(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】繊維製品を製造する方法及びそれにより得られる繊維製品
(51)【国際特許分類】
D06M 11/46 20060101AFI20220210BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20220210BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
D06M11/46
D06M15/263
D06M13/395
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537891
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2019086862
(87)【国際公開番号】W WO2020136148
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ケナン ロヤン
(72)【発明者】
【氏名】アガミレズ ハーミトべリィ
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
(72)【発明者】
【氏名】ハティジェ アイビエ アクダー
(72)【発明者】
【氏名】セレン アカル
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ ゼイレク
(72)【発明者】
【氏名】ムラト セン
(72)【発明者】
【氏名】サブレッティン アクブル
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AB31
4L031BA09
4L031BA33
4L033AA02
4L033AB05
4L033AC11
4L033BA69
4L033CA13
4L033CA18
(57)【要約】
本発明は、不透明度が増加した白い生地を得るための、以下の各ステップa)~c)を含む製造方法に関する。a)少なくとも1枚の生地を提供し、b)前記生地の少なくとも一部を、二酸化チタン及び少なくとも架橋可能な結合剤を含む水性組成物で処理し、c)前記ステップb)で得られた生地を加熱する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を製造するための方法であって、
a)少なくとも1枚の生地を提供し、
b)前記生地の少なくとも一部を、二酸化チタン及び少なくとも結合剤、好ましくは架橋可能な結合剤を含む水性組成物で処理し、そして
c)ステップb)で得られた前記生地を加熱するステップを含むことを特徴とする生地の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ステップc)は、前記生地を第1の温度で加熱して前記生地を乾燥させ、次に前記生地を第2の温度で加熱して前記生地上の前記結合剤を架橋することを含み、前記第2の温度は、好ましくは前記第1の温度よりも高いことを特徴とする生地の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項において、
前記ステップa)で提供される前記生地は、少なくとも一方向に引き伸ばされ、その結果、前記ステップb)による前記水性組成物での処理の間、好ましくは前記加熱ステップc)の間も、前記生地は引き伸ばされた状態にあることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記ステップa)で提供される前記生地は、前記生地の初期寸法に関して、少なくとも横糸方向に、0.5%~75%の間、好ましくは0.5%~60%の間、より好ましくは0.5%~50%の間で引き伸ばされることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記ステップb)における前記水性組成物は、パディングによって前記生地に提供されることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記結合剤は、アクリルポリマー、アクリル共重合体及びアクリル誘導体、樹脂、ポリウレタン及びポリウレタン誘導体、ブロックされたイソシアネート、ポリイソシアネート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
好ましくは、ブタジエンアクリル共重合体、スチレンアクリル共重合体、ビニルアクリレート、スチレンアクリレート、ブタジエンアクリロニトリル、カルボキシル化ブタジエンアクリロニトリル、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンからなる群、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記結合剤、好ましくは前記架橋可能な結合剤は、-30℃~0℃、好ましくは-25℃~-5℃、より好ましくは-20℃~-8℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする生地の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、
前記結合剤は、30°ショアA以下、好ましくは5°ショアA~25°ショアAの範囲、より好ましくは10°ショアA~20°ショアAの範囲のショアA硬度を有することを特徴とする生地の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
前記生地は、前記ステップb)の前に1つの衣服に組み込まれ含まれていることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項において、
前記組成物中の前記二酸化チタンは、5~500g/Lの範囲、好ましくは50~400g/Lの範囲、より好ましくは75~300g/Lの範囲であり、さらにより好ましくは90~200g/Lの範囲であることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項において、
前記二酸化チタンは、0.25μm~4μm、好ましくは0.4μm~3μm、より好ましくは0.5μm~2μmの範囲の平均粒子サイズを有することを特徴とする生地の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項において、
前記組成物中の前記結合剤は、1~100g/Lの範囲、好ましくは10~80g/Lの範囲、より好ましくは30~70g/Lの範囲、さらにより好ましくは35~60g/Lの範囲であることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項において、
前記組成物は、少なくとも1つの光沢剤、好ましくはスチルベン又はスチルベン誘導体、より好ましくはトリアジンスチルベンジスルホン酸、又はその誘導体をさらに含むことを特徴とする生地の製造方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記組成物中の前記光沢剤の量は、5~40g/L、好ましくは10~35g/L、より好ましくは15~30g/Lの範囲であることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項15】
請求項2~14のいずれか1項において、
前記第1の温度は、90℃~200℃、好ましくは100℃~160℃、より好ましくは110℃~150℃の範囲にあることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項16】
請求項2~15のいずれか1項において、
前記第2の温度は、150℃~200℃、好ましくは160℃~180℃の範囲にあることを特徴とする生地の製造方法。
【請求項17】
請求項1~17のいずれか1項に記載の製造方法により得られる生地。
【請求項18】
請求項17において、
前記生地は、一緒に織られた横糸及び縦糸を含む織布であり、前記二酸化チタン及び前記結合剤の少なくとも一部が、隣接する2本の縦糸と、前記2本の縦糸の上又は下を通る隣接する2本の横糸よって区画された各空間内に位置していることを特徴とする生地。
【請求項19】
請求項18において、
前記生地は、綾織り布、好ましくはデニム布であることを特徴とする生地。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか1項において、
前記二酸化チタンは、0.25μm~4μm、好ましくは0.4μm~3μm、より好ましくは0.5μm~2μmの範囲の平均粒子サイズを有することを特徴とする生地。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか1項において、
前記二酸化チタンの量は、前記生地の総重量の3重量%~10重量%、好ましくは6重量%~8重量%の範囲にあることを特徴とする生地。
【請求項22】
請求項17~21のいずれか1項において、
前記結合剤の量は、前記生地の0.5重量%~4重量%の範囲、好ましくは、前記生地の総重量の2重量%~3重量%の範囲にあることを特徴とする生地。
【請求項23】
請求項17~22のいずれか1項に記載の生地を含むことを特徴とする衣服。
【請求項24】
繊維、好ましくは生地を処理するための水性組成物であって、
二酸化チタンと、少なくとも1つの結合剤、好ましくは架橋可能な結合剤とを含み、
前記二酸化チタンは、5~500g/Lの範囲、好ましくは50~400g/Lの範囲、より好ましくは75~300g/Lの範囲、さらにより好ましくは90~200g/Lの範囲であり、
前記結合剤は、1~100g/Lの範囲、好ましくは10~80g/Lの範囲、より好ましくは30~70g/Lの範囲、さらにより好ましくは35~60g/Lの範囲の量であることを特徴とする水性組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の水性組成物であって、
さらに、少なくとも1つの光沢剤を含み、
前記光沢剤は、5~40g/L、好ましくは10~35g/L、より好ましくは15~30g/Lの範囲の量であることを特徴とする水性組成物。
【請求項26】
請求項1~16のいずれか1項に記載の生地の製造方法において、
請求項24又は25に記載の組成物を使用することを特徴とする生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維の分野に関するものであり、特に、処理された繊維製品を製造する方法、及びその製造方法により得られる繊維製品に関する。本発明の製造方法は、繊維製品の不透明度を高めるものである。
本発明はまた、繊維に不透明度を与えるのに適しており、かつ、上記製造方法における使用に適した、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
白い衣服や白いアパレルは消費者に高く評価されており、市場で強く求められている。
しかし、白い衣服や白いアパレルには幾つかの欠点がある。
例えば、白い衣服は、一般に、その衣服を着用したとき、そのユーザの皮膚の色及び/又はユーザの下着の色や形状を明らかにしてしまう。
これらの欠点を克服するために、太い生地又は糸、及び/又は密に織った糸を使用することにより、実質的に不透明で透けて見えない生地及び衣服を得ることができる。
しかしながら、このような解決策では、非常に限られた種類の衣服や衣料品しか生産できない。例えば、ある重量範囲を下回ると問題が現れるような衣服の生産しかできない。
【0003】
一般的に、生地に、抗紫外線、抗菌、及び自己浄化性の特性を与えるために、二酸化チタンが使用される。また、生地に、二酸化チタン又はTiO2を含む組成物を塗布することにより、不透明の白い衣服が得られることも知られている。
特許文献1は、不透明なファイバー繊維の製造方法を開示している。この製造方法によれば、ポリエステルフィラメント糸からなる生地に、処理された生地の4~7重量%の二酸化チタン、及び0.1~0.5重量%の分散剤からなる溶液を含浸させる。二酸化チタンの粒子径は0.1~0.4μmである。この溶液を20~30分間含浸させて、生地に固着させる。次に、処理された生地を、主成分がジイソシアネートである透明な樹脂でコーティングする。
特許文献2は、その被覆力をTiO2で増加させることによって、不透明な生地を調製する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】KR910006104(B1)
【特許文献2】GB2051163A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている製造方法では、2つの別個のステップ、つまり、生地に二酸化チタンを含浸させる1つのステップと、樹脂でコーティングする第2のステップとが必要である。従って、特許文献1に開示されている製造方法は複雑であり、かつ、長い作業時間を必要としている。
また、二酸化チタンを覆う樹脂コーティングは、生地、従ってそれを構成する衣服に、不快な美的外観を与える可能性がある。
さらに、当技術分野で知られている不透明な白い生地は、一般に、家庭での数回の洗濯後に、その白色度が次第に低下する。
【0006】
本発明の目的は、上記の各問題を解決し、生地、特に白色又は明るい色の生地の、不透明度を高めることのできる製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、生地の白色度を高めるのを可能にする製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、白色又は明るい色を有し、ユーザの肌や体を実質的に隠す生地を提供すること、あるいはまた、前記生地を含む衣服をユーザが着用したとき、このユーザの下着の色や形状を隠すことができる生地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、本発明の対象である、請求項1に記載の製造方法によって達成される。
【0008】
本発明の別の対象は、請求項17に記載の生地である。
本発明のさらに別の対象は、請求項23に記載の衣服であり、この衣服は、前記処理された生地、請求項24に記載の水性組成物、及び請求項26に記載の本発明の製造方法における前記組成物の使用を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の製造方法を適用する前の、未処理のサンプル生地を示す写真である。
【
図1B】本発明の製造方法を適用した後の、処理済のサンプル生地を示す写真である。
【
図2A】本発明の製造方法を適用する前の、未処理のサンプル生地を示す10倍の拡大写真である。
【
図2B】本発明の製造方法を適用した後の、処理済のサンプル生地を示す10倍の拡大写真である。
【
図3A】本発明の製造方法を適用する前の、未処理のサンプル生地を示す60倍の拡大写真である。
【
図3B】本発明の製造方法を適用した後の、処理済のサンプル生地を示す60倍の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本発明の特徴を、例示的な実施形態を参照して説明する。しかしながら、本明細書に開示されている本発明の任意の特徴を、本発明のさらなる実施形態を提供するために、本明細書に開示された1つ又は複数の他の特徴と組み合わせることができる。このような実施形態は、本出願によって開示されたものと見なされるものである。
【0011】
前記したように、本発明の対象の1つは、処理された生地を製造する方法であり、次のステップを含んでいる。
a)少なくとも1枚の生地を用意し、
b)前記生地の少なくとも一部を、二酸化チタン及び少なくとも結合剤、好ましくは架橋可能な結合剤を含む水性組成物で処理し、
c)前記ステップb)で得られた前記生地を加熱する。
本発明の製造方法は、白い衣服、例えば軽量の白い衣服の製造に使用するのに適した繊維の製造を可能にするという、利点がある。
実際、驚くべきことに、本発明の製造方法によると、繊維を白く、柔らかく、スタイリッシュに維持しながら、生地の不透明度を高めることが可能なことが観察された。
【0012】
言い換えれば、本発明の製造方法によると、生地の透明度を低下させることが可能である。その結果、本発明の生地を含む衣服をユーザが着用している場合に、白い生地の衣服を通して、このユーザの皮膚及び下着が「透けて」見えることはなくなったことが観察された。
透明度に関して、薄さが中程度の白い生地は、肌や下着の色や形状が明らかに見えるのを十分に防ぐほど不透明ではない。言い換えれば、このような生地の被覆力は低いものである。
【0013】
特に、この組成物の二酸化チタンが、生地の糸及び繊維に付着することが観察された。さらに、生地が本発明の製造方法に従って処理される場合、二酸化チタンは、生地の糸の少なくとも一部の間、例えば、織布の横糸と縦糸との間に位置すること、従って、未処理の生地に対して、透明度の低下をもたらすことが観察された。
例えば、本発明によって得られる生地では、二酸化チタン及び結合剤は、隣接する2本の縦糸と、前記2本の縦糸の上又は下を通る隣接する2本の横糸よって区画された各空間内に位置している。
【0014】
また、本発明の製造方法は、未処理の生地に対して、生地の白色度及び被覆力を高めるのを可能にするという利点がある。
本発明の実施形態において、使用するのに適する生地は、染色されていない生地である。
【0015】
本発明の方法によれば、二酸化チタン及び少なくとも結合剤、好ましくは架橋可能な結合剤を含む水性組成物を、生地の少なくとも一部に提供する。
各実施形態において、結合剤は化合物であり、例えば、二酸化チタンの粒子を生地とその繊維に結合するのに適する、ポリマーである。
この水性組成物は、当技術分野で知られている技術に従って、生地に適用することができる。例えば、実施形態として、前記組成物は、含浸によって、例えば前記組成物を含む浴に生地を浸漬することによって、生地に提供される。各実施形態において、前記組成物は、水増し用として生地に提供される。
【0016】
続いて、前記水性組成物の提供された生地は、加熱される。
実施形態によれば、ステップc)は、生地を第1の温度で加熱して、それを乾燥させ、次に生地上の結合剤ポリマーを硬化するのに適した、すなわちそれを架橋するのに適した第2の温度で生地を加熱するステップを含んでいる。この第2の温度は、第1の温度よりも高くて良い。
【0017】
本発明の製造方法の幾つかの実施形態は、1つの連続したプロセスとして実行できるという利点を有している。
例えば、本発明の製造方法は、パディングプロセスとして実行することができる。パディングは、繊維の技術分野で知られている技術である。
一般に、パディングプロセスは、生地に水性組成物を含浸させるステップを含んでおり、含浸された生地は、少なくとも2つのローラの間を通過し、その結果、含浸された生地は、2つのローラによって押され、過剰な組成物が除去される。
続いて、生地を乾燥させ、さらにオプションとして、硬化させても良い。
例えば、生地には、好ましくは10℃~50℃の範囲の温度、好ましくは20℃~30℃の温度において、パディングによって水性組成物を含浸させる。この水性組成物のpHは、好ましくは4~6の範囲であり、より好ましくは4.5~5.5の範囲である。
続いて、水性組成物を含浸させた生地を乾燥させ、場合によっては硬化させて、結合剤ポリマーを架橋することができる。
【0018】
本発明の方法の一つの態様によれば、二酸化チタンが生地の糸及び繊維に付着した生地を得ることができる。
特に、本発明の方法は、生地の糸の間に、例えば、織物の横糸と縦糸の間の交点に、二酸化チタン及び結合剤が配置された生地を提供することが観察された。従って、被覆力が増加し透明度が低下した、未処理の生地が提供される。
例えば、本発明によって得られる生地では、二酸化チタン及び結合剤は、隣接する2本の縦糸と、前記2本の縦糸の上又は下を通る隣接する2本の横糸よって区画された各空間内に位置している。従って未処理の生地の、透明度を低下させる。
【0019】
実施形態によれば、本発明の製造方法のステップa)で提供される生地は、少なくとも一方向(例えば、少なくとも横糸方向又は少なくとも縦糸方向)に引き伸ばされる。その結果、本発明の製造方法のステップb)による水性組成物での処理の間、好ましくは加熱ステップc)の間も、生地が引き伸ばされる。
例えば、生地は、パディング、加熱、及び硬化の処理のステップ中に、引き伸ばされても良い。
本発明の製造方法のステップa)で提供された生地が引き伸ばされるとき、この生地は、水性組成物での処理の間に引き伸ばされ、好ましくは加熱及び硬化工程の間も引き伸ばされ、糸の間(例えば、縦糸及び/又は横糸の間)の空間が増加する。そのため、組成物を生地の各糸の間に、特に効果的な方法で、提供できることが観察された。
本発明の製造方法で生地が引き伸ばされるとき、処理の間に引き伸ばされない同じ生地の場合と比べて、この引き伸ばされる生地の糸の間に、より多くの量の二酸化チタン及び結合剤が提供されることが観察された。
【0020】
実施形態においては、本発明の製造方法のステップa)で提供される生地は、この生地の初期寸法に関して、少なくとも一方向(例えば、少なくとも横糸方向)に、0.5%~75%、好ましくは0.5%~60%、より好ましくは0.5%~50%引き伸ばされる。そのため、本発明の製造方法のステップb)による水性組成物での処理の間、好ましくは加熱ステップc)の間にも、生地は引き伸ばされる。
【0021】
生地が、例えば、エラストマーの糸又は繊維から作製された、又はそれらを含む生地のように、高い破断点伸びを有する場合、実施形態によれば、生地はその初期寸法に対して、1%~75%、好ましくは5%~60%、より好ましくは10%~50%引き伸ばされる。
実施形態において、生地は、少なくとも横糸方向に引き伸ばされる。
例えば、本質的に天然の糸又は繊維で作られた生地のように、その生地の破断点伸びが低い場合、実施形態によれば、この生地は、その初期寸法(例えば、幅)に対して、0.5%~5%、好ましくは、0.75%~5%、より好ましくは1%~5%、引き伸ばされる。各実施形態において、生地は、少なくとも横糸方向に伸ばされる。
【0022】
組成物と共に提供される生地の乾燥及び硬化は、この生地への二酸化チタンの、特に効果的かつ耐久性のある、結合が得られるという利点がある。これは、特に、結合剤が架橋可能な結合剤である場合に当てはまる。
実施形態によれば、架橋可能な結合剤は、自己架橋可能な結合剤でも良い。実施形態によれば、架橋可能な結合剤は、1つ又は複数の架橋剤を使用して架橋することができる化合物でも良い。
適切な架橋剤としては、例えば、2つ以上の二重結合を含む架橋剤でも良い。例えば、適切な自己架橋性結合剤は、アクリルポリマー、アクリル共重合体、及びアクリル誘導体から選択しても良い。例えば、架橋剤を使用して架橋することができる適切な結合剤はポリウレタンであり、これは、例えば、イソシアネートを使用して架橋することができる。
【0023】
実施形態において、結合剤が架橋可能な結合剤である場合には、生地への二酸化チタンの、特に強い結合を得ることが可能である。
実施形態において、結合剤、好ましくは架橋可能な結合剤は、-30℃~0℃、好ましくは-25℃~-5℃、より好ましくは-20℃~-8℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有している。
結合剤が、特に架橋性が上記の範囲のガラス転移温度を有する場合、特に柔らかい処理された生地を得ることができるという利点がある。
ガラス転移温度(Tg)は、ASTM E1356に従って測定できる。
【0024】
実施形態においては、結合剤は、30°以下のショアA、好ましくは5°ショアA~25°ショアA、より好ましくは10°ショアA~20°ショアAの範囲のショアAの硬度を有している。
ショアA硬度は、ASTM D2240に従って測定できる。
本発明に使用するのに適する結合剤は、上記の範囲のガラス転移温度(Tg)及び/又は上記の範囲の硬度を有するものである。
上記のように、結合剤が上記の範囲のガラス転移温度(Tg)及び/又はショアA硬度を有する場合、結合剤に二酸化チタンを含ませて、特に柔らかく不透明な生地を得ることができる。特に、生地の手触りを損なうことなく、生地の不透明度を向上させることができる。
【0025】
実施形態において、結合剤は、以下のグループから選択することができる。
アクリルポリマー、アクリル共重合体、及びアクリル誘導体からなるグループ;
例えば、ビニルアクリレート、スチレンアクリレート、ブタジエンアクリロニトリル、カルボキシル化ブタジエンアクリロニトリル、
樹脂;
ポリウレタン及びポリウレタン誘導体;
例えば、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、
ブロックされたイソシアネート;
ポリイソシアネート;及び
上記の混合物。
好ましい実施形態において、結合剤は、ブタジエンアクリル共重合体、スチレンアクリル共重合体、ビニルアクリレート、スチレンアクリレート、ブタジエンアクリロニトリル、カルボキシル化ブタジエンアクリロニトリル、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンからなる群、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0026】
例えば、現在市販されている製品「ORGAL ES61」(登録商標)、(Organik kimya)、及び市販されている製品「HELIZARIN BINDER TOW」(登録商標)、(Archroma)は、本発明による結合剤としての組成物に使用するのに適している。
例えば、現在市販されている脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタンである製品EDOLAN SN(Tanatex Chemicals)は、架橋剤と組み合わせて、本発明の組成物に使用するのに適している。
上記の、適切な架橋剤は、例えば、2つ以上の二重結合を含む架橋剤でも良い。
例えば、現在市販されている製品EDOLAN XCIB(Tanatex Chemicals)は、EDOLAN SNを使用する場合の架橋剤として使用するのに適している。
この結合剤は、二酸化チタンの生地への接着に寄与する利点がある。
【0027】
本発明は、家庭での数回の洗濯に耐えることができる処理された生地の製造を可能にするという利点がある。言い換えれば、本発明は、実質的に同じ不透明度及び白色度特性を維持しながら、家庭で数回も洗濯することができる処理された生地の製造を可能にする。
特に、本発明に従って処理された生地の不透明度及び白色度の特性は、家庭での15回の洗濯の後でも、実質的に変化しなかったという結果が観察された。
【0028】
実施形態において、生地は、前記ステップb)の前に、例えば、ある衣服に合わせて調整され、その衣服に組み込まれていても良い。この場合、例えば、二酸化チタン及び結合剤を含む水性組成物は、含浸によって(例えば、浸漬によって)、その衣服に提供される。
続いて、衣服を加熱して乾燥させ、組成物をこの衣服に固着させることができる。
実施形態において、水性組成物中の二酸化チタンの量は、組成物の0.5重量%~40重量%の範囲、好ましくは5重量%~30重量%の範囲、より好ましくは10重量%~20重量%範囲である。
実施形態において、二酸化チタンは、0.25μm~4μm、好ましくは0.4μm~3μm、より好ましくは0.5μm~2μmの範囲の平均粒子サイズを有する。
【0029】
実施形態において、組成物中の結合剤の量は、前記組成物の0.5重量%~10重量%の範囲、好ましくは2重量%~8重量%の範囲、より好ましくは、4重量%~6重量%の範囲である。
実施形態において、水性組成物中の結合剤の量は、水性組成物中の二酸化チタンの量よりも少ない。
この場合、特に心地よい外観と手触りを有する白色処理された生地を得ることができるという利点がある。
【0030】
実施形態において、組成物は、さらに少なくとも1つの光沢剤を含んでいても良い。水性組成物が光沢剤を含む場合、特に明るい白色を有する処理された生地を得ることができるという利点がある。
実施形態において、光沢剤は、好ましくはスチルベン又はスチルベン誘導体、より好ましくはトリアジンスチルベンジスルホン酸又はその誘導体である。
光沢剤の例として、現在市販されている製品「BLANKOPHOR B SUN」(登録商標)(Tanatex Chemicals B.V.)が、本発明による組成物に使用するのに適している。
実施形態において、組成物中の光沢剤の量は、0.5重量%~10重量%、好ましくは1重量%~8重量%、より好ましくは2重量%~5重量%の範囲である。
【0031】
実施形態において、水性組成物は、少なくとも1つの分散剤をさらに含んでいても良い。本明細書で使用される「分散剤」という用語は、分散液中の粒子の分離を改善し、沈降又は凝集を防ぐために、分散液に含まれるのに適した薬剤、例えば水性組成物を指す。
実施形態において、この分散剤の量は、組成物の0.01重量%~2重量%の範囲、好ましくは0.1重量%~1重量%、より好ましくは0.4重量%~0.6重量%の範囲である。
【0032】
実施形態において、この分散剤は、ポリアクリレートから選択され、好ましくは、アクリル共重合体である。
分散剤の例として、現在市販されている製品「DEKOL SN 100」(登録商標)(BASF)及び「SANYON DQ」が、本発明による組成物での使用に適している。
水性組成物が分散剤を含む場合、生地上の二酸化チタンの分布は特に均一であることが観察された。
【0033】
実施形態において、水性組成物は、さらに少なくとも1つの安定剤を含んでいても良い。
本明細書で使用する場合、「安定剤」という用語は、それを含む組成物の物理的及び/又は化学的変化を実質的に防止する薬剤を指す。このような安定剤は知られており、泡抑制剤として、及び/又はパディングローラ上でのポリマーフィルムの形成の防止にも有用である。
実施形態において、安定剤の量は、組成物の0.01重量%~2重量%の範囲、好ましくは0.1重量%~1重量%、より好ましくは0.2重量%~0.5重量%の範囲である。
実施形態において、この安定剤は、アルコキシレート化合物又はアルコキシレートの混合物である。安定剤の例として、現在市販されている製品「VITEXOL PFA」(BASF)及び「HELIZARINCOMP.PFA」は、本発明による組成物での使用に適している。
【0034】
実施形態において、水性組成物は、さらに少なくとも1つの湿潤剤を含んでいても良い。実施形態によれば、この湿潤剤の量は、組成物の0.01重量%~2重量%の範囲、好ましくは0.1重量%~1重量%、より好ましくは0.2重量%~0.4重量の範囲である。
実施形態において、湿潤剤は非イオン性湿潤剤であり、好ましくは、スルホン酸塩及びホスホン酸塩の非イオン性湿潤剤からなる群から選択される。湿潤剤の一例として、現在市販されている製品「COTTOCLARIN TR CT」(BRP Kimya)が、本発明の組成物として使用するのに適している。
【0035】
実施形態において、水性組成物は、さらに、二酸化チタンとは異なる少なくとも1つの鉱物充填剤を含んでいても良い。実施形態において、この鉱物充填剤の量は、組成物の0.1重量%~20重量%の範囲、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~5重量%の範囲である。実施形態において、この鉱物充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、タルク、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0036】
本発明の方法は、任意の種類の生地を使用して実施することができる。
実施形態において、この生地は、織布、好ましくは綾織り布、より好ましくはデニム布である。
実施形態において、この生地は、天然生地、再生生地、合成生地、及びそれらの混合物を含んでいても良い。
実施形態において、この生地は、天然糸及び/又は再生糸及び/又は合成糸及び/又は混合糸を含んでいても良い。本明細書において、天然糸は、綿、羊毛、亜麻、ケナフ、ラミー、麻、リネン、及びそれらの混合物から選択される天然繊維を含む糸である。
本明細書において、再生糸は、再生繊維を含む糸であり、これは、例えば、ビスコース、モーダル、テンセル、及びそれらの混合物から選択できる。
【0037】
本明細書において、合成糸は、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、スパンデックス(エラスタン)、アクリル、モダクリル、アセテート、ポリオレフィン、ビニル及びそれらの混合物から選択できる合成繊維を含む糸である。
本明細書において、混合糸は、天然糸(例えば、綿)と、再生糸及び合成繊維の糸の少なくとも2種の糸を含む糸である。
【0038】
上記のように、実施形態においては、本発明の製造方法のステップc)は、二酸化チタン及び少なくとも1つの結合剤を含む水性組成物が提供された生地を第1の温度で加熱して生地を乾燥させるステップと、次に、
生地を硬化させるために、すなわち生地に塗布された結合剤を架橋するために、第2の温度で、生地を乾燥させるステップとを含んでいる。
実施形態において、第1の温度は、90℃~200℃、好ましくは100℃~160℃、より好ましくは110℃~150℃の範囲である。実施形態において、第2の温度は、150℃~200℃、好ましくは160℃~180℃の範囲である。上記のように、実施形態において、前記第2の温度は、前記第1の温度よりも高い。
本発明による製造方法は、特に、処理が速くかつ実行が容易であるという利点がある。例えば、実施形態において、二酸化チタン及び結合剤を含む水性組成物で生地を処理するステップb)の処理時間は、0.1秒~60秒、好ましくは0.5秒~30秒、より好ましくは1秒~10秒の範囲である。
例えば、実施形態において、乾いた生地を硬化させるステップの処理時間は、15秒~90秒の範囲、好ましくは30秒~60秒の範囲である。
【0039】
本発明の別の対象は、本発明による製造方法により得られる生地、すなわち、生地の不透明度を高める製造方法に従って処理された生地である。
上記のように、本発明によって得られる生地では、二酸化チタンが生地の糸及び繊維に付着することが観察されている。また、本発明によって得られる生地では、二酸化チタンが、生地の複数の糸の間、すなわち、織物の横糸と縦糸の間の交点にも位置していることが観察されている。これにより、未処理の生地に対して、透明度の低下、すなわち、被覆力の増加がもたらされる。
【0040】
例えば、本発明によって得られる生地では、二酸化チタン及び結合剤は、隣接する2本の縦糸と、前記2本の縦糸の上又は下を通る隣接する2本の横糸よって区画された各空間内に位置している。
実施形態において、生地は、一緒に織られた横糸と縦糸を含む織布であり、前記二酸化チタンの少なくとも一部は、前記横糸と前記縦糸との間の交点に位置している。すなわち、二酸化チタンを含む結合剤は、隣接する2本の縦糸と、前記2本の縦糸の上又は下を通る隣接する2本の横糸よって区画された各空間内に保持されている。これらの位置に二酸化チタンが存在すると、低いNe(イギリス式綿番手)の糸(つまり、高線密度の糸)を使用しなくとも、不透明度(又はカバーする力)が大幅に向上する。実施形態によれば、生地は綾織り、好ましくはデニム布でも良い。
【0041】
生地の糸の間、例えば、縦糸と横糸の間に配置される二酸化チタンの相対量は、生地の構造に応じて、及び/又は生地の製造方法中の生地の伸びに応じて変化することが観察されている。
例えば、縦糸の密度が増加すると、複数の縦糸間の二酸化チタンと結合剤の相対量が減少する。
例えば、本発明の製造方法の途中で生地が引き伸ばされたものは、製造の途中で、少ししか引き伸ばされないか、又は引き伸ばされなかったものに比べて、生地の縦糸間の二酸化チタン及び結合剤の相対量が、同じ生地に対して増加する。
【0042】
「処理された生地」、「最終的な生地」という用語は、本発明の製造方法によって得られた生地、すなわち衣服に使用される生地を指している。
従って、以下の生地の特徴及び特性は、衣服に見られるような乾燥した、最終的な、処理された生地を指している。
実施形態により、処理された生地において、二酸化チタンは、0.25μm~4μm、好ましくは0.4μm~3μm、より好ましくは0.5μm~2μmの範囲の、平均粒子サイズを有している。
実施形態により、最終的に処理された生地において、二酸化チタンの量は、処理された生地の総重量の3重量%~10重量%の範囲、好ましくは、処理された生地、すなわち、処理され乾燥した生地の総重量の6重量%~8重量%の範囲である。
【0043】
実施形態において、水性組成物中の二酸化チタンの量は、この二酸化チタンの量が、生地の総重量の3重量%~10重量%の範囲、好ましくは生地の総重量の6重量%~8重量%の範囲にある最終的な処理生地が得られるように選択される。
実施形態においては、処理された最終的な生地、例えば、衣服に組み込まれた生地において、結合剤の量は、処理された生地の総重量の0.5重量%~4重量%の範囲、好ましくは処理された生地の総重量の2重量%~3.5重量%の範囲である。
実施形態において、水性組成物中の結合剤の量は、処理された生地において、生地の総重量に対して結合剤の量が0.5重量%~4重量%の範囲、好ましくは、生地の総重量の2重量%~3.5重量%の範囲にあるように選択できる。
【0044】
実施形態による、生地中の結合剤の量は、この生地中の二酸化チタンの量よりも少ない。この場合、上記のように、特に心地よい外観及び手触りを有する白色処理された生地を得ることができる利点がある。例えば、本発明の処理生地は、処理生地の総重量の5重量%~10重量%、好ましくは6重量%~8重量%の範囲の量の二酸化チタンと、処理された生地の総重量の1重量%~5重量%、好ましくは2重量%~4重量%の範囲の結合剤とを含んでいる。
本発明により処理された最終的な生地は、洗濯に耐性があるという利点がある。特に、家庭での数回の洗濯の後でも、生地の不透明度及び白色度は、実質的に影響を受けたり、低下したりすることはない。
【0045】
不透明度及び白色度は、既知の方法に従って、例えば、分光光度法を使用することによって測定できる。
本明細書で使用されている「不透明度」という用語は、生地のカバー力を指す(すなわち、透けにくい繊維の品質を指す)。例えば、生地の不透明度が高いほど、生地が透けて見えにくくなる。言い換えると、生地の不透明度が高いほど、つまり生地がより不透明なほど、生地の下にあるものが、生地を通して露出するのを防ぐことができる。
【0046】
実施形態において、結合剤は、-30℃~0℃、好ましくは-25℃~-5℃、より好ましくは-20℃~-8℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有している。この場合、特に柔らかい処理された生地が得られる利点がある。
ガラス転移温度(Tg)は、ASTM E1356に従って測定できる。
実施形態によれば、結合剤は、ショアA硬度≦30°ショアA、好ましくは5°ショアA~25°ショアAの範囲、より好ましくは10°ショアA~20°ショアAの範囲を有していても良い。
ショアA硬度は、ASTM D2240に従って測定できる。
【0047】
上記のように、結合剤が上記の範囲のガラス転移温度(Tg)及び/又はショアA硬度を有する場合、特に柔らかい不透明な生地を得ることが可能である。
実施形態によれば、本発明の生地は、二酸化チタン及び少なくとも1つの結合剤に加えて、1つ以上の光沢剤、及び/又は1つ以上の分散剤、及び/又は1つ以上の安定剤、及び/又は1つ以上の湿潤剤を、オプションとして含んでいても良い。
【0048】
実施形態において、最終的な処理生地は、この処理生地の総重量の0.5重量%~3重量%、好ましくは1重量%~2重量%の範囲の量の、光沢剤を含んでいても良い。実施形態にとして、水性組成物中の光沢剤の量が、処理された生地の総重量に対して、0.5重量%~3重量%、好ましくは1重量%~2重量%の範囲にある生地を得るように選択しても良い。
実施形態において、生地は、処理された生地の総重量の0.1重量%~1重量%、好ましくは0.2重量%~0.5重量%の範囲の量の、分散剤を含んでいても良い。
実施形態において、水性組成物中の分散剤の量は、分散剤の量が、処理された生地の総重量の、0.1重量%~1重量%、好ましくは0.2重量%~0.5重量%の範囲にある生地を得るように選択しても良い。
【0049】
実施形態において、本発明の生地は、処理された生地の総重量の0.1重量%~0.5重量%、好ましくは0.2重量%~0.4重量%の範囲の量の安定剤を含んでいても良い。実施形態において、水性組成物中の安定剤の量は、この安定剤の量が処理された生地の総重量の0.1重量%~0.5重量%、好ましくは0.2重量%~0.4重量%の範囲にあるように、選択しても良い。
実施形態において、本発明の生地は、処理された生地の総重量の0.05重量%~0.5重量%、好ましくは0.1重量%~0.4重量%の範囲の量の湿潤剤を含んでいても良い。実施形態において、水性組成物中の湿潤剤の量は、この湿潤剤の量が生地の総重量の0.05重量%~0.5重量%の範囲、好ましくは0.1重量%~0.4重量%の範囲にある処理された生地が得られるように、選択できる。
【0050】
本発明の生地上の組成物は、前記乾燥及び硬化された組成物に含まれる複数の成分の量を決定するために、既知の方法に従って分析できる。例えば、二酸化チタンは、処理された生地から抽出され、既知の方法に従って分離及び分解され、ASTM D1394-白色チタン顔料の化学分析のテストに従って、特性が評価される。
本発明の一態様によれば、本発明の生地は、衣服に合わせて調整するのに適している。本発明のさらなる対象は、本発明により得られる生地を含む衣服である。本発明に従って処理された生地によれば、この生地を通してユーザの皮膚が(部分的に)見えないという利点がある。同様に、本発明による衣服の下に着用されたユーザの下着は、前記衣服を通して見えないという利点がある。
【0051】
本発明のさらなる対象は、繊維、すなわち生地、好ましくは織物の処理のための水性組成物であり、
この水性組成物は、二酸化チタンと、少なくとも1つの結合剤、好ましくは架橋可能な結合剤とを含み、
前記二酸化チタンが、5~500g/Lの範囲、好ましくは50~400g/Lの範囲、より好ましくは75~300g/Lの範囲、さらにより好ましくは90~200g/Lの範囲の量であり、
前記結合剤が、1~100g/Lの範囲、好ましくは10~80g/Lの範囲、より好ましくは30~70g/L、さらにより好ましくは35~60g/Lの範囲の量である。
実施形態によれば、水性組成物は、二酸化チタンと、少なくとも1つの結合剤、好ましくは架橋可能な結合剤とを含み、
前記二酸化チタンは、前記組成物の0.5重量%~40重量%の範囲、好ましくは5重量%~30重量%の範囲、より好ましくは10重量%~20重量%の範囲の量であり、
前記結合剤は、前記組成物の0.5重量%~10重量%の範囲、好ましくは2重量%~8重量%の範囲、より好ましくは4重量%~6重量%の範囲の量である。
【0052】
本発明の対象である水性組成物は、本発明の製造方法で使用するのに適している。従って、本発明の製造方法における組成物に関してここに開示された水性組成物の特徴は、組成物自体に使用されることを意図し、逆もまた同様である。すなわち、水性組成物自体に関して本明細書に開示された特徴は、本発明の製造方法における組成物にも使用することを意図している。
この水性組成物は、既知の方法によって製造できる。例えば、異なる複数の成分を混合することによって製造できるという利点がある。実施形態によれば、複数の成分が、上記水性組成物を得るために提供され、また、一緒に混合することができる。実施形態によれば、2つ以上の複数の成分は、混合中に連続して提供されても良い。
【0053】
実施形態によれば、水性組成物は、4~6の範囲のpH、好ましくは4.5~5の範囲のpHを有しているのが良い。実施形態によれば、水性組成物は、さらに、前記組成物の0.5重量%~10重量%、好ましくは1重量%~8重量%、より好ましくは2重量%~5重量%の範囲の量の、少なくとも1つの光沢剤を含んでいても良い。
【0054】
実施形態によれば、水性組成物は、
5~500g/Lの二酸化チタンと、
1~100g/Lの少なくとも1つの結合剤とを含んでいても良い。
実施形態によれば、水性組成物中の二酸化チタンの濃度は、50~400g/L、好ましくは75~300g/L、より好ましくは90~200g/Lの範囲である。
実施形態によれば、水性組成物中の結合剤の濃度は、10~80g/L、好ましくは30~70g/L、より好ましくは35~60g/Lの範囲である。
実施形態によれば、水性組成物は、1つ又は複数の光沢剤をさらに含んでいても良い。実施形態によれば、この水性組成物中の光沢剤の濃度は、5~40g/L、好ましくは10~35g/L、より好ましくは15~30g/Lの範囲である。
【0055】
実施形態によれば、水性組成物は、さらに、1つ又は複数の分散剤を含んでいても良い。実施形態によれば、この水性組成物中の分散剤の濃度は、1~20g/L、好ましくは2.5~10g/L、より好ましくは4~6g/Lの範囲である。
実施形態によれば、水性組成物は、さらに、1つ又は複数の安定剤を含んでいても良い。実施形態によれば、この水性組成物中の安定剤の濃度は、1~10g/L、好ましくは2~6g/L、より好ましくは3~5g/Lの範囲である。
実施形態によれば、水性組成物は、さらに、1つ又は複数の湿潤剤を含んでいても良い。実施形態によれば、この水性組成物中の湿潤剤の濃度は、0.5g/L~10g/L、好ましくは1~5g/L、より好ましくは2~4g/Lの範囲である。
【0056】
実施形態によれば、水性組成物は、さらに、二酸化チタンとは異なる1つ又は複数の鉱物充填剤を含んでいても良い。実施形態によれば、この水性組成物中の二酸化チタンとは異なる鉱物充填剤の濃度は、少なくとも1つの鉱物充填剤の10~100g/L、好ましくは10~50g/Lの範囲である。実施形態によれば、鉱物充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、タルク、及びそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0057】
また、本発明の対象は、本発明による製造方法における本発明による組成物の使用である。
本発明によれば、当技術分野で知られている製造方法と比較して、より簡単に、より速く、より安価な方法で、不透明度の高い白い生地を得ることができるという利点がある。
【0058】
実験セクション
実施例1-組成物
実施例1は、本発明の水性組成物の異なる実施形態に関するものである。
全ての例示的な組成物において、水性組成物の最終容量は1Lである。
組成物1:
二酸化チタン 100g/L
ORGAL ES61(登録商標) 40g/L
水 最終容量1Lまで
組成物2:
二酸化チタン 100g/L
ORGAL ES61 (登録商標) 40g/L
SANYON DQ 5g/L
HELIZARIN COMP. PFA 4g/L
BLANKOPHOR BSUN (登録商標) 20g/L
COTTOCLARIN TR CT 3g/L
水 最終容量1Lまで
組成物3:
二酸化チタン 100g/L
ORGAL ES61 (登録商標) 40g/L
SANYON DQ 5g/L
HELIZARIN COMP. PFA 4g/L
COTTOCLARIN TR CT 3g/L
水 最終容量1Lまで
【0059】
上記の組成物1~3において、ORGAL ES61(登録商標)(Tgが-12℃のスチレンアクリル共重合体)は結合剤であり、SANYONDQは分散剤であり、HELIZARINCOMP.PFAは安定剤であり、BLANKOPHOR BSUN(登録商標)は光沢剤であり、COTTOCLARIN TRCTは湿潤剤であった。
【0060】
組成物4:
二酸化チタン: 100g/L
HELIZARIN COMP. PFA: 46g/L
SANYON DQ: 5g/L
HELIZARIN COMP. PFA: 4g/L
COTTOCLARIN TR CT: 3g/L
水: 最終容量1Lまで
組成物5:
二酸化チタン: 100g/L
HELIZARIN BINDER TOW: 46g/L
SANYON DQ: 5g/L
HELIZARIN COMP. PFA: 4g/L
BLANKOPHOR BSUN:(登録商標) 20g/L
COTTOCLARIN TR CT: 3g/L
水: 最終容量1Lまで
【0061】
上記の組成物4~5において、HELIZARIN COMP. PFA(Tgが-18℃のアクリル共重合体、)が結合剤であり、SANYON DQが分散剤、HELIZARIN COMP. PFAは安定剤、BLANKOPHOR(登録商標)BSUNは光沢剤、COTTOCLARIN TRCTは湿潤剤であった。
【0062】
組成物6:
二酸化チタン: 100g/L
EDOLAN SN: 30g/L
EDOLAN XCIB: 5g/L
SANYON DQ: 5g/L
HELIZARIN COMP. PFA: 4g/L
COTTOCLARIN TR CT: 3g/L
水: 最終容量1Lまで
組成物7:
EDOLAN SN: 30G/L
EDOLAN XCIB: 5G/L
SANYON DQ: 5G/L
HELIZARIN COMP. PFA: 4G/L
BLANKOPHOR B-SUN:(登録商標) 20G/L
COTTOCLARIN TR CT: 3g/L
水: 最終容量1Lまで
【0063】
上記の組成物6~7において、EDOLAN SN(脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタン)が結合剤であり、EDOLAN XCIBが架橋剤であり、SANYON DQが分散剤であり、HELIZARIN COMP.PFAは安定剤であり、BLANKOPHOR BSUN(登録商標)は光沢剤であり、COTTOCLARIN TRCTは湿潤剤であった。
架橋剤EDOLANXCIBで架橋された結合剤EDOLANSNのショアA硬度は20°ショアAである。
【0064】
上記の全ての組成物1~7は、複数の成分を混合し、攪拌して(例えば、約30分間攪拌する)、均一な混合物を得ることによって製造することができる。
【0065】
実施例2 処理された生地の生産
処理された生地1
綿織物は、実施例1に従って「組成物1」で処理された。
パディングにおいて水性組成物が使用された。
生地を150℃で乾燥し、180℃で45秒間硬化させた。
得られた処理された生地には、次のものが含まれていた。
二酸化チタン 約7重量%
結合剤 約2.8重量%
これらの量は、処理された生地の総重量に対する重量パーセントとして表されている。
【0066】
処理された生地2
綿織物は、実施例1に従って「組成物3」で処理された。
水性組成物は、パディングにおいて使用された。
生地を150℃で乾燥し、180℃で45秒間硬化させた。
得られた処理された生地には、次のものが含まれていた。
二酸化チタン 約7重量%
結合剤 約2.8重量%
分散剤 約0.35重量%
安定剤 約0.28重量%
湿潤剤 約0.2重量%
これらの量は、処理された生地の総重量に対する重量パーセントとして表されている。
【0067】
処理された生地3
綿織物は、実施例1に従って「組成物4」で処理された。
水性組成物は、パディングにおいて使用された。
生地を150℃で乾燥し、180℃で45秒間硬化させた。
得られた処理された生地には、次のものが含まれていた。
二酸化チタン 約7重量%
結合剤 約3.22重量%
分散剤 約0.35重量%
安定剤 約0.28重量%
湿潤剤 約0.2重量%
これらの量は、処理された生地の総重量に対する重量パーセントとして表されている。
【0068】
処理された生地4
綿織物は、実施例1に従って「組成物6」で処理された。
水性組成物は、パディングにおいて使用された。
生地を150℃で乾燥し、180℃で45秒間硬化させた。
得られた処理された生地には、次のものが含まれていた。
二酸化チタン 約7重量%
結合剤 約2.1重量%
架橋剤 約0.35重量%
分散剤 約0.35重量%
安定剤 約0.28重量%
湿潤剤 約0.2重量%
これらの量は、処理された生地の総重量に対する重量パーセントとして表される。
【0069】
実施例3 例示的な処理済み生地の不透明度とCMC DE(色差)の評価
本発明の製造方法の前後の生地の3つのサンプルの不透明度及びCMC DE(色差)を測定した。
特に、実施例2に従って、生地を処理して、「処理生地1」、「処理生地3」、及び「処理生地4」を得た。
不透明度とCMC DE(色差)は、白と黒の背景カードを使用して、Datacolor 600分光光度計によって、それ自体が知られている方法に従って分光光度法で測定した。
生地の不透明度は、次の式に従って、同じサンプルの固有の光反射率R∞に対する単一シートの光反射率R0のパーセンテージとして表される比率として、裏紙で測定した。
不透明度=100×R0/R∞
【0070】
単一シートの光反射率係数「R0」は、裏地として黒い空洞を備えた単一シートの生地の光反射率係数として定義されている。
固有の光反射率「R∞」は、層又はパッドの厚さがさらに増加しても、測定された反射率が変化しないような厚さを有する生地の層又はパッドの光反射率として定義されている。この場合、1枚の生地は折りたたまれていないときは1枚の生地であるため、上記の層又はパッドの厚さは1枚の生地の厚さに対応する。分析する層又はパッドの厚さを増やすために、これらの層又はパッドの厚さがさらに増加しても、反射率値が変化しない厚さまで、これらの層又はパッドの厚さを厚くすることができる。例えば、同じ布の2つ以上の部分が重なるように布を折り畳むことによって、厚くすることができる。
【0071】
「CMC DE」は、サンプルカラーとリファレンスカラーの違いである。CMC DEは、白と黒の背景カードを使用して、Datacolor600分光光度計で測定された。まず、白い背景の上に生地を置き、Datacolor600分光光度計を使用して反射率を測定した。次に、同じ生地を黒い背景の上に置き、Datacolor600を使用し、サンプルとして反射率を測定した。白い背景の上の生地と黒い背景の上の生地との間の色の違い(CMC DE)は、既知の方法に従って分光光度的に決定した。CMC DEの値が小さいほど、生地は不透明になる。言い換えれば、生地が不透明であるほど、白と黒の色の違いは小さくなる。
【0072】
以下のような結果が得られた。
未処理の生地
CMC DE:3.17
不透明度:87%
実施例2に従って処理された生地1
CMC DE:1.84
不透明度:95%
実施例2に従って処理された生地3
CMC DE:1.90
不透明度:95.8%
実施例2に従って処理された生地4
CMC DE:1.91
不透明度:95.32%
【0073】
「処理された生地1」の場合、本発明の製造方法は、未処理の生地に対して生地の不透明度を、約8%増加させることが、観察された。また、本発明の製造方法は、未処理の生地に対してCMC DE(すなわち、色差)を、約42%低減させるのを可能にしている。
「処理された生地3」の場合、本発明の製造方法は、未処理の生地に対して生地の不透明度を、約8.8%増加させるのを可能にしている。また、本発明の製造方法は、未処理の生地に対してCMC DE(すなわち、色差)を、約40%低減させるのを可能にしている。
「処理された生地4」の場合、本発明の製造方法は、未処理の生地と比較して、生地の不透明度を、約8.3%増加させることを可能にしている。また、本発明の製造方法は、未処理の生地に対して、CMC DE(すなわち、色差)を、約39.7%低減させるのを可能にしている。
【0074】
本発明の製造方法により得られる結果は、本発明の製造方法の処理の前後のサンプル生地を異なる倍率で示す、添付の図でも観察することができる。
特に、
図1A及び
図1Bは、本発明の製造方法の処理前(
図1A)及び処理後(
図1B)のサンプル生地を示す写真である。
図2Aと
図2Bは、10倍の倍率で撮影された写真であり、
図3Aと
図3Bは、60倍の倍率で撮影された写真である。
例えば、
図1A及び
図1B、ならびに
図2A及び
図2Bから観察されるように、本発明の方法で処理された処理済の生地は、未処理の生地に対して改善された不透明度及び白色度を有している。
【0075】
図3Bでは、処理済の生地の繊維と糸の間に二酸化チタンの粒子が観察される。このような粒子は、未処理の生地を示す
図3Aでは観察できない。
図3A及び
図3Bは、本発明が、生地に二酸化チタンを提供するのに効果的であるといことを示している。
【国際調査報告】