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特表2022-515466標的化された相補的DNA富化のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】標的化された相補的DNA富化のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220210BHJP
   C12Q 1/6848 20180101ALI20220210BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220210BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
C12Q1/6848 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537205
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2019001398
(87)【国際公開番号】W WO2020136440
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】62/785,916
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(71)【出願人】
【識別番号】508305029
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】スコルニック,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】インティン,ワン
(72)【発明者】
【氏名】フーン,ショーン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS02
4B063QS25
4B063QS34
(57)【要約】
種々の態様において、本発明は一般的に、標的相補的DNA(cDNA)を富化するための方法を提供する。該方法は、低レベルで発現され得るプール中のcDNAを富化するために有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の異なるcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む第1のユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマー、ここで少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーは、標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端に少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を含む、
を含む第1の反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)標的cDNAを増幅して、アンプリコンを得る工程;
(e) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む第2のユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、ここでユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマーは、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む、
を含む第2の反応混合物を提供し;それにより標的cDNAを富化する工程;
(f)アンプリコンと第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(g)アンプリコンを増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、標的相補的DNA(cDNA)を富化する方法。
【請求項2】
複数のcDNA中のそれぞれのcDNAが、細胞識別タグもしくは固有分子識別子(UMI)配列またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せが、ポリ(T)配列をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第1のユニバーサル配列がそれぞれのcDNA分子の5'末端にある、請求項1~3いずれか記載の方法。
【請求項5】
第1のユニバーサル配列がそれぞれのcDNA分子の3'末端にある、請求項1~3いずれか記載の方法。
【請求項6】
複数のcDNAが、単一細胞由来のmRNAを逆転写することにより得られる、請求項1~5いずれか記載の方法。
【請求項7】
(d)の標的cDNAを増幅する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む、請求項1~6いずれか記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーが、RNA塩基によりプライマーから離されるブロッキングドメインをさらに含む、請求項1~6いずれか記載の方法。
【請求項9】
(d)の標的cDNAを増幅する工程が、RNase H依存型ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せが、標的cDNAが増幅される後に保存される、請求項2~9いずれか記載の方法。
【請求項11】
ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーまたはそれらの組合せを使用して、標的cDNAの1つ以上の部分を配列決定することをさらに含む、請求項1~10いずれか記載の方法。
【請求項12】
(a)複数のcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)標的cDNA中の配列に相補的な配列を含む遺伝子特異的リバースプライマー
を含む第1の反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)標的cDNAを増幅して、第1のアンプリコンを得る工程;
(e)少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を、第1のアンプリコン中のそれぞれの標的cDNAの末端に付加して、コンジュゲートしたアンプリコンを得る工程;
(f) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、
2)少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー
を含む第2の反応混合物を提供する工程;
(g)コンジュゲートしたアンプリコンと第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(h)コンジュゲートしたアンプリコンを増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、標的相補的DNA(cDNA)を富化する方法。
【請求項13】
複数のcDNA中のそれぞれのcDNAが、細胞識別タグもしくは固有分子識別子(UMI)配列またはそれらの組合せをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せが、ポリ(T)配列をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
第1のユニバーサル配列が、それぞれのcDNA分子の5'末端にある、請求項12~14いずれか記載の方法。
【請求項16】
第1のユニバーサル配列が、それぞれのcDNA分子の3'末端にある、請求項12~14いずれか記載の方法。
【請求項17】
複数のcDNAが、単一細胞由来のmRNAを逆転写することにより得られる、請求項12~16いずれか記載の方法。
【請求項18】
増幅する工程の少なくとも1つが、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む、請求項12~17いずれか記載の方法。
【請求項19】
遺伝子特異的リバースプライマーが、RNA塩基によりプライマーから離されるブロッキングドメインをさらに含む、請求項12~17いずれか記載の方法。
【請求項20】
増幅する工程の少なくとも1つがRNase H依存型ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの第2のユニバーサル配列が、第1のユニバーサル配列の反対にある第1のアンプリコンの末端にライゲーションされる、請求項12記載の方法。
【請求項22】
ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマーの1つの末端がブロッキング基を有し、それにより1つの末端でユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマーのリン酸化を防ぐ、請求項12記載の方法。
【請求項23】
ブロッキング基が逆dTTPである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ブロッキング基が、ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマーの5'末端にある、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの第2のユニバーサル配列が、トランスポゾンを使用して付加される、請求項12記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの第2のユニバーサル配列が、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を第1のアンプリコン中のそれぞれの標的cDNAの末端にライゲーションすること、プライマー伸長反応、もしくは核酸増幅反応、またはそれらの組合せにより付加される、請求項12記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの第2のユニバーサル配列が、第1のアンプリコン中の核酸分子を断片化して、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を該断片にライゲーションすること、プライマー伸長反応、もしくは核酸増幅反応、またはそれらの組合せにより付加される、請求項12記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの第2のユニバーサル配列が、少なくとも1つの第1のユニバーサル配列の反対にある末端で付加される、請求項12記載の方法。
【請求項29】
細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せが、標的cDNAのコンジュゲートしたアンプリコンを増幅した後に保存される、請求項12~28いずれか記載の方法。
【請求項30】
ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、遺伝子特異的リバースプライマー、遺伝子特異的フォワードプライマーまたはそれらの組合せを使用して、標的cDNAの1つ以上の部分を配列決定することをさらに含む、請求項12~29いずれか記載の方法。
【請求項31】
(a)複数のcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは、末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは、富化される標的cDNAを含む;
(b)標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含む少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーを含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端に少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を含む第1の反応混合物を提供する工程;
(c)少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーが標的cDNAにハイブリダイズするように複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーを伸長して、少なくとも1つの伸長産物を得る工程;
(e) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー;および
2)少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー
を含む第2の反応混合物を提供する工程;
(f)少なくとも1つの伸長産物と第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(g)少なくとも1つの伸長産物を増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、標的相補的DNA(cDNA)を富化する方法。
【請求項32】
複数のcDNA中のそれぞれのcDNAが、細胞識別タグもしくは固有分子識別子(UMI)配列またはそれらの組合せをさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せが、ポリ(T)配列をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
第1のユニバーサル配列が、それぞれのcDNA分子の5'末端にある、請求項31~33いずれか記載の方法。
【請求項35】
第1のユニバーサル配列が、それぞれのcDNA分子の3'末端にある、請求項31~33いずれか記載の方法。
【請求項36】
複数のcDNAが、単一細胞由来のmRNAを逆転写することにより得られる、請求項31~35いずれか記載の方法。
【請求項37】
(g)の少なくとも1つの伸長産物を増幅する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む、請求項31~36いずれか記載の方法。
【請求項38】
細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せが、少なくとも1つの伸長産物が増幅される後に保存される、請求項31~37いずれか記載の方法。
【請求項39】
ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、遺伝子特異的プライマーまたはそれらの組合せを使用して、標的cDNAの1つ以上の部分を配列決定することをさらに含む、請求項31~38いずれか記載の方法。
【請求項40】
第1の反応混合物が、フラップエンドヌクレアーゼ活性が欠損しているポリメラーゼを含む、請求項31~39いずれか記載の方法。
【請求項41】
富化された標的cDNAを配列決定する工程をさらに含む、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項42】
(a)複数の異なるcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、
2)少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマー、ここで少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーは、標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端に少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を含む、および
3)ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、ここでユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマーは、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む、
を含む反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと反応混合物を接触させる工程;ならびに
(d)標的cDNAを増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、標的相補的DNA(cDNA)を富化する方法。
【請求項43】
複数のcDNA中のそれぞれのcDNAが、細胞識別タグもしくは固有分子識別子(UMI)配列またはそれらの組合せをさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せがポリ(T)配列をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
第1のユニバーサル配列が、それぞれのcDNA分子の5'末端にある、請求項42~44いずれか記載の方法。
【請求項46】
第1のユニバーサル配列が、それぞれのcDNA分子の3'末端にある、請求項42~44いずれか記載の方法。
【請求項47】
複数のcDNAが、単一細胞由来のmRNAを逆転写することにより得られる、請求項42~46いずれか記載の方法。
【請求項48】
(d)の標的cDNAを増幅する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む、請求項42~47いずれか記載の方法。
【請求項49】
少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーが、RNA塩基によりプライマーから離されるブロッキングドメインをさらに含む、請求項42~47いずれか記載の方法。
【請求項50】
(d)の標的cDNAを増幅する工程が、RNase H依存型ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せが、標的cDNAが増幅される後に保存される、請求項43~50いずれか記載の方法。
【請求項52】
ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーまたはそれらの組合せを使用して、標的cDNAの1つ以上の部分を配列決定する工程をさらに含む、請求項42~51いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年12月28日に出願された米国仮出願第62/785,916号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
試料を特定のヌクレオチドまたはタンパク質に対して富化する能力は、分子生物学研究および医学的用途の両方に重要である。特に、特定の遺伝子から配列情報またはタグ計数(tag count)を得るための単一細胞RNA配列決定において特定の必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
本発明は、標的相補的DNA(cDNA)を富化するための方法を提供する。
【0004】
種々の局面において、本発明は、
(a)複数のcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは、末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b)標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含む少なくとも1つの遺伝子特異的プライマー(例えば少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマー)を含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端で少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を含む第1の反応混合物を提供する工程;
(c)少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーが標的cDNAとハイブリダイズするように、複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーを伸長して、少なくとも1つの伸長産物を得る工程;
(e) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー;および
2)少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー
を含む第2の反応混合物を提供する工程;
(f)少なくとも1つの伸長産物と第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(g)少なくとも1つの伸長産物を増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、標的cDNAを富化する方法を提供する。
【0005】
さらなる局面において、本発明は、標的相補的DNA(cDNA)を富化する方法を提供する。該方法は一般的に:
(a)複数の異なるcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマー、ここで少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーは、標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端に少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を含む、
を含む第1の反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)標的cDNAを増幅して、アンプリコン(amplicon)を得る工程;
(e) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、ここでユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマーは、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む、
を含む第2の反応混合物を提供し;それにより標的cDNAを富化する工程;
(f)アンプリコンと第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(g)アンプリコンを増幅し、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む。
【0006】
さらなる局面において、標的cDNAを富化する方法は一般的に:
(a)複数の異なるcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、
2)少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマー、ここで少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーは、標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端に少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を含む、および
3)ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、ここでユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマーは、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む、
を含む反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと反応混合物を接触させる工程;ならびに
(d)標的cDNAを増幅し、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む。
【0007】
他の局面において、本発明は:
(a)複数のcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む第1のユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)標的cDNA中の配列に相補的な配列を含む遺伝子特異的リバースプライマー
を含む第1の反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)標的cDNAを増幅して、第1のアンプリコンを得る工程;
(e)少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を、第1のアンプリコン中のそれぞれの標的cDNAの末端に付加して、コンジュゲートしたアンプリコンを得る工程;
(f) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む第2のユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー
を含む第2の反応混合物を提供する工程;
(g)コンジュゲートしたアンプリコンと第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(h)コンジュゲートしたアンプリコンを増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、標的cDNAを富化する方法を提供する。
【0008】
本発明の種々の局面の特定の態様において、複数のcDNA中のそれぞれのcDNAは、細胞識別タグもしくは固有分子識別子(unique molecular identifier)(UMI)配列またはそれらの組合せをさらに含む。いくつかの態様において、複数のcDNAは、単一細胞由来のmRNAを逆転写することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
ここで本発明は、以下の図面を参照して詳細に説明される。
図1図1は、3'タグ付加されたcDNAライブラリーを作製するための例示的な方法における一般的な工程を図示する。この例において、3'タグは、ユニバーサル配列、細胞識別タグ(細胞ID)および固有分子識別子(UMI)配列を含む。5'タグ付加cDNAライブラリーを作製するために同じプロセスを使用し得る。示されるように、オリゴがビーズに付加され得る。
図2図2は、タグ付加されたcDNAライブラリーおよびプライマーの末端にユニバーサル配列を有する遺伝子特異的プライマーを使用して標的cDNAを富化するための本発明の例示的な方法を図示する。その後、配列決定を準備するために第1のユニバーサル配列および第2のユニバーサル配列を用いて別のPCRを行い得る(例えば2つのユニバーサルプライマーを使用したライブラリー増幅)。
図3図3は、タグ付加されたcDNAライブラリー、ユニバーサル配列を欠く遺伝子特異的プライマーおよびライゲーションされたユニバーサル配列を使用して、標的cDNAを富化するための本発明の例示的な方法を図示する。その後、アンプリコンを配列決定特異的配列(例えばIllumina(登録商標)P7配列)にライゲーションし得る。配列決定特異的配列の付加の後、ユニバーサルプライマーを使用してDNAをPCR増幅して、ライゲーションされるかまたはタグメンテーションされる(tagmented)DNAを富化し得る。
図4図4は、ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマーの1つの末端がブロッキング基を有し、それにより1つの末端でのユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマーのリン酸化を防ぐ、本発明の例示的な方法を図示する。T/Aライゲーションは任意であるが、ライゲーション効率を向上し得る。ライゲーションについて、ライゲーションのために1つのみの鎖が必要であり、この筋書きにおいて、ライゲーションアダプターの上の鎖はライゲーションのための5'リン酸塩を有さないので、下の鎖のみがライゲーションする。
図5図5は、図3または図4に示される富化の方法後に使用され得る本発明の例示的な配列決定方法を図示する。
図6図6は、3'タグ付加されたcDNAライブラリーを使用する本発明の例示的な方法を図示する。cDNAの1つの鎖のみが示されるが、cDNAは、標的化のための遺伝子特異的プライマー(GSP)(示さず)を使用する前に、2つのユニバーサルプライマーによりPCR増幅され得る。そのため、それは、遺伝子特異的アッセイが実行される(示さず)点で二本鎖である。代替的に、2つのユニバーサルプライマーを用いた増幅の前に、同じアッセイを走らせ得る。
図7図7は、1つのcDNAに沿った多数の領域を標的化するための本発明の例示的な方法を図示する。
図8図8は、TCRα(TCRA)(レーン2)およびTCRβ(TCRB)(レーン3)プライマーを使用した1.2% アガロースEtBrゲルでのPCR結果を示す。レーン1は1kb MWマーカーを示す。
図9図9は、アガロースEtBrゲルでのTCRα(TCRA)およびTCRβ(TCRB) RNAの増幅のPCR結果を示す。レーン1は1kb MWマーカーを示し;レーン2はTCRαライゲーション反応を示し;レーン3はTCRβライゲーション反応を示し;レーン4はTCRα PCR産物を示し;レーン5はTCRβ PCR産物を示し;レーン6は鋳型を使用しない対照PCR産物を示す。
図10図10は、個々の(プールされない)TCRαおよびTCRβプライマーを使用して得られたPCR産物を示す染色されたアガロースゲルである。
図11図11は、プールされたTCRα(TCRa)プライマーおよびTCRβ(TCRb)プライマーのそれぞれを使用して得られたPCR産物を示す染色されたアガロースゲルである。右列は1kbプラスラダー(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
例示態様の説明を以下にする。
【0011】
そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明の属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0012】
本明細書を通じて、用語「含む(comprising)」は、本発明の態様が、注目される特徴を「含み(comprise)」およびそれ自体他の特徴も含み(include)得ることを示すように使用されることが注意されるべきである。しかしながら、本発明の文脈において、用語「含む(comprising)」は、本発明が関連のある特徴「から本質的になる」または関連のある特徴「からなる」態様も包含し得る。
【0013】
用語「ヌクレオチド」は、天然に存在するリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドモノマー、ならびにそれらの天然には存在しない誘導体およびアナログをいう。したがって、ヌクレオチドは、例えば天然に存在する塩基(例えばA、G、CまたはT)を含むヌクレオチドおよび改変された塩基(例えば7-デアザグアノシンまたはイノシン)を含むヌクレオチドを含み得る。
【0014】
核酸を参照すると、用語「配列」は、共有結合(例えばホスホジエステル結合)により連結されるヌクレオチドの連続のシリーズをいう。
【0015】
本発明は、例えば配列決定ライブラリー由来のcDNAのプール内の1つ以上の標的相補的DNA(cDNA)を富化するための方法を提供する。
【0016】
本明細書で使用する場合、「相補的DNA」または「cDNA」は、リバーストランスクリプターゼ酵素により触媒作用を及ぼされる反応において、一本鎖RNA(例えばメッセンジャーRNA (mRNA)またはmicroRNA)鋳型から合成される核酸分子をいう。
【0017】
本明細書に記載される方法は、複数細胞(複数の細胞)または単一細胞に適用され得る。一態様において、該方法は、単一細胞配列決定ライブラリー由来のcDNAのプール内の特定のcDNAに適用される。いくつかの態様において、cDNAまたは「複数のcDNA」は、単一細胞由来のmRNAを逆転写することにより得られる。他の態様において、cDNAは、複数細胞(プールされた細胞)由来のmRNAを逆転写することにより得られる。いくつかの態様において、1つ以上の標的cDNAの逆転写は、cDNAライブラリー作製プロセスの一部である。cDNAライブラリーは、一般的なcDNAライブラリー(例えば一細胞由来の全mRNAについてのcDNAライブラリー)または標的化されたcDNAライブラリーであり得る。
【0018】
本発明の方法に有用なcDNAライブラリーを作製する方法の例を図1に図示する。図1に図示される方法は、3'タグ付加されたcDNAライブラリーの作製を示し、ここで3'タグは、第1のユニバーサル配列(またはPCRハンドル)、細胞識別タグ(または細胞ID)およびUMI(または固有分子識別子)を含む。本発明の方法は、ライブラリーのcDNAの5'末端上にユニバーサル配列(またはPCRハンドル)、細胞識別タグ(または細胞ID)およびUMI(または固有分子識別子)を有する5'タグ付加されたcDNAライブラリーにも適用され得る。示されるように、逆転写オリゴは、ビーズに結合され得、細胞または細胞のプール由来のmRNAおよび逆転写を引き起こすために必要なポリメラーゼと接触され得る。得られたcDNAは、逆転写オリゴにより提供される第1のユニバーサル配列、細胞IDおよびUMIを含む。
【0019】
本明細書で使用する場合、「細胞識別タグ」は、伸長産物(例えばアンプリコン)に組み込まれ得、伸長産物(1つまたは複数)が作製された特定の細胞(例えば単一細胞)または細胞型を同定するための配列決定用途に使用され得るヌクレオチドの配列をいう。細胞識別タグは、伸長産物(例えばRT産物、アンプリコン)への導入のためのプライマー(例えばオリゴ(dT)プライマーまたは増幅プライマーなどの伸長プライマー)に含まれ得る。細胞識別タグは、適切な核酸ポリメラーゼ、例えばリバーストランスクリプターゼ酵素またはDNAポリメラーゼ酵素により伸長産物に組み込まれ得る。
【0020】
「ランダム分子タグ(Random Molecular Tag)(RMT)」とも称される「固有分子識別子」または「UMI」は、(例えば増幅の前に)核酸分子にタグ付加し、複製物の識別を補助するために使用されるヌクレオチドの配列である。UMIは一般的に、ランダムな配列であり、典型的に約4~約20ヌクレオチド長のサイズの範囲にある。UMIの例は当該技術分野で公知である。
【0021】
いくつかの態様において、試料(例えば単一細胞)中の標的および非標的核酸分子(すなわちmRNA)の両方は、逆転写され、それにより標的cDNA産物および非標的cDNA産物を生じる。
【0022】
用語「細胞」は、哺乳動物細胞、植物細胞、細菌細胞および真菌類細胞を含む。
【0023】
本明細書に記載される方法は、標準的な実験室設備、例えばプレート上またはアレイ中のウェル(例えばマイクロウェルまたはナノウェル)を使用して実施され得る。ウェルはさらに、ビーズに固定され得るオリゴヌクレオチド(例えばプライマー)を含み得る。
【0024】
本明細書に記載される方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅技術を使用する。いくつかの態様において、記載される方法は、RNase H依存型PCR(rhPCR)を使用する。rhPCRにおいて、PCRオリゴヌクレオチドプライマーの3'末端は、単一のRNA塩基によりプライマーから離されるブロッキングドメインを含む。プライマーがその標的にハイブリダイズする場合、RNAse Hは、RNA塩基を切断し得、ブロッキングドメインを放出し、プライマーから重合を開始させる。この活性は、例えばそれぞれがあり得るα鎖およびβ鎖の全てを増幅する約30個のプライマーを必要とするT細胞受容体(TCR)反応などの大きな多重化されたPCR反応において重要であるプライマー二量体形成を低減する。
【0025】
第1の局面において、本発明は、図2に図示されるように標的cDNAを富化する方法を提供する。該方法は一般的に:
(a)複数の異なるcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む第1のユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマー、ここで少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーは、標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端で少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を含む、
を含む、第1の反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)標的cDNAを増幅させて、アンプリコンを得る工程;
(e) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む第2のユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、ここでユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマーは、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む、
を含む第2の反応混合物を提供し;それにより標的cDNAを富化する工程;
(f)アンプリコンと第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(g)アンプリコンを増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む。
【0026】
「標的相補的DNA」または「標的cDNA」は、本明細書で使用する場合、記載される方法により富化されているcDNAのプール内の特定のcDNAをいう。標的cDNAは、低レベルで発現され得、より大きなプール内の標的cDNAを解析する(例えば配列決定する)ためにコピー数を人工的に増加する(すなわち富化する)ことが有利であり得る。
【0027】
上記の発明の第1の局面において、第1のユニバーサルプライマーおよび第2のユニバーサルプライマーは、いくつかの態様において、同じプライマーであり得るか、または他の態様において、異なるプライマーであり得るが、ただし異なるプライマーのそれぞれは、第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む。
【0028】
本発明のこの第1の局面は、全cDNA増幅工程の前または後に、cDNAの一部が除去され得、標的cDNAを富化するための標的化されたPCR反応のためのインプットとして特異的に使用され得るシナリオを可能にする。
【0029】
第2の局面において、本発明は:
(a)複数の異なるcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、
2)少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマー、ここで少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーは、標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端に少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を含む、および
3)ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、ここでユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマーは、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含む、
を含む反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと反応混合物を接触させる工程;ならびに
(d)標的cDNAを増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、標的cDNAを富化する方法を提供する。
【0030】
第2の局面において、遺伝子特異的リバースプライマーおよびユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマーは、増幅が一工程になるように同じ反応混合物中で提供される。1つのシナリオにおいて、遺伝子特異的プライマーは、全cDNA増幅PCR工程に添加されるので、全てのcDNAが増幅され、いくつかは特異的に増幅されて、それらがアッセイから抜け落ちないことを確実にする。
【0031】
いくつかの態様において、複数のcDNA中のそれぞれのcDNAはさらに、細胞識別タグもしくは固有分子識別子(UMI)配列またはそれらの組合せを含む。細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せはさらに、ポリ(T)配列を含み得る。いくつかの態様において、細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せは、標的cDNAが増幅された後に保存される。
【0032】
種々の態様において、第1のユニバーサル配列はそれぞれのcDNA分子の5'末端にあり、他の態様において、第1のユニバーサル配列はそれぞれのcDNA分子の3'末端にある(図6)。例えば、同じ方法は、例えば10Xゲノミクス5' VdJアッセイを使用して、裏返された(flipped)最初の鎖を用いて実施され得、ここで細胞識別タグは、cDNAの5'末端ではなくcDNAの成長している3'末端に付加される。
【0033】
いくつかの態様において、本発明の前述の局面の工程(d)における標的cDNAを増幅することは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅することを含む。他の態様において、本発明の前述の局面の工程(d)における標的cDNAを増幅することは、例えばループ介在等温増幅(loop mediated isothermal amplification)(LAMP)によるなど、非PCR系増幅方法により増幅することを含む。
【0034】
いくつかの態様において、少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーはさらに、RNA塩基によりプライマーから離されたブロッキングドメインを含む。少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーがRNA塩基によりプライマーから離されたブロッキングドメインを含む場合、工程(d)における標的cDNAを増幅することは、rhPCRによりなされ得る。
【0035】
いくつかの態様において、該方法はさらに、ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーまたはそれらの組合せを使用して、標的cDNAの1つ以上の部分を配列決定することを含む。
【0036】
別の局面において、本発明は:
(a)複数のcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)標的cDNA中の配列に相補的な配列を含む遺伝子特異的リバースプライマー
を含む第1の反応混合物を提供する工程;
(c)複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)標的cDNAを増幅して第1のアンプリコンを得る工程;
(e)第1のアンプリコン中のそれぞれの標的cDNAの末端に少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を付加して、コンジュゲートしたアンプリコンを得る工程;
(f) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、および
2)少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー
を含む第2の反応混合物を提供する工程;
(g)コンジュゲートしたアンプリコンと第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(h)コンジュゲートしたアンプリコンを増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、その例が図3に図示される標的cDNAを富化する方法を提供する。
【0037】
いくつかの態様において、複数のcDNA中のそれぞれのcDNAはさらに、細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せを含む。細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せはさらに、ポリ(T)配列を含み得る。いくつかの態様において、細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せは、標的cDNAのコンジュゲートしたアンプリコンが増幅された後に保存される。
【0038】
種々の態様において、第1のユニバーサル配列はそれぞれのcDNA分子の5'末端にあり、他の態様において、第1のユニバーサル配列はそれぞれのcDNA分子の3'末端にある。
【0039】
いくつかの態様において、本発明の前述の局面の増幅する工程の少なくとも1つは、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む。
【0040】
いくつかの態様において、遺伝子特異的リバースプライマーはさらに、RNA塩基によりプライマーから離されたブロッキングドメインを含む。遺伝子特異的リバースプライマーが、RNA塩基によりプライマーから離されたブロッキングドメインを含む場合、増幅する工程の少なくとも1つは、RNase H依存型ポリメラーゼ連鎖反応によりなされ得る。
【0041】
いくつかの態様において、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列(例えばIllumina(登録商標)P7配列)は、図3に図示されるように、第1のユニバーサル配列(例えばIllumina(登録商標)p5配列)の反対にある第1のアンプリコンの末端にライゲーションされる。いくつかの態様において、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列は、当業者に公知の標準的な技術(例えばタグメンテーション(tagmentation))に従って、トランスポゾンを使用して付加される。他の態様において、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列は、第1のアンプリコン中の核酸分子を断片化して、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を断片にライゲーションすることにより、プライマー伸長反応により、または核酸増幅反応、あるいはそれらの組合せにより付加される。ユニバーサルプライマー側は既に適切な配列決定特異的配列(例えばIllumina(登録商標)P5配列)を含むので、ライゲーションは、遺伝子特異的プライマー末端のみに制限され得る。アンプリコンは、当該技術分野で理解されるように断片化、その後のライゲーションによっても短くされ得るか、またはアンプリコンは、タグメンテーションもしくは配列決定特異的配列を付加するための他の方法のための基質として使用され得る。いくつかの態様において、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列は、少なくとも1つの第2のユニバーサル配列を少なくとも1つの第1のユニバーサル配列の反対の末端で第1のアンプリコン中のそれぞれの標的cDNAの末端へと、ライゲーションすることにより、プライマー伸長反応により、もしくは核酸増幅反応、またはそれらの組合せにより付加される。
【0042】
いくつかの態様において、ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマーの1つの末端は、図4に図示されるように、ブロッキング基を有し、それにより1つの末端上のユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマーのリン酸化を防ぐ。いくつかの態様において、ブロッキング基は、逆(inverted)dTTPであるかおよび/またはユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマーの5'末端にある。
【0043】
さらなる態様において、該方法はさらに、ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、遺伝子特異的リバースプライマー、遺伝子特異的フォワードプライマーまたはそれらの組合せを使用して、標的cDNAの1つ以上の部分を配列決定することを含む。本明細書における方法に有用な配列決定技術の例示的な表示を図5に示す。
【0044】
配列決定は、通常のIllumina(登録商標)配列決定であり得るか、または遺伝子特異的プライマー(または両方の混合)を使用し得る。アンプリコンの長い領域が必要であり、アンプリコンが消化されない場合において、遺伝子特異的プライマーは、標準的な配列決定プライマーのいずれかの代わりに使用され得る。図5に図示される例において、通常のリード(read)1は、細胞識別子およびUMI配列を収集するために行われる。TCR配列中などのDNAの一部を配列決定しない理由があり得、リード1の継続は、情報的目的に有用でない共通の配列をもたらす。そのため、インデックスリード(index read)は、遺伝子特異的プライマーを使用し得、有用な情報内容物を有するさらなる塩基を配列決定し得る。その後、Illumina(登録商標)リード2は、さらなる有用な配列を配列決定するために、標準的なプライマー(または別の遺伝子特異的プライマー)を用いてなされ得る。例えば、TCRを用いて、有用な配列データは、再結合されたセグメントの全てをカバーしなければならない。この例において、リード1はちょうど定常領域を読むので、代わりに、介在配列を飛ばし、J領域配列を同定するために定常領域にハイブリダイズする遺伝子特異的プライマーが使用される。次いで、リード2は、V領域で開始し、D領域中を配列決定する。
【0045】
注意すべき他の項目、特にTCRの周囲:(1)この図示におけるインデックスリード配列は、アンプリコンの全てに共通するいくつかの塩基で開始する。塩基は、(Illumina(登録商標)配列決定に特異的)塩基組成のバランスを取るために他のcDNAと共に配列決定されなければならないか、またはDNAの組のバランスを取る合成塩基は、共通のTCR領域由来の塩基のバランスを取るように特異的に適合される配列決定ランに含まれなければならないかのいずれかである。(2)TCR(この場合)が、変異または欠失した標準的Illumina(登録商標)インデックスリードプライマー結合部位を有することが有用であり得、そのため標準的なIllumina(登録商標)インデックスリードプライマーは、これらの特異的なアンプリコンにハイブリダイズしない。このように、遺伝子特異的プライマーおよびインデックスリードプライマーは一緒になって混合され得、TCRは他のcDNAと共に配列決定され得る。
【0046】
他の局面において、本発明は:
(a)複数のcDNAを提供する工程、ここでそれぞれのcDNAは末端に第1のユニバーサル配列を含み、複数のcDNAは富化される標的cDNAを含む;
(b)標的cDNA中の配列の全部または一部に相補的な配列を含む少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーを含み、さらに少なくとも1つの遺伝子特異的プライマーの末端に少なくとも1つの第2のユニバーサル配列
を含む第1の反応混合物を提供する工程;
(c)少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーが標的cDNAとハイブリダイズするように複数のcDNAと第1の反応混合物を接触させる工程;
(d)少なくとも1つの遺伝子特異的リバースプライマーを伸長させて、少なくとも1つの伸長産物を得る工程;
(e) 1)第1のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー;および
2)少なくとも1つの第2のユニバーサル配列の全部または一部に相補的な配列を含むユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー
を含む第2の反応混合物を提供する工程;
(f)少なくとも1つの伸長産物と第2の反応混合物を接触させる工程;ならびに
(g)少なくとも1つの伸長産物を増幅して、それにより標的cDNAを富化する工程
を含む、その例が図7に図示される、標的cDNAを富化する方法を提供する。
【0047】
いくつかの態様において、複数のcDNA中のそれぞれのcDNAはさらに、細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せを含む。細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せはさらに、ポリ(T)配列を含み得る。いくつかの態様において、細胞識別タグもしくはUMI配列またはそれらの組合せは、少なくとも1つの伸長産物が増幅された後に保存される。
【0048】
種々の態様において、第1のユニバーサル配列はそれぞれのcDNA分子の5'末端にあり、他の態様において、第1のユニバーサル配列はそれぞれのcDNA分子の3'末端にある。
【0049】
いくつかの態様において、伸長工程(d)は、フラップエンドヌクレアーゼ(flap endonuclease)活性を欠損するポリメラーゼを使用する。他の態様において、フラップエンドヌクレアーゼ活性を含む標準的な熱安定性DNAポリメラーゼが伸張工程(d)に使用される。
【0050】
いくつかの態様において、(g)の少なくとも1つの伸長産物を増幅する工程は、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅することを含む。
【0051】
図7に示されるように、複数の遺伝子に対する複数のプローブおよび同じcDNA(示される)に沿ってハイブリダイズするおそらく複数のプローブは、cDNAにハイブリダイズして伸長され得る。次いで、反応は、クリーンアップされ(cleaned up)、共通のプライマーを使用してPCR増幅される。これは、1つのcDNAに沿って複数の領域を標的化し得るという利点を有する。代替的な態様は、1cDNAあたりに1つのプローブをハイブリダイズすること、本明細書において以前に記載されるようにIllumina(登録商標)配列決定のために増幅することおよび断片化することを含み得る。別の態様は、1遺伝子当たり1つのプローブをハイブリダイズすること、およびOxfordナノポア技術などの長いリード配列決定について該プローブを鋳型として使用することを含み得る。
【0052】
さらなる態様において、該方法はさらに、ユニバーサルオリゴヌクレオチドフォワードプライマー、ユニバーサルオリゴヌクレオチドリバースプライマー、遺伝子特異的リバースプライマー、遺伝子特異的フォワードプライマーまたはそれらの組合せを使用して標的cDNAの1つ以上の部分を配列決定することを含む。他の態様において、該方法はさらに、富化された標的cDNAを配列決定する工程を含む。
【0053】
本明細書に記載される局面のいくつかの態様において、遺伝子特異的プライマーは、特異性を増加させるように改変された塩基を含み得る。例えば、rh-PCRは、遺伝子特異的プライマーを用いて使用され得る。1つだけではなく遺伝子特異的プライマーのプール、例えば全て(またはほとんど)のTCR V領域に結合し得るプライマープールが使用され得る。
【0054】
本明細書に記載される局面のいくつかの態様において、ライゲーション方法は、第1のPCRにおいて5'ブロッキングされたユニバーサルプライマー(例えば5'逆dT)を使用すること、次いで5'リン酸化遺伝子特異的プライマーを使用することを含み得る。次いでこれは、リン酸化されていないライゲーションアダプターにより1つの末端のみでライゲーションされ得る。代替的に、リン酸化された遺伝子特異的プライマーを使用する代わりに、PNKを使用して、PCRの前または後に、5'リン酸塩がプライマーに付加され得る。さらに、せん断すること(sheering)(例えばcovaris)または酵素的(例えばエクソまたはエンドヌクレアーゼ処理)により消化が起こり得る。DNAは、異なる長さに消化され得、そのために配列決定は、標的cDNAの目的の必要な領域の全てにわたり配列決定し得、次いでこれらの異なる長さのリードをバイオインフォマティックス的に集合させる。
【0055】
以下の特徴および関連のある利点は、本明細書に記載される方法を使用して得られ得る:
(1)単一細胞配列決定ライブラリーからのcDNAのプール内の特定のcDNAの富化-特定のRNAは低レベルで発現され、より大きなプールをさらに配列決定しながらより大きなプール内のこれらの特定のcDNAを配列決定するためにコピー数を人工的に増加させることが有益である;
(2)増幅のためのユニバーサルプライマーを伴う単一標的化プライマー-cDNAの3'末端に付加された任意の細胞識別配列を維持しながら、5'末端で目的のcDNAを標的化する;
(3)3'タグ付加されたcDNAからのT細胞受容体配列決定-単一細胞RNA配列決定ライブラリーを作製する場合、3'タグ配列決定を使用することが有益であり得るが、次いで所定の細胞により発現されている特定のT細胞受容体などの情報は失われる。本発明により提供される方法は、3'タグ配列決定からTCR配列を再度捕捉する;
(4)3'タグ付加されたcDNAからのスプライシング部位モニタリング-上述と同様に、この方法は、遺伝子発現解析のためのcDNAの全プールをさらに維持しおよび3'タグ配列決定ライブラリー調製物由来の細胞ID配列も維持するの両方をしながら、全長cDNA内の任意の特定の配列が捕捉されることを可能にする;
(5)標的化cDNAの単一プライマー増幅(すなわち1ラウンドの標的化増幅)-標的化されたRNA配列決定に使用されるネステッドPCRの代わりに、本発明は、消失せずに配列決定され得るようにバックグラウンドに対してcDNAを富化するために、1ラウンドの標的化PCRを実行することを可能にする;
(6)遺伝子内の特定の点からの配列決定を標的化するための配列決定反応において、遺伝子特異的プライマーを使用して、配列決定アッセイ自体に対する変更を含み得る-目的の遺伝子の重要な部分の配列決定および特定の領域、例えばTCRの定常領域を迂回することを可能にするか、または遺伝子内の複数のスプライシング連結部を配列決定し得ることを可能にする;
(7)単一細胞レベルで3'タグ配列決定およびDNAコンジュゲートタンパク質解析と適合性である;
(8)PCR特異性を向上するためにRH-PCRまたは他の改変されたプライマー法を使用し得る-PCR標的化特異性を向上して、ユニバーサルプライマーと共に1つのみのプライマーを使用して所望の産物を増幅し得る;および/または
(9)標準的な単一細胞RNA配列決定により同定されないトランスジーンを同定する-いくつかのトランスジーンは、標準的なRNA配列決定において同定するのに十分なほど高度には発現されない。本発明の方法は、発現解析のためにトランスジーンを特異的に標的化し得る。
【実施例
【0056】
実施例1
単一細胞3'RNA配列決定アッセイからのT細胞受容体(TCR)座の配列決定のためのcDNAの富化
この実施例において、3'タグ付加単一細胞RNA配列決定ライブラリー由来のcDNAを富化するための方法が示され、ここで遺伝子の3'末端に付加された任意の細胞識別配列を維持しながら、標的化されたcDNAが富化される。該方法は、特に、単一細胞3'RNA配列決定アッセイからのT細胞受容体座の配列決定を可能にする。該アッセイにより、予想されるように、TCRからの配列決定データが得られた。
【0057】
TCRαおよびβ鎖由来のTCR配列を増幅するために使用されるRhプライマー:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0058】
10Xゲノミクスライブラリーを用いた作業について現在使用される共通のプライマーは、
【表2】
である。
【0059】
RH-PCR TCR AおよびTCR B
プライマーミックスは:
1. TE中100μMの5'ブロックTCR(逆dT)プライマー
を含む。
2. rhプライマーTCR A(チューブ標識A)およびTCR B(チューブ標識A)混合物(それぞれ25μM)を1:1で合わせ、その後10x希釈する
【0060】
表1. RHプライマーPCR TCR AB反応混合物およびPCR条件
【表3】
3. 2つの試料に等分し、TCR-AおよびTCR-Bについてのそれぞれの0.5μLのプライマーミックスを別々に添加する。
4. 表2に示されるサイクルでPlatinum Taq PCRを走らせる。
【0061】
表2. TCR-AおよびTCR-B試料についてのPCRパラメーター。
【表4】
5. 25サイクルの間サイクルを行う(cycle)。
6. 1:1の比でAmpureクリーンアップ(cleanup)し、80% ETHOで洗浄し、20μLのEBバッファ(10mM Tris pH8.5)で溶出する。
【0062】
PCR結果を図7に示す。
7. platinum Taqは末端に「A」を付加するので、行うことが必要なことの全てはPNKを添加して5'末端をリン酸化することである。
8. それぞれの試料について、表3において以下のように反応物を調製する
【0063】
表3. PNK反応混合物。
【表5】
摂氏37度、30分間
摂氏65度、20分間
【0064】
アダプターをライゲーションする:
表4. ライゲーション反応。
【表6】
9. 室温で15分間ライゲーションさせる。
10. 1:1の比でAmpureクリーンアップ(cleanup)し、80% ETOHで洗浄し、20μLのEBバッファ(10mM Tris pH8.5)で溶出する
11. PCRに10μLの溶出液を使用する。
【0065】
ライブラリー富化:
表5. ライブラリー富化反応およびPCRパラメーター。
【表7】
【0066】
結果
TCRαおよびTCRβ RNAを、記載されるアッセイを使用してPCR増幅し、結果を図9に示す。レーン4および5において、PCR産物は、正確なサイズを示す(レーン5においてさらなるバンド、より低いMWを有する)。PCRに続いて、Illumina(登録商標)アダプターを記載されるようにライゲーションして、TCRαおよびβ(レーン2および3)の両方において正確なバンドが見られ得る。
【0067】
同様の方法を使用して、特定のCARトランスジーンを増幅したが、Illumina(登録商標)アダプターをライゲーションする代わりに、インデクシング(indexing)PCR工程を使用する。トランスジーンはそれだけで、どの細胞がCAR陽性であるかを同定するのに十分な深さ(depth)まで配列決定されないので、CAR配列の同定はPCR法を必要とする。有意により深く配列決定することによりこの問題を解決することが可能であるが、記載される方法はかなりより安価であり、より頑強である。
【0068】
実施例2
プールされたプライマーPCRを使用したT細胞受容体αおよびβの配列決定のためのcDNAの富化
図3に示される一般的な方法の態様を使用して、個々のプライマーおよびプールされたプライマーのPCR増幅によりT細胞受容体α(TCRa)およびβ(TCRb) cDNAを富化して、その後の配列決定を可能にした。TCRプライマーは最初に個々に試験して次いでプールされた。これらの実験において以下の材料および方法を使用した。
【0069】
方法
個々のプライマーPCR
cDNAインプットは、推奨される指示に従った10xゲノミクス3'RNAseqアッセイを行ったヒトPBMC由来のcDNAであった。
【0070】
PCR条件:1Uのplatinum taq (Thermofisher Scientific, Waltham, MA)、1X PCRバッファ(Thermofisher Scientific)、1.5mM MgCl2、0.52mU RNAseH2 (IDT)、それぞれ100nMのプライマー(Integrated DNA Technologies, Inc. (IDT), Coralville, IA)を使用した25μlの反応。PCR反応:94℃、2分、次いで94℃ 15秒、60℃ (TCRα)/64℃ (TCRβ) 30秒、68℃ 1分の30サイクル。
【0071】
100塩基リード1および400塩基リード2を使用して、MiSeq (Illumina, Inc., San Diego, CA)で配列決定を行った。MIXCR: Bolotin, D., Poslavsky, S., Mitrophanov, I. et al. MiXCR: 包括的な適応免疫プロファイリングのためのソフトフェア. Nat Methods 12, 380-381 (2015) doi:10.1038/nmeth.3364を使用してデータを解析した。
【0072】
プールされたプライマーPCR
個々のTCRαプライマーをそれぞれ25nMでプールした。別々に、TCRβプライマーをそれぞれ25nMでプールした。TCRαおよびTCRβのそれぞれについて1回のPCRを行った。
【0073】
PCR条件:1Uのplatinum taq (Thermofisher Scientific)、1X PCRバッファ(Thermofisher Scientific)、1.5mM MgCl2、0.52mU RNAseH2 (Integrated DNA Technologies, Inc. (IDT), Coralville, IA)、100nMリバース共通プライマー(IDT)およびそれぞれ25nMのTCRプライマーのプールを使用した25μlの反応。PCR反応:94℃、2分、次いで94℃ 15秒、60 C (TCRα)/64℃ (TCRβ) 30秒、68℃ 1分の30サイクル。
【0074】
PCR産物の精製および配列決定
PCR産物は、Ampureビーズ(Beckman Coulter Life Sciences, Indianapolis, IN)を1:1の比で使用して精製した。PCR産物を、ポリヌクレオチドキナーゼで処理して、Quickライゲーションキット(NEB, Ipswich, MA)を37Cで30分、次いで65Cで20分使用して配列決定アダプターにライゲーションした。PCR産物を以下の二本鎖オリゴ:5' GATCGGAAGAGCACACGT (配列番号:87)および5' GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT (配列番号:88)にライゲーションした。
【0075】
ライゲーション産物は、Ampureを1:1の比で用いて精製し、その後AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGAT*C*T (配列番号:89)およびCAAGCAGAAGACGGCATACGAGATCGTCCATTGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTC (配列番号:90)(式中*=ホスホロチオエート結合)のそれぞれ200nMを用いて25μl反応中MyTaq (Bioline Meridian Bioscience, Memphis, TN)を使用してPCR増幅した。PCR条件は:95℃ 1分、次いで95℃、15秒、60℃、1分、72℃、10秒の12サイクルであった。
【0076】
PCR産物は、Ampureを1:1の比で用いて精製し、ランパラメーター:リード1、100塩基、リード2、400塩基によるMiSeq (Illumina)である配列決定に使用した。質のためにリードを削り、得られたデータを、MIXCR: Bolotin, D., Poslavsky, S., Mitrophanov, I. et al. MiXCR: 包括的な適応免疫プロファイリングのためのソフトウェア. Nat Methods 12, 380-381 (2015) doi:10.1038/nmeth.3364を使用して解析した。
【0077】
MIXCRアウトプットデータを以下にまとめる。
【0078】
【表8】
【0079】
結果
個々(図10)およびプールされた(図11)プライマーPCR反応の両方は、ヒトPBMC由来のcDNA中のTCRαおよびTCRβ配列を富化するために本明細書に記載される方法の例において成功裡に使用された。PCR反応から得られたアンプリコンは、その後精製されて、TCRαおよびTCRβ配列の存在を確認するために解析された。
【0080】
本明細書で使用する場合、不定冠詞「a」および「an」は、明確にそれと反対であると示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0081】
語句「および/または」は、本明細書で使用する場合、そのように連結される要素、すなわちいくつかの場合において接続的に存在し、他の場合において離接的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。
【0082】
明確にそれと反対であると示されない限り、1つより多くの工程または行為を含む本明細書に記載される任意の方法において、該方法の工程または行為の順序は、該方法の工程または行為が記載される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0083】
そうではないと示されない限り、またはそうではないことが文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈がそうではないことを明らかに規定しない限りは、種々の態様において記載される範囲内の任意の特定の値または下位範囲(subrange)が想定され得る。
【0084】
本明細書に引用される全ての特許、公開された出願および参照文献の教示は、それらの全体において参照により援用される。
【0085】
例示態様が特に示され、記載されるが、形態および詳細における種々の変更は、添付の特許請求の範囲に包含される態様の範囲から逸脱することなく、本発明においてなされ得ることが当業者には理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022515466000001.app
【国際調査報告】