(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ガリウム68を生成および/または精製するプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
G21G 4/08 20060101AFI20220216BHJP
C07K 7/52 20060101ALI20220216BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G21G4/08 G
C07K7/52
A61K51/08 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532410
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 CA2019051777
(87)【国際公開番号】W WO2020118426
(87)【国際公開日】2020-06-18
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521246138
【氏名又は名称】ソシエテ ドゥ コメシャリザシオン デ プロデュイ ドゥ ラ ルシェルシェ アプリケー ソクプラー シャーンス エ ジェニ エス.ウー.セー.
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE DE COMMERCIALISATION DES PRODUITS DE LA RECHERCHE APPLIQUEE SOCPRA SCIENCES ET GENIE S.E.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【氏名又は名称】野村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【氏名又は名称】間山 世津子
(72)【発明者】
【氏名】ゲリン、ブリジット
(72)【発明者】
【氏名】トレンブレイ、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アイトモハンド、サミア
(72)【発明者】
【氏名】アルナウィ、アイマン エイチ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB82
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA15
4H045BA34
4H045BA51
4H045BA71
4H045EA50
4H045EA51
4H045GA01
(57)【要約】
本開示は、照射された68Znの基板から68Gaを生成および/または精製するプロセスおよびシステムに関する。いくつかの実施形態では、プロセスは、2種の陽イオン交換クロマトグラフィカラムを使用して、68Gaを、68Znおよび他の放射性核種および金属不純物と分離することに依拠する。プロセスは、68Gaの高い全体収率および高い有効モル放射能を実現すると同時に、68Gaの短い半減期に適合する時間で実施可能である。別の実施形態では、プロセスは、自動システムによって実行される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロトロンで生成した
68Gaを精製するプロセスであって、
(a)
68Znと
68Gaとの混合物を含む溶液を用意するステップと、
(b)溶液を、ヒドロキサマート樹脂を含む第1のキレート陽イオン交換カラムと接触させるステップと、
(c)ステップ(b)の後に得られた第1のキレート陽イオン交換カラムを洗浄して、洗浄済みの第1のキレート陽イオン交換カラムを得るステップと、
(d)洗浄済みの第1のキレート陽イオン交換カラムから
68Gaを溶離させて、第1の溶離液を得るステップと、
(e)第1の溶離液を、樹脂を含む第2のコポリマー陽イオン交換カラムと接触させるステップと、
(f)ステップ(e)の後に第2のコポリマー陽イオン交換カラムを洗浄して、洗浄済みの第2のコポリマー陽イオン交換カラムを得るステップと、
(g)洗浄済みの第2のコポリマー陽イオン交換カラムから
68Gaを溶離させて、精製済み
68Gaを含む第2の溶離液を得るステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
第1のキレート陽イオン交換カラムを洗浄するステップが、第1の酸溶液を第1のキレート陽イオン交換カラムと接触させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
第1の酸溶液が、0.01NのHCl溶液である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
洗浄済みの第1のキレート陽イオン交換カラムから
68Gaを溶離させるステップが、第2の酸溶液を洗浄済みの第1のキレート陽イオン交換カラムと接触させることを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
第2の酸溶液が、第1の酸溶液を超える規定度を有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
第2の酸溶液が、0.75NのHCl溶液である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
第1の溶離液を第2のコポリマー陽イオン交換カラムと接触させる前に、第1の溶離液を第3の酸溶液で希釈するステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
第3の酸溶液が、第1の溶液と実質的に同様の規定度を有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
第3の酸溶液が、0.01NのHCl溶液である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
第2のコポリマー陽イオン交換カラムを洗浄するステップが、第4の酸溶液を第2のコポリマー陽イオン交換カラムと接触させることを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
第4の酸溶液が、第1の酸溶液または第3の酸溶液と実質的に同様の規定度を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
第4の酸溶液が、0.01NのHCl溶液である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
洗浄済みの第2のコポリマー陽イオン交換カラムから
68Gaを溶離させるステップが、塩を含む第5の酸溶液を第2のコポリマー陽イオン交換カラムと接触させることを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
塩を含む第5の酸溶液が、第1の酸溶液を超える規定度を有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
第5の酸溶液が、5.5NのHClである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
第5の酸溶液が、5MのNaCl溶液である、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
コポリマー樹脂が、2種の官能基に結合されたシリカ骨格を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
官能基が、C8基およびベンゼンスルホン酸である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
樹脂が、CUBCX123樹脂である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(a)の前に、Znを含むターゲットに加速粒子ビームを照射するステップをさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
加速粒子ビームが、サイクロトロンで生成される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
Znを含むターゲットが、液体ターゲットであり、照射済み液体ターゲットが、
68Znと
68Gaとの混合物を含む溶液である、請求項20または21に記載のプロセス。
【請求項23】
Znを含むターゲットが、固体ターゲットである、請求項20または21に記載のプロセス。
【請求項24】
照射済み固体ターゲットを溶解酸に溶解して、
68Znと
68Gaとの混合物を含む溶液を形成するステップをさらに含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
照射済み固体ターゲットを溶解するステップが、照射済み固体ターゲットを第6の酸溶液と接触させることを含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
第6の酸溶液が、第1の酸溶液または第3の酸溶液を超える規定度を有する、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
第6の酸溶液が、7NのHNO
3溶液である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
第6の酸溶液が、少なくとも1.5のpHを有する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
ステップ(b)の前に、
68Znと
68Gaとの混合物を含む溶液のpHを調整するステップをさらに含む、請求項25から28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
pHを1~3の間に調整する、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
pHを約2に調整する、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
pHを第7の酸溶液で調整する、請求項29から31のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
第6の酸溶液が、2.5MのNH
4HCO
2溶液である、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
第2の溶離液中の
68Gaの全体の回収収率が、少なくとも80%である、請求項1から33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
第2の溶離液は、
68Gaの有効モル放射能が少なくとも20GBq/μmolである、請求項1から33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
68Gaを精製するシステムであって、
・ヒドロキサマート樹脂を含む第1のカラムと、
・コポリマー強陽イオン交換樹脂を含む第2のカラムと、
・請求項1から35のいずれか一項に記載のプロセスに従って
68Gaを精製するための制御器とを含む、システム。
【請求項37】
陽イオン交換樹脂が、2種の官能基に結合されたシリカ骨格を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
官能基が、C
8基およびベンゼンスルホン酸である、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
陽イオン交換樹脂が、CUBCX123樹脂である、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
2%未満の
67Gaおよび
66Gaを有する、
68Gaを含む組成物。
【請求項41】
請求項1から35のいずれか一項に記載のプロセスによって、または請求項36から39のいずれか一項に記載のシステムを使用することによって得られる、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
10ppm未満の金属不純物および20ppm未満の重金属を有する、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項43】
担体分子をさらに含み、担体分子が
68Gaで放射性標識されている、請求項40から43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
担体分子が、ペプチド、ペプトイド、またはペプチド模倣薬である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
ペプチド、ペプトイド、またはペプチド模倣薬が、ポジトロン放射断層撮影法(PET)イメージングのための放射性医薬である、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
ペプチドが、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸-Tyr(3)-Tyr(8)-オクトレオチド(DOTA-TATE)である、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
68GaによるDOTA-TATEの放射性標識効率が、少なくとも92%である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
担体分子が、ヒト組織を標的とする、請求項43から47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
ヒト組織が、甲状腺、脳、胃腸、膵臓、脾臓、腎臓、神経内分泌腫瘍、腎細胞癌、小細胞肺がん、乳がん、前立腺がん、および悪性リンパ腫からなる群から選択される、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
ポジトロン放射断層撮影法(PET)イメージングのための、請求項40から49のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項51】
ポジトロン放射断層撮影法(PET)イメージングをそれを必要とする対象に行う方法であって、対象にPETを施す前に、イメージング量の請求項40から49のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月11日出願の米国仮特許出願第62/777,994号の優先権を主張し、その全体を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、一般に、照射された亜鉛68(68Zn)の基板からガリウム68(68Ga)を生成および/または精製すること、特に、68Gaを生成および/または精製する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、68Gaベースの放射性医薬の臨床応用の拡大により、68Gaへの関心が高まっている。68Gaは、ポジトロンを放出する放射性同位元素であり、半減期が短い(t1/2=68分)。このように半減期が短いことから、大規模で時間のかかる精製ステップの必要性を最小限または全面的に軽減するために68Gaを高収率および高純度で生成することが重要である。
【0004】
68Gaは、一般に、68Ge/68Gaジェネレータで生成される(Velikyan、2015年)。生成方法は、添加された68Geの放射能量(最大1.85GBq)によって制限されている。また、68Geの半減期(t1/2=271日)は68Gaに比べて長いため、人体に望ましくない副作用を有し、使用前に68Gaと完全に分離すべきである。68Geを68Gaと分離する既知の方法では、一般に、完全な分離または68Ga生成の十分な収率が得られず、ジェネレータベースの手法では、1回の溶出あたりの放射能が制限され(25~100mCi)、溶出間の待ち時間が制限される(Alvesら、2017年;Velikyan、2015年)。
【0005】
68Gaを生成するための68Ge/68Gaジェネレータの代替法には、サイクロトロンが挙げられる。サイクロトロンベースの方法では、68Znの液体または固体ターゲットに陽子ビームを照射すると、68Zn、68Ga、ならびに他の放射性核種および金属汚染物が生成される。後続の精製工程は、複雑であり、金属イオン(Fe3+、Cu2+、Zn2+など)による汚染で損なわれることから、生成される68Gaの量および純度が限られることおよび精製プロセスに時間がかかることを考慮すると、サイクロトロンベースの方法は現在、ジェネレータベースの方法の実行可能な代替法にはなっていない(Blaserら、1950年;Hermanne、1997年;Howe、1958年;Szelecsenyiら、1998年)。
【0006】
液体ターゲットの使用は、取り扱い、精製、および標識化中の放射線被曝が少ないという利点があるが、68Gaの限られた放射能および低い生成収率も示す(Alvesら、2017年;Pandeyら、2014年)。逆に、固体ターゲットを使用すると、高い生成収率が得られるが、調製、溶解、および精製に時間がかかる(Nortierら、1995年;Alvesら、2017年;Liら、2018年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポジトロン電子断層撮影法(PET)イメージングのための核医学における68Gaの需要の増加に伴い、上記の欠点に対処し、68Gaを、高収率、高純度(すなわち、汚染物がないもしくは実質的にない)、および/または高有効モル放射能(effective molar activity)(EMA)で、大量に、かつ68Gaの短い半減期に適合する時間で生成できるサイクロトロンベースのプロセスおよびシステムが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、サイクロトロンで生成した68Gaを精製するプロセスに関する。
【0009】
第1の態様によれば、本開示は、サイクロトロンで生成した68Gaを精製するプロセスであって、(a)68Znと68Gaとの混合物を含む溶液を用意するステップと;(b)溶液を、ヒドロキサマート樹脂を含む第1のキレート陽イオン交換カラムと接触させるステップと;(c)ステップ(b)の後に得られた第1のキレート陽イオン交換カラムを洗浄して、洗浄済みの第1のキレート陽イオン交換カラムを得るステップと;(d)洗浄済みの第1のキレート陽イオン交換カラムから68Gaを溶離させて、第1の溶離液を得るステップと;(e)第1の溶離液(任意選択で希釈してよい)を、樹脂を含む第2のコポリマー陽イオン交換カラムと接触させるステップと;(f)ステップ(e)の後に第2のコポリマー陽イオン交換カラムを洗浄して、洗浄済みの第2のコポリマー陽イオン交換カラムを得るステップと;(g)洗浄済みの第2のコポリマー陽イオン交換カラムから68Gaを溶離させて、精製済み68Gaを含む第2の溶離液を得るステップとを含む、プロセスを提供する。一実施形態では、第1のキレート陽イオン交換カラムを洗浄するステップは、第1の酸溶液を第1のキレート陽イオン交換カラムと接触させることを含む。別の一実施形態では、第1の酸溶液は、0.01NのHCl溶液である。さらに別の一実施形態では、洗浄済みの第1のキレート陽イオン交換カラムから68Gaを溶離させるステップは、第2の酸溶液を洗浄済みの第1のキレート陽イオン交換カラムと接触させることを含む。さらに別の一実施形態では、第2の酸溶液は、第1の酸溶液を超える規定度を有する。一実施形態では、第2の酸溶液は、0.75NのHCl溶液である。さらに別の一実施形態では、プロセスは、第1の溶離液を第2のコポリマー陽イオン交換カラムと接触させる前に、第1の溶離液を第3の酸溶液で希釈するステップをさらに含む。さらに別の一実施形態では、第3の酸溶液は、第1の溶液と実質的に同様の規定度を有する。さらに別の一実施形態では、第3の酸溶液は、0.01NのHCl溶液である。さらに別の一実施形態では、第2のコポリマー陽イオン交換カラムを洗浄するステップは、第4の酸溶液を第2のコポリマー陽イオン交換カラムと接触させることを含む。さらに別の一実施形態では、第4の酸溶液は、第1の酸溶液または第3の酸溶液と実質的に同様の規定度を有する。さらに別の一実施形態では、第4の酸溶液は、0.01NのHCl溶液である。さらに別の一実施形態では、洗浄済みの第2のコポリマー陽イオン交換カラムから68Gaを溶離させるステップは、塩を含む第5の酸溶液を第2のコポリマー陽イオン交換カラムと接触させることを含む。さらに別の一実施形態では、塩を含む第5の酸溶液は、第1の酸溶液を超える規定度を有する。一実施形態では、第5の酸溶液は、5.5NのHClである。さらに別の一実施形態では、第5の酸溶液は、5MのNaCl溶液である。さらに別の一実施形態では、コポリマー樹脂は、2種の官能基に結合されたシリカ骨格を含む。さらに別の一実施形態では、官能基は、C8基およびベンゼンスルホン酸である。一実施形態では、樹脂は、CUBCX123樹脂である。さらに別の一実施形態では、プロセスは、ステップ(a)の前に、Znを含むターゲットに加速粒子ビームを照射するステップをさらに含む。さらに別の一実施形態では、加速粒子ビームは、サイクロトロンで生成される。さらに別の一実施形態では、Znを含むターゲットは液体ターゲットであり、照射済み液体ターゲットは、68Znと68Gaとの混合物を含む溶液である。さらに別の一実施形態では、68Znを含むターゲットは、固体ターゲットである。さらに別の一実施形態では、プロセスは、照射済み固体ターゲットを溶解酸に溶解して、68Znと68Gaとの混合物を含む溶液を形成するステップをさらに含む。さらに別の一実施形態では、照射済み固体ターゲットを溶解するステップは、照射済み固体ターゲットを第6の酸溶液と接触させることを含む。さらに別の一実施形態では、第6の酸溶液は、第1の酸溶液または第3の酸溶液を超える規定度を有する。さらに別の一実施形態では、第6の酸溶液は、7NのHNO3溶液である。さらに別の一実施形態では、第6の酸溶液は、少なくとも1.5のpHを有する。さらに別の一実施形態では、プロセスは、ステップ(b)の前に、68Znと68Gaとの混合物を含む溶液のpHを調整するステップをさらに含む。さらに別の一実施形態では、pHを1~3の間に調整する。一実施形態では、pHを約2に調整する。一実施形態では、pHを第7の酸溶液で調整する。さらに別の一実施形態では、第6の酸溶液は、2.5MのNH4HCO2溶液である。さらに別の一実施形態では、プロセスは、第2の溶離液中の68Gaの全体回収収率が少なくとも80%である。さらに別の一実施形態では、第2の溶離液は、68Gaの有効モル放射能が少なくとも20GBq/μmolである。
【0010】
第2の態様によれば、本開示は、68Gaを精製するシステムであって、ヒドロキサマート樹脂を含む第1のカラムと;コポリマー強陽イオン交換樹脂を含む第2のカラムと;第1の態様のプロセスに従って68Gaを精製するための制御器とを含む、システムを提供する。一実施形態では、陽イオン交換樹脂は、2種の官能基に結合されたシリカ骨格を含む。別の一実施形態では、官能基は、C8基およびベンゼンスルホン酸である。さらに別の一実施形態では、陽イオン交換樹脂は、CUBCX123樹脂である。
【0011】
第3の態様によれば、本開示は、第1の態様のプロセスによって、または第2の態様のシステムを使用することによって得られる組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、2%未満の67Gaおよび66Gaを有する。別の一実施形態では、組成物は、10ppm未満の金属不純物および20ppm未満の重金属を有する。さらに別の一実施形態では、組成物は担体分子をさらに含み、担体分子は68Gaで放射性標識されている。さらに別の一実施形態では、担体分子は、ペプチド、ペプトイド、またはペプチド模倣薬である。さらに別の一実施形態では、ペプチド、ペプトイド、またはペプチド模倣薬は、ポジトロン放射断層撮影法(PET)イメージングのための放射性医薬である。さらに別の一実施形態では、ペプチドは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸-Tyr(3)-Tyr(8)-オクトレオチド(DOTA-TATE)である。さらに別の一実施形態では、68GaによるDOTA-TATEの放射性標識効率は、少なくとも92%である。さらに別の一実施形態では、担体分子は、ヒト組織を標的とする。さらに別の一実施形態では、ヒト組織は、甲状腺、脳、胃腸、膵臓、脾臓、腎臓、神経内分泌腫瘍、腎細胞癌、小細胞肺がん、乳がん、前立腺がん、および悪性リンパ腫からなる群から選択される。
【0012】
第4の態様によれば、本開示は、ポジトロン放射断層撮影法(PET)イメージングのための第3の態様の組成物の使用を提供する。
【0013】
第5の態様によれば、本開示は、ポジトロン放射断層撮影法(PET)イメージングをそれを必要とする対象に行う方法であって、対象にPETを施す前に、イメージング量の第3の態様の組成物を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
このように本発明の本質を説明してきたが、次に、添付の図面を参照する。
【
図1】照射された
68Znの基板から
68Gaを生成および/または精製するプロセスの一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1のプロセスを使用して、
68Gaを精製するための自動システムの一実施形態を示す図である。
【
図3】
図2のシステムの様々な構成要素における
68Gaの回収収率(%)ならびに
68Gaの損失(%)を示す図である。
【
図4A】
図2のシステムにおいて精製が完了した後の
68Gaおよび
66/67Gaの代表的なγスペクトルを示す図である。
【
図4B】
図2のシステムにおいて精製が完了した72時間後の
68Gaおよび
66/67Gaの代表的なγスペクトルを示す図である。
【
図5】一実施形態に従って、
図1Aのプロセスおよび
図2のシステムを使用して、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)配位子滴定を使用した精製済み[
68Ga]GaCl
3のEMA曲線を示す図である。
【
図6】
図6は、一実施形態による
68Ga-DOTA-Tyr(3)-Tyr(8)-オクトレオチド(
68Ga-DOTA-TATE)ペプチドの超高速液体クロマトグラフィ(UPLC)クロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
68Gaは、核医学において放射性同位体として広く使用され、68Znターゲットのサイクロトロン照射から68Gaを回収することにより得ることができる。68Gaは様々なイオン交換クロマトグラフィ方策を使用して回収されてきたが、その回収収率を向上させる必要性が依然としてある。
【0016】
本開示は、照射されたターゲットから68Gaを生成および/または精製するプロセスを提供する。プロセスは、特に、68Gaを、68Znを照射することで得られた他の放射性核種、ならびに他の汚染物質(例えば、金属不純物)と分離するのに使用することができる。プロセスは、特定の樹脂、特に2種の陽イオン交換樹脂の組合せ、および特定の試薬を使用することにより、68Gaの短い半減期に適合する時間枠内で、照射済みターゲットからの68Gaの回収収率を向上させることに依拠する。
【0017】
68Znの照射生成物の生成
非限定的な一実施形態による
68Gaの生成および/または精製に使用することができるプロセス100のフローチャートを
図1に示す。最初に、
68Znを含むターゲットに加速陽子ビームを照射する。ターゲットは、液体形態でも固体形態でもよい。固体形態の場合、
68Znを含む固体ターゲットを適切な支持体に圧縮し、次いで、当業者に既知の方法に従って、ステップ102で陽子ビームを照射してよい(固体の照射済みターゲットが形成される)。照射することができる
68Znの量(質量)は、50mg~2500mgの間、好ましくは100mg~250mgの間であり得る。液体形態の場合、
68Znを含む液体ターゲット(すなわち、溶液)に、当業者に既知の方法に従って、ステップ103で粒子ビームを直接照射してよい(照射済み液体ターゲットが形成される)。液体ターゲットは、特に、
68Zn塩を含み得る。適切なZn塩はZn(NO
3)
2であるが、他の実施形態では他の適切な塩を使用してもよい。任意の適切な体積の液体ターゲットに照射してもよい。一実施形態では、照射される液体ターゲットの体積は、1mL~7mLの間、好ましくは1.5mL~2mLの間を含み得る。照射の結果、さらに後述するように、
68Gaならびに他の放射性核種(例えば、
66Ga、
67Ga、
67Zn、および
66Zn)が生成される。
【0018】
この実施形態では、加速粒子ビームは陽子ビームであり、陽子ビームはサイクロトロンによって生成される。サイクロトロンは、12~15MeVの範囲の陽子ビームを生成する低または中エネルギーのサイクロトロンなど、任意の適切なサイクロトロンであり得るが、それだけに限らない。
【0019】
固体ターゲットに特有のステップ104では、固体の照射済みターゲット(特に、68Zn、68Ga、および他の放射性核種を含む)を、照射済みターゲットを溶解することができる適切な溶媒(溶液)に溶解する。一実施形態では、溶媒は、微量金属ベースの酸溶液でもよい(すなわち、酸溶液は、0.1%(重量)以下の微量金属を含む)。好ましい一実施形態では、溶媒は、強酸を含む酸溶液でもよい。用語「強酸」は、本明細書で使用する場合、水溶液中で完全にイオン化する約-2未満のpKaを有する酸を意味する。強酸の例として、HClおよびHNO3が挙げられるが、それらだけに限らない。HClを使用する場合、照射済み固体ターゲットを溶解するのに、少なくとも5N、少なくとも6N、少なくとも7N、少なくとも8N、少なくとも9N、少なくとも10N、少なくとも11Nまたは12Nの溶液を使用することができる。HNO3を使用する場合、照射済み固体ターゲットを溶解するのに、少なくとも1N、少なくとも2N、少なくとも3N、少なくとも4N、少なくとも5N、少なくとも6N、少なくとも7N、少なくとも8N、少なくとも9N、またはそれを超える溶液を使用することができる。一実施形態では、照射済み固体ターゲットは、以下でさらに説明するように、溶解用の溶媒の溶液が入っているバイアルに直接加えられる。溶解に使用する溶媒の体積は、照射済み固体ターゲットを溶解するのに適した任意の体積であり得、当業者なら認識されるように、溶解させる照射済みターゲットの量に応じて適合させる必要があり得る。好ましい一実施形態では、溶解に使用する溶媒の体積は、0.5~2.5mLである。いくつかの実施形態では、溶解に使用する溶媒の体積は、約1mLである。
【0020】
すべての照射済み固体ターゲット、または実質的にすべての照射済み固体ターゲットが溶解するまでの時間は、68Gaの短い半減期に適合すべきであることが認識されよう。一実施形態では、照射済み固体ターゲットのすべてまたは実質的にすべての溶解は、5分以下、4分以下、3分以下、2分以下、1分以下、またはそれ以下で達成される。
【0021】
さらにこの実施形態では、ステップ104で照射済み固体ターゲットを適切な溶媒に溶解した後、ステップ106で、得られた
68Znの照射生成物の溶液のpHを、1~3の間、好ましくは1.5~2.5の間、より好ましくは約2に調整する。pHを所望の値に調整するために、任意の適切な塩基性溶液を使用することができる。非限定的な一実施形態では、溶液は、塩の形で直接またはアンモニアとして添加することができるアンモニウム陽イオン(塩基として)でもよい。塩の形で供給する場合、塩基は、NH
4OH、NH
4HCO
2、NH
4F、NH
4CH
3CO
2、(NH
4)
2SO
4、(NH
4)
2SiO
3、(NH
4)
3PO
4、NH
4H
2PO
4、C
4H
12N
2O
4、C
4H
12N
2O
6、C
6H
17N
3O
7、(NH
4)
2CrO
4、(NH
4)
6Mo
7O
24、(NH
4)
10H
2(W
2O
7)
6、NH
4VO
3、またはNH
4SCNであり得るが、それらだけに限らない。この実施形態では、pHの調整に使用する塩基性溶液は、少なくとも1N、少なくとも1.5N、少なくとも2.0N、少なくとも2.5N、およびさらにそれを超える濃度を有していてよい。好ましい一実施形態では、溶解すると容易に蒸発してさらなる下流の処理ステップを促進するアンモニウム塩が使用される。pHを前述の値に調整するステップが固体ターゲットに特有のものではなく、
図1に示すように、照射ステップ103の後のステップ105で、照射済み液体ターゲットのpHを同様に調整することもできることを認識されよう。
【0022】
68Gaを他の照射生成物および不純物と分離するプロセス
さらに
図1に関して、pH調整ステップ105または106の後に、
68Znの照射生成物の溶液を用意する。溶液は、特に、
68Znおよび
68Ga(ならびに任意選択で他の放射性核種および金属不純物)を含む。次いで、
68Znの照射生成物の溶液を、ステップ108で第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムに添加する。具体的には、
68Znの照射生成物の溶液を、ポリマー(通常、樹脂の形態)と接触させる。任意の理論に拘泥するものではないが、
68Gaならびに
68Znはポリマーに吸着されるが、それぞれの吸着の度合い(すなわち、
68Ga、
68Znとカラムとの間のイオン相互作用の強さ)は異なる。さらに後述するように、洗浄液および溶離液を慎重に選択することによって、
68Gaを実質的に溶離させることなく、
68Znを最初にクロマトグラフィから溶離させることができる。したがって、これにより、
68Gaを
68Znと分離し、最終的には回収することができる。別の言い方をすれば、ステップ108は、
68Znとは対照的に、
68Gaがポリマーと会合するのに有利な条件下で行われる。
【0023】
ヒドロキサマートは、ステップ108で第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムの樹脂として使用することができる。樹脂は、シリカまたは低架橋ポリスチレンと3000~4000MWのポリエチレングリコール(PEG)との複合体でもよい。任意の適切な量のヒドロキサマートをカラムに使用することができる。好ましい一実施形態では、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム中のヒドロキサマートの量は、200~350mgの間でもよく、好ましくは、カラム中のヒドロキサマートの量は、使用する68Znの量(100~250mg)に応じて調整する。非限定的な一例では、約200mgのヒドロキサマートを約100mgの68Znに使用する。一実施形態では、ヒドロキサマート樹脂は、シリカ、ポリマー被覆シリカ、ポリアクリラート、ポリスチレン、およびPEG被覆ポリスチレンからなる群から選択される材料を含む骨格に結合したヒドロキサマート基を含む。別の一実施形態では、ヒドロキサマート樹脂は、狭いサイズ分布および優れた膨潤性を有するアクリル酸/アクリルアミド被覆シリカまたはPEG被覆ポリスチレンを含む骨格に結合したヒドロキサマート基を含む。ヒドロキサマート樹脂は、10μm~200μmの範囲、好ましくは50μm~150μmの範囲の粒子サイズを有してよい。いくつかの実施形態では、ヒドロキサマート樹脂は、粒子サイズ50μmを有する。他の実施形態では、任意の他の適切なヒドロキサマート樹脂を使用することができる。
【0024】
当業者に既知の方法およびプロトコルに従って、ステップ108の前に第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムをプレコンディショニングしてもよいことが認識されよう。
【0025】
ステップ108で第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムに添加した後、ステップ110でカラムを第1の微量金属ベース強酸溶液で洗浄する。洗浄ステップ110は、特に、ポリマーに緩く会合している可能性のある照射生成物(68Zn)などの未結合または吸着されにくい汚染物を除去する。第1の強酸溶液は、HClまたはHNO3などの任意の適切な強酸を含んでいてよいが、それらだけに限らない。好ましい一実施形態では、第1の強酸溶液はHCl溶液であり、第1の強酸溶液は低い規定度を有し、すなわち、Nは0.01未満、および場合によってはさらに小さくてもよい。したがって、この実施形態では、洗浄ステップ110は、(68Znの照射生成物の溶液の体積と比較して)大量の溶液、例えば、最大40mL、最大50mL、最大60mL、および場合によってはさらに多くの溶液を用いて実施することができる。任意の理論に拘泥するものではないが、ステップ110は、ステップ108で第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムに結合していたすべてまたは実質的にすべてのZn(すなわち、68Znおよび他の同位体)を排除し、その後、それは容器に溶出される。すべてまたは実質的にすべての68Gaは、さらに後述するように、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムに結合したままである(66Gaおよび67Gaなどの他の放射性核種も同様)。したがって、ステップ110の終了時、68Znを含有する溶液が得られ、これをリサイクルまたは廃棄してもよい。
【0026】
次いで、ステップ112で、68Gaを第2の強酸溶液でカラムから溶離させる。第2の強酸溶液は、HClなど、任意の適切な微量金属ベースの強酸を含んでもよいが、それだけに限らない。好ましい一実施形態では、第2の強酸溶液はHCl溶液であり、第2の強酸溶液は低い規定度を有し、すなわち、Nは、少なくとも0.55、少なくとも0.65、少なくとも0.75、少なくとも0.85、および場合によってはそれより大きくてもよい。したがって、この実施形態では、溶離ステップ112は、(68Znの照射生成物の溶液の体積と比較して)より少ない体積の溶液で、例えば、3mL未満、2mL未満、および場合によってはさらに少ない体積で実施することができる。任意の理論に拘泥するものではないが、ステップ112は、ステップ108で第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムに結合していたすべてまたは実質的にすべての68Gaを溶離する(67Gaおよび66Gaなどの他の放射性核種も同様)。したがって、ステップ112の終了時、68Znを実質的に含まない68Ga富化溶離液が得られる。
【0027】
この実施形態では、溶離ステップ112の後の第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムに保持された68Gaの量は、(ステップ105/106の後に得られた)68Znの照射生成物の溶液中に存在する68Gaの放射能および全放射能(%)の測定から判断すると、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、およびさらにそれより小さい。すなわち、溶離ステップ112の後の第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムからの68Gaの移動の有効性は、(ステップ105/106の後に得られた)68Znの照射生成物の溶液中に存在する68Gaの放射能および全放射能(%)の測定から判断すると、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、およびさらにそれより大きい。
【0028】
当技術分野で既知なように、放射能の測定は、当業者に既知の方法に従って、イオン化室においてならびにγ線分光分析によって任意選択で行うことができる。
【0029】
ステップ114では、ステップ112で第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムから溶離させた68Gaを第3の微量金属ベース強酸溶液に溶解して、68Gaの希釈済み溶離液を形成する。この実施形態では、第3の強酸溶液は、第1の強酸溶液と同一でも、または第1の強酸溶液と実質的に類似していてもよい(すなわち、第3の強酸溶液は、第1の強酸溶液の規定度の±5%内にある規定度を有してよい)。第3の微量金属ベース強酸溶液は、限定しないがHClなどの任意の適切な強酸を含んでもよく、好ましくは、第3の強酸溶液は、規定度が低い、すなわち、Nが0.01未満、および場合によってはさらに低いHCl溶液である。HClの使用は、GaCl3を得ることが望まれる場合に有利であり得る。第3の強酸溶液は、他の実施形態では、任意の他の適切な溶液でもよい。この実施形態では、ステップ114で、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムから溶離させた68Gaを、1:4の希釈率、または他の実施形態では任意の他の適切な希釈率で希釈することができる。
【0030】
次いで、ステップ114からの希釈済み溶離液を、ステップ116で第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムに添加する。この実施形態では、ステップ116の第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムは、ステップ108の第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムとは異なる。具体的には、溶離液を、ステップ108の第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラムのポリマーとは異なる樹脂の形態の別のポリマーと接触させる。樹脂はまた、2タイプの官能鎖で架橋されていてもよい。任意の適切な量の樹脂をカラムに使用することができる。非限定的な一実施形態では、第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムの樹脂の量は、100~300mgの間、好ましくは、カラムの樹脂の量は約200mgである。第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムの樹脂は、陰イオン交換体または極性鎖および疎水性炭素鎖を付随する2タイプの官能鎖が結合したシリカ骨格を含んでいてもよい。好ましくは、官能性陰イオン交換基はベンゼンスルホン酸でもよく、疎水性鎖はオクチル鎖(C8)でもよく、このような樹脂はCUBCX123カラムとして市販されている。他の実施形態では、任意の他の適切な(市販)カラムまたは官能基を使用することができる。
【0031】
当業者に既知のプロトコルに従って、第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムをプレコンディショニングしてもよいことが認識されよう。
【0032】
ステップ116で第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムに添加した後、ステップ118でカラムを第4の強酸溶液で洗浄する。洗浄ステップ118は、ステップ114での68Gaの希釈済み溶離液中に存在する可能性のある金属および陽イオン汚染物を除去し、いくつかの実施形態では、枯渇させる、もしくは実質的に枯渇させる。この実施形態では、第4の微量金属ベース強酸溶液は、第1の強酸溶液と同一でも、または第1の微量金属ベース強酸溶液と実質的に類似していてもよい(すなわち、第4の微量金属ベース強酸溶液は、第1の強酸溶液の規定度の±5%内にある規定度を有してよい)。第4の微量金属ベース強酸溶液は、限定しないがHCl、HNO3、HBr、HClO3、HClO4、およびH2SO4などの任意の適切な強酸を含んでもよく、好ましくは、第4の強酸溶液は、規定度が低い、すなわち、Nが0.01未満、および場合によってはさらに低いHCl溶液である。したがって、洗浄ステップ118は、(ステップ114での溶離および希釈された68Gaの体積と比較して)大量の溶液、例えば、少なくとも20mL、少なくとも30mL、少なくとも40mL、および場合によってはさらに多くの溶液を用いて実施することができる。
【0033】
次いで、ステップ120で、68Gaを第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムから塩/微量金属ベース強酸溶液で溶離させる。塩/微量金属ベース強酸溶液は、限定しないがHClなどの任意の適切な強酸を含んでもよい。好ましい一実施形態では、塩/強酸溶液は、規定度が高い、すなわち、Nが少なくとも5、少なくとも5.5、および場合によってはそれを超えるHClを含む。塩/強酸溶液はまた、限定しないがNaClなどの塩を含む。塩は、少なくとも5M、およびさらにはそれを超える濃度で存在してよい。この実施形態では、溶離ステップ120は、(ステップ114の終了時に得られた溶離および希釈された68Ga溶液の体積と比較して)より大きな体積の溶液を用いて、例えば、10μL超、15μL超、20μL超、25μL超、および場合によってはさらに多くの溶液を用いて実施することができる。任意の理論に拘泥するものではないが、ステップ120は、ステップ116で第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムに結合していたすべてまたは実質的にすべての68Gaを溶離する(66Gaおよび67Gaなどの他の放射性核種も同様)。特に、塩/微量金属ベース強酸溶液中のNaClの存在により、ステップ120で68Gaが[68Ga]GaCl3の形で溶離されることが認識されよう。したがって、ステップ120の終了時、68Znおよび他の金属不純物を実質的に含まない68Ga富化溶離液が得られる。
【0034】
この実施形態では、溶離ステップ120の後の第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラムに保持された68Gaの量は、(ステップ105/106の後に得られた)68Znの照射生成物の溶液中に存在する68Gaの放射能および全放射能(%)の測定から判断すると、0.55%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、およびさらにそれより小さい。すなわち、精製プロセスの全体の回収収率、すなわち、(ステップ105/106の後に得られた)68Znの照射生成物の溶液中に存在する68Gaの全放射能と比較した、ステップ120で[68Ga]GaCl3の形で溶離した68Gaの放射能の割合は、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、またはそれより大きい。さらにこの実施形態では、固体または液体ターゲットに関して、プロセス100に従って単離した[68Ga]GaCl3のEMAは、少なくとも24GBq/μmol、少なくとも25GBq/μmol、および場合によってはさらに大きい。
【0035】
ステップ120の終了時に得られた68Ga富化溶離液中の放射性核種不純物(67Gaおよび66Gaを含む)は、照射後6時間では67Gaが2%未満の濃度で存在する可能性があるが、66Gaの濃度は、照射後6時間では無視できる(すなわち、ステップ102/103の完了後6時間)。このような放射性核種不純物の存在は、67Ga(T1/2=3.26日)および66Ga(T1/2=9.45時間)のより長い半減期を考慮して測定すべきであることが認識されよう。
【0036】
さらにこの実施形態では、ステップ120の終了時に得られる68Ga富化溶離液中の金属不純物(重金属を含む)は、10ppm未満、および場合によってはさらに少ない濃度で存在する可能性がある。同様に、この実施形態では、アルミニウム、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、銅を含む不純物は、ステップ120の終了時に得られる68Ga富化溶離液中に、5ppm未満、4ppm未満、3ppm未満、2ppm未満、およびさらにより小さい濃度で存在する可能性がある。アンチモン、バリウム、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、クロム、コバルト、鉛、リチウム、モリブデン、セレン、銀、チタン、およびバナジウムは、ステップ120の終了時に得られる68Ga富化溶離液中に、0.05ppm未満、0.04ppm未満、0.03ppm未満、0.02ppm未満、およびさらにより小さい濃度で存在する可能性がある。金属不純物の濃度の測定は、当業者に既知の方法およびプロトコルに従って、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって行うことができる。
【0037】
プロセス100、またはプロセス100の任意のサブセットを自動化してよいことが認識されよう。すなわち、さらに
図2を参照して、非限定的な一実施形態において、
68Gaの自動精製用システム200を実施することができる。示したシステム200は固体ターゲット用に設計されていることが分かるが、液体ターゲットに適する任意の他のシステムを他の実施形態で提供することができる。また、システム200は、
68Gaの精製にしか関係していないが(したがって、ターゲットの照射のためのプロセス100のステップ102/103を網羅していない)、システム200はまた、ステップ102でのターゲットの照射(および移動)もシステム200の状況内で自動化することができるように、他の実施形態において
68Gaの(
68Znのターゲットからの)分離および
68Gaの精製の両方を自動化することができる。以下でさらに説明するように、
図2のシステム200は、プロセス100のステップ104、105/106、108、110、112、114、116、118、および120を自動化するように構成されている。
【0038】
非限定的な一実施形態では、さらに
図2に関して、固体の照射済みターゲットを溶解するステップ104は、溶解に必要な溶媒が入っており、固体の照射済みターゲットが添加されるバイアル204内で行われる。pHを調整するステップ106は、溶液(塩基性または酸性)が入っているシリンジ202を介して行われる。第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に添加するステップ108は、第1のバルブ207
1に接続した真空ポンプでシステム200内に負圧を生じさせることによって実現される。添加した後、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208を洗浄するステップ110、および第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208を溶離させるステップ112が、関連する第1のおよび第2の微量金属ベース強酸溶液を添加するシリンジ206を介して実現される。これは特に、低規定度の微量金属ベースHCl溶液が入っているバイアル211を介して、および低規定度のHCl溶液が入っているバイアル209を介して溶離させることで実現でき、溶液はシリンジ206に装入され、第1のバルブ207
1に接続した真空ポンプによって生じる負圧を使用して、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に通される。ステップ110の終了時に得られた
68Znを含有する溶液はバイアル210に集められ、一方、ステップ112の終了時に得られた
68Znを実質的に含まない
68Ga富化溶離液はバイアル212に集められ、バイアル211を介して第3の低規定度微量金属ベース強酸溶液で希釈するステップ114もシリンジ206を介して行われる。次いで、ステップ116では、希釈済み
68Ga富化溶離液を、第2のバルブ207
2に接続した真空ポンプでシステム200内に負圧を再び生じさせることによって第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム214に添加する。添加した後、第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム214を洗浄するステップ118、および第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム214を溶離させるステップ120が、関連する第4の強酸溶液および塩/強酸溶液を添加するシリンジ206を介して実現される。これは特に、低規定度のHCl溶液が入っているバイアル211を介して洗浄し、塩/微量金属ベース強酸溶液が入っているバイアル213を介して溶離させることで実現でき、溶液はシリンジ206に装入され、第2のバルブ207
2に接続された真空ポンプによって生じる負圧を使用して、第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム214に通される。ステップ118の終了時に得られた溶液はバイアル216に集められ、一方、ステップ120の終了時に得られた
68Znを実質的に含まない
68Ga富化溶離液は生成物バイアル218に集められる。
図2に示すように、これらの様々な要素が、液体および気体の接続部ならびにスイッチを介して、コンピュータ援用カセット式モジュールという状況ですべて相互に接続されていることが認識されよう。
図1に示したプロセスを実現するために、他の実施形態では、任意の他の適切な構成が可能である。
【0039】
この実施形態では、プロセス100の様々なステップを実施するために、様々なシリンジ202、206、真空ポンプ2071、2072、液体および気体の接続部、ならびにスイッチをすべて、ソフトウェアを介して完全に自動的に操作することができるように、システム200は、ソフトウェア(図示せず)で制御されるカセット式モジュールによって操作される。この実施形態では、システム200によって実行されるプロセス100は、15分未満、および場合によってはさらに短い時間で完全に実施することができる。
【0040】
非限定的な一実施形態では、プロセス100に従って生成した68Gaを担体分子に付着させて、放射性トレーサを形成することができ、これは特にPETスキャンに施用される。サイクロトロンで生成した68GaCl3は、医薬部分に付着させた場合、放射性医薬としても有用である。
【0041】
一般に、サイクロトロンで生成し、かつプロセス100に従って精製した68GaCl3は、担体分子を、事前に決定した濃度で、精製済み68GaCl3を含む溶液中に温置することによって、担体分子に付着させることができ、以下でさらに説明するように、この溶液は、事前に決定したpH(すなわち、非限定的な一実施形態では、2~4の間)であり、温置は、高温(すなわち、非限定的な一実施形態では、80℃超)である。
【0042】
担体分子という用語は、本明細書で使用する場合、注射、嚥下、または吸入により身体内に導入すると、興味の対象である1種または複数種の臓器または組織に蓄積する薬物、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチドフラグメント、アミノ酸、または粒子を意味する。蓄積が起こる臓器または組織は、担体分子の標的臓器または標的組織と呼ばれる。担体分子の例として、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA);ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA);2-ヒドロキシ-11,16,20-トリス(4-(ヒドロキシ(メチル)アミノ)-4-オキソブタノイル)-3,6-ジオキソ-2,7,11,16,20-ペンタアザドコサン-22-酸(4HSMA)、デスフェリオキサミン(Dfo)、DOTA-PSMA、DOTA-Tyr(3)-オクトレオチド(DOTATOC)、DOTA-Tyr(3)-Tyr(8)-オクトレオチド(DOTATATE);DOTA-1-ナフチル-アラニン(DOTANOC);DOTA-ベンゾチエニル-アラニン(DOTA-BOC);DOTA-ボンベシン;DOTA-アルギニン-グリシン-アスパラギン酸-ボンベシン(DOTA-RGD-ボンベシン);1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸-RGD(NOTA-RGD);3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-三酢酸-RGD(PCTA-RGD);DOTA-アルブミン;DOTA-ヒト上皮成長因子;1,4,7-トリアザシクロノナン-1-メチル[(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸]-4,7-ビス[メチル(2-ヒドロキシメチル)ホスフィン酸-インテグリンα(IIb)β(3)-特異的環状ヘキサペプチド(NOPO-RGDfK);1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ビス(酢酸)-7-(2-グルタル酸)(NODAGA);NOPO-NaI(3)-オクトレオチド共役体(NOPONOC);および1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[(2-カルボキシエチル)メチレンホスフィン酸](TRAP(RGD)3);4HSMA-PSMA;4HSMA-TOC;4HSMA-TATE;4HSMA-NOC;4HSMA-ベンゾチエニル-アラニン;4HSMA-ボンベシン;4HSMA-RGD(単量体、二量体、三量体、および四量体);4HSMA-アルブミン;4HSMA-ヒト上皮成長因子が挙げられるが、それらだけに限らない。標的の例として、甲状腺、脳、胃腸、膵臓、脾臓、腎臓、神経内分泌腫瘍、腎細胞癌、小細胞肺がん、乳がん、前立腺がん、および悪性リンパ腫が挙げられるが、それらだけに限らない。
【0043】
非限定的な一実施形態では、方法100により精製した68GaをDOTA-TATEなどの担体に付着させるために、DOTA-TATEペプチドを、68Gaを含有する高純度水に溶解させることがある。具体的には、ステップ122の終了時に得られた68Znおよび他の金属不純物を実質的に含まない68Ga富化溶離液の溶液のpHを、酸の溶液を使用して、2.5~3.5の間、好ましくは3.0~3.2の間のpHに調整することができる。任意の適切な酸を使用することができる。この実施形態では、酸は、好ましくは、1Mの濃度のNH4OAcである。20nmolの濃度のDOTA-TATEを、方法100により精製した68Gaを含有する高純度水に溶解し、得られた溶液を、アスコルビン酸、エタノール、またはゲンチジン酸の存在下で100℃の温度で12分間温置することができる。この実施形態では、68Ga-DOTA-TATEペプチドの放射性標識効率は、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、およびさらにそれより大きい。
【0044】
本開示の組成物は、ポジトロン放射断層撮影法(PET)を、それを必要とする対象に行うために使用することができる。そのような実施形態では、組成物は、PETの実施に適する担体で希釈することができる。組成物は、PETの実施を可能にするように、イメージング量で対象に提供することができる。
【0045】
本開示は、本発明の範囲を限定するためではなく、本発明を説明するために示す以下の実施例を参照することで、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0046】
化学物質および装置。すべての化学物質および溶媒は、別段の指定がない限り、高純度物を購入し、直接使用した。富化68Zn粉末(99.26%)は、ISOFLEX USA(サンフランシスコ、カリフォルニア州)から購入した。微量金属ベース塩酸(HCl、99.999%)、70%硝酸(HNO3、≧99.999%)、炭酸アンモニウム(Na2CO3、99.999%)、ギ酸アンモニウム(NH4HCO2、≧99.995%)、およびnatZn(99.995%)は、Sigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州、米国)から購入した。高純度水(Optima LC/MS、超高速液体クロマトグラフィ紫外線グレード,0.03mmフィルタ濾過)、アセトニトリル(HPLCグレード、99.9%)、メタノール(HPLCグレード、≧99.9%)、および塩化ナトリウム(NaCl)を,Fisher Scientific(オタワ、オンタリオ州、カナダ国)から購入した。ヒドロキサマート樹脂を、Verelら(2003年)が報告した手順に従って調製し、1mLカートリッジに充填して2枚のフリット(20ミクロン、United chemical technologies、ブリストル、ペンシルベニア州、米国)で挟んだ。プロピルスルホン酸樹脂(CUBCX123、200mg)を、UCT社(ブリストル、ペンシルベニア州、米国)から購入した。IGG10068Ge/68Gaジェネレータは、Eckert and Ziegler EUROTOPE GmbH(ベルリン、ドイツ国)から入手した。インスタント薄層クロマトグラフィシリカゲル(ITLC-SG)、およびシリカゲルを含浸させたガラスマイクロ繊維クロマトグラフィ紙は、Agilent Technologies(サンタクララ、カリフォルニア州、米国)から入手した。
【0047】
すべてのガラス製バイアルは、Fisher Scientificから入手したクロム酸-硫酸溶液で洗浄し、高純度水で濯いだ。68Ga-DOTA-TATEの標識効率は、移動相として1MのNH4OAc:MeOH(50:50、体積:体積)を用いたラジオITLC-SGを使用して測定した。ラジオITLCプレートは、インスタントイメージャースキャナ(Canberra Packard、オーストリア国)を使用してスキャンした。放射能の測定は、プロセス効率を制御するように68Ga設定したイオン化室(CRC-25PET;Capintec)において、分析的定量用に校正した高純度ゲルマニウム検出器(GMX HPGe;ORTEC)を用いたγ線分光分析によって行った。実験試料は、1~2000keVの動的エネルギーウィンドウを使用して、5~10分間カウントした。すべての放射線検出装置は、既知の制御手順に従って校正し、維持した。
【0048】
ヒドロキサマート樹脂における68Ga精製プロセスの最適化。68Ga精製条件を、天然Zn(natZn)の圧縮されたターゲットと、ジェネレータで生成した[68Ga]GaCl3を使用して、最適化した。この非限定的な例では、以下でさらに説明するように、ターゲットは、68Zn/68Gaの固体/圧縮ターゲットであり、精製に関しては、第1のステップではヒドロキサマート樹脂(Verelら、2003年)および第2のステップの精製ではCUBCX123樹脂(Muellerら、2012年)を含む2種の陽イオン交換樹脂を使用する。
【0049】
図2のシステム200に従って、
68GaCl
3の自動精製に、Trasis(アンス、ベルギー国)のMiniAIOカセット式モジュールを使用した。精製を行う前に、2個の6ポジションカセットおよび溶液バイアルを設置し、7NのHNO
3および0.01NのHClを使用して、ユニットを洗浄した。EMAに影響を及ぼし得る金属への接触を減らすため、液体および気体の接続部はすべて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製チューブおよびシリコン製コネクタを使用して組み立てた。溶解後のpHを調整するために、溶解バイアル204に直接接続したシリンジ202に、塩基(1NのNH
4OHまたは2.5NのNH
4HCO
2)の溶液を入れた。洗浄および濯ぎステップに使用した溶離液(バイアル209、211、および213に在中)は、シリンジ206を介して移動させた。溶媒の漏れを回避するために、バルブ207
1および207
2に接続した真空ポンプで発生させた負圧(800mbar)を使用して、他の溶液をシステム内に移動させた。ヒドロキサマート樹脂を含む第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208を、アセトニトリル10mL、高純度水20mL、2NのHCl2mLでプレコンディショニングし、最後に、水20mLで濯ぐか、または代わりに少なくともpHが4になるようにした。CUBCX123樹脂(200mg)を含む第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム214を、6NのHCl2mLおよび高純度水5mLでプレコンディショニングした。精製プロセスは、Trasis-MiniAIO Software-Version2.0 Rev22を実行するラップトップコンピュータによって制御した。
【0050】
ターゲットの溶解。様々な濃度のHClおよびHNO3の溶液を、natZn固体(圧縮)ターゲット100~250mgを使用して、室温でターゲットの溶解試験を行った。溶解に使用する全体積を1mLに設定した。溶解およびpH調整中に溶解バイアル204に磁気撹拌棒を設置して、溶液を均質化した。68Gaは半減期が短く、少量の溶媒にターゲットを迅速に溶解させることが必須である。この目的のために2種の異なる酸を使用した。結果を表1に示す。溶解に関しては、エントリー1~6ではnatZn圧縮ターゲット100mgを溶液1mLに溶解し、エントリー7ではnatZn圧縮ターゲット165mgを溶液1mLに溶解し、エントリー8ではnatZn圧縮ターゲット250mgを溶液1mLに溶解した。
【0051】
【0052】
12NのHClおよび7NのHNO3を使用すると、natZn圧縮ターゲット約100mgの最速溶解時間は、それぞれ1.5分および1分であった(表1、エントリー3および6)。7NのHNO3の体積を1.5および2mLに増加すると、natZn圧縮ターゲット165mgおよび250mgがそれぞれ約1分で完全に溶解した(表1、エントリー7~8)。
【0053】
ヒドロキサマート樹脂における68Ga移動および溶離のためのpH調整。natZnターゲット(95~250mg)の溶解後、ジェネレータで生成した68Ga(0.1NのHCl、4.5mLに含まれている)を溶解バイアル204に添加した。シリンジ202中の塩基(1NのNH4OHまたはNH4HCO2)の溶液を、溶解バイアル204に添加して、pHを0.5~3.5に調整し、その後、得られた粗溶液をヒドロキサマート樹脂(ヒドロキサマート100~250mgを含む樹脂)を含む第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に移動させた。次いで、得られた粗溶液をヒドロキサマート樹脂に添加し、通過させ、真空ポンプ2071で発生させた負圧を使用して、バイアル210に回収した。ヒドロキサマート樹脂上でイオン交換が起こるため、以下でさらに説明するように、この段階では、すべてのまたは実質的にすべての68Gaが第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に残っており、一方、バイアル210には、68Gaを含まないまたは実質的に含まない溶液が入っている。追加の5×10mLの高純度水または0.01NのHCl(pH2)を第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に溶出させ、バイアル210に回収した。次いで、様々な濃度(0.5~2N)のHCl溶液を、バイアル212中の68Gaの溶離について試験した。各改変の後、溶解バイアル204、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208、バイアル210および212において、ドーズキャリブレータにより68Ga放射能を測定した。
【0054】
サイクロトロンで生成した[68Ga]GaCl3のための68Ga精製プロセスの最適化。非限定的な一例では、68Zn/68Ga圧縮ターゲット(95~250mg)を、7MのHNO3が1~2mL入っている溶解バイアル204に投入した。次いで、NH4HCO2(2~2.5mL、2.5M)の溶液を溶解バイアル204に添加して、pHを約2に調整した。次いで、得られた粗溶液を、ヒドロキサマート樹脂(200~330mg)を含む第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に添加し、通過させ、第1のバルブ2071に接続した真空ポンプで発生させた負圧を使用して、バイアル210に入れた。次いで、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208を0.01NのHCl(50mL)で洗浄して、68Znを除去した。次いで、68Gaを、0.75NのHCl(2mL)を用いて第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208から[68Ga]GaCl3としてバイアル212に溶離させた。バイアル212中の溶液を0.01NのHCl(8mL)を使用して希釈し、CUBCX123樹脂を含む第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム214に添加した。第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム214を0.01NのHCl(30mL)で洗浄して、それをバイアル216に入れた。最後に、バイアル213からの5MのNaCl(500μL)/5.5NのHCl(12.5μL)を使用して、第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム214から[68Ga]GaCl3を生成物バイアル218に溶離させた(Muellerら、2012)。
【0055】
溶解バイアル204中の溶解ターゲット溶液から、ヒドロキサマート樹脂を含む第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208への68Gaの移動の有効性を評価するために、様々なpH値を試験した。このプロセスに続いて、溶解バイアル204および第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に残っている68Gaの放射能のパーセンテージを記録した。結果を表2に要約する。natZn(60mg)をHNO3(7N)1mLに溶解した後、NH4OH(1M)を使用して、pHを調整した。
【0056】
【0057】
pHが0.5~3では、68Gaの放射能は、溶解バイアル204から第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に効率よく移動した(表2、エントリー1~5)。しかし、低いpH(0.5~1.5)では、68Gaは、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に効率よく保持されなかった(表2、エントリー1~3)。pHが3を超える場合、68Gaは溶解バイアル204に残った(表2、エントリー5~6)。pH3.5では、溶解バイアル204から溶解ターゲット溶液を移動させるのに長い時間が必要である。
【0058】
最初に、高純度水(40mL)を使用して、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208から68Znおよび他の金属不純物の微量残留物をバイアル210に濯ぎ出した。この溶離液を使用すると、pHが2から7に上昇し、不溶性の金属種が形成されるリスクがあった。このステップの間、pHを2に維持するために濯ぎ液として0.01NのHCl(40mL)を使用した。溶解バイアル204中の68Gaの放射能を最小化し、第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208に68Gaを保持するために、pHを好ましくは2~3の間に維持すべきである(表2、エントリー4~5)。
【0059】
第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム208からの68Gaの溶離に関して様々なHCl濃度を比較した。その結果を表3に示す。初めに、溶出時間を最小限にするために、100mgのヒドロキサマート樹脂208を2mLのHCl溶液と組み合わせて使用した。
【0060】
【0061】
0.5Nおよび0.75NのHClでは、68Ga放射能の80%および89%が、それぞれバイアル212に移動した(表3、エントリー1~2)。最も高い移動収率が1Nおよび2NのHCl溶液で見られた(表3、エントリー3~4)。
【0062】
全体の回収収率の決定。さらに
図3を参照すると、全体の回収収率は88.7±1.4%であり、主に、ヒドロキサマート樹脂(7.4±0.1%)、溶解バイアル(1.4±1.1%)、バイアル1(0.9±0.2%)、およびバイアル3(1.1±0.6%)で最小の損失が見られた。この非限定的な一例では、ターゲットの溶解から[
68Ga]GaCl
3の形成までの完全な手順に約10分かかる。
【0063】
放射性核種および金属不純物の決定。1.5mLマイクロ遠心分離管において148~222kBqの精製済み68GaCl3を包含する試料を高純度水で希釈して、最終体積を0.5mLにした。放射性核種の純度は、1~2000KeVのズームエネルギーウィンドウを用いて高純度ゲルマニウム(HPGe)検出器でのγ線分光法によって決定した。この量の放射能を使用した場合、不感時間は5秒未満であった。合成終了後、試料を5~10分のみカウントした。さらに、67Ga(T1/2=3.26日)などの半減期の長い放射性核種の不純物を確認するため、2日後に試験を繰り返した。半減期は、ドーズキャリブレータCRC-55PETを使用して評価した。[68Ga]GaCl3溶液中の微量金属分析は、USP<233>に準拠した誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって26元素について実施した(Exova、サン=トーギュスタン=ド=デモール、カナダ国)。
【0064】
図4Aおよび
図4Bをさらに参照すると、精製後、
68Gaに対応する511および1079KeVに高強度の2つのピークが観察された。さらに、精製の72時間後に測定を繰り返し、
67Ga不純物に対応する3つのピークがγ線スペクトルにはっきりと観察された。観察された主な放射性核種不純物は、
67Ga(T
1/2=3.26日)および
66Ga(T
1/2=9.45時間)であったが、量は、EOBで<0.01%または照射7時間後で<2%に制限された。具体的には、不純物の量は、13MeVの励起では、EOBで
67Ga:0.0106±0.0039%および
66Ga:0.0093±0.0045%であった。
【0065】
精製済み[68Ga]-GaCl3溶液中の金属不純物をICP-MSで同定し、ジェネレータで生成したものと比較し、結果を表4に示した。
【0066】
【0067】
試験したすべてのバッチにおいて、金属不純物は、米国および欧州での重金属の一般的な制限である10ppmおよび20ppmを下回った。アルミニウム、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、銅の不純物濃度は<5ppm、アンチモン、バリウム、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、クロム、コバルト、鉛、リチウム、モリブデン、セレン、銀、スズ、チタン、バナジウムの不純物濃度は<0.02ppmであった。
【0068】
有効モル放射能の計算。68GaのEMA(GBq/μmol)は、DOTAおよび精製済み[68Ga]GaCl3を用いた滴定によって計算した。様々な濃度(1.8~3.5×10-3nmol)のDOTAの溶液(4mLポリプロピレンチューブに145μL)を段階希釈によって調製した。[68Ga]GaCl3溶液をNH4OAc緩衝液(1M、pH=4.5)で最終pHを3.0~3.2に調整し、各チューブに添加(10~20μL、約3.7MBq)して、全量を160~170μLにした。混合(ボルテックス)し、100℃で12分間温置した後、1NのNH4OAc:MeOH(50:50、体積:体積)を移動相としたTLCによって各チューブのDOTA標識効率を測定して、EMAを決定した。ITLC-SGを使用した場合、[68Ga]GaCl3は原点に残り、複合体[68Ga]Ga-DOTAは溶媒先端と共に移動する。TLCプレートは、ラジオTLCスキャナを使用して分析した。複合体化のパーセンテージをキレート剤の量(nmol)の関数としてプロットし、>95%の複合体化が実現したとき、EMAを決定した。
【0069】
図4をさらに参照すると、固体(圧縮)ターゲットの[
68Ga]-GaCl
3のEMAは、25±0.18GBq/μmolであった。この値は、ジェネレータで生成した[
68Ga]-GaCl
3について得られた34±0.18GBq/μmolと同程度である。
【0070】
68Ga-DOTA-TATEの放射性標識。DOTA-TATEペプチドを、我々の研究室で最適化した条件に従って、サイクロトロンで生成した[68Ga]GaCl3で標識した。簡単に述べると、DOTA-TATE(21nmol)を、[68Ga]GaCl3(約555MBq、pH3.1、250μL)を含む高純度水(1mL)に溶解し、得られた溶液を100℃で12分間温置した。1MのNH4OAc(pH4.5)を使用して、[68Ga]GaCl3(500μL)のpHをpH3.0~3.2に調整した。温置時間後、1MのNH4OAc:MeOH(50:50、体積:体積)を移動相として使用したiTLCによって、標識効率を決定した。ITLC-SGを使用した場合、[68Ga]GaCl3は原点に残り、複合体[68Ga]Ga-DOTA-TATEは溶媒先端と共に移動する。7.5分間にわたる勾配0~100%のアセトニトリル(0.4%AcOH)を含む高純度水を用いたACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 1.7μmカラム(2.1μm×50mm、Waters acquity)を使用して、ラジオUPLC(Waters Acquity)によって、標識効率も決定した。
【0071】
図5をさらに参照すると、
68Ga-DOTA-TATEペプチドの放射性標識効率は、UPLCで95±1.6%であった。
【0072】
本発明を、その特定の実施形態に関して説明してきたが、特許請求の範囲は、実施例に記載した好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることが理解されよう。
【0073】
参考文献
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【符号の説明】
【0074】
200 68Gaの自動精製用システム
202 シリンジ
204 溶解バイアル
206 シリンジ
2071 第1のバルブ
2072 第2のバルブ
208 第1のキレート陽イオン交換クロマトグラフィカラム
209 バイアル
210 バイアル
211 バイアル
212 バイアル
213 バイアル
214 第2のコポリマー陽イオン交換クロマトグラフィカラム
216 バイアル
218 生成物バイアル
【国際調査報告】