(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】人工弁のための送達カテーテル及び送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20220215BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61F2/24
A61M25/00 600
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537763
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2019127067
(87)【国際公開番号】W WO2020135262
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811612802.2
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516127259
【氏名又は名称】シャンハイ マイクロポート カーディオフロー メドテック シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI MICROPORT CARDIOFLOW MEDTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】501 Newton Road, Z.J. Hi-Tech Park, Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シューウェン
(72)【発明者】
【氏名】メイ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】グイ,バオジュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオミン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユー
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097CC08
4C097MM10
4C097SB10
4C267AA05
4C267AA15
4C267BB13
4C267BB27
4C267BB30
4C267CC19
(57)【要約】
人工弁送達カテーテルおよび人工弁送達デバイス。送達カテーテル(1)は、外側シースアセンブリ及び内側シースアセンブリを備える。外側シースアセンブリは、人工弁(3)を収容することができる鞘管(12)と、鞘管(12)の一方の端部に固定して接続された外側シース(13)とを含む。内側シースアセンブリは、内側シース(15)と、内側シース(15)に固定して接続されたアンカ(14)とを含む。内側シースアセンブリは、外側シースアセンブリの内腔に配置され、鞘管(12)及びアンカ(14)は、鞘管(12)とアンカ(14)とが円周方向に位置決め係合されるように構成されている。この構造により、アンカ(14)及び鞘管(12)は、内側シース(15)の回転によって円周方向に回転し、自己弁輪に対する人工弁(3)の整合を調整するように駆動することができ、外側シース(13)は、軸方向に動いて人工弁(3)を解放するように、鞘管(12)を駆動することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シースアセンブリ及び内側シースアセンブリを備える人工弁送達カテーテルであって、前記外側シースアセンブリは、人工弁(3)を収容することができる鞘管(12)と、前記鞘管(12)の一方の端部に固定して接続された外側シース(13)とを備え、前記内側シースアセンブリは、内側シース(15)と、前記内側シース(15)に固定して接続されたアンカ(14)とを備え、前記内側シースアセンブリは、前記外側シースアセンブリの内腔に配置され、前記鞘管(12)及び前記アンカ(14)は、前記鞘管(12)と前記アンカ(14)とが円周方向に位置決め係合されるように構成されている、人工弁送達カテーテル。
【請求項2】
前記鞘管(12)の内壁と前記アンカ(14)の外壁とは嵌合式構造である、請求項1に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項3】
前記鞘管(12)の前記内壁に突起又は凹部が設けられ、前記アンカ(14)の前記外壁には、前記鞘管(12)の前記内壁の前記突起又は前記凹部に対して相補形の凹部又は突起が設けられる、請求項2に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項4】
前記アンカ(14)の外壁は、少なくとも一つの嵌入部(141)を備え、前記嵌入部(141)と前記鞘管(12)との間に生成される摩擦は、前記人工弁(3)と前記鞘管(12)との間に生成される摩擦より大きい、請求項1に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項5】
前記嵌入部(141)と前記鞘管(12)との間の静止摩擦係数は、0.1~1.5の範囲である、請求項4に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項6】
前記嵌入部(141)は、第1の細片ユニット(1411)及び第2の細片ユニット(1412)を備え、前記第1の細片ユニット(1411)と前記第2の細片ユニット(1412)との間に、第1のばね(1421)及び第2のばね(1422)が接続される、請求項4又は5に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項7】
引き糸(142)をさらに備え、前記引き糸(142)は、前記第1及び第2の細片ユニット(1411、1412)が前記第1又は第2のばね(1421、1422)との接合部に配置され、前記内側シース(15)から引き出される、請求項6に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項8】
前記第1及び第2の細片ユニット(1411、1412)は、前記アンカ(14)の前記外壁に軸対称に配置される、請求項7に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項9】
前記鞘管(12)は、軸受け又は弾性材料によって前記外側シース(13)に接続される、請求項1に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項10】
前記外側シース(13)は、ポリマー管又は複合金属ポリマー管である、請求項1に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項11】
前記内側シース(15)は、単一の内腔を有する管又は複数の内腔を有する管である、請求項1に記載の人工弁送達カテーテル。
【請求項12】
ハンドル(2)と、請求項1から11のいずれか一項に記載の送達カテーテルとを備える人工弁送達デバイスであって、前記送達カテーテルは、前記ハンドル(2)に結合され、前記ハンドル(2)は、外側シース作動部材(21)及び内側シース作動部材(22)を備え、前記外側シース作動部材(21)は、前記外側シース(13)の軸方向運動を作動させるように前記外側シース(13)に結合され、前記内側シース作動部材(22)は、前記内側シース(15)の円周方向回転を作動させるように前記内側シース(15)に結合される、人工弁送達デバイス。
【請求項13】
引き糸(142)をさらに備え、前記引き糸(142)は、前記ハンドル(2)に固定して接続される、請求項12に記載の人工弁送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の分野に関し、より詳細には人工弁送達カテーテル及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
社会経済の発展及び人口の高齢化に伴い、心臓弁膜症の罹病率が著しく増大してきた。研究によれば、75歳以上の高齢者における心臓弁膜症の罹病率が13.3%に到達したことが分かっている。現在、従来の外科的治療は、深刻な弁膜症を患っている患者にとって依然として第1の選択肢である。しかしこれは、高齢であり、複数の臓器疾患、開胸手術歴、及び心機能低下のある患者にとって外科的リスク及び死亡率が高く、一部の患者にとっては不適当ですらあることを意味する。経カテーテル心臓弁置換は、開胸心臓手術を必要としないこと、外傷が少ないこと、及び患者の回復が速いことを含む多種多様な利点のため、専門家及び学術研究者から広い関心を集めてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
心臓弁置換は、人工弁の精密な解放を必要とする。患者の解剖学的組織は非常に複雑であるため、そのようなプロテーゼは、様々な不規則な形状で設計されることが多い。たとえば、標的の解剖学的組織内に人工弁をぴったりと固定することを可能にするために、プロテーゼ内のステントは、D字形の多角形又は別の形状を有するように設計することができる。そのような断面が不規則な人工弁を標的の解剖学的組織内へ精密に解放するには、人工弁の角度調整が可能な送達デバイスが必要である。しかし、大腿動脈及び静脈を含む送達経路が直線ではなく、送達デバイスの最終的な構成が共平面ではないため、従来の送達システムにおいて、円周方向に回転すること及び常に構成を維持することの両方を可能にすることは不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来の送達システムに付随する上記の問題を考慮して、本発明の目的は、不規則な断面形状を有する人工弁の精密な解放を可能にする新規な人工弁送達カテーテル及びデバイスを提供することである。
【0005】
本発明の一態様によれば、外側シースアセンブリ及び内側シースアセンブリを備える人工弁送達カテーテルが提供され、外側シースアセンブリは、人工弁を収容することができる鞘管と、鞘管の一方の端部に固定して接続された外側シースとを備え、内側シースアセンブリは、内側シースと、内側シースに固定して接続されたアンカとを備え、内側シースアセンブリは、外側シースアセンブリの内腔に配置され、鞘管及びアンカは、鞘管とアンカとの間に円周方向指標の適合を形成する。
【0006】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、鞘管の内壁は、アンカの外壁に係合するように構成することができる。
【0007】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、鞘管の内壁に突起又は凹部を設けることができ、アンカの外壁には、鞘管の内壁の突起又は凹部に対して相補形の凹部又は突起を設けることができる。
【0008】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、アンカの外壁に少なくとも一つの嵌入部を設けることができ、嵌入部と鞘管との間に生成される摩擦は、人工弁と鞘管との間に生成される摩擦より大きい。
【0009】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、嵌入部と鞘管との間の静止摩擦係数は、0.1~1.5の範囲とすることができる。
【0010】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、嵌入部は、第1の細片ユニット及び第2の細片ユニットを備えることができ、第1の細片ユニットと第2の細片ユニットとの間に、第1のばね及び第2のばねが接続される。
【0011】
加えて、人工弁送達カテーテルは、引き糸をさらに備えることができ、引き糸は、第1及び第2の細片ユニット並びに第1又は第2のばねの接合部に配置され、内側シースから引き出される。
【0012】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、第1及び第2の細片ユニットは、アンカの外壁の軸に対して対称に配置することができる。
【0013】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、鞘管は、軸受け又は弾性材料によって外側シースに接続することができる。
【0014】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、外側シースは、ポリマー管又は複合金属ポリマー管とすることができる。
【0015】
加えて、人工弁送達カテーテルにおいて、内側シースは、単一の内腔を有する管又は複数の内腔を有する管とすることができる。
【0016】
本発明の別の態様によれば、ハンドルと、ハンドルに結合された上記の送達カテーテルとを備える人工弁送達デバイスが提供され、ハンドルは、外側シース作動部材及び内側シース作動部材を備え、外側シース作動部材は、外側シースの軸方向運動を作動させるように外側シースに結合され、内側シース作動部材は、内側シースの円周方向回転を作動させるように内側シースに結合される。
【0017】
加えて、人工弁送達デバイスは、ハンドルに固定して接続された引き糸をさらに備えることができる。
【0018】
従来技術と比較すると、本発明の人工弁送達カテーテルにおいて、鞘管とアンカとの間の円周方向指標の適合により、鞘管及びアンカは、位置決めの必要に応じて3次元構成を保持するように、内側シースの円周方向回転とともに回転して、人工弁と自己弁輪との間の位置合わせを調整することが可能になる。調整が完了した後、鞘管は、人工弁の解放の必要に応じて軸方向に動くように、外側シースによって駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態による人工弁送達カテーテルの構造概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による案内先端部及び内側シースアセンブリの構成を示す構造概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による人工弁送達デバイスの構造概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるハンドルの構造概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるアンカに係合している鞘管の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による鞘管及びアンカに設けられたそれぞれの相補形の凹部に係合している突起を示す構造概略図である。
【
図7】鞘管がアンカにどのように係合されるかを示す
図6の一部分の拡大図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるアンカの外壁の嵌入部を示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による嵌入部の構造概略図である。
【
図10】本発明の一実施形態による引き糸を締めた結果として互いから分離された鞘管及びアンカを示す概略図である。
【
図11】鞘管及びアンカが互いからどのように分離されるかを示す
図10の一部分の拡大図である。
【
図12】本発明の一実施形態による引き糸を緩めた結果として互いにロックされた鞘管及びアンカを示す概略図である。
【
図13】鞘管及びアンカが互いにどのようにロックされるかを示す
図12の一部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の上記その他の特徴、態様、及び目的は、本発明の特定の実施形態の以下の詳細な説明から、より容易に明らかになる。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態による人工弁送達カテーテルは、外側シースアセンブリ及び内側シースアセンブリを含む。外側シースアセンブリは、人工弁3を収容することができる鞘管12と、鞘管12の一方の端部に固定して接続された外側シース13とを含む。内側シースアセンブリは、内側シース15と、内側シース15に固定して接続されたアンカ14とを含む。内側シースアセンブリは、外側シースアセンブリの内腔に配置される。
【0022】
図1~
図2に示すように、本発明による人工弁送達カテーテルは、内側シース15に接続された案内先端部11をさらに含むことができる。好ましくは、案内先端部11は、流線型の外形を有し、それにより案内先端部が血管の内壁を引っ掻くことを回避することができ、送達カテーテル全体が血管を通って前進することを案内するのを助けることができる。
【0023】
本発明の実施では、鞘管12から外側シース13への固定の接続は、送達カテーテルの外面が概して平滑に見えるような平滑な遷移によって実現することができる。鞘管12は、外側シース13の外径以上の外径を有することができる。鞘管12の外径と外側シース13の外径との間に差がある場合、それら2つの外面に隆起、凹部、段差などがないように、鞘管12と外側シース13との間の接続を近位へ均一に先細りさせることができる。外側シース13は、人工弁3の装着又は解放に必要とされる場合、鞘管12の軸方向運動を駆動するように構成することができる。
【0024】
鞘管12とアンカ14との間には、円周方向の位置決めフィットが形成される。内側シース15は、アンカ14の円周方向運動を駆動することができ、それにより、所望される場合、鞘管12を円周方向に動かすことができる。
【0025】
具体的な実施では、内側シース15が案内先端部11にも結合されているため、案内先端部11もまた内側シース15とともに動くのに対して、外側シース13は依然として静止したままであり、それにより、送達カテーテルによる位置決めに必要とされる3次元構成を維持する。
【0026】
図3に示すように、本発明の一実施形態による人工弁送達デバイスは、ハンドル2と、ハンドル2に結合された送達カテーテル1とを含む。本発明の実施では、送達カテーテル1への動きが遠位運動と定義され、ハンドル2への動きが近位運動と定義される。
【0027】
図4に示すように、ハンドル2は、外側シース作動部材21及び内側シース作動部材22を備えることができる。外側シース作動部材21は、外側シース13の軸方向運動を作動させるように外側シース13に結合することができ、内側シース作動部材22は、内側シース15の円周方向回転を作動させるように内側シース15に結合することができる。
【0028】
具体的な実施では、ハンドル2は、軸受けを動かし、したがって内側シース作動部材22の円周方向回転をもたらすように駆動することができる。その結果、内側シース15が回転し、それによりアンカ14及び鞘管12を内側シース15とともに回転させることができ、それによって人工弁3を自己弁輪に調整及び位置合わせすることができる。その後、ハンドル2は、軸受けを動かして、外側シース作動部材21の軸方向運動を引き起こすように駆動することができる。その結果、外側シース13は、外側シース13とともに内側シース15に対して軸方向に動くように鞘管12を駆動し、それにより人工弁3の装着及び解放を可能にする。
【0029】
任意選択で、本発明の実施形態では、ハンドルは、電気的に又は手動で駆動することができる。
【0030】
本発明の実施形態では、鞘管12とアンカ14との間の円周方向の位置決めフィットは、以下の方法のいずれかによって実現することができる。
【0031】
1.
図5に示すように、鞘管12の内壁とアンカ14の外壁とは嵌合式構造であり、それによりアンカ14に対する鞘管12の円周方向の不動化を可能にする。具体的には、
図6~
図7に示すように、鞘管12の内壁に突起又は凹部(C)を設けることができ、アンカ14の外壁には、鞘管12の内壁の突起又は凹部に対して相補形の対応する凹部又は突起を設けることができる。
【0032】
任意選択で、鞘管12の内壁及びアンカ14の外壁の突起及び凹部は、正方形、三角形、円形、不規則な形、又は他の形状を有することができる。加えて、一つ以上のそのような突起と、それに対応する一つ以上のそのような凹部とを設けることができる。
【0033】
任意選択で、複数の突起及び凹部が設けられる場合、これらの突起及び凹部は、同じ形状又は異なる形状のいずれでもよく、アンカ14の外壁及び鞘管12の内壁に円周方向に均一に分散させても分散させなくてもよい。好ましくは、複数の突起及び凹部は、アンカ14の外壁及び鞘管12の内壁に、円周方向に均一に分散される。
【0034】
本発明の実施形態によれば、鞘管12が相対的に小さい壁厚さを有することを考慮すると、鞘管12及びアンカ14のいずれかが突起及び凹部のいずれかを備えることができるが、鞘管12の内壁に突起が設けられることが好ましい。
【0035】
2.
図8に示すように、アンカ14の外壁に少なくとも一つの嵌入部141が配置され、嵌入部141は鞘管12に対して摩擦力を有し、この摩擦力は、人工弁3と鞘管12との間の摩擦力より大きく、したがってアンカ14と鞘管12との間に生成される摩擦力は、弁を解放又は再捕捉する力より大きい。この摩擦力によって、鞘管12及びアンカ14は、互いとともに回転することができる。
【0036】
具体的には、アンカ14の外壁に、高摩擦係数材料の一つ以上の区分を埋め込むことができ、これらの区分の外径は、鞘管12への摩擦に基づくロック及び鞘管12からのロック解除の必要に応じて変動することができる。
【0037】
好ましくは、人工弁送達デバイスにおいて、嵌入部141と鞘管12との間の静止摩擦係数は、0.1~1.5の範囲である。
【0038】
さらに、
図9に示すように、嵌入部141は、第1の細片ユニット1411及び第2の細片ユニット1412を含むことができ、第1の細片ユニット1411と第2の細片ユニット1412との間に、第1のばね1421及び第2のばね1422が接続される。
【0039】
さらに、
図10に示すように、引き糸142をさらに含むことができ、引き糸142は、第1の細片ユニット1411及び第2の細片ユニット1412並びに第1又は第2のばね1421,1422の接合部に配置される。加えて、引き糸142は、内側シース15を通って引き出して、ハンドル2に結ぶことができる。
【0040】
好ましくは、引き糸142は、単一又は複数の撚り線からなることができる。引き糸142の例は、それだけに限定されるものではないが、単一の固体金属ワイア、又は複数の捩られた金属撚り線からなる糸を含むことができる。実施では、引き糸142を軸方向に引っ張って、嵌入部141の外径を変化させることができる。
【0041】
図10~
図11に示すように、引き糸142が締められたとき、第1のばね1421(又は第2のばね1422)を圧縮して、嵌入部141の第1の細片ユニット1411及び第2の細片ユニット1412を互いに近づけることができる。その結果、アンカ14を鞘管12から分離することができ、アンカ14は鞘管12から独立して動くことができる。
図12~
図13に示すように、引き糸142が緩められたとき、嵌入部141の第1の細片ユニット1411及び第2の細片ユニット1412は、外方へ動いて鞘管12に当接することができる。その結果、アンカ14及び鞘管12は、嵌入部141からの摩擦に基づくロックによって、ともに回転することが可能になる。
【0042】
好ましくは、人工弁送達デバイスにおいて、第1の細片ユニット1411及び第2の細片ユニット1412は、アンカ14の外壁の軸に対して対称に配置される。これにより、引き糸142をすべての嵌入部に単一の側で接続することが容易になる。
【0043】
任意選択で、鞘管12は、軸受け又は弾性材料によって外側シース13に接続することができる。弾性材料の例は、それだけに限定されるものではないが、シリコーン材料、PU材料、Pebaxナイロンエラストマ(エンジニアリングポリマー)などを含むことができる。好ましくは、鞘管12は、軸受けによって外側シース13に接続することができ、それにより鞘管12と外側シース13との間の自由な円周方向回転が可能になる。別法として、鞘管12は、ばね又は弾性材料によって外側シース13に接続することができる。この場合、鞘管12と外側シース13との間の円周方向回転は、ばね又は弾性材料の特性に依存する角度限界の範囲内でのみ可能になる。
【0044】
本発明の実施形態によれば、ハンドル2を操作して、軸受け、したがって外側シース作動部材21の軸方向運動を駆動することができ、それにより内側シース15に対する外側シース13、したがって鞘管12の軸方向運動が引き起こされ、したがって人工弁3の装着及び解放が可能になる。加えて、ハンドル2を操作して、軸受け、したがって内側シース作動部材22の円周方向回転を駆動することもでき、それにより、内側シース15の回転によって、アンカ14及び鞘管12を互いとともに回転させる。このようにして、人工弁3を解放する角度の調整を実現することができ、それによって人工弁3を精密に解放することが可能になる。
【0045】
任意選択で、外側シース13は、ポリマー管又は複合金属ポリマー管など、制御可能な屈曲する管とすることができる。実施では、外側シース13は、その内面に金属構造が配置されたポリマー管とすることができる。外側シース13は、少なくとも一つの金属ワイアとともに埋め込むことができ、異なる金属ワイアを引っ張ることによって、外側シース13の屈曲角度、位置、及び方向を制御する。好ましくは、制御される屈曲の精度を改善するために、制御可能な屈曲する管に複数の金属ワイアが埋め込まれる。
【0046】
任意選択で、内側シース15は、単一の内腔を有する管又は複数の内腔を有する管とすることができる。好ましくは、引き糸142に加えてガイドワイアも内側シース15に通されることが意図されることから、内側シース15は複数の内腔を有する管である。この場合、複数の内腔を有する管は、引き糸142及びガイドワイアが互いに影響を及ぼすことなくそれぞれ意図した機能を実行することができるように、引き糸142及びガイドワイアに対して別個のチャネルを提供することができる。
【0047】
本発明の実施形態によれば、人工弁を装着するプロセスは、アンカ14が露出されるように鞘管12の前端がアンカ14の後ろに位置するまでハンドル2を操作することによって、鞘管12を後退させることと、自己膨張性の人工弁3をアンカ14に取り付けることと、人工弁3を安定化させた後、人工弁3が鞘管12内に完全に収容され、その前端が案内先端部11に当接するまで、外側シース13を前方へ動かすこととを伴うことができる。
【0048】
本発明の実施形態によれば、人工弁を送達するプロセスは、患者の体になされた穿刺を介して、ガイドワイアを通って人工弁送達デバイス全体を患者の体内へ導入することと、大腿静脈及び心房中隔を通過して患部自己弁輪へつながる経路を通って、折り畳まれた人工弁3を有する鞘管12を送達することとを伴うことができる。
【0049】
本発明の実施形態によれば、人工弁を解放するプロセスは、外側シース13を通る屈曲を制御し、調整を完了したとき、外側シース13が不動化されることと、ハンドル2を操作することによって内側シース15を円周方向に回転させ、したがってアンカ14及び鞘管12が、内側シース15の回転によって互いとともに回転し、それによって人工弁3と自己弁輪との間の相対位置を調整し、自己弁輪に対する人工弁3の良好な適合を確実にすることと、人工弁3が所望の角度位置へ円周方向に調整された後、人工弁3が送達デバイスから完全に取り外されて所定の位置へ解放されるまで、ハンドル2を操作することによって、外側シース13、したがって鞘管12を軸方向に近位へ動かすこととを伴うことができる。
【0050】
好ましくは、本発明の実施形態では、内側シース15を円周方向に回転させることによって、追加の位置決め調整を可能にするために、任意の所望の時点で人工弁3の解放を中断することができる。これにより、人工弁3のリアルタイムの位置合わせ及び精密な解放が容易になる。
【0051】
要約すると、本発明の実施形態によれば、鞘管12は、アンカ14が静止したままであると同時に、外側シース13の作動を受けて軸方向に動きながら、外側シース13が静止したままであると同時に、内側シース15の作動を受けてアンカ14とともに円周方向に回転することができる。これは、鞘管12が軸方向運動から独立してアンカ14とともに円周方向に動くこと、及び円周方向運動から独立して外側シース13の作動を受けて軸方向に動くことを可能にするのに有利である。
【0052】
本発明の実施形態によれば、外側シースが屈曲を所望どおり制御する全体的な構成で送達デバイスが維持されているとき、人工弁の円周方向運動が可能になり、したがって人工弁が不規則な断面形状を有する場合でも、人工弁の精密な解放が可能になる。
【0053】
本発明の根本的な原理、主な特徴、及び利点について上記に提示及び説明したが、本発明は、上記で開示した実施形態に限定されるものではなく、上記の実施形態は、上記の説明とともに本発明の原理を説明する働きをし、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を本発明に加えることができることが、当業者には理解されよう。したがって、そのような変更及び修正もすべて、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される本発明の範囲に入ることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1:送達カテーテル、2:ハンドル、3:人工弁、11:案内先端部、12:鞘管、13:外側シース、14:アンカ、15:内側シース、21:外側シース作動部材、22:内側シース作動部材、141:嵌入部、1411:第1の細片ユニット、1412:第2の細片ユニット、1421:第1のばね、1422:第2のばね、142:引き糸。
【国際調査報告】