(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】食用製品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/20 20160101AFI20220215BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20220215BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20220215BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220215BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20220215BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20220215BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20220215BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20220215BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20220215BHJP
A23L 21/10 20160101ALI20220215BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20220215BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20220215BHJP
【FI】
A23L29/20
A23L29/231
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/238
A23L29/25
A23L29/262
A23L29/244
A23L29/281
A23L21/10
A23G3/42
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536097
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(85)【翻訳文提出日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 GB2019053686
(87)【国際公開番号】W WO2020128531
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268093
【氏名又は名称】ジェリー・ドロップス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jelly Drops Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ホーンビー,ルイス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】フートン,ニコラス ドーセット
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B041
【Fターム(参考)】
4B014GB07
4B014GK03
4B014GK04
4B014GK05
4B014GL01
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP02
4B014GP12
4B014GP14
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4B014GQ05
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4B018MD36
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4B041LK50
4B041LP01
4B041LP13
4B041LP16
4B041LP17
(57)【要約】
【要約】
本発明は菓子としての用途に適した、および医療的用途を有する食用製品に関する。本発明者らは該食用製品の調製のための組成物について記載し、該組成物は0.2質量%-3質量%の少なくとも1つの多糖類のゲル化剤を含み、残りは水である。好ましい組成物としては、該少なくとも1つの多糖類はアガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガムおよびカラギーナンの少なくとも1つである。該組成物は、好ましくは0.5質量%-2.00質量%のアガーおよび0.05質量%-1.0質量%のガラクトマンナン多糖類を含み残りは水である、ここで好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類は、アガーの量の10質量%-40質量%の量で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物が、0.2質量%-3質量%の少なくとも1つの多糖類のゲル化剤を含み、残りは水である、食用製品を調製するための組成物。
【請求項2】
該少なくとも1つの多糖類のゲル化剤が、アガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、グアーガム、蒟蒻、グリアンガム、アラビアガム、キサンタンガム;アルギン酸塩、アラビノキシラン、アロールート、カルボキシメチルセルロース、カシアガム、セルロース、カードラン、ジェラン、グアーガム、アラビアガム、カラヤガム、蒟蒻、葛、マシュマロルート、ペクチン、スターチ、キサンタンガムおよびβ-グルカンの内の1つ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに最大で、1.5質量%の量のゼラチンを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
該少なくとも1つの多糖類が、アガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガムおよびカラギーナンの少なくとも1つである、前述の請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
0.5質量%-2.00質量%のアガーおよび0.05質量%-1.0質量%のガラクトマンナン多糖類を含み、残りは水である、前述の請求項の何れか1項に記載の組成物であって、好ましくは該ガラクトマンナン多糖類がアガーの量の10質量%-40質量%の量で存在することを特徴とする、組成物。
【請求項6】
該ガラクトマンナン多糖類が、ガラクトース1基に対してマンノース約4基であるマンノースとガラクトースの基数比を有する、請求項5に記載の組成物であって、好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類がカロブガムまたはローカストビーンガムである、組成物。
【請求項7】
さらに少なくとも1つの電解質成分を最大で約0.5質量%の量で含む、前述の請求項の何れか1項に記載の組成物であって、任意には該少なくとも1つの電解質成分が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよび炭酸マグネシウムの少なくとも1つである、組成物。
【請求項8】
さらに以下を含む、前述の請求項の何れか1項に記載の組成物:
i)非栄養性甘味料;任意には非栄養性甘味料が最大で約0.1質量%の、好ましくは最大で約0.05質量%の、より好ましくは約0.025質量%の、量で存在する、非栄養性甘味料;および/または
ii)、任意には1以上のビタミン、ミネラル、脂肪またはアミノ酸である、1以上の栄養性組成物;および/または
iii)、任意にはリンゴ酸およびクエン酸の少なくとも1つであり、さらに任意には最大で約1.0質量%の量の、少なくとも1つの酸味料;および/または
iv)最大で約5質量%のスターチまたはスターチ由来の多糖類であって、好ましくは約1-3質量%、より好ましくは約2質量%であり、任意には該多糖類がマルトデキストリンである、多糖類。
【請求項9】
水分含有量が少なくとも92質量%、好ましくは少なくとも94質量%である、前述の請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
さらに、好ましくは最大で約0.5質量%、より好ましくは最大で約0.4質量%、の量の少なくとも1つの香料;および/または、好ましくは最大で約0.5質量%、より好ましくは最大で約0.2質量%、より好ましくは最大で約0.15質量%の量の少なくとも1つの着色料を含む、前述の請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
該組成物が無糖の組成物である、および/または、緩下作用を有する成分を含まない、前述の請求項の何れか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前述の請求項の何れか1項に記載の組成物を有する、またはそれから形成させる、菓子製品または水分補給療法製品。
【請求項13】
さらに製品内に少なくとも1つの液体ポケット含む、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
以下のステップを含む、食用製品を調製する方法:
i)少なくとも1つの多糖類のゲル化剤、および任意にはゼラチンを含む、ゲル化剤組成物を調製する;
ii)約1質量%から約5質量%、好ましくは約1質量%から約3質量%の量の、ゲル化剤組成物を水に添加する;
iii)水中で混合物を加熱して溶液にする;
iv)アガーの溶解温度を超える温度にまで該溶液を加熱する;
v)アガーの固化温度を超える温度にまで該溶液を冷却する;
vi)該溶液を堆積させる;および
vii)堆積した溶液を固め、固化した菓子製品を形成する。
【請求項15】
該少なくとも1つの多糖類のゲル化剤がアガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、グアーガム、蒟蒻、グリアンガム、アラビアガム、キサンタンガム;アルギン酸塩、アラビノキシラン、アロールート、カルボキシメチルセルロース、カシアガム、セルロース、カードラン、ジェラン、グアーガム、アラビアガム、カラヤガム、蒟蒻、葛、マシュマロルート、ペクチン、スターチ、キサンタンガムおよびβ-グルカンの内の1つ以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに最大で1.5質量%の量のゼラチンを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
該少なくとも1つの多糖類がアガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガムおよびカラギーナンの少なくとも1つである、請求項14-16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
該ゲル化剤組成物が0.5質量%-2.00質量%のアガーおよび0.05質量%-1.0質量%のガラクトマンナン多糖類を含み、残りは水である、請求項14-17の何れか1項に記載の方法であって、好ましくは該ガラクトマンナン多糖類が、アガーの量の10質量%-40質量%の量で存在する、方法。
【請求項19】
該ガラクトマンナン多糖類が、ガラクトース1基に対してマンノース約4基であるマンノースとガラクトースの基数比を有する、請求項18に記載の方法であって、好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類がカロブガムまたはローカストビーンガムである、方法。
【請求項20】
該ゲル化組成物が、アガーパウダーおよびガラクトマンナン多糖類パウダーを、約10重量部のアガーパウダーに対し、約1-4重量部のガラクトマンナン多糖類パウダーの割合で混合し、アガー-ガラクトマンナン多糖類混合物を形成することによって形成される、請求項14-19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
ステップii)で得られる該混合物が0.5質量%-2.00質量%のアガーおよび0.05質量%-1.0質量%のガラクトマンナン多糖類を含み、残りは水である、請求項14-20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
ステップi)のゲル化剤組成物がさらに以下を含む、請求項14-21の何れか1項に記載の方法:
a)非栄養性甘味料であって、任意には、該非栄養性甘味料が、ステップii)において水と一緒に形成された混合物の総含有量を基準にして、最大で約0.1質量%の、好ましくは最大で約0.05質量%の、より好ましくは約0.025質量%の量で存在する、非栄養性甘味料;および/または
iii)、好ましくはステップii)において水と一緒に形成された混合物の総含有量を基準にして、最大で約5質量%、より好ましくは約1-3質量%、さらに好ましくは約2質量%、の量のスターチまたはスターチ由来多糖類であって、ここで、任意には該多糖類はマルトデキストリンである。
【請求項23】
冷却ステップv)が以下の少なくとも1つの中間ステップを含む、請求項14-22の何れか1項に記載の方法:
a)該溶液を第1中間温度まで冷却し、および最大で約0.5質量%の量の少なくとも1つの電解質成分を添加するステップであって、ここで任意には該少なくとも1つの電解質成分は塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウムであり、任意には第1中間温度は約80℃である、ステップ、および/または
b)該溶液を、第1中間温度よりも低い第2中間温度まで冷却し、および酸性緩衝液混合物を添加するステップであって、ここで任意には該酸性緩衝液混合物にはクエン酸三ナトリウムならびにリンゴ酸およびクエン酸の少なくとも1つを含み、さらに任意には該酸性緩衝液混合物は最大で約1.0質量%の量まで加えることができる、なお、さらに任意には第2中間温度は約70℃である、ステップ、および/または
c)好ましくは最大で約0.5質量%、より好ましくは最大で約0.4質量%の量の、少なくとも1つの香料を添加するステップ;および/または、好ましくは最大で約0.5質量%、より好ましくは最大で約0.2質量%、より好ましくは最大で約0.15質量%の量の少なくとも1つの着色料を添加するステップ。
【請求項24】
該方法が、ストーブまたは硬化ステップを含まないことを特徴とする、請求項14-23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
さらに固化した菓子製品を殺菌するステップを含む、請求項14-24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
さらに固化した製品内に少なくとも1つの液体ポケットを形成する、任意にはその固化工程の間の時間において、該混合物が液体の泡を封じ込めるのに十分に粘性を持ち、しかし破裂することなく添加する量の液体を収容するために変形するのに十分な流動性を持つような時点で、液体を組成物に注入することによって、または鋳造や成形前に、1以上の凍らせた液体のペレットを混合物に加えることによって成形する事を含む、請求項14-25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
グミまたはゼリー製品のかたさを増強する方法であって、該方法がグミまたはゼリー製品を殺菌するステップを含む、方法。
【請求項28】
該グミまたはゼリー製品が請求項12または請求項13に記載の製品である、または請求項14から27項の何れか1項に記載の方法によって得られる製品である、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食用製品に関する。特に、本発明は菓子としての用途に適した、および治療用の用途を有する食用製品に関する。特に、本発明はグミおよびゼリーと呼ばれる形態の製品、ならびに組成物およびそれらを調製する方法、ならびにそれらの菓子として、および治療における使用、特に水分補給療法における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症はイギリスにおける主な死因であり、世界の認知症患者数は2050年までに少なくとも3倍の1億5000万人になるとされている。
【0003】
認知症患者は脱水症状になりやすく、彼らの脱水症状はいくつもの原因や引き金を有し得る。多くの患者がもはやのどの渇きを意識しなくなり、渇きを癒すことと水を飲むことが同じでなくなり、コップが何のためのものか忘れ(記憶)、コップとは何か認識できなくなり(失認)、コップを使うための筋肉の器用さが欠如し(協調)、コップを使うための「筋肉の記憶」が欠如し(手続き記憶)、またはコップを使用する計画を立てる能力が欠如したりする(実行機能)。
【0004】
認知症の人にとって液体の形の水分補給源は飲食するのが困難であり得る。それはしばしば気管に入りそして容易に吸引され、窒息を引き起こす。また、認知症の人に十分な水分補給をさせておくことは、介護者にとって多大な時間を消費させ得る。介護施設はこの要件を満たすことにしばしば苦労する。その結果、入居者の状態が加速度的に悪化し、生活の質を低下させ、および他の介護要件を悪化させ、よって入院が増加し、およびNHSなどの医療サービス提供者への負担を大きくさせ得る。イギリスにおける認知症にかかる支出は現在、年間で260億ポンドと推定されており、これは年間で認知症患者1人あたり32、250ポンドに等しい。
【0005】
水分は、細胞反応に加え、体温調節(発汗)、血圧の維持、および老廃物の排出など、広い範囲の使用のために人体に必要である。軽度の脱水であっても人に影響を及ぼし、疲労、頭痛、および集中力の低下を引き起こし得る。
【0006】
尿路感染症(UTI)は年配の人々のうちでは一般的な感染の種類である。仮に記憶障害や認知症をもつ患者がUTIを患うと、これはせん妄と呼ばれる突発的および深刻な混乱の原因となり得る。これは抗生物質による処置を受けるためにしばしば入院することになる、および致命的で有り得る腎臓障害や血液中毒を引き起こし得る。
【0007】
認知症患者においては、脱水症状はしばしば彼らの基礎疾患に誤って帰させられ、つまり、生命を脅かすようになるまで容易に見過ごされ得る。
【0008】
介護施設における設定においては、しばしば入居者が介護者に飲み物を飲ませてもらえるのはほんの短い機会である。このため1度に与えられる水分量が比較的多くなる。これはしばしば、腎機能が衰えた高齢者においては、液体の大部分が彼らの体内システムを素通りしてしまい、輸送される水分量が減少し、尿量が増加する結果となる。水分補給は、摂取した量ではなく、液体の吸収量に関係する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
世界的な高齢化社会を考えると、水分補給を改善し、同時に介護要件を軽減するための解決策が必要である。本発明は、認知症患者がより頻繁におよび自身で水分補給することを可能にする、水分補給用製品を提供する。本発明はこのような観点から考案された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
認知症患者の共通点として、彼らは甘いものを食べることが好きである。この種の食事が供された際に多くのが興奮し、夢中になることが観察されている。フィンガーフード型であればより飲食しやすく、認知症患者が直感的にどのように取り扱えばよいかわかる。
【0011】
その最も広い態様では、本発明は固体または半固体のマトリックス内に大きな割合の水分を含む食用製品を提供する。好適には、このマトリックスはハイドロコロイドまたはハイドロコロイド混合物によって形成される。
【0012】
結果的に、本発明の食用製品は、認知症患者に大きな容量の水分を固体の形で供する。液体または粘性のある水分補給源と比較して、これは患者にとって手にとりやすく、および飲食しやすい。これは特に手先の器用さや協調が損なわれている人に当てはまる。加えて、マトリックス内に水分を含むことによって、噛んだ時に水分が突然飛び出す、製品が「弾ける」ことがない。認知機能が低下している人にとっては、これは予想外の出来事であり、窒息の原因となる可能性がある。
【0013】
グミおよびゼリーは、菓子製品の望ましい硬さによって、最大約10-20質量%の水分含有量を有するゲル状製品を製造するために、菓子のバルキング(bulking)剤として働くハイドロコロイドを、バルク(bulk)甘味料を安定化するために使用する事に基づく、菓子の分類の1つである。低い水分含有量の製品はより硬いテクスチャーを有する。ハイドロコロイドは製造工程の加熱ステップの間に架橋することで網目構造を形成し、バルク甘味料分子がその中にトラップされ、半固体またはゲル状の構造を形成する。
【0014】
一般的には、グミまたはゼリー菓子中のバルク甘味料は、加熱前のグミまたはゼリー配合物の総質量を基準にして、70-85質量%の量で存在する。典型的には、バルク甘味料はスクロースおよびグルコースシロップの混合物である。グルコースシロップは、典型的にはバルク甘味料混合物の50-60質量%を形成し、残りがスクロースである。スクロースおよびグルコースのカロリー量の観点から、低糖のまたは無糖の製品を提供するために、代替バルク甘味料が使用されてきた。マルチトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト、アルロースなどのポリオールが使用され、または提案されてきた。しかし、ポリオールの過剰摂取は、人によっては下痢などの胃腸症状を引き起こし得る。加えて、ポリオールは低カロリーであるが、肝臓でグルコースに変換され得る。従って、ポリオールをバルキング剤として使用することは理想的とは言い難い。
【0015】
最も一般的に使用されるハイドロコロイドは、ゼラチン、スターチ、およびペクチンである。アガー、アラビアガム、およびカラギーナンなどの、その他のハイドロコロイドはしばしば、菓子製品の視覚的およびテクスチャーの特徴を変更するために、他のハイドロコロイドとの混合物として用いられる
【0016】
ゼラチンはグミおよびゼリーに使用されるおそらく最も一般的なハイドロコロイドである、および、主にウシまたはブタに由来するコラーゲンから得られるタンパク質である。ゼラチンは、典型的には配合物の材料の総質量を基準にして、約5-10%の量で使用される。ゼラチンは明らかにベジタリアンまたはビーガンの消費者の食事のためには適していない。
【0017】
ペクチンは果物、典型的には柑橘類の皮またはリンゴの搾りかすの抽出物から得られるガラクトマンナンハイドロコロイドである。ペクチンは、ゼラチンに比べてより低い濃度で硬いゲルの形成が可能であり、典型的には約1-2質量%である
【0018】
アガー(寒天アガーとも呼ばれる)は紅藻から抽出されるガラクトース多量体であり、約0.1-0.5質量%の低濃度で硬いゲルを形成する。
【0019】
グミまたはゼリー菓子の製造工程は使用するハイドロコロイドまたはハイドロコロイド混合物によって異なり、バルク甘味料およびハイドロコロイドもしくはハイドロコロイド混合物を、香料、着色料、および酸などの任意の追加材料と一緒に混合し、その後攪拌しながら加熱し、そしてハイドロコロイドに適当な固化温度まで、および要求する水分含有量に達するのに十分な時間冷却することができる。ハイドロコロイドがゼラチンである場合のレシピでは、典型的にはゼラチン溶液を冷却した砂糖シロップに添加する。
【0020】
そして、調理された組成物を最終的な製品の形状に成形する。典型的な工程には、:i)流体の塊をスラブに流し込み、混合物を冷却し、そして所望の形状に切断する;およびii)鋳型、典型的にはスターチ型に堆積させる、工程を含む。
【0021】
成形した後、グミまたはゼリーは、最大で約20質量%までの最終的な所望の水分含有量になるまで製品を乾燥させるため、余分な水分を除去する、硬化(curing)またはストーブ(storving)工程の対象となる。ストーブ条件は最終的な製品の特徴を満足させるために重要であり、満足のいく速度で十分な乾燥を促進するためには、典型的には適切な温度、相対湿度、および空気の流れを維持することに関わる。約50%以下の相対湿度が要求される。ストーブ温度はゲル化剤に依存し、典型的にはゼラチンの融解を避けるために、ゼラチンは24-35℃、アガーは32-43℃、およびペクチンゲルは49-66℃である。最適化された環境条件下であっても、8-24時間の放置時間が必要である。
【0022】
カーボントラスト社による2011年の報告では(Industrial Energy Efficiency Accelerator-Guide to the confectionery stoving sector-Report CTG035)、砂糖菓子部門のエネルギー消費の約25%、およびこのエネルギー消費関連の費用は、ストーブ工程に起因したものだと推測した。この報告は製造工程のストーブ段階のエネルギー効率向上のための様々な解決策を提案した。
【0023】
他の研究者は任意のストーブステップの必要性を回避する目的でグミおよびゼリー菓子の配合の変更を提案してきた。
【0024】
例えば、WO2018/134365は、最大で15質量%のゼラチン含有量を有し、および任意にはまたペクチンを含み、ここで、好ましくはゼラチンが225-250の範囲のブルーム値(bloom value)を有する;および菓子をシリコン型で成形する、高ゼラチン含有配合を提案する。高ブルームゼラチンを使用する事で、ストーブステップを必要とせず、固めるために冷却して25分後には菓子製品が完成状態になる、と発明者らは主張する
【0025】
米国特許第6419979号は、菓子配合物が成形前に水分を減少させるステップの対象となる、変更した工程を仮定している。配合物から水分を取り除いて中間の水分含有量にするために、この配合物は、かき取り式エバポレーターの第1の高温表面にフィルムとしてアプライされる。そしてこのフィルムは第1の高温表面から掻き取られ、第2の加熱面へと流れてゆき、ここでは、所定の最終的な総固体含有量になるまで、このスラリーからさらに水分を取り除く。そして、濃縮したスラリーを第2の表面から取り除き、および菓子製品へと成形する。製品が最終的な水分含有量のレベルで成形されるため、特定のストーブステップは必須ではない。しかし、これは製造工程がかなり複雑になり、多段式の掻き取り式エバポレーターを供するためにかなりの追加費用が必要になることということを理解されたい。1つの問題を解決する一方で、提案されている工程ではそれ自体に問題が発生する。
【0026】
したがって、グミおよびゼリー菓子の製造に関連する問題に対処するための代替のアプローチが必要である。これらの問題を念頭において本発明は考案された。
【発明の効果】
【0027】
本発明者らは、アガーおよびガラクトマンナン多糖類、好ましくはローカストビーンガムのハイドロコロイド混合物を用いることで、バルキング剤が水であるグミおよびゼリー製品を調製し得ることを見出した。典型的には最終的な水分含有量が20質量%以下である、よく知られたグミおよびゼリーと比較して、本発明者らの製品は90質量%またはそれ以上の水分含有量を有する。このように驚くべき高い水分含有量であるゆえに、本発明者らの製品は、上記のような水分補給療法に使用するための、水分補給製品として格別に有用である。
【0028】
さらに、本発明者らはバルク甘味料の必要性を回避し得るため、本発明者らの製品は無糖およびトゥースフレンドリーと認められるための規制要件を満足させ得る。
【0029】
加えて、本発明者らはこの混合物を用いて製造される製品を従来のストーブステップを必要とせずに調製し得ることを見出した。
【0030】
本発明者らはまた、固化した製品を殺菌ステップの対象とすることで製品の特性に有利な効果があることを見出した。
【0031】
1つの態様において、本発明は、0.2質量%-3質量%の少なくとも1つの多糖類のゲル化剤を含み、残りは水である、菓子製品を調製するための組成物を提供する。
【0032】
好ましくは、該少なくとも1つの多糖類のゲル化剤はアガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、グアーガム、蒟蒻、グリアンガム、アラビアガム、キサンタンガム;アルギン酸塩、アラビノキシラン、アロールート、カルボキシメチルセルロース、カシアガム、セルロース、カードラン、ジェラン、グアーガム、アラビアガム、カラヤガム、蒟蒻、葛、マシュマロルート、ペクチン、スターチ、キサンタンガムおよびβ-グルカンの内の1つ以上である。
【0033】
任意には、該組成物はさらに、最大で、1.5質量%の量のゼラチンを含む。
【0034】
好ましくは、該少なくとも1つの多糖類はアガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガムおよびカラギーナンの少なくとも1つである。
【0035】
1つの好ましい実施形態において、該少なくとも1つの多糖類のゲル化剤はアガーおよびガラクトマンナン多糖類である、または、それを含む。
【0036】
好ましくは、該組成物は0.5質量%-2.00質量%のアガーおよび0.05質量%-1.0質量%のガラクトマンナン多糖類を含み;残りは水である;ここで、好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類は、アガーの量の10質量%-40質量%の量で、存在する。
【0037】
好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類は、ガラクトース1基に対してマンノース約4基である、マンノースとガラクトースの基数比を有し;ここで、好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類はカロブガムまたはローカストビーンガムである。
【0038】
有利には、該組成物はさらに、少なくとも1つの電解質成分を最大で約0.5質量%の量で含む;ここで、任意には、該少なくとも1つの電解質成分は、1以上の塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよび炭酸マグネシウムである。
【0039】
任意には、該組成物はさらに、以下を含む:
i)非栄養性甘味料;ここで、任意には該非栄養性甘味料は、最大で約0.1質量%の、好ましくは最大で約0.05質量%の、より好ましくは約0.025質量%の量で存在する;および/または
ii)少なくとも1つの酸味料であって、任意にはリンゴ酸およびクエン酸の少なくとも1つ、さらに任意には、最大で約1.0質量%の量の酸味料;および/または
iii)最大で約5質量%のスターチまたはスターチ-由来の多糖類であって、好ましくは約1-3質量%、より好ましくは約2質量%であり、ここで、任意には該多糖類はマルトデキストリンである、多糖類。
【0040】
有利には、水分含有量は少なくとも92質量%、好ましくは少なくとも94質量%である。
【0041】
任意には、該組成物はさらに、好ましくは最大で約0.5質量%、より好ましくは最大で約0.4質量%の量の少なくとも1つの香料;および/または、好ましくは最大で約0.5質量%の量の、より好ましくは最大で約0.2質量%、より好ましくは最大で約0.15質量%の量の少なくとも1つの着色料を含む。
【0042】
本発明はまた、上記に定義するような組成物を有する、または、それから形成される菓子製品または水分補給療法製品を提供する。
【0043】
本発明はまた、菓子製品または水分補給療法製品などの食用製品を調製する方法を提供し、該方法は以下のステップを含む:
i)少なくとも1つの多糖類のゲル化剤、および任意にはゼラチンを含む、ゲル化剤組成物を調製する;
ii)約1質量%から約5質量%、好ましくは、約1質量%から約3質量%の量のゲル化剤組成物を水に添加する;
iii)水中で混合物を加熱して溶液にする;
iv)ゲル化剤組成物の溶解温度を超える温度にまで該溶液を加熱する;
v)ゲル化剤組成物の固化温度を超える温度にまで該溶液を冷却する;
vi)該溶液を堆積させる;および
vii)堆積した溶液を固め、固化した菓子製品を形成する
【0044】
好ましくは、該少なくとも1つの多糖類のゲル化剤はアガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、グアーガム、蒟蒻、グリアンガム、アラビアガム、キサンタンガム;アルギン酸塩、アラビノキシラン、アロールート、カルボキシメチルセルロース、カシアガム、セルロース、カードラン、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、カラヤガム、蒟蒻、葛、マシュマロルート、ペクチン、スターチ、キサンタンガムおよびβ-グルカンの内の1つ以上である。
【0045】
任意には、該ゲル化剤組成物はさらに、最大で、1.5質量%の量のゼラチンを含む。
【0046】
好ましくは、該少なくとも1つの多糖類は、アガー、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガムおよびカラギーナンの少なくとも1つである。
【0047】
好ましくは、該ゲル化剤組成物は0.5質量%-2.00質量%のアガーおよび0.05質量%-1.0質量%のガラクトマンナン多糖類を含み;残りは水である。;ここで、好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類はアガーの量の10質量%-40質量%の量で存在する。
【0048】
好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類は、ガラクトース1基に対してマンノース約4基である、マンノースとガラクトースの基数比を有し;ここで、好ましくは、該ガラクトマンナン多糖類はカロブガムまたはローカストビーンガムである。
【0049】
好ましくは、ゲル化組成物は、アガーパウダーおよびガラクトマンナン多糖類パウダーを、約10重量部のアガーパウダーに対し、約1-4重量部のガラクトマンナン多糖類パウダーの割合で混合し、アガー-ガラクトマンナン多糖類混合物を形成することによって形成される。
【0050】
好ましくは、ステップii)で得られる該混合物は、0.5質量%-2.00質量%のアガーおよび0.05質量%-1.0質量%ガラクトマンナン多糖類を含み、;残りは水である。
【0051】
有利には、ステップi)の該ゲル化剤組成物はさらに以下を含む:
a)非栄養性甘味料;ここで、任意には該非栄養性甘味料は、ステップii)において水と一緒に形成された混合物の総含有量を基準にして、最大で約0.1質量%の、好ましくは最大で約0.05質量%の、より好ましくは約0.025質量%の量で存在する;および/または、
iii)好ましくはステップii)において水と一緒に形成された混合物の総含有量を基準にして、最大で約5質量%、より好ましくは約1-3質量%、より好ましくは約2質量%の量のスターチまたはスターチ-由来の多糖類であって、ここで、任意には該多糖類はマルトデキストリンである。
【0052】
好ましくは、冷却ステップv)には少なくとも1つの以下の中間ステップを含む:a)該溶液を第1中間温度まで冷却し、および最大で約0.5質量%の量の少なくとも1つの電解質成分を添加する;ここで、任意には該少なくとも1つの電解質成分は塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウムである;ここで、任意には第1中間温度は約80℃である、および/または
b)溶液を第1中間温度より低い、第2中間温度まで冷却し、および酸性緩衝液混合物を添加する、ここで、任意には該酸性緩衝液混合物にはクエン酸三ナトリウム、ならびにリンゴ酸およびクエン酸の少なくとも1つを含み、さらにここで、任意には該酸性緩衝液混合物は最大で約1.0質量%の量まで加えることができる;さらにここで、任意には第2中間温度は約70℃である;および/または
c)好ましくは最大で約0.5質量%の、より好ましくは、最大で約0.4質量%の量の少なくとも1つの香料;および/または、好ましくは最大で約0.5質量%の、より好ましくは、最大で約0.2質量%の、より好ましくは、最大で約0.15質量%の量の、少なくとも1つの着色料を添加する。
【0053】
特に、本発明の方法は、該方法がストーブまたは硬化ステップを含まないことによって特徴づけられ得る。
【0054】
好ましくは、該方法はさらに、固化した製品を殺菌するステップを含む。
【0055】
本発明はさらに、グミまたはゼリー製品のかたさを増強する方法を提供し、該方法はグミまたはゼリー製品を殺菌するステップを含む。
【0056】
さらなる態様では、製品は、製品本体内に少なくとも1つの液体ポケットを持って提供される。該または各液体ポケットは、その固化工程の間の時間で、該混合物が液体の泡を封じ込めるのに十分に粘性を持ち、しかし破裂することなく添加する量の液体を収容するために変形するのに十分な流動性を持つような時点で、液体を組成物に注入することによって形成され得る。
【0057】
好適には、該少なくとも1つの液体ポケットは、製品本体への注入によって製品本体部に導入される。あるいは、該少なくとも1つの液体ポケットは、鋳造や成形前に、1以上の凍らせた液体のペレットを混合物に加えることで形成される。
【0058】
本発明の上記の、およびその他の態様は、一例として、添付の実施例を参照して、ここにさらに詳細に記載される。
【0059】
文脈で示される場合を除いて、全てのパーセンテージは質量パーセントで与えられ、および関連する工程の温度において、本質的に液体であるような水または材料についての参照は別として、参照は乾燥材料の質量パーセントである。
【0060】
材料はすべて食品用の材料である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0061】
調製にかかる実施例1
:1000gのバッチを作成する。
材料:
【表A】
【0062】
ハイドロコロイド混合物を形成するためにアガーおよびローカストビーンガムパウダーを混合した。塩化ナトリウム、塩化カリウム、安息香酸ナトリウムおよびソルビン酸カリウムを含む塩混合物を調製した。クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸、およびクエン酸を混合することで酸性緩衝液混合物を調製した。
【0063】
ハイドロコロイド混合物を、スクラロースおよびマルトデキストリンと一緒に、篩にかけながら944.91gの水に加えた。該混合物を攪拌しながら、アガーの溶解温度(100℃)になるまでゆっくりと加熱した。該混合物を、この温度で攪拌しながら5分間沸かし、アガーおよびローカストビーンガムを溶かした。
【0064】
該混合物を約80℃になるまで冷却した(約20分の時間を置いた)。該塩混合物を、溶液になるように攪拌しつづけながら、溶かした溶液に加えた。
【0065】
該溶液を約70℃の温度になるまで冷却し、および該酸性緩衝液混合物を攪拌しながら添加した。アガーが熱および酸性条件下にさらされると、そのゲル化特性が低減する。該酸性緩衝液混合物はこの効果を中和する。
【0066】
着色料および香料を、望ましい味わいと色を得るために適切な量で、および香料および着色料の材料にとり適切な温度で、該混合物に添加した。着色料および香料のパウダーは、添加する前に少量の水で希釈しておくと、均一な分散及びロスの低減のために都合がよい。
【0067】
該混合物の質量を計側し、適切な水分パーセンテージおよび配合物の総質量を維持するために必要なだけの水を添加した。
【0068】
該混合物をアガーの固化温度を超える温度(テングサアガーでは約40℃)に保ちつつ、該混合物を望みの形の鋳型に流し込み、そして該鋳型を、成形ゼリーがその成型後の形を保持するのに十分に安定するまで冷蔵した。典型的には、体積が約13ml、および長さが約4mmおよび最大点での直径が約30mmであるティアドロップ形の成形ゼリーでは、4℃で約10分後である。
【0069】
上記のように、いくつかの実施形態においては、製品は製品の本体部に少なくとも1つの液体ポケットを含んで提供される。各液体ポケットは、その固化工程の間の時間で、該混合物が液体の泡を封じ込めるのに十分に粘性を持ち、しかし破裂することなく添加する量の液体を収容するために変形するのに十分な流動性を持つような時点で、液体を組成物に注入することによって形成され得る。
【0070】
好適には、該少なくとも1つの液体ポケットは、製品本体への注入によって製品本体部に導入される。あるいは、該少なくとも1つの液体ポケットは、鋳造や成形前に、1以上の凍らせた液体のペレットを混合物に加えることで形成される。
【0071】
局所的な液体ポケットを設ける利点は、噛んだ時に、完成品から少量の液体が放出されるということである。これは窒息を起こすには十分な量ではないが、口内を湿らせ、口内の乾燥を克服する。口内の乾燥は人の嚥下能力を低下させ、これは特に認知能力が低下した人など、水分摂取量が少ない人に多く見られる。
【0072】
殺菌
重要なことに、本発明者らの研究から、本発明者らは固化した製品を殺菌ステップの対象とすることで製品の特徴に有利な効果があることを見出した。
【0073】
固化した製品を密封したトレイの中に置き、かかる製品の最も冷たい部分が70℃で5分間と同等の致死性になるように湯煎した。例えば、本発明者らは固化した製品を75℃で約25分間湯煎することで殺菌した。その他の殺菌技術、温度および時間は当業者によく知られており、本発明者らの工程と同等に適切であって、それらにはスチームジャケット付きオーブン、マイクロ波殺菌装置などを含む。
【0074】
テクスチャー解析
成形ゼリーを、そのかたさ(firmness)、ばね性(springiness)、および咀嚼力(bite force)といったテクスチャーパラメーターを解析するために、テクスチャー解析の対象とした。サンプルとして殺菌前と殺菌後の両方を解析した。
【0075】
5kgのロードセルを備えた Stable Micro System TA XT Plus テクスチャーアナライザーを圧縮モードで使用した。各サンプルについて15片を測定した。
【0076】
完全圧縮試験では直径25mmのシリンダーを用いて、サンプルが破断するまで圧縮した。用いた設定は以下である:
【表B】
【0077】
本試験において、かたさは本試験で得られた最大ピーク力として定義され、もろさ(Fracturability)はこのピークの距離として定義される。弾性(Elasticity)は5mmの圧縮およびピーク力の間の曲線の傾きとして算出される。3mmの圧縮におけるピーク力を同様に決定した。
【0078】
テクスチャープロファイル解析(TPA)
テクスチャープロファイル解析には、物質のばね性(splinginess)を算出するために、2回圧縮試験を用いた。テクスチャープロファイルは本発明者らの菓子製品および水分補給療法製品の両者にとって重要な検討事項である。例えば、製品が柔らかすぎる(flexible)、またはもろすぎる(frangible)と、特に、手先の器用さが損なわれている人にとって、持ち上げるのが困難で有り得る。したがって、十分なかたさ、もろさ、および弾性、は重要な検討事項である。加えて、製品は、特に、あごの筋肉が弱い人や、歯の一部または全部を失っている人のために、簡単に噛むことができ、および口内で容易に破断および破裂し、力や噛むことはほんのわずかでよい必要がある。しかし、製品は製造およびパッケージングの工程に耐え得る必要がある。
【0079】
サンプルは45mmのフラットディスクプローブを用いて、その高さの30%(歪み)まで圧縮した。用いた設定は以下である:
【表C】
【0080】
本試験で、ばね性は1回目の圧縮の後にどれぐらいサンプルがもとに戻ったかということで定義される。(その高さのパーセンテージで示す)。
【0081】
咀嚼試験
本試験は、「トゥースプローブ」によってサンプルを切断することで、サンプルへの最初の噛み込みを再現する。本試験で、咀嚼力はサンプルを切断し通すのに必要な最大力として定義される。用いた設定は以下である:
【表D】
【0082】
全てのテクスチャー解析試験から得られた結果と、標準偏差を以下の表1に示す。
【表1】
【0083】
これらの結果から見出せることとして、固化した製品の殺菌ステップの追加は、製品のかたさ、弾性、咀嚼力にとても驚くべき増加を引き起こす。製品の非常に高い水分含有量を踏まえるとこれは特に驚くべきことである。
【0084】
栄養分析
殺菌前の製品および殺菌後の製品の両者を栄養分析の対象にし、100gあたりの結果を以下の表2に示す:
【表2】
驚くべきことに、表1に示した製品のかたさ、弾性、および咀嚼力の上昇は、水分含有量の減少と引き換えではなかった。表2から見出せることとして、試験した製品の水分量は、殺菌前と殺菌後で同様に維持されていた。
【0085】
【0086】
パウダー化した材料すべてを、約50℃に温めた水に、ゆっくりと攪拌しながら、ゆっくりと加えた。そして、この混合物を、全てのパウダーが溶解するまで、70-80℃に加熱した。そして、香料と着色料を加え、混合物が標準的な工業用食品生産の射出成形機を使用するのに適した、1,000-5,000センチポアズ(1-5Pa.s)の粘性を有するようになるまで完全に混合した。
【0087】
混合物を、例えばティアドロップ型の、三次元形状を形成するために鋳型に注入した。その後、混合物を冷却して固化時間を短縮した。4℃で冷却すると固化時間は15分、-11℃で冷却すると固化時間は9分となった。
【0088】
バリエーション
上記に概説した手順に従って、以下のゲル化剤の混合物を用いて製品を調製した。例示したパーセンテージは、成形または堆積の前の溶液中の全ての乾燥成分および液体成分の合計質量に基づいた質量パーセントである。
i)ゼラチン(1.38質量%)およびアガー(0.83質量%)
ii)アガー(1.4質量%)およびペクチン(0.47質量%)
iii)アガー(1.4質量%)、ペクチン(0.47質量%)およびローカストビーンガム(0.9質量%)
iv)ジェランガム(0.25質量%)
v)カラギーナン(1.5質量%)
vi)ジェランガム(1.5質量%)およびローカストビーンガム(0.75質量%)
【0089】
上記の組み合わせ全てにおいて、手に取るのによいかたさ、およびよい見た目のテクスチャーを有する素晴らしい質の製品となった。
【0090】
上記レシピの水の全部または一部を、フルーツジュース、牛乳、シリアル、野菜、ナッツミルクなどの、他の飲用可能な水ベースの液体に置き換えてもよい。
【0091】
本発明は、水分補給療法を目的として、特に高い水分含有量の製品を提供するために考案されたが、組成物および方法は、菓子の製造に対しても同様に適用可能であることは、上記の議論から理解されるだろう。菓子の分野においては、90質量%台またはそれ以上の水分含有量は要求され得ない。言い換えると、典型的な菓子製品の全てのバルク甘味料を水分で置き換える事を必要とはし得ない。したがって、特にグミおよびゼリー菓子の分野において、20質量%以上の水分含有量は特定の製品のために選ばれるだろう。好ましくは、本発明に従って、菓子製品の水分含有量は少なくとも25質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上または70質量%以上である。最も好ましくは、本発明に従って、菓子製品は少なくとも約80質量%の水分(または水ベースの飲料)を含む。
【0092】
水分補給療法
上記に詳細に記載するように、本発明の目的は、排他的にではなく特に認知症患者に対して、水分補給療法として使用するために適した製品を提供することである。この目的のために、本発明の製品を、人の製品への関心を惹き、および使いやすい形状で提供する事は有利である。本発明者らは製品を「1口サイズ」に形成した、ティアドロップ型の製品は特に成功である事を見出した。
【0093】
上記に記載するシステムの利点は、得られた固体の水分補給マトリックスがより頻繁に飲食されることである。この形で提供されれば固体の水分補給マトリックスを消費することがより楽しくなり得る。これは特に、従来の手法を用いることでは、水分補給に苦労していたであろう、認知能力の低い人の場合にいえる。
【0094】
製品をティアドロップ型で提供する他の利点としては、その形状によって製品が使用しやすくなっていることである。ティアドロップ型であれば、トレイから手に取りやすいように提供され得る。これは、手先の器用さが損なわれている、視力が弱い、握力が低下している、および/または協調性が低下している人にとって有益である。
【0095】
液体を固形マトリックス内にいれ、「1口サイズ」型で提供する事のさらなる利点は、それが行動を励ます、つまり、「少量をしばしば」食べるということである。これにより体に、製品から摂取した水分を効率的に処理する時間を与え得るため、望ましい水分補給となる。
【0096】
液体を固形マトリックス内にいれ、1つずつ分かれた形で提供することの他の利点は、いくつ食べたかを容易に評価できることである。これにより介護者らは、製品からどれぐらいの液体を被介護者らが摂取したか容易に評価でき、よって自信をもって十分な水分補給を確認することができる。
【0097】
製品は、吸収される液体の割合や量を高める添加剤、例えば電解質、または炭水化物;またはビタミンやミネラルなどの栄養成分と一緒に混合されてよい。
【0098】
上記に記載のシステムの利点は、最大の水分補給量を提供し得る点である。それにより吸収される液体の量を最適化する。このシステムは摂取が必要な固体マトリックス内の水分量を低減する。これは食事量が制限されているような状況で有益である。このことはまた、人によっては通常の水分摂取から十分な水分の吸収を阻む要因で有り得る、尿排出量を低減する事ができるという点で有益である。
【0099】
本発明は、従来のバルク甘味料のバルキング剤を、バルキング剤としてその全体を水に効果的に置き換えることで、高い水分含有量の菓子を実現した、グミおよびゼリー配合物を提供するものである。ポリオールまたは胃腸に悪影響を及ぼすその他のバルク甘味料に頼ることなく、組成物は無糖の菓子を提供する。
【0100】
本発明者らはまた、驚くべきことに、該組成物は時間のかかるストーブ工程を必要とせずに手に取りやすい固い製品へと堆積し得ることを見出した。
【0101】
本発明者らはまた、本発明の製品は、製品の成型にいかなる悪影響も及ぼさずに、殺菌の対象とし得ることを見出した。さらに、殺菌は、製品の物理的特性を驚くほどに高める効果を有する。
【0102】
結果として、本発明は、硬化もしくはストーブ工程の必要がなく、殺菌ステップの対象とし得る、そして比較的大きいサイズに成形した場合においても、手でつかむのに十分にかたい製品を製造することができる、グミおよびゼリー製品ならびにグミおよびゼリー製品を製造する方法を提供する。本発明は、最大で約95質量%以上の水分含有量を有する製品を製造し得るという点で一層驚くべきものである。
【国際調査報告】