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  • 特表-ピリチオンを含むヘアケア組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ピリチオンを含むヘアケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20220215BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 8/58 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/12
A61K8/58
A61K8/02
A61K8/49
A61K8/81
A61K8/84
A61K8/73
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535079
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019082627
(87)【国際公開番号】W WO2020126356
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/122794
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】19154998.9
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオチャン
(72)【発明者】
【氏名】パン,シャオユン
(72)【発明者】
【氏名】タン,シュエジー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB332
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC851
4C083AC931
4C083AC932
4C083AD071
4C083AD091
4C083AD131
4C083AD241
4C083AD321
4C083AD322
4C083BB34
4C083BB46
4C083BB51
4C083CC31
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE07
4C083EE23
(57)【要約】
感光性フケ防止剤と、融点が30℃~105℃である有機UVフィルターとを含む複合粒子において、上記複合粒子が、1000Da~10000000Daの重量平均分子量を有するカチオン性ポリマーを含むことを特徴とする複合粒子が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性フケ防止剤と、融点が30℃~105℃である有機UVフィルターとを含む複合粒子であって、
前記複合粒子が、1000Da~10000000Daの重量平均分子量を有するカチオン性ポリマーを含むことを特徴とする、複合粒子。
【請求項2】
前記感光性フケ防止剤が、本質的に微粒子である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記粒子が、70~90重量%の感光性フケ防止剤と、0.2~5重量%の有機UVフィルターと、1~10重量%のカチオン性ポリマーとを含む、請求項1または2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記粒子中の前記フケ防止剤の平均量と前記有機UVフィルターの平均量との比が、1:0.01~1:1000重量部である、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合粒子。
【請求項5】
前記粒子中の前記フケ防止剤の平均量と前記有機ポリマーの平均量との比が、1:0.01~1:1000重量部である、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合粒子。
【請求項6】
前記フケ防止剤がピリチオン亜鉛である、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合粒子。
【請求項7】
前記融点が少なくとも50℃である、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合粒子。
【請求項8】
前記有機UVフィルターが、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、アントラニル酸メンチル、4-メチルベンジリデンカンファー、ベンゾフェノン-7、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-10またはベンゾフェノン-12のうちの少なくとも1つである、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合粒子。
【請求項9】
前記有機UVフィルターが、UVAおよびUVB放射線を吸収する広域スペクトル(broad-spectrum)日焼け止め剤である、請求項7に記載の複合粒子。
【請求項10】
前記カチオン性ポリマーのゼータ電位が+10~+100mVである、請求項1から9のいずれか一項に記載の複合粒子。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリアミン、ポリビニルピロリドン、ポリリジン、プロタミン、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートホモポリマーおよびコポリマー、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムハライドホモポリマーおよびコポリマー、ジアルキルジアリルアンモニウムハライドホモポリマーおよびコポリマー、キトサンもしくは誘導体化キトサン、トリメチルアンモニウム置換エポキシドを含むセルロースもしくはその誘導体、デンプンヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハライド、ポリエチレンイミン、またはジ四級アンモニウム反復単位もしくはポリ四級アンモニウム反復単位を含む重縮合物のうちの1つ以上である、請求項10に記載の複合粒子。
【請求項12】
請求項1に記載の複合粒子を調製する方法であって、
前記有機UVフィルターおよび前記感光性フケ防止剤を含む水性スラリーを加熱および撹拌する工程の後、
前記スラリーに前記カチオン性ポリマーを加え、前記スラリーを30~100℃で5~60分間さらに加熱する工程
を含む方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の複合粒子を含むヘアケア組成物。
【請求項14】
前記複合粒子の量が0.5~15重量%である、請求項13に記載のヘアケア組成物。
【請求項15】
シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム、ヘアジェルまたはヘアオイルである、請求項14に記載のヘアケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアケア組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、ピリチオン亜鉛などのピリチオンを含むヘアケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリチオン亜鉛(ZPTまたはZPTO)は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して活性な抗微生物剤である。ピリチオン亜鉛(ZPTまたはZPTO)はまた、真菌および酵母に対しても作用する。これは抗微生物クレンジング組成物に広く使用されており、最も一般的な使用はフケ防止(AD)シャンプーである。一般に、ZPTOの分散粒子は、界面活性剤、水、シリコーン、ポリマーならびに着色成分および香料成分を含むシャンプーの基剤組成物中に懸濁される。使用者が組成物を毛髪および頭皮に塗布すると、ZPTOの一部の粒子がその上に堆積する。
【0003】
堆積が多いほど生物学的利用能が高いことを意味するため、フケ防止シャンプーまたはコンディショナーの効果は、頭皮および毛髪に堆積したフケ防止剤の量に依存する。通常、塗布時の接触時間は、製品を洗い流す前の10~120秒など非常に短いため、活性物質は堆積する時間があまりない。したがって、その堆積を最大限にすること、すなわち、利用可能な限られた時間内に可能な限り多くの活性物質を堆積させることが望ましい。ただし、クレンジング組成物またはウォッシュオフ組成物を介した活性物質の堆積は、粒子が堆積せず洗い流される傾向があるため、技術的問題を呈する。活性物質の量を増加させることは可能な解決策であるが、この解決策は技術的に理にかなってもおらず、経済的に実行可能でもない。さらに、堆積されるZPTOはいずれも、ZPTOがその不安定化をもたらすUV放射線と反応する傾向があるため、生物学的に利用可能ではない。この不安定化は、UV光安定剤または日焼け止め剤を使用することによってある程度回避することができる。
【0004】
ZPTを「ブースター」技術と組み合わせることによって、ZPTの抗微生物効果を高める努力も払われている。亜鉛を含有する特定の塩は、シャンプー組成物中のZPTOの効果を増進させることが見出されているが、それらの作用機序は完全には理解されていない。
【0005】
ただし、追加の亜鉛化合物を含めると、希釈時のシャンプーの特定の特性、例えば、凝集挙動が損なわれる可能性がある。
【0006】
米国特許第20040213751号(2004、P&G)は、ピリチオンと、1つを超える増強因子を提供する亜鉛含有層状材料とを含む組成物を開示している。
【0007】
国際公開第14124066号(P&G)は、ピリチオンの堆積を改善するためのカチオン性ポリマーおよびアニオン性微粒子を含むヘアケア組成物を開示している。
【0008】
国際公開第03088965号(P&G)は、真核細胞に過剰の亜鉛を送達して細胞の代謝を阻害する方法を開示しており、この方法は、細胞膜を横切って亜鉛イオンを送達することができる亜鉛イオノフォア材料を用いて細胞を処理することを含み、亜鉛イオノフォア材料は亜鉛含有材料と組み合わせられており、さらに、細胞内亜鉛レベルは、亜鉛イオノフォア材料の非存在下で生じるよりも1.5倍上昇する。
【0009】
米国特許第5227156号(Amway Corp)は、チアゾリノン防腐剤およびピリチオンを含有するフケ防止シャンプーを開示している。防腐剤の活性は、亜鉛化合物を含む安定剤を加えることによって維持される。
【0010】
国際公開第2018197118号(Unilever)は、0.01~3重量%のピリチオン亜鉛と、1~5重量%のアミノ酸と、0.1~5重量%の追加の亜鉛化合物とを含むヘアケア組成物を開示している。アミノ酸と選択的亜鉛化合物との特定の組合せは、ZPTOの光酸化および解離を阻害し、その安定化をさらに高める。
【0011】
国際公開第2018172121号(Unilever)は、0.01~3重量%のピリチオン亜鉛と、有機UVフィルターと、0.1~5重量%の追加の亜鉛化合物とを含むヘアケア組成物であって、亜鉛化合物とピリチオン亜鉛との重量比が3:1超であるヘアケア組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第20040213751号
【特許文献2】国際公開第14124066号
【特許文献3】国際公開第03088965号
【特許文献4】米国特許第5227156号
【特許文献5】国際公開第2018197118号
【特許文献6】国際公開第2018172121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、ZPTOなどの感光性フケ防止剤の光安定性の問題を改善する新しい方法を決定した。本発明者らは、ZPTOと、有機UVフィルターと、1000Da~10000000Daの重量平均分子量を有するカチオン性ポリマーとを、本質的に微粒子である複合体に共製剤化すると、ZPTOの光安定性を改善することができることを決定した。粒子は、粉末状または粒状であってよいか、水性分散物の形態で存在してもよい。これまで、グアーガムおよびキトサンなどのカチオン性ポリマーは活性成分の送達および堆積のみと関連付けられていたが、本発明者らは、本発明による複合体では、ポリマーが感光性フケ防止活性物質の送達および堆積を確実にするだけでなく、感光性活性物質の光安定性も改善することを決定した。ZPTOは、UV放射線に持続的に曝露すると分解する傾向がある。ZPTOは分解すると、もはや有効ではない。
【0014】
この仮説は、亜鉛系感光性フケ防止剤であるZPTOを用いて検証されているが、本発明者らは、本発明の範囲が、微粒子である、すなわち、粒子の形態で存在するあらゆる感光性フケ防止剤に及ぶと考える。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、感光性微粒子フケ防止剤と、融点が30℃~100℃である有機UVフィルターとを含む複合粒子であって、上記複合粒子が、1000Da~10000000Daの重量平均分子量を有するカチオン性ポリマーを含むことを特徴とする複合粒子が開示される。
【0016】
好ましくは、感光性フケ防止剤は、亜鉛系微粒子フケ防止剤、特にピリチオン亜鉛である。
【0017】
第2の態様によれば、請求項1に記載の複合粒子を調製する方法であって、上記有機UVフィルターおよび上記感光性フケ防止剤を含む水性スラリーを加熱および撹拌する工程の後、上記スラリーに上記カチオン性ポリマーを加え、上記スラリーを30~100℃で5~60分間さらに加熱する工程を含む方法が開示される。
【0018】
別の態様によれば、第1の態様に記載の複合粒子を含むヘアケア組成物が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】調製直後のヘアケア(シャンプー)組成物中の、本発明による複合体のラマンスペクトルである。
図2】保存後のヘアケア(シャンプー)組成物中の、本発明による複合体のラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面の詳細な説明
図1は、調製直後のヘアケア(シャンプー)組成物中の、本発明による複合体のラマンスペクトルである。828cm-1のピークはZPTOに特徴的であり、1307cm-1のピークは、UVフィルターであるNeo Heliopan(登録商標)BBに特徴的なピークである。
【0021】
図2は、保存後のヘアケア(シャンプー)組成物中の、本発明による複合体のラマンスペクトルである。
【0022】
2つの図(スペクトル)の比較は、特徴的なピークが損なわれていないことを示しており、そこから、複合体だけでなくZPTOも、分解の実質的な証拠を伴わず、損なわれていないままであると推測することができる。
【0023】
疑義を避けるために、本発明の一態様の任意の特徴が、本発明の他の任意の態様において利用されてもよい。用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)または「から構成される(composed of)」を意味するものではない。言い換えれば、列挙された工程または選択肢は網羅的である必要はない。以下の説明に示される実施例は、本発明を明確にすることを意図しており、本発明をそれらの実施例自体に限定することを意図していないことに留意されたい。同様に、すべてのパーセンテージは、他に指示がない限り重量/重量%である。操作および比較実施例、または他に明示されている場合を除いて、材料の量または反応条件、材料および/または使用の物理的特性を示す本明細書および特許請求の範囲中のすべての数字が、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。「xからy」の形式で表される数値範囲は、xおよびyを含むと理解される。特定の特徴について複数の好ましい範囲が「xからy」の形式で記載されている場合、異なる端点を組み合わせるすべての範囲も企図されることが理解されよう。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」または「an」およびその対応する定冠詞「the」は、別段の指定がない限り、少なくとも1つ、または1つ以上を意味する。上記の個々の項で言及されている本発明の様々な特徴は、必要に応じて、他の項に準用される。したがって、ある項で指定された特徴は、必要に応じて、他の項で指定された特徴と組み合わせられ得る。項の任意の見出しは便宜のためにのみ追加されたものであり、本開示を限定することを決して意図するものではない。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ヘアケア組成物」とは、哺乳動物、特にヒトの毛髪または頭皮への局所塗布のための組成物を含むことを意味する。局所とは、組成物が身体の外面に塗布されることを意味する。本発明では、これは、組成物を毛髪または頭皮に塗布することによって達成される。そのような組成物は、一般に、リーブオンまたはリンスオフとして分類され得、頭皮および毛髪の外観、クレンジング、臭気制御または全体的な美観を改善するために塗布される任意の製品を含む。本発明のヘアケア組成物は、液体、ローション、クリーム、フォーム、スクラブ、ゲル、シャンプー、コンディショナー、シャワージェルまたはバーの形態であり得る。本発明のヘアケア組成物は、好ましくはリーブオン組成物である。あるいは、本発明のヘアケア組成物はウォッシュオフ組成物である。人体への摂取によって所望の利益を達成するための組成物は、本発明の範囲から除外される。
【0025】
複合粒子
本発明の複合粒子は、感光性フケ防止剤と、融点が30℃~100℃である有機UVフィルターとを含み、上記複合粒子が、1000Da~10000000Daの重量平均分子量を有するカチオン性ポリマーを含むことを特徴とする。
【0026】
感光性とは、薬剤が、放射エネルギー、特にUV光の影響下で、光分解、変色などを含む光化学反応を受けやすいことを意味する。これは、光安定性であるのとは対照的に、光の存在下では不安定である。
【0027】
さらに好ましくは、感光性フケ防止剤は微粒子であり、亜鉛系フケ防止剤である。さらに好ましくは、亜鉛系フケ防止剤はピリチオン亜鉛である。
【0028】
いくつかのフケ防止ヘアケア製品は、ピリチオン亜鉛(微粒子剤であるZPTO)のような亜鉛系フケ防止剤を含有する。溶解したインタクトなZPTO分子が、ZPTOの唯一の生物活性形態であることが見出されている。ZPTOのような亜鉛系フケ防止剤を含むヘアケア製品が利用される場合、ZPTOは解離し、光酸化を受け、それにより、亜鉛の塩の形成に起因して、生物活性物質の安定性が影響を受け、フケ防止効果が低下する。
【0029】
好ましくは、亜鉛系微粒子フケ防止剤はピリチオン亜鉛である。
【0030】
ピリチオン亜鉛は、ヘアケア用組成物に使用するのに適した任意の粒子形態を有し得る。例えば、ピリチオン亜鉛は、ある範囲の粒径を有する非晶質または結晶性粒子の形態であってよい。ピリチオン亜鉛は、例えば、粒子の少なくとも約90%が最大100ミクロン、さらに好ましくは最大50ミクロン、さらになお好ましくは最大10ミクロン、最も好ましくは5ミクロン以下のサイズを有するサイズ分布を有する粒子の形態であってよい。
【0031】
本発明の組成物中の亜鉛系フケ防止剤の量は、ヘアケア組成物の種類、および使用されるフケ防止剤の正確な性質に依存する。粒子は、70~90重量%の上記感光性フケ防止剤と、0.2~10重量%の上記有機UVフィルターと、2~10重量%の上記カチオン性ポリマーとを含むことが好ましい。
【0032】
本発明の複合体はまた、融点が30℃~105℃である有機UVフィルターを含む。好ましくは、融点は少なくとも50℃、さらに好ましくは50℃~100℃である。
【0033】
融点とは、純粋な物質の固体形態および液体形態が平衡状態で存在することができる温度を指す。
【0034】
有機UVフィルターは油溶性であることが好ましい。有機UVフィルターは水溶性でないことがさらに好ましい。
【0035】
好ましくは、有機UVフィルターは、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(ベンゾフェノン-3とも呼ばれる、CAS:131-57-7、MP 62~64℃)、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(CAS:131-53-3、MP 73~75℃)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(CAS:70356-09-1、MP 81~84℃)、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(Tinosorb S、CAS:187393-00-6、MP 83~85℃)、アントラニル酸メンチル(CAS:134-09-8、MP 62.5~63.5℃)、4-メチルベンジリデンカンファー(Enzacamene)(CAS:36861-47-9、MP 66~69℃)、ベンゾフェノン-7(5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン)(CAS:85-19-8、MP 96~98℃)、ベンゾフェノン-8(ジオキシベンゾン)(CAS:131-53-3、MP 68℃)、ベンゾフェノン-10(メキセノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチル-ベンゾフェノン、CAS:1641-17-4、MP 99~102℃)、ベンゾフェノン-12(オクタベンゾン)(CAS:1843-05-6、MP 47~49℃)のうちの少なくとも1つである。
【0036】
さらに好ましくは、有機UVフィルターは、UVAおよびUVB放射線を吸収する広域スペクトラム(broad-spectrum)日焼け止め剤である。
【0037】
有機UVフィルターの量は、複合体の0.01~3重量%、さらに好ましくは約0.01~1.5重量%(重量基準)、なお好ましくは組成物全体の0.05~1.5重量%(重量基準)であることが好ましい。言い換えれば、複合体の100gごとに、0.01~3重量%の有機UVフィルターを含むことなどが好ましい。粒子中の亜鉛系フケ防止剤の平均量と有機UVフィルターの平均量との比は、1:0.01~1:1000重量部であることが好ましい。上記粒子中の上記フケ防止剤の平均量と上記有機ポリマーの平均量との比は、1:0.01~1:1000重量部であることがさらに好ましい。
【0038】
カチオン性ポリマーという用語は、そのようなポリマーをアニオン性、すなわち、負に帯電したポリマーから、および非イオン性ポリマー、すなわち電荷を有しないポリマーから区別するために使用される。
【0039】
ゼータ電位とは、固体表面とその液体媒体との間の界面で発生する電荷である。ミリボルト単位で測定されるこの電位は、いくつかの機構のいずれかによって生じ得る。これらの中には、粒子表面におけるイオノゲン基の解離、および表面領域への溶液イオンの示差吸着がある。粒子表面の正味電荷は、近傍領域のイオン分布に影響を及ぼし、表面に近い対イオンの濃度を増加させる。これにより、粒子-液体界面の領域に電気二重層が形成される。したがって、ゼータ電位は、粒子の表面電荷、界面にある何らかの吸着層、ならびに周囲の懸濁媒体の性質および組成の関数である。これは実験的に決定することができ、粒子上の有効電荷を反映し、したがって粒子間の静電反発に関連するため、ゼータ電位は、コロイド安定性および凝集プロセスの実際の試験および制御に極めて重要であることが証明されている。その測定には、妥当な精度を有する様々な方法および装置が利用可能である。例えば、粒子のゼータ電位は、Malvern Nano ZS90装置を使用して、25℃で固形分50ppmおよびpH7のDI水中で測定される。
【0040】
カチオン性ポリマーのゼータ電位は、+10~+100mVであることが好ましい。ポリマーは、ポリアミン、ポリビニルピロリドン、ポリリジン、プロタミン、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートホモポリマーおよびコポリマー、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムハライドホモポリマーおよびコポリマー、ジアルキルジアリルアンモニウムハライドホモポリマーおよびコポリマー、キトサンもしくは誘導体化キトサン、トリメチルアンモニウム置換エポキシドを含むセルロースもしくはその誘導体、デンプンヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハライド、ポリエチレンイミン、またはジ四級アンモニウム反復単位もしくはポリ四級アンモニウム反復単位を含む重縮合物のうちの1つ以上であることがさらに好ましい。ポリマーはキトサンであることが特に好ましい。本発明に好適なキトサン塩は、キトサン成分およびアニオンを含む。好ましくは、アニオンは有機アニオンであり、さらに好ましくは、60超、さらに好ましくは80~2000、さらになお好ましくは80~500の分子量を有する有機アニオンである。好ましくは、キトサン塩は、キトサン-アミノ酸塩である。好ましくは、アミノ酸は、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、ロイシン、リジン、セリン、トレオニン、アルギニンまたはそれらの混合物を含み、さらに好ましくはアルギニンを含む。最も好ましくは、キトサン塩は、キトサン-アルギニン塩である。
【0041】
さらに好ましくは、カチオン性ポリマーの分子量は、30,000~1,000,000ダルトン、さらになお好ましくは70,000~600,000ダルトン、さらになお一層好ましくは150,000~400,000ダルトンの範囲である。好ましくは、キトサンの脱アセチル化度は、少なくとも65%、さらに好ましくは70~95%、さらになお好ましくは72~90%、最も好ましくは75~85%である。
【0042】
本発明の複合粒子は、ピリチオン亜鉛である感光性フケ防止剤、融点が30℃~105℃であり、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンである有機UVフィルターを含むことが特に好ましく、複合粒子が、1000Da~10000000Daの重量平均分子量を有するカチオン性ポリマーを含み、カチオン性ポリマーがキトサンであることを特徴とする。
【0043】
好ましくは、キトサンは、第一級アミノ基とプロトン化第一級アミノ基との合計量に対して、プロトン化第一級アミノ基を少なくとも5モル%、さらに好ましくは少なくとも10モル%含む。
【0044】
上記粒子の粒径は、0.1μm~1000μmであることが好ましい。小さな粒子の利点は、透き通って透明な製剤中で見分けることが困難であることである。サイズは、例えば、システム(Malvern Instruments Ltdから入手可能なMastersizer(商標)2000など)を使用するレーザー回折によって測定され得る。
【0045】
本発明の複合粒子は、2~70重量%の粒子を含有し得、残部が水である水性スラリーの形態である。あるいは、本発明の複合粒子は、上記のスラリーを乾燥させるか遠心分離することによって得られ得る粉末または乾燥粒子の形態である。
【0046】
複合粒子の調製方法
本発明の別の態様によれば、第1の態様の複合粒子を調製する方法であって、上記有機UVフィルターおよび上記感光性フケ防止剤を含む水性スラリーを加熱および撹拌する工程の後、上記スラリーに上記カチオン性ポリマーを加え、上記スラリーを30~100℃で5~60分間さらに加熱する工程を含む方法が開示される。
【0047】
ヘアケア組成物
本発明のさらなる態様によれば、第1の態様の複合粒子を含むヘアケア組成物が開示される。好ましくは、組成物は、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム、ヘアジェルまたはヘアオイルである。好ましくは、そのような組成物中の複合粒子の量は、組成物の0.5~15重量%である。
【0048】
フケ防止剤は、フケに対して活性であり、典型的には抗微生物剤、好ましくは抗真菌剤である化合物である。フケ防止剤は、典型的には、マラセチア(Malassezia)に対して約50mg/ml以下の最小阻害濃度を示す。
【0049】
本発明によるヘアケア組成物は、0.0.5~5重量%のフケ防止剤を含むことが好ましい。したがって、そのような組成物は、適切に計算された量の複合粒子を含む。
【0050】
複合粒子の形態で存在するフケ防止剤に加えて、本発明によるヘアケア組成物はまた、例えば、複合粒子の内部に含有されるものと同じであり得る遊離の追加のフケ防止剤を含んでもよい。存在する場合は常に、本発明のヘアケア組成物は、好ましくは0.0.5~5重量%の追加のフケ防止剤を含む。
【0051】
追加のフケ防止剤は、好ましくは、アゾール、Octopirox(登録商標)(ピロクトンオラミン)、硫化セレン、サリチル酸およびそれらの組合せから選択される。
【0052】
アゾールには、ケトコナゾールおよびクリンバゾール、好ましくはクリンバゾールが含まれる。
【0053】
本発明のヘアケア組成物は、亜鉛塩をさらに含み得る。追加の亜鉛塩は、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、酸化亜鉛、水酸化亜鉛またはそれらの混合物から好適に選択され得る。
【0054】
好ましい亜鉛塩の例には、酸化亜鉛、亜鉛ピロリドンカルボン酸、クエン酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛およびそれらの混合物が挙げられる。存在する場合、本発明のヘアケア組成物は、組成物の総重量に基づいて0.1~5重量%、好ましくは0.2~3重量%、さらに好ましくは0.25~2.5重量%の塩を含むことが好ましい。
【0055】
本発明のヘアケア組成物は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤およびそれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤を含む。使用され得る性質、種類、量および具体的な組合せは、組成物の配合に依存し、それがシャンプーまたはコンディショナーまたはコンディショニングシャンプーであるかどうかに大きく依存する。
【0056】
好ましくは、シャンプーの形態の本発明のヘアケア組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、アンモニウムラウリルエーテルスルフェート、ココイルイセチオン酸ナトリウムおよびラウリルエーテルカルボン酸、ココベタイン、コカミドプロピルベタイン、ココアンホ酢酸ナトリウムまたはそれらの混合物である界面活性剤を含む。
【0057】
好ましくは、本発明のヘアケア組成物は、界面活性剤を合計で1~50%、好ましくは2~40%、さらに好ましくは4~25%含む。
【0058】
本発明のヘアケア組成物は化粧品成分を含むことがさらに好ましい。好ましくは、化粧品成分は、シリコーン、フケ防止剤以外の抗細菌剤、起泡力増進剤、芳香剤、カプセル化剤(例えば、カプセル化香料)、染料、着色剤、顔料、防腐剤、増粘剤、タンパク質、リン酸エステル、緩衝剤、pH調整剤、真珠光沢剤(pearlescer)(例えば、雲母、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、エチレングリコールジステアレート(INCIグリコールジステアレート))および/または乳白剤、粘度改質剤、皮膚軟化剤、日焼け止め剤、乳化剤、感覚惹起活性物質(sensate active)(例えば、メントールおよびメントール誘導体)、ビタミン、鉱油、精油、脂質、天然活性物質、グリセリン、天然毛髪栄養素、例えば、植物抽出物、果実抽出物、糖誘導体およびアミノ酸、微結晶性セルロースならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
好ましくは、本発明のヘアケア組成物は、組成物全体(重量基準)に対して、0.01~20重量%の少なくとも1つの化粧品成分、さらに好ましくは0.05~10重量%、さらになお好ましくは0.075~7.5重量%、最も好ましくは0.1~5重量%の少なくとも1つの化粧品成分を含む。
【0060】
本発明のヘアケア組成物はまた、フケ防止活性物質(例えば、ピリチオン亜鉛)と組み合わせて使用された場合に相乗的な抗微生物上の利益を与えて、その特性を増強し、マラセジア・フルフール(Malassezia furfur)の増殖をさらに阻害する相乗的な抗微生物化合物を含み得る。これらの化合物の非限定的な例には、アルコール基を有する化合物(例えば、ホノキオール、マグノロールまたはペオノール)、ピペラジン、および天然植物抽出物中に見出されるフェノール化合物、すなわち、チモールおよびテルペニオール(terpeniol)が挙げられる。
【0061】
組成物は、ビタミンB3化合物をさらに含み得る。好ましいビタミンB3化合物はナイアシンアミドである。
【0062】
ナイアシンアミドは、ケラチノサイトからAMP(抗微生物タンパク質)を分泌することが知られている。このように分泌されたAMPは、例えば頭皮の免疫を改善する。したがって、ナイアシンアミドを使用することにより、フケ防止効果は、抗真菌活性だけでなく、ナイアシンアミドの使用を介して病原菌に対する頭皮自体の保護シールドを増進させることによっても増強され得る。この組合せは、病原菌に対する最大24時間の保護など、さらに長期間持続する保護を提供することができる。
【0063】
存在する場合、本発明のヘアケア組成物は、組成物の0.1~5重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%、なお好ましくは0.5~3重量%、最適には1.0~3.0重量%のナイアシンアミドを含むことが好ましい。
【0064】
シリコーン
本発明のヘアケア組成物はシリコーンを含むことが好ましい。
【0065】
例えば、本発明の組成物は、コンディショニング性能を増強するためのシリコーンコンディショニング剤の乳化液滴を含有し得る。
【0066】
好適なシリコーンには、ポリジオルガノシロキサン、CTFA指定ジメチコーンを有するポリジメチルシロキサンが含まれる。さらに、本発明の組成物(特にシャンプーおよびコンディショナー)に使用するのに適しているのは、CTFA指定ジメチコノールを有する、ヒドロキシル末端基を有するポリジメチルシロキサンである。
【0067】
好ましくは、乳化シリコーンの粘度は、25℃で少なくとも10,000cstであり、シリコーンの粘度は、好ましくは少なくとも60,000cst、最も好ましくは少なくとも500,000cst、理想的には少なくとも1,000,000cstである。好ましくは、配合を容易にするために、粘度は10cstを超えない。
【0068】
好適な予備形成エマルジョンの例には、Dow Corningから入手可能なXiameter MEM 1785およびマイクロエマルジョンDC2-1865が挙げられる。これらはジメチコノールのエマルジョン/マイクロエマルジョンである。また、架橋シリコーンガムが予備乳化形態で入手可能であり、これは配合を容易にするために有利である。シャンプーおよびコンディショナーに含めるためのシリコーンのさらに好ましいクラスは、アミノ官能性シリコーンである。「アミノ官能性シリコーン」とは、少なくとも1つの第一級、第二級もしくは第三級アミン基または第四級アンモニウム基を含むシリコーンを意味する。好適なアミノ官能性シリコーンの例には、CTFA指定「アモジメチコン」を有するポリシロキサンが挙げられる。
【0069】
本発明に使用するのに適したアミノ官能性シリコーンの具体例には、アミノシリコーン油DC2-8220、DC2-8166およびDC2-8566(いずれもDow Corning製)がある。
【0070】
シリコーンの総量は、0.01~10%重量%、さらに好ましくは0.1~5重量%、最も好ましくは0.5~3重量%であることが好ましい。
【0071】
組成物のpH
本発明のヘアケア組成物のpHは、好ましくは3~7、さらに好ましくは4~7、さらになお好ましくは4~6.5、最も好ましくは4.2~6.5であることが好ましい。
【0072】
シャンプー
本発明のヘアケア組成物がシャンプーである場合、それは一般に水性であり、すなわち、それらは、それらの主成分として水または水溶液またはリオトロピック液晶相を有する。
【0073】
好適には、シャンプー組成物は、50~98%、好ましくは60~92%の水を含む。
【0074】
好ましくは、シャンプー組成物は、毛髪をコンディショニングするための1つ以上のカチオン性ポリマーを含む。
【0075】
好適なカチオン性ポリマーは、カチオン置換されているか、2種類以上のモノマーから形成され得るホモポリマーを含む。ポリマーの重量平均(M)分子量は、一般に100000~300万ダルトンである。ポリマーは、第四級アンモニウム基もしくはプロトン化アミノ基、またはそれらの混合物などのカチオン性窒素含有基を有する。ポリマーの分子量が低すぎると、コンディショニング効果は不十分である。高すぎると、注いだ際に組成物の曳糸性をもたらす高い伸長粘度という問題が存在し得る。
【0076】
カチオン性窒素含有基は、一般に、カチオン性ポリマーの全モノマー単位の一部に置換基として存在する。したがって、ポリマーがホモポリマーでない場合、それはスペーサー非カチオン性モノマー単位を含むことができる。そのようなポリマーは、CTFA Cosmetic Ingredient Directory,3rd editionに記載されている。カチオン性モノマー単位と非カチオン性モノマー単位との比は、一般に0.2~3.0meq/gmである必要な範囲のカチオン電荷密度を有するポリマーを与えるように選択される。ポリマーのカチオン電荷密度は、米国薬局方に記載されているケルダール法により、窒素決定のための化学試験下で好適に決定される。
【0077】
好適なカチオン性ポリマーには、カチオン性アミン官能基または第四級アンモニウム官能基を有するビニルモノマーと、水溶性スペーサーモノマー、例えば(メタ)アクリルアミド、アルキルおよびジアルキル(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクトンならびにビニルピロリジンとのコポリマーが含まれる。アルキルおよびジアルキル置換モノマーは、好ましくはC1~C7アルキル基、さらに好ましくはC1~3アルキル基を有する。他の好適なスペーサーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、無水マレイン酸、プロピレングリコールおよびエチレングリコールが含まれる。
【0078】
カチオン性アミンは、組成物の特定の種およびpHに応じて、第一級、第二級または第三級アミンであり得る。一般に、第二級および第三級アミン、特に第三級アミンが好ましい。
【0079】
アミン置換ビニルモノマーおよびアミンは、アミン形態で重合し、次いで四級化によってアンモニウムに変換され得る。
【0080】
カチオン性ポリマーは、アミン置換モノマーおよび/または第四級アンモニウム置換モノマーおよび/または適合性スペーサーモノマーに由来するモノマー単位の混合物を含むことができる。
【0081】
好適な(非限定的な例の)カチオン性ポリマーには、以下が挙げられる:
・例えば、業界(CTFA)ではそれぞれポリクォータニウム6およびポリクォータニウム7と呼ばれている、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドホモポリマー、およびアクリルアミドとジメチルジアリルアンモニウムクロリドとのコポリマーを含むカチオン性ジアリル第四級アンモニウム含有ポリマー;
・3~5個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーのアミノ-アルキルエステルの鉱酸塩、(米国特許第4,009,256号に記載);
・カチオン性ポリアクリルアミド(国際公開第95/22311号に記載)。
【0082】
使用することができる他のカチオン性ポリマーには、カチオン性多糖ポリマー、例えば、カチオン性セルロース誘導体、カチオン性デンプン誘導体およびカチオン性グアーガム誘導体が含まれる。
【0083】
使用することができる特に好適な種類のカチオン性多糖ポリマーには、カチオン性グアーガム誘導体、例えば、グアーヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(RhodiaからJAGUAR商標シリーズで市販されている)がある。そのような材料の例には、JAGUAR C13S、JAGUAR C14およびJAGUAR C17がある。
【0084】
上記カチオン性ポリマーのいずれかの混合物を使用してもよい。
【0085】
本発明のヘアケア組成物は、0.01~5%、好ましくは0.02~1%、さらに好ましくは0.05~0.8%のカチオン性ポリマーを含むことが好ましい。
【0086】
本発明のヘアケア組成物は、100万~220万g/molの平均分子量(M)と、0.13~0.3のカチオン置換度とを有するカチオン性ポリガラクトマンナンであるカチオン性沈着ポリマーをさらに含み得る。
【0087】
ポリガラクトマンナンは、主にガラクトース単位およびマンノース単位から構成される多糖であり、通常、グアー、ローカストビーン、ハニーローカスト、フレームツリー、およびマメ科(Leguminosae)の他のメンバーなどのマメ科植物由来の種子の内胚乳材料中に見出される。ポリガラクトマンナンは、ポリマー骨格中のマンノピラノース残基の6番炭素原子から分岐する繰り返し1→6結合α-D-ガラクトシル側鎖基(ガラクトシド単位または残基とも呼ばれる)とともに、1→4結合β-D-マンノピラノシル主鎖単位(マンノシド単位または残基とも呼ばれる)の骨格から構成される。異なるマメ科種のポリガラクトマンナンでは、ポリマンノシド骨格から分岐するガラクトシド側鎖単位(galactoside side unit)の出現頻度が互いに異なる。マンノシド単位およびガラクトシド単位は、本明細書ではグリコシド単位または残基と総称される。グアーガム(以下、「グアー」と呼ぶ)に含有されるポリガラクトマンナン中のマンノシド単位とガラクトシド単位との平均比は約2:1である。
【0088】
好適なカチオン性ポリガラクトマンナンには、1つ以上の誘導体化剤との化学反応によってカチオン的に修飾されたグアーおよびヒドロキシアルキルグアー(例えば、ヒドロキシエチルグアーまたはヒドロキシプロピルグアー)が含まれる。
【0089】
典型的な組成物では、カチオン性ポリガラクトマンナンの量は、一般に、組成物の約0.05~1重量%、好ましくは0.1~0.8重量%、さらに好ましくは0.2~0.6重量%の範囲である。
【0090】
本発明のヘアケア組成物は、カルボン酸ポリマーなどのアニオン性ポリマーレオロジー改質剤をさらに含んでもよい。
【0091】
本発明の文脈では、用語「カルボン酸ポリマー」は、一般に、ペンダントカルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマー(以下、「カルボン酸モノマー」と呼ぶ)の重合から得られるホモポリマーまたはコポリマーを示す。
【0092】
好適なカルボン酸モノマーは、一般に、1つまたは2つのカルボン酸基、1つの炭素-炭素二重結合を有し、合計3~約10個の炭素原子、さらに好ましくは3~約5個の炭素原子を含む。
【0093】
好適なカルボン酸モノマーの具体例には、α-β-不飽和モノカルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸;ならびにα-β-不飽和ジカルボン酸、例えば、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸およびアコニット酸が挙げられる。上記のα-β-不飽和モノ-またはジカルボン酸の塩、エステルまたは無水物も使用され得る。例には、α-β-不飽和ジカルボン酸とC1~4アルカノールとのハーフエステル、例えば、モノメチルフマレート;α-β-不飽和ジカルボン酸の環状無水物、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸および無水シトラコン酸;ならびにアクリル酸またはメタクリル酸とC1~30アルカノールのエステル、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレートおよびオクタデシルアクリレートが挙げられる。
【0094】
他のエチレン性不飽和モノマーをカルボン酸ポリマー骨格に共重合することができてもよい。そのような他のエチレン性不飽和モノマーの例には、スチレン、酢酸ビニル、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリルおよびそれらの混合物が挙げられる。カルボン酸ポリマーは、好ましくは少なくとも100万ダルトンの分子量を有し得る。
【0095】
好適な例には、C1~4アルキルアクリレートまたはメタクリレート(例えばエチルアクリレート)と、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの混合物から選択される1つ以上のコモノマーとから重合された架橋コポリマーが挙げられる。そのような材料は、一般に、アクリレートコポリマーのINCI名で呼ばれることがある。市販の例には、Rohm and Haas製のAculyn(登録商標)33が挙げられる。
【0096】
アクリル酸またはメタクリル酸のC10~30アルキルエステルと、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのそれぞれのC1~4アルキルエステルから選択される1つ以上のコモノマーとから重合された架橋コポリマーも好適である。そのような材料は、一般に、アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマーのINCI名で呼ばれることがある。市販の例には、Lubrizol Advanced Materials製のCarbopol(登録商標)ポリマー1342および1382が挙げられる。
【0097】
アクリル酸またはメタクリル酸とアルキルアクリレートおよびエトキシル化疎水性修飾アルキルアクリレートとの架橋されていてもよいコポリマーも好適である。そのような材料は、一般に、アクリレート/ステアレス-20メタクリレートコポリマー、アクリレート/ベヘネス-25メタクリレートコポリマー、アクリレート/ステアレス-20メタクリレートクロスポリマーおよびアクリレート/パルメス-25アクリレートコポリマーのINCI名で呼ばれることがある。市販の例には、Rohm&Haas製のAculyn(登録商標)22、28または88、および3V Sigma製のSynthalen(登録商標)が挙げられる。
【0098】
カルボン酸は、カルボマー、例えば、ペンタエリスリトールのアリルエーテル、またはスクロースのアリルエーテルによって架橋されたアクリル酸のホモポリマーであることが好ましい。
【0099】
前述の材料のいずれかの混合物も使用され得る。
【0100】
好ましくは、本発明のヘアケア組成物は、組成物の0.1~3.0重量%、さらに好ましくは0.4~重量1.5%のカルボン酸ポリマーを含む。
【0101】
上記のカルボン酸ポリマーなどのアニオン性ポリマーレオロジー改質剤を含有する製剤では、無機または有機塩基を加えることによって遊離カルボキシル基の少なくとも一部を中和することが必要であることが多い。好適な無機または有機塩基の例には、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0102】
本発明のヘアケア組成物はまた、1つ以上の非イオン性セルロースエーテルから選択される非イオン性ポリマーレオロジー改質剤を含んでもよい。
【0103】
好適な非イオン性セルロースエーテル、または本発明における非イオン性ポリマーレオロジー改質剤としての使用には、(C1~3アルキル)セルロースエーテル、例えば、メチルセルロースおよびエチルセルロース;ヒドロキシ(C1~3アルキル)セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース;混合ヒドロキシ(C1~3アルキル)セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース;ならびに(C1~3アルキル)ヒドロキシ(C1~3アルキル)セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。
【0104】
本発明において非イオン性ポリマーレオロジー改質剤として使用するための好ましい非イオン性セルロースエーテルは、水溶性非イオン性セルロースエーテル、例えば、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。この文脈では、用語「水溶性」は、25℃および1気圧で100グラムの蒸留水中で少なくとも1グラム、さらに好ましくは少なくとも3グラム、最も好ましくは少なくとも5グラムの水への溶解度を示す。このレベルは、巨視的に等方性または透明、有色または無色の溶液の生成を示す。
【0105】
メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースは、Dow ChemicalからMETHOCEL(登録商標)商標シリーズとしていくつかの粘度グレードで市販されている。
【0106】
任意の非イオン性セルロースエーテルの混合物も好適であり得る。本発明による典型的な組成物では、非イオン性セルロースエーテルのレベルは、一般に、組成物の総重量に基づいて、約0.01~約2.0重量%の範囲、好ましくは0.1~0.5重量%の範囲、さらに好ましくは0.1~0.3重量%の範囲である。
【0107】
好ましくは、本発明のヘアケア組成物は、0.1~0.3重量%の非イオン性セルロースエーテルを含む。
【0108】
本発明のヘアケア組成物は、性能および/または消費者の受容性を高めるための追加の任意成分を含有してもよい。そのような成分の例には、香料、染料および顔料ならびに防腐剤が挙げられる。これらの成分のそれぞれは、その目的を達成するのに有効な量で存在する。一般に、これらの任意成分は、組成物の総重量に基づいて最大5重量%のレベルで個々に含まれる。
【0109】
使用様式
本発明のヘアケア組成物は、毛髪および頭皮への局所塗布を主に意図している。
【0110】
組成物がシャンプーである場合、組成物は毛髪に局所的に塗布され、次いで毛髪および頭皮に向けてマッサージされる。次いで、水ですすいでから毛髪を乾燥させる。リーブオンヘアケア組成物であるヘアオイルまたはヘアセラム(hair serum)は、塗布後1~10時間放置した後、洗い流される。
【0111】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明され、非限定的な実施例では、特に明記しない限り、引用されるすべてのパーセンテージは総重量に基づく重量単位である。
【0112】
本発明は、図面に示された実施形態に限定されない。したがって、特許請求の範囲に記載された特徴の後に符号が続く場合、そのような番号は、特許請求の範囲の明瞭性を高めるためにのみ含まれ、決して特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0113】
実施例は、本発明を例示することを意図しており、本発明をそれらの実施例自体に限定することを意図していない。
【0114】
[実施例]
[実施例1]
本発明の範囲外の複合体(参照1)の調製
水浴の内側に置かれた三つ口フラスコに、10グラムのZPTO(50%水性スラリーとして、Kolon Life Sciences製)を入れた。フラスコに機械的撹拌機および凝縮器を装備した。スラリーを85℃に加熱した。その後、0.5gのNeo Heliopan(登録商標)BB(NHBBと略す)をフラスコに加えた。混合物をさらに加熱し、20分間撹拌した。次いで、89.5グラムの脱イオン水をフラスコに入れた。さらに20分間撹拌し続けた後、内容物を徐々に室温まで冷却した。沈殿物を除去した。その後、本発明による複合体のスラリーを得た。複合体は水性スラリーの形態であった。
【0115】
この複合体の組成(100g基準)は以下の通りであった:
ZPTO=98.0重量%
有機UVフィルター、Neo Heliopan(登録商標)BB=2.0重量%
粒径は0.6ミクロンであることが分かった。
【0116】
本発明の範囲内の複合体(参照2)の調製
水浴の内側に置かれた三つ口フラスコに、10グラムのZPTO(50%水性スラリーとして、Kolon Life Sciences製)を入れた。フラスコに機械的撹拌機および凝縮器を装備した。スラリーを85℃に加熱した。その後、0.5gのNeo Heliopan(登録商標)BB(融点65.5℃)をフラスコに加えた。混合物をさらに加熱し、さらに20分間撹拌した。次いで、キトサンアセテートの1重量%溶液25グラムおよび脱イオン水64.5グラムをフラスコに入れた。さらに20分間撹拌し続けた後、内容物を徐々に室温まで冷却した。沈殿物を除去した。その後、本発明による複合体の粒子を得た。複合体は水性スラリーの形態であった。
【0117】
この複合体の組成(固形分100g基準)は以下の通りであった:
ZPTO=93.4重量%
有機UVフィルター、Neo Heliopan(登録商標)BB=1.9重量%
キトサン190,000~310,000Da=4.7重量%。
【0118】
粒径を測定したところ、4μmであることが分かった。
【0119】
その後、以下に記載される様々な試験に粒子を供した。
【0120】
[実施例2]
UV光に長時間曝露した後のヘアケア組成物中のZPTOの残存量の推定値を与える実験に、以下の表1に示す組成物/成分を供した。%平均残留ZPTOは、後述するインビトロモデルを使用して測定した。
【表1】
【0121】
試験手順の説明で言及したモデル皮脂の組成を表2に示す。
【表2】
【0122】
Vitro-Skin(登録商標)上の複合体のUV安定性を決定する試験
試験条件を以下に記載する。
【0123】
UV照射は、X-Rite(Macbeth)Spectra Light IIIチャンバ内で行った。UVA光およびUVB光の両方を提供するUV照射のためにUVモードを選択した。機械によってUV強度を固定した(UVAでは250μw/cm、UVBでは110μw/cmと推定)。ガラスバイアル内のUVAおよびUVBの透過率は、それぞれ80.3%および71.9%であった。チャンバ温度は室温(20±2℃)と同等であった。チャンバの中心に近いラインに試料を配置した。
【0124】
手順
実施例C:30μLのZPTO(50%水性スラリーとして、Kolon Life Sciences製)を200gの脱イオン水に分散させた。約0.5mLのそのように希釈したスラリーをVitro-Skin(登録商標)のプレートに塗布し、テフロン(登録商標)撹拌ロッドを用いて30秒間撹拌した。プレートを暗条件下で自然乾燥させた。次いで、処理したVitro-Skin(登録商標)のプレートに120μLのモデル皮脂を塗布した。
【0125】
実施例D:1mLのZPTO(50%水性スラリーとして、Kolon Life Sciences製)を9gの脱イオン水に分散させて、希釈ZPTOスラリーを形成した。また、1.5mgのNeo Heliopan(登録商標)BBを0.1gのメタノールに溶解し、次いで、9.9gの脱イオン水に分散させてNHBB溶液を形成した。30μL超の希釈ZPTOスラリーおよび0.2g超のNHBB溶液を19.8gの脱イオン水に分散させた。ZPTOおよびNHBBを含有する調製したスラリー約0.5mLをVitro-Skin(登録商標)のプレートに塗布し、テフロン(登録商標)撹拌ロッドを用いて30秒間撹拌した。プレートを暗条件下で自然乾燥させた。次いで、処理したVitro-Skin(登録商標)のプレートに120μLのモデル皮脂を塗布した。
【0126】
実施例E:2mLのZPTO(50%水性スラリーとして、Kolon Life Sciences製)および1.2gの酢酸亜鉛二水和物を16.8gの脱イオン水に分散させて、希釈ZPTOスラリーを形成した。また、1.5mgのNeo Heliopan(登録商標)BBを0.1gのメタノールに溶解し、次いで、9.9gの脱イオン水に分散させてNHBB溶液を形成した。30μL超の希釈ZPTOスラリーおよび0.2g超のNHBB溶液を19.8gの脱イオン水に分散させた。ZPTO、酢酸亜鉛およびNHBBを含有する調製したスラリー約0.5mLをVitro-Skin(登録商標)のプレートに塗布し、テフロン(登録商標)撹拌ロッドを用いて30秒間撹拌した。プレートを暗条件下で自然乾燥させた。次いで、処理したVitro-Skin(登録商標)のプレートに120μLのモデル皮脂を塗布した。
【0127】
実施例F:約5%のZPTO(スラリーの5重量%)を含有する参照1の複合体のスラリー30μLを20gの脱イオン水に分散させた。約0.5mLのそのように希釈したスラリーをVitro-Skin(登録商標)のプレートに塗布し、テフロン(登録商標)撹拌ロッドを用いて30秒間撹拌した。プレートを暗条件下で自然乾燥させた。次いで、処理したVitro-Skin(登録商標)のプレートに120μLのモデル皮脂を塗布した。
【0128】
実施例G:約5%のZPTO(スラリーの5重量%)を含有する参照2の複合体のスラリー30μLを20gの脱イオン水に分散させた。約0.5mLのそのように希釈したスラリーをVitro-Skin(登録商標)のプレートに塗布し、テフロン(登録商標)撹拌ロッドを用いて30秒間撹拌した。プレートを暗条件下で自然乾燥させた。次いで、処理したVitro-Skin(登録商標)のプレートに120μLのモデル皮脂を塗布した。
【0129】
各試料について、合計4つのプレートを処理した。処理したVitro-Skin(登録商標)の2つのプレートをUVキャビネット(Macbeth SpectraLight III)の下に37℃で120分間曝露した。他の2つのプレートはUV処理せず維持した。
【0130】
その後、4つのプレートをいずれもホルダーから取り外し、7mLメタノール/水(1:1)を含む15mL遠心管にそれぞれ10分間浸漬し、超音波処理を用いて抽出した。
【0131】
次いで、各試料から1mLの抽出溶液を採取し、EDTA二ナトリウムの飽和溶液50μLおよび50mmol/L 2,2’-ジピリジルジスルフィド(DPS)溶液100μLを用いて、暗所で30分間誘導体化のために処理した。次いで、混合物を0.2μmのPTFEフィルターに通し、UPLC-UV分析によるZPTOの分析のために液体クロマトグラフィー試料バイアルに移した。
【0132】
試料の分析には、Quattro Micro API質量分析計(Waters、Manchester,UK)に連結されたWaters ACQUITYUPLCシステムを使用した。Waters Acquity UPLC BEH C18カラム(2.1mm×50mm×1.7μm)を用いて分離を行った。線形勾配モードでプログラムされた20mM酢酸アンモニウム水溶液およびメタノールから移動相を構成した。いずれの実験にも正モードの大気圧化学イオン化(APCI)を使用した。ZPTOの決定には、多重反応モニタリング(MRM)モードを使用した。
【0133】
実験の情報/観察結果を使用して、以下の式によってZPTOの安定性を決定した。
[数1]
ZPTOの安定性=UV放射線に2時間曝露した後のZPTOの量
UV放射線に曝露しないZPTOの量
観察結果を表3に要約する。
【表3】
【0134】
表3に含まれるデータは、本発明による複合体を実験中に使用した場合(実施例G-参照2の複合体)、ZPTOの安定性が著しく改善されることを明確に示している。一方、参照1の複合体(本発明の範囲外である)も、ZPTOの安定性を改善するが、対照を上回る改善の程度は十分に良好ではない。データはさらに、キトサンおよびキトサンアセテートなどのカチオン性ポリマーは、ZPTOなどのフケ防止剤の堆積を増強するための使用については報告されてきたが、ZPTOなどの感光性フケ防止剤のUV安定性を改善するのに果たすそれらの役割がここで実証されていることを示している。実施例Fと実施例Gとの比較は、日焼け止め剤を含有していたが、キトサンを含有していなかった参照1の複合体が適切な量のUV安定化をもたらすことができなかったことから、ZPTOを安定化させるためのキトサンの重要性および驚くべき効果をさらに示し、強調している。
【0135】
[実施例3]
ヘアケア組成物(シャンプー)中の複合体参照2の安定性
試験した製剤を表4に示す。
【表4】
【0136】
試験手順
まず、比較組成物について手順に従った。次いで、本発明の組成物について手順に従って、性能の(1または複数の)差を見出した。
【0137】
表4に記載の試験組成物10グラムを50mL遠心管に加え、40℃の暗オーブンに入れた。2週間の保存後、10gの脱イオン水を管に加え、均一に混合した。10000rpmで20分間の遠心分離によって、組成物中の粒子を回収した。
【0138】
回収した粒子をAlパンにドープし、カバースリップで覆った。100倍油対物レンズを使用して、ZPTO複合粒子を可視化した。粒子(直径約5~10μm)に焦点を合わせた際に、532nmレーザー源を使用してラマンイメージングを行った。イメージングは、1μmのステップサイズで1点ずつ行った。各ステップ(ピクセル)では、合計4秒のレーザー露光時間により、4つのスペクトルを平均することによってラマンスペクトルを得た。複合体中のZPTOおよびNHBBの分布を示すために、スペクトルのセットをベースライン補正し、組込み多変量関数(built-in multi-variate function)によって分析した。ZPTOおよびNHBBのラマンスペクトルを比較のための標準として使用した。
【0139】
本発明の組成物に関する限り、観察結果は、複合体参照2が、40℃で2週間保存した後であっても組成物中で安定であったことを示した。観察結果は、組成物の調製直後(図1)および保存後(図2)の試験組成物中の複合体参照2のラマン分光データの形式で提示されている。1307cm-1のラマンシフトのピークは、Neo Heliopan(登録商標)BBに特徴的なピークであり、828cm-1のピークはZPTOに特徴的なピークである。各スペクトルでは、ピークは矢印により示されている。
図1
図2
【国際調査報告】