(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】走行時の荷重下のタイヤの変形を取得する方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
B60C19/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535885
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 FR2019053093
(87)【国際公開番号】W WO2020128279
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】アルフ デニス
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA02
3D131LA22
(57)【要約】
本発明は、回転速度Wで走行する時の頂点に対して垂直な方向の加速度の振幅を含む信号の取得を実行する段階と、基準加速度を決定する段階と、区分Iの系列を識別する段階と、ホイール旋回信号を構成するために信号をI
minとI
bの間で区切る段階と、ホイール旋回信号が閾値Aよりも大きい時にS
+又はその他の場合にS
-と表記する基準加速度のホイール旋回信号の関数である第1のエネルギ密度Sを定める段階と、荷重によって発生されるタイヤケーシングの変形を基準加速度と第1のエネルギ密度Sとの関数として識別する段階とを含む荷重を受けて回転速度Wで回転するタイヤケーシングの変形を取得する方法に関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を受け、膨張及び負荷状態にあり、回転速度Wで回転するタイヤケーシングの変形を取得する方法であって、
前記タイヤケーシングは、自然回転軸の周りに旋回するクラウン、2つの側壁、及び2つのビードと、正中面とを有し、該正中面と該自然回転軸の間の交点がホイール中心を定め、
前記自然回転軸に対する半径方向位置Rで前記クラウンに沿って前記タイヤケーシング内でセンサが受ける加速度に比例する少なくとも1つの出力信号を発生させることができる少なくとも1つのセンサを該タイヤケーシング上に固定する段階と、
前記回転速度Wで走行する時の前記クラウンに対して垂直な方向の加速度の少なくとも振幅を含む少なくとも第1の横座標信号uを取得する段階と、
前記回転速度Wと少なくとも1つのセンサの前記位置との関数である基準加速度γ
referenceを決定する段階と、
前記少なくとも1つの第1の信号の該第1の信号が閾値Bと交差する前記横座標値uに対応する第1の系列の区分Iを識別する段階と、
ホイール旋回信号Sig
TdRを構成するために前記第1の信号を第1の区分I
minと第2の区分I
maxの間で区切る段階と、
前記ホイール旋回信号と前記基準加速度γ
referenceの関数であり、かつ該ホイール旋回信号が閾値Aよりも上である時にS
+と表記され、又は該ホイール旋回信号が該閾値Aの下か又はそれに等しい時にS
-と表記される少なくとも第1のエネルギ密度Sを定める段階と、
前記荷重によって発生される前記タイヤケーシングの前記変形Def
%を前記基準加速度γ
referenceと前記第1のエネルギ密度Sの関数として識別する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の信号の前記取得は、Devが前記タイヤケーシングの展開である場合に下式:
[数式1]
によって定義される閾値回転速度W
seuilよりも大きいか又はそれに等しい回転速度Wに対して実行されることを特徴とする請求項1に記載のタイヤケーシングの変形を取得する方法。
【請求項3】
前記第1の系列の区分Iは、
前記第1の信号の少なくとも一部の少なくとも1つの最大値の関数である閾値Bを定める段階と、
前記第1の信号の前記少なくとも一部と前記閾値Bの関数であるとして第2の横座標信号uを決定する段階と、
前記第2の信号が閾値Eと交差する前記第1の信号の前記少なくとも一部と該第2の信号との前記横座標値uに対応する前記第1の系列の区分Iを識別する段階と、
の組合せを用いて識別される、
ことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項4】
前記閾値Bは、前記第1の信号の少なくとも一部の前記少なくとも1つの最大値の0.1と0.5の間に含まれる値であることを特徴とする請求項3に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項5】
前記第2の信号が前記第1の信号と前記閾値Bの間の差として取得される場合に、前記閾値Eは値ゼロであり、又は該第2の信号が該第1の信号と該閾値Bの間の比として取得される場合に、該閾値Eは1であることを特徴とする請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項6】
前記区分の前記識別は、
連続的かつ同一のパリティを有する前記区分Iの前記横座標値uの間の中間横座標uに対応する第2の系列の区分Jを生成する段階と、
第1の区分J
minと第2の区分J
maxの間の前記ホイール旋回信号Sig
TdRを構成する段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項7】
前記閾値Aは、前記基準加速度γ
referenceの関数であることを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサの前記半径方向位置Rの関数である前記基準加速度γ
referenceは、下式:
[数式2]
によって定義されることを特徴とする請求項1から請求項7のうちの1項に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項9】
前記基準加速度γ
referenceの前記決定は、同じ系列の区分に属する同一パリティの2つの区分の間に含まれる前記第1の信号の少なくとも一部の平均値であるとして定められることを特徴とする請求項1から請求項7のうちの1項に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項10】
前記ホイール旋回信号Sig
TdRを前記タイヤケーシングの角度位置に関して位相調整すると、地球の重力の効果を考慮する補正Corrが、該ホイール旋回信号Sig
TdRに対して為されることを特徴とする請求項1から請求項9のうちの1項に記載のタイヤケーシングの変形を取得する方法。
【請求項11】
方法が、
前記ホイール旋回信号Sig
TdRの第1の通過回数N
pasを該ホイール旋回信号Sig
TdRの前記第2の区分(J
max、I
max)と前記第1の区分(I
min、J
min)の間の差の半分を超える整数部分であるとして決定する段階と、
前記ホイール旋回信号Sig
TdRの第2の通過回数N’
pasを該ホイール旋回信号Sig
TdRの前記第2の区分(J
max、I
max)と前記第1の区分(I
min、J
min)の間の前記差の半分の整数部分であるとして決定する段階と、
を含み、
前記第1の区分(I
min)が、前記第1の信号の該第1の信号が下向き方向に前記閾値Bと交差する前記横座標uに対応する区分である場合に、
方法が、
荷重を受ける前記タイヤケーシングの前記変形Def
%を下式:
[数式3a]
を用いて識別する段階、
を含み、
その他の場合に、
方法が、
荷重を受ける前記タイヤケーシングの前記変形Def
%を下式:
[数式3b]
を用いて識別する段階、
を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のうちの1項に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項12】
前記第1の信号の前記取得は、一定サンプリング周波数で実行され、該第1の信号のサンプリングの空間離散化が、6度よりも小さく、好ましくは3度よりも小さく、非常に好ましくは1度よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項13】
負のS
-及び正のS
+である前記エネルギ密度は、N
Vが前記ホイール旋回信号Sig
TdR内で離散化された点の総数である場合に下式:
前記第1の区分(I
min)が、前記第1の信号の該第1の信号が下限値Eと下向き方向に交差する前記横座標uに対応する区分である場合に、
[数式4a]
及び
[数式4b]
その他の場合に、
[数式4c]
及び
[数式4d]
に従って定義されることを特徴とする請求項11との組合せで考えた請求項12に記載のタイヤケーシングの変形を取得する方法。
【請求項14】
前記基準加速度γ
referenceの前記決定は、N
Vが前記ホイール旋回信号Sig
TdR内で離散化された点の総数である場合に下式:
[数式5]
を用いて取得されることを特徴とする請求項9との組合せで考えた請求項12に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【請求項15】
荷重を受ける前記タイヤケーシングの前記変形は、下式:
[数式6]
を用いて決定されることを特徴とする請求項14との組合せで考えた請求項13に記載のタイヤケーシングの変形をエネルギ的に取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行条件下の荷重を受けるホイール-タイヤアセンブリのタイヤケーシングの変形を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール-タイヤアセンブリの変形を測定するためのデバイス及び方法の分野では、これらのデバイス及び方法は、印加された荷重によって引き起こされるタイヤケーシングの変形の結果を特徴付けるのに主に使用される。すなわち、デバイス及び方法は、主に接地面と呼ばれる地面上のタイヤのフットプリントを特徴付けることに向けられる。具体的に、この接地面内の応力の幾何学形状又は分布は、潜在的にホイール-タイヤアセンブリの膨張圧力を通じてタイヤケーシングに印加される荷重に直接的に関連する。
【0003】
膨張及び装着条件でのタイヤケーシングの周囲の最小パーセンテージのみを表すこの接地面は、例えば地面のマクロ粗度又は地面上の凹凸のような様々なパラメータにも非常に敏感である。具体的に、タイヤケーシングと地面の間の真の接触面積は、次に、地面のマクロ粗度を特徴付ける陥凹特徴部の上部に対応すると考えられる。これは、次に、タイヤケーシング内の応力の分布を改変し、かつ接地面の寸法に影響を有する場合がある。
【0004】
これに加えて、接地面の寸法の精確な決定は、走行条件下で達成するのが困難である。従来的には、走行中に、接地面は、タイヤケーシングの変形を表す信号を用いて特徴付けられる。これらは、観測される量の有意なジャンプを呈し、自由なトロイダル形状から強制移動によって部分的に圧縮されたトロイダル形状へのタイヤケーシングの移行を示している。具体的に、地面は、次に、タイヤケーシング上の質点に対する強制移動タイプの境界条件を構成する。従って、接地面の中への/そこからの正確な進入点又は退出点を識別するのは困難である。これに加えて、接地面は、タイヤケーシングの展開の一部のみ、従来的にトレッドの展開の1/20と1/10の間を表している。タイヤのこの部分の精確な状況を取得するために、変形信号の微細な離散化を使用する必要がある。これは、有意なメモリ容量と少なくとも接地面の領域での高い空間サンプリング周波数とを必要とし、これら全ては、かなりのエネルギを消費する。
【0005】
従来技術文献の国際公開第2017/32466A1号が公知であり、ホイール-タイヤアセンブリに印加される荷重をタイヤ上に装着された加速度計に基づいて特徴付けるためのデバイスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/32466A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車道の性質に関わらず走行条件下でタイヤケーシングの変形の正確な評価を可能にする一方で、同時に測定デバイス内で節電する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、荷重を受け、膨張及び負荷状態にあり、回転速度Wで回転するタイヤケーシングの変形を取得する方法に関する。タイヤケーシングは、自然回転軸の周りに旋回するクラウン、2つの側壁、及び2つのビードと、正中面とを有し、正中面と自然回転軸の間の交点は、ホイール中心を定める。本方法は、自然回転軸に対する半径方向位置Rでクラウンに沿ってタイヤケーシング上にタイヤケーシング内でセンサが受ける加速度に比例する少なくとも1つの出力信号を発生させることができる少なくとも1つのセンサを固定する段階と、回転速度Wで走行する時の少なくともクラウンに対して垂直な方向の加速度の少なくとも振幅を含む少なくとも第1の横座標信号uを取得する段階と、回転速度Wと少なくとも1つのセンサの位置との関数である基準加速度γreferenceを決定する段階と、第1の信号が閾値Bと交差する少なくとも1つの第1の信号の横座標値uに対応する第1の系列の区分Iを識別する段階と、ホイール旋回信号SigTdRを構成するために第1の信号を第1の区分Iminと第2の区分Imaxの間で区切る段階と、ホイール旋回信号SigTdRと基準加速度γreferenceとの関数であり、かつホイール旋回信号が閾値Aの上である時にS+と表記され、又はホイール旋回信号がこの閾値Aの下か又はそれに等しい時にS-と表記される少なくとも第1のエネルギ密度Sを定める段階と、基準加速度γreferenceと第1のエネルギ密度Sとの関数として荷重によって発生されるタイヤケーシングの変形Def%を識別する段階とを含む。
【0009】
従来技術の場合と同様に、タイヤ上の質点の加速度を取得することが必要である。この事例では、タイヤケーシングの変形に関する重要な情報はクラウンに対して垂直な加速度成分であるので、加速度がこの成分に対応することが重要である。これに加えて、従来技術のある一定の方法の場合のように、この加速度が、連続成分を中心として交替する交替成分であるのみならず、質点の絶対加速度であることが好ましい。しかし、センサによって送達される加速度が連続成分を含まない場合に、この連続成分を半径方向位置Rと回転速度Wとから生じる遠心加速度として人為的に追加することが必要となる。好ましくは、センサの半径方向位置Rは、膨張状態にあるが非負荷状態にあるホイール-タイヤアセンブリ上で決定される。次に、第1の信号が接地面を通過する瞬間の加速度信号は、閾値Bを用いて区切る必要がある。具体的に、荷重を受けるタイヤケーシングの半径方向の加速度の信号は、高い回転速度に関して地球の重力信号が無視される場合に、センサが接地面を通過する時に必然的にゼロに向かう傾向があることになる。従って、第1の信号は、閾値を通過しなければならなくなる。実際に、第1の信号は、この閾値をホイールの旋回毎に2回通過することになる。これらの通過は、接地面に進入し、そこから退出する領域にほぼ対応する。上記のようにして構成されるホイール旋回信号SigTdRは、必ずしもホイールの全旋回数に対応するとは限らない。
【0010】
次に、ホイール旋回信号にわたる回転速度の変動が小さい、すなわち、平均速度の15%未満を表す場合に、回転速度Wは、ホイール旋回信号の持続時間にわたる平均回転速度として定義される。タイヤケーシングは一定の速度にあり、このことは、数多くの潜在的誤差ソースが排除されるので好ましい。すなわち、本方法は、タイヤケーシングの回転速度Wが一定又は可変のどちらであるかに関わらず機能する。基準加速度γreferenceは、次に、センサが受ける遠心加速度に対応する。
【0011】
次に、ホイール旋回信号SigTdRからの絶対加速度レベルをセンサの半径方向位置と回転速度Wの大きさとに関係付けられる基準加速度γreferenceと単純に比較することにより、エネルギ密度Sを発生させることが可能になる。例えば、単純に基準加速度γreferenceとすることができる閾値Aに対するホイール旋回信号の振幅は、ホイール旋回信号から変形エネルギ密度の1つが正で1つが負である対(S+、S-)を潜在的に発生させる。すなわち、本方法は、タイヤケーシング変形エネルギ密度のみを定義し、それを閾値Aに対する位置に従って2つの部分集合の間で割り振る。これらの部分集合は、実施するのが簡単でリソースをそれほど消費しない演算である。当然ながら、代表的であるように、本方法は、絶対加速度から始めてエネルギ密度ダブレットを識別するための基準加速度γreferenceとの容易な比較を可能にする。
【0012】
最後に、本方法は、基準加速度γreferenceを受けると考えられるホイール旋回信号SigTdRの持続時間にわたって計算されたエネルギ密度Sを正規化するこのエネルギ密度Sの関数としてタイヤケーシングの変形を決定する。従って、変形Def%は、タイヤケーシングを支持するホイールの1回の物理的旋回にわたる変形エネルギの正規化を表す。その結果、走行条件下で荷重を受けるタイヤケーシングの変形に関連付けられたエネルギ不変量が識別される。当然ながら、本方法は、正に1回だけのホイール旋回の一部を必要とする。しかし、結果の平均は、例えば、タイヤケーシングが越えて走行する車道上の障害物のような信号内の予測不能な現象を解消することを可能にするので、結果を平均することができるように、好ましくは、ホイール旋回の回数は、少なくとも5になり、又は更に10になる。すなわち、工業生産モードでは、上記によって本方法の精度が改善される。
【0013】
有利なことに、第1の信号の取得は、Devがタイヤケーシングの展開である場合に下式:
[数式1]
によって定義される閾値回転速度W
seuilよりも大きいか又はそれに等しい回転速度Wに対して実行される。
【0014】
すなわち、走行速度Wがこの閾値の上である場合に、ホイール旋回信号を閾値Aと分離して考えることは、例えば、車道の高レベルのマクロ粗度、測定シーケンスでの電磁干渉、タイヤケーシング内の振動のようなホイール旋回信号SigTdRの予見不能の変動がいずれであるかに関わらず容易である。これに加えて、ホイール旋回信号内で重力に起因する信号をより容易に識別することも可能になる。
【0015】
1つの好ましい実施形態により、第1の系列の区分Iは、第1の信号の少なくとも一部の少なくとも1つの最大値の関数である閾値Bを定める段階と、第2の横座標信号uを第1の信号の少なくとも一部と閾値Bとの関数として決定する段階と、第2の信号が閾値Eと交差する第1の信号の少なくとも一部と第2の信号との横座標値uに対応する第1の系列の区分Iを識別する段階との組合せを用いて識別される。
【0016】
この実施形態では、接地面を通るセンサの通過を表す区分を識別するのに第1の信号のみが使用される。具体的に、荷重を受けるタイヤケーシングの半径方向の加速度の信号は、高い回転速度に関して地球の重力信号が無視される場合に、センサが接地面を通過する時に必然的にゼロに向う傾向があることになる。本方法は、第1の信号に関係付けられ、かつ基本論理演算及び数学演算を実施することを可能にすることになる閾値Bに関係付けられた第2の信号を構成することを提案する。
【0017】
すなわち、第2の信号は、閾値Bを通過しなければならなくなる。実際に、第2の信号は、この閾値をホイールの旋回毎に2回通過することになる。交差を考え合わせることで、センサからの第2の信号は、接地面を通る通過の検出器である。使用することができる大まかな空間離散化に起因して、この検出は、タイヤケーシングの変形を評価する方法にとって十分に良好である。
【0018】
閾値Bを決定するために提案するのは、閾値Bが依存することになる値MAXを識別するための信号の上流部分での検出である。具体的に、地球の重力の効果が除去された信号に関する接地面の直前直後の半径方向加速度は、タイヤケーシング走行条件の関数である最大値に連続的に到達する。従って、閾値Bは、第1及び第2の信号の離散化に従ってこの最大値に接近することになる値MAXの関数となる。本方法が収束するためには、この値MAXに関して精確である必要はない。
【0019】
非常に好ましくは、閾値Bは、第1の信号の少なくとも一部の少なくとも1つの最大値の0.1と0.5の間に含まれる値である。
【0020】
好ましくは、第2の信号が第1の信号と閾値Bの間の差として取得される場合に、閾値Eは値ゼロであり、又は第2の信号が第1の信号と閾値Bの間の比として取得される場合に、閾値Eは1である。
【0021】
これらは、タイヤケーシングが走行する時にセンサが接地面を通過することを表す離散信号の区分を識別するために簡単で基本的な演算を実施することを可能にする第2の信号の2つの簡単な例である。
【0022】
別の実施形態により、区分Iの識別は、連続的かつ同一のパリティを有する区分Iの横座標値u間の中間横座標uに対応する第2の系列の区分Jを生成する段階と、第1の区分Jminと第2の区分Jmaxの間のホイール旋回信号SigTdRを構成する段階とを含む。
【0023】
これは、接地面を通る通過を表す区分Iの識別を補完する処理である。今度は、偶数又は奇数の区分I間に位置する系列の区分Jが生成される。具体的に、区分Iを識別する方法は、ホイールの旋回毎に接地面の進入及び退出を識別する2回の区分を与える。回転速度Wで走行している時に、タイヤケーシングの回転方向は不変のままに留まる。従って、区分Iのパリティは、ホイール旋回情報を直接提供する。ここでの目的は、接地面とは反対側でホイール旋回信号SigTdRを始めることである。このようにして、半径方向加速度信号は接地面の反対側で実質的に基準加速度を中心に前後するので、本方法の空間離散化での誤差はそれほど高くはなくなる。ホイールの全旋回数にわたって構成されることになるホイール旋回信号SigTdRを区切るために後に使用されることになる区分Jを決定するために、偶数又は奇数のどちらかの区分Iを選ぶオプションがある。
【0024】
有利なことに、閾値Aは、基準加速度γreferenceの関数である。
【0025】
閾値Aは、本方法の正のエネルギ密度と負のエネルギ密度との間を区別することを可能にする。
【0026】
具体的に、いかなる測定信号も付随ノイズを有する。この信号を実時間でフィルタ処理又は平滑化することはできるものの、特に接地面を通る通過の動特性に関する情報を失うというリスクがある。定義によると、このノイズは実質的にゼロの平均値を有する。更に、このノイズは、理論的にはエネルギ密度S+及びS-の計算に対する効果をほぼ又は全く持たないはずであるが、S+とS-の分類を妨害し、最終結果を歪めがちである。この閾値Aの目的は、ホイール旋回信号と基準加速度の間の変動をエネルギ密度のうちのどれかに割り振ることを可能にすることである。この閾値Aは、擾乱的影響及び低い信号/ノイズ比に起因するホイール旋回信号の変動を考慮することを可能にし、これらの擾乱的影響は、道路のマクロ粗度、道路上で遭遇する孤立した障害物、タイヤ又はそれが装着された車両に固有の振動の結果とするか、又は使用電子構成要素の性質及び品質に固有の測定シーケンスの軽度の電磁機能不良とすることができる。ホイール旋回信号及び基準加速度は、ホイール-タイヤアセンブリの回転速度Wとセンサの半径方向位置とに依存するので、所望の精度に悪影響を与える可能性があるこれらの擾乱的影響を回避するために、閾値Aを基準加速度に依存するものにすることが賢明であるように思われる。
【0027】
非常に有利なことに、閾値Aは、下式:
[数式1の2]
に従う係数Cの関数である。
【0028】
好ましくは、係数Cは、0.5よりも大きいか又はそれに等しく、0.9よりも小さいか又はそれに等しい。
【0029】
係数Cに対するこの値は、ホイール旋回信号内で正のエネルギ密度を区別すること及び負のエネルギ密度を区別することを同時に可能にする。具体的に、接地面に進入する時に、ホイール旋回信号はゼロに向かう傾向を有する。これに加えて、接地面に進入し、そこから退出する時の移行は非常に顕著で非常に急激であり、常に実質的に同じ推移を有する。従って0.5という値は、負のエネルギ密度S-に割り当てられることになる測定点の個数が過度に大幅に減少することにはならないこと、又はS+に割り当てられることになる測定点の個数が過度に大幅に増加することにはならないことを意味する。具体的に、本方法の目的は、それほど高くない空間離散化を使用することである。一般的に、移行ゾーン内には非常に少ない測定点が置かれる。その結果、0.5と0.9の間にあるCに対応する選択ゾーン内に測定点がない場合に、値がS-又はS+のどちらに属するかについての誤差はゼロとは言わないまでも最小である。それは、全ての特徴付けに対して固定されてγreferenceと比例する係数Cが使用される場合に再現可能にもなることになり、誘発される可能性があるあらゆる誤差は、再現可能になり、従って、他の箇所に定義された基準レベルと比較して透明になることになる。
【0030】
それとは逆に、1.0に等しいC値は、これらの点を2つの可能なエネルギ密度の間で区別することを可能にする理論値である。この値は、測定シーケンスにおいて擾乱的影響を最小限に抑える最適条件を有する滑らかな地面の上では理想的であるが、単に僅かな擾乱でも、結果に必要とされる精度に影響を有する可能性がある。
【0031】
第1の実施形態により、少なくとも1つのセンサの半径方向位置Rの関数である基準加速度γ
referenceは、下式:
[数式2]
によって定義される。
【0032】
数学演算が延期される場合に、基準加速度γreferenceは、センサが受ける遠心加速度として定めることができる。その結果、センサの半径方向位置R及びタイヤケーシングの回転速度Wへのアクセスを有する必要がある。
【0033】
タイヤケーシングの寸法、タイヤケーシングの構造の特性、及びセンサを収容する電子部材の特性が既知である場合に、サイズスケールによってセンサの半径方向位置Rを決定することができる。これに加えて、半径方向位置Rは、ホイール-タイヤアセンブリが膨張圧力へと膨張されて負荷状態にないこのアセンブリの条件に対応する。
【0034】
回転速度Wは、例えば旋回パルス又は取得周波数が既知である場合に、同じタイプの2つの波面(又は同一パリティの2つの連続する区分I)の間の取得点の個数のような別の信号を用いて推定することもできる。タイヤケーシングの展開及び2つの旋回パルスの間で経過する時間の知識は、ホイールの旋回毎の回転速度Wの第1の評価を与える。
【0035】
これは、基準加速度γreferenceの第1の評価である。
【0036】
第2の実施形態により、基準加速度γreferenceの決定は、少なくとも、同じ系列の区分に属する同一パリティの2つの区分の間に含まれる第1の信号の部分の平均値として定義される。
【0037】
この場合、少なくとも1回の旋回にわたって第1の信号の全体を記録することによって演算が実行される場合に、基準加速度を逆算することができる。これに加えて、関連の実施形態に従って区分Jが計算されていた場合に、必然的にホイールの1回の旋回が識別済みとなる。区分Jを用いた識別の場合に、接地面に進入し、そこから退出することに付随するイベントの突然性に起因して離散化誤差が潜在的に大きくなる。
【0038】
好ましくは、ホイール旋回信号SigTdRをタイヤケーシングの角度位置に関して位相調整した上で、ホイール旋回信号SigTdRに地球の重力の効果を考慮する補正Corrが為される。
【0039】
地球の重力に関する補正は、タイヤケーシングの変形に関する誤差を特に低い回転速度Wに関して最小化することができることを意味する。具体的に、センサは、タイヤケーシングが走行している時に自然回転軸の周りに1回旋回する。センサからの出力信号は半径方向加速度に比例するので、この信号は、地球の重力によって損なわれることになる。ホイールの1回の旋回にわたって、地球の重力は、地球の座標系内でセンサの高度の関数である振幅gの正弦波信号を発生させることになる。従って、この寄生信号Corrは、ホイール旋回信号SigTdRから除去する、すなわち、ホイール旋回信号をタイヤケーシングの角度位置を関して再較正する必要がある。
【0040】
当然ながら、タイヤケーシングの回転速度Wが高いほど、センサが受ける遠心加速度は、この寄生信号よりも優勢になる。
【0041】
1つの好ましい実施形態により、本方法は、ホイール旋回信号Sig
TdRの第1の通過回数N
pasをホイール旋回信号Sig
TdRの第2の区分(J
max、I
max)と第1の区分(I
min、J
min)の間の差の半分を超える整数部分として決定する段階と、ホイール旋回信号Sig
TdRの第2の通過回数N’
pasをホイール旋回信号Sig
TdRの第2の区分(J
max、I
max)と第1の区分(I
min、J
min)の間の差の半分の整数部分として決定する段階とを含み、第1の区分(I
min)が、第1の信号が閾値Bと下向き方向に交差する第1の信号の横座標uに対応する場合に、本方法は、荷重を受けるタイヤケーシングの変形Def
%を下式:
[数式3a]
を用いて識別する段階を含み、その他の場合に、本方法は、荷重を受ける前記タイヤケーシングの変形Def
%を下式:
[数式3b]
を用いて識別する段階を含む。
【0042】
この事例では、タイヤケーシングの変形Def%を決定する段階は、まず、ホイール旋回信号SigTdR内で接地面を通るセンサの通過の回数を識別することを必要とする。ホイール旋回信号SigTdRは、必ずしもホイールの全旋回数にわたって区切られるとは限らないので、NpasとN’pasの両方が決定される。特に、ホイールの1回の旋回を超える信号に対して処理を行う必要はなく、少なくとも接地面を通る通過を含むホイールの旋回の部分又はその補完部分を含む信号で十分となる。
【0043】
次に、ホイール旋回信号の第1の区分Iが接地面の進入又は退出のどちらを表すのかを決定する必要がある。この決定は、ホイール旋回信号SigTdRの第1の区分Iの後ろに位置する第1の区分の値を比較し、更にそれを閾値Bと比較することによって行われる。
【0044】
最後に、負のエネルギ密度のみ、正のエネルギ密度のみ、又は2つの密度のいずれかからタイヤケーシングの変形Def%を決定することができる。
【0045】
1つの特定の実施形態により、第1の信号の取得は、一定サンプリング周波数で実行され、第1の信号のサンプリングの空間離散化は、6度よりも小さく、好ましくは3度よりも小さく、非常に好ましくは1度よりも小さい。
【0046】
例えば、ホイール-タイヤアセンブリ内でタイヤケーシングの変形を評価することが所望である場合に、センサは、マイクロコントローラ、メモリ空間、バッテリ、及びクロックを含む電子部材に関連付ける必要がある。一定サンプリング周波数を用いて想定される空間離散化は、次に、基本演算をマイクロコントローラ内で実行し、バッテリ消費を最小限に抑えることを可能にする。これに加えて、ホイールの旋回毎に60点程度の最小離散化は、演算及びメモリ空間への転送の回数を制限することを可能にする。これらの回数が制限されても、タイヤケーシングの変形において得られる精度は良好であり、それと同時に電子部材のバッテリ電力が節約される。これは、本方法の中間スカラー値のみを格納又は転送する必要があることを意味する。
【0047】
有利なことに、負のS
-と正のS
+とであるエネルギ密度は、下式に従って定義される:
N
Vがホイール旋回信号Sig
TdR内で離散化された点の総数である時に、第1の区分(I
min)が、第1の信号が下限値Eと下向き方向に交差する第1の信号の横座標uに対応する区分である場合に、
[数式4a]
及び
[数式4b]
その他の場合に、
[数式4c]
及び
[数式4d]
【0048】
この定義は、離散ホイール旋回信号から各エネルギ密度に関するスカラー値を取得する簡単な方法である。
【0049】
有利なことに、基準加速度γ
referenceの決定は、N
Vがホイール旋回信号Sig
TdR内で離散化された点の総数である時に、下式:
[数式5]
を用いて取得される。
【0050】
基準加速度γreferenceの評価が、ホイールの有限回数の旋回にわたるホイール旋回信号の平均値として評価される場合に、この評価は、スカラー量の評価を取得する簡単で迅速な方法である。
【0051】
非常に有利なことに、荷重を受けるタイヤケーシングの変形は、下式:
[数式6]
6を用いて決定される。
【0052】
更に、基準加速度γreferenceをホイール旋回信号の平均値の形態で評価することを選ぶことにより、同じセンサによって実行される測定は、Def%を計算するための式の分子と分母の両方に有利に出現し、すなわち、結果は、外部影響の結果としてのこのセンサの特性のいかなるドリフトにも鈍感になることになる。
【0053】
これは、ホイール旋回信号からの離散量からタイヤケーシングの変形を識別する最も簡単で最も基本的な形態である。この2つの式は、ホイール旋回信号の離散化によって発生する誤差を除いて理論的に同等である。
【0054】
正のエネルギ密度S+と負のエネルギ密度S-の和の半分を基準加速度γreferenceで除したものをそれらの離散形態で使用することによる接地面を通る通過の回数に関わる第3の可能な式が存在する。
【0055】
本発明は、空気タイヤへの適用の場合に関連する以下の説明を読む時により良く理解されるであろう。この適用は、単なる例として与えるものであり、かつ添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図2】ホイール旋回信号Sig
TdR及びそれが第1の実施形態で識別される方法を示す図である。
【
図3】ホイール旋回信号Sig
TdR及びそれが別の実施形態で識別される方法を示す図である。
【
図4】可変回転速度Wで走行している時のホイール旋回信号Sig
TdRを示す図である。
【
図5】旋回にわたって一定に留まる回転速度Wで走行する時のホイール旋回信号Sig
TdRを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明を実施するために、タイヤケーシングは、センサと、マイクロコントローラと、クロックと、メモリ空間と、エネルギストレージ手段と、送信及び場合によっては受信の能力を有する無線周波数通信手段とを含む電子部材を装備しなければならない。タイヤケーシングは、自然回転軸の周りに旋回するクラウンと、2つの側壁と、2つのビードとを含む。ケーシングは、2つのビードから等距離にある正中面も含み、正中面と自然回転軸との間の交点がホイール中心を定める。
【0058】
センサは、クラウンに沿って、均一な剛性の領域であるリブ又は長手溝に沿って、自然回転軸に関して固定された半径方向位置Rでタイヤケーシングに固定される。センサは、タイヤケーシングの内側でセンサが受けるクラウンに対して垂直な加速度と比例する少なくとも1つの出力信号を発生させることができる。実際に、このセンサは単軸センサとすることができ、この場合この単軸センサは、半径方向に位置決めする必要がある。センサは、複数の単軸センサで構成することもできる。この場合タイヤケーシングのクラウンに対して垂直な加速度を再構成するためには、単軸センサの各々の向きは、タイヤケーシングの座標系に関して明確に識別する必要がある。理想的に、センサは、加速度の連続成分及び交替成分を考慮する。センサによって交替成分のみを測定する事例では、本方法の実施は、連続成分を人為的に構成することを必要とすることになる。この構成を行うために、タイヤケーシングの回転速度Wを実時間で識別することが必要になり、センサの半径方向位置Rを精確に知ることが必要になる。その理由は、連続成分がタイヤケーシングの自然回転軸に関するセンサの遠心加速度であることにある。センサが連続成分を考慮する場合に、このセンサは、ピエゾ抵抗技術又は容量技術を使用する加速度計とすることができる。
【0059】
電子部材は、エネルギストレージ手段によって給電され、マイクロコントローラによってクロックを利用して制御され、この電子部材には、例えば、センサ要素から到着する信号を使用することによってタイヤの変形状態を決定することを可能にする通信アルゴリズムも埋め込まれる。RF通信送信手段が、計算情報を送信するために使用され、受信手段は、計算アルゴリズムへの演算命令又は使用情報を受信するために使用される。理想的に、この電子部材は、構成要素を共有して運用コストを最適化することができるように他の測定要素(例えば、圧力、温度、摩耗状態、走行距離等を測定する)を含む又はそれらと関連付けられる。
【0060】
この事例では、センサは、タイヤケーシングが走行状態にある時にマイクロコントローラによって作動状態にされる。当然ながら、それを超えた場合にセンサ出力信号の取得を実施する回転速度Wに対する閾値を選択することができる。電子部材は、実施すべき解析のタイプに適するメモリ空間を有する。実際に、このメモリ空間の容量は、電子部材の利用に従って事前定義される。メモリ空間内へのセンサからの値の格納を制御するのはマイクロコントローラである。これに加えて、マイクロコントローラは、少数のデータに対して基本数学演算及び論理演算を実施することができる。数学演算及び論理演算がかなり複雑である場合又は操作すべきデータの数が大量になる場合に、マイクロコントローラは、マイクロプロセッサによって置き換えられる。最後に、電子部材は、エネルギストレージ手段によって給電される。最も簡単なエネルギストレージ手段はバッテリの使用である。しかし、圧電要素を用いて再充電することができる大きいサイズのコンデンサを想定することができる。
【0061】
電子部材の周波数範囲は、6度未満の空間離散化で回転速度Wの広い範囲を網羅することができる。1つの特定の実施形態により、サンプリング周波数は、要求に応じて又は例えばタイヤケーシングの回転速度Wのような信号に応じて適応する。
【0062】
任意的に、電子部材は、タイヤケーシングの識別情報を含有する又は取得することができる。この情報は、電子部材内の計算アルゴリズムにとって有用なデータセットを選択するのに有用である。電子部材がタイヤの識別情報を取得する必要がある又は測定を行うという指令を受信する必要がある場合に、電子部材に高周波受信手段が装備される。この高周波受信手段は、タイヤケーシングの金属領域及び車両内でそれに隣接する環境が発生させる干渉がないように低周波数で理想的には125kHzの周波数で作動する。
【0063】
1つの特定の実施形態により、電子部材は、具体的にUHF(極超短波)帯域内、特に433MHz又は900MHz前後又は空き周波数帯域であるBLE(ブルートゥース(登録商標)低エネルギ)帯域として公知のものでの高周波送信手段を有する。これに加えて、UHF帯域は、小さいアンテナサイズを有することを可能にし、電子部材をタイヤケーシングの中に組み込みやすくする。
【0064】
この送信通信は、本方法のデータを車両に又は車両の外部に送信するのに有用である。ホイール旋回信号の取得に対応するデータ文字列を送信するか、又は電子部材内で計算されることになる中間結果を送信するかのどちらかが可能である。この第2の送信モードは、データストリームがそれほど集中しないので必然的に電子部材にとってそれほどエネルギ的に不経済ではない。ここで、高周波送信は、数学演算及び論理演算よりも多くのエネルギを消費する。
【0065】
図1は、一定の回転速度Wで走行する大型車タイプのタイヤケーシングのクラウンに対して垂直な加速度に対応する第1の原信号1bを灰色で示している。定期的かつ周期的に、曲線1bは近ゼロ値を通過する。この周期現象は、センサがタイヤケーシングの接地面を通過することに対応する。タイヤの接地面を通り抜けるセンサとタイヤケーシングの他の部分との間の移行は、センサが接地面に進入しているか又はそこから離脱しているかのどちらであるかに依存して立ち下がり側又は立ち上がり側で急激に発生する。これに加えて、第1の信号1bは、ホイールの1旋回単位で搬送波を辿り、ホイールの旋回周波数よりも高い周波数でこの搬送波を中心に振動することに注目されたい。これらの振動は、センサからの第1の信号1b上のノイズに対応し、このノイズは、道路のマクロ粗度を含む種々の予測不能な影響によって引き起こされる。
【0066】
1と添字表記した曲線は、地球の重力のみに関して補正済みの同じ加速度計信号を表し、この信号を補正済みの第1の信号1と呼ぶことにする。ここでの補正は、正弦波であり、補正は、接地面の中心、すなわち、値が近ゼロである信号の部分の境界を定める2つの波面から等距離のところに位置する点に位相調整されたものである。第1の信号1は、接地面を特徴付ける領域間で平坦気味であることを見ることができる。様々な方法段階をこの補正済みの第1の信号1に対して実施することが好ましい。
【0067】
図2は、第1の方法を用いてホイール旋回信号2を検出する方法を示している。この事例ではこの例をより的確に説明するために補正済みである第1の信号1から点線2で例示している閾値Bが決定される。タイヤケーシングに回転に関して確実に接続されたセンサが接地面に進入する又はそこから退出するところに物理的に対応する第1の信号1が点線2と交差する場所である区分の系列Iが識別される。次に、第1のホイール旋回信号2が、第1の区分、この事例ではI
1と、第2の区分、この事例ではI
6との間にあるものとして区切られる。ここでのホイール旋回信号は、ホイールの2回の全旋回を若干上回る旋回にわたるセンサからの加速度計信号を表す。接地面を通る3回の通過N
pas及び接地面を通る2回の通過N’
pasが計数される。従って、正のエネルギ密度S
+は、N’
pasを用いて評価し、エネルギ密度S
-は、N
pasを用いて評価する必要がある。
【0068】
点線3で表している閾値Bは、この場合に可変サンプリング周波数を用いた第1の信号1の部分にわたって評価された。取得された最大離散値は、第1の信号1のこの部分から抽出され、これをMAXと命名する。従って、閾値Bは、値MAXの10%と50%の間に含まれる値であり、この事例ではこの値は50%前後である。
【0069】
黒色の実線4で表している基準加速度γreferenceは、ホイールの有限回数の旋回に注目するために加算を同一パリティの区分間に制限しながらホイール旋回信号2に関する平均値として計算される。この事例では、ホイール旋回信号2の大部分にわたる基準加速度γreferenceを識別するために、I1とI5の間の奇数区分Iを使用するという選択をした。区分I2とI6とによって区切られたホイール旋回信号の部分にわたる基準加速度を計算することも等しく可能であり、この加速度は、離散化誤差はあるとしても同一の結果を生じる。この基準加速度は、第1のホイール旋回信号の区分uの値を累計し、次に、それをホイール旋回信号の終端で第1のホイール旋回信号内の区分個数で除することによって実時間で評価される。当然ながら、ホイール旋回信号は、同様のパリティの区分Iの間のホイール旋回信号の部分に制限される。
【0070】
図3は、第1の信号からの灰色のホイール旋回信号7の区切りの例示図である。この場合、この区切りに向けて使用されるのは第2の実施形態である。
【0071】
この例をより的確に説明するためにこの事例では補正された第1の信号から、点線5で例示している閾値Bが決定される。区分Iの系列が識別され、これらの区分は、タイヤケーシングに回転に関して確実に接続されたセンサが接地面に進入する又はそこから退出するところに物理的に対応する第1の信号が点線5と交差する場所にある。次に、この例示図では奇数区分Iのみに注目し、奇数区分Iから等距離に位置する系列の区分Jが構成される。これらの区分を
図3に垂直点線で識別している。
【0072】
次に、ホイール旋回信号7が、第1の区分、この事例ではJ1と、第2の区分、この事例ではJ3との間にあるものとして区切られる。ここでのホイール旋回信号7は、ホイールの2回の全旋回にわたるセンサからの加速度計信号を表す。接地面を通る2回の通過Npas及び接地面を通る2回の通過N’pasが計数される。従って、正のエネルギ密度S+は、N’pasを用いて評価し、エネルギ密度S-は、Npasを用いて評価する必要がある。
【0073】
点線5で表している閾値Bは、この場合に可変サンプリング周波数を用いた第1の信号1の部分にわたって評価された。取得された最大離散値は、第1の信号1のこの部分から抽出され、これをMAXと命名する。従って、閾値Bは、値MAXの10%と50%の間に含まれる値であり、この事例ではこの値は50%前後である。
【0074】
黒色の実線6で表している基準加速度γreferenceは、第1のホイール旋回信号7の平均値を用いて計算される。この基準加速度は、区分J1とJ3の間のホイール旋回信号の区分uの値を累計し、次に、それをホイール旋回信号の終端でホイール旋回信号7内の区分uの個数で除することによって実時間で評価される。
【0075】
この第2の実施形態は、エッジでのホイール旋回信号離散化誤差が正のエネルギ密度S+の計算において小さい変動しか生じないのでより良好な方法を表している。
【0076】
図4は、地球の重力に関して既に補正されて可変回転速度Wで走行する大型車タイプのタイヤケーシングのクラウンに対して垂直な加速度に対応する第1の信号1を示している。
【0077】
ここでは、薄灰色のホイール旋回信号2に関して点線3で表している閾値Bが決定される。
【0078】
閾値Bは、センサが接地面に進入すること又はそこから離脱することに物理的に対応する区分Iを識別することを可能にする。この解析では、タイヤケーシングの回転速度Wの変動に付随する誤差を制限するのに好ましいので、ホイール旋回信号は、少しのずれはあるとしてもホイールの1旋回に制限される。閾値Bは、それがホイール旋回信号2の前に位置する第1の信号1の部分の値MAXの半分未満に対応するように選ばれた。これは、ホイール旋回信号2を第1の区分、この事例ではI1と、第2の区分、この事例ではI3との間にあるものとして区切ることができることを意味する。従って、ホイール旋回信号2は、この特定の事例では、タイヤケーシングを支持するホイールの全旋回数に対応する。
【0079】
次に、このホイール旋回信号2に対して、基準加速度γreferenceが、実線の曲線4で表すこのホイール旋回信号2の平均値として計算される。
【0080】
回転速度Wは、ここでは加速フェーズで可変であるので、例えば同一パリティの区分Iによって区切られたホイールの旋回の区分の個数が実質的に減少することにも注目されたい。
【0081】
図5は、回転速度Wが一定である時のホイールの1回の旋回に対応する第2のホイール旋回信号10上の正のS
+及び負のS
-であるエネルギ密度の計算を説明するための例示図である。当然ながら、この方法は、回転速度Wが可変である場合又はホイール旋回信号がホイールの数回の旋回にわたって区切られる場合に同じである。
【0082】
閾値Aは、この事例では1.0に等しい値Cとホイール旋回信号の一部に対して識別された基準加速度γreferenceとの積としてここでは決定される。この閾値は、実線11によって具現化される。実際に、Cに対して0.7に等しい値を使用することが現実の信号に対して好ましい。ホイール旋回周波数よりも高い周波数でのホイール旋回信号10を中心とする判別可能な振動を伴う信号に対して多くの干渉が存在する場合に、0.5又は0.6に等しいC値を選ぶことができる。それとは対照的に、全体的に滑らかな路面上で取得される信号に対して、0.8又は0.9程度のC値を使用することができる。このC値は、方法の全ての段階にわたって固定される必要がある。
【0083】
正のエネルギ密度S+又は負のエネルギ密度S-は、第2のホイール旋回信号10と実線の曲線11で表している基準加速度γreferenceとの間の差の絶対値の和として計算される。区域S+によって区切られた面積は、離散化誤差があるとしても区域S-によって区切られた面積に等しくなければならない。
【符号の説明】
【0084】
10 第2のホイール旋回信号
11 基準加速度γreference
S+
1、S+
2 正のエネルギ密度
S- 負のエネルギ密度
【国際調査報告】