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特表2022-515528短時間作用型選択的糖質コルチコイド受容体モジュレーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(54)【発明の名称】短時間作用型選択的糖質コルチコイド受容体モジュレーター
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/567 20060101AFI20220210BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20220210BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220210BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220210BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220210BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20220210BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A61K31/567
A61K31/58
A61K31/575
A61P25/00 101
A61P25/20
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/02
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/50
A61K9/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538128
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 US2019068296
(87)【国際公開番号】W WO2020139817
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】62/785,761
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521281999
【氏名又は名称】パンダ コンサルティング エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ティエロフ-エカート、ルース
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA51
4C076AA53
4C076AA61
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD28
4C076EE06H
4C076EE07H
4C076EE09H
4C076EE11H
4C076EE16H
4C076EE23H
4C076EE30H
4C076EE31H
4C076EE32H
4C076EE33H
4C076EE36H
4C076EE37H
4C076EE42H
4C076EE48H
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA09
4C086DA11
4C086DA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
(57)【要約】
急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を予防、緩和、または治療するための短時間作用型選択的糖質コルチコイド受容体モジュレーター、および該モジュレーターの即時放出および複数の遅延パルス放出を有する組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を予防、緩和、または治療する方法であって、前記方法は、その必要のある対象に、前記対象の急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を予防、緩和、または治療するのに有効な量のSASGRMを投与する工程を有する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記SASGRMは、ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン、デキサメタゾンの17-ベータ-カルボキサミド、および、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾールから選択される、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記SASGRMは、
の化合物、またはそれらの組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容される塩、およびそれらの溶媒和物から選択される、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患は、学業上の問題、教育上の問題、適応障害、ストレスに関連する急性不眠症、副腎皮質機能亢進症に関連する慢性不眠症、客観的に短い睡眠時間を伴う副腎皮質機能亢進症に関連する慢性不眠症、概日リズム障害、時差ぼけ型の概日リズム障害またはシフトワーク型の概日リズム障害から選択される、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記SASGRMは、式I
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記SASGRMは、式II
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記SASGRMは、式III
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記SASGRMは、式IV
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記SASGRMは、式V
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の方法において、前記SASGRMは、複数の粒子を有する組成物に有される、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記複数の粒子は、即時放出粒子、遅延放出粒子、パルス性放出粒子、またはそれらの組み合わせを有する、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記複数の粒子は、パルス性放出粒子を有する、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、前記パルス性放出粒子が、前記SASGRMが前記即時放出粒子から放出された後のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出するパルス性放出粒子の第1の集団と、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第1の集団から放出された後のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出するパルス性放出粒子の第2の集団とを有する、方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記パルス性放出粒子が、前記パルス性放出粒子の前記第2の集団から前記SASGRMが放出された後のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出するパルス性放出粒子の第3の集団をさらに有する、方法。
【請求項15】
請求項11~14のいずれかに記載の方法において、前記遅延放出粒子および前記パルス性放出粒子はコーティングを有する、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記コーティングは、水溶性ポリマーを有する、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記水溶性ポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ヒアルロン酸、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、およびこれらの任意の組み合わせから選択される、方法。
【請求項18】
請求項15記載の方法において、前記コーティングは、水不溶性ポリマーを有する、方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記水不溶性ポリマーは、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、非結晶性セルロース、ポリエチレン、および、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、メタクリレート、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS30D、Eudragit(登録商標)RL30D、Eudragit(登録商標)NE30D、Methocel(登録商標)K100M、Methocel(登録商標)K15M、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項20】
請求項15記載の方法において、前記コーティングは、さらに可塑剤を有する、方法。
【請求項21】
請求項15記載の方法において、前記コーティングは、さらに滑剤を有する、方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記滑剤は、さらにタルクを有する、方法。
【請求項23】
請求項11~14のいずれかに記載の方法において、前記即時放出粒子はシールコーティングを有する、方法。
【請求項24】
請求項11~14のいずれかに記載の方法において、前記遅延放出粒子および前記パルス性放出粒子はシールコーティングを有する、方法。
【請求項25】
請求項13記載の方法において、前記パルス性放出粒子の前記第1の集団が、前記SASGRMが前記即時放出粒子から放出された後、約0.5~3時間のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出し、前記パルス性放出粒子の前記第2の集団が、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第1の集団から放出された後、約0.5~3時間のラグ期間期間に続いて前記SASGRMを放出する、方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、前記パルス性放出粒子の前記第1の集団が、前記SASGRMが前記即時放出粒子から放出された後、約1~2時間のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出し、前記パルス性放出粒子の前記第2の集団が、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第1の集団から放出された後、約1~2時間のラグ期間期間に続いて前記SASGRMを放出する、方法。
【請求項27】
請求項14記載の方法において、前記パルス性放出粒子の前記第3の集団が、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第2の集団から放出された後、約1~3時間のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出する、方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法において、前記パルス性放出粒子の前記第3の集団が、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第2の集団から放出された後、約1~2時間のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出する、方法。
【請求項29】
請求項11~14のいずれかに記載の方法において、前記複数の粒子は錠剤に含まれる、方法。
【請求項30】
請求項11~14のいずれかに記載の方法において、前記複数の粒子はカプセルに含まれる、方法。
【請求項31】
請求項1~9のいずれかに記載の方法において、前記対象が、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害または疾患を有するヒトである、方法。
【請求項32】
SASGRMの量を有する即時放出粒子、遅延放出粒子、またはパルス性放出粒子を有する複数の粒子を有する組成物。
【請求項33】
請求項32記載の組成物において、前記SASGRMは、ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン、デキサメタゾンの17-ベータ-カルボキサミド、および、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾールから選択される、組成物。
【請求項34】
請求項32記載の組成物において、前記SASGRMは、
の化合物、またはその組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容される塩およびそれらの溶媒和物から選択される、組成物。
【請求項35】
請求項34記載の組成物において、前記複数の粒子は、パルス性放出粒子を有する、組成物。
【請求項36】
請求項35記載の組成物において、前記パルス性放出粒子が、前記SASGRMが前記即時放出粒子から放出された後のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出するパルス性放出粒子の第1の集団と、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第1の集団から放出された後のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出するパルス性放出粒子の第2の集団とを有する、組成物。
【請求項37】
請求項36記載の組成物において、前記パルス性放出粒子が、前記パルス性放出粒子の前記第2の集団から前記SASGRMが放出された後のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出するパルス性放出粒子の第3の集団をさらに有する、組成物。
【請求項38】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物において、前記遅延放出粒子および前記パルス性放出粒子はコーティングを有する、組成物。
【請求項39】
請求項38記載の組成物において、前記コーティングは、水溶性ポリマーを有する、組成物。
【請求項40】
請求項39記載の組成物において、前記水溶性ポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ヒアルロン酸、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、組成物。
【請求項41】
請求項38記載の組成物において、前記コーティングは、水不溶性ポリマーを有する、組成物。
【請求項42】
請求項41記載の組成物において、前記水不溶性ポリマーは、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、非結晶性セルロース、ポリエチレン、および、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、メタクリレート、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS30D、Eudragit(登録商標)RL30D、Eudragit(登録商標)NE30D、Methocel(登録商標)K100M、Methocel(登録商標)K15M、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、組成物。
【請求項43】
請求項38記載の組成物において、前記コーティングは、さらに可塑剤を有する、組成物。
【請求項44】
請求項38記載の組成物において、前記コーティングは、さらに滑剤を有する、組成物。
【請求項45】
請求項44記載の組成物において、前記滑剤は、さらにタルクを有する、組成物。
【請求項46】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物において、前記即時放出粒子はシールコーティングを有する、組成物。
【請求項47】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物において、前記遅延放出粒子および前記パルス性放出粒子はシールコーティングを有する、組成物。
【請求項48】
請求項36~37のいずれかに記載の組成物において、前記パルス性放出粒子の前記第1の集団が、前記SASGRMが前記即時放出粒子から放出された後、約1~3時間のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出し、前記パルス性放出粒子の前記第2の集団が、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第1の集団から放出された後、約1~3時間のラグ期間期間に続いて前記SASGRMを放出する、組成物。
【請求項49】
請求項48記載の組成物において、前記パルス性放出粒子の前記第1の集団が、前記SASGRMが前記即時放出粒子から放出された後、約1~2時間のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出し、前記パルス性放出粒子の前記第2の集団が、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第1の集団から放出された後、約1~2時間のラグ期間期間に続いて前記SASGRMを放出する、組成物。
【請求項50】
請求項37記載の組成物において、前記パルス性放出粒子の前記第3の集団が、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第2の集団から放出された後、約1~3時間のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出する、組成物。
【請求項51】
請求項50記載の組成物において、前記パルス性放出粒子の前記第3の集団が、前記SASGRMが前記パルス性放出粒子の前記第2の集団から放出された後、約1~2時間のラグ期間に続いて前記SASGRMを放出する、組成物。
【請求項52】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物において、前記複数の粒子は錠剤に含まれる、組成物。
【請求項53】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物において、前記複数の粒子はカプセルに含まれる、組成物。
【請求項54】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物であって、前記組成物が、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を予防、緩和、または治療するための有効量のパルス性放出粒子を有する、組成物。
【請求項55】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物であって、式I
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、組成物。
【請求項56】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物であって、式II
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、組成物。
【請求項57】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物であって、式III
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、組成物。
【請求項58】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物であって、式IV
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、組成物。
【請求項59】
請求項32~37のいずれかに記載の組成物であって、式V
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を有する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年12月28日に出願された米国仮特許出願第62/785,761号の利益を主張するものであり、この出願はその全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的には、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害および疾患を予防、緩和および治療する分野に関するものである。より詳細には、本発明は、短時間作用型選択的糖質コルチコイド受容体モジュレーター(「SASGRM(s)」)の即時放出、遅延放出および/または拍動性放出組成物の投与による、ストレスに関連する学業および教育上の問題、適応障害、不眠症障害、および概日リズム障害の症状の予防、緩和および治療に関するものであり、短時間作用型選択的糖質コルチコイド受容体モジュレーターは、これに限定されないが、ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(例えば、RU-43044)、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン(例えば、ORG 36410)、デキサメタゾンの17-ベータ-カルボキサミド、およびΔ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾールを含む。
【背景技術】
【0003】
本明細書中には、特許、公開出願、技術論文、学術論文など、さまざまな出版物が引用されている。これらの引用された各出版物は、その全体およびすべての目的のために、参照により本明細書に組み込まれている。
【0004】
すべての生物は、動的平衡、すなわち恒常性を維持しなければならない。ストレスは、恒常性が乱されているか、乱されていると認識されたときに発生し、恒常性を回復させるための適応反応の引き金となる。ストレスシステムの主要な末梢エフェクターの1つが糖質コルチコイドであり、ヒトにとって最も重要なものがコルチゾールである。
【0005】
コルチゾールは、副腎で合成および分泌される多面的なステロイドホルモンである。コルチゾールは、ストレス反応の主要な媒介物質の一つであると同時に、睡眠覚醒サイクルの主要な媒介物質でもあり、循環器系、エネルギー代謝、免疫、脳を含む多くの体のシステムや器官に作用し、コルチゾールのレベルが認知、記憶、睡眠覚醒システム、その他の脳機能や神経伝達物質に影響を与える。
【0006】
コルチゾールは、核内ホルモンスーパーファミリーの両方のメンバーである糖質コルチコイド受容体(GR)および鉱質コルチコイド受容体(MR)に結合することによってその効果を発揮する。GRは、リガンドによって活性化される転写因子であり、ホモまたはヘテロ二量体としてGR応答要素に結合したり、他の転写因子とタンパク質相互作用したり、他の転写因子を封じ込めてDNAとの結合を阻害したりするなど、さまざまなメカニズムによって標的遺伝子の転写を活性化または抑制する。
【0007】
コルチゾールレベルは、視床下部の視交叉上核にあるペースメーカーによって駆動される概日リズムを有し、早朝の睡眠覚醒移行の時間付近に1日のピークを有し、夕方および夜の早い時間帯には最小レベルになる。また、コルチゾールは、視床下部のコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)や下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)といったコルチゾールの合成および分泌を活性化するホルモンを抑制することで、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸を介した負のフィードバック制御を受ける。このフィードバックループは、コルチゾールの概日リズムに加えて、コルチゾールピークのほぼ1時間ごとのパルスを伴うコルチゾール分泌の超日パターンをもたらす。このパルス性リズムは、コルチゾールシグナル伝達の生物学的結果にとって重要である。最後に、11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11βHSD)1型および2型という酵素の局所発現は、局所コルチゾール濃度を調節し、臓器によってMR、GR、またはその両方がコルチゾールによって占有されるかどうかに影響を与える。
【0008】
このように、コルチゾールレベルの制御とその作用機序は非常に複雑であり、GRへの結合の結果は、局所的なコルチゾール濃度、そのパルス性、GRの発現レベル、MRの共発現、および分子レベルでの組織および細胞特異的な補因子および補抑圧因子の存在に依存する。この複雑さは、生体内で活性であり、様々な臓器や生物学的システムにおける所望の活性と、HPA軸に対する代謝および免疫抑制効果との間に良好な解離を示す、選択的なSASGREMの同定を大きく妨げる。
【0009】
ストレス要因に対する予想される反応と釣り合いが取れていない苦痛は、適応障害として定義される。症状は臨床的に重要であり、著しい苦痛と機能障害を引き起こす。この苦痛と障害はストレス要因と関連している。
【0010】
ストレス下での機能障害を伴う適応障害の代表的なものに学業不振がある。例えば、多くの学生は、学業の忙しさや試験を控えていることによるストレスに対処することができない。このような状況では、コルチゾールが上昇することが、学術的および社会的ストレスに関する有効な実験設定(試験者用社会的ストレステスト)で示されている。コルチゾールの上昇のタイミングは、記憶の定着や記憶の検索を損なう可能性があり、急性の不安にとどまらず、学業の妨げになる可能性がある。)10
【0011】
ストレスの多い一日を過ごしたときの過覚醒状態は、急激に入眠を遅らせ、睡眠維持を阻害する。ストレスによる不眠はパフォーマンスの低下を招き、ストレスと不眠が悪循環に陥る。睡眠は、睡眠恒常性と概日ペースメーカーという2つの振動プロセスの相互作用によって制御されている。11概日睡眠覚醒サイクルは、視床下部前部の視交叉上核にある概日ペースメーカーによって制御されており、そのタイミングは明るさ/暗さや社会活動に同期(同調)している。睡眠相は、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の活動の日内変動を反映したコルチゾール分泌パターンと密接に関連している。コルチゾールは、起床直後にピークに達し(コルチゾール覚醒反応)、その後、日中は減少していき、午前0時頃に最小値(直下点)に達する。コルチゾールの変化は睡眠サイクルと一致しており、夜の前半の徐波睡眠(SWS)ではコルチゾールのレベルが低く、夜の後半の急速眼球運動(REM)睡眠ではコルチゾールのレベルが高くなる。
【0012】
睡眠障害の中には、副腎皮質機能亢進症、コルチゾール分泌のタイミングと振幅の乱れ、およびHPA軸の過活動と関連するものがある。主観的な慢性原発性不眠症と客観的な睡眠時間の短さを伴う不眠症の表現型は、客観的な睡眠時間が正常な表現型とは対照的に、コルチゾール血漿レベルの上昇と関連することが示された。12
【0013】
健康な加齢に伴う睡眠パターンの変化は、SWSの低下、早朝覚醒、起床回数の増加などで構成され、HPA軸の過活動と関連している。コルチゾールの血漿中濃度は、タイムゾーンを移動した後や、実験的に急激なタイムシフトを行った後にも有意に上昇し、コルチゾール分泌の時間的パターンも大きく変化することがわかった。13慢性的な概日リズムの乱れは、唾液中コルチゾールの上昇および側頭葉の萎縮と関連していることがわかった。14
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
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【非特許文献14】Kwangwook, C. Chronic jet lag produces temporal lobe atrophy and spatial cognitive deficits. Nature Neuroscience 2001, 4 (6).
【発明の概要】
【0015】
本発明は、急性ストレスまたは一時的な過コルチゾール症に関連する症状、障害、および疾患を緩和、予防、および治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、これに限定されないが、
ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン、例えば、式Iの化合物RU-43044、
【化1】
21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン、例えば、式IIの化合物、
【化2】
16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン、例えば、式IIIの化合物ORG 36410、
【化3】
デキサメタゾンの17-ベータ-カルボキサミド、例えば、式IVの化合物、
【化4】
および、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール、例えば、式Vの化合物、
【化5】
またはその組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物から選択されるSASGRM化合物を含む短時間作用型選択的糖質コルチコイド受容体モジュレーター(「SASGRM」)を、急性ストレスまたは一時的な過コルチゾール症に関連する症状、障害、および疾患を緩和、予防、および治療するのに有効な量で投与する工程を有する。急性ストレスまたは一時的な過コルチゾール症の状態としては、ストレスに起因する学業および教育上の問題、適応障害、不眠症障害、概日リズム障害などが挙げられる。具体的には、ストレス要因に対する予想される反応とは比例しない苦痛を適応障害と定義する。症状は臨床的に重要であり、顕著な苦痛と機能障害を引き起こす。この苦痛と障害はストレス要因と関連している。
【0016】
具体的には、一時的な副腎皮質機能亢進症に伴う不眠症としては、ストレスに起因する急性不眠症のほか、客観的に睡眠時間が短い慢性不眠症などがある。また、概日リズム障害には、時差ぼけ型、シフトワーク型の概日リズム障害がある。
【0017】
また、本発明は、ある量のSASGRMをその薬学的に許容される担体および任意に他の治療剤とともに有する即時放出粒子および/または遅延放出粒子を有する複数の粒子を有する組成物を特徴とする。本組成物のSASGRMは、これらに限定されるものではないが、ヒドロキシアンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン、例えば、式Iの化合物;21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン、例えば、式IIの化合物;16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン、例えば、式IIIの化合物;デキサメタゾンの17-β-カルボキサミド、例えば、式IVの化合物;およびΔ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール、例えば、式Vの化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物、ならびにそれらの任意の組み合わせを含む。組成物は、好ましくは、例えば、式I、式II、式III、式IV、または式VのSASGRMおよびそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物およびその任意の組み合わせを、それらの薬学的に許容される担体および任意に他の治療剤とともに有する、即時放出および/または遅延放出粒子またはその組み合わせを有し得る。遅延放出粒子は、パルス性放出粒子を含んでいてもよい。
【0018】
いくつかの態様では、組成物は、即時放出粒子を有する集団と、パルス性放出粒子を有する第1および第2の集団とを有する。パルス性放出粒子の第1の集団は、SASGRMが即時放出粒子から放出された後のラグ期間に続いてSASGRMを放出し、パルス性放出粒子の第2の集団は、SASGRMが第1のパルス性放出粒子の集団から放出された後のラグ期間に続いてSASGRMを放出する。いくつかの態様では、組成物は、SASGRMがパルス性放出粒子の第2の集団から放出された後のラグ期間に続いてSASGRMを放出するパルス性放出粒子の第3の集団をさらに有する。各ラグ期間は、約0.5時間~約3時間、好ましくは約0.5時間~約2.5時間、より好ましくは約1時間~約2時間の範囲とすることができる。
【0019】
本発明はまた、式I、式II、式III、式IVまたは式VのそれぞれのSASGRMおよびその薬学的に許容される塩および溶媒和物およびそれらの任意の組み合わせと、遅延放出またはパルス性放出パターンをもたらすその薬学的に許容される担体および任意に他の治療剤とを有する組成物を特徴とする。組成物は、SASGRM含有粒子の即時放出集団と、SASGRM含有粒子およびそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物、ならびにそれらの薬学的に許容される担体および任意選択で他の治療剤とのそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数の遅延放出またはパルス性集団とを含む。各粒子に含まれるSASGRMは、式I、式II、式III、式IV、または式V、およびそれらの薬学的に許容される塩と溶媒和物、またはそれらの任意の組み合わせを有し得る。本組成物は、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を予防、緩和、または治療するのに有効な量のSASGRMを含む。
【0020】
パルス性放出粒子の第1の集団は、SASGRMが即時放出粒子から放出された後のラグ期間の後に、SASGRMを放出する。いくつかの態様では、パルス性放出粒子の第2の集団が、パルス性放出粒子の第1の集団からSASGRMが放出された後のラグ期間の後に、SASGRMを放出する。いくつかの態様では、パルス性放出粒子の第3の集団が、パルス性放出粒子の第2の集団からSASGRMが放出された後のラグ期間の後に、SASGRMを放出する。各ラグ期間は、約0.5時間~約24時間、好ましくは1時間~約18時間の範囲とすることができる。各ラグ期間は、約1時間~約6時間、好ましくは約1時間~約5時間の範囲であってもよい。各ラグ期間は、約0.5時間~約3時間の範囲であってもよい。各ラグ期間は、約0.5時間~約2.5時間の範囲であってもよい。各ラグ期間は、約1時間~約2時間の範囲であってもよい。このように、組成物は、SASGRMパルス性放出粒子の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の集団を含んでいてもよい。
【0021】
即時放出型、遅延放出型、および/またはパルス性放出型の粒子は、コーティングを含んでいてもよい。コーティングは、水溶性ポリマーを含んでいてもよい。水溶性ポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、Eudragit(Eudragit)、ポリビニルピロリドン、Eudragit(登録商標)L、Eudragit(登録商標)S、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ヒアルロン酸、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、またはこれらの組み合わせを有し得る。コーティングは、水不溶性ポリマーを有していてもよい。水不溶性ポリマーは、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、非結晶性セルロース、ポリエチレン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、メタクリレート、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS30D、Eudragit(登録商標)RL30D、Eudragit(登録商標)NE30D、Methocel(登録商標)K100M、Methocel(登録商標)K15M、またはこれらの組み合わせを有し得る。
【0022】
コーティングは、任意に可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤は、クエン酸トリエチルを有し得る。コーティングは、任意に滑剤を含んでもよい。滑剤は、タルクを有し得る。コーティングは、任意に、浸透剤を含んでもよい。
【0023】
即時放出、遅延放出、および/または、パルス性放出粒子は、シールコーティングを有し得る。
【0024】
即時放出粒子、遅延放出粒子、およびパルス性放出粒子は、すべての遅延放出集団および/またはすべてのパルス性放出集団を含む、すべての粒子タイプを有する剤形に有され得る。即時放出粒子、遅延放出粒子、およびパルス性放出粒子は、別々の剤形であってもよい。各遅延放出および/またはパルス性放出集団は、別々の剤形であってもよい。剤形は、錠剤、カプレット、またはゼラチンカプセルなどのカプセルを有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、マウスの入場数に関する表2からの実施例2、実験1の結果のグラフである。
図2図2は、オープンエリアでの滞在時間に関する表2からの実施例2、実験1の結果のグラフである。
図3図3は、マウスの入場数に関する表4からの実施例2、実験2の結果のグラフである。
図4図4は、オープンエリアでの滞在時間に関する表4からの実施例2、実験2の結果のグラフである。
図5図5は、マウスの入場数に関する表6からの実施例2、実験3の結果のグラフである。
図6図6は、オープンエリアでの滞在時間に関する表6からの実施例2、実験3の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の態様に関連する様々な用語が、本明細書および特許請求の範囲を通して使用されている。このような用語は、特に示されていない限り、当技術分野における通常の意味が与えられる。その他の具体的に定義された用語は、本明細書に記載された定義と一致する方法で解釈される。
【0027】
本明細書では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、明示的に別段の記載がない限り、複数の参照語を含む。
【0028】
「即時放出」という用語は当技術分野では知られており、組成物または活性成分の溶解や吸収を遅延または延長することなく、投与後すぐにまたはできるだけ早く放出するように、好ましくは経口剤形として製剤化される組成物および活性成分を含む。
【0029】
「遅延放出」という用語は当技術分野では知られており、組成物または活性成分が、組成物または活性成分の最初の投与後、投与直後以外のある時点でのみ放出されるように、好ましくは経口剤形として製剤化される組成物または活性成分を含む。
【0030】
「パルス性放出」という用語は、当技術分野で知られている遅延放出の一形態であり、所定のオフリリース期間、すなわちラグタイムの直後の短時間内に組成物または活性成分が迅速かつ一時的に放出されるように、またはラグタイム、すなわち組成物または活性成分が放出されない期間の後に組成物または活性成分を迅速かつ完全に送達するメカニズムによって、好ましくは経口剤形として製剤化された組成物および活性成分を含む。この用語には、放出制御剤形、好ましくは経口剤形も含まれ、最初の即時放出パルスの後に少なくとも1つの時限パルスを生じ、各パルスは活性成分の迅速かつ実質的に完全な放出によって特徴付けられる、パルス性成分を有する。このようなシステムは、パルス性化合物送達システム(PDDS)、時間制御システム、またはシグモイド放出システムとして当技術分野で知られており、Pulsincap(商標)、Diffucap(登録商標)、CODAS(登録商標)、OROS(登録商標)、IPDAS(登録商標)、GEOCLOCK(登録商標)、Uniphyl(登録商標)などの市販システムが含まれる。
【0031】
ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オンは、式I:
【化6】
のRU-43044(17-ベータ-ヒドロキシ-17-アルファ-19-(4-メチルフェニル)アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オンとしても知られる、(10R,13S,17S)-17-ヒドロキシ-13-メチル-10-[(4-メチルフェニル)メチル]-17-プロップ-1-イニル-2,6,7,8,12,14,15,16-オクタヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オン)を有する。
21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロンは、式II:
【化7】
の化合物を有する。
16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエンは、式III:
【化8】
のORG 36410((11-ベータ,16-アルファ,17-ベータ)-11-(4-イソプロピルフェニル)-16,17-ジヒドロキシ-17-(1-プロピニル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン)を有する。
デキサメタゾンの17-ベータ-カルボキサミドは、式IV:
【化9】
の化合物を有する。
および、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾールは、式V:
【化10】
の化合物を有する。
【0032】
対象および患者という用語は、互換的に使用される。対象は、農場動物(例えば、馬、牛、羊、豚)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ)、伴侶動物(例えば、犬、猫)、および非ヒト霊長類(例えば、新世界ザル、旧世界ザル)などの哺乳類を含む、任意の生物であってよい。好ましい態様では、対象はヒトである。
【0033】
急性ストレスや一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状および疾患は、ストレス関連の学業および教育上の問題、適応障害、不眠症、および概日リズム障害などを含む。学業および教育上の問題の非限定的な例は、学校の試験に落ちること、不合格の点数または成績の取得、成績不振(その人の知的能力から期待される水準を下回ること)を含む。適応障害の非限定的な例は、神経質、心配性、神経過敏、または分離不安を特徴とする不安を伴う適応障害を含む。不眠症および概日リズム障害の非限定的な例は、タイムゾーンの変更(例えば、時差ぼけ)およびシフトワークによる短期的な睡眠障害、ならびにストレスの多い出来事(例えば、家族、経済的、または仕事関連の苦痛)、および通常の睡眠ルーチンおよび/または環境の一般的な変化によって引き起こされるもの、ならびに一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する客観的に短い睡眠時間を伴う慢性不眠症などの特定の形態の慢性不眠症を含む。
【0034】
ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(例えば、式I)、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン(例えば、式II)、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン(例えば、式III)、デキサメタゾンの17-β-カルボキサミド(例えば、式IV)、およびΔ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式V)を含む本発明のSASGRMは、適切なタイミングで連続的に投与すると、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害および疾患を予防、緩和、治療および/または有益に作用させることができる。ヒドロキシアンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(例えば、式I)、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン(例えば式II)、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン(例えば、式III)、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式IV)、およびΔ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式V)を含む本発明のSASGRMは、代謝安定性が限られており、血液脳関門を通過し、糖質コルチコイド受容体に選択的な拮抗活性を有し、経口投与後に血液中のコルチゾールレベルを実質的に変化させない(すなわち、HPA軸を破壊しない)ことから、これらの特性は、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を予防、緩和、および治療するために理想的な単回または断続的な複数回投与の投薬計画に有益な影響を与えるという点で、有利に利用することができる。したがって、本発明は、ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(例えば、式I)、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン(例えば、式II)、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン(例えば、式III)、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式IV)、およびΔ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式V)またはそれらの任意の組み合わせを含む本発明のSASGRMを用いて、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を緩和、予防、および治療する方法、ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(例えば、式I)、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン(例えば、式II)、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン(例えば、式III)、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式IV)、およびΔ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式V)またはそれらの任意の組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物を含むそのような組成物、および、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状および疾患を予防、緩和および治療するためのそのような組成物の使用を特徴とする。好ましくは、本組成物は、SASGRMの遅延放出および/またはパルス性放出粒子を有する医薬組成物である。
【0035】
本発明はまた、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を緩和、予防、および治療するための医薬品の製造における、ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(例えば、式I)、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン(例えば、式II)、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン(例えば、式III)、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式IV)、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式V)、またはそれらの任意の組み合わせ、およびそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物を含むSASGRMsの使用を提供することができる。好ましくは、医薬品は、SASGRMsの遅延放出および/またはパルス性放出粒子を有する医薬品である。
【0036】
一般に、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を緩和、予防、および治療する方法は、ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(例えば、式I)、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン(例えば、式II)、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン(例えば、式III)、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式IV)、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式V)、またはそれらの任意の組み合わせ、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物を、急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害および疾患を打ち消し、予防し、緩和し、または治療するための投薬計画の一部として、それを必要とする対象に投与する工程を有する。また、代謝安定性が制限され、血液脳関門を通過し、糖質コルチコイド受容体に選択的な拮抗作用を有し、血中のコルチゾール濃度を実質的に増強しない他のSASGRMも、急性ストレスや一時的な副腎皮質機能亢進症に伴う症状、障害、疾患の対策、予防、緩和、治療のための投薬計画の一部として使用できる。
【0037】
急性ストレスまたは一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、および疾患を打ち消し、予防し、緩和し、または治療するために必要な、ヒドロキシ-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(例えば、式I)、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン(例えば、式II)、16-ヒドロキシ-11-(置換フェニル)-エストラ-4,9-ジエン(例えば、式III)、Δ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式IV)、およびΔ1-11-オキサ-11-デオキシコルチゾール(例えば、式IV)、またはそれらの任意の組み合わせ、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物を含む本発明のSASGRMの配合量は、もちろん、特定の化合物、投与経路、投与者の年齢および状態、ならびに打ち消し、予防し、緩和し、または治療する特定の症状、障害、および疾患によって異なる。
【0038】
上述の症状、障害または疾患のいずれかに対する1日あたりの適切な投与量は、レシピエント(例えば、ヒト)の1日あたりのキログラム体重あたり0.01~100mgの範囲であり、好ましくは1日あたりのキログラム体重あたり0.01~30mgの範囲であり、最も好ましくは1日あたりのキログラム体重あたり0.1~30mg、0.1~20mg、1~30mg、1~10mg、1~3mgの範囲であろう。投与量は、1日あたり体重1キログラムあたり1、3、10、30または100mgであってもよい。所望の投与量は、1日中適切な間隔で投与される1回、2回、3回、4回、5回またはそれ以上のサブドーズとして提示することができる。最も好ましくは、投与量はレシピエントが眠る直前に与えられる。
【0039】
SASGRMまたはそのような組み合わせは、例えば、本明細書に記載または例示されているように、組成物として、好ましくは医薬組成物として、即時放出、遅延放出および/またはパルス性放出粒子に配合することができる。SASGRMまたはその組み合わせは、好ましくは、対象の血液脳関門を通過し、脳細胞の糖質コルチコイド受容体に拮抗して、学業成績やストレス状況への適応力が向上し、および/または、急性ストレスエピソードや時間帯移動、シフトワークの後に睡眠が誘発および/または維持されるような方法で投与される。対象は、好ましくはヒトであり、好ましくは、試験状況、人前で話すこと、またはストレスへの適応を必要とする同様の社会的状況によって誘発される学術的または教育的環境における急性ストレスの症状を予防、緩和または治療する必要があり、また、一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する不眠症および概日リズム障害を予防、緩和または治療する必要がある。
【0040】
糖質コルチコイド受容体に選択的な拮抗作用を有するSASGRMは、脳の細胞を標的とすることが意図されているため、好ましくは血液脳関門を自由に通過する。SASGRMは、好ましくは、SASGRMを標的細胞に到達させるのに適した任意の方法または経路に従って投与される。投与は受動的でも誘導的でもよい。投与は好ましくは経口である。いくつかの態様では、投与は、非経口的な投与、例えば、SASGRMの直腸、膣、鼻腔内、局所(経皮、頬、舌下を含む)または保護者管理であってもよい。組成物は、例えば、本明細書の実施例に記載されているような、あるいはRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版(特に、Pharmaceutical Preparations and their Manufactureを参照)に記載されているような方法を用いて、薬学の分野でよく知られている任意の方法で調製することができる。
【0041】
SASGRMは、適切な遅延放出または時限パルスで単独または1つ以上のSASGRMの即時送達と組み合わせて送達することが好ましい。時限パルスで投与すると、SASGRMの短い半減期により、例えばミフェプリストンのような持続的な薬理活性ではなく、薬理活性の正確なパルスが得られる。SASGRMの薬理活性の個別のパルスは、健常者に見られるコルチゾールレベルの概日パターンと同期しており、コルチゾールによる視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の阻害を最小限に抑えることができる。また、コルチゾール分泌の概日リズム、特に覚醒反応として知られる朝方のコルチゾールのピークが維持されるため、対象が通常のストレスに適切に適応する能力が維持される。
【0042】
急性ストレスや一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、疾患を緩和、予防、治療するためのSASGRMの放出パターンは、好ましくは、即放性組成物からの単一の放出と、数時間にわたる1つまたは複数の遅延またはパルス性放出との組み合わせを有し、即時放出から始まり、合計0.5~24時間、好ましくは0.5~18時間、より好ましくは0.5~5時間、より好ましくは0.5~3時間の期間にわたって各放出の間のラグタイムを経て1つまたは複数の遅延またはパルス性放出が続くことが好ましい。遅延またはパルス性放出は、好ましくは睡眠の開始に従う。SASGRMパルス性化合物送達システムには、第2、第3、第4、または第5のパルスを含む、任意の適切な数のパルスを含めることができる。即時放出(第1のパルス)を含めて、パルス性化合物送達システムは、第1のパルスの後のラグ期間に続く第2のパルスと、任意に、第2のパルスの後のラグ期間に続く第3のパルスと、任意に、第3のパルスの後のラグ期間に続く第4のパルスとをさらに含むことができる。いくつかの好ましい態様では、パルス性化合物送達システムは、合計2つのパルスを含む。いくつかの好ましい態様では、パルス性化合物送達システムは、合計3つのパルスを含む。いくつかの好ましい態様では、パルス性化合物送達システムは、合計4つのパルスを含む。
【0043】
ラグ期間は、SASGRM含有粒子の各集団からSASGRMをパルス送出する間の時間を含む。パルス間のラグ期間は、約0.5時間~約24時間、好ましくは約0.5時間~約5時間、好ましくは0.5時間~約3時間、より好ましくは約0.5~1時間、さらに好ましくは約1~3時間、より好ましくは約1時間~約2時間であることが好ましい。パルス間のラグ期間は、約0.5時間、1時間、約1.5時間、約1.75時間、約2時間、約2.25時間、約2.5時間、約2.75時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約5.5時間、約6時間、または約18時間であってもよい。
【0044】
したがって、SASGRMは、好ましくは、2つから4つの別個の化合物含有画分に従って送達され、これらの画分は、高速/即時放出画分、ラグ期間後にSASGRMを放出する中程度の放出画分、第2のラグ期間後にSASGRMを放出する中程度から遅い放出画分、および第3のラグ期間後にSASGRMを放出する遅い放出画分を有する。最後の放出は、好ましくは即時放出の約5時間後~約9時間後に行われ、より好ましくは即時放出の約5時間後または約6時間後に行われる。中間および最後の放出の用量は、先行する放出の用量より低くてもよい。
【0045】
SASGRMは、好ましくは、即時放出システム、より好ましくは遅延放出システムまたはパルス性放出システム、任意に即時放出システムと組み合わせて、全体の化合物送達形態の粒子分画に基づいて送達される。例えば、SASGRM含有粒子の2~4つの集団を、より大きな剤形として調製することができ、粒子の各集団は、所望の時間枠に従ってSASGRMを放出するように設計されている。したがって、SASGRM含有粒子は、例えば、錠剤またはカプレットとして調製されてもよいし、カプセルとして調製されてもよい。また、遅延またはパルス性放出システムは、別々に投与されたSASGRM含有粒子集団、例えば、即時放出錠剤、カプレット、カプセルと、1つ以上の別々の遅延またはパルス性放出錠剤、カプレット、カプセルとを有し得る。
【0046】
SASGRM含有粒子は、粒子、ペレット、マイクロ粒子、ナノ粒子、ミニタブレット、ビーズ、顆粒、またはそれらの混合物を有し得る。錠剤またはカプレットとして製剤化する場合、粒子は圧縮されていてもよい。カプセル剤として配合する場合は、粒子をカプセルに充填することができる。錠剤、カプレット、またはカプセル以外の適切な送達形態を使用してもよい。
【0047】
粒子は、例えば、SASGRMがコーティングされた糖衣などの不活性コアを有し得る。粒子は、SASGRMに加えて、1つまたは複数の賦形剤および/または1つまたは複数のコーティングを含んでいてもよい。一般的な賦形剤は当技術分野で知られており、溶解性向上剤、崩壊剤、潤滑剤、結合剤、滑剤、矯味剤、甘味剤、色素、その他の既知の賦形剤が挙げられるが、これらに限定されない。コーティングは、粒子の形状を維持するだけでなく、放出速度や放出位置にも影響を与える。コーティングは、好ましくは、水溶性および/または水不溶性のポリマーまたはコポリマーを有し、pH依存性またはpH非依存性であってもよい。いくつかの態様では、粒子は封止層を含み、この封止層は、SASGRM含有コアおよび/または遅延放出または拍動放出コーティングされた粒子を包んでいてもよい。即時放出粒子の場合は、コーティング層の代わりに封止層を使用してもよい。
【0048】
適切な水溶性ポリマーは、これらに限定されないが、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、Eudragit(登録商標)LおよびSなどのメタクリル酸コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ヒアルロン酸、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、およびこれらの任意の組み合わせを含む。
【0049】
適切な水不溶性ポリマーは、これらに限定されないが、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネート、非結晶性セルロース、ポリエチレン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、メタクリレート、Eudragit(登録商標)RS、RL、RS30D、RL30D、およびNE30DなどのEudragit(登録商標)ブランドのポリマー、Methocel(登録商標)K100MおよびK15MなどのMethocel(登録商標)ブランドのポリマー、およびこれらの組み合わせを含む。
【0050】
いくつかの態様では、コーティングに可塑剤が含まれていてもよい。適切な可塑剤は、これらに限定されないが、グリセロール、グリセリン、トリアセチン、ギルセロールトリアセテート、グリセリンソルビトール、酢酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、ヒマシ油、ナタネ油、オリーブ油、ゴマ油、モノアセチル化グリセリド、ジアセチル化グリセリド、およびそれらの組み合わせを含む。
【0051】
いくつかの態様では、コーティングに滑剤が含まれていてもよい。適切な滑剤は、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、モノステアリン酸グリセリル、およびこれらの任意の組み合わせを含む。
【0052】
いくつかの態様では、浸透圧剤がコーティングに含まれていてもよい。適切な浸透圧剤のカテゴリーは、これらに限定されないが、塩、糖、および酸を含む。適切な浸透圧剤は、これらに限定されないが、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、デキストロース、フルクトース、ガラクトース、およびこれらの任意の組み合わせを含む。
【0053】
ポリマーコーティングをSASGRMコアに添加して、各粒子に対して約1%~約40%の重量増加を達成することができる。ポリマーコーティングは、各粒子に対して約2%~約20%、約2%~約15%、約2%~約13%、約2%~約12%、約2%~約10%、約2%~約9%、約2%~約8%、約2%~約7%、約2%~約5%、約3%~約30%、約3%~約20%、約3%~約15%、約3%~約13%、約3%~約12%、約3%~約10%、約3%~約9%、約3%~約8%、約3%~約7%、約3%~約6%、約3%~約5%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約15%、約5%~約12%、約5%~約10%、約6%~約15%、約6%~約12%、約6%~約10%、約8%~約13%、約8%~約12%、約8%~約10%、約9%~約12%、約9%~約13%、約9%~約11%、約10%~約40%、約10%~約20%、約10%~約15%、約15%~約25%、約15%~約20%、約20%~約30%、約20%~約25%、約25%~約40%、約25%~約30%、または約30%~約35%の重量増加を達成することができる。第2、第3、または第4のパルス性放出を構成するように意図された粒子は、より多くの重量増加を有し得、より厚いポリマーコーティングはより長い放出遅延を可能にする。
【0054】
いくつかの態様では、即時放出粒子は、ポリマーコーティングから約2%、約3%、約4%、約5%、または約6%の重量増加を有する。第2の遅延性またはパルス性放出粒子は、ポリマーコーティングからの約5%、約6%、約7%、約8%、または約9%の重量増加を含む。第3およびそれ以降の遅延またはパルス性放出粒子は、ポリマーコーティングからの約8%、約9%、約10%、約11%、または約12%の重量増加を含む。
【0055】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものである。これらは、本発明を限定するものではなく、例示することを目的としている。
【0056】
実施例
実施例1
式I、式II、式III、式IV、式Vの代謝安定性と血液脳関門通過性
式I~Vの化合物の代謝安定性は不明であるか、非常に短いことが知られている(例えば、式Iの生体外のデータでは、ラット肝ミクロソームでの半減期は0.33時間、ラット肝細胞では0.2時間未満と報告されており、式IVでは、ラット肝ミクロソームで30分以内に未同定の代謝物に変換されることが報告されている)。これにより、これまでのショット作用GRリガンドの開発は中止され、より代謝の安定した化合物が開発されることになった。
【0057】
式I、式II、式III、式IVおよび式Vのそれぞれの化合物の代謝安定性を調べることができる。化合物は、ミフェプリストン(RU-486、抗糖質コルチコイド特性も示すプロゲステロン受容体モジュレーター)と比較して、生体外および生体内での代謝安定性が制限されているはずである。
【0058】
代謝安定性を調べるために、DMSO中の式I、式II、式III、式IVおよび式Vの10-3Mストック溶液を10-6Mに希釈し、プールしたヒトおよびラットの肝ミクロソーム調製物中で、それぞれリン酸カリウム緩衝液pH7.4において、37℃で45分以上インキュベートし、0、5、15、30、45および60分後にサンプルを採取した。陽性対照として、ケタンセリンまたはテストステロンを用いる。有機溶媒で脱保護して反応を停止し、混合と遠心分離の後、サンプルを液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)/MSで分析する。式I、式II、式III、式IVおよび式Vは、プールしたヒトおよびラットのミクロソームにおいて、それぞれ5分から1時間の間の半減期を示すはずである。
【0059】
その後、式I、式II、式III、式IVおよび式Vの代謝安定性をマウスの生体内で調べることができる。式I、式II、式III、式IVおよび式Vを0.5%(w/v)カルボキシメチルセルロースに懸濁し、雄性CD-1マウス(28~36g)に30mg/kgおよび100mg/kgの単回経口投与し、1群あたりn=3とした。ミフェプリストンを10mg/kgの用量で投与し、ビヒクル対照を参考にしている。投与後、0、5、15、30分および1、2、4、8、24時間後に尾部出血により複数の血液を採取し、全血をヘパリンコートチューブに回収する。2000×g、10分間の遠心分離後に血漿を得て、サンプルをLC-MS/MSにかける。強制経口投与後のマウスの血漿半減期は30~90分である。コルチコステロンは、同じサンプルの異なるアリコートで分析され、30mg/kgの用量まで、式I、式II、式III、式IV、および式Vによって有意に増加することは認められなかった。
【0060】
次に、式I、式II、式III、式IV、および式Vの血液脳関門(BBB)との相互作用を評価する。この研究の一環として、ラットおよびヒトの血漿タンパク質との結合を、pH7.4、37℃のリン酸緩衝生理食塩水を用いた平衡透析を用いて、試験化合物を5μM、ワルファリン(抗凝固剤)を参照化合物として調べた。平衡状態に達した後、サンプルチャンバー(ドナー)とバッファーチャンバー(レシーバー)からアリコートを取り出し、LC-MS/MSにかける。式I、式II、式III、式IV、および式Vは、両種とも血漿タンパク質結合率が50%以下であった。対照的に、ラットおよびヒトの血清中のミフェプリストンの血漿タンパク質結合率は95%以上であることが報告されている。BBB浸透は、コンフルエントなMDCK細胞単層を使用し、単層の頂端側と側底側に5μMの試験化合物をpH7.4で90分間投与して生体外で評価する。サンプルをLC-MS/MSで分析し、両方向の見かけの透過率と流出比を求める。式I、式II、式III、式IV、および式Vは、中程度から高いBBB浸透を有する。
【0061】
実施例2
ストレス誘発性不安症モデルマウスにおける短時間作用型選択的糖質コルチコイド受容体モジュレーターの効果
式I、式II、式III、式IV、および式Vは、同様の生物学的プロファイルを有する多様な化学構造のSASGRMを構成する。これらは、糖質コルチコイド受容体(GR)結合に対する選択性、生体外での選択的なGR拮抗作用、生体外および生体内での代謝安定性の制限、マウスのHPA軸阻害の指標となる生体内での経口投与後のコルチコステロンレベルの上昇がないこと、低い血漿タンパク質結合、中程度から高いBBB浸透性を示している。
【0062】
SASGRMのうち代表的な化合物である式III(PND-001とも呼称される)を、ストレス誘発性不安のモデルマウスである高架式十字迷路試験(EPM)で試験した(実験1)。EPMは、新しい環境を探索しようとする齧歯動物の傾向と、そのような探索のストレスとの間の本質的な対立に依存しており、その結果、明るく照らされたオープンアームの中の嫌悪特性を回避される。不安を軽減する化合物は、特にオープンアームへの入場頻度と滞在時間を増加させる。
【0063】
4~5週齢のオスのCD-1マウスをグループで飼育し(1ケージに6~7匹)、温度(21~22℃)と明暗サイクル(12時間/12時間、点灯:17:30~05:30、消灯:05:30~17:30)が逆転した部屋で、餌と水を自由に摂取できる状態で維持した。
【0064】
式IIIとビヒクル(5%ジメチルスルホキシド(DMSO)および95%ポリエチレングリコール400(PEG400))をEPM試験の24時間前および6時間前にs.c.投与した。
【0065】
陽性対照として、EPM試験の60分前にジアゼパムをp.o.投与した。
【0066】
式IIIは、10、30、100mg/kgの用量で試験された。ジアゼパムは、EPM試験の60分前にp.o.投与し、1mg/kgの用量で試験を行った。(表1参照)。
【0067】
【表1】
【0068】
実験手順:
【0069】
マウスは無作為に異なる実験グループのいずれかに割り当てられた。それぞれのマウスは、グループ名、ケージ番号、実験のシリーズ(日)、尾部に不変色インクで書かれた番号(1から12まで)で識別された。
【0070】
装置は、プレキシガラスで覆われたPVC製の迷路で、4つの等しい探索アーム(21×8cm)に分割され、それらはすべて小さなプラットフォーム(8×8cm)で相互に連結されていた。装置は床から59cmの高さに設置した。2つのアームは開き、他の2つのアームは壁(高さ:21cm)で閉じられている。
【0071】
化合物投与後、マウスは閉じたアームの反対側のプラットフォームに置かれた。それぞれのアームに入った回数と時間を5分間で記録した。動物が4つの足をアームに入れたとき、そのアームに入ったとみなした。
【0072】
各動物の間にアルコール(70°)を用いて装置を洗浄した。尿と糞は迷路から取り除いた。
【0073】
試験中、動物の取り扱いおよび操作者の視認性は可能な限り最小限に抑えられた。
【0074】
計算および統計解析
【0075】
結果データに対して分散分析(ANOVA)を行った。二者間比較にはFisher’s PLSDを用い、p値≦0.05を有意とした。
【0076】
結果
【0077】
式IIIを投与したマウスでは、オープンアームへの訪問回数と滞在時間が有意に増加した(表2)。
【0078】
図1に示すように、式IIIは、オープンアームへの入場数の有意な増加と関連していた。ビヒクルを投与したマウスの成績と比較すると、式IIIの10、30、100mg/kgでは、それぞれ103%、81%、119%の増加が見られた。図1のグラフは、全グループのn=12の平均値±s.e.m.を示している。
【0079】
図2に示すように、式IIIはオープンアームでの滞在時間の増加ももたらした。ビヒクルを投与したマウスと比較すると、10、30、100mg/kgの式IIIでは、それぞれ224%、154%、219%の増加が見られた。図2のグラフは、全グループのn=12の平均値±s.e.m.を示している。
【0080】
ジアゼパムを投与したところ、オープンアームへの入場数と滞在時間の両方が有意に増加した。ビヒクルを投与したマウスと比較して、その増加はそれぞれ233%と327%であった。
【0081】
【表2】
【0082】
次の実験である「高架式十字迷路試験」(実験2:実験1と同様の実験手順および解析方法で実施)では、より低用量の式III(PND001とも呼称される)の有効性を検討した。さらに、実験1で式IIIの有効性を示した用量で、式IV(PND002とも呼称される)の有効性を調べた。化合物またはビヒクル(5%ジメチルスルホキシド(DMSO)および95%ポリエチレングリコール400(PEG400))を,EPM試験の24時間前および6時間前にs.c.投与した(表3)。
【0083】
【表3】
【0084】
式III(PND001)は、1、3および10mg/kgの用量で試験された。式IV(PND002)は30mg/kgの用量で試験を行った。陽性対照として、EPM試験の60分前にジアゼパムをp.o.で投与し,1mg/kgの用量で試験を行った。
【0085】
図3および表4に示すように、PND001は、オープンアームへの入場数の有意な増加と関連していた。図3のグラフは、全グループのn=12の平均+/-SDを示している。ビヒクル投与マウスの成績と比較すると、1、3、10mg/kgのPND001でそれぞれ50%、93%、56%の増加が見られ、高用量の2つが統計的に有意な結果となった。図4および表4に示すように、PND001はオープンアームでの滞在時間の増加ももたらし、これはすべての用量でビヒクルから統計的に有意であった。図4のグラフは、全グループのn=12の平均+/-SDを示している。ビヒクル投与マウスと比較して、1、3、10mg/kgのPND001ではそれぞれ60%、112%、70%の増加が見られた。PND002投与により、オープンアームへの入場数と滞在時間の両方が有意に増加した.ビヒクル投与マウスの成績と比較して、それぞれ77%と90%の増加が認められた。陽性対照であるジアゼパムを投与したところ、オープンアームへの入場数および滞在時間が有意に増加した。投与したマウスの成績と比較して、それぞれ146%と151%の増加であった。
【0086】
【表4】
【0087】
実験1と同様の実験手順と分析のもとに実施した高架式十字迷路試験の第3の実験(実験3)では、投与経路と投薬計画の影響を調べた。式III(PND001)およびビヒクル(5%ジメチルスルホキシド(DMSO)および95%ポリエチレングリコール400(PEG400))は強制経口投与(p.o.)された。陽性対照として、EPM試験の30分前にジアゼパムをi.p.投与した。
【0088】
PND001は、実験2で最も有効性が高かった3mg/kgの用量で試験を行い、EPM試験の6時間前と1時間前の2回、または試験の1時間前の1回のみ投与した。ジアゼパムは、EPM試験の30分前にi.p.投与し、1mg/kgの用量で試験を行った。(表5参照)。
【0089】
【表5】
【0090】
表6と図6に示されるように、PND001では、オープンアームでの滞在時間が長くなった。図6のグラフは、全グループのn=8の平均+/-SEMを有する。ビヒクル投与マウスと比較すると、PND001の1時間の前処理、1時間および6時間の前処理で、それぞれ50%および91%の増加が見られた。統計的に有意な結果となったのは、1時間および6時間の前処理のみであった。1時間および6時間の前処理では入場数の増加が見られたが、1時間の前処理のみではなかった。表6および図5に示すように、24時間および6時間のs.c.前処理を行った同じ用量の実験2では、入場数が約2倍になったが、この実験ではビヒクルと比較して統計的な有意差が得られなかった。図5のグラフは、全グループのn=8の平均+/-SEMを有する。
【0091】
陽性対照としてのジアゼパムの投与は、オープンアームへの入場数と滞在時間の両方の有意な増加と関連していた。ビヒクルを投与したマウスの成績と比較して、増加はそれぞれ400%および270%であった。
【0092】
【表6】
【0093】
ストレスへの適応を反映した不安モデルマウスにおける式IIIおよび式IVの結果に基づき、同様の生物学的プロファイル(GRに対する特異性、CNSにおける純粋なGR拮抗活性、短い血漿中半減期およびBBBの透過性)を有する式I、式IIおよび式Vの化合物およびSASGREMを、適切な医薬用剤形に製剤化したものは、急性ストレスや一時的な副腎皮質機能亢進症に関連する症状、障害、疾患、特に調整(急性)不眠症、副腎皮質機能亢進症に関連する慢性不眠症、および時差ぼけ型やシフトワーク型の概日リズム障害を予防、緩和、治療するための有益な医薬品として使用することができる。
【0094】
式I、式II、式III、式IV、式VなどのSASGREMをストレス障害、特に副腎皮質機能亢進症に伴う睡眠障害に使用するための適切な医薬品剤形には、遅延放出成分またはパルス性放出成分を有する経口投与の放出制御剤形があり、最初の即時放出パルスの後に少なくとも1つの時限パルスを生成し、各パルスは活性成分を迅速かつ実質的に完全に放出することを特徴としている。このようなシステムは、遅延放出システム、パルス性化合物送達システム(PDDS)、時間制御システム、またはシグモイド放出システムとして知られている。
【0095】
実施例3
(微粉化RU 43044(式I)の)即時放出のためのコーティングされたペレットの調製
例えば、RU 43044(式I)の粒子径は、窒素圧力下のスチールチャンバー内でのジェットストリームミリングのような特定の粉砕技術を使用することで大幅に減少させることができる。微粉化は、RU 43044(式I)の粉末が約50m/sの速度でミリングチャンバーに供給され、一連のジェットノズルによって約300m/sの速度に加速されたより速い粒子が、入ってくる遅い粒子と衝突することで起こる。上述のジェットミリング技術によって得られるRU 43044の粒度分布(体積比)は、レーザー回折法を用いて、約2~3μm(d50)、10~12μm(d99)、<15μm(d100)となっている。
【0096】
好ましい剤形は、1~3mmのサイズの多粒子からなる多粒子システムであり、これは、迅速な胃内容排出、胃通過時間の低い変動性、および最適化された化合物吸収を確実にする。
【0097】
工程1.RU 43044(式I)を含むコーティングされていないペレットの調製。微粉化されたRU 43044(式I)の30グラム(g)を、60グラムの微結晶セルロース(Avicel(登録商標)PH-101)および8グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E6)の混合物に加える。乾燥粉末を均質化した後、PVP(25.000MW)水溶液(5%、w/w)をq.s.で添加して混合物を造粒する。得られた湿潤造粒物を、CLS Extruder 20(オリフィス径2mm)を用いて室温において25rpmで押し出し、続いて摩擦プレートを備えたCLS MBS 120スフェロナイザーを用いて押し出し物を球形化する。得られた球状ペレットは、約30%(w/w)の微粉化されたRU 43044(式I)を含む3~5%の湿度まで乾燥される。
【0098】
工程2.微粉化されたRU 43044(式I)を含む即時放出のためのコーティングされたペレットの調製。6.25グラムのアミノメタクリレートコポリマー-NF(Eudragit(登録商標)E 100)、0.625ポリエチレングリコール(PEG6000)、および3.1グラム(g)のタルカムをアセトン/イソプロパノール1:1に溶解/懸濁させた100mlのスプレー懸濁液を、せん断ミキサーを用いて調製する。このスプレー懸濁液を最終的に0.5mmのふるいにかける。
【0099】
得られた懸濁液を、Caleva lab coater MCD 2を用いて、工程1にしたがって50gのペレットに噴霧する。プロセス条件は、スプレー速度0.2~0.3g/分、入口温度40~45℃、流量60L/分(2バール)、空気温度30~35℃に設定されている。スプレーは、塗布されたコーティングによって5重量%増加するまで維持される。ペレットは最終的に空気温度30~35℃で約1時間硬化させる。
【0100】
実施例4
(微粉化RU 43044(式I)の)遅延またはパルス性放出のための層状ペレットの調製
5.25グラムのアンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit(登録商標)RL PO Type A)、17.25グラムのアンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit(登録商標)RS PO Typ B)、3.5グラムのクエン酸トリエチル(TEC)、および5.25グラムのタルカムを、300グラムのアセトン/イソプロパノール1:1に溶解/懸濁させたスプレー懸濁液を、せん断ミキサーを用いて調製する。噴霧懸濁液は最終的に0.5mmのふるいにかけられる。
【0101】
得られた懸濁液を、Caleva lab coater MCD 2を用いて、工程2(実施例3)に従った50グラム(g)のペレットに噴霧する。プロセス条件は、スプレー速度0.2~0.3g/分、入口温度40~45℃、流量60L/分(2バール)、空気温度30~35℃に設定されており、塗布されたコーティングによる重量増加が7%になるまでスプレーを維持する。ペレットは最終的に空気温度30~35℃で約1時間硬化させる。
【0102】
コーティングされた膜の調節された透過性および多粒子性粒子のコアに組み込まれた浸透圧剤が企図される。コーティングされた多粒子内で適切な浸透圧を達成するために、親水性のある許容可能な医薬品グレードの浸透圧剤を適用することができる。これらは、好ましくは、フルクトース、スクロース、マンニトールなどの低分子量の糖類、リン酸ナトリウムなどの無機塩類、またはクエン酸、酒石酸などの有機酸である。経口投与後、胃腸液がコーティングされた製剤の膜を通過すると、浸透剤の溶解により浸透圧が発生し、最終的にポリマー膜が破れて化合物が自然かつ完全に放出されることになる。
【0103】
コーティングの完成度は、親水性の低分子または高分子化合物をコーティングに添加することで調整可能な消化管液の浸透速度に影響される。このような調節剤としては、生理学的に不活性な水溶性ポリマー、例えば低分子量のメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、糖類、例えばフルクトースやグルコースなどの単糖類、ラクトースやスクロースなどの二糖類、あるいはセルロース、アミロース、デキストランなどの多糖類などが挙げられる。
【0104】
放出パルスの適切なタイミングを達成するために、変調器は多粒子の少なくとも10%、少なくとも約20重量%、通常は約50重量%以下、好ましくは約40重量%以下であってもよい。ポリマーコーティングは、多粒子の少なくとも約5重量%から50重量%以下を有し得る。
【0105】
調整剤と活性剤の正確な割合は、調整剤の量が異なるさまざまなタイプの多粒子を製造する製剤設計実験によって決定することができる。放出速度の測定には、USP承認の溶解または放出試験方法を用いることができる(<711>,USP 32 NF 27,2009,Vol.1,公称容量が1Lから4Lまで変化する機器1)。消化器系に存在する条件をよりよく模倣するために、また、必要に応じて無限のシンク条件で試験を行うために、USPに従ったフロースルーセル機器(機器4)を代替的に使用して溶解速度を測定することができる。溶解した化合物を時間の関数として検出するには、吸光度が一定になるまで、または化合物の90%以上が放出されるまで、分光光度法、HPLC、質量分析法などの様々な最新の方法を用いることができる。
【0106】
実施例5
RU 43044(式I)の即時放出用コーティングペレットの化合物放出プロファイルの評価
よく知られているバスケット法(Sotax AT)に従ったUSP機器を用いて、実施例3の工程2に従って製造したペレットからのRU 43044(式I)の生体外放出率を測定する。溶解媒体は900mlの脱イオン水である。温度は37℃に設定し、試験中は制御される。バスケットの回転速度は50rpmに設定し、一定に保つ。試験開始時に、単位用量のペレットを乾燥したバスケットに入れる。
【0107】
5分、10分、20分、30分、45分、60分、90分後に溶解液からサンプルを採取し、Distekの10μm PEフィルターでろ過して、RU 43044の濃度を測定する。245nmの吸収を持つUVスペクトロメーターを備えた従来のHPLC装置を用いて、サンプル中のRU 43044の濃度を測定する。剤形からの化合物の放出はすぐに行われた。45分後には投与量の80%以上が放出され、90分後には化合物はほぼ完全に放出され、溶解液に溶解した。放出される化合物の量と放出の時間プロファイルは、コーティングの量、タルカムの量、硬化時間、バスケットの撹拌速度に影響される。
【0108】
実施例6
層状ペレットの遅延放出およびパルス放出のための化合物放出プロファイルの評価 RU 43044 (式I)
試験の開始時に、実施例4のペレットの単位投与量を乾燥バスケットに入れる。回転速度、温度および溶解媒体に関する試験条件は、実施例5と同じである。RU 43044(式I)の濃度を測定するための溶解媒体からのサンプルは、30分、60分、90分、120分、150分、180分、240分に採取され、Distek 10μm PEフィルターでろ過される。245nmの吸収を持つUVスペクトロメーターを備えた従来のHPLC装置を使用して、サンプル中のRU 43044(式I)の濃度を測定する。剤形からの化合物の放出には遅延がある。60分(90分)後には投与量の10%(15%)を超えず、120分後には20%を超えず、150分後には80%を超えて放出され、180分後にはほぼ完全に放出される。放出される化合物の量と放出の時間プロファイルは、コーティングの量、タルカムの量、硬化時間、バスケットの撹拌速度に影響される。
【0109】
本発明は、上記で説明および例示した実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲内で変形および変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】