(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】変性(コ)ポリマー、それを調製する方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08F 8/20 20060101AFI20220215BHJP
C08F 36/04 20060101ALI20220215BHJP
C08L 25/06 20060101ALI20220215BHJP
C08L 15/02 20060101ALI20220215BHJP
C08L 63/08 20060101ALI20220215BHJP
C08G 59/02 20060101ALI20220215BHJP
C08J 9/16 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C08F8/20
C08F36/04
C08L25/06
C08L15/02
C08L63/08
C08G59/02
C08J9/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536699
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 RU2018000885
(87)【国際公開番号】W WO2020139110
(87)【国際公開日】2020-07-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513322589
【氏名又は名称】パブリック・ジョイント・ストック・カンパニー・“シブール・ホールディング”
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スヴェトラーナ・イゴレヴナ・グスチャコヴァ
(72)【発明者】
【氏名】エゴール・エフゲニエヴィチ・ポポフツェフ
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
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4J100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、変性ジエン含有(コ)ポリマーの分野、特に、発泡性ポリスチレンをベースとするポリマー組成物用の難燃剤として使用することができる変性ブタジエン-スチレンコポリマーに関する。特に、本発明は、発泡性ポリスチレン用の難燃剤としての変性ジエン含有(コ)ポリマー、それを調製する方法及びその使用に関する。本発明による変性ジエン含有(コ)ポリマーは、高い耐熱性、特に少なくとも180℃の5%質量減少温度、少なくとも1500g/molの分子量、及び(コ)ポリマーの合計質量に対して少なくとも35質量%のハロゲン含有率を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その構造中にハロゲン原子、少なくとも1個のエポキシ基、及び少なくとも1個のヒドロキシル基を含む変性ジエン含有(コ)ポリマーであって、
少なくとも180℃の5%質量減少温度、
少なくとも1500g/molの質量平均分子量、及び
前記(コ)ポリマーの合計質量に対して少なくとも35質量%のハロゲン含有率
を有する、変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項2】
少なくとも200℃、好ましくは少なくとも220℃の5%質量減少温度を有する、請求項1に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項3】
2000~280000g/mol、好ましくは10000~150000g/mol、より好ましくは60000~100000g/molの質量平均分子量を有する、請求項1に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項4】
前記ハロゲン原子の含有率が、前記(コ)ポリマーの合計質量に対して少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも75質量%である、請求項1に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項5】
前記エポキシ基の含有率が、前記(コ)ポリマーの合計質量に対して0.01~5質量%である、請求項1に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項6】
前記エポキシ基の含有率が、前記(コ)ポリマーの合計質量に対して好ましくは0.05~3質量%である、請求項5に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項7】
前記エポキシ基の含有率が、前記(コ)ポリマーの合計質量に対してより好ましくは1~2質量%である、請求項5に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項8】
前記ヒドロキシル基の含有率が、前記(コ)ポリマーの合計質量に対して0.05~5質量%である、請求項1に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項9】
前記ヒドロキシル基の含有率が、前記(コ)ポリマーの合計質量に対して0.1~3質量%である、請求項8に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項10】
前記ヒドロキシル基の含有率が、前記(コ)ポリマーの合計質量に対してより好ましくは0.15~1質量%である、請求項8に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項11】
変性ブタジエンポリマー、変性ブタジエン-スチレンコポリマー、又は変性ブタジエン-スチレン-イソプレンコポリマーである、請求項1から10のいずれか一項に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項12】
変性ブタジエン-スチレンコポリマーである、請求項11に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマー。
【請求項13】
変性ジエン含有(コ)ポリマーを調製する方法であって、
a)出発ジエン含有(コ)ポリマーを有機溶媒に溶解させる溶解工程;
b)工程(a)で得られた、前記有機溶媒中の前記出発ジエン含有(コ)ポリマーの溶液に変性系の成分を添加することによって変性を実行する変性工程;
c)工程(b)で得られた反応物に中和剤の水溶液を添加した後、水相と有機相に分離する中和及び分離工程;
d)前記有機相に過剰量のアルコール沈殿剤を添加することにより、前記変性ジエン含有(コ)ポリマーを沈殿させる沈殿工程;及び
e)沈澱した前記変性ジエン含有(コ)ポリマーを濾過し、次いで乾燥させる単離工程
を含み、
変性工程(b)における前記変性系として、前記出発ジエン含有(コ)ポリマー中の二重結合の合計数を基準にして、ハロゲンの水に対する比が1:0.01~1:1であるハロゲンと水との混合物を使用することを特徴とする方法。
【請求項14】
前記変性系中のハロゲンの水に対する比が、好ましくは1:0.5~1:0.7であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記変性系中のハロゲンの水に対する比が、より好ましくは1:0.25~1:0.7であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
塩素、臭素又はヨウ素が、前記変性系中でハロゲンとして使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
臭素が、好ましくは前記変性系中でハロゲンとして使用されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記変性系中の臭素が、臭素そのままとして、又は最大70質量%、好ましくは最大60質量%、より好ましくは最大50質量%の臭素含有率を含む溶液の形で使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記変性系中の水が、蒸留水、脱イオン化水、脱塩水、浸透膜水又は二回蒸留水であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記出発ジエン含有(コ)ポリマーが、共役ジエンのポリマー又はコポリマーであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記共役ジエンが、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2-エチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C
1~C
5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン等、フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-メチル-ペンタジエン、4-メチル-ペンタジエン、又はその混合物の群から選択される共役ジエンであることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記共役ジエンが、好ましくは1,3-ブタジエン又はイソプレンであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ビニル芳香族化合物が、出発ジエン含有(コ)ポリマー中のコモノマーとして使用され、前記ビニル芳香族化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、オルト-、メタ-及びパラ-メチルスチレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、1-ビニルナフタレン、2,4,6-トリメチルスチレン又はその混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
スチレン又はα-メチルスチレンが、好ましくは前記出発ジエン含有(コ)ポリマー中のコモノマーとして使用されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記出発ジエン含有(コ)ポリマーが、ブタジエン、ブタジエン-スチレン、又はブタジエン-スチレン-イソプレン(コ)ポリマーであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記出発ジエン含有(コ)ポリマーが好ましくはブタジエン-スチレンコポリマーであることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記出発ジエン含有(コ)ポリマーが、少なくとも700g/mol、好ましくは1000~400000g/mol、より好ましくは2000~300000g/mol、より好ましくは5000~200000g/mol、より好ましくは20000~120000g/mol、最も好ましくは20000~50000g/molの質量平均分子量を有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
前記出発ジエン含有(コ)ポリマーが、0.8~3、より好ましくは1~1.8、最も好ましくは1.1~1.5の多分散性指数を有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項29】
前記出発ジエン含有(コ)ポリマー中の1,2単位の含有率が、前記(コ)ポリマーのポリブタジエン部分に対して少なくとも10~100質量%、好ましくは少なくとも50~99質量%、より好ましくは少なくとも60~80質量%であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
前記溶解工程での溶媒として有機溶媒が使用され、前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン等のエーテル;四塩化炭素、クロロホルム、ジブロモメタン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、;トルエン等の芳香族炭化水素;又は、ブロモベンゼン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項31】
前記溶解工程での前記溶媒として、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、シクロヘキサン又はトルエンが好ましいことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記溶解工程での前記溶媒として、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はジクロロメタンがより好ましいことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(a)での前記溶解が、10~50℃、好ましくは15~40℃、より好ましくは20~30℃の温度で実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項34】
前記有機溶媒の前記出発ジエン含有(コ)ポリマーに対する質量比が、5:1~30:1、好ましくは8:1~20:1、より好ましくは10:1~15:1であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項35】
前記溶解処理の時間が、最大60分、最大50分、最大40分、最大30分、最大25分、最大20分、最大15分、最大13分、最大11分、最大9分、最大7分又は最大5分であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項36】
前記出発ジエン含有(コ)ポリマーが予備粉砕されることを特徴とする、請求項13又は30から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記変性工程において、脂肪族アルコールとして、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール又はヘキサノールが使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項38】
前記変性工程での前記脂肪族アルコールとして、好ましくは、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、又はペンタノールが使用されることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記変性工程での前記脂肪族アルコールとして、より好ましくは、ブタノール、イソブタノール又はペンタノールが使用されることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記出発ジエン含有(コ)ポリマーと、前記変性系と、前記脂肪族アルコールとの比が、1:1.5:3~1:5:3、より好ましくは1:2:3~1:4:3、最も好ましくは1:2.5:3~1:3:3であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項41】
前記変性が、0~50℃、好ましくは20~45℃、より好ましくは30~40℃の温度で実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項42】
前記変性工程において前記変性系を添加した後、前記反応物を撹拌する速度が、50~600rpm、好ましくは100~500rpm、より好ましくは200~300rpmであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項43】
前記変性工程の時間が、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも25分、少なくとも30分、少なくとも45分、少なくとも60分、又は少なくとも120分であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項44】
前記中和工程での前記中和剤が、水酸化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、又は炭酸ナトリウムの水溶液であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項45】
前記中和剤の前記添加されたハロゲンに対するモル比が、1:1~3:1、好ましくは1:1~2:1、より好ましくは1:1であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項46】
前記中和が、15~50℃、好ましくは20~40℃、より好ましくは25~30℃の温度で実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項47】
前記沈殿工程での前記アルコール沈殿剤として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、又はイソブタノールが使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項48】
前記アルコール沈殿剤の前記変性ジエン含有(コ)ポリマーに対するモル比が、15:1~1:1、好ましくは10:1~3:1、より好ましくは5:1~4:1であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項49】
前記変性ジエン含有(コ)ポリマーの濾過が、多孔質膜フィルター、ヌッチェフィルターを使用して実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項50】
前記変性ジエン含有(コ)ポリマーの濾過が、20~40℃の温度で実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項51】
前記変性ジエン含有(コ)ポリマーの乾燥が、50~105℃の温度で実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項52】
前記変性ジエン含有(コ)ポリマーの乾燥が、1~20kPaの圧力で実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項53】
請求項1から12のいずれか一項に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマーの、難燃剤としての使用。
【請求項54】
前記変性ジエン含有(コ)ポリマーが、発泡性ポリスチレンにおける難燃剤として使用されることを特徴とする、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
請求項1から12のいずれか一項に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマーを難燃剤として含む発泡性ポリスチレン。
【請求項56】
前記変性ジエン含有(コ)ポリマーの含有率が、少なくとも0.5質量部、好ましくは少なくとも0.7質量部、より好ましくは少なくとも1質量部である、請求項55に記載の発泡性ポリスチレン。
【請求項57】
難燃剤としての請求項1から12のいずれか一項に記載の変性ジエン含有(コ)ポリマーと、技術的、物理機械的、及び操作的特性の複合を付与する添加剤とを含む、発泡性ポリスチレンをベースとするポリマー組成物。
【請求項58】
帯電防止剤、安定剤、染料、潤滑剤、充填剤、接着還元剤が添加剤として使用されている、請求項57に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ジエン含有(コ)ポリマー、特に、発泡性ポリスチレンをベースとするポリマー組成物用の難燃剤として使用することができる変性ブタジエン-スチレンコポリマーの分野に関する。特に、本発明は、発泡性ポリスチレンを含むポリスチレン用の難燃剤としての変性ジエン含有(コ)ポリマー、それを調製する方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃剤は、様々なポリマー及びポリマー組成物からできる製品に、例えば発泡性ポリスチレンからできる製品に難燃性を与えるために広く使用される[残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約UNEP/POPS/POPRC.6/10, 15.10.2010]。そのようなポリマー組成物は、通常、難燃剤として使用される様々な低分子量の臭素化した化合物、例えばヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を含む。しかし、多くの研究結果は、HBCDが生物濃縮の傾向を有し、非常に有毒で環境条件で耐性があることを示している[残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約UNEP/POPS/POPRC.6/10, 15.10.2010、第4条]。このことが、生態学的リスクを低減するために難燃剤としてのHBCDの使用の制限をもたらした。
【0003】
例えば発泡性ポリスチレンをベースとする、幾つかのポリマー組成物の加工温度 [残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約UNEP/POPS/POPRC.6/10, 15.10.2010,第74条] は、多くの場合非常に高く、ポリマー組成物の加工の間に難燃剤の劣化を結果的にもたらし得る。そのような事例において、ポリマー組成物はその難燃性を失い、HBr等の分解物が形成される。したがって、難燃剤が、ポリマー材料の加工温度で熱に安定であり、有毒でなく環境に調和するという要件を満たすことは重要である。
【0004】
HBCDの代替として、HBCDと比べてより生態学的に優しい難燃剤が知られており、これは、ジエン含有(コ)ポリマー、特に、ブタジエン-スチレンコポリマーをベースとして調製される。
【0005】
そのような難燃剤の例は、国際公開第2008021417号及びロシア特許第2414479号に開示されている臭素化ブタジエン-スチレンコポリマーである。
【0006】
ロシア特許第2414479号は、発泡性及び非発泡性ポリマー材料において難燃剤として使用することができる耐熱性の臭素化ブタジエン-スチレンコポリマーを提供する。前記臭素化ブタジエン-スチレンコポリマーは、1H NMR分光法によって決定される、臭素化前のコポリマー中の非芳香族二重結合の含有率に対して15%以下の非臭素化非芳香族二重結合含有率、及び熱重量分析(TGA)によって決定される、少なくとも200℃の5%質量減少温度を特徴とする。
【0007】
ロシア特許第2414479号はまた、上述の耐熱性臭素化コポリマーを調製する方法であって、
a)コポリマー、臭素化剤、特にテトラアルキルアンモニウムトリブロミド、及び溶媒の均質反応溶液を用意する工程;
b)この反応溶液を反応条件下で、コポリマー中に含まれる非芳香族二重結合の少なくとも85%の臭素化のために十分な時間、熟成する工程;
c)シリカゲル又はイオン交換樹脂層を通して濾液を得ることにより、臭素化コポリマーを単離する工程;
d)亜硫酸水素ナトリウムの水溶液を用いて濾液を洗浄して未反応臭素化剤を中和する工程;及び
e)メタノール中での沈澱によって臭素化(コ)ポリマーを単離する工程
を含む方法に関する。
【0008】
更に、ロシア特許第2414479号は、前記耐熱性の臭素化ブタジエン-スチレンコポリマーを含むポリマー混合物、及び前記ポリマー混合物を含む成形品を提供する。
【0009】
この難燃剤は、発泡性ポリスチレンの高い加工温度で熱的安定性が低く、高度に臭素化されたブタジエン-スチレンコポリマーの相溶性が限定的であるので、それから製造された厚みのある製品において、発泡したポリスチレンの均質構造を得ることが困難になることがある。
【0010】
また、例えば国際公開第2016123263号に開示されている、ヒドロキシ臭素化ブタジエン-スチレンコポリマーである発泡性ポリスチレン用の難燃剤もある。
【0011】
国際公開第2016123263号による難燃剤は、ブタジエン-スチレンコポリマーを第四級アンモニウムトリブロミドと反応させ、出発コポリマー中の繰り返しブタジエン単位の50~98%を臭素化して、部分的に臭素化されたコポリマーを得ることによって、及び、その後、水及び水混和性溶媒の存在下で、部分的に臭素化されたコポリマーを、N-ハロイミド、例えばN-クロロスクシンイミド又はN-ブロモスクシンイミドと反応させ、繰り返しブタジエン単位の一部をハロ水和して、ヒドロキシ臭素化ブタジエンスチレンコポリマーを得ることによって、調製される。結果として得られるヒドロキシ臭素化ブタジエン-スチレンコポリマーは、2~50質量%のヒドロキシ臭素化されたブタジエン単位、及び、50~98質量%の臭素化されたブタジエン単位を含み、少なくとも250℃の5%質量減少温度を有する。
【0012】
記載されたこの難燃剤は、発泡性ポリスチレンの高い加工温度で熱的安定性が低く、高温で放出されたHBrを吸収することができる官能基が存在しない。
【0013】
更に、前記発明による難燃剤を調製する方法は、ヒドロキシ臭素化ブタジエン-スチレンコポリマーを調製する工程において、また反応物からそのれを単離する工程において、費やす時間が長く、かつ、高価な試薬、特にN-ハロイミドを使用する必要があることを特徴とする。
【0014】
更に、発泡性ポリスチレン用の難燃剤としての臭素化及びエポキシ化したブタジエン-スチレンコポリマーが、先行技術から知られている(ロシア特許第2530021号)。
【0015】
この発明によると、難燃剤は、
a)少なくとも700の分子量を有する出発ブタジエン-スチレンコポリマーをエポキシ化して非共役炭素-炭素二重結合の少なくとも一部をエポキシ化する工程;及び
b)工程(a)でエポキシ化されたブタジエン-スチレンコポリマーを第四級アンモニウムトリブロミドと接触させることによって残存する非共役炭素-炭素二重結合の少なくとも一部を臭素化して、臭素化及びエポキシ化されたブタジエン-スチレンコポリマーを得る工程
を含む方法により調製される。
【0016】
前記発明に従って得られる難燃剤は、少なくとも1500の分子量、少なくとも35質量%の臭素含有率、及び少なくとも180℃の5%質量減少温度を特徴とする。
【0017】
しかし、前記難燃剤は、発泡性ポリスチレンをベースとするポリマー組成物の高い加工温度で放出されるHBrを吸収することができるエポキシ基を含むという事実にもかかわらず、そのような難燃剤は、ポリスチレンとの相溶性が低い。このことは以下に提供する比較実験によって裏付けられている。
【0018】
したがって、ジエン含有(コ)ポリマーをベースとする公知の先行技術の難燃剤、及びそれらを調製する方法は、十分に効果的でなく、また多大な経済的、時間的コストを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2008021417号
【特許文献2】ロシア特許第2414479号
【特許文献3】国際公開第2016123263号
【特許文献4】米国特許第5086078号
【特許文献5】ロシア特許第2530021号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
これに関連して、見込みのある方向の1つは、耐熱性であり、環境への配慮という要件を満たし、重合プロセス及びポリスチレン顆粒の形成に影響を与えず、発泡性ポリスチレンを含むポリスチレンに優れた難燃性をもたらす、ジエン含有(コ) をベースとする難燃剤の開発である。
【0021】
本発明の目的は、発泡性ポリスチレン用の難燃剤として使用することができる変性ジエン含有(コ)ポリマー、及びそれを調製する方法を開発することである。
【0022】
調製された変性ジエン含有(コ)ポリマーは、高い耐熱性、特に、少なくとも180℃の5%質量減少温度;少なくとも1500g/molの分子量、及び(コ)ポリマーの合計質量に対して少なくとも35質量%のハロゲン含有率を特徴とし、重合プロセス及びポリスチレン顆粒の形成に影響を与えない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
エポキシ基、ヒドロキシル基及びハロゲン原子を有する変性ジエン含有(コ)ポリマーであって、脂肪族アルコールの存在下で、出発ジエン含有(コ)ポリマーをハロゲン及び水を含む変性系と反応させることによって調製することができる変性ジエン含有(コ)ポリマーを調製することにより、この技術的目的が取り組まれ、技術的成果が達成される。
【0024】
本発明者らは、エポキシ基、ヒドロキシル基及びハロゲン原子を含む、変性ジエン含有(コ)ポリマーが、耐熱性であり、重合プロセス及びポリスチレン顆粒の形成に影響を与えないことを見いだした。
【0025】
更に、発明者らは、変性系としてハロゲン及び水の混合物を、脂肪族アルコールの存在下で使用することによって、前記変性ジエン含有(コ)ポリマーを調製することができることを見いだした。
【0026】
この変性系によって、ヒドロキシル基及びハロゲン原子を出発(コ)ポリマーの構造へ導入し、続いて部分的に脱ハロゲン化水素して(コ)ポリマー構造にエポキシ基を形成することが可能になる。
【0027】
本発明は、エポキシ及びヒドロキシル基及びハロゲン原子を含む変性ジエン含有(コ)ポリマーであって、例えば発泡性ポリスチレンを含むポリスチレンをベースとする様々なポリマー組成物において難燃剤として使用することができる(コ)ポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1及び
図2により、本発明の本質を開示する技術的解決法を明確にすることが企図されている。
【
図1】本発明による変性ジエン含有(コ)ポリマーを調製するための一連の工程を示すフローチャートである。
【
図2】結果として得られた、エポキシ基、ヒドロキシル基及びハロゲン原子を含む変性ジエン含有(コ)ポリマーの
1H NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態の様々な態様の詳細な説明を、以下に提供する。
【0030】
本発明によると、調製された変性ジエン含有(コ)ポリマーは、少なくとも1500g/mol、好ましくは2000~280000g/mol、より好ましくは10000~150000g/mol、最も好ましくは60000~100000g/molの質量平均分子量、及び複数の非共役炭素-炭素二重結合を特徴とする耐熱性の変性ジエン含有(コ)ポリマーである。
【0031】
ここで、その非共役炭素-炭素二重結合の合計より少ないがその少なくとも2つが変性されており、前記変性ジエン含有(コ)ポリマーは、(コ)ポリマーの合計質量に対して少なくとも35質量%、好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも75質量%のハロゲン、及び少なくとも1個のエポキシ化非共役炭素-炭素二重結合、及び少なくとも1個のヒドロキシハロゲン化非共役炭素-炭素二重結合を含む。
【0032】
本明細書において使用される用語「耐熱性」は、下記の熱重量分析(TGA)によって測定される変性ジエン含有(コ)ポリマーの5%質量減少温度を意味する。
【0033】
調製された耐熱性の変性ジエン含有(コ)ポリマーは、少なくとも1個のエポキシ基を含み、変性ジエン含有(コ)ポリマー中のエポキシ基の含有率は、(コ)ポリマーの合計質量に対して0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは1~2質量%である。
【0034】
結果として得られる耐熱性の変性ジエン含有(コ)ポリマーは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含み、ここで、結果として得られる変性ジエン含有(コ)ポリマー中のヒドロキシル基の含有率は、(コ)ポリマーの合計質量に対して0.05~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.15~1質量%である。
【0035】
変性ジエン含有(コ)ポリマー中のハロゲン原子に加えて、2つのタイプの官能基が存在することにより、いくつかの問題の解決が可能になる。すなわち、エポキシ基は、上述したように、難燃剤を含有するポリマー及びポリマー組成物の高温での加工の間に放出され得るHBrの吸収剤として機能する。一方で、ヒドロキシル基は(コ)ポリマーに極性及び親水性を与える。
【0036】
その結果、スチレンの懸濁重合のプロセスに難燃剤を添加すると、安定な懸濁が保証され、3つのタイプの官能基、すなわち、(コ)ポリマー中に同時に存在するエポキシ基、ヒドロキシル基及びハロゲン原子の複合効果によって、重合プロセスが逸脱なしに進行する。これにより、スチレンの懸濁重合の間の懸濁液中の難燃剤のより良好な分布がもたらされ、消費者の要求を満たすポリスチレンの粒度分布を得ることが可能になる。
【0037】
したがって、変性ジエン含有(コ)ポリマーの5%質量減少温度は、少なくとも180℃、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも220℃である。
【0038】
本発明に従って調製された変性ジエン含有(コ)ポリマーの一例は、一般式(1)の変性ジエン含有(コ)ポリマーであるが、これに限定されない:
【0039】
【0040】
[式中、R1~R3は同じか又は異なり、水素、又は1~6炭素原子を含む炭化水素基、例えばアルキル基であってよく;Halは塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲンであり;k、m、l及びpは同じか又は異なり、1<k<37、0<m<19、2<(l+p)<3660、より好ましくは6<k<12、3<m<6、610<(l+p)<1220、最も好ましくは7<k<10、4<m<5、730<(l+p)<980であってよく、nはポリマー鎖中の単位の数であり、50<n<450、好ましくは100<n<350、より好ましくは140<n<250である。]。
【0041】
本発明によると、変性ジエン含有(コ)ポリマーは、脂肪族アルコールの存在下で、ハロゲン及び水の混合物である変性系を使用して調製される。
【0042】
出発ジエン含有コポリマーは、共役ジエンのポリマー及びコポリマーであってよい。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、変性ジエン含有(コ)ポリマーを調製する方法であって、
a)(場合によって)出発ジエン含有(コ)ポリマーを予備粉砕し、続いて有機溶媒に溶解させる溶解工程;
b)工程(a)で得られた、有機溶媒中の出発ジエン含有(コ)ポリマーの溶液に変性系の成分を添加する変性工程;
c)工程(b)で得られた反応物に中和剤の水溶液を添加し、水相と有機相とに分離する中和及び分離工程;
d)有機相に過剰量のアルコール沈殿剤を添加することにより、変性ジエン含有(コ)ポリマーを沈殿させる沈殿工程;及び
e)沈澱した変性ジエン含有(コ)ポリマーを濾過し、次いで乾燥させる単離工程
を含み、
変性工程(b)において使用される変性剤が、二重結合の合計数を基準にして、ハロゲンと水とのモル比が1:0.01~1:1、好ましくは1:0.5~1:0.7、より好ましくは1:0.25~1:0.7である、ハロゲンと水との混合物であることを特徴とする方法を提供する。
【0044】
溶解工程a):
この工程において、出発ジエン含有(コ)ポリマーは、場合によって、予備粉砕され、次いで、撹拌しながら有機溶媒に溶解される。
【0045】
出発ジエン含有(コ)ポリマーは、共役ジエンポリマー又はコポリマーであってよい。
【0046】
適切な共役ジエンは、4~12炭素原子を含む共役ジエン、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2-エチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1~C5アルキル)-1,3-ブタジエン(例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、及び2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン等)、フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-メチル-ペンタジエン、4-メチル-ペンタジエン又はその混合物等である。1,3-ブタジエン又はイソプレンが好ましい。
【0047】
出発ジエン含有(コ)ポリマー中の適切なコモノマーは、ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、オルト-、メタ-及びパラ-メチルスチレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、1-ビニルナフタレン、2,4,6-トリメチルスチレン等、又はその混合物である。スチレン又はα-メチルスチレンが好ましい。
【0048】
適切な共役ジエン-ポリマー及びコポリマーは、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは70質量%の重合した共役ジエン単位を含む。
【0049】
ジエン含有(コ)ポリマーとして使用される好ましい(コ)ポリマーは、例えば、ブタジエン、ブタジエン-スチレン、及びブタジエン-スチレン-イソプレン(コ)ポリマーであり、スチレン及びブタジエンの2ブロック又は3ブロックコポリマーになり得るブタジエン-スチレンコポリマーが最も好ましい。
【0050】
市販されているジエン含有(コ)ポリマーの例には、PJC「SIBUR-Holding」社によって製造されている、商品名、BR-1243 Nd、等級В(LP)、BR-1243 Nd、等級В、及びBR-1243 ND HVの下で知られているブタジエンポリマー;商品名、DST R 30-00、SBS L 30-01A、SBS R 30-00A、DST L 30-01及びDST L 30-01 (SR)の下で知られているブタジエン-スチレンブロックコポリマー;及び商品名:DSSK-2560-M27(等級АА)、DSSK-2560-M27ВВ(等級А)、DSSK-4040-M27(等級А)の下で知られている、溶液重合の方法によって調製されるブタジエン-スチレンコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
適切な出発ジエン含有(コ)ポリマーは、少なくとも700g/mol、好ましくは1000~400000g/mol、より好ましくは2000~300000g/mol、より好ましくは5000~200000g/mol、より好ましくは20000~120000g/mol、最も好ましくは20000~50000g/molの質量平均分子量を有し、0.8~3、より好ましくは1~1.8、及び最も好ましくは1.1~1.5の多分散性指数、及び(コ)ポリマーのポリブタジエン部分当たり少なくとも10~100質量%、好ましくは少なくとも50~99質量%、より好ましくは60~80質量%の数の1,2-単位を有する。
【0052】
出発ジエン含有(コ)ポリマーは、場合によって、例えば(ナイフ、ハンマー又はローター)粉砕機、(流体又はスクリュー)ミル等を使用する先行技術から知られる任意の方法によって粉砕される。
【0053】
出発ジエン含有(コ)ポリマーは、溶解される場合、先行技術から知られる任意の方法によって、例えばミキサー又はスタティックミキサーを装備したデバイスを使用して、10~50℃、好ましくは15~40℃、より好ましくは20~30℃の温度で撹拌される。
【0054】
適切な溶媒は、好ましくは99%以上の純度を有する有機溶媒であるが、これらに限定されず、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン;ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジブロモメタン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン;脂環式炭化水素、例えば、シクロヘキサン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン;ハロゲン化炭化水素、例えば、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンである。好ましい有機溶媒は、出発ジエン含有(コ)ポリマーの変性条件下で液体である溶媒であり、変性系又は出発(コ)ポリマーと反応しない。溶媒としては、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、シクロヘキサン及びトルエンが好ましく、テトラヒドロフラン、クロロホルム及びジクロロメタンが最も好ましい。
【0055】
有機溶媒と出発ジエン含有(コ)ポリマーとの質量比は、5:1~30:1、好ましくは8:1~20:1、より好ましくは10:1~15:1である。
【0056】
溶解プロセスの時間は、最大60分、最大50分、最大40分、最大30分、最大25分、最大20分、最大15分、最大13分、最大11分、最大9分、最大7分又は最大5分である。
【0057】
前述の溶解工程で得られる物は、有機溶媒中の出発ジエン含有(コ)ポリマーの溶液である。
【0058】
変性工程b):
変性工程(b)において、変性系の成分が、工程(a)で得られた出発ジエン含有(コ)ポリマーの溶液に添加される。
【0059】
本発明によると、変性系は、脂肪族アルコールの存在下の、二重結合の合計数を基準にしてハロゲンと水のモル比が1:0.01~1:1、好ましくは1:0.5~1:0.7、より好ましくは1:0.25~1:0.7である、ハロゲン及び水からなる。
【0060】
ハロゲンは、元素そのままの形、又は有機溶媒中の溶液の形の塩素、臭素又はヨウ素である。
【0061】
ハロゲンは、好ましくは元素臭素(Br2)そのまま、又は最大70質量%、より好ましくは最大60質量%、最も好ましくは最大50質量%の臭素量を含む有機溶媒中のその溶液である。
【0062】
本発明の文脈においては、水は、蒸留水、脱イオン化水、脱塩水、浸透膜水又は二回蒸留水であるがこれらに限定されない。
【0063】
使用される脂肪族アルコールは、1~6炭素原子を有するアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、又はヘキサノール等であってよいが、これらに限定されない。脂肪族アルコールとしては、プロパノール、ブタノール、イソブタノール及びペンタノールが好ましく、ブタノール、イソブタノール及びペンタノールがより好ましい。
【0064】
出発ジエン含有(コ)ポリマーと、変性系と、脂肪族アルコールとのモル比は、1:1.5:3~1:5:3、より好ましくは1:2:3~1:4:3、最も好ましくは1:2.5:3~1:3:3である。
【0065】
変性系の成分及び脂肪族アルコールは、任意の順序で出発ジエン含有(コ)ポリマーの溶液に添加される。まず脂肪族アルコールを出発ジエン含有(コ)ポリマーの溶液に添加し、次に水及びハロゲン若しくはその溶液を添加することが好ましい(又はその逆でもよい)。
【0066】
ハロゲンは、好ましくは有機溶媒中の溶液の形で反応物への溶液の投入により添加される。好ましくは99%以上の純度を有し、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン;ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素、例えば、クロロホルム、ジブロモメタン、ジクロロメタン、又は1,2-ジクロロエタン;脂環式炭化水素、例えば、シクロヘキサン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼンである有機溶媒又は有機溶媒の混合物中で、ハロゲンを溶解することができる。ハロゲンは、好ましくは、出発ジエン含有(コ)ポリマーを溶解するために工程(a)において使用された溶媒と同一の溶媒中の溶液の形で投入される。
【0067】
ハロゲンはまた、水を用いてそのような溶液を前もって混合した後、上に定義した有機溶媒中の溶液の形の反応物に投入することができる。
【0068】
ハロゲン溶液又はハロゲン溶液の水との混合物を投入する速度は、0.80~50ml/分、好ましくは1~10ml/分、より好ましくは1.5~5ml/分である。非常に高い投入速度は、反応物の局所過熱、粘度の増加を引き起こし、その結果、ハロゲン原子の含有率が低い(35質量%未満の)変性ジエン含有(コ)ポリマーがもたらされる場合がある。
【0069】
出発ジエン含有(コ)ポリマーの溶液にハロゲン溶液の全体量を単回添加すると、反応物の架橋、局所過熱、反応物の粘度の増加を引き起こすことがあり、その結果、またハロゲン原子の含有率が低い(35質量%未満の)変性ジエン含有(コ)ポリマーがもたらされる場合がある。
【0070】
変性工程は、先行技術から知られる任意のバッチ又は連続プロセスの装置で実行される。適切な装置は、高度の腐食環境を伴う業務に対して設計された、連続撹拌槽型反応器、バッチ撹拌槽型反応器、及び撹拌機付きオートクレーブであるが、これらに限定されない。
【0071】
出発ジエン含有(コ)ポリマーの変性工程は、好ましくは光への曝露なしで実行され、非選択的な光触媒ハロゲン化反応の可能性を低減するために、例えば、変性プロセスは、暗色のガラス容器内、箔に包んだ反応器内、又は金属反応器内で実行される。
【0072】
変性工程は、大気圧下、0~50℃、好ましくは20~45℃、より好ましくは30~40℃の温度で実行される。
【0073】
変性系の添加後の反応物の撹拌速度は、50~600rpm、好ましくは100~500rpm、より好ましくは200~300rpmである。
【0074】
変性工程は、上に開示された出発ジエン含有(コ)ポリマーの所望の変性レベルを達成するのに十分な時間実行することができる。変性工程の時間は、好ましくは少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも25分、少なくとも30分、少なくとも45分、少なくとも60分又は少なくとも120分である。
【0075】
変性工程(b)後に得られる反応物は、変性ジエン含有(コ)ポリマーである目標生産物を含む。
【0076】
中和及び分離工程(c):
この工程は、中和剤の溶液の添加、続いて中和された反応物の水での洗浄による、変性ジエン含有(コ)ポリマーを含む工程(b)で得られた反応物の中和、並びに水相及び変性ジエン含有(コ)ポリマーを含む有機相の分離を含む。
【0077】
中和剤は、例えば、水酸化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等であるがこれらに限定されない、先行技術から知られる塩基の水溶液であってよい。水酸化ナトリウムの水溶液の使用が好ましい。
【0078】
中和剤と添加されたハロゲンとのモル比は、通常1:1~3:1、好ましくは1:1~2:1、より好ましくは1:1である。
【0079】
中和プロセスは、好ましくは、大気圧下で、15~50℃、好ましくは20~40℃、より好ましくは25~30℃の温度で実行される。
【0080】
水を用いる洗浄は、中和にかける反応物の体積に対して少なくとも1倍、好ましくは2倍、より好ましくは3倍の過剰量の水を用いて実行され、変性ジエン含有(コ)ポリマーを含む有機相、及び水相の2層への反応物の分離を結果としてもたらす。
【0081】
有機相及び水相は、任意の先行技術の装置によって、例えば、漏斗、分離器又は重力タンクを使用して分離される。
【0082】
沈澱工程(d):
工程(b)で得られた変性ジエン含有(コ)ポリマーは、変性ジエン含有(コ)ポリマーを含む、工程(c)で得られた有機相へのアルコール沈殿剤の添加により沈殿させられる。アルコール沈殿剤と変性ジエン含有(コ)ポリマーとの質量比は、15:1~1:1、好ましくは10:1~3:1、より好ましくは5:1~4:1である。
【0083】
適切なアルコール沈殿剤は、1~4炭素原子を含む脂肪族アルコールであるが、これらに限定されない。そのようなアルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール及びイソブタノールであるが、これらに限定されない。メタノール及びエタノールがアルコール沈殿剤として好ましい。
【0084】
単離工程(e):
単離工程(e)において、先行技術から知られる任意のデバイス、例えば、多孔質膜フィルター、ヌッチェフィルター等での濾過によって、溶媒及びアルコール沈殿剤の残留物から変性ジエン含有(コ)ポリマーが精製される。
【0085】
変性ジエン含有(コ)ポリマーの濾過は、20~40℃(両端を含む)の温度で実行される。
【0086】
水及び/又は水蒸気、並びに溶媒及び/又は溶媒蒸気は、変性ジエン含有(コ)ポリマーから前記(コ)ポリマーの乾燥によって除去される。有機化合物の分離及び精製(減圧下の溶媒の除去、真空乾燥等)のために通常使用される物理的方法によって、並びに吸着により湿分を除去する乾燥剤、水和物の形成又は水及び溶媒との化学反応を使用することによって、変性ジエン含有(コ)ポリマーの乾燥プロセスが実行されてもよい。
【0087】
乾燥は、好ましくは50~105℃の温度で、1~20kPaの圧力下で実行される。
【0088】
本発明は、変性ジエン含有(コ)ポリマーを調製するフローチャートを示す
図1で明確にされ、101は、出発ジエン含有(コ)ポリマーの溶解のための設備であり、102は、出発ジエン含有(コ)ポリマーの変性のための設備であり、103は中和及び分離のための設備であり、104は沈殿のための設備であり、105は濾過のための設備であり、106は乾燥のための設備である。
【0089】
本方法によると、場合によって粉砕される出発ジエン含有(コ)ポリマー(1)は、溶解設備101に搬送され、有機溶媒(2)と混合されて、出発ジエン含有(コ)ポリマー(3)の溶液が得られる。更に、前記(コ)ポリマー溶液(3)は、変性系(4)及び脂肪族アルコール(5)が同様に装填される変性設備102に搬送される。その後、設備102で得られた変性ジエン含有(コ)ポリマー(6)は、中和剤(7)、次いで、中和された反応物を洗浄するための水(8)が装填される中和設備103に搬送され、変性ジエン含有(コ)ポリマーを含む有機相(10)と水相(9)の分離が続く。次いで、変性ジエン含有(コ)ポリマーを含む有機相(10)は、アルコール沈殿剤(11)が同様に装填される沈殿設備104に搬送されて、変性ジエン含有(コ)ポリマーを沈殿させる。更に、沈殿した変性ジエン含有(コ)ポリマー(12)は、順次(12、13)濾過設備105及び乾燥設備106に搬送されて、結果として変性ジエン含有(コ)ポリマー(14)である生成物が得られる。変性ジエン含有(コ)ポリマーを調製する方法は、出発ジエン含有(コ)ポリマーを溶解する設備101に更に再利用される、有機溶媒の再生設備を含むことができる(
図1中で示さず)。
【0090】
図1のフローチャートは、本発明の例であり、本発明を限定することは意図されていない。
【0091】
本発明に従って調製された変性ジエン含有(コ)ポリマーは、様々なポリマー及びポリマー組成物、例えば発泡性ポリスチレンをベースとするポリマー及びポリマー組成物において使用することができ、それらに難燃剤を付与し得る。加えて、難燃剤はポリマー又はポリマー組成物と相溶性がなければならない。
【0092】
本発明によると、変性ジエン含有(コ)ポリマーは、ポリマー又はポリマー組成物にその調製の工程で添加される。したがって、例えば変性ジエン含有(コ)ポリマーは、重合開始剤、重合安定剤等の存在下でスチレンの重合によりポリスチレンを調製する工程、続いて調製されたポリスチレンを発泡させる工程を含む方法によって、発泡性ポリスチレンを調製する工程において、発泡性ポリスチレンに導入される(参照、例えば、米国特許第5086078号)。
【0093】
この場合、難燃剤として使用される変性ジエン含有(コ)ポリマーの含有率は、ポリマー100質量部当たり0.5質量部以上、好ましくは0.7質量部以上、より好ましくは1質量部以上であるべきであり、そうでなければ、調製されるポリマー又はポリマー組成物、特に発泡性ポリスチレン、又はそれをベースとする組成物の難燃特性を改善する効率が低下する。
【0094】
更に、例えば本発明による発泡性ポリスチレンをベースとするポリマー組成物は、技術的、物理機械的及び操作的特性の所望の複合を保証する通常の添加剤、例えば、帯電防止剤、安定剤、染料、潤滑剤、充填剤、接着還元剤(adhesion reducing agents)等を含むこともできる。
【0095】
本発明によると、発泡性ポリスチレンをベースとする組成物は、建設用の断熱材及び遮音材、特に断熱ボード及び遮音ボード、永久型枠、自動車コンポーネント、浮揚性用品、並びに道路及び橋梁の建設で必要とされるポリスチレンフォームブロック用の原料、及び家庭用装具の充填材等の種々様々の製品の製造のために使用することができる。
【0096】
本発明に従って調製された変性ジエン含有(コ)ポリマーは、この(コ)ポリマーが高い耐熱性を特徴とし、特に熱重量分析によって測定して少なくとも180℃の5%質量減少温度が、重合のプロセス、及びポリマー、特に、調製されたポリスチレンの粒度分布によって裏付けられるポリスチレン顆粒の形成のプロセスに影響を与えないので、発泡性ポリスチレンにおいて難燃剤として使用することができる。更に、本発明に従って調製された難燃剤は、発泡性ポリスチレンに難燃性を提供して、特許請求される本発明による難燃剤を含む発泡性ポリスチレンが、難燃性クラスB2のうちの中位可燃性材料に分類されることを可能にする(「火災安全要求事項の技術的な規制」の第13条第7項による)(22.07.2008の連邦法、No. 123、29.07.2017の版)。
【0097】
本発明を、以下の実施例で詳述する。これらの実施例は、本発明の例証としてのみ提供され、本発明の範囲を限定することは企図されていない。
【0098】
本発明の実施形態
変性(コ)ポリマーを試験する方法
熱重量分析(TGA)
同時の熱分析法(STA)(示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量分析法(TG)を組み合わせた方法)により、STA 449 Jupiter NETZSCH機を使用し、ISO11358に従って(コ)ポリマーの試料の温度特性を検討することによって、変性ジエン含有(コ)ポリマーの5%質量減少温度を測定し、その耐熱性を求めた。
【0099】
実験条件:不活性雰囲気(アルゴン)、30℃~600℃の範囲の温度、10℃/分の加熱速度。
【0100】
核磁気共鳴法(NMR)
変性ジエン含有(コ)ポリマーのポリマー鎖微細構造は、Bruker Avance III機(400MHz)を使用して、水素原子核(1H)のNMR分光法によって求めた。0.6mlの重水素化クロロホルムに30mgの試料を溶解することにより、溶液を調製した。1H核の走査数は32に等しかった。
【0101】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
出発ジエン含有(コ)ポリマー及び変性ジエン含有(コ)ポリマーの試料の分子量特性を、屈折率検出器を備えたAgilent 1200液体クロマトグラフィーシステムでISO16014-3に従って低温GPCによって測定した。
【0102】
分析条件:溶離液-テトラヒドロフラン;溶解及び測定の温度-40℃;溶離液流速:1.0ml/分;カラム:PLgel Mixed-C(2-3の品目)。ポリスチレン標準(EasiVial PS-H 4ml、Agilent Technologies社)の相対的較正に従って(コ)ポリマー用のMark-Houwink定数、K =0.000374、α=0.699を使用して計算を行った。
【0103】
ポリスチレンの粒度分布
試験用篩振盪機HAVER EML digital plusを使用して、ポリスチレン粉末の粒度分布を測定した。使用した試験用篩は、2.0;1.6;1.0;0.70;0.40;及び0.20mmの直径を有していた。篩分けの時間は15分であった。篩の粉末の質量は重量測定法によって測定した。
【0104】
耐燃試験
TT 2214-019-53505711-2010に従って難燃剤を含む発泡性ポリスチレン試料の難燃性を求めた。
【0105】
試料の調製:40mmを成形品から切断し、廃棄した。次いで、ブロック形成の間に、技術的な膜、亀裂、チップ及び開口気泡ができないように、寸法(190±1)×(90±0.5)×(20.0±0.5)mmの5つの試料を切断した。鋭い刃を用いて試料の底面を滑らかに切断しなければならず、側面と直角にならなければならない。
【0106】
この方法は、火の源から取り出した後20秒間燃えている試料の炎の高さの測定に基づく。
【0107】
試験の準備:
デバイスを準備し作業様式に設定した。槽の換気を止めた。試験槽の排気管中で熱式風速計を用いて空気速度を測定した。必要な値は0.5~0.8m/sであった。
【0108】
試験する前に、(23±5)℃の温度及び(50±20)%の相対的空気湿度で、少なくとも14日間試料を恒量に調節した。
【0109】
更に、正面及び裏面の下端から150mmの距離に試料に目印を付けた。次いで、燃焼室中で試料を鉛直に掛けて測標を上向きに維持し、底面は、ラックホルダーの目印と同一面に置いた。次いで、炎曝露のための安定器ノズルが試料の底面に沿って触れるように試料を有するホルダーを鉛直に移動させた。
【0110】
次いで、バーナーに点火し、側面から保持した寸法板(template)を使用して、黄色に輝く炎の高さが(20±1)mmになるように炎を調節した。試料に炎を当てる前に毎回、炎の高さを点検した。
【0111】
試験槽の底で、濾紙を、試料の下、2層の針金の箱中に置いた。
【0112】
試験:
燃焼室を閉じた。45°の角度に倒した火炎バーナーを、試料の自由端部(面)の中心に横から当て、その後、ストップウォッチをスタートした。15秒間炎に試料を晒し、次いで、バーナーは除き、試料の燃焼を観察した。同時に、炎曝露の始めから、燃えている試料の炎の上部が150mmの測標に到達する瞬間までの時間を、その前に炎がそれ自体で消えなかった場合に、測定した。試験を(炎を用いて試料を処理するプロセスの始めから)20秒後に中断し、最大の炎高さ及び滴り(燃焼断片の落下)を評価した。
【0113】
5つの試料のそれぞれについて、20秒経つまでに燃えている試料の炎の先端が測標を越えず、落下した場合には濾紙を焼くことなく燃焼滴下物(燃焼断片の落下)が濾紙上で2秒を超えて燃焼しない場合、試験が完結したと考えた。
【実施例1】
【0114】
変性ジエン含有コポリマーの調製
250mlの暗色のガラスフラスコにジクロロメタン中の出発スチレン-ブタジエンコポリマーの溶液(150gのジクロロメタン当たり10gのコポリマー)を添加した。次いで、このフラスコに、30gのブタノール及び7.6gの水を添加し、その後、20mlのジクロロメタン中の17.74gの臭素の溶液を投入した。30~40分間変性反応を行なった。反応が完了した後、フラスコに水酸化ナトリウム(NaOH)の溶液を添加し、1時間中和を実行した。次いで、変性ジエン含有コポリマーを含む反応物を3倍過剰量の水で洗浄した。
【0115】
更に結果として得られた変性ジエン含有コポリマーを濾過し、次いで、イソプロパノール中で沈殿させ、3kPaの圧力下30~95℃の温度で溶媒を留去することにより乾燥し、更に、0.5kPaの下真空オーブン中70℃で乾燥した。
【0116】
Table 1 (表1)に実施例1に従って調製した変性ジエン含有(コ)ポリマーの特性を示す。
【0117】
図2に、調製した変性ブタジエン-スチレンコポリマーの
1H NMRスペクトルを示す。
【0118】
1H NMRスペクトル(CDCl3, δ, ppm):6.6-7.1 (スチレン);5.6 (1,4-ブタジエン);5.1(1,2-ブタジエン);3.8-4.2(臭素化ブタジエン);3.6(ヒドロキシル基);3.5(ターシャリブロミド);2.8-3.0(エポキシ基)。
【実施例2】
【0119】
ロシア特許第2530021号によるヒドロキシ臭素化コポリマーの調製
出発ブタジエン-スチレンコポリマーの溶液(200gのジクロロメタン中の20g)を撹拌しながら0~5℃の温度に冷却した。ジクロロメタン中のm-クロロ過安息香酸の77%溶液(1molのエポキシ化ジエン単位当たり1molの酸)を0.083gの量で、冷却したコポリマー溶液に投入した。0~5℃に冷却浴の温度を維持した。酸全量の添加後、更に30分間この温度で、次いで1時間25℃で次いで更に1時間50℃で反応物を撹拌した。エポキシ化の後、水酸化ナトリウムの溶液を用いてm-クロロ過安息香酸の残留物を中和し、3倍過剰量の水を用いて反応物を洗浄し、続いて水相と有機相を分離した。
【0120】
更に、暗色のガラスフラスコに60gのブタノール及び5gの水を添加し、ジクロロメタン中の臭素の溶液(50mlのジクロロメタン当たり臭素39.4)を10-20分間それに投入した。ジクロロメタン中の臭素の全溶液の添加後に、30分間撹拌を継続し、次いで、チオ硫酸ナトリウムの10%溶液を添加し、60分間臭素を中和した。その後、水相は放出し、3倍過剰量の蒸留水を用いて有機相を洗浄した。次いで、結果として得られたヒドロキシル基及び臭素原子を含む変性ブタジエン-スチレンコポリマーを、5倍過剰量のアルコールで沈殿させ、次いで分離し、10kPaの下91℃の温度で溶媒から留去することにより乾燥し、更に、真空オーブン中0.5kPaの下70℃で乾燥した。
【0121】
Table 1 (表1)に実施例2において調製した生成物の特性を示す。
【実施例3】
【0122】
ロシア特許第2530021号によるエポキシ臭素化コポリマーの調製
出発ブタジエン-スチレンコポリマーの溶液(100gのジクロロメタン中の10g)を0~5℃に撹拌しながら冷却した。ジクロロメタン中のm-クロロ過安息香酸の77%溶液1.32g(エポキシ化すべきジエン単位1mol当たり1molのペルオキシド)を冷却したポリマー溶液に投入した。0~5℃で冷却浴の温度を維持した。酸の全体量の添加後、更に30分間この温度で、次いで1時間25℃で、次いで更に1時間50℃で反応物を撹拌した。エポキシ化の後、水酸化ナトリウムの溶液を用いてm-クロロ過安息香酸の残留物を中和し、3倍過剰量の水を用いて反応物を洗浄し、続いて水相と有機相を分離した。更に、水及び溶媒は、9kPaの下91℃でエポキシ化ブタジエン-スチレン(コ)ポリマーから留去し、次いで、真空オーブン中9kPaの下91℃で乾燥した。
【0123】
ジクロロメタン中のテトラブチルアンモニウムの溶液(20mlのジクロロメタン当たり36.13gのテトラブチルアンモニウム)を暗色のガラスフラスコに添加し、ジクロロメタン中の臭素溶液(20mlのジクロロメタン当たり17.9gの臭素)を10-20分間投入した。ジクロロメタン中の臭素溶液の全体量の添加後に、30分間撹拌を継続し、次いで、チオ硫酸ナトリウムの10%溶液を添加し、60分間臭素を中和した。その後、水相は放出し、有機相を3倍過剰量の蒸留水で洗浄した。次いで結果として得られたエポキシ基及び臭素原子を含む変性ブタジエン-スチレンコポリマーを5倍過剰量のアルコール中で沈殿させ、分離し、次いで、10kPaの下91℃で溶媒を留去することにより乾燥し、更に、真空オーブン中0.5kPaの下70℃で乾燥した。
【0124】
Table 1 (表1)に実施例3において調製した生成物の特性を示す。
【実施例4】
【0125】
変性系中の水の含有率を低下させた変性ジエン含有コポリマーの調製
フラスコに5.1gの水を添加したことを除いて実施例1に開示されるようにプロセスを実行した。
【0126】
Table 1 (表1)に実施例4において調製した生成物の特性を示す。
【実施例5】
【0127】
変性系中に水を含まない変性ジエン含有コポリマーの調製(比較例)
フラスコに水を添加しなかったという事実を除いて、実施例1に開示されるようにプロセスを実行した。
【0128】
Table 1 (表1)に実施例5において調製した生成物の特性を示す。
【0129】
【実施例6】
【0130】
発泡性ポリスチレンの調製
87部の水及び0.43部の重合安定剤(ピロリン酸ナトリウム及び硫酸マグネシウムの混合物)をフラスコ中25℃の温度で混合した。撹拌しながらこの混合物に、100部のスチレン、0.46部の重合開始剤の混合物(過酸化ベンゾイル及び過安息香酸tert-ブチル)、実施例1~5に従って調製した0.62部の難燃剤、及び0.21部の難燃相乗剤(過酸化ジクミル)の混合物を添加した。85℃までの温度で2時間混合物を撹拌し、次いで115℃に4.5時間加熱した。フラスコの温度が80℃に到達した70分後に、反応混合物にポリビニルピロリドンの10%水溶液を添加した。更に100-120分後、4.7部の発泡試薬(n-ヘプタン)中の0.10部の連鎖移動剤の溶液を反応物に添加した。すなわち、ポリスチレンを発泡する工程。115℃に達した後、3時間一定温度でフラスコを維持し、その後、混合物を25℃の温度に3時間冷却した。
【0131】
次いで、発泡工程の前に得られたポリスチレンの粒度分布を決定した。粒度分布の測定結果をTable 2 (表2)に示す。
【0132】
【0133】
Table 1 (表1)に示すデータから分かるように、水、臭素及びブタノールを合わせて使用すると(実施例1及び実施例4)、エポキシ基、ヒドロキシル基及び臭素原子を同時に含み、所望のパラメーター:200℃を超える温度での耐熱性及び65質量%を超える臭素含有率を示し、ポリスチレンとの良好な相溶性を有する変性スチレン-ブタジエンコポリマーを得ることができる。ポリスチレン中への実施例1及び4によるコポリマーの導入によって、安定な懸濁液が得られ、形成されたポリスチレン顆粒は所望の大きさを有し、完全にTT 2214-019-53505711-2010の要件を満たし(Table 2 (表2));目標分画の収率は89%である。
【0134】
実施例2(Table 1 (表1))のデータによると、結果として得られたヒドロキシル基及び臭素原子を含む変性スチレン-ブタジエンコポリマーが、高い臭素含有率及びポリスチレンとの良好な相溶性を特徴とし(Table 2 (表2))、およそ89%の目標分画の収率によって裏付けられるが、しかし、このコポリマーは所望の耐熱性を示さない。
【0135】
実施例3(Table 1 (表1))のデータによると、結果として得られたエポキシ基及びハロゲン原子のみを含む変性スチレン-ブタジエンコポリマーは、高い耐熱性及び高い臭素含有率を特徴とする;しかし、ポリスチレンとの相溶性は劣り、84%である目標分画の収率によって明示されるように目標分画の収率に負の効果を有している(粒度分布は、TT 2214-019-53505711-2010の要件を満たさない)。実施例5(Table 1 (表1))のデータによると、変性系中に水のない状態でのプロセスは、臭素原子のみを含む変性スチレン-ブタジエンコポリマーをもたらし;結果として得られたコポリマーは低い耐熱性を特徴とし、重合のプロセス、及びポリスチレン顆粒の形成に負の効果を有し(Table 2 (表2))、これは、わずか72%である目標分画の収率によって裏付けられる(粒度分布は、TT 2214-019-53505711-2010の要件を満たさない)。
【0136】
ポリスチレンの粒度分布のデータによると(Table 2 (表2))、本発明に従って得られたエポキシ基、ヒドロキシル基及び臭素原子を含む変性ジエン含有(コ)ポリマーは、ヒドロキシ臭素化及びエポキシ臭素化コポリマーと異なり、目標分画の高い収率(89%を超える)によって明示されるように、重合のプロセス及びポリスチレン顆粒の形成に影響を与えない。ポリスチレン中への本発明によるコポリマーの導入によって、安定な懸濁液を保証し、形成された顆粒は、完全にTT 2214-019-53505711-2010を満たす所望の大きさを有する。
【0137】
Table 2 (表2)のデータから分かるように、本発明(実施例1)による難燃剤を含むポリスチレンは、HBCDによって提供されるものに匹敵する難燃性を発泡性ポリスチレンに提供し、このことはまた耐燃試験によって裏付けられ、本発明による難燃剤を含む発泡性ポリスチレンが、難燃性クラスB2の中位可燃性材料に分類されることが可能になる(「火災安全要求事項の技術的な規制」の第13条第7項による)(22.07.2008の連邦法、No. 123、29.07.2017の版)。
【国際調査報告】