(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ピックアッププレス装置およびパルプスラリから3D成形製品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D21J 5/00 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
D21J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538390
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(85)【翻訳文提出日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2020050061
(87)【国際公開番号】W WO2020141209
(87)【国際公開日】2020-07-09
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517214150
【氏名又は名称】セルワイズ・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピアス、デイビッド
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055BF08
4L055CJ06
4L055EA13
4L055EA15
4L055EA20
4L055EA23
4L055EA24
4L055FA22
4L055GA05
(57)【要約】
第1の製品面を呈するピックアッププレス工具と第2の製品面を呈するプレス工具とピックアッププレス工具に接続された真空源とを備え、パルプスラリから3D成形製品を製造するためのピックアッププレス装置に関する。ピックアッププレス工具およびプレス工具は、プレス工具の第1の相対位置で製品面はその製品面に対して液体状のパルプスラリ層を受けるように配置され、プレス工具の第2の相対位置で製品面はパルプスラリ層をプレスするために互いに向かってプレスされる。装置が備える第1の移送工具は、多孔質の第1の製品面の第1の部分と一致するように構成された第1の形成表面部分であって形成ギャップが所望のパルプスラリ層厚さを画定する第1の形成表面部分と、多孔質の第1の製品面の第2の部分から分岐するように構成された第2の形成表面部分であって非形成空間が形成ギャップよりも大きい厚さを有する第2の形成表面部分とを備える。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプスラリから3D成形製品を製造するプロセスで使用するためのピックアッププレス装置であって、
多孔質の第1の製品面を呈するピックアッププレス工具(10)と、
第2の製品面を呈するプレス工具(20)と、
前記ピックアッププレス工具(10)に接続された真空源と
を備え、
前記ピックアッププレス工具(10)および前記プレス工具(20)は、互いに対して垂直に移動可能であり、
前記プレス工具(10、20)の第1の相対位置において、前記製品面のうちの少なくとも1つは、その製品面に対して液体状のパルプスラリ層を受けるように配置され、
前記プレス工具(10、20)の第2の相対位置において、前記製品面は、前記パルプスラリ層をプレスするために互いに向かってプレスされ、
前記装置は第1の移送工具(30)をさらに備え、前記第1の移送工具(30)は、
その間に形成ギャップ(80)が画定されるように、前記多孔質の第1の製品面の第1の部分(14)と一致するように構成された第1の形成表面部分(34)であって、前記形成ギャップ(80)が所望のパルプスラリ層厚さを画定する、第1の形成表面部分(34)と、
第2の形成表面部分(35)および前記多孔質の第1の製品面の第2の部分(15)によって非形成空間(90)が画定されるように、前記多孔質の第1の製品面の前記第2の部分(15)から分岐するように構成された前記第2の形成表面部分(35)であって、前記非形成空間(90)が前記形成ギャップよりも大きい厚さを有する、第2の形成表面部分(35)と
を備える、ピックアッププレス装置。
【請求項2】
前記ピックアッププレス工具(10)には、前記ピックアッププレス工具(10)の前記多孔質の第1の製品面に熱を供給するように適合された少なくとも1つの加熱要素(13)が設けられ、および/または前記プレス工具(20)には、前記プレス工具(20)の前記第2の製品面に熱を供給するように適合された少なくとも1つの加熱要素(23)が設けられている、請求項1に記載のピックアッププレス装置。
【請求項3】
前記プレス工具(10、20)の前記第2の相対位置において、前記製品面は、前記パルプスラリ層をプレスするために互いに向かってプレスされ、その一方で前記少なくとも1つの加熱要素(13、23)によって前記パルプスラリ層を加熱し、前記工具のうちの少なくとも1つの多孔質製品面を通じて真空を引く、請求項2に記載のピックアッププレス装置。
【請求項4】
前記非形成空間(90)は、1つのみのパルプスラリ層面と前記第2の形成表面部分(35)および前記多孔質の第1の製品面の前記第2の部分(15)のうちの1つとの間の接触を提供するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項5】
前記非形成空間(90)は、前記第2の形成表面部分(35)と前記多孔質の第1の製品面の前記第2の部分(15)との間の空間を呈し、これは、前記形成ギャップ(80)の厚さの20倍超、好ましくは15倍超、10倍超、または前記形成ギャップ(80)の前記厚さの5倍超である、請求項1から4のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項6】
前記非形成空間(90)は、プレス方向に見て、雌型の最も内側の部分および/または雄型の遠位部分に設けられる、請求項1から5のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項7】
前記非形成空間(90)は、プレス方向に見て、雌型の最も外側の部分および/または雄型の遠位部分に設けられる、請求項1から5のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項8】
前記形成ギャップ(80)は、前記第1の形成表面部分(34)および前記多孔質の第1の製品面の前記第1の部分(14)の両方がそれぞれのパルプスラリ層面と接触するのに十分に小さい厚さを呈する、請求項1から7のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項9】
前記形成ギャップ(80)は、周囲圧力よりも高い圧力を前記パルプスラリ層に提供するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項10】
前記第1の形成表面部分(34)は、前記多孔質の第1の製品面の総面積の10~99.9%、好ましくは25~95%に対応する接触表面積を呈する、請求項1から9のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項11】
前記第1の移送工具(30)は、10~90%の多孔度を有する多孔質製品面を呈する、請求項1から10のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項12】
前記第1の移送工具(30)の前記多孔質製品面は、直径0.1~0.7mm、好ましくは0.25~0.6mmの孔サイズを有する細孔を呈する、請求項11に記載のピックアッププレス装置。
【請求項13】
前記ピックアッププレス工具(10)の前記多孔質の第1の製品面は、10~90%の多孔度を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項14】
前記ピックアッププレス工具(10)の前記多孔質の第1の製品面は、直径0.1~0.7mm、好ましくは0.25~0.6mmの孔サイズを有する細孔を呈する、請求項1から13のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項15】
前記ピックアッププレス工具(10)には、前記ピックアッププレス工具の前記多孔質の第1の製品面に熱を供給するように適合された少なくとも1つの加熱要素(13)が設けられている、請求項1から14のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項16】
前記プレス工具(20)には、前記プレス工具の前記第2の製品面に熱を供給するように適合された少なくとも1つの加熱要素(23)が設けられている、請求項1から15のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置。
【請求項17】
パルプスラリから3D成形製品を製造する方法であって、
第1の金型のピックアッププレス工具(10)の多孔質の第1の製品面に液体状のパルプスラリ層を適用するステップと、
第1の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層を加熱し、前記工具(10、20)のうちの少なくとも1つの多孔質製品面を通じて真空を引いている間に、前記第1の金型の協働するプレス工具(20)の第2の製品面に対して前記ピックアッププレス工具(10)の前記多孔質の第1の製品面上の前記パルプスラリ層をプレスするステップと、
第2の金型(40、50)の第1のプレス工具の多孔質製品面に前記パルプスラリ層を移送するステップと、
第2の後続の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層を加熱し、前記第2の金型(40、50)の前記第1および第2のプレス工具のうちの少なくとも1つの多孔質製品面を通じて真空を引いている間に、前記第2の金型(40、50)の第2のプレス工具の第2の製品面に対して前記パルプスラリ層をプレスするステップと
を備え、
前記パルプスラリ層の少なくとも一部分は、前記第2の金型(40、50)の前記第1のプレス工具への移送中に形成される、方法。
【請求項18】
前記第1の金型(10、20)から前記第2の金型(40、50)への前記パルプスラリ層の移送は、第1の移送工具(30)によって実行され、前記第1の移送工具は、第1の形成表面部分(34)および第2の形成表面部分(35)を備え、
前記第1の金型(10、20)から前記第1の移送工具(30)への前記パルプスラリ層の移送の間、前記第1の形成表面部分(34)は、その間に形成ギャップ(80)が画定されるように、前記第1の金型の前記多孔質の第1の製品面の第1の部分(14)と一致し、前記形成ギャップ(80)が所望のパルプスラリ層厚さを画定し、
前記第2の形成表面部分(35)は、前記第2の形成表面部分(35)および前記第1の金型の前記多孔質の第1の製品面の前記第2の部分(15)によって非形成空間(90)が画定されるように、前記第1の金型の前記多孔質の第1の製品面の第2の部分(15)から分岐し、前記非形成空間(90)が前記形成ギャップよりも大きい厚さを有する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の金型(10、20)から前記第1の移送工具(30)への前記パルプスラリ層の移送の間、前記形成ギャップ(80)は、周囲圧力よりも高い圧力を前記パルプスラリ層上に提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の金型(10、20)から前記第2の金型(40、50)への前記第1の移送工具(30)の移動の間、前記第1の形成表面部分(34)はパルプスラリ層面と接触し、前記第2の形成表面部分(35)は自由である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の金型(10、20)から前記第2の金型(40、50)への前記パルプスラリ層の移送の間、少なくともいくらかの水が前記パルプスラリ層から排出されるように、前記第1の移送工具(30)を通じて真空引きされる、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の金型(40、50)に移送された前記パルプスラリ層は、第1のパルプスラリ層部分および第2のパルプスラリ層部分を呈し、前記第1および第2のパルプスラリ層部分は並置され、前記第1のパルプスラリ層部分は、前記第2のパルプスラリ層部分よりも高いかまたは低いレベルの含水量を有する、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記パルプスラリ層のピックアップは、前記パルプスラリ層が前記製品面に適用されるように、前記ピックアッププレス工具(10)の前記多孔質の第1の製品面を通じて真空を引いている間に、前記パルプスラリを収容する液槽内に前記ピックアッププレス工具(10)の前記多孔質の第1の製品面を浸漬することによって達成される、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ピックアッププレス工具(10)は、前記協働するプレス工具(20)と接触するように前記液槽から垂直方向上方に移動する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記パルプスラリ層は、噴霧または注入によって前記ピックアッププレス工具(10)の前記多孔質の第1の製品面に適用される、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記パルプスラリ層のピックアップ中の前記多孔質の第1の製品面の裏側での第1の圧力は、300~700mbarA、好ましくは400~600mbarAである、請求項17から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の形成ステップにおいて、前記第1の金型(10、20)の多孔質製品面の裏側での第2の圧力は、前記第2の形成ステップにおける、前記第2の金型(40、50)の多孔質製品面の裏側での第3の圧力よりも低い、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の圧力は、前記第3の圧力の1~99%、好ましくは50~99%または90~99%である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の圧力は、200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAである、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の形成ステップにおいて、前記第1の金型の前記協働するプレス工具(20)の前記第2の製品面は、約150~400℃、好ましくは200~300℃に加熱される、請求項17から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の形成ステップにおいて、前記第1の金型の前記ピックアッププレス工具(10)の前記多孔質の第1の製品面は、約100~150℃に加熱される、請求項17から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層は、約390~1570kPa、好ましくは580~1170kPaの圧力で、前記第1の金型の前記第2の製品面に対してプレスされる、請求項17から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第1のプレス時間の間、前記第1の金型の前記第2の製品面に対してプレスされる、請求項17から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層の初期含水量は70~90重量%であり、最終含水量は45~65重量%、好ましくは約50~60重量%である、請求項17から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第3の圧力は200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAである、請求項17から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の形成ステップにおいて、前記第2の金型(40、50)の前記製品面のうちの少なくとも1つは、約110~400℃、好ましくは200~300℃に加熱される、請求項17から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層は、約390~1570kPa、好ましくは580~1170kPaの圧力で、前記第2の金型の前記第2の製品面に対してプレスされる、請求項17から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第2のプレス時間の間、前記第2の金型の前記第2の製品面に対してプレスされる、請求項17から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層の初期含水量は約45~65%、好ましくは約50~60重量%であり、最終含水量は約25~40重量%、好ましくは約30~35重量%である、請求項17から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
第3の金型の第1のプレス工具の多孔質製品面に前記パルプスラリ層を移送するステップと、第3の後続の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層を加熱し、前記第3の金型の前記第1および第2のプレス工具のうちの少なくとも1つの多孔質製品面を通じて真空を引いている間に、前記第3の金型の第2のプレス工具の第2の製品面に対して前記パルプスラリ層をプレスするステップとをさらに備える、請求項17から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の金型の多孔質製品面の裏側での前記第3の圧力は、前記第3の金型の多孔質製品面の裏側での第4の圧力よりも低い、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第4の圧力は200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第3の形成ステップにおいて、前記第3の金型の前記製品面のうちの少なくとも1つは、約100~300℃、好ましくは200~280℃に加熱される、請求項40から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第3の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層は、約390~1570kPa、好ましくは580~1170kPaの圧力で、前記第3の金型の前記第2の製品面に対してプレスされる、請求項40から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第3の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第3のプレス時間の間、前記第3の金型の前記第2の製品面に対してプレスされる、請求項40から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第3の形成ステップにおいて、前記パルプスラリ層の初期含水量は約25~45重量%または25~40重量%、好ましくは約30~40重量%または30~35重量%であり、最終含水量は約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満である、請求項40から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
請求項18から46のいずれか一項に記載の前記方法を備える、レセプタクルを形成する方法であって、前記レセプタクルの開口部分に対応するプレス工具および移送工具のそれぞれの部分に前記非形成空間(90)が設けられている、方法。
【請求項48】
パルプスラリから3D成形製品を製造するためのシステムであって、
請求項1から16のいずれか一項に記載のピックアッププレス装置と、
第2のペアの協働するプレス工具(40、50)と
を備えるシステム。
【請求項49】
第2の移送工具と、
第3のペアの協働するプレス工具と
をさらに備える、請求項48に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文献は、パルプスラリから製品を成形するプロセスで使用するためのピックアッププレス装置に関する。本開示はまた、パルプスラリから製品を成形する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質金型をパルプスラリに浸漬し、その後乾燥させ、任意選択的にこうして成形された製品をプレスすることにより、パルプスラリから製品を成形することが知られている。このような製品の例は、鶏卵箱、衝撃吸収包装インサートおよび紙トレイ、紙コップ、ドリンクキャリートレイ、マッシュルームおよびベリー箱、ならびにその他の形態の工業用、農業用、および消費者用包装である。
【0003】
パルプからの製品の成形に関して、耐久性があり、高温に曝されることが可能な金型を提供することが望ましい。さらに、滑らかな表面構造、エネルギー消費量の低減、および形成プロセスの品質制御の向上が望ましい。
【0004】
これらの態様に関して、国際公開第2016101976号パンフレットは、製品と接触するための製品面と、製品面に対して壁の反対側の背面とを有する自立型工具壁部分を備える、スラリから製品を成形する際に使用するための改良された工具または工具部品を開示している。工具壁部分は、製品面から背面まで、工具壁部分を通じて延在する複数のチャネルによって提供される、細孔を呈する。このような工具または工具部品はまた、他の既知の工具と比較してより少ないエネルギーを真空生成に必要としながら、使用されるパルプの十分なピックアップ、移送、または蒸発を提供する、または製品を成形することもできる。
【0005】
しかしながら、エネルギー消費量をさらに低減することが望ましい。
【0006】
国際公開第2016101976号パンフレットは、スラリ層を多孔質金型に適用し、その反対側がスラリ層と接触している金型壁を通じて真空を引いている間にスラリ層を同時に加熱およびプレスすることでスラリから水を除去することによって、パルプスラリから製品を成形する方法を、さらに開示している。成形プロセスは、2つ以上の連続するプレスステップで実行されてもよく、これは、単一のプレスステップのプロセスと比較して、サイクル時間を短縮し、こうして製造プロセスのスループットを増加させるので、有利である。
【0007】
しかしながら、スループットをさらに増加させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2016101976号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、パルプスラリから製品を成形するための改良されたパルプ成形装置を提供することであり、より具体的には、従来技術と比較して成形プロセスのスループットを増加させる装置を提供することである。
【0010】
改良された成形プロセスを提供すること、より具体的には、製造プロセスの増加したスループットでパルプスラリから製品を成形する方法を提供することは、さらに本開示の目的に含まれる。
【0011】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。実施形態は、添付の従属請求項、ならびに以下の説明および図面に明記されている。
【0012】
第1の態様によれば、多孔質の第1の製品面を呈するピックアッププレス工具と、第2の製品面を呈するプレス工具と、ピックアッププレス工具に接続された真空源とを備える、パルプスラリから3D成形製品を製造するプロセスで使用するためのピックアッププレス装置であって、ピックアッププレス工具およびプレス工具は、互いに対して垂直に移動可能であり、プレス工具の第1の相対位置において、製品面のうちの少なくとも1つは、その製品面に対して液体状のパルプスラリ層を受けるように配置され、プレス工具の第2の相対位置において、製品面は、パルプスラリ層をプレスするために互いに向かってプレスされる、ピックアッププレス装置が提供される。装置は第1の移送工具をさらに備え、第1の移送工具は、その間に形成ギャップが画定されるように、多孔質の第1の製品面の第1の部分と一致するように構成された第1の形成表面部分であって、前記形成ギャップが所望のパルプスラリ層厚さを画定する、第1の形成表面部分と、第2の形成表面部分および多孔質の第1の製品面の第2の部分によって非形成空間が画定されるように、多孔質の第1の製品面の第2の部分から分岐するように構成された第2の形成表面部分であって、前記非形成空間が形成ギャップよりも大きい厚さを有する、第2の形成表面部分とを備える。
【0013】
本開示の目的のために、「パルプ」という用語は、セルロース、鉱物およびデンプン、またはこれらの材料の組合せなどの繊維を備える材料を含むように解釈されるべきである。パルプは好ましくは、水を備え得る、液体担体を有する。
【0014】
「製品面」とは、このようなパルプ製品の形成中にパルプスラリ層またはパルプ製品と接触するように適合された工具の表面を意味する。
【0015】
第2の製品面は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。あるいは、第2の製品面は、多孔質部分および非多孔質部分を呈してもよい。
【0016】
真空源は、圧力調節器に接続された真空チャンバの形態であってもよい。
【0017】
「ピックアップ」とは、パルプ繊維をピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面に引き寄せることを意味する。
【0018】
パルプスラリをプレスするために製品面が互いに向かってプレスされる、ピックアッププレス工具およびプレス工具の第2の相対位置において、工具のうちの少なくとも1つは、工具の製品面に熱を供給するように適合されることが可能である。さらに、多孔質製品面を有するかまたは多孔質部分を呈する工具のうちの少なくとも1つは、工具の多孔質製品面を通じて真空引きされ得るように、真空源に接続されることが可能である。
【0019】
ピックアッププレス工具は、パルプスラリ層をピックアップすることおよびパルプスラリ層をプレスすることの両方に適合されているので、ピックアップ工具からプレス工具にパルプ層を移送するための追加の移送工具の必要性が排除される。
【0020】
さらに、ピックアッププレス工具およびプレス工具は互いに対して垂直に移動可能でもあるので、パルプスラリ層をピックアップおよびプレスするための効率的なプロセスが達成可能であり、これにより、サイクル時間を短縮し、プロセスのスループットを増加させることができる。
【0021】
第1の移送工具は、パルプスラリ層をピックアッププレス工具から第2のペアのプレス工具の製品面に移送するように適合されることが可能である。
【0022】
第1の移送工具は圧力調節器に接続されてもよく、これは真空または空気圧を生成することができる。
【0023】
第1の移送工具はまた、移送工具ホルダに取り付けられてもよい。
【0024】
非形成空間は、第2の形成表面部分および多孔質の第1の製品面の第2の部分によって画定されるので、パルプスラリ層の少なくとも一部は、前記移送中に自由であり得る。
【0025】
パルプスラリ層の自由部分は、パルプスラリ層が第1の移送工具から第2のペアのプレス工具の製品面に移送される際に形成されることが可能であり、これにより、パルプスラリ層の自由部分を第1の移送工具の第2の形成表面部分と接触させることが可能である。
【0026】
さらに、第1の移送工具は、パルプスラリ層を第2のペアの協働するプレス工具に移送し、移送中にパルプスラリ層の少なくとも一部を形成するように適合されるので、追加の形成またはプレスステップは排除されてもよく、プロセスのより短いサイクル時間およびスループットの増加が達成され得る。
【0027】
さらに、第1の移送工具は、パルプスラリ層の少なくとも一部が移送中に第1の移送工具の第1の形成表面部分と接触し、少なくとも一部は自由、すなわち接触しないように適合されるので、異なるレベルの含水量を有する異なる部分を呈するパルプスラリ層が提供され得る。
【0028】
ピックアッププレス工具には、ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面に熱を供給するように適合された少なくとも1つの加熱要素が設けられてもよい。あるいは、または付加的に、プレス工具には、プレス工具の第2の製品面に熱を供給するように適合された少なくとも1つの加熱要素が設けられてもよい。
【0029】
プレス工具の第2の相対位置において、製品面は、パルプスラリ層をプレスするために互いに向かってプレスされてもよく、その一方で少なくとも1つの加熱要素によってパルプスラリ層を加熱し、工具のうちの少なくとも1つの多孔質製品面を通じて真空を引いてもよい。
【0030】
非形成空間は、1つのみのパルプスラリ層面と第2の形成表面部分および多孔質の第1の製品面の第2の部分のうちの1つとの間の接触を提供するように構成されることが可能である。
【0031】
「パルプスラリ層面」とは、ピックアッププレス工具、プレス工具、または移送工具などの工具の製品面と接触するように適合されたパルプスラリ層の表面を意味する。
【0032】
非形成空間は、第2の形成表面部分と多孔質の第1の製品面の第2の部分との間の空間を呈し、これは、形成ギャップの厚さの20倍超、好ましくは15倍超、10倍超、または形成ギャップの前記厚さの5倍超である。
【0033】
非形成空間は、プレス方向に見て、雌型の最も内側の部分および/または雄型の遠位部分に設けられることが可能である。
【0034】
あるいは、非形成空間は、プレス方向に見て、雌型の最も外側の部分および/または雄型の遠位部分に設けられることが可能である。
【0035】
雌型は、ピックアッププレス工具またはプレス工具であり得る。雄型は、移送工具であり得る。
【0036】
形成ギャップは、第1の形成表面部分および多孔質の第1の製品面の第1の部分の両方がそれぞれのパルプスラリ層面と接触するのに十分に小さい厚さを呈することができる。
【0037】
形成ギャップは、周囲圧力よりも高い圧力をパルプスラリ層上に提供するように構成されることが可能である。
【0038】
第1の形成表面部分は、多孔質の第1の製品面の総面積の10~99.9%、好ましくは25~95%に対応する接触表面積を呈することができる。
【0039】
第1の移送工具は、10~90%の多孔度を有する多孔質製品面を呈することができる。
【0040】
本開示の目的のために、「多孔度」という用語は、所定の製品面部分の総製品面積(細孔開口部を含む)に対する細孔開口面積として定義される。
【0041】
第1の移送工具の多孔質製品面は、直径0.1~0.7mm、好ましくは0.25~0.6mmの孔サイズを有する細孔を呈することができる。
【0042】
ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面は、10~90%の多孔度を有することができる。
【0043】
ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面は、直径0.1~0.7mm、好ましくは0.25~0.6mmの孔サイズを有する細孔を呈することができる。
【0044】
ピックアッププレス工具には、ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面に熱を供給するように適合された少なくとも1つの加熱要素が設けられることが可能である。
【0045】
加熱要素は、電気加熱要素、熱風または液体加熱要素、または誘導加熱要素であってもよい。加熱要素は、コントローラによって制御され得る。
【0046】
プレス工具には、プレス工具の第2の製品面に熱を供給するように適合された少なくとも1つの加熱要素が設けられることが可能である。
【0047】
加熱要素は、電気加熱要素、熱風または液体加熱要素、または誘導加熱要素であってもよい。加熱要素は、コントローラによって制御され得る。
【0048】
本発明の第2の態様によれば、パルプスラリから3D成形製品を製造する方法であって、第1の金型のピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面に液体状のパルプスラリ層を適用するステップと、第1の形成ステップにおいて、パルプスラリ層を加熱し、工具のうちの少なくとも1つの多孔質製品面を通じて真空を引いている間に、第1の金型の協働するプレス工具の第2の製品面に対してピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面上のパルプスラリ層をプレスするステップと、第2の金型の第1のプレス工具の多孔質製品面にパルプスラリ層を移送するステップと、第2の後続の形成ステップにおいて、パルプスラリ層を加熱し、第2の金型の第1および第2のプレス工具のうちの少なくとも1つの多孔質製品面を通じて真空を引いている間に、第2の金型の第2のプレス工具の第2の製品面に対してパルプスラリ層をプレスするステップとを備え、パルプスラリ層の少なくとも一部分は、第2の金型の第1のプレス工具への移送中に形成される、方法が提供される。
【0049】
任意選択的に、第2の形成ステップの前にパルプスラリ層の洗浄ステップが実行されてもよい。
【0050】
第1の金型のピックアッププレス工具および協働するプレス工具、および/または第2の金型の第1および第2のプレス工具は、上述の内容にしたがって、ピックアッププレス装置の一部を形成し得る。
【0051】
第1の金型から第2の金型へのパルプスラリ層の移送は、第1の移送工具によって実行されることが可能であり、第1の移送工具は、第1の形成表面部分および第2の形成表面部分を備え、第1の金型から第1の移送工具へのパルプスラリ層の移送の間、第1の形成表面部分は、その間に形成ギャップが画定されるように、第1の金型の多孔質の第1の製品面の第1の部分と一致し、前記形成ギャップが所望のパルプスラリ層厚さを画定し、第2の形成表面部分は、第2の形成表面部分および第1の金型の多孔質の第1の製品面の第2の部分によって非形成空間が画定されるように、第1の金型の多孔質の第1の製品面の第2の部分から分岐し、前記非形成空間が形成ギャップよりも大きい厚さを有する。
【0052】
第1の移送工具は多孔質であり得る。
【0053】
第1の移送工具は、上述の内容にしたがってピックアッププレス装置の一部を形成し得る。
【0054】
第1の金型から第1の移送工具へのパルプスラリ層の移送の間、形成ギャップは、周囲圧力よりも高い圧力をパルプスラリ層上に提供することができる。
【0055】
第1の金型から第2の金型への第1の移送工具の移動の間、第1の形成表面部分は、パルプスラリ層と接触することができ、第2の形成表面部分は自由であり得る。
【0056】
第1の金型から第2の金型へのパルプスラリ層の移送の間、少なくともいくらかの水がパルプスラリ層から排出されるように、第1の移送工具を通じて真空引きされることが可能である。
【0057】
真空は、パルプスラリ層が第1の移送工具によって受けられたとき、すなわち第1の金型から第1の移送工具に移送されたとき、および/または第1の金型から第2の金型への移送工具の移動中に、適用され得る。
【0058】
第2の金型に移送されたパルプスラリ層は、第1のパルプスラリ層部分および第2のパルプスラリ層部分を呈することができ、第1および第2のパルプスラリ層部分は並置され、第1のパルプスラリ層部分は、第2のパルプスラリ層部分よりも高いかまたは低いレベルの含水量を有する。
【0059】
パルプスラリ層のピックアップは、パルプスラリ層が製品面に適用されるように、ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面を通じて真空を引いている間に、パルプスラリを収容する液槽内にピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面を浸漬することによって達成されることが可能である。
【0060】
ピックアッププレス工具は、協働するプレス工具と接触するように液槽から垂直方向上方に移動することができる。
【0061】
あるいは、パルプスラリ層は、噴霧または注入によってピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面に適用されることが可能である。
【0062】
パルプスラリ層のピックアップ中の多孔質の第1の製品面の裏側での第1の圧力は、300~700mbarA、好ましくは400~600mbarAであり得る。
【0063】
第1の形成ステップにおいて、第1の金型の多孔質製品面の裏側での第2の圧力は、第2の形成ステップにおける、第2の金型の多孔質製品面の裏側での第3の圧力よりも低くすることができる。
【0064】
第2の圧力は、第3の圧力の1~99%、好ましくは50~99%、または90~99%であり得る。
【0065】
第2の圧力は、200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAであり得る。
【0066】
第1の形成ステップにおいて、第1の金型の協働するプレス工具の第2の製品面は、約150~400℃、好ましくは200~300℃に加熱されることが可能である。
【0067】
第1の形成ステップにおいて、第1の金型のピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面は、約100~150℃に加熱されることが可能である。
【0068】
ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面は、パルプスラリ層の追加の乾燥効果の目的で、または成形性のために繊維の暖かさを維持する目的で、第1の形成ステップにおいて加熱されてもよい。
【0069】
第1の形成ステップにおいて、パルプスラリ層は、約390~1570kPa、好ましくは580~1170kPaの圧力で、第1の金型の第2の製品面に対してプレスされることが可能である。
【0070】
第1の形成ステップにおいて、パルプスラリ層は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第1のプレス時間の間、第1の金型の第2の製品面に対してプレスされることが可能である。
【0071】
第1の形成ステップにおいて、パルプスラリ層の初期含水量は70~90重量%であり得、最終含水量は、45~65重量%、好ましくは約50~60重量%であり得る。
【0072】
第3の圧力は、200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAであり得る。
【0073】
第2の形成ステップにおいて、第2の金型の製品面のうちの少なくとも1つは、約110~400℃、好ましくは200~300℃に加熱されることが可能である。
【0074】
第2の形成ステップにおいて、パルプスラリ層は、約390~1570kPa、好ましくは580~1170kPaの圧力で、第2の金型の第2の製品面に対してプレスされることが可能である。
【0075】
第2の形成ステップにおいて、パルプスラリ層は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第2のプレス時間の間、第2の金型の第2の製品面に対してプレスされることが可能である。
【0076】
第2の形成ステップにおいて、パルプスラリ層の初期含水量は、約45~65重量%、好ましくは約50~60重量%であり得、最終含水量は、約25~40重量%、好ましくは約30~35重量%であり得る。
【0077】
方法は、第3の金型の第1のプレス工具の多孔質製品面にパルプスラリ層を移送するステップと、第3の後続の形成ステップにおいて、パルプスラリ層を加熱し、第3の金型の第1および第2のプレス工具のうちの少なくとも1つの多孔質製品面を通じて真空を引いている間に、第3の金型の第2のプレス工具の第2の製品面に対してパルプスラリ層をプレスするステップとを、さらに備えることができる。
【0078】
任意選択的に、パルプスラリ層の洗浄ステップは、第3の形成ステップの前に実行されることが可能である。
【0079】
パルプスラリ層の移送は、第2の移送工具によって実行されることが可能である。
【0080】
第2の金型の多孔質製品面の裏側での第3の圧力は、第3の金型の多孔質製品面の裏側での第4の圧力よりも低くすることができる。
【0081】
第4の圧力は、200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAであり得る。
【0082】
第3の形成ステップにおいて、第3の金型の製品面のうちの少なくとも1つは、約100~300℃、好ましくは200~280℃に加熱されることが可能である。
【0083】
第3の形成ステップにおいて、パルプスラリ層は、約390~1570kPa、好ましくは580~1170kPaの圧力で、第3の金型の第2の製品面に対してプレスされることが可能である。
【0084】
第3の形成ステップにおいて、パルプスラリ層は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第3のプレス時間の間、第3の金型の第2の製品面に対してプレスされることが可能である。
【0085】
第3の形成ステップにおいて、パルプスラリ層の初期含水量は、約25~45重量%または25~40重量%、好ましくは約30~40重量%または30~35重量%であり得、最終含水量は、約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満であり得る。
【0086】
本発明の第3の態様によれば、上述の内容にしたがって、レセプタクルを形成する方法が提供され、レセプタクルの開口部分に対応するプレス工具および移送工具のそれぞれの部分に非形成空間が設けられる。
【0087】
レセプタクルは、固体、液体、および/または気体の内容物を収容するように適合された容器、カップ、ジャー、缶、ボトルなどであり得る。これは、例えばパーソナルケア製品、ホームケア製品、食品または飲料などの様々な製品の容器として使用されることが可能である。
【0088】
開口部分は、レセプタクルのリムを呈してもよい。
【0089】
本発明の第4の態様によれば、パルプスラリから3D成形製品を製造するためのシステムが提供され、システムは、上述の内容によるピックアッププレス装置と、第2のペアの協働するプレス工具とを備える。
【0090】
第2のペアの協働するプレス工具は各々、それぞれの工具ホルダに取り付けられてもよい。第2のペアの協働するプレス工具のうちの少なくとも1つの工具は、多孔質製品面を呈してもよい。工具のうちの少なくとも1つは、真空源に接続され得る。
【0091】
システムは、第2の移送工具と、第3のペアの協働するプレス工具とをさらに備えることができる。
【0092】
第2の移送工具は、第2のペアのプレス工具から第3のペアのプレス工具の製品面にパルプスラリ層を移送するように適合されることが可能である。
【0093】
第2の移送工具は圧力調節器に接続されてもよく、これは真空または空気圧を生成することができる。
【0094】
第2の移送工具はまた、移送工具ホルダに取り付けられてもよい。
【0095】
第3のペアの協働するプレス工具は各々、それぞれの工具ホルダに取り付けられてもよい。第3のペアの協働するプレス工具の工具のうちの少なくとも1つは、多孔質製品面を呈してもよい。工具のうちの少なくとも1つは、真空源に接続され得る。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1a】ピックアッププレス装置の1対のピックアッププレス工具を示す概略図である。
【
図1b】ピックアッププレス装置の1対のピックアッププレス工具を示す概略図である。
【
図1c】ピックアッププレス装置の1対のピックアッププレス工具を示す概略図である。
【
図1d】ピックアッププレス装置の1対のピックアッププレス工具を示す概略図である。
【
図2a】ピックアッププレス装置の移送工具を示す概略図である。
【
図2b】ピックアッププレス装置の移送工具を示す概略図である。
【
図2c】ピックアッププレス装置の移送工具を示す概略図である。
【
図2d】ピックアッププレス装置の移送工具を示す概略図である。
【
図2f】ピックアッププレス装置の移送工具の実施形態を示す概略図である。
【
図2g】ピックアッププレス装置の移送工具の別の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
図1aは、ピックアッププレス工具10、協働するプレス工具20、およびパルプスラリ2を有する容器1を概略的に示す。
【0098】
ピックアッププレス工具10は、パルプスラリ2からパルプスラリ層3をピックアップすること、および第1のプレスステップでパルプスラリ層3をプレスすることの両方に適合されている。
【0099】
ピックアッププレス工具10は工具ホルダ11に取り付けられており、これはピックアッププレス工具とともに、圧力調節器P1に接続された真空チャンバ12を画定する。圧力調節器は、少なくとも部分真空(すなわち、周囲空気圧よりも低い空気圧)および/または周囲空気圧よりも高い空気圧を選択的に生成する能力を有し得る。
【0100】
ピックアッププレス工具は自立型とすることができ、これは、工具の工具壁部分が十分に剛性であり、操作中に工具壁部分がその形状を維持するための支持構造を必要としないように十分に高い融点を有することを意味する。
【0101】
ピックアッププレス工具10は、多孔質の第1の製品面、すなわちこのようなパルプ製品の形成中にパルプスラリ層またはパルプ製品と接触するように適合された工具の多孔質表面を呈する。多孔質の第1の製品面の多孔度は、10~90%であり得る。
【0102】
多孔質の第1の製品面は、直径0.1~0.7mm、好ましくは0.25~0.6mmの孔サイズを有する細孔をさらに呈してもよい。
【0103】
図1aに示されるように、プレス工具20は、工具ホルダ21に取り付けられることも可能である。工具ホルダ21は、プレス工具20とともに真空チャンバ12を画定することができる。真空チャンバ12は、圧力調節器P2に接続されることが可能である。圧力調節器は、少なくとも部分真空(すなわち、周囲空気圧よりも低い空気圧)および/または周囲空気圧よりも高い空気圧を選択的に生成する能力を有し得る。
【0104】
プレス工具20は、第2の製品面を呈する。第2の製品面は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。あるいは、第2の製品面は、多孔質部分および非多孔質部分を呈してもよい。
【0105】
ピックアッププレス工具10およびプレス工具20は、互いに対して垂直に移動可能である。
【0106】
プレス工具10、20の第1の相対位置において、製品面のうちの少なくとも1つは、液体状であり得るパルプスラリ層3をその製品面で受けるように配置される。
図1a参照。
【0107】
プレス工具10、20の第2の相対位置において、製品面は、パルプスラリ層をプレスするために互いに向かってプレスされる。
図1d参照。
【0108】
その結果、ピックアッププレス工具10は、パルプスラリ層のピックアップからパルプスラリ層のプレスまで、プレス工具20に対するその配向を維持することができる。
【0109】
さらに、ピックアッププレス工具10は、パルプスラリ2を有する容器1からパルプスラリ層3をピックアップするステップを開始するために、方向Y1に移動することができる。
図1a参照。
【0110】
さらに、ピックアッププレス工具10は、第1のプレスステップでパルプスラリ層3をプレスするステップを開始するために、方向Y2に移動することができる。
図1c参照。
【0111】
あるいは、または付加的に、プレス工具20は、第1のプレスステップを開始するために、方向Y1に移動してもよい。
【0112】
図1bは、パルプスラリ2を保持する容器1内に浸漬されたピックアッププレス工具10を概略的に示す。ピックアッププレス工具がパルプスラリ2に浸漬されている間、圧力調節器P1は真空を生成し、パルプ繊維3をピックアッププレス工具10の製品面に引き寄せてもよい。
【0113】
図1cは、パルプ繊維3をプレス工具20に向けて移動させる、すなわち第1のプレスステップを開始する、ピックアッププレス工具10を概略的に示す。
【0114】
移動中、圧力調節器P1は真空を生成し、パルプ繊維3をピックアッププレス工具10の製品面に付着させてもよい。
【0115】
図1dは、プレス位置にあるピックアッププレス工具10およびプレス工具20を概略的に示す。その結果、ピックアッププレス工具10およびプレス工具20は、パルプスラリ層3の第1のプレスステップを実行するように適合されたプレス構成を形成することができる。
【0116】
ピックアッププレス工具10およびプレス工具20、ならびにこれらの関連する工具ホルダ11、21は、開放位置とプレス位置との間で互いに対して移動可能である。プレス位置では、
図1dに示されるように、工具10、20は互いに向かって押しつけられ、こうして、パルプ製品3’が形成されるように、それぞれの工具10、20の製品面の間でパルプスラリ層をプレスする。
【0117】
図1dに示されるように、ピックアッププレス工具およびプレス工具の一方または両方には、加熱要素13、23が供給され得る。加熱要素は、工具の製品面に熱を供給するように適合されている。
【0118】
加熱要素は、エネルギー供給源E1、E2によってエネルギー供給されることが可能である。さらに、加熱要素は、コントローラCによって制御されることが可能である。
【0119】
加熱要素は、電気加熱要素、熱風または液体加熱要素、または誘導加熱要素であってもよい。
【0120】
プレス位置にあるとき、加熱要素13、23の一方または両方によって熱が供給され得る。
【0121】
パルプ製品3’のプレスの間、一方または両方の圧力調節器P1、P2は、パルプ製品3’からの水蒸気の排出を支援するために、真空を提供し得る。
【0122】
代替として、圧力調節器P1、P2の一方は真空を提供し、他方は周囲空気圧よりも高い圧力を提供してもよい。
【0123】
任意選択的に、プレスプロセス中に工具を通じて熱風または湯気が導入されてもよい(
図1d)。
【0124】
ピックアッププレスをパルプスラリに浸漬する代わりとして、パルプスラリは、スプレーコーティングまたは注入などのコーティング操作によって適用されることが可能である。任意選択的に、コーティング操作中、圧力調節器P1は真空を生成し、パルプ繊維3をピックアッププレス工具10の製品面に向かって引き寄せてもよい。
【0125】
例えば製品3’、3’’、3’’’の全てまたは一部を徐々に形成するため、および/またはコーティング、装飾などのような追加の特徴を製品に適用するために、2つ以上の連続するプレスステップが使用され得ることにも留意されたい。
【0126】
図2a~
図2dは、第1のプレス工具10、20から第2のペアのプレス工具40、50に製品3’を移送するために使用されることが可能な第1の移送工具30を示す。
図2a~
図2e参照。
【0127】
第1の移送工具30は第3の圧力調節器P3に接続されてもよく、これは真空または空気圧を生成することができる。移送工具30はまた、第3の圧力調節器P3に接続された真空チャンバ32を画定するように、移送工具ホルダ31に取り付けられてもよい。
【0128】
パルプ繊維の移送中に、ピックアッププレス工具10からパルプ繊維を解放させるために、周囲圧力よりも高い空気圧が第1の圧力調節器P1によって生成され得る。
【0129】
あるいは、または補足として、第3の圧力調節器P3によって真空が生成され、パルプ繊維が移送工具30によって受け取られるようにしてもよい。
【0130】
第1の移送工具には加熱要素が供給されてもよい(図示せず)。加熱要素は、第1の移送工具の製品面に熱を供給するように適合されている。加熱要素は、エネルギー供給源によってエネルギー供給されることが可能である。さらに、加熱要素は、コントローラCによって制御されることが可能である。
【0131】
加熱要素は、電気加熱要素、熱風または液体加熱要素、または誘導加熱要素であってもよい。
【0132】
第1の移送工具30は、
図2a~
図2dに示されるように、製品3’の一部を形成するように適合されている。
【0133】
第1の移送工具30は、多孔質製品面を呈することができる。
【0134】
第1の移送工具30の多孔質製品面は、10~90%の多孔度を有し得る。
【0135】
第1の移送工具30の多孔質製品面は、直径0.1~0.7mm、好ましくは0.25~0.6mmの孔サイズを有する細孔を呈し得る。
【0136】
図2aおよび
図2bに示されるように、第1の移送工具30は、第1の形成表面部分34および第2の形成表面部分35を備えることができる。
【0137】
図2aに示されるように、第1の形成表面部分34は、その間に形成ギャップ80が画定されるように、多孔質の第1の製品面の第1の部分14と一致するように構成されることが可能である。形成ギャップ80は、所望のパルプスラリ層厚さを画定することができる。
【0138】
第2の形成表面部分35は、第2の形成表面部分35および多孔質の第1の製品面の第2の部分15によって非形成空間90が画定されるように、多孔質の第1の製品面の第2の部分15から分岐するように構成されることが可能である。非形成空間90は、形成ギャップ80よりも大きい厚さを有することができる。
【0139】
非形成空間90は、1つのみのパルプスラリ層面と第2の形成表面部分35および多孔質の第1の製品面の第2の部分15のうちの1つとの間の接触を提供するように構成されることが可能である。
【0140】
非形成空間90は、第2の形成表面部分35と多孔質の第1の製品面の第2の部分15との間の空間を呈し、これは、形成ギャップ80の厚さの20倍超、好ましくは15倍超、10倍超、または形成ギャップ80の前記厚さの5倍超である。
【0141】
非形成空間90は、プレス方向に見て、雌型の最も内側の部分および/または雄型の遠位部分に設けられることが可能である。
図2f参照。
【0142】
あるいは、非形成空間90は、プレス方向に見て、雌型の最も外側の部分および/または雄型の遠位部分に設けられることが可能である。
図2g参照。
【0143】
雌型は、ピックアッププレス工具またはプレス工具であり得る。雄型は、移送工具であり得る。
【0144】
形成ギャップ80は、形成表面部分34および多孔質の第1の製品面の第1の部分14の両方がそれぞれのパルプスラリ層面と接触するのに十分に小さい厚さを呈することができる。
【0145】
形成ギャップ80は、周囲圧力よりも高い圧力をパルプ製品3’上に提供するように構成されることが可能である。
【0146】
その結果、パルプ製品3’はピックアッププレス工具10の多孔質の第1の製品面から第1の移送工具30に移送されるので(
図2a参照)、第1の移送工具30の形成表面部分34および多孔質の第1の製品面の第1の部分14の両方と接触しているパルプ製品3’の部分に周囲圧力よりも高い圧力が印加され得る。
【0147】
第1の形成表面部分34は、製品の移送中に製品3’の一部と接触するように適合されることが可能である。
【0148】
第1の形成表面部分34は、第1の移送工具の移動中に第1の移送工具でパルプ製品3’を受け取って維持するのに十分な接触表面積を呈することができる。
【0149】
第1の形成表面部分34は、多孔質の第1の製品面の総面積の10~99.9%、好ましくは25~95%に対応する接触表面積を呈することができる。
【0150】
図2bに示されるように、パルプ製品3’の少なくとも一部は、第1のプレス工具10、20から第2のペアのプレス工具40、50への第1の移送工具の移動の間、自由であり得る。
【0151】
その結果、第1のペアのプレス工具10、20から第2のペアのプレス工具40、50にパルプ製品3’を移送する、第1の移送工具の移動の間、第1の形成表面部分34はパルプスラリ層面と接触することができ、第2の形成表面部分35は自由であり得る。
【0152】
第1の移送工具30の多孔質製品面の形状は、第2のペアのプレス工具のうちのプレス工具の製品面の形状と実質的に一致することができる。
図2c参照。
【0153】
その結果、パルプ製品3’はプレス工具40の製品面に移送されるので、パルプ製品3’の少なくとも1つの自由部分は、第1の移送工具30の第2の形成表面部分35と接触させられることが可能である。これにより、パルプ製品3’の少なくとも1つの自由部分は、パルプ製品3’が第1の移送工具30からプレス工具40の製品面に移送される際に形成されることが可能である。
図2c参照。
【0154】
第1の移送工具30はその後、
図2dに示されるように、プレス工具40から取り外されることが可能である。次に、
図2eに示されるように、第2のペアのプレス工具40、50を使用して、第2のプレスステップにおいてパルプ製品3’’がプレスされることが可能である。
【0155】
第1の移送工具30がピックアッププレス工具10から製品を移送するときに(
図2a)第3の圧力調節器P3によって真空が生成され、パルプ繊維を移送工具30によって受け取らせることができる。付加的に、または代わりに、第1のペアのプレス工具10、20から第2のペアのプレス工具40、50への第1の移送工具30の移動中に、真空が生成されてもよい。その結果、移送中に製品から水が排出され得る。
【0156】
第1の移送工具30は、パルプ製品3’の少なくとも一部が移送中に第1の移送工具30の多孔質製品面と接触でき、パルプ製品3’の少なくとも一部が自由であり得る、すなわち接触しないように適合されるので、パルプ製品3’の異なる部分から異なるレベルの水が排出され得る。
【0157】
その結果、第2のペアのプレス工具40、50に移送されたパルプ製品3’は、第1のパルプスラリ層部分および第2のパルプスラリ層部分を呈することができ、第1および第2のパルプスラリ層部分は並置され、第1のパルプスラリ層部分は、第2のパルプスラリ層部分よりも高いかまたは低いレベルの含水量を有する。
【0158】
第2のペアのプレス工具40、50から第3のペアのプレス工具(図示せず)にパルプ製品3’’’を移送するために、第2の移送工具が使用され得る。
【0159】
第2の移送工具は、本質的に第1の移送工具と同じように設計されてもよく、または異なる設計を有してもよい。その結果、第2の移送工具は、第2のペアのプレス工具から第3のペアのプレス工具に製品を移送するために、または製品の一部を移送および形成の両方を行うために、使用され得る。
【0160】
本発明によれば、
図1a~
図1dおよび
図2a~
図2eを参照して記載された内容にしたがって、ピックアッププレス工具、プレス工具、ピックアッププレス工具に接続された真空源、および第1の移送工具を備える、パルプスラリから3D成形製品を製造するプロセスで使用するためのピックアッププレス装置が提供される。
【0161】
本発明によれば、パルプスラリから3D成形製品を製造する方法もまた提供される。
【0162】
一実施形態では、
図1a~
図1dおよび
図2a~
図2cに関して記載された内容にしたがってステップが実行される。
【0163】
3D成形製品は、例えば固体、液体、および/または気体の内容物を収容するように適合された容器、カップ、ジャー、缶、ボトルなどのレセプタクルであり得る。
【0164】
次いで、レセプタクルの開口部分に対応するプレス工具および移送工具のそれぞれの部分に非形成空間90が提供され得る。開口部分は、レセプタクルのリムを呈してもよい。
【0165】
ここで、
図3を参照して、製造プロセスについて説明される。
【0166】
第1のステップ101において、例えば
図1aを参照して記載されたように、パルプスラリ層が提供され、パルプスラリ層は、第1の金型の多孔質の第1の製品面に適用される。これは、多孔質の第1の製品面を呈するピックアッププレス工具および第2の製品面を呈するプレス工具を備える第1の金型を提供することによって達成され得る。第2の製品面は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。あるいは、第2の製品面は、多孔質部分および非多孔質部分を呈してもよい。
【0167】
ピックアッププレス工具は、多孔質の第1の製品面にパルプスラリ層を適用するステップにおいて、パルプスラリからパルプスラリ層をピックアップするように適合され得る。
【0168】
パルプスラリ層のピックアップは、ピックアッププレス工具の裏側に真空を適用しながら、パルプスラリに第1の金型の多孔質ピックアッププレス工具を浸漬することによって実行され得る。
【0169】
パルプスラリ層のピックアップ中の多孔質の第1の製品面の裏側での第1の圧力は、300~700mbarA(絶対ミリバール)、好ましくは400~600mbarAであり得る。
【0170】
工具を通る流量は、50から1000m3/hの間とすることができる。好ましくは、流量は、工具の多孔質の第1の製品面の平方メートルあたり1000から30000m3/hの間とすることができる。
【0171】
その結果、パルプスラリ層が多孔質の第1の製品面に適用され得るように、ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面を通じて真空引きされることが可能である。
【0172】
ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面は、直径0.1~0.7mm、好ましくは0.25~0.6mmの孔サイズを有する10~90%の表面多孔度を有し得る。
【0173】
あるいは、パルプスラリは、スプレーコーティングまたは注入などのコーティング操作によってピックアッププレス工具に適用されてもよい。任意選択的に、コーティング操作中、ピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面を通じて真空を引き、パルプ繊維をピックアッププレス工具の製品面に向かって引き寄せてもよい。
【0174】
第2のステップ102において、パルプスラリ層は第1の金型内でプレスされる。その結果、パルプスラリ層を有するピックアッププレス工具は、パルプスラリまたはその初期コーティング位置から持ち上げられ、プレス工具に向かって移動させられ、これによってパルプスラリ層はプレス工具の第2の製品面に対してプレスされる。これは、ピックアッププレス工具が持ち上げられてプレス工具まで直接移動させられるように、一度の垂直移動で実行され得る。
【0175】
あるいは、ピックアッププレス工具がパルプスラリから持ち上げられ、プレス工具がピックアッププレス工具まで移動させられてもよい。
【0176】
あるいは、ピックアッププレス工具およびプレス工具の両方が、互いに向かって垂直方向に移動させられてもよい。
【0177】
この第1のプレスステップ102において、周りの周囲圧力よりも低い圧力が第1の金型の多孔質製品面の裏側に印加され、こうして多孔質製品面の裏側に真空をもたらし、工具を通じて湯気などの溶剤蒸気が引き込まれる。
【0178】
多孔質製品面の裏側に印加される圧力は、低レベルまたは中レベルほどの真空であり得る。つまり、第1の圧力は、200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAであり得る。
【0179】
工具を通る流量は、50から1000m3/hの間とすることができる。好ましくは、流量は、工具の多孔質製品面の平方メートルあたり1000から30000m3/hの間とすることができる。
【0180】
第1の金型のプレス工具の第2の製品面は、約150~500℃、好ましくは150~400℃、200~500℃、200~400℃、または200~300℃、およびほとんどの場合には240~280℃に加熱され得る。
【0181】
第1の金型のピックアッププレス工具の多孔質の第1の製品面は、約100~150℃に加熱され得る。
【0182】
ピックアッププレス工具およびプレス工具の製品面の間のプレス圧は、約390~1570kPa、およびほとんどの場合には580~1170kPa程度であり得る。
【0183】
プレス圧は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第1のプレス時間の間に印加され得る。ほとんどの設定では、0.5~1.5秒程度のプレス時間で十分であり、多くの場合、0.5~1.0秒でもよい。
【0184】
典型的には、この第1のステップにおいて、パルプスラリ層の初期含水量は70~90重量%であり、プレスステップが実行された後、最終含水量は45~65重量%、典型的には約50~60重量%であり得る。
【0185】
第1のプレスステップ102の後、今やその溶剤の相当量が除去されたパルプスラリ層は、第2のプレス金型に移送103され得る。移送は、
図2a~
図2eに関連して上述されたように、移送工具によって実行され得る。その結果、パルプスラリ層の少なくとも一部が、移送中に形成され得る。
【0186】
移送ステップの間、パルプスラリ層が移送工具壁に保持されるように、移送工具壁の裏側に真空が適用され得る。移送工具壁からパルプスラリ層を解放するために、代わりに移送工具壁の裏側に加圧空気を適用することが可能である。
【0187】
あるいは、または補足として、真空は第2の金型の多孔質製品面の裏側に適用され、パルプスラリ層を第2の金型によって受け取らせてもよい。
【0188】
移送の間、移送工具の製品面は、約100~150℃に加熱され得る。
【0189】
その結果、パルプスラリ層の追加の乾燥効果が達成可能であり、および/またはパルプスラリ層が成形性のために繊維の暖かさを維持することができる。
【0190】
第2の金型は1対の嵌合するプレス工具を備えてもよく、そのうちの一方は多孔質製品面を有してもよく、これはパルプスラリ層と接触し、これを通じて真空引きすることができる。
【0191】
第2の金型は、多孔質製品面を呈する第1のプレス工具と、第2の製品面を呈する第2のプレス工具とを備え得る。第2の製品面は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。あるいは、第2の製品面は、多孔質部分および非多孔質部分を呈してもよい。
【0192】
移送103は、移送工具によって、第1の金型から第2の金型の第1のプレス工具の多孔質製品面にパルプスラリ層を移送することによって実行され得る。
【0193】
第2のプレスステップ104において、パルプスラリ層は、第2の金型内でプレスされ得る。パルプスラリ層はその後、第2の金型の第2のプレス工具の第2の製品面に対してプレスされ得る。この第2のプレスステップ104において、周りの周囲圧力よりも低い圧力が金型の多孔質製品面の裏側に印加され、こうして多孔質製品面の裏側に真空をもたらし、工具を通じて湯気などの溶剤蒸気が引き込まれる。
【0194】
第2の金型の多孔質製品面は、0.1~1.2mm、好ましくは0.25~1.0mmの孔サイズを有する25~50%の多孔度を有し得る。
【0195】
しかしながら、第2のプレスステップ104では、第2の金型の多孔質製品面の裏面に印加される圧力は、第1のプレスステップ102で提供される圧力よりも高くてもよい。
【0196】
具体的には、第1のプレスステップ102で提供される圧力は、第2のプレスステップ104で提供される圧力の1~99%、好ましくは50~99%、90~99%、95~99%、または99~99.9%であり得る。
【0197】
第2のプレスステップにおいて、第2の金型の多孔質製品面の裏側に印加される絶対圧力は、200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAであり得るが、常に第1のプレスステップの場合よりも高い。
【0198】
工具を通る流量は、50から1000m3/hの間とすることができる。好ましくは、流量は、工具の多孔質製品面の平方メートルあたり1000から30000m3/hの間とすることができる。
【0199】
第2の金型の製品面のうちの少なくとも1つは、約110~500℃、好ましくは110~400℃、150~500℃、150~400℃、200~500℃、200~400℃、または200~300℃、および多くの場合には240~280℃に加熱され得る。典型的には、第2の金型を構成し、パルプスラリ層と接触する全ての製品面が加熱され得る。
【0200】
第2の金型の第1および第2のプレス工具の製品面の間のプレス圧は、約390~1570kPa、ほとんどの場合には580~1170kPa程度であり得る。
【0201】
プレス圧は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第2のプレス時間の間に印加され得る。ほとんどの設定では、0.5~1.5秒程度のプレス時間で十分であり、多くの場合、0.5~1.0秒でもよい。
【0202】
典型的には、この第2のプレスステップにおいて、パルプスラリ層の初期含水量は、約45~65重量%、典型的には約50~60重量%であり得る。
【0203】
最終含水量は、約25~40重量%、好ましくは約30~35重量%であり得る。
【0204】
第2のプレスステップ104の後、今やその溶剤の相当量が除去されたパルプスラリ層は、第3のプレス金型に移送105され得る。移送106は、移送ステップ103と同じ方法で、同様の機器を用いて実行され得る。その結果、パルプスラリ層の少なくとも一部が、移送中に形成され得る。
【0205】
あるいは、第2の移送工具が形成することなくパルプスラリ層を移送するように、機器は異なってもよい。
【0206】
第3のプレス金型は、本質的に第2のプレス金型として設計され得る。
【0207】
第3の金型は1対の嵌合するプレス工具を備えてもよく、そのうちの一方は多孔質製品面を有してもよく、これはパルプスラリ層と接触し、これを通じて真空引きすることができる。
【0208】
第3の金型は、多孔質製品面を呈する第1のプレス工具と、第2の製品面を呈する第2のプレス工具とを備え得る。第2の製品面は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。あるいは、第2の製品面は、多孔質部分および非多孔質部分を呈してもよい。
【0209】
第3のプレスステップ106において、パルプスラリ層は、第3の金型内でプレスされ得る。パルプスラリ層はその後、第3の金型の第2のプレス工具の第2の製品面に対してプレスされ得る。この第3のプレスステップ106において、周りの周囲圧力よりも低い圧力が多孔質製品面の裏側に印加され、こうして多孔質製品面の裏側に真空をもたらし、工具を通じて湯気などの溶剤蒸気が引き込まれる。
【0210】
第3の金型の多孔質製品面は、0.1~1.2mm、好ましくは0.25~1.0mmの孔サイズを有する25~50%の多孔度を有し得る。
【0211】
しかしながら、第3のプレスステップ106では、第3の金型の多孔質製品面の裏面に印加される圧力は、第2のプレスステップ104で提供される圧力よりも高くてもよい。
【0212】
具体的には、第2のプレスステップ104で提供される圧力は、第3のプレスステップ106で提供される圧力の1~99%、好ましくは50~99%、90~99%、95~99%、または99~99.9%であり得る。
【0213】
第3のプレスステップにおいて、第3の金型の多孔質製品面の裏側で提供される絶対圧力は、200~900mbarA、好ましくは300~800mbarAであり得るが、常に第2のプレスステップの場合よりも高い。
【0214】
工具を通る流量は、50から1000m3/hの間とすることができる。好ましくは、流量は、工具の多孔質製品面の平方メートルあたり1000から30000m3/hの間とすることができる。
【0215】
第3の金型の製品面のうちの少なくとも1つは、約100~400℃、好ましくは100~300℃、150~400℃、150~300℃、200~300℃、または200~280℃、および多くの場合には240~280℃に加熱され得る。典型的には、第3の金型を構成し、パルプスラリ層と接触する全ての製品面が加熱され得る。
【0216】
第3の金型の製品面の間のプレス圧は、約390~1570kPa、およびほとんどの場合には580~1170kPa程度であり得る。
【0217】
プレス圧は、0.1~4.0秒、好ましくは0.5~2.0秒の第3のプレス時間の間に印加され得る。ほとんどの設定では、0.5~1.5秒程度のプレス時間で十分であり、多くの場合、0.5~1.0秒でもよい。
【0218】
典型的には、この第3のプレスステップにおいて、パルプスラリ層の初期含水量は、約25~45重量%または25~40重量%、好ましくは約30~40重量%または30~35重量%であり得、最終含水量は、約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満であり得る。
【0219】
第3のプレスステップ106の後、今やその溶剤のほとんどが除去されたパルプスラリ層は、機械から移送107され得る。
【0220】
任意選択的に、こうして本質的に乾燥した製品に対して、表面処理、切断、または印刷などの追加ステップが実行されてもよい。製品はその後、包装、保管、および出荷され得る。
【0221】
第3のプレスステップ106、ひいてはその関連する移送ステップ105もまた任意選択的であることに留意されたい。したがって、直後に出力ステップ107が続く第2のプレスステップ104の後にプロセスが終了してもよい。
【0222】
したがって、第1のプレスステップにおいて、パルプスラリ層の初期含水量は70~90重量%であり得、最終含水量は、25~50重量%、好ましくは約30~35重量%であり得る。
【0223】
第2のプレスステップにおいて、パルプスラリ層の初期含水量は、約25~50重量%、好ましくは約30~35重量%であり得、最終含水量は、約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満であり得る。
【0224】
さらに、方法は、パルプスラリ層の少なくとも1つの任意選択的な洗浄ステップを備えてもよい。洗浄ステップは、移送ステップ103の後で第2のプレスステップ104の前に、および/または移送ステップ105の後で第3のプレスステップ106の前に実行され得る。
【0225】
さらに、方法は、積層物またはコーティングがパルプスラリ層またはパルプ製品に適用される少なくとも1つのステップを備えてもよい。積層物またはコーティングは、第1と第2のプレスステップの間に、または第2と第3のプレスステップの間に、または第3のプレスステップの後に適用され得る。
【0226】
提供される真空源は、加熱/プレスステップの間に生成された量の湯気を排出するのに十分な流量を提供するような、ならびにそれぞれの金型に適用される真空によって引き出される液体水を収容するような寸法でなければならないことに留意されたい。
【国際調査報告】