(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】腰痛を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20220215BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20220215BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220215BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220215BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220215BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220215BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/545
A61P19/02
A61P25/04
A61P25/02 101
A61P29/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538792
(86)(22)【出願日】2020-01-02
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2020050015
(87)【国際公開番号】W WO2020141473
(87)【国際公開日】2020-07-09
(32)【優先日】2019-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516300656
【氏名又は名称】メゾブラスト・インターナショナル・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィウ・イテスク
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・ブラウン
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB44
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZA08
4C087ZA21
4C087ZA96
4C087ZB21
(57)【要約】
それを必要とする対象における腰痛を治療する方法であって、対象に間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を投与する工程を含み、腰痛が、対象における隣接する健康な椎間板の高さと比較して実質的に低減されていない椎間板高さを有する椎間板に関連する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における腰痛を治療する方法であって、対象に間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を投与する工程を含み、腰痛が、対象における健康な隣接する椎間板の高さと比較して実質的に低減されていない椎間板高さを有する椎間板に関連する、方法。
【請求項2】
腰痛が、対象における隣接する健康な椎間板の高さと比較して<30%の椎間板高さの喪失を有する椎間板に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腰痛が、非神経根が起源である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
腰痛が、突出が3mmまでの椎間板ヘルニア形成に関連する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
腰痛が、椎間板への神経進入に関連する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
腰痛が、椎間板における炎症に関連する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
神経進入又は炎症が、椎間板腔、又は髄核、又は椎間板の線維輪にある、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
MLPSCが、少なくとも約2800pg/10
6細胞、又は少なくとも約2810pg/10
6細胞、又は少なくとも約2820pg/10
6細胞、又は少なくとも約2830pg/10
6細胞、又は少なくとも約2840pg/10
6細胞、又は少なくとも約2850pg/10
6細胞、又は少なくとも約2860pg/10
6細胞、又は少なくとも約2870pg/10
6細胞、又は少なくとも約2880pg/10
6細胞、又は少なくとも約2890pg/10
6細胞、又は少なくとも約2900pg/10
6細胞、又は少なくとも約2910pg/10
6細胞、又は少なくとも約2920pg/10
6細胞、又は少なくとも約2930pg/10
6細胞、又は少なくとも約2940pg/10
6細胞、又は少なくとも約2950pg/10
6細胞、又は少なくとも約2960pg/10
6細胞、又は少なくとも約2970pg/10
6細胞、又は少なくとも約2980pg/10
6細胞、又は少なくとも約2990pg/10
6細胞、又は少なくとも約3000pg/10
6細胞の量で培養された時にTGFβ1を放出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
MLPSCが、少なくとも約400pg/ml、又は少なくとも約405pg/ml、又は少なくとも約410pg/ml、又は少なくとも約415pg/ml、又は少なくとも約420pg/ml、又は少なくとも約425pg/ml、又は少なくとも約430pg/ml、又は少なくとも約435pg/ml、又は少なくとも約440pg/ml、又は少なくとも約445pg/ml、又は少なくとも約450pg/ml、又は少なくとも約455pg/ml、又は少なくとも約460pg/ml、又は少なくとも約465pg/ml、又は少なくとも約470pg/ml、又は少なくとも約475pg/ml、又は少なくとも約480pg/ml、又は少なくとも約485pg/ml、又は少なくとも約490pg/ml、又は少なくとも約495pg/ml、又は少なくとも約500pg/mlの量で培養された時に、TGFβ1を放出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
MLPSCが、椎間板腔の線維輪においてSema3A発現を増強するのに十分な量でTGFβ1を放出する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
間葉系前駆細胞又は幹細胞が、免疫選択によって単離される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
免疫選択された細胞が、投与の前に培養拡大される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
間葉系前駆細胞又は幹細胞が、培養拡大された間葉系幹細胞である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
組成物が、約1×10
6細胞~約20×10
6細胞の用量で対象に投与される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
組成物が、約6×10
6細胞の用量で対象に投与される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、約18×10
6細胞の用量で対象に投与される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、単回投薬として投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、椎間板の髄核又は線維輪に投与される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
MLSPCの投与が、投与後、少なくとも1か月間、又は少なくとも6か月間、又は少なくとも12か月間、又は少なくとも18か月間、又は少なくとも24か月間、視覚的アナログ尺度(VAS)によって決定される少なくとも50%の痛みの低減をもたらす、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
MLSPCの投与が、投与後、少なくとも1か月間、又は少なくとも6か月間、又は少なくとも12か月間、又は少なくとも18か月間、又は少なくとも24か月間、オスウェストリー障害指数(ODI)によって決定される少なくとも15ポイントの痛みの低減をもたらす、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腰痛を治療するための間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛は、炎症に関連する慢性状態である。この状態は、米国の成人人口の約3分の2に影響を与え、通院の顕著な増加をもたらし、能力障害に対するかなりの効果を有する。
【0003】
腰痛として主に顕在化する椎間板変性は、社会に対する相当の社会的及び経済的負担である。状態は、長期間の身体障害の増加及びクオリティオブライフの低減に関連する。推定で人口の80%が、一生の間に少なくとも1回の腰痛のかなりのエピソードを経験し、労働人口の約2.5%が、腰痛により年に数回の病気休暇を取る。今の西欧諸国における腰痛の直接的な費用は、数十億ドルと推定され、そのほとんどは、一般開業医、理学療法士及び他の旧来の開業医の相談に費やされている。2、3外科的処置を含む間接的な総支出は、10倍よりも高い場合がある。4
【0004】
腰痛の症状は、多くの場合、対象が制限された可動性に適応するようにそれらの生活スタイルを変えるにつれて、自然に解決する。しかしながら、多くの場合、1以上の痛みを伴うレベルで固定する脊椎固定術である「ゴールドスタンダード」による外科的介入が必要である。長期研究は、固定術が実際に隣接するレベルで変性を促進し得ることを示唆する。5偽関節も発生する場合があり、外科的固定術を繰り返し受けている対象は、依然として固定術の失敗を経験する場合がある。
【0005】
オキシコドン、モルヒネ及びオキシモルフォンは、慢性背部痛を有する患者の臨床研究において使用されている。オキシコドン徐放性組成物及びオキシコドン即放性組成物は、Haleら、Clin. J. Pain、15、179~183(1999)によって記載されているように、安定的な慢性の中度から重度の腰痛を有する患者の臨床研究において使用されている。AVINZA(登録商標)(Ligand Pharmaceuticals Incorporated社、San Diego、Calif.、USA)として特定されるモルヒネ硫酸塩の持続放出性製品は、1日1回投与について承認されており、24時間続くオピオイド療法を長期間必要とする中度から重度の痛みの緩和に適応される。オキシモルフォン持続放出性組成物は、Haleら、Clin. J. Pain、6(1)、21~28(2005)によって記載されているように、中度から重度の慢性腰痛を有する歩行可能な患者の臨床研究において使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7205159号
【特許文献2】米国特許第7271007号
【特許文献3】米国特許出願公開第20040228761号
【特許文献4】米国特許出願公開第20040265926号
【特許文献5】米国特許第4593089号
【特許文献6】米国特許第4751190号
【特許文献7】米国特許第5571728号
【特許文献8】米国特許第6248597号
【特許文献9】国際公開第1994/026877号
【特許文献10】米国特許第5173414号
【特許文献11】米国特許第5139941号
【特許文献12】国際公開第92/01070号
【特許文献13】国際公開第93/03769号
【特許文献14】米国特許第5,837,539号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Haleら、Clin. J. Pain、15、179~183(1999)
【非特許文献2】Haleら、Clin. J. Pain、6(1)、21~28(2005)
【非特許文献3】Osteloら(Spine 33巻、1号、90~94頁)
【非特許文献4】Abdel Shaheed Christina、Maher Chris G、Williams Kylie A、Day Richard、McLachlan Andrew、J. Efficacy, Tolerability, and Dose-Dependent Effects of Opioid Analgesics for Low Back Pain: A Systema'c Review and Meta-analysis. JAMA Internal Medicine. American Medical Association;2016年7月1日;176(7):958~68
【非特許文献5】Chou Roger、Deyo Richard、Friedly Janna、Skelly Andrea、Weimer Melissa、Fu Rochelle、Dana Tracy、Kraegel Paul、Griffin Jessica、Grusing Sara、Systemic Pharmacologic Therapies for Low Back Pain: A Systematic Review for an American College of Physicians Clinical Practice Guideline, Annals of internal medicine. American College of Physicians;2017年4月4日;166(7):480~492
【非特許文献6】Reips, U.-D.;Funke, F (2008).「Interval level measurement with visual analogue scales in Internet-based research: VAS Generator」Behavior Research Methods 40:699~704
【非特許文献7】Jeremy Fairbank Physiotherapy 1980;66:271~273
【非特許文献8】Fairbank JC、Pynsent PB、The Oswestry Disability Index. Spine、2000年11月15日;25(22):2940~52
【非特許文献9】Chenら、J Clin. Invest 2015;125(8):3226~3240
【非特許文献10】Tolofariら、Arthritis Res Ther 12(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
様々な治療剤が、慢性的な痛み及び/又は炎症を含む痛み及び/又は炎症を治療するために使用されているが、治療は、多くの場合、依然として無力である。特に、背部痛は、しばしば、そのような剤の慢性投与によってさえ、不十分に管理又は制御される。これは、剤の効力の喪失及び/又は剤による慢性治療に関連する副作用の発生に起因し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、実質的に変性した椎間板以外の状態に関連する腰痛を和らげることが示されている、改善された市販のエクスビボで拡大された同種間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)生成物に関する。生成物の1つの潜在的利点は、投与が、単回投薬のみの後に痛みの長期間の治療を提供し得ることである。
【0010】
したがって、本開示は、それを必要とする対象における腰痛を治療する方法であって、対象に間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を投与する工程を含み、腰痛が、実質的に変性した椎間板以外の状態に関連する、方法を提供する。
【0011】
一実施形態では、腰痛は、対象における隣接する健康な椎間板の高さと比較して実質的に低減されていない椎間板高さを有する椎間板に関連する。
【0012】
一実施形態では、腰痛は、対象における隣接する健康な椎間板の高さと比較して<30%の椎間板高さの喪失を有する椎間板に関連する。
【0013】
椎間板高さは、任意の適切な方法によって測定することができることが理解される。例えば、椎間板高さは、前後(AP)若しくは側面のX線写真、フレキシコン及び伸展X線写真、又はMRIスキャン等のX線写真によって評価され得る。
【0014】
一実施形態では、腰痛は、非神経根が起源であるか、又は圧縮力による刺激若しくは脊髄神経の神経節若しくは後根神経節に起因しない。
【0015】
一実施形態では、腰痛は、突出が3mmまでの椎間板ヘルニア形成に関連する。一例では、神経の圧迫のX線写真の証拠はない。
【0016】
一実施形態では、対象は、治療の前に、>40の視覚的アナログ尺度(VAS)の背部痛スコアを有する。一実施形態では、対象は、治療の前に、>30のオスウェストリー障害指数(ODI)を有する。
【0017】
一実施形態では、腰痛は、椎間板への神経進入に関連する。
【0018】
一実施形態では、腰痛は、椎間板における炎症に関連する。一例では、炎症は、炎症誘発性単球、T細胞、又は炎症誘発性サイトカインを分泌する他の免疫細胞に関連する。
【0019】
神経進入又は炎症は、椎間板腔、又は髄核、又は椎間板の線維輪にある。
【0020】
一実施形態では、対象は慢性腰痛を有する。例えば、対象は、少なくとも6か月間、慢性腰痛を有していてもよい。
【0021】
一実施形態では、対象は、対象が上述の1つ以上の条件を示すことに基づいて、治療のために評価又は選択される。
【0022】
一実施形態では、MLPSCは、少なくとも約2800pg/106細胞、又は少なくとも約2810pg/106細胞、又は少なくとも約2820pg/106細胞、又は少なくとも約2830pg/106細胞、又は少なくとも約2840pg/106細胞、又は少なくとも約2850pg/106細胞、又は少なくとも約2860pg/106細胞、又は少なくとも約2870pg/106細胞、又は少なくとも約2880pg/106細胞、又は少なくとも約2890pg/106細胞、又は少なくとも約2900pg/106細胞、又は少なくとも約2910pg/106細胞、又は少なくとも約2920pg/106細胞、又は少なくとも約2930pg/106細胞、又は少なくとも約2940pg/106細胞、又は少なくとも約2950pg/106細胞、又は少なくとも約2960pg/106細胞、又は少なくとも約2970pg/106細胞、又は少なくとも約2980pg/106細胞、又は少なくとも約2990pg/106細胞、又は少なくとも約3000pg/106細胞の量で培養された時に、TGFβ1を放出する。
【0023】
一実施形態では、MLPSCは、少なくとも約400pg/ml、又は少なくとも約405pg/ml、又は少なくとも約410pg/ml、又は少なくとも約415pg/ml、又は少なくとも約420pg/ml、又は少なくとも約425pg/ml、又は少なくとも約430pg/ml、又は少なくとも約435pg/ml、又は少なくとも約440pg/ml、又は少なくとも約445pg/ml、又は少なくとも約450pg/ml、又は少なくとも約455pg/ml、又は少なくとも約460pg/ml、又は少なくとも約465pg/ml、又は少なくとも約470pg/ml、又は少なくとも約475pg/ml、又は少なくとも約480pg/ml、又は少なくとも約485pg/ml、又は少なくとも約490pg/ml、又は少なくとも約495pg/ml、又は少なくとも約500pg/mlの量で培養された時に、TGFβ1を放出する。
【0024】
一実施形態では、組成物は、培養条件下でTGFβ1の放出を決定するためにアッセイされたMLPSCを含む。別の実施形態では、組成物は、培養条件下でTGFβ1の放出を決定するために試料採取された集団由来のMLPSCを含む(すなわち、組成物中の細胞それ自体が、培養条件下でTGFβ1の放出を決定するためにアッセイされていない)。
【0025】
一実施形態では、MLPSCは、インビトロでヒト線維輪細胞におけるコラーゲン産生を刺激するのに十分なTGFβ1を放出する。一実施形態では、MLPSCは、インビトロで線維輪細胞におけるSema3A発現を増強するのに十分な量でTGFβ1を放出する。
【0026】
一実施形態では、単離された細胞の集団は、培養拡大された間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む。代替の実施形態では、単離された細胞の集団は、新たに単離された間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む。
【0027】
一実施形態では、MLPSCは、免疫選択によって単離される。一実施形態では、細胞は、TNAPの発現のために免疫選択されている。一実施形態では、免疫選択された細胞は、TNAP及びSTRO-1を共発現する。一実施形態では、免疫選択された細胞は、TNAP及びSTRO-1brightを共発現する。一実施形態では、免疫選択された細胞は、投与の前に培養拡大される。
【0028】
一実施形態では、MLPSCは間葉系幹細胞である。一実施形態では、間葉系幹細胞は、投与の前に培養拡大される。
【0029】
一実施形態では、MLPSCは、組成物の全細胞集団の少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は100%を占める。
【0030】
一実施形態では、組成物は、MLPSC及び凍結保存剤を含む。
【0031】
一実施形態では、組成物中の凍結保存剤は、DMSO又はProfreeze(登録商標)である。
【0032】
一実施形態では、組成物は、42.5%(v/v)Profreeze(登録商標)/50%αMEM(v/v)/7.5%(v/v)DMSO中にMLPSCを含む。
【0033】
一実施形態では、組成物は、ヒアルロナン、例えば、少なくとも約0.5%のHA若しくはHA塩、少なくとも約0.6%のHA若しくはHA塩、少なくとも約0.7%のHA若しくはHA塩、少なくとも約0.8%のHA若しくはHA塩、少なくとも約0.9%のHA若しくはHA塩、少なくとも約1%のHA若しくはHA塩、少なくとも約1.5%のHA若しくはHA塩、少なくとも約2%のHA若しくはHA塩、少なくとも約2.5%のHA若しくはHA塩、少なくとも約3%のHA若しくはHA塩、少なくとも約3.5%のHA若しくはHA塩、少なくとも約4%のHA若しくはHA塩、少なくとも約4.5%のHA若しくはHA塩、少なくとも約5%のHA若しくはHA塩、少なくとも約6%のHA若しくはHA塩、少なくとも約7%のHA若しくはHA塩、少なくとも約8%のHA若しくはHA塩、少なくとも約9%のHA若しくはHA塩、又は少なくとも約10%のHA若しくはHA塩を更に含む。
【0034】
一実施形態では、組成物は、42.5%Profreeze(商標)/50%αMEM/7.5%DMSO中で凍結保存される。一実施形態では、組成物は、Plasmalyte-A、25%のHSA及びDMSO中で凍結保存される。
【0035】
一実施形態では、組成物は、約1×106細胞~約20×106細胞の用量で対象に投与される。一実施形態では、組成物は、約6×106細胞の用量で対象に投与される。一実施形態では、組成物は、約18×106細胞の用量で対象に投与される。
【0036】
一実施形態では、組成物は、単回投薬として投与される。
【0037】
一実施形態では、組成物は、椎間板の髄核又は線維輪に投与される。
【0038】
一実施形態では、MLSPCの投与は、投与後、少なくとも1か月間、又は少なくとも6か月間、又は少なくとも12か月間、又は少なくとも18か月間、又は少なくとも24か月間、視覚的アナログ尺度(VAS)によって決定される少なくとも50%の痛みの低減をもたらす。
【0039】
一実施形態では、(VAS)によって決定される50%の痛みの低減は、MLPSCの投与後の更なる介入なしで達成される。
【0040】
一実施形態では、MLSPCの投与は、投与後、少なくとも1か月間、又は少なくとも6か月間、又は少なくとも12か月間、又は少なくとも18か月間、又は少なくとも24か月間、オスウェストリー障害指数(ODI)によって決定される少なくとも15ポイントの低減をもたらす。
【0041】
一実施形態では、ODIによって決定される少なくとも15ポイントの低減は、MLPSCの投与後の更なる介入なしで達成される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】ヒト線維輪細胞の組換えTGFβ1への曝露は、細胞内フローサイトメトリーによって測定されるSema3A発現を増強する。
【
図2】ベースラインスコアからの最小二乗(LS)平均VAS腰痛(LBP)の変化。ベースライン分析からの事前に指定されたLS平均VAS LBP変化を調整して、治療後の介入/レスキューの交絡効果を除去した。治療後介入に起因して治療に失敗した対象は、介入後の全来診についてベースライン観察繰り越し(BOCF)補完した。データが欠落している時点でデータが欠落している対象は、分析から除外した。Osteloら(Spine 33巻、1号、90~94頁)は、慢性腰痛を有する患者におけると痛み及び機能を評価するための最も頻繁に使用される質問票についての最小限の重要な変化(MIC)を確立した。
【
図3】24か月のVASカテゴリー分布。介入に起因して治療に失敗した対象は、介入後の全来診についてBOCF補完した。データが欠落している患者についてのBOCF補完。
【
図4】12か月の結果。Osteloら(Spine 33巻、1号、90~94頁)は、慢性腰痛を有する患者における痛み及び機能を評価するための最も頻繁に使用される質問票についてのMICを確立した。市場及び支払人予測は、Mesoblast社についてのLEK及びNavigantによって構成される研究に基づく。
【
図5】12か月に至るまで、及び24か月に至るまで介入なしのVAS腰痛の50%低減を示す患者。対象は、レスポンダーと見なされるために、指定された各時点でVASによって測定される50%の痛みの低減を有し、かつ最新の指定された時点まで介入なしでなければならなかった。欠落している対象は、非レスポンダーと見なした。
【
図6】現在の治療と比較した平均VAS改善。Abdel Shaheed Christina、Maher Chris G、Williams Kylie A、Day Richard、McLachlan Andrew、J. Efficacy, Tolerability, and Dose-Dependent Effects of Opioid Analgesics for Low Back Pain: A Systema'c Review and Meta-analysis. JAMA Internal Medicine. American Medical Association;2016年7月1日;176(7):958~68。
**治療後介入に起因して治療に失敗した対象は、介入後の全来診についてそれらのBOCF補完した。データが欠落している対象は分析に含めなかった。
***Chou Roger、Deyo Richard、Friedly Janna、Skelly Andrea、Weimer Melissa、Fu Rochelle、Dana Tracy、Kraegel Paul、Griffin Jessica、Grusing Sara、Systemic Pharmacologic Therapies for Low Back Pain: A Systematic Review for an American College of Physicians Clinical Practice Guideline, Annals of internal medicine. American College of Physicians;2017年4月4日;166(7):480~492。
【
図7】ベースラインスコアからのLS平均ODI変化。ベースライン分析からの事前に指定されたLS平均ODI変化を調整して、治療後の介入/レスキューの交絡効果を除去した。治療後介入に起因して治療に失敗した対象は、介入後の全来診についてBOCF補完した。データが欠落している時点でデータが欠落している対象は、分析から除外した。Osteloら(Spine 33巻、1号、90~94頁)は、慢性腰痛を有する患者における痛み及び機能を評価するための最も頻繁に使用される質問票についてのMICを確立した。
【
図8】ODI改善のポイントによるレスポンダーのパーセンテージ。Osteloら(Spine 33巻、1号、90~94頁)は、慢性腰痛を有する患者における痛み及び機能を評価するための最も頻繁に使用される質問票についてのMICを確立した。FDAは、歴史的に、脊椎インプラントデバイスのマーケティング適用を裏付けるのに十分な改善を実証するために、15ポイントのODIの改善を必要とした。
【
図9】12か月に至るまで、及び24か月に至るまで介入なしの15ポイントのODIの低減を示すレスポンダーのパーセンテージ。対象は、レスポンダーと見なされるために、指定された各時点で15ポイントのODIスコアの低減を有し、かつ最新の指定された時点まで介入なしでなければならなかった。欠落している対象は、非レスポンダーと見なした。
【
図10】標準治療との平均ODIの比較。
*Abdel Shaheed Christina、Maher Chris G、Williams Kylie A、Day Richard、McLachlan Andrew、J. Efficacy, Tolerability, and Dose-Dependent Effects of Opioid Analgesics for Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Internal Medicine. American Medical Association;2016年7月1日;176(7):958~68。
**治療後介入に起因して治療に失敗した対象は、介入後の全来診についてそれらのBOCF補完した。データが欠落している対象は分析に含めなかった。
***Chou Roger、Deyo Richard、Friedly Janna、Skelly Andrea、Weimer Melissa、Fu Rochelle、Dana Tracy、Kraegel Paul、Griffin Jessica、Grusing Sara、Systemic Pharmacologic Therapies for Low Back Pain: A Systematic Review for an American College of Physicians Clinical Practice Guideline. Annals of internal medicine. American College of Physicians;2017年4月4日;166(7):480~492。
【
図11】時点による複合治療の成功。データが欠落している対象を非レスポンダーに分類する。複合治療が成功したレスポンダーは、指定された時点でVASによって測定されたLBPの50%低減、及び指定された時点でODIによって測定された機能の15ポイントの改善を有し、かつ指定された時点に至るまで介入なしであった。
【
図12】24か月にわたる複合治療の成功。データが欠落している対象を非レスポンダーに分類する。複合治療が成功したレスポンダーは、指定された時点でVASによって測定されたLBPの50%低減、及び指定された時点でODIによって測定された機能の15ポイントの改善を有し、かつ最新の指定された時点に至るまで介入なしであった。
【発明を実施するための形態】
【0043】
一般的な実装方法及び定義
本明細書全体で、特に断りがない限り、又は文脈上別段の定めがない限り、単一の工程、物質の組成物、工程群又は物質の組成物群への言及は、それらの工程の1つ及び複数(すなわち、1つ以上)、物質の組成物、工程群、又は物質の組成物群を包含するようになる。
【0044】
当業者は、本明細書に記載される開示は、具体的に記載されたもの以外の変形及び修飾に対して感受性であることを理解する。本開示は、全てのこのような変形及び修飾を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において言及又は指示される工程、特徴、組成物及び化合物の全て、個々に又は集合的に、及び前記工程又は特徴のいずれか及び全ての組合せ又は任意の2つ以上を含む。
【0045】
本開示は、例示の目的のみを意図した、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。機能的に同等な生成物、組成物及び方法は、明らかに本開示の範囲内にある。
【0046】
本明細書に開示されるいずれもの例は、特に明記しない限り、他のいずれもの例に準用されるものと解釈されるものとする。
【0047】
別途明確に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有するものと解釈されるものとする(例えば、細胞培養、分子遺伝学、幹細胞分化、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学)。
【0048】
特に断らない限り、本開示において利用される幹細胞、細胞培養、及び外科技術は、当業者に周知である標準的な手順である。このような技術は、Perbal、1984; Sambrook & Green、2012; Brown、1991; Glover & Hames、1995及び1996; Ausubel.、1987(現在までの全ての改訂を含む)、Harlow & Lane、1988;及びColiganら、1991(現在までの全ての改訂を含む)等の供給源における文献全体で記載及び説明される。
【0049】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数及び単数形の用語「1つ(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、例えば場合により、その内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0050】
用語「対象」とは、本明細書で使用される場合、ヒト及び非ヒト動物を含む哺乳動物を指す。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。「対象」、「患者」又は「個人」等の用語は、文脈上、本開示において互換的に使用することができる用語である。特定の例では、対象は、成人又は子供(小児)対象であり得る。
【0051】
「有効量」とは、所望の治療的又は予防的結果を達成するために、必要な投薬量及び時間での少なくとも有効な量を指す。有効量は、1つ以上の投与において提供することができる。本開示のいくつかの例では、用語「有効量」は、先に記載されたような疾患又は状態の治療を実施するのに必要な量を指すために使用される。有効量は、治療される疾患又は状態に応じて、また、体重、年齢、人種的背景、性別、健康状態及び/又は身体的状態、並びに治療される哺乳動物に関連する他の要因に応じて変化し得る。典型的には、有効量は、開業医による日常的な試行及び実験によって決定することができる比較的広い範囲(例えば、「投薬量」の範囲)に入る。有効量は、治療期間にわたって、単回投薬又は反復投薬で1回若しくは数回投与することができる。
【0052】
用語「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味するものと理解されるものとし、両者の意味又はいずれかの意味に対する明示的な裏付けを提供するものと解釈されるものとする。
【0053】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の記載がない限り、指定された値の+/-10%、より好ましくは+/-5%を指す。
【0054】
本明細書全体で、用語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変形は、記述された要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程のグループを包含することを意味するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程のグループを排除することは意味しないものと理解される。
【0055】
間葉系前駆細胞又は幹細胞
本明細書で使用される場合、用語「間葉系前駆細胞又は幹細胞」とは、多能性を維持しながら自己再生する能力、及び間葉起源、例えば骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞及び腱、又は非中胚葉起源、例えば肝細胞、神経細胞及び上皮細胞のいずれかの多数の細胞型に分化する能力を有する未分化多分化能細胞を指す。
【0056】
用語「間葉系前駆細胞又は幹細胞」は、親細胞とその未分化子孫の両方を含む。この用語はまた、間葉前駆細胞(MPC)、多分化能間質細胞、間葉系幹細胞、血管周囲間葉前駆細胞、及びそれらの未分化子孫を含む。
【0057】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、自家、同種、異種、同系(syngeneic)又は同系(isogeneic)であり得る。自己細胞は、それらが再移植される同じ個体から単離される。同種細胞は、同種のドナーから分離される。異種細胞は、別の種のドナーから単離される。同系(syngeneic)又は同系(isogeneic)の細胞は、双生児、クローン、又は高度に近交系の研究動物モデル等の遺伝的に同一の生物から単離される。
【0058】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、主として骨髄に存在するが、例えば、臍帯血及び臍帯、成体末梢血、脂肪組織、骨梁及び歯髄を含む多様な宿主組織に存在することも示されている。
【0059】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、宿主組織から単離され、免疫選択によって富化され得る。例えば、対象からの骨髄吸引物は、STRO-1又はTNAPに対する抗体を用いて更に処理されて、間葉系前駆細胞又は幹細胞の選択を可能にすることができる。一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、Simmons & Torok-Storb、1991に記載されるSTRO-1抗体を用いることによって富化することができる。
【0060】
STRO-1+細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靭帯、腱、骨格筋、真皮、及び骨膜に見出される細胞であり、中胚葉及び/又は内胚葉及び/又は外胚葉等の生殖系列に分化することができる。したがって、STRO-1+細胞は、限定されないが、脂肪、骨、軟骨、弾性、筋肉、及び線維性結合組織を含む、多数の細胞型に分化することができる。これらの細胞が侵入する特異的な系統-関与及び分化経路は、増殖因子、サイトカイン、及び/又は宿主組織によって確立された局所的微小環境条件等の機械的影響及び/又は内因性の生物活性因子からの種々の影響に依存する。
【0061】
用語「豊富化された」は、本明細書で使用される場合、細胞の未処理集団(例えば、それらの天然環境における細胞)と比較した場合に、1つの特定の細胞型の割合又は多数の特定の細胞型の割合が増加する細胞の集団を記載する。一例では、STRO-1+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%のSTRO-1+細胞を含む。この点に関して、用語「STRO-1+細胞について富化された細胞の集団」は、用語「X%のSTRO-1+細胞を含む細胞の集団」を明示的に支持するために用いられ、X%は、本明細書に記載されるパーセンテージである。STRO-1+細胞は、一部の例では、クローン原性コロニー、例えば、CFU-F(線維芽細胞)又はそのサブセット(例えば、50%若しくは60%若しくは70%若しくは70%若しくは90%若しくは95%)を形成することができ、この活性を有することができる。一例では、TNAP+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%のTNAP+細胞を含む。この点に関して、用語「TNAP+細胞について富化された細胞の集団」は、用語「X%のTNAP+細胞を含む細胞の集団」を明示的に支持するために用いられ、X%は、本明細書に記載されるパーセンテージである。一例では、STRO-1+及びTNAP+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%のSTRO-1+及びTNAP+細胞を含む。この点に関して、用語「STRO-1+及びTNAP+細胞について富化された細胞の集団」は、用語「X%のSTRO-1+及びTNAP+細胞を含む細胞の集団」を明示的に支持するために用いられ、X%は、本明細書に記載されるパーセンテージである。
【0062】
一例では、細胞集団は、選択可能な形態でSTRO-1+細胞を含む細胞調製物から富化される。この点に関して、用語「選択可能な形態」は、細胞がSTRO-1+細胞の選択を可能にするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解される。マーカーはSTRO-1であり得るが、必ずしもそうである必要はない。例えば、本明細書に記載及び/又は例示されるように、STRO-2及び/又はSTRO-3(TNAP)及び/又はSTRO-4及び/又はVCAM-1及び/又はCD146及び/又は3G5を発現する細胞(例えば、MPC)はまた、STRO-1を発現する(及びSTRO-1brightであり得る)。したがって、細胞がSTRO-1+であるという表示は、細胞がSTRO-1発現によって選択されることを意味しない。一例では、細胞は、少なくともSTRO-3発現に基づいて選択され、例えば、それらはSTRO-3+(TNAP+)である。
【0063】
細胞又はその集団の選択への言及は、必ずしも特定の組織源からの選択を必要としない。本明細書に記載されるように、STRO-1+細胞は、多種多様な供給源から選択されるか又はそれから単離されるか又はそれから富化され得る。とは言え、一部の例では、これらの用語は、STRO-1+細胞、又は脈管形成された組織、又は周皮細胞(例えば、STRO-1+周皮細胞)を含む組織、又は本明細書に記載される組織を含む任意の1つ又はそれより多くの組織からの選択を支持する。
【0064】
一例では、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+からなる群から個別に又は集合的に選択される1つ以上のマーカーを発現する。
【0065】
「個別に」とは、本開示が、記載されたマーカー又はマーカーのグループを別々に包含すること、及び、個々のマーカー又はマーカーのグループが本明細書に別々に列挙されない場合があるにもかかわらず、添付の特許請求の範囲が、このようなマーカー又はマーカーのグループを互いに別々に及び分割して定義することができることを意味する。
【0066】
「集合的に」とは、本開示が、記載されたマーカー若しくはマーカーのグループの任意の数又は組合せを包含すること、及び、このようなマーカー若しくはマーカーのグループの数又は組合せが本明細書に具体的に列挙されない場合があるにもかかわらず、添付の特許請求の範囲が、このようなコンビネーション又はサブコンビネーションを、マーカー又はマーカーのグループの任意の他のコンビネーションから別々に及び分離して定義することができることを意味する。
【0067】
所与のマーカーについて「陽性」であると称される細胞は、マーカーが細胞表面上に存在する程度に依存して、そのマーカーの低(lo又はdim又はdull)、中間(median)、又は高(bright、bri)レベルのいずれかを発現することができ、これらの用語は、細胞の選別プロセス又は細胞のフローサイトメトリー分析において使用される蛍光又は他のマーカーの強度に関する。低(lo又はdim又はdull)、中間(median)、又は高(bright、bri)の区別は、選別又は分析される特定の細胞集団上で使用されるマーカーとの関連で理解される。与えられたマーカーに対して「陰性」であると呼ばれる細胞は、必ずしもその細胞が完全に存在しないということではない。この用語は、マーカーがその細胞により比較的非常に低いレベルで発現され、検出可能に標識された場合に非常に低いシグナルを生成すること、又はバックグラウンドレベル、例えばアイソタイプ対照抗体を用いて検出されたレベルを超えて検出不可能であることを意味する。
【0068】
用語「bright」又はbriは、本明細書で使用される場合、検出可能に標識された場合に比較的高いシグナルを生成する細胞表面上のマーカーを指す。理論によって制限されることを望まないが、「bright」細胞は、試料中の他の細胞よりも多くの標的マーカータンパク質(例えば、STRO-1抗体によって認識される抗原)を発現することが提案される。例えば、STRO-1bri細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析によって決定した場合、FITCをコンジュゲートさせたSTRO-1抗体で標識されると、非bright細胞(STRO-1lo/dim/dull/intermediate/median)よりも大きな蛍光シグナルを産生する。一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、骨髄から単離され、STRO-1+細胞の選択によって富化される。この例では、「bright」細胞は、開始試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の例では、「bright」細胞は、開始試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、又は少なくとも約2%を構成する。一例では、STRO-1bright細胞は、「バックグラウンド」、すなわち、STRO-1-である細胞と比較して、STRO-1表面発現の2logの大きさの高い発現を有する。対照的に、STRO-1lo/dim/dull及び/又はSTRO-1intermediate/median細胞は、2log未満の規模で、より高いSTRO-1表面発現の発現を示し、典型的には約1log又は「バックグラウンド」未満である。
【0069】
一例では、STRO-1+細胞はSTRO-1brightである。一例では、STRO-1bright細胞は、STRO-1lo/dim/dull又はSTRO-1intermediate/median細胞と比較して優先的に富化される。
【0070】
一例では、STRO-1bright細胞は、更に、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)及び/又はCD146+のうちの1つ以上である。例えば、細胞は、1つ以上の前述のマーカーについて選択され、及び/又は1つ以上の前述のマーカーを発現するように示される。この点に関して、マーカーを発現することが示された細胞は、特異的に試験する必要はなく、むしろ以前に富化された又は単離された細胞を試験することができ、その後、また、同じマーカーを発現すると合理的に推定することができる。
【0071】
一例では、STRO-1bright細胞は、血管周囲マーカー3G5の存在によって特徴付けられる、国際公開第2004/85630号に定義される血管周囲間葉前駆細胞である。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「TNAP」は、組織非特異的アルカリホスファターゼの全てのアイソフォームを包含することが意図される。例えば、この用語は、肝臓アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)及び腎臓アイソフォーム(KAP)を包含する。一例では、TNAPはBAPである。一例では、TNAPとは、寄託受託番号PTA-7282に基づくブダペスト条約の規定に基づいて、2005年12月19日にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されたSTRO-3抗体に結合することができる分子を指す。
【0073】
更に、一例では、STRO-1+細胞は、クローン原性CFU-Fを生じさせることができる。
【0074】
一例では、STRO-1+細胞のかなりの割合が、少なくとも2つの異なる生殖系列に分化することができる。細胞が関与し得る系統の非限定的な例には、骨前駆細胞;胆管上皮細胞及び肝細胞に対して多分化能である肝細胞前駆体;オリゴデンドロサイト及び星状細胞に進行するグリア細胞前駆体を生成し得る神経制限細胞;ニューロンに進行するニューロン前駆体;心筋及び心筋細胞の前駆体、グルコース応答性インスリン分泌性膵ベータ細胞系が含まれる。他の系統には、限定されないが、象牙芽細胞、象牙質産生細胞及び軟骨細胞、並びに以下:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト等の皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、腎管上皮細胞、平滑筋及び骨格筋細胞、精巣前駆細胞、血管内皮細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管、上皮、グリア、神経細胞、星状細胞及び希突起膠細胞の前駆細胞が含まれる。
【0075】
一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は間葉系幹細胞(MSC)である。MSCは、均一組成物であり得るか又はMSCに富化された混合細胞集団であり得る。均一なMSC組成物は、接着した骨髄又は骨膜細胞を培養することによって得ることができ、MSCは、固有のモノクローナル抗体で同定される特異的な細胞表面マーカーによって同定され得る。プラスチック接着技術を用いてMSCに富化された細胞集団を得るための方法は、例えば、米国特許第5486359号に記載される。従来のプラスチック接着単離によって調製されたMSCは、CFU-Fの非特異的なプラスチック接着特性に依存している。MSCの代替供給源としては、限定されないが、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨、及び軟骨膜が挙げられる。
【0076】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、対象への投与前に凍結保存することができる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、健康なボランティアの骨髄から富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来するマスター細胞バンクから得られる。このような供給源に由来する間葉系前駆細胞又は幹細胞の使用は、間葉系前駆細胞又は幹細胞ドナーとしての役割を果たすことができ、又は直ちに治療を必要とし、間葉系前駆細胞又は幹細胞を生成するのに要する時間中に、再発、疾患に関連した衰退若しくは死亡のリスクが高い、利用可能な適切な家族メンバーを有しない対象にとって特に有利である。
【0078】
本発明者らは、本開示の間葉系前駆細胞が、凍結保存及び解凍後に、T細胞の増殖を阻害するそれらの能力に関して予想外の高い効力を有することを示す。対照的に、以前の開示は、凍結保存された間葉系幹細胞が、解凍後に免疫抑制特性が損なわれることを示すことを教示する(Francoisら、2012;Chinnaduraiら、2016)。
【0079】
単離又は濃縮された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、培養により、エクスビボ又はインビトロで拡大することができる。当業者に理解されるように、単離又は富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、凍結保存され、解凍され、次に、培養によりエクスビボ又はインビトロで更に拡大され得る。
【0080】
培養された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、インビボでの細胞とは表現型的に異なる。例えば、一実施形態では、それらは、以下のマーカー、CD44、NG2、DC146及びCD140bのうちの1つ以上を発現する。
【0081】
培養された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、インビボにおいて細胞と生物学的に異なり、インビボで大部分が非周期(休止)細胞と比較してより高い増殖速度を有する。
【0082】
一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞について富化された細胞集団は、血清が補足された培養培地、例えば、10%ウシ胎児血清(FBS)及び2mMグルタミンが補足されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、約6000~7000個の生存細胞/cm2で播種され、一晩、37℃、20%O2で培養容器に接着させる。一実施形態では、細胞は、約6000、6100、6200、6300、6400、6500、6600、6700、6800、6810、6820、6830、6840、6850、6860、6870、6880、6890、6890、6900、6910、6920、6930、6940、6970、6980、6990、又は7000個の生存細胞/cm2、好ましくは約6850~6860個の生存細胞/cm2で播種される。次に、培養培地を置換し、T細胞との共培養及びT細胞により発現されるIL-2Rαの量を決定する前に、細胞を計68~72時間、37℃、5%O2で培養する。
【0083】
TGFβ1レベルの決定
本開示は、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、蛍光結合免疫吸着測定(FLISA)、競合アッセイ、ラジオイムノアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、フロースルーイムノアッセイ、電気化学発光アッセイ、比濁分析に基づくアッセイ、濁度に基づくアッセイ、間葉系又は前駆細胞を培養するために使用される培養培地中のTGFβ1の検出のための蛍光標識細胞分取(FACS)に基づくアッセイ、及び表面プラズモン共鳴(SPR又はBiacore)を含む、TGFβ1レベルを決定するための任意の形態のアッセイを企図する。
【0084】
適切なアッセイの一形態は、例えば、ELISA又はFLISAである。
【0085】
一形態では、そのようなアッセイは、例えば、ポリスチレン若しくはポリカーボネートのマイクロウェル又はディップスティック、メンブラン、或いはガラス支持体(例えば、スライドガラス)等の固体マトリックス上にTGFβ1結合タンパク質を固定化することを含む。試験試料を、次いで、TGFβ1結合タンパク質と直接接触させ、試料中のTGFβ1は、結合又は捕捉される。洗浄して試料中の任意の未結合タンパク質を除去した後、異なるエピトープでTGFβ1に結合したタンパク質を、捕捉されたTGFβ1と直接接触させる。この検出タンパク質は、一般的に、例えば、ELISAの場合において酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)又はβ-ガラクトシダーゼ)、又はFLISAの場合においてフルオロフォア等の検出可能なレポーター分子で標識される。或いは、検出タンパク質に結合する第2の標識タンパク質を使用することができる。洗浄して任意の未結合タンパク質を除去した後、検出可能なレポーター分子は、ELISAの場合において、例えば、過酸化水素、TMB、又はトルエン、又は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドール-ベータ-D-ガラクトピラノシド(x-gal)等の基質の添加によって検出される。当然ながら、固定化(捕捉)タンパク質及び検出タンパク質は、逆の様式で使用することができる。
【0086】
試料中の抗原のレベルは、次いで、既知量のマーカーを使用して、又は対照試料との比較によって、作成された標準曲線を使用して決定される。
【0087】
上述のアッセイは、検出するための原理として化学発光又は電気化学発光を使用するために容易に変形される。
【0088】
当業者に明らかなように、免疫吸着アッセイに基づく他の検出方法は、本開示の実行において有用である。例えば、検出のための放射性標識、又は検出のための金標識(例えば、コロイド状金)、又はリポソーム、例えば、検出のための封入NAD+、又はアクリジニウム結合免疫吸着アッセイを使用する上記の説明に基づく免疫吸着法。
【0089】
本開示のいくつかの例では、TGFβ1のレベルは、表面プラズモン共鳴検出器(例えば、BIAcore(商標)、GE Healthcare社、Piscataway、N.J.)、フロースルーデバイス(例えば、米国特許第7205159号に記載の通り)、マイクロ若しくはナノイムノアッセイデバイス(例えば、米国特許第7271007号に記載の通り)、ラテラルフローデバイス(例えば、米国特許出願公開第20040228761号又は米国特許出願公開第20040265926号に記載の通り)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA、例えば、米国特許第4593089号又は米国特許第4751190号に記載の通り)、又は免疫比濁アッセイ(例えば、米国特許第5571728号又は米国特許第6248597号に記載の通り)を使用して決定される。
【0090】
一実施形態では、本方法は、培養容器中、約50,000生細胞/cm2でMLPSCを播種する工程を含む。
【0091】
一実施形態では、本方法は、0.5%のウシ血清アルブミンを補足した軟骨形成基本培地中でMLPSCを培養する工程を含む。
【0092】
一実施形態では、本方法は、少なくとも68~76時間、接着細胞を培養する工程を含む。一実施形態では、接着細胞は、最初に、例えば、0.5%のウシ血清アルブミンを補足した軟骨形成基本培地中で細胞の集団を終夜培養して、培養容器にそれらを接着させることによって得られる。
【0093】
一実施形態では、本方法は、MLPSCが培養された培養培地の試料を回収する工程を含む。一実施形態では、回収された試料は、細胞が培養された全ての培養培地を含む。
【0094】
一実施形態では、本方法は、培養培地中のTGFβ1の量を決定する前に、培養培地中の潜在型TGFβ1を活性化する工程を含む。
【0095】
一実施形態では、潜在型TGFβ1を活性化する工程には、酸、例えば、1NのHClを培養培地に添加して、培養培地のpHを低下させることを含む。一実施形態では、本方法は、pHを低下させる前に、培養培地試料を濃縮する工程を含む。一実施形態では、本方法は、酸の添加後、例えば、1.2NのNaOH/0.5MのHEPES又は1NのNaOHを添加することによって、培養培地のpHを7.2~7.6に中和する工程を含む。
【0096】
一実施形態では、本方法は、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)によって、培養培地中のTGFβ1の量を決定する工程を含む。
【0097】
一例では、ELISAは、
(i)培養培地を試料希釈液で1:5に希釈する工程;
(ii)希釈された培養培地をTGFβ1に特異的なモノクローナル抗体で事前コーティングされたマイクロプレートのウェルに添加する工程;
(iii)試料希釈液をマイクロプレートの各ウェルに添加する工程;
(iv)マイクロプレートを室温で2時間インキュベートする工程;
(v)マイクロプレートを洗浄する工程;
(vi)TGFβ1コンジュゲートをウェルに添加する工程;
(vii)マイクロプレートを室温で2時間インキュベートする工程;
(viii)マイクロプレートを洗浄する工程;
(ix)基質溶液をウェルに添加する工程;
(x)マイクロプレートを室温で30分間インキュベートする工程;
(xi)停止溶液をウェルに添加する工程;
(xii)570nmでの波長補正を伴う450nmに設定されたマイクロプレートリーダーにおいて光学密度を読み取る工程;
(xiii)希釈物について補正されたTGFβ1の濃度を決定する工程
を含む。
【0098】
一実施形態では、試料希釈液は、0.5%のウシ血清アルブミンを補足した軟骨形成基本培地である。
【0099】
一実施形態では、本方法は、
31.2~2000pg/mlの範囲の最終濃度で試料希釈液中のTGFβ1標準の連続希釈物を調製する工程;
工程(iii)の前に標準をマイクロプレートに添加する工程;
4つのパラメーターのロジスティック曲線フィットを使用して標準曲線を構成する工程;及び
標準曲線に対する参照によって、培養培地中のTGFβ1の濃度を決定する工程
を更に含む。
【0100】
一実施形態では、MLPSCの効力を決定するための方法は、
(i)MLPSCの集団を得る工程;
(ii)細胞を培養容器において50,000生細胞/cm2で播種する工程;
(iii)細胞を0.5%牛血清アルブミンが捕捉された軟骨形成基本培地中で培養する工程;
(iv)培養培地を回収する工程;
(v)1NのHClを添加して培養培地のpHを低下させることによって、培養培地中の細胞によって放出された潜在型TGFβ1を活性化する工程;
(vi)1.2NのNaOH/0.5MのHEPES又は1NのNaOHを添加することによって培養培地のpHを7.2~7.6に中和する工程;
(vii)培養培地を0.5%牛血清アルブミンが補足された軟骨形成基本培地で1:5に希釈する工程;
(viii)希釈された培養培地をTGFβ1に特異的なモノクローナル抗体で事前コーティングされたマイクロプレートのウェルに添加する工程;
(ix)試料希釈液をマイクロプレートの各ウェルに添加する工程;
(x)マイクロプレートを室温で2時間インキュベートする工程;
(xi)マイクロプレートを洗浄する工程;
(xii)TGFβ1コンジュゲートをウェルに添加する工程;
(xiii)マイクロプレートを室温で2時間インキュベートする工程;
(xiv)マイクロプレートを洗浄する工程;
(xv)基質溶液をウェルに添加する工程;
(xvi)マイクロプレートを室温で30分間インキュベートする工程;
(xvii)停止溶液をウェルに添加する工程;
(xviii)570nmでの波長補正を伴う450nmに設定されたマイクロプレートリーダーにおいて光学密度を読み取る工程;
(xix)希釈物について補正されたTGFβ1の濃度を決定する工程
を含む。
【0101】
一実施形態では、本方法は、
31.2~2000pg/mlの範囲の最終濃度で0.5%の牛血清アルブミンが補足された軟骨形成基本培地中のTGFβ1標準の連続希釈物を調製する工程;
ステップ(ix)の前に標準をマイクロプレートに添加する工程;
4つのパラメーターのロジスティック曲線フィットを使用して標準曲線を構成する工程;及び
標準曲線に対する参照によって、培養培地中のTGFβ1の濃度を決定する工程
を更に含む。
【0102】
組成物及び投与
間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む組成物は、薬学的に許容される担体中で調製され得る。用語「薬学的に許容される担体」とは、本明細書で使用される場合、間葉系前駆細胞又は幹細胞の貯蔵、投与を容易にし、及び/又は生物学的活性を維持する物質の組成物を指す。
【0103】
一例では、担体は、レシピエントにおいて顕著な局所的又は全身的な有害作用を生じさせない。薬学的に許容される担体は、固体であるか又は液体であり得る。薬学的に許容される担体の有用な例としては、限定されないが、間葉系前駆細胞又は幹細胞の生存率及び活性に影響を与えない希釈剤、溶媒、界面活性剤、賦形剤、懸濁剤、緩衝剤、滑沢剤、アジュバント、ビヒクル、乳化剤、吸収剤、分散媒、被覆剤、安定剤、保護コロイド、接着剤、増粘剤、チキソトロピック剤、浸透剤、封鎖剤、足場、等張性及び吸収遅延剤が挙げられる。適切な担体の選択は、当業者の技術の範囲内である。
【0104】
適切な薬学的担体としては、限定されないが、ヒアルロナン、化学修飾ヒアルロナン、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、マンノサミン、プロテオグリカン、プロテオグリカン断片、キチン、キトサン、又は他の多糖若しくはポリマー材料が挙げられる。
【0105】
間葉系前駆細胞又は幹細胞はまた、足場内に組み込む又は埋伏することができる。適切な足場としては、限定されないが、生物学的に分解可能な足場が挙げられる。天然の生分解性足場としては、限定されないが、コラーゲン、フィブロネクチン及びラミニン足場が挙げられる。合成の生分解性足場としては、限定されないが、ポリグリコール酸足場(例えば、(Vacanti、Morse及びSaltzman、1988)(Cima、Ingber、Vacanti及びLanger、1991)(Vacanti、Langer、Schloo及びVacanti、1991)に記載の通り)、例えば、ポリ無水物、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の合成ポリマー、並びに例えば、Gelform(商標)(Pfizer社)等のゼラチン再吸収性スポンジが挙げられる。
【0106】
本開示の組成物は、簡便には単位投薬形態で提供することができ、当該技術分野において周知である任意の方法によって調製することができる。用語「投薬単位形態」とは、本明細書で使用される場合、治療される対象のための単一投薬量として適した物理的に離散した単位を指し;各単位は、薬学的担体と関連して所望の治療効果又は予防効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。間葉系前駆細胞又は幹細胞の用量は、治療されるべき対象の疾患状態、年齢、性別、及び体重等の因子に応じて変化し得る。
【0107】
例示的な用量は、少なくとも約1×106細胞を含む。例えば、用量は、約1.0×106~約1.1×1010個、例えば、約1.1×106~約1×109細胞、例えば、約1.2×106~約1×108細胞、例えば、約1.3×106~約1×107細胞、例えば、約1.4×106~約9×106細胞、例えば、約1.5×106~約8×106細胞、例えば、約1.6×106~約7×106細胞、例えば、約1.7×106~約6×106細胞、例えば、約1.8×106~約5×106細胞、例えば、約1.9×106~約4×106細胞、例えば、約2×106~約3×106細胞を含み得る。
【0108】
一実施形態では、用量は、約5×105~約2×107細胞、例えば、約6×106細胞~約1.8×107細胞を含む。用量は、例えば、約6×106細胞又は約1.8×107細胞であり得る。
【0109】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、組成物の細胞集団の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%を占める。
【0110】
本開示の組成物は凍結保存することができる。間葉系前駆細胞又は幹細胞の凍結保存は、当該技術分野において公知である低速冷却方法又は「高速」凍結プロトコルを用いて行うことができる。好ましくは、凍結保存の方法は、非凍結細胞と比較して、凍結保存された細胞の類似の表現型、細胞表面マーカー及び増殖速度を維持する。
【0111】
凍結保存組成物は、凍結保存溶液を含み得る。凍結保存溶液のpHは、典型的には6.5~8、好ましくは7.4である。
【0112】
凍結保存溶液は、無菌の非発熱性等張液、例えば、PlasmaLyteA(商標)等を含み得る。100mLのPlasmaLyteA(商標)は、526mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl);502mgのグルコン酸ナトリウム(C6H11NaO7)、368mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP(C2H3NaO2・3H2O);37mgの塩化カリウム、USP(KCl);及び30mgの塩化マグネシウム、USP(MgCl2・6H2O)を含む。これは抗菌剤を含まない。pHを水酸化ナトリウムで調整する。pHは7.4(6.5~8.0)である。
【0113】
凍結保存溶液は、Profreeze(商標)を含み得る。凍結保存溶液は、追加的に又は代替的に培養培地、例えば、αMEMを含み得る。
【0114】
凍結を容易にするために、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の凍結保護剤が、通常、凍結保存溶液に添加される。理想的には、凍結保護剤は細胞及び患者に対して非毒性であり、非抗原性であり、化学的に不活性であり、解凍後に高い生存率をもたらし、洗浄せずに移植を可能にすべきである。しかしながら、最も一般的に使用される凍結保護剤であるDMSOは、いくらかの細胞毒性を示す。ヒドロキシレチルデンプン(HES)は、凍結保存溶液の細胞毒性を低減するために、代用物として、又はDMSOと組み合わせて使用することができる。
【0115】
凍結保存溶液は、DMSO、ヒドロキシエチルデンプン、ヒト血清成分及び他のタンパク質バルキング剤のうちの1つ以上を含み得る。一例では、凍結保存溶液は、約5%ヒト血清アルブミン(HSA)及び約10%DMSOを含む。凍結保存溶液は、更に、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)及びトレハロースのうちの1つ以上を含み得る。
【0116】
一実施形態では、細胞は、42.5%Profreeze(商標)/50%αMEM/7.5%DMSO中に懸濁され、制御された速度の冷凍庫で冷却される。
【0117】
凍結保存組成物は、解凍することができ、対象に直接投与、又は例えばHAを含む別の溶液に添加することができる。或いは、凍結保存組成物は、解凍することができ、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、投与の前に代替の担体に再懸濁させることができる。
【0118】
本開示の組成物は、治療されるべき特定の疾患状態に適した経路によって投与することができる。例えば、本開示の組成物は、全身的に、すなわち、非経口的に、静脈内に、又は注射によって投与することができる。本開示の組成物は、特定の組織又は臓器を標的とすることができる。
【0119】
最適な治療反応を与えるために、投薬レジメンを調整することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができ、複数の分割された用量を経時的に投与し得るか、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減量又は増量し得る。投与を容易にし、投薬量を均一にするために、非経口組成物を投薬単位形態に処方することが有利であり得る。
【0120】
一部の実施形態では、細胞組成物による治療の開始前に患者を免疫抑制することは必要ではなく又は望ましくないことがある。しかしながら、他の例では、細胞療法を開始する前に、患者を薬理学的に免疫抑制することが望ましくあり得るか、又は適切であり得る。これは、全身的又は局所的な免疫抑制剤の使用を通じて達成することができるか、又はカプセル化デバイスの細胞を送達させることによって達成することができる。細胞は、細胞に必要とされる栄養及び酸素、並びに細胞が免疫液性因子及び細胞に対してまだ不透過性である治療因子を透過させることができるカプセル内にカプセル封入され得る。好ましくは、カプセル化剤は、低アレルギー性であり、標的組織内に容易に及び安定に位置し、移植された構造に更なる保護を提供する。移植された細胞に対する免疫応答を低減又は除去するためのこれらの手段及び他の手段は、当該技術分野において公知である。別法として、細胞は、それらの免疫原性を低減させるために遺伝子組換えされ得る。
【0121】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、他の有益な薬物又は生物学的分子(増殖因子、栄養因子)とともに投与され得ることが理解される。他の薬剤とともに投与される場合、それらは、一緒に、単一の医薬組成物中で、又は別々の医薬組成物中で、他の薬剤と同時に若しくは順次(他の薬剤の投与の前又は後のいずれかで)投与され得る。同時投与され得る生物活性因子には、抗アポトーシス剤(例えば、EPO、EPOミメティボディ、TPO、IGF-I及びIGF-II、HGF、カスパーゼ阻害剤);抗炎症剤(例えば、p38 MAPK阻害剤、TGF-ベータ阻害剤、スタチン、IL-6及びIL-1阻害剤、PEMIROLAST(商標)、TRANILAST(商標)、REMICADE(商標)、SIROLIMUS(商標)、及びTEPOXALIN(商標)等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、TOLMETIN(商標)、SUPROFEN(商標));免疫抑制剤/免疫調節剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス等のカルシニューリン阻害剤);mTOR阻害剤(例えば、SIROLIMUS(商標)、EVEROLIMUS(商標));抗増殖剤(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン);モノクローナル抗IL-2Rアルファ受容体抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、ポリクローナル抗T細胞抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG);抗リンパ球グロブリン(ALG);モノクローナル抗T細胞抗体OKT3)等の抗体;抗血栓剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)、アンチトロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤、及び血小板阻害剤);及び抗酸化剤(例えば、プロブコール、ビタミンA、アスコルビン酸、トコフェロール、コエンザイムQ-10、グルタチオン、L-システイン、N-アセチルシステイン)、並びに局所麻酔薬が含まれる。
【0122】
遺伝子組換え細胞
一実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は遺伝子組換えされない。一実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、例えば、目的のタンパク質、例えば、治療的及び/若しくは予防的利益を提供するタンパク質を発現並びに/又は分泌するように遺伝子組換えされる。
【0123】
細胞を遺伝子組換えするための方法は、当業者に明らかである。例えば、細胞中で発現される核酸は、細胞中での発現を誘導するためのプロモーターに作動可能に連結される。例えば、核酸は、例えば、ウイルスプロモーター、例えば、CMVプロモーター(例えば、CMV-IEプロモーター)又はSV-40プロモーター等の対象の様々な細胞中で作動可能なプロモーターに連結される。追加の適切なプロモーターは、当該技術分野において公知である。
【0124】
好ましくは、核酸は、発現構築物の形態で提供される。用語「発現構築物」とは、本明細書で使用される場合、細胞中で作動可能に接続された核酸(例えば、レポーター遺伝子及び/又はカウンター選択可能レポーター遺伝子)において発現を与える能力を有する核酸を指す。本開示との関連内で、発現構築物は、プラスミド、バクテリオファージ、ファージミド、コスミド、ウイルスサブゲノム若しくはゲノム断片、又は発現可能な形式で異種DNAを保持及び/若しくは複製できる他の核酸を含み得るか、或いはこれらであり得ることが理解されるべきである。
【0125】
本発明を実行するための適切な発現構築物を構築するための方法は、当業者に明らかであり、例えば、Ausubel F. M.、1987(現在までの全ての改訂を含む);又はSambrook及びGreen、2012に記載されている。例えば、発現構築物の各々の成分は、例えば、PCRを使用して適切な鋳型核酸から増幅され、その後、例えば、プラスミド又はファージミド等の適切な発現構築物にクローニングされる。
【0126】
そのような発現構築物のために適切なベクターは、当該技術分野において公知であり、及び/又は本明細書に記載する。例えば、哺乳動物細胞における本発明の方法のために適切な発現ベクターは、例えば、pcDNAベクター一式のベクター(Invitrogen社)、pCIベクター一式のベクター(Promega社)、pCMVベクター一式のベクター(Clontech社)、pMベクター(Clontech社)、pSIベクター(Promega社)、VP 16ベクター(Clontech社)、又はpcDNAベクター一式のベクター(Invitrogen社)である。
【0127】
当業者は、追加ベクター、及び例えば、Invitrogen Corporation社、Clontech社又はPromega社等のそのようなベクターの供給源を承知している。
【0128】
単離された核酸分子又はそれを含む遺伝子構築物を発現のための細胞に導入するための手段は、当業者に公知である。所与の生物に対して使用される技術は、公知の成功技術に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段としては、特に、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランによって媒介されるトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco社、MD、USA)及び/又はセルフェクチン(Gibco社、MD、USA)を使用する等のリポソームによって媒介されるトランスフェクション、PEG媒介DNA取り込み、エレクトロポレーション、並びにDNAでコーティングされたタングステン又は金粒子(Agracetus Inc.社、WI、USA)を使用する等の微小粒子照射が挙げられる。
【0129】
或いは、本発明の発現構築物はウイルスベクターである。適切なウイルスベクターは、当該技術分野において公知であり、市販されている。核酸を送達するため及びその核酸を宿主細胞ゲノムに組み込むための従来ウイルスに基づく系としては、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。或いは、アデノウイルスベクターは、エピソームが残る核酸を宿主細胞に導入するために有用である。ウイルスベクターは、標的細胞及び組織への遺伝子移入の高効率で多用途の方法である。更に、高形質導入効率は、多くの異なる細胞型及び標的組織において観察されている。
【0130】
例えば、レトロウイルスベクターは、一般的に、6~10kbまでの外来配列のパッケージング容量を有するシス作用性長い末端反復配列(LTR)を含む。最小限のシス作用性LTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、これを、次いで、発現構築物を標的細胞に組み込むために使用して、長期発現を提供する。広く使用されるレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SrV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組合せに基づくものが挙げられる(例えば、国際公開第1994/026877号; Buchschacher及びPanganiban、1992; Johannら、1992; Sommerfelt及びWeiss、1990; Wilsonら、1989; Millerら、1991; Lynchら、1991; Miller及びRosman、1989; Miller、1990; Scarpaら、1991; Burnsら、1993を参照されたい)。
【0131】
種々のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター系も、核酸送達のために開発されている。AAVベクターは、当該技術分野において公知の技術を使用して容易に構築することができる(例えば、米国特許第5173414号及び同第5139941号;国際公開第92/01070号及び同第93/03769号;Lebkowskiら、1988;Vincentら、1990;Carter、1992;Muzyczka、1992;Kotin、1994;Shelling及びSmith、1994;Zhouら、1994を参照されたい)。
【0132】
本発明の発現構築物を送達するために有用な追加のウイルスベクターとしては、例えば、ワクシニアウイルス及び鳥類のポックスウイルス等のポックスウイルスファミリー、若しくはアルファウイルス、又はコンジュゲートウイルスベクター(例えば、Fisher-Hochら、1989に記載のもの)に由来するものが挙げられる。
【0133】
治療の結果
種々の方法を、MLPSCを投与することによる腰痛の治療の有効性を評価するために使用することができる。
【0134】
例えば、腰痛の低減は、視覚的アナログ尺度(VAS)を使用することによって評価することができる。視覚的アナログ尺度(visual analogue scale又はvisual analog scale)(VAS)は、質問票において使用することができる心理測定反応の尺度である。これは、直接測定することができない自覚的特徴又は態度についての計測装置である。VASアイテムに回答する場合、回答者は、2つのエンドポイント間の実線に沿った位置を示すことによって、言及に対する回答者の同意のレベルを指定する。例えば、Reips, U.-D.;Funke, F (2008).「Interval level measurement with visual analogue scales in Internet-based research: VAS Generator」Behavior Research Methods 40:699~704を参照されたい。
【0135】
別の例では、腰痛の低減は、オスウェストリー障害指数(ODI)を使用することによって評価することができる。これは、腰痛についての能力障害を定量化するために臨床医及び研究者によって使用されるオスウェストリー腰痛質問票に由来する指数である。この有効な質問票は、最初に、Jeremy Fairbank Physiotherapy 1980;66:271~273によって、その後Fairbank JC、Pynsent PB、The Oswestry Disability Index. Spine、2000年11月15日;25(22):2940~52において発表された。
【0136】
自己記入式質問票は、痛み、懸垂、自己をケアする能力、歩行能力、座る能力、性機能、立つ能力、社会生活、睡眠の質及び旅行する能力の強度に関する10のトピックを含む。各トピックのカテゴリーは、トピックに関する患者の生活における異なる可能性があるシナリオを記載する6の言及に従う。患者は、次いで、患者の状況に最もよく似ている言及をチェックする。各質問は、0~5の尺度でスコア化し、最初の言及はゼロであって、能力障害の量が最も少ないことを示し、最後の言及は5にスコア化し、最も重度の能力障害を示す。回答された全ての質問についてのスコアを合計し、次いで、2つを掛けて指数を得る(0~100の範囲)。ゼロは、能力障害なしと同等であり、100は、可能な最大の能力障害である。
【0137】
当業者は、本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上記された実施形態に対して多数の変形及び/又は修飾を行うことができることを理解する。したがって、本実施形態は、全ての点において、例示的であり、限定的ではないと考えるべきである。
【実施例】
【0138】
(実施例1)
材料及び方法
プラスチック接着技術を使用して調製された間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)
MLPSCを、米国特許第5,837,539号に記載のようにして、骨髄からデノボで生成させた。約80~100mlの骨髄を、滅菌ヘパリン含有シリンジに吸引し、MSC生成のためにMDACC Cell Therapy Laboratory社に送った。骨髄単核細胞を、ficoll-hypaqueを使用して単離し、ゲンタマイシン、グルタミン(2mM)及び20%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone社)を含有するアルファ改変MEM(αMEM)を含むMLPSC拡大培地をフラスコあたり50ml有する2つのT175フラスコに入れた。
【0139】
細胞を、37℃、5%CO2で2~3日間培養し、その時間で非接着細胞を除去し、残った接着細胞を、細胞が70%以上のコンフルエンスに達するまで(7~10日)、連続培養し、次いで、細胞を、トリプシン処理し、拡大培地(フラスコあたり50mlの培地)を有する6つのT175フラスコに交換した。
【0140】
間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)の免疫選択
健常成人ボランティア(20~35歳)から骨髄(BM)を採取した。簡単に説明すると、40mlのBMを後腸骨稜からリチウム-ヘパリン抗凝固剤含有チューブに吸引する。
【0141】
骨髄単核細胞(BMMNC)は、Zannettinoら、1998によって既に記載されているLymphoprep(商標)(Nycomed Pharma社、Oslo、Norway)を用いた密度勾配分離によって調製された。400×gで30分間、4℃にて遠心分離した後、バフィー層を移動ピペットで除去し、5%ウシ胎児血清(FCS、CSL Limited社、Victoria, Australia)を含有するHank's平衡塩溶液(HBSS;Life Technologies社、Gaithersburg, MD)で構成される「HHF」中で3回洗浄する。
【0142】
STRO-3+(又はTNAP+)細胞は、Gronthos & Simmons、1995; 及びGronthos、2003によって既に記載される磁気活性化細胞選別によって単離された。簡単に説明すると、約1~3×108個のBMMMNCは、HHF中の10%(v/v)正常ウサギ血清からなるブロッキング緩衝液中で氷上にて20分間インキュベートされる。細胞は、ブロッキング緩衝液中の10μg/ml溶液のSTRO-3 mAbの200μlとともに氷上で1時間インキュベートされる。その後、細胞は、400×gでの遠心分離によりHHF中で2回洗浄される。HHF緩衝液中のヤギ抗マウスγ-ビオチン(Southern Biotechnology Associates社, Birmingham, UK)の1/50希釈液を添加し、細胞を氷上で1時間インキュベートする。細胞は、上記のようにMACS緩衝液(1%BSA、5mM EDTA及び0.01%アジ化ナトリウムを補足したCa2+及びMg2+を含まないPBS)中で2回洗浄され、最終容量の0.9ml MACS緩衝液中に再懸濁される。
【0143】
100μlのストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec社; Bergisch Gladbach, Germany)を細胞懸濁液に添加し、氷上で15分間インキュベートする。細胞懸濁液を2回洗浄し、0.5mlのMACS緩衝液中に再懸濁し、続いてミニMACSカラム(MSカラム、Miltenyi Biotec社)上に装填し、0.5mlのMACS緩衝液を用いて3回洗浄して、STRO-3 mAbに結合しない細胞(2005年12月19日に受託番号PTA-7282でAmerican Type Culture Collection (ATCC)に寄託された-国際公開第2006/108229号を参照されたい)を回収した。更に1mlのMACS緩衝液を添加した後、カラムを磁石から除去し、TNAP+細胞を陽圧によって単離する。各画分からの細胞のアリコートをストレプトアビジン-FITCで染色し、純度をフローサイトメトリーにより評価することができる。
【0144】
(実施例2)
神経障害性疼痛に対するTGFβ1の効果
免疫選択TNAP+ MPCを、TGFβ1の分泌の閾値レベルに基づいて、腰痛の治療用生成物に組み込むために選択する。以前の研究(例えば、Chenら、J Clin. Invest 2015;125(8):3226~3240)は、以下を示した:
・II-1β、IL-6及びTNFの存在によってマークされた神経炎症は、神経障害性疼痛の発生に関わる;
・CCIは、L4-L5脊髄後角においてIba1、Il6及びTNF転写物の上方制御を誘導した;
・BMSCから分泌されたTGFβ1及びIL-10は、それらの抗炎症特性により神経障害性疼痛を制御し得る。
【0145】
これらの研究はまた以下も示した:
・BMSCは、TNF及びLPSの存在下、多量のTGFβ1を分泌するが、IL-10は分泌しない。
・TGFβ1は、BMSCで治療されたCCIマウスのCSF中で増加したが、対照は増加しなかった。
・CCIマウスにおけるBMSCの効果は、TGF-β1の中和で打ち消されたが、IL-10は打ち消されなかった。
・BMSCにおけるTGFβ1発現のノックダウンは、BMSC培養物において、TGFβ1放出の67%の低減、及び55%のTGFβ1発現をもたらした。
・BMSC誘導効果は、TGFβ1ノックダウンBMSCの投与後、数日間損なわれた。
・外因性TGFβ1は、急性神経障害性疼痛を阻害した。
・外因性TGFβ1は、慢性神経障害性疼痛を阻害した。
・TGFβ1受容体1は、TGF-β1の効果を排除した。
【0146】
以前の研究(Tolofariら、Arthritis Res Ther 12(2010))は、Sema3Aがニューロン及び血管に対するケモリペレント因子としての機能を果たすことも示している。現在の証拠は、AF中のsema3Aが、健康なIVDにおけるニューロンに対するリペレントとしての機能を果たすこと、及び発現が、IVD変性のレベルの増加とともに次第に失われることを示唆する。
【0147】
本明細書における結果は、組換えTGFβ1へのヒト線維輪細胞の曝露が、細胞内フローサイトメトリーによって測定されるSema3A発現を増強することを示す(
図1)。このデータは、TGF-β1の分泌の閾値レベルの基づく腰痛の治療のために選択されたMPCが、TGF-β1媒介経路により神経突起の進入を顕著に低減することができることを示す。
【0148】
(実施例3)
フェーズ2臨床試験
臨床研究の設計
これは、異なる用量のMPCを受ける2つ及び異なる対照注射(生理食塩水又はヒアルロン酸)を受ける2つの4つの研究治療群の無作為化多施設研究である。生理食塩水が薬理学的効果を有さないであろうと予測されたので、生理食塩水対照を選択した。ヒアルロン酸を、媒体対照としての役割を果たすため、及びヒアルロン酸単独の任意の治療効果を評価するために使用した。
【0149】
治療の割り当ては、マスター無作為化リストに従って時系列順に発生した。無作為化は中心で行い、割り当てを13の参加施設に提供した。コア研究所の全ての対象及びX線評価者は、割り当てられた無作為化治療に対して盲検であった。研究施設の治験責任医師、関連研究スタッフ及びスポンサーは、無作為化割り当てに対して盲検ではなかった。
【0150】
研究は、30日目、並びに注射の3、6、12、24及び36か月後に回収されたデータに基づくいくつかの予備的有効性の結果を有していた。有効性の結果の比較を、2つのMPC用量群の間、各MPC用量群及び各対照群の間、及び4つの研究治療群の間で行った。
【0151】
臨床研究の患者集団
【0152】
【0153】
治療
対象は以下の4つの治療のうちの1つを受けた。
・1.0mLの1%ヒアルロン酸ナトリウム(Euflexxa(登録商標))と混合された約600万個の同種MPC(5mLのMPC生成物あたり3000万個を1.0mL)
・1.0mLの1%ヒアルロン酸ナトリウムと混合された約1800万個の同種MPC(5mLのMPC生成物あたり9000万個を1.0mL)
・1%ヒアルロン酸ナトリウム対照、2mL
・滅菌生理食塩水対照、2mL
【0154】
治験又は対照治療を、透視検査ガイド下での臀部アプローチを使用して、滅菌圧力マノメーターシリンジ及び23ゲージのLuer-Lok(商標)針で標的椎間板の髄核に直接注射した。
【0155】
治験生成物及び投与
治験生成物は、STRO-3選択同種MPCであり、これは、培養拡大され、その後凍結保存された成人骨髄単核細胞に由来した。同種MPCを、5mLの容量中3000万個及び9000万個の有核細胞の濃度で処方し、7.5%ジメチルスルホキシド/50%アルファ改変イーグル培地及び42.5%ProFreeze(登録商標)中で凍結保存した。
【0156】
治験生成物を、使用する準備が整うまで、-140℃~196℃の液体窒素の気相中で保存した。治験生成物を適切に同定し、他の生成物から隔離しなければならなかった。
【0157】
600万個のMPCの総用量を受けるように無作為化された対象は、ヒアルロン酸と容積で1:1で混合された2.0mLの3000万個/5mL細胞生成物の混合物を受け、これは、実際上1.0mLのヒアルロン酸と混合された1.0mLの3000万個/5mL細胞生成物であった。1800万個のMPCの総用量を受けるように無作為化された対象は、ヒアルロン酸と容積で1:1で混合された2.0mLの9000万個/5mL細胞生成物の混合物を受け、これは、実際上1.0mLのヒアルロン酸と混合された1.0mLの9000万個/5mL細胞生成物であった。
【0158】
投与される対照薬剤は、2.0mLのヒアルロン酸単独又は2.0mLの生理食塩水のいずれかであった。施設は、それらの施設の通常の供給からの滅菌生理食塩水を使用した。ヒアルロン酸は、Mesoblast社によって供給された。
【0159】
治験又は対照治療のいずれかに無作為化された各対象に対する注射の容量は、結果に影響を与える注射容量における可能性がある相違を回避するために2.0mLであるべきあった。
【0160】
この研究における全ての対象に、単一標的の椎間板の髄核への治験生成物又は対照の注射を行った。適格な各対象を、同容量のヒアルロン酸を有する同種MPCの2用量のうちの1つ、若しくは2つの対照治療群のうちの1つ、ヒアルロン酸又は生理食塩水注射に無作為化した。
【0161】
臨床研究の結果
安全性-深刻な有害事象
手順及び治療は十分に耐容性であった:
・同種MPCに対するアレルギー又は免疫反応の臨床症状なし
- クラスI PRA及びクラスII PRAが≧5%及び≧20%の対象の割合は、4つの研究治療群全てにおいてスクリーニングからその後の来診まで比較的安定したままであった
- DSA応答を伴う対象の数は、全ての治療群にわたって同様であった:生理食塩水、HA、6M及び18M群における対象、それぞれ、3/16(18.8%);2/14(14.3%);5/23(21.7%)及び4/21(19.0%)。
・深刻な有害事象
- 生理食塩水により、対象の10%がSAEを経験した
・疲労の1回出現率
・背部痛の1回出現率
・下肢痛の1回出現率
- HAにより、対象の5.0%がSAEを経験した
・背部痛の1回出現率
- 6M MPCにより、対象の13.3%がSAEを経験した
・類皮嚢胞の1回出現率
・椎間板炎の1回出現率(手順に関連する)
・背部痛の2回出現率
- 18M MPCにより、対象の6.7%がSAEを経験した
・背部痛の2回出現率
【0162】
24か月にわたる治験
以下のTable 1(表2)に示すように、MPC治療群は、12か月にわたって、対照よりも有意に介入が少なかった:
【0163】
【0164】
VAS腰痛におけるLS平均変化
MPC治療群は、12及び24か月での生理食塩水と比較して、有意に優れたベースラインからのLS平均腰痛改善を有していた(
図2)。
【0165】
24か月のVASカテゴリー分布
6M MPCで治療された患者は、生理食塩水対照と比較して、より低いVASへの顕著なシフトを示した。6M MPCについての中位VASスコアは実質的に低減されるが、生理食塩水は24か月で事実上未変化である(
図3)。
【0166】
応答閾値によるVASレスポンダー比率の12か月の結果
MPC群は両方とも、12か月で50%より高い痛みの低減を達成したいずれかの対照群よりも患者の割合が高い(
図4)。
【0167】
600万個のMPC群は、対照と比較して、12か月に至るまで、及び24か月に至るまで、少なくとも50%の痛みの低減を伴い、かつ治療後の介入なしの患者の高い割合を有する(
図5)。
【0168】
標準治療とのVAS比較
MPC治療は、NSAID及びオピオイドと比較して平均LBP改善の有意な改善、並びに全ての時で実質的な改善閾値を超えている(
図6)。
【0169】
ODI機能の平均変化
MPCは、1か月後の全ての時点で少なくともFDA閾値の平均ODI改善を有し、24か月及び36か月の両方で生理食塩水より優れていた(
図7)。
【0170】
24か月の結果
MPC治療群は、12か月での対照よりもより高い機能の改善を有していた(
図8)。
【0171】
MPC治療群は、対照と比較して、24か月に至るまで、少なくとも15ポイントのODIの低減を伴う患者の高い割合を有する(
図9)。
【0172】
標準治療とのODI比較
MPC治療は、NSAID及びオピオイドと比較して平均機能改善の有意な改善、並びに全ての時でFDA改善閾値を超えている(
図10)。
【0173】
時点についての複合治療の成功
MPC群は、3か月以内の治療の利益、潜在的な再生プロセスと一致して、少なくとも24か月間にわたって持続する利益を示す(
図11)。
【0174】
24か月にわたる複合治療の成功
MPC群は、生理食塩水対照と比較して12か月に至るまで治療成功レスポンダーにおける有意差を示し、かつ生理食塩水と比較して24か月間に至るまで6M MPCに有意差を示す(
図12)。
【0175】
【国際調査報告】