(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】トランスミッション・システム
(51)【国際特許分類】
F16D 11/04 20060101AFI20220215BHJP
F16H 3/083 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
F16D11/04 C
F16H3/083
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536103
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 GB2019052444
(87)【国際公開番号】W WO2020128412
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268211
【氏名又は名称】ゼロシフト トランスミッションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クイン、ニール
【テーマコード(参考)】
3J056
3J528
【Fターム(参考)】
3J056AA02
3J056AA63
3J056BC02
3J056BE07
3J056CA02
3J056CC33
3J056DA04
3J056DA18
3J056GA05
3J056GA12
3J528EA21
3J528EA25
3J528EA28
3J528EB74
3J528FC32
3J528FC42
3J528GA02
(57)【要約】
トランスミッション・システムであって、駆動源80から駆動を直接受けるように配置された第1の入力軸1と、駆動中断手段86、例えば摩擦クラッチ・デバイスを介して駆動源80から駆動を受けるように配置された第2の入力軸3と、第1の副軸5と、第1の入力軸1に回転可能に取り付けられたギア要素19と、第1の副軸5に取り付けられたギア要素15と、第1の入力軸1に回転可能なように取り付けられたギア要素19を、第1の入力軸1との回転のために選択的にロックするように、及び第1の副軸5に取り付けられたギア要素15を、第1の入力軸1との回転のために選択的にロックするように配置された第1のセレクタ・アセンブリ29とを含み、第1のセレクタ・アセンブリ29は、単一の係合リング35を有し、係合リング35は、第1のセットの係合要素28aを有する第1の側面35aであって、各係合要素28aが、第1の入力軸1に回転可能に取り付けられたギア要素19に関連する第1のセットの駆動形成体20aに第1の回転方向において駆動係合するように配置された駆動面43aと、第2の回転方向において第1のセットの駆動形成体20aに対して滑るように配置され、それによって第1のセットの駆動形成体20aとの駆動係合を防ぐ非駆動面45a、例えば斜面とを有している、第1の側面、及び第2のセットの係合要素28bを有する第2の側面35bであって、各係合要素28bが、第1の副軸5に取り付けられたギア要素15に関連する第2のセットの駆動形成体20bに第2の回転方向において駆動係合するように配置された駆動面43bと、第1の回転方向において第2のセットの駆動形成体20bに対して滑るように配置され、それによって第2のセットの駆動形成体20bの駆動係合を防ぐ非駆動面45b、例えば斜面とを有している、第2の側面を有する、トランスミッション・システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から駆動力を直接受けるように配置された第1の入力軸と、
駆動中断手段を介して前記駆動源からの駆動力を受けるように配置された第2の入力軸と、
第1の副軸と、
前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられたギア要素と、
前記第1の副軸に取り付けられたギア要素と、
前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素を、前記第1の入力軸との回転のために選択的にロックするように、及び前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素を、前記第1の入力軸との回転のために選択的にロックするように配置された第1のセレクタ・アセンブリと
を有するトランスミッション・システムであって、
前記第1のセレクタ・アセンブリは単一の係合リングを有し、前記係合リングは、
第1のセットの係合要素を有する第1の側面であって、各係合要素が、前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素に関連する第1のセットの駆動形成体に第1の回転方向で駆動係合するように配置された駆動面、及び第2の回転方向において前記第1のセットの駆動形成体に関して滑るように配置され、それにより前記第1のセットの駆動形成体との駆動係合を防ぐ非駆動面を有する、第1の側面と、
第2のセットの係合要素を有する第2の側面であって、各係合要素が、前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素に関連する第2のセットの駆動形成体に第2の回転方向で駆動係合するように配置された駆動面、及び前記第1の回転方向において前記第2のセットの駆動形成体に関して滑るように配置され、それにより前記第2のセットの駆動形成体との駆動係合を防ぐ非駆動面を有する、第2の側面と
を有している、トランスミッション・システム。
【請求項2】
各係合要素の前記非駆動面が、そのそれぞれの駆動面に隣接する位置から、曲がった経路に沿って延びている、請求項1に記載のトランスミッション・システム。
【請求項3】
前記非駆動面が、そのそれぞれの駆動面に隣接する位置から、弓形の経路に沿って周方向に延びている、請求項1又は2に記載のトランスミッション・システム。
【請求項4】
前記非駆動面が、そのそれぞれの駆動面に隣接する位置から、前記係合リングのそれぞれの側面の前記係合要素のうちの隣接する係合要素の前記駆動面に隣接する位置まで、前記弓形の経路に沿って周方向に延びている、請求項3に記載のトランスミッション・システム。
【請求項5】
前記非駆動面が、前記係合リングの前記それぞれの側面の周辺部分で、前記弓形の経路に沿って延びている、請求項3又は4に記載のトランスミッション・システム。
【請求項6】
各非駆動面の前記弓形の範囲が、90度から360度の範囲内である、請求項3から5までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項7】
前記係合リングの各側面の係合要素の数が、4つ以下、3つ以下、2つ以下であり、或いは、単一の係合要素のみが、前記係合リングの各側面に設けられる、請求項1から6までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項8】
前記係合リングの前記第1の側面の各非駆動面が、前記第2の回転方向にそのそれぞれの駆動面から傾斜しており、また前記係合リングの前記第2の側面の各非駆動面が、前記第1の回転方向にそのそれぞれの駆動面から傾斜している、請求項1から7までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項9】
そのそれぞれの周方向に延びる弓形の経路に沿った各非駆動面の斜面の角度が、一定である、請求項2から4に従属するときの請求項8に記載のトランスミッション・システム。
【請求項10】
各非駆動面が、その弓形の経路に沿って実質的に平面状である、請求項1から9までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項11】
各駆動面が、平面状である、請求項1から10までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項12】
各駆動面が、前記係合リングの中心から放射状に配置されている、請求項1から11までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項13】
前記係合リングが、前記第1の入力軸に形成された外部スプラインと係合するように、又は前記係合リングと前記第1の入力軸の間に位置するスリーブ部材の形の中間構成要素と係合するように配置された内部スプラインを含み、前記スリーブ部材が、前記第1の入力軸とのスプライン接続のための内部スプラインと、前記係合リングの前記内部スプラインとのスプライン接続のための外部スプラインとを含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項14】
前記係合リングの軸方向の動きを制御するためのアクチュエータ機構を含み、前記アクチュエータ機構が、前記係合リングと係合するシフト・フォークと、前記シフト・フォーク及び係合リングの動きを制御するための単一シフト・ドラムとを含む、請求項1から13までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項15】
前記アクチュエータ機構が、ばねクレードルを含む、請求項14に記載のトランスミッション・システム。
【請求項16】
2速トランスミッション・システムでからなる、請求項1から15までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項17】
第2の入力軸に回転可能に取り付けられたギア要素と、前記第2の入力軸に取り付けられた前記ギア要素を、前記第2の入力軸との回転のために選択的にロックするための第2のセレクタ・アセンブリとを含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項18】
前記第2のセレクタ・アセンブリが、従来のシンクロメッシュ又はドッグ・クラッチ・タイプ・アセンブリ・セレクタ・アセンブリである、請求項17に記載のトランスミッション・システム。
【請求項19】
前記第2のセレクタ・アセンブリが、前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素を、前記第2の入力軸との回転のために選択的にロックするように配置されている、請求項17又は18に記載のトランスミッション・システム。
【請求項20】
出力軸を含む、請求項1から19までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項21】
前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素とかみ合う、前記出力軸に取り付けられたギア要素を含む、請求項20に記載のトランスミッション・システム。
【請求項22】
前記トランスミッションのファースト・ギアが、前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素と、前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素とかみ合う、前記出力軸に取り付けられた前記ギア要素とを含む、請求項21に記載のトランスミッション・システム。
【請求項23】
前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とかみ合う、前記出力軸に取り付けられた前記ギア要素を含む、請求項20から22までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項24】
前記トランスミッションのセカンド・ギアが、前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素と、前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とかみ合う、出力軸に取り付けられた前記ギア要素とを含む、請求項23に記載のトランスミッション・システム。
【請求項25】
第2の副軸(7)を含む、請求項1から24までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項26】
前記第2の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とかみ合う、前記第2の副軸に取り付けられたギア要素を含む、請求項25に記載のトランスミッション・システム。
【請求項27】
前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素とかみ合う、前記第2の副軸に取り付けられたギア要素を含む、請求項25又は26に記載のトランスミッション・システム。
【請求項28】
前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素と前記第2の入力軸との間のトルク経路を含む、請求項1から27までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項29】
前記第1の入力軸及び前記第2の入力軸のうちの1つが、管状であり、且つ前記第1の入力軸及び前記第2の入力軸のうちの他方の少なくとも一部を収容し、また前記第1の入力軸及び前記第2の入力軸の少なくとも一部が、実質的に同軸である、請求項1から28までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項30】
前記トランスミッション・システムの動作を制御するための制御システムを含む、請求項1から29までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項31】
ファースト・ギアでのオーバーラン時に、トルクが、ファースト・ギア列を介して出力軸から前記第2の入力軸へとルート決めされる、請求項20に従属するときの請求項20から30までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項32】
セカンド・ギアでの駆動時に、トルクが、前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素を介して前記第2の入力軸から前記出力軸へとルート決めされる、請求項20に従属するときの請求項20から31までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項33】
セカンド・ギアでのオーバーラン時に、トルクが、前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素を介して前記出力軸から前記第2の入力軸へとルート決めされる、請求項20に従属するときの請求項20から32までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項34】
ファースト・ギアでの駆動時に、トルクが、前記第2の副軸を介して前記第2の入力軸から前記出力軸へとルート決めされる、請求項20及び25に従属するときの請求項20から33までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項35】
ファースト・ギアでのオーバーラン時に、トルクが、前記第2の副軸を介して前記出力軸から前記第2の入力軸へとルート決めされる、請求項20及び25に従属するときの請求項20から34までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項36】
ファースト・ギアからセカンド・ギアへのパワー・オン・シフトアップ中にトルクを継続的に前記出力軸に供給するように配置された、請求項20に従属するときの請求項20から35までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項37】
セカンド・ギアからファースト・ギアへのパワー・オン・シフトダウン中にトルクを継続的に前記出力軸に供給するように配置された、請求項20に従属するときの請求項20から36までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項38】
ファースト・ギアからセカンド・ギアへのパワー・オフ・シフトアップ中に前記第1の入力軸及び前記第2の入力軸のうちの少なくとも1つにトルクを供給するように配置された、請求項1から37までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項39】
セカンド・ギアからファースト・ギアまでのパワー・オフ・シフトダウン中に前記第1の入力軸及び前記第2の入力軸のうちの少なくとも1つにトルクを供給するように配置された、請求項1から38までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項40】
パワー・オン・シフトアップ中に、トルク・フローを、前記第2の入力軸と前記第2の副軸と前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素とを含む第1のトルク経路から、前記第1の入力軸と前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素とを含む第2のトルク経路に、前記第2の入力軸と前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とを含む第3のトルク経路に、切り替えるように配置された、請求項25に従属するときの請求項1から39までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項41】
パワー・オン・シフトダウン中に、トルク・フローを、前記第2の入力軸と前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とを含む第1のトルク経路から、前記第1の入力軸と前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素とを含む第2のトルク経路に、前記第2の入力軸と前記第2の副軸と前記第1の副軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とを含む第3のトルク経路に、切り替えるように配置された、請求項25に従属するときの請求項1から40までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項42】
パワー・オフ・シフトアップ中に、トルク・フローを、前記第2の入力軸と前記第2の副軸と前記第1の副軸に取り付けられた前記ギア要素とを含む第1のトルク経路から、前記第1の入力軸と前記第1の入力軸に取り付けられた前記ギア要素とを含む第2のトルク経路に、前記第2の入力軸と前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とを含む第3のトルク経路に、切り替えるように配置された、請求項25に従属するときの請求項1から41までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項43】
パワー・オフ・シフトダウン中に、トルク・フローを、前記第2の入力軸と前記第1の入力軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とを含む第1のトルク経路から、前記第1の入力軸と前記第1の入力軸に取り付けられた前記ギア要素とを含む第2のトルク経路に、前記第2の入力軸と前記第2の副軸と前記第1の副軸に回転可能に取り付けられた前記ギア要素とを含む第3のトルク経路に、切り替えるように配置された、請求項25に従属するときの請求項1から42までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項44】
前記第1、第2及び第3のトルク経路の間で切り替えるために、前記第1のセレクタ・アセンブリ、前記第2のセレクタ・アセンブリ、及び前記駆動中断手段のうちの少なくとも1つを動作させることを含む、請求項40から43までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項45】
前記駆動中断手段が、摩擦クラッチを有する、請求項1から44までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項46】
各非駆動面が、傾斜部を有する、請求項1から45までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項47】
前記係合リングの前記第1の側面の前記駆動面が、前記係合リングの前記第2の側面の前記駆動面から回転的にオフセットされている、請求項1から46までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システム。
【請求項48】
駆動源、摩擦クラッチ・デバイス及び請求項1から47までのいずれか一項に記載のトランスミッション・システムを含む、ドライブトレイン。
【請求項49】
前記摩擦クラッチ・デバイスが、湿式摩擦クラッチ又は乾式摩擦クラッチである、請求項48に記載のドライブトレイン。
【請求項50】
前記駆動源が電気モータを含む、請求項49に記載のドライブトレインを含む電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッション・システムに関し、より詳細には、車輪に駆動(drive;駆動力)を与えるための電気モータを有する車両において使用するために構成されたトランスミッション・システム、及びこのトランスミッション・システムにおいて使用するためのセレクタ・アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の従来の単一クラッチ・シンクロメッシュ・トランスミッション・システムでは、現在のギアが解除され、新しいギアが係合される前に、クラッチを操作することによって、動力源、例えばエンジン又はモータからトランスミッションの係合を外すことが必要である。新しいギアを係合させようと試みるときに、動力が係合を外されない場合、シンクロメッシュは、新しいギア要素を係合させることができず、又は、トランスミッションを損傷する及びトランスミッションにおいてトルク・スパイクを生み出すリスクを有する係合を強いられなければならない。これは、殆どの場合、エンジンの速度が新しいギアの速度にマッチしていないからである。従来のギアボックスを有しエンジンを装備した乗用車などのモータ車両について、新しいギア比の選択は、通常は、完了までに0.5から1秒を要する。したがって、例えばより高いギアが選択されるとき、時間遅延は、クラッチがエンジン及びトランスミッションを再接続する前に、エンジンが新しいギアの速度により密接にマッチするように(それ自体の慣性によって)その速度を下げることを可能にし、それによって、動力が再適用されるときに生じるトルク・スパイクの可能性を低減する。
【0003】
デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT:Dual Clutch Transmission)システムは、ギアを入れ替えるときに2つのクラッチを使用してシームレスにトルクの伝達を引き渡すことによって、この問題に対処しようとした。しかしながら、DCTにはいくつかの欠点があり、例えば、DCTは、重い及び高価な2つの摩擦クラッチの使用を必要とし、それらは制御が複雑であり、寄生損失を有し、したがってあまり効率的ではない。
【0004】
シームレス・トランスミッション・システムの別のタイプは、瞬間タイプ・トランスミッション・システムと称される。この仲間のトランスミッション・システムは、それに関連するその又は各ギア要素で駆動形成体を選択的に係合するように配置された第1の及び第2のセットの係合要素を含む少なくとも1つのセレクタ・アセンブリを含む。現在のギアがまだ係合している間に新しいギアが選択され得、したがって、新しいギアがいくつかのシフト・タイプの動力の下で選択され得るように、第1の及び第2のセットの係合要素は配置される。このタイプのセレクタ・アセンブリは、それに関連するその又はそれぞれの回転可能なように取り付けられたギア要素に関する次の4つのモード:すなわち、両方のトルク方向で完全に係合される(完全にギアが入る)モード、両方のトルク方向において係合を外される(ニュートラル)モード、逆トルク方向で係合を外される間に順トルク方向で係合されるモード、並びに、逆トルク方向で係合される間に順トルク方向で係合を外されるモード、作を有する。
【0005】
不連続比ギアボックスがトルク中断なしに負荷時に瞬時に高速又は低速にギアを入れ替える能力を有することを可能にするのは、最後のほうの2つのモードである。瞬間トランスミッションは、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる、WO2004/099654、WO2005/005868、WO2005/005869、WO2005/024261及びWO2005/026570、WO2006/095140、WO2006/123128、WO2006/123166、WO2007/132209、WO2008/062192、WO2008/096140、WO2008/145979、WO2009/068853、WO2010/046654、WO2010/046655、WO2010/046652、及びWO2012/164237において説明されている。
【0006】
前述の瞬間トランスミッションは、多数のギア比が提供される、燃焼エンジンを有する車両のために主として設計される。多数のギア比が提供されるので、ギア比どうしの間の速度差は比較的小さいため、新しいギア比に係合するときにセレクタ・アセンブリに移送されるエネルギは処理可能である。そのため、前述の瞬間トランスミッションは、電気モータを動力源とする電気車両(電動車両)向けには必ずしも最適化されていないことになる。というのも、電気車両のトランスミッションはより少ないギア比を有する傾向があり、しかも電気モータは従来の燃焼エンジンより遥かに高い動作速度を有するからである。その結果として、電気車両におけるギア比間の速度差は比較的高く、これは、セレクタ・アセンブリに適用される係合力が比較的高くなることを意味する。これは、セレクタ・アセンブリに損失をもたらし得、その耐用年数を減らし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2004/099654
【特許文献2】WO2005/005868
【特許文献3】WO2005/005869
【特許文献4】WO2005/024261
【特許文献5】WO2005/026570
【特許文献6】WO2006/095140
【特許文献7】WO2006/123128
【特許文献8】WO2006/123166
【特許文献9】WO2007/132209
【特許文献10】WO2008/062192
【特許文献11】WO2008/096140
【特許文献12】WO2008/145979
【特許文献13】WO2009/068853
【特許文献14】WO2010/046654
【特許文献15】WO2010/046655
【特許文献16】WO2010/046652
【特許文献17】WO2012/164237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ギア・シフト中の車輪への動力の損失を防ぐために、不連続比を有する電気車両のトランスミッション・システムにおけるギア・シフト中にトルク支持を有することは、たとえ、これが一部のシフト・タイプのみについて達成され得、他については達成され得なくても、やはり望ましい。さらに、可能であれば、制御の複雑さを低減するために、比較的単純なトランスミッション・レイアウト及び比較的単純なセレクタ・アセンブリを使用したトルク支持を提供することが望ましい。これを背景として、本発明は、電気車両とともに使用するのに特に適するが、もちろん、他の状況で使用することができる、改良されたトランスミッション・システムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、前述の問題のうちの少なくとも1つを軽減しようとし、又は少なくとも代替トランスミッション・システムを既存のトランスミッション・システムに提供しようとする。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、請求項1によるトランスミッション・システムが用意される。第1のセレクタ・アセンブリは、単一係合リングのみで構成されるので、それは、第2の回転方向において第1の入力軸に取り付けられたギア要素に駆動係合することはできない。さらに、それは、第1の回転方向において第1の副軸に取り付けられたギア要素に駆動係合することはできない。これは、係合リングの第1の側面の駆動面はすべて、第1の回転方向を向き、係合リングの第2の側面の駆動面はすべて、第2の回転方向を向くからである。したがって、第1のセレクタ・アセンブリは、それの関連ギア要素のそれぞれに関して以下の動作モードを単に有する:1つの回転方向のみでそれぞれの軸との回転についてギア要素をロックする及び反対回転方向においてそれぞれの軸との回転についてギア要素をロックしない、並びにニュートラル。
【0011】
本発明の別の態様によれば、トランスミッション・システムが用意される。
【0012】
本トランスミッション・システムは、駆動源から直接駆動を受けるように配置された第1の入力軸を含み得る。
【0013】
本トランスミッション・システムは、駆動中断手段、例えば、摩擦クラッチ・デバイス、を介して駆動源から駆動を受けるように配置された第2の入力軸を含み得る。
【0014】
本トランスミッション・システムは、第1の副軸を含み得る。
【0015】
ギア要素は、第1の入力軸に回転可能なように取り付けられ得る。ギア要素は、第1の副軸に取り付けられ得る。
【0016】
第1のセレクタ・アセンブリは、第1の入力軸との回転について第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素を選択的にロックするように配置され得る。第1のセレクタ・アセンブリは、第1の入力軸との回転について第1の副軸に取り付けられたギア要素を選択的にロックするように配置され得る。
【0017】
第1のセレクタ・アセンブリは、単一の係合リングを有し得る。係合リングは、第1のセットの係合要素を有する第1の側面を含み得る。各係合要素は、第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素に関連する第1のセットの駆動形成体に第1の回転方向で駆動係合するように配置された駆動面を有し得る。各係合要素は、第2の回転方向における第1のセットの駆動形成体に関して滑るように配置された非駆動面、例えば、斜面(ramp;傾斜部)を有し得、それによって、第1のセットの駆動形成体との駆動係合を防ぐ。
【0018】
係合リングは、第2のセットの係合要素を有する第2の側面を有し得る。各係合要素は、第1の副軸に取り付けられたギア要素に関連する第2のセットの駆動形成体に第2の回転方向において駆動係合するように配置された駆動面を有し得る。各係合要素は、第1の回転方向において第2のセットの駆動形成体に関して滑るように配置された非駆動面、例えば、斜面を有し得、それによって第2のセットの駆動形成体の駆動係合を防ぐ。駆動形成体は、駆動形成体が係合リング・トルクによって係合されるときに、係合リングとそれぞれのギア要素との間で移送されるという意味で、それらのそれぞれのギア要素に関連している。駆動形成体は、それらのそれぞれのギア要素に直接取り付けられ得る、或いは軸又は取り付けスリーブなどの中間構成要素に取り付けられ得る。
【0019】
各非駆動面は、それぞれの曲線状の進路(path;経路)に沿って広がり得る。各非駆動面は、係合リングのそのそれぞれの側面の一部、及び通常は、係合リングのそのそれぞれの側面の周辺部の周りの曲線状の進路を辿り得る。例えば、曲線状の進路は、そのそれぞれの駆動面に隣接する場所で開始し得る。
【0020】
各非駆動面は、そのそれぞれの駆動面に隣接する場所からそれぞれの弓形の進路に沿って広がり得る。各非駆動面は、係合リングのそれぞれの側面の係合要素のうちの隣接するものに向けてそのそれぞれの弓形の進路に沿って広がり得る。各非駆動面は、そのそれぞれの弓形の進路に沿って円周に広がり得る。各非駆動面は、係合リングのそのそれぞれの側面の周辺部の周りの弓形の進路を辿り得る。非駆動面の長い傾斜した及び曲線状の構成は、駆動形成体の駆動係合が生じるのを防ぐ。それはまた、非駆動面の駆動形成体との相互作用、及び経験される摩擦力によって生成される滑り雑音の大きさを低減する。
【0021】
各非駆動面は、そのそれぞれの駆動面に隣接する場所から、係合リングのそれぞれの側面の係合要素のうちの隣接するものの駆動面に隣接する場所に、そのそれぞれの弓形の進路に沿って広がり得る。それは、特に、弓形の進路に沿って円周に広がる非駆動面及び駆動形成体の相互作用によって生成される滑り雑音の大きさ及び経験される摩擦力を最小限に抑えるのに有用である。これは、特に、ギア要素間の相対速度が高い場合、例えば、電気車両のトランスミッションにおいて、有用である。
【0022】
係合リングの各側面の係合要素の数は、4つ以下、3つ以下、又は2つ以下になり得る。少数の係合要素は、特に、ギア比間の速度差が高いときに比較的少ないギア比を有する電気車両アプリケーションに適する。少数の係合要素を有することは、係合要素間の「係合窓」のサイズを大きくし、係合をより容易にし、係合要素と駆動形成体との間の滑る係合の頻度を減らす。これは、生み出される滑り雑音の大きさを低減する。これは、特に、電気車両のトランスミッションにおいてなど、ギア要素間の相対速度が高い場合に、有用である。それはまた、非駆動が、滑りが生じるときに係合リングと駆動形成体との分離率を下げる、大きな弓形の範囲を有することができ、より優しい滑りを実現することを確実にする。
【0023】
好ましい実施例において、各非駆動面の弓形の範囲は、90度から360度の範囲にある。これは、特に、弓形の進路に沿って円周に広がる非駆動面及び駆動形成体の相互作用によって生成される滑り雑音の大きさ及び経験される摩擦力を最小限に抑えるために有用である。これは、特に、ギア要素間の相対速度が高い場合に、例えば、電気車両のトランスミッションにおいて、有用である。測定は、係合リングの中心軸を参照して行われ得る。係合リングの側面ごとに4つの係合要素を有する実施例では、各非駆動面の弓形の範囲は、通常は、約90度である。係合リングの側面ごとに3つの係合要素を有する実施例では、各非駆動面の弓形の範囲は、90度から120度の範囲になり得、通常は、100度から120度の範囲である。係合リングの側面ごとに2つの係合要素を有する実施例では、各非駆動面の弓形の範囲は、90度から180度の範囲になり得、通常は、150度から180度の範囲である。係合リングの第1の側面の係合要素の数は、係合リングの第2の側面の係合要素の数と等しくなり得る。
【0024】
いくつかの実施例では、単一の係合要素のみが、係合リングのそれぞれの側面で用意される。これは、係合窓のサイズを最大にし、各非駆動面の最も大きい弓形の範囲を実現する。係合リングの側面ごとに1つの係合要素を有する実施例では、各非駆動面の弓形の範囲は、90度から360度の範囲になり得、180度から360度の範囲になり得、270度から360度の範囲になり得、通常は300度から360度の範囲である。
【0025】
各非駆動面は、弓形の進路に沿って実質的に平面になり得る。これは、滑らかな滑る構成の実現に役立つ。
【0026】
各駆動面は、平面になり得る。
【0027】
各駆動面は、係合リングの中心から放射状に配置され得る。すなわち、各駆動面の平面は、係合リングのそれぞれの半径と位置合わせされる。これは、駆動面が単一の回転方向を向くことを確実にするのに役立つ。
【0028】
係合リングは、内部スプラインを含み得る。内部スプラインは、第1の入力軸に形成された外部スプラインと又は係合リングと第1の入力軸との間に位置する中間構成要素、例えば、スリーブ部材、に形成された外部スプラインと対になるように配置され得る。好ましくは、本トランスミッション・システムは、第1の入力軸とのスプライン接続のための内部スプラインを含むスリーブ部材を含む。スリーブ部材は、係合リングの内部スプラインとのスプライン接続のための外部スプラインを含み得る。これは、係合リングと第1の入力軸との間の非常に堅固な接続を実現する。スプライン配置は、第1の入力軸との回転について係合リングを回転でロックしながら、係合リングが入力軸に沿って軸方向に動くことを可能にする。これは、それが2つの係合リングの動きに適応するために必要になり得るため、より複雑な取り付け配置を有する、瞬間タイプ・セレクタ・アセンブリの取り付け配置とは異なる。
【0029】
本トランスミッション・システムは、係合リングの軸運動を制御するためのアクチュエータ機構を含み得る。アクチュエータ機構は、係合リングと係合されたシフト・フォークを含み得る。アクチュエータ機構は、シフト・フォーク及び係合リングの動きを制御するための単一のシフト・ドラムを含み得る。係合リングの動きは、可逆になり得るので、単一のシフト・ドラムのみが、第1のセレクタ・アセンブリのために必要とされる。したがって、本トランスミッション・システムは、比較的単純なトランスミッション・レイアウト及び比較的単純なアクチュエータ機構を、少なくともいくつかのシフト・タイプの間のトルク支持に提供し得る。
【0030】
アクチュエータ機構は、ばねクレードルを含み得る。これは、係合リングのいくらかの軸運動が生じ得る場合に、例えば、滑る状態の間に、衝撃を軽減するのに役立つ。
【0031】
本トランスミッション・システムは、2速トランスミッション・システムで構成され得る。すなわち、本トランスミッション・システムは、ファースト及びセカンド・ギアのみを含み得る。
【0032】
ギア要素は、第2の入力軸に回転可能なように取り付けられ得る。
【0033】
本トランスミッション・システムは、第2の入力軸との回転について第2の入力軸に取り付けられたギア要素を選択的にロックするための第2のセレクタ・アセンブリを含み得る。
【0034】
第2のセレクタ・アセンブリは、シンクロメッシュ又はドッグ・クラッチ・タイプアセンブリなどの従来のセレクタ・アセンブリになり得る。
【0035】
第2のセレクタ・アセンブリは、第2の入力軸との回転について第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素を選択的にロックするように配置され得る。
【0036】
本トランスミッション・システムは、第2の副軸を含み得る。
【0037】
本トランスミッション・システムは、出力軸を含み得る。
【0038】
本トランスミッション・システムは、第1の副軸に取り付けられたギア要素とかみ合う、出力軸に取り付けられたギア要素を含み得る。
【0039】
トランスミッションのファースト・ギアは、第1の副軸に取り付けられたギア要素と、第1の副軸に取り付けられたギア要素とかみ合う、出力軸に取り付けられたギア要素とを含み得る。
【0040】
本トランスミッション・システムは、第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素とかみ合う、出力軸に取り付けられたギア要素を含み得る。
【0041】
トランスミッションのセカンド・ギアは、第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素と、第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素とかみ合う、出力軸に取り付けられたギア要素とを含み得る。
【0042】
本トランスミッション・システムは、第2の副軸を含み得る。
【0043】
本トランスミッション・システムは、第2の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素とかみ合う、第2の副軸に取り付けられたギア要素を含み得る。
【0044】
本トランスミッション・システムは、第1の副軸に取り付けられたギア要素とかみ合う、第2の副軸に取り付けられたギア要素を含み得る。
【0045】
本トランスミッション・システムは、第2の入力軸と第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素との間のトルク経路を含み得る。これは、第2のセレクタ・アセンブリによって実現され得る。
【0046】
第1の入力軸及び第2の入力軸のうちの1つは、管状になり得、第1の入力軸及び第2の入力軸のうちの他方の少なくとも一部を収容し得る。例えば、第2の入力軸は、管状になり得、第1の入力軸の少なくとも一部を収容し得る。第1の入力軸は、第2の入力軸と同軸になり得る。これは、非常にコンパクトな構成を実現する。
【0047】
本トランスミッション・システムは、本トランスミッション・システムの動作を制御するための制御システムを含み得る。
【0048】
本トランスミッション・システムは、ファースト・ギアで駆動するときにトルクが第2の副軸を介して第2の入力軸から出力軸に経路指定され(routed;ルート決めされ)得るように、配置され得る。
【0049】
本トランスミッション・システムは、ファースト・ギアでオーバーランするときに、トルクがファースト・ギア列を介して出力軸から第2の入力軸に経路指定され得るように、配置され得る。
【0050】
本トランスミッション・システムは、セカンド・ギアで駆動するときにトルクが第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素を介して第2の入力軸から出力軸に経路指定され得るように、配置され得る。
【0051】
本トランスミッション・システムは、セカンド・ギアでオーバーランするときにトルクが第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素を介して出力軸から第2の入力軸に経路指定され得るように、配置され得る。
【0052】
本トランスミッション・システムは、パワー・オン・シフトアップ、例えばファースト・ギアからセカンド・ギアへの、中にトルクを継続的に出力軸に供給するように配置され得る。
【0053】
本トランスミッション・システムは、例えばセカンド・ギアからファースト・ギアへの、パワー・オン・シフトダウン中にトルクを継続的に出力軸に供給するように配置され得る。
【0054】
本トランスミッション・システムは、例えばファースト・ギアからセカンド・ギアへの、パワー・オフ・シフトアップ中に第1の入力軸及び第2の入力軸のうちの少なくとも1つにトルクを供給するように配置され得る。これは、例えば電気車両の電池を再充電するために、トルクがドライブトレインにおいて使用されることを可能にする。入力軸のうちの少なくとも1つは、シフトの間中、トルクを受け得る。
【0055】
本トランスミッション・システムは、例えばセカンド・ギアからファースト・ギアへの、パワー・オフ・シフトダウン中に第1の入力軸及び第2の入力軸のうちの少なくとも1つにトルクを供給するように配置され得る。これは、例えば電気車両の電池を再充電するために、トルクがドライブトレインにおいて使用されることを可能にする。入力軸のうちの少なくとも1つは、シフトの間中、トルクを受け得る。
【0056】
本トランスミッション・システムは、第2の入力軸、第2の副軸及び第1の副軸に取り付けられたギア要素を含み得る第1のトルク進路(torque pathway;トルク経路)から、第1の入力軸及び第1の副軸に取り付けられたギア要素を含み得る第2のトルク進路に、パワー・オン・シフトアップ中に、トルク・フローを切り替えるように配置され得る。本トランスミッション・システムは、第2のトルク進路から、第2の入力軸及び第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素を含み得る第3のトルク進路に、パワー・オン・シフトアップ中に、トルク・フローを切り替えるように配置され得る。
【0057】
本トランスミッション・システムは、第2の入力軸及び第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素を含み得る第1のトルク進路から、第1の入力軸及び第1の副軸に取り付けられたギア要素を含み得る第2のトルク進路に、パワー・オン・シフトダウン中に、トルク・フローを切り替えるように配置され得る。本トランスミッション・システムは、第2のトルク進路から、第2の入力軸、第2の副軸及び回転可能なように第1の副軸に取り付けられたギア要素を含み得る第3のトルク進路に、パワー・オン・シフトダウン中に、トルク・フローを切り替えるように配置され得る。
【0058】
本トランスミッション・システムは、第2の入力軸、第2の副軸及び第1の副軸に取り付けられたギア要素を含み得る第1のトルク進路から、第1の入力軸及び第1の入力軸に取り付けられたギア要素を含み得る第2のトルク進路に、パワー・オフ・シフトアップ中に、トルク・フローを切り替えるように配置され得る。本トランスミッション・システムは、第2のトルク進路から、第2の入力軸及び第1の入力軸に回転可能なように取り付けられたギア要素を含み得る第3のトルク進路に、パワー・オフ・シフトアップ中に、トルク・フローを切り替えるように配置され得る。
【0059】
本トランスミッション・システムは、第2の入力軸及び回転可能なように第1の入力軸に取り付けられたギア要素を含み得る第1のトルク進路から、第1の入力軸及び第1の入力軸に取り付けられたギア要素を含み得る第2のトルク進路に、パワー・オフ・シフトダウン中に、トルク・フローを切り替えるように配置され得る。本トランスミッション・システムは、第2のトルク進路から、第2の入力軸、第2の副軸及び回転可能なように第1の副軸に取り付けられたギア要素を含み得る第3のトルク進路に、パワー・オフ・シフトダウン中に、トルク・フローを切り替えるように配置され得る。
【0060】
本トランスミッション・システムは、パワー・オン・シフトアップ、パワー・オン・シフトダウン、パワー・オフ・シフトアップ及びパワー・オフ・シフトダウンのうちの少なくとも1つ、好ましくはそれぞれ、について第1の、第2の及び/又は第3のトルク進路を切り替えるために、第1のセレクタ・アセンブリ、第2のセレクタ・アセンブリ及びクラッチのうちの少なくとも1つを動作させるように配置され得る。
【0061】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の任意の構成によるトランスミッション・システムを含むドライブトレインが用意される。ドライブトレインは、以下のうちの少なくとも1つを含み得る:駆動源及び摩擦クラッチ・デバイスなどの滑性駆動。摩擦クラッチ・デバイスは、湿式摩擦クラッチ又は乾式摩擦クラッチになり得る。
【0062】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の任意の構成によるドライブトレインを含む電気車両が実現される。駆動源は、電気モータを有する。
【0063】
本発明は、以下を含む多数の利点を有する:
・本トランスミッション・システムは、DCTタイプ・トランスミッション・システムよりも制御が有意に複雑でなく、容易であり、瞬間タイプ・トランスミッション・システムよりも制御が複雑でなく、容易である。
・トランスミッションのレイアウトが、同期させられなければならない慣性のサイズが比較的小さいことを意味するので、同期装置の容量が小さい。DCTにおいて、同期装置の容量は、有意にさらに高い。
・1つのタイプのみの同期装置が必要とされ、製造コストを低減する。DCTについては、トランスミッションの異なる部分において多数の異なるタイプの同期装置を有することがしばしば必要とされる。
・使用されるトランスミッション・レイアウト及びシフト戦略は、トルク支持が少なくともいくつかのギア・シフト中に提供されることを可能にする。
・トランスミッション・レイアウトが、非常にコンパクトである。それが前輪駆動車両、後輪駆動車両及びすべての車輪駆動車両で使用され得るという意味で、それは多用途でもある。
・レイアウトは、多数の正規のトランスミッション構成要素を使用し、したがって、既存の生産ラインが、このトランスミッション・レイアウトを製造するように容易に適合され得る。
・レイアウト及びシフト戦略は、トランスミッション内のトルクが係合トルク・スパイクをなくする方式でギア・シフト中に制御されることを可能にし、したがって、どのギアもダンパを含む必要はない。
【0064】
本発明の実施例について、類似の参照記号は同等の特徴を示す添付の図面を参照して、単に例として、ここで説明する:
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1a】本発明の一実施例による、駆動源としての電気モータを有する車両、例えば、乗用車、における使用に適した、2速トランスミッション・システムの概略図である。
【
図1b】
図1aの2速トランスミッション・システムを含むドライブトレイン及びドライブトレインの制御システムの概略図である。
【
図2】ギア・セレクタ・リング及び
図1aの2速トランスミッション・システムにおいて使用されるアクチュエータ機構の等角図である。
【
図3a】
図2のギア・セレクタ・リングの図である。
【
図3b】
図2のギア・セレクタ・リングの図である。
【
図4】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図4a】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図4b】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図4c】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図4d】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図4e】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図4f】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図4g】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図5】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図5a】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図5b】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図5c】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図5d】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図5e】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図5f】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図5g】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オン・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図6】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図6a】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図6b】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図6c】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図6d】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図6e】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図6f】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図6g】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトアップのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図7】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図7a】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図7b】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図7c】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図7d】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図7e】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図7f】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図7g】
図1aの2速トランスミッション・システムにおけるパワー・オフ・シフトダウンのステップ及びトルク経路を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施例において使用され得る代替係合リングの等角図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1bは、駆動源80、クラッチ86、及びトランスミッション88を有するドライブトレインを含む駆動システムを概略的に示す。
【0067】
駆動源80は、通常は、車両の電気モータであるが、他の適切な駆動源でもよい。駆動源80の出力は、スロットル・インターフェース83及び駆動源制御ユニット82を介して駆動源に接続された、スロットル入力デバイス81、通常はスロットル・ペダル、に負荷をかける運転者によって主に決定される。駆動源制御ユニット82、例えばエンジン制御ユニット又はモータ制御ユニットは、ユーザ及び/又はトランスミッション制御ユニット90から受ける命令に従って駆動源80の出力をモニタ及び調節するように配置される。駆動源制御ユニット82は、スロットル・ポテンショメータ・タイプ・システム、又は別法として、「ドライブ・バイ・ワイヤ」システムと時に称される、電子制御システムでもよい。
【0068】
駆動源制御ユニット82は、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN:Controller Area Network)バスを介してトランスミッション制御ユニット90と通信する。
【0069】
トランスミッション88のレイアウトが、
図1aに概略的に示されている。トランスミッション88は、第1の入力軸1、第2の入力軸3、第1の副軸5、第2の副軸7及び出力軸9を含む。
【0070】
図1に示すレイアウトは、電気車両での使用に適した、2速トランスミッション88である。トランスミッション88は、ファースト及びセカンド・ギアを含む。ファースト・ギアは、第1の副軸5に取り付けられた及びそれとの回転について固定されたギア要素15と、出力軸9に取り付けられた及びそれとの回転について固定されたギア要素17とを含む。セカンド・ギアは、ベアリングを介して第1の入力軸1に回転可能なように取り付けられたギア要素19と、出力軸9に取り付けられた及びそれとの回転について固定されたギア要素21とを含む。
【0071】
出力軸9は、アクセルを介して車両車輪に駆動を伝達する差動装置に接続される。
【0072】
第1の入力軸1は、駆動源80に直接接続される。直接接続されることによって、それは、駆動源80からトランスミッション88への無中断の駆動が存在することを意味する。実行可能な条件において、駆動源からのトルクは、クラッチ86の摩擦板を通過しないが、それは、駆動源とトランスミッション、例えばギア、軸など、との間の非滑性駆動を提供する他の中間構成要素を通過し得る。
【0073】
第2の入力軸3は、中断可能なトルク経路を介して駆動源80に接続される。通常は、第2の入力軸3は、乾式摩擦クラッチ又は湿式摩擦クラッチでもよい、摩擦クラッチ86などの滑性駆動を介して駆動源80に接続される。駆動源80からトランスミッション88への駆動は、摩擦クラッチ86によって中断可能である。
【0074】
好ましくは、第2の入力軸3は管状であり、第1の入力軸1の少なくとも一部を収容し、第1の入力軸1及び第2の入力軸3が実質的に同軸であるような配置である。これは、非常にコンパクトな配置である。
【0075】
ギア要素23は、第2の副軸7との回転について固定され、ギア要素15とかみ合う。ギア要素25は、第2の副軸7との回転について固定され、ギア要素27とかみ合う。ギア要素27は、ベアリングを介して第2の入力軸3に回転可能なように取り付けられる。
【0076】
好ましくは、ギア要素15対ギア要素23のギア比は、ギア要素27対ギア要素25のギア比と同じである。
【0077】
トランスミッション88は、セカンド・ギアを第2の入力軸3にリンクするトルク進路を含む。例えば、トルク進路は、第2のセレクタ・アセンブリ31及びギア要素19を含み得る。
【0078】
第1のセレクタ・アセンブリ29は、第1の入力軸1に取り付けられる。第1のセレクタ・アセンブリ29は、例えば第1の入力軸1との回転についてギア要素19を選択的にロックすることによって、ファースト・ギアと第1の入力軸1との間のトルク進路を選択的に提供するように配置される。第1のセレクタ・アセンブリ29は、例えば第1の入力軸1との回転について第1の副軸5を選択的にロックすることによって、セカンド・ギアと第1の入力軸1との間のトルク進路を選択的に提供するように配置される。これは、例えば第1の副軸5と接続された駆動形成体20を選択的に係合する第1のセレクタ・アセンブリ29によって達成され得る。一代替配置において、駆動形成体20は、ギア要素15に取り付けられ得る。第1のセレクタ・アセンブリ29は、新しいセレクタ・アセンブリであり、以下でさらに説明される。第1のセレクタ・アセンブリ29は、少なくともいくつかのギア・シフト・タイプの間にトルク支持を提供するように配置される。第1のセレクタ・アセンブリ29は、ニュートラル・ポジションに移動され得る。
【0079】
第2のセレクタ・アセンブリ31は、第2の入力軸3に取り付けられる。第2のセレクタ・アセンブリ31は、例えば第2の入力軸3との回転についてギア要素27を選択的にロックすることよって、ファースト・ギアと第2の入力軸3との間のトルク進路を選択的に提供するように配置される。ギア要素23、25、27、第2のセレクタ・アセンブリ31及び第2の副軸7は、ファースト・ギアと第2の入力軸3との間のトルク進路を提供する。第2のセレクタ・アセンブリ31は、例えば第2の入力軸3との回転についてギア要素19を選択的にロックすることによって、セカンド・ギアと第2の入力軸3との間のトルク進路を選択的に提供するように配置される。
【0080】
第2のセレクタ・アセンブリ31は、通常は、従来のセレクタ・アセンブリ、例えば従来のシンクロメッシュ・タイプ・セレクタ・アセンブリである。ギア19、27は、第2のセレクタ・アセンブリ31のそれらを贈呈するために、適切な駆動形成体(frive formations)22及び同期コーン24を含む。トランスミッション・レイアウトにより、同期コーンは、小さくなり得る。また、1つのみのタイプの同期コーンが必要とされる。
【0081】
第2のセレクタ・アセンブリ31は、好ましくはシンクロメッシュ・タイプであるが、他のタイプのセレクタ・アセンブリが使用され得る。
【0082】
第1のセレクタ・アセンブリ29は、ギア要素19にある第1のセットの駆動形成体20aに係合するように配置される。第1のセレクタ・アセンブリ29は、第1の副軸5にある第2のセットの駆動形成体20bと係合する、及びそれによってトルクをギア要素15に送るように配置される。駆動形成体20a、20bは、第1の及び第2のセットのドッグを有する。各セット内のドッグ20a、20bは、通常は、ギア面/軸に関して均等に円周に分散された3つのドッグを有し、したがって1対のドッグの中心に対する角度は、約120度である(
図3を参照)。配置は、第1のセレクタ・アセンブリ29から係合要素を受けるための、ドッグ間の空間である、比較的大きな係合窓を提供するので、3つのドッグが使用される。また、3つのドッグは、固有のセルフセンタリング及び均等な負荷分散を提供する。大きな係合窓は、それに駆動を送る前に第1のセレクタ・アセンブリ29がギア19及び第1の副軸5を完全に係合するためのより大きな機会を提供する。異なる数のドッグ20a、20bが使用され得ることが、もちろん、理解されよう。
【0083】
第1のセレクタ・アセンブリ29は、ギア要素19に取り付けられた第1のセットのドッグ20aと第1の副軸5に取り付けられた第2のセットのドッグ20bとの間の第1の入力軸1に取り付けられる。
【0084】
第1のセレクタ・アセンブリ29は、単一のギア・セレクタ・リング35(
図3a及び3bを参照)と、ギア・セレクタ・リング35を動かすように配置されたアクチュエータ機構38(
図2を参照)とで構成される。ギア・セレクタ・リング35は、第1の入力軸1に取り付けられ、アクチュエータ機構38によって第1の入力軸1の軸に沿って移動可能である。ギア・セレクタ・リング35は、本体35dと、ギア19に面する第1の側面35aと、ギア15に面する第2の側面35bとを有する。ギア・セレクタ・リング35は、第1の側面35aに第1のセットの係合要素28aを含む。ギア・セレクタ・リング35は、第2の側面35bに第2のセットの係合要素28bを含む。第1のセットの係合要素28aは、ギア・セレクタ・リングの第1の側面35aに関して円周に均等に分散される。第2のセットの係合要素28bは、ギア・セレクタ・リングの第2の側面35bに関して円周に均等に分散される。
【0085】
図3aにおいて、3つの係合要素28a、28bが係合リングの各側面35a、35bに用意されているのを見ることができる。通常は、係合リングの各側面35a、35bは、1つから4つの係合要素28a、28bを含む。係合リングの各側面35a、35bに単一の係合要素28a、28bを有する実施例が、
図8に示されている。通常は、係合要素28a、28bは、係合リングの各側面35a、35bの円周周辺部分に均等に分散される。係合リングの各側面35a、35bに少数の係合要素28a、28bを有することで、係合要素28a、28bが滑る状態でドッグ20a、20bに係合する頻度を減らし、大きな係合窓を提供する。通常は、ドッグ20a、20bの数は、それぞれの側面又は係合リング35に形成された係合部材28a、28bの数に一致する。
【0086】
各係合要素28a、28bは、駆動面43a、43b及び斜面45a、45bを含む。
【0087】
駆動面43a、43bは、ドッグ20a、20bを駆動係合するように配置される。駆動面43a、43bは、平面であり、好ましくは、ギア・セレクタ・リング35の第1の及び第2の側面のそれぞれに垂直に配置される。好ましくは、駆動面43a、43bは、放射状に配置される。すなわち、各面43a、43bは、係合リング35のそれぞれの半径と整列される。いくつかの実施例において、駆動面は、角を有する側面を有するドッグ20a、20bを補完するように角度を有する。これは、それらが係合へと回転するときに係合要素28a、28bの摩耗を減らすのに役立つことができ、摩耗を減らすための面対面の接触が存在する。
【0088】
斜面45a、45bの目的は、1つの回転方向で、すなわち、駆動面43が方向付けられた回転方向とは反対の回転方向で、駆動形成体20a、20bとギア・セレクタ・リング35との係合をロックするのを防ぐことである。したがって、斜面45a、45bは、非駆動面である。各斜面45a、45bは、駆動面43a、43bが方向付けられた回転方向とは反対の方向でそのそれぞれの駆動面43a、43bから傾斜している。各斜面45a、45bは、隣接する駆動面43a、43bのベースの方へ徐々に傾斜する。傾斜の角度は、各斜面45a、45bに沿って実質的に一定である。各斜面45a、45bの上表面は、実質的に平面である。各斜面45a、45bは、ギア・セレクタ・リング35のそれぞれの側面35a、35bの円周の一部の周りの弓形の進路を辿る。その進路の弓形の範囲AEは、通常は、90度から360度の範囲にある。その進路の弓形の範囲AEは、係合リングの各側面35a、35bの係合要素28a、28bの数によって決定され得る。例えば、側面35a、35bごとに4つの係合要素28a、28bを有する配置について、各非駆動面の弓形の範囲AEは、通常は、約90度である。側面35a、35bごとに3つの係合要素28a、28bを有する実施例について、各非駆動面の弓形の範囲AEは、通常は、90度から120度の範囲にある。側面35a、35bごとに2つの係合要素28a、28bを有する実施例について、各非駆動面の弓形の範囲AEは、通常は、150から180度の範囲にある。
【0089】
第1のセットの係合要素28aの駆動面43aがすべて、第1の回転方向を向くように、第1のセットの係合要素28aは、ギア・セレクタ・リングの第1の側面35aに配置される。第1のセットの係合要素28aの斜面45aがすべて、第1の回転方向とは反対の、第2の回転方向でより低い方へ傾斜するように、第1のセットの係合要素28aは、係合リングの第1の側面35aに配置される。斜面45aは、それぞれの駆動面43aから隣接する駆動面43aの方へ傾斜する。使用中、駆動面43aが第1のセットのドッグ20aと駆動係合しない方式で、第2の回転方向に斜面45aを移動させる、第1のセットの係合要素28aと第1のセットのドッグ20aとの間の相対的回転運動が存在するとき、第1のセットのドッグ20は、斜面45aを横切ってスライドする。斜面45aの傾斜した表面は、ギア・セレクタ・リング35をギア19から入力軸1に沿って軸方向に少し移動させる。ドッグ20aのスライドが、駆動面43aを通過するとき、リング35は、入力軸に沿ってギア19の方へ軸方向に少し移動する。したがって、斜面45aは、ラチェッティング効果を提供し、第1のセレクタ・アセンブリ29は、ある特定の動作条件の下でその関連ギア/軸に対して滑るように配置される。
【0090】
第2のセットの係合要素28bの駆動面43bがすべて、第2の回転方向を向くように、第2のセットの係合要素28bは、ギア・セレクタ・リングの第2の側面35bに配置される。第2のセットの係合要素28bの斜面45aがすべて、それぞれの駆動面43bから、第2の回転方向とは反対の、第1の回転方向により低い方へ傾斜するように、第2のセットの係合要素28bは、ギア・セレクタ・リングの第2の側面35bに配置される。斜面45bは、隣接する駆動面43bの方へ傾斜する。使用中、斜面45bを第1の回転方向に移動させる第2のセットの係合要素28bと第2のセットのドッグ20bとの間の相対的回転運動が存在し、したがって、駆動面43bは、第1の副軸5の第2のセットのドッグ20bと駆動係合しないとき、ドッグ20bは、斜面45bを横切ってスライドする。斜面45bの傾斜した表面は、ギア・セレクタ・リング35を第1の副軸5から離れて入力軸1に沿って軸方向に少し移動させる。ドッグ20bスライドが、駆動面43bを通過するとき、リング35は、ギア19に向けて入力軸に沿って軸方向に少し移動する。したがって、斜面45bは、ラチェッティング効果を提供し、第1のセレクタ・アセンブリ29は、ある特定の動作条件の下でその関連ギア/軸に対して滑るように配置される。
【0091】
第1の及び第2のセットの係合要素28a、28bは、類似の構成を有するが、反対の手を用いる。例えば、第1のセットの係合要素28aは、減速中(逆トルク方向)に第1のセットのドッグ20aに係合するように配置され得、第2のセットの係合要素28bは、加速中(順トルク方向)に第2のセットのドッグ20bに係合するように配置され得る。
【0092】
好ましくは、係合リングの第1の側面35aの駆動面43aは、係合リングの第2の側面35bの駆動面43bから回転オフセットされる。通常は、係合リング35の第1の側面35aの各駆動面43aは、係合リングの第2の側面35bのそれぞれの隣接する駆動面43bのほぼ真ん中に位置する。
【0093】
ギア・セレクタ・リング35は、内部スプライン36を含む。第1の入力軸1とのスプライン接続のための内部スプライン201と、係合リング35の内部スプライン36(
図3bを参照)とのスプライン接続のための外部スプライン203とを含む、スリーブ部材200が、用意される。これは、係合リング35と第1の入力軸1との間に非常に堅固な接続を実現する。スプライン配置36、201、203は、アクチュエータ機構38の動作に従う第1の入力軸1との回転について係合リング35を回転でロックしながら係合リング35が第1の入力軸1に沿って軸方向に移動することを可能にする。
【0094】
ギア・セレクタ・リング35は、曲線状の表面の周りに円周に広がるそれの外側の曲線状の表面に形成された溝35cを有する。
【0095】
第1のセレクタ・アセンブリ29は、以下の動作のモードを有する:
1.第1の回転方向における第1の入力軸1との回転についてギア19をロックするが、第2の回転方向における第1の入力軸1との回転についてギア19をロックしないことと、
2.ニュートラルと、
3.第2の回転方向において第1の入力軸1との回転について第1の副軸5をロックするが、第1の方向において第1の入力軸1との回転について第1の副軸5をロックしないこと。
【0096】
第1のセレクタ・アセンブリ29は、第1の回転方向及び第2の回転方向の両方において第1の入力軸1との回転についてギア19をロックすることができず、第1の回転方向及び第2の回転方向の両方において第1の入力軸1との回転について第1の副軸5をロックすることもできないことが、前述の説明から明らかとなろう。したがって、第1のセレクタ・アセンブリ29は、知られている瞬間セレクタ・アセンブリとは異なる構造及び動作モードを有する。新しい配置は、簡略化されたセレクタ・アセンブリである。
【0097】
アクチュエータ機構38は、ギア・セレクタ・リング35の運動を制御するように配置される。アクチュエータ機構38は、シフト・フォーク48、シフト・クレードル100及びシフト・ドラム102を含む。任意選択で、アクチュエータ機構38は、弾性手段、例えば、らせんばね104、を含み得る。ばね104は、シフト・フォーク48を、したがってギア・セレクタ・リング35を、ニュートラル・ポジションに偏らせるように配置される。ばね104は、シフト・クレードル100に位置する。シフト・フォーク48は、溝35cと対になり、シフト・ドラム102の回転向きに従って軸方向にギア・セレクタ・リング35を駆動する。シフト・ドラム102は、シフト・フォーク48の動作を制御する。リング35の運動は可逆なので、シフト・ドラム102は、比較的単純な構造を有する。現在の配置の利点は、ただ1つのシフト・ドラム102が、ギア・シフト中にトルク支持を提供するとき、セレクタ・リング35の必要な運動のすべてを得るために必要とされる、ということである。
【0098】
ギア・セレクタ・リング35の運動は、トランスミッション88の自動及び半自動バージョンのトランスミッション制御ユニット90によって制御されるが、このレイアウトでは、完全手動トランスミッションを有することが可能であり、その場合、トランスミッション制御ユニットは厳密には必要とされない。
【0099】
トランスミッション制御ユニット90は、アクチュエータ機構38及び故にギア・セレクタ・リング35の動作を制御するように配置されるソフトウェアによって駆動される電子論理制御システムである。
【0100】
完全自動トランスミッション88について、ギア選択は、駆動源制御ユニット82が、所定の動作状態、例えば、いつ駆動源80が特定のギアにおいて特定の速度に達するか、を検出するとき、トランスミッション制御ユニット90によって行われる。半自動トランスミッション88については、ギア選択は、ギア選択入力デバイス94、例えばハンドルに隣接して位置するギア・レバー(手動)又はスイッチ(半自動)、を起動することによって駆動システムのユーザによって行われる。トランスミッション88は、自動モードと手動モードとから選択することが可能であるように、配置され得る。
【0101】
トランスミッション88は、少なくともいくつかのシフト・タイプ中にトルク支持を出力軸9に提供するように配置される。トランスミッション88の動作中、第1の入力軸1及び第2の入力軸3は、そこからトルクがファースト及びセカンド・ギアに選択的に提供され得る、トルクのソースと考えることができる。トランスミッション88は、第1の入力軸1及び第2の入力軸3のうちの1つを含む第1のトルク進路から、第1の入力軸1及び第2の入力軸3のうちの他方を含む第2のトルク進路へ、第1の入力軸1及び第2の入力軸3のうちの1つを含む第3のトルク進路へ、少なくともいくつかのシフト・タイプの、ギア・シフト中にトルク進路を変更するように配置される。例えば、好ましい配置では、ファースト・ギアで正常に駆動するとき、トルクは、第2の入力軸3を含む第1のトルク進路に沿ってファースト・ギアに提供される。ギア・シフトの間、少なくともいくつかのシフト・タイプについて、トルク進路は、第1のトルク進路から第1の入力軸1を含む第2のトルク進路に一時的に変更される。これは、第1のセレクタ・アセンブリ29、第2のセレクタ・アセンブリ31及び/又はクラッチ86を動作させることによって、達成される。これは、ギア・シフト中にトルク支持を出力軸9に提供する。その後に、トルク進路は、セカンド・ギアにおける駆動のために第3のトルク進路に再び変更される。第3のトルク進路は、第2の入力軸3を含む。セカンド・ギアで正常に駆動するとき、トルクは、第2の入力軸3を含む第1のトルク進路に沿ってセカンド・ギアに提供される。ギア・シフトの間、少なくともいくつかのシフト・タイプについて、トルク進路は、第1のトルク進路から第1の入力軸1を含む第2のトルク進路に一時的に変更される。これは、第1のセレクタ・アセンブリ29、第2のセレクタ・アセンブリ31及び/又はクラッチ86を動作させることによって、達成される。これは、ギア・シフト中にトルク支持を出力軸9に提供する。その後に、トルク進路は、ファースト・ギアでの駆動のために第3のトルク進路に再び変更される。第3のトルク進路は、第2の入力軸3を含む。第2の入力軸3から第1の入力軸1への及び第2の入力軸3に次に戻る、入力軸1、3(トルク・ソース)間のこの切り替えについては、以下でさらに説明する。
【0102】
トランスミッションの動作について、
図4から7gを参照して、ここで説明する。
図4から7gにおいて、グラフで「a」から「g」の印を付けられたステージは、対応するステージにおいて、ギア要素19、27及び副軸5及び故にギア要素15に対する第1の及び第2のセレクタ・アセンブリ29、31の場所を示すそれぞれの図aからgに対応する。
【0103】
図4から4gは、ファースト・ギアからセカンド・ギアへのパワー・オン・シフトアップ戦略を示す。
【0104】
図4aは、パワー・オン・シフトアップが要求とされるときのトランスミッションの初期状態を示す。クラッチ86は、閉じられ、第2のセレクタ・アセンブリ31は、ギア要素27と係合し、第1のセレクタ・アセンブリ29のギア・セレクタ・リング35は、ニュートラル・ポジションにある。トランスミッション88を介するトルク進路は、第2の入力軸3、第2のセレクタ・アセンブリ31、ギア要素27、25、第2の副軸7、ギア要素23、15、17及び出力軸9である。
図4aの矢印A及びBは、ギア要素27及び19の相対速度を示す。両矢印は、ギア要素27がギア要素19より速く回転していることを示す。
図4aの矢印C及びDは、ギア要素19及び第1の副軸5(及び故にギア要素15)の方向及び相対回転速度を示す。両矢印Dは、第1の副軸5がギア要素19より速く回転していることを示す。矢印Eは、トルクの方向を示す。次のステップは、第1の副軸5をギア・セレクタ・リング35と係合されることと、クラッチ86を開くこと(
図4b)である。第2のセレクタ・アセンブリ31は、このステージでは動かない。駆動源80の速度、クラッチ86、ファースト・ギア、セカンド・ギア及び出力の相対トルク及び速度へのクラッチ86を開くことの効果が、グラフに示されている。トランスミッション88を介するトルク進路は、第1の入力軸1、第1のセレクタ・アセンブリ29、第1の副軸5、ギア要素15、17及び出力軸9に変化する。次のステップは、クラッチ86がセカンド・ギア(ギア要素19)の速度と同期されることである。これは、ギア要素27との係合から及びギア要素19との係合に第2のセレクタ・アセンブリ31を動かすことによって、達成される(
図4c)。クラッチ86トルク容量は、次いで、クラッチ・トルクを駆動源トルクに実質的にマッチさせるために、徐々に増やされる(
図4d)。トランスミッション88を介するトルク進路は、次いで、第2の入力軸3、第2のセレクタ・アセンブリ31、ギア要素19、21及び出力軸9に変更される。駆動源80の速度は、次いで、セカンド・ギア(ギア要素19)の速度に同期させられ、ギア・セレクタ・リング35は、第1の副軸5との係合からニュートラル・ポジションに移動される(
図4e)。クラッチ86は、次いで、閉じられ(
図4f)、シフトは、完了する(
図4g)。したがって、トルクは、シフトの間中、継続的に、出力軸9に供給される。これは、車両の性能の向上に役立つ。
【0105】
図5から5gはセカンド・ギアからファースト・ギアへのパワー・オン・シフトダウン戦略を示す。
【0106】
図5aは、セカンド・ギアで駆動するときのトルク進路を示す。トルクは、駆動源80から、クラッチ86、第2の入力軸3、第2のセレクタ・アセンブリ31及びギア要素19及び21(セカンド・ギア)を通って、出力軸9へと通る。第2のセレクタ・アセンブリ31は、ギア要素19と係合する。シフト要求が行われるとき、クラッチ・トルク容量86は、クラッチ86が滑る状態に設定されるように、減らされる(
図5b)。駆動源80の速度は、次いで、ファースト・ギア(及び故に第1の副軸5)の速度と同期させられ、第1のセレクタ・アセンブリ29は、第1の副軸5をギア・セレクタ・リング35と係合させるために、作動させられる(
図5c)。クラッチ86トルク容量は、次いで、クラッチ86が完全に開かれるまで、減らされる(
図5d)。これが起こるとき、出力トルクは、ファースト・ギアによってトルクが生み出されるとき、増大し始める。トランスミッション88を介するトルク進路は、第1の入力軸1、第1のセレクタ・アセンブリ29、第1の副軸5、ギア要素15、17及び出力軸9に変わる。クラッチ速度は、次いで、ファースト・ギア(及び故に第1の副軸5)に同期させられ、第2のセレクタ・アセンブリ31は、ギア要素19の係合を外すように及びギア要素27を選択するように動作させられる(
図5e)。クラッチ86トルク容量は、次いで、クラッチ86が閉じられるまで、急速に増やされ、第1のセレクタ・アセンブリ29は、第1の副軸5からの係合からニュートラル・ポジションへと第1のセレクタ・リング35を動かすように作動させられる。トランスミッションを介するトルク進路は、第2の入力軸3、第2のセレクタ・アセンブリ31、ギア要素27、25、第2の副軸7、ギア要素23、15、17及び出力軸9に変わる(
図8f)。シフトが完了する(
図8g)。したがって、トルクは、シフトの間中、継続的に、出力軸9に供給される。これは、車両の性能の向上に役立つ。
【0107】
図6から6gは、ファースト・ギアからセカンド・ギアへのパワー・オフ・シフトアップにおけるステップを示す。
【0108】
図6は、パワー・オフ・シフトアップの外観を提供する。
図6aは、シフト要求によりトランスミッション88の状態を示す。トランスミッションは、オーバーランにある。トランスミッション88を介するトルク進路は、出力軸9、ギア要素17、15、23、第2の副軸7、ギア要素25、27、第2のセレクタ・アセンブリ31から第2の入力軸3までである。すなわち、トルクの方向が逆なので、
図4aに示すのとは逆の進路である。第1のセレクタ・アセンブリ29は、ニュートラルにある。要求時に、クラッチ86は閉じられている。要求後、クラッチ86トルク容量は、滑る状態が達成されるまで、減らされる(
図6b)。駆動源80は、セカンド・ギア(ギア要素19)に同期させられ、第1のセレクタ・アセンブリ29は、ギア要素19との係合へとギア・セレクタ・リング35を動かすように作動させられる(
図6c)。クラッチ86トルク容量は、次いで、クラッチ86が完全に開くまで、減らされる(
図6d)。トランスミッションを介するトルク進路は、変わる。新しいトルク進路は、出力軸9、ギア要素21、19、第1のセレクタ・アセンブリ29から第1の入力軸1までである。クラッチ速度は、セカンド・ギア(ギア要素19)に同期させられ、第2のセレクタ・アセンブリ31は、ギア要素27の係合を外し、ギア要素19と係合する(
図6e)。クラッチ86は、次いで、閉じられ、第1のセレクタ・アセンブリ29は、ニュートラル・ポジションへとギア・セレクタ・リング35を動かすために作動する(
図6f)。シフトは完了する(
図6g)。したがって、トルクは、シフトの間中、第1の入力軸1及び第2の入力軸3のうちの1つに供給される。シフト中に入力軸1、3にトルクをフィード・バックすることは、トルクが車両ドライブトレインにおいて使用されること、例えば電気車両の電池を再充電すること、を可能にする。これは、他の場合には浪費されたであろうエネルギの積極的活用を行う。
【0109】
図7から7gは、セカンド・ギアからファースト・ギアへのパワー・オフ・シフトダウンにおけるステップを示す。
【0110】
図7aは、シフト要求が行われるときのトランスミッション88の状態を示す。オーバーラン・トルク進路は、出力軸9、ギア要素21、19、第1のセレクタ・アセンブリ29から第1の入力軸1までである。トルクの方向が逆なので、その経路は、
図5aに示されたものとは逆である。第2のセレクタ・アセンブリ31は、ギア要素19と係合しており、ギア・セレクタ・リング35は、ニュートラル状態にあり、クラッチ86は、閉じられている。第1のセレクタ・アセンブリ29は、ギア要素19と係合するようにギア・セレクタ・リング35を動かすために作動させられ、クラッチ86トルク容量は、クラッチ86が開かれるまで、減らされる(
図7b)。クラッチ速度は、次いで、ファースト・ギア速度(第1の副軸5の速度)に同期させられる。第2のセレクタ・アセンブリ31は、ギア要素19の係合を外し、ギア要素27と係合する(
図7c)。クラッチ・トルクは、次いで、駆動源トルクに実質的にマッチさせられる(
図7d)。トルク進路は、変わる。トランスミッションを介するトルクは、出力軸9、ギア要素17、15、23、第2の副軸7、ギア要素25、27、第2のセレクタ・アセンブリ31から第2の入力軸3に進む。駆動源速度は、次いで、ファースト・ギア速度(第1の副軸5の速度)に実質的にマッチさせられ、第1のセレクタ・アセンブリ29は、ギア・セレクタ・リング35をニュートラルへ動かすことによってギア要素19の係合を外すように作動させられる(
図7e)。クラッチ・トルク容量は、クラッチが完全に閉じられるまで、増やされる(
図7f)。シフトは完了する、
図7g。したがって、トルクは、シフトの間中、第1の入力軸1及び第2の入力軸3のうちの1つに供給される。シフト中に入力軸1、3にトルクをフィード・バックすることは、トルクが車両ドライブトレインにおいて使用されること、例えば電気車両の電池を再充電するために、を可能にする。これは、他の方法では浪費されたであろうエネルギの積極的活用を行う。
【0111】
トルク・スパイクは、新しいギアに係合する前に、シフト戦略における速度同期ステップによって実質的になくされることが当業者には理解されよう。トランスミッション・レイアウトが、2つの駆動入力進路を提供するので、同期は、可能である:直接に駆動源からの一方と、クラッチ・デバイスを介する駆動源からの他方。それはまた、少なくともいくらかのトルクがシフト中に出力軸に供給されることを可能にし、シフト中の駆動の損失がないことを確実にする。
【0112】
トランスミッションが、車両及び非車両アプリケーションにおいて使用され得る。典型的な車両は、乗用車、大型トラック、オートバイ、バス、ライトバン、すべての車輪駆動車両、トラクタ、建設車両、掘削車両、軍事車両を含む。非車両アプリケーションは、製造機械、風力タービンなどを含む。
【0113】
第2の実施例が、
図8に示されている。第2の実施例は、第1のセレクタ・アセンブリの係合リング135が、リング135a、135bの各側面に1つの係合要素128a、128bを単に含むことを除いて、第1の実施例と類似している。同様に、関連ギアは、そこに形成された1つのドッグのみを有する。これは、電気車両アプリケーションに適合する、ギアに係合するための非常に大きな係合窓を実現し、ギア間の相対速度は、大きくなり得る。また、ドッグとの衝突頻度が減らされるので、それはまた、リング135が隣接ギア要素との係合からラチェットするときに生み出される雑音のレベルを下げる。それぞれの側面135a、135bに1つの係合要素128a、128bを有する実施例では、斜面145a、145bの弓形の範囲AEは、90度から360度の範囲になり得、通常は、300度から360度の範囲にある。各斜面145a、145bは、それぞれの側面135a、135bの全円周をほぼ通ってそのそれぞれの駆動面143a、143bから広がる。
【国際調査報告】