(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-21
(54)【発明の名称】高温ライトスルーコーティングを有する光ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20220214BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220214BHJP
C03C 25/1065 20180101ALI20220214BHJP
C03C 25/32 20180101ALI20220214BHJP
C03C 25/50 20060101ALI20220214BHJP
C03C 25/6226 20180101ALI20220214BHJP
【FI】
G02B6/44 301
G02B6/44 331
G02B6/44 301B
G02B6/02 416
C03C25/1065
C03C25/32
C03C25/50
C03C25/6226
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532201
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 US2019064139
(87)【国際公開番号】W WO2020117741
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ホンチャオ
【テーマコード(参考)】
2H250
4G060
【Fターム(参考)】
2H250AB02
2H250AG02
2H250AG18
2H250AG66
2H250BB04
2H250BB08
2H250BB32
2H250BB33
2H250BC02
2H250BD03
2H250BD18
4G060AA03
4G060AC02
4G060AC10
4G060AC15
4G060AD22
4G060AD43
4G060CB21
4G060CB27
(57)【要約】
本発明は、光学的に透明な保護コーティングに関する。本発明による保護コーティングは、光ファイバに基づくセンサ用途に関連する高温下でも安定であり、コーティングを介して直接書き込みを行うことによって従来のファイバBragg格子(FBG)を形成することを可能にするのに十分な透明性を有する。特に、ビニル基含有シリコーンポリマーは、ライトスルーコーティング(WTC)に必要なUV透明性を提供し、光ファイバを保護するための有望な機械的特性を提供すると同時に、長時間の高温に耐えることができることが見出された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コア領域と、
前記光コア領域を囲むクラッド層と、
前記クラッド層の上に密接に接触して配置されたビニル基含有シリコーンポリマーコーティングと、
を備える光ファイバであって、
前記ビニル基含有シリコーンポリマーコーティングは、格子刻印のために使用される波長で約0.5Au未満のUV吸収を有し、約150℃までの温度での熱安定性を有する、
光ファイバ。
【請求項2】
前記ビニル基含有シリコーンポリマーコーティングが、ラジカル重合型ビニル-シリコーンポリマーを含む、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記ビニル基含有シリコーンポリマーコーティングが、少なくとも1J/cm
2のエネルギーで硬化される、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記ビニル基含有シリコーンポリマーコーティングが、約14J/cm
2のエネルギーで硬化される、請求項3に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記光コア領域及び前記クラッド層は、ガラス材料を含む、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記ビニル基含有シリコーンポリマーコーティング上に成形された高温熱可塑性ケーブリングポリマー外皮を更に含む、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記高温熱可塑性ケーブリングポリマー外皮が、
ポリエーテル-エーテル-ケトン(PEEK)、
エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、
フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び
ペルフルオロアルコキシ(PFA)
からなる群より選択される材料を含む、請求項6に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記ビニル基含有シリコーンポリマーコーティングが二層コーティングを含み、
前記二層コーティングが、
柔軟な特性を示すビニル基含有シリコーンポリマーの内側一次層と、
光ファイバの機械的な取扱いを改善するために含まれ、堅い特性を示すビニル基含有シリコーンポリマーの外側二次層と、
を含む請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記内側一次層及び前記外側二次層は、それぞれ、10~20 pm程度の厚さを有する、請求項8に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記ビニル基含有シリコーンポリマーコーティングの前記外側二次層の上に成形された高温熱可塑性ケーブリングポリマー外皮をさらに含む、請求項8に記載の光ファイバ。
【請求項11】
前記高温熱可塑性ケーブリングポリマー外皮が、
ポリエーテル-エーテル-ケトン(PEEK)、
エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、
フッ素化エチレンプロプリレン(FEP)、
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び
ペルフルオロアルコキシ(PFA)
からなる群より選択される材料を含む、請求項10に記載の光ファイバ。
【請求項12】
a)コア領域及び前記コア領域を囲むクラッド層を有する初期ファイバを提供するステップと、
b)前記クラッド層の上にビニル基含有シリコーンポリマー液体材料を塗布するステップと、
c)格子刻印のために使用される波長での0.5Au未満のUV吸光度及び約150℃までの温度での熱安定性を有するライトスルーコーティングを形成するために、前記ビニル基含有シリコーンポリマー液体材料を硬化させるステップと、
を含む、光ファイバの製造方法。
【請求項13】
光ファイバを紫外線放射のパターンに曝露することによって、前記ライトスルーコーティングを介して前記初期ファイバに一つ以上のファイバブラッグ格子を書き込むステップをさらに含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ビニル基含有シリコーンポリマー液体材料の第2の部分を、前記c)硬化させるステップで形成された前記ライトスルーコーティング上に塗布するステップと、
前記ビニル基含有シリコーンポリマー液体材料の前記第2の部分を硬化させて、格子刻印のために使用される波長での0.5Au未満のUV吸収度及び約150℃までの温度での熱安定性を有する外側ライトスルーコーティングを形成するステップと、
をさらに含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記硬化させるステップが、少なくとも1J/cm
2のエネルギーで実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記硬化させるステップが、約14J/cm
2のエネルギーで行われる、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月6日付の米国特許仮出願第62/776,222号の優先権を主張し、その出願は引用することにより本明細書の一部をなす。
本発明は、ファイバブラッググレーティング(FBG)等のグレーティング構造を含むように形成された光ファイバに関し、より詳細には、グレーティングがファイバ内に直接形成され、その後様々なファイバベースのセンサ用途においてさらされる高温下で安定状態を維持する保護コーティングの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
FBGは、温度や歪み等の環境要因の変化に対する高い光信号感度を有するため、多くの産業用センシング用途において需要が増大している。光ファイバコア(及び/又はコアを囲むクラッド)内にFBGを形成する従来の方法は、中心コア/クラッドを露出させるために、光ファイバの仕上げ部分からクラッド及びコーティング材料の複数の層を剥がす工程と、コアに沿って屈折率を周期的に変化させる光源を用いてコア内に格子を「書き込む」工程(格子刻印(grating inscription)とも呼ばれる)と、次いで、剥がれたファイバ部分を再コーティングする工程とを必要とする。この工程はFBGの効率の高い大量生産を制限するだけでなく、FBGが形成されるファイバの再被覆部分の破損(又は少なくとも弱体化)する原因となり得る。
【0003】
このように、特にFBGを含む長い(メートル)光ファイバ(「連続FBG」と呼ばれることもある)を利用するセンサ用途の急増に伴い、「ライトスルーコーティング(write-through coating)」(WTC)の必要性が産業界からの差し迫った要求となっている。許容可能なWTCは、当然に、FBGを書き込むために使用される波長(240nmと248nmの波長がこの目的のために一般的に使用される)に対して透明である必要がある。脂肪族ウレタンアクリレートは必要なUV透明性を有し、UV源を用いて硬化するので、WTCとしての使用が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなコーティングは、100℃を超える温度に長時間曝されると分解することが見出されており、従って、少なくとも約150℃の温度で作動するダウンホール又はウェル内用途のような高温用途に要求される熱安定性を欠いている。一方、RTVシリコンベースのコーティングは、ウレタンアクリレート材料よりも良好な熱安定性が実証されているが、コーティングされた表面は比較的柔らかく、粘着性であり、FBG製造中に深刻な取扱い上の問題を引き起こす。また、RTVシリコンベースのコーティングは、比較的高いレベルのUV吸光性を有し、その結果、比較的効率の悪い格子刻印工程が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来技術に残っている必要性は、本発明によって解決される。本発明は、ファイバ上の光学的に透明な保護コーティングを介して書込みを行うことによって生成されるファイバBragg格子(FBG)を含む光ファイバに関し、より詳細には、様々なFBG用途で曝される高温下でも安定で光学的に透明な保護コーティングに関する。
【0006】
本発明の原理によれば、ビニル基含有シリコーンポリマー(以下「VG含有シリコーンポリマー」という)は、書き込みスルーコーティング(WTC)としての使用に必要なUV透明性を提供し、同時に、長時間の高温に耐えることができることが分かった。従来のポリマーコーティングとは異なり、本発明に従って使用されるVG含有シリコーンポリマーコーティングは、接着性/粘着性の品質を示さず、したがって、様々な従来技術のアプローチよりも使用中の取扱い及び操作が容易である。
【0007】
例示的な一実施形態では、本発明の原理に従って、(適切な厚さの)VG含有シリコーンポリマーの単一層を、光ファイバ(特にFBGの長い部分のセンサとして使用されるもの)の高温WTCとして利用する。代替的な実施形態では、VG含有シリコーンポリマーの二重層構成が使用され、内層は、(マイクロベンドによる伝送損失の最小化のため)比較的柔軟であり、比較的硬い外層はUV透明であるが内層よりも高い機械的安定性を示す。
【0008】
さらに別の実施形態では、追加の熱可塑性ケーブリングポリマー(ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など)を、VG含有シリコーンポリマーWTC(単層又は二層構成のいずれか)を囲むオーバージャケット層として含み、例えば250℃を超える温度で追加の機械的保護及び熱安定性を付与してもよい。
【0009】
本発明の例示的な実施形態は、光コア領域と、光コア領域を囲むクラッド層と、クラッド層の上に形成された(格子の適切な箇所への刻印を提供するために使用される)ライトスルーコーティングとを含む光ファイバの形態をとる。ライトスルーコーティングは、格子刻印に使用される波長で約0.5Au(「吸光単位」)のUV吸光度及び約150℃までの温度での熱安定性を有するビニル基含有シリコーンポリマーコーティングを含む。
【0010】
本発明の別の実施形態は、(1)コア領域及びコア領域を囲むクラッド層を有する初期ファイバを提供するステップと、(2)クラッド層上にアクリレート基含有シリコーンポリマー液体材料を塗布するステップと、(3)アクリレート基含有シリコーンポリマー液体材料を硬化させて、グレーティング刻印に使用される波長における10%未満のUV吸光度及び約150℃までの温度における熱安定性を有するライトスルーコーティングを形成するステップとを含む光ファイバを製造する方法の形態をとることができる。
【0011】
その他及び本発明のさらなる実施形態及び態様は、以下の説明の過程において、添付図面を参照することによって明らかになるであろう。いくつかの図では、同じ符号が同じ構成を表している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明により形成された本発明のWTCを含む例示的な光ファイバの断面図である。
【
図2】
図2は、一組の従来技術のコーティング膜及び一組の本発明によるWTC膜に関する波長を関数とするUV吸光度のグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の従来技術のWTC及び高温WTCの双方についての熱安定性を示すプロット図である。
【
図4】
図4は、本発明の従来技術のWTC及び高温WTCの双方についての動的熱重量分析(TGA)寿命予測を示す図である。
【
図5】
図5は、従来技術のWTCの引張強度を本発明の高温WTCと比較するワイブルプロット図である。
【
図6】
図6は、従来のWTCを介して形成される例示的な格子構造を示すプロットで図ある。
【
図7】
図7は、本発明による高温WTC(ここでは、比較的低い線量のUV露光で硬化されたフィルム)の例示的実施形態により形成された、
図6と同じ条件下で書き込まれた格子構造の形成を示すプロット図である。
【
図8】
図8は、
図6及び
図7と同じ条件で書き込まれた格子構造の形成を示すプロット図であり、本図によれば、本発明による高温WTC(ここでは、比較的高い線量のUV露光で硬化されたフィルム)の異なる実施形態によって格子構造が形成されている。
【
図9】
図9は、本発明の別の実施形態の断面図であり、本図によれば、さらなる熱安定性を示す外層が、高温WTC層を囲むように形成されている。
【
図10】
図10は、本発明のさらに別の実施形態の断面図であり、本図によれば、二重層WTC構成が用いられ、内層は比較的柔らかく柔軟であり、外層はさらなる機械的安定性を付与するためにより剛性である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ビニル基含有シリコーンポリマー(以下「VG含有シリコーンポリマー」という)コーティングを有する光ファイバが開示される。VG含有シリコーンポリマー被覆は、光ファイバ、好ましくはガラスファイバ、又はVG含有シリコーンポリマー被覆を除去することなく光ファイバ又は基板内の1つ又は複数の部分に書き込まれた光誘起(例えば、UV誘発性又は赤外線誘発性)光デバイスを有することができる他の光基板上に配置され、これにより、熱的及び光学的に堅牢なファイバグレーティングの高速製造が可能になる。光学デバイスは、格子、好ましくはファイバ・ブラッグ格子であり得る。光ファイバは、例えば、ガラス光コア及びガラスクラッドを含むことができる。
【0014】
本発明によるVG含有シリコーンポリマーWTCは、ガラス光学コア及びガラスクラッドを有するものを含む種々の光ファイバに適用することができる。適切な光ファイバは、比較的高い屈折率を有する内側コアと、内側コアよりも低い屈折率を有する外側クラッドとを含むことができる。ガラス光学コアは、ゲルマノシリケートのようなUV感光性ガラスで作ることができ、UV放射によってガラスに格子を書き込むことができる。光ファイバは典型的には直径100μmから150μmであるが、当業者には理解されるように、他の直径を有することもできる。
【0015】
VG含有シリコーンポリマーコーティングは、ガラス繊維(ファイバ)にコーティングを適用するために線引塔(draw tower)を使用することを含む、当業者に知られているような任意の適切な方法でガラス繊維に適用することができる。その後、塗布されたVG含有シリコーンポリマーコーティングは、UV硬化又は熱硬化を含む任意の適切な方法で硬化され得る。一例では、コーティングは、UVランプ露光を使用して部分的に硬化させ、その後に熱硬化させることができる。以下に詳細に説明するように、硬化に使用されるUVドーズ量は、コーティングのUV透過率に影響を及ぼすことが見出されており、より高いドーズ量は、より高い透明度を有するコーティングをもたらす。
【0016】
VG含有シリコーンポリマーコーティングを光ファイバに適用して硬化させた後、コーティングの除去を必要とせずに、格子構造をファイバの長さに沿って刻印する。以下にさらに説明するように、硬化されたVG含有シリコーンポリマーコーティングは、FBG製造にしばしば使用される波長である248nmの波長において顕著な光透過性を有する。他の波長、特にUV領域、又は赤外線領域でのレーザによる書き込みも可能である。
【0017】
本発明によるVG含有シリコーンポリマーWTCを含むように形成されたファイバの断面図を
図1に示す。光ファイバ10は、コア領域12及び周囲のクラッド層14(ここで、クラッド層14は、異なる屈折率値の一つ以上の個々の層を含むことができる)を含む。VG含有シリコーンポリマーWTC20がクラッド層14を囲むように形成されていることが示されているが、高い熱安定性と低いUV吸光度の所望の組み合わせを達成するためには、Si-0及びSi-C結合が好ましい。よって、ラジカル重合(ここでは「VG含有シリコーンポリマー」と定義する)によるビニル基含有シリコーンが用いられる。一例では、VG含有シリコーンポリマーWTC20は、従来の125μmシングルモード光ファイバと共に使用される場合、37.5μmの厚さで形成される。最適化された延伸速度及びVG含有シリコーンポリマーWTC20が適用される温度の調整によって、得られた被覆後のファイバ10は、被覆自体に観察可能な欠陥が混入することなく形成され得る。
【0018】
上述のように、WTC20を介して直接書き込むことによってFBGを形成することができるように、WTC20には良好なUV透明度(すなわち、低いUV吸光度)を示すことが要求される。
図2は、本発明のVG含有シリコーンポリマーWTC(
図2において「高温WTC」として識別される)及び従来技術のウレタンアクリレート系WTC(「通常のWTC」として識別される)の両方についてのUV吸光度測定を示す。吸光度測定は、液体及び硬化試料の両方について行われ、一対の石英板の間にWTC材料を保持する構造を用いた。
【0019】
その結果を、波長の関数として「吸光度単位」(Au)のプロットとして
図2に示す。曲線1及び曲線2は、各WTCの液体形態についての波長の関数として吸光度をプロットし、曲線1は、従来技術のWTCに関連し、曲線2は、本発明のWTCに関連している。次いで、各コーティングの試料を、低用量UV露光(1J/cm
2)で硬化させ、それらの吸光度を、それぞれ、曲線3(先行技術)及び曲線4(本発明)によってプロットした波長の関数として、それらを硬化させた。両方のWTC(例:14J/cm
2)の高出力硬化形態は、曲線5及び曲線6に示す結果をもたらした。
【0020】
図2に示すように、従来技術のウレタンアクリレート系WTC及び本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCの吸光性は、双方ともUVドーズが最も高いときに最も小さい。14J/cm
2のドーズで、本発明で使用される高温VG含有シリコーンポリマーWTCは、測定された波長にわたって、特に、回折格子刻印に典型的に使用される248nm波長の領域において、従来技術の測定された波長にわたるコーティングと同程度の低レベルのUV吸光度を示す。したがって、本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCは、格子刻印のために使用される波長に対して透明なコーティングを提供するという点で、従来技術と同様に機能すると考えられる。
【0021】
上述したように、高温下でも安定であるライトスルーコーティングを利用する必要性が増大しており、従来技術のWTCはこの要件を完全に満たすことができなかった。多くのセンサ用途は、人間の検査には厳しすぎる環境条件に関連し、センサは高温に曝される。一例にすぎないが、油田、特に坑井内の地下条件のダウンホールモニタリング等である。本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCは、この高温の必要性を満たし、長時間(例えば、数か月、1年など)、高い動作温度で安定したままであることが分かった。
【0022】
本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCの高温特性は、従来技術のWTC材料(プロットA)の熱安定性と本発明のVG含有シリコーンポリマーWTC(プロットB)の熱安定性とを比較する
図3のグラフに示されたデータによって確認される。このデータは、各材料の熱重量分析(TGA)を実行することによって得られ、試料の質量は、周囲温度が調整された方法で変化するにつれて経時的に測定された。
【0023】
この場合、TGAを大気雰囲気下で10℃/分の加熱速度で行い、14J/cm
2で硬化したフィルムから収集した各コーティング材料(従来技術のWTC及び本発明のhigh-T WTC)の熱劣化挙動を決定した。
図3に示されるように、VG含有シリコーンポリマーWTCは、低温(従来技術のウレタンアクリレート系WTCと同様)でわずかな初期段階の分解を示すが、本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCは、高温下でより安定であり、はるかに大きな高温範囲にわたってその元の質量に対して高いパーセンテージを保持する。
【0024】
異なる使用温度でのこれらのWTCの寿命は、異なる加熱速度での動的TGAを利用することにより予測できる。この分析に使用することができる加熱速度の一組には、0.5℃/分、1℃/分、2℃/分、5℃/分、及び10℃/分が含まれる。これらの加熱速度に基づくTGA寿命予測は、従来技術のWTCコーティングについての結果もプロットした
図4に示されている。従来技術のWTCで被覆されたファイバは、80℃で1年以上の寿命を有し得ないことが示されているが、本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCを有するファイバは、150℃を超える条件での寿命の顕著な改善を示し、これは高温センサ用途にとって望ましい特性である。
【0025】
環境エージング試験を実施する場合には、ファイバの堅牢性を評価する必要がある。
図5に、従来技術のウレタンアクリレート系WTCを有するファイバと、本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCを有するファイバとのファイバの引張強度を比較した結果を示す。ワイブルプロット(Weibull Plot)によれば、本発明により形成されたファイバは、従来のファイバ(700ksi対650ksi)よりも高い機械的強度を示す。温度85℃、相対湿度85%、期間4週間の第1のエージング条件下において、従来のWTCファイバは顕著な劣化を示さず、本発明のファイバは機械的強度のわずかな低下しか示さない。
【0026】
150℃(乾燥)での4週間のエージング条件を見ると、本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCを有するファイバは、同程度の高いレベルの機械的強度を維持しているのに対し、従来技術のファイバは、引張強度においてかなりの劣化を示し、VG含有シリコーンポリマーWTCの高温用途での優れた耐高温特性を示している。
【0027】
図6乃至8は、従来の(先行技術による)ウレタンアクリレート系ポリマーWTC(
図6)を有するファイバと、本発明の2つの異なる実施形態、すなわち、比較的低線量のUV露光(
図7)で硬化した本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCと、比較的高線量のUV露光(
図8)で硬化したVG含有シリコーンポリマーWTCとの間の格子の質の差を示す。各ファイバの格子構造を25~50メートルのファイバ上に作製した。
【0028】
図6を参照すると、従来技術のWTCを用いてファイバに書き込まれた回折格子は、約-78dBの平均回折格子強度を示している。回折格子を刻み込むための同じセットアップ及びプロセスを使用すると、本発明の低線量硬化VG含有シリコーンポリマーWTCを有するファイバは、約-82dBの平均値を有する幾分減少した振幅を示した。しかし、
図7と
図8とに示す結果を比較すると、VG含有シリコーンポリマーWTCをより高い線量のUV露光で硬化させると、より少ない変動でより強い振幅及びより均一な回折格子が達成されることが明確に示されている。特に、
図8に示される結果は、約-79dBの平均格子強度を示し、従来技術のコーティングの標準的な結果に近い。この結果は、
図2に示された吸光性測定とよく一致しており、ここでは、より高いUV線量がUV透明コーティングをより促進させる。
【0029】
上述したように、本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCの1つの利点は、高温で安定であることである。本発明のファイバの熱堅牢(ロバスト)性のさらなる改良は、VG含有シリコーンポリマーWTC20を、限定されるものではないが、ポリ(エテン-コテトラフルオロエテン(ETFE))、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリフルオロアルコキシ(PFA)などの材料のアップバッファポリマー被覆で囲むことによって達成することができる。多くの商業的製造プロセスにおいて、PEEKはその使いやすさと適切な性能結果のために選択されている。
図9は、本発明のこの実施形態に従って形成される例示的なファイバ10Aを示し、ここで、VG含有シリコーンポリマーWTC20は、アップバッファPEEK層30によって囲まれている。
【0030】
図10は、本発明のさらに別の実施形態を示し、本実施例では、二重層WTCコーティングを利用する。ここで、光ファイバ10Bは、VG含有シリコーンポリマーWTCの一次コーティング40を含み、当該一次コーティング40は、回折格子を刻むことができるように軟質WTCとして形成されるとともに、光ファイバを微小曲げ(microbending)及び熱劣化から保護する。一次コーティング40の厚さは、典型的には、10~20μmの範囲である。次に、VG含有シリコーンポリマーWTCの二次コーティング42が一次コーティング40上に形成され、ここで二次コーティング42は、回折格子転写に必要な透明性を提供しながら、光ファイバ10Bを機械的な取扱いからさらに保護する実質的に同じ厚さの硬質層として形成される。
【0031】
図11に光ファイバ10Cとして示されるさらに別の構成では、(PEEK等の物質からなる)温度安定化外皮材50が、本発明のVG含有シリコーンポリマーWTCの二重層構成を囲むように配置される(PEEK材料で構造を覆うのに一般的に使用される成形プロセス)。
図11において、二重層構成は、
図10で使用される参照符号と同じ参照符号を含み、(比較的柔軟な)一次コーティング層40及び(比較的硬い)二次コーティング層42を含むものとして二重層構造を定義する。
【0032】
本開示は例示的な実施形態を記載しているが、当業者には、開示された実施形態の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を等価物で置き換えることができることが理解されるであろう。さらに、本開示の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本開示の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【国際調査報告】