(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】改善された音の減衰のための嵌込み多重窓ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20220215BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20220215BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B32B17/06
B32B17/10
C03C27/12 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537850
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 US2019068236
(87)【国際公開番号】W WO2020139798
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520341935
【氏名又は名称】ピッツバーグ グラス ワークス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】ウリジオ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ランプマン デウィット
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AG00D
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK04C
4F100AK04E
4F100AK23C
4F100AK23E
4F100AK42C
4F100AK42E
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4F100AR00A
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4F100YY00E
4G061AA11
4G061BA02
4G061CB18
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
モノリシック及び2重透明体設計のコインシデンス周波数にわたって音響減衰を増加させるように定められている標準的な2重透明体積層体窓ガラスと同様の公称重量を有する本発明による多重透明体窓ガラスを作製するための処理は、振動エネルギーを熱にさらに変換させる多段減衰を使用する。本発明は、同じ公称厚さを有する少なくとも3つの透明体層と、音の透過を減衰させるための2つ以上の段を含む対称窓ガラス積層体、及び、少なくとも3つの透明体層と、音の透過を減衰させるための2つ以上の段を含む非対称窓ガラス積層体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ公称厚さを有する少なくとも3つの透明体層と、音の透過を減衰させるための2つ以上の段を含む対称窓ガラス積層体であって、
第1の透明体層と、第2の透明体層と、粘弾性材料の第1の中間層と、第3の透明体層と、粘弾性材料の第2の中間層を含み、
第1の透明体層は、第1の表面と、第1の透明体層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第1の透明体層の第1の表面および第2の表面は、第1の透明体の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、
第2の透明体層は、第1の表面と、第2の透明体層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第2の透明体層の第1の表面および第2の表面は、第2の透明体層の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、
第1の中間層は、音の振動による機械的エネルギーを熱エネルギーに散逸させることが可能であり、第1の表面と、第1の中間層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第1の中間層の第1の表面は、第1の透明体層の第2の表面に対向し、第1の中間層の第2の表面は、第2の透明体層の第1の表面に対向し、第1の中間層の第1の表面および第2の表面は、第1の中間層の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、
第3の透明体層は、第1の表面と、第3の透明体層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第3の透明体層の第1の表面および第2の表面は、第3の透明体層の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、
第2の中間層は、音の振動による機械的エネルギーを熱エネルギーに散逸させることが可能であり、第1の表面と、第2の中間層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第2の中間層の第1の表面は、第2の透明体層の第2の表面に対向し、第2の中間層の第2の表面は、第3の透明体層の第1の表面に対向し、第2の中間層の第1の表面および第2の表面は、第2の中間層の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、それにより、第1の中間層および第2の中間層は、第1の透明体層に衝撃を与える音圧波によって引き起こされる対称窓ガラス積層体の振動を減衰させる、対称窓ガラス積層体。
【請求項2】
前記対称窓ガラス積層体の音の透過損失が、1,500~5,000Hzの周波数範囲にわたって、前記対称窓ガラス積層体の単位面積当たりの重量よりも大きい単位面積当たりの重量を有する2重対称窓ガラス積層体の音の透過損失よりも大きい、請求項1に記載の対称窓ガラス。
【請求項3】
第1の透明体層、第2の透明体層、および第3の透明体層の各々は、1.4ミリメートル以下の公称厚さを有する、請求項2に記載の対称窓ガラス。
【請求項4】
第1の透明体層、第2の透明体層、および第3の透明体層の各々は、1.2ミリメートル以下の公称厚さを有する、請求項2に記載の対称窓ガラス。
【請求項5】
第1の透明体層、第2の透明体層、および第3の透明体層の各々は、0.7ミリメートル以下の公称厚さを有する、請求項2に記載の対称窓ガラス。
【請求項6】
第1の中間層の粘弾性材料および第2の中間層の粘弾性材料は、ポリマー材料である、請求項1に記載の対称窓ガラス。
【請求項7】
第1の中間層の粘弾性材料および第2の中間層の粘弾性材料は、エチレンビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリエタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびこれらの組合せを含む群から選択される、請求項6に記載の対称窓ガラス。
【請求項8】
第1の中間層および第2の中間層は、音響PVBからなる、請求項1に記載の対称窓ガラス。
【請求項9】
第1の中間層および第2の中間層の各々は、0.38mm~1.52mmの範囲内の公称厚さを有する、請求項2に記載の対称窓ガラス。
【請求項10】
第1の中間層および第2の中間層の各々は、0.71mm~0.81mmの範囲内の公称厚さを有する、請求項2に記載の対称窓ガラス。
【請求項11】
第1の中間層および第2の中間層の各々は、0.76ミリメートルを超えない公称厚さを有する、請求項2に記載の対称窓ガラス。
【請求項12】
前記対称窓ガラスの単位面積当たりの重量は、1.379パウンド/平方フィート(6.73キログラム/平方メートル)である、請求項2に記載の対称窓ガラス。
【請求項13】
少なくとも3つの透明体層と、音の透過を減衰させるための2つ以上の段を含む非対称窓ガラス積層体であって、
第1の透明体層と、第2の透明体層と、粘弾性材料の第1の中間層と、第3の透明体層と、粘弾性材料の第2の中間層を含み、
第1の透明体層は、第1の表面と、第1の透明体層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第1の透明体層の第1の表面および第2の表面は、第1の透明体の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、
第2の透明体層は、第1の表面と、第2の透明体層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第2の透明体層の第1の表面および第2の表面は、第2の透明体層の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、
第1の中間層は、音の振動による機械的エネルギーを熱エネルギーに散逸させることが可能であり、第1の表面と、第1の中間層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第1の中間層の第1の表面は、第1の透明体層の第2の表面に対向し、第1の中間層の第2の表面は、第2の透明体層の第1の表面に対向し、第1の中間層の第1の表面および第2の表面は、第1の中間層の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、
第3の透明体層は、第1の表面と、第3の透明体層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第3の透明体層の第1の表面および第2の表面は、第3の透明体層の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、第1の透明体層の公称厚さは、第2の透明体層の公称厚さよりも厚く、かつ、第3の透明体層の公称厚さよりも厚く、
第2の中間層は、音の振動による機械的エネルギーを熱エネルギーに散逸させることが可能であり、第1の表面と、第2の中間層の第1の表面と反対側に配置された第2の表面を有し、第2の中間層の第1の表面は、第2の透明体層の第2の表面に対向し、第2の中間層の第2の表面は、第3の透明体層の第1の表面に対向し、第2の中間層の第1の表面および第2の表面は、第2の中間層の第1の表面および第2の表面の各々に直交する向きの厚さ寸法だけ分離され、それにより、第1の中間層および第2の中間層は、第1の透明体層に衝撃を与える音圧波によって引き起こされる非対称窓ガラス積層体の振動を減衰させる、非対称窓ガラス積層体。
【請求項14】
前記非対称窓ガラス積層体の音の透過損失は、1,500~5,000Hzの周波数範囲にわたって、前記非対称窓ガラス積層体の単位面積当たりの重量よりも大きい単位面積当たりの重量を有する2重対称窓ガラス積層体の音の透過損失よりも大きい、請求項13に記載の非対称窓ガラス。
【請求項15】
第1の透明体層の公称厚さは、2.1mmであり、第2の透明体層および第3の透明体層の公称厚さの各々は、1.2ミリメートル以下の公称厚さを有する、請求項14に記載の非対称窓ガラス。
【請求項16】
第1の透明体層の公称厚さは、1.8mmであり、第2の透明体層および第3の透明体層の公称厚さの各々は、1.2ミリメートル以下の公称厚さを有する、請求項14に記載の非対称窓ガラス。
【請求項17】
第1の透明体層の公称厚さは、1.6mmであり、第2の透明体層の公称厚さは、1.4mmであり、第3の透明体層の公称厚さは、1.2mmである、請求項14に記載の非対称窓ガラス。
【請求項18】
第1の中間層の粘弾性材料および第2の中間層の粘弾性材料は、ポリマー材料である、請求項13に記載の非対称窓ガラス。
【請求項19】
第1の中間層の粘弾性材料および第2の中間層の粘弾性材料は、エチレンビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリエタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびこれらの組合せを含む群から選択される、請求項13に記載の非対称窓ガラス。
【請求項20】
第1の中間層および第2の中間層は、音響PVBで構成される、請求項13に記載の非対称窓ガラス。
【請求項21】
第1の中間層および第2の中間層の各々は、0.38mm~1.52mmの範囲内の公称厚さを有する、請求項14に記載の非対称窓ガラス。
【請求項22】
第1の中間層および第2の中間層の各々は、0.71mm~0.81mmの範囲内の公称厚さを有する、請求項14に記載の非対称窓ガラス。
【請求項23】
第1の中間層および第2の中間層の各々は、0.76ミリメートルを超えない公称厚さを有する、請求項14に記載の非対称窓ガラス。
【請求項24】
前記非対称窓ガラスの単位面積当たりの重量は、1.379パウンド/平方フィート(6.73キログラム/平方メートル)である、請求項14に記載の非対称窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2018年12月28日に出願された米国仮特許出願第62/785,858号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願で開示される発明は、自動車適用例の使用に適した窓ガラス(グレージング、glazing)に関する。
【背景技術】
【0003】
〔先行技術の説明〕
長年にわたり、自動車は、加熱処理を使用して、2つのガラスシートまたは他の透明材料を、2つの透明体層の間に位置する光透過性ポリマー材料のシートと結合させる、窓ガラスを用いてきた。典型的には、ガラスはフロートガラスであるが、一部の事例では、化学的に焼戻しされたガラスも使用されている。特許文献1に実施例が示されている。ポリマー材料は、概して、ポリビニルブチラール(PVB)およびエチレンビニルアセテート(EVA)を含む材料の群から選択されてきた。
【0004】
最近では、自動車の燃費効率がますます重要視されてきている。この重要性は、部分的には車両重量の低減を通して対処されてきた。自動車用窓ガラスに関して、かかる重量低減は、窓ガラス積層体(ラミネート)の厚さの減少に焦点を当ててきた。
【0005】
自動車用窓ガラス積層体の厚さの低減には、いくつかの要因に対する注意が必要である。これらの要因の一部は、窓ガラス設計において競合する変数を作り出す。かかる競合する変数の例としては、機械的剛性および安定性、光学歪み、耐擦傷性、光透過率、ならびにその他の費用も挙げられる。かかる考慮事項はすべて、商業的に許容可能な自動車用窓ガラスに合理的に適応する必要がある。
【0006】
先行技術では、ガラスまたは車両用窓ガラス積層体に使用される他の材料の透明体は、概して、同じ厚さのものであった。しかしながら、一部の事例では、特定の性能要件を依然として満たしながら、ガラス層(プライ;ply)のうちの1つだけ厚さを低減するか、または一方のガラス層の厚さを他方のものよりも低減することによって、窓ガラス重量が減少している。1つのガラス層の厚さが、別のガラス層の厚さよりも小さい窓ガラス積層体を、本明細書では「非対称窓ガラス」と称する。他の事例では、窓ガラス重量は、両方の透明体が同じ公称厚さを有するように、両方の透明体の厚さを同等な量だけ低減することによって低減されている。ガラス層が同じ公称厚さを有する窓ガラス積層体を、本明細書では「対称窓ガラス」と称する。
【0007】
自動車用窓ガラスに関して、重量低減の最大の潜在的なメリットは、フロントガラスに関わり、その理由は、フロントガラスが、ほとんどの車両において、最も大きい窓ガラス面積を有するためである。しかしながら、重量低減の利点はまた、フロントガラス以外の窓ガラスを含む車両全体により軽い窓ガラスを使用することによってサポートされる。フロントガラス以外のかかる他の窓ガラスに関して、機械的強度および耐石衝撃性という両立しない考慮事項は、それほど重要ではなく、その理由は、かかる他の窓ガラスが、概して、車両において前向きでないからである。そのため、コストおよびその他の考慮事項は、特に自動車のサイドライト窓ガラスおよびバックライト窓ガラスにおいて、対称窓ガラスの使用をサポートする場合がある。先行技術では、音の減衰(減弱)は、窓ガラスの設計の重要な考慮事項であった。より大きい質量(例えば、より厚い厚さ)を有する窓ガラスは、より多くの音を吸収する傾向があることが知られている。しかしながら、車両の重量低減がますます重要視され、その結果、より軽い(すなわち、それほど重くない)窓ガラスに向かう傾向により、より軽量な自動車用窓ガラスにおいて、音の減衰を減少させる妥協が許されてきた。
【0008】
積層窓ガラスは、それが同等の重量のモノリシックガラスよりも多くの音を吸収することを可能にする「拘束される層効果」を有することが知られている。より具体的には、「拘束される層効果」とは、2つの透明体の間に拘束される中間層による音の減衰を指す。中間層は、PVB(ポリビニルブチラール)などの粘弾性ポリマーからなる。外側の透明体の外表面に衝撃を与える音波は、外側の透明体を通って中間層まで伝播し、ここで、内部にせん断力を作り出す方法で中間層を変形させる。中間層のせん断力のエネルギーの一部が熱に変換される。そのエネルギー変換は、中間層から内側の透明体へ、そして最終的に車両の乗員室へと伝達される振動の機械的エネルギーを低減する。したがって、熱への音エネルギーの変換は、窓ガラスから乗員室へと透過される音響エネルギーを低下させる。一部の事例では、音響的性質が強化された中間層が開発されている。かかる中間層を有する積層窓ガラスは、標準的なポリマー中間層よりも多くの音を吸収する。
【0009】
車両用窓ガラスにおける音の減衰の重要性は、自動車用窓ガラスにおける音の減衰特徴を明らかにして最適化するためのさらなる試みを正当化し、それにより、より十分に情報を得て効率的に実装される窓ガラス設計の選択肢をサポートすることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0094084号
【特許文献2】米国仮特許出願第62/448,657号明細書
【発明の概要】
【0011】
開示される発明によれば、多重透明体積層体窓ガラスは、3つ以上の透明体で構成され、これらの透明体は、ポリマー層を介在させることによって、積層体スタック内で一緒に結合される。多重透明体積層体窓ガラスは、すべて同じ厚さの透明体層を有していてもよいし、様々な厚さの層を有していてもよい。多重透明体積層体窓ガラスは、コインシデンスディップ(coincidence dip)において、2重透明体積層体窓ガラスに見られる音の減衰よりも大きな音の減衰をもたらす。透明体は、多重透明体積層体窓ガラスの単位面積当たりの重量が、コインシデンスディップが生じる2重透明体窓ガラスの単位面積当たりの重量と同等(すなわち、±10%)であるような厚さを有するのがよい。
【0012】
本願で開示される発明の他の利点および特徴は、開示される発明の現在好ましい実施形態が進行するにつれて、関連分野の当業者に明らかになるであろう。
【0013】
開示される本発明の現在好ましい実施形態を、添付図面に関連して示して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】構造をよりよく開示するために部分的に破断された、対称多重パネル窓ガラスの断面の上面側斜視図である。
【
図2】構造をよりよく開示するために部分的に破断された、非対称多重パネル窓ガラスの断面の上面側斜視図である。
【
図3】いくつかの窓ガラス積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図4】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および1.4/1.4/1.4の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図5】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および1.4/1.4/1.4の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図6】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および1.4/1.4/1.4の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図7】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および1.2/1.2/1.2の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図8】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および1.2/1.2/1.2の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図9】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および1.2/1.2/1.2の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図10】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および0.7/0.7/0.7の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図11】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および0.7/0.7/0.7の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図12】2.1/2.1とAC-PVBの積層体および0.7/0.7/0.7の積層体の音の透過損失を、入射音の周波数の関数として表すグラフである。
【
図13】2重透明体窓ガラスと比較して改善された音の減衰特徴を示すグラフである。
【
図14】2重透明体窓ガラスと比較して、
図1に示されるような対称多重透明体窓ガラスの音の減衰を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
2つのガラス層を有する対称および非対称の自動車用窓ガラスにおける音の減衰の重要な態様は、2017年2月28日に公開されかつ特許文献2として出願人によって出願された「軽量のフロントパネル適用例のための実用的なデザインの考察」において論じられており、特許文献2は、その全体が参照により本明細書に具体的に援用される。
【0016】
本願で開示される発明は、特に車両適用例の多重パネル対称窓ガラスに関連する音の減衰に関する。自動車の重量低減の重要性は、より薄い厚さを備えた窓ガラスの使用をサポートする傾向にある。しかしながら、窓ガラス積層体の重量低減は、場合によっては、音の透過率の実質的な予想外の増加をもたらす。
【0017】
本願で開示される発明のいくつかの実施例は、同等の重量の従来技術の窓ガラス積層体と比較して、改善された音響性能を有する窓ガラス積層体を提供する。本願で開示される発明の他の実施例は、より大きな重量の従来技術の窓ガラス積層体と比較して、同等のおよびさらには改善された音響性能の窓ガラス積層体を提供する。例えば、1つの従来技術の窓ガラス積層体は、フロートガラスの2つの層から構成されており、その各々は、2.1mmの公称厚さを有し、0.76mmの厚さを有するPVBの中間層によって一緒に積層されている。従来技術の窓ガラス積層体の別の実施例は、フロートガラスの2つの層から構成されており、その各々は、2.1mmの公称厚さを有し、0.76mmの厚さを有する音響PVBの中間層によって一緒に積層されている。さらに他の実施例では、1.4mmガラスの層が、焼戻し処理によって加熱強化され得る。透明体が、1.4mm未満、例えば0.7mmのガラスである場合、かかるより薄い透明体は、概して、(1.4mm透明体に概して使用されるソーダ石灰ケイ酸塩ガラスとは対照的に)より費用のかかるアルミノケイ酸塩ガラスを使用し、焼戻しではなくイオン交換処理を介して強化される。かかる原材料の使用および処理ステップにより、しばしば、材料および製造コストが著しく高くなる。
【0018】
開示される発明によれば、窓ガラス積層体は、2つ以上の中間層と一緒に結合されている少なくとも3つの透明体層を有する多重透明体窓ガラスを含む。多重透明体窓ガラスの個々の透明体層は、従来技術の窓ガラス積層体の透明体層の厚さよりも薄い厚さを有し、それにより、多重透明体窓ガラスの重量は、従来技術の2重透明体窓ガラスの重量と実質的に等しいか、またはそれよりも軽い。同時に、本願で開示される発明による多重透明体窓ガラスは、改善された音の減衰特徴をもたらす。すなわち、同じ単位面積当たりの重量を有する2重透明体窓ガラスよりも大きい音の減衰を有する多重透明体窓ガラス、および、2重透明体窓ガラスよりも軽い単位面積当たりの重量を有する多重透明体窓ガラスは、同じまたはより大きい程度の音の減衰をもたらす。
【0019】
上述の窓ガラス積層体の実施例を、以下の
図3に示す。
図3は、音の周波数の関数として、いくつかの窓ガラス積層体の音の透過損失を説明している。
図3の線1は、4.9mmの厚さを有するモノリシック透明体の音の減衰を示している。このデータは、約1,500Hz~5,000Hzの周波数範囲における音の減衰の顕著な急落を呈している。1,500~5,000Hzの周波数範囲は、ほとんどの人間の聴覚内の周波数範囲を網羅する。したがって、この範囲での音の減衰の喪失は、車両用窓ガラスにとって特に問題となり得る。
【0020】
図3の線2は、先行技術で知られているような積層窓ガラスの音の減衰を表している。当該窓ガラスは、2つの透明体層からなり、その各々が2.1mmの厚さを有し、かつ0.76mmの厚さを有するPVBの層によって積層処理で一緒に結合されている。線1と同様に、線2は、この2重透明体積層体が、線1のモノリシック透明体と同じ1,500~5,000Hzの範囲にわたって、音の減衰の減少も呈することを示している。
【0021】
図3の線3もまた、2重透明体積層体の音の減衰を表している。線2の積層体と同様に、線3の積層体は、PVBの層によって積層処理で一緒に結合されている2つの2.1mmの透明体を有する。しかしながら、線3の積層体は、PVBが音響PVBであるという点で線2の積層体とは異なる。線3のグラフは、音響PVBが、1,500~5,000Hzの範囲において、線2の2重透明体積層体と比較して、改善された音の減衰を有することを示している。
【0022】
本願で開示される発明の実施例を、
図3の線4および線5で示される多層透明体積層体で表示する。線4の多層透明体積層体は、3つの透明体から構成され、各層は1.2mmの厚さを有する。各透明体層は、0.76mmの厚さの音響PVB層によって隣接する透明体層に結合されている。同様に、線5の多層透明体積層体は、3つの透明体から構成され、各層は1.4mmの厚さを有する。各透明体層は、0.76mmの厚さの音響PVB層によって隣接する透明体層に結合されている。線2および線3の2重透明体積層体と比較して、線4および線5は、1,500~5,000Hz、および5,000Hz超~およそ7,000Hzの範囲全体にわたって、両方の多層透明体積層体の音の減衰が著しく改善されたことを示している。
【0023】
改善された音の減衰特徴をもたらす一方で、本願で開示される多重透明体積層体は、車両用窓ガラスの重量の懸念にも対処する。以下の表1及び表2は、
図3に描かれるものを含む2層透明体および多層透明体の実施例の計算重量を示している。
【表1】
【表2】
【0024】
多重透明体積層体について示される改善された音の減衰にもかかわらず、表1は、
図3における線5の積層体の重量が、線3の2重透明体積層体の重量よりも単位面積当たりの重量が7.18%しか大きくないことを示している。さらに、表1はまた、
図3における線4の積層体の重量が実際には、線3の2重透明体積層体の重量よりも単位面積当たりの重量が6.08%少ないことを示している。
【0025】
2重透明体積層体と多重透明体積層体との間の重量比較のその他の実施例を、
図4~
図12において詳述する。
【0026】
同じ公称厚さの透明体を有する前述の多重透明体積層体は、前向きでない窓ガラスのための車両適用例に好まれ得る対称窓ガラスである。フロントガラスなどの前向きの車両用窓ガラスの適用例では、非対称窓ガラスが好ましい場合がある。非対称多重透明体の適用例では、車両の外面の方の透明体は、他の透明体よりも厚い。非対称多重透明体はまた、建築用窓およびドアなどの透明体のための他の適用例を有し得る。
【0027】
かかる非対称多重透明体窓ガラスの選択された実施例の音の減衰特性を
図13の線グラフで説明する。
【0028】
図13は、2重透明体窓ガラスを線1、線2、および線3で示し、多重透明体窓ガラスを線4および線5で示している。
図3における線4および線5の多重透明体窓ガラスと同様に、
図13における線4および線5の多重透明体窓ガラスは、特に1500~6500Hzの範囲の2重透明体窓ガラスと比較して、改善された音の減衰特徴を示している。しかしながら、
図13は、フロントガラスなどの前向きの窓ガラスに通常使用されるタイプの窓ガラス構成を表している。これらの構成は、透明体が同じ厚さを有するタイプの窓ガラスよりも大きな耐チップ衝撃性を有する。
図13では、線1は、標準的なPVBの層によって積層体に結合された2.1mmの厚さの2つの透明体を有する窓ガラスを表している。線2は、音響PVBの層によって結合された2.3mmの厚さの2つの透明体を有する窓ガラスを表している。線3は、音響PVBの層によって結合された2.1mmの厚さの2つの透明体を有する窓ガラスを表している。非対称多重透明体積層体は、線4および線5で表されている。線4の積層体では、(車両における向きで)最も外側の透明体は、2.1mmの厚さを有し、車両の内部の方に配置された2つの追加の透明体の各々は、1.2mmの厚さを有する。透明体の各々は、音響PVBの層によって、隣接する透明体に結合されている。線4の窓ガラスと同様に、線5の積層体では、(車両における向きで)最も外側の透明体は、1.8mmの厚さを有し、車両の内部の方に配置された2つの他の透明体の各々は、1.2mmの厚さを有する。透明体の各々は、音響PVBの層によって、隣接する透明体に結合されている。
図13における線4および線5の非対称多重透明体積層体は、
図13における線1、線2、および線3の積層体と比較して、4,000~5,000Hzの範囲において約4dBの改善された音の減衰を示している。線1の対称2重透明体積層体と比較して、線4および線5の非対称多重透明体窓ガラスは、3,150Hzで約9dBの改善された音の減衰を示し、4,000Hzで約7.5dBの改善された音の減衰を示した。
【0029】
対称多重透明体積層体窓ガラスのように、本明細書に開示されるような非対称多重透明体積層体窓ガラスは、かかるコインシデンスディップを有しておらず、先行技術で経験するようなコインシデンスディップの問題を効果的に排除する。
【0030】
一部の事例では、非対称多重透明体窓ガラスは、指定された周波数範囲にわたって、対称2重透明体窓ガラスに対する音の減衰の改善を際立たせることが見出されている。かかる非対称多重透明体窓ガラスの実施例を
図13の線6に示す。線6の非対称多重透明体窓ガラスは、1.6mmの厚さの(車両における向きで)最も外側の透明体、1.4mmの厚さの中央の透明体、および1.2mmの厚さの(車両における向きで)最も内側の透明体から構成されている。透明体は、音響PVBの2つの層によって、積層体スタック内で一緒に結合されている。音響PVBの一方の層は、最も外側の透明体と中央の透明体との間に位置し、音響PVBのもう一方の層は、中央の透明体と内側の透明体との間に位置する。
図13に示されるように、線6の窓ガラスは、約5,000~6,000Hzの周波数範囲において、約1.3dBの音の減衰のさらなる改善をもたらす。これは、その範囲における追加の音の減衰を選択的に集中させるのに有用であるが、音の減衰性能が6,300~10,000Hzの周波数範囲においてやや低いため、特定の適用例に限定され得る。
【0031】
従来技術の図は、本願で開示される対称および非対称の多重透明体積層体窓ガラスが、材料の単位面積当たりの重量が増加する窓ガラスに妥協することなしに、2重透明体積層体窓ガラスと同等のまたはそれよりも大きい音の減衰特徴をもたらすことを説明している。一部の事例では、単位面積当たりの重量は、実際に軽くなる。特に、先行技術の積層体窓ガラスは、3,000~8,000Hzの範囲にわたって、音の減衰のコインシデンスディップを有する。本明細書に開示される対称および非対称の多重透明積層窓ガラスは、重量の追加という不利な点を伴わずに、かつ、一部の事例では、重量の低減さえも伴って、3,000~8,000Hzのコインシデンスディップを効果的に除去する。
【0032】
有利な音の減衰特徴に加えて、
図13における線4および線5の非対称多重透明体積層体もまた、潜在的に、改善された耐石衝撃性を有する。さらに、より厚い外側の透明体もまた、改善された耐チップ衝撃性をもたらすことが見出された。
【0033】
添付図面を参照すると、本願で開示される対称および非対称の多重透明体積層体窓ガラスは、3つ以上の透明体層を含み、これらの透明体層は、隣接した透明体の各々の間の粘弾性層によって、一緒に積層体内で結合されている。粘弾性中間層は、PVBであってもよいし、隣接した透明体のうちの一方からの音波による振動エネルギーを、熱を発生させるせん断力に散逸させるのに好適な他の材料であってもよい。開示される多重透明体積層体窓ガラスは、2つ以上のかかる粘弾性層を含み、粘弾性層は、音の振動による機械的エネルギーを粘弾性層内で熱エネルギーに散逸させる。かかる構成は、多重透明体積層体窓ガラスを通る音の透過を減衰させるための2つ以上の減衰段をもたらす。
【0034】
図1は、本明細書に開示される対称多重透明体積層体窓ガラス10を示している。対称多重透明体積層体窓ガラス10は、外側の透明体シート12を含み、外側の透明体シート12は、第1の表面14と、透明体シート12の第1の表面14と反対側に配置された第2の表面16を有する。第1の表面14および第2の表面16は、第1の表面14および第2の表面16の各々に直交する向きの厚さ寸法18によって互いに分離されている。
【0035】
対称多重透明体積層体窓ガラス10は、中間層20をさらに含み、中間層20は、ポリマー材料の層を構成し、第1の表面22と、ポリマー材料の層の第1の表面22と反対側に配置された第2の表面24を有する。中間層20の第1の表面22は、外側の透明体シート12の第2の表面16と対向している。
【0036】
対称窓ガラス10は、中間の透明体シート26をさらに含み、中間の透明体シート26は、第1の表面28と、透明体シート26の第1の表面28と反対側に配置された第2の表面30を有する。第1の表面28および第2の表面30は、第1の表面28および第2の表面30の各々に直交する向きの厚さ寸法33によって互いに分離されている。
【0037】
対称多重透明体積層体窓ガラス10は、第2の中間層20aをさらに含み、第2の中間層20aは、ポリマー材料の層を構成し、第1の表面22aと、ポリマー材料の層の第1の表面22aと反対側に配置された第2の表面24aを有する。第2の中間層20aの第1の表面22aは、中間の透明体シート26の第2の表面30と対向している。
【0038】
対称窓ガラス10は、内側の透明体シート32をさらに含み、内側の透明体シート32は、第1の表面34と、透明体シート32の第1の表面34と反対側に配置された第2の表面36を有する。第1の表面34および第2の表面36は、第1の表面34および第2の表面36の各々に直交する向きの厚さ寸法38によって互いに分離されている。対称窓ガラス10は、透明体12、26、32のそれぞれの公称厚さ18、33、38が同じであるという点で「対称」である。
【0039】
図2は、非対称窓ガラス積層体40の上面側斜視図を示している。非対称窓ガラス積層体40の構造の大部分は、対称窓ガラス積層体10の構造と同様であるが、重要な違いも存在する。
【0040】
図2に示されるように、非対称窓ガラス40は、外側の透明体シート42を含み、外側の透明体シート42は、第1の表面44と、透明体シート42の第1の表面38と反対側に配置された第2の表面46を有する。第1の表面44および第2の表面46は、第1の表面44および第2の表面46の各々に直交する向きの厚さ寸法48によって互いに分離されている。
【0041】
非対称窓ガラス40は、中間層50をさらに含み、中間層50は、ポリマー材料の層を構成し、第1の表面52と、ポリマー材料の層の第1の表面52と反対側に配置された第2の表面54を有する。中間層50の第1の表面52は、外側の透明体シート42の第2の表面46と対向している。
【0042】
非対称窓ガラス40は、中間の透明体シート56をさらに含み、中間の透明体シート56は、第1の表面58と、透明体シート56の第1の表面58と反対側に配置された第2の表面60を有する。第1の表面58および第2の表面60は、第1の表面58および第2の表面60の各々に直交する向きの厚さ寸法62によって互いに分離されている。
【0043】
非対称窓ガラス40は、第2の中間層64をさらに含み、第2の中間層64は、ポリマー材料の層を構成し、第1の表面66と、ポリマー材料の層の第1の表面66と反対側に配置された第2の表面68を有する。第2の中間層64の第1の表面66は、中間の透明体シート56の第2の表面60と対向している。
【0044】
非対称窓ガラス40は、内側の透明体シート69をさらに含み、内側の透明体シート69は、第1の表面70と、透明体シート69の第1の表面70と反対側に配置された第2の表面72を有する。第1の表面70および第2の表面72は、第1の表面70および第2の表面72の各々に直交する向きの厚さ寸法74によって互いに分離されている。
【0045】
非対称窓ガラス40は、外側の透明体シート42の厚さ48が中間の透明体シート56の厚さ62よりも大きく、かつまた、内側の透明体シート69の厚さ74よりも大きいという点で「非対称」である。
図2の実施形態の実施例では、非対称多重透明体積層体窓ガラスは、同じ厚さ寸法を有する中間の透明体シートおよび内側の透明体シートを有する。しかしながら、開示される非対称多重透明体積層体窓ガラスは、中間の透明体シートおよび内側の透明体シートが同じ厚さ寸法を有する構造に限定されるものではない。異なる厚さ寸法を有する中間の透明体シートおよび内側の透明体シートを使用することもできる。
【0046】
先にも述べたように、本明細書に開示される多重透明体積層体窓ガラスは、3つの透明体および2つの中間層を有する窓ガラスに限定されるものではない。他の倍数の透明体および中間層を使用することもできる。
【0047】
多重透明体積層体窓ガラスのいくつかの実施形態では、かかる実施形態が2重透明体積層体窓ガラスよりも、優れた音の減衰性能をもたらし且つまた軽い単位面積当たりの重量を有することが見出された。このことは、2重透明体積層体自体が標準的な2重透明体窓ガラスよりも軽量に設計されている場合でさえも正しいことがある。
図14は、
図1に示されるような対称多重透明体窓ガラスの音の減衰を、2重透明体窓ガラスと比較して表示している。
【0048】
先行技術の2重透明体窓ガラスでは、両方の透明体は通常、2.1mmの厚さを有する。しかしながら、比較的軽量のために設計されている一部の2重透明体窓ガラスは、1.2mmの厚さを有する2つの透明体と、0.76mmの厚さを有する音響PVBの中間層とで構成されている。軽量の対称構成の窓ガラスの単位面積当たりの重量は、1.392パウンド/平方フィート(6.79キログラム/平方メートル)であり、2.1mmの透明体を有する典型的な2重透明体窓ガラスの単位面積当たりの重量よりも軽い。しかしながら、
図1に示される構成の多重透明体窓ガラスは、0.7mmの厚さを有する3つの透明体と、0.76mmの厚さを有する音響PVBの2つの中間層を含み、1.379パウンド/平方フィート(6.73キログラム/平方メートル)の単位面積当たりの重量を有し、これは、1.2mmの厚さの透明体を有する2重透明軽量窓ガラスよりも軽い。多重透明体窓ガラスの改善された音の減衰によって示さるこの実施例の事例、および、多重透明体窓ガラスを有する他の同様の事例では、多重透明体窓ガラスを使用して、単位面積当たりほぼ同様の重量の窓ガラスの音響性能を改善することができる。
【0049】
図14は、周波数の関数として、両方の窓ガラスの音の減衰を示している。多重透明体窓ガラスは、約4,000Hzを超える周波数でのより優れた減衰を説明している。
【0050】
対称窓ガラス10の中間層および非対称窓ガラス40の中間層は、エチレンビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリエタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびこれらの組合せなどのポリマー材料であってもよい。中間層は、当技術で知られているオートクレーブ処理によって、対向している透明体シートに結合される。オートクレーブ処理後、音響PVBの厚さは、0.38mm~1.52mmの範囲にあるのがよく、かつより具体的には、音響PVBの厚さは、0.71mm~0.81mmの範囲にあるのがよい。人間の聴覚認識は普通、約20Hz~約20,000Hzの範囲の音に対して行われるが、人間は一般的に、約1,000Hz~約6,000Hzの範囲の音に対して最も敏感である。
図1の線2に見られるように、「コインシデンスディップ(coincidence dip)」は、透明体の振動周波数が入射音圧波の振動周波数に一致していることによるものである。窓ガラスにコインシデンス条件を生み出す周波数は、概して、「コインシデンス周波数」と称される。特定のコインシデンス周波数では、外側の透明体に衝撃を与える音波は、窓ガラスを振動させ、窓ガラスから乗員室への音の透過を強化する。したがって、コインシデンス周波数、特に、人間がより高い感度を有する1,000Hz~6,000Hzの範囲の周波数を減衰させることによって、音の減衰が強化される。多重透明体窓ガラスを利用して、本明細書でより具体的に説明されているように、コインシデンス周波数における音の減衰を効果的に達成する。すなわち、他の窓ガラスと比較した場合の多重積層体窓ガラスの減衰性能の改善が、本明細書に開示される様々なグラフおよび表に関連して示され、説明されている。本明細書に開示される改善によれば、透明体と中間層ポリマーの組立形態および厚さを有する本明細書に開示される多重透明体窓ガラスは、先行技術で知られている窓ガラスと比較して、ほぼ同じまたはより軽い重量を維持しながら、改善された音響性能を達成する。
【国際調査報告】