(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体、その製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
C04B 35/119 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
C04B35/119
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537059
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2019115243
(87)【国際公開番号】W WO2021012448
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】201910670185.X
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512045836
【氏名又は名称】南充三環電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANCHONG THREE-CIRCLE ELECTRONICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Airport Industrial Zone Gaoping District Nanchong, Sichuan 637100 (CN)
(71)【出願人】
【識別番号】512045825
【氏名又は名称】潮州三環(集団)股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHAOZHOU THREE-CIRCLE (GROUP) CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】黄雪雲
(72)【発明者】
【氏名】江楠
(57)【要約】
本発明は、ジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体であって、質量百分率で、ジルコニウム含有化合物(含有量がジルコニアとして表示される)0.01~20%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0~1.75%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.01~0.8%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0~0.035%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.05%、及び残部のアルミナを含む、焼結体である。本発明は、融剤含有量を減少させることにより、粒界強度及びフォノン伝導速度に対する融剤の影響を低下させ、ZrO2の初期粒子径及び分散均一性を制御することにより、ZrO2で溶解を促進させAl2O3基体の緻密化を達成し、アルミナセラミック基体の機械的強度及び熱伝導率を向上させる。また、本発明は、上記焼結体を含むアルミナ基板及びその製造方法を公開した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率で、ジルコニウム含有化合物(含有量がジルコニアとして表示される)0.01~20%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0~1.75%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.01~0.8%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0~0.035%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.05%、及び残部のアルミナを含む、ことを特徴とする、ジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体。
【請求項2】
質量百分率で、ジルコニウム含有化合物(含有量がジルコニアとして表示される)5~15%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0.3~1%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.04~0.8%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0.01~0.03%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.03%、及び残部のアルミナを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体。
【請求項3】
質量百分率で、ジルコニウム含有化合物(含有量がジルコニアとして表示される)5~10%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0.3~0.8%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.4~0.6%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0.01~0.03%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.03%、及び残部のアルミナを含む、ことを特徴とする、請求項2に記載のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体。
【請求項4】
前記ジルコニウム含有化合物の平均粒子径D50がアルミナの平均粒子径D50の(0.1~1.5)倍である、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体。
【請求項5】
アルミナの平均粒子径D50が0.8~3μmであり、最大粒子径の範囲が4~10μmである、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体。
【請求項6】
アルミナの平均粒子径D50が1.3~2.5μmであり、最大粒子径の範囲が4~7μmである、ことを特徴とする、請求項5に記載のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体。
【請求項7】
ジルコニアの平均粒子径D50が0.2~1.5μmであり、最大粒子径の範囲が1.0~2.5μmである、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体。
【請求項8】
ジルコニアの平均粒子径D50が0.4~0.8μmであり、最大粒子径の範囲が1.2~1.8μmである、ことを特徴とする、請求項7に記載のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体を含む、アルミナ基板。
【請求項10】
請求項9に記載のアルミナ基板の製造方法であって、
原料粉体を粉砕し、原料粉体におけるアルミナ以外の粉体を一部のアルミナと事前分散する工程(1)と、
工程(1)で事前分散された粉体を低温焼成した後、再び破砕し、その後、残りのアルミナ粉体を添加し、さらに混合分散して、原料粉体の分散混合を完成させる工程(2)と、
工程(2)で分散混合された原料粉体を有機接着剤、分散剤と混合する工程(3)と、
スラリー脱泡、熟化を行う工程(4)と、
コーティング成形を行う工程(5)と、
焼結して前記アルミナ基板を得る工程(6)と、
を含む、ことを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナセラミック焼結体、特に、ジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体、その製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、高温セラミック焼結体、並びに当該セラミック焼結体を使用した基板に関するものであり、当該セラミック焼結体は、高反射率LEDセラミック基板、パワーモジュール基板のようなパワーデバイスパッケージ用基板に適用してもよく、DCBやAMBプロセスを採用した金属-セラミックス結合金属化基板に適用してもよい。本発明は、アルミナ複合セラミックスの性能向上の技術分野に属する。
【0003】
発明特許文献1(出願番号CN201080015347.3)には、焼結体に含まれるジルコニア粉体の重量の上限が30wt%であり、かつ正方晶系ジルコニアの割合が80%以上であり、酸化マグネシウムの含有量が0.05~0.5wt%であるようにすることにより、従来のアルミナのみを含有するセラミック基板よりも明らかに基板の機械的強度を向上させ、放熱効果を改善することができると開示されている。特許文献2(出願番号CN201380056024.2)には、アルミナセラミック基体に2~15wt%ジルコニアと0.01~1wt%酸化イットリウムとを添加し、そしてアルミナの粒子径が2~8μmとなるように制御することにより、セラミックスの機械的強度の向上の目的を達成し、金属層とセラミック層の厚みを低下させ、金属-セラミックス-基材の熱伝導効率をさらに向上させることができると開示されている。特許文献3(出願番号DE102004012231)には、アルミナセラミック基体に2~9wt%ジルコニアと0.04~1wt%酸化イットリウムと0.04~1wt%酸化カルシウムとを添加することにより、セラミックスの機械的強度の向上の目的を達成し、金属層とセラミック層の厚みを低下させ、金属-セラミックス-基材の熱伝導効率をさらに向上させることができると開示されている。
【0004】
特許文献1、3には、SiO2、MgOを融剤相として添加することにより、セラミック焼結体の緻密化程度を促進したが、焼結体が緻密化した後、当該融剤相(特にSiO2)がアルミナとジルコニアとの結晶粒界で濃化して、粒界強度を低下させ、その結果、焼結体の機械的強度が最適値となることができない。また、融剤の添加によりセラミック焼結体の結晶粒の間の不均一性がさらに高くなり、フォノン伝導速度が低下し、その結果、熱伝導率が逆に低下する傾向にある。特許文献2には、アルミナの粒子径が2~8μmとなるように制御され、当該結晶粒径でジルコニアの粒子径が0.7~2.5μmであり、アルミナの結晶粒径が大きいため、結晶粒界の数が低下するとともに、バルク気孔等の欠陥サイズも増大し、その結果、セラミック基体の強度が低くなり、そして、アルミナの結晶粒径が大きく、結晶粒界でのジルコニアの結晶粒径が大きい、又は結晶粒の凝集程度が大きいため、正方晶ジルコニアの安定性が不足で、その結果、セラミック基体の破壊過程でのジルコニアの相転移強化(Phase transformation toughening)効果が低下し、基体の機械的強度が最適値となることができない。
【発明の概要】
【0005】
以上を鑑みると、本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を克服し、比較的に高い機械的強度及び熱伝導率性能を備えるジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体を提供することにある。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に採用されている技術案は、質量百分率で、ジルコニウム含有化合物(含有量がジルコニアとして表示される)0.01~20%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0~1.75%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.01~0.8%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0~0.035%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.05%、及び残部のアルミナを含む、ジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体である。
【0007】
機械的強度について、正方晶ジルコニアは、アルミナの結晶粒の中に存在し、焼結体の破壊過程においてクラックがジルコニアの結晶粒界まで進展すると、ジルコニアは相転移が生じ(正方晶が単斜晶へと変化する)、クラックでのポテンシャルエネルギーを吸収することにより、クラックの進展を抑制し、かつ、ジルコニアの添加量の増加と伴い、相転移によるクラック進展が抑制され、機械的強度をさらに向上させる。本発明の技術方案では、ジルコニアの含有量が同じである場合、SiO2、MgO、CaOの添加量を低減することにより、結晶粒界での融剤の濃度が低下し、粒界強度をさらに向上させ、その結果、同じジルコニア添加量の場合でのセラミック焼結体の機械的強度がさらに向上する。
【0008】
熱伝導率について、ジルコニアの添加と伴い、複合セラミック焼結体の熱伝導率が低下する傾向にあり、その理由は、非金属材質の熱伝導がフォノン(即ち、結晶中における格子振動)により伝導され、格子間隔の一致性が良ければ良いほどフォノン伝導速度が高くなり、ジルコニアとアルミナとの格子間隔が一致しないため、ジルコニアの添加により、フォノン伝導速度が低下し、そして熱伝導率も低下する。一方、ジルコニアの添加量が同じである場合、MgO、CaO、SiO2の添加量の低下と伴い、複合セラミック焼結体の熱伝導率が上昇する傾向にあり、その理由は、焼結体における融剤がほとんど全部アルミナ又はジルコニアの結晶粒界に濃化し、当該濃化相の格子間隔は主結晶相と明らかに異なるので、フォノン伝導速度が低下することになり、よって、濃化相の含有量を低減させることにより、焼結体の熱伝導率の向上効果を達成できるためである。
【0009】
結合強度について、銅張基板の結合機構は、主に、金属銅が融点に近い温度で基体表面のAl-OH結合と反応し、Al-O-Cu結合を形成することにより、結合効果を達成することにあり、Zr-OH結合も同じように金属銅と結合することができ、少量のZr-O-Cu結合は、結合強度に補助作用を有するが、ZrO2含有量のさらなる増加と伴い、Al-O-CuとZr-O-Cuとの結合強度に相違があるため、結合強度が低下する傾向にある。
【0010】
絶縁強度について、絶縁強度は、基板の両側をブレークダウン(導通)する臨界電圧を基体の厚みで除したものとして定義される。金属の場合は、内部に存在する自由電子が電流となり、アルミナ結晶の場合は、内部に自由電子が存在しないため、カチオンをキャリアとして転移させなければならず、そしてカチオンの半径が小さいほど、転移速度が速くなる(例えば、試料にNa粒子が存在すると、絶縁強度が低下する)。アルミナ基体は、主に、結晶間の酸素ボイドをキャリアとして移動させ(Al3+転移)電流が形成されるため、酸素ボイドの移動速度を決定する要因は、主に、結晶粒径(粒界の数であり、Al3+が粒界間に転移する難易度が高い)、融剤における不純物の含有量(マグネシウム、カルシウムであれば、原子半径が小さいため転移速度が速く、ケイ酸化カルシウムガラス相には、粒界の限制がなく、転移速度が増加する)及びジルコニアの含有量(ジルコニウムの原子半径がより大きいため、Al3+よりも移動速度が遅い)であり、これらの要因は、いずれも絶縁強度に影響を及ぼす。
【0011】
好ましくは、前記ジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体は、質量百分率で、ジルコニウム含有化合物(含有量がジルコニアとして表示される)5~15%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0.3~1%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.04~0.8%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0.01~0.03%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.03%、及び残部のアルミナを含む。
【0012】
より好ましくは、前記ジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体は、質量百分率で、ジルコニウム含有化合物(含有量がジルコニアとして表示される)5~10%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0.3~0.8%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.4~0.6%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0.01~0.03%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.03%、及び残部のアルミナを含む。
【0013】
本発明は、SiO2、MgO、CaOの添加量を低減させることにより、Al2O3結晶粒界の一致性をよりよく向上させることができ、アルミナの粒界強度及び熱伝導率を向上させる。本発明のZTAセラミック焼結体は、アルミナ及びジルコニアの結晶粒界が交差して分布するため、互いの結晶粒径を制限する優れた効果を達成する。
好ましくは、前記マグネシウム含有化合物は、マグネシウムアルミニウムスピネルである。
好ましくは、前記ジルコニウム含有化合物の平均粒子径D50は、アルミナの平均粒子径D50の(0.1~1.5)倍である。ジルコニアとアルミナとの平均粒子径に相違が大きすぎると、焼結体における異なる物質の結晶相に比較的に大きい隙間が生じ、その製品の機械的強度が低下してしまう。
好ましくは、前記アルミナの平均粒子径D50は0.8~3μmであり、最大粒子径の範囲は4~10μmである。
より好ましくは、前記アルミナの平均粒子径D50は1.3~2.5μmであり、最大粒子径の範囲は4~7μmである。
好ましくは、前記ジルコニアの平均粒子径D50は0.2~1.5μmであり、最大粒子径の範囲は1.0~2.5μmである。
より好ましくは、前記ジルコニアの平均粒子径D50は0.4~0.8μmであり、最大粒子径の範囲は1.2~1.8μmである。
【0014】
本発明の焼結体において、ZrO2の初期粒子径及び分散均一性を制御することにより、ZrO2で溶解を促進させAl2O3基体の緻密化を達成し、オンサイト溶解促進効果を達成する。この技術によれば、アルミナセラミック基体の機械的強度及び熱伝導率をさらに向上させることができ、焼結体におけるAl2O3の平均粒子径及び最大粒子径を小さくすることにより、基体におけるAl2O3結晶粒界の数を増加し、気孔サイズを減らすと共に、ZrO2基体中の分散程度をさらに向上させ、ZrO2基体中の相転移強化効果を向上させ、セラミック基体の機械的強度をさらに向上させる。
【0015】
そして、本発明は、前記ジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体を含むアルミナ基板をさらに提供する。
好ましくは、本発明は、銅張基板用のセラミック基板を提供する。
より好ましくは、本発明は、DBC銅張用のアルミナ基板を提供する。
また、本発明は、さらに、
原料粉体を粉砕し、原料粉体におけるアルミナ以外の粉体を一部のアルミナと事前分散する工程(1)と、
工程(1)で事前分散された粉体を低温焼成した後、再び破砕し、その後、残りのアルミナ粉体を添加し、さらに混合分散して、原料粉体の分散混合を完成する工程(2)と、
工程(2)で分散混合された原料粉体を有機接着剤、分散剤と混合する工程(3)と、
スラリー脱泡、熟化を行う工程(4)と、
コーティング成形を行う工程(5)と、
焼結して前記アルミナ基板を得る工程(6)と、
を含む、前記アルミナ基板の製造方法を提供する。
【0016】
本発明に係るアルミナ基板において、ジルコニアとアルミナとの粉体の比重に相違が存在することを考慮すると、2ステップ法を採用してジルコニアーアルミナ複合セラミック基板における原料粉体を分散し、即ち、まずジルコニア粉を一部のアルミナ粉体と分散し、低温焼成した後、その時のZTA仮焼結体においてZrO2粉体とAl2O3粉体との間に一定の結合力を形成し、その後、ZTA仮焼結体を再びアルミナ粉体に分散し、当該方法によりZrO2のZTAにおける分散効果をより良く向上させることができ、それにより、ZrO2の溶解促進効果をより良く達成し、SiO2、MgO、CaOの添加量を減少させることができる。
好ましくは、前記工程(1)、(2)において、事前分散と混合分散のパラメータは、分散時間:30~45h、粉体粒度制御範囲:D50≦0.8μmである。
好ましくは、前記工程(2)において、低温焼成のパラメータは、焼結温度>1300℃、保温時間が1~3hであり、破碎のパラメータは、ボールミリング時間:20~40h、粒度制御範囲:D50≦0.6μmである。
好ましくは、前記工程(3)において、原料粉体と分散剤との混合のパラメータは、分散時間:30~45h、粒度制御範囲:D50≦0.6μm、原料粉体と有機接着剤との混合のパラメータは、分散時間:5~15h、ミル後粘度≦1000CPsである。
好ましくは、前記スラリー脱泡、熟化する工程のプロセスのパラメータは、(1)スラリー脱泡:脱泡圧力:-0.05~-0.1MPa、撹拌速度:10~30Hz、スラリー温度:15~35℃、スラリー粘度:1000~7000Cps、(2)ZTA粉体と接着剤との配合:熟化時間:5~24h、撹拌速度:0~3Hz、スラリー温度:25~30℃、スラリー粘度:1000~7000Cpsである。
好ましくは、前記コーティング成形プロセスのパラメータは、コーティング速度:0.7~3m/s、第1室温度:15~50℃、第2室温度:40~70℃、第3室温度:65~110℃、第1室風速:0.2~1.5m/s、第2室風速:0.8~5m/s、第3室風速:0.5~5m/sである。
好ましくは、前記焼結プロセスのパラメータは、測定シート温度:1400~1570℃、保温時間:0.5~4hである。
また、本発明は、さらに、
銅箔を適切なサイズに切断する工程(1)と、
銅箔表面の結合活性を向上させるように銅箔表面を予備酸化する工程(2)と、
表面のOH基の活性を向上させるようにアルミナの基板表面を洗浄し、化学処理を施す工程(3)と、
銅片を基板の表面に置き、還元雰囲気炉(炉内温度が銅の融点付近に制御される)により、金属銅と基体層の表面とを結合させる第1の面の銅張工程(4)と、
基板の他の面に処理された銅箔を置き、還元雰囲気炉(炉内温度が第1回の銅張温度よりもやや低い)により、金属銅と基体層の第2の面とを結合させる第2の面の銅張工程(5)と、
を含む、前記アルミナ基板の銅張プロセスを開示する。
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、以下の通りである。
本発明のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体において、融剤の含有量を低減させる(MgO<500ppm、CaO≦350ppm、SiO2<8000ppm)ことにより、粒界強度及びフォノン伝導速度に対する融剤の影響を軽減し、そしてZrO2の初期粒子径及び分散均一性を制御することにより、ZrO2で溶解を促進させAl2O3基体の緻密化を達成し、オンサイト溶解促進効果を達成し、アルミナセラミック基体の機械的強度及び熱伝導率をさらに向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るZTA仮焼結体のSEM図である。
【
図2】本発明に係る実施例22のZTA焼結体のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、実施形態及び利点をさらに説明するために、以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。
本発明は、実施例1~15を設け、実施例1~15と比較例1に記載された焼結体の各成分及び含有量(含有量の単位WT%)は、表1に示されている。
【表1】
【0019】
具体的な製造方法は、以下の工程を含む。
工程(1):
図1に示すように、原料粉体を粉砕し、原料粉体におけるアルミナ以外の粉体を一部のアルミナと事前分散を施す。
工程(2):工程(1)で事前分散された粉体を低温焼成した後、
図2に示すように、再び破砕し、その後、残りのアルミナ粉体を添加し、さらに混合分散して、原料粉体の分散混合工程を完成させる。ここで、事前分散及び混合分散のパラメータは、分散時間:30~45h、粉体粒度制御範囲:D50≦0.8μmであり、低温焼成のパラメータは、焼結温度範囲:1300℃~1400℃、保温時間:1~3hであり、破砕のパラメータは、ボールミル時間:20~40h、粒度制御範囲:D50≦0.6μmである。
工程(3):工程(2)で分散混合された原料粉体を有機接着剤、分散剤と混合する。ここで、原料粉体と分散剤との混合パラメータは、分散時間:30~45h、粒度制御範囲:D50≦0.6μmであり、原料粉体と有機接着剤との混合パラメータは、分散時間:5~15h、ミル後粘度≦1000CPsである。
工程(4):脱泡圧力:-0.05~-0.1MPa、撹拌速度:10~30Hz、スラリー温度:15~35℃、スラリー粘度:1000~7000Cpsという条件でスラリー脱泡し、熟化時間:5~24h、撹拌速度:0~3Hz、スラリー温度制御範囲:25~30℃、スラリー粘度制御範囲:1000~7000Cpsという条件でZTA粉体を接着剤と混合するスラリー脱泡・熟化工程を行う。
工程(5):コーティング速度:0.7~3m/s、第1室温度:15~50℃、第2室温度:40~70℃、第3室温度:65~110℃、第1室風速:0.2~1.5m/s、第2室風速:0.8~5m/s、第3室風速:0.5~5m/sという条件でコーティング成形工程を行う。
工程(6):測定シート温度:1400~1570℃、保温時間:0.5~4hという条件で焼結すると前記のアルミナ基板が完成する。
【0020】
各セラミック基板の絶縁強度、熱伝導係数、曲げ強度をそれぞれ測定した(各組において測定値の最小値を記録し、試料焼結温度が1450℃であった)。
【0021】
なお、絶縁強度の測定方法としては、中国国家規格GB/T 18791-2002における測定方法に準拠して、実験試料を変圧器オイルに入れ、それに直流又は交流電圧を印加し、そして実験試料がブレークダウンされて絶縁性能を失うまで徐々に測定電圧を増加させ、試料の絶縁強度を確認してもよい。
【0022】
熱伝導係数の測定方法としては、中国国家規格GB/T 5598-2015における測定方法に準拠して、試料を直径d=10mmの円形シートにし、試料と同じ厚みを有する標準試料を短時間の間隔内でレーザーフラッシュ熱拡散係数測定装置により試料の熱拡散係数α及び比熱容量Cpを測定し、アルキメデス法により試料の体積と密度を測定し、そして、熱伝導係数式λ=α・Cp・ρから試料の熱伝導係数を算出してもよい。
【0023】
曲げ強度の測定方法としては、レーザーで試料をl=40mm、b=24mmの長方形シートにスクライビングし、ケガキ線の深さを試料厚みの35~50%の間に制御し、マイクロメータを採用して各試料の厚みhを測定し、そして、ケガキ線を有する側面を電子万能試験機に置いて、スパンL=30mm、ロールバー直径d=3mm、上ロールバー降下速度v=0.5mm/minという条件で、試料の臨界曲げ力Fを測定し、強度算出式δ=3FL/2bh
2により、試料の強度の結果を算出してもよい。
測定結果は、表2に示す。
【表2】
【0024】
図1から明らかなように、ZTA仮焼結体においてジルコニア及びアルミナが均一に分散され、かつ、この両方の平均粒子径D50が合理的に制御されている。図にマークされた二箇所のアルミナの粒子径は、それぞれ588nm及び784nmであり、マークされた二箇所のジルコニアの粒子径は、それぞれ417nm及び708nmであった。
【0025】
表2から明らかなように、ジルコニアの含有量の添加/増加により、基板の曲げ強度が大幅に向上された一方、その熱伝導性能が低下した。また、実施例17~20から明らかなように、ジルコニアの含有量が同じ場合、SiO2、MgO、CaOの添加量を削減することにより、結晶粒界での融剤の濃度が下げ、粒界強度がさらに向上し、フォノン伝導速度を低下させることができる。言い換えると、ジルコニアの添加量が同じ場合、SiO2、MgO、CaOの添加量を削減すると、セラミック焼結体の機械的強度の向上及び熱伝導率の向上を両立できる。さらに、表2から明らかなように、ジルコニアの含有量が低すぎると、基板の強度が低くなり、高すぎると、熱伝導係数が低下する。曲げ強度と熱伝導係数がよくマッチングする場合のみ、銅張基板の要求を同時に満足することができる。一般的に、曲げ強度が500MPa以上であることと、熱伝導係数が27W/m・K以上であることとを同時に確保できると、銅張セラミック基板のような複数の応用シーンの要求をさらに満足することができる。そのため、本発明において、「ジルコニウム含有化合物(含有量はジルコニアとして表示される)5~10%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0.3~0.8%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.4~0.6%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0.01~0.03%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.03%、残部がアルミナである」という配合が好ましい。
【0026】
また、実施例16の実験過程での配合組成を参照して、アルミナ及びジルコニア粉体の研磨と分散により、アルミナの粒子径分布及びジルコニアの粒子径分布を制御する。それ以外、上述のプロセス及び測定方法を参照した。実験において、成型後の基板の粒子径を制御しにくいため、ここで、初期値及び最終値が含まれていない。具体的なデータを表3に示す。
【0027】
【0028】
表3から明らかなように、アルミナの平均粒子径が1.40μm程度に制御される場合、ジルコニアの平均粒子径が0.4~0.7μmの範囲内に制御すれば(ジルコニアの結晶粒径が低すぎる又は高すぎると、曲げ強度に悪影響を及ぼすことがある)、基板の曲げ強度を適切に向上させることができる。
【0029】
なお、
図2は実施例22のアルミナ焼結体のSEM図である。
図2に示すように、ジルコニア及びアルミナが均一に分散され、その粒子サイズの詳細は
図2における二箇所のアルミナの粒子径のマークで示されるように、それぞれ1.35μm及び888nmである。
上記アルミナ基板に対して銅張工程を行う具体的な方法は、以下の通りである
【0030】
(1)銅箔を適切なサイズに切断する
【0031】
(2)銅箔表面の結合活性を向上させるように銅箔表面を予備酸化する
【0032】
(3)表面のOH基の活性を向上させるようにアルミナ基板の表面を洗浄し、化学処理を施す
【0033】
(4)片面の銅張:銅片を基板の表面に置き、還元雰囲気炉(炉内温度が銅の融点付近に制御される)により、金属銅と基体層の表面とを結合させる
【0034】
(5)反対側の面の銅張:基板の反対側の面に処理された銅箔を置き、還元雰囲気炉(炉内温度が第1回の銅張温度よりもやや低い)により、金属銅と基体層の反対側の面を結合させる。
銅張後の基板の接合強度及び温度安定性を測定し、測定結果を表3に示す。具体的な測定方法は、以下の通りである
【0035】
(1)銅板とアルミナ-ジルコニア複合基板との接合性評価
銅板とアルミナ基板との接合性は、剥離強度測定により評価された。測定方法は、以下の通りである。クランプでアルミナ基板と接合する銅線パターンの一部である幅5mmのパターンの端部を剥離し、当該接合基板を引張試験機のテーブルに固定し、上記パターンの端部を剥離試験機のチャックにセットした。この際に、アルミナ基板の表面と剥離した上記銅線パターンとの角度が90°(垂直方向)となるように設置された。その後、引張試験機が作動し、チャックを介して剥離した上記パターンを上方向に引き伸ばし、移動させ、この際の最大剥離負荷を測定した。当該最大剥離負荷を幅(0.5cm)で割り、得られた値を接合強度とした
【0036】
(2)アルミナ-ジルコニア複合DBC基板の温度安定性の評価
作製されたZTA配線基板に対して耐熱サイクル試験を繰り返す。ここで、ー55℃で15分間、150℃で15分間を1サイクルとして、間隔時間を10s未満とする。5サイクルごとに、超音波探傷器により金属層とセラミック基体層との接合情况を測定し、接合層縁部で2mm以上のデラミネーションを確認した場合、DBC基板の信頼性が失われたと判定した。
【0037】
【0038】
表4から明らかなように、比較例と比べ、本発明においてジルコニアの添加により、銅張セラミック基板の接合強度が向上できるが、ジルコニア含有量のさらなる増加と伴い、その接合強度がまたある程度の低下を示した。そのため、本発明の焼結体においては、「ジルコニウム含有化合物(含有量がジルコニアとして表示される)5~10%、イットリウム含有化合物(含有量が酸化イットリウムとして表示される)0.3~0.8%、ケイ素含有化合物(含有量がシリカとして表示される)0.4~0.6%、カルシウム含有化合物(含有量が酸化カルシウムとして表示される)0.01~0.03%、マグネシウム含有化合物(含有量が酸化マグネシウムとして表示される)0~0.03%、残部がアルミナである」という配合が好ましい。
【0039】
なお、以上の実施例は、本発明の実施形態を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものではなく、好適な実施例を参照しながら本発明を詳しく説明したが、当業者であれば、本発明の実施形態に対して、本発明の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱せずに、修正又は変更が可能であると理解できる。
【国際調査報告】