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特表2022-515791ヒトVγ9Vδ2T細胞増殖培養方法及び培地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ヒトVγ9Vδ2T細胞増殖培養方法及び培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220215BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220215BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N1/00 G
A61K35/17
A61P31/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536329
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2019075491
(87)【国際公開番号】W WO2020133643
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811580040.2
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268794
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼▲ジ▼▲徳▼康民生物科技有限▲責▼任公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG GD KONGMING BIOTECH LLC
【住所又は居所原語表記】C‐301, 885 SHENZHOU ROAD, HUANGPU DISTRICT, GUANGZHOU, GUANGDONG 510700, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲イン▼ 芝南
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲揚▼哲
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲艶▼
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065BA23
4B065BB11
4B065BB19
4B065BB20
4B065CA44
4C087BB43
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB32
(57)【要約】
ヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法及び培地を提供する。該方法は、まずインターロイキン-2とホスホン酸系化合物とが含まれた培地を用いてヒトVγ9Vδ2T細胞を刺激し、そしてインターロイキン-15とビタミンCとを添加した培地を用いてヒトVγ9Vδ2T細胞を培養して増殖培養を実現する。培地にインターロイキン-15とビタミンCとがさらに含まれる。従来の増殖方法及び培地と比べて、該方法及び培地によれば、ヒトVγ9Vδ2T細胞の増殖効率及び細胞の純度を高めることができる。該方法で培養して得たヒトVγ9Vδ2T細胞は、抗アポトーシス能力がより高く、細胞の生存期間がより長く、そして、肝心な殺傷分子であるNKG2Dの発現レベルがより高くて、腫瘍細胞に対する殺傷能力がより高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞を刺激可能な第1培地を用いてT細胞を含む組成物を培養して前記T細胞を刺激するステップAと、
インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とが含まれた第2培地を用いて、刺激された前記T細胞を培養するステップBと、を含むT細胞増殖方法。
【請求項2】
前記T細胞は、Vγ9Vδ2T細胞を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1培地に、インターロイキン-2とホスホン酸系化合物とが含まれ、
任意選択で、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とがさらに含まれる。請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビタミンC誘導体は、ビタミンCエチル、ビタミンCパルミチン酸エステル、ビタミンCグルコシド、ビタミンCリン酸アスコルビルマグネシウム、ビタミンCリン酸アスコルビルナトリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択するものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2培地は、インターロイキン-15の濃度が1~1000ng/mlである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2培地は、ビタミンC又はビタミンC誘導体の濃度が10μM~800mMである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2培地は、インターロイキン-2の濃度が1~1000ng/mlである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記T細胞を含む組成物は、ヒト末梢血から分離した末梢血単核細胞を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップAにおける前記培養の時間は、60~100時間である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ホスホン酸系化合物は、ビスホスホネート系化合物を含み、
好ましくは、ゾレドロン酸、エチドロン酸、イワンドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択するものであり、例えばゾレドロン酸である、請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2培地は、RPMI-1640培地、D-MEM、MEM、RPMI、Opti-MEM及びこれらの組み合わせからなる群から選択した基礎培地を含み、例えばRPMI-1640培地を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
基礎培地と、インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体と、を含む培地。
【請求項13】
インターロイキン-2の濃度は1~1000ng/mlであり、インターロイキン-15の濃度は1~1000ng/mlであり、ビタミンC又はビタミンC誘導体の濃度は10μM~800mMである、請求項12に記載の培地。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法で増殖して得たT細胞と薬学的に許容可能な担体と、を含み、好ましくは、細胞懸濁液である薬物組成物。
【請求項15】
T細胞又は薬物組成物の、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療するための薬物の調製における用途であって、
好ましくは、前記悪性疾患は、がんであり、より好ましくは、前記悪性疾患は、副腎皮質がん、肛門がん、膀胱がん、上衣腫、神経芽細胞腫、乳癌、子宮頸がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝外胆管がん、眼腫瘍、胆嚢がん、胃がん、胚細胞腫瘍、性腺外腫瘍、頭頸部がん、下咽頭がん、膵島細胞がん、喉頭がん、白血病、急性リンパ性白血病、口腔がん、肝臓がん、肺がん及びこれらの組み合わせからなる群の中の疾患であり、例えば肺がんである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法で増殖して得たT細胞又は請求項14に記載の薬物組成物の、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療するための薬物の調製における用途。
【請求項16】
(1)関係被験者の末梢血から末梢血単核細胞を分離すること、
(2)請求項1~11のいずれか1項に記載の方法で前記末梢血単核細胞を増殖すること、
(3)前記関係被験者に増殖できた産物を投与することと、を含み、
前記末梢血単核細胞を前記T細胞を含む組成物とし、好ましくは、前記悪性疾患は、がんであり、より好ましくは、前記悪性疾患は、副腎皮質がん、肛門がん、膀胱がん、上衣腫、神経芽細胞腫、乳癌、子宮頸がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝外胆管がん、眼腫瘍、胆嚢がん、胃がん、胚細胞腫瘍、性腺外腫瘍、頭頸部がん、下咽頭がん、膵島細胞がん、喉頭がん、白血病、急性リンパ性白血病、口腔がん、肝臓がん、肺がん及びこれらの組み合わせからなる群の中の疾患であり、例えば肺がんである、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療するための方法。
【請求項17】
T細胞又は薬物組成物の、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療する用途であって、
好ましくは、前記悪性疾患は、がんであり、より好ましくは、前記悪性疾患は、副腎皮質がん、肛門がん、膀胱がん、上衣腫、神経芽細胞腫、乳癌、子宮頸がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝外胆管がん、眼腫瘍、胆嚢がん、胃がん、胚細胞腫瘍、性腺外腫瘍、頭頸部がん、下咽頭がん、膵島細胞がん、喉頭がん、白血病、急性リンパ性白血病、口腔がん、肝臓がん、肺がん及びこれらの組み合わせからなる群の中の疾患であり、例えば肺がんである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法で増殖して得たT細胞又は請求項14に記載の薬物組成物の、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療する用途。
【請求項18】
培地の、T細胞を増殖する用途であって、好ましくは、前記T細胞がVγ9Vδ2T細胞である請求項12又は13に記載の培地の、T細胞を増殖する用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願の相互参照
本出願は、2018年12月24日に中国専利局に提出された、出願番号が201811580040.2であり、名称が「ヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法及び培地」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容が、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、細胞培養の技術分野に属し、殊に、ヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法及び培地に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫細胞治療は、世界範囲の医療分野でも難治性疾患(例えば悪性腫瘍)を治療する新たな重要医療手段となっており、例えば、CAR-T細胞を利用するB細胞リンパ腫の治療が挙げられる。科学界と医療界にとって、安定性と信頼性の高い質及び優れる機能を持つ免疫細胞の獲得は、良好の臨床治療効果を得ることにとても重要である。
【0004】
ヒトVγ9Vδ2 T細胞は、霊長類及びヒトのみに存在する、抗腫瘍、抗感染の機能を持つT細胞亜集団である。ヒトVγ9Vδ2 T細胞は、腫瘍、難治性伝染病及び免疫機能不均衡疾病にかかる人に対する免疫細胞治療又は免疫機能再建に用いることができる。
【0005】
従来、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖方法は主に2種がある。
【0006】
第1種の従来の増殖技術は、末梢血単核細胞(PBMCs)の培地にIL-2及びTCRのモノクローナル抗体を添加するものである。この方法は、末梢血の2種のγδT細胞(Vδ1細胞亜集団とVδ2細胞亜集団)がともに増殖されるが、Vδ1細胞亜集団が免疫抑制機能をもっているので、免疫細胞治療に適しない欠点が主にある。
【0007】
第2種の従来の増殖技術は、PBMCsの培地にIL-2及び例えばゾレドロン酸であるリン酸塩小分子化合物を添加するものである。この方法は、純度の高いVδ2亜集団のγδT細胞を得ることができるので、免疫細胞治療に適し、現在国内外のヒト末梢血のヒトVγ9Vδ2 T細胞を増殖する常用方法となっている。しかしながら、該方法は、細胞培養増殖の周期が約14日であり、増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞の生存期間が比較的に短く(さらに約7日しか生存できない)、細胞の抗アポトーシス能力、腫瘍細胞に対する殺傷能力が高くない等の欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、例えばヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法と提供することを目的とする。該方法によれば、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖効率及び細胞の純度を高めることができ、培養できたヒトVγ9Vδ2T細胞が比較的高い腫瘍殺傷能力及び抑制能力を持つとともに、抗アポトーシス能力がより高く、細胞の生存期間がより長い。
【0009】
本開示は、例えばヒトVγ9Vδ2T細胞の培地をさらに提供することを目的とする。
【0010】
該培地を用いてヒトVγ9Vδ2T細胞を培養すれば、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖効率及び細胞の純度を高めることができ、培養できたヒトVγ9Vδ2T細胞が比較的高い腫瘍殺傷能力及び抑制能力を持つとともに、抗アポトーシス能力がより高く、細胞の生存期間がより長い。
【0011】
本開示は、例えばヒトVγ9Vδ2T細胞の刺激増殖培地をさらに提供することを目的とする。該培地によれば、末梢血単核細胞からヒトVγ9Vδ2T細胞を選択的に増殖させることができ、増殖して得たヒトVγ9Vδ2T細胞の純度が高く、殺傷能力及び抗アポトーシス能力がより高い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係るT細胞増殖方法は、
T細胞を刺激可能な第1培地を用いてT細胞を含む組成物を培養して前記T細胞を刺激するステップAと、
インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とが含まれた第2培地を用いて、刺激された前記T細胞を培養するステップBとを含む。
【0013】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記T細胞は、Vγ9Vδ2T細胞を含む。
【0014】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記第1培地に、インターロイキン-2とホスホン酸系化合物とが含まれる。
【0015】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記第1培地に、インターロイキン-2と、ホスホン酸系化合物と、インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とが含まれる。
【0016】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記ビタミンC誘導体は、ビタミンCエチル、ビタミンCパルミチン酸エステル、ビタミンCグルコシド、ビタミンCリン酸アスコルビルマグネシウム、及びビタミンCリン酸アスコルビルナトリウムから選択するものである。
【0017】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記第2培地は、インターロイキン-15の濃度が1~1000ng/mlである。
【0018】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記第2培地は、ビタミンC又はビタミンC誘導体の濃度が10μM~800mMである。
【0019】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記第2培地は、インターロイキン-2の濃度が1~1000ng/mlである。
【0020】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記T細胞を含む組成物は、ヒト末梢血から分離した末梢血単核細胞を含む。
【0021】
1つ又はいくつかの実施形態では、ステップAにおける前記培養の時間は、60~100時間である。
【0022】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記ホスホン酸系化合物は、ビスホスホネート系化合物を含み、好ましくは、ゾレドロン酸、エチドロン酸、イワンドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択するものであり、例えばゾレドロン酸である。
【0023】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記第2培地は、基礎培地と、インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とを含む。
【0024】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記基礎培地は、RPMI-1640培地、D-MEM、MEM、RPMI、Opti-MEM及びこれらの組み合わせからなる群から選択するものであり、例えばRPMI-1640培地である。
【0025】
本開示は、基礎培地と、インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とが含まれた培地をさらに提供する。
【0026】
1つ又はいくつかの実施形態では、培地は、インターロイキン-2の濃度が1-1000ng/mlであり、インターロイキン-15の濃度が1~1000ng/mlであり、ビタミンC又はビタミンC誘導体の濃度が10μM~800mMである。
【0027】
本開示は、本明細書に記載の増殖方法で増殖して得たT細胞と薬学的に許容可能な担体とを含む薬物組成物をさらに提供する。
【0028】
本開示は、本明細書に記載の増殖方法で増殖して得たVγ9Vδ2T細胞と薬学的に許容可能な担体とを含む薬物組成物をさらに提供する。
【0029】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記薬物組成物が細胞懸濁液である。
【0030】
本開示は、本開示に係る増殖方法で増殖して得たT細胞又は本開示に係る薬物組成物の、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療するための薬物の調製における用途をさらに提供する。
【0031】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記悪性疾患が、がんである。
【0032】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記悪性疾患が肺がんである。
【0033】
本開示は、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療するための方法をさらに提供し、該方法が、
(1)関係被験者の末梢血から末梢血単核細胞を分離すること、
(2)本開示に係る増殖方法で前記末梢血単核細胞を増殖すること、
(3)前記関係被験者に増殖できた産物を投与することと、を含む。
【0034】
本開示は、本明細書に記載の増殖方法で増殖して得たT細胞又は本明細書に記載の薬物組成物の、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療する用途をさらに提供する。
【0035】
本開示は、本明細書に記載の培地の、T細胞を増殖する用途をさらに提供する。
【0036】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記T細胞がVγ9Vδ2T細胞である。
【0037】
本開示に係るヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法は下記ステップを含む。
【0038】
ステップ1は、ヒト末梢血から末梢血単核細胞を分離する。
【0039】
ステップ2は、第1培地を提供し、前記第1培地を用いて前記末梢血単核細胞を再懸濁させて、細胞懸濁液を得る。
【0040】
前記第1培地は第2培地とホスホン酸系化合物を含み、前記第2培地は基礎培地と、前記基礎培地に添加されたインターロイキン-2、インターロイキン-15、及びビタミンC又はビタミンC誘導体を含む。
【0041】
前記ステップ1とステップ2との順序が変更されてもよい。
【0042】
ステップ3(又はステップA)は、前記細胞懸濁液を細胞培養容器に播種して60-100時間培養する。
【0043】
ステップ4(又はステップB)は、前記第2培地を用いて培地交換を行い、その後の培養が前記第2培地を用いて行う。
【0044】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記基礎培地がRPMI-1640培地であり、前記ホスホン酸系化合物が、ゾレドロン酸、エチドロン酸、イワンドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸のうちの1種又は複数種を含む。
【0045】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記ステップ2では、前記細胞懸濁液の細胞密度が3~4×10個/mlである。
【0046】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記ステップ2では、前記第1培地におけるホスホン酸系化合物の濃度が1~1000μMである。
【0047】
前記第1培地及び前記第2培地は、インターロイキン-2の濃度が1~1000ng/mlであり、インターロイキン-15の濃度が1~1000ng/mlであり、ビタミンC又はビタミンC誘導体の濃度が10μM~800mMである。
【0048】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記細胞培養容器が、24ウェルプレート、48ウェルプレート又は96ウェルプレートのものであり、前記ステップ3では、前記細胞懸濁液を細胞培養容器に播種して72時間培養し、前記ステップ4の後の培養において、48~72時間毎に細胞に対して培地交換を行う。
【0049】
本開示は、基礎培地と、前記基礎培地に添加したインターロイキン-2、インターロイキン-15及びビタミンCとが含まれた培地をさらに提供する。
【0050】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記基礎培地がRPMI-1640培地である。
【0051】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記培地は、インターロイキン-2の濃度が1~1000ng/mlであり、インターロイキン-15の濃度が1~1000ng/mlであり、ビタミンCの濃度が10μM~800mMである。
【0052】
本開示は、第2培地とホスホン酸系化合物とを含む第1培地をさらに提供する。
【0053】
1つ又はいくつかの実施形態では、前記第1培地は、ホスホン酸系化合物の濃度が1-1000μMである。
【0054】
本開示は、下記の有益効果を有する。
【0055】
(1)従来の増殖方法(第2種の増殖技術)と比べて、本開示に係る増殖方法によれば、ヒトVγ9Vδ2T細胞の増殖効率がより高く、細胞の純度がより高く、(ステップ3から)10~12日培養した時点で、90%の細胞純度を得ることができ、細胞増殖の比率が1000倍以上(即ち、10万個のヒトVγ9Vδ2 T細胞を少なくとも1億個のヒトVγ9Vδ2 T細胞まで増殖させることができる)に達し、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖培養周期を顕著に短縮させることができる。
【0056】
(2)従来の増殖方法(第2種の増殖技術)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞と比べて、本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞は、腫瘍に対する殺傷及び抑制の能力がより高い。
【0057】
(3)本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞は、抗アポトーシス能力がより高く、生存期間がより長く、そして、細胞増殖培養周期(ステップ3から10~12日)終了後、本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞がさらに約20日生存できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本開示の実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例に用いられる図面を簡単に説明する。図面は、本開示のいくつの実施例を示すものにすぎないため、本開示の範囲を限定するものとみなすべきではない。
図1】4種の異なる培地を用いてヒトVγ9Vδ2 T細胞を増殖培養した増殖効率の比較図である。
図2】4種の異なる培地を用いてヒトVγ9Vδ2 T細胞を増殖培養して得たヒトVγ9Vδ2T細胞のうちのアポトーシス細胞の割合の比較図である。
図3】4種の異なる培地を用いてヒトVγ9Vδ2 T細胞を増殖培養して得たヒトVγ9Vδ2T細胞の肝心な殺傷分子であるNKG2Dの発現レベルの比較図である。
図4A】従来の増殖方法(IL2)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて肺がんの担がんヒト化マウスに対して細胞治療を行った後の腫瘍の大きさの模式図である。
図4B】本開示に係る増殖方法(IL2+IL15+VC)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて肺がんの担がんヒト化マウスに対して細胞治療を行った後の腫瘍の大きさの模式図である。
図4C】未治療の肺がんの担がんヒト化マウスの腫瘍の大きさの模式図である。
図5】異なる治療による、肺がんの担がんヒト化マウスの腫瘍の体積変化の模式図である。
図6】異なる治療による、肺がんの担がんヒト化マウスの生存率の変化の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[本明細書に記載の用語]
本明細書に使用する用語「基礎培地」は、哺乳類動物細胞の成長に栄養を供給する栄養素を含む溶液を意味する。基礎培地は、例えば亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、カリウムのような標準無機塩、ビタミン、ブドウ糖、緩衝系及び必須アミノ酸を提供する。例えば、基礎培地は、RPMI-1640培地、D-MEM、MEM、RPMI、Opti-MEM又はこれらの組み合わせである。
【0060】
「・・・により調製される」と「包含」とは同意味である。本明細書に使用する用語「包含」、「含む」、「備える」、「有する」又は任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅するように意図される。例えば、リストした要素を含む組成物、ステップ、方法、製品又は装置は、これらの要素に限定されず、明記されない他の要素又はこの組成物、ステップ、方法、製品又は装置の固有の要素を含んでもよい。
【0061】
接続詞「・・・からなる」は、言及されない如何なる要素、ステップ又は成分を排除し、請求項に使用される場合、該当請求項が閉鎖式のものになり、関連する一般不純物を除き、説明した材料以外の材料を含まないようになる。用語「…からなる」は、主題につけるのではなく請求項の主体の文言に現れた場合、該文言に説明される要素だけを限定し、他の要素が該請求項全体から除外されない。
【0062】
量、濃度、又は他の値やパラメータは、範囲、好ましい範囲、又は一連の好ましい上限値及び好ましい下限値で限定される範囲により表される場合、任意範囲の上限又は好ましい値と任意範囲の下限又は好ましい値とからなる範囲は、単独の開示があるかにも関わらず、上記の値を任意に組み合わせたすべての範囲が具体的に開示されたとみなすべきである。例えば、範囲「1~5」が開示された場合、説明する範囲が、範囲の「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2と4~5」、「1~3と5」等を含むと解釈される。本明細書で説明される数値範囲は、特に断りがない限り、臨界値及び該範囲にある全ての整数と分数を含む。
【0063】
「質量部」は、複数の成分の質量比例関係を示す基本的な計量単位である。1部とは、任意単位の質量を表すことが可能であり、例えば1gを表してもよく、2.689g等を表してもよい。例えばA成分の質量部がa部で、B成分の質量部がb部であるという場合、A成分の質量とB成分の質量との比がa:bであることを表す。又は、A成分の質量がaKであり、B成分の質量がbK(Kは任意の数値であり、倍数因子を表す)であることを表す。要注意のは、質量分率と異なって、すべての成分の質量部の合計が100部とは限らない。
【0064】
「及び/又は」は、説明する内容のうちの1方又は両方とも発生可能であることを表し、例えば、A及び/又はBが(A及びB)と(A又はB)とを含む。
【0065】
また、本開示における要素又は成分の前の用語「一」及び「1つの」は、要素又は成分の数(即ち出現回数)を制限するものではない。このため、「一」又は「1つの」は、1つ又は少なくとも1つを含むと解釈され、そして、言及する数が明確に単数に限定されない限り、単数形式の要素又は成分といっても複数形式のものも含む。
【0066】
用語「ビタミンC誘導体」は、一般的にビタミンCの2位の炭素原子に他の基を導入して還元型ビタミンCを安定させるためのエンジオール構造を有する化合物である。ビタミンC誘導体の例として、例えばビタミンCリン酸アスコルビルマグネシウム及びビタミンCリン酸アスコルビルナトリウムのようなビタミンCリン酸エステル、ビタミンCパルミチン酸エステル、ビタミンCエチル、例えばビタミンCグルコシドのようなビタミンC糖類化合物等を含む。
【0067】
「末梢血単核細胞」、「PBMCs」又は「単核細胞」は、末梢血から分離した単核細胞といい、通常、抗がん免疫治療に利用される。例えば、フィコール-ハイパック密度勾配法(Ficoll-Hypaque density gradient method)を利用すれば、収集されたヒト血液から末梢血単核細胞を獲得することができる。
【0068】
「末梢血単核細胞」は、健常な人、疾患を患うリスクのある被験者又は患者から獲得することができる。ここで使用する末梢血単核細胞は、必ず自己由来のものを使用するとは限らなく、同種異体のものを使用してもよい。
【0069】
用語「悪性疾患」は、本明細書で最も広義で使用され、細胞が異常に増殖する特徴を有する疾病である。副腎皮質がん、肛門がん、膀胱がん、上衣腫、神経芽細胞腫、乳癌、子宮頸がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝外胆管がん、眼腫瘍、胆嚢がん、胃がん、胚細胞腫瘍、性腺外腫瘍、頭頸部がん、下咽頭がん、膵島細胞がん、喉頭がん、白血病、急性リンパ性白血病、口腔がん、肝臓がん、肺がん等を含むが、これらに限定されない。
【0070】
用語「自己免疫疾患」は、体の自己の組織に対する免疫応答に起因した疾病や病気を指し、長期間の炎症及びその後の組織破壊を引き起こす。自己免疫疾患の例として、円形脱毛症、1型糖尿病、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、関節リウマチ、硬皮症、多発性筋炎、白斑症及び全身性エリテマトーデスを含むが、これに限定されない。
【0071】
用語「伝染性疾病」は、如何なる病原体に起因するものでも有り得る。その例として、例えばエイズ、B型肝炎及びC型肝炎のようなウイルス感染、細胞の感染、細菌感染、寄生虫及び真菌感染によるものを含むが、これに限定されない。
【0072】
まず、本開示は、下記のステップを含むヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法を提供する。
【0073】
ステップ1は、ヒト末梢血から末梢血単核細胞(PBMC)を分離する。
ステップ2は、第1培地を提供し、前記第1培地を用いて前記末梢血単核細胞を再懸濁させて、細胞懸濁液を得る。
【0074】
前記第1培地は、第2培地とホスホン酸系化合物を含む。前記第2培地は、基礎培地と、前記基礎培地に添加されたインターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-15(IL-15)及びビタミンC(Vitamin C)を含む。
【0075】
前記ステップ1とステップ2との順序が変更されてもよい。
【0076】
ステップ3は、前記細胞懸濁液を細胞培養容器に播種して60~100時間培養する。
【0077】
ステップ4は、前記第2培地を用いて培地交換を行い、その後の培養が前記第2培地を用いて行われる。
【0078】
具体的に、前記ステップ1において、前記基礎培地は、RPMI-1640培地である。RPMIは、Roswell Park Memorial Instituteの略称であり、ロズウェルパーク記念研究所のことを指している。ここで、RPMIは、該研究所が研究開発した一種類の細胞培地であり、1640は培地のコードネームである。該培地は、使用時に10%のウシ胎児血清を加える。
【0079】
任意選択で、前記ホスホン酸系化合物は、ゾレドロン酸(Zoledronate、ZOL)、エチドロン酸、イワンドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸のうちの1種又は複数種を含む。
【0080】
本開示の一実施例では、前記ホスホン酸系化合物がゾレドロン酸である。
【0081】
具体的に、前記ステップ2において、前記細胞懸濁液は、細胞密度が3~4×10個/mlである。
【0082】
具体的に、前記ステップ2及びステップ3の目的として、ホスホン酸系化合物含有の第1培地を用いて前記末梢血単核細胞を培養することにより、前記末梢血単核細胞のうちのVγ9Vδ2T細胞を選択的に増殖させるとともに、その他の細胞の増殖を抑制し、その他の細胞をアポトーシスに至らしめる。
【0083】
任意選択で、前記細胞培養容器は、24ウェルプレート、48ウェルプレート又は96ウェルプレートである。
【0084】
前記ステップ4の目的として、前記ステップ3により選択的に増殖できた純度の高いVγ9Vδ2T細胞をさらに増殖させて、Vγ9Vδ2T細胞数を増加させる。
【0085】
具体的に、前記ステップ2において、前記第1培地では、ホスホン酸系化合物の濃度が1~1000μMである。
【0086】
前記第1培地及び前記第2培地では、インターロイキン-2の濃度が1-1000ng/mlであり、インターロイキン-15の濃度が1~1000ng/mlであり、ビタミンCの濃度が10μM~800mMである。
【0087】
好ましくは、前記ステップ3において、前記細胞懸濁液を細胞培養容器に播種して72時間培養する。
【0088】
具体的に、前記ステップ4の後続の培養において、48~72時間毎に細胞に対して培地交換を行う。
【0089】
具体的に、前記ステップ3とステップ4との培養合計時間を通常10~12日にし、この時点で細胞数が十分であるとともに殺傷能力が最も高く、細胞治療に特に適する。
【0090】
本開示は、下記のステップを含むT細胞増殖方法を提供する。
【0091】
ステップAは、インターロイキン-2とホスホン酸系化合物を含有する第1培地を用いて、T細胞を含む組成物を培養して前記T細胞を刺激し、任意選択で、第1培地にインターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とがさらに含まれる。
【0092】
ステップBは、インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とを含有する第2培地を用いて、刺激された前記T細胞を培養する。
【0093】
本開示は、下記のステップを含むVγ9Vδ2T細胞増殖方法を提供する。
【0094】
ステップAは、インターロイキン-2とホスホン酸系化合物を含有する培地を用いて、T細胞を含む組成物を培養して前記T細胞を刺激し、任意選択で、該培地にインターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とがさらに含まれる。
【0095】
ステップBは、刺激した末梢血単核細胞からVγ9Vδ2T細胞を選択分離する。
【0096】
ステップCは、インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とを含有する第2培地を用いて、選択分離したVγ9Vδ2T細胞を培養する。
【0097】
本開示は、下記のステップを含むVγ9Vδ2T細胞増殖方法を提供する。
【0098】
ステップAは、末梢血から末梢血単核細胞(PBMC)を分離する。
【0099】
ステップBは、T細胞を刺激可能な培地を用いて、T細胞を含む組成物を培養して前記T細胞を刺激する。
【0100】
ステップCは、刺激した末梢血単核細胞からVγ9Vδ2T細胞を選択分離する。
【0101】
ステップDは、インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とを含有する第2培地を用いて、選択分離したVγ9Vδ2T細胞を培養する。
【0102】
本開示は、下記のステップを含む、伝染性疾病、自己免疫疾患又は悪性疾患を抑制、予防又は治療する方法を提供する。
(1)第1被験者の末梢血から末梢血単核細胞を分離する。
(2)インターロイキン-2とホスホン酸系化合物を含有する培地を用いて末梢血単核細胞を培養してVγ9Vδ2T細胞を刺激し、任意選択で、該培地にインターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とがさらに含まれる。
(3)インターロイキン-2と、インターロイキン-15と、ビタミンC又はビタミンC誘導体とを含有する第2培地を用いて、刺激したVγ9Vδ2T細胞を培養する。
(4)第2被験者に培養できた細胞を投与する。
【0103】
好ましくは、第1被験者と第2被験者とは同一被験者である。任意選択で、第1被験者と第2被験者とは異なる被験者である。
【0104】
なお、前記末梢血単核細胞は、前記T細胞を含む組成物であり、好ましくは、前記悪性疾患は、例えば肺がんのようながんである。
【0105】
本開示に係るヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法に、具体的な条件が明記されていない操作方法は、従来の条件(例えば『精編分子生物学試験指南』(F.M. Ausubel、R.E. Kingston、j. G. Sedmanら/主編、馬学軍 舒躍龍/訳、北京:科学出版社、2004))での方法により行われる。
【0106】
本開示における肝心な技術的特徴は、細胞培養におけるインターロイキン-15及びビタミンCの使用である。従来の増殖方法(第2種の増殖技術)と比べて、ヒトVγ9Vδ2T細胞の増殖培養過程にインターロイキン-15及びビタミンCを添加することにより、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖効率及び細胞の純度を高めることができ、培養できたヒトVγ9Vδ2T細胞は、抗アポトーシス能力がより高く、細胞の生存期間がより長く、そして、肝心な殺傷分子であるNKG2Dの発現レベルがより高くて、腫瘍細胞に対する殺傷能力がより高い。従来の第2種の増殖技術(背景技術の内容を参照)に対して、本開示によれば、例えば増殖効率及び純度が低い課題、得られた細胞の殺傷能力が強くない課題、及び得られた細胞の、生存期間が不十分で、老化やアポトーシスになりがち等の技術課題を解決できる。
【0107】
上記のように、本開示に係るヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法は、下記の有益な効果を有する。
(1)従来の増殖方法(第2種の増殖技術)と比べて、本開示に係る増殖方法によれば、ヒトVγ9Vδ2T細胞の増殖効率がより高く、細胞の純度がより高く、(ステップ3から)10-12日培養した時点で、90%の細胞純度を得ることができ、細胞増殖の比率が1000倍以上(即ち、10万個のヒトVγ9Vδ2 T細胞を少なくとも1億個のヒトVγ9Vδ2 T細胞まで増殖させることができる)に達し、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖培養周期を顕著に短縮させることができる。
(2)従来の増殖方法(第2種の増殖技術)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞と比べて、本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞は、腫瘍に対する殺傷及び抑制の能力がより高い。
(3)本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞は、抗アポトーシス能力がより高く、生存期間がより長く、そして、細胞増殖培養周期(ステップ3から10~12日)終了後、本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞がさらに約20日生存できる。
【0108】
上記のヒトVγ9Vδ2T細胞増殖方法に基づいて、本開示は、基礎培地と、前記基礎培地に添加されたインターロイキン-2、インターロイキン-15及びビタミンCとが含まれたヒトVγ9Vδ2T細胞培地(本明細書では第2培地ともいう)をさらに提供する。
【0109】
1つ又は複数の実施形態では、前記基礎培地は、RPMI-1640培地である。
【0110】
1つ又は複数の実施形態では、第1培地及び第2培地において、インターロイキン-2の濃度が1~1000ng/ml、1~500ng/ml、1~200ng/ml、又は70~130ng/mlである。1つ又は複数の実施形態では、第2培地において、インターロイキン-15の濃度が1~1000ng/ml、1~500ng/ml、1~200ng/ml、又は70~130ng/mlである。1つ又は複数の実施形態では、第2培地において、ビタミンCの濃度が10μM~800mM、20μM~400mM、又は50μM-100μMである。
【0111】
本開示は、例えば上記の第2培地及びホスホン酸系化合物が含まれたヒトVγ9Vδ2T細胞刺激増殖培地(本明細書では第1培地ともいう)をさらに提供する。
【0112】
任意選択で、前記第1培地において、ホスホン酸系化合物の濃度が1~1000μMである。
【実施例
【0113】
試験試薬と材料
試験に使用する主な試薬と材料は、表1に示すようになる。
【表1】
【0114】
実施例1:Vγ9Vδ2T細胞の増殖効果及び増殖できたVγ9Vδ2T細胞の特性
末梢血中単核細胞の分離
(1)4mLヒトリンパ球分離溶液を15mLコニカル遠心チューブに入れ、1×PBS緩衝液を用いて等比例で末梢血を希釈し、均一に混合したあと、希釈した末梢血10mLを試験管壁に沿ってリンパ球分離溶液の表面に緩慢に展開させ、25℃、600gで25分間遠心した。
【0115】
(2)滅菌パスツールピペットにより中部の白色で綿毛状の細胞層をもう1つの滅菌ピペットに吸い取り、同体積のPBSを加えて均一に混合したあと、1500rpmで10分間遠心した。
【0116】
(3)上清を除去して、5~10mLの赤血球溶解バッファーを加えて細胞を再懸濁させ、常温で3~7分間溶解させる。5倍体積のPBSを加えて溶解を終了させた。40μmの篩により濾過したあと、1500rpmで10分間遠心した。
【0117】
(4)上清を除去して、10mL無血清RPMI 1640培地を加えて細胞を再懸濁させ、1500rpmで10分間遠心した。
【0118】
(5)上清を除去して、RPMI 1640完全培地(10%のウシ胎児血清含有)を用いて試験管の底に沈殿した細胞を2mLまで希釈させ、ゆっくりと均一に混合したあと、5μLの細胞希釈液を吸い取って希釈し、適当な倍数まで希釈したあと、血球計算盤でカウントした。
【0119】
Vγ9Vδ2 T細胞の体外増殖
Ficoll分離溶液を用いて新鮮な血液の中のPBMCを分離して、10%のFBS含有のRPMI-1640完全培地により細胞密度を3~4×10個/mLに調整して24ウェルプレートに播種し、40ng/mLのIL-2と50μMのゾレドロン酸を加えて3日刺激した。その後、ゾレドロン酸を除去し、2~3日毎に培地を交換、継代し、濃度で100IU/mLのIL-15、100IU/mLのIL-2、70μMのビタミンCである細胞因子含有のRPMI-1640培地を用いて、37℃、5%のCO、PH=7.2-7.4、95%の湿度の条件下、培養器で10~14日培養した。
【0120】
Vγ9Vδ2 T細胞の純度及び表現型の同定
10日~14日体外増殖したVγ9Vδ2 T細胞を集め、1.5mLのEP管内に入れ、小型遠心機(Eppendorf 5424)を利用して3500rpmで5分間遠心し、上清を除去して、4℃の予冷されたPBSで2回洗浄した。細胞をコントロール、アイソタイプコントロール、試験群によって相応の試験管に入れ、各管に約5×10個の細胞を入れた。コントールチューブと検出チューブは、抗体マニュアルに基づいて蛍光抗体染色液を調製した。蛍光抗体染色液は、抗ヒトCD3-V500、抗ヒトTCR-δ2-PE、抗ヒトCD45-PE-cy5、抗ヒトCD27-PB、NKG2D-PE-cy7を含む。調製できた蛍光抗体染色液を用いて細胞を再懸濁させて、4℃の冷蔵庫又は氷に置いて、遮光で15-20分染色し、PBSで2回洗浄し、3500rpmで5分間遠心し、上清を除去して、200~300μLのPBSを用いて再懸濁させ、フローサイトメーターによりVγ9Vδ2 T細胞の純度及び表型を測定した。
【0121】
Vγ9Vδ2 T細胞ki67測定
1)收集7~10×10個の体外増殖した10~14日時点のVγ9Vδ2 T細胞を集め、1.5mLのEP管内に入れ、小型遠心機(Eppendorf 5424)を利用して3500rpmで5分間遠心し、上清を除去して、4℃の予冷されたPBSで2回洗浄した。
【0122】
2)100μLのPBSを用いて沈殿細胞を再懸濁させ、表面染色したフローサイトメトリー用抗体のCD3-FITC、TCR-δ2-PE、(1:200希釈)を加え、コントールチューブに同色、同濃度のアイソタイプコントロール抗体を入れ、4℃、遮光で15分間培養した。
【0123】
3)染色終了後、PBSで2回洗浄し、3500rpmで5分間遠心した。
【0124】
4)Foxp3 Staining Buffer Setで核内ki67の発現レベルを測定した。Fixation&Permeabilization Bufferを調製し、F&P Concentration とF&P Diluentとを体積比1:3で均一に混合し、F&P Buffer 500μLを用いて細胞を再懸濁させ、4℃の冷蔵庫又は氷に置いて、遮光で0.5~18時間静置し、細胞に対して固定及び透過を行った。
【0125】
5)10×Permeabilization BufferをddHOで1×のものに希釈した。固定完了後、1mLの1×Permeabilization Bufferを加え、5500rpm、4℃で5分間遠心した。そして、2回洗浄した。
【0126】
6)APC-Ki67蛍光抗体を体積比1:200で、1×Perm Bufferに希釈させ、均一に混合した。沈殿細胞を染色液で再懸濁させ、4℃の冷蔵庫又は氷に置いて、遮光で30分間染色した。
【0127】
7)1×Perm Buffer溶液を加え、5500rpm、4℃で5分間遠心し、1×Perm Buffer溶液で再懸濁させてさらに遠心して、未結合の蛍光抗体を洗浄した。200~300μLのPBSで細胞を再懸濁させ、体積を調製し、フローサイトメーターによりKi67の発現レベルを分析した。
【0128】
図1は、まずゾレドロン酸含有の培地を用いて刺激し、そして4種の異なる細胞培地を用いてヒトVγ9Vδ2 T細胞を増殖培養した増殖効率の比較図である。
【0129】
図1では、IL2が、増殖培養全過程に亘って、基礎培地をもとにIL2を添加して得た培地を使用することを表している。
【0130】
IL2+VCは、増殖培養全過程に亘って、基礎培地をもとにIL2+VCを添加して得た培地を使用することを表している。
【0131】
IL2+IL15は、増殖培養全過程に亘って、基礎培地をもとにIL2+IL15を添加して得た培地を使用することを表している。
【0132】
IL2+IL15+VCは、増殖培養全過程に亘って、基礎培地をもとにIL2+IL15+VCを添加して得た培地を使用することを表している。
【0133】
初期の刺激増殖段階で、上記の4種の培地の案は、いずれもZOL(ゾレドロン酸)とIL+2を添加した基礎培地を用いて細胞を刺激し、そして、図1における各培地成分の量が、本実施例における「Vγ9Vδ2 T細胞の体外増殖」部分に記載した濃度であった。
【0134】
図1に示すように、上記の4種の培地のそれぞれを用いてヒトVγ9Vδ2 T細胞を増殖培養して得たデータにより、IL15の未添加の培地(IL2与IL2+VC)による細胞増殖効率が比較的に低いことに対して、IL15を添加した培地(IL2+IL15及びIL2+IL15+VC)による細胞増殖効率が比較的に高いことが示される。これによって、IL-15の添加により、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖効率(Ki67タンパク質の発現レベルの上昇)を顕著に向上させることができることがわかった。
【0135】
図2は、4種の異なる培地を用いてヒトVγ9Vδ2 T細胞を増殖培養して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞のうちのアポトーシス細胞の割合の比較図であり、図2におけるIL2、IL2+VC、IL2+IL15、IL2+IL15+VCが表すことについて、図1と同様である。
【0136】
図2から分かるように、培地にVCを添加することにより細胞のアポトーシス比率及びアポトーシス速度を顕著に低減でき、そして、IL-15とVCとの併用により細胞の抗アポトーシス能力をより顕著に高めることができる。
【0137】
図3は、4種の異なる培地を用いてヒトVγ9Vδ2 T細胞を増殖培養して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞の肝心な殺傷分子であるNKG2Dの発現レベルの比較図であり、図3におけるIL2、IL2+VC、IL2+IL15、IL2+IL15+VCが表すことについて、図1図2と同様である。
【0138】
図3から分かるように、IL-15とビタミンCとの併用することにより、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の肝心な殺傷分子であるNKG2Dの高レベルの発現を継続に維持できるとともに、21日培養した時点及びそのあとでも高レベルの発現に維持されている。つまり、IL-15とVCとを併用する調製法(即ち本開示に係る技術案)により、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の高い殺傷能力をより長い期間で維持することができる。
【0139】
実施例2:増殖したVγ9Vδ2 T細胞の抗腫瘍効果
ヒト化マウス肺がんモデルの構築及び実験方法
1.実験動物
3~4週齡のRag2-/-γc-/-雌マウスは、Taconic社から購入したSPF級マウスであった。免疫不全マウスは、独立で通風のIVCかごを使用する。各かごに、それぞれ5匹のマウスを飼う。各isolatorは、個別に換気を行うHEPAを有し、且つ24時間の温湿度制御を行う。飼料、床敷材は、真空包装され、γ-放射線滅菌が行われて供給されるものである。さらに、動物飲用水として滅菌水を用い、該環境下で飼われる動物の包装も滅菌環境下で行われる。さらに、生物安全を確保できる運送箱により動物を運送する。これによって、飼養及び運送が同様な微生物状態に維持されることを確保し、動物の質を確保、維持する。なお、動物実験は、実験動物倫理委員会の承認を得た。
【0140】
2.腫瘍の動物モデルの構築方法
Ficoll液密度勾配遠心法によりPBMC(huPBMC)を分離してヒト化マウスモデル(huPBMCs humanized mice)を構築した。その後の測定時に、再注入に利用されるγδT細胞とヒト化マウス自身のγδT細胞とを容易に区別するため、ヒト化マウスの構築に関わるPBMCのHLAtypeは、再注入に利用されるγδT細胞と異なって、通常HLA-A2+/-にする。
【0141】
そして、4~6週齡の健常のRag2-/-γc-/-マウスを選択し、亜致死量300cGyの輻射処理を行って、腹腔内注射により30×10個のhuPBMCsを注射した。4週間後、生存しているヒト化マウスは、これからの肺がんモデルの構築に利用できる。単層培養できたA549細胞を消化したあと、リン酸塩緩衝液(Phosphate Buffered Saline、PBS)を用いてA549細胞の濃度を1×10cells/mLに調整するように細胞懸濁液を調製した。調製できた細胞懸濁液を、そけい部皮下注射の方式でヒト化マウスに接種し、投与量が100μL/匹マウスであった。
【0142】
3.増殖して得たVγ9Vδ2 T細胞を利用して動物モデルを処理する
1)5~7日腫瘍形成後、3日毎にマウス尾静脈より肺がんの担がんヒト化マウスモデルに5×10個の、それぞれIL-2、IL-2+Vc、IL-2+IL-15、IL-2+IL-15+Vcを用いて培養できたγδT細胞を注射し、各群に5匹マウスあり、投与量が100μL/匹マウスであった。PBS注射群を治療の対照群とする。それぞれIL-2、IL-2+Vc、IL-2+IL-15、IL-2+IL-15+Vcを用いて培養できたγδT細胞は、実施例1における「Vγ9Vδ2 T細胞の体外増殖」部分に記載した方法及びステップにより獲得するものであり、IL2、IL2+VC、IL2+IL15、IL2+IL15+Vcが表すことが実施例1に用いられる図1における意味と同意味である。
【0143】
2)3~4回治療後、60日以上観察した。ノギスでマウスの腫瘍の短径(A)及び長径(B)を毎週2回測定し、式のV=1/2×A×Bに基づいて腫瘍の体積を計算した。
【0144】
3)再注入が終了するときに、末梢血を採取してマウス体内のγδT細胞の割合及び細胞活性を測定し、再注入が終了後、2週間毎に末梢血を採取してγδT細胞の割合、及びNKG2D、PD1、CD107a、Fas、FasLの細胞活性を測定した。
【0145】
4)マウスを殺す前、マウス体内のγδT細胞の定着状況を測定した。また、GFP信号を測定し、末梢血におけるA549腫瘍細胞の数及び割合を観察した。
【0146】
4.実験結果
腫瘍治療実験の結果は、図4A図4B図4C図5及び図6に示すようになる。
【0147】
図4Aは、従来の増殖方法(IL2)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて肺がんの担がんヒト化マウスに対して細胞治療を行った後の腫瘍の大きさの模式図である。
【0148】
前記従来の増殖方法(即ち第2種の増殖技術)は、基礎培地に常にIL2を加えて培養し、培養の初期段階にZOLを添加して刺激増殖を行う方法である。
【0149】
図4Bは、本開示に係る増殖方法(IL2+IL15+VC)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて肺がんの担がんヒト化マウスに対して細胞治療を行った後の腫瘍の大きさの模式図である。
【0150】
図4Cは、未治療の肺がんの担がんヒト化マウスの腫瘍の大きさの模式図である。
【0151】
図4A図4B図4Cに関わる実験に使用された肺がんの担がんヒト化マウスは、同一の腫瘍タイプで、腫瘍の体積が基本的に同じであるマウスであり、そして、図4A図4B図4Cに示される腫瘍の成長時間が同じである。
【0152】
図4Aと、図4Bと、図4Cとの比較により分かるように、本開示に係る増殖方法で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて肺がんの担がんヒト化マウスに対して細胞治療を行った後、従来の増殖方法で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞と比べて、本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞は、肺がん細胞の成長をより効果的に抑えることができ(腫瘍の体積が顕著に縮小した)、肺がんの担がんヒト化マウスの生存率を顕著に高めることができると証明できた。42日目、従来の増殖方法で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて細胞治療を行った肺がんの担がんヒト化マウス及び未治療の肺がんの担がんヒト化マウスが全部死亡したことに対して、本開示に係る増殖方法で得たヒトVγ9Vδ2T細胞を用いて細胞治療を行った肺がんの担がんヒト化マウスが全部生存しており、生存率が100%となり、そしてそのうちの一匹のマウスの腫瘍が完全に消失した(図4Bにおける枠に示すこと)。
【0153】
図5は、異なる治療による、肺がんの担がんヒト化マウスの腫瘍の体積変化の模式図であり、従来の増殖方法(IL2)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いる肺がんの担がんヒト化マウスに対する細胞治療を行った肺がんの担がんヒト化マウス、本開示に係る増殖方法(IL2+IL15+VC)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いる肺がんの担がんヒト化マウスに対する細胞治療を行った肺がんの担がんヒト化マウス、及び未治療の肺がんの担がんヒト化マウスのそれぞれの腫瘍の体積変化状況を示している。
【0154】
これによって分かるように、時間が経つにつれて、従来の増殖方法(IL2)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて治療した肺がんの担がんヒト化マウス及び未治療の肺がんの担がんヒト化マウスの腫瘍の体積が増大し続けるとともに後期の腫瘍の体積増大速度が非常に速いことに対して、本開示に係る増殖方法(IL2+IL15+VC)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて治療した肺がんの担がんヒト化マウスの腫瘍の体積増加速度が非常にゆっくりとあった。つまり、従来の増殖方法(IL2)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞と比べて、本開示に係る増殖方法(IL2+IL15+VC)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞は、腫瘍の体内成長に対してより強い抑制効果を有し、腫瘍の体積をより小さくすることができる。
【0155】
図6は、異なる治療による、肺がんの担がんヒト化マウスの生存率の変化の模式図であり、従来の増殖方法(IL2)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いる肺がんの担がんヒト化マウスに対する細胞治療を行った肺がんの担がんヒト化マウス、本開示に係る増殖方法(IL2+IL15+VC)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いる肺がんの担がんヒト化マウスに対する細胞治療を行った肺がんの担がんヒト化マウス、及び未治療の肺がんの担がんヒト化マウスのそれぞれの生存率の変化状況を示している。
【0156】
これによって分かるように、時間が経つにつれて、従来の増殖方法(IL2)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて治療した肺がんの担がんヒト化マウス及び未治療の肺がんの担がんヒト化マウスの生存率の低下が非常に速いことに対して、本開示に係る増殖方法(IL2+IL15+VC)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞を用いて治療した肺がんの担がんヒト化マウスの生存率が常に100%であった。つまり、本開示に係る増殖方法(IL2+IL15+VC)で得たヒトVγ9Vδ2T細胞は、肺がんの担がんヒト化マウスの生存率を顕著に高めることができる。
【0157】
実施例3
該実施例3は、RPMI-1640培地と、前記RPMI-1640培地に添加されたインターロイキン-2、インターロイキン-15及びビタミンCとが含まれた第2培地を提供する。
【0158】
前記第2培地は、インターロイキン-2の濃度が300ng/mlであり、インターロイキン-15の濃度が500ng/mlであり、ビタミンCの濃度が100mMである。
【0159】
実施例4
該実施例4は、RPMI-1640培地と、前記RPMI-1640培地に添加されたインターロイキン-2、インターロイキン-15及びビタミンCとが含まれた第2培地を提供する。
【0160】
前記第2培地は、インターロイキン-2の濃度が500ng/mlであり、インターロイキン-15の濃度が700ng/mlであり、ビタミンCの濃度が300mMである。
【0161】
実施例5
該実施例5は、実施例3に記載された第2培地と、ゾレドロン酸とが含まれた第1培地を提供する。
【0162】
前記第1培地は、ゾレドロン酸の濃度が300μMである。
【0163】
実施例6
該実施例6は、実施例4に記載された第2培地と、ゾレドロン酸とが含まれた第1培地を提供する。
【0164】
前記第1培地は、ゾレドロン酸の濃度が500μMである。
【0165】
本開示に関わる各プロセスのパラメータの数値範囲は、上記の実施例で全てをリストすることが不可能であるが、当業者であれば上記の数値範囲内の任意の数値で本開示を実施することが可能であると想到できるので、数値範囲内の具体的な値の任意の組み合わせをいくつか含むことが明らかである。ここで、文章の長さを考慮して、1つ又は複数の数値範囲内の具体的な値の実施例を省略したが、本開示の技術案が十分に開示されなかったとみなすべきではない。
【0166】
本開示は、上記の実施例により本開示に係る設備及びプロセスの詳細を説明したが、上記の設備及びプロセスの詳細に限定されなく、即ち、上記の設備及びプロセスの詳細に基づいて実施しかできないと意味しない。当業者にとって、本開示に対する如何なる改良、本開示に係る製品の各原料に対する均等置換や補助成分の添加、具体的な方式の選択等は、本開示の保護範囲内に属する。
【産業上の利用可能性】
【0167】
従来の増殖方法(第2種の増殖技術)と比べて、本開示に係る増殖方法によるヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖効率及び細胞の純度がより高く、本開示に係る増殖方法によれば、ヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖培養周期を顕著に短縮することができる。従来の増殖方法(第2種の増殖技術)で得たヒトVγ9Vδ2 T細胞と比べて、本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞は、腫瘍に対する殺傷能力及び抑制能力がより高い。本開示により増殖して得たヒトVγ9Vδ2 T細胞は、抗アポトーシス能力がより高く、生存期間がより長い。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
【国際調査報告】