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  • 特表-脂質材料を処理するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】脂質材料を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 1/00 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
C11B1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536230
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2019085398
(87)【国際公開番号】W WO2020136034
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】20186137
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドクビスト、ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】ハルッツネン、ヤルモ
(72)【発明者】
【氏名】ビスリ、オッリ
(72)【発明者】
【氏名】シッポラ、バイノ
(72)【発明者】
【氏名】パサネン、アンチ
(72)【発明者】
【氏名】トッピネン、サミ
(72)【発明者】
【氏名】パサネン、ユッカ-ペッカ
【テーマコード(参考)】
4H059
【Fターム(参考)】
4H059BA83
4H059BC03
4H059BC13
4H059BC48
4H059CA02
4H059CA05
4H059CA09
4H059CA66
4H059CA72
4H059CA73
(57)【要約】
リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処理する方法が記載される。該方法は、脂質材料を提供する工程と、前加熱された脂質材料を得るために、脂質材料を前加熱する工程と、加熱処理された脂質材料を得るために、加熱処理工程において、前処理された脂質材料を加熱処理する工程と、任意には、後処理工程において、前記加熱処理された脂質材料を後処理する工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処理する方法であって、
a)脂質材料を提供する工程と、
b)前加熱された脂質材料を得るために、前記脂質材料を前加熱する工程と、
c)加熱処理された脂質材料を得るために、加熱処理工程において、前記前処理された脂質材料を加熱処理する工程と、
d)任意には、後処理工程において、前記加熱処理された脂質材料を後処理する工程
とを含み、
前記前加熱工程b)が、約90℃~約160℃の温度で行われ、
前記加熱処理工程c)が、約220℃~約280℃の温度、好ましくは約220℃~約280℃、より好ましくは約260℃~280℃の温度で行われ、および
前記加熱処理工程c)が、約0bar(g)~約20bar(g)、好ましくは約1bar(g)~約10bar(g)、より好ましくは約1bar(g)~約3bar(g)の圧力で行われる工程。
【請求項2】
前記加熱処理工程c)が、約5~約300分、好ましくは約10~約180分、さらにより好ましくは約15~約90分、さらにより好ましくは約30~約60分の時間のあいだ行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記加熱処理のあいだの前記脂質材料の水分含有量が、約200~約2500mg/kg、好ましくは約200~約1500mg/kg、より好ましくは約200mg/kg~1000mg/kgである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記脂質材料が、再生可能な脂質材料である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質材料が、植物ベース、微生物ベース、または動物ベースの脂質材料、またはそれらの任意の組み合わせである請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記前加熱工程b)が、空気除去工程をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記リン化合物が、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジン酸を含む群より選択されるリン脂質である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記後処理工程d)が、脂質材料への水分の添加を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱処理工程c)が、少なくとも1つのリアクター内で行われる請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのリアクターが、管型反応器および/または撹拌槽反応器から選択される請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱処理工程c)に付された前記脂質材料の一部が抜き出され、約300℃~約350℃の温度に加熱され、および、前記脂質材料が前記加熱処理工程c)に付される前記工程c)へと再導入される請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記後処理工程d)が、冷却、沈降、ろ過、遠心分離、および/または、漂白を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記後処理工程d)が、漂白である請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程a)において提供される前記脂質材料が、約30~約200mg/kgのリン、好ましくは約30~約1000mg/kgのリン、より好ましくは約50mg/kg~600mg/kgのリンを含む請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水素化処理された脂質材料を得るために、水素化処理触媒の存在下での前記加熱処理された脂質材料の水素化処理をさらに含む請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記水素化処理が、水素化脱酸素化(HDO)、水素化脱流(HDS)、水素化脱メタル(HDM)、水素化脱窒素(HDN)、および/または水素脱芳香族化(HDA)から選択され得る請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記加熱処理工程c)の後に、第2の加熱処理をさらに含む請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
炭化水素を製造するための方法であって、
x)請求項1~20のいずれか1項に記載の方法を用いて、リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処置する工程と、
y)前記工程x)からの脂質材料を、オイル精製変換プロセスに付す工程
とを含む方法。
【請求項19】
前記オイル精製変換プロセスが、少なくとも1つの炭化水素を得るために、前記脂質材料の分子量を変えること、前記脂質材料からのヘテロ原子の除去、前記脂質材料の飽和度を変えること、前記脂質材料の分子構造を再編成すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記工程y)が、水素化分解を含む請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
前記工程y)が、水蒸気分解を含む請求項18または19記載の方法。
【請求項22】
前記工程y)が、異性化を含む請求項18または19記載の方法。
【請求項23】
前記工程y)が、熱触媒分解を含む請求項18または19記載の方法。
【請求項24】
前記工程y)が、流動床式接触分解を含む請求項18または19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物としてリンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルおよび脂肪が、それらが最終生成物の品質にとって有害であり、使用される触媒のプラッギングおよび不活性化ならびに例えば熱交換機などの機器の汚染を引き起こすため、触媒プロセスの前にフィードから除去されなければならないリン脂質および他の不純物を含み得ることは周知の事実である。一般的に、燃料または化学品の触媒的製造の前に使用される精製プロセスは、例えば化学的または物理的精製などの食用オイル精製から採用される。しかしながら、これらの技術は、例えば動物性脂肪、汚染された菜種油、使用済み料理油、または海藻オイルなどの最も困難なオイルのためには完全には適していない。
【0003】
リン脂質は熱分解を受けやすいこともまた、周知の事実である。特に起こりやすい分解は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むアミノ基である。一方、ホスファチジルコリン(PC)は、熱処理に最も抵抗性であることが報告されている。ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)およびホスファチジルエタノールアミン(PE)は、174℃、1時間でほぼ完全に分解することが示されている。
【0004】
脱酸素化の温度でのこれら不純物の熱分解は、特許文献1に示唆されており、ここで、540℃までの温度が使用されている。
【0005】
特許文献2は、例えば自動車のエンジン、ギアボックスおよび差動装置などからの、金属化合物を含む使用済み潤滑油の、200~250℃までの加熱、冷却およびその後の5000~300000の範囲のカットゾーンをもち、かつ、オイルにとっては透過性であるが不純物にとっては実質的に透過性でない半透過性メンブレンでのろ過による、精製に関する。加熱は、水、蒸気および/または消石灰の存在下で行われ得る。
【0006】
特許文献3は、脂質材料の精製のための方法であって、脂質材料中のリンおよび/または金属化合物の含有量が、水または他の溶媒なしでの約240℃~約280℃の温度での加熱処理によって減少されている方法に関する。
【0007】
脂質材料を処理する代替的な方法、すなわち最終生成物の品質に有害となることのない、リンおよび/または金属化合物の効果的な現象を提供する方法の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0266743号明細書
【特許文献2】英国特許出願公告第1470022号明細書
【特許文献3】国際公開第2018/060302号
【発明の概要】
【0009】
上述の技術および周知の技術に対する改良を提供すること、特には、リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処理するための方法を提供することが、本発明のある態様の目的である。
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処理するための方法であって、
a)脂質材料を提供することと、
b)前加熱された脂質材料を得るために、脂質材料を前加熱することと、
c)加熱処理された脂質材料を得るために、加熱処理工程において、前処理された脂質材料を加熱処理することと、
d)任意には、後処理工程において、加熱処理された脂質材料を後処理すること
とを含む方法を可能にすることである。
【0011】
一態様において、前加熱工程b)は、約90℃~約160℃の温度で行われる。
【0012】
好ましい態様において、加熱処理工程c)は、約220℃~約300℃、好ましくは約220℃~約280℃、より好ましくは約260℃~280℃の温度で行われる。
【0013】
別の好ましい態様において、加熱処理工程c)は、約0bar(g)~約20bar(g)、好ましくは約1bar(g)~約10bar(g)、より好ましくは約1bar(g)~約3bar(g)の圧力で行われる。
【0014】
さらなる様態において、加熱処理工程c)は、約5~約300分、好ましくは約10~約180分、さらにより好ましくは約15~約90分、さらにより好ましくは約30~約60分の時間のあいだ行われる。
【0015】
一態様において、加熱処理のあいだの脂質材料の水分含有量は、約200~約2500mg/kg、好ましくは約200~約1500mg/kg、より好ましくは約200~1000mg/kgである。
【0016】
本発明のさらなる態様において、脂質材料は、再生可能な脂質材料である。
【0017】
好ましい態様において、脂質材料は、植物ベース、微生物ベース、または動物ベースの脂質材料、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0018】
本発明の一態様において、前加熱工程b)は、空気除去工程をさらに含む。
【0019】
好ましくは、リン化合物は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジン酸を含む群より選択されるリン脂質である。
【0020】
一態様において、後処理工程d)は、脂質材料への水分の添加を含む。
【0021】
さらなる態様において、加熱処理工程c)は、少なくとも1つのリアクター内で行われる。
【0022】
好ましい態様において、該少なくとも1つのリアクターは、管型反応器(tube reactor)および/または撹拌槽反応器(stirred tank reactor)から選択される。
【0023】
本発明の一態様において、少なくとも一部、例えば1~99wt%、5~95wt%、10~90wt%、20~80wt%、30~70wt%、40~60wt%の、加熱処理工程c)に付された脂質材料が抜き出され、約300℃~約350℃の温度に加熱され、そして、脂質材料が加熱処理工程c)に付される工程c)へと再導入される。
【0024】
別の態様において、後処理工程d)は、冷却、沈降、ろ過、遠心分離、および/または、漂白を含む。
【0025】
好ましい態様において、後処理工程d)は、漂白である。
【0026】
さらなる態様において、工程a)において提供される脂質材料は、約30~約200mg/kgのリン、好ましくは約30~約1000mg/kgのリン、より好ましくは約50~600mg/kgのリンを含む。
【0027】
一態様において、該方法は、水素化処理された脂質材料を得るために、水素化処理触媒の存在下での加熱処理された脂質材料の水素化処理を含む。
【0028】
好ましい態様において、水素化処理は、水素化脱酸素化(HDO)、水素化脱流(HDS)、水素化脱メタル(HDM)、水素化脱窒素(HDN)、水素脱芳香族化(HDA)から選択され得る。
【0029】
本発明の一態様において、該方法は、加熱処理工程c)の後に、第2の加熱処理をさらに含む。
【0030】
本発明のさらなる目的は、炭化水素を製造するための方法であって、
x)上記で特定される方法を用いて、リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処置することと、
y)工程x)からの脂質材料を、オイル精製変換プロセスに付すこと
とを含む方法を提供することである。
【0031】
一態様において、オイル精製変換プロセスは、少なくとも1つの炭化水素を得るために、脂質材料の分子量を変えること、脂質材料からのヘテロ原子の除去、脂質材料の飽和度を変えること、脂質材料の分子構造を再編成すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0032】
さらなる態様において、工程y)は、水素化分解を含む。
【0033】
別の態様において、工程y)は、水蒸気分解を含む。
【0034】
さらなる態様によれば、工程y)は、異性化を含む。
【0035】
一態様において、工程y)は、熱触媒分解を含む。
【0036】
別の態様において、工程y)は、流動床式接触分解を含む。
【0037】
これらのおよび他の様態、本発明の態様の特徴および有利点は、本発明の態様および様態の以下の記載から明白および明らかにされ得るまたはされるであろう。添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明に記載のプロセスを簡潔に記載したものであり、ここで、1)前加熱および加熱処置の前に、例えば沈降、ろ過、遠心分離などのプロセスに付されていてもよい脂質材料が、約90~約150℃の温度に前加熱される。この前加熱工程はまた、酸化反応を最小限にするための空気除去工程を含んでいてもよい。2)前加熱された粗脂質材料は、加熱処理工程のために、加熱処理リアクターへと導入され、ここで、リアクターは、所望の反応滞留時間が達成されるようにデザインされる。3)加熱処理に付された脂質材料の一部が、抜き出されて、そして、加熱処理の温度より高い温度まで加熱され、そして、所望の加熱処理反応温度に流入してくる前加熱された脂質材料を加熱するために使用される。4)加熱処理に付された脂質材料が、その後、リアクターから取り出され、および、例えば漂白などのさらなる工程の前に冷却される。このようなプロセスにより、汚損は熱交換機の外側で起こり、洗浄の必要性を減少させ、およびこれにより、コストおよび廃棄物を減少させる。汚損は、リアクターの内部、熱を移送するために使用されていない表面で起こり、そしてしたがって、それらの洗浄は非常にまれにしか行われないはずである。
図2図2は、汚損問題が本発明のプロセスによって解決される代替的なプロセスを示す図である。図2に図示されるプロセスにおいて、汚損は、熱交換機の内部で起こる。このような汚損は、2つの方法によって処理される。すなわち、熱交換機の量を倍にすることによって、または、蒸気または例えば水酸化ナトリウム溶液を用いて汚損された熱交換機を洗浄することによって。図2に示されるプロセスにおいて、工程1)において、加熱処理の前にプロセスに付されていてもよい脂質材料が、加熱処理リアクターに導入される前に最終的な加熱処理反応温度まで加熱される。加熱の前は、酸化反応を最小限にするための空気除去の工程である。2)加熱処理リアクターは、所望の反応滞留時間が達成されるようにデザインされる。3)加熱処理された脂質材料が、その後、リアクターから取り出され、および、例えば漂白などのさらなる工程の前に冷却される。
図3図3は、研究室スケールの機器における加熱ロッドの汚損を示す図であり、ここで、加熱されたロッドは、試験材料を加熱するために使用される。パイプを通過する試験材料の温度は、加熱されたロッドのレベルまで昇温され、ロッドとロッドの外側の試験材料とのあいだの温度差は、増大する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の具体的な様態が、以下に添付の図面を参照して記載されるであろう。
【0040】
本明細書中に記載される本発明の種々の様態、代替物、様態は、本明細書中に記載される他の本発明の種々の様態、代替物、様態の1つまたは複数と組み合わされ得る。2またはそれ以上の様態が組み合わされてもよい。
【0041】
本発明の様態を記載するにあたり、明確性をもう敵として特定の用語が用いられるであろう。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定される意図をもつものではなく、それぞれの特定の用語は、同様の目的を達成する類似の様式で作動される全ての技術的な透過物を含むものであることが理解されるべきである。
【0042】
本発明の態様が記載される場合、全ての可能な様態の組み合わせおよび置換が明示的に記載されているわけではない。むしろ、ある手段が、互いに異なる従属クレームに列挙されている、または異なる態様に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせは有利に使われ得ないということを示すものではない。本発明は、記載される態様の全ての可能な組み合わせおよび置換を含んでいる。
【0043】
用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprise)」、および「含む(comprises)」は、本明細書中において発明者らによって、それぞれの例において、用語「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」、および「からなる(consists of)」とそれぞれ任意には置換可能であることが意図されている。
【0044】
本明細書中に使用されるように、単数形の「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、その文脈中でそうではないことが明らかに示されている場合を除いて、複数形を同様に含むことが意図されている。

上述されるように、本発明は、リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処理するための方法に関する。例えば蒸気分解、および、再生可能なディーゼル燃料などの再生可能な燃料の製造のためのプロセスにおいて使用される脂質材料中のリンおよび/または金属化合物の含有量は、大きな問題である。リンおよび/または金属化合物は、最終生成物の品質にとって有害である。リン化合物は、再生可能なフィードを交通燃料および化学品へと変換するために使用される触媒を不活性化し得る。さらに、リンおよび/または金属化合物は、例えば熱交換機などの器具に汚損を引き起こす。したがって、機器は洗浄を必要とし、これは維持コストおよび中断された製造に関するコストを生じさせる。さらに、廃棄蒸気の量が、洗浄の必要性に起因して増加される。
【0045】
処理される脂質材料は、金属およびリンをリン脂質、石鹸、または塩の形状で含む不純物を含み得る。脂質材料中に存在し得る金属不純物は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウムもしくはカリウム塩、またはマグネシウムもしくはカルシウム塩、またはそれら金属の任意の化合物などであり得る。
【0046】
本発明の脂質材料中に存在するリン化合物は、リン脂質であってもよい。脂質材料中に存在するリン化合物は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、およびホスファチジルエタノールアミンのうちの1またはそれ以上であり得る。
【0047】
脂質材料の加熱処理のあいだの汚損は、リンおよび/または金属化合物、特には固体の金属リン酸塩および加熱処理のあいだの金属リン酸塩の形状のリン脂質の熱分解によって引き起こされる。
【0048】
漂白と組み合わされた脂質材料の加熱プロセスが、漂白のみの場合よりも、リンおよび金属含有量のより効果的な現象を導くことが先に見いだされている。このような加熱プロセス(加熱処理とも称される)は、不純物を含む脂質材料が、不純物の含有量を減少させるために十分に長い時間のあいだ、約220~300℃まで、好ましくは約220~280℃、より好ましくは約260~280℃の温度まで加熱されることを必要としている。油脂化学および食用オイル業界においては、不純物を含むフィードは、典型的には、約100℃を超える温度まで加熱されることはなく、これは、これがフィードの品質の劣化および表面の汚損を結果としてもたらすであろうためである。
【0049】
用語「脂質材料(lipid material)」は、植物、微生物、および/または動物起源の脂肪および/またはオイルを意味している。それはまた、そのようなオイルおよび/または脂肪のプロセスから回収された任意の廃棄流を意味する。一般的に、脂肪は室温において固体であり、および、オイルは室温において液体である。
【0050】
本発明の脂質材料としては例えば、これらに限定される訳ではないが、トール油またはトール油蒸留プロセスからの残渣塔底留分、動物ベースのオイルおよび脂肪、例えばスラッジパーム油もしくは使用済み料理油などの植物(vegetable)または植物(plant)ベースオイル、微生物オイル、海藻オイル、遊離脂肪酸、リンおよび/または金属を含む任意の脂質、酵母またはカビ産生物を起源とするオイル、バイオマスを起源とするオイル、菜種油、カノーラ油、コルザ油、ヒマワリ油、大豆油、麻油、オリーブ油、亜麻仁油、綿実油、マスタード油、パーム油、アラキス油、ヒマシ油、ココナッツ油、スエット、獣脂、脂肪(blubber)、リサイクルされた食事性脂肪(alimentary fats)、遺伝子工学によって製造された出発物質、および例えば海藻およびバクテリアなどの微生物によって産生された生物学的出発物質、および、上記の脂質材料の任意の混合物などが挙げられる。
【0051】
特には、脂質材料は、動物ベースの脂肪および/または使用済み料理油である。使用済み料理油は、例えば菜種油、カノーラ油、コルザ油、ヒマワリ油、大豆油、麻油、オリーブ油、亜麻仁油、綿実油、マスタード油、パーム油、アラキス油、ヒマシ油、ココナッツ油、および動物性脂肪などの上述のオイルのうちの1または複数を含んでいてもよいことが理解されるべきである。
【0052】
本発明の方法によって処理される脂質材料は、典型的には、リン脂質、石鹸または塩の形状である、リンおよび/または金属を含む不純物を含む。不純物は、例えば、リン酸塩または硫酸塩、鉄塩または有機塩、石鹸、またはリン脂質などの形状であってもよい。脂質材料中に存在し得る金属不純物は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウムもしくはカリウム塩、またはマグネシウムもしくはカルシウム塩、またはそれら金属の任意の化合物などであり得る。
【0053】
本発明の方法において処理される脂質材料は、前加熱および加熱処理の前に、例えばこれらに限定される訳ではないが、沈降、脱ガム、漂白、脱臭、および/または蒸留などの種々の工程を通じて、前プロセスに付されて(pre-processed)いてもよい。
【0054】
前加熱および加熱処理の前に提供される脂質材料は、好ましくは、約30~2000mg/kg、より好ましくは約30~1000mg/kg、さらにより好ましくは約50~600mg/kgの量の脂質材料でリンを含む。
【0055】
本発明の方法によって処理された脂質材料は、さらに、例えば触媒プロセスなどによるプロセスに付されてもよい。このようなプロセスとしては、例えば、接触分解、熱接触分解、接触水素化、流動床式接触分解、接触ケトン化、接触エステル化、または、接触脱水などが挙げられる。このようなプロセスは、脂質材料が十分に純粋であること、および、そうでなければ触媒プロセスの働きを弱めるまたはプロセス中に存在する触媒を害してしまうであろう不純物を含まないことを必要とする。
【0056】
本発明の態様が図1に示されており、これは、本発明による方法の簡潔な記載を図示している。
【0057】
工程1)として、前加熱および加熱処置の前に、プロセスに付されていてもよい脂質材料が、約90~約150℃の温度に前加熱される。
【0058】
特には、脂質材料が前加熱される温度は、例えば、約100℃~150℃、例えば約110℃~140℃、例えば約120℃~130℃、または、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃などであり得る。
【0059】
前加熱工程はまた、加熱処理(工程2)のあいだに起こる酸化反応を最小のものとするために、脂質材料の溶解酸素が除去され得る空気除去工程を含んでいてもよい。これは、真空を適応することによって行われてもよい。前加熱工程の前、あいだ、または後に、脂質材料の水分は、加熱処理に先んじて、水および/または蒸気の形状での水分の脂質材料への添加によって制御され得る。
【0060】
工程2)において、前加熱された脂質材料は、その後、加熱処理のために加熱処置リアクターに導入され、ここで、リアクターは、所望の反応滞留時間が達成されるように、および汚損がおこる表面を備えるようにデザインされる。加熱処置は、約0bar(g)~約20bar(g)の圧力で、好ましくは約1bar(g)~約10bar(g)の圧力で、最も好ましくは約1bar(g)~約3bar(g)の圧力で行われる。加熱処理の温度は、好ましくは、約220℃~300℃の温度、より好ましくは約220~約280℃の温度、最も好ましくは約260℃~約280℃の温度である。
【0061】
特には、加熱処理の温度は、例えば、約230℃~約290℃、例えば約240℃~280℃、約250℃~約270℃、または、約220℃、約230℃、約240℃、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃などであり得る。
【0062】
加熱処理工程の反応時間は、好ましくは、約5分~約300分、好ましくは約10分~約180分、より好ましくは約15~約90分、さらにより好ましくは約30分~約60分である。
【0063】
特には、反応時間は、約15~約290分、例えば約25分~約280分、例えば約35分~約270分、例えば約45分~約260分、例えば約55分~約250分、例えば約65分~約240分、例えば約75分~約230分、例えば約85分~約220分、例えば約95分~約210分、例えば約105分~約200分、例えば約115分~約190分、例えば約125分~約180分、例えば約135分~約170分、例えば約145分~約160分、または、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、約65分、約70分、約75分、約80分、約90分、約95分、約100分、約105分、約110分、約115分、約125分、約130分、約135分、約140分、約145分、約150分、約155分、約160分、約165分、約170分、約175分、約180分、約185分、約190分、約195分、約200分、約205分、約210分、約215分、約220分、約225分、約230分、約235分、約240分、約245分、約250分、約255分、約260分、約265分、約270分、約275分、約280分、約285分、約290分、約295分、約300分であってもよい。
【0064】
本発明においてそれがどこで開始されようとも、例えば加熱はある量の時間のあいだ行われることが理解されるべきであり、これは、一旦特定の温度が達成されると特定の期間が開始されることを意味している。
【0065】
加熱処理のあいだの脂質材料の水分含有量は、好ましくは、約200~約2500mg/kg、好ましくは約200~約1500mg/kg、より好ましくは約200~1000mg/kgのレベルに保たれる。
【0066】
特には、加熱処理のあいだの脂質材料の水分含有量は、約200mg/kg、約300mg/kg、約400mg/kg、約500mg/kg、約600mg/kg、約700mg/kg、約800mg/kg、約900mg/kg、約1000mg/kg、約1100mg/kg、約1200mg/kg、約1300mg/kg、約1400mg/kg、約1500mg/kg、約1600mg/kg、約1700mg/kg、約1800mg/kg、約1900mg/kg、約2000mg/kg、約2100mg/kg、約2200mg/kg、約2300mg/kg、約2400mg/kg、約2500mg/kgであり得る。
【0067】
追加で、加熱処理のあいだのリンの除去を向上させるための化学品の追加が可能である。このような化学品としては、例えば、これらに限定される訳ではないが、硫酸および/またはリン酸などの酸、および/または、水酸化ナトリウムなどの塩基などが挙げられ得る。
【0068】
工程3)は、加熱処理にふされた脂質材料の一部が、どのようにして抜き出され、そして、加熱処理の温度よりも高い温度に加熱されるか、そしてその後、前処理工程から流入してくる脂質材料を、前加熱工程の後の脂質材料とさらに加熱されている加熱処理から抜き出された脂質材料と混合されることによって加熱するために使用されるかを示している。
【0069】
加熱処理から抜き出された脂質材料は、好ましくは、約300℃~約350℃、例えば約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、または約350℃の温度に加熱される。
【0070】
加熱処理は、これらに限定される訳ではないが、例えばチューブ型リアクターおよび/または攪拌タンクリアクターなどの種々の型のリアクターで行われ得る。
【0071】
工程4)は、加熱処理に付されていた脂質材料が、リアクターから抜き出され、そして、例えば漂白などのさらなる工程の前に冷却されていることを図示している。漂白工程の目的は、可溶性のリンおよび/または金属化合物および/または加熱処理工程のあいだに形成された固体または固体の一部をさらに除去することである。
【0072】
不純物は、任意には、例えば、これらに限定される訳ではないが、沈降、遠心分離および/またはろ過などの技術によって、完全にまたは部分的に除去されてもよい。
【0073】
図2は、任意のプロセスを示しており、その汚損問題は本発明による方法によって解決される。上述されるように、図2に示されているようなプロセスでは、汚損は、熱交換機の内部で結果として起こり、このような汚損は、熱交換機の量を倍にすることによって、または、蒸気または例えば水酸化ナトリウム溶液を用いて汚損された熱交換機を洗浄することによってという2つの方法によって処理される。
【0074】
工程1において、加熱処理に先立って、プロセスに付されていてもよい脂質材料が、加熱処理リアクターに導入される前に加熱処理温度まで加熱される。すなわち、脂質材料は、加熱処理に導入される前に約200℃~約300℃の温度まで加熱される空気除去工程が酸化反応を最小限のものとするために含まれ得る。加熱処理リアクターは、所望の反応滞留時間が達成されるようにデザインされる。
【0075】
工程3)は、加熱処理に付されていた脂質材料がリアクターからむき出され、そして、例えば漂白などのさらなる工程の前に冷却されることを示している。
【0076】
したがって、図1に示される方法によって前加熱工程を行う流は、本発明によれば、熱交換機の汚損およびそれゆえの洗浄手順の必要性を減少させることであり、これは、洗浄のためのコストおよび/または維持コストの減少、および、中断された製造のためのコストの減少をもたらす。廃棄流の量もまた減少される。比較すると、本発明の前加熱工程に付された脂質材料が、図2に記載されている方法にしたがってプロセスに付された脂質材料ほど速くは熱交換機の表面を汚染しないことが観察された。
【0077】
加熱処理反応、すなわち可溶性の不純物の固化は、高い変換率を得るためには滞留時間を必要とするが、しかしながら、不純物を含有している粗オイルを初めて高温(例えば160を超える)に加熱した場合、熱交換機中の滞留時間が短かったとしても汚損は迅速であることも観察されている。一旦前加熱された材料を加熱する代わりに、可溶性不純物の不溶性不純物への変換が完全ではないとしても、本発明による温度では、迅速な汚損は導かれず、および、これは図1に例示されるような本発明の方法の利益を説明している。したがって、本発明の方法は、脂質材料の加熱処理のあいだの熱交換機の汚損を制御するために使用され得る。
【0078】
本発明による脂質材料を処理するための方法は、さらに、水素化処理された脂質材料を得るために、水素化処理触媒の存在下での加熱処理された脂質材料の水素化処理の工程を含んでいてもよい。
【0079】
水素化処理は、HDO、HDS、HDM、HDNおよび/またはHDAから選択され得る。
【0080】
用語「水素化脱酸素化(HDO)」は、(HDO)触媒の影響下の分子水素によって、水として酸素を除去することを意味する。
【0081】
用語「水素化脱流(HDS)」は、(HDS)触媒の影響下の分子水素によって、硫化水素として硫黄を除去することを意味する。
【0082】
用語「水素化脱メタル(HDM)」は、(HDS)触媒と共にそれらをトラップすることによって、金属を除去することを意味する。
【0083】
用語「水素化脱窒素(HDN)」は、(HDN)触媒の影響下の分子水素によって、窒素を除去することを意味する。
【0084】
用語「水素脱芳香族化(HDA)」は、(HDA)触媒の影響下の分子水素によって、芳香環を飽和させるまたは開環することを意味する。
【0085】
本発明の様態は、炭化水素を製造するための方法に関する。該方法は、本発明の方法を用いることによって得られる。脂質材料中のリンおよび/または金属化合物の量を減少させること、および、精製された脂質材料をオイル精製変換プロセスへと付すことを含む。
【0086】
一態様において、オイル精製変換プロセスは、少なくとも1つの炭化水素を得るために、脂質材料の分子量を変えること、脂質材料からのヘテロ原子の除去、脂質材料の分子構造の再編成、またはそれらの組み合わせを含む。
【0087】
オイル精製変換プロセスは、水素分解、蒸気分解、異性化、熱接触分解および/または流動床式接触分解を含んでいてもよい。
【実施例
【0088】
以下の実施例は、クレームされる発明をより良く図示するために提供されるものであり、発明の範囲を限定するように解釈されるべきものではない。特定の材料が記載されている限りにおいて、それは単に図示を目的とするものであり、発明を限定する意図はない。当該技術分野における当業者であれば、発明的能力を発揮することなく、および、発明の範囲から外れることなく、等価な手段または反応物を開発することができるであろう。多くのバリエーションが本発明の境界内に留まりながらも本明細書中に記載される手順においてなされ得ることが理解されるであろう。そのようなバリエーションは発明の範囲内に含まれるべきであることが発明者らの意図である。
【0089】
実施例1
汚損実験が、研究室スケールの汚損試験機器、Falex Thermal Fouling Testerで行われた。汚損試験機器において、試験材料は、フィードリザーバーから、その内部に電気的に加熱されたロッドが備えられているパイプへとポンプによって吸い上げ(1mL/min)られた(500グラムの試験材料、90℃、15bar窒素圧力)。試験材料がパイプを通過したら、それはフィードリザーバーへと戻された。試験時間は18時間(フィードリザーバーの全ての内容量は8時間20分で機器を通過した)。
【0090】
試験材料がパイプを通過するにつれて、試験材料の温度は加熱されたロッドの温度レベルまで上昇された。試験材料が加熱されたロッドの表面を汚染し始めると、その温度は一定に保たれているロッドとパイプから出てくる試験材料とのあいだの温度差が増加する。ロッドと試験材料との温度差が大きくなるほど、汚損傾向が高い。
【0091】
実験において、最初の脂質材料は、欧州からの動物性脂肪であった。脂質材料は、いかなる前処理にも付されなかった。脂質材料は、そのままで、汚損試験に、およびその後の研究室スケールの加熱処理に、使用された。加熱処理は、1L Parr社製リアクターにて、脂質材料を280℃まで加熱し、そして、脂質材料を60分という時間のあいだその温度で脂質材料を保持することによって行われた。圧力は、バッチの加熱処理のあいだ制御されず、および、圧力は上昇するに任せられた。加熱処理の後、2つのサンプルが作成された:加熱処理された材料そのもの(加熱処理のあいだに形成された固体を含む)およびろ過(2μm)後の加熱処理された材料。試験マトリックスは表1に示されている。
【0092】
【表1】
【0093】
粗脂質材料、および、研究室スケールで製造された本発明の脂質材料の前加熱工程を含む方法後の脂質材料の実験の結果が図3に示されており、研究室スケールで製造された、本発明の前加熱工程に付された脂質材料が、330℃において、本発明の前加熱工程に付されなかった脂質材料である粗脂質材料より少ない汚損しか生じなかったことを示している。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処理する方法であって、
a)脂質材料を提供する工程と、
b)前加熱された脂質材料を得るために、前記脂質材料を前加熱する工程と、
c)加熱処理された脂質材料を得るために、加熱処理工程において、前記前処理された脂質材料を加熱処理する工程と、
d)任意には、後処理工程において、前記加熱処理された脂質材料を後処理する工程
とを含み、
前記前加熱工程b)が、約90℃~約160℃の温度で行われ、
前記加熱処理工程c)が、約220℃~約280℃の温度、好ましくは約220℃~約280℃、より好ましくは約260℃~280℃の温度で行われ、および
前記加熱処理工程c)が、約0bar(g)~約20bar(g)、好ましくは約1bar(g)~約10bar(g)、より好ましくは約1bar(g)~約3bar(g)の圧力で行われる工程。
【請求項2】
前記加熱処理工程c)が、約5~約300分、好ましくは約10~約180分、さらにより好ましくは約15~約90分、さらにより好ましくは約30~約60分の時間のあいだ行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記加熱処理のあいだの前記脂質材料の水分含有量が、約200~約2500mg/kg、好ましくは約200~約1500mg/kg、より好ましくは約200mg/kg~1000mg/kgである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記脂質材料が、再生可能な脂質材料である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質材料が、植物ベース、微生物ベース、または動物ベースの脂質材料、またはそれらの任意の組み合わせである請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記前加熱工程b)が、空気除去工程をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記リン化合物が、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジン酸を含む群より選択されるリン脂質である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記後処理工程d)が、脂質材料への水分の添加を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱処理工程c)が、少なくとも1つのリアクター内で行われる請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのリアクターが、管型反応器および/または撹拌槽反応器から選択される請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱処理工程c)に付された前記脂質材料の一部が抜き出され、約300℃~約350℃の温度に加熱され、および、前記脂質材料が前記加熱処理工程c)に付される前記工程c)へと再導入される請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記後処理工程d)が、冷却、沈降、ろ過、遠心分離、および/または、漂白を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記後処理工程d)が、漂白である請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程a)において提供される前記脂質材料が、約30~約200mg/kgのリン、好ましくは約30~約1000mg/kgのリン、より好ましくは約50mg/kg~600mg/kgのリンを含む請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水素化処理された脂質材料を得るために、水素化処理触媒の存在下での前記加熱処理された脂質材料の水素化処理をさらに含む請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記水素化処理が、水素化脱酸素化(HDO)、水素化脱流(HDS)、水素化脱メタル(HDM)、水素化脱窒素(HDN)、および/または水素脱芳香族化(HDA)から選択され得る請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記加熱処理工程c)の後に、第2の加熱処理をさらに含む請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記前加熱工程b)の前に、沈降、ろ過または遠心分離によって前記脂質材料を処理するための工程a1)をさらに含む請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
炭化水素を製造するための方法であって、
x)請求項1~18のいずれか1項に記載の方法を用いて、リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処置する工程と、
y)前記工程x)からの脂質材料を、オイル精製変換プロセスに付す工程
とを含む方法。
【請求項20】
前記オイル精製変換プロセスが、少なくとも1つの炭化水素を得るために、前記脂質材料の分子量を変えること、前記脂質材料からのヘテロ原子の除去、前記脂質材料の飽和度を変えること、前記脂質材料の分子構造を再編成すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記工程y)が、水素化分解を含む請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
前記工程y)が、水蒸気分解を含む請求項19または20記載の方法。
【請求項23】
前記工程y)が、異性化を含む請求項19または20記載の方法。
【請求項24】
前記工程y)が、熱触媒分解を含む請求項19または20記載の方法。
【請求項25】
前記工程y)が、流動床式接触分解を含む請求項19または20記載の方法。
【国際調査報告】