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特表2022-515961ミトコンドリア機能が改善されたT細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ミトコンドリア機能が改善されたT細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220216BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220216BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALI20220216BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20220216BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20220216BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220216BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220216BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220216BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220216BHJP
   A61K 35/28 20150101ALN20220216BHJP
   A61K 35/51 20150101ALN20220216BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
C12N5/0793
C12N5/0775
C12N5/09
A61K35/17 Z
A61K45/00
A61P29/00
A61P37/02
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
A61K35/28
A61K35/51
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021523501
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 US2019061140
(87)【国際公開番号】W WO2020102321
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/760,392
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521174912
【氏名又は名称】アブラハム ジェイ アンド フィリス カッツ コード ブラッド ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラフリン,メアリー
(72)【発明者】
【氏名】ド,ジョン ス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA92X
4B065AC12
4B065AC14
4B065AC20
4B065BB04
4B065BB13
4B065BB19
4B065BC12
4B065CA23
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZB212
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB59
4C087BB64
4C087CA04
4C087DA20
4C087DA32
4C087MA66
4C087NA20
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB26
(57)【要約】
臍帯血から治療用T細胞を産生するための方法が提供される。臍帯血由来の治療用T細胞を使用して免疫関連疾患または状態(例えば、自己免疫疾患、移植片拒絶、癌)を治療するための方法も提供される。臍帯血由来の治療用T細胞を含む組成物も提供される。ミトコンドリア移行の誘導または阻害を介して、疾患を治療するための方法および増殖細胞内で利用可能なATPを増加または減少させるための方法も提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から誘導性調節性T細胞(iTreg)を産生するための方法であって、
血液を準備することと、
ナイーブCD4T細胞を前記血液から単離することと、
前記ナイーブCD4T細胞を誘導してiTregを含む第1の組成物に分化させることと、
前記iTregを前記第1の組成物から分離して、実質的に精製されたiTreg組成物を形成することと、
前記精製されたiTreg組成物を間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上で増殖(expanding)させることと、
ミトコンドリア移行を増加させるために前記MSCフィーダー層でトンネルナノチューブ(TNT)の形成を誘導し、持続的なFoxP3発現および炎症状態における抑制機能を備えた増殖iTreg組成物を産生することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記血液がヒト臍帯血である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘導ステップが、前記ナイーブCD4T細胞をTGF-βで処置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記iTregが、フローサイトメトリーのセルソーティングまたは磁気セルソーティングを使用して、前記第1の組成物から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記精製されたiTreg組成物が、少なくとも90%純粋である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記iTregが、CD4、CD25、およびFoxP3タンパク質を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
FoxP3発現のBACH2転写調節を増加させることによって、前記精製されたiTreg組成物を増殖させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ミトコンドリア移行が、増殖中のiTreg上のCD39および/またはCD73経路を上方調節することによって促進される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項によって産生された増殖されたiTreg組成物を含む、誘導性調節性T細胞組成物。
【請求項10】
炎症性または自己免疫状態の治療を必要とするヒト対象における、炎症性または自己免疫状態を治療するための方法であって、
間葉系間質細胞上で増殖し、TNT形成が誘導された、治療有効用量の臍帯血由来のiTregを含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項11】
前記臍帯血iTregが、FoxP3発現のBACH2転写調節を誘導することによって分化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記iTregが自家である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記iTregが同種異系である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記iTregが単一の抗原に特異的である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記iTregがポリクローナルである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が糖尿病合併症に罹患している、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
間葉系間質細胞上で増殖し、TNT形成が誘導された、有効用量の臍帯血由来のiTregを含む治療用調節性T細胞組成物。
【請求項18】
前記臍帯血iTregが、FoxP3発現のBACH2転写調節を誘導することによって分化されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
免疫関連の疾患または状態の治療を必要とする対象における、免疫関連の疾患または状態を治療するための方法であって、有効量の請求項17に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記治療用T細胞組成物が誘導性調節性T細胞を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記治療用T細胞組成物が、キメラ抗原受容体発現T細胞を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記治療用T細胞組成物が、ウイルス特異的エフェクターT細胞を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が癌に罹患している、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
細胞内で利用可能なATPを増加させる方法であって、第1の細胞、および前記第1の細胞から第2の増殖細胞へのミトコンドリア移行を促進する有効量の薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記第1の細胞がMSCである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の細胞がニューロンである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の細胞がT細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の細胞が癌細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ミトコンドリア移行が、前記増殖細胞上のCD39および/またはCD73を上方調節する薬剤によって促進される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記CD39またはCD73上方調節剤が、1型IFN、TNFa、IL-1b、プロスタグランジン(PG)E2、TGF-β、wntシグナル伝達経路のアゴニスト、E2F-1、CREB、Sp1、HIF1-a、Stat3、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ミトコンドリア移行が、TNT形成を誘導する薬剤によって促進される、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
TNT形成を誘導する前記薬剤が、M-Sec、Rho GTPアーゼファミリーRac1およびCdc42に含まれるアクチン重合因子、またはそれらの下流エフェクターWAVEおよびWASP、白血球特異的転写物1(LST1)、ドキソルビシンもしくは別のアントラサイクリン類似体、または細胞ストレス応答を引き起こす別の薬剤である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
細胞内で利用可能なATPを減少させる方法であって、第1の細胞、および前記第1の細胞から第2の増殖細胞へのミトコンドリア移行を防止する有効量の薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記第2の細胞が癌性細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌性細胞が白血病細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ミトコンドリア移行を防止する前記薬剤がTNT形成を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
TNT形成を阻害する前記薬剤が、サイトカラシンB、サイトカラシンD、またはシタラビンなどのヌクレオシド類似体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ミトコンドリア移行を防止する前記薬剤が、前記CD39および/またはCD73シグナル伝達経路を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記CD39および/またはCD73シグナル伝達経路を阻害する前記薬剤が表面遮断薬である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記CD39および/またはCD73シグナル伝達経路を阻害する前記薬剤が、Gfi-1、CD39/CD73遮断抗体、E-NTPDアーゼ阻害剤、またはアデノシン5’-(α、β-メチレン)二リン酸である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
対象における低ATPを特徴とする疾患を治療する方法であって、第1の細胞型から第2の増殖細胞型へのミトコンドリア移行を促進する有効量の薬剤を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項42】
対象における高ATPを特徴とする疾患を治療する方法であって、第1の細胞型から第2の増殖細胞型へのミトコンドリア移行を防止する有効量の薬剤を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月13日に提出された米国仮出願第62/760,392号の優先権の利益を主張し、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、T細胞を製造するための方法およびそれに関する組成物に関する。本開示はまた、免疫関連の疾患または状態を治療するためにT細胞を養子移入するための方法、およびそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
養子細胞免疫療法は、様々な免疫関連の疾患および状態を治療するための新たな戦略であり、免疫機能および特徴を改善することを目的として、免疫系由来の細胞を投与することを含む。養子T細胞免疫療法は、通常、対象からT細胞を抽出し、エクスビボで細胞を改変および/または増殖し、次に改変および/または増殖されたT細胞を患者に導入することを必要とする。養子細胞免疫療法の適用は、エクスビボで所望の表現型および特徴を有する機能的T細胞を単離、分化、改変、および/または増殖する能力によって制約されてきた。したがって、有望な実験レジメンから確立された標準治療への養子T細胞免疫療法の移行は、安全、効率的、堅牢、かつ費用効果の高い細胞製造プロトコルの開発に大きく依存している。養子T細胞免疫療法での使用に適している、誘導性調節性T細胞、キメラ抗原受容体発現T細胞、腫瘍浸潤リンパ球、T細胞受容体修飾およびウイルス特異的エフェクターT細胞など、多くの種類のT細胞集団が存在するため、一般的な適用性を有するT細胞製造プロトコルが特に望ましい。
【0004】
現在の背景は、治療用T細胞の代表的な例としての誘導性調節性T細胞、および養子細胞免疫療法での使用に適した治療用T細胞を産生する改善された方法の必要性について論じている。キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ウイルス特異的エフェクターT細胞など、養子細胞免疫療法での使用に適した他の種類の治療用T細胞がある。これらの他の種類の治療用T細胞はまた、治療用T細胞を製造する改善された方法から利益を得ることができ、現在開示されている方法および組成物に含まれる。
【0005】
免疫系は、自己に対する反応を避けながら、多種多様な病原体を効率的に標的とし、癌細胞を抑制し続けるように微調整されている。自己免疫を制御するために、すべての哺乳動物と同様に、ヒトは多くのサプレッサー細胞集団を発生した。これらの中で、調節性T細胞(Treg)は、CD4+およびCD8+T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、および樹状細胞などの他の免疫細胞の活性化およびエフェクター機能を強力に抑制する能力を備えた、耐性を維持する主要な細胞サブセットとして浮上している。
【0006】
調節性T細胞には、CD4+およびCD8+細胞の様々なサブセットが含まれる。一般に、これらのサブセットは、それらの発生部位および/またはそれらが産生するサイトカインに従って分類される。調節性T細胞の1つのサブセットは胸腺で発生し(天然の調節性T細胞または「nTreg」)、同時に、ナイーブCD4+T細胞が抗原に遭遇し、TGF-β、IL-10およびIL-2の存在下で誘導性調節性T細胞(「iTreg」)に分化すると、別のサブセットが末梢で発生する。調節性T細胞集団は両方とも、直接的な細胞間相互作用から可溶性サイトカイン(例えば、IL-10、IL-35、およびTGF-β)によって媒介される間接的な抑制、および代謝制御に至るまで、多くの独立した経路を通じてナイーブおよび進行中の免疫応答を制御する。これらの活動の結果は、エフェクターT細胞の機能を低減させ、免疫調節および耐性を促進する(promote)ことである。
【0007】
調節性T細胞は病原性自己反応性細胞を制御するため、自己免疫疾患の治療だけでなく、炎症状態(幹細胞、組織、臓器移植における免疫拒絶、ならびに移植片対宿主病の有害性)の抑制にも治療の可能性がある。調節性T細胞サブセットの中で、CD4CD25Foxp3iTregは、自己免疫の防止および耐性の増強における役割のために、有望な免疫調節治療戦略を提供する。ヒト末梢血中のnTregの数が少ないこと、およびnTregの増殖能が低いことは、養子T細胞療法における幅広い臨床応用への重要な課題であり、iTregよりも望ましくない。
【0008】
誘導性Treg(iTreg)は、nTregが減少したり、欠陥があったりした場合に、許容範囲を再確立できる。しかしながら、自家(自己)および同種異系(その他)のiTregのインビボ投与の回収、製造、および投与量および頻度による強力な免疫調節活性の臨床的実施は困難であることが証明されている。より具体的には、自家iTregのこれまでの経験は、末梢血から一般的に単離できる少数から増殖するのが困難であり、エクスビボでの増殖中にそれらの機能特性が低下するという課題があった。さらに、iTregの分化および機能に重要なフォークヘッドボックスP3(FOXP3、別名FoxP3およびFoxp3)転写因子の発現の不安定性は、これまでiTregの臨床応用に重大な障壁をもたらしてきた。
【0009】
FOXP3は、DNA結合転写因子のフォークヘッド/翼状ヘリックスファミリーのメンバーであり、調節性CD425Tregの発生および維持のための主な(master)調節因子である。マウスまたはヒトのいずれかにおけるFOXP3遺伝子の欠失または変異は、Treg欠損症に起因する重度の自己免疫疾患を引き起こす可能性がある。活性化プロテイン1(AP-1)、活性化T細胞の核因子1(NFAT1)、核因子-κB(NF-kB)、デカペンタプレジック2に対する小さな母親(smad2)、smad3、ならびにシグナル伝達物質および転写活性化因子5(STAT5)はすべて、FOXP3mRNA発現の調節因子として同定されている。加えて、安定したFOXP3の発現は、マウスにおけるエピジェネティックな調節制御に関連している。
【0010】
ヒトCD4T細胞におけるFOXP3発現の調節は完全には解明されていない。ヒトFOXP3は、活性化されたCD4およびCD8T細胞によって、サイトカイン産生に対する負のフィードバックループの可能性として発現される。加えて、ヒトCD4T細胞にはFOXP3mRNAの2つのスプライス変異体があるが、マウスには1つのバージョンしかない。両方のヒトFOXP3スプライス変異体は共発現しており、既知の機能の違いは確認されていない。
【0011】
いくつかの以前の方法は、末梢血単核細胞を血液から単離し、末梢血単核細胞集団を抗原で刺激してiTregを産生し、iTregを回収および増殖することにより、エクスビボで自家iTregを産生した。これらの細胞の臨床的有効性は、患者に移入された場合、エクスビボでの増殖中の末端エフェクター分化および消耗機能の獲得によって妨げられ、したがって、インビボでのそれらの機能および持続性を防止する。具体的には、大規模なエクスビボT細胞の増殖およびエフェクターの分化は、強力な抗原特異的細胞溶解だけでなく、末端エフェクター分化と、インビボでさらに増殖して持続する能力の低下につながる可能性がある。蓄積された証拠は、エクスビボで生成されたT細胞が初期のナイーブ表現型に関連する特徴を維持するときに最適な治療効果が達成されることを示唆している。したがって、エクスビボ培養増殖期間中のT細胞分化を制限しながら効率的な抗原プライミングを確実にするために妥協点を探さなければならない。
【0012】
したがって、未成熟な表現型を維持する、エクスビボでの無尽蔵のiTregを産生するための新しい方法が必要である。炎症性または自己免疫状態(例えば、自己免疫疾患、移植片拒絶、および移植片対宿主病)を治療するための新しい方法も必要である。新しいiTreg組成物は、未成熟な表現型を維持し、消耗機能を欠きながら、インビボでの治療効果を期待できる十分な数を提供する(render)ように、エクスビボで増殖された。
【0013】
より一般的には、好適な特徴(未成熟な表現型、消耗機能の欠如など)を有する治療用T細胞をエクスビボで産生するための新しい方法が必要である。養子移入された治療用T細胞で免疫関連の疾患または状態を治療するための新しい方法も必要である。エクスビボで製造および/または増殖され、好適な特徴(未成熟な表現型、消耗機能の欠如など)を維持しながらインビボ治療効果を有する治療用T細胞を含む新しい治療用T細胞組成物も必要である。
【発明の概要】
【0014】
本発明の実施形態において、隣接する細胞からのミトコンドリアのトンネルナノチューブ(TNT)移行を誘導することを含む、T細胞を製造するための方法が提供される。本発明の実施形態において、隣接する細胞は、間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層でよい。本発明の実施形態において、ミトコンドリア移行は、T細胞を含む目的の細胞間でTNT形成を誘導することによって増加させることができる。他の実施形態において、ミトコンドリア移行は、癌性細胞を含む目的の細胞間のTNT形成を阻害することによって減少させることができる。
【0015】
血液から誘導性調節性T細胞を産生するための方法が提供されている。実施形態において、血液は、例えば、臍帯または成人の瀉血またはアフェレーシスから供給され得る。特定の実施形態において、血液から誘導性調節性T細胞を産生するための方法は、血液を準備することと、ナイーブCD4+T細胞を血液から単離することと、ナイーブCD4+T細胞を誘導してiTregを含む第1の組成物に分化させることと、iTregを第1の組成物から分離して、実質的に精製されたiTreg組成物を形成することと、精製されたiTreg組成物を間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上に増殖させて、持続的なFoxP3発現および炎症状態における抑制機能を備えた増殖iTreg組成物を形成することとを含む。実施形態において、MSCは、TNTを形成するように誘導されて、エクスビボ増殖中の持続的なFoxP3発現および炎症状態における抑制機能を有する増殖中のT細胞へのミトコンドリア移行を促進する(facilitate)。実施形態において、iTregは、CD4+、CD25+、およびFoxP3+タンパク質を発現する。いくつかの実施形態において、精製されたiTreg組成物は、FoxP3発現のBACH2転写調節を増加させることによって増殖される。
【0016】
誘導されたTNT形成を伴う間葉系間質細胞上に増殖した血液由来の誘導性調節性T細胞を使用して炎症性または自己免疫状態(例えば、自己免疫疾患、移植片拒絶、および移植片対宿主病)を治療するための方法も提供される。特定の実施形態において、炎症性または自己免疫状態の治療を必要とする対象におけるそれを治療するための方法は、ミトコンドリア移行を提供する間葉系間質細胞上に増殖された治療有効用量の血液由来iTregを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0017】
増強されたミトコンドリア移行TNT活性を有する間葉系間質細胞上に増殖した臍帯血または成人血液由来の誘導性調節性T細胞を含む組成物も提供される。
【0018】
臍帯血または成人の血液から治療用T細胞を産生するための方法が提供される。特定の実施形態において、臍帯血または成人血液から治療的T細胞を産生するための方法は、臍帯血または成人血液を準備することと、ナイーブCD4+T細胞を臍帯血または成人の血液から単離することと、単離されたナイーブCD4+T細胞から治療用T細胞組成物を製造することとを含む。特定の実施形態において、製造ステップは、間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上で治療用T細胞組成物またはその前駆体を培養することを含む。
【0019】
特定の実施形態において、方法および製造ステップは、限定されないが、レンチウイルス形質導入またはエレクトロポレーションを介した遺伝子形質導入などの方法によって、FoxP3の発現を増加させるためにBACH2転写調節を誘導することを含む。
【0020】
免疫関連の疾患または状態を治療するための方法も提供される。特定の実施形態において、免疫関連の疾患または状態の治療を必要とする対象におけるそれを治療するための方法は、治療有効用量の血液由来治療用T細胞組成物を含む組成物を対象に投与することを含み、血液由来の治療用T細胞組成物またはその前駆体は、ミトコンドリア移行TNT活性が増強された間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上で培養された。
【0021】
臍帯または成人血液由来の治療用T細胞を含む組成物が提供され、臍帯または成人血液由来の治療用T細胞またはその前駆体は、誘導されたTNT活性を有する間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上で培養された。神経疾患の治療などのために、ミトコンドリア移行を誘導するための方法および組成物も提供される。癌性組織の治療などのために、ミトコンドリア移行を阻害するための方法および組成物がさらに提供される。
【0022】
細胞内で利用可能なATPを増加させる方法が提供される。特定の実施形態において、細胞内のATPを増加させるための方法は、第1の細胞型と第2の増殖細胞との間のミトコンドリア移行を促進する有効量の薬剤を投与することを含む。
【0023】
細胞内で利用可能なATPを減少させる方法が提供される。特定の実施形態において、細胞中のATPを減少させるための方法は、第1の細胞から第2の増殖細胞へのミトコンドリア移行を防止/減少させる有効量の薬剤を投与することを含む。
【0024】
高または低ATPのいずれかを特徴とする疾患を治療するための方法が提供される。特定の実施形態において、高または低ATPのいずれかを特徴とする疾患を治療するための方法は、細胞間のミトコンドリア移行を促進または防止する有効量の薬剤を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】IL-2によるエクスビボ増殖(IL-2 driven ex vivo expansion)中に、MSCミトコンドリアが増殖中のiTregに移行されることを示している。
図1B】IL-2によるエクスビボ増殖(IL-2 driven ex vivo expansion)中に、MSCミトコンドリアが増殖中のiTregに移行されることを示している。
図1C】IL-2によるエクスビボ増殖(IL-2 driven ex vivo expansion)中に、MSCミトコンドリアが増殖中のiTregに移行されることを示している。
図2】BM-MSCからのミトコンドリアのUCB iTreg取り込みが、IL-2によるエクスビボ増殖中にトンネルナノチューブを介して発生することを示している。
図3】IL-2によるエクスビボ増殖中のトンネルナノチューブを介したBM-MSCからのミトコンドリアのUCB iTreg取り込みを示している。
図4】IL-2によるエクスビボ増殖中のトンネルナノチューブを介したBM-MSCからのミトコンドリアのUCB iTreg取り込みを示している。
図5A】IL-2によるエクスビボ増殖中のMSCからのミトコンドリアのUCB iTreg取り込みの定量化を示す。
図5B】IL-2によるエクスビボ増殖中のMSCからのミトコンドリアのUCB iTreg取り込みの定量化を示す。
図6】サイトカラシンBが、IL-2によるエクスビボ増殖中にBM-MSCからiTregへのミトコンドリア移行を遮断することを示している。
図7A】サイトカラシンBが、IL-2によるエクスビボ増殖中に、MSCからUCB iTregへのミトコンドリア移行を遮断することを示している。
図7B】サイトカラシンBが、IL-2によるエクスビボ増殖中に、MSCからUCB iTregへのミトコンドリア移行を遮断することを示している。
図8A】サイトカラシンB処置が、IL-2によるエクスビボ増殖中に増殖iTegへのミトコンドリア移行を有意に阻害することを示している。
図8B】サイトカラシンB処置が、IL-2によるエクスビボ増殖中に増殖iTegへのミトコンドリア移行を有意に阻害することを示している。
図9A】ROS阻害剤が、IL-2によるエクスビボ増殖中にUCB iTregを増殖させることにより、ミトコンドリアの取り込みを有意に低減させないことを示している。
図9B】ROS阻害剤が、IL-2によるエクスビボ増殖中にUCB iTregを増殖させることにより、ミトコンドリアの取り込みを有意に低減させないことを示している。
図10A】MSCプラットフォーム培養でミトコンドリアを受け取るiTregがROSレベルを大幅に向上させたことを示している。
図10B】MSCプラットフォーム培養でミトコンドリアを受け取るiTregがROSレベルを大幅に向上させたことを示している。
図11A】ミトコンドリア膜電位が、MSC上においてiTreg IL-2によるエクスビボ増殖条件で増強されることを示している。
図11B】ミトコンドリア膜電位が、MSC上においてiTreg IL-2によるエクスビボ増殖条件で増強されることを示している。
図12A】ミトコンドリア膜電位が、MSC上においてIL-2でエクスビボ増殖したiTregで増強されることを示している。
図12B】ミトコンドリア膜電位が、MSC上においてIL-2でエクスビボ増殖したiTregで増強されることを示している。
図13】iTreg ATPが、BM MSCプラットフォーム上で、エクスビボ増殖条件で増強されたことを示している。
図14A】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図14B】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図14C】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図14D】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図14E】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図14F】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図14G】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図14H】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図15A】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図15B】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図15C】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図15D】CD39/CD73経路が、増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する(drive)ことを示している。
図16A】CD39/CD73薬理学的阻害剤が、IL-2によるエクスビボ増殖中に、UCB iTregへのMSCミトコンドリア移行を遮断することを示している。
図16B】CD39/CD73薬理学的阻害剤が、IL-2によるエクスビボ増殖中に、UCB iTregへのMSCミトコンドリア移行を遮断することを示している。
図17A】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図17B】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図17C】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図17D】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図17E】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図17F】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図17G】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図17H】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図17I】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図18A】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図18B】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図18C】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図18D】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図18E】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図18F】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図18G】MSCとiTregとの共培養が、ヒト化マウスモデルにおいて異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。
図19A】機能不全のミトコンドリアがiTregに移行しないことを示している。
図19B】機能不全のミトコンドリアがiTregに移行しないことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態において、T細胞を増殖するための方法は、隣接する細胞からのミトコンドリアのトンネルナノチューブ(TNT)移行を誘導することを含むように提供される。本発明の実施形態において、隣接する細胞は、間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層であり得る。本発明の実施形態において、ミトコンドリア移行は、T細胞を含む目的の細胞間でTNT形成を誘導することによって増加させることができる。他の実施形態において、ミトコンドリア移行は、癌性細胞を含む目的の細胞間のTNT形成を阻害することによって減少させることができる。
【0027】
TNT形成およびミトコンドリア移行は、腫瘍壊死因子-α誘導タンパク質としても知られるM-Sec、Rho GTPアーゼファミリーRac1およびCdc42を含むアクチン重合因子、およびそれらの下流エフェクターであるWAVEおよびWASPなどの化合物によって、ならびに、以下に記載されているように、HeLaおよびHEK細胞株における白血球特異的転写物1(LST1)タンパク質の発現によって誘導され得る。DuPont et al.,Front.Immunol.,25 January 2018(https://doi.org/10.3389/fimmu.2018.00043)。TNTおよびミトコンドリア移行は、Desir et al,Scientific Reports,volume 8,Article number:9484(2018)に記載されているように、ドキソルビシンおよびその他のアントラサイクリン類似体、ならびに細胞ストレス反応を引き起こすその他の薬剤などの化合物によっても誘導される可能性がある。Omsland et al.,Scientific Reports,volume 8,Article number:11118(2018)に記載されているように、TNTおよびミトコンドリア移行は、サイトカラシンB、およびシタラビン(シタラビン、AraC)などのヌクレオシド類似体によって阻害される可能性がある。さらに、サイトカラシンDは細胞透過性であり、アクチン阻害剤である。Saenz-de-Santa-Maria et al.,Oncotarget,2017に示されているように、サイトカラシンDはTNT形成の大幅な低減を引き起こす可能性がある。Hanna et al.Scientific Reports(2017)、Keller et al.Invest Ophthalmol Vis Sci.(2017)も参照されたい。
【0028】
Tregは、ミトコンドリア移行を促進するアピラーゼ(CD39)およびエクト-5’-ヌクレオチダーゼ(CD73)を発現する。CD39/CD73は、1型IFN、TNFa、IL-1b、プロスタグランジン(PG)E2、TGF-β、wntシグナル伝達経路のアゴニスト、E2F-1、CREB、Sp1、HIF1-a、Stat3、および低酸素症を使用して上方調節され得る。Beavis et al.,Trends in Immunology(2012)、Bao et al.,Int’l J.of Molecular Med(2012)、Regateiro et al.,Eur.J.Immunol(2011)、Synnestvedt et al.,J.Clin Invest(2002)、Eltzschig et al.,J of Exp.Med(2003)、Eltzschig et al.,Blood(2009)、およびChalmin et al.,Immunity(2012)を参照されたい。Gfi-1は、Chalmin,Immunity(2012)に記載されているように、CD39/CD73の発現を抑制する。CD39/CD73は、遮断抗体またはPOM1(E-NTPDアーゼ阻害剤)およびアデノシン5’-(α、β-メチレン)二リン酸などの薬理学的阻害剤を使用して阻害することもできる。
【0029】
血液から誘導性調節性T細胞を産生するための方法が提供されている。実施形態において、血液は、例えば、臍帯または成人の瀉血またはアフェレーシスから得ることができる。特定の実施形態において、血液から誘導性調節性T細胞を産生するための方法は、血液を準備することと、ナイーブCD4+T細胞を血液から単離することと、ナイーブCD4+T細胞を誘導してiTregを含む第1の組成物に分化させることと、iTregを第1の組成物から分離して、実質的に精製されたiTreg組成物を形成することと、精製されたiTreg組成物を間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上に増殖させて、持続的なFoxP3発現および炎症状態における抑制機能を備えた増殖iTreg組成物を形成することと、を含む。実施形態において、MSCは、ミトコンドリア移行を促進するためにTNTを形成するように誘導される。
【0030】
誘導されたTNT形成を伴う間葉系間質細胞上に増殖した血液由来の誘導性調節性T細胞を使用して、炎症性または自己免疫状態(例えば、自己免疫疾患、移植片拒絶、および移植片対宿主病)を治療するための方法も提供される。特定の実施形態において、炎症性または自己免疫状態の治療を必要とする対象におけるそれを治療するための方法は、ミトコンドリア移行を提供する間葉系間質細胞上に増殖した治療有効用量の血液由来iTregを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0031】
増強されたミトコンドリア移行TNT活性を有する間葉系間質細胞上に増殖した臍帯血または成人血液由来の誘導性調節性T細胞を含む組成物も提供される。いくつかの実施形態において、臍帯血iTregは、FoxP3発現のBACH2転写調節を誘導することによって分化されてきた。
【0032】
臍帯血または成人血液から治療用T細胞を産生するための方法が提供される。特定の実施形態において、臍帯血または成人血液から治療用T細胞を産生するための方法は、臍帯血または成人血液を準備することと、ナイーブCD4+T細胞を臍帯血または成人の血液から単離することと、単離されたナイーブCD4+T細胞から治療用T細胞組成物を製造することと、を含む。特定の実施形態において、製造ステップは、間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上で治療用T細胞組成物またはその前駆体を培養することを含む。
【0033】
特定の実施形態において、方法および製造ステップは、限定されないが、レンチウイルス形質導入またはエレクトロポレーションを介した遺伝子形質導入などの方法によって、FoxP3の発現を増加させるためにBACH2転写調節を誘導することを含む。
【0034】
免疫関連の疾患または状態を治療するための方法も提供される。特定の実施形態において、免疫関連疾患または状態の治療を必要とする対象におけるそれを治療するための方法は、治療有効用量の血液由来T細胞組成物を含む組成物を対象に投与することを含み、血液由来の治療用T細胞組成物またはその前駆細胞は、ミトコンドリア移行TNT活性が増強された間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上で培養された。
【0035】
臍帯または成人血液由来の治療用T細胞を含む組成物が提供され、臍帯または成人血液由来のT細胞またはその前駆体は、誘導されたTNT活性を有する間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上で培養された。癌性組織の治療などのために、ミトコンドリア移行を阻害するための方法および組成物も提供される。
【0036】
細胞内で利用可能なATPを増加させる方法が提供されている。特定の実施形態において、細胞内のATPを増加させるための方法は、第1の細胞と第2の増殖細胞との間のミトコンドリア移行を促進する有効量の薬剤を投与することを含む。いくつかの実施形態において、ミトコンドリア移行は、低酸素症で促進され得る。特定の実施形態において、ミトコンドリア移行は、TNTの形成を促進することによって増加する。特定の実施形態において、ミトコンドリア移行は、CD39および/またはCD73の上方調節を介して促進される。いくつかの実施形態において、ミトコンドリア移行は、1型IFN、TNFa、IL-1b、プロスタグランジン(PG)E2、TGF-β、wntシグナル伝達経路のアゴニスト、E2F-1、CREB、Sp1、HIF1-a、Stat3、またはそれらの任意の組み合わせを使用して促進され得る。いくつかの実施形態において、ミトコンドリア移行は、M-Sec、Rho GTPアーゼファミリーRac1およびCdc42に含まれるアクチン重合因子、またはそれらの下流エフェクターであるWAVEおよびWASP、白血球特異的転写物1(LST1)、ドキソルビシンもしくは別のアントラサイクリン類似体、または細胞ストレス反応を引き起こす別の薬剤を使用して促進される。
【0037】
特定の疾患は低いATPによって特徴付けられる。例えば、損傷したニューロンは周囲の細胞からミトコンドリアを取り込む可能性があり、このプロセスの促進は神経修復に有益である可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、細胞内のATPを増加させるための方法は、神経疾患、免疫疾患、またはアレルギー性疾患を含むがこれらに限定されない疾患の治療に使用され得る。他の実施形態において、ATPは、培養増殖条件において、T細胞などの細胞において増加されて、それらを対象に投与する前に十分な治療的細胞用量を達成し得る。いくつかの実施形態において、ミトコンドリア移行に影響を与える薬剤は、対象に直接投与される。いくつかの実施形態において、ミトコンドリアを提供する細胞型はMSCである。
【0038】
細胞内で利用可能なATPを減少させる方法が提供されている。特定の実施形態において、細胞中のATPを減少させるための方法は、第1の細胞と第2の増殖細胞との間のミトコンドリア移行を防止する有効量の薬剤を投与することを含む。特定の実施形態において、ミトコンドリア移行は、TNTの形成を防止することによって減少される。特定の実施形態において、アクチン阻害剤が投与される。特定の実施形態において、サイトカラシンB、サイトカラシンD、またはシタラビンなどのヌクレオシド類似体が投与される。特定の実施形態において、ミトコンドリア移行は、CD39および/またはCD73シグナル伝達経路の下方調節を通じて減少する。特定の実施形態において、CD39および/またはCD73は、表面遮断抗体を使用して下方調節される。特定の実施形態において、Gfi-1、E-NTPDアーゼ阻害剤、またはアデノシン5’-(α、β-メチレン)二リン酸が投与される。
【0039】
特定の疾患は高いATPによって特徴付けられる。例えば、癌性細胞は、癌性増殖を促進するために周囲の細胞からミトコンドリアを取り込む可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、細胞内のATPを減少させるための方法が、癌を含むがこれに限定されない疾患の治療に使用され得る。
【0040】
全体として、細胞間のミトコンドリア移行の促進または防止を通じて、多くの異なる疾患または状態を治療することができる。いくつかの実施形態において、細胞は、培養物中で増殖され、次いで、対象に導入され得る。他の実施形態において、細胞間のミトコンドリア移行を促進または防止する薬剤は、対象に直接投与され得る。
【0041】
本発明またはその好ましい実施形態(複数可)の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味すると意図される。「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、および「有する」という用語は、包括的であることを意図し、列挙される要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。
【0042】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「からなる」および/または「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0043】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示されている。範囲形式での説明は、便宜上かつ簡潔さのためにすぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、考えられるすべての部分範囲とその範囲内の個々の数値が具体的に開示されているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、および6が具体的に開示されているとみなされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「約」は当業者によって理解され、それが使用される状況に応じてある程度変化する。当業者には明らかでない用語の使用がある場合、それが使用される文脈を考えると、「約」は、特定の用語の最大±10%を意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「異常な免疫応答」という用語は、患者の症状につながる不適切に調節された免疫応答を指す。異常な免疫応答には、対象の免疫系が自己と非自己を区別できないこと(例えば、自己免疫)、外来抗原に適切に応答できないこと、外来抗原に対する過免疫応答(例えば、アレルギー性障害)、および外来抗原に対する望ましくない免疫応答(例えば、細胞、組織および臓器移植の免疫拒絶、および移植片対宿主病)が含まれ得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、免疫応答を生成することができる任意の分子を包含する。自己免疫障害の文脈では、抗原は自己抗原である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、外来または自己抗原に対する対象の応答を包含する。この用語には、細胞性、体液性、および炎症性応答が含まれる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「不適切に調節される」は、不適切に誘導され、不適切に抑制され、無反応、望ましくない誘導、望ましくない抑制、および/または望ましくない無反応の状態を包含する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」は、治療されるヒトまたは動物の対象を意味する。
【0050】
本明細書で使用する場合、「増殖(proliferation)」または「増殖(expansion)」は、細胞または細胞の集団が数を増加させる能力を指す。
【0051】
本明細書で使用する場合、「精製細胞集団」または「精製細胞組成物」を含有する組成物は、組成物中の細胞の少なくとも30%、50%、60%、典型的に少なくとも70%、より好ましくは80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上が、特定された種類のものである。
【0052】
本明細書で使用される場合、「調節性T細胞」という用語は、CD4CD25FoxP3表現型を発現するT細胞を包含する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「実質的に精製された」、「から実質的に分離された」または「実質的に分離している」は、第2の物質の集団の近傍から除去される第1の物質の集団の特徴を指し、第1の物質の集団は必ずしも第2の物質を欠いておらず、第2の物質の集団は必ずしも第1の物質を欠いているわけではない。しかしながら、第2の物質の集団から「実質的に精製され」または「実質的に分離され」ている第1の物質の集団は、第1および第2の物質の分離されていない混合物と比較して、測定可能に低い第2の物質の含有量を有する。一態様において、第2の物質の少なくとも30%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上が第1の物質から除去される。
【0054】
「抑制」、「阻害」および「予防」という用語は、受け入れられた定義に従って本明細書で使用される。「抑制」は、進行中の免疫応答が、不在の治療をもたらす免疫応答のレベルと比較して遮断されるか、または著しく低減される場合にもたらされる(例えば、本明細書に開示されるiTreg細胞による)。同様に、「阻害」は、免疫応答の発生を遮断すること、または不在の治療をもたらす免疫応答のレベルと比較してそのような応答を有意に低減させることを指す(例えば、本明細書に開示されるiTreg細胞による)。予防的に投与される場合、そのような遮断は、標的免疫応答が起こらないように完全でよく、発症前に免疫応答を完全に遮断することは、通常、「予防」と呼ばれる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「治療上有効な」とは、異常な免疫応答などの疾患に関連する症状を、治療もしくは改善する、または何らかの方法で低減するのに十分な細胞の量を指す。方法に関して使用する場合、その方法は、異常な免疫応答などの疾患に関連する症状を、治療もしくは改善するか、または何らかの方法で低減するのに十分に有効である。例えば、疾患に関して有効量とは、その発症を遮断または予防するのに十分な量であるか、あるいは疾患病状が始まっている場合は、その疾患の進行を緩和する、改善する、安定化させる、回復に向かわせる、もしくは遅らせるか、またはその疾患の病理学的結果を低減させるのに十分な量である。いずれの場合も、有効量は単回投与で与えても、または分割投与で与えてもよい。
【0056】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、患者の疾患または状態に関連する症状を少なくとも改善することを包含し、その場合、改善とは、広い意味で使用され、治療されている状態に関連する症状などのパラメータの程度が少なくとも低減することを指す。したがって、「治療」には、疾患、障害、または病的状態、または少なくともそれらに関連する症状が、完全に阻害される(例えば、発生が予防される)かまたは停止され(stopped)(例えば、停止(terminated))、患者がそれ以上その状態、または少なくともその状態を特徴付ける症状に罹患することがないようにする状況が含まれる。
【0057】
iTregを生成するための方法が提供されている。実施形態において、方法は、以下のステップのうちの1つ以上を含む:臍帯血を準備すること、臍帯血からナイーブCD4+T細胞を単離すること、ナイーブCD4+T細胞を誘導してiTregを含む第1の組成物に分化させること、iTregを第1の組成物から分離して、実質的に精製されたiTreg組成物を形成すること、精製されたiTreg組成物を間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上に増殖させて、増殖されたiTreg組成物を形成すること。
【0058】
いくつかの実施形態において、臍帯血は、例えば、ヒトを含む様々な動物源に由来し得る。したがって、いくつかの実施形態は、ヒト臍帯血を準備することを含むことができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、ナイーブCD4+T細胞は、臍帯血から分離/単離される。いくつかの実施形態において、ナイーブCD4+T細胞は、臍帯血中の他の細胞から実質的に分離されて、精製されたナイーブCD4+T細胞組成物を形成する。ナイーブCD4+T細胞を血液から分離/精製する方法は当技術分野でよく知られている。例示的な技術には、単純な遠心分離手順を使用して生存可能な単核細胞を血液から単離するためのフィコール-パック密度勾配分離、およびナイーブCD4+T細胞を単核細胞から分離するための親和性分離が含まれ得る。例示的な親和性分離技術は、例えば、磁気分離(例えば、抗体でコーティングされた磁気ビーズ)および蛍光活性化セルソーティングを含むことができる。1つの非限定的な例において、単核細胞は、フィコールを使用する勾配密度分離によって臍帯血から得ることができる。単核細胞画分からの望ましくない細胞(すなわち、非CD4+T細胞)は、ビオチン化抗CD45RO抗体で標識し、磁気支援セルソーティング(「MACS」)を使用して磁気的に分離/枯渇させ、ナイーブCD4+T細胞の濃縮/精製集団を残すことができる。いくつかの実施形態において、得られた組成物の細胞の、少なくとも75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上は、ナイーブCD4+T細胞である。いくつかの実施形態において、ナイーブCD4+T細胞の純度は、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。
【0060】
いくつかの実施形態において、ナイーブCD4+T細胞の精製された集団は、iTregを含む第1の組成物を提供するように誘導される。当技術分野で周知の方法を使用して、ナイーブT細胞を刺激してiTregを提供することができる。ナイーブCD4+T細胞を刺激してiTregを提供するための1つの例示的な技術には、IL-2(100U/ml)およびTGF-β1(5ng/ml)で1:1の比率でダイナビーズ(抗CD3、抗CD28)を用いてナイーブCD4+T細胞を培養することが含まれる。活性化されたCD4+T細胞は、例えば、これらの刺激方法の96時間などの好適な期間の後に採取および洗浄することができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、iTregは、iTregを含む第1の組成物から分離/単離されて、実質的に精製されたiTreg組成物を形成する。いくつかの実施形態において、iTregは、iTregを含む第1の組成物において他の細胞から実質的に分離されて、実質的に精製されたiTreg組成物を形成する。iTregを分離/精製/濃縮するための方法は、当技術分野でよく知られている。例示的な技術には、磁気セルソーティング(例えば、抗体でコーティングされた磁気ビーズ)および他の細胞からiTregを分離するための蛍光活性化セルソーティングなどの親和性分離法が含まれ得る。1つの非限定的な例において、iTregは、磁気分離キットを使用して精製される。いくつかの実施形態において、実質的に精製されたiTreg組成物の、少なくとも75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の細胞は、iTregである。いくつかの実施形態において、iTregの純度は、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、実質的に精製されたiTreg組成物の、少なくとも75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の細胞は、CD4CD25Foxp3である。
【0062】
いくつかの実施形態において、精製されたiTreg組成物は、間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上に増殖されて、増殖されたiTreg組成物を形成する。したがって、実施形態において、精製されたiTreg組成物は、より大きな集団のiTregを産生するように増殖される。増殖ステップは、当技術分野でよく知られている培養技術および条件を使用することができる。特定の実施形態において、iTregは、細胞を培養中に約1日~約3ヶ月維持することによって増殖される。さらなる実施形態において、iTregは、培養において、約2日~約2ヶ月、約4日~約1ヶ月、約5日~約20日、約6日~約15日、約7日~約10日、および約8日~約9日間増殖される。間葉系間質細胞(MSC)は、任意の好適な供給源(例えば、骨髄、脂肪組織、胎盤組織、臍帯血、臍帯組織)に由来する可能性がある。
【0063】
いくつかの実施形態において、培養されたiTregは、少なくとも2倍、少なくとも3倍、4、5、6、7、8、9、10、50、100、200、300、500、または少なくとも800倍に増殖される。いくつかの実施形態において、増殖されたiTregを含む組成物は、臨床的に関連する数または集団のiTreg細胞を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約10、約10、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約1010個の細胞またはそれ以上を含む。いくつかの実施形態において、組成物中に存在する細胞の数は、組成物が意図される最終的な用途、例えば、疾患または状態(state)または状態(condition)、患者の状態(例えば、サイズ、体重、健康など)、および当業者が容易に理解できる他の健康関連パラメータに依拠することになる。加えて、いくつかの実施形態において、細胞の臨床的に関連する数が累積的に等しいか、または、所望の投与を上回る複数の注入、例えば、10または1010個の細胞に分配することができる。
【0064】
実施形態において、転写因子である「広範な複合体-Tramtrack-Bric-a-bracドメイン(BTB)およびCap「n」collar(CNC)相同性1、基本的なロイシンジッパー転写因子2’(BACH2)は、UCB由来iTregのエクスビボ培養と組み合わせて、Foxp3発現の調節およびUCB由来iTregの抑制機能によりiTreg生成を増強する。
【0065】
実質的に精製されたiTregはすぐに使用できる。実質的に精製されたiTregはまた、液体窒素温度で凍結し、長期間保存して解凍し、使用することもできる。細胞は、例えば、培地、グルコースなどと組み合わせて、DMSOおよび/またはFCSに保存することができる。
【0066】
炎症性または自己免疫状態の治療を必要とする対象におけるそれを治療するための方法が提供される。実施形態において、方法は、間葉系間質細胞上に増殖された治療有効用量の臍帯血由来のiTregを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、間葉系間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregを含む本開示の組成物は、患者の免疫機能の抑制に有用である。例えば、自家細胞は、本明細書に記載されるようにインビトロで単離、増殖、および培養され、その後、同じ患者に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、そのような治療は、例えば、自己および外来抗原に対する有害なT細胞応答を下方調節するために、および/または長期耐性を誘導するために有用である。
【0068】
いくつかの実施形態において、間葉系間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregを含む治療有効量の組成物は、薬学的に許容される担体とともに対象に投与され得る。投与経路は、血管内(静脈内または動脈内)を含むがこれらに限定されない任意の好適な手段を含み得る。いくつかの実施形態において、好ましい投与経路は、静脈内注入によるものである。いくつかの実施形態において、選択される特定の投与様式は、患者の特定の治療、病状または状態、対象に投与される他の薬物または治療薬の性質または投与経路などに依存するであろう。
【0069】
いくつかの実施形態において、約10~1011個の細胞を、5ml~1リットル、50ml~250ml、50ml~150ml、および典型的には100mlの体積で投与することができる。いくつかの実施形態において、体積は、治療される障害、投与経路、患者の状態、病状などに依存する。細胞は、例えば、用量を滴定するために、選択された時間間隔にわたって単回投与または複数回投与で投与することができる。
【0070】
一態様において、本明細書に開示される組成物および方法は、本明細書に開示されるようにミトコンドリア移行の増加を伴う間葉系間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregを投与することによって、自己免疫障害またはアレルギーなどの対象における異常な免疫応答を調節することを対象とする。いくつかの実施形態において、対象は、自己免疫障害またはアレルギー反応に罹患しており、間葉系間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregを使用して、自己免疫障害またはアレルギー障害を治療する。いくつかの実施形態において、対象は、自己免疫障害またはアレルギー性障害に罹患しているヒトである。
【0071】
本明細書に開示される間葉系間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregは、多種多様な自己免疫障害の症状を治療、緩和または改善するか、または抑制するために使用することができる。いくつかの実施形態において、自己免疫障害は、アディソン病、普遍性脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、喘息、自己免疫性肝炎、自己免疫性不妊症、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性好中球減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、チャガス病、肝硬変、セリアック病、大腸炎、クローン病、慢性疲労症候群、慢性活動性肝炎、高密度沈着症(dense deposit disease)、円板状ループス、変性心臓病、皮膚炎、インスリン依存性真性糖尿病、自律神経失調症、子宮内膜症、糸球体腎炎、グッドパスチャー病、グレイブス病、移植片対宿主病(GVHD)、固形臓器(例えば、心臓、肝臓、腎臓、肺)、組織、骨髄、または幹細胞移植後のレシピエントにおける移植片拒絶、グレイブス病、ギラン-バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、化膿性汗腺炎、特発性血小板減少性紫斑症、炎症性腸疾患(「IBD」)、インスリン依存性真性糖尿病、間質性嚢胞炎、混合結合組織疾患、多発性硬化症(「MS」)、重症筋無力症、ニューロミオトニア、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多関節炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、ライター症候群、関節リウマチ(「RA」)、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、白斑、慢性外陰痛、温式自己免疫性溶血性貧血、またはウェゲナー肉芽腫症を含むがこれらに限定されない。
【0072】
追加的または代替的に、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される間葉系間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregは、多種多様な免疫関連疾患または状態の症状を治療、緩和または改善するか、または抑制するために使用され得る。いくつかの実施形態において、免疫関連疾患または状態は、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性接触皮膚炎、アナフィラキシー様紫斑病、喘息、持久性隆起性紅斑(erythema elevatum diutinum)、辺縁紅斑(erythema marginatum)、多形紅斑(erythema multiforme)、アレルギー性肉芽腫症、環状肉芽腫、顆粒球減少症、過敏性肺炎、角膜炎、腎症症候群、重複症候群、ハトブリーダー病、花粉症、特発性多発神経炎、蕁麻疹、ブドウ膜炎、若年性皮膚筋炎、急性播種性脳脊髄炎(adem)、アディソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症抗、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多発性内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロ病/バロ同心性硬化症、ベーチェット病、ベルガー病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、癌、キャッスルマン病、セリアック病、チャガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多発性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ-ストラウス症候群、良性粘膜類天疱瘡、コーガン症候群、冷凝集素疾患、補体成分2欠乏症、接触性皮膚炎、頭蓋動脈炎、クレスト症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴ病、ダーカム病、ヘルペス性皮膚炎、皮膚筋炎、真性糖尿病1型、びまん性皮膚全身性硬化症、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、円板状ループス紅斑、湿疹、子宮内膜症、腱付着部関連関節炎(enthesitis-related arthritis)、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、必須混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維性肺胞炎(特発性肺線維症)、胃炎、胃腸類天疱瘡(gastrointestinal pemphigoid)、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレイブス病、ギラン-バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹(妊娠性類天疱瘡)、化膿性汗腺炎、ヒューズ-ストビン症候群(Hughes-Stovin syndrome)、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(自己免疫性血小板減少性紫斑病)、IgA腎症、封入体筋炎、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、間質性嚢胞炎、若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ)、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA疾患(lad)、ルーゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症)、ルポイド肝炎(自己免疫性肝炎)、紅斑性ループス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群(ギラン-バレー症候群)、混合結合組織疾患、モルフィア、ムチャ-ハーバーマン病(急性痘瘡状苔癬状粃糠疹)、多発性硬化症、重力筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック病)、ニューロミオトニア、眼部瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌に関連する小児自己免疫性神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(pnh)、パリーロンバーグ症候群、パーソネージターナー症候群、毛様体扁平部炎(pars planitis)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、多発性動脈炎結節症、多発性筋痛リウマチ、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多軟骨炎、ライター症候群、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティル病(若年性関節リウマチ)、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎(sbe)、Susac症候群、スウィート症候群、シデナム舞踏病(PANDAS参照)、交感神経性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)、血小板減少症、トロサハント症候群、横断脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、未分化脊椎関節炎、蕁麻疹性血管炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症、移植片対宿主病(GVHD)を含むがこれらに限定されない。
【0073】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される間葉性間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregを使用して、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性接触皮膚炎、全身性脱毛症、アナフィラキシー様紫斑病、喘息、アトピー性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、持久性隆起性紅斑、辺縁紅斑、多形紅斑、結節性紅斑、アレルギー性肉芽腫症、環状肉芽腫、顆粒球減少症、過敏性肺炎、角膜炎、ネフローゼ症候群、オーバーラップ症候群、ハトブリーダー病、花粉症、特発性多発神経炎、蕁麻疹、ブドウ膜炎、若年性皮膚筋炎、および白斑を含むがこれらに限定されない多種多様なアレルギー性障害の症状を治療、緩和または改善、または抑制することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される誘導されたTNT形成を伴う間葉系間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregは、自己免疫障害またはアレルギー障害を治療または調節するために対象に導入され得る。例えば、対象は、進行中または再発性の自己免疫反応またはアレルギー反応を有することを特徴とする疾患に罹患している可能性がある。いくつかの実施形態において、調節は、自己免疫反応またはアレルギー反応を阻害することを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される間葉性間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregは、例えば、腫瘍監視において、固形腫瘍癌(例えば、肺癌)などの癌の免疫抑制、および移植片対宿主病(GVHD)を含むがこれに限定されないインビボ同種反応および自己免疫反応の抑制などの免疫療法のために対象に投与され得る。
【0076】
主題の方法は、患者の異常な免疫応答の調節が望まれる様々な異なる状態および移植状況の治療に使用されている。例として、しかし限定ではないが、細胞、組織、または臓器移植の場合、本明細書に開示されるように間葉系間質細胞上に増殖された臍帯血由来のiTregを含む組成物を、臓器移植患者における移植片拒絶を予防するために手術中に投与することができる。外科的処置が完了するまで細胞をその部位に維持するために、いくつかの実施形態において、人工ゲルなどの薬学的に許容される担体、または凝固血漿中、または当該分野で公知の他の制御放出メカニズムを利用することによって細胞を投与することが便利である。
【0077】
TNTの操作およびミトコンドリア移行は、いくつもの疾患の治療に使用できる。例えば、ミトコンドリア移行を誘導することにより、数および機能が改善されたiTregが産生される。これらのiTregは、自己免疫障害またはアレルギー性障害などの多くの疾患の治療に使用される可能性がある。いくつかの実施形態において、開示された方法は、非T細胞型へのミトコンドリア移行を促進または阻害するために使用され得る。MSCによる細胞間ミトコンドリア移行は、以前に神経損傷および癌モデルで説明されている(Babenko et al.,2015)。例えば、骨髄微小環境で増殖している急性白血病芽球は、MSCからミトコンドリアを奪うことが示されている(Marlein et al.,2017)。したがって、ミトコンドリア移行阻害は、癌の治療に使用される可能性がある。逆に、ミトコンドリア移行の促進は、例えば神経疾患を治療するために使用することができる。
【実施例
【0078】
概要
標準培地/IL-2浮遊培養のみと比較して、UCB iTreg数、表現型、および機能を大幅に改善したMSCプラットフォーム上で、標準培地/IL-2条件でのエクスビボ増殖が観察された。
【0079】
MSCを介した3週間のIL-2によるエクスビボ増殖中の改善されたiTreg数および機能の根底にある潜在的なメカニズムを決定するために、IL-2によるエクスビボ増殖中にミトコンドリアがMSCから増殖中のUCB iTregに移行するかどうかを決定する実験を行った。実験は、IL-2によるエクスビボ増殖中にトンネルナノチューブ(TNT)を介して増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を示した。
【0080】
ヒト骨髄間葉系間質細胞(hBM-MSC)プラットフォームを使用すると、IL-2による21日間のエクスビボ増殖中のiTregの数が、標準的な浮遊培養条件に対して顕著に向上した(MSCプラットフォーム:80.2×10対IL2/培地:39.3×10、n=6;p<0.01)。また、ナイーブな表現型(CD4CD45RAおよびCD4CD62L)を発現するiTregの数が顕著に増加した(CD45RA;MSCプラットフォーム:74.4±1.6×10対IL2/培地:45.9±2.9×10、n=6、p<0.001;CD62L;MSCプラットフォーム:79.1±1.3×10対IL2/培地:54.5±2.1×10、n=6、p<0.001)、およびFoxp3発現の安定性(IL-2/培地:88.2±1.7%対MSCプラットフォーム:96.2±1.1%、n=7;p<0.05)。加えて、iTreg抑制機能は、標準的なIL-2/培地培養条件と比較して21日間のIL-2によるエクスビボ増殖中により強力であることが認められた(MSCプラットフォーム:79%対培地:35%のT細胞増殖の阻害10:1の比率、n=6;p<0.01)。hBM-MSCプラットフォーム上で増殖されたiTregは、より高い表面CD25、CTLA-4、およびICOS MFI発現を示した(CD25;MSCプラットフォーム:1410対培地:774;p<0.001、CTLA-4;MSCプラットフォーム:1084対培地:318;p<0.001、ICOS;MSCプラットフォーム:4386対培地:2641、p<0.01、n=6)。特に、iTregでのFoxp3発現はhBM-MSC馴化培地によって増強されなかったため、iTregのエクスビボ増殖のhBM-MSC増強には直接の細胞間接触が必要である(CM:73.4±6.8%対MSCプラットフォーム:96.2±1.0%、p<0.001;およびIL2/培地:88.8±1.6%対MSCプラットフォーム:96.2±1.0%、p<0.01)またはトランスウェル培養実験(トランスウェル:83.4±2.5%対IL2/培地:88.8±1.6%、およびTranswell:83.4±2.5%対MSCプラットフォーム:96.2±1.0%、p<0.01)。
【0081】
光学セクショニング顕微鏡法およびフローサイトメトリーにより、hBM-MSCが直接接触依存性ミトコンドリア移行を介してiTregの数および機能をサポートしていることが明らかになった。サイトカラシンB処置はミトコンドリア移行を遮断し、このことは、トンネルナノチューブ(TNT)がIL-2によるエクスビボ増殖中にhBM-MSCからiTregへのミトコンドリア移行を促進することを示唆している(モック:2208±122.1対Cyto B:923.8±89MFI、n=6、p<0.0001)。さらに、iTregのATP(n=6;p<0.01)ミトコンドリア電位の量(MSCプラットフォーム:9010±224.5対培地:7316±122.7MFI、n=6;p<0.01)は、hBM-MSCプラットフォーム上でのIL-2によるエクスビボ増殖中にiTregで有意に増強された。まとめると、hBM-MSCは、21日間のIL-2によるエクスビボ増殖中に、iTregの数、成熟、および機能を大幅に改善する。エクスビボ増殖中のiTregに対するこれらの好ましい効果の根底にあるhBM-MSCの作用の1つの重要なメカニズムは、TNTを介したミトコンドリア移行であることが確認された。特に、本発明は、T細胞老化およびFoxp3発現の喪失を含むIL-2/培地浮遊培養条件における現在の制限を克服するためのhBM-MSCの新規の役割を特定する。
【0082】
MSCミトコンドリア移行がエピソーム移行によるのではなくTNTに依存していることが観察された後(Sinclair et al.,2013、Vignais et al.,2017)、短期(21日)のIL-2エクスビボ増殖中のiTregを増殖するミトコンドリア代謝機能(CD39/CD73シグナル伝達)によって促進されていると判断された。BACH2、SENP3の発現の増強は、MSCと共培養されたiTregで認められ、この条件で増殖したiTregでFoxp3の安定性を促進した。増殖中のiTregにおけるミトコンドリア代謝機能(CD39/CD73シグナル伝達)も、MSCミトコンドリアRho-GPTase 1)Miro1発現を誘導することが認められた。Miro-1は、ミトコンドリアをKLF 5キネシンモータータンパク質に結合させて、ミトコンドリアの協調輸送を確保する働きをする(Chang et al.,2011、Quintero et al.,2009)。
【0083】
まとめると、これらの研究は、インビトロおよびインビボでの有害な炎症環境にもかかわらず、強力なFoxp3発現および抑制機能を維持するのに役立つ増殖中のiTregへのMSCミトコンドリア移行を促進する細胞および分子メカニズムへの洞察を提供する。
【0084】
実施例の詳細な説明
実験方法の概要
Foxp3+iTreg誘導:UCB CD4+T細胞ビーズで富化した磁気ビーズ(Miltenyi Biotech,Auburn,CA)を、IL-2(100U/ml)およびTGF-β(5ng/ml)中、濃度5×10個の細胞/mlで、ダイナビーズ(CD2/3/28)で刺激した。
【0085】
増殖iTreg:iTregはTGF-βでの4日間の分化後に回収され、エクスビボ増殖用に設定された。細胞をCellTrace Far Redで染色し、5×10個の細胞/mlを100U/mlのIL-2とともに播種した。
【0086】
色素染色:BM-MSCを2×106個の細胞/mlで完全培地に再懸濁した。細胞を200nMのMitoTracker Green FMとともに37℃で45分間インキュベートした。iTregも2×10e6個の細胞/mlで再懸濁した。細胞を5uM CellTrace Far Redとともに37℃で20分間インキュベートした。BM-MSC 5×10e5個の細胞/mlを6ウェルプレート(9.4cm2)に播種した。分析:FACS Fortessa。
【0087】
図1A~1Cは、BM-MSCをMitoTracker green FMで30分間予備染色し、iTregで培養したことを示している。24時間の共培養後、フローサイトメトリーによりMitoTracker green MFIを使用してiTregを分析した。CellTraceおよびCD4+iTreg細胞をゲート制御し(gated)(98.2%)、MitoTracker+iTreg細胞について分析した。培地条件である培地/IL-2のみ(培地)で増殖されたMitoTracker+iTregは0.557%であり、MSCプラットフォームの増殖条件では、MitoTracker+iTregは28.8%を示した。これらの結果は、ミトコンドリアがIL-2によるエクスビボ培養中にBM-MSCからiTregに移行することを示している。3つの異なる実験から示されたデータ±SD(n=6)。****、P<0.0001。
【0088】
UCB iTregは、IL-2によるエクスビボ増殖中にMSCからミトコンドリアを取り込む。0~4日目のFoxp3+iTreg誘導:UCB CD4+T細胞を、IL-2(100U/ml)およびTGF-β(5ng/ml)中で5×10個の細胞/mlで、ダイナビーズ(CD2/3/28)で刺激した。増殖iTreg:iTreg細胞は、TGF-βでの4日間の分化+2日間の休止後に回収され、BM-MSC単層上での共培養に使用された。色素標識iTregを、添加した培地/100U/mlのIL-2で5×10個の細胞/mlで播種した。染色色素:BM-MSCは、2×10個の細胞/mlで完全培地に再懸濁した。細胞をCFSEまたはPKHで染色し、すぐにBM-MSCをMitoTracker Red FM(500nM)またはMitoTracker green FM(200nM)とともに37℃で45分間インキュベートした。iTregも2×10個の細胞/mlで再懸濁した。iTregを1ugのヘキストとともに37℃で30分間インキュベートした。BM-MSC:5×10個の細胞/mlである。顕微鏡画像分析は、ZEN 2012ソフトウェア(Carl Zeiss)を使用して実行された。
【0089】
図2は、BM-MSCからのミトコンドリアのUCB iTreg取り込みが、IL-2によるエクスビボ拡題中にトンネルナノチューブを介して発生することを示している。24時間後、UCB iTreg(ヘキスト)をMitoTracker Red FMを使用して共焦点顕微鏡で分析した。BM-MSCはCFSEおよびMitoTrackerRedで事前に染色された。記録された画像の分析は、Zen 2012(Carl Zeiss)ソフトウェアを使用して実行された。このデータは、UCB iTregがTNTの直接接触を介してBM-MSCミトコンドリアを受け取ることを支持している。画像は4つの異なる実験からの代表である(n=6)。
【0090】
図3は、24時間後、UCB iTregがMitoTracker Red FMを使用して共焦点顕微鏡で分析されたことを高倍率で示している。BM-MSCはCFSEおよびMitoTracker Red FMで予備染色し、24時間培養した。記録された画像の分析は、Zen 2012(Carl Zeiss)ソフトウェアを使用して実行された。iTregは、ミトコンドリアを含むMSC TNTのすぐ隣で観察される(赤い矢印)。このデータは、UCB iTregがTNTの直接接触を介してBM-MSCミトコンドリアを取り込むことを支持している。画像は4つの異なる実験からの代表である(n=6)。
【0091】
図4は、スライド18で説明されている実験方法を示している。BM-MSCはCFSEおよびMitoTracker Red FMで予備染色し、iTregで24時間培養した。24時間後、UCB iTregは、共焦点顕微鏡によりMitoTracker Red FMを使用して分析された。記録された画像の分析は、Zen 2012(Carl Zeiss)ソフトウェアを使用して実行された。これらの画像は、UCB iTregがTNTの直接接触を介してMSCミトコンドリアを取り込むことを支持している。画像は4つの異なる実験からの代表である(n=6)。
【0092】
図5A~5Bは、BM-MSCをCFSEおよびMitoTracker Red FMで予備染色し、iTregで24時間培養したことを示している。24時間後、共焦点顕微鏡によりMitoTracker Red FMを使用してUCBTregを分析した。記録された画像の分析は、Zen 2012(Carl Zeiss)ソフトウェアを使用して実行された。ここで、画像は、iTregの大部分がMitoTracker陽性であることを示しており、MSCミトコンドリアの取り込みを示している。結果は、培地/IL-2のみで培養されたiTregによって正規化された。データは、3つの独立した実験±SD(n=6)を表している。**、P<0.01。
【0093】
図6は、TNT形成を無効にすることが知られているF-アクチン解重合剤であるサイトカラシンBの使用を示している。ミトコンドリア移行がトンネルナノチューブ(TNT)を介して発生するかどうかを試験するために、BM-MSCをDMSOに溶解したサイトカラシンBで処置し、モック制御のためにDMSOのみと比較した。MSCをMitoTracker green FMで30分間予備染色した後、モックDMSOコントロール(モックコントロール)およびサイトカラシンB(350nM)で処置したBM-MSC(サイトカラシンB)を含むiTreg(MSCプラットフォーム)で24時間培養し、iTregのみ(Tregのみ)と比較した。24時間後、フローサイトメトリーによりMitoTracker green MFIを使用してiTregを分析した。フローデータは、3つの異なる実験からの代表である(n=6)。
【0094】
図7A~7Bは、ミトコンドリア移行がトンネルナノチューブル(TNT)を介して発生することを示している。BM-MSCをサイトカラシンBで処置し、モックコントロール(共培養)と比較した。MSCをMitoTracker green FMで30分間予備染色し、iTreg(共培養;赤)で培養し、iTreg単独(Treg単独;影付き)およびサイトカラシンB(350nM)で処置したBM-MSC(Cyto B tx;青)と24時間比較した。サイトカラシンBで処置したBM-MSCと24時間共培養した後、フローサイトメトリーによりMitoTracker green MFIを使用してiTregを分析した。
【0095】
図8A~8Bは、BM-MSCをCFSEおよびMitoTracker Red FMで予備染色し、サイトカラシンB(350nM)の有無にかかわらずUCB iTregで24時間培養したことを示している。24時間後、UCB iTreg(ヘキスト)をMitoTracker Red FMを使用して共焦点顕微鏡で分析した。記録された画像の分析は、ImageJまたはZen 2012(Carl Zeiss)ソフトウェアを使用して実行された。矢印は、iTreg内のBM-MSCミトコンドリアを示している。画像データは、検出されたMitoTracker+iTregの数が大幅に低減していることを示している。3つの異なる実験から示されたデータ±SD(n=6)。****、P<0.0001。これらのデータは、サイトカラシンB処置が、IL-2によるエクスビボ増殖中にMSCからUCB iTregへのミトコンドリア移行を大幅に遮断することを示している。一緒に、これらの結果は、TNTがIL-2によるエクスビボ増殖中にBM-MSCからUCB iTregへのミトコンドリア移行のための重要な導管であることを支持する。
【0096】
図9A~9Bは、ROS阻害剤:抗酸化剤N-アセチルシステイン(NAC)200uMをBM-MSC+iTreg培養に24~36時間添加したことを示している。データは、2つの独立した実験±SD(n=6)を表している。**、P<0.01。画像は24~36時間のインキュベーションで撮影された。記録された画像の分析は、Zen 2012(Carl Zeiss)ソフトウェアを使用して実行された。矢印は、iTregのBM-MSCミトコンドリアを示している。画像の結果は、MitoTracker+iTregが検出されているため、このROS阻害剤の添加によりTregによるミトコンドリアの取り込みが最小限に抑えられたことを示している。これらの画像結果は、BM-MSCからTregへのミトコンドリア移行がROSを介した作用機序に依存していないことを裏付けている。*P<0.05。
【0097】
図10A~10Bは、MSCプラットフォーム培養のiTregがROSレベルを大幅に増強させたことを示している。
【0098】
研究は、MSCを介したiTregのIL-2によるエクスビボ増殖がiTregの数および機能を大幅に増強するという観察の根底にあるメカニズムを特定するために設計された。細胞増殖:2~5×10個の細胞を、IL-2(100U/ml)を添加したエクスビボ培地で継代培養した。メディアは2~3日ごとに交換された。UCB iTreg細胞は、21~23日目に、MSCプラットフォームを介して培地/IL-2のみおよび培地/IL-2から採取された。テトラメチルローダミン(TMRM):メチルエステルは細胞透過性色素である。それは健康な活動的なミトコンドリア膜に蓄積する。メーカーの指示に従って、細胞をImage-iTTM TMRM(invitrogen)で染色した。細胞をFACSおよび共焦点顕微鏡で分析した。
【0099】
図11A~11Bは、TGF-β誘導UCB iTregが、培地/IL-2のみ(培地)v.BM-MSC(BM-MSC)上の培地/IL-2のいずれかでIL-2駆動増殖中に採取され、CD4-APCで表面が染色されたことを示している。細胞を2×10e6個の細胞/mlの濃度で培地に再懸濁した。細胞をテトラメチルローダミン、メチルエステル(TMRM)(20nM)とともに37℃で30分間インキュベートした。細胞を緩衝液で洗浄し、分析した。2つの異なる実験から示されたデータ。**、P<0.01。このデータは、MSC単層上でIL-2/培地でエクスビボ増殖したiTregがミトコンドリア膜電位を増加させたことを示している。これらの結果は、MSCミトコンドリアが移行後のミトコンドリア活性の増強によってiTreg機能を増強することを支持している。
【0100】
図12A~12Bは、エクスビボでBM-MSC上に増殖されたiTregがミトコンドリア膜電位を増加させたことを示している。これらの結果は、BM-MSCミトコンドリアがiTregへの移行後のミトコンドリア活性の増加によってiTreg機能を増強することを支持している。記録された画像の分析は、ImageJまたはZen 2012(Carl Zeiss)ソフトウェアを使用して実行された。2つの異なる実験から示されたデータ。***、P<0.01。
【0101】
図13は、iTregのATPがBM MSCプラットフォームで増強されたことを示している。
【0102】
MSCミトコンドリアの増殖中のiTregへの移行を促進するメカニズムを決定するために、追加の実験が行われた。Tregは、アデノシンを生成することによって阻害機能に寄与することが示されているアピラーゼ(CD39)およびエクト-5’-ヌクレオチダーゼ(CD73)を発現する(Alam et al.,2009、Kerkela et al.,2016)。また、CD73で生成されたアデノシンは、アクチン関連タンパク質2および3(ARP2/3)アクチン重合複合体メンバーN-WASPのRho GTPアーゼ CDC42依存性コンフォメーション変化のアデノシンA1受容体(A1R)誘導を介して皮質アクチン重合を誘導することが示されている(Bowser et al.,2016)。CD73がMSCミトコンドリア移行の促進に寄与するかどうかを試験するために、CD73遮断AbをMSC共培養に追加し、iTregミトコンドリアの質量を測定した。
【0103】
図14Bは、CD73の遮断後、iTregミトコンドリアの質量が大幅に減少したことを示している。
【0104】
図14A~14Hおよび15A~15Dは、CD39/CD73経路がMSCミトコンドリア(mt)の増殖中のiTregへの移行を促進することを示している。MSCにmt-GFPレンチウイルスを形質導入して、安定したmt-GFP+MSCを生成した(図15A)。Mt-GFP+iTregが検出され、mt-GFPレンチウイルスを形質導入したMSCと共培養した21日間で有意に増加した(図15B~15C)。Mt-GFP+iTregは、表面CD73の遮断またはTNT形成の阻害により、大幅に減少した(図14C)。CD39およびCD73は、それぞれADP/ATPからAMPへの変換、およびAMPからアデノシンへの変換を通じて免疫細胞に送達されるプリン作動性シグナルを較正する。(Allard et al.,2017、Antonioli et al.,2013)。各経路を阻害するための実験が行われ、mt-GFP+iTregが大幅に低減していることがわかった(図14Dおよび15D)。
【0105】
Miro1はミトコンドリアの細胞内輸送における重要な調節因子であることが示されているため(Liu et al.,2012)、TNTを介したMSCミトコンドリアのiTregへの移行におけるその役割を決定するための実験が設計された。Miro1の発現は、iTregとの共培養後にMSCで測定された。iTregの共培養は、タンパク質レベルおよびRNAレベルの両方を含むMSCでのMiro1の発現の有意な増強と関連していた(図14E)。さらに、Miro1の増強されたMSC発現は、CD39阻害によって阻害された(図14F)。
【0106】
BACH2は、マウスTregの安定性および機能を維持することが示されている(Kim et al.,2014、Roychoudhuri et al.,2013)。BACH2は、以前はヒトiTregで高度に発現していることが確認されており、iTregの安定性に重要な役割を果たしている(Do et al.,2018)。追加の研究により、SENP3がBACH2のSUMO化を調節して、環境条件、特に細胞内ROSの変化に応答してiTregの安定性を制御する経路が特定された(Yu et al.,2018)。MSCミトコンドリア移行がiTreg Foxp3の安定性および抑制機能にプラスの効果を及ぼすという以前の観察を考慮すると、MSCからのミトコンドリア移行はBACH2/SENP3の発現および/または機能を調節する可能性があると仮定された(Jang et al.,2015、Watanabe-Matsui et al.,2011、Yu et al.,2018)。iTreg BACH2およびSENP3タンパク質の発現を測定し、MSC共培養と短期(14日目および21日目)のインビトロ培養中の標準的なIL-2/培地条件を比較した。iTreg Foxp3、BACH2、およびSENP3の発現は、MSC共培養条件で著しく有意に増加した(図14G)。次に、サイトカラシンB処置後のiTregBACH2およびSENP3タンパク質レベルに対するMSCミトコンドリア移行の影響を調べた。iTreg BACH2タンパク質発現のレベルは劇的に減少した(図14H)。サイトカラシンB処置は、おそらくこの設定でのSENP3の活性化および/または機能のために、iTreg SENP3タンパク質の発現に有意な影響を及ぼさなかった(図14H)。全体として、このデータは、MSCミトコンドリア移行が増強されたBACH2発現と関連しており、Foxp3の調節により、増強された安定したFoxp3発現のプラスの利益を示唆している。
【0107】
図16A~16Bは、CD39/CD73薬理学的阻害剤が、IL-2によるエクスビボ増殖中にMSCミトコンドリアのUCB iTregへの移行を遮断することを示している。ミトコンドリア移行がCD39およびCD73シグナルによって媒介されるかどうかを試験するために、IL-2による増殖中に薬理学的阻害剤が追加された。分化されたFoxp3iTreg細胞は、72時間でIL-2(100U/ml)とともに5×10個の細胞/mlで、mt-GFPレンチウイルス形質導入MSCプラットフォーム(24ウェルプレート)に添加された。CD39およびCD73シグナルを遮断するために、50uM CD39阻害剤(POM1、E-NTPDアーゼ阻害剤、シグマ)および100uM CD73阻害剤(アデノシン5’-(α、β-メチレン)二リン酸、シグマ)を、または一緒に、培養物に添加した。培養72時間後にiTregを回収した。フロー分析のために、iTregを抗ヒトCD4APC抗体で表面染色した。染色された細胞はFACS Fortessaで分析された。データは3~4回の個別の実験からのものである(n=5~14)。**、p<0.01;***、p<0.001。これらのデータは、CD39/CD73阻害剤の処置が、IL-2によるエクスビボ増殖中にBM-MSCからUCB iTregへのミトコンドリア移行を有意に遮断することを示している。まとめると、これらの結果は、IL-2によるエクスビボ増殖中のBM-MSCからUCB iTregへのミトコンドリア移行が外部酵素CD39およびCD73経路によって媒介されることを示唆している。
【0108】
図17A~17Iおよび18A~18Gは、iTregとのMSC共培養が、ヒト化マウスモデルにおける異種GVHDおよび同種異系GVHDを改善することを示している。MSCミトコンドリアのiTregへの移行を阻害すると、コントロールに対して抑制機能が大幅に低減した(図17A)。IL-2/培地でのiTregエクスビボ増殖中のMSC共培養におけるiTregのインビボ機能を評価するために、iTregをGVHD誘導NSGマウスに養子移入した。GVHDのこの異種モデルが使用され、短期(21日)に増殖されたiTreg培養物が、GVHDを誘導するために成人のヒトPBMC iv注射の7日後に注射された。治療群は、GVHD(Ehx et al.,2018)および生存評価(Sonntag et al.,2015)を実施する技術者には知らされていなかった。
【0109】
MSC共培養iTregで処置されたマウスは、生存率の大幅な改善、体重の安定、およびGVHD臨床スコアの低下を示した(図17B)。採取した脾臓におけるFoxp3発現およびFoxp3+CD4T細胞は、GVHD誘導の2週間後にMSC共培養iTregで処置したマウスで有意に高かった(図17Cおよび18A)。CD8+およびCD4+T細胞を産生するIFNγは、MSC共培養iTregで処置されたマウスから採取された脾臓細胞で劇的に低減した(図18B)。サイトカイン染色と一致して、炎症誘発性サイトカインIFNγおよびTNFαの血清およびエクスビボレベルは、MSC共培養iTregで処置された動物において有意に低減した(図17Dおよび17E)。
【0110】
MSC共培養増殖iTregが自己免疫疾患の治療効果を有するかどうかを判断するために、自己免疫表現型と類似したヒト化マウスを使用した慢性GVHDモデルを使用した(Sonntag et al.,2015)。ヒトCD45+生着は、24週目にCD34+細胞を投与されたマウスで測定された(図18C)。MSC共培養増殖iTregを投与されたマウスは、他の群よりも体重減少がわずかに減少したが(図17C)、生存率は改善された(図17F)。Foxp3+Treg細胞は、MSC共培養で増殖させたiTreg移植マウスで有意に増強された(図18D)。CD8+およびCD4+T細胞を産生するIFNγは、MSC共培養で増殖させたiTreg処置マウスで有意に低減することが観察された(図17G)。インビボでのiTregに対するMSCミトコンドリア移行の影響を調査するために、CD39阻害剤を添加したMSC共培養iTregを生成した。CD39阻害剤治療は、成人のPBL誘発性GVHDにおけるFoxp3+iTregの割合を低減させた(図17H)。IFNγ産生CD8+およびCD4+T細胞は、CD39阻害剤で処置したiTreg処置マウスで有意に増加した(図17Iおよび18E)。血清レベルおよびIFNγおよびTNFαの産生は、コントロールと比較して、CD39阻害剤iTreg処置マウスで有意に増加した(図18Fおよび18G)。まとめると、これらの結果は、抑制性iTregがIL-2によるエクスビボ増殖中に、MSCミトコンドリア移行によって維持され、さらにこれらのiTregがインビボで自己免疫疾患を保護できることを明らかにしている。
【0111】
図19A~19Bは、機能不全のミトコンドリアがiTregに移行しないことを示している。アポトーシスMSCがミトコンドリアを増殖中のiTregに移行するかどうかを試験するために、3×10個のMSCをmt-GFPレンチウイルスとインキュベートし、24ウェルプレートに播種した。MSCを37度で30分間インキュベートし、細胞を培地で洗浄した。FOXP3iTreg細胞は、72時間培養中のIL-2(100U/ml)とともに5×10個の細胞/mlで、mt-GFPレンチウイルス形質導入モックまたはロテノン処置MSCプラットフォーム(24ウェルプレート)に添加した。フロー分析のために、iTregを抗ヒトCD4APC抗体で表面染色した。染色された細胞をFACS Fortessaで分析した。データは2つの異なる実験からのものである。N=5~6、***p<0.001。
【0112】
自己免疫疾患患者で観察されるTregの内因性欠陥は、自家nTreg療法の成功を妨げる可能性がある(Kumar et al.,2006、Valencia et al.,2006、Viglietta et al.,2004)。以前の研究では、同種異系UCBからのエクスビボで増殖され、部分的にHLAが一致するnTregは、ヒトで十分に許容されることが示されている(Brunstein et al.,2011)。UCB iTregの臨床的実施に対する主な障害は、iTreg Foxp3発現の不安定性、および炎症性環境への移行時のサプレッサー機能の喪失である(Hippen et al.,2011)。本発明で報告された結果は、IL-2によるエクスビボ増殖中のBM-MSC共培養が、Foxp3発現を維持するための新しい生理学的条件を提供し、それにより、インビトロおよびインビボで炎症環境におけるiTreg抑制機能を提供することを実証する。
【0113】
MSC共培養は、CD25、CTLA-4、およびICOSの有意に上方調節された発現と関連していることが観察されたが、活性化T細胞の枯渇に寄与する可能性のあるLAG-3およびTIM-3の発現は減少した。短期(21日)のMSC共培養後のCD62LおよびCD45RAiTreg細胞の割合が高いことが観察された。炎症性環境は、Foxp3の発現およびiTregの機能的活性の急速な喪失に起因する(Koenecke et al.,2009)。データは、インビトロおよびインビボで炎症状態に曝されたMSC共培養増殖iTregにおけるエフェクター細胞活性化の阻害およびFoxp3安定性の維持を含む、有意に増強された抑制機能を示している。Foxp3遺伝子のTreg特異的脱メチル化領域の後成的修飾を調べて、BM-MSCで増強されたiTregの安定性のメカニズムについてさらに洞察を得ることが重要である(Someya et al.,2017)。
【0114】
以前の研究は、主にパラクリンメカニズムを介したTreg機能のMSC増強を指摘しているが(Del Fattore et al.,2015)、本発明は、iTreg Foxp3発現および持続的抑制機能のMSCサポートが直接の細胞間接触を必要とすることを特定する。さらに、本発明は、重要なメカニズムがMSCによるミトコンドリア移行を含むという驚くべき発見を含む。増殖細胞へのMSCミトコンドリア移行を駆動する細胞および分子メカニズムは以前に解明されていないので、本発明はさらに、iTreg CD39/CD73シグナル伝達がMSCミトコンドリア移行を駆動し、さらにミトコンドリア移行が増強されたiTreg BACH2およびSENP3発現をもたらすことを特定する。BACH2は、Foxp3プロモーターでの直接転写活性を介してヒトUCB iTregの発生を調節する(Do et al.,2018)。SENP3は、Tregの安定性を維持するのに役立つSUMO特異的プロテアーゼである(Yu et al.,2018)。
【0115】
CD39およびCD73は、免疫応答において一緒に戦略的な役割を果たす(Allard et al.,2017、Antonioli et al.,2013)。CD39およびCD73は、細胞外ATPを分解して、AMPと抗炎症性アデノシンを産生する(Deaglio et al.,2007)。CD73-/-マウスは、機能的なCD73コントロールと比較して、抗腫瘍免疫の増強(Stagg et al.,2011)および胃炎の悪化を示し、WT Tregの養子注射はこれらの免疫応答を逆転させる(Alam et al.,2009)。本発明および他の発明は、Treg上のCD73シグナル伝達がTreg抑制機能を維持するために重要であることを特定している(Ehrentraut et al.,2013、Kobie et al.,2006)。Tregへのミトコンドリア移行は以前に検討されていないので、本発明は、増殖中のiTreg上のCD39およびCD73シグナル伝達が、IL-2によるエクスビボ増殖中にMSCミトコンドリアのiTregへの移行を促進することを特定する。
【0116】
Miro1は、細胞間ミトコンドリア移行を調節し、損傷した細胞の回復を増強することが示されている(Ahmad et al.,2014)。以前の研究では、損傷した星状細胞がMSCでMiro1発現レベルの上昇を誘発し、これはミトコンドリア移行と相関していた(Babenko et al.,2018)。本発明において、データは、増殖するiTregが、エクスビボでの共培養中にBM-MSC上でMiro1発現を誘導したことを示している。さらに、MSCミトコンドリア移行はTNTを介して起こる。
【0117】
ミトコンドリアはROSの重要な供給源である(Turrens、2003)。興味深いことに、ROSはシグナル伝達における細胞周期および機能を調節することができ(Byun et al.,2008、Schieke et al.,2008)、癌細胞の腫瘍形成に重要である((Weinberg et al.,2010)。これは、ROSが骨髄間質細胞から白血病芽球へのTNTを介したミトコンドリア移行の主要な推進力であるという発見に照らして特に興味深いものである(Marlein et al.,2017)。さらなる研究により、ミトコンドリアの代謝もT細胞の活性化に重要な役割を果たすことが実証されている。本発明は、MSCミトコンドリア移行を駆動する増殖中のiTregにおけるCD39/73発現の役割を初めて特定する。本発明における観察は、iTregにおけるミトコンドリア量の増加がTNT移行を介したMSCに由来することを強く示しているが、興味深いことに、ROS発現ではなく増殖細胞の代謝シグナル伝達がこのプロセスを推進する重要なメカニズムであるように思われる。
【0118】
細胞の種類に関係なく、ミトコンドリアは現在、エネルギーの生成をはるかに超えた役割を果たすと認識されている。多くの研究から浮かび上がってきた中心的な考えは、T細胞は活性化中に細胞代謝の変化を受けるというものである(Akkaya et al.,2018)。代謝要件が主に細胞輸送およびハウスキーピング機能のみを含む静止T細胞とは対照的に、活発に増殖する細胞は、様々な生合成経路で必要な中間体の生成および同化代謝のシグナル伝達分子の産生などの機能のために追加のATPを生成する必要がある。ミトコンドリア移行を増強するためにシグナル伝達メカニズムをどのように調節することができるかを特定するための本発明からの将来の研究が示されている。重要なことに、本発明は、ミトコンドリア移行が、増殖する細胞に対するMSC支持機能の重要なメカニズムであることを支持している。重要なことに、iTregミトコンドリア膜電位はMSCとの共培養によって後押しされる。第二に、ミトコンドリア移行の薬理学的阻害は、iTreg Foxp3の発現と抑制機能に対するMSCの利点をほぼ完全に打ち消す。
【0119】
要約すると、これらの驚くべき結果は、iTreg FoxP3の発現を維持するミトコンドリア機能ならびにインビトロおよびインビボでの炎症状態における抑制機能の重要性を浮き彫りにしている。いくつかの要因が様々な疾患モデルでiTregの安定性および機能を調節できるが、これらの結果は、ミトコンドリアBACH2経路がMSCで増強されたiTregの安定性および機能の顕著なメカニズムであり、増殖細胞でのCD39/73シグナル伝達がMSCを介したミトコンドリア移行を促進することを示している。
【0120】
本発明のこれらのおよび追加の実施形態は、特許請求の範囲に限定することを意図されていない本開示を参酌すると当業者には明らかであろう。引用された参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

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図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
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図17H
図17I
図18A
図18B
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図18E
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図18G
図19A
図19B
【手続補正書】
【提出日】2021-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から誘導性調節性T細胞(iTreg)を産生するための方法であって、
ナイーブCD4 T細胞を血液から単離することと、
前記ナイーブCD4T細胞を誘導してiTregを含む第1の組成物に分化させることと、
前記iTregを前記第1の組成物から分離して、実質的に精製されたiTreg組成物を形成することと、
前記精製されたiTreg組成物を間葉系間質細胞(MSC)フィーダー層上で増殖(expanding)させることと、
ミトコンドリア移行を増加させるために前記MSCフィーダー層でトンネルナノチューブ(TNT)の形成を誘導し、持続的なFoxP3発現および炎症状態における抑制機能を備えた増殖iTreg組成物を産生することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記血液がヒト臍帯血である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘導ステップが、前記ナイーブCD4T細胞をTGF-βで処置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記iTregが、フローサイトメトリーのセルソーティングまたは磁気セルソーティングを使用して、前記第1の組成物から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記精製されたiTreg組成物が、少なくとも90%純粋である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記iTregが、CD4、CD25、およびFoxP3タンパク質を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
FoxP3発現のBACH2転写調節を増加させることによって、前記精製されたiTreg組成物を増殖させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ミトコンドリア移行が、増殖中のiTreg上のCD39および/またはCD73経路を上方調節することによって促進される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項によって産生された増殖されたiTreg組成物を含む、誘導性調節性T細胞組成物。
【請求項10】
炎症性または自己免疫状態の治療を必要とするヒト対象における、炎症性または自己免疫状態を治療するための医薬組成物であって、
間葉系間質細胞上で増殖し、TNT形成が誘導された、治療有効用量の臍帯血由来のiTregを含む、医薬組成物
【請求項11】
前記臍帯血iTregが、FoxP3発現のBACH2転写調節を誘導することによって分化されている、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記iTregが自家である、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記iTregが同種異系である、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項14】
前記iTregが単一の抗原に特異的である、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項15】
前記iTregがポリクローナルである、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項16】
前記対象が糖尿病合併症に罹患している、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項17】
間葉系間質細胞上で増殖し、TNT形成が誘導された、有効用量の臍帯血由来のiTregを含む治療用調節性T細胞組成物。
【請求項18】
前記臍帯血iTregが、FoxP3発現のBACH2転写調節を誘導することによって分化されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、免疫関連の疾患または状態の治療を必要とする対象における、免疫関連の疾患または状態を治療するためのものである、請求項17に記載の組成物
【請求項20】
前記治療用T細胞組成物が誘導性調節性T細胞を含む、請求項19に記載の組成物
【請求項21】
前記治療用T細胞組成物が、キメラ抗原受容体発現T細胞を含む、請求項19に記載の組成物
【請求項22】
前記治療用T細胞組成物が、ウイルス特異的エフェクターT細胞を含む、請求項19に記載の組成物
【請求項23】
前記対象が癌に罹患している、請求項19に記載の組成物
【請求項24】
細胞内で利用可能なATPをインビトロで増加させる方法であって、第1の細胞、および前記第1の細胞から第2の増殖細胞へのミトコンドリア移行を促進する有効量の薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記第1の細胞がMSCである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の細胞がニューロンである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の細胞がT細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の細胞が癌細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ミトコンドリア移行が、前記増殖細胞上のCD39および/またはCD73を上方調節する薬剤によって促進される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記CD39またはCD73上方調節剤が、1型IFN、TNFa、IL-1b、プロスタグランジン(PG)E2、TGF-β、wntシグナル伝達経路のアゴニスト、E2F-1、CREB、Sp1、HIF1-a、Stat3、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ミトコンドリア移行が、TNT形成を誘導する薬剤によって促進される、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
TNT形成を誘導する前記薬剤が、M-Sec、Rho GTPアーゼファミリーRac1およびCdc42に含まれるアクチン重合因子、またはそれらの下流エフェクターWAVEおよびWASP、白血球特異的転写物1(LST1)、ドキソルビシンもしくは別のアントラサイクリン類似体、または細胞ストレス応答を引き起こす別の薬剤である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
細胞内で利用可能なATPを減少させる方法であって、第1の細胞、および前記第1の細胞から第2の増殖細胞へのミトコンドリア移行を防止する有効量の薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記第2の細胞が癌性細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌性細胞が白血病細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ミトコンドリア移行を防止する前記薬剤がTNT形成を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
TNT形成を阻害する前記薬剤が、サイトカラシンB、サイトカラシンD、またはシタラビンなどのヌクレオシド類似体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ミトコンドリア移行を防止する前記薬剤が、前記CD39および/またはCD73シグナル伝達経路を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記CD39および/またはCD73シグナル伝達経路を阻害する前記薬剤が表面遮断薬である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記CD39および/またはCD73シグナル伝達経路を阻害する前記薬剤が、Gfi-1、CD39/CD73遮断抗体、E-NTPDアーゼ阻害剤、またはアデノシン5’-(α、β-メチレン)二リン酸である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
対象における低ATPを特徴とする疾患を治療するための医薬組成物であって、第1の細胞型から第2の増殖細胞型へのミトコンドリア移行を促進する有効量の薬剤を含む、医薬組成物
【請求項42】
対象における高ATPを特徴とする疾患を治療するための医薬組成物であって、第1の細胞型から第2の増殖細胞型へのミトコンドリア移行を防止する有効量の薬剤を含む、医薬組成物
【国際調査報告】