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特表2022-515920リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用
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  • 特表-リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用 図1a
  • 特表-リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用 図1b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(54)【発明の名称】リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/55 20170101AFI20220215BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61K47/55
A61K31/395
A61K31/4375
A61P31/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539517
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2020070161
(87)【国際公開番号】W WO2020143534
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】201910017484.3
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519304240
【氏名又は名称】丹諾医薬(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】馬 振坤
(72)【発明者】
【氏名】袁 鷹
(72)【発明者】
【氏名】劉 宇
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA99
4C076CC31
4C076CC41
4C076DD60
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086CB25
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、メチシリン薬剤耐性、キノロン薬剤耐性、及び/又はキノロン多剤耐性黄色ブドウ球菌による細菌感染症の治療及び予防に有効なリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用を提供する。
本発明にて提供されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩は、メチシリン薬剤耐性、キノロン薬剤耐性、及びメチシリン及びキノロン多剤耐性黄色ブドウ球菌による細菌感染及び疾患の治療及び予防に有効であり、リファマイシンとキノロンとの組み合わせと比較して、自然発生的薬剤耐性の頻度を低減することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染による疾患の治療又は予防用の薬物の製造のための、Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用。
【化1】
【請求項2】
前記薬剤耐性黄色ブドウ球菌は、メチシリン及びキノロン多剤耐性黄色ブドウ球菌、メチシリン薬剤耐性黄色ブドウ球菌、又はキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌を含むことを特徴とする請求項1に記載の適用。
【請求項3】
前記薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染症は、急性細菌感染症及び/又はバイオフィルム細菌感染症を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の適用。
【請求項4】
前記急性細菌感染症は、皮膚及び皮膚組織感染症、呼吸器感染症、又は菌血症を含むことを特徴とする請求項3に記載の適用。
【請求項5】
前記バイオフィルム感染症は、心臓弁感染症、人工関節感染症、カテーテル関連血液感染症のうちの1つ又は複数の組み合わせを含むことを特徴とする請求項3に記載の適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野に属するリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
メチシリン薬剤耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant staphylococcus aureus、MRSA)感染症は、現在、深刻な臨床治療疾患及び公衆健康問題である。MRSAは、1960年代に初めて発見されて以来、その分離率が年々増加し、病院内感染の重要な病原菌となってコミュニティへの拡散傾向を示すとともに、多剤耐性の現象がますます厳しくなっており、バンコマイシンに対して異なる程度の薬剤耐性を示す黄色ブドウ球菌が出現し、大部分のMRSAはキノロンやマクロライド抗生物質に対して同時に薬剤耐性を生じるようになってきた。一方、ヒト組織や埋め込み型医療機器の表面に細菌のバイオフィルムが形成されることは、抗生物質の活性を低下させ、薬剤耐性菌を形成する上で重要な条件である。したがって、メチシリン及びキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌による感染、特にバイオフィルム関連感染の治療は、現在、満たされていない主要な臨床的ニーズである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来技術に存在する欠点に鑑みて、本発明の目的は、メチシリン薬剤耐性及び/又はキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌による細菌感染症の治療及び予防に有効なリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、以下の解決手段によって達成される。
【0005】
薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染による疾患の治療又は予防用の薬物の製造のための、Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用。
【0006】
【化1】
【0007】
上記の適用において、好ましくは、前記薬剤耐性黄色ブドウ球菌は、メチシリン及びキノロン多剤耐性黄色ブドウ球菌、メチシリン薬剤耐性黄色ブドウ球菌、又はキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌を含む。
【0008】
上記の適用において、好ましくは、前記薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染症は、急性細菌感染症及び/又はバイオフィルム細菌感染症を含む。
【0009】
上記の適用において、好ましくは、前記急性細菌感染症は、皮膚及び皮膚組織感染症、呼吸器感染症、又は菌血症を含む。
【0010】
上記の適用において、好ましくは、前記バイオフィルム感染症は、心臓弁感染症、人工関節感染症、カテーテル関連血液感染症のうちの1つ又は複数の組み合わせを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の顕著な効果は、以下のとおりである。
【0012】
本発明にて提供されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩は、メチシリン薬剤耐性、キノロン薬剤耐性、及びメチシリン及びキノロン多剤耐性黄色ブドウ球菌による細菌感染及び疾患の治療及び予防に有効であり、自然発生的薬剤耐性の頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】黄色ブドウ球菌の同質遺伝子型キノロン薬剤耐性菌株に感染したマウスに対するリファマイシン-キノリジノン結合分子Iの14日間の治療効果図である。
図1b】黄色ブドウ球菌の同質遺伝子型キノロン薬剤耐性菌株に感染したマウスに対するリファマイシン-キノリジノン結合分子Iのリバウンド治療手段の効果図である。
図2a】黄色ブドウ球菌の同質遺伝子型キノロン薬剤耐性菌株に感染したマウスに対するリファンピシン+レボフロキサシンの組み合わせの14日間の治療効果図である。
図2b】黄色ブドウ球菌の同質遺伝子型キノロン薬剤耐性菌株に感染したマウスに対するリファンピシン+レボフロキサシンの組み合わせのリバウンド治療手段の効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の技術的特徴、目的、及び有益な効果をより明確に理解するために、本発明の技術的解決手段を以下に詳細に説明するが、本発明の実施可能な範囲を制限するものとして理解されるべきではない。以下の実施例に記載の実験方法は、特に明記しない限り、いずれも従来の方法であり、前記試薬及び材料は、特に明記しない限り、いずれも商業チャネルで購入できる。
【0015】
下記の実施例では、便宜上、グラフ中で意味表示を行うために、リファマイシン-キノリジノン結合分子をIと定義する。
【0016】
(実施例1)
本実施例は、メチシリン黄色ブドウ球菌の治療及び予防のための薬物の製造における、リファマイシン-キノリジノン結合分子(I)及びその薬学的に許容可能な塩の適用を提供する。
【0017】
本実施例において、Iの薬学的に許容される全ての塩(例えば、モノナトリウム塩、二ナトリウム塩、カリウム塩など)は、インビボでI(式Iに示す)の薬物原型に変換されるため、実験テストにおいてIを基礎とし、Iはダノール医薬有限公司から提供される。
【0018】
【化2】
【0019】
本実施例の適用において、キノロンに対する感受性及び異なる程度の薬剤耐性の背景で、Iに対するメチシリン薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感受性及び薬剤耐性の自然突然変異頻度の分析、及びリファンピシン、レボフロキサシン、並びにリファンピシンとレボフロキサシンの組み合わせの薬剤との比較について、具体的な方法は以下のとおりである。
【0020】
試験薬剤:ダノール医薬により提供され、-20℃で保存されるリファマイシン-キノリジノン結合分子I。比較化合物は商業チャネルで購入した。試験化合物関連情報を下記の表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
上記化合物は、自然突然変異分析及び寒天最小静菌濃度(Minimal Inhibit Concentration、MIC)分析を行う際に、それぞれ対応する溶媒中に、最大終濃度の100倍の濃度の原液(100X)として調製し、当日中に使用した。使用前に、IをDMSOでさらに希釈し、ベンズゾリン、リファンピシン及びレボフロキサシンを、水でさらに希釈した。DMSO濃度は、化合物の寒天希釈法によるMIC分析又は自然突然変異分析の過程において、いずれも1%(v/v)を超えなかった。
【0023】
細菌分離株:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)分離株をMicromyx菌株の保存センターの-80℃保存室から取り出し、解凍した後、トリプトン大豆寒天+5%羊血(Remel、Lenexa、KS)のプレート培地に接種し、続いて35℃で一晩好気培養した。試験中、黄色ブドウ球菌ATCC 29213(MRSA、菌株番号100)菌株を品質管理のために添加した。
【0024】
試験用培地:寒天希釈法によるMIC分析及び自然突然変異分析には、いずれもMueller-Hinton寒天培地(MHA、BD/BBL)を用いた。各菌株の接種材料をMueller-Hintonカチオン調製液体培地(CAMHB、BD/BBL)に懸濁した。ベンズゾリン試験の際、塩化ナトリウム(Sigma-Aldrich)を終濃度の2%でCAMHBに添加した。コロニー計数のために細菌懸濁液を希釈する場合も、CAMHBを使用した。
【0025】
寒天希釈法によるMIC測定:CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)推奨に準拠して、寒天希釈法によるMIC値測定を行った。全ての試験試薬について、100倍の最終試験濃度から開始して、2倍段階の一連希釈(Iは0.5~0.0005μg/mL、ベンズゾリンは8~0.06μg/mL、リファンピシンは1~0.001μg/mL、レボフロキサシンは64~0.015μg/mL)を行う。100X試験試薬0.2mL+寒天培地19.8mLの割合で、各試験試薬を予熱したMHA寒天培地(50-55℃)とともに滅菌チューブに入れ、穏やかに振盪し、続いて滅菌ペトリ皿(BD Falcon)に流し込んだ。ペトリ皿を室温で凝固させた。0.5マックス濁度標準菌懸濁液を調製し、CAMHBで1:10に希釈し、続いて、ステンレス鋼マルチポイントシーダーを用いて、薬用プレート上に10CFU/ポイントで接種した。寒天培地表面の接種材料を乾燥させた後、プレートを逆さにし、好気的に35℃で20~24時間培養し、その成長状況を検査した。MICは、培地表面での細菌成長を有意に阻害する試験薬剤に必要な最小濃度である。
【0026】
自然突然変異頻度測定:寒天希釈法によるMIC測定結果に基づいて、黄色ブドウ球菌3265、3270、3278及び6312菌株において、I及びリファンピシン薬剤耐性突然変異が生じる頻度を、0.5、2及び8μg/mLの濃度で試験した。リファンピシン/レボフロキサシンの併用薬剤の試験濃度は、0.5/0.5、2/2及び8/8μg/mLであった。各試験試薬原液は、いずれも自然突然変異頻度分析用の寒天プレートに必要とされる最終標的試験濃度の100倍で調製した。
【0027】
各試験菌株の培養のために、0.5mLの100X I、リファンピシン又はリファンピシン/レボフロキサシン混合薬を、49.50mL(49mLの併用薬剤群)の50-55℃の高圧冷却MHAと混合した。薬物/寒天混合物を、150×15mm滅菌プレート(BD Falcon)に、各プレート50mLに分注する。各自然突然変異分析プレートの標的接種量は、少なくとも10CFUであった。ペトリ皿を室温に置いて凝固させた。
【0028】
自然突然変異頻度分析接種材料の調製方法は、新たに成長した菌株を滅菌綿棒で掻き取り、続いて6mLのCAMHBで高濃度の細胞懸濁液(濁度約1.70)を調製した。懸濁生菌数はMHA10倍連続希釈法でカウントし、続いて数回カウントして平均値を求めた。分析の際に、接種材料0.25mLを150×15mmのプレート表面に、各試験薬物濃度でプレート2枚ずつ塗布し、乾燥後、プレートを逆さにし、35℃で48時間培養し、続いて生菌数をカウントした。自然突然変異頻度の計算式は以下のとおりである。
【0029】
自然突然変異頻度=各選択培地群の平均コロニー数/各プレート上で培養された細胞総数
【0030】
各選択培地にいずれもコロニーが存在しない場合には、コロニー数が1の場合の突然変異頻度以下(例えば、1/プレート培養細胞総数)と報告された。また、コロニー数の平均値が小数(例えば、16.5)である場合、当該数字は、上に整数を求めた(例えば、16.5は17と記載される)。
【0031】
並行実験では、マックス濁度0.5の標準菌懸濁液を、標準寒天希釈分析の接種材料(10CFU/スポット)としてさらに調製した。CAMHBで1:10に希釈した懸濁液から、2μLの接種材料を、それぞれのI又はリファンピシンの濃度が2X及び4X MICである(寒天希釈法)寒天培地(すなわち、自然突然変異分析に使用した培地)に移し、各培地に2枚ずつのプレートを接種した。当該ステップは、薬物原液の濃度が標準接種材料の成長を阻害することができることを確認するために、自然突然変異分析で使用される培地及び薬物を使用した。レボフロキサシン原液の品質管理を、標準接種材料及び8~0.008μg/mLのレボフロキサシンを用いて、別々の寒天希釈で分析した。当該方法は、自然突然変異頻度分析における黄色ブドウ球菌株の大部分がレボフロキサシンに対して耐性があるため、レボフロキサシン原液の最適な品質管理のための手段である。上記のプレートを35℃条件で20~24時間インキュベートし、続いて観察した。
【0032】
自然突然変異の同定結果の確認:自然突然変異体を、新たに調製した寒天培地に移して一晩培養し、続いてBruker Biotyper MALDI装置を用いて同定した。
【0033】
薬剤耐性菌に対する投与結果:レボフロキサシンに対しては薬剤耐性を有するがリファンピシンに対して感受性を有するMRSA分離株で細菌のIに対する薬剤耐性変異を評価した。表2は、寒天希釈法により測定した23株のMRSA分離株のI、リファンピシン、ベンズゾリン及びレボフロキサシンに対する感受性である。全ての菌株は、いずれもベンズゾリンに対して薬剤耐性を有し、MRSA表現型を確かに有することが示された。
【0034】
【表2】
【0035】
備考:表中の上付きの意味:は、有効なブレークポイントに基づく表現型分類、は、CLSIの品質管理範囲、は、終点未定、太字は、自然突然変異分析のために選択された菌株である。
【0036】
Iは、MRSAに対する非常に強力な阻害活性を有し、各試験菌株に対するMICがリファンピシンと同様にいずれも0.015μg/mLであった。全23株の菌株はいずれもリファンピシンに感受性(MIC≦1μg/mL、感受性であった)を示したが、レボフロキサシンのMIC値は0.25-64μg/mLの範囲であった。本実施例では、自然突然変異頻度分析のための測定菌株として、LEVRIF分離株3265、3270、及び6312、並びにLEVRIF分離株3278を選択した。
【0037】
4種のMRSA分離株をI又はリファンピシン(0.5、2又は8ug/mLの濃度)を含有する培地を用いて自然突然変異頻度分析を行った結果を表3に示す。また、等量のリファンピシン及びレボフロキサシン混合物(各0.5、2又は8μg/mL)を含有するプレートも調製した。1プレート当たりの接種量は3.8~5.4×10CFUであった。Iプレート上ではいずれかの自然突然変異体も回収できず、したがってその自然突然変異頻度は<1.85-2.56×10-10の範囲であった。対照的に、各試験菌株は、MICの63-1000倍の培地中のリファンピシン濃度を選択したにもかかわらず、依然として多数の自然突然変異体を生成した。
【0038】
リファンピシン/レボフロキサシン混合培地においてLEVRIF菌株の3278の自然突然変異体をスクリーニングすることができなかったことは、おそらく、両方の薬物の含有量がいずれもそのMICよりもはるかに高かったためである。しかしながら、6312及び各8μg/mLのリファンピシン/レボフロキサシン含有プレート(レボフロキサシン濃度がMICよりも高い)を除いた残りのLEVRIF菌株は、各濃度のリファンピシン/レボフロキサシン混合投与に対していずれも薬剤耐性を示した。当該結果は、リファンピシンとレボフロキサシンとを混合して使用し、レボフロキサシンの濃度がMICよりも高い場合には、自然突然変異体の生成を阻害でき、レボフロキサシンの濃度がMICよりも低い場合には、混合薬によっても薬剤耐性変異体の生成を阻害できないことを示した。
【0039】
表4に示すように、培地及び薬物原液の品質管理試験の結果は、MIC値が決定された所定の範囲内にあることを示し、したがって、本実験方法は有効である。MICの2倍、4倍のI及びリファンピシン濃度の選択培地に標準接種量で接種した後、無菌的に成長したところ、寒天中の薬剤濃度が試験菌株に対して強い阻害効果を確かに有することが確認された。
【0040】
【表3】
【0041】
備考:表中、自然突然変異分析培地にコロニーが成長しなかった場合、コロニー数1に従って自然突然変異率を算出した。上付き2は、リファンピシン及びレボフロキサシン各々0.5、2又は8μg/mLを含有する培地を示し、上付き3は、レボフロキサシンのMICを示す。
【0042】
【表4】
【0043】
備考:表中の上付き1は、CLSI品質管理範囲を示す。
【0044】
以上をまとめて、4種の試験MRSA菌株のいずれも、0.5、2、及び8μg/mLのI濃度の条件下で薬剤耐性を生じなかった。リファンピシン単剤試験時の自然突然変異の頻度が高いことが予想に合致している。リファンピシン/レボフロキサシンの併用薬剤は、レボフロキサシン濃度がMICよりも高い場合のみに薬剤耐性突然変異を防止することができる(全ての濃度条件下でLEVRIF菌株、及び?8μg/mLのレボフロキサシンに薬剤耐性を有するLEVRIF菌株を含む)。
【0045】
(実施例2)
本実施例は、メチシリン黄色ブドウ球菌の治療及び予防のための薬物の製造における、リファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用を提供する。その医薬成分は、リファマイシン-キノリジノン結合分子(I)及び抗菌剤を含み、その使用量は任意に調製できる。
【0046】
それとともに、本実施例においても、上記の薬物製剤について、バイオフィルム感染に対する治療効果試験を行った。式Iのリファマイシン-キノリジノン結合分子は、同質遺伝子型薬剤耐性黄色ブドウ球菌株を用いたマウスのバイオフィルム移植モデルにおける、リファンピシン、レボフロキサシン及びガチフロキサシン(単独及び併用)とのインビボ治療効果を有する。
【0047】
試験薬剤:ダノール医薬により提供され、-20℃で保存されるリファマイシン-キノリジノン結合分子I。その他の試験化合物及び試薬は、商業的に購入した。本実施例では、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iの薬学的に許容される全ての塩(例えば、モノナトリウム塩、二ナトリウム塩、カリウム塩など)は、インビボでI(式Iに示す)の薬学的原型に変換されるため、試験はIをベースとする。MIC試験におけるIの調製溶液に0.002%のトウェイン80を添加した。試験用製剤は10%エタノール/5%重炭酸ナトリウム/6%ポリオキシエチレンヒマシ油ELで調製(体積比)し得た。さらなる製剤は、滅菌水、5%重炭酸ナトリウム又は0.9%生理食塩水を用いて、式Iの分子化合物を添加して調製し得た。式Iのリファマイシン-キノリジノン結合分子の製剤を30mg/kgの用量で投与した。臨床的最大曝露量Cmaxに到達することをシミュレートするように、リファンピシン及びレボフロキサシン混合治療を、20mg/kg+25mg/kgの用量で使用した。
【0048】
細菌:バイオフィルム形成用の黄色ブドウ球菌は、野生型CB1406と、その同質遺伝子型フルオロキノリン薬剤耐性誘導体CB1823(parCS80F)、CB1840(norAup)及びCB1857(parCS80F+norAup)とである。最小阻害濃度(MIC)試験は、CLSI推奨ブロス微量希釈法で行った。
【0049】
試験動物:本実施例では、5-6週齢のBalb/c雌性マウスを用いた。マウスは、この試験の間に自由に摂取することができ、飲むことができた。動物の管理及び使用に関する試験手段及び変更又は操作は、動物の管理及び使用委員会(IACUC)の審査及び承認を通して開始前にすでに行われている。
【0050】
インプラントを定植するためのインビトロ準備:テフロン(登録商標)静脈カテーテル(14-Guage AbboCath-T#271-1000又はBraun Introcan#425 2594)を1cmの断片に切断し、70%エタノールに15分間浸漬することにより滅菌し、UV光下で20分間乾燥させ、続いて滅菌1.5mLポリプロピレンチューブに入れ、37℃に加熱した。細菌接種材料を、0.25%グルコースを添加したトリプシン大豆ブロス(TSBG)中で1:10希釈し、250rpmで1時間、37℃で振盪しながらインキュベートする一晩培養によって調製した。培養物を、1.0E+0CFU/mLまでTSBGで37℃に希釈し、各カテーテルに1mLを添加し、37℃で2.5時間振盪せずに培養し、続いて18℃に冷却してインプラント外科手術が完了するまで成長を遅らせた。
【0051】
皮下インプラント感染の形成及び治療:マウスをイソフルラン蒸気(4L/min)で麻酔し、両側を剃毛し、エタノール/ポビドンヨードで消毒し、2箇所の3mmの切開を行った。皮下腔を形成し、続いて予め接着した細菌が定植されたカテーテルセグメントを腔内に挿入し、外科用ステープルで縫合した。これらのマウスをケージに戻し、有害反応を定期的にモニターした。治療を手術後1週間(細菌定植及びバイオフィルム形成)にわたり開始し、腹腔内注射(IP)を1日2回行い、治療群は、7日治療、7日治療+7日無治療リバウンド期間、7日治療+7日反発+7日再治療、各治療群又は試料採取群の5匹のマウス(合計10匹のインプラント)を含んだ。インプラントに関連する細菌は、埋め込み手術中及び感染後28日間の間隔で、埋め込みカテーテルセグメントをサンプリングすることによってモニターした。
【0052】
感染インプラントのサンプリング:感染マウスを二酸化炭素吸入で安楽死させ、両側を70%エタノールで滅菌し、感染カテーテルセグメントを切除して1mlのリン酸緩衝食塩水pH7.2(1×PBS)に移した。取り出された植え込みカテーテルセグメントの内面に付着した細菌を、200μL1×PBSをカテーテルに添加して繰り返し吸引し、続いて5分間高速で振盪した。移植試料をドライアイス/エタノール中で一時的に凍結し、CFUカウントが測定されるまで-80℃で保存した。
【0053】
CFUカウント測定:カテーテルを37℃の水浴中で急速に解凍させ、2分間振盪し、一連希釈後に寒天プレート上で8μL滴下し、斑点を観察した。無薬木炭又はMHII寒天プレート上で培養した後、生菌数を決定した。耐性菌の生存及び出現を、1μg/mLの薬物(リファンピシン、レボフロキサシン、I)を含有するMHII寒天培地に、希釈したカテーテル細菌試料を同時に並行して別々に添加して評価した。全てのCFU測定の検出下限は、2.09log10CFU/インプラント以下であった。
【0054】
データ分析:希釈法によるCFU/カテーテル測定でコロニーをカウントした結果、5-50個コロニー/斑点であった。カウントは、連続希釈係数で乗算された。得られた元の値をlog10CFUに変換して平均値と標準偏差とを算出した。治療群のlog減少量は、対照治療マウスの平均log10CFU値から薬物治療マウスの平均log10CFU値を引いたものであった。
【0055】
結果:図1a、1bは、黄色ブドウ球菌の同質遺伝子型キノロン薬剤耐性菌株に感染したマウスに対するリファマイシン-キノリジノン結合分子Iの治療効果図であり、溶媒対照治療の抗生物質治療マウスの平均log10CFU/カテーテルであった。以下の手段により、IP注射による1日2回の治療、1-1)14日間治療:感染後1週間から14日間の投与、1-2)再発治療:感染後1週間から7日間の治療(7未治療日間の再発期間及びさらなる7日間の再治療日を含む)を施した。Log10CFUカウントを、治療開始(7日目)、14日目(投与7日後)、21日目(治療14日後又は7日再発)及び28日目(7日再治療)後に測定した。検出限界は、2.09log10CFU/インプラントであった。
【0056】
図2a、図2bは、黄色ブドウ球菌の同質遺伝子型キノロン薬剤耐性菌株に感染したマウスに対するリファンピシン+レボフロキサシンの組み合わせの治療効果図であり、溶媒対照処置マウス及び抗生物質治療マウスの平均log10CFU/カテーテルである。以下の手段により、IP注射による1日2回の治療、2-1)14日間治療:感染後1週間から14日間の投与、2-2)再発治療処置:感染後1週間から7日間の治療(7未治療日間の反発期及びさらなる7日間の治療日を含む)を施した。Log10CFUカウントを、治療開始(7日目)、14日目(投与7日後)、21日目(治療14日後又は7日再発)及び28日目(7日再治療)後に測定した。検出限界は、2.09log10CFU/インプラントであった。
【0057】
黄色ブドウ球菌CB1406(野生型)に対するリファマイシン-キノリジノン結合分子I及びリファンピシン+レボフロキサシンの治療結果を、表5-1、5-2及び図1a、1b、2a、2bに示す。
【0058】
【表5-1】
【0059】
【表5-2】
【0060】
14日間連続して30mg/kg/の腹腔内注射で1日2回投与し、Iは野生型黄色ブドウ球菌感染カテーテル部位での細菌コロニー数(CFU)の4.6log減少をもたらした。同じ治療手段において、リファンピシン+レボフロキサシン(20+25mg/kg)の併用は、同様のカウント数減少(4.7log)を示した。I又はリファンピシン+レボフロキサシンで処置した動物のいずれかにおいても、リファンピシン又はIの薬剤耐性の産生が観察されなかったことは、抗生物質プレートを含むカテーテルから回収した菌株の成長から証明された。
【0061】
再発治療手段において、最初治療7日、続いて休薬7日及び最後の追加治療7日、Iは、それぞれ2.1、4.6及び4.7log10CFUの細菌数の減少をもたらした。リファンピシン+レボフロキサシンは、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iよりも若干治療効果が低く、同時にそれぞれ1.5、3.8、及び4.0log10CFUの細菌数の減少を示した。Iで処置した動物は、全ての試料採取部位でリファンピシン又はそれ自体に対する薬剤耐性が観察されなかった。対照的に、リファンピシン+レボフロキサシンで処置した動物の25%のカテーテルは、7日の再処置期間後にリファンピシンに対する薬剤耐性を示した。
【0062】
キノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌CB1823(parCS80F)に対するリファマイシン-キノリジノン結合分子I及びリファンピシン+レボフロキサシン薬剤の組み合わせの治療結果を、表6-1、表6-2及び図1a、図1b、図2a、図2bに示す。
【0063】
【表6-1】
【0064】
【表6-2】
【0065】
14日間連続して30mg/kgの用量で投与したところ、Iは、黄色ブドウ球菌CB1823(parCS80F)感染カテーテル部位での細菌数の4.3log減少をもたらした。同じ治療手段において、リファンピシン+レボフロキサシン(20+25mg/kg)の併用は、同様のカウント数減少(4.2log)を示した。Iで治療した動物のいずれかにおいても、リファンピシン又はIによる薬剤耐性の生成が観察されなかったことは、抗生物質プレートのカテーテルから回収した菌株の成長から証明された。対照的に、リファンピシン+レボフロキサシン治療群の25%は、リファンピシンに対する薬剤耐性を示した。
【0066】
再発治療手段において、治療7日、休薬7日及び再治療7日後に、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iは、それぞれ、2.4、4.4及び4.5log10CFUの細菌数の減少をもたらした。リファンピシン+レボフロキサシンは、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iよりも若干治療効果が低く、同時にそれぞれ2.2、3.1、及び3.6log10CFUの細菌数の減少を示し、リファンピシンに対するリファンピシン+レボフロキサシンで処置した動物の薬剤耐性が観察された。治療7日、休薬7日及び再治療7日後の薬剤耐性の割合は、それぞれ0%、30%及び30%であった。
【0067】
リファマイシン-キノリジノン結合分子I及びリファンピシン+レボフロキサシンの組み合わせの排出ポンプ活性化によるキノロン薬剤耐性をもたらす黄色ブドウ球菌CBの治療結果を、表7-1、表7-2及び図1a、1b、2a、2bに示す。
【0068】
【表7-1】
【0069】
【表7-2】
【0070】
14日間連続して30mg/kgの用量で治療したところ、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iは、黄色ブドウ球菌CB1840(norAup)感染カテーテルの細菌数の4.9log10CFUの減少をもたらした。同じ治療手段において、リファンピシン+レボフロキサシン(20+25mg/kg)の組み合わせは、同様のカウント数減少(4.9log10CFU)を示した。リファンピシン又はリファンマイシン-キノリジノン結合分子Iの薬剤耐性の生成が、リファンマイシン-キノリジノン結合分子I又はリファンピシン+レボフロキサシンで治療した動物のいずれにおいても観察されなかったことは、抗生物質を含有するプレート上でのカテーテルから回収した菌株の成長から証明された。
【0071】
再発治療手段において、治療7日、休薬7日及び再治療7日後に、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iは、それぞれ、2.4、4.9及び4.9log10CFUの細菌数の減少をもたらした。リファンピシン+レボフロキサシンは、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iよりも若干治療効果が低く、同時にそれぞれ2.0、4.5、及び4.7log10CFUの細菌数の減少を示した。リファマイシン-キノリジノン結合分子Iで処置した動物は、全ての試料採取箇所でリファンピシン又はそれ自体に対する薬剤耐性が観察されなかった。対照的に、リファンピシン+レボフロキサシンで処置した動物の11%のカテーテルは、7日の再治療後にリファンピシンに対する薬剤耐性を示した。
【0072】
キノロン二重薬剤耐性機能を含む黄色ブドウ球菌CB1857(parCS80F+norAup)に対するリファマイシン-キノリジノン結合分子I及びリファンピシン+レボフロキサシンの組み合わせの治療結果を、表8-1、8-2及び図1a、1b、2a、2bに示す。
【0073】
【表8-1】
【0074】
【表8-2】
【0075】
14日間連続して30mg/kgの用量で治療したところ、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iは、黄色ブドウ球菌CB1857(parCS80F+norAup)感染カテーテルの細菌数の4.5log10CFU減少をもたらした。同じ処置手段において、リファンピシン+レボフロキサシン(20+25mg/kg)の組み合わせは、同様のカウント数減少(4.3log10CFU)を示した。リファンピシン-キノリジノン結合分子Iで処置した動物では、リファンピシン又はリファンピシン-キノリジノン結合分子Iの薬剤耐性の生成が観察されなかったことは、抗生物質を含有するプレート上でのカテーテルから回収した菌株の成長から証明された。対照的に、リファンピシン+レボフロキサシン10%で治療したマウスは、リファンピシンに対する薬剤耐性を示した。
【0076】
再発治療手段において、治療7日、休薬7日及び再治療7日後に、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iは、それぞれ、2.5、4.4及び4.4log10CFUの細菌数の減少をもたらした。リファンピシン+レボフロキサシンは、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iよりも若干治療効果が低く、同時にそれぞれ1.8、3.7及び4.1log10CFUの細菌数の減少を示した。試料採取時点で、リファンピシン+レボフロキサシンで処置した動物が、リファンピシンに対する薬剤耐性を有することが観察された。治療7日、休薬7日、再治療7日後のカテーテル薬剤耐性の割合はそれぞれ22%、20%、22%であった。7日の再治療期間後、リファンピシン+レボフロキサシンで処置した動物の11%のカテーテルは、リファンピシン+レボフロキサシンに対する二重耐性を示した。
【0077】
本実施例では、医療機器関連細菌感染症に対する抗菌薬物のインビボ薬効を、マウス皮下埋め込みカテーテル感染モデルにより評価した。使用した細菌は、バイオフィルムを生成する同質遺伝子型薬剤耐性黄色ブドウ球菌であった。野生型バイオフィルム菌株CB1406から開始して、同質遺伝子型変異を有する抗フルオロキノロン誘導体CB1823(parCS80F)、CB1840(norAup)、及びCB1857(parCS80F+norAup)が生成された。
【0078】
これらの4種の菌株は、マウスにおいて類似の成長動態を示し、感染後7日目~28日目の間、細菌の平均カウントは、テフロン(登録商標)のインプラント上で、6.8-7.3log10CFU/インプラントであった。
【0079】
14日間治療したマウスの微生物学的検出を、カテーテルのコロニー数のlog10CFUの減少を測定することによって行うところ、リファマイシン-キノリジノン結合分子I(30mg/kg)及びリファンピシン+レボフロキサシン(合計用量20+25mg/kg又は45mg/kg)の組み合わせは、類似の治療効果を示し、log10CFUの減少範囲がいずれも4.3-4.9であった。リファンピシン+レボフロキサシンで処置した動物では、parCS80F突然変異を含む生物(CB1823及びCB1857)の感染において、リファンピシンに対する薬剤耐性の出現率がわずかに高いことが観察された。
【0080】
リファマイシン-キノリジノン結合分子Iは、再発治療手段において、混合物よりも良好な治療効果を示す。治療7日、休薬(再発)7日及び再治療7日の、リファマイシン-キノリジノン結合分子I及びリファンピシン+レボフロキサシンの平均log10CFU減少は、それぞれ2.4、4.6及び4.6、並びに1.9、3.8及び4.1であったが、リファンピシン+レボフロキサシンの再治療7日後、全ての生物学的試料は、いずれもリファンピシンに対する薬剤耐性を示した。
【0081】
リファマイシン-キノリジノン結合分子Iの有効性は、単一又は混合フルオロキノロン薬剤耐性表現型を表現する菌株を使用するマウスバイオフィルム感染モデルで検証された。リファマイシン-キノリジノン結合分子Iの薬効は、各種の黄色ブドウ球菌株の感染に対するリファンピシン+レボフロキサシンの有効性よりも優れたか類似した。併用薬剤と比較して、リファマイシン-キノリジノン結合分子Iの用量はより低くなった。リファマイシン-キノリジノン結合分子Iで治療したマウスでは、リファンピシンに対する薬剤耐性が観察されず、リファマイシン-キノリジノン結合分子I自体に対する薬剤耐性もなかった。
【0082】
以上のことから、本発明にて提供されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩は、メチシリン薬剤耐性、キノロン薬剤耐性、及びメチシリン及びキノロン多剤耐性黄色ブドウ球菌による細菌感染及び疾患の治療又は予防に有効であり、リファマイシンとキノロンの薬剤との組み合わせと比較して、自然発生的薬剤耐性の頻度を低減することができる。
【0083】
(付記)
(付記1)
薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染による疾患の治療又は予防用の薬物の製造のための、Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の適用。
【化3】
【0084】
(付記2)
前記薬剤耐性黄色ブドウ球菌は、メチシリン及びキノロン多剤耐性黄色ブドウ球菌、メチシリン薬剤耐性黄色ブドウ球菌、又はキノロン薬剤耐性黄色ブドウ球菌を含むことを特徴とする付記1に記載の適用。
【0085】
(付記3)
前記薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染症は、急性細菌感染症及び/又はバイオフィルム細菌感染症を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の適用。
【0086】
(付記4)
前記急性細菌感染症は、皮膚及び皮膚組織感染症、呼吸器感染症、又は菌血症を含むことを特徴とする付記3に記載の適用。
【0087】
(付記5)
前記バイオフィルム感染症は、心臓弁感染症、人工関節感染症、カテーテル関連血液感染症のうちの1つ又は複数の組み合わせを含むことを特徴とする付記3に記載の適用。
図1a
図1b
図2a
図2b
【手続補正書】
【提出日】2021-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファンピシンに対して感受性を有するキノリジノン薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染による疾患の治療又は予防用の薬物の製造のための、Iで示されるリファマイシン-キノリジノン結合分子及びその薬学的に許容される塩の使用であって
【化1】
リファンピシンに対して感受性を有するキノリジノン薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染は、急性細菌感染症及び/又はバイオフィルム細菌感染症を含む、使用。
【請求項2】
前記急性細菌感染症は、皮膚及び皮膚組織感染症、呼吸器感染症、又は菌血症を含むことを特徴とする請求項に記載の使用
【請求項3】
前記バイオフィルム感染症は、心臓弁感染症、人工関節感染症、カテーテル関連血液感染症のうちの1つ又は複数の組み合わせを含むことを特徴とする請求項に記載の使用
【国際調査報告】