(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】コーティングされた活性材料を有する電池及び電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/50 20100101AFI20220215BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220215BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220215BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220215BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20220215BHJP
H01M 6/06 20060101ALI20220215BHJP
H01M 4/42 20060101ALI20220215BHJP
H01M 4/46 20060101ALI20220215BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20220215BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220215BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220215BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220215BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20220215BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220215BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20220215BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20220215BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20220215BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20220215BHJP
H01B 1/12 20060101ALN20220215BHJP
H01B 1/20 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
H01M4/50
H01M4/36 C
H01M4/02 Z
H01M4/62 C
H01M4/06 D
H01M6/06 C
H01M4/42
H01M4/06 T
H01M4/46
H01M4/06 E
H01M4/40
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/134
H01M4/06 S
H01M6/06 A
H01M4/06 C
H01M4/06 R
H01B1/06 A
H01B1/00 E
C09C3/10
C09C3/06
H01B1/12 E
H01B1/20 A
H01B1/12 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530899
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 US2019063562
(87)【国際公開番号】W WO2020112969
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516164276
【氏名又は名称】イオニツク・マテリアルズ・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガブリーロフ,アレクセイ・ビー
(72)【発明者】
【氏名】モハメッド,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4J037
5G301
5H024
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037CA02
4J037CC00
4J037DD10
4J037DD23
4J037EE03
4J037EE28
4J037FF11
5G301CD01
5G301DA04
5G301DA08
5G301DA15
5G301DA18
5G301DA23
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5G301DD01
5G301DE01
5H024AA03
5H024AA11
5H024AA14
5H024BB08
5H024FF02
5H024FF09
5H024HH04
5H024HH13
5H029AJ03
5H029AJ05
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5H029AL12
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5H029CJ22
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5H029DJ09
5H029DJ16
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5H029EJ12
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5H029HJ17
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5H050AA07
5H050AA08
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5H050CA08
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB13
5H050DA10
5H050DA13
5H050EA08
5H050EA11
5H050EA12
5H050EA13
5H050EA23
5H050FA02
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA17
5H050HA18
(57)【要約】
コーティング組成物を記載する。コーティング組成物は、固体イオン伝導性ポリマー材料の複数の粒子を有する。固体イオン伝導性ポリマー材料は、室温で1×10
-4S/cmを超えるイオン伝導率を有し、固体イオン伝導性ポリマー材料は、室温でガラス状態である。コーティング組成物はまた、導電性材料の複数の粒子を有する。導電性材料は、室温で1×102S/cmを超える導電率有する。コーティング組成物は、更に、バインダーの複数の粒子を有する。バインダーは、組成物の粒子を保持して、粘着性コーティングを形成する。コーティング組成物を使用する電池及び電池構成要素も記載されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングであって:
室温で少なくとも1×10
-4S/cmのイオン伝導率を有する固体イオン伝導性ポリマーであって、前記固体イオン伝導性ポリマーはガラス状態である、固体イオン伝導性ポリマーと;
室温で少なくとも1×10
2S/cmの導電率を有する炭素を含む導電性材料と
を含む、コーティング。
【請求項2】
更にバインダーを含み、前記バインダーはポリマーを含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
更に硬化剤を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項4】
前記コーティングは架橋されている、請求項3に記載のコーティング。
【請求項5】
前記固体イオン伝導性ポリマーは、ヒドロキシルイオンを伝導し、前記イオン伝導性ポリマーの拡散率は、室温で少なくとも2×10
-10m
2/sである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項6】
酸化マンガンを含む粒子と;
コーティングであって;
室温で少なくとも1×10
4S/cmのイオン伝導率を有する固体イオン伝導性ポリマーであって、前記固体イオン伝導性ポリマーはガラス状態である、固体イオン伝導性ポリマーと、
炭素を含む導電性材料と
を含むコーティングと
を含むコーティングを有する粒子。
【請求項7】
前記コーティングは架橋されている、請求項6に記載の粒子。
【請求項8】
前記コーティングは、前記粒子の表面の少なくとも50%を覆う、請求項6に記載の粒子。
【請求項9】
前記コーティングは、前記粒子の表面の少なくとも70%を覆う、請求項6に記載の粒子。
【請求項10】
前記コーティングは、前記粒子の表面の少なくとも90%を覆う、請求項6に記載のコーティングされた粒子。
【請求項11】
カソードであって:
複数の酸化マンガン粒子を含み;
前記複数の酸化マンガン粒子の各々は、コーティングを有し;
前記コーティングは:
室温で少なくとも1×10
4S/cmのイオン伝導率を有する固体イオン伝導性ポリマーであって、固体イオン伝導性ポリマーはガラス状態である、固体イオン伝導性ポリマーと;
炭素を含む導電性材料と
を含む、カソード。
【請求項12】
更に、水酸化カリウムを含む液体電解質を含む、請求項11に記載のカソード。
【請求項13】
更に導電性添加剤を含む、請求項11に記載のカソード。
【請求項14】
前記コーティングは架橋されている、請求項11に記載のカソード。
【請求項15】
カソードを含む一次電池であって:
前記カソードは:
複数の酸化マンガン粒子を含み;
前記酸化マンガン粒子の少なくとも1つは、コーティングを有し;
前記コーティングは:
室温で少なくとも1×10
-4S/cmのイオン伝導率を有する固体イオン伝導性ポリマーであって、固体イオン伝導性ポリマーはガラス状態である、固体イオン伝導性ポリマーと;
炭素を含む導電性材料と
を含む、一次電池。
【請求項16】
更に、亜鉛を含むアノードを含む、請求項15に記載の一次電池。
【請求項17】
更に、アルミニウムを含むアノードを含み、アルミニウムがアノードの電気活性材料の少なくとも90パーセントを構成する、請求項15に記載の一次電池。
【請求項18】
更に、水酸化カリウムを含む液体電解質を含む、請求項16に記載の一次電池。
【請求項19】
前記酸化マンガン粒子の少なくとも1つは、電解二酸化マンガン粒子を含む、請求項15に記載の一次電池。
【請求項20】
コーティング組成物であって:
固体イオン伝導性ポリマー材料が室温で1×10
-4S/cmを超えるイオン伝導率を有し室温でガラス状態である、固体イオン伝導性ポリマー材料の複数の粒子と;
導電性材料が室温で1×10
2S/cmを超える導電率を有する、導電性材料の複数の粒子と;
バインダーが組成物の粒子を保持して粘着性コーティングを形成する、バインダーの複数の粒子;
を含むコーティング組成物。
【請求項21】
請求項20に記載のコーティング組成物を有するコーティングを有する電気活性粒子を含むコーティングされた粒子。
【請求項22】
前記電気活性粒子のコーティングは、10ミクロン未満の平均厚さを有する、請求項21に記載のコーティングされた粒子。
【請求項23】
前記固体イオン伝導性材料の複数の粒子及び前記導電性材料の複数の粒子の平均直径は、前記電気活性粒子の直径の半分未満である、請求項21に記載のコーティングされた粒子。
【請求項24】
前記コーティングは、前記電気活性粒子の表面積の少なくとも90パーセントを覆う、請求項21に記載のコーティングされた粒子。
【請求項25】
前記複数のコーティングされた粒子の各々は、それらの電気及びイオン伝導性連絡の両
方において、前記複数のコーティングされた粒子の少なくとも1つに隣接している、請求項21に記載の複数のコーティングされた粒子。
【請求項26】
請求項25に記載の複数のコーティングされた粒子を含む電極であって;
前記電極は、更にバルク電解質を含み;
前記バルク電解質は、イオン伝導性電解質及び複数の導電性粒子の両方を含み;
前記導電性粒子の各々は、前記複数のコーティングされた粒子の少なくとも1つの外面に隣接して配置される、電極。
【請求項27】
請求項26に記載の電極を含む電池であって;
前記電極はアノードであり;
前記複数のコーティングされた粒子のうちの少なくとも1つの電気活性粒子は、アルミニウムを含む、電池。
【請求項28】
更にカソードを含み、前記カソードは、電気活性二酸化マンガンを含む、請求項27に記載の電池。
【請求項29】
請求項26に記載の電極を含む電池であって;
前記電極はアノードであり;
前記複数のコーティングされた粒子のうちの少なくとも1つの電気活性粒子は、亜鉛を含む、電池。
【請求項30】
請求項26に記載の電極を含む電池であって;
前記電極はカソードであり;
前記複数のコーティングされた粒子のうちの少なくとも1つの電気活性粒子は、マンガンを含む、電池。
【請求項31】
更にカソードを含み、前記カソードは電気活性二酸化マンガンを含み、前記電池は、30ミリアンペア未満で0.8Vカットオフまでドレインしながら、少なくとも3.0アンペア時を生成する、請求項29に記載の電池。
【請求項32】
請求項26に記載の電極を含む電池であって;
前記電極はカソードであり;
前記複数のコーティングされた粒子のうちの少なくとも1つの電気活性粒子は、リチウムを含む、電池。
【請求項33】
アノード電極を含み、前記電極はリチウム金属を含み、前記リチウム金属は、請求項20に記載のコーティングでコーティングされている、電池。
【請求項34】
前記コーティングは、ヘテロライト(Hataerolite)、ハウスマンナイト アルミニウム、亜鉛、及びマンガンからなる群から選択される材料に対して非透過性である、請求項20に記載のコーティング。
【請求項35】
前記コーティング組成物は、1mV/sの走査速度で1M水酸化カリウム溶液中で動電位的に測定された場合に、少なくとも0.35ボルトの耐食性を提供する、請求項27に記載の電池。
【請求項36】
前記電池は一次電池である、請求項28に記載の電池。
【請求項37】
前記バルク電解質は、前記固体イオン伝導性ポリマーを含む、請求項36に記載の電池
。
【請求項38】
前記電池は固体状態であり、液体電解質を全く含まない、請求項37に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府主催の研究開発に関する声明
該当なし。
【背景技術】
【0002】
一次アルカリ電池は、消費者電池の主な選択肢である。カソードの活性材料の主成分は二酸化マンガンであり、これはアルカリ電池に30年以上使用されている周知の電気化学物質である。
【0003】
反応式(i)を参照すると、電池放電中に、酸化マンガン中のMn(IV)は、酸化マンガン構造へのプロトンインターカレーションを伴うMn(III)への還元を受ける。(i)MnO
2+e
-+H
2O→MnOOH+OH
-
反応(i)のMnOOH生成物は、残りの反応物MnO
2と固体を形成し、その組成は、MnOOH
xと記載される。
図1を参照すると、x>0.6の可溶性マンガン(III)種の形成は、溶解-沈殿機構を介してハウスマンナイト及びヘテロライト(Hataerolite)の形成をもたらす。両方の生成物は、実質的に電気化学的に不活性であり、セルインピーダンスの増加をもたらし、従って、利用可能な容量を制限する。本発明の態様は、副反応及び関連する溶解を防止し、利用可能な電池容量の増加をもたらすことが見出された。本発明の他の態様は、多くの他の電気化学システムにおいて電極及び電池の性能を改善することが見出された。
【発明の概要】
【0004】
本発明はコーティング及び/又はコーティング組成物、コーティングを有する粒子及び/又はコーティングされた粒子、カソードを含む電極、一次電池を含む電池、電気化学的により効率的な様式での電解二酸化マンガン即ちEMD、他の酸化マンガン、及び他の電気活性材料の利用のための、電池構成要素及び/又は電池システムを特徴とする。
【0005】
第1の局面では、一態様は、室温で少なくとも1×10-4S/cmのイオン伝導率を有する固体イオン伝導性ポリマーを含むコーティングを提供する。固体イオン伝導性ポリマーは、ガラス状態である。コーティングはまた、炭素を含み、かつ室温で少なくとも1×102S/cmの導電率を有する導電性材料を含む。
【0006】
更なる局面では、一態様は、コーティングを有する粒子を提供する。粒子は、酸化マンガンを含む。コーティングは、室温で少なくとも1×10-4S/cmのイオン伝導率を有する固体イオン伝導性ポリマーを含む。固体イオン伝導性ポリマーは、ガラス状態である。コーティングはまた、炭素を含む導電性材料を有する。
【0007】
別の局面では、一態様は、カソードを提供する。カソードは、複数の酸化マンガン粒子を含む。酸化マンガン粒子の各々は、室温で少なくとも1×10-4S/cmのイオン伝導率を有する固体イオン伝導性ポリマーを含むコーティングを有する。固体イオン伝導性ポリマーは、ガラス状態である。コーティングはまた、炭素を含む導電性材料を有する。
【0008】
更なる局面では、一態様は、一次電池を提供する。一次電池は、複数の酸化マンガン粒子を含むカソードを有する。酸化マンガン粒子の1つ以上は、室温で少なくとも1×10-4S/cmのイオン伝導率を有する固体イオン伝導性ポリマーを含むコーティングを有する。固体イオン伝導性ポリマーは、ガラス状態である。コーティングはまた、炭素を含む導電性材料を有する。
【0009】
別の局面では、一態様は、コーティング組成物を提供する。コーティング組成物は、固体イオン伝導性ポリマー材料の複数の粒子を有する。固体イオン伝導性ポリマー材料は、室温で1×10-4S/cmを超えるイオン伝導率を有し、固体イオン伝導性ポリマー材料は、室温でガラス状態である。コーティング組成物はまた、導電性材料の複数の粒子を有する。導電性材料は、室温で1×102S/cmを超える導電率を有する。コーティング組成物は、更に、バインダーの複数の粒子を有する。バインダーは、組成物の粒子を保持して、粘着性コーティングを形成する。
【0010】
図面のいくつかの図の簡単な説明
添付の図面は、本発明の詳細な説明を支持し、例示的な態様を参照する。添付の図面は、本発明の全範囲を決して限定するものではないと考えられる。図面において:
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一態様によるコーティングが、さもなければ望ましくない種の形成につながる副反応をどのように妨げるかを示す概略図である;
【
図2】
図2は、本発明の例示的な態様によるコーティング層又はインクでコーティングした後の、乾燥したコーティング層又はインク、コーティングされていないEMD粒子又は粉末、及びEMD粒子又は粉末の代表的なSEM画像を示す;
【
図3】
図3は、本発明の一態様による、コーティングされていないEMD材料とコーティングされたEMD材料の代表的なXPS結果を示す;
【
図4】
図4は、コーティングされていない酸化マンガンを有する市販のAA電池の放電曲線を、本発明の態様によるコーティングされた酸化マンガンを有するAA電池と比較して示す;
【
図5】
図5は、本発明の一態様によるコーティング概念の概略図である;
【
図6】
図6は、コーティングされていない亜鉛粉末と、本発明の一態様に従ってコーティングされた亜鉛粉末のXPSスペクトルを示す;
【
図7】
図7は、コーティングされていない亜鉛粉末(下の曲線)と、本発明の一態様に従ってコーティングされた亜鉛粉末(上の曲線)を有する2032コインセルのサイクル寿命を示す;
【
図8】
図8は、コーティングされていないアルミニウム粉末と、本発明の一態様に従ってコーティングされたアルミニウム粉末のXPSスペクトルを示す;
【
図9】
図9は、コーティングされていないアルミニウムについての動電位曲線(図の曲線、右)を、本発明の一態様によるコーティングされたアルミニウムについての動電位曲線(左の曲線)と比較して示す;
【
図10】
図10は、EMDセルと、本発明の一態様によるポリマーコーティングを有さない及び有する実施例14によるセルの放電曲線の比較を示す;
【
図11】
図11は、本発明の一態様による、リチウム金属アノード、ポリマー電解質セパレーター、及びLCO-ポリマー電解質複合材料カソードを有するセルのスワンププロットを重ね合わせたボックス及びウィスカープロットを示す;
【
図12】
図12(a)は、本発明の一態様による固体ポリマー電解質の粒子サイズ分布を示す;
図12(b)は、本発明の一態様による銅箔上に調製された乾燥コーティングの表面形態及び粗さを示す;
図12(c)は、本発明の一態様による銅箔上に調製されたコーティングのトップダウン走査型電子顕微鏡写真を示す;
図12(d)は、本発明の一態様による銅箔上に調製されたコーティングの断面走査型電子顕微鏡写真を示す;
【
図13】
図13(a)は、コーティングされていないLi金属セルと、本発明の態様によるコーティングされたLi金属セルの電気化学インピーダンススペクトルを示す;
図13(b)は、本発明の態様によるLi/PE/NCM811セルにおけるコーティングされていないLiセル及びコーティングされたLiセルのサイクル性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
電気活性材料は、電気化学的に活性な材料の同義語、即ち、電気化学反応及び電気化学的に活性な材料の電荷移動工程において、その酸化状態を変化させるか、又は化学結合の形成若しくは破壊に関与する材料である。
【0013】
固体電解質は、無溶媒ポリマー、及びセラミック化合物(結晶性及びガラス)を含む。
【0014】
「固体」は、その形状を長期間にわたって無期限に維持する能力を特徴とし、液相の材料とは区別され、異なる。固体の原子構造は、結晶性又は非晶質のいずれであってもよい。固体は、複合構造体中の成分と混合されてもよく、又は成分であってもよい。しかしながら、本出願及びその特許請求の範囲の目的のために、固体材料は、特に記載されない限り、その材料が固体を通してイオン伝導性であり、溶媒、ゲル又は液相を通してイオン伝導性ではないことを必要とする。本出願及びその特許請求の範囲の目的のために、ゲル化(又は湿潤)ポリマー及びイオン伝導性について液体に依存する他の材料は、それらがそのイオン伝導性について液相に依存するという点で固体電解質ではないと定義される。
【0015】
ポリマーは、典型的には有機であり、炭素ベースの高分子からなり、その各々は、1つ以上のタイプの繰り返し単位又はモノマーを有する。ポリマーは、軽量で延性があり、通常非導電性であり、比較的低温で融解する。ポリマーは、射出、ブロー及び他の成形プロセス、押出、プレス、スタンピング、三次元印刷、機械加工及び他のプラスチックプロセスによって生成物にすることができる。ポリマーは、典型的には、ガラス転移温度Tg未満の温度でガラス状態を有する。このガラス温度は、鎖の柔軟性の関数であり、ポリマー高分子のセグメントの配列が単位として一緒に移動することを可能にするのに十分な自由体積を作り出すのに十分な振動(熱)エネルギーが系に存在する場合に生じる。しかしながら、ポリマーのガラス状態では、ポリマーのセグメント運動はない。
【0016】
ポリマーは、無機の非金属材料として定義されるセラミックとは区別され、典型的には、酸素、窒素又は炭素に共有結合した金属からなる化合物であり、脆く、強く、非導電性である。
【0017】
いくつかのポリマーにおいて生じるガラス転移は、ポリマー材料が冷却されるときの過冷却液体状態とガラス状態との間の中点温度である。ガラス転移の熱力学的測定は、ポリマーの物理的特性、例えば、体積、エンタルピー又はエントロピー及び温度の関数としての他の微分特性を測定することによって行われる。ガラス転移温度は、選択された特性(エンタルピーの体積)の中断として、又は転移温度における勾配(熱容量又は熱膨張係数)の変化から、そのようなプロット上で観察される。ポリマーをTgより上からTgより下に冷却すると、ポリマーの分子移動度は、ポリマーがそのガラス状態に達するまで低下する。
【0018】
イオン伝導率は、導電率とは異なることに注意することが重要である。イオン伝導率はイオン拡散率に依存し、その性質は、Nernst-Einstein方程式で関係づけられる。イオン伝導率とイオン拡散率は、いずれもイオン移動度の尺度である。イオンは、材料中でのその拡散率が正(ゼロを超える)であるか、又は正の伝導率に寄与する場合、材料中で移動性である。このようなイオン移動度の測定の全ては、特に明記しない限り、室温(21℃付近)で行われる。イオン移動度は、温度によって影響されるので、低温で検出することは困難であり得る。装置検出限界は、少量の移動度を決定する際の因子であり得る。移動度は、少なくとも1x10-14m2/s、好ましくは少なくとも1x10-13m/sのイオンの拡散率として理解することができ、これは、どちらも、イオンが材料中で移動性であることを伝える。
【0019】
固体ポリマーイオン伝導性材料は、ポリマーを含み、更に記載するようにイオンを伝導する固体である。
【0020】
本発明の一局面は、少なくとも3つの別個の成分:ポリマー、ドーパント及びイオン性化合物から固体イオン伝導性ポリマー材料を合成する方法を含む。成分及び合成方法は、材料の特定の用途のために選択される。ポリマー、ドーパント及びイオン性化合物の選択はまた、材料の所望の性能に基づいて変化する場合がある。例えば、所望の成分及び合成方法は、所望の物理的特性(例えば、イオン伝導率)の最適化によって決定される場合がある。
【0021】
合成:
合成方法はまた、特定の成分及び最終材料の所望の形態(例えば、フィルム、微粒子等)に応じて変化し得る。しかしながら、方法は、最初に少なくとも2つの成分を混合し、任意的な第2の混合工程において第3の成分を添加し、加熱工程において固体イオン伝導性ポリマー材料を合成するために成分/反応物を加熱する基本的な工程を含む。本発明の一局面では、得られた混合物を所望のサイズのフィルムに任意的に形成してもよい。第1のステップで生成された混合物中にドーパントが存在しなかった場合、その後、加熱及び任意的に圧力(正圧又は真空)を適用しながら、ドーパントを混合物に添加することができる。全ての3つの成分が存在し、混合され、加熱されて、単一工程で固体イオン伝導性ポリマー材料の合成を完了することができる。しかしながら、この加熱工程は、混合とは別の工程で行われてもよく、又は混合が行われている間に完了してもよい。加熱工程は、混合物(例えば、フィルム、微粒子等)の形態にかかわらず行われ得る。合成方法の一局面では、3つの全成分を混合した後、フィルムに押し出す。フィルムを加熱して合成を完了する。
【0022】
固体イオン伝導性ポリマー材料を合成する際、反応物の色が比較的明るい色であり、固体イオン伝導性ポリマー材料が比較的暗い色又は黒色であるので、視覚的に観察できる色の変化が起こる。この色の変化は、電荷移動錯体が形成されるにつれて起こると考えられ、合成方法に応じて徐々に又は迅速に起こり得る。
【0023】
合成方法の一局面は、ベースポリマー、イオン性化合物、及びドーパントを一緒に混合し、第2のステップで混合物を加熱することである。ドーパントは気相にあり得るため、加熱ステップはドーパントの存在下で行うことができる。混合工程は、押出機、ブレンダー、ミル又はプラスチック加工に典型的な他の装置内で行うことができる。加熱工程は、数時間(例えば、24時間)続くことができ、色の変化は、合成が完了したか、又は部分的に完了したことの信頼できる指標である。合成後の追加の加熱は、材料に悪影響を及ぼすようには見えない。
【0024】
合成方法の一局面では、まずベースポリマーとイオン性化合物とを混合することができる。次に、ドーパントをポリマー-イオン性化合物混合物と混合し、加熱する。加熱は、第2の混合工程の間、又は混合工程の後に、混合物に適用することができる。
【0025】
合成方法の別の局面では、まずベースポリマーとドーパントを混合し、次いで加熱する。この加熱工程は、混合後又は混合中に適用することができ、電荷移動錯体の形成及びドーパントとベースポリマーとの間の反応を示す色変化が起こる。次いで、イオン性化合物を、反応したポリマー-ドーパント材料に混合して、固体イオン伝導性ポリマー材料の形
成を完了する。
【0026】
ドーパントを添加する典型的な方法は、当業者に既知であり、ポリマー及びイオン性化合物を含有するフィルムの蒸気ドーピング、並びに当業者に既知の他のドーピング方法を含むことができる。ドーピングすると、固体ポリマー材料はイオン伝導性となり、ドーピングは、固体ポリマー材料のイオン成分を活性化してイオンを拡散させるように作用すると考えられる。
【0027】
最初の混合工程、二次混合工程、又は加熱に続く混合工程の間に、他の非反応性成分を上記の混合物に添加することができる。そのような他の成分は、減極剤又はアノード若しくはカソード活性材料のような電気化学的活性材料、炭素のような導電性材料、バインダー又は押出助剤(例えば、エチレンプロピレンジエンモノマー「EPDM」)のようなレオロジー剤、触媒、及び混合物の所望の物理的特性を達成するのに有用な他の成分を含むが、これらに限定されない。
【0028】
固体イオン伝導性ポリマー材料の合成における反応物として有用なポリマーは、電子供与体又は電子受容体によって酸化され得るポリマーである。30%を超える、及び50%を超える結晶化度を有する半結晶性ポリマーが、適切な反応物ポリマーである。液晶ポリマー(「LCP」)のような全結晶性ポリマー材料も、反応物ポリマーとして有用である。LCPは全結晶性であり、従って、その結晶化度は、本明細書で100%と定義される。非ドープ共役ポリマー及びポリフェニレンスルフィド(「PPS」)のようなポリマーもまた、適切なポリマー反応物である。
【0029】
ポリマーは、典型的には導電性ではない。例えば、バージンPPSは、10-20Scm-1の電導性を有する。非導電性ポリマーは、適切な反応物ポリマーである。
【0030】
一局面では、反応物として有用なポリマーは、各繰り返しモノマー基の骨格中に芳香族又は複素環成分を有することができ、ヘテロ原子が複素環に組み込まれるか、又は芳香族環に隣接する位置において骨格に沿って配置されている。ヘテロ原子は、骨格上に直接位置するか、又は骨格上に直接配置されている炭素原子に結合することができる。ヘテロ原子が骨格上に位置するか、又は骨格上に配置されている炭素原子に結合する両方の場合において、骨格原子は、芳香族環に隣接して骨格上に配置されている。本発明のこの局面において使用されるポリマーの非限定的な例は、PPS、ポリ(p-フェニレンオキシド)(「PPO」)、LCP、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリフタルアミド(「PPA」)、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリスルホンを含む群から選択され得る。列挙したポリマーのモノマーを含むコポリマー、及びこれらのポリマーの混合物も使用される場合がある。例えば、p-ヒドロキシ安息香酸のコポリマーは、適切な液晶ポリマーベースのポリマーであり得る。表1は、本発明において有用な反応物ポリマーの非限定的な例を、モノマー構造と、ポリマーがそれらの物理的特性に影響を及ぼし得る複数の形態をとることができるので非限定的であると考えるべきであるいくつかの物理的特性情報と共に詳述する。
【0031】
【0032】
【0033】
固体イオン伝導性ポリマー材料の合成における反応物として有用なドーパントは、電子受容体又は酸化剤である。ドーパントは、イオン輸送及び移動性のためにイオンを放出するように作用すると考えられ、電荷移動錯体に類似した部位又イオン伝導性を可能にするポリマー内の部位を生成すると考えられる。有用なドーパントの非限定的な例は、「DDQ」としても知られる2,3-ジシアノ-5,6-ジクロロジシアノキノン(C8Cl2N2O2)等のキノン、及びクロラニルとしても知られるテトラクロロ-1,4-ベンゾキノン(C6Cl4O2)、TCNEとしても知られるテトラシアノエチノン(C6N4)、三酸化硫黄(「SO3」)、オゾン(「三酸素」又はO3)、酸素(O2、空気を含む)、二酸化マンガン(「MnO2」)を含む遷移金属酸化物、又は任意の適切な電子受容体等、及びそれらの組み合わせである。ドーパントは、合成加熱工程の温度で温度安定性であるものが有用であり、温度安定性かつ強力な酸化剤キノンである他のドーパントが最も有用である。表2は、ドーパントの非限定的なリストを、それらの化学図と共に提供
する。
【0034】
【0035】
固体イオン伝導性ポリマー材料の合成において反応物として有用なイオン性化合物は、固体イオン伝導性ポリマー材料の合成中に所望のイオンを放出する化合物である。イオン性化合物は、イオン性化合物及びドーパントの両方が必要とされる点でドーパントとは異なる。非限定的な例は、Li2O、LiOH、ZnO、TiO2、Al3O2、NaOH、KOH、LiNO3、Na2O、MgO、CaCl2、MgCl2、AlCl3、LiTFSI(リチウムビス-トリフルオロメタンスルホンイミド)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2「LiBOB」)、及び他のリチウム塩及びそれらの組み合わせを含む。これらの化合物の水和形態(例えば、一水素化物)を、化合物の取り扱いを単純化するために使用することができる。無機酸化物、塩化物及び水酸化物は、合成中に解離して少なくとも1つのアニオン性及びカチオン性拡散イオンを生成する点で、適切なイオン性化合物である。解離して、少なくとも1つのアニオン性及びカチオン性拡散イオンを生成するこのようなイオン性化合物のいずれも、同様に適切である。複数のアニオン性及びカチオン性拡散イオンをもたらす複数のイオン性化合物も好ましい可能性がある。合成に含まれる特定のイオン性化合物は、材料に望まれる有用性に依存する。例えば、リチウムカチオンを有することが望ましい用途では、水酸化リチウム、又はリチウム及び水酸化物イオンに変換可能な酸化リチウムが適切であろう。合成中にリチウムカソード及び拡散アニオンの両方を放出するいずれかのリチウム含有化合物のように。このようなリチウムイオン性化
合物の非限定的な群は、有機溶媒中のリチウム塩として使用されるものを含む。同様に、アルミニウム又は他の特定のイオン性化合物は、アルミニウム又は他の特定のカチオンが所望される系における合成の間に、反応して、特定の所望のイオン及び拡散アニオンを放出する。更に実証されるように、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、及び所望のカチオン性及びアニオン性拡散種の両方を生成し得る形態のポスト遷移金属を含むイオン性化合物は、合成反応物イオン性化合物として適切である。
【0036】
材料の純度は、意図しない副反応を防止し、合成反応の有効性を最大にして高伝導性材料を製造するために潜在的に重要である。概ね高純度のドーパント、ベースポリマー及びイオン性化合物を有する実質的に純粋な反応物が好ましく、98%を超える純度がより好ましく、更に高純度、例えばLiOH:99.6%、DDQ:>98%、及びクロラニル:>99%が最も好ましい。
【0037】
固体イオン伝導性ポリマー材料の有用性及び本発明の固体イオン伝導性ポリマー材料の合成の上記の方法の多様性を更に記載するために、複数の電気化学的用途に有用であり、それらの用途によって区別される固体イオン伝導性ポリマー材料のいくつかのクラスが記載される:
より電気化学的に効率的な方法で電解二酸化マンガン即ちEMD及び他の酸化マンガンを利用するように、上述の性能の非効率性を改善することが望まれる。再び
図1の概略図を参照すると、酸化マンガン粒子をイオン伝導性及び導電性コーティングでカプセル化すると、マンガン(III)種及び亜鉛酸イオンの拡散が妨げられ、一方、ヒドロキシルイオン及び電子が伝導され、これはMnOOHの更なる還元を可能にし、従って容量が増大する。
【0038】
一局面では、本発明は、コーティングされた酸化マンガン粒子を特徴とする。好ましい態様では、本発明は、コーティングされた二酸化マンガン粒子を特徴とし、より好ましい態様では、コーティングされたEMD粒子を特徴とする。酸化マンガン粒子は、イオン伝導性材料を用いて2段階プロセスでコーティングされる。
【0039】
第1の工程の間、イオン伝導性材料は、選択された割合で電子伝導剤と湿式混合され、それによってコーティング層又はコーティングインク等のコーティングを形成する。第2の工程の間、コーティングは溶媒中で酸化マンガン粒子と組み合わされ、混合され、続いて乾燥及び硬化される。一態様では、弾性ポリマーを湿潤混合物に添加して、湿潤混合物の機械的安定性を改善することができる。あるいは、弾性ポリマーを乾燥混合物に添加して、乾燥混合物の機械的安定性を改善することができる。弾性ポリマーは、特に塗装及びコーティング技術の当業者に既知の弾性ポリマーから選択することができる。
【0040】
第2の工程の後、得られた乾燥及び硬化された材料は、グラファイト及びKOHと更に混合され、アルカリ電池産業の当業者に一般に既知の材料及び/又はプロセスを利用して、アルカリAA電池を構築するために使用され得る。あるいは、当業者に既知のように、他の電池タイプに特有の他の添加剤を、得られた乾燥及び硬化材料と混合して、対応する電池タイプを構築することができる。
【0041】
別の局面では、本発明は、イオン伝導性ポリマーと、7~20重量%の固形分を有する混合物を形成する水成分とを含むコーティング層又はインク等のコーティングを特徴とする。例えば、炭素成分のような1つ以上の電子伝導剤が混合物に添加される。電子伝導性炭素成分は、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及び選択された比率での前述の成分の1つ以上の組み合わせを含むことができる。
【0042】
電子伝導性炭素成分は、高剪断混合法を用いて混合物に組み込まれる。高剪断混合法は
、炭素成分を解凝集させ、ポリマー水炭素混合物を均質化する。高剪断混合プロセスの間、好ましい一態様では、第2のポリマー材料等のバインダーを混合物に添加することができる。第2のポリマー材料は、任意的に架橋剤を含むことができる。
【0043】
混合後、得られた材料を活性材料上に置き、乾燥させる。乾燥した層は、活性材料のための保護コーティングを形成し、イオン伝導性及び電子伝導性の両方である。
【実施例】
【0044】
実施例1:
PPSポリマーを、イオン性化合物LiOH一水和物と、各々67%~33%(重量)の割合で混合し、ジェット粉砕を用いて混合した。DDQ(あるいは、酸素が使用される)ドーパントを、4.2モルのPPSモノマー当たり1モルのDDQの量で、得られた混合物に蒸気ドーピングを介して添加した。混合物を190~200℃で30分間、中圧(500~1000PSI)下で熱処理して、ヒドロキシルイオンを伝導できるイオン伝導性ポリマーを得た。示差走査熱量測定(ASTM D7426(2013)に記載されている「DSC」方法)により、ガラス状態は、材料融解温度未満の温度領域から少なくとも室温まで広がり、イオン伝導率は1×10-4S/cmを超えることが見出された。
【0045】
蒸留水中の8.22重量%のサブミクロンイオン伝導性ポリマーフレークからなる45.6グラムの懸濁液を24.44グラムの脱イオン水と合わせた。ローター-ステーター高剪断ホモジナイザーを使用して、ポリマー水懸濁液を3500rpmで混合した。1:1の比のカーボンブラックとグラフェン凝集体を有する5.6グラムの量の炭素を、混合ヘッドのrpmを6500rpmに増加させながら、ポリマー水懸濁液にゆっくりと添加した。6500rpmで5分間混合した後、6%カルボキシレートを含む1.18グラムのスチレン-ブタジエンゴム水性エマルジョンを、混合ヘッドのrpmを900rpmに増加させながら混合物に滴加した。この混合物を更に3分間混合した。
【0046】
実施例2:
蒸留水中の8.22重量%のサブミクロンイオン伝導性ポリマー(実施例1から)フレークからなる45.6グラムの懸濁液を24.44グラムの脱イオン水と合わせた。10個の10mm ZrO2ボールを125mL ZrO2ボールミルキャニスター内に入れた。1:1の比のカーボンブラックとグラフェン凝集体を有する5.6グラムの量の炭素をキャニスターに添加した。材料を、遊星ボールミルを用いて300rpmで30分間、第1の混合段階中に混合した。第1の混合段階の後、ボールミルキャニスターを開け、6%カルボキシレートを含む1.18gのスチレン-ブタジエンゴム水性エマルジョンをキャニスターに添加し、第2の混合段階中に、キャニスター内容物を遊星ボールミル上で300rpmで30分間更に混合した。第2の混合段階の後、材料をZrO2ボールから分離した。
【0047】
実施例3:
蒸留水中の8.22重量%のサブミクロンイオン伝導性ポリマーフレーク(実施例1から)からなる45.6グラムの懸濁液を、5.92グラムの10重量%水性ポリビニルアルコール及び18.48グラムの脱イオン水と合わせた。懸濁液を、ローターステーターホモジナイジングヘッドを用いて3000rpmで混合した。混合速度を6000rpmに増加させながら、1:1の比のカーボンブラックとグラフェン凝集体を有する5.6グラムの量の炭素を混合物にゆっくりと添加した。1.48gの量の10重量%グルタルアルデヒド水溶液を混合物に添加し、混合物を5分間混合した。2滴の0.1M HClを混合物に添加して、グルタルアルデヒドとポリビニルアルコールとの間の架橋を開始した。HClを混合物に添加した後、混合物が硬すぎるか、固体、非液体、非流体であるか、又は別様にコーティングに使用できなくなるのを避けるために、混合物を30分以内に活
性材料上にコーティングした。
【0048】
実施例4:
14.3グラム及び15重量%固形分の量の実施例1、2及び3の各々の材料を、対応する大きな300mLのTHINKY容器内で、0.67グラムの45重量% KOH溶液及び14.4グラムの脱イオン水と別々に合わせた。100グラムの量の電解二酸化マンガン粒子を、対応するTHINKY容器内に収容される各混合物に添加した。各組み合わせを2000rpmで5分間混合した。その後、各THINKY容器を70℃のオーブンに入れ、コーティングの硬化を開始するために元の含水量の50%まで乾燥させた。このような硬化は、酸化マンガン粒子の表面へのコーティングの接着を確実にするために行われた。部分乾燥後、各THINKY容器内の各混合物に、膨張及び合成グラファイトを含有する3.3グラムのグラファイト混合物を添加し、次いで、各混合物を2000rpmで5分間混合した。次いで、各THINKY容器の材料を70~90℃のオーブンに入れて、一晩乾燥させた。
【0049】
実施例5:
実施例1、2及び3で調製した材料の各々について、2500グラムの量の電解二酸化マンガン粒子を、対応する大きな混合容器又はボウル内に実質的に均一に分配した。粒子を、100~200rpmに相当するインペラ速度2~3のミキサ装置を用いて混合した。このような混合の間、各々が約11.7重量%の固形分を含む、実施例1、2及び3の各々の468グラムの量の材料を、3つの混合容器の各々にゆっくりと注入した。実施例1、2及び3の各々の材料の約50%を、対応する混合容器の各々に注入した後、8000~11000rpmに対応する3~4にダイヤルを設定することによって高速チョッパー機構を作動させ、3つの混合容器の各々の内容物を更に混合するために使用した。実施例1、2及び3の各々の材料の残りの50%を、速度チョッパー機構による更なる混合の間に、混合容器の各々に注入した。
【0050】
次いで、ミキサー装置を停止し、各混合容器のブレード及び/又は壁に固まった材料を掻き取り、対応する混合した内容物の各々に添加した。混合を更に約3分間続け、次いで、各混合容器のブレード及び/又は壁から固まった材料を更に掻き取るために停止した。混合-掻き取りサイクルを、少なくとも3回、又は更に、湿潤粒子を含む顆粒にもはやサイズ及び湿潤度の変化が見られなくなるまで繰り返した。
【0051】
各混合容器及び対応するミキサーからのインペラーを、顆粒の含水量が約50%減少するまで70℃のオーブンに別々に入れた。加熱工程は、酸化マンガン粒子の表面へのコーティングの接着のためのコーティングの硬化を開始させた。
【0052】
湿潤粒子の顆粒を含む各混合容器及びミキサーインペラーを別々にミキサー装置に戻し、インペラーをミキサー装置に再固定した。膨張及び合成グラファイトを含有する82.4グラムの量のグラファイト混合物を、湿潤粒子を収容する各混合容器に添加した。次いで、混合容器を閉じ、インペラー速度2~3及びチョッパ機構速度1を用いて内容物を混合し、ブレード及び/又は壁の掻き取りのための周期的停止を行った。混合-掻きサイクルを、各混合容器について合計3回繰り返した。各混合容器の材料を別々に大きなステンレス鋼パンに移し、各ステンレス鋼パンを別々にオーブンに入れて一晩乾燥させた。
【0053】
実施例6:
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、実施例4及び5に従って製造されたコーティングされたEMD材料を、コーティングを有さないEMD粉末、並びに実施例1、2及び3に従って調製されたイオン伝導性ポリマー及び炭素を含む乾燥コーティング層又はインクと分析及び比較した。
図2の代表的なSEM画像では、コーティングされたEMD材料
は比較的滑らかな表面を有し、コーティングされていないEMD粉末の比較的粗い表面とは対照的に、乾燥コーティング層又はインクと視覚的に類似している。従って、
図2は、本発明のコーティングが下にあるEMD粉末を効果的に覆うことを示す。
【0054】
実施例7:
実施例4及び5に従って製造されたコーティングされたEMD材料及びコーティングされていないEMD材料を、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析し、元素分析と比較した。
【0055】
図3は、コーティングされていないEMD材料と比較して、コーティングされたEMD材料について実質的に減少したマンガン(Mn)ピークを示す。XPSは、表面技術である。従って、Mnピークの減少は、非マンガン含有材料、即ちポリマーでの表面被覆を示す。少なくとも76%の、EMD粒子の表面の被覆又はEMD表面閉塞は、Mnピークの観測された減少に基づいて見積もることができる。
【0056】
実施例8:
最新技術の市販電池を、本発明の実施例4及び5に従って調製したコーティングを用いて製造したAA電池と比較した。コーティングされた酸化マンガンをコーティングされていない酸化マンガンと置換したが、セル構築(formulation)に他の変化はなかった。両方の一次電池は、電気活性亜鉛粉末アノード及び電気活性二酸化マンガンカソードを含んでいた。アノードとカソードは、多孔質セパレーターによって互いに分離して配置された。電解質は、ヒドロキシルイオンを伝導する水酸化カリウム溶液であり、電気活性アノードとコーティングされた及びコーティングされていないカソード材料の両方に接触して電池全体に分散された。
【0057】
本発明の実施例4及び5による活性材料コーティングを用いて製造されたAAセルは、最新の市販のAAセルよりも>20%高い容量を示した。コーティングは、EMDのイオン伝導性及び導電性を維持しながら、電気活性酸化マンガン粒子を液体電解質から物理的に隔離した。
図4に示す代表的な結果を参照すると、セルは、30mAで0.6Vカットオフまで放電された。本発明の実施例4及び5による活性材料コーティングを用いて製造されたセルは、コーティングされていない二酸化マンガンセルよりも>20%高い容量を示した。更に、本発明の実施例4及び5による活性材料コーティングを用いて製造されたセルは、1.5Vを超えるOCV(開回路電圧-予備放電)、及び0.8Vのカットオフまでの30mAのドレインで3.0Ahrを超える容量を達成した。
【0058】
別の局面では、イオン伝導性ポリマーを含む、特別に調製されたコーティングによるEMD粒子のカプセル化が記載される。このようなEMD粒子のカプセル化は、低活性又は不活性相の形成を導く副反応を抑制し、一次電池における酸化マンガンの第2の電子容量へのアクセスを可能にすることができる。
【0059】
別の局面では、本発明は、他の電気活性材料の性能を改善するために使用され得る二次電池のための同様のアプローチを記載する。本明細書で使用されるように、電気活性材料は、カソード又はアノードの両方で使用される電気化学的に活性な材料を含む。
【0060】
コーティングは、以下のような機能性を提供するように調製され得る:
所望のイオンがコーティングを横切って電気活性材料に/からバルク電極から/に移動するためのイオン伝導性を提供する;
コーティングを横切って電気活性材料に/からバルク電極から/に移動するための電子輸送を提供する;
電気活性材料をバルク電極から隔離することによって、目的のシステムにおける化学的
及び電気化学的安定性を維持する;
充電/放電中に電気活性粒子との接着を維持しながら、高レベルの歪み下で亀裂を生じないように柔軟であることを含む機械的安定性を提供する;
望ましくない副反応の過電圧を増大させる;
輸送されたイオンのためのイオン的及び電気的遷移層を提供する;並びに
コーティングが望ましくない生成物及び溶媒に対して非透過性であるので、バルク電極に対して分離を提供する。
【0061】
各々がその電気活性材料を有する特定の各化学は、コーティング及びイオン伝導性ポリマーの特性を調整し、適切な電子伝導剤及びバインダーを選択し、成分の比、及びコーティングの厚さを最適化することによって、適応させ得る。
【0062】
図5は、イオン伝導性ポリマー、導電剤及びバインダーの混合物でコーティングされた電気活性材料粒子の代表的な破断図を示す。完全には示されないが、電気活性材料粒子は、粒子表面からコーティング混合物の外面まで延びる厚さを有する混合物によってコーティングされた外面を有する。コーティングは、電気活性粒子とコーティングとの間のポリマー電解質界面、及び電気活性材料とバルク電解質(図示せず)との間のバリア層を作り出す。
【0063】
コーティングが適用された後、コーティングされた電気活性材料を使用して、従来の製造方法及び装置を利用して電極を製造することができる。次に、電極を使用して、従来の技術を用いてセルを構築することができる。
【0064】
種々の態では、このコーティングは、再充電可能なアルカリ系のためのZn、MnO2及びAl粒子、Liイオン電池のためのLCO粒子、並びにリチウム金属電池のためのリチウム金属に適用される。
【0065】
記載されたコーティングは、固体電池及び液体又は非固体電解質を有する電池の両方において有用であり得る。非固体電解質を有する電池では、コーティングは、水性又は非水性電解質の両方から電気活性材料を分離するのに有用である。コーティングの外面は、バルク電解質との第2の界面を形成し、この界面は、一局面では、コーティング配合物と同様又は同じであり得る。コーティング配合物がバルク電解質とは異なる場合、電子及び移動イオンは第2の界面を通って流れ、一方、コーティングは、電気活性材料からバルク電解質への特定のイオン又は分子の流れを防止することができる。
【0066】
電気活性材料は、ほとんどの場合、均一又は不均一な形状の粒子の形態である。大きい表面積の利益は、より低い粒子サイズを必要とする傾向があるが、他の理由による充填最適化のためのサイズの変動も、エネルギー密度も望まれるので一般的である。
【0067】
コーティングは、バルク電解質からの保護及び分離を提供し、バルク電解質及び電気活性粒子からバルク電解質への、又はバルク電解質中へのイオン及び分子の流れを制限することができる。コーティングされると、粒子の表面はもはやバルク電解質との表面反応に関与することができない。保護は、反応生成物がバルク電解質に移動しないようにすることによって提供され、バルク電解質は、次いで、セルの容量を制限するやり方で反応することができ、例えば、他の電気活性材料又はバルク電解質と反応する。従って、このような表面反応又は反応生成物の傾向は、コーティングが改善されたセル性能を提供する可能性を予測する場合がある。
【0068】
記載されるように、本発明を用いて、いずれの電気活性材料もコーティングすることができる。コーティングは、微粒子形状、平面形状、及び他の形状の電気活性材料に適用す
ることができる。以下の実施例は、コーティングの有用性を例示し、本発明を使用する方法を詳述する。しかしながら、本発明は、実施例に詳述される材料及び方法に限定されない。
【0069】
水性電解質において、アノード電気活性材料は、多くの場合、金属、例えば亜鉛及びアルミニウムである。亜鉛合金化は、金属と水性電解質の腐蝕反応を最小限に抑える手段として、当業者によって十分に文書化され理解されている。一局面では、アルミニウムも合金化される。特定の元素でアルミニウムを合金化すると、表面が活性化する。合金化の目的は、不動態層を破壊することによって酸化に対する過電圧を減少させることと、表面の水の還元に対する過電圧を増加させることの両方である。有効であることが見出された合金元素は、それらの純粋な状態での水素発生のための乏しい触媒表面であることが知られているものである。それらは、アルミニウムよりも高い貴度を有し、アルミニウム中で低い溶解度を有し、例えば、ガリウム、インジウム、スズ、亜鉛、ビスマス、マンガン及び鉛である。これらの合金元素は、固溶体形態で存在する場合にのみ有効であり、さもなければ、それらは、第2相粒子として沈殿する傾向があり、局所化されたガルバニセルとして作用する。これらの合金元素は、アルミニウム中で非常に小さい~ゼロの溶解度を有するが、固溶体は、溶融の後に急冷する等の方法によって作り出すことができ、急速凝固及びボールミル粉砕等の非平衡技術は、アルミニウム中のこれらの元素の溶解度限界を広範囲に増大させることができる。
【0070】
コーティングは、カーボンブラック成分、天然グラファイト成分、合成グラファイト成分、グラフェン成分、導電性ポリマー成分、金属粒子成分、及び/又は他の同様の導電性添加剤等の導電性添加剤成分を含むことができる。導電性添加剤は、コーティングを通した導電ネットワークを提供する。
【0071】
別の局面では、本発明は、電気活性粒子のためのイオン伝導性コーティング組成物を特徴とする。
【0072】
ポリマー成分及び他のコーティング成分の粒子サイズは、一貫した薄いコーティングにとって重要である。一般に、小さい粒子サイズ、例えばコーティングの50%未満が望ましく、10ミクロン未満の粒子が好ましい。
【0073】
バインダー成分は、以下の実施例において詳述されるが、そこに詳述される種又は硬化方法に限定されない。バインダーは、特定のセル内で化学的に不活性である必要があり、硬化工程の有無にかかわらず密着を提供するように作用することができる。電池産業において典型的に使用され、当業者に既知の多くのそのようなバインダーが存在する。
【0074】
記載されるように、いずれの電気活性材料もコーティングされる場合があり、以下の実施例は、コーティングの有用性としての例示を提供し、本発明の使用方法を詳述する。しかしながら、本発明は、実施例に詳述される材料及び方法に限定されない。
【0075】
実施例9:Znコーティング
イオン伝導性ポリマー、電子伝導性添加剤、及び結合剤の機械的混合工程、並びに硬化工程を含むプロセス(1)を用いて、Everzincからの100ミクロン未満の粒子サイズを有する合金化亜鉛粉末をコーティングした。40gの量の亜鉛粉末を、1.0gのナノサイズ(1ミクロン未満)のIMポリマー、0.7gの導電性添加剤、及び0.3gの結合剤と乾式混合した。次いで、この混合物を炉に入れ、100℃を超えるが400℃未満の温度まで1時間加熱した後、炉から取り出した。得られた粉末をXPSで分析した。
図6のコーティングされていない材料スペクトルとコーティングされた材料スペクトルとを比較すると、Znシグナルが著しく減少し、イオン伝導性ポリマーに関連する強い
シグナルに置き換えられていることが分かる。XPS侵入深さは10nmに制限されるので、Znシグナルの完全な消失は、少なくとも10nmの厚さであるポリマー層での完全な被覆を示すであろう。しかしながら、小さなZnピークがまだ見えており、Zn表面の100%が被覆されてるわけではないこと、得られたコーティングが厚さ10nm未満であること、又はZnイオンがコーティング層に拡散していることを示唆している。コーティングされたサンプル中のZnピーク高さとコーティングされていない材料のZnピーク高さとの比較は、少なくとも90%のZn被覆率を示唆する。
【0076】
実施例10:
実施例9のコーティングされたZn粉末を使用して、チタン箔上へのスラリーキャスティング技術を用いて、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)溶液中のPVDFをバインダーとして、Znアノードを作製した。受け取ったままの純Zn粉末を用いて、同じ方法で対照Znアノードを調製した。
【0077】
2032コインセルを、一般的なタイプの二酸化マンガン(「MnO
2」)カソードを有する、上記の2タイプの亜鉛アノードを使用して構築した。カソードも、MnO
2、導電性炭素添加剤、及び結合剤としてのPVDFを含むスラリーキャスティング技術によって調製した。コインセルは、全て1.7Vに充電され、0.8Vに放電された。コーティングされていないZnアノード及び本発明によるコーティングされたアノードのサイクル寿命を
図7に示す。コーティングされたZnによる容量フェードの減少は明らかである。
【0078】
実施例11:アルミニウムコーティング
Phoenix Scientific Industriesからのアルミニウム合金粉末(Mg、Sn、In及びGaと合金化され、38ミクロン未満の粒子サイズを有する)を、最初にイオン伝導性ポリマー、電子伝導性添加剤、及び結合剤と混合し、次いでコーティングを硬化させることによってコーティングした。具体的には、40gのアルミニウム合金粉末を、1.0gのナノサイズのIMポリマー、0.7gの導電性添加剤、及び0.3gの結合剤と乾式混合した。次いで、この混合物を炉に入れ、100℃以上を超えるが400℃未満の温度まで1時間加熱した後、炉から取り出した。
【0079】
コーティングされた材料のXPSスペクトルを
図8に示す。コーティングの効果は、Znについて前述したものと同様であり、Alピーク高さは減少し、コーティングに関連するピークと置き換えられている。コーティングされた材料とコーティングされていない材料とのAlピーク高さの比較は、少なくとも90%の表面被覆率を確認する。
【0080】
実施例12:
実施例10に記載した手順と同様に、実施例11のコーティングされたAl粉末を使用して、NMP溶液中のPVDFをバインダーとして、チタン箔上のスラリーキャスティング技術を用いてAlアノードを作製した。対照Alアノードを、コーティングされていないAl粉末を使用して、同じ方法で調製した。上記の2タイプのAlアノードを使用して2032コインセルを構築した。アノード分極走査用の対抗及び参照電極としてZn箔を使用した。走査速度は、1mV/sであった。
【0081】
アルミニウムは、アルカリ溶液中で非常に負の熱力学的電極電位を示す筈である。しかしながら、実際には、アルミニウムの開回路電位は、自己腐食のため予想よりも正である。抑制されていない電解質中の純粋なアルミニウムは、その表面が受動水酸化物層によって覆われ、高い過電圧を生じさせるので、電極として使用するのに適していない。加えて、優先的な部位では水が減少するため、アルミニウムは高い腐食電流を有する。コーティングされていない及びコーティングされた合金化アルミニウムの動電位曲線を
図9に示す。また、参考を目的として純亜鉛の曲線を示す。開回路電位(Ecorr)は、参照電極
(飽和カロメル電極)に対して表示される。コーティングされたアルミニウム粉末は、最も高い耐食性を示し、亜鉛よりもほぼ0.9ボルト負である。コーティングの寄与は、デルタEcorr矢印によって示され、0.35ボルトを超える。
【0082】
二次カソード電極活性コーティング:
この実施例では、水性電解質と反応することができ、従って非常に限定された電気化学的容量を有する、準安定電気活性材料を詳述する。
【0083】
実施例13:
無水固体β-MnOOH粉末を乾燥オゾン/酸素ガス混合物で酸化することにより、新規な合成酸化マンガン材料ι-MnO2を合成した。反応は、室温及び標準圧力で行った。2モル当量のオゾンを反応容器に通した後、粉末は金属褐色から鈍い灰色に変色した。
【0084】
オゾン酸化の機構は、直接相互作用を含むか、又はラジカル酸素中間体を介して進行し得る。後者のケースでは、オゾンの代わりに、ラジカル酸素種を含む又は生成する他のガス(酸素プラズマ、・OH、ガス状過酸化物種等)を使用することができる。
【0085】
Mn(III)のMn(IV)への酸化は、硫酸第一鉄での滴定によって確認され、4.0の平均酸化状態を示した。i-酸化マンガンを、イオン伝導性ポリマー(実施例1の)、導電性炭素、及びバインダー材料からなるインク又はコーティングと徹底的に混合することによって、コーティングされた材料を調製した。この混合物を硬化させた後、導電性グラファイトを添加した。グラファイト添加後、材料を完全に乾燥させた。少量の液体水酸化カリウム溶液電解質を乾燥材料に添加して混合物を湿潤させ、湿潤混合物を圧縮し、顆粒化してカソード顆粒を製造した。
【0086】
実施例14:
カソードは、調製された実施例13の顆粒を導電性炭素粉末と混合し、バインダー(PVDF又はKynar PVDF、溶媒としてDMA又はNMPを含む)を所望の割合で混合し、導電性(例えば、コレクター対カソード抵抗を低減するためにグラファイトプライマーの薄層を有する金属、チタン又はステンレス鋼)集電体上にスラリーキャストすることによって作製した。次いで、カソードを80~120℃で2~12時間乾燥させ、カレンダー加工し、コインセルに望ましい寸法に切断した。
【0087】
標準的なCR2032コインセルは、上記のカソードを使用して作製した。対極は、亜鉛粉末(超純粋粉末又は合金粉末)を固体イオン伝導性ポリマー(以下、「亜鉛アノード」)、導電性炭素、及びPVDFバインダーと混合することによって、カソードと同様の方法で調製された亜鉛アノードを含んでいた。不織NKKセパレーターを使用した。電解質は、25重量%~45重量%のKOH溶液又は0.1M硫酸マンガンを含有する2M硫酸亜鉛電解質であった。
【0088】
対照セルは、固体イオン伝導性ポリマーを含まないカソードを用いて構築した。3mA(1.7mA/cm
2電流密度)で、1.9V~0.8Vの間又は0.2Vで、定電流充放電を用いてセルをサイクルさせた。以下の
図10に示す放電曲線は、対照セル(固体イオン伝導性ポリマーなし)についての非常に低い比容量を示し、一方、実施例12の電池は、450mAh/g(0.2Vまで)を供給した。3.65Vの酸化状態を考慮すると、これは、第2の電子のほぼ完全な利用を意味する。コーティングの安定化効果は、高溶解性ι-MnO
2の溶解を妨げることに帰することができる。ポリマーコーティングは、表面エネルギーを低下させ、準安定ι-MnO
2を安定化させるのに役立つと本発明者らは考える。
【0089】
コバルト酸リチウム(LiCoO2又は「LCO」)コーティング:
LCOは、Liイオン電池に一般的に使用されているカソード材料である。伝統的に、LCOは、Liに対して4.2~4.3Vに充電され、モル当たり0.5電子を可逆的に供給することができる。LCOをより高い電位に充電することにより、比容量が0.5e/モルを超えて改善される場合がある。しかしながら、これは、不可逆的容量損失を増加させ、セルサイクル寿命に悪影響を及ぼす。
【0090】
PPS及びクロラニル粉末を、4.2:1のモル比(ベースポリマーモノマー対ドーパント比が1:1を超える)で混合する。次いで、この混合物をアルゴン又は空気中、高温(350℃まで)で大気圧で24時間加熱する。色の変化が観察され、ポリマー-ドーパント反応混合物中の電荷移動錯体の生成が確認される。次いで、反応混合物を1~40マイクロメートルの小さい平均粒子サイズに再粉砕する。次いで、LiTFSIを反応混合物と混合して、合成された固体イオン伝導性ポリマー材料を作製する。示差走査熱量測定(ASTM D7426(2013)に記載されている「DSC」方法)により、ガラス状態は、材料融解温度未満の温度領域から少なくとも室温まで広がり、イオン伝導率は1×10-4S/cmを超えることが見出された。
【0091】
最初にポリマー-炭素インクを調製し、次いでLCO粒子を前記インクでコーティングすることによって、UmicoreからのLCOをコーティングした。インクを調製するために、既知の量のナノサイズの固体イオン伝導性ポリマーと水を合わせ、固形分が7~20重量%となるようにした。この混合物に、様々な比の既知の量の炭素導電性添加剤(グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ)を、高剪断混合法を用いて組み込んだ。高剪断混合プロセスの間に、結合剤を添加し、関連する硬化剤を含む場合がある。得られた材料は、ポリマーコーティングされたLCO(PC LCO)と称される場合がある。
【0092】
方法1:
14.3gの量のポリマー-炭素インク及び14.4gの量の脱イオン水を自転公転ミキサーに添加した。同じ撹拌機に100.00gのLCO(Umicore)を添加した。この材料を自転公転ミキサーで2000rpmで5分間混合した。次いで、この材料を70~90℃のオーブンに入れ、一晩乾燥させた。乾燥後、PC LCOを80メッシュのステンレス鋼ふるいに通した。
【0093】
方法2:
KG-5ミキサー(Key International,Inc.)を使用して、ポリマー-炭素インクをLCO表面上に噴霧した。300.0gの量のLCO(Umicore)を1リットルの混合ボウルに添加した。混合ボウルを密封し、一次インペラーを作動させて混合を開始した。液体注入口を使用して、43gのポリマー-炭素インクを中に噴霧した。全てのコーティングインクが注入された後、二次高速チョッパーを作動させて、混合物を粉砕し、粒状化した。所望の顆粒サイズが得られた後、混合物をボウルから取り出し、70~90℃のオーブン内で乾燥させて、一晩乾燥させた。乾燥後、PC LCOを80メッシュのステンレス鋼ふるいに通した。この実験におけるPC LCOは、乾燥前に約12重量%のコーティングを含んでいた。
【0094】
電極コーティング、セル製造及び評価:
PC LCOを、自転公転方式ミキサー(Thinky ARE-310)内で、カーボンブラック、ポリビニリデンジフロリド(PVdF)バインダー、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、及び固体電解質粉末と混合して、カソードスラリーを作製した。あるいは、PC LCOは、オーバーヘッド型ミキサー、真空遊星ミキサー、又は同様物内で混合されてもよい。
【0095】
カソードスラリーを、ドローダウンブレード(ドクタブレード)コーターを使用して、電池等級のアルミニウム合金箔(1060 H18、Targray)上にキャストし、次いで対流オーブン内で110℃で4時間乾燥させて、PC LCOカソード複合材料を形成した。PC LCOカソード複合材料を約1mAh/cm2面積負荷までコーティングした。あるいは、カソードスラリーは、例えば、接触(逆コンマ、スロット染料、押出)又は非接触(空気圧噴霧、エレクトロスプレー)技術によって、対流、IR、真空オーブン等による補充(complimentary)乾燥を用いて、ロールツーロール構成でバッチ式又は連続的にコーティングすることができる。
【0096】
対照カソード複合材料を、PC LCO複合材料カソードに関して上述したものと同じ方法で、電池等級のアルミニウム合金箔(1060 H18、Targray)上にコーティングした。対照カソード複合材料は、PC LCOを含まなかったが、代わりに、IMポリマーコーティング材料の効果を比較するために、IMPC LCOと同じ製造業者ロットからのLCOを含んでいた。
【0097】
PC LCOカソード複合材料と対照カソード複合材料を使用してセルを組み立てた。セルは、4ミルのマイラーエンベロープ内のスタックで構成されていた。アルミニウム合金箔上のカソード複合材料と銅箔(Honjo)上にコーティング及び圧延した20um厚のリチウム金属の円形パンチを用いて、IM独自のポリマー電解質セパレーターを挟んだ。ポリマー電解質セパレーターは、リチウム金属がセパレーターの片側に隣接し、カソード複合材料がリチウム金属の反対側においてセパレーターに隣接してサブアセンブリを作製するように挟まれた。サブアセンブリを更に0.5mm厚の円形ステンレス鋼パンチで挟み、それにより1つのステンレス鋼パンチをカソード複合材料のアルミニウム合金箔に接触させ、もう1つのステンレス鋼パンチをリチウム金属の銅箔に接触させてスタックを形成した。各ステンレス鋼パンチを金属タブに溶接して、マイラーエンベロープの外側に配置されたリードからスタックへの接触を可能にした。マイラーエンベロープ内にスタックを配置した後、熱を用いて1気圧下でマイラーエンベロープ内にスタックを密閉した。各金属タブの一部は、同じ場所に配置され、各金属タブとマイラーエンベロープのシールとの交点を越えて延在するヒールシーリングテープのストリップによって封入されて、気密及び液密シールを確実にした。溶接された金属タブは、セルの内部と外部との間を通り抜け(negotiate)、スタックへの電気の流れを可能にするように配置された。
【0098】
上記の方法で製造されたセルを、制御可能な定電流負荷及び電圧プローブを含む電池テスター(LANDT)に接続した。各セルをC/20の電流(セルを155mAh/gの活性材料の容量まで20時間で充電するのに必要な推定電流)下で3回充電及び放電しながら、印加された電圧及び電流をモニターした。セルを開回路電圧から高電圧限界まで充電し、次いで、第1のサイクルの間、低電圧限界まで放電した。第2及び第3のサイクルの間、セルを高電圧限界と低電圧限界の間でサイクルした。裸のLCO活性材料を含むセルを、4.4Vの高電圧限度を有する第一のロットと、4.3Vの高電圧を有する第二のロットの2つのロットにグループ分けした。第1ロットと第2ロットの両方は、3Vの低電圧限界を有していた。IMPC LCO活性材料を含むセルは、3Vの低電圧限界と4.4Vの高電圧限界を有していた。3サイクルから、初期性能測定基準を決定した(以下の
図6に要約)。
【0099】
図11を参照すると、4.4Vの高電圧限界を有する裸のLCOを含むセルは、3.0Vの低電圧限界を有する裸のLCOを含むセルよりも、より低い第1サイクルクーロン効率(第1のサイクル効率)及びより低い放電容量を有することが見出された。いくつかの例では、これは、4.4Vの高電圧限界を有する裸の(コーティングされていない)LC
Oを含むセルが劣化(即ち、望ましくない寄生電気化学反応)を受けたことを示す。対照的に、PC LCOを含むセルは、4.4Vの高電圧限界を有する裸のLCOを含むセルと比較して、増加した放電容量及び第1サイクルクーロン効率を示した。
【0100】
実施例15:
この実施例では、リチウム金属の平面シートをコーティングした。コーティングされたリチウム金属は、自立型で、金属集電体上に予め積層されているか、又は処理された銅上にあり、ゼロリチウム集電体(予め充電されたアノードのための)を生じた。コーティングは、バインダー、室温で10
-5S/cmを超えるイオン伝導率を有し、10μm未満の粒子サイズを有する固体ポリマー電解質粉末から構成された。イオン伝導性粒子の粒子サイズ分布は、
図12(a)の表に詳述されている。コーティングはまた、機械的又は電気化学的特性を改変するための塩又は添加剤を含むことができ、100ミクロン未満の厚さを有する。以下の成分を混合して均一なスラリーを形成した:固体ポリマー電解質80%を有するPVDF(バインダー)20%を、60%の目標固形分でNMP中で調製した。リチウム金属箔(8ミクロンCu上で20ミクロン)を、ドクタブレードを使用してコーティングし、次いで、真空下、室温で24時間乾燥させた。NMPを使用したが、溶媒は限定されず、リチウム金属との適合性のために他の溶媒を選択することができる。コーティングは、ドクタブレード、スロットダイ、又は他の同様のコーティング方法によって行うことができる。このようにして、調整された構造的及び化学的機能を有する多層コーティングを、リチウム電極をコーティングすることによって調製することができる。
【0101】
図12(b)に示される銅箔上に調製された乾燥コーティングの表面形態及び粗さは、比較的完全で、一貫し、滑らかなコーティングを示す。
【0102】
図12(c)(c)及び
図12(d)の各々に示される、銅箔上に調製したコーティングのトップダウン及び断面走査型電子顕微鏡写真は、厚さが一定であり、滑らかな上面を有する完全なコーティングを示す。
【0103】
実施例16:
固体電池(各構成の2つの電池)を、NCM811カソード及びイオン伝導性ポリマー電解質から作製されたセパレーター(及びカソード液)と共に、コーティングされたリチウム金属アノード及びコーティングされていないリチウム金属アノードの両方を使用して構築した。
図13(a)はインピーダンス曲線を示し、
図13(b)は、放電容量(サイクル当たり)、サイクル数、及びクーロン(columbic)効率(CE%)を示すセル性能プロットを示す。コーティングされたセルのインピーダンスは影響を受けるようであるが、クーロン(columbic)効率は影響を受けない。サイクル13の後に故障するコーティングされたセルとは異なり、コーティングされたセルは、サイクル22を超えてサイクルを継続する。
【0104】
実施例17:
室温実験を行って、コーティングの基本的な特性を決定した。コーティングの電子伝導率をDC測定を用いて測定した。コーティングのペレット(本明細書に記載される様々な実験において作製された)を、遮断電極の間に配置し、1×10-3~3×10-2S/cmであると決定した。コーティングのイオン伝導率も、電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定を用いて測定した。コーティングのペレット(本明細書に記載される様々な実験において作製される)を、遮断電極の間に配置し、交流インピーダンス測定を用いて、4×10-3~9×10-2S/cmであると決定した。
【0105】
ヒドロキシルイオン(OH-)拡散率は、コーティングの膜を作製し、それを水酸化カリウムを含む2つの区画の間に置くことによって測定した。膜で分離された2区画セルに
おけるpHモニタリングは、2×10-10~2×10-9m2/sの拡散率を示した。2区画実験から、対応するモル限界伝導率(molar limiting conductivity)を0.001~0.05Sm2/molで計算し、5M[OH-]での各々の伝導率は0.05~0.3S/cmである。
【0106】
本発明を特定の好ましい態様に従って本明細書に詳細に説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、当業者によって修正及び変更が影響を受ける場合がある。従って、本発明は本明細書に示される態様を説明する詳細及び手段によってではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【0107】
本発明の概念から逸脱することなく、組成物、物品、装置、システム、及び方法に対して変形及び修正を行うことができ、更に、そのような概念は、特許請求の範囲がそれらの言語により特に明らかに述べない限り、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図されることを理解するべきである。
【0108】
本発明の趣旨及び本質的な特徴から逸脱することなく、本発明の広範囲の更なる態様が可能である。本明細書で論じられる態様は、全ての局面において単に例示的であり、限定的ではないと考えるべきである。以下の特許請求の範囲は、前述の説明ではなく、本発明の範囲を示す。
【国際調査報告】