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特表2022-515664(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-21
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/14 20060101AFI20220214BHJP
   C08F 210/14 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
C08F8/14
C08F210/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538265
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 IB2019001393
(87)【国際公開番号】W WO2020141348
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】62/786,575
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・クラング
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ショルテ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エー・ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ダブリュー・ヘイゼル
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA15P
4J100AA16P
4J100AA17P
4J100AA18P
4J100AA19P
4J100AA21P
4J100AD03Q
4J100AD04Q
4J100BA15H
4J100CA04
4J100CA31
4J100FA03
4J100HA11
4J100HA62
4J100JA03
4J100JA07
(57)【要約】
少なくとも、a)(メタ)アクリレート源と、b)少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマー及びii)一つ又は複数の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーのヒドロキシル官能化分岐重合体との反応生成物である(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、ポリマー(ポリオレフィン等)をさらに含有する架橋性樹脂組成物、及び一つ又は複数の追加のタイプの(メタ)アクリレート官能化化合物を含有する架橋性組成物の有用な疎水性、反応性成分である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、a)(メタ)アクリレート源と、b)少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマー及びii)一つ又は複数の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーのヒドロキシル官能化分岐重合体との反応生成物を含み、前記ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の一つ又は複数は(メタ)アクリレート官能基に変換される、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項2】
前記一つ又は複数のアルファオレフィンモノマーは、一分子につき少なくとも10個の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマーを含む、請求項1に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項3】
前記ヒドロキシル官能化分岐重合体は、一分子につき平均して少なくとも3個のヒドロキシル官能基を有する、請求項1又は2に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項4】
少なくとも一種の前記不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、式(I)又は式(II):
HRC=CH-(R)-CHOH (I)
HRC=CH-(R)-CH-(OROH (II)
(式中、mは1から20の整数であり、RはH又はC~C20アルキル基であり、Rは直接結合又は二価のC~C20アルキレン基であり、Rは二価のC~Cアルキレン基である)
に従った少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項5】
少なくとも一種の前記不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、式(Ia)又は式(IIb):
C=CH(CH-OH (Ia)
C=CH(CH-(OROH (IIb)
(式中、nは1から24の整数であり、mは1から5の整数であり、Rは-CHCH-、-CHC(CH)H-、又は-C(CH)HCH-であり、mが2以上である場合、それぞれのRは同一であってもよく、異なっていてもよい)
に従った少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項6】
少なくとも一種の前記不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、アリルアルコール、5-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1-オール、クロチルアルコール、エライジルアルコール、ガドレイルアルコール、9-デセン-1-オール、9-ドデセン-1-オール、10-ウンデシレニルアルコール、オレイルアルコール、エルシルアルコール、ブラシジルアルコール、これらのエトキシル化誘導体及び/又はプロポキシル化誘導体、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項7】
少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも一種の前記アルファオレフィンモノマーは、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種のアルファオレフィンモノマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項8】
少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも一種の前記アルファオレフィンモノマーは、C10~C13、C20~C24、C24~C28、及びC30以上の鎖長からなる群から選択される鎖長を有するアルファオレフィンモノマーの混合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項9】
500から10,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項10】
前記(メタ)アクリレート源は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルハライド、及び(メタ)アクリル酸のC~Cエステルからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項11】
一分子につき1から8個の(メタ)アクリレート官能基を含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項12】
前記ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の少なくとも80%は、(メタ)アクリレート官能基に変換される、請求項1から11のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項13】
前記ヒドロキシル官能化分岐重合体は、ヒドロキシル1当量につき200から2000グラムのヒドロキシル当量質量を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項14】
前記ヒドロキシル官能化分岐重合体は、少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマー及びii)一つ又は複数の不飽和エステル官能化コモノマーのエステル官能化分岐重合体から得られ、前記エステル官能化分岐重合体中に存在する一つ又は複数のエステル官能基はヒドロキシル官能基に変換される、請求項1から13のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項15】
(メタ)アクリレート源と、少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも一種のアルファオレフィンモノマー及びii)少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーのヒドロキシル官能化分岐重合体とを反応させる工程を含み、前記ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の一つ又は複数が(メタ)アクリレート官能基に変換される、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを調製する方法。
【請求項16】
式(III)に従った複数の繰り返し単位A及び式(IV)に従った複数の繰り返し単位B:
【化1】
(式中、RはH又はメチルであり、Rは少なくとも4個の炭素原子を含むアルキル基であり、Rは直接結合又は二価のアルキレン基であり、Rは任意選択で存在し、存在する場合、Rは二価のオキシアルキレン基又は二価のポリ(オキシアルキレン)基であり、RはH又はアルキル基である)
を含む、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項17】
式(IIIa)に従った複数の繰り返し単位A及び式(IVb)に従った複数の繰り返し単位B:
【化2】
(式中、xは少なくとも6の整数であり、yは少なくとも0の整数であり、RはH又はメチルである)
を含む、請求項16に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項18】
500から10,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項16又は17に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項19】
一分子につき1から8個の(メタ)アクリレート官能基を含有する、請求項16から18のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【請求項20】
請求項1から14又は請求項16から19のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び請求項1から14又は請求項16から19のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン以外の少なくとも一種の(メタ)アクリレート官能化化合物を含む、硬化性組成物。
【請求項21】
接着剤、シーラント、コーティング、3Dプリンティング及び付加製造用の樹脂、インク並びに成形用樹脂からなる群から選択される、請求項20に記載の硬化性組成物。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の硬化性組成物を化学線に曝露する工程を含む、物品を製造する方法。
【請求項23】
請求項1から14又は請求項16から19のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び少なくとも一種のポリマーを含む、架橋性樹脂組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の架橋性樹脂組成物を架橋する工程を含む、物品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1分子あたり一つ又は複数の(メタ)アクリレート基で官能化された分岐ポリアルファオレフィン、及びそのような(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを作成する方法に関する。(メタ)アクリレート官能基の反応性により、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンをポリオレフィン等の熱可塑性ポリマー架橋のための助剤(co-agent)として及び放射線硬化性樹脂組成物の成分として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
高官能性(一分子につき3以上の反応性官能基)放射線硬化性モノマー及びオリゴマーは、放射線硬化性配合物の硬化速度を速め、硬度、耐スクラッチ性及び耐摩耗性、並びに耐薬品性及び耐汚染性等の望ましい性能特性提供することができるため、現在広く使用されている。既存の高機能性材料は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、高分岐ポリエステルポリオール、又はこれらのアルコキシル化誘導体等の原料に由来する。そのような製品は、比較的極性が高くて親水性である。高機能性疎水性モノマー及びオリゴマーは、高度の耐湿性、MVTR特性、又は低表面エネルギー基板への強化された接着性が必要となる場合や、非極性物質との優れた適合性が必要となる場合での用途に望ましい。
【0003】
したがって、特性が疎水性でありながら、例えば放射線によって、容易に反応又は硬化され得、より親水性の出発材料を用いると得られない特性又は属性を有する有用な材料又は物品提供する高機能性材料の必要性が残っている。
【0004】
アルキル基が長鎖の直線状又は分岐状のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが当技術分野で知られており、以下の特許文献により明らかにされている:米国特許番号第2,839,512号;及び米国公開番号第2012/0088707号。それらは疎水性であるが、これらの物質はいずれも一分子につき一つの(メタ)アクリレート官能基のみを有する。したがって、それらは硬化物における高度な架橋を促進することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許番号第2,839,512号
【特許文献2】米国公開番号第2012/0088707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、ヒドロキシル官能化分岐ポリアルファオレフィンに由来し、高い(メタ)アクリレート官能性(一分子につき3個以上の(メタ)アクリレート基)を有しながらも、従来の高官能性(メタ)アクリレートよりも特性における親水性がはるかに低い(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンが開発されている。(メタ)アクリレート官能基の反応性により、これらの物質を硬化したポリマー系に容易に組み込むことができ、非極性分岐ポリアルファオレフィンのベース構造はそのような系の特性に有利に影響する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも、a)(メタ)アクリレート源と、b)少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマー及びii)一つ又は複数の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーのヒドロキシル官能化分岐重合体との反応生成物を含み、前記ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能化基の一つ又は複数は(メタ)アクリレート官能基に変換される、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを提供する。
【0008】
他の態様において、本発明は、式(III)に従った複数の繰り返し単位A及び式(IV)に従った複数の繰り返し単位B:
【化1】
(式中、RはH又はメチルであり、Rは少なくとも4個の炭素原子(好ましくは少なくとも8個の炭素原子)を含むアルキル基であり、Rは直接結合又は二価のアルキレン基(例えば、二価のC~C20アルキレン基)であり、Rは任意選択で存在し、存在する場合、Rは二価のオキシアルキレン基又は二価のポリ(オキシアルキレン)基であり、RはH又はアルキル基(例えば、直鎖状又は分岐状であってもよいC~C20アルキル基)である)
を含む、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを提供する。
【0009】
本発明は、また、(メタ)アクリレート源と、少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも一種のアルファオレフィンモノマー及びii)少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーのヒドロキシル官能化分岐重合体とを反応させる工程を含み、前記ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の一つ又は複数が(メタ)アクリレート官能基に変換される、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを調製する方法を提供する。
【0010】
本発明の他の態様において、硬化性組成物(接着剤、シーラント、コーティング、3Dプリンティング及び付加製造用の樹脂、インク又は成形用樹脂等)が提供され、硬化性組成物は本発明による(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン以外の少なくとも一種の(メタ)アクリレート官能化化合物を含む。物品は、硬化性組成物を化学線に曝露する工程を含む方法を用いて、硬化性組成物から調製されてもよい。
【0011】
本発明はさらに、本発明による(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び少なくとも一種のポリマー(特に非極性ポリマー、例えばポリオレフィン)を含む、架橋性樹脂組成物を提供する。架橋性樹脂組成物は、架橋され有用な物品を形成してもよく、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、助剤として機能してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン
【0013】
本発明の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、一分子につき一つ又は複数のアクリレート官能基及び/又はメタクリレート官能基で置換された分岐ポリマー炭化水素構造を有する化合物である。本明細書において、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタアクリレート双方を指すように使用される。同様に、「(メタ)アクリル」には、アクリル及びメタクリルが含まれる。分岐ポリマー炭化水素部分は、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンに高い疎水性特性を付与し、一方(メタ)アクリレート官能基は、(メタ)アクリレート官能基の炭素-炭素二重結合を介して、重合反応又は硬化反応に容易に参加することを可能にする一つ又は複数の反応部位を化合物中に提供する。
【0014】
本発明の特定の実施形態において、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン又は(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの混合物は、25℃で液体である。ブルックフィールド粘度計を用いて測定した、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン又は(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの混合物の25℃での粘度は、例えば約350から約3000cPであってもよい。
【0015】
特定の実施形態によると、少なくとも(メタ)アクリレート源と一分子につき少なくとも6個の(好ましくは少なくとも10個の)炭素原子を有する少なくとも一種のアルファオレフィンモノマー及び少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーのヒドロキシル官能化分岐重合体との反応生成物を含む、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンが提供され、ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の一つ又は複数(好ましくは二つ以上)は(メタ)アクリレート官能基に変換される。本明細書でより詳細に述べられるように、ヒドロキシル官能化分岐重合体は、少なくとも、一分子につき少なくとも10個の炭素原子を有する少なくとも一種のアルファオレフィンモノマー、少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマー、及び、任意選択で、少なくとも一種の追加のコモノマーを、分岐を促進するのに有効な条件下で共重合することにより得られ、それによって所望の分岐構造を提供する。ヒドロキシル官能基は、直接的に(不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーが一つ又は複数の遊離のヒドロキシル官能基を有する場合)提供されても、又は間接的に(生成される重合体がマスキング又は保護されたヒドロキシル基を有し、マスキング又は保護基が重合後に除去される場合)提供されてもよい。
【0016】
ヒドロキシル官能化分岐重合体は、一分子につき、平均して少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、少なくとも3種、又は少なくとも4種のヒドロキシル官能基(-ОH)を有してもよい。
【0017】
ヒドロキシル官能化分岐重合体(したがって及びそこから得られる(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンも)は、三重検出器サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて、溶液中のポリマー構造に対してさらに特徴づけられてもよい。具体的には、SECと多角度光散乱法(MALS)、示差粘度計(VISC)及び示差屈折系(DRI)を組み合わせは、絶対モル質量の平均値及び分布、ポリマーのサイズ、長鎖分岐(LCBs)の分布及び分岐頻度を測定するために使用され得る。また、SEC/MALS/VISC/DRIセットアップは、ポリマーのフラクタル次元及びこの次元の変化を絶対モル質量の関数として提供し得る。挙げられたそれぞれの物理検出器は、別個のポリマーの半径を測定し、さらに組み合わせることで、ポリマーが直鎖状であるか分岐状であるかを示すことができる。さらに、粘度データとモル質量データを組み合わせることで、Mark-Houwinkプロットによって分岐についての情報も得られる。サイズに基づいた分離と組み合わされた物理検出器の相乗的性質により、ポリマー構造の決定が可能になる。
【0018】
また、コンフォメーションプロット(conformation plat)と一般的に呼ばれるプロット(すなわち、Log RG vs Log Mのプロット)が、マルチ検出器SECによって得られ得る。分岐種のコンフォメーションプロットを直鎖状標準のコンフォメーションプロットと比較すると、各モル質量スライドにおけるgを決定でき、そこから分岐高分子のモル質量の連続関数として分岐数を計算できる。決定され得る分岐数を用いて計算され得る追加のパラメータは、分岐頻度、λ、(分子量1000単位あたりの平均分岐点数)である。二乗平均平方根半径、収縮係数、分岐点の数、分岐頻度のすべてがモル質量の関数としてプロットされ得、したがってヒドロキシル官能化分岐重合体内のLCB分布に関する情報を提供する。
【0019】
長鎖分岐分布の定量的及び半定量的記述も、マルチ検出器SEC、具体的にはSEC/VISC/DRIにより決定され得る。オンラインVISCの使用により、同じモル質量Mでの、固有粘度又は分岐分子[η]と線形標準[η]の比率、g′を決定できる。
【0020】
【数1】
【0021】
SEC/MALS/VISC/DRI実験で得られたモル質量の平均値と固有粘度の測定値は、ポリマーが直鎖状であるか分岐状であるかをMark-Houwinkプロットにより判断するために使用され得る。Mark-Houwinkプロットは、モル質量と固有粘度の両対数プロット(log-log plot)である。Mark-Houwinkプロットの傾きαは、溶液中のポリマーの分子構造に対応する。直鎖状のランダムコイル構造を持つポリマーは、0.5~0.8の傾き(α値)を有するのに対し、分岐状分子は0.33~0.5の傾きを有する。傾きは、Mark-Houwinkプロット全体で、すなわちモル質量の関数として変化することができ、ポリマーの構造がモル質量の関数として変化することを示す。ヒドロキシル官能化分岐重合体と(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンにおける、長変化分岐(long-change branches)の間の平均モル質量は、Mark-Houwinkプロット、又はコンフォメーションプロットの直鎖状領域及び分岐状領域を表す、べき乗側の交点のモル質量に基づいて決定されてもよい。
【0022】
好適な不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和部位(好ましくは、末端位置又は内部位置にあり得る、単一の炭素-炭素二重結合のみ)を含有する有機化合物を含む。特定の実施形態によると、少なくとも1種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、式(I)又は式(II):
HRC=CH-(R)-CHOH (I)
HRC=CH-(R)-CH-(OROH (II)
(式中、mは1から20(好ましくは1から5)の整数であり、RはH又はC~C20アルキル基(好ましくはH)であり、Rは直接結合又は二価のC~C20アルキレン基(例えば、-CH-、-CHCH-、-CHCH(CH)-等)であり、Rは二価のC~Cアルキレン基(例えば、-CHCH-又は-CHCH(CH)-)である)
に従った少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含む。C~C20アルキル基及びC~Cアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。特定の実施形態において、不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、3から25の範囲内の総炭素原子数を有する。
【0023】
さらなる実施形態において、少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、式(Ia)又は式(IIb):
C=CH(CH-OH (Ia)
C=CH(CH-(OCHCHR)OH (IIb)
(式中、nは1から24の整数であり、mは1から5の整数であり、Rは-H又は-CHはである)
に従った少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含む。
【0024】
式(I)及び/又は式(II)に従ったコモノマーの組み合わせ、並びに式(Ia)及び/又は式(IIb)に従ったコモノマーの組み合わせが使用され得る。
【0025】
例えば、少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、アリルアルコール、5-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1-オール、クロチルアルコール、エライジルアルコール、ガドレイルアルコール、9-デセン-1-オール、9-ドデセン-1-オール、10-ウンデシレニルアルコール、オレイルアルコール、エルシルアルコール、ブラシジルアルコール、これらのエトキシル化誘導体及び/又はプロポキシル化誘導体、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含んでもよい。本明細書で使用される場合、用語「エトキシル化誘導体及び/又はプロポキシル化誘導体」は、ヒドロキシル官能基が1以上の当量エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドの組み合わせと反応したアルコールの誘導体を指す。(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンにおける高度の疎水性を維持するために、不飽和アルコールのアルコキシル化の程度を、例えば、ヒドロキシル1当量あたり、10当量未満のエポキシド又は5当量未満のエポキシドに制限することが通常望ましい。
【0026】
アルファオレフィンモノマーは、式HC=CHRに対応してもよく、式中、Rは少なくとも4個の炭素原子を含有するアルキル基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。好ましくは、Rはアルキル基であり、特に少なくとも8個の炭素原子を含有する、直鎖状のアルキル基である。様々な実施形態において、Rは48以下、43以下、又は38以下の炭素原子を含有するアルキル基である。そのようなアルファオレフィンモノマーの混合物が用いられてもよい。
【0027】
少なくとも6個(好ましくは少なくとも10個)の炭素原子を有する少なくとも一種のアルファオレフィンモノマーは、例えば、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。例えば、少なくとも10個の炭素原子を有するアルファオレフィンモノマーは、C10~C13、C20~C24、C24~C28、及びC30以上の鎖長からなる群から選択される鎖長を有するアルファオレフィンモノマーの混合物であってもよい。
【0028】
(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの数平均分子量は、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及びそれから得られる生成物の特性及び特徴を調整するために、所望に応じて変化され得る。本発明の様々な実施形態において、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、少なくとも500、少なくとも750、又は少なくとも1000ダルトンの数平均分子量を有してもよい。別の実施形態において、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、10,000以下、5000以下、又は3000ダルトン以下の数平均分子量を有してもよい。例えば、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、500から10,000ダルトン又は750から5000ダルトンの数平均分子量を有してもよい。
【0029】
(メタ)アクリレート源は、ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル基と反応して、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを生成することができる、任意の化合物又は化合物の組み合わせであってもよい。そのような反応は、エステル化反応とみなされてもよく、そこではヒドロキシル基がエステル((メタ)アクリレート)基に変換される。以下でより詳細に述べられるように、(メタ)アクリレート源は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルハライド(例えば、(メタ)アクリル酸クロリド((meth)acrylic chloride)、及び(メタ)アクリル酸のC~Cエステルからなる群から選択されてもよい。
【0030】
(メタ)アクリル官能化分岐ポリアルファオレフィンは、一分子につき1、2、3、4、5又はそれ以上の、好ましくは2以上の(メタ)アクリレート官能基を含有してもよい。例えば、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリオレフィンにおいて、一分子につき1から8個又は2から6個の(メタ)アクリレート官能基が存在してもよい。ヒドロキシル官能化分岐重合体のうちいくつか又は全てのヒドロキシル官能基は(メタ)アクリレート官能基に変換されてもよい。例えば、一実施形態において、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、一分子につき一つ又は複数のヒドロキシル基及び一つ又は複数の(メタ)アクリレート基を含んでもよい。別の実施形態において、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、一分子につき一つ又は複数の(好ましくは二つ以上の)(メタ)アクリレート基を含むが、ヒドロキシル基は含まなくてもよい。さらなる実施形態によると、ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、(メタ)アクリレート官能基に変換される。
【0031】
本発明によるさらなる目的は、前述の記載による、二つ以上の異なる(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの混合物を含む組成物である。
【0032】
本発明のさらなる実施形態は、式(III)に従った複数の繰り返し単位A及び式(IV)に従った複数の繰り返し単位B:
【化2】
(式中、RはH又はメチルであり、Rは少なくとも4個の炭素原子(好ましくは少なくとも8個の炭素原子)を含むアルキル基であり、Rは直接結合又は二価のアルキレン基(例えば、直鎖状であっても分岐状であってもよい、二価のC~C20アルキレン基)であり、Rは任意選択で存在し、存在する場合、Rは二価のオキシアルキレン基又は二価のポリ(オキシアルキレン)基であり、RはH又はアルキル基(例えば、直鎖状であっても分岐状であってもよい、C~C20アルキル基)である)
を含む、から実質的になる、又はからなる、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを提供する。
【0033】
本発明の別の実施形態は、式(IIIa)に従った複数の繰り返し単位A及び式(IVb)に従った複数の繰り返し単位B:
【化3】
(式中、xは少なくとも6の整数であり、yは少なくとも0(例えば、0から28)の整数であり、RはH又はメチルである)
を含む、から実質的になる、又はからなる、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを提供する。
【0034】
(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、繰り返し単位A及びB以外の一つ又は複数の種類の繰り返し単位をさらに含んでもよい。例えば、そのような追加的な繰り返し単位は、式(V):
【化4】
(式中、RはH又はC~Cアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル))
に相当してもよい。
【0035】
(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンにおいて追加的に存在する繰り返し単位は、式(VI):
【化5】
(式中、R′及びR′′同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基(例えば、直鎖状であっても分岐状であってもよい、C~C20アルキル基)である)
にも相当し得る。
【0036】
別の例では、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、式(VII)に従った:
【化6】
(式中、Rは直接結合又は二価のアルキレン基(例えば、直鎖状であっても分岐状であってもよい、二価のC~C20アルキレン基)、Rは任意選択で存在し、存在する場合、Rは二価のオキシアルキレン基又は二価のポリ(オキシアルキレン)基であり、RはH又はアルキル基(例えば、直鎖状であっても分岐状であってもよい、C~C20アルキル基)である);
又は、式(VIIa)に従った:
【化7】
(式中、yは少なくとも0(例えば、0から28)の整数である)、
一つ又は複数の繰り返し単位を追加的に含んでもよい。
【0037】
(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、-OH基が-OC(=O)Y(式中、YはH又は置換アルキル基、例えばメチル基)に置き換わった式(VII)又は式(VIIa)に従った一つ又は複数の繰り返し単位をさらに含むこともできる。しかし、特定の実施形態において、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンにおける繰り返し単位A及び繰り返し単位B以外の繰り返し単位の含有量は、制限される。例えば、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンにおける全繰り返し単位の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が式(III)及び式(IV)に相当してもよい。
【0038】
特定の実施形態によると、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、式(IV)又は式(VII)に相当する繰り返し単位以外のヘテロ原子を含有する繰り返し単位を低含量で有する。
【0039】
特定の実施形態によると、前述の繰り返し単位は、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの主鎖及び分岐に沿ってランダムに又は統計的に配置されている。しかし、他の実施形態において、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、より規則的な構造を有してもよい。
【0040】
(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを製造する方法
【0041】
前述の論考で述べられるように、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、適切な(メタ)アクリレート源でヒドロキシル官能化分岐重合体をエステル化することにより調製されてもよい。そのようなエステル化により、所望の(メタ)アクリレート官能基が分岐ポリアルファオレフィンに導入される。
【0042】
ヒドロキシル官能化分岐重合体は、当技術分野において公知である任意の方法、例えば、米国特許番号第7,314,904号(全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)に記載されている手順等を用いて調製されてもよい。また、米国特許番号第4,060,569号(その開示は全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)に記載された重合手順も、ヒドロキシル官能化分岐重合体の調製における使用に好適に適用されてもよい。好適なヒドロキシル官能化分岐重合体は、商業的供給源(例えば、Baker Hughes社により「Vybar」のブランド名で販売されているヒドロキシル官能化分岐重合体)からも得られる。
【0043】
好適なヒドロキシル官能化分岐重合体は、少なくとも、(a)少なくとも6個(好ましくは少なくとも10個)の炭素原子を有する少なくとも1種のアルファオレフィンモノマー;(b)少なくとも1種のヒドロキシル官能化不飽和モノマー;及び(c)少なくとも1種の重合開始剤を含む混和物(admixture)を、アルファオレフィンモノマー及びヒドロキシル官能化不飽和モノマーを共重合させるのに十分な反応条件に供することにより得られる反応混合物を含む。混和物は、任意選択で、6個未満の炭素原子を有するアルファオレフィンモノマー、ビニリデン化合物、及び/若しくは内部オレフィン等の一つ又は複数の追加のタイプの反応性コモノマー、並びに/又は溶媒、連鎖移動剤、重合開始剤の促進剤/加速剤等の一つ又は複数の追加の重合成分をさらに含んでもよい。本発明の様々な実施形態によると、混和物中に存在する、少なくとも50質量%、少なくとも60質量%、少なくとも70質量%、少なくとも80質量%、少なくとも90質量%又は少なくとも95質量%のモノマーは、一分子につき6個以上の炭素原子及びヒドロキシル官能化不飽和モノマーを有するアルファオレフィンモノマーである。
【0044】
本発明において有用なアルファオレフィンは、6個以上の炭素原子(より好ましくは8個以上の炭素原子、最も好ましくは10個以上の炭素原子)を含有し、化合物の末端位置で炭素-炭素二重結合が現れるエチレン性不飽和有機化合物であり、一般的構造HC=CH-R(式中、Rは炭化水素基、好ましくは脂肪族炭化水素基、最も好ましくは飽和脂肪族炭化水素基である)により表されるものである。Rは、例えば直鎖又は分岐アルキル基であってもよい。アルファオレフィンの最大炭素原子数は特に限定されず、その結果、例えば、50、45、40、又は35もの数であってもよい。本発明の様々な実施形態によると、一つ又は複数のC~C50アルファオレフィン、一つ又は複数のC~C45アルファオレフィン、又は一つ又は複数のC10~C40アルファオレフィンが使用されてもよい。好ましいアルファオレフィンは、モノ-エチレン性不飽和有機化合物である。ヒドロキシル官能化分岐重合体を調製するために使用されてもよいアルファオレフィンには、これらに限定されないが、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンのほか、主にC10~C13、C20~C24の鎖長、C24~C28の鎖長及びC30以上の鎖長を有するものを含むアルファオレフィンとして販売されるこのような市販の混合物も含まれる。アルファオレフィンは、式(IX)に相当する構造を有してもよい:
C=CHCH(CHCH (IX)
(式中、xは少なくとも2、より好ましくは少なくとも4、さらにより好ましくは少なくとも6の整数である)。
【0045】
ヒドロキシル官能化分岐重合体の調製において有用な不飽和ヒドロキシル官能化化合物には、これらに限定されないが、不飽和アルコール、アルコキシル化不飽和アルコール、及びこのような不飽和アルコール及びアルコキシル化不飽和アルコールのエステル(特に不飽和アルコール及びアルコキシル化不飽和アルコールの酢酸エステル及びギ酸エステル)が含まれる。典型的には、このような不飽和ヒドロキシル官能化化合物は、単一のエチレン性不飽和部位(すなわち、モノエチレン性不飽和ヒドロキシル官能化化合物)を有し、それはアルファ位にあってもよく(すなわち、化合物はアルファ、ベータ不飽和アルコールであってもよく)、あるいは内部にあってもよい。特定の実施形態によると、不飽和ヒドロキシル官能化化合物は脂肪族化合物である。他の実施形態によると、不飽和ヒドロキシル官能化化合物は、一分子につき一つのヒドロキシル基(又はその前駆体、例えばヒドロキシル基に変換可能なエステル基)を含むが、他の実施形態では、2つ以上のヒドロキシル基(又はその前駆体)が不飽和ヒドロキシル官能化化合物に存在してもよい。好ましくは、ヒドロキシル官能基は、第一級又は第二級ヒドロキシル官能基であり、最も好ましくは、ヒドロキシル官能基は第一級ヒドロキシル官能基である。不飽和アルコールのエステルが不飽和ヒドロキシル官能化化合物として使用される場合、同様に、エステル基がヒドロキシル基に変換される際に、得られるヒドロキシル基が第二級であることが好ましく、又は第一級であることがより好ましい。不飽和ヒドロキシル官能化化合物は、短鎖化合物(6個未満の炭素原子)又は長鎖化合物(6個以上の炭素原子)であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシル官能化化合物(hydroxyl-functionalizing compound)」は、遊離のヒドロキシル基を含有する化合物(例えばアリルアルコール中等)、及びマスクされた又は保護されたヒドロキシル基を含有する化合物(例えば酢酸アリル中等)の両方を包含する。
【0046】
有用なヒドロキシル官能化化合物には、アリルアルコール、5-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1-オール、クロチルアルコール、エライジルアルコール(9-trans-オクタデセン-1-オール)、ガドレイルアルコール(9-cis-エイコセン-1-オール)、9-デセン-1-オール、9-ドデセン-1-オール、10-ウンデシレニルアルコール、オレイルアルコール(9-cis-オクタデセン-1-オール)、エルシルアルコール(13-cis-ドコセン-1-オール)、ブラシジルアルコール(13-trans-ドコセン-1-オール)等の不飽和アルコール、これらのエトキシル化誘導体及び/又はプロポキシル化誘導体、並びにこれらのアルコールの酢酸エステル及びギ酸エステル等が含まれる。
【0047】
例えば、式(VIII)に従った一つ又は複数のヒドロキシル官能化化合物が用いられてもよい:
C=CHCH(CHOH (VIII)
(式中、yは少なくとも0の整数である)。
【0048】
式(VIIIa)に従った一つ又は複数のヒドロキシル官能化化合物も、使用され得る:
C=CHCH(CHOC(=O)Y (VIIIa)
(式中、yは少なくとも0の整数、YはH又はアルキル(例えば、メチル等のC~Cアルキル)である)。
【0049】
ヒドロキシル官能化化合物は、製造される分岐重合体の主鎖又は側鎖に組み込まれてもよい。アルファオレフィンモノマーとヒドロキシル官能化不飽和モノマーのモル比は、様々な実施形態において、約20:1~1:20、約10:1~1:10、又は約8:1~1:2であってもよい。
【0050】
重合開始剤又は重合開始剤の組み合わせをヒドロキシル官能化分岐重合体の調製に使用してもよい。好ましくは、この重合開始剤は、フリーラジカル開始剤である。例えば、重合開始剤は、有機過酸化物又は有機過酸化物の組み合わせであってもよい。使用されてもよい有機過酸化物には、これらに限定されないが、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシカーボネート、アルキルアリールペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド、及びアラルキルヒドロペルオキシド、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシソブチレート、及びtert-ブチルペルオキシソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、n-ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0051】
フリーラジカル開始剤の他のタイプ、例えばアゾ化合物も使用され得る。フリーラジカル開始剤として有用なアゾ化合物には、これらに限定されないが、2,2′-アゾビスイソプロピオニトリル、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチルアゾイソブチレート、1,1′アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、20 2,2′アゾビス(2-メチルプロパン)、及びこれらの混合物が含まれる。
【0052】
促進剤、加速剤及び/又は連鎖移動剤も、フリーラジカル開始剤と組み合わせて使用され得る。
【0053】
ヒドロキシル官能性(Hydroxyl functionality)は、アルファオレフィン(又はアルファオレフィンの混合物)及びマスクされた又は保護されたヒドロキシル官能基を含有する一つ又は複数のコモノマーを用いて共重合を行い、次にマスキング又は保護基を取り除いて所望のヒドロキシル基を生成することによって、重合体に導入されてもよい。例えば、マスキング又は保護基は、アセテート基又はホルメート基等のエステル基であってもよい。重合体が形成されると、脱エステル化(例えば、脱アセチル化又は脱ホルミル化)によって遊離のヒドロキシル基が生成され得る。塩基触媒加水分解等のこの目的のための好適な脱保護方法が、当技術分野で知られている。
【0054】
少なくとも6個(好ましくは少なくとも10個)の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマー;一つ又は複数の不飽和ヒドロキシル官能化化合物;及び少なくとも一種の重合開始剤を含む混和物が、アルファオレフィンモノマー及び不飽和ヒドロキシル官能化化合物を重合するのに十分な条件下で反応される。前述のように、他のタイプのモノマーを含む他の成分が、任意選択で、混和物中に存在してもよい。あるいは、重合開始剤を、反応の過程にわたって反応物(アルファオレフィンモノマー、不飽和ヒドロキシル官能化化合物、及び任意選択で他のコモノマー)に段階的に添加してもよいし、又は反応物の1つを開始剤と共に全体的に若しくは部分的に、段階的に添加しもよい。重合開始剤(例えばフリーラジカル開始剤)と反応物のモル比は、例えば約0.005から0.35であってもよい。有機過酸化物等のフリーラジカル開始剤が使用される場合、反応温度におけるフリーラジカル開始剤の半減期の約1から約20倍の反応(重合)時間が一般的に好適である。重合は、低圧、例えば約500psig未満で実行されてもよい。特定の実施形態によると、重合の間の圧力は、反応物の蒸発を実質的に防ぐのに十分である。重合温度は、フリーラジカル開始剤が約0.5時間から約3時間の半減期を有するように設定されてもよい。これは続いて、フリーラジカル開始剤が分解する温度の関数でもある。好適な重合温度は、例えば約40℃から約250℃の範囲内であってもよい。一実施形態において、反応物及び重合開始剤は反応器内で組み合わされ、不活性ガスパッド下で、80℃から180℃の温度で反応させられる。
【0055】
本発明の様々な実施形態において、重合(及び、任意の場合、ヒドロキシル保護基の除去)後、ヒドロキシル官能化分岐重合体は、約200ダルトンから約10,000ダルトン、又は約400ダルトンから約5,000ダルトン、又は約600ダルトンから約3,000ダルトンの、ゲル浸透クロマトグラフィー手順及びポリスチレン標準を用いて決定した数平均分子量を有してもよい。
【0056】
ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル当量質量(equivalent weight)は、そこから調製される(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンに求められる特性及び特徴に応じて、所望されるように変更されてもよい。例えば、本発明の特定の例示的な実施形態によると、ヒドロキシル官能化分岐重合体は、ヒドロキシル当量当たり200から2000又は300から1000gのヒドロキシル当量質量を有してもよい。
【0057】
前述したように、本発明の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、ヒドロキシル官能化分岐重合体に存在する一つ又は複数のヒドロキシル基を(メタ)アクリレート官能基に変換するのに有効な条件下で、ヒドロキシル官能化分岐重合体を(メタ)アクリレート源と反応させることによって得てもよい。この変換は、(メタ)アクリレート源がアクリル酸である場合(式中、Rはヒドロキシル官能化分岐重合体の残りである)について、以下に例示される。
【0058】
R-OH+HOC(=O)CH=CH → R-O-C(=O)CH=CH+H
【0059】
この目的のために有効な反応条件は、例えば、ヒドロキシル官能化分岐型重合体上のヒドロキシル官能基の反応性及び(メタ)アクリレート源の反応性を含む、多くの要因に応じて変化する。好適な(メタ)アクリレート源には、(メタ)アクリル酸に加えて、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルハライド、及び(メタ)アクリレートエステル(とりわけ、(メタ)アクリル酸のC~Cアルキルエステル)が含まれる。(メタ)アクリレート源とヒドロキシル官能化分岐重合体の反応は、例えば、エステル化反応、トランスエステル化反応、又はエステル化交換反応の方法によって行われてもよい。(メタ)アクリレート源及び他のヒドロキシル官能基含有物質を含む反応が、当技術分野で広く知られており、そのような反応に使用される手順、反応条件、触媒、及び重合防止剤のいずれも、本発明での使用に容易に適応することができる。(メタ)アクリレート源とヒドロキシル官能化分岐重合体の間の化学両論は、ヒドロキシル官能化分岐重合体中のヒドロキシル基の(メタ)アクリレート官能基への所望の変換の程度を達成するために、適切に調整することができる。例えば、反応させる(メタ)アクリレート源とヒドロキシル官能化分岐重合体の量は、(メタ)アクリレート源:ヒドロキシル官能基が0.1:1から1.1:1となるようなモル比を提供するように選択され得る。ヒドロキシル官能化分岐型重合体の本質的に完全なエステル化を達成することが望ましい場合、(メタ)アクリレート源のモル過剰が用いられてもよい。
【0060】
一つ又は複数の促進剤又は触媒が、(メタ)アクリレート源がヒドロキシル官能化分岐重合体と反応する速度を速めるために使用されてもよい。例えば、酸(例えば、ジ亜リン酸等のリン系の酸、スルホン酸等の硫黄系の酸)、塩基、金属化合物(例えば、アセチルアセトナトジルコニウム)等を含む、当技術分野で知られている任意のこのような促進剤及び触媒を使用してもよい。
【0061】
(メタ)アクリレート源とヒドロキシル官能化分岐重合体の反応が副生成物を生成する範囲で、特に高度な(メタ)アクリレート化が望まれる場合には、反応を完了させるために、反応混合物から副生成物を除去することが有用であり得る。例えば、(メタ)アクリレート源が(メタ)アクリル酸である場合、副生成物として生成した水は、任意の好適な方法、例えばスパージング、蒸留(共沸混合物を用いた共沸蒸留を含む)、真空ストリッピング等によって除去されてもよい。同様に、(メタ)アクリレート源が(メタ)アクリル酸のC~Cアルキルエステルである場合、副生成物として形成されたC~C脂肪族アルコールは、同様の技術を用いて除去されてもよい。
【0062】
(メタ)アクリレート源とヒドロキシル官能化分岐重合体としての反応混合物中の一つ又は複数の重合防止剤の存在が、(メタ)アクリレート官能基の望ましくない反応を防ぐ又は低減するために望ましいことがある。好適な重合防止剤には、例えば、フェノール化合物(とりわけ、ヒンダードフェノール化合物)、チオアジン、ヒドロキノン、アミン等及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0063】
このようにして得られた反応生成物は、最終的な(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを得るために、任意のさらなる処理又は生成の工程に供されてもよい。好適な技術には、例えば、中和、洗浄、エステル化に使用した触媒の除去、ストリッピング(揮発物の除去のための)等が含まれる。一つ又は複数の安定剤が、このようにして得られた(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンに添加されてもよい。
【0064】
例えば、本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシル官能化分岐重合体、酸性触媒、重合防止剤、及び水と共沸混合物を形成することができる溶媒を含む混合物を、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル官能化分岐重合体の間の反応を起こすのに有効な温度に加熱し、そこでヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル基のエステル化が起こり、副生成物として水が生成し、溶媒との共沸蒸留によって混合物から除去される。所望のエステル化度に達したら(生成する水の副生成物の量によって評価される)、酸性触媒を中和し、所望の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを含む反応生成物を水で洗浄し、続いて真空化で溶媒及び他の揮発物を除去し、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを得ることができる。
【0065】
(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの使用
【0066】
本発明による(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、幅広い種類の用途で有用である。例えば、それらは、コーティング、インク、接着剤、シーラント、及び三次元部品(three-dimensional part)(例えば、成形部品、付加製造によって製造された部品)において、とりわけ高度の架橋と組み合わされた耐湿性が必要とされる場合に、使用されてもよい。別の例として、本発明の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、熱可塑性ポリマー、特に、ポリオレフィン等の疎水性ポリマーの架橋の助剤として用いられてもよい。それらは通常、高分子量のポリエチレン及びポリプロピレン等の他の非極性、疎水性材料と高度の相溶性を示し、低い表面エネルギーを有する表面への接着性を向上することもできる。
【0067】
硬化性組成物
【0068】
前述したように、本発明の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、(メタ)アクリレート官能化化合物の一つ又は複数の他のタイプを追加的に含む硬化性組成物の形成において特に有用である。このような他の(メタ)アクリレート官能化化合物には、一分子につき一つ又は複数のアクリレート官能基及び/又はメタクリレート官能基を含有する任意の有機化合物が好適に含まれ、このような(メタ)アクリレート官能基は、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの(メタ)アクリレート官能基と一緒に反応して、硬化したポリマーマトリックスを提供することができる。
【0069】
本発明による(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び他の(メタ)アクリレート官能化化合物の相対量は、重要であると見なされておらず、使用するために選択された特定の成分、並びに硬化性組成物及びそれらから得られる硬化性組成物に求められる特性に応じて、幅広く変更されてもよい。例えば、硬化性組成物は、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン以外の(メタ)アクリレート官能化化合物の総質量に基づいて、0.5から99.5質量%の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び0.5から99.5質量%の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン以外の(メタ)アクリレート官能化化合物を含んでもよい。
【0070】
好適な(メタ)アクリレート官能化化合物には、(メタ)アクリレート官能化モノマー及び(メタ)アクリレート官能化オリゴマーの両方が含まれる。
【0071】
本発明の特定の実施形態によると、硬化性組成物は、本発明による少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンに加えて、一分子につき二個以上の(メタ)アクリレート官能基を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマーを含む。一分子につき二個以上の(メタ)アクリレート官能基を含有する、有用な(メタ)アクリレート官能化モノマーの例には、多価アルコール(一分子につき二個以上、例えば2から6個のヒドロキシル基を含有する有機化合物)のアクリレートエステル及びメタクリレートエステルが含まれる。好適な多価アルコールの具体例には、C2~20アルキレングリコール(C2~10アルキレン基を有し、炭素鎖が分岐であるグリコールが好ましい場合がある;例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ビスフェノール、及び水添ビスフェノール、並びにそれらのアルコキシル化(例えばエトキシル化及び/又はプロポキシル化)誘導体、例えば、1~20モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを1モルのグリコールと反応させたもの)、ジエチレングリコール、グリセリン、アルコキシル化グリセリン、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、アルコキシル化トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、アルコキシル化ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、アルコキシル化ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、アルコキシル化ジペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、アルコキシル化シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、アルコキシル化ノルボルネンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、アルコキシル化ノルボルネンジメタノール、芳香環を含有するポリオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールエチレンオキシド付加物、ビスフェノールエチレンオキシド付加物、水添ビスフェノールエチレンオキシド付加物、ビスフェノールプロピレンオキシド付加物、水添ビスフェノールプロピレンオキシド付加物、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールプロピレンオキシド付加物、糖アルコール、及びアルコキシル化糖アルコールが含まれる。このような多価アルコールは、それらが1分子あたり少なくとも2個の(メタ)アクリレート官能基を含有しているという条件で、完全に又は部分的に((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルクロライド等で)エステル化されていてもよい。本明細書で使用される場合、用語「アルコキシル化」は、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド等の一つ又は複数のエポキシドが、多価アルコール等の塩基化合物の活性水素含有基(例えば、ヒドロキシル基)と反応して一つ又は複数のオキシアルキレン部位を形成した化合物を表す。例えば、塩基化合物1モルにつき、1から25モルのエポキシドを反応させてもよい。本発明の特定の態様によると、使用される(メタ)アクリレート官能化モノマーは、比較的低分子量(例えば、100から1000ダルトン)であってもよい。
【0072】
また、本発明において、当技術分野で知られている任意の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーも、使用されてもよい。特定の実施形態によると、このようなオリゴマーは、一分子につき二個以上の(メタ)アクリレート官能基を含有する。このようなオリゴマーの数平均分子量は、例えば約500から約50,000まで、大きく変化し得る。特定の実施形態によると、オリゴマーの数平均分子量が増加するにつれて、オリゴマーの平均官能性(average functionality)が3、4又はそれ以上に増加すること(すなわち、オリゴマーの一分子あたりの(メタ)アクリレート官能基の平均数が増加すること)が好ましいことがある。
【0073】
好適な(メタ)アクリレート官能価オリゴマーには、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリジエン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの組み合わせが含まれる。このようなオリゴマーは、本発明の多成分システムを用いて調製された硬化性樹脂発泡体の、他の特性の中でも柔軟性、強度、及び/又は弾性率(modulus)を高めるために、一つ又は複数の(メタ)アクリレート官能化モノマーと組み合わせて選択され、使用されてもよい。
【0074】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーには、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はこれらの混合物と、ヒドロキシル基末端(terminated)ポリエステルポリオールとの反応生成物が含まれる。反応プロセスは、特にポリエステルポリオールが二官能性である場合において、ポリエステルポリオールのヒドロキシル基の全て又は実質的に全てを(メタ)アクリル化されるように行ってもよい。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能化化合物(特に、ジオール)及びポリカルボン酸官能化化合物(特に、ジカルボン酸及び無水物)の重縮合反応により製造され得る。ポリヒドロキシル官能化化合物及びポリカルボン酸官能化化合物は、それぞれ直鎖状、分岐状、シクロ脂肪族又は芳香族構造を有することができ、個別に又は混合物として使用され得る。
【0075】
好適なエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの例には、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はこれらの混合物とグリシジルエーテル又はエステルとの反応生成物が含まれる。
【0076】
好適なポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーには、これらに限定されないが、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はこれらの混合物と、ポリエーテルポリオールであるポリエテロール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコール)との縮合反応生成物が含まれる。好適なポリエテロールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含有する直鎖状又は分岐状物質であり得る。ポリエテロールは、テトラヒドロフラン又はアルキレンオキシド等の環状エーテルをスターター分子で開環重合することにより調製され得る。好適なスターター分子には、水、ポリヒドロキシル官能化材料、ポリエステルポリオール、及びアミンが含まれる。
【0077】
本発明の多成分システムにおいて使用することができるポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(しばしば、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」とも呼ばれる)には、(メタ)アクリレート末端基でキャップされた、脂肪族及び/又は芳香族のポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール、並びに脂肪族及び/又は芳香族のポリエステルジイソシアネート及びポリエーテルジイソシアネートをベースとするウレタンが含まれる。好適なポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーには、例えば、脂肪族ポリエステル系のウレタンジ-及びテトラ-アクリレートオリゴマー、脂肪族ポリエーテル系のウレタンジ-及びテトラ-アクリレートオリゴマー、並びに脂肪族ポリエステル/ポリエーテル系のウレタンジ-及びテトラ-アクリレートオリゴマーが含まれる。
【0078】
様々な実施形態において、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、脂肪族及び/又は芳香族のジイソシアネートとOH基末端ポリエステルポリオール(芳香族、脂肪族及び脂肪族/芳香族混合ポリエステルポリオールを含む)、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、若しくはポリブタジエンポリオール、又はこれらの組み合わせを反応させてイソシアネート官能化オリゴマーを形成し、この後ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させて、末端(メタ)アクリレート基を提供することによって調製されてもよい。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、一分子当たり2個、3個、4個以上の(メタ)アクリレート官能基を含有してもよい。
【0079】
好適なアクリル(メタ)アクリレートオリゴマー(当技術分野においてしばしば、「アクリルオリゴマー(acrylic oligomer)」とも呼ばれる)には、一つ又は複数の(メタ)アクリレート基(オリゴマーの末端又はアクリル骨格のペンダントにあってもよい)で官能化されたオリゴマーアクリル骨格を有する物質と表され得るオリゴマーが含まれる。アクリル骨格は、アクリルモノマーの繰り返し単位を含むホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってもよい。アクリルモノマーは、C~Cアルキル(メタ)アクリレート等の任意のモノマー(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシル基、カルボン酸基及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート等の官能化(メタ)アクリレートであってもよい。アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、当技術分野において知られる任意の手順を用いて調製することができ、例えば少なくとも一部がヒドロキシル基、カルボン酸基及び/又はエポキシ基で官能化されたモノマー(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート)をオリゴマー化することで官能化オリゴマー中間体を得て、その後一つ又は複数の(メタ)アクリレート含有反応物と反応させ、所望の(メタ)アクリレート官能基を導入することにより調製され得る。
【0080】
例示的な(メタ)アクリレート官能化モノマー及びオリゴマーには、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジメタクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート(600はポリエチレングリコール部分のおおよその数平均分子量を表す);ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート;1,12-ドデカンジオールジメタクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;1,3-ブチレングリコールジメタクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;ポリブタジエンジアクリレート;メチルペンタンジオールジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化10ビスフェノールAジメタクリレート(エトキシル化の後の数字は一分子当たりのオキシアルキレン部分の平均数である);ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ドデカンジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化10ビスフェノールAジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリプロピレングリコール(400)ジメタクリレート;メタリックジアクリレート(metallic diacrylate);修飾メタリックジアクリレート;メタリックジメタクリレート;ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート;メタクリル化ポリブタジエン;プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;エトキシル化30ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化30ビスフェノールAジアクリレート;アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;アルコキシル化脂肪族アルコールのジアクリレートトリメチロールプロパントリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;エトキシル化20トリメチロールプロパントリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;アルコキシル化三官能性アクリレートエステル;三官能性メタクリレートエステル;三官能性アクリレートエステル;プロポキシル化グリセリルトリアクリレート;プロポキシル化5.5グリセリルトリアクリレート;エトキシル化15トリメチロールプロパントリアクリレート;三官能性リン酸エステル;三官能性アクリル酸エステル;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート;エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ペンタエリスリロールポリオキシエチレンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;ペンタアクリレートエステル;エポキシアクリレートオリゴマー;エポキシメタクリレートオリゴマー;ウレタンアクリレートオリゴマー;ウレタンメタクリレートオリゴマー;ポリエステルアクリレートオリゴマー;ポリエステルメタクリレートオリゴマー;ステアリルメタクリレートオリゴマー;アクリルアクリレートオリゴマー(acrylic acrylate oligomer);ペルフルオロ化アクリレートオリゴマー;ペルフルオロ化メタクリレートオリゴマー;アミノアクリレートオリゴマー;アミン修飾ポリエーテルアクリレートオリゴマー;及びアミノメタクリレートオリゴマーが含まれてもよい。
【0081】
本発明の硬化性組成物は、任意選択で、一分子当たり一つのアクリレート官能基又はメタクリレート官能基を含有する一つ又は複数の(メタ)アクリレート官能化化合物(本明細書では「モノ(メタ)アクリレート官能化化合物」と呼ばれる)を含んでもよい。当技術分野において知られる任意のこのような化合物を使用してもよい。
【0082】
好適なモノ(メタ)アクリレート官能化化合物の例には、これらに限定されないが、脂肪族アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(ここで、脂肪族アルコールは、1つのヒドロキシル基のみが(メタ)アクリル酸でエステル化されているという条件で、直鎖状、分岐状、又は脂環式であってもよく、モノアルコール、ジアルコール又はポリアルコールであってもよい);芳香族アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(例えば、アルキル化フェノールを含むフェノール);アルキルアリールアルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(例えば、ベンジルアルコール);オリゴマーのグリコール及びポリマーのグリコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール);グリコール、オリゴマーのグリコール、ポリマーのグリコールのモノアルキルエーテルのモノ(メタ)アクリレートエステル;アルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)脂肪族アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(ここで、脂肪族アルコールは、アルコキシル化脂肪族アルコール1つのヒドロキシル基のみが(メタ)アクリル酸でエステル化されているという条件で、直鎖状、分岐状、又は脂環式であってもよく、モノアルコール、ジアルコール又はポリアルコールであってもよい);アルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)芳香族アルコール(例えば、アルコキシル化フェノール)のモノ(メタ)アクリレートエステル;カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート;等が含まれる。
【0083】
以下の化合物は、本発明の硬化性組成物での使用に好適なモノ(メタ)アクリレート官能化化合物の具体例である:メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;n-プロピル(メタ)アクリレート;n-ブチル(メタ)アクリレート;イソブチル(メタ)アクリレート;n-ヘキシル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;n-オクチル(メタ)アクリレート;イソオクチル(メタ)アクリレート;n-デシル(メタ)アクリレート;n-ドデシル(メタ)アクリレート;トリデシル(メタ)アクリレート;テトラデシル(メタ)アクリレート;ヘキサデシル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-及び3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート;2-エトキシエチル(メタ)アクリレート;2-及び3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート;2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;イソデシル(メタ)アクリレート;2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート;ラウリル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート;2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート;アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート;アルコキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート;環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート;トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;エトキシル化ラウリル(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;及びこれらの組み合わせ。
【0084】
本発明の特定の実施形態において、本明細書で記載される硬化性組成物は、少なくとも1種の光開始剤を含み、放射エネルギーで硬化される。光開始剤は、放射線(例えば、化学線)にさらされると、硬化性組成物中に存在する重合性有機物質の反応及び硬化を開始する種を形成する、任意のタイプの物質と認められる。好適な光開始剤には、フリーラジカル光開始剤、及びカチオン性光開始剤並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0085】
フリーラジカル重合開始剤は、放射線を受けた時にフリーラジカルを形成する物質である。フリーラジカル光開始剤の使用が特に好ましい。本発明の硬化性組成物での使用に好適な非限定的なフリーラジカル光開始剤の種類には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン(phenazene)誘導体、キノキサリン誘導体、及びトリアジン化合物が含まれる。
【0086】
光開始剤の量は、他の要因の中でも、選択された光開始剤、硬化性組成物に存在する重合性種の量及びタイプ、放射線源並びに使用される放射線条件に応じて、適切に変更されてもよい。しかしながら、典型的には、光開始剤の量は、硬化性組成物の総質量に基づいて、0.05質量%から5質量%、好ましくは0.1質量%から2質量%であってもよい。
【0087】
本発明の特定の実施形態において、本明細書で記載される硬化性組成物は、開始剤を含まず、電子ビームエネルギーで(少なくとも部分的に)硬化可能である。他の実施形態において、本明細書で記載される硬化性組成物は、加熱された場合、又は促進剤の存在下において分解する少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を含み、化学的に(すなわち、硬化性組成物を放射線にさらす必要なく)硬化可能である。加熱された場合、又は促進剤の存在下において分解する少なくとも1種のフリーラジカル開始剤は、例えば、過酸化物又はアゾ化合物を含んでもよい。この目的のための好適な過酸化物は、少なくとも1個のペルオキシ(-O-O-)部分を含む任意の化合物、特に任意の有機化合物、例えばジアルキル過酸化物、ジアリール過酸化物及びアリール/アルキル過酸化物、ヒドロペルオキシド、ペルカーボネート、過酸エステル(perester)、過酸(peracid)、過酸化アシル等を含んでもよい。少なくとも1種の促進剤は、例えば、少なくとも1種のターシャリーアミン及び/又は金属含有塩(例えば、鉄、コバルト、マンガン、バナジウム等の遷移金属のカルボン酸塩およびその組み合わせ等)をベースとした一つ又は複数の他の還元剤を含んでもよい。促進剤は、室温又は周囲温度でフリーラジカル開始剤の分解を促進して活性なフリーラジカル種を生成し、硬化性組成物を加熱又は焼成することなく硬化性組成物の硬化が達成されるように選択されてもよい。別の実施形態において、促進剤が存在せず、硬化性組成物はフリーラジカル開始剤の分解を引き起こし、硬化性組成物中に存在する重合性化合物の硬化を開始するフリーラジカル種を生成するのに有効な温度まで加熱される。
【0088】
したがって、本発明の様々な実施形態において、本明細書で記載される硬化性組成物は、放射線硬化(例えば、LED硬化を含む、紫外線又は電子ビーム硬化)、化学硬化(加熱された場合、又は促進剤の存在下において分解するフリーラジカルを用いて、例えば、過酸化物硬化)、熱硬化又はこれらの組み合わせからなる群から選択される技術によって硬化される。例えば、硬化性組成物は、まず硬化性組成物を放射線(例えば、紫外線)に曝し、部分的に硬化した物品を得て、次に高温で加熱してより完全な硬化(すなわち、部分的に硬化した物品に存在する重合性種のさらなる反応)を生じさせることによって硬化させてもよい。
【0089】
本発明の硬化性組成物は、前述の成分の代わりに、又は前述の成分に加えて、一つ又は複数の添加剤を任意選択で含んでもよい。そのような添加剤には、これらに限定されないが、酸化防止剤/光安定剤、遮光剤/吸収剤、重合防止剤、発泡防止剤、フロー剤又はレベリング剤、着色剤、顔料、分散剤(湿潤剤、界面活性剤)、滑剤、充填剤、連鎖移動剤、チキソトロープ剤(thixotropic agent)、艶消し剤、耐衝撃性改良剤(既述の多段ポリマー及びオリゴマー重合性有機物質以外)、ワックス、又は、コーティング、シーラント、接着剤、成形、3Dプリンティング、若しくはインクの分野で従来から使用されている任意の添加剤を含む他の様々な添加剤が含まれる。
【0090】
特に酸素又は他の酸化剤存在下において、硬化性組成物の早期ゲル化又は硬化から保護するために、一つ又は複数の酸化防止剤が硬化性組成物中に含まれてもよい。当技術分野において知られる任意の酸化防止剤が使用されてもよく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、キノン型酸化防止剤、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0091】
典型的には、一つ又は複数の酸化防止剤は、硬化性組成物の質量に基づいて、最大で4質量%、例えば0.05から2質量%の全体量で、硬化性組成物中に含まれてもよい。
【0092】
本発明の硬化性組成物は、特に硬化性組成物の光硬化を含む三次元プリンティング法で樹脂として使用される場合、一つ又は複数の遮光剤(light blocker)(しばしば、当技術分野において吸収剤とも呼ばれる)を含んでもよい。遮光剤は、三次元プリンティング技術の分野において知られる任意の物質であってよく、例えば非反応性顔料及び染料が含まれる。遮光剤は、例えば可視光遮光剤又はUV遮光剤であってもよい。好適な遮光剤の例には、これらに限定されないが、二酸化チタン、カーボンブラック、並びにヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、オキサニリド、ベンゾフェノン、チオキサントン、ヒドロキシフェニルトリアジン、スーダンI、ブロモチモールブルー、2,2′-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)(「Benetex OB Plus」のブランド名で販売されている)及びベンゾトリアゾール紫外光吸収剤等の有機紫外光吸収剤が含まれる。
【0093】
遮光剤の量は、特定の用途で望まれるように、又は特定の用途に適するように変更されてもよい。一般的にいえば、硬化性組成物が遮光剤を含む場合、硬化性組成物の質量に基づいて0.001から10質量%の濃度で遮光剤が存在する。
【0094】
有利には、本発明の硬化性組成物は、無溶媒で、すなわち非反応性の揮発性物質(大気圧で150℃以下の沸点を有する物質)を含まないように配合されてもよい。例えば、本発明の硬化性組成物は、非反応性溶媒をほとんど又は全く含まなくてもよく、例えば、硬化性組成物の総質量に基づいて10%未満、又は5%未満又は1%未満又はさらに0%の非反応性溶媒を含んでもよい。このような無溶媒又は低溶媒組成物は、例えば低粘度反応性希釈剤を含む様々な成分を用いて配合されてもよく、これらは、溶媒が存在しなくても、硬化性組成物が十分に低粘度になるように選択され、硬化性組成物は、比較的薄く、均一な層を形成するように、適切な塗布温度で基板表面に容易に適用され得る。
【0095】
本発明の好ましい実施形態において、硬化性組成物は25℃で液体である。本発明の様々な実施形態において、本明細書において望ましい硬化性組成物は、27スピンドル(スピンドル速度を粘度に応じて、典型的には20から200rpmの間で変更しながら)を用いたブルックフィールド粘度計、モデルDV-IIを使用して25℃で測定した粘度が、10,000mPa.s(cP)未満、又は5000mPa.s(cP)未満、又は4000mPa.s(cP)未満、又は3000mPa.s(cP)未満、又は2500mPa.s(cP)未満、又は2000mPa.s(cP)未満、又は1500mPa.s(cP)未満、又は1000mPa.s(cP)未満、又はさらには500mPa.s(cP)未満となるように配合される。本発明の有利な実施形態において、硬化性組成物の25℃における粘度は、200から5000mPa.s(cP)、又は200から2000mPa.s(cP)、又は200から1500mPa.s(cP)、又は200から1000mPa.s(cP)である。比較的高い粘度は、硬化性組成物が25℃超に加熱されるような用途において、例えば加熱された樹脂バットを有する機械を用いる三次元プリンティングの操作等において、良好な性能を提供し得る。
【0096】
本明細書で記載される硬化性組成物は、フリーラジカル重合、カチオン重合又は他のタイプの重合による硬化に供される組成物であり得る。特定の実施形態において、硬化性組成物は、光硬化される(すなわち、光、特に可視光又はUV光等の化学線に曝されることによって硬化される)。硬化性組成物の最終用途(end use applications)には、これらに限定されないが、インク、コーティング、接着剤、3Dプリンティング樹脂、成形用樹脂、シーラント、複合材料、帯電防止層、エレクトロニクス用途、リサイクル可能材料、刺激を検出して応答できるスマート材料、及び生物医学材料が含まれる。
【0097】
本明細書で記載される硬化性組成物から調製される硬化組成物(cured composition)は、例えば、三次元物品(三次元物品は、硬化組成物から実質的になり得る、又はからなり得る)、被覆物品(基板が硬化組成物の一つ又は複数の層でコーティングされており、基板が硬化組成物で完全に包み込まれているカプセル化物品を含む)、積層物品又は接着物品(硬化組成物により、物品の第1の部品が第2の部品に積層又は接着される)、複合物品又はプリンティング部品(硬化組成物を用いて、紙、プラスチック又はM含有基板等の基板に図形等が刷り込まれる)において、使用されてもよい。
【0098】
本発明による硬化性組成物の硬化は、フリーラジカル重合及び/又はカチオン重合等の、任意の好適な方法により実行されてもよい。一つ又は複数の開始剤、例えばフリーラジカル開始剤(例えば、光開始剤、ペルオキシド開始剤)が、硬化性組成物中に存在してもよい。硬化の前に、硬化性組成物は、任意の既知の従来の方法で、例えば、スプレー、ナイフコーティング、ローラーコーティング、キャスティング、ドラムコーティング、ディッピング等、及びこれらの組み合わせにより、基板表面に適用されてもよい。転写プロセスを用いた間接的な適用も使用されてもよい。基板はそれぞれ、高表面エネルギー基板又は低表面エネルギー基板等、金属基板又はプラスチック基板等の任意の商業的に関連する基板であってもよい。基板は、金属、紙、ボール紙、ガラス、ポリオレフィン、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、及びこれらのブレンド等の熱可塑性物質、複合物、木材、皮革並びにこれらの組み合わせを含んでもよい。接着剤として使用する場合、硬化性組成物は、二つの基板の間に配置された後硬化され、それによって硬化組成物が基板と一緒に接着し、接着物品を提供することができる。本発明による硬化性組成物は、バルク様式で形成され、又は硬化されてもよい(すなわち、硬化性組成物は、好適なモールドの中にキャストされ、その後硬化されてもよい)。
【0099】
硬化は、硬化性組成物にエネルギーを供給することによって、例えば、硬化性組成物を加熱することによって、及び/又は硬化性組成物を放射線源、例えば、可視光又はUV光、赤外線及び/又は電子ビーム放射線に曝露することによって、加速又は促進され得る。したがって、硬化組成物は、硬化によって形成された硬化性組成物の反応生成物とみなすことができる。硬化性組成物は、化学放射線に暴露することによって部分的に硬化され、部分的に硬化された物品を加熱することによりさらなる硬化が達成されてもよい。例えば、硬化性組成物から形成された物品(例えば、3Dプリントされた物品)は、5分から12時間の期間で、40℃から120℃の温度で加熱されてもよい。
【0100】
本発明による硬化性組成物の複数の層を基材表面に適用してもよく、複数の層を同時に(例えば、単一線量の放射線に曝露することによって)硬化してもよく、又は硬化性組成物のさらなる層を塗布する前に各層を連続的に硬化してもよい。
【0101】
本明細書に記載された硬化性組成物は、三次元プリンティング用途での樹脂としての使用に特に適している。三次元(3D)プリンティング(付加製造(additive manufacturing)とも呼ばれる)は、構成材料が堆積することにより3Dデジタルモデルが製造されるプロセスである。3Dプリントされた物体は、物体のコンピュータ支援設計(CAD)のデータを用いて、3D物体の断面に相当する二次元(2D)の層又は薄片を順次構築することにより作り出される。ステレオリソグラフィー(SL)は、放射線の選択的曝露によって液状樹脂を硬化させて、各2D層を形成する付加製造の一種である。放射線は、電磁波又は電子ビームの形態であり得る。最も一般的に適用されるエネルギー源は、紫外線、可視光線又は赤外線である。
【0102】
本明細書に記載された本発明の組成物は、3Dプリンティング樹脂配合物、すなわち、3Dプリンティング技術を用いて三次元物品を製造する際に使用することを意図した組成物として使用されてもよい。このような三次元物品は、自立型(free-standing)/自立型(self-supporting)であってもよく、硬化された本発明による組成物から本質的になるか、又はそれからなってもよい。また、三次元物品は、前記したような硬化組成物から本質的になるか、又はそれからなる少なくとも1つの部品、並びにこのような硬化組成物以外の1つ以上の材料から構成される少なくとも1つのさらなる部品(例えば、金属部品又は熱可塑性部品)を含む複合材料であってもよい。本発明の硬化性組成物は、デジタルライトプリンティング(DLP)において特に有用であるが、三次元(3D)プリンティング法の他のタイプも、本発明の硬化性組成物を用いて実行され得る(例えば、SLA、インクジェット)。本発明の硬化性組成物は、本発明の硬化性組成物から形成される物品のための足場又は支持体として機能する別の材料と一緒に、三次元プリンティングの操作で使用されてもよい。
【0103】
本発明による硬化性組成物を用いて三次元物品を製造する方法は、以下の工程:
a)本発明による硬化性組成物の第1の層を表面上に提供する(例えば、コーティングする)工程;
b)第1の層を少なくとも部分的に硬化して、硬化した第1の層を提供する工程;
c)硬化性組成物の第2の層を、硬化した第1の層の上に提供する(例えば、コーティングする)工程;
d)第2の層を少なくとも部分的に硬化して、硬化した第1の層に付着した硬化した第2の層を提供する工程;及び
e)工程c)及びd)を所望の回数繰り返して、三次元物品を構築する工程
を含んでもよい。
【0104】
硬化工程は、場合によっては硬化性組成物中に存在する成分に依存する任意の適切な手段によって行うことができるが、本発明の特定の実施形態において、硬化は、硬化される層を有効量の放射線、特に化学線(例えば、電子ビーム放射線、UV放射線、可視光等)に曝露することによって達成される。形成される三次元物品は、熱硬化をもたらすために加熱されてもよい。
【0105】
したがって、様々な実施形態において、本発明は、以下の工程:
a)本発明による硬化性組成物の第1の層を液状で表面に提供する(例えば、コーティングする)工程;
b)第1の層を化学線に像様に露光して第1の露光され、画像化された断面を形成し、ここで放射線は、露光領域における層の少なくとも部分的な硬化(例えば、硬化性組成物中に最初に存在する重合性官能基の%変換によって測定される、少なくとも50%の硬化)を引き起こすのに十分な強度及び持続時間を有する工程;
c)先に露光され、画像化された断面上に硬化性組成物のさらなる層を提供する(例えば、コーティングする)工程;
d)該さらなる層を化学線に像様に露光してさらなる画像化された断面を形成し、ここで放射線は、曝露領域におけるさらなる層の少なくとも部分的な硬化(例えば、硬化性組成物中に最初に存在する重合性官能基の%変換によって測定される、少なくとも50%の硬化)を引き起こし、以前に露光され、画像化された断面に対する該さらなる層の接着を引き起こすのに十分な強度及び持続時間を有する工程;
e)工程c)及びd)を所望の回数繰り返して、三次元物品を構築する工程
を含む方法を提供する。
【0106】
したがって、本発明による硬化性組成物は、三次元物体の構築が段階的(step-wise)に、又は交互吸着(layer-by-layer)法で行われる方法を含む、様々なタイプの三次元製造又はプリンティング技術の実行において有用である。このような方法では、層形成は、可視光線、UV又は他の化学線等の放射線への曝露の作用下で硬化性組成物の固化(硬化)により実行されてもよい。例えば、新たな層は成長する物体の上表面で形成されてもよいし、又は成長する物体の底表面で形成されてもよい。本発明の硬化性組成物は、付加製造による三次元物体を製造する方法でも有利に用いられることがあり、ここで該方法は連続的に行われる。例えば、物体は液界面から製造されてもよい。このタイプのうち好適な方法は、当技術分野においてしばしば「連続液界面(又は連続液中間層)製造(又はプリンティング)(continuous liquid interface (or interphase) product (or printing))」(「CLIP」)法と呼ばれる。このような方法は、例えば、国際公開第2014/126830号、国際公開第2014/126834号、国際公開第2014/126837号、及びTumbleston他による“Continuous Liquid Interface Production of 3D Objects,”、Science、347巻、6228号、1349-1352頁(3月20日、2015年)に記載されており、これらの全ての開示は全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0107】
ステレオリソグラフィーが酸素透過性の造形窓(build window)の上で行われる場合、本発明による硬化性組成物を用いた物品の製造は、窓と製造されるときの硬化性物品の表面との間に硬化性組成物の薄い未硬化の層である酸素含有「デッドゾーン」を形成することによって、CLIP手順が可能になることがある。このような方法では、硬化性組成物が使用され、分子酸素の存在により硬化(重合)が阻害され、この阻害は、例えばフリーラジカル機構により硬化されることが可能である硬化性組成物において典型的に観察される。望ましいデッドゾーンの厚みは、光子束等の様々な制御パラメータの選択、並びに硬化性組成物の光学特性及び硬化特性により維持され得る。CLIPプロセスは、液状に維持された硬化性組成物浴の下の酸素透過性、化学線(例えば、UV)透過窓を通って、化学線(例えば、UV)イメージ(例えば、デジタル光処理イメージングユニットにより生成され得る)の連続的シーケンス(continuous sequence)を投影することにより進行される。進行する(成長する)物品の下の液界面は、窓の上に形成されたデッドゾーンにより維持される。硬化性物品は、デッドゾーン上の硬化性組成物浴から連続的に出され、デッドゾーンは、硬化され、成長する物品に組み込まれる硬化性組成物の量を補うために、追加の量の硬化性組成物の浴に供給することにより補充され得る。
【0108】
例えば、本明細書で記載される硬化性組成物を用いた三次元物品のプリンティングは、少なくとも以下の工程を含むプロセスによって実行されてもよい:
a)担体及び任意選択で造形面(build surface)を有する光学的に透明な部材を提供し、担体及び造形面をそれらの間の造形領域を決める工程;
b)硬化性組成物で該造形領域を満たす工程;
c)該造形領域に化学線を連続的に又は断続的に照射し、硬化性組成物から硬化組成物を形成する工程;及び
d)担体を、連続的に又は断続的に造形面から離して前進させ、硬化組成物から三次元物品を形成する工程。
【0109】
本発明はまた、以下の工程を含む三次元物品を形成する方法も提供する:(a)担体及び造形プレートを提供し、造形プレートは半透過性の部材を含み、半透過性の部材は造形面及び造形面から離れた供給面を含み、造形面及び担体でそれらの間の造形領域を決め、供給面で重合防止剤と流体接触する工程、次に(同時に及び/又は連続して)(b)本発明による硬化性組成物で該造形領域を満たし、硬化性組成物を造形セグメントと接触させる工程、(c)造形プレートを介して造形領域に照射し、固体重合領域と造形面の間に形成された硬化性組成物を含む液膜剥離層を用いて、造形領域に固体重合領域を生成し、重合防止剤により液膜の重合は阻害されており;及び(d)重合領域がそれに接着した状態で、固定された造形プレート上の造形面から離して担体を前進させ、重合領域及びトップゾーンの間の次の造形領域を作製する工程。一般的に、方法は、(e)工程(b)から(d)を継続し及び/又は繰り返し、互いに付着した重合領域の継続された又は繰り返された堆積が三次元物品を形成するまで、先の重合領域に接着した次の重合領域を生成する工程を含む。
【0110】
また、本発明の範囲内にあるのは、本発明による一つ又は複数の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンが硬化性組成物中に存在する唯一の(メタ)アクリレート官能化化合物である硬化性組成物である。しかしながら、このような硬化性組成物は、一つ又は複数の追加の成分、例えば、フリーラジカル開始剤、充填剤、安定化剤、及び前述の他の添加剤を用いて配合され得る。
【0111】
架橋性樹脂組成物
【0112】
前述したように、本発明の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、ポリマー、とりわけ熱可塑性ポリマー(熱可塑性エラストマーを含む)、特に非極性熱可塑性ポリマー(例えば、ポリオレフィン)等の非極性のポリマーの架橋において助剤として使用されてもよい。ポリマーの特性及び特徴はこのような架橋によって変更されてもよい。このようなポリオレフィンの例には、エチレンホモポリマー、エチレンと一つ又は複数の他のオレフィンのコポリマー、プロピレンのホモポリマー、及びプロピレンと一つ又は複数の他のオレフィンポリマーのコポリマーが含まれる。例えば、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを用いて架橋されるポリオレフィンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は高密度ポリエチレン(HDPE)であり得る。エラストマー及びゴムも、本発明の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを用いて架橋され得る。このようなゴム及びエラストマーの例には、これらに限定されないが、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系ゴム、ブタジエンと一つ又は複数の他のモノマー(スチレン等)のコポリマー、並びにイソプレンと一つ又は複数の他のモノマーのコポリマーが含まれる。(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンが助剤として使用され得るポリマーの他の種類には、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリアミド、並びにアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー及びコポリマーが含まれる。
【0113】
架橋に適した樹脂組成物(すなわち架橋性樹脂組成物)は、少なくとも1種のポリマーと本発明による少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンとを組み合わせることにより調製され得る。典型的には、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、そのような架橋性樹脂組成物に比較的低い濃度で存在する。例えば、架橋性樹脂組成物は、少なくとも0.1、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも1.5、又は少なくとも2phr(phr=ポリマー100重量部あたりの重量部)の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを含んでもよい。他の実施形態において、架橋性樹脂組成物は、最大で25、最大で20、又は最大で15phrの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを含んでもよい。一実施形態によると、架橋性樹脂組成物は、1から20phrの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを含む。本発明の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、従来ポリマーの架橋に用いられてきた助剤(例えば、低分子量のトリアリル化合物)に比べて疎水性が高いため、ポリオレフィンなどの非極性ポリマーであっても、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの比較的高い添加量が可能である。すなわち、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、一般的に非極性ポリマーと相溶性が高いため、比較的均質で、わずかであるか、又はほとんどない(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの滲出(exudation)を示す、架橋性樹脂組成物を配合することができる。
【0114】
架橋性樹脂組成物は、ポリマーと(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを含む架橋反応を開始することができる少なくとも1種のフリーラジカル開始剤で配合されてもよい。このようなフリーラジカル開始剤は、例えば、加熱によって活性化されてもよい。過酸化物、特に有機過酸化物が、フリーラジカル開始剤の好適なタイプを示す。架橋性樹脂組成物中の過酸化物の量は、例えば、過酸化物の反応性及び所望の架橋の程度に応じて変化してもよい。一般的に言えば、本発明の様々な実施形態によると、架橋性樹脂組成物は、少なくとも0.01、少なくとも0.05、又は少なくとも0.1phrの過酸化物を含んでもよいが、5以下、4以下、3以下、2以下、又は1phrの過酸化物を含んでもよい。例えば、架橋性樹脂組成物は、0.01から5phrの過酸化物を含んでもよい。この目的のための好適なタイプの過酸化物には、例えば、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド、アラルキルヒドロペルオキシド、アルキルアリールペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシ酸、ペルオキシカーボネート、ペルオキシケタール等、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0115】
架橋性樹脂組成物中に他の成分が追加的に存在することができ、これらに限定されないが、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン以外の助剤、スコーチ防止剤、過酸化物補足剤(peroxide scavenger)、酸化防止剤、安定化剤、フリーラジカル開始剤のための加速剤/促進剤、顔料/染料、充填剤等、及びこれらの組み合わせが含まれる。架橋性樹脂組成物の様々な成分は、組み合わされ、融解して混ぜ合わされ、架橋性樹脂組成物を提供することができる。
【0116】
取り扱い、及びその後の最終的な所望の物品への形成を容易にするために、架橋性樹脂組成物は、ペレット又は顆粒の形態で提供されてもよい。架橋性樹脂組成物は、フィルム、シート、三次元物品等に形成されてもよい。
【0117】
架橋性樹脂組成物の架橋は、当技術分野において知られる任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、化学的架橋及び物理的架橋の両方の方法が用いられてもよい。そのような方法の1つは、ポリマーを、前述のものを含む過酸化物等の一つ又は複数のフリーラジカル開始剤と反応させることを含む。典型的には、このような反応は、架橋性樹脂組成物を、過酸化物のフリーラジカル種への分解を引き起こすのに有効な温度まで加熱することによって開始される。さらなる方法において、放射線硬化が利用され、ここで、架橋性樹脂組成物は、ガンマ線又は電子ビーム放射線等の放射線に曝される。このような方法において、架橋性樹脂組成物は、架橋をもたらすために加熱される必要はない。
【0118】
本発明の架橋性樹脂組成物は、有利には、架橋されたフィルム、架橋されたシート、架橋されたワイヤー及びケーブル被覆、架橋された容器、架橋されたライナー、架橋されたコーティング、架橋されたパイプ等の製造に有用な架橋されたポリマー樹脂を提供することができる。
【0119】
本発明の様々な非限定的な態様は、以下のように要約することができる。
【0120】
態様1:少なくとも、a)(メタ)アクリレート源と、b)少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマー及びii)一つ又は複数の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーのヒドロキシル官能化分岐重合体との反応生成物を含み、ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の一つ又は複数は(メタ)アクリレート官能基に変換される、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0121】
態様2:一つ又は複数のアルファオレフィンモノマーは、一分子につき少なくとも10個の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマーを含む、態様1の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0122】
態様3:ヒドロキシル官能化分岐重合体は、一分子につき平均して少なくとも3個のヒドロキシル官能基を有する、態様1又は2の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0123】
態様4:少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、式(I)又は式(II):
HRC=CH-(R)-CHOH (I)
HRC=CH-(R)-CH-(OROH (II)
(式中、mは1から20の整数であり、RはH又はC~C20アルキル基であり、Rは直接結合又は二価のC~C20アルキレン基であり、Rは二価のC~Cアルキレン基である)
に従った少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含む、態様1から3のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0124】
態様5:少なくとも一種の前記不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、式(Ia)又は式(IIb):
C=CH(CH-OH (Ia)
C=CH(CH-(OROH (IIb)
(式中、nは1から24の整数であり、mは1から5の整数であり、Rは-CHCH-、-CHC(CH)H-、又は-C(CH)HCH-であり、mが2以上である場合、それぞれのRは同一であってもよく、異なっていてもよい)
に従った少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含む、態様1から4のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0125】
態様6:少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーは、アリルアルコール、5-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1-オール、クロチルアルコール、エライジルアルコール、ガドレイルアルコール、9-デセン-1-オール、9-ドデセン-1-オール、10-ウンデシレニルアルコール、オレイルアルコール、エルシルアルコール、ブラシジルアルコール、これらのエトキシル化誘導体及び/又はプロポキシル化誘導体、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーを含む、態様1から5のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0126】
態様7:少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも一種のアルファオレフィンモノマーは、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種のアルファオレフィンモノマーを含む、態様1から6のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0127】
態様8:少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも一種のアルファオレフィンモノマーは、C10~C13、C20~C24、C24~C28、及びC30以上の鎖長からなる群から選択される鎖長を有するアルファオレフィンモノマーの混合物である、態様1から7のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0128】
態様9:500から10,000ダルトンの数平均分子量を有する、態様1から8のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0129】
態様10:(メタ)アクリレート源は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルハライド、及び(メタ)アクリル酸のC~Cエステルからなる群から選択される、態様1から9のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0130】
態様11:一分子につき1から8個の(メタ)アクリレート官能基を含有する、態様1から10のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0131】
態様12:ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の少なくとも80%は、(メタ)アクリレート官能基に変換される、態様1から11のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0132】
態様13:ヒドロキシル官能化分岐重合体は、ヒドロキシル1当量につき200から2000グラムのヒドロキシル当量質量を有する、態様1から12のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0133】
態様14:ヒドロキシル官能化分岐重合体は、少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する一つ又は複数のアルファオレフィンモノマー及びii)一つ又は複数の不飽和エステル官能化コモノマーのエステル官能化分岐重合体から得られ、エステル官能化分岐重合体中に存在する一つ又は複数のエステル官能基はヒドロキシル官能基に変換される、態様1から13のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0134】
態様15:(メタ)アクリレート源と、少なくとも、i)一分子につき少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも一種のアルファオレフィンモノマー及びii)少なくとも一種の不飽和ヒドロキシル官能化コモノマーのヒドロキシル官能化分岐重合体とを反応させる工程を含み、ヒドロキシル官能化分岐重合体のヒドロキシル官能基の一つ又は複数が(メタ)アクリレート官能基に変換される、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを調製する方法。
【0135】
態様16:式(III)に従った複数の繰り返し単位A及び式(IV)に従った複数の繰り返し単位B:
【化8】
(式中、RはH又はメチルであり、Rは少なくとも4個の炭素原子を含むアルキル基であり、Rは直接結合又は二価のアルキレン基であり、Rは任意選択で存在し、存在する場合、Rは二価のオキシアルキレン基又は二価のポリ(オキシアルキレン)基であり、RはH又はアルキル基である)
を含む、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0136】
態様17:式(IIIa)に従った複数の繰り返し単位A及び式(IVb)に従った複数の繰り返し単位B:
【化9】
(式中、xは少なくとも6の整数であり、yは少なくとも0の整数であり、RはH又はメチルである)
を含む、態様16の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0137】
態様18:500から10,000ダルトンの数平均分子量を有する、態様16又は17の(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0138】
態様19:一分子につき1から8個の(メタ)アクリレート官能基を含有する、態様16から18のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン。
【0139】
態様20:態様1から14又は態様16から19のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び態様1から14又は態様16から19のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン以外の少なくとも一種の(メタ)アクリレート官能化化合物を含む、硬化性組成物。
【0140】
態様21:接着剤、シーラント、コーティング、3Dプリンティング及び付加製造用の樹脂、インク並びに成形用樹脂からなる群から選択される、態様20に記載の硬化性組成物。
【0141】
態様22:態様20又は態様21の硬化性組成物を化学線に曝露する工程を含む、物品を製造する方法。
【0142】
態様23:態様1から14及び16から19のいずれかの(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン及び少なくとも一種のポリマーを含む、架橋性樹脂組成物。
【0143】
態様24:態様23の架橋性樹脂組成物を架橋する工程を含む、物品を製造する方法。
【0144】
この明細書内では、実施形態は明確および簡潔に明細書を記載することを可能にするように説明されているが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、多種多様に組み合わされる又は分離され得ると理解されるであろう。例えば、本明細書で記載された全ての好ましい特徴は、本明細書に記載された全ての発明の態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0145】
いくつかの実施形態において、本明細書における本発明は、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィン、(メタ)アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを製造する方法、(メタ)アクリレート官能化ポリアルファオレフィンを含む組成物、(メタ)アクリレート官能化ポリアルファオレフィンを用いる方法、及び(メタ)アクリレート官能化ポリアルファオレフィンを用いて調製された物品の基本的な特徴及び新規な特徴に著しく影響しない任意の成分又はプロセス工程を除外するものと解釈されることができる。さらに、いくつかの実施形態において、本発明は本明細書に明記しない任意の成分又はプロセス工程を除外するものと解釈されることができる。
【0146】
本発明は、具体的な実施形態を参照して本明細書で説明され、及び記載されるが、本発明は示された詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ、請求項の範囲と同等の範囲及び領域内であって、本発明から逸脱しない範囲であれば、本発明は様々な変更を細部で行ってもよい。
【実施例
【0147】
実施例1-アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの調製
【0148】
中央に一つ口及び外側に三つ口(one center neck and three outer necks)を有する1000mLの丸底反応フラスコに以下を加えた:353gのVybar(登録商標)H-6164(Baker Hughes社の製品)一分子あたり平均して3超のヒドロキシル基を含有し、ヒドロキシル1当量あたり約519gのヒドロキシル当量質量を有する高度に分岐したポリアルファオレフィン組成物、60gのアクリル酸、0.7gの4-メトキシフェノール、180gのヘプタン、1.2gの50%ジ亜リン酸水溶液、及び4.8gの70%メタンスルホン酸。反応フラスコに、攪拌シャフト/ブッシング/攪拌モーター、20mL容量のサイドアーム及びコンデンサー、熱電対の先端を液面の下に設置した熱電対/アダプター、温度調節器及び加熱マントル、並びに針を液体面の下に挿入した空気散布針/アダプターを備え付けた。攪拌を開始し、反応器を加熱還流した。エステル化反応から生成した水をサイドアームに回収した。還流で5時間後、水の生成が止まり、17gの水が回収された。
【0149】
反応混合物を、<50℃まで冷却し、栓付きのボトムアウトレット(stopcocked bottom outlet)、攪拌シャフト/モーター、熱電対、温度調節器、及び加熱マントルを備え付けた2000mLの洗浄フラスコに移した。413gのヘプタンを洗浄器に加えて、内容物を42℃まで加熱した。次に、31gの25%NaOH水溶液を洗浄器に加えて2分間攪拌した。30分間沈殿させた後、水性相を栓を通して取り除いた。25%NaOHを繰り返した。次に、31gの水を洗浄器に加えて、2分間攪拌した。30分間沈殿させた後、水性相を取り除いた。水洗浄を繰り返した。
【0150】
次に、バッチを、攪拌シャフト、ブッシング、及び攪拌モーター、熱電対、温度調節器、並びに加熱マントル、受器としての1000mL一つ口丸底フラスコを有するサイドアーム/コンデンサー、並びに液面下に挿入された空気散布チューブを備え付けた2000mL四つ口丸底フラスコを含むストリッピング装置に移した。ストリッピングフラスコに、0.08gの4-メトキシフェノールを加えた。40mmHgの真空をストリッピング装置に適用した。フラスコを95℃に加熱して、溶媒を蒸留して取り除いた。溶媒の含有量が<0.1%まで減少した後、バッチを周囲温度まで冷却した。
【0151】
多角度光散乱検出器、示差粘度計、及び示差屈折計と組み合わせたマルチ検出器サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、Vybar(登録商標)H-6164及び得られるアクリレート化材料(acrylated material)を特徴づけるために用いた。得られたアクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの特性は以下のようであった:25℃での粘度433cP、12のガードナー色、かすんでいて曇っている外観、4410ダルトンの重量平均分子量、及び1550ダルトンの数平均分子量(ポリスチレン標準に対して)。以下の表1で与えられる固有粘度の値は、示差粘度計を用いて得た。
【0152】
【表1】
【0153】
ポリマー構造は、2つの異なる方法を用いて決定され得る:Mark-Houwinkプロット及び/又はコンフォメーションプロット。固有粘度及びモル質量のデータはMark-Houwinkプロットを製作するために組み合わされ、一方で粘度範囲(viscometric radius)及びモル質量はコンフォメーションプロットを製作するために組み合わされる。Mark-Houwinkプロット及びコンフォメーションプロットにおける傾き又は種々の傾きは、分析に使用される溶媒/温度条件中でポリマーが直鎖状又は分岐状であるかどうかを示す。Mark-Houwinkプロットでは、直鎖状のランダムコイル構造を持つポリマーは0.5~0.8の傾き(α値)を有するのに対し、分岐状分子は0.33~0.5の傾きを有する。コンフォメーションプロットでは、直鎖状のランダムコイル構造を持つポリマーは0.50~0.60の傾き(1/d)を有し、分岐状分子は0.33~0.50の傾きを有する。3つのサンプルについてのMark-Houwinkプロット及びコンフォメーションプロットの傾きは、3つのサンプルが分岐状であることを示す。
【0154】
全体としては、マルチ検出器SEC実験はVybar 6164-Hのモル質量は、実施例1の生成物である完全にアクリレート化されたVybarバッチ(Vybar Batch)よりも少ないことが決定された。さらに、2つのサンプルについてのポリマーサイズ及び固有粘度は同様であり、一般的にマルチ検出器SECによって分析されるポリマーサンプルに比べて小さい。以下の表2に示すように、Mark-Houwinkプロットの傾きと、粘度範囲コンフォメーションプロットの傾きの両方に基づいて、分子の構造は分岐状であると決定された。
【0155】
【表2】
【0156】
実施例2-アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンのポリエチレンへの複合及び電子ビーム硬化
【0157】
実施例1で得られたアクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び超低密度ポリエチレン(ULDPE)等の電子ビームで硬化されたポリオレフィンフィルムの性能特性を向上させるための共架橋剤又は助剤として試験した。はじめに、ビタミンE(α-トコフェロール)をスコーチ防止剤としてアクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンに加えて、高温での複合プロセスの間の重合の開始を防いだ。アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンを、LLDPE及びULDPEフィルムグレードのポリマーに0、2、5、10及び15%(質量%)の助剤添加(loading)レベルで加えた。アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、最大15%の添加までポリマーで優れた混和性を示し;DSMマイクロ押出機で150℃の押出し及び140℃で押出機ダイで配合並びにストランド押出した後、浸出液は観察されなかった。押し出されたストランドは、ペレットに切り刻まれた。ペレットを、Carver社の液圧プレスで加熱プレスしてフィルムにし、フィルムの電子ビーム硬化を行い、引張特性及び引き裂き抵抗を試験した。
【0158】
実施例3-放射線硬化接着剤におけるアクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンの使用
【0159】
アクリレート官能化分岐ポリアルファオレフィンは、他の(メタ)アクリレート官能化化合物と組み合わされ得る。得られる光硬化性樹脂組成物は、400°F(204℃)を超えるせん断接着破壊温度を有することが見出された。高度に官能化された分岐ポリアルファオレフィン及び低度に官能化された分岐ポリアルファオレフィンのブレンドは、他の(メタ)アクリレート官能化モノマー希釈剤と一緒に使用した場合、剥離特性及びタック特性を変更する能力を示すことが見出された。
【国際調査報告】