(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】被測定物、特にプラスチックプロファイルを測定するための測定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
G01B15/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532023
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 DE2019101055
(87)【国際公開番号】W WO2020114561
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】102018131370.5
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520404492
【氏名又は名称】イノエックス ゲーエムベーハー イノヴァツィオーネン ウント アウスリュストゥンゲン フュア ディー エクストルジオーンステヒニク
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】クローゼ ラルフ
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067AA51
2F067BB01
2F067BB26
2F067EE02
2F067HH02
2F067JJ02
2F067RR24
2F067RR26
(57)【要約】
本発明は、被測定物、特にプラスチックプロファイル(3)を測定するための測定システム(2)に関する。
測定システム(2)は、それぞれTHz送信ビーム(6)を時にアクティブに放射し、反射されたTHz放射(11)を時にパッシブに受信する複数のTHzトランシーバ(5)で構成されたアンテナ装置(4)であって、THzトランシーバ(5)の測定値の測定信号(S1)を出力するアンテナ装置(4)と、
アンテナマトリックス(4)を調整方向(m1、m2)、例えば被測定物(3)の周りの円形経路に沿って幾つかの測定位置(MP1、MP2、MP3)に調整するための調整手段(12)と、
測定信号(S1)を受信及び評価するための制御及び評価装置(14)であって、幾つかの測定位置(MP1、MP2、…)における幾つかのTHzトランシーバ(5)の測定信号(S1)を、SAR評価工程によって評価し、被測定物(3)の境界面(8)の仮想モデル(VM)を作成するように構成された制御及び評価装置(14)と、を備え、
続いて制御及び評価装置(14)は、仮想モデル(VM)から境界面(8)の間の層厚さ(d、d4)を特定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物、特にプラスチックプロファイル(3)を測定するための測定システム(2)において、
それぞれTHz送信ビーム(6)を時にアクティブに放射し、反射されたTHz放射(11)を時にパッシブに受信する複数のTHzトランシーバ(5)で構成されたアンテナ装置(4)であって、前記THzトランシーバ(5)の測定値の測定信号(S1)を出力するアンテナ装置(4)と、
前記アンテナマトリックス(4)を調整方向(m1、m2)に沿って幾つかの測定位置(MP1、MP2、MP3)に調整するための調整手段(12)と、
前記測定信号(S1)を受信及び評価するための制御及び評価装置(14)であって、幾つかの前記測定位置(MP1、MP2、…)における幾つかの前記THzトランシーバ(5)の前記測定信号(S1)を、SAR評価工程によって評価し、前記被測定物(3)の境界面(8)の仮想モデル(VM)を作成するように構成された制御及び評価装置(14)と、を備え、
続いて前記制御及び評価装置(14)は、前記仮想モデル(VM)から前記境界面(8)の間の層厚さ(d、d4)を特定する、測定システム(2)。
【請求項2】
前記調整手段(12)は、前記測定システム(2)の対称軸(B)を中心に、円周経路に沿って、特に完全な又は部分的な円形経路(m2)に沿って前記アンテナ装置(4)を旋回し、
前記円周経路のさまざまな前記測定位置(MP1、MP2、…)での測定において、前記アンテナ装置(4)の光学主軸(A)が、それぞれ前記対称軸(B)に整列されることを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記アンテナ装置(4)は、前記THzトランシーバ(5)の2次元の、好ましくは平面的な配列からなり、特にTHzトランシーバ(5)間の一定の距離(a)で、例えばアンテナマトリックス(4)として構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記THz送信ビーム(6)を目下、アクティブに放射している前記THzトランシーバ(5)は、反射された前記THz放射(11)も検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項5】
前記THzトランシーバ(5)はそれぞれ、被測定物(3)の境界面(8)で反射されたTHz放射(11)を測定ピークとして検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項6】
前記THzトランシーバ(5)はそれぞれ、0.01THz~50THzの間、特に0.05THz~20THzの間の周波数範囲で、特に、完全に電子的に、例えば周波数変調又はパルス放射を用いて、THz放射(11)を放射することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項7】
前記THzトランシーバ(5)はそれぞれ、送信円錐(7)を有する前記THz送信ビーム(6)を放射し、
隣接するTHzトランシーバ(5)の少なくとも前記送信円錐(7)は、前記測定システム(2)の前記対称軸(B)まで、及び/又は前記被測定物(3)まで、少なくとも部分的に重なることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項8】
前記幾つかの測定信号(S1)は、特に大口径のフェーズドアレイアンテナをシミュレートするために、好ましくは、位相差として実行時間差を測定している間に、振幅と位相位置の重なり又は組み合わせで、前記SAR評価工程によって評価されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項9】
測定装置(1)であって、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の測定システム(2)を備え、
前記測定システム(2)の前記対称軸(B)に、前記対称軸(B)に沿って、又は平行に延びる長手方向軸を有する、例えばプラスチックプロファイルである被測定物(3)が配置され、
前記調整手段(12)が、前記被測定物(3)の周りで、好ましくは円形経路に沿って、前記アンテナ装置(4)を調整する、測定装置(1)。
【請求項10】
前記対称軸(B)に沿って、又は前記対称軸(B)に平行に、前記被測定物(3)を搬送するための搬送手段が設けられ、好ましくは、前記アンテナ装置(4)の前記調整速度(m1、m2)よりも遅い搬送速度を用いることを特徴とする請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
被測定物(3)、特にプラスチックプロファイル(3)を測定するための方法であって、
複数のTHzトランシーバ(5)で構成されたアンテナ装置(4)を、前記アンテナ装置の光軸(A)が前記被測定物(3)と整列するように、及び/又は対称軸(B)に直交するように、提供又は配置するステップ(St1)と、
第1測定位置(MP1)において前記被測定物(3)の第1THz測定を実行するステップであって、前記アンテナマトリックス(4)の複数の前記THzトランシーバ(5)はそれぞれ、前記被測定物(3)から部分的に反射されて前記アンテナ装置(4)に戻るTHz送信ビーム(6)を、それぞれの光軸(A)に沿って、又は平行に時にアクティブに放射し(St1)、
前記THzトランシーバ(5)は、反射されたTHz放射(11)を時にパッシブに検出するステップと、
調整方向(m1、m2)に沿って前記アンテナ装置(4)を、前記光軸(A)が前記被測定物(3)と一致し、及び/又は対称軸(B)に直交する幾つかの測定位置(MP1、MP2、…)に順次調整し(St2)、
測定信号(S1)を出力しながら、さらにTHz測定を行うステップ(St3)と、
前記幾つかの測定位置(MP1、MP2、MP3)からの前記測定信号(S1)を評価するステップであって、個々の前記THzトランシーバ(5)の前記測定信号をSAR評価工程によって一緒に処理し、前記被測定物(3)の断面の仮想モデル(VM)を特定するステップ(St4)と、
基準面(8)及び前記仮想モデル(VM)内の前記基準面(8)の距離としての層厚(d)を特定するステップ(St5)と、
を少なくとも含む方法。
【請求項12】
前記アンテナマトリックスは、前記光軸(A)が前記対称軸(B)及び/又は前記被測定物(3)に対して常に垂直になるように、前記幾つかの測定位置(MP1、MP2、…)に調整されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
個々の前記THzトランシーバ(5)、特に隣接するTHzトランシーバ(5)の放射される放射円錐(7)が、前記被測定物(3)の前で既に少なくとも部分的に重なり、及び/又は、
前記幾つかの測定位置(MP1、MP2、…)での前記測定で放射される放射円錐(7)が、少なくとも部分的に重なり、
前記SAR評価工程のための重ね合わせを形成することを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記THzトランシーバ(5)はそれぞれ、前記被測定物(3)を通り抜ける前記THz送信ビーム(6)を放射し、前記被測定物(3)の幾つかの境界面(8)で、部分的に反射を伴うことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記測定信号(S1)は、続いて、各測定位置(MP1、MP2)におけるMIMO測定から、SAR計算方法によって組み立てられ、前記被測定物(3)の仮想モデルの部分セクションと、それらより、全体の仮想モデル(VM)を形成し、
続いて、前記層厚(d)が前記仮想モデル(VM)から特定されることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プラスチックプロファイル(3)を製造する方法であって、
前記プラスチックプロファイル(3)を対称軸(B)に沿って、又は平行に押し出すステップと、
請求項11乃至15のいずれか一項に記載の方法によって前記プラスチックプロファイル(3)の断面を測定し、参照厚さ(d_ref)、例えば、前記プラスチックプロファイル(3)の不規則なシールリップ(16)の参照厚さを特定するステップと、
制御信号(S3)を押出機(18)に出力して、前記プラスチックプロファイル(3)を測定し、仮想モデル(VM)を作成し、前記仮想モデル(VM)の前記参照厚さ(d_ref)を目標値と比較し、前記比較に応じて前記制御信号(S3)により押出パラメータを変更することで、形成された前記参照厚さ(d_Ref)を調節するステップと、を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般に、プラスチック製品は製造後に肉厚がチェックされる。特に、押出成形の場合、そのプラスチック製品のパラメータが変化し、まだ柔らかいプラスチック材料の変形が現れ、不純物又は空洞が形成される可能性がある。ここで、プラスチック材料から作られた被測定物を、製造後にテラヘルツ測定手順によって測定することが知られている。一般に、THz送信(透過、伝送)ビームは、それぞれの被測定物に対し垂直に照射され、境界面で部分的に反射されるため、境界面は、THzトランシーバに向けて再放射された反射放射からの測定ピークとして特定できる。それにより、測定信号から直接、層の厚さを特定でき、特に多層の厚ささえも特定できる。THz送信ビームは、時間ベース、周波数変調、又はパルス化することができる。単一のTHzトランシーバを使用すること以外に、フェーズドアレイ配列(装置)も知られている。例えば、中央のTHz送信機が、放射円錐でTHz放射を放射し、反射されたTHz放射はアレイ配列の受信機によって検出される。したがって、送信機と受信機を同期することにより、実行時間を特定でき、受信機への波面のシフトされた到着によって、入射波の角度を評価でき、それにより、空間内の反射源の距離及び位置を特定できる。
【0002】
一般に、例えば、押し出しプラスチックパイプ又は単純なプラスチックプロファイル(塑性外形)を、THzセンサを使用して比較的少ない労力で測定し、層の厚さを確認することができる。したがって、例えば、パイプ又はプロファイルは、1つ又は複数の測定位置からの放射によって完全に通過され、1つの測定ピークを幾つかの境界面のそれぞれで特定できる。これにより、例えばセンサを調整するか、被測定物の周囲に複数のセンサを配置することにより、比較的少数の測定位置で済むようになる。
【0003】
このように、層の厚さの特定によって押出設備を制御し、特定された主層の厚さ、例えば、パイプの壁厚を制御目的に使用できる、押出方法の調整システムも知られている。
【0004】
しかし、例えば、幾つかのチャンバを形成するために複数のバーと壁を有するプロファイルや、シールリップを有するプロファイルなどを含む、より複雑な形状の物体は、一般に問題を引き起こす。
【0005】
また、一般に、アクティブフェーズドアレイ配列を利用することが知られている。それは、複数のTHzトランシーバから構成され、それぞれが特定の時間にアクティブにTHz放射を放射して、反射された放射を検出し、別の時間には別のTHzトランシーバによって送信され、反射した放射を単にパッシブに検出する。したがって、そのような多重入出力(MIMO)配列の異なる送受信機の多重性により、複数の基準面を評価できる。
【0006】
さらに、原理的に、合成開口レーダー(SAR)を用いるレーダー測定方法が知られている。これは、レーダーセンサを被測定物に沿って移動させ、その移動中に測定画像又は測定信号が連続的に取得される。このようなSARの特定(測定)は、特に飛行機や衛星などの飛行物体から行われ、地形セグメントの2次元表示を可能にする。ここでセンサは、さまざまな測定位置から放射される放射円錐が重なるように、十分に広い放射される放射円錐を常に使用して送信する。送信機の測定位置は既知であるため、特に被測定物を通過する調整方向(方位)の場合、測定画像は既知の測定位置で重なる。したがって、ターゲット領域内の物体は、さまざまな画角で照射され、それに応じて検出される。受信したレーダーエコーの強度と位相位置に基づいて、大型アンテナの開口部を合成することが可能であり、それによってアンテナの高い空間解像度と運動方向を実現する。これにより、レーダー信号処理装置又は制御及び評価装置はそれぞれ、より大きな画像が仮想モデル、すなわち高さプロファイルとして合成されるように、個々の振幅及び位相位置を互いに組み合わせることができる。SAR評価アルゴリズムはまた、受信信号の位相を補正するのに役立ててもよく、それにより、個々のアンテナ位置間の実行時間差も補正し、それにより、三角法の状況を考慮に入れる。これにより、実行時間差を位相差として測定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、複雑な被測定物であっても、比較的少ない費用で正確な特定を可能にする、被測定物を測定するための測定システム及び方法を創出する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項に記載の測定システム及び方法によって解決される。従属請求項は、好ましいさらなる発展について述べている。本発明による測定システムは、特に、本発明による方法を実施するために提供される。本発明による方法は、特に、本発明による測定システムを使用して実施できる。
【0009】
さらに、測定システムと被測定物からなる測定装置が作成される。また、本発明による測定方法を利用したプラスチックプロファイルの製造方法が作成される。
【0010】
したがって、アンテナマトリックスの個々のTHzトランシーバが、それぞれ時にアクティブ及びパッシブになるアクティブフェーズドアレイ方式又は多重入出力方式は、それぞれSAR測定方式と組み合わされる。これは、レーダー方式としてのSAR測定方式が、例えば、約10GHzの対応する周波数範囲ですでに知られているという考えに基づいていており、原理的に、その文脈で試験済みの評価方法又はSAR超解像アルゴリズムは、例えば、10GHz~50THzの範囲におけるTHz周波数範囲の放射にも利用できる。さらに、レーダービームで、例えば景観の表面を走査するSAR測定は、反射された放射の反射ピークを特定するために既に使用されている。屈折率の異なる透明な素材で作られた被測定物、特にプラスチック製品をTHz測定すると、反射ピークも生成される。なぜなら、境界面を透過すると、THz放射は、強度の例えば2~7%、又は5%で反射されるため、高さレーダーの反射ピークによって、反射ピークを評価できる。幾つかの境界面を有する被測定物を貫通すると、測定信号の測定ピークが連続して現れるため、個々の測定ピークをさまざまな境界面に割り当てることができる。
【0011】
関連する周波数範囲は、特に下限周波数として10GHz、特に20GHz又は50GHzであり、測定は、例えば80GHzでも実行できる。上限周波数として、例えば50THzが該当し、例えば、20THz又は10THzも該当する。
すなわち、周波数範囲の一例として、
[10GHz、20GHz、50GHz;10THz、20THz、50THz]
である。
【0012】
測定信号とアクティブフェーズドアレイ、すなわち多重入出力測定システムの同期THzトランシーバとの組み合わせ、及び、SAR評価でそのように決定された測定信号の重なりを伴う幾つかの測定位置の調整により、より大きな開口部を備えたフェーズドアレイアンテナをシミュレートし、仮想モデルとして高解像度画像を生成することできる。
【0013】
調整運動として、特に、被測定物が配置されている対称軸を中心としたアンテナアレイの旋回運動又は円運動を行うことができる。したがって、対称軸を中心としたアンテナアレイの調整運動は、SAR評価アルゴリズムの位置情報として既知の測定位置を提供する。それぞれの場合に、アンテナアレイの光学主軸が対称軸に対して垂直に向けられる、そのような旋回運動により、被測定物のさまざまな、時には多面的な表面を、少なくとも時おり反射信号でスキャンでき、特に、連続してアクティブ及びパッシブに動作するTHzトランシーバを備えるアクティブフェーズドアレイ配列の高い角度分解能によってもスキャンできることが保証される。したがって、一般に、任意の表面を少なくとも特定回数でスキャンすることができ、好ましくは、アンテナマトリックスの光学主軸を各表面に対して垂直に整列することもできる。
【0014】
したがって、すべての測定で、反射ピークを最初に適切な測定位置で特定でき、続いて、SAR評価手順によって重ね合わせることができる。
【0015】
これにより、フェーズドアレイを使用した測定と、SAR評価を使用した被測定物の周りの回転運動が特別な方法で共同する。
【0016】
したがって、SAR評価手順で評価できるのは、被測定物の周りの測定位置での幾つかの測定だけでなく、フェーズドアレイ測定のTHzトランシーバの個々の測定、つまり各マトリックス位置での測定も含まれる。有利には、フェーズドアレイ測定の個々のTHzトランシーバの送信円錐は、被測定物の前で既に重なっているため、被測定物上に送信円錐の重なりが存在することになる。したがって、各測定位置でのフェーズドアレイ配列のTHzトランシーバの連続する個々の測定は、わずかに変位した測定位置で行われた測定を表している。フェーズドアレイをさらなる測定位置、特に被測定物の周りに調整すると、さらにTHz測定値が得られ、これには、各マトリックス位置の複数の連続する個別のTHz測定値も含まれる。すべての測定値は、SAR評価によって処理できる。したがって、SAR評価では、フェーズドアレイ配列の各マトリックス位置の個々のTHz測定値を検出でき、これは、多数の個別の信号を処理できるように、被測定物の周囲で調整される。
【0017】
したがって、被測定物、特にプラスチックプロファイルの高精細な部分セグメントをそれぞれ特定できる。SAR手順の再構成評価手順を使用すると、後で部分セグメントを重ね合わせて、プロファイルの共通の仮想モデルを作成できる。
【0018】
次に、仮想モデル内の基準面が検出され、層の厚さ又は壁の厚さがこれら境界面の距離として決定されるという点で、この仮想モデルから壁の厚さを算出できる。それにより、チャンバの厚さも、壁間の空気層の層厚さとして検出できる。したがって、有利には、既知のシステムとは異なり、層の厚さは、測定信号から直接特定されるのではなく、むしろ、最初に、仮想モデルにおけるフェーズドアレイ測定のSAR評価手順によって基準面が特定され、これから層の厚さが決定される。
【0019】
したがって、例えば、複数の角張ったバーや壁を時として有するプラスチックプロファイルを測定することもできる。
【0020】
また、特に、平行な平面境界面を有しておらず、湾曲した又は角張った形状であるプラスチックプロファイルのシールリップのような被測定物の領域を測定することもできる。このようなシールリップでは、1つの測定位置からTHz測定装置を使用して直接測定することは、一般に不可能であるか、又は不十分である。したがって、本発明による方法では、仮想モデルにおけるそのようなシールリップの表象を検出し、参照厚さを特定することができる。
【0021】
特に、THzトランシーバ、すなわち送信機と受信機の組み合わせを使用することで、さまざまな測定機能性の特定の組み合わせが可能になり、それによって仮想モデルの生成に寄与することは、明らかである。
【0022】
したがって、本発明によれば、プロファイルの、特に1つ以上(複数)の空洞又はチャンバを有するプロファイルの測定及びシミュレーションが可能になる。これは、有利には、例えばパイプ又は連続ストランドよりも著しく複雑である。したがって、そのような測定は、本発明に従って、プロファイルの連続的及び/又は安定した搬送工程において、例えば製造時に、特に押出し時に、直接に実行できる。
【0023】
したがって、本発明による測定方法を使用して、例えばシールリップのそのような参照厚さを特定し、続いて、目標形成、例えばシールリップの目標参照厚さに設定されるように、測定装置からの適切な制御信号によって押し出しを調整するような押し出し方法を作成することも可能である。
【0024】
特定の実施形態において、添付図面を用いて本発明を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】被測定物を測定するための、本発明の一実施形態による測定システムである。
【
図2】アンテナマトリックスの並進調整を行う場合の
図1の測定システムである。
【
図3】アンテナマトリックスを旋回する場合の
図2のシステムに対応する描写である。
【
図4】さらなる被測定物を測定する際の、アンテナマトリックスの様々な測定位置における測定システムである。
【
図5】押出機と測定システムを備える生産ラインである
【発明を実施するための形態】
【0026】
測定装置1に、被測定物3を測定するための測定システム2が設けられている。測定システム2は、マトリックスアレイ、すなわち、THzトランシーバ(送受信機)5で構成され、特に2次元の規則的な配置を有するアンテナマトリックス4を備える。特に、中央THzトランシーバ5aで示されるように、各THzトランシーバ5は、送信円錐7を有する光軸Aに沿ってTHz送信ビーム6を放射する。THz送信ビームは、特に0.01~50THz、特に0.02又は0.05THz~10又は20THzの周波数範囲内にある。この実施形態では、THzトランシーバ5は、完全に電子式であるように、すなわち、ダイポールアンテナとして設計されている。これにより、THz送信ビーム6は、周波数変調されたものとして送信されるが、例えば、時間領域分光法(TDS)又はパルスとしても送信されてもよい。したがって、
図1によれば、THzトランシーバ5aは、THz送信ビーム6を光軸Aに沿って被測定物3に向けて送信する。
【0027】
本実施形態では、被測定物3はプラスチックプロファイル(可塑外形)であり、その断面図が示されている。有利には、それは押出成形品であり、空気で満たされた外部空間や、空気又はガスで満たされた内部チャンバ9と対照的に、一般的にタイバー10又はプラスチック材料の壁の境界面である複数の境界面8を示している。
【0028】
THz送信ビーム6は、境界面8に入射するときにそれぞれ部分的に反射され、それにより、例えば5%の強度又は振幅が反射され、THz送信ビーム6の大部分は、プラスチックプロファイル3を通ってその経路を継続する。したがって、
図1では、例えば、境界面8を有する2つの描かれたバー10はそれぞれ、光軸Aに沿ってTHz送信ビーム6を中央THzトランシーバ5aに反射し、その結果、境界面8によって形成された後方反射THz放射11の測定ピークを検出することで、例えば、被測定物3までの距離、又は第1境界面8からTHzトランシーバ5aまでの距離、バー10a、10bの層厚、及び境界面8間のチャンバ9の幅を検出できる。
【0029】
プラスチックプロファイル3の境界面8の大部分は、光軸Aに対して垂直に位置していないため、これらで反射されたTHz放射11は、THzトランシーバ5a自体では検出できない大きな反射角βで反射される。幾つかの境界面8は、THz放射11がマトリックスアレイ4の他のTHzトランシーバ5の1つに反射して戻るような小さな反射角βでTHz放射11を反射するであろう。マトリックスアレイ4の他のTHzトランシーバ5は、中央THzトランシーバ5aと同期しているので、そのように受信された反射THz放射の測定ピークは、中央THzトランシーバ5aのTHz送信ビーム6に関連付けることができる。したがって、受信機として機能するTHzトランシーバ5は、反射されたTHz放射11、又はそれぞれ反射された波を受信し、それらをTHz送信ビームに帰することができる。波面は、ここでは隣接又は連続する受動のTHzトランシーバ5に異なる時間でそれぞれ到着するため、時間シフト又は測定ピークを登録した時点、及び、更にTHz送信ビーム6に関する反射THz放射11の反射角βから、反射源の距離及び位置、すなわち、プラスチックプロファイル3のそれぞれの境界面8を決定することができる。
【0030】
したがって、アンテナマトリックスの原理に従うそのような測定により、正確に垂直な境界面8だけでなく、光軸Aに対してわずかに角度をなす境界面8も検出することができる。
【0031】
さらに、
図2によれば、特定のTHzトランシーバだけでなく、マトリックスアレイ4のすべてのTHzトランシーバ5が時にアクティブであり、時にパッシブであることが提案される。アクティブなTHzトランシーバ5はそれぞれ、対応する放射円錐7又は開放角を有する光軸Aに沿って、THz送信ビーム6を放射し、他のすべてのTHzトランシーバ5はそれぞれパッシブとなり、反射されたTHz放射11を、放射時間の同期を伴って検出する。したがって、すべての受信機は送信機としても機能し、より大きな表面、特に、マトリックスアレイ4全体の面積に対応する表面を一度にスキャンできる多重入出力の測定アレイが形成される。
【0032】
したがって、主光軸Aに対してわずかに大きい傾斜角、又はより大きな角度を有する境界面8を、すでにスキャンして帰属させることができる。境界面8のそのように達成可能な最大角度又は傾斜角度は、特にマトリックスアレイ4のサイズに依存する。さらに、空間分解能は、互いに関連するTHzトランシーバ5の距離aによって制限される。
【0033】
したがって、さらなる有利な実施形態によれば、
図2の矢印で示されるように、マトリックスアレイ4は、調整手段12によって、被測定物3に関して調整方向m(方位)に沿って、この場合、例えば最初に直線並進で調整される。これにより、THzトランシーバ5がそれぞれ複数のTHzトランシーバ5のアクティブな送信機能と受信機能を交互に使用する多重入出力構成として測定を実行する合成開口レーダー(SAR)が形成され、それによって測定値が超分解能アルゴリズムによって処理される。したがって、静止した被測定物3と、調整方向mに沿ったアンテナマトリックス4による既知の調整動作の場合、調整動作におけるアンテナマトリックス4のそれぞれの測定位置に対する被測定物3の位置が既知であるため、SARアルゴリズムによる対応する評価が可能である。
【0034】
従来のSARでは、各THzトランシーバ5は、最初に被測定物3の垂直な境界面8を検出して処理するが、ここでは、合成開口レーダー(SAR)が、マトリックスアレイ4のそれぞれアクティブ及びパッシブなTHzトランシーバ5のMIMO測定原理と組み合わされる。したがって、高解像度の角度と位置データを有する高精度の画像を生成することが既に可能である。
【0035】
マトリックスアレイ4の個々のTHzトランシーバ5は、測定信号S1を制御及び評価装置14に提供し、制御及び評価装置14は、適切に測定信号S1を評価する。したがって、
図2によるMIMO設計では、2次元マトリックスアレイ4内のTHzトランシーバ5の距離aと、それぞれの送信時間の同期を考慮に入れることで、同期データを制御及び評価装置14に適用できる。制御及び評価装置14はさらに、制御信号S2によって調整手段12を制御し、静止した被測定物3に対するアンテナマトリックス4の測定位置を調整する。
【0036】
図3によれば、MIMOとして設計されたマトリックスアレイ4の旋回動作、特に、被測定物3の周りの旋回動作m2が提案される。マトリックスアレイ4は、被測定物3の周りを、例えば約180°回転させることができ、又は、例えば被測定物3の周りを円運動で、完全に円周方向に回転させることもできる。ここで、被測定物3が円運動の中心又は円運動の旋回軸に正確に位置していなくても、本質的に問題はない。なぜなら、本発明によれば、旋回動作と、それにより生成された個々のTHzトランシーバ5の、被測定物3及びその様々な境界面8に対する複数の異なる位置によって、非常に高い解像度がすでに達成されており、また、不規則な被測定物3では、対称軸の定義がとにかく不明確になり易いためである。
図3による旋回動作では、被測定物3の各境界面8は、それぞれの向きに応じて複数回スキャンされ、これにより、最終的には、MIMO SARアレイとして機能するマトリックスアレイ4のTHzトランシーバ5の1つに対して垂直になる。その結果、この測定モードでは、各々の境界面8がスキャンされ、検出される。有利なことに、それら境界面8は複数回スキャンされ、測定値を平均化することができる。したがって、境界面8は、単に垂直な場合よりも広い角度領域でMIMO配列によってスキャンされる。
【0037】
したがって、原則として垂直面に対してのみ設計されているSAR測定は、追加のMIMO配列を備えるアンテナアレイ4によって拡張される。
【0038】
したがって、制御及び評価装置14は、記憶装置15内でプロファイルの高解像度部分セグメントのデータベースを確立でき、続いて、被測定物3の完全な仮想モデルVMをこのデータベースから、適切な再構成アルゴリズムを使用して組み立てることができる。この場合は、より複雑なプラスチックプロファイルであり、それから層の厚さが特定される。
【0039】
図4は、別の被測定物3の対応する測定を示しており、ここでは、特に不規則な形状のシールリップ16を示している。それの不規則な境界面8は、最初に、MIMO SAR調整及び信号検出によってそれに応じてリモデリングされ、次にそのモデルで測定される。したがって、特に、シールリップ16の特定のパラメータ、例えば、特定の点で定義された参照厚さd_refを特定し、それを目標値と比較することが可能である。
【0040】
よって、特に
図5に従って、押出工程を調節できる。そのシステムは直接測定された厚さ又は壁の厚さに調整されず、そのように特定された参照厚さd_refが調整に使用される。制御及び評価装置14は、プラスチックプロファイル3を形成するための押出機18に制御信号S3を出力し、その押出機18は、例えば測定信号で直接特定された層の厚さに対して調整するのではなく、制御信号S3に応じて押出材料の供給を調整する。
【0041】
図6は、本発明の実施形態による方法のフローチャートを示す。ステップSt1において、マトリックスアレイ4は測定位置MP1に配置され、その主光軸A、すなわち、中央トランシーバ5aの光軸Aが、被測定物3に、この場合、例えばプラスチックプロファイルに向けられる。次に、ステップSt2において、測定位置MP1にて第1測定が実行され、THzトランシーバ5は、それぞれ連続してTHz送信ビーム6をアクティブに出力し、反射されたTHz放射11をパッシブに検出する。
【0042】
さらに、ステップSt3において、測定装置4が、調整方向m1又はm2に沿って連続的に調整され、連続測定が、様々な測定位置MP1、MP2、…で実行される。これにより、調整は、一般的に測定と一緒に実行され、それにより測定手順は、調整速度に比べて比較的早く行われ、したがって、基本的に1つの測定位置でそれぞれ実行できる。次いで、すべての測定位置からの測定信号S1が得られるまで、ステップSt2、St3の測定ループが繰り返される。
【0043】
ステップSt4において、各測定位置MP1、MP2、…のマトリックスアレイの測定信号S1が、その後、再構成アルゴリズムを用いるSAR評価工程で評価される。そして、好ましくは、最初に仮想モデルの部分セクションが、そしてそれらより、プラスチックプロファイル3の完全な仮想モデルVMが組み立てられる。続いて、ステップSt5において、この仮想モデルVMから境界面8と、それらより、壁の厚さdが特定される。
【0044】
決定されたこれら壁の厚さdは、特に参照厚さd_refも含めて、任意に押出機18の制御に使用することができる。
【0045】
また、被測定物3のこの調整速度が、マトリックスアレイ4の調整速度m1、m2よりも遅い場合、測定中に被測定物3を調整することができる。マトリックスアレイ4は2次元の拡張性を示すので、
図1~4の描画平面だけでなく、被測定物3の搬送軸又は対称軸の方向にも拡張し、十分な長さのプロファイルストランドが常にカバーされるようになる。このようにして、製造中の押出成形品の連続測定を実行できる。
【符号の説明】
【0046】
1 測定装置
2 測定システム
3 被測定物(例えば、プラスチックプロファイル)
4 アンテナ装置(配列)、特にアンテナマトリックス
5 THzトランシーバ
5a 中央THzトランシーバ
6 THz送信ビーム
7 放射された放射円錐、送信円錐
8 境界面
9 プラスチックプロファイル3のチャンバ
10 壁、バー
11 反射THz放射
12 調整手段
14 制御及び評価装置
16 シールリップ
18 押出機
A 光軸(例えば、中央トランシーバ5aの光軸)
B 対称軸、被測定物3の搬送方向
S1 測定信号
S2 調整手段12に向けられたアクチュエータ信号
S3 押出機18を制御するための制御信号
MP1、MP2、… 測定位置
VM 仮想モデル
a トランシーバ5の距離
d 層厚
d_ref シールリップ16の参照厚さ
m1、m2 調整方向
β 反射角
【国際調査報告】