAを利用して各ポリイミド樹脂の損失弾性率と貯蔵弾性率を求め、これらのタンジェントグラフで変曲点をガラス転移温度として測定した。
(3)熱分解温度(Td)
熱重量分析装置(TG-DTA2000)を利用して、窒素中で昇温速度10℃/分で昇温しつつ、ポリイミド樹脂の初期重量が1%減少したときの温度を測定した。
(4)引張強度
引張強度は、KS6518に提示された方法によって測定した。
(5)伸率
伸率は、ASTM D1708に提示された方法によって測定した。
(6)透過率
HunterLab社のColorQuesetXEモデルを利用して可視光領域でASTM D1003に提示された方法によって波長550nmの透過率を測定した。
【0147】
【0148】
実験例1の結果から、実施例は、非晶質シリコン基板に対して適正水準の接着力、すなわち、0.05~0.1N/cmに属する第1接着力を発現した。前記範囲に属する第1接着力の利点は、カール発生の有無を通じて間接的に確認することができる。表2によれば、実施例は、400℃の高温で所定の時間の間熱処理しても、カールが全く発生しなかった。
【0149】
もし接着力が低い場合、400℃の高温でポリイミド樹脂と非晶質シリコン基板の接着状態が解除されて、ポリイミド樹脂の端部が内側に巻かれるカールが発生することができる。実際に比較例の大部分は、実施例に比べて低い第1接着力を示し、全部カールが発生した。
【0150】
このような結果は、高温で行われるTFT工程に少なくとも0.05N/cmの接着力が要求されることを示唆し、本発明による実施例は、TFT工程に好ましい接着力を発現することが分かる。他の観点において、実施例は、非晶質シリコン基板の除去のためにレーザーで処理した後に、きわめてわずかな接着力(第2接着力)を示し、これから前記第1接着力が満たされると、ポリイミド樹脂から非晶質シリコン基板が良好に剥離され得ることを予想することができる。
【0151】
一方、比較例1~5は、第1接着力が0.05~0.1N/cmの範囲から外れたことを確認することができる。このように低い第1接着力によつて、当該比較例は、高温でカールが発生し、高温の工程が要求されるディスプレイ基板の製造に適していないことを予想することができる。
【0152】
比較例6は、第1接着力が過度な場合であって、特にレーザー処理後の第2接着力も、相当に高い水準であることを確認でき、これは、実施例とは異なって、レーザー照射後にポリイミド樹脂から非晶質シリコン基板が良好に剥離されにくいことを示唆する。
【0153】
実験例2の結果は、本発明によって具現されたポリイミド樹脂がディスプレイ基板の製造に要求される多様な特性を全部満たすことを示しており、実験例1の結果と連係するとき、実施例が全部前記特性と共に好ましい水準の接着力を発現する。
【0154】
反対に、比較例は、不良な接着力と共に、少なくとも一つの特性が満たされないところ、ディスプレイ基板として活用されるのに無理があることが分かる。
【0155】
したがって、表3の結果からポリアミック酸組成物の具現に本発明の単量体の組合せと組合比が有効であることが分かる。
【0156】
以上、本発明の実施例を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を有する者なら、上記の内容に基づく本発明の範疇内で多様な応用および変形を行うことが可能だろう。
【国際調査報告】