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特表2022-515793チタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法
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  • 特表-チタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】チタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/22 20060101AFI20220215BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20220215BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220215BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B22F9/22 Z
B22F9/04 C
B22F1/00 R
C22C14/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536341
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2019017801
(87)【国際公開番号】W WO2020130532
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0164365
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268864
【氏名又は名称】エヌエーピー・カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NAP Co.,Ltd
【住所又は居所原語表記】109,Ballyong-ro,Deokjin-gu,Jeonju-si, 54853 Jeollabuk-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】カン、ファンジン
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA04
4K017BA10
4K017BB01
4K017BB08
4K017CA07
4K017EA04
4K017EH01
4K017FB03
4K017FB04
4K017FB06
4K017FB08
4K018BA03
4K018BB04
(57)【要約】
本発明は、様々な分野で使用可能な高純度のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法に関する。本発明は、少なくとも1種の金属酸化物とチタン酸化物のそれぞれを部分的に還元させる段階と、前記部分的に還元された金属酸化物とチタン酸化物とを混合し、第1の混合物を製造する段階と、前記第1の混合物と水素化カルシウムとを混合し、第2の混合物を製造する段階と、前記第2の混合物を完全に還元し、チタン金属またはチタン合金を製造する段階と、を含む、チタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法によってその目的が達成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の金属酸化物とチタン酸化物のそれぞれを部分的に還元させる段階と、
b)前記部分的に還元された金属酸化物とチタン酸化物とを混合し、第1の混合物を製造する段階と、
c)前記第1の混合物と水素化カルシウムとを混合し、第2の混合物を製造する段階と、
d)前記第2の混合物を完全に還元し、チタン金属またはチタン合金を製造する段階と、を含む、チタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項2】
a)少なくとも1種の金属酸化物とチタン酸化物のいずれか一つを部分的に還元させる段階と、
b)前記いずれか一つを部分的に還元した金属酸化物とチタン酸化物とを混合し、第1の混合物を製造する段階と、
c)前記第1の混合物と水素化カルシウムとを混合し、第2の混合物を製造する段階と、
d)前記第2の混合物を完全に還元し、チタン金属またはチタン合金を製造する段階と、を含む、チタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項3】
前記段階b)と前記段階c)との間に、前記第1の混合物を部分還元させる段階を含む、請求項1または2に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項4】
前記段階a)の前記部分的還元及び前記段階d)の完全還元は、1,000℃~1,500℃の温度と水素雰囲気下で1~10時間熱処理して行われることを特徴とする、請求項1または2に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項5】
前記段階a)の前記部分的還元及び前記段階d)の完全還元は、1,000℃~1,500℃の温度と水素雰囲気下で1~10時間熱処理して行われることを特徴とする、請求項3に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項6】
e)前記製造されたチタン金属またはチタン合金を粉砕して粉末化する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物は、CaO、V、Cr、Nb、MoO、WO、Y及びZrOからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物は、CaO、V、Cr、Nb、MoO、WO、Y及びZrOからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項9】
前記第1の混合物と前記水素化カルシウムの化学量論的比は、1:1.1~1.25であることを特徴とする、請求項1または2に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項10】
前記第2の混合物にアルミニウムと酸化バナジウム(V)粉末とをさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項11】
前記チタン合金は、Ti-6Al-4Vであることを特徴とする、請求項10に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項12】
前記チタン金属及びチタン合金は、酸素含量が0.3重量%未満であり、粒子の大きさ分布が50μm未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載の方法によって製造され、酸素含量が0.3重量%未満であって、粒子の大きさ分布が50μm未満である、チタン金属粉末またはチタン合金粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な分野で使用可能な高純度のチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法に関する。具体的には、本発明は、多段階の還元工程を利用して、大量生産及びコスト削減が可能なチタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン金属及びチタン合金は、軽量で機械的性質に優れており、高温特性及び耐食性に優れていて、他の伝統的な鉄系の合金の使用が困難な医療、化学、航空宇宙分野などに適した材料と考えられてきた。しかし、チタン系材料は、原料が高価であるだけではなく、製造コストが高いという問題がある。
【0003】
チタンの優れた特性にもかかわらず、高コストの問題のため、1950年代以降、コスト削減のために、様々な製造方法が開発されてきた。
【0004】
チタンを製造する公知の方法として、クロール工程(Kroll process)を利用して、スポンジチタンを作り、これを用いてVAR(Vacuum Arc Remelting)の方法によりインゴットを製造し、押出、圧延などを通じて加工材を作製する方法がある。
【0005】
現在、クロール工程(Kroll process)は、チタン金属の製造に最もよく使用されているが、最終製品が粉末ではなく、スポンジの形態である。クロール工程では、特別な電気炉で、純粋チタン鉱石に電荷を加えてスポンジの形態に転換させる。この工程は、塩素処理機(chlorinator)で行われるが、塩素気体が電荷を通過しつつ、液体形態の四塩化チタン(TiCl4)を形成する。このように形成された四塩化チタンは、複雑な蒸留工程を経て精製される。蒸留工程の後、マグネシウムまたはナトリウムを、精製された四塩化チタンに添加して反応させると、金属チタンスポンジとマグネシウムまたは塩化ナトリウムが生成されるようになる。その後、チタンスポンジを粉砕して圧着する。粉砕されたチタンスポンジを真空アーク溶解方式(VAR)で溶解させる。前記クロール工程は、工程が複雑で、取り扱いが難しく、エネルギ効率が良くないという問題がある。
【0006】
粉末冶金(Powder Metallurgy、PM)技術は、インゴット技術に比べ、機械的特性を損なうことなく、低コストで複雑な形状のチタンを提供することができるという点で注目されている。粉末冶金(PM)技術を利用すると、チタンを低コストで製造することができるという点で大きな潜在力を有しているが、既存の粉末冶金工程で生産されたチタン製品の物性が満足するほどではなく、期待した程度のコスト削減効果がないという理由でよく使用されていない。したがって、粉末冶金技術を用いてチタンを製造するためには、コスト削減だけでなく、最終製品の物性を向上させるための方法が要求される。
【0007】
国際公開特許WO2014/187867は、広範囲の金属粉末、金属合金粉末、金属間化合物粉末及び/またはそれらの水素化物粉末の製造方法を開示しているが、金属粉末を金属に還元させるために、水素化カルシウム粉末または顆粒を使用するか、金属合金粉末を製造するために、一つ以上の金属酸化物に、もう一つの金属の存在有無に関係なく、水素化カルシウムを直接使用している。
【0008】
米国特許第6,264,719号は、少量の二酸化チタンをアルミニウム金属粉末と反応させる時、金属マトリックス複合材粉末として、少量のアルミニウム酸化物で浮遊されたチタンアルミナを製造する方法を開示している。
【0009】
チタン金属粉末またはチタン合金粉末を製造する多様な方法が試みられているが、低コストで優れた品質のチタン金属粉末またはチタン合金粉末を製造することができ、産業規模で大量生産が可能な方法については、まだ開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低コストで高品質のチタン金属粉末または任意の類型のチタン合金粉末を製造することができ、容易に産業規模に拡大して実施することができる、チタン金属粉末またはチタン合金粉末を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題は、a)少なくとも1種の金属酸化物とチタン酸化物のそれぞれを部分的に還元させる段階と、b)前記部分的に還元された金属酸化物とチタン酸化物とを混合し、第1の混合物を製造する段階と、c)前記第1の混合物と水素化カルシウムとを混合し、第2の混合物を製造する段階と、d)前記第2の混合物を完全に還元し、チタン金属またはチタン合金を製造する段階と、を含む、チタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法によって達成される。
【0012】
また、本発明の課題は、a)少なくとも1種の金属酸化物とチタン酸化物のいずれか一つを部分的に還元させる段階と、b)前記いずれか一つを部分的に還元した金属酸化物とチタン酸化物とを混合し、第1の混合物を製造する段階と、c)前記第1の混合物と水素化カルシウムとを混合し、第2の混合物を製造する段階と、d)前記第2の混合物を完全に還元し、チタン金属またはチタン合金を製造する段階と、を含む、チタン金属粉末またはチタン合金粉末の製造方法によって達成される。
【0013】
好ましくは、前記段階b)と前記段階c)との間に、前記第1の混合物を部分還元させる段階を含む。
【0014】
好ましくは、前記段階a)の前記部分的還元及び前記段階d)の完全還元は、1,000℃~1,500℃の温度及び水素雰囲気下で1~10時間熱処理して行われる。
【0015】
また、好ましくは、前記段階a)の前記部分的還元及び前記段階d)の完全還元は、1,000℃~1,500℃の温度及び水素雰囲気下で1~10時間熱処理して行われる。
【0016】
好ましくは、前記金属酸化物は、CaO、V、Cr、Nb、MoO、WO、Y及びZrOからなる群から選択される。
【0017】
また好ましくは、前記第1の混合物と前記水素化カルシウムの化学量論的比は、1:1.1~1.25である。
【0018】
また好ましくは、前記第2の混合物は、アルミニウムと酸化バナジウム(V)粉末とをさらに含む。
【0019】
また好ましくは、前記チタン合金粉末は、Ti-6Al-4V粉末である。
【0020】
また好ましくは、前記チタン金属粉末及びチタン合金粉末は、酸素含量が0.3重量%未満であり、粒子の大きさ分布が50μm未満である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、より多くの応用分野で使用可能な優れた品質のチタン金属粉末及びチタン合金粉末を製造することができる低コストの製造方法を提供することができる。本発明を通じて、一般産業用だけではなく、航空宇宙、医療または軍需用用途のような優れた品質のチタン金属粉末を要求する分野にまで、チタン及びその合金粉末の用途を拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明によって製造されたチタン金属粉末の形状(Morphology)を示す走査電子顕微鏡写真である。
図2】本発明によって製造されたチタン金属粉末の物質相を示すX線回折パターンである。
図3】本発明によって製造されたチタン金属粉末の粒度分布を示す図である。
図4】本発明によって製造されたチタン合金(Ti-6Al-4V)粉末の形状(Morphology)を示しす走査電子顕微鏡写真である。
図5】本発明によって製造されたチタン合金(Ti-6Al-4V)粉末生成物の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明で使用されるすべての技術用語は、特に定義しない以上、下記の定義を有し、本発明の関連分野で通常の当業者が一般に理解するような意味に合致される。また、本明細書には、好ましい方法や試料が記載されるが、これと類似または同等のものも本発明の範疇に含まれる。
【0024】
用語‘約’は、参照の、量、水準、値、数、頻度、パーセント、寸法、大きさ、量、重量または長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%程度に変化する量、水準、値、数、頻度、パーセント、寸法、大きさ、量、重量または長さを意味する。
【0025】
本明細書において、文脈で特に必要としない以上、「含む」という言葉は、提示された段階または構成要素、または段階または構成要素の群を含むが、任意の他の段階または構成要素、または段階または構成要素の群が排除されるわけではないことを内包するものとして理解しなければならない。
【0026】
本発明によるチタン金属粉末または任意の形態のチタン合金粉末の製造方法は、多段階の還元段階を含むことを特徴とする。好ましくは、2段階の還元段階を含むことを特徴とする。さらに好ましくは、以下の段階を含む:
【0027】
a)少なくとも1種の金属酸化物とチタン酸化物のそれぞれを部分的に還元させる段階(第1の還元段階)と、
b)前記部分的に還元された金属酸化物とチタン酸化物とを混合し、第1の混合物を製造する段階(第1の混合段階)と、
c)前記第1の混合物と水素化カルシウムとを混合し、第2の混合物を製造する段階(第2の混合段階)と、
d)前記第2の混合物を熱処理して完全に還元し、チタン金属またはチタン合金を製造する段階(第2の還元段階)と、を含む。
【0028】
本発明の一実施形態によると、e)製造されたチタン金属またはチタン合金を粉砕して粉末化する段階(粉末化段階)をさらに含む。
【0029】
以下、各段階を詳細に説明する。
【0030】
まず、少なくとも1種の金属酸化物とチタン酸化物のそれぞれを部分的に還元させる(第1の還元段階)。
【0031】
前記第1の還元段階は、原料物質の金属酸化物とチタン酸化物をそれぞれ1,000℃~1,500℃の温度及び水素雰囲気下で1~10時間熱処理して行う。前記熱処理温度は、好ましくは1,100℃~1,300℃、より好ましくは、1,100℃~1,200℃である。前記処理時間は、好ましくは2~4時間である。前記水素雰囲気は、水素ガス流れを1.5l/min以上、好ましくは1.5l/min~5l/minであって、これは、熱処理炉の大きさと原料物質の量によって変わる。
【0032】
前記第1の還元段階は、ステンレススチール材質の半円形断面の坩堝に金属酸化物またはチタン酸化物を入れて炉の熱処理領域で加熱する。前記熱処理炉は、管状炉(tube furnace)が使用できる。本発明で使用される熱処理炉は、第1の還元段階と第2の還元段階のために、2個の分離された熱処理領域を有する。好ましくは、1,500℃の温度で作動する還元反応を促進することができるガス雰囲気下で作動する、あらゆるタイプの加熱炉が使用できる。前記熱処理炉は、水素、アルゴンなどの気体を用いた作業に適合しなければならない。
【0033】
それぞれの熱処理領域は、個別的に水素ガス流れを形成することができる。
【0034】
本段階では、熱処理によって、原料物質の金属酸化物とチタン酸化物の酸素含量を減少させ、第2の還元段階で容易に還元できる酸化物を形成する。
【0035】
前記金属酸化物は、CaO、V、Cr、Nb、MoO、WO、Y及びZrOからなる群から選択された1種以上であり、より好ましくは、CaOである。前記チタン酸化物は、TiOまたはTiOであり、より好ましくはTiOである。
【0036】
本発明の一実施形態によると、チタン合金粉末を製造する場合は、金属酸化物は、CaO及びVであり、さらにアルミニウムまたは酸化アルミニウムを金属酸化物と一緒に使用することができる。この場合、チタン合金粉末は、Ti-6Al-4Vである。
【0037】
前記金属酸化物及びチタン酸化物は、粉末形態であることが好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記第1の還元段階は、a1)カルシウム酸化物及びチタン酸化物のそれぞれを部分的に還元させる第1の部分的還元段階と、a2)前記部分的に還元されたカルシウム酸化物及びチタン酸化物を混合した第1の混合物を再び部分的に還元させる第2の部分的還元段階とからなる。
【0039】
第1の還元段階を上記のように2段階に分けて実施することにより、均一に還元されて混合されたカルシウム酸化物及びチタン酸化物の混合物が得られる。
【0040】
本発明の他の一実施形態によると、前記第1の還元段階で、金属酸化物及びチタン酸化物のいずれか一つだけが部分的に還元されることもある。
【0041】
次に、前記部分的に還元された金属酸化物とチタン酸化物とを混合し、第1の混合物を製造し(第1の混合段階)、前記第1の混合物と水素化カルシウムとを混合して第2の混合物を製造する(第2の混合段階)。
【0042】
本段階において、前記第1の混合物と水素化カルシウム1:1.1~1.25の化学量論的比(stoichiometric ratio)で混合されることが好ましい。
【0043】
前記水素カルシウムは、粉末またはグラニュールの形態を使用することができ、粒子大きさは、好ましくは0.02~2mmである。本発明で使用される水素化カルシウムは、市販される製品を使用することができるが、好ましくは、本発明で使用される水素化カルシウムは、カルシウム金属片(shaving)またはカルシウム金属グラニュール(granule)を水素ガス雰囲気下で550~750℃の温度で1時間~10時間加熱して変換された水素化カルシウム片またはグラニュールである。
【0044】
次に、前記第2の混合物を熱処理して完全に還元させてチタン金属またはチタン合金を製造する段階(第2の還元段階)である。
【0045】
前記熱処理は、1,000℃~1,500℃の温度及び水素雰囲気下で1~10時間行う。前記熱処理温度は、好ましくは1,100℃~1,300℃、より好ましくは、1,100℃~1,200℃である。前記処理時間は、好ましくは2~4時間である。前記水素雰囲気は、水素ガス流れを1.5l/min以上、好ましくは1.5l/min~5l/minであって、これは、熱処理炉の大きさと原料物質の量によって変わる。第2の還元段階で使用される熱処理炉は、前記第1の還元段階で説明した通りである。
【0046】
本段階では、部分的に還元された金属酸化物とチタン酸化物の混合物と、還元剤の水素化カルシウムとが水素雰囲気下で反応し、チタン金属またはチタン合金を形成する。このように形成されたチタン金属またはチタン合金を回収する。
【0047】
最後に、e)回収段階で生成された粉末は、洗浄及び乾燥段階を経て粉末化される。本発明の一実施形態によると、回収されたチタン金属またはチタン合金は、バルク形態であるため、洗浄及び乾燥段階の前に、高エネルギーボールミル装置を使用して粉砕することができる。
【0048】
前記洗浄及び乾燥段階は、前記粉砕された粉末を水と混合してスラリー状にし、攪拌しながら洗浄することができる。洗浄効果を増進させるために、前記スラリーに酢酸などの溶媒を追加することができる。
【0049】
洗浄後、乾燥段階では、開放型低温オーブンで、80~90℃の温度で粉末を乾燥させることができる。
【0050】
本発明で製造されたチタン金属またはチタン合金は、粉末状であり、粒子大きさ分布が50μm以下であって、好ましくは、10~50μmであり、酸素含量が0.3重量%未満である。
【0051】
本発明で使用された‘粉末’という用語は、粒子大きさ1mm未満のものを示す。
【0052】
本発明で使用された‘X50’は、最終粉末の粒子大きさ分布を示すものであって、粒子大きさ分布の中間直径または中間値を示す。好ましくは、X50は、粒子大きさ分布が50μm以下、または40μm以下、より好ましくは、20μm以下を示す。
【0053】
以下、実施例を通じて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例によって、本発明の権利範囲が制限されるものではない。
【実施例
【0054】
本発明の実施例で使用された出発物質を下記表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
本発明で最終製造されたチタン金属粉末及びチタン合金粉末を分析するために使用した装置を下記表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例1:チタン金属粉末の製造
純度99.5%のCaO粉末50gと純度99%のTiO粉末50gをそれぞれSUS310S坩堝に入れ、管状チューブ炉の熱処理領域で2~3L/minの水素ガス雰囲気下で1100℃で2時間部分還元させた。部分還元されたCaOとTiOを混合した第1の混合物100gと水素化カルシウム粉末(粒子大きさ0.02~2mm)130gを完全に混合し、第2の混合物を製造した。水素化カルシウムの第1の混合物との化学量論的比は、1.1~1.25xである。次いで、第2の混合物をSUS310S坩堝に入れ、管状チューブ炉の熱処理領域で2~3L/minの水素ガス雰囲気下で1100℃で2時間完全に還元させた。得られたバルク形態の物質をボールミル装置に入れて粉砕した後、水及び酢酸と混合して攪拌しながら洗浄し、90℃で完全に乾燥させた。前記表2の装置を用いて、金属粉末の物性を測定した。製造された粉末の走査電子顕微鏡写真を図1に示した。また、製造された粉末の物質を確認するために、X線回折パターンを測定して図2に示し、粉末の粒子大きさ分布を測定して図3及び表3に示した。図2を見ると、製造された粉末がチタン(Ti)金属であることを確認することができる。また、図3及び表3を見ると、製造された粉末の粒度分布範囲が10~50μmであることを確認することができる。また、製造された粉末の残存酸素量を確認した結果、0.19wt%であった。本発明で製造されたチタン金属粉末の残存酸素量は、公知の方法で製造されたチタン金属粉末と比較し、著しく低いものである。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例2:チタン合金(Ti-6Al-4V)粉末の製造
純度99.5%のCaO粉末50gと純度99%のTiO粉末を混合した混合物150gをSUS310S坩堝に入れ、管状チューブ炉の熱処理領域で2~3L/minの水素ガス雰囲気下で1100℃で2時間部分還元させた。部分還元されたCaOとTiOと、純度99.6%のV粉末7.13g及び純度99.5%のアルミニウム金属粉末6gを混合した第1の混合物と水素化カルシウム粉末(粒子大きさ0.02~2mm)207gを完全に混合し、第2の混合物を製造した。水素化カルシウムの第1の混合物との化学量論的比は、1.1~1.25xである。次いで、第2の混合物をSUS310S坩堝に入れ、管状チューブ炉の熱処理領域で2~3L/minの水素ガス雰囲気下で1100℃で2時間完全に還元させた。得られたバルク形態の物質をボールミル装置に入れて粉砕した後、水及び酢酸と混合して攪拌しながら洗浄し、90℃で完全に乾燥させた。前記表2の装置を用いて、金属粉末の物性を測定した。製造された粉末の走査電子顕微鏡写真を図4に示した。また、製造された粉末の粒子大きさ分布を測定して図5及び表4に示した。また、図5及び表4を見ると、製造された粉末の粒度分布範囲が10~50μmであることを確認することができる。また、製造された粉末の残存酸素量を確認した結果、0.28wt%であった。本発明で製造されたチタン合金粉末の残存酸素量は、公知の方法で製造されたチタン合金粉末に比べ、著しく低いものである。
【0061】
【表4】
【0062】
実施例3:チタン合金(Ti-6Al-4V)粉末の製造
純度99.5%のCaO粉末と純度99%のTiO粉末を混合した混合物150gをSUS310S坩堝に入れ、管状チューブ炉の熱処理領域で2~3L/minの水素ガス雰囲気下で1100℃で2時間部分還元させた。部分還元されたCaOとTiOと、純度99.6%のV粉末7.13g及び純度99.5%の酸化アルミニウム粉末7.1gを混合した第1の混合物と水素化カルシウム粉末(粒子大きさ0.02~2mm)207gを完全に混合し、第2の混合物を製造した。水素化カルシウムの第1の混合物との化学量論的比は、1.1~1.25xである。次いで、第2の混合物をSUS310S坩堝に入れ、管状チューブ炉の熱処理領域で2~3L/minの水素ガス雰囲気下で1100℃で2時間完全に還元させた。得られたバルク形態の物質をボールミル装置に入れて粉砕した後、水及び酢酸と混合して攪拌しながら洗浄し、90℃で完全に乾燥して、チタン合金(Ti-6Al-4V)粉末を得た。
【0063】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】