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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】薬剤溶出機器及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/16 20060101AFI20220215BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20220215BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20220215BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61L31/16
A61L31/14 500
A61L31/10
A61L31/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537057
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2019114698
(87)【国際公開番号】W WO2020134541
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811615405.0
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521204208
【氏名又は名称】元心科技(深▲せん▼)有限公司
【氏名又は名称原語表記】BIOTYX MEDICAL (SHENZHEN) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】4F, Building No.4, Jinxiu Science Park, Wuhe Avenue, Longhua District Shenzhen, Guangdong 518131, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 麗萍
(72)【発明者】
【氏名】林 文嬌
(72)【発明者】
【氏名】張 万謙
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC06
4C081AC09
4C081BB06
4C081CA152
4C081CE02
4C081CG08
4C081DA03
(57)【要約】
薬剤溶出機器及びその製作方法であり、薬剤溶出機器に、基体(100)、及び、基体(100)に設置される薬剤コーティング層(200)を含み、基体(100)は、外壁(110)、側壁(120)及び内壁(130)を有し、薬剤コーティング層(200)は、活性化薬剤(210)及び薬剤載置体を含み、活性化薬剤(210)は、薬剤載置体に分散し、薬剤コーティング層(200)は、基体(100)における外壁(110)、側壁(120)及び内壁(130)を被覆し、しかも、活性化薬剤(210)は、外壁(110)及び側壁(120)における含有量が、それぞれ、内壁(130)における含有量よりも大きく、或いは、活性化薬剤(210)は、外壁(110)及び側壁(120)にしか分布されておらず、内壁(130)に含まれていない。当該薬剤溶出機器は、コーティング層が落下してしまう現象が発生し難しい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁、側壁及び内壁を有する基体と、前記基体に設置される薬剤コーティング層と、を含む、薬剤溶出機器であって、
前記薬剤コーティング層は、薬剤載置体、及び、前記薬剤載置体に分散している活性化薬剤を含み、
前記薬剤コーティング層は、前記基体の外壁、側壁及び内壁を被覆すると共に、前記活性化薬剤は、前記外壁及び前記側壁における含有量が、それぞれ、前記内壁における含有量よりも大きく、或いは、
前記活性化薬剤は、前記外壁及び側壁にしか分布されておらず、前記内壁に含まれていない、ことを特徴とする、薬剤溶出機器。
【請求項2】
前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分には、少なくとも一部の領域が孔隙状構成とされる、ことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤溶出機器。
【請求項3】
前記孔隙状構成は、その孔隙率が5%~60%である、ことを特徴とする、請求項2に記載の薬剤溶出機器。
【請求項4】
前記薬剤コーティング層には、前記活性化薬剤の含有量が0.5~6マイクログラム/平方ミリメートルである、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤溶出機器。
【請求項5】
前記薬剤載置体は、生分解可能なポリマーはであり、前記生分解可能なポリマーは、生分解可能なポリエステル及び生分解可能な酸無水物から選ばれた少なくとも一つである、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤溶出機器。
【請求項6】
前記薬剤コーティング層は、その厚さが2~20マイクロメートルである、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤溶出機器。
【請求項7】
前記薬剤コーティング層における前記外壁に位置する箇所の厚さ、及び、前記薬剤コーティング層における前記側壁に位置する箇所の厚さは、それぞれ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の厚さよりも大きい、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤溶出機器。
【請求項8】
前記基体は、その材料が純鉄或いは合金鉄である、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤溶出機器。
【請求項9】
前記薬剤溶出機器は、前記基体に設置されている亜鉛含有保護層をさらに含み、前記亜鉛含有保護層は、前記基体の内壁を少なくとも覆うと共に、前記薬剤コーティング層に覆われる、ことを特徴とする、請求項8に記載の薬剤溶出機器。
【請求項10】
前記亜鉛含有保護層は、前記基体における被覆率が20~100%である、ことを特徴とする、請求項8に記載の薬剤溶出機器。
【請求項11】
外壁、側壁及び内壁を有する基体を提供する、ステップと、
活性化薬剤及び薬剤載置体を含む溶液を前記基体に加えて、薬剤コーティング層を形成し、ただし、前記活性化薬剤が前記薬剤載置体に分散しており、前記薬剤コーティング層が前記基体の外壁、側壁及び内壁に覆われる、ステップと、
溶媒を前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽き、前記基体から前記溶媒を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けない、ステップと、を含む、ことを特徴とする、薬剤溶出機器の製作方法。
【請求項12】
前記溶媒を前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽き、前記基体から前記溶媒を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けないというステップには、
前記溶媒を吸着している吸着性材料を、前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記吸着性材料を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けない、ということを含む、ことを特徴とする、請求項11に記載の薬剤溶出機器の製作方法。
【請求項13】
前記吸着性材料は、ナイロン材料、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン材料、ゴム類材料或いは繊維類材料である、ことを特徴とする、請求項12に記載の薬剤溶出機器の製作方法。
【請求項14】
前記溶媒を吸着している前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触させる時間は、10s~20minである、ことを特徴とする、請求項12に記載の薬剤溶出機器の製作方法。
【請求項15】
前記溶媒を吸着している前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから前記吸着性材料を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けない、というステップは、
芯棒を提供し、前記吸着性材料を前記芯棒の外面に被覆してから、前記吸着性材料を被覆している前記芯棒を、前記基体の内部に入れ、前記吸着性材料に前記溶媒を吸着させ、前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記吸着性材料及び前記芯棒を前記基体から除去し、或いは、
芯棒を提供し、前記吸着性材料を前記芯棒の外面に被覆してから、前記吸着性材料に前記溶媒を吸着させてから、前記吸着性材料を被覆している前記芯棒を、前記基体の内部に入れ、前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触させ、前記活性化薬剤における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤部分を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記吸着性材料及び前記芯棒を前記基体から除去し、或いは、
前記吸着性材料からなる芯棒を提供し、前記芯棒に前記溶媒を吸着させてから、前記溶媒を吸着している前記芯棒を、前記基体の内部に入れ、前記芯棒を前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記芯棒を前記基体から除去し、或いは、
前記吸着性材料からなる芯棒を提供し、前記芯棒を前記基体の内部に入れ、前記芯棒に前記溶媒を吸着させ、前記芯棒を前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記芯棒を前記基体から除去し、或いは、
前記溶媒を吸着している吸着性材料を前記基体の内壁に拭い、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記吸着性材料を前記基体から除去する、ことを特徴とする、請求項12に記載の薬剤溶出機器の製作方法。
【請求項16】
前記溶媒を吸着している前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触する際には、前記芯棒或いは前記基体が回転状態にある、ことを特徴とする、請求項15に記載の薬剤溶出機器の製作方法。
【請求項17】
前記溶媒を前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから前記基体から前記溶媒を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けないというステップを経ると、前記基体における活性化薬剤の含有量が、最多でも50%だけ減少される、ことを特徴とする、請求項15に記載の薬剤溶出機器の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植込み型機器の分野に関し、特に、薬剤溶出機器及びその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管スタンドは、血管内に植え込まれるものであり、拡張性があるため、疾患のある血管部位に植え込まれると、血流を再構築するように径方向に支持する役割を果たす。薬剤溶出スタンドは、一般的に、裸のスタンド基体の表面に、活性化薬剤を含む薬剤コーティング層を塗布し、活性化薬剤が放出することにより、血管が再狭窄してしまうことを抑えることができる。
【0003】
薬剤溶出スタンドが血管に植え込まれる場合には、スタンドが外壁及び側壁にのみ血管壁に接触しており、外壁及び側壁から放出する活性化薬剤は、血管壁に入り、血管壁が内膜に増殖してしまうのを抑えて、血管が再狭窄してしまうということを予防できる作用を果たすが、スタンドにおける内壁の活性化薬剤は、内膜が増殖してしまうということを抑える作用を果たすことができず、ひいては、放出して血液に入ることにより、全身を循環して、他の器官に副作用を引き出させる恐れがある。また、スタンドにおける内壁の活性化薬剤は、スタンドの内皮化を抑えて、血栓を形成するリスクを増やすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の課題を解決するために、現在に既存されている薬剤溶出スタンドは、スタンドにおける外壁及び側壁にのみ薬剤コーティング層を設置しており、スタンドにおける内壁に薬剤コーティング層を有さず、他のコーティング層も存在していない。
【0005】
しかしながら、バルーン拡張型のスタンドについては、スタンドが収縮状態から拡張状態へ変わると、スタンド棒が明らかに変形するため、スタンドにおけるコーティング層も併せて明らかに変形する。従って、外壁及び側壁にコーティング層を設けたが、内壁にコーティング層を設けなかったスタンドについては、スタンドが拡張している場合に、コーティング層がスタンド基体から剥離してしまう可能性がある。コーティング層が完全でない場合には、コーティング層の剥離するリスクを増やし、ひいては、コーティング層が基体から血液に落下することになり、栓塞や血栓のリスクを増やしてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このことに鑑み、内壁に活性化薬剤を含まず、或いは、内壁における活性化薬剤の含有量が比較的少なく、しかも、コーティング層が落下してしまう現象が発生し難しい薬剤溶出機器を提供することを必要とする。
【0007】
外壁、側壁及び内壁を有する基体、及び、前記基体に設置される薬剤コーティング層を含み、前記薬剤コーティング層は、薬剤載置体、及び、前記薬剤載置体に分散している活性化薬剤を含み、前記薬剤コーティング層は、前記基体における外壁、側壁及び内壁を被覆すると共に、前記活性化薬剤は、前記外壁及び前記側壁における含有量が、それぞれ、前記内壁における含有量よりも大きく、或いは、前記活性化薬剤は、前記外壁及び側壁にしか分布されておらず、前記内壁に含まれていない、薬剤溶出機器である。
【0008】
そのうちの一実施例では、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分には、少なくとも一部の領域が孔隙状構成とされる。
【0009】
そのうちの一実施例では、前記孔隙状構成は、その孔隙率が5%~60%である。
【0010】
そのうちの一実施例では、前記薬剤コーティング層には、前記活性化薬剤の含有量が0.5~6マイクログラム/平方ミリメートルである。
【0011】
そのうちの一実施例では、生分解可能なポリマーはであり、前記生分解可能なポリマーは、生分解可能なポリエステル及び生分解可能な酸無水物から選ばれた少なくとも一つである。
【0012】
そのうちの一実施例では、前記薬剤コーティング層は、その厚さが2~20マイクロメートルである。
【0013】
そのうちの一実施例では、前記薬剤コーティング層における前記外壁に位置する箇所の厚さ、及び、前記薬剤コーティング層における前記側壁に位置する箇所の厚さは、それぞれ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の厚さよりも大きい。
【0014】
そのうちの一実施例では、前記基体は、その材料が純鉄或いは合金鉄である。
【0015】
そのうちの一実施例では、前記薬剤溶出機器は、前記基体に設置されている亜鉛含有保護層をさらに含み、前記亜鉛含有保護層は、前記基体の内壁を少なくとも覆うと共に、前記薬剤コーティング層に覆われる。
【0016】
そのうちの一実施例では、前記亜鉛含有保護層は、前記基体における被覆率が20~100%である。
【0017】
外壁、側壁及び内壁を有する基体を提供する、ステップと、
活性化薬剤及び薬剤載置体を含む溶液を前記基体に加えて、薬剤コーティング層を形成し、ただし、前記活性化薬剤が前記薬剤載置体に分散しており、前記薬剤コーティング層が前記基体の外壁、側壁及び内壁を被覆する、ステップと、
溶媒を前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽き、前記基体から前記溶媒を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けない、ステップと、を含む、薬剤溶出機器の製作方法である。
【0018】
そのうちの一実施例では、前記溶媒を前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽き、前記基体から前記溶媒を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けないというステップには、前記溶媒を吸着している吸着性材料を、前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記吸着性材料を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けない、ということを含む。
【0019】
そのうちの一実施例では、前記吸着性材料は、ナイロン材料、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン類の材料、ゴム類の材料或いは繊維類材料である。
【0020】
そのうちの一実施例では、前記溶媒を吸着している前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触させる時間は、10s~20minである。
【0021】
そのうちの一実施例では、前記溶媒を吸着している前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから前記吸着性材料を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けない、というステップは、芯棒を提供し、前記吸着性材料を前記芯棒の外面に被覆してから、前記吸着性材料を被覆している前記芯棒を、前記基体の内部に入れ、前記吸着性材料に前記溶媒を吸着させ、前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記吸着性材料及び前記芯棒を前記基体から除去し、或いは、芯棒を提供し、前記吸着性材料を前記芯棒の外面に被覆してから、前記吸着性材料に前記溶媒を吸着させてから、前記吸着性材料を被覆している前記芯棒を、前記基体の内部に入れ、前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触させ、前記活性化薬剤における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤部分を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記吸着性材料及び前記芯棒を前記基体から除去し、或いは、前記吸着性材料からなる芯棒を提供し、前記芯棒に前記溶媒を吸着させてから、前記溶媒を吸着している前記芯棒を、前記基体の内部に入れ、前記芯棒を前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記芯棒を前記基体から除去し、或いは、前記吸着性材料からなる芯棒を提供し、前記芯棒を前記基体の内部に入れ、前記芯棒に前記溶媒を吸着させ、前記芯棒を前記基体の内壁に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記芯棒を前記基体から除去し、或いは、前記溶媒を吸着している吸着性材料を前記基体の内壁に拭い、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、前記吸着性材料を前記基体から除去する。
【0022】
そのうちの一実施例では、前記溶媒を吸着している前記吸着性材料を前記基体の内壁に接触する際には、前記芯棒或いは前記基体が回転状態にある。
【0023】
そのうちの一実施例では、前記溶媒を前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分に接触させ、前記薬剤コーティング層における前記内壁に位置する部分の活性化薬剤を前記溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから前記基体から前記溶媒を除去し、ただし、前記薬剤載置体が前記溶媒に溶けないというステップを経ると、前記基体における活性化薬剤の含有量が、最多でも50%だけ減少される。
【発明の効果】
【0024】
上記した薬剤溶出機器における薬剤コーティング層については、薬剤コーティング層における活性化薬剤の分布が、活性化薬剤は、外壁及び側壁における含有量が、それぞれ、内壁における含有量よりも大きく、又は、外壁及び側壁にしか分布されておらず、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分に含まれていない、ということを満たすと共に、薬剤コーティング層は、基体における外壁、側壁及び内壁を被覆しており、つまり、薬剤コーティング層は、完全に、しかも、連続的コーティング層となる、ようにすることにより、拡張の際に、薬剤コーティング層が、基体から離れたり、基体から落下したりすることが発生し難しい。従って、上記した薬剤溶出機器内壁には、活性化薬剤が含まれておらず、或いは、内壁における活性化薬剤の含有量が比較的少なく、しかも、当該薬剤溶出機器は、コーティング層が落下してしまう現象が発生し難しい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る薬剤溶出機器の断面の構成の模式図である。
図2】他の一実施形態に係る薬剤溶出機器の断面の構成の模式図である。
図3】他の一実施形態に係る薬剤溶出機器の断面の構成の模式図である。
図4】他の一実施形態に係る薬剤溶出機器の断面の構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明における上記の目的、特徴及び利点をより明確に理解しやすいように、以下に、図面を参照しながら、本発明における具体的な実施形態を詳しく説明する。以下の説明では、本発明を十分に理解するように、更なる詳細を記載する。しかしながら、本発明は、ここで記載するものと異なる数多くの他の形態により実施してもよいし、当業者が、本発明の発想を逸脱しない限り、類似な改良を行ってもよい。従って、本発明は、以下に開示する具体的な実施形態により限定されない。
【0027】
他の特別な断りが無ければ、本明細書に言及するあらゆる技術や科学用語は、本発明に係る技術分野に属する当業者が通常通り理解する意味と同じである。本明細書については、本発明の明細書に言及する用語が、具体的な実施例を記載する目的を説明するという目的にしか用いられず、本発明を限定するものではない。
【0028】
図1を参照すると、一実施形態に係る薬剤溶出機器は、基体100、及び、基体100に設置される薬剤コーティング層200を含む。
【0029】
基体100は、スケルトン化された管腔の構成である。基体100は、外壁110、側壁120及び内壁130を有する。
【0030】
一実施形態では、基体100は、生体が吸収可能である材料からなる。例えば、基体100は、鉄、鉄基合金、マグネシウム、マグネシウム基合金、又は、吸収可能な高分子材料などの材料からなる。一実施形態では、基体100は、カーボン含有量が2.11wt.%以下である鉄基合金、或いは、純鉄からなる。
【0031】
他の実施形態では、基体100は、生体が吸収できない材料からなる。例えば、基体100は、ニッケル・チタン合金、コバルト・クロム合金或いはステンレスなどの材料からなる。
【0032】
薬剤コーティング層200は、基体100における外壁110、側壁120及び内壁130を被覆する。つまり、薬剤コーティング層200は、完全、かつ、連続的コーティング層であり、基体100における表面が全体として薬剤コーティング層200に覆われる。
【0033】
薬剤コーティング層200は、活性化薬剤210及び薬剤載置体(図示せず)を含み、活性化薬剤210は、不均一に薬剤載置体に分散しており、つまり、薬剤コーティング層200における分布が不均一なものである。一実施形態では、図1に示すように、活性化薬剤210は、外壁110及び側壁120における含有量が、それぞれ、内壁130における含有量よりも大きい。具体的に、活性化薬剤210は、外壁110における単位面積当たりの含有量、及び、側壁120における単位面積当たりの含有量が、それぞれ、内壁130における単位面積当たりの含有量よりも大きい。
【0034】
他の一実施形態では、図2に示すように、活性化薬剤210は、薬剤コーティング層200における外壁110及び側壁120に位置する部分にのみ分布しており、薬剤コーティング層200における内壁130に位置する部分に含まれない。
【0035】
上記した薬剤溶出機器の薬剤コーティング層200については、薬剤コーティング層200における活性化薬剤210の分布が、活性化薬剤210は、外壁110及び側壁120における含有量が、それぞれ、内壁130における含有量よりも大きく、或いは、活性化薬剤210は、外壁110及び側壁120にのみ分布しており、内壁130に含まれないということを満たすと共に、薬剤コーティング層200が、基体100における外壁110、側壁120及び内壁130を被覆しており、つまり、薬剤コーティング層200が完全、かつ、連続的なものであることから、拡張する場合に、薬剤コーティング層200が基体100から離れて落下することが発生し難しい。従って、上記した薬剤溶出機器における内壁130に、活性化薬剤210を含まず、或いは、内壁130における活性化薬剤210の含有量が比較的少ないことから、当該薬剤溶出機器は、コーティング層が落下してしまう現象が発生し難しい。
【0036】
従って、基体100における内壁130に活性化薬剤210を含まず、或いは、内壁130に活性化薬剤210の含有量が比較的少ないことから、当該薬剤溶出機器が早く内皮化することに役立ち、血栓を形成するリスクが低くなる。しかも、血液に放出して入る薬剤が少なくなることに役立ち、他の器官への毒性(副作用)が低減され、臨床での使用に、安全性が高まる。
【0037】
一実施形態では、活性化薬剤210は、細胞増殖抑制剤、コルチコイド、プロスタサイクリン、抗生物質、細胞増殖抑制剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、消炎剤、抗血管新生剤、抗再狭窄剤、抗血栓形成剤、抗アレルギー剤及び抗腫瘍剤から選ばれた少なくとも一つである。一実施形態では、血管が増殖してしまうことを抑える薬剤は、パクリタキセル、ラパマイシンおよびラパマイシンの誘導体から選ばれた少なくとも一つである。抗血小板剤はシロスタゾールである。抗血栓形成類薬剤は、ヘパリンである。抗炎症反応の薬物はデキサメタゾン。抗アレルギー剤は、グルコン酸カルシウム、クロルフェニラミンおよびコルチゾンからなる群から選択される少なくとも一つである。
【0038】
一実施形態では、薬剤コーティング層200に、活性化薬剤210の含有量が0.5μg/mm~6μg/mmである。説明すべきところは、活性化薬剤210の含有量が0.5μg/mm~6μg/mmであるということは、薬剤コーティング層200における外壁110、側壁120及び内壁130に、活性化薬剤210の含有量の平均値を指す。
【0039】
一実施形態では、薬剤載置体が生分解可能なポリマーである。活性化薬剤210は、生分解可能なポリマーに分散しており、生分解可能なポリマーにより、活性化薬剤210の放出を制御して、活性化薬剤210が爆発的に放出してその大部分が血液へ流れることを避ける。
【0040】
一実施形態では、生分解可能なポリマーは、生分解可能なポリエステル、及び、生分解可能な酸無水物から選ばれた少なくとも一つである。そのうち、生分解可能なポリエステルは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、ポリ(β-ヒドロキシブチレート)、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリバレレート、ポリヒドロキシアルキルアルコールエステル及びポリ(リンゴ酸エステル)から選ばれた少なくとも一つである。或いは、生分解可能なポリエステルは、前記生分解可能なポリエステル類ポリマーを形成する単体のうちの少なくとも二つの共重合体である。生分解可能なポリ酸無水物は、ポリ1、3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸、ポリエルカ酸ダイマー-セバシン酸及びポリフマル酸-セバシン酸無水物から選ばれた少なくとも一つである。
【0041】
上記した生分解可能なポリエステル及び生分解可能なポリカルボン酸は、それらの分解により、基体100の周囲に、微酸性雰囲気が局所的に生じるため、基体100が後期に速く腐食することに役立つ。
【0042】
一実施形態では、薬剤コーティング層200における内壁130に位置する部分に、少なくとも一部の領域が孔隙状構成である。当該孔隙状構成により、植え込まれる初期に、当薬剤コーティング層200における生分解可能なポリマーが分解する際において、生じる分解産物が比較的少なくなく、分解の産物が体液と一緒に、比較的自在に拡散でき、局所的に集まるため局所的にpH値が低すぎることがなく、腐食可能な又は生分解可能な基体100が局所的に、明らかに、速すぎ腐食したり、速すぎ分解したりする現象を避けることができる。
【0043】
一実施形態では、薬剤コーティング層200における内壁130に位置する部分の孔隙状構成は、その孔隙率が5%~60%である。そうすると、生分解可能なポリマーにおける分解産物が可及的速やかに拡散してきることを保証することができ、腐食可能な又は生分解可能な基体100が局所的に、明らかに、速すぎ腐食したり、速すぎ分解したりする現象を避けることができる。
【0044】
一実施形態では、薬剤コーティング層200は、その厚さが2~20マイクロメートルである。薬剤コーティング層200の厚さとは、薬剤コーティング層200における外壁110に位置する部分の厚さ、側壁120における部分の厚さ、及び、内壁130における部分の厚さの平均値を指す。
【0045】
薬剤コーティング層200を、基体100における外壁110、側壁120及び内壁130に同時に被覆すると共に、薬剤コーティング層200の厚さを適正に設置し、薬剤コーティング層200における生分解可能なポリマーの量を制御することにより、生分解可能なポリマーの量が十分に多いように保証して、薬剤コーティング層200の分解する速度と、腐食可能な又は生分解可能な基体100が腐食し又は分解する速度とがマッチングするようにする。そして、病変の部位が修復済みである場合には、依然として、生分解可能なポリマーが十分に残され、残される生分解可能なポリマーの分解産物により、基体100が速く腐食したり分解したりするようにして、長期間にわたって臨床に使用されてもリスクが低くなる。
【0046】
一実施形態では、薬剤コーティング層200における外壁110に位置する部分の厚さ、及び、薬剤コーティング層200における側壁120に位置する部分の厚さは、それぞれ、薬剤コーティング層200における内壁130に位置する部分の厚さよりも大きい。薬剤溶出機器を生体内に植え込む場合には、基体100の外壁110が血管壁に直接に接触する一方側となり、外壁110に位置する活性化薬剤210は、制御可能に放出され、血管の内膜へ浸透して入ることから、比較的良い治療効果が得られる。従って、薬剤コーティング層200における局所的な厚さが大き過ぎることを避けるという前提では、薬剤コーティング層200における外壁110に位置する部分の厚さが、薬剤コーティング層200における内壁130に位置する部分の厚さよりも大きい場合に、薬剤を効果的に載置する載置量を高めることに役立ち、治療のニーズを満たすことができる。
【0047】
図3を参照すると、一実施形態では、基体100の材料が純鉄或いは合金鉄である場合に、薬剤溶出機器に、亜鉛含有保護層300をさらに含む。亜鉛含有保護層300は、基体100に設置されると共に、薬剤コーティング層200に覆われる。亜鉛含有保護層300には、純亜鉛、亜鉛合金及び/或いは亜鉛含有化合物を含む。基体上100に、亜鉛含有保護層300を設置することにより、基体100を保護して、腐食可能な基体100に腐食を延期させ、基体100が初期に径方向に支持を行うという性能を保持することができる。
【0048】
亜鉛含有保護層300は、基体100の内壁130を少なくとも覆う。
【0049】
一実施形態では、亜鉛含有保護層300が基体100の内壁130を少なくとも覆うということは、亜鉛含有保護層300が基体100の表面を全く覆い、言い換えれば、図3に示すように、亜鉛含有保護層が基体100における外壁110、側壁120及び内壁130を全て覆うということを指す。
【0050】
他の一実施形態において、亜鉛含有保護層300が基体100の内壁130を少なくとも覆うとは、
亜鉛含有保護層300は、基体100の内壁130しか覆わず、或いは、
亜鉛含有保護層300は、基体100の内壁130を全て覆うが、基体の側壁120の一部しか覆わないと共に、基体100の外壁110を全く覆わず、或いは、
亜鉛含有保護層300は、基体100における内壁130及び側壁120を全て覆うと共に、基体100における外壁110の一部しか覆わず、或いは、
亜鉛含有保護層300は、基体100における内壁130及び側壁120を全て覆うと共に、基体100の外壁110を全く覆わない
ということを指す。そのうち、亜鉛含有保護層300が基体100の内壁130しか覆わないということは、亜鉛含有保護層300は、基体100の内壁130を全く覆い、或いは、基体100の内壁130しか覆わないと共に、基体100の外壁110及び側壁120を全く覆わないということを指す。
【0051】
説明すべきところは、プロセス中の制御によって、亜鉛含有保護層300を基体100に製作する時に、亜鉛含有保護層300における基体100に位置するある領域が連続的なものでないという場合もあり、例えば、メッキ漏れの領域が存在することにより亜鉛含有保護層300における基体100に位置するある領域が連続的なものでないという場合がある。例えば、亜鉛含有保護層300は、基体100の内壁130しか覆わず、ある領域が連続的なものでない。また、亜鉛含有保護層300は、基体100における外壁110、側壁120及び内壁130に位置すると共に、外壁110に位置する部分、側壁120に位置する部分、及び、内壁130に位置する部分のうちの少なくとも一部の領域が連続的なものでない。さらに、亜鉛含有保護層300は、基体100の内壁130に位置すると共に、基体100の側壁120の一部しか覆わないと共に、基体100の外壁110を全く覆わず、しかも、内壁130における部分、及び、側壁120に位置する部分のうちの少なくとも一部の領域が、連続的なものでない。或いは、亜鉛含有保護層300は、基体100における内壁130及び側壁120に位置すると共に、基体100の外壁110の一部しか覆わず、或いは、基体100の外壁110を全く覆わす、しかも、内壁130における部分、側壁120における部分、及び、外壁110における部分のうちの少なくともの一部の領域が連続的なものでない。
【0052】
亜鉛含有保護層300が如何にして基体100に分布するにかかわらず、たとえ亜鉛含有保護層300に一部の領域が連続的なものでない場合でも、亜鉛含有保護層300により依然として基体100を比較的に、良く保護することができる。
【0053】
亜鉛含有保護層300は、基体100の内壁130を少なくとも覆う。薬剤溶出機器を血管に植え込む場合には、基体100の外壁110が血管壁と当接するが、基体100の内壁130は、血流に接触する状態にある場合もあり、血流により洗い出される場合もあり、亜鉛含有保護層300により基体100の内壁130を少なくとも覆うことにより、腐食可能な基体100が速すぎ腐食してしまうことを良く避けることができる。
【0054】
一実施形態では、亜鉛含有保護層300は、基体100における被覆率が20~100%である。そうすると、亜鉛含有保護層300は、腐食可能な基体100を早期に保護して、腐食可能な基体100が速すぎ腐食してしまうことを避けると共に、基体100が後期に腐食する速度に影響を与えないようにできるということが満たされる。基体100における内壁130に亜鉛を含まない場合には、早く腐食してしまい、血栓の原因になる恐れがある。従って、亜鉛含有保護層300により基体100の内壁130を少なくとも覆うことが要求される。しかも、基体100の外壁110が血液に接触しないため、基体100が全体として腐食する速度を高めるように、基体100の外壁110が亜鉛含有保護層300により覆われなくてもよいし、外壁110の一部しか亜鉛含有保護層300により覆われなくてもよい。
【0055】
一実施形態では、図4に示すように、基体100の外壁110に、少なくとも一部の領域が、亜鉛含有保護層300により、覆われない。基体100に薬剤を有効に載置する量を高めるために、薬剤コーティング層200における基体100の外壁110に位置する部分は、その厚さが比較的大きい。そして、亜鉛含有保護層300により効果的に基体100を保護することができると共に、基体100が速すぎ腐食してしまうことを避けることができるということを前提として、基体100の外壁110に、少なくとも一部の領域が亜鉛含有保護層300に覆われないと、後期に、外壁110より基体100に腐食を速くさせるようにして、腐食の周期を短くすることに役立つ。
【0056】
上記した薬剤溶出機器は、薬剤を不対称に載置する、完全な、かつ、接続的な、薬剤コーティング層200により、多すぎる活性化薬剤210が基体100の内壁130より、直接に血液へ放出して、毒性(副作用)を招致してしまうことを避けると共に、内皮の細胞が基体100の内壁130に上って覆うことに役立ち、それと同時に、拡張すると、薬剤コーティング層200が落下してしまうことを効果的に避けることができる。また、一実施形態では、基体100は、カーボン含有量が2.11wt.%以下である鉄基合金、又は、純鉄からなり、薬剤コーティング層200における活性化薬剤210は、その含有量が0.5μg/mm~6μg/mmであり、薬剤コーティング層200は、その厚さが2~20マイクロメートルであり、薬剤コーティング層200における内壁130に位置する部分は、その孔隙状構成の孔隙率が5%~60%である。そうすると、活性化薬剤210の放出と腐食可能な基体100の腐食とがマッチングし、活性化薬剤210の放出周期と、植え込まれる部位への修復期が一致している。修復の場合には、腐食可能な基体100が径方向に支持力を十分に保持する。修復が完了する場合には、活性化薬剤210が放出しきる。この時には、生分解可能なポリマーがまだ分解しきれず、分解し続けることができるため、基体100の周囲に微酸性雰囲気を局所的に保持し、腐食可能な基体100が速く腐食するようにして、長期にわたって臨床でのリスクを削減することができる。
【0057】
一実施形態では、薬剤溶出機器の基体100は、カーボン含有量が2.11wt.%以下である鉄基合金、又は、純鉄からなり、薬剤コーティング層200における活性化薬剤210は、その含有量が0.5μg/mm~6μg/mmであり、薬剤コーティング層200は、その厚さが2~20マイクロメートルであり、しかも、基体100には、基体100の内壁100を少なくとも覆う亜鉛含有保護層300が設けられている。そうすると、基体100が腐食し始まる時点を遅延させることができる。そして、活性化薬剤210の放出と腐食可能な基体100の腐食とがマッチングし、活性化薬剤210の放出周期と植え込まれる部位の修復期が一致する。修復の場合には、腐食可能な基体100が径方向に支持力を十分に保持する。修復が完了する場合には、腐食可能な基体100が速く腐食して、長期にわたって臨床でのリスクを削減することができる。
【0058】
さらに、薬剤溶出機器の基体100は、カーボン含有量が2.11wt.%以下である鉄基合金又は純鉄からなり、薬剤コーティング層200における活性化薬剤210は、その含有量が0.5μg/mm~6μg/mmであり、薬剤コーティング層200は、その厚さが2~20マイクロメートルであり、薬剤コーティング層200における内壁130に位置する部分は、その孔隙状構成の孔隙率が5%~60%であり、しかも、基体100に、基体100の内壁100を少なくとも覆う亜鉛含有保護層300が設けられる。活性化薬剤210の放出と腐食可能な基体100の腐食とがマッチングし、活性化薬剤210の放出周期と植え込まれる部位の修復期とが一致するということを一層に保証することができる。そして、修復の場合には、腐食可能な基体100が径方向に支持力を十分に保持する。修復が完了する場合には、腐食可能な基体100が速く腐食して、長期にわたって臨床でのリスクを削減することができる。
【0059】
上記した薬剤溶出機器は、様々な部位に適用され得るものであってもよい。例えば、上記した薬剤溶出機器は、心血管スタンド、脳血管スタンド、外周血管スタンド、胆道スタンド、食道スタンド、気道スタンド、又は、骨に植え込まれる物などであってもよい。
【0060】
一実施形態に係る薬剤溶出機器の製作方法は、以下のステップが含まれる。
ステップ110は、外壁、側壁及び内壁を含む基体を提供する。
基体は、スケルトン化された管腔の構成である。
【0061】
ステップ120は、活性化薬剤及び薬剤載置体を含む溶液を基体に加えて、薬剤コーティング層を形成する。前記活性化薬剤は、前記薬剤載置体に分散しており、薬剤コーティング層は、基体における外壁、側壁及び内壁を被覆する。
【0062】
活性化薬剤及び薬剤載置体を溶媒に溶解して、活性化薬剤及び薬剤載置体を含む溶液を配合して製造する。一実施形態では、薬剤載置体が生分解可能なポリマーとされると、活性化薬剤及び生分解可能なポリマーを溶媒に溶解して、十分に溶解しながら均一に攪拌してから、活性化薬剤及び薬剤載置体を含む溶液を取得する。或いは、活性化薬剤及び生分解可能なポリマーを、それぞれ、異なる溶媒に溶解して、それぞれ、活性化薬剤を含む溶液、及び、薬剤載置体を含む溶液を配合して製造する。次に、活性化薬剤を含む溶液と、薬剤載置体を含む溶液を混合して、活性化薬剤と薬剤載置体との混合液を取得する。
【0063】
一実施形態では、スプレー塗装、浸出、浸漬又はローラプレスなどの形態により、活性化薬剤及び薬剤載置体を含む溶液を、基体に加えて、薬剤コーティング層を形成する。薬剤コーティング層は、基体における外壁、側壁及び内壁を被覆する。当該実施形態では、薬剤コーティング層が単一層の構成であり、活性化薬剤が薬剤載置体に分散しており、活性化薬剤が薬剤載置体に不均一に分散する。
【0064】
説明すべきところは、活性化薬剤及び薬剤載置体を含む溶液に、活性化薬剤の濃度や薬剤載置体の濃度が必要に応じて選択されてもよく、具体的に限定されない。
【0065】
さらに説明すべきところは、上記のステップは、必要な薬剤コーティング層の厚さを取得するように、複数回だけ繰り返されてもよい。
【0066】
ステップ130は、溶媒と薬剤コーティング層における内壁に位置する部分とを接触させ、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を溶媒に、一部だけ溶解し、又は、溶解し尽きてから、基体から溶媒を除去すると共に、薬剤載置体が溶媒に溶けない。
【0067】
一実施形態では、溶媒を吸着している吸着性材料と基体の内壁とを接触させ、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、吸着性材料を除去すると共に、薬剤載置体が溶媒に溶けない。そうすると、基体から当該溶媒を除去する。
【0068】
説明すべきところは、上記した薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽き、しかも、薬剤載置体が溶媒に溶けないということについては、薬剤載置体が必ず、全く当該溶媒に溶けないということが要求されていない。同一の溶媒にとっては、活性化薬剤及び薬剤載置体への溶解性が大幅に相違しており、或いは、当該溶媒における薬剤載置体の溶解速度が比較的遅く、当該溶媒が薬剤コーティング層における内壁に位置する一部に接触する時間において、活性化薬剤が当該溶媒に速く溶解できる一方、薬剤載置体が当該溶媒に溶解できる量が極めて少なく、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の連続性を破ることがない。
【0069】
一実施形態では、溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル或いは酢酸エチルである。
【0070】
一実施形態では、吸着性材料が、ナイロン材料、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン材料、ポリウレタン材料又は繊維類材料であり、具体的に、例えば、ポリプロピレン材料からなる不織布吸着棉である。
【0071】
上記した吸着性材料は、吸着性のみならず、溶媒を吸着できると共に、基体と接触する過程において基体に汚染を与えてしまうこともない。理解すべきところは、上記に挙げた材料以外に、溶媒を吸着できると共に基体に汚染を与えない如何なる吸着性材料であっても、適用可能である。
【0072】
溶媒を吸着している吸着性材料が基体の内壁に接触することにより、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽き、しかも、薬剤載置体が溶媒に溶けない。薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を、少なくとも一部だけ除去すると共に、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分に、少なくとも一部の領域が孔隙状の構成になるようにして、適正な孔隙率を有する。活性化薬剤を一定量だけ除去できるように保証すると共に、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分に、孔隙状構成の孔隙率が5%~60%であるように保証するためには、一実施形態において、溶媒を吸着している吸着性材料と基体の内壁とが接触する時間を10s~20minとする。
【0073】
具体的に、一実施形態では、溶媒を吸着している吸着性材料と基体の内壁とを接触させ、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、吸着性材料を除去するというステップに、芯棒を提供しており、吸着性材料を芯棒の外面に被覆してから、吸着性材料を被覆している芯棒を、基体の内部に入れ、吸着性材料に溶媒を吸着させ、溶媒を吸着している吸着性材料と基体の内壁とを接触させ、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、吸着性材料及び芯棒を基体から除去するということを含む。
【0074】
或いは、他の一実施形態では、芯棒を提供しており、吸着性材料を、芯棒の外面に被覆し、吸着性材料に溶媒を吸着させてから、吸着性材料を被覆している芯棒を、基体の内部に入れ、吸着性材料と基体の内壁とを接触させ、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、吸着性材料及び芯棒を基体から除去する。
【0075】
芯棒は、円柱の形状であって、管腔の構成とされる基体に対応する。吸着性材料を芯棒の外面に被覆する実施形態では、芯棒の材料が限定されておらず、吸着性材料を支持できるものであればよい。
【0076】
他の実施形態では、吸着性材料を直接に用いて、円柱の形状とされる芯棒を製造してもよい。この形態では、芯棒の表面に吸着性材料を付加的に被覆することが必要とならず、直接用芯棒により、活性化薬剤を溶解できるが、薬剤載置体を溶解しにくく或いは溶解できない溶媒を吸着してから、当該溶媒を吸着している芯棒を基体に入れ、基体の内壁と接触させ、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を、溶媒に溶解し、次に、芯棒を基体から除去する。或いは、芯棒を基体に入れ、芯棒に溶媒を吸着させながら基体の内壁と接触させ、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を、溶媒に溶解してから、芯棒を基体から除去する。
【0077】
説明すべきところは、吸着性材料を芯棒に被覆し、或いは、吸着性材料を用いて芯棒を製造するということは、いずれも、活性化薬剤を基体の内壁から除去し、或いは、基体の内壁における活性化薬剤を削減する操作において、芯棒が回転状態にある。或いは、他の一実施形態では、芯棒を固定に保持する一方、基体が回転状態にある。
【0078】
他の一形態では、直接に、溶媒を吸着している吸着性材料を基体の内壁に拭い、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を溶媒に、一部だけ溶解し又は溶解し尽きてから、吸着性材料を除去すると共に、薬剤載置体が溶媒に溶けない。
【0079】
さらに、説明すべきところは、上記したいずれかの形態により、活性化薬剤を基体の内壁から除去し、或いは、基体における内壁の活性化薬剤を削減しても、対応する操作は、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分が連続的なコーティング層であるように保証することを前提として、基体における内壁の活性化薬剤をできるだけ削減したり、基体における内壁の活性化薬剤を除去し切れたりするように、複数回だけ繰り返されてもよい。予想可能なことは、溶媒を吸着している材料が基体の内壁と接触する過程において、同時に、一部だけの基体の側壁と接触して、基体の側壁における内壁と近い部分の薬剤も減少されるおそれがある。
【0080】
上記薬剤溶出機器を製作する方法は、先に、基体における外壁、側壁及び内壁を覆う連続的な薬剤コーティング層を製作し、次に、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤の一部を少なくとも除去する。ステップ130を経て得られる薬剤溶出機器の活性化薬剤は、その含有量が、ステップ120を経て得られる未完成の製品である活性化薬剤の含有量よりも、最多でも50%だけ減少される。
【0081】
理解可能なところは、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の活性化薬剤を除去し又は削減する後に、乾燥を行うステップをさらに含む。そうすると、薬剤コーティング層における溶媒をできるだけ早く発揮する。一実施形態では、乾燥剤、換気や真空排気などの形態により乾燥を行ってもよい。他の実施形態では、自然な空気により乾燥を行ってもよい。
【0082】
さらに、理解可能なところは、基体に薬剤コーティング層を複数層だけ形成することが必要となると、上記と同様な方法により、順に薬剤コーティング層を複数層だけ製作してもよい。
【0083】
上記した薬剤溶出機器の製作方法では、活性化薬剤と薬剤載置体は、同一の溶媒でも、溶解度が明らかに相違しているということに基づいて、基体における外壁、内壁及び側壁を全て覆う、完全な、かつ、連続的な薬剤コーティング層を製作し、当該薬剤コーティング層における活性化薬剤は、外壁及び側壁における含有量が、それぞれ、内壁における含有量よりも大きく、又は、活性化薬剤は、外壁及び側壁にしか分布しておらず、内壁に含まれないということを実現する。そして、臨床での使用に安全性を高めることに役立つことができる。しかも、上記した薬剤溶出機器を製作する方法は、そのプロセスが簡単であり、機器に対する要求が低い。
【0084】
他の実施形態では、薬剤コーティング層を製作する前に、基体に付着される亜鉛含有保護層を製作することをさらに含む。電気メッキ、スプレー塗装、浸漬コーティング、塗布、エレクトロスピニングなどの形態により、亜鉛含有保護層を製作してもよい。
【0085】
以下には、具体的な実施例に基づいて、上記した薬剤溶出機器及びその製作方法を詳しく説明する。
【0086】
以下の実施例に採用される試験方法は、以下の通りである。
1、内皮化の速度についての試験
薬剤溶出機器をウサギの腸骨動脈に植え込み、一定の時間が経過すると、薬剤溶出機器の所在する血管を、取り出してグルタルアルデヒドに浸し(例えば6時間)、乾燥を行い、そして、軸方向に挟み切り、金属溶射(metal spraying)を行い、SEMにより薬剤溶出機器における内皮の被覆率を測量し観察して、被覆率が95%以上の面積となると、当該薬剤溶出機器が内皮化し尽きると分かる。
2、薬剤コーティング層の完全性を評価する方法
剥離試験には、薬剤溶出機器のシステムを、PBS模倣溶液に、押すように模倣し、次に、薬剤溶出機器を、爆発圧力になるように拡張させ、20-50倍の顕微鏡を用いて、薬剤コーティング層の見かけを観察する。薬剤コーティング層と薬剤溶出機器の基体とは、大面積で明らかに剥離することがないと共に、コーティング層が落下し、薬剤溶出機器の外壁に、基体が明らかに露出することもない。
3、体内に腐食する吸収可能な薬剤溶出機器の速度についての試験
薬剤溶出機器が体内に腐食する速度とは、薬剤溶出機器の質量損失により示される。例えば、吸収可能な薬剤溶出機器を、ウサギ体内に植え込み、一定時間が経過すると、薬剤溶出機器及びその周囲の組織を取り出し、酒石酸の溶液(例えば質量の分数が3%)に、超音波で薬剤溶出機器を洗浄し、乾燥を行い、次に、薬剤溶出機器の質量Mを測量する。当該薬剤溶出機器は、そもそも裸のスタンドの質量をMとすると、当該薬剤溶出機器の質量損失が(M-M)/Mとなる。薬剤溶出機器が腐食し始まるとは、機器の質量損失が5~10%であるということを指す。
4、薬剤溶出機器における活性化薬剤含有量の不対称効果についての表現
ラマンスペクトルにより表現することができる。具体的な表現方法では、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)製のラマンスペクトル機器を用いて、532nmという波長の条件に基づいて、薬剤コーティング層における外壁及び内壁に位置する部分を、ラマンスペクトルで分析し、活性化薬剤の特徴ピークが外壁の部分に現れるが内壁に現れないと、活性化薬剤が外壁にあるが内壁にないと分かり、外壁の部分における活性化薬剤の特徴ピークの強さが、内壁のほうよりも明らかに高い場合に、内壁の部分における活性化薬剤含有量が外壁の部分のほうよりも少ないと分かる。
5、内壁における活性化薬剤を除去する前後に、薬剤溶出機器の薬剤載置量についての試験方法
アセトニトリルに薬剤溶出機器を十分に浸すように確保して、薬剤溶出機器を一定の体積だけのアセトニトリルに浸す。一定の時間(例えば30min)だけ超音波で処理を行い、当該溶液について、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies)社製の1260液体クロマトグラフィー(liquid chromatography)を用いて、溶液における薬量を測量し、ただし、機器のパラメーターが紫外線の波長の278nmであり、移動相については、アセトニトリルと水との比例が65:35であり、ポンプにおける流速が1mL/minである。内壁の薬剤を除去するというプロセスを行う前後に、当該ロットにおいて薬剤溶出機器の代表的なサンプルの薬量をそれぞれ測量して、それぞれ、M0μg、M1μgとすると、当該薬剤溶出機器の薬量が、(M-M)*100%/Mだけ削減され、スタンドにおける活性化薬剤含有量は、単位面積当たりの薬剤含有量により示すと、M/Sとなり、ただし、Sがスタンド棒の表面積mmである。
6、コーティング層の厚さについての試験
製作した薬剤溶出機器について、金属溶射、樹脂埋め込み及び磨きという処理を実施し、走査型電子顕微鏡により、各断面における各方向の大きさを観察して測量し、典型的な断面を取り出す。各断面の薬剤コーティング層については、内壁、外壁及び側壁において、それぞれ、各方向に、中央位置のコーティング層の厚さを取り、各厚さを平均する平均値を、当該薬剤コーティング層の厚さとする。
7、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の孔隙状構成の孔隙率
孔隙率とは、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の孔隙が占める体積と、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の総体積とのパーセントである。薬剤コーティング層の量が少ないため、通常の孔隙率試験方法の場合に、その精度が十分でない。従って、SEMという方法により、ぞんざいに評価を行う。その具体的な操作方法は、薬剤溶出機器を軸方向に沿って脆性破壊させ、金属溶射を行い、各スタンド棒の内壁のコーティング層を観察する。また、3つの軸方向における断面を少なくとも選択し、各断面について、5個の2*2μmという領域を、写真を撮るように、少なくとも選択してから、統計用のソフトウェアにより、選択されている領域において孔隙面積が占める面積の比例を集中に測量して、当該比例において15個の平均値を孔隙率として取る。
8、薬剤溶出機器の基体に表面亜鉛含有保護層を被覆する被覆率の評価方法
この評価方法は、顕微鏡により、その見かけに基づいて評価を行う。
【0087】
以下には、30008(公称圧力で拡張すると、外径が3mm、長さが8mm、)、40008(公称圧力で拡張すると、外径が4mm、長さが8mm)及び60008(公称圧力で拡張すると、外径が6mm、長さが8mm)という規格とされる薬剤溶出スタンドを例に挙げ、上記した薬剤溶出機器及びその製作方法を詳しく説明する。
【0088】
実施例1
PDLLAとシロリムスとの混合溶液を配合して製造し、PDLLAとシロリムスとは、それらの濃度が共に6mg/mLであり、溶媒がアセトンであり、当該混合溶液を30008という規格のスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁に塗布し、乾燥してから基体における外壁、側壁及び内壁を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体は、その材料が純鉄である。
【0089】
当該ロットのスタンドにおけるシロリムスの含有量が2.0μg/mmであるということが測定されてきた。多孔質のナイロンの材料からなる芯棒に、スタンドにおける基体の内壁を通り抜かせてから、当該芯棒に、エタノールを十分に吸着させ、エタノールを十分に吸着すると、当該芯棒が拡張して薬剤コーティング層における内壁に位置する部分と2minだけ接触する。次に、当該芯棒を取り出して、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0090】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドについて、最終的なシロリムスの含有量が1.5μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べると、スタンドにおける薬量が25%だけ少なくなるということが測定されてきた。また、薬剤コーティング層は、その厚さが5μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分の薬剤含有量が、外壁に位置する部分の薬剤含有量よりも小さい。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分の孔隙率が35%として測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから二ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドの質量が25%だけ損失され、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が50%だけ損失されるということが分かる。
【0091】
実施例2
PDLLAとシロリムスとの混合溶液を配合して製造し、PDLLAとシロリムスとは、それらの濃度が、それぞれ、4mg/mL及び6mg/mLであり、溶媒がアセトンである。当該混合溶液を、30008という規格とされるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁を塗布し、乾燥を行ってから、基体の外壁、側壁及び内壁を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体は、材料が純鉄である。
【0092】
当該ロットのスタンドには、シロリムスの含有量が2.5μg/mmであることが測定されてきた。多孔質のナイロンの材料を、円柱の形状とされる芯棒の表面に被覆して、当該芯棒に、スタンドにおける基体の内壁を通り抜かせてから、多孔質のナイロンの材料にエタノールを十分に吸着させ、エタノールを十分に吸着すると、当該多孔質のナイロンの材料が拡張して薬剤コーティング層における内壁に位置する部分と10minだけ接触する。次に、当該芯棒を取り出して、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0093】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドについて、最終的なシロリムスの含有量が1.5μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べると、スタンドにおける薬量が40%だけ少なくなるということが測定されてきた。薬剤コーティング層は、その厚さが5μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分に薬剤が含まれないということが測定されてきた。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分の孔隙率が55%であるということが測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから1.5ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンド質量が20%だけ損失され、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が50%だけ損失されるということが分かる。
【0094】
実施例3
PDLLAとシロリムスとの混合溶液を配合して製造し、PDLLAとシロリムスとは、それらの濃度が共に、3mg/mL及び6mg/mLであり、溶媒がアセトンであり、当該混合溶液を、30008という規格とされるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁に塗布して、乾燥してから、基体における外壁、側壁及び内壁を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体はその材料が純鉄である。また、基体に亜鉛含有保護層を設け、亜鉛含有保護層により、基体における外壁の一部、側壁以及び内壁の全体を覆い、亜鉛含有保護層の被覆率が90%であり、亜鉛含有保護層は、その材料が純亜鉛である。薬剤コーティング層は、亜鉛含有保護層の表面を覆う。
【0095】
当該ロットのスタンドにおけるシロリムスの含有量が2.0μg/mmであるということが測定されてきた。多孔質のポリスチレンの材料を、ステンレスの芯棒の表面に被覆し、当該芯棒に、スタンドにおける基体の内壁を通り抜かせて、多孔質のポリスチレンの材料に、エタノールを十分に吸着させ、エタノールを十分に吸着すると、当該多孔質のポリスチレンの材料が拡張して薬剤コーティング層における内壁に位置する部分と2minだけ接触する。次に、当該芯棒を通り出して、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0096】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドについて、最終的なシロリムスの含有量が1.5μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べると、スタンドにおける薬量が25%だけ少なくなるということが測定されてきた。薬剤コーティング層は、その厚さが4μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分の薬剤含有量が外壁のほうよりも少ない。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分は、その孔隙率が45%として測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから二ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドが腐食し始まるばかりであり、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が40%だけ損失される。
【0097】
実施例4
濃度が4mg/mLのPLLAと濃度が5mg/mLのシロリムスとの混合溶液を配合して製造し、溶媒がテトラヒドロフランであり、当該混合溶液を、30008という規格とされるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁に塗布し、乾燥してから、基体を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体は、その材料が、カーボン含有量が2.11wt.%以下である鉄基合金であり、基体に亜鉛含有保護層を設け、亜鉛含有保護層により、基体の側壁のみを覆うが内壁の表面全体を覆い、外壁を覆わず、基体における亜鉛含有保護層の被覆率が70%であり、亜鉛含有保護層は、その材料が純亜鉛である。薬剤コーティング層は、亜鉛含有保護層の表面を覆う。
【0098】
当該ロットのスタンドは、そのシロリムスの含有量が5μg/mmであるということが測定されてきた。多孔質のポリスチレンの材料を、ステンレスの芯棒の表面に被覆し、当該芯棒に、スタンドにおける基体の内壁を通り抜かせて、多孔質のポリスチレンの材料に、メタノールを十分に吸着させ、メタノールを十分に吸着すると、当該多孔質のポリスチレンの材料が拡張して薬剤コーティング層における内壁に位置する部分と10sだけ接触する。次に、当該芯棒を取り出して、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0099】
当該ロットのスタンドを取り、測量当該ロットのスタンドについて、最終的なシロリムスの含有量が4.5μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べると、スタンドにおける薬量が10%だけ少なくなるということが測定されてきた。薬剤コーティング層は、その厚さが8μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分の薬剤含有量は、外壁に位置する部分の薬剤含有量よりも少ない。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分は、その孔隙率が15%として測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから2.5ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドが腐食し始まるばかりであり、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が50%だけ損失される。
【0100】
実施例5
濃度が6mg/mLのPLGAと濃度が10mg/mLのシロリムスとの混合溶液を配合して製造し、溶媒が酢酸エチルであり、当該混合溶液を、均一に40008という規格とされるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁にスプレー塗装し、乾燥してから、基体を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体は、その材料が、カーボン含有量が2.11wt.%以下である鉄基合金であり、基体に、亜鉛含有保護層を設け、亜鉛含有保護層により、基体における外壁、側壁及び内壁を覆い、亜鉛含有保護層は、基体における被覆率が100%であり、薬剤コーティング層は、亜鉛含有保護層の表面を覆うと共に、基体における外壁、側壁及び内壁を同時に覆う。亜鉛含有保護層は、その材料が純亜鉛である。
【0101】
当該ロットのスタンドは、シロリムスの含有量が10μg/mmであるということが測定されてきた。アセトニトリルを付けたスポンジ棒を、基体の内壁に回転するように走行し、基体の内壁を均一に拭うということを繰り返して行い、アセトニトリルを付けたスポンジ棒がスタンドの内壁と接触する時間が20minであり、アセトニトリルを付けたスポンジ棒に、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分のシロリムスを吸着させ、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0102】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドについて、最終的なシロリムスの含有量が6μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べるとスタンドにおける薬量が40%だけ少なくなるということが測定されてきた。薬剤コーティング層は、厚さが15μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分に、薬剤を含まない。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分は、その孔隙率が60%として測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから二ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドが腐食し始まらず、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が65%だけ損失される。
【0103】
実施例6
濃度が6mg/mLの結晶性PLLAと、濃度が0.5mg/mLのパクリタキセルとの混合溶液を配合して製造し、溶媒がトリクロロメタンであり、当該混合溶液を、直径が30008という規格であるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁に均一にスプレー塗装し、乾燥してから、基体における外壁、側壁及び内壁を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体は、その材料が純鉄である。基体に亜鉛含有保護層を設け、亜鉛含有保護層により、基体における内壁全体を覆うが側壁の一部を覆い、亜鉛含有保護層は、基体における被覆率が60%であり、亜鉛含有保護層は、その材料が純亜鉛である。薬剤コーティング層は、亜鉛含有保護層の表面を覆う。
【0104】
当該ロットのスタンドは、パクリタキセルの含有量が1μg/mmであるということが測定されてきた。酢酸エチルを付けた無塵布と基体の内壁とを接触させ、接触の時間を8minとする。酢酸エチルに、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の薬剤を吸着させ、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0105】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドについて、最終的なパクリタキセルの含有量が0.95μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べると、スタンドにおける薬量が5%だけ少なくなるということが測定されてきた。薬剤コーティング層は、厚さが10μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分の薬剤含有量は、外壁に位置する部分の薬剤含有量よりも少ない。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分は、その孔隙率が5%として測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから二ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドが腐食し始まるばかりであり、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が65%だけ損失される。
【0106】
実施例7
濃度が4mg/mLのPLGA与濃度が4mg/mLのシロリムス誘導体との混合溶液を配合して製造し、溶媒が酢酸エチルであり、当該混合溶液を、直径が30008という規格であるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁に均一にスプレー塗装し、乾燥してから、基体における外壁、側壁及び内壁を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体は、その材料が純鉄である。
【0107】
当該ロットのスタンドは、シロリムス誘導体の含有量が0.8μg/mmであるということが測定されてきた。イソプロピルアルコールを付けたポリプロピレンの不織布と基体の内壁とを接触させ、接触時間を5minとする。イソプロパノールに、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の薬剤を吸着させ、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0108】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドについて、最終的なシロリムス誘導体の含有量が0.5μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べると、スタンドにおける薬量が38%だけ少なくなるということが測定されてきた。薬剤コーティング層は、その厚さが2μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分に薬剤を含まない。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分は、その孔隙率が50%として測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから一ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドの質量が15%だけ損失され、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が40%だけ損失される。
【0109】
実施例8
濃度が5mg/mLの結晶性PLLA溶液、5mg/mLのPLLA及び1mg/mLのシロリムスの混合溶液を配合して製造し、溶媒がトリクロロメタンであり、PLLA溶液を、直径が60008という規格であるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁に均一にスプレー塗装し、乾燥してから、基体における外壁、側壁及び内壁を被覆する底層コーティング層を形成する。次に、PLLAとシロリムスとの混合溶液を、スタンドの表面に均一にスプレー塗装して、薬剤を載置するコーティング層を形成し、当該薬剤を載置するコーティング層により、底層を覆う。ただし、基体は、その材料が純鉄である。基体に、亜鉛含有保護層を設けると共に、亜鉛層により、基体における外壁、側壁及び内壁の表面を同時に覆い、亜鉛含有保護層は、基体における被覆率が100%であり、亜鉛含有保護層は、その材料が純亜鉛である。薬剤コーティング層は、亜鉛含有保護層の表面を覆う。
【0110】
当該ロットのスタンドは、シロリムスの含有量が4μg/mmであるということが測定されてきた。アセトニトリルを付けたポリプロピレンの不織布と基体の内壁とを接触させ、接触時間を15minとする。アセトニトリルに、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分の薬剤を吸着させ、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0111】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドについて、最終的なシロリムスの含有量が3.2μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べると、スタンドにおける薬量が20%だけ少なくなるということが測定されてきた。薬剤コーティング層はその厚さが20μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分の薬剤含有量は、外壁に位置する部分の薬剤含有量よりも小さい。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分は、その孔隙率が10%として測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから2.5ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドが腐食し始まるばかりであり、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が70%だけ損失される。
【0112】
実施例9
濃度が3mg/mLのPLGAと、5mg/mLのシロリムスとの混合溶液を、溶媒は酢酸エチルを配合して製造し、当該混合溶液を、30008という規格とされるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁に均一にスプレー塗装し、乾燥してから、基体を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体は、その材料が、カーボン含有量が2.11wt.%以下である鉄基合金であり、基体に、亜鉛含有保護層を設け、亜鉛含有保護層により、基体における大部分の内壁の表面のみを覆い、亜鉛含有保護層は、基体における被覆率が20%であり、亜鉛含有保護層は、その材料が純亜鉛である。薬剤コーティング層は、亜鉛含有保護層の表面を覆う。
【0113】
当該ロットのスタンドは、シロリムスの含有量が4μg/mmであるということが測定されてきた。プロパノールを付けたスポンジ棒を、基体の内壁に回転して走行し、基体の内壁を均一に拭うということを繰り返して行い、プロパノールを付けたスポンジ棒がスタンドの内壁と接触する時間が15minであり、プロパノールを付けたスポンジ棒に、薬剤コーティング層における内壁に位置する部分のシロリムスを吸着させ、当該スタンドを十分に乾燥させる。
【0114】
当該ロットのスタンドを取り、測量当該ロットのスタンドについて、最終的なシロリムスの含有量が2μg/mmであり、溶媒を吸着する前に比べると、スタンドにおける薬量が50%だけ少なくなるということが測定されてきた。薬剤コーティング層は、その厚さが7μmとして測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分の薬剤含有量は、外壁に位置する部分の薬剤含有量よりも小さい。薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分は、その孔隙率が60%として測定されてきた。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから一ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドが腐食し始まるばかりであり、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が50%だけ損失される。
【0115】
対比例1
濃度がそれぞれ6mg/mLであるPDLLAとシロリムスとの混合溶液を配合して製造し、溶媒がアセトンであり、当該混合溶液を、30008という規格とされるスタンドにおける基体の外壁及び側壁に塗布し、乾燥してから、基体における外壁及び側壁にのみ被覆する薬剤コーティング層を形成し、薬剤コーティング層により基体の内壁を被覆しない。ただし、基体は、その材料が純鉄である。
【0116】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドにおけるシロリムスが1.5μg/mmであり、コーティング層の厚さが5μmであるということが測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、基体における外壁及び側壁に、薬剤を含むが内壁に、含まない。剥離の試験により分かるように、当該スタンドを、押すように模倣し、爆発圧まで拡張すると、コーティング層に、明らかな破損や浮き上がりが現れ、大面積のコーティング層が基体から剥離してしまう現象が生じる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから1.5ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドの質量が15%だけ損失され、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が40%だけ損失される。
【0117】
対比例2
濃度がそれぞれ4mg/mL及び6mg/mLであるPDLLAとシロリムスとの混合溶液を配合して製造し、溶媒がアセトンであり、当該混合溶液を、30008という規格とされるスタンドにおける基体の外壁、側壁及び内壁に塗布し、乾燥してから、基体における外壁、側壁及び内壁を被覆する薬剤コーティング層を形成する。ただし、基体は、その材料が純鉄である。
【0118】
当該ロットのスタンドを取り、当該ロットのスタンドにおけるシロリムスが2.5μg/mmであり、コーティング層の厚さが5μmであるということが測定されてきた。ラマンスペクトル機器により試験して表示すると、薬剤コーティング層における基体に位置する内壁の部分薬剤含有量は、外壁に位置する部分の薬剤含有量に比べると、明らか相違がない。剥離試験の結果によると、当該スタンドを、押すように模倣して爆発圧まで拡張しても、コーティング層が完全なものであると分かる。当該ロットに製作された複数のスタンドを、それぞれ、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、時間帯毎にサンプルを取って試験すると、植え込まれてから三ヶ月が経過すると、スタンドが内皮化し尽き、スタンドの質量が28%だけ損失され、植え込まれてから一年が経過すると、スタンドの質量が50%だけ損失される。
【0119】
以上に説明した実施例における各技術的特徴は、任意に組み合わせられてもよく、説明を簡潔にするように、上記した実施例における各技術的特徴についてのあらゆる可能な組み合わせを説明しなかったが、こられの各技術的特徴の組み合わせに矛盾が無ければ、いずれも、本明細書に記載されている範囲に含まれる。
【0120】
以上に説明した実施例は、本発明におけるいくつかの実施形態に過ぎず、その記載を具体的に、詳しく説明したが、それにより、発明の特許範囲が限定されていると理解されるわけではない。指摘するべきところは、当業者にとって、本発明の発想を逸脱しない限り、若干の変形や改良も可能であり、これらは、いずれも、本発明の保護範囲に含まれる。従って、本発明では、特許の保護範囲が、請求項に準ずるべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】