(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】抗体-薬物複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20220216BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220216BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220216BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220216BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220216BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220216BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220216BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220216BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20220216BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220216BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220216BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220216BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220216BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220216BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220216BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220216BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220216BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20220216BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220216BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220216BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220216BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220216BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220216BHJP
C08G 65/32 20060101ALI20220216BHJP
C08G 65/331 20060101ALI20220216BHJP
C08G 65/333 20060101ALI20220216BHJP
C08G 65/332 20060101ALI20220216BHJP
C08G 65/334 20060101ALI20220216BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K45/00
A61P1/02
A61P1/04
A61P3/00
A61P3/02
A61P3/04
A61P3/10
A61P5/00
A61P7/00
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/12
A61P13/00
A61P15/00
A61P19/02
A61P19/08
A61P21/00
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/00
A61P27/02
A61P27/16
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/06
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 105
A61K39/395 D
A61K39/395 C
C08G65/32
C08G65/331
C08G65/333
C08G65/332
C08G65/334
C07K16/00
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536387
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 GB2019053629
(87)【国際公開番号】W WO2020128488
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521270351
【氏名又は名称】スパイリーア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】オーベライ、ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】バイサス、テオフィル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
4J005
【Fターム(参考)】
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA181
4C084ZA331
4C084ZA341
4C084ZA361
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA701
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB071
4C084ZB111
4C084ZB151
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB331
4C084ZB351
4C084ZB371
4C084ZC021
4C084ZC211
4C084ZC351
4C085AA13
4C085AA25
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA10
4J005AA04
4J005AA12
4J005BD03
4J005BD05
4J005BD06
(57)【要約】
本発明は、(i)抗体またはその抗原結合フラグメント、(ii)低分子薬物などの1つまたは複数の生物活性部分に、任意にリンカーを介して共有結合している特定の繰り返し単位を含むポリマー、および(iii)ポリマーと抗体またはその抗原結合フラグメントの両方に共有結合しているポリマー-抗体リンカー部分を含む、抗体-薬物複合体に関する。また、本発明は、当該抗体-薬物複合体を含む医薬組成物および当該抗体-薬物複合体の医薬における使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む抗体-薬物複合体:
(i) 抗体またはその抗原結合フラグメント;
(ii) 式(I')の繰り返し単位を含むポリマー:
【化1】
(式中、
各nおよび各pは独立して0または1~6の整数であり;
各mは独立して0または1~4の整数であり、好ましくは少なくとも1つのmは1であり;
Vは
【化2】
であり;
--------は結合であり、存在しなくても、存在してもよく;
各D
1は独立してOまたはL
1-B
1であり;
各D
2は独立してOまたはL
2-B
2であり;
各D
3は独立してOまたはL
3-B
3であり;
ここで、L
1はリンカー基または結合であり、L
2はリンカー基または結合であり、L
3はリンカー基または結合であり、各B
1、B
2およびB
3は生物活性部分であり;
ただし、ポリマー内の少なくとも1つのD
1、D
2またはD
3基はOではなく、さらにD
1、D
2またはD
3がOである場合、O原子とそれが結合する炭素原子の間に二重結合があり;
各qは1~8の整数であり;
XおよびYは、O、NH、NR'およびSから独立して選択され;
R'はC
1-20ヒドロカルビルであり;
Qは-CH
2(NMe(C=O)CH
2)
o-、-T
1O(CH
2CH
2O)
sT
2-および-T
1O(CH
2CH
2CH
2O)
sT
2-から選択され、ここで、T
1は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され、T
2は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され;
oは0~100の整数であり;
sは0~150の整数である);および
(iii) 抗体とポリマーの両方に共有結合しているポリマー-抗体リンカー。
【請求項2】
ポリマーが式(I)の繰り返し単位を含む、請求項1に記載の抗体-薬物複合体:
【化3】
(式中、X、Y、D
1、D
2、D
3、n、mおよびpは前記のとおりであり、Qは-T
1O(CH
2CH
2O)
sT
2-および-T
1O(CH
2CH
2CH
2O)
sT
2-から選択される)。
【請求項3】
ポリマー-抗体リンカーが、式(I')中の-CD
1-部分の炭素原子または式(I')中のY基を介してポリマーに共有結合している、請求項1または請求項2に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項4】
各D
1および各D
3がOである、請求項1から3のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項5】
各qが1である、請求項1から4のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項6】
各mが1または2である、請求項1から5のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項7】
各nが1、2または3である、請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項8】
各pが0、1または2である、請求項1から7のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項9】
式(I')の繰り返し単位が
【化4】
および
【化5】
から選択される構造を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項10】
ポリマー-抗体リンカーが、マレイミド、モノブロモマレイミド、ビニルスルホン、ビス(スルホン)、アレンアミド、デヒドロアラニン、アルケン、ペルフルオロ芳香族種、ジュリア-コシエンスキー試薬のようなスルホン試薬、N-ヒドロキシスクシンアミド-エステル活性化カルボキシレート種およびケトンに由来する、請求項1から9のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項11】
式(III)または(IV)を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体:
【化6】
(式中、
(I')は、前記の請求項のいずれかで定義される式(I')の繰り返し単位であり;
Abは抗体またはその抗原結合フラグメントであり;
Lは、請求項1または請求項9で定義されるポリマー-抗体リンカーであり;
R
1は、OH、OR'、SH、SR'、NH
2、NHR'およびNR'
2から選択され;
EはHおよびR'から選択され;
R'は、請求項1で定義したとおりであり;
zは2~50の整数である)。
【請求項12】
XがOまたはNHであり、YがOまたはNHであり、好ましくはXおよびYの両方がOであるか、またはXおよびYの両方がNHである、請求項1から11のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項13】
Qが-CH
2CH
2O(CH
2CH
2O)
sCH
2CH
2-または-CH
2CH
2CH
2O(CH
2CH
2O)
sCH
2CH
2CH
2-であり、好ましくは、ここで、sは1~100である、請求項1から12のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項14】
X-Q-Yが、PEG 400、PEG 500、PEG 600、PEG 1000、PEG 1500、PEG 2000または(ポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)末端) 1500に由来する、請求項1から13のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項15】
Vが-X-(C=O)-であり、Qが-CH
2(NMe(C=O)CH
2)
o-であり、Yが-NMe-であり、ここで、部分Qは部分Vのカルボニル基に直接結合し、好ましくは、ここで、oは5~25である、請求項1に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項16】
各生物活性部分が同一または異なり、部分B
1、B
2および/またはB
3であり、H-B
1、H-B
2および/またはH-B
3は、それぞれ独立して、低分子薬物、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、抗体、抗原、DNA、mRNA、低分子干渉RNA、低分子ヘアピンRNA、マイクロRNA、PNA、フォルダマー、炭水化物、炭水化物誘導体、非リピンスキー分子、合成ペプチドおよび合成オリゴヌクレオチドから選択され、好ましくは、低分子薬物であり、好ましくは、H-B
1、H-B
2および/またはH-B
3は、少なくとも1つのヒドラジン基、少なくとも1つのヒドラジド基、少なくとも1つのアミン基、少なくとも1つのアミノオキシ基、少なくとも1つのヒドロキシル基、少なくとも1つのチオール基、または少なくとも1つのカルボン酸基を含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項17】
式(I')の繰り返し単位の少なくとも1つ、好ましくはすべてが、
(a) 式(Ia)の繰り返し単位:
【化7】
(式中、L”は結合または-Z
1-L'-Z
2-であり、Bは生物活性部分B
2であるか、またはL”が結合である場合、BはB-NH-Nが生物活性部分B
2であるように定義される);
(b) 式(Ib)の繰り返し単位:
【化8】
(式中、L”は結合または-Z
1-L'-Z
2-であり、Bは生物活性部分B
2であるか、またはL”が結合である場合、BはB-Nが生物活性部分B
2であるように定義される);
(c) 式(Ici)または(Icii)の繰り返し単位:
【化9】
【化10】
(式中、vは0~4の整数であり、L”は結合または-Z
1-L'-Z
2-であり、Bは生物活性部分B
2であるか、またはL”が結合である場合、BはB-OまたはO-B-Oが生物活性部分B
2であるように定義される);
(d) 式(Idi)または(Idii)の繰り返し単位:
【化11】
【化12】
(式中、vは0~4の整数であり、L”は結合または-Z
1-L'-Z
2-であり、Bは生物活性部分B
2であるか、またはL”が結合である場合、BはB-SまたはS-B-Sが生物活性部分B
2であるように定義される);および
(e) 式(Ie)の繰り返し単位:
【化13】
(式中、L”は結合または-Z
1-L'-Z
2-であり、Bは生物活性部分B
2であるか、またはL”が結合である場合、BはB-O-Nが生物活性部分B
2であるように定義される)から選択され;
L'は、結合、C
1-20アルキレン、C
1-20アルケニレン、C
1-20アルキニレン、C
6-10アリーレン(例えば、フェニレンまたはナフチレン)、C
7-20アラルキレン、C
3-10シクロアルキレン、C
4-8ヘテロシクロアルキレン、C
5-10ヘテロアリーレン、C
6-20ヘテロアラルキレン、-(O-K)
i-、-(NH-K)
i-、-(NR'-K)
i-、116~2000 Daの分子量を有するポリエステル、114~2000 Daの分子量を有するポリアミド、および部分-W-(ここで、H-W-OHは、アミノ酸または2~20個の天然または合成アミノ酸サブユニットを含むペプチドである)から選択され;
Z
1は、-Z-(C=O)-、-Z-O(C=O)-、-Z-NH(C=O)-、-Z-NR'(C=O)-、-Z-S(C=O)-、-Z-(C=NH)-、-Z-O(C=NH)-、-Z-NH(C=NH)-、-Z-NR'(C=NH)-、-Z-S(C=NH)-および-Z-(C=NR')-、-K-(O-K)
i-、-K-(NH-K)
i-、-K-(NR'-K)
i-、-K(C=O)-(O-K-(C=O))
i-、-K(C=O)-(NH-K-(C=O))
i-、-K(C=O)-(NR'-K-(C=O))
i-、および部分-P-(ここで、H
2N-P-OHは、アミノ酸または2~20個の天然または合成アミノ酸サブユニットを含むペプチドである)から選択され;
Z
2は、結合、-OZ-、-NHZ-、-NR'Z-、-SZ-、-S-、-ZS-、-OZS-、-NHZS-、-NR'ZS-、-SZS-、-Z-(C=O)-、-Z-O(C=O)-、-Z-NH(C=O)-、-Z-NR'(C=O)-、-Z-S(C=O)-、-Z-(C=NH)-、-Z-O(C=NH)-、-Z-NH(C=NH)-、-Z-NR'(C=NH)-、-Z-S(C=NH)-、-Z-(C=NR')-、-Z-O(C=NR')-、-Z-NH(C=NR')-、-Z-NR'(C=NR')-、-Z-S(C=NR')-、-OZ-C=O)-、-OZ-O(C=O)-、-OZ-NH(C=O)-、-OZ-NR'(C=O)-、-OZ-S(C=O)-、-OZ-(C=NH)-、-OZ-O(C=NH)-、-OZ-NH(C=NH)-、-OZ-NR'(C=NH)-、-OZ-S(C=NH)-、-OZ-(C=NR')-、-OZ-O(C=NR')-、-OZ-NH(C=NR')-、-OZ-NR'(C=NR')-、-OZ-S(C=NR')-、-NHZ-(C=O)-、-NHZ-O(C=O)-、-NHZ-NH(C=O)-、-NHZ-NR'(C=O)-、-NHZ-S(C=O)-、-NHZ-(C=NH)-、-NHZ-O(C=NH)-、-NHZ-NH(C=NH)-、-NHZ-NR'(C=NH)-、-NHZ-S(C=NH)-、-NHZ-(C=NR')-、-NHZ-O(C=NR')-、-NHZ-NH(C=NR')-、-NHZ-NR'(C=NR')-、-NHZ-S(C=NR')-、-NR'Z-(C=O)-、-NR'Z-O(C=O)-、-NR'Z-NH(C=O)-、-NR'Z-NR'(C=O)-、-NR'Z-S(C=O)-、-NR'Z-(C=NH)-、-NR'Z-O(C=NH)-、-NR'Z-NH(C=NH)-、-NR'Z-NR'(C=NH)-、-NR'Z-S(C=NH)-、-NR'Z-(C=NR')-、-NR'Z-O(C=NR')-、-NR'Z-NH(C=NR')-、-NR'Z-NR'(C=NR')-、-NR'Z-S(C=NR')-、-SZ-(C=O)-、-SZ-O(C=O)-、-SZ-NH(C=O)-、-SZ-NR'(C=O)-、-SZ-S(C=O)-、-SZ-(C=NH)-、-SZ-O(C=NH)-、-SZ-NH(C=NH)-、-SZ-NR'(C=NH)-、-SZ-S(C=NH)-、-SZ-(C=NR')-、-SZ-O(C=NR')-、-SZ-NH(C=NR')-、-SZ-NR'(C=NR')-、-SZ-S(C=NR')-、-J-O(C=O)-、-O-J-O(C=O)-、-S-J-O(C=O)-、-NH-J-O(C=O)-、-NR'-J-O(C=O)-、76~2000 Daの分子量を有するポリエーテル、例えば、ポリ(アルキレングリコール)、75~2000 Daの分子量を有するポリアミン、116~2000 Daの分子量を有するポリエステル、114~2000 Daの分子量を有するポリアミド、および部分-W-(ここで、H-W-OHは、アミノ酸または2~20個の天然または合成アミノ酸サブユニットを含むペプチドである)から選択され;
Zは、C
1-20アルキレン、C
1-20アルケニレン、C
1-20アルキニレン、C
6-10アリーレン(例えば、フェニレンまたはナフチレン)、C
7-20アラルキレン、C
3-10シクロアルキレン、C
4-8ヘテロシクロアルキレン、C
5-10ヘテロアリーレン、およびC
6-20ヘテロアラルキレンから選択され;
Jは、糖置換基および糖置換基に対してパラまたはオルトにメチレン基または部分-(CH=CH)
k-CH
2-を有するフェニル基であり、ここで、kは1~10の整数であり、さらに、当該メチレン基または部分-(CH=CH)
k-CH
2-は、生物活性部分B
1、B
2またはB
3に近接する-O(C=O)-基に直接結合し、フェニル環の炭素は生物活性部分B
1、B
2またはB
3から遠位にあるリンカー基の残りに直接結合し;
各Kは、同一または異なり、C
1-10アルキレンであり;
iは1~100、好ましくは1~50、より好ましくは2~20の整数であり;
R'は、C
1-20ヒドロカルビルである、請求項1から14または16のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体および医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項19】
疾患または状態の治療を必要とする患者における疾患または状態の治療に使用するための、請求項1から17のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項20】
疾患が、炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症)、代謝障害(例えば、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満)、がん、細菌感染症(例えば、結核、肺炎、心内膜炎、敗血症、サルモネラ症、腸チフス(チフス熱)、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患)、ウイルス感染症、心血管疾患、神経変性疾患、神経障害、行動および精神障害、血液疾患、染色体障害、先天性および遺伝性疾患、結合組織疾患、消化器疾患、耳、鼻および喉の疾患、内分泌疾患、環境疾患、眼疾患、女性生殖器疾患、真菌感染症、心疾患、遺伝性がん症候群、免疫系疾患、腎臓および泌尿器疾患、肺疾患、男性生殖器疾患、口腔疾患、筋骨格系疾患、骨髄異形成症候群、神経系疾患、新生児スクリーニング、栄養疾患、寄生虫疾患、希少がんおよび皮膚疾患から選択される、請求項19に記載の使用のための抗体-薬物複合体。
【請求項21】
ヒト患者における、請求項20で定義される疾患または状態を治療する方法であって、前記方法が、疾患または状態の治療を必要とする患者に、請求項1から17のいずれか1項に記載の少なくとも1つの抗体-薬物複合体を投与することを含む、方法。
【請求項22】
患者における請求項20で定義される疾患または状態の治療のための医薬を製造するための、請求項1から17のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体の使用。
【請求項23】
ポリマーからの前記生物活性部分の放出がpH感受性であり、前記生物活性部分とポリマーの繰り返し単位またはそれが共有結合しているリンカー基との間の結合の性質に依存する、請求項1から17のいずれか1項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項24】
以下を含む標的化剤-薬物複合体:
(i) 標的化剤;
(ii) 式(I')の繰り返し単位を含むポリマー:
【化14】
(式中、
各nおよび各pは独立して0または1~6の整数であり;
各mは独立して0または1~4の整数であり、好ましくは少なくとも1つのmは1であり;
Vは
【化15】
であり;
--------は結合であり、存在しなくても、存在してもよく;
各D
1は独立してOまたはL
1-B
1であり;
各D
2は独立してOまたはL
2-B
2であり;
各D
3は独立してOまたはL
3-B
3であり;
L
1はリンカー基または結合であり、L
2はリンカー基または結合であり、L
3はリンカー基または結合であり、各B
1、B
2およびB
3は生物活性部分であり;
ただし、ポリマー内の少なくとも1つのD
1、D
2またはD
3基はOではなく、さらにD
1、D
2またはD
3がOである場合、O原子とそれが結合する炭素原子の間に二重結合があり;
各qは1~8の整数であり;
XおよびYは、O、NH、NR'およびSから独立して選択され;
R'はC
1-20ヒドロカルビルであり;
Qは-CH
2(NMe(C=O)CH
2)
o-、-T
1O(CH
2CH
2O)
sT
2-および-T
1O(CH
2CH
2CH
2O)
sT
2-から選択され、ここで、T
1は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され、T
2は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され;
oは0~100の整数であり;
sは0~150の整数である);および
(iii) 標的化剤とポリマーの両方に共有結合しているポリマー-標的化剤リンカー。
【請求項25】
標的化剤が、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、抗体、抗原、DNA、mRNA、低分子干渉RNA、低分子ヘアピンRNA、マイクロRNA、PNA、フォルダマー、炭水化物、炭水化物誘導体、非リピンスキー分子、合成ペプチドおよび合成オリゴヌクレオチドから選択される、請求項24に記載の標的化剤-薬物複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、(i)抗体またはその抗原結合フラグメント、(ii)低分子薬物などの1つまたは複数の生物活性部分に、任意にリンカーを介して共有結合している特定の繰り返し単位を含むポリマー、および(iii)ポリマーと抗体またはその抗原結合フラグメントの両方に共有結合しているポリマー-抗体リンカー部分を含む、抗体-薬物複合体に関する。また、本発明は、当該抗体-薬物複合体を含む医薬組成物および当該抗体-薬物複合体の医薬における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
抗体-薬物複合体(ADC)は、非常に強力なバイオ医薬品のクラスであり、さまざまな治療用途を有する。例えば、腫瘍学の分野では、リンカーを介して細胞毒性薬物が結合した抗体を使用して、がん細胞を標的にするためにADCを使用することができる。これらの利点にもかかわらず、ADCの開発は、通常達成できる薬物対抗体比(drug-to-antibody ratio)(DAR)が3~4と低いため、制限されている。多くの場合、従来のADCでは、1つのリンカー当たり1つの薬物しか抗体に結合することができない。この限定により、ADCの治療指数と、ADCで使用できる薬物の範囲が制限される。これは、細胞毒性の高い薬物しか使用できないためである。これはまた、患者の有害反応の有病率を増加させる。さらに、DARを増加させようとする現在までの試みは、ADCの凝集をもたらし、効果がなかった。
【0003】
したがって、高いDARをサポートできるが、高い水溶性および安定性などの望ましい物理化学的特性も併せ持つ新しいADCが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、水溶液中での良好な安定性および高い溶解性を可能にする特定のポリマーリンカーを含むADCを提供する。本発明で使用される特定のポリマーリンカーはまた、高いDARをサポートすることができ、多くの異なる生物活性分子(通常、4以上、8以上、好ましくは12以上、さらにより好ましくは16以上、および最も好ましくは、最大20またはそれ以上の生物活性分子)を単一の抗体にコンジュゲートすることができる。このような高いDARは、治療指数の改善を可能にする。
【0005】
さらに、本発明のADCで使用される特定のポリマーは、複合体からの生物活性分子の放出速度を制御することも可能にし得る。この放出速度は、ADC内の共有ポリマー-薬物またはリンカー-薬物結合の分解に依存する。異なるタイプの共有結合は、異なる条件下(例えば)pHで加水分解する。
【0006】
本発明のADCで使用される特定のポリマーはまた、複数の異なるタイプの薬物部分がポリマーにコンジュゲートされることを可能にする。これは、特に、2つ以上の活性剤を使用する標的併用療法(targeted combination therapy)を達成するのに有用であり得る。併用療法は、腫瘍学および感染症の治療において特に有用である。併用療法で使用される薬物は、しばしば補完的な作用機序および/または相加的または相乗的な治療効果を有する。しかしながら、複数の薬物を使用する治療プロトコルは、常に複雑で集中的である。薬物の頻回投与および一定の時点で幾つかの異なる薬物を同時に投与することは一般的である。このような複雑なプロトコルは、より単純なプロトコルよりも患者のコンプライアンスと忍容性が低い傾向がある。したがって、高いDARと好ましい物理化学的特性を備えた単一の抗体に複数の薬物をコンジュゲートさせる能力は、併用療法の新しい機会を提供する。
【0007】
したがって、本発明は、以下を含む抗体-薬物複合体を提供する:
(i) 抗体またはその抗原結合フラグメント;
(ii) 式(I')の繰り返し単位を含むポリマー:
(式中、
各nおよび各pは独立して0または1~6の整数であり;
各mは独立して0または1~4の整数であり、好ましくは少なくとも1つのmは1であり;
Vは
【0008】
【0009】
であり;
--------は結合であり、存在しなくても、存在してもよく;
各D1は独立してOまたはL1-B1であり;
各D2は独立してOまたはL2-B2であり;
各D3は独立してOまたはL3-B3であり;
L1はリンカー基または結合であり、L2はリンカー基または結合であり、L3はリンカー基または結合であり、各B1、B2およびB3は生物活性部分であり;
ただし、ポリマー内の少なくとも1つのD1、D2またはD3基はOではなく、さらにD1、D2またはD3がOである場合、O原子とそれが結合する炭素原子の間に二重結合があり;
各qは1~8の整数であり;
XおよびYは、O、NH、NR'およびSから独立して選択され;
R'はC1-20ヒドロカルビルであり;
Qは-CH2(NMe(C=O)CH2)o-、-T1O(CH2CH2O)sT2-および-T1O(CH2CH2CH2O)sT2-から選択され、ここで、T1は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され、T2は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され;
oは0~100の整数であり;
sは0~150の整数である);および
(iii) 抗体とポリマーの両方に共有結合しているポリマー-抗体リンカー。
【0010】
好ましくは、ポリマーは式(I)の繰り返し単位を含む:
【0011】
【0012】
(式中、X、Y、D1、D2、D3、n、mおよびpは前記のとおりであり、Qは-T1O(CH2CH2O)sT2-および-T1O(CH2CH2CH2O)sT2-から選択される)。
【0013】
あるいは、ポリマーは式(I'')の繰り返し単位を含む:
【0014】
【0015】
(式中、X、Y、Q、D1、D2、D3、n、mおよびpは前記のとおりである)。好ましくは、式(I'')の繰り返し単位において、QはCH2(NMe(C=O)CH2)o-である。より好ましくは、QはCH2(NMe(C=O)CH2)o-であり、Yは-NMeである。
【0016】
別の態様において、本発明はまた、本発明による抗体-薬物複合体、および医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明はさらに、疾患または状態の治療を必要とする患者における疾患または状態の治療に使用するための、本発明のいずれかによる抗体-薬物複合体を提供する。
【0018】
本発明はさらに、ヒト患者における、本明細書で定義される疾患または状態を治療する方法であって、前記方法が、疾患または状態の治療を必要とする患者に、本発明による少なくとも1つの抗体-薬物複合体を投与することを含む、方法を提供する。
【0019】
本発明はさらに、患者における本明細書で定義される疾患または状態の治療のための医薬を製造するための、本発明による抗体-薬物複合体の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ポリアミド1の合成をモニターしたGPC分布プロット。ステージ2の6時間の時点の反応混合物(ライン1)とステージ2の24時間後の処理済みポリアミド1(ライン2)との間のポリマーの分子量の増加を示す(GPC条件: 2 x (PLgel 10 μm MiniMIX-B 250 x 4.6 mm) カラム, CHCl
3 0.3 ml min-
1, PS標準)。
【
図2】ポリアミド1のSEC分布プロット。SEC条件は次のとおりであった: PL-aquagel-OH 30, 8 μm, 300 x 7.5 mm, H
2O 0.5 ml min
-1, PEG標準。Area 1: M
n = 13.9 kDa; Area 2: M
n = 7.2 kDa; Area 3: M
n = 3.7 kDa; Area 4: M
n = 1.8 kDa; Area 5: M
n= 1 kDa.
【
図3】ポリアミド1の分析RP-HPLCクロマトグラム; Agilent ZORBAX 300SB-C18; 5 μm, 4.6 x 250 mm カラムを使用し、流速1.3 mL min
-1のH
2O (0.1% TFA)およびAcCNを溶出系として、15分間で5%から90%のAcCNのグラジエントで、215 nmでUV-Vis検出。
【
図4】CDCl
3中のポリアミド1の
1H NMR。
【
図5】ポリアミド1のマレイミド官能化をモニターした分析RP-HPLCクロマトグラム(上のパネルt=0 (ポリアミド1)、下のパネル マレイミド官能化後(ポリアミド2)); Agilent ZORBAX 300SB-C18; 5 μm, 4.6 x 250 mm カラムを使用し、流速1.3 mL min
-1のH
2O (0.1% TFA)およびACNを溶出系として、15分間で5%から90%のAcCNのグラジエントで、215 nmでUV-Vis検出。
【
図6】ポリアミド2のRP-HPLCセミ分取クロマトグラム; Agilent ZORBAX 300SB-C18; 5 μm; 9.4 x 250 mm カラムを使用し、流速4 mL min
-1のH
2O (0.1% TFA)およびAcCNを溶出系として、13分間で30%から56%のAcCNのグラジエントで、215 nmでUV-Vis検出。垂直線はフラクションコレクション領域を示す。
【
図7】セミ分取RP-HPLCによって精製されたポリアミド2の分析RP-HPLCクロマトグラム。使用したカラムは、Agilent ZORBAX 300SB-C18; 5 μm, 4.6 x 250 mm、流速1.3mL min
-1のH
2O (0.1% TFA)およびAcCNを溶出系として、15分間で5%から90%のAcCNのグラジエントで、215 nm(上)および250 nm(下)でUV-Vis検出。
【
図8】215 nmで観察された、粗製ポリマー(ライン1)と比較した、セミ分取RP-HPLCによって精製されたポリアミド2(ライン2)の分析RP-HPLCクロマトグラム。使用したカラムは、Agilent ZORBAX 300SB-C18; 5 μm, 4.6 x 250mm、流速1.3 mL min
-1のH
2O (0.1% TFA)およびAcCN を溶出系として、15分間で5%から90%のAcCNのグラジエント。
【
図9】CDCl
3中の、RP-HPLCによる精製後のポリアミド2の
1H NMR。
【
図10】水中の、50 mg mL-1の粗製(左)およびRP-HPLCで精製された(右)ポリアミド2。
【
図11】MMAE 5のm/z = 598.95でのピークを示すLC-MSスペクトル。
【
図12】CD
3CN中の、RP-HPLCによる精製後のポリマー-MMAE複合体6の
1H NMR。
【
図13】MMAEポリアミド トラスツズマブ ADC(ハーセプチン-MMAE-ポリマー複合体)での細胞生存率アッセイ
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される場合、用語「ポリマー」は、繰り返し単位を含む化合物を指す。ポリマーは通常、1より大きい多分散性を有する。ポリマーは一般に、主鎖(backbone)、側鎖(side chain)および末端(termini)を含む。主鎖は、すべての側鎖がペンダント基である線形鎖(linear chain)である。側鎖は、主鎖のペンダント基であるか、主鎖から分岐している基である。末端は主鎖の終端である。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「生物活性部分」は、水素ラジカルの引き抜きによって生物活性分子に由来する任意の部分を指す。「生物活性分子」は、インビボに投与された場合に生化学的応答を誘導することができる任意の分子である。典型的には、生物活性分子は、動物(または、好ましくはヒト)に投与されると、局所または全身の生化学的反応を引き起こすことができる。好ましくは、局所または全身の反応は治療活性である。生物活性分子の好ましい例には、薬物、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、抗体、抗原、DNA、RNA、mRNA、低分子干渉RNA、低分子ヘアピンRNA、マイクロRNA、PNA、フォルダマー、炭水化物、炭水化物誘導体、非リピンスキー分子、合成ペプチドおよび合成オリゴヌクレオチドが含まれ、最も好ましくは、低分子薬物である。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「低分子薬物」は、ヒトなどの動物に対して既知の生物学的効果を有する化合物を指す。典型的には、薬物は、疾患の治療、予防または診断に使用される化合物である。好ましい低分子薬物は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおいて局所的または全身的効果をもたらすという点で生物学的に活性である。低分子薬物は、「薬物分子」または「薬物」と呼ばれることがある。典型的には、薬物分子は、約5 kDa以下のMwを有する。好ましくは、薬物分子は、約1.5 kDa以下のMwを有する。完全ではないが、本発明での使用に適したクラスおよび特定の薬物のより完全なリストは、“Pharmaceutical Substances: Syntheses, Patents, Applications”, Axel KleemannおよびJurgen Engel著, Thieme Medical Publishing, 1999および“Merck Index: An Encyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals”, Susan Budavari et al.編, CRC Press, 1996(これらは両方とも言及によりその全体が本明細書に組み入れられる)に見出すことができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」は、ペプチド(アミド)結合によって連結された、生物学的に発生する、または合成されたアミノ酸モノマーの短鎖を指す。あるアミノ酸のカルボキシル基が別のアミノ酸のアミノ基と反応すると、共有化学結合が形成される。最も短いペプチドは、単一のペプチド結合によって結合された2つのアミノ酸からなるジペプチドであり、トリペプチド、テトラペプチドなどが続く。ポリペプチドは、長い、連続した、枝分かれのないペプチド鎖である。したがって、ペプチドは、核酸、オリゴ糖および多糖などと並んで、生物学的オリゴマーおよびポリマーの幅広い化学的クラスに分類される。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、任意の天然または合成アミノ酸、即ち、炭素、水素、酸素および窒素原子を含み、アミノ(-NH2)およびカルボン酸(-COOH)官能基の両方を含む有機化合物を指す。典型的には、アミノ酸はα-、β-、γ-またはδ-アミノ酸である。好ましくは、アミノ酸は、22種類の天然タンパク質構成α-アミノ酸の1つである。あるいは、アミノ酸は、α-アミノ-n-酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、アロイソロイシン、t-ロイシン、α-アミノ-n-ヘプタン酸、ピペコリン酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、オルニチン、アロスレオニン、ホモシステイン、ホモセリン、β-アラニン、β-アミノ-n-酪酸、β-アミノイソ酪酸、γ-アミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、イソバリン、サルコシン、N-エチルグリシン、N-プロピルグリシン、N-イソプロピルグリシン、N-メチルアラニン、N-エチルアラニン、N-メチルβ-アラニン、N-エチルβ-アラニン、イソセリン、α-ヒドロキシ-γ-アミノ酪酸、ホモノルロイシン、O-メチル-ホモセリン、O-エチル-ホモセリン、セレノホモシステイン、セレノメチオニン、セレノエチオニン、カルボキシグルタミン酸、ヒドロキシプロリン、ヒプシン、ピログルタミン酸、アミノイソ酪酸、デヒドロアラニン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、δ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸、シトルリン、2,3-ジアミノプロパン酸および3-アミノプロパン酸から選択される合成アミノ酸である。不斉中心(stereogenic centre)を有するアミノ酸は、単一のエナンチオマーまたはエナンチオマーの混合物(例えば、ラセミ混合物)として存在し得る。好ましくは、アミノ酸がα-アミノ酸である場合、アミノ酸はα-炭素不斉中心に関してL立体化学を有する。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」は、サイズに基づいてペプチドと区別されるアミノ酸モノマーのポリマーを含む生体分子を指し、任意の基準(benchmark)として、約50以上のアミノ酸を含むと理解することができる。タンパク質は、生物学的に機能的な方法で配置された1つまたは複数のポリペプチドで構成され、多くの場合、補酵素や補因子などのリガンド、または別のタンパク質または他の高分子(DNA、RNAなど)、または複合高分子アセンブリに結合している。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド模倣物」は、ペプチドを模倣するように設計された小さなタンパク質様鎖を指す。それらは、典型的には、既存のペプチドの修飾から、またはペプトイドやβ-ペプチドなどのペプチドを模倣する同様のシステムを設計することによって発生する。アプローチに関係なく、変更された化学構造は、安定性や生物活性などの分子特性を有利に調整するように設計されている。これは、既存のペプチドからのドラッグライクな化合物(drug-like compounds)の開発において役割を有し得る。これらの修飾には、自然には発生しないペプチドへの変更が含まれる(主鎖の変更や非天然アミノ酸の取り込みなど)。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「mRNA」は、遺伝子発現のタンパク質産物のアミノ酸配列を指定する、DNAからリボソームに遺伝情報を伝達するRNA分子のファミリーであるメッセンジャーRNAを指す。RNAポリメラーゼによる一次転写mRNA(プレmRNAとして知られる)の転写に続いて、プロセシングされ、成熟したmRNAは、アミノ酸のポリマー、即ちタンパク質に翻訳される。DNAの場合と同様に、mRNAの遺伝情報はヌクレオチドの配列にあり、それぞれ3つの塩基からなるコドンに配置されている。各コドンは、タンパク質合成を終了させる終止コドンを除いて、特定のアミノ酸をコードする。コドンからアミノ酸へのこの翻訳プロセスには、コドンの認識を仲介し、対応するアミノ酸を提供する転移RNA(tRNA)と、リボソームのタンパク質製造機構の中心的な構成要素であるリボソームRNA(rRNA)の他の2種類のRNAが必要である。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「低分子干渉RNA」(siRNA)は、20~25塩基対の長さの二本鎖RNA分子のクラスを指す。siRNAは多くの役割を果たすが、RNA干渉(RNAi)経路で最も顕著であり、相補的なヌクレオチド配列を持つ特定の遺伝子の発現を抑制する。siRNAは、転写後にmRNAを分解し、翻訳されないことで機能する。siRNAはまた、RNAi関連経路、例えば抗ウイルス機構として、またはゲノムのクロマチン構造を形成する際に作用する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「低分子ヘアピンRNA」(shRNA)は、RNA干渉(RNAi)を介して標的遺伝子発現をサイレンシングするために使用できるタイトなヘアピンターンを有する人工RNA分子を指す。細胞内でのshRNAの発現は、典型的には、プラスミドの送達によって、またはウイルスまたは細菌のベクターを介して達成される。shRNAは、分解とターンオーバーが比較的遅いという点で、RNAiの有利なメディエーターである。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「マイクロRNA」(miRNA)は、植物、動物、および一部のウイルスに見られる小さな非コードRNA分子(約22ヌクレオチドを含む)を指し、RNAサイレンシングおよび遺伝子発現の転写後調節において機能する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「PNA」は、1991年にPeter E. Nielsen (コペンハーゲン大学)、Michael Egholm (コペンハーゲン大学)、Rolf H. Berg (Riso National Lab)、およびOle Buchardt (コペンハーゲン大学)により発明された、DNAまたはRNAに類似する人工的に合成されたポリマーであるペプチド核酸を指す。PNAの主鎖は、ペプチド結合によって連結されたN-(2-アミノエチル)-グリシン単位の繰り返しで構成されている。さまざまなプリンおよびピリミジン塩基が、メチレンブリッジ(-CH2-)とカルボニル基(-(C=O)-)によって主鎖に結合している。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「DNA」は、デオキシリボ核酸およびその誘導体を指し、すべての既知の生物および多くのウイルスの発生、機能および再生に使用される遺伝的指示のほとんどを運ぶ分子である。ほとんどのDNA分子は、二重らせんを形成するために互いに巻き付いた2つの生体高分子鎖で構成されている。2本のDNA鎖は、ヌクレオチドと呼ばれるより単純な単位で構成されているため、ポリヌクレオチドとして知られている。各ヌクレオチドは、窒素を含む核酸塩基(シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、またはチミン(T))と、デオキシリボースと呼ばれる単糖とリン酸基で構成されている。ヌクレオチドは、1つのヌクレオチドの糖と次のヌクレオチドのリン酸との間の共有結合によって鎖の中で互いに結合し、結果として交互の糖-リン酸主鎖が形成される。塩基対のルール(AとT、およびCとG)により、水素結合は2つの別々のポリヌクレオチド鎖の窒素含有塩基に結合して、二本鎖DNAを作る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「フォルダマー」は、溶液中で立体構造的に秩序立った状態で折りたたまれている不連続な鎖状分子またはオリゴマーを指す。それらは、タンパク質、核酸、および多糖類がヘリックスやβシートなどの明確に定義されたコンフォメーションに折りたたまれる能力を模倣した人工分子である。フォルダマーの構造は、隣接していないモノマー間の非共有相互作用によって安定化される。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「炭水化物」は、炭素(C)、水素(H)および酸素(O)原子からなる生体分子を指し、通常、水素:酸素原子の比率は2:1(水のように);言い換えれば、実験式(empirical formula)Cm(H2O)n(ここで、mはnと異なっていてもよい)を有する。いくつかの例外があり、例えば、DNAの糖成分であるデオキシリボースは、実験式C5H10O4を有する。炭水化物は技術的には炭素の水和物であり;構造的には、ポリヒドロキシアルデヒドおよびケトンと見るのがより正確である。この用語は生化学において最も一般的であり、糖、デンプン、およびセルロースを含むグループであるサッカライドの同義語である。サッカライドは、単糖、二糖、オリゴ糖、および多糖の4つの化学グループに分けられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「非リピンスキー分子」は、リピンスキーのルールオブファイブ(ファイザーのルールオブファイブまたは単にルールオブファイブ(R05)としても知られる)に適合しない分子を指す。リピンスキーのルールオブファイブは、ドラッグライクネス(drug-likeness)を評価したり、または特定の薬理学的または生物学的活性を有する化合物が、ヒトの経口薬として活性である可能性が高い特性を有しているかを判断したりするための経験則である。このルールは、経口投与されるほとんどの薬物が比較的小さく、適度に親油性の分子であるという観察に基づいて、1997年にChristopher A. Lipinskiによって提唱された。このルールは、吸収、分布、代謝、および排泄(「ADME」)を含む、人体における薬物動態に重要な分子特性を説明する。しかしながら、このルールでは、化合物が薬理学的に活性であるかは予測されない。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「酸に不安定(acid-labile)」は、酸性条件、例えば、7未満のpHで切断される結合を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「直接結合」は、介在する原子がないことを意味する。したがって、例えば、繰り返し単位と薬物との間の直接結合は、薬物の官能基が繰り返し単位の原子に結合していること、すなわち、間に連結基(linking group)を使用しないことを意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「C1-20ヒドロカルビル」は、水素および1~20個の炭素原子を含む任意の一価炭化水素基を指す。したがって、ヒドロカルビル基は炭素および水素からなる。ヒドロカルビル基の例には、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、およびアルキニル基が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、接頭辞に示された数の炭素原子を有する直鎖または分岐の飽和一価炭化水素基を指す。したがって、用語「C1-4アルキル」は、1~4個の炭素原子の直鎖の飽和一価炭化水素基、または3個もしくは4個の炭素原子の分岐の飽和一価炭化水素基を指し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチルおよびtert-ブチルが挙げられる。好ましくは、アルキル基はC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-12アルキル基であり、さらにより好ましくはC1-8アルキル基であり、最も好ましくはC1-4アルキル基である。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」は、接頭辞に示された数の炭素原子を有する直鎖の飽和二価炭化水素基または分岐の飽和二価炭化水素基を指し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどが挙げられる。好ましくは、アルキレン基はC1-20アルキレン基であり、より好ましくはC1-12アルキレン基であり、さらにより好ましくはC1-8アルキレン基であり、最も好ましくはC1-4アルキレン基である。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、接頭辞に示された数の炭素原子を有し、少なくとも1個の二重結合を含む、直鎖または分岐の飽和一価炭化水素基を指す。したがって、用語「C2-6アルケニル」は、少なくとも1個の二重結合を有する2~6個の炭素原子の直鎖の飽和一価炭化水素基、または少なくとも1個の二重結合を有する3~6個の炭素原子の分岐の飽和一価炭化水素基を指し、例えば、エテニル、プロペニル、1,3-ブタジエニル、(CH2)2CH=C(CH3)2、CH2CH=CHCH(CH3)2などが挙げられる。好ましくは、アルケニル基はC2-20アルケニル基であり、より好ましくはC2-12アルケニル基であり、さらにより好ましくはC2-8アルケニル基であり、最も好ましくはC2-4アルケニル基である。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニレン」は、接頭辞に示された数の炭素原子を有し、少なくとも1個の二重結合を含む直鎖の飽和二価炭化水素基または分岐の飽和二価炭化水素基を指し、例えば、エテニレン、プロペニレン、1-メチルプロペニレン、2-メチルプロペニレン、ブテニレン、ペンテニレンなどが挙げられる。好ましくは、アルケニレン基は、C2-20アルケニレン基であり、より好ましくはC2-12アルケニレン基であり、さらにより好ましくはC2-8アルケニレン基であり、最も好ましくはC2-4アルケニレン基である。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニル」は、接頭辞に示された数の炭素原子を有し、少なくとも1個の三重結合を含む、直鎖または分岐の飽和一価炭化水素基を指す。したがって、用語「C2-6アルキニル」は、少なくとも1個の三重結合を有する2~6個の炭素原子の直鎖の飽和一価炭化水素基、または少なくとも1個の二重結合を有する4~6個の炭素原子の分岐の飽和一価炭化水素基を指し、例えば、エチニル、プロピニルなどが挙げられる。好ましくは、アルキニル基はC2-20アルキニル基であり、より好ましくはC2-12アルキニル基であり、さらにより好ましくはC2-8アルキニル基であり、最も好ましくはC2-4アルキニル基である。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニレン」は、接頭辞に示された数の炭素原子を有し、少なくとも1個の三重結合を含む直鎖の飽和二価炭化水素基または分岐の飽和二価炭化水素基を指し、例えば、エチニレン、プロピニレン、1-メチルプロピニレン、2-メチルプロピニレン、ブチニレン、ペンチニレンなどが挙げられる。好ましくは、アルキニレン基はC2-20アルキニレン基であり、より好ましくはC2-12アルキニレン基であり、さらに好ましくはC2-8アルキニレン基であり、最も好ましくはC2-4アルキニレン基である。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、3~10個の炭素原子の環状の飽和一価炭化水素基を指し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルなどが挙げられる。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキレン」は、3~10個の炭素原子の環状の飽和二価炭化水素基を指し、例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、またはシクロヘキシレンなどが挙げられる。好ましくは、シクロアルキレン基はC3-10シクロアルキレン基であり、より好ましくはC3-8シクロアルキレン基であり、最も好ましくはC3-6シクロアルキレン基である。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロシクリル」は、4~8個の環原子(そのうち1個または2個の環原子はN、O、またはS(O)nから選択されるヘテロ原子であり、nは0~2の整数であり、残りの環原子はCである)の飽和または不飽和の一価単環式基を指す。ヘテロシクリル環は、本明細書で定義される(1個の)アリールまたはヘテロアリール環と縮合していてもよい。ただし、当該アリールおよびヘテロアリール環は単環式である。さらに、ヘテロシクリル環の1個または2個の環炭素原子は、-CO-基で任意に置き換えることができる。より具体的には、用語ヘテロシクリルは、ピロリジノ、ピペリジノ、ホモピペリジノ、2-オキソピロリジニル、2-オキソピペリジニル、モルホリノ、ピペラジノ、テトラヒドロピラニル、チオモルホリノなどを含むが、これらに限定されない。ヘテロシクリル環が不飽和の場合、1個または2個の環二重結合を含むことができる。ただし、当該環は芳香族ではない。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロシクリレン」は、4~8個の環原子(そのうち1個または2個の環原子はN、O、またはS(O)nから選択されるヘテロ原子であり、nは0~2の整数であり、残りの環原子はCである)の飽和または不飽和の二価単環式基を指す。ヘテロシクリレン環は、本明細書で定義される(1個の)アリールまたはヘテロアリール環と縮合していてもよい。ただし、当該アリールおよびヘテロアリール環は単環式である。さらに、ヘテロシクリレン環の1個または2個の環炭素原子は、-CO-基で任意に置き換えることができる。より具体的には、用語ヘテロシクリレンは、ピロリジニレン、ピペリジニレン、ホモピペリジニレン、2-オキソピロリジニレン、2-オキソピペリジニレン、モルホリニレン、ピペラジニレン、テトラヒドロピラニレン、チオモルホリニレンなどを含むが、これらに限定されない。ヘテロシクリレン環が不飽和の場合、1個または2個の環二重結合を含むことができる。ただし、当該環は芳香族ではない。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、6~10個の環原子の一価の単環式または二環式芳香族炭化水素基、例えば、フェニルまたはナフチルなどを指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「アリーレン」は、6~10個の環原子の二価の単環式または二環式芳香族炭化水素基、例えばフェニルまたはナフチルなどを指す。好ましくは、アリーレン基はフェニレンまたはナフチレンである。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「アラルキル」は、-(アルキレン)-R基を指し、ここでRは上記で定義したアリールである。好ましくは、アルキレン基は、C1-20アルキレン基であり、より好ましくはC1-12アルキレン基であり、さらにより好ましくはC1-8アルキレン基であり、最も好ましくはC1-4アルキレン基である。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「アラルキレン」は、-(アルキレン)-R二価基を指し、ここでRは上記で定義したアリーレンである。好ましくは、アラルキレン基はC7-20アラルキレン基であり、より好ましくはC7-14アラルキレン基であり、最も好ましくはC7-10アラルキレン基である。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」は、5~10個の環原子(そのうち1個以上、好ましくは1個、2個、または3個の環原子はN、O、またはSから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である)の一価の単環式または二環式芳香族基を指す。代表的な例は、ピロリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、フラニル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリルなどを含むが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリーレン」は、5~10個の環原子(そのうち1個以上、好ましくは1個、2個、または3個の環原子はN、O、またはSから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である)の二価の単環式または二環式芳香族基を指す。代表的な例は、ピロリレン、チエニレン、チアゾリレン、イミダゾリレン、フラニレン、インドリレン、イソインドリレン、オキサゾリレン、イソオキサゾリレン、ベンゾチアゾリレン、ベンゾオキサゾリレン、キノリニレン、イソキノリニレン、ピリジニレン、ピリミジニレン、ピラジニレン、ピリダジニレン、トリアゾリレン、テトラゾリレンなどを含むが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアラルキル」は、-(アルキレン)-R基を指し、ここでRは上記で定義したヘテロアリールである。好ましいアルキレン基は、上記のアラルキル基について上記で定義したとおりである。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアラルキレン」は、-(アルキレン)-R二価基を指し、ここでRは上記で定義したヘテロアリーレンである。好ましくは、ヘテロアラルキレン基はC6-20ヘテロアラルキレン基であり、より好ましくはC6-14ヘテロアラルキレン基であり、最も好ましくはC6-10ヘテロアラルキレン基である。
【0058】
アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニル、アルキニレン、シクロアルキル、シクロアルキレン、ヘテロシクリル、ヘテロシクリレン、アリール、アリーレン、アラルキル、アラルキレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、ヘテロアラルキルおよびヘテロアラルキレン基に存在し得る任意の置換基は、C1-16アルキルまたはC1-16シクロアルキル(ここで、1個以上の隣接しないC原子がO、S、N、C=Oおよび-COO-で置き換えられてもよい)、置換または非置換C5-14アリール、置換または非置換C5-14ヘテロアリール、C1-16アルコキシ、C1-16アルキルチオ、ハロ、シアノおよびアラルキルを含む。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「アルコキシ」は、-OR基を指し、ここでRは上記で定義したアルキルであり、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、iso-ブトキシ、tert-ブトキシなどである。好ましくは、アルコキシ基はC1-20アルコキシ基であり、より好ましくはC1-12アルコキシ基であり、さらにより好ましくはC1-8アルコキシ基であり、最も好ましくはC1-4アルコキシ基である。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「アルキルチオ」は、-SR基を指し、ここでRは上記で定義したアルキルである。好ましくは、アルキルチオ基はC1-20アルキルチオ基であり、より好ましくはC1-12アルキルチオ基であり、さらにより好ましくはC1-8アルキルチオ基であり、最も好ましくはC1-4アルキルチオ基である。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード、好ましくはフルオロまたはクロロを指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「ケト基」は、カルボニル基を指し、ここで、カルボニルの炭素原子は2個の炭素原子にも結合している。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドラジン」は、式-NH-NH2の基を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドラジド」は、式R'(CO)-NH-NH2の基を指し、ここで、R'は水素またはC1-20ヒドロカルビルであってよい。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドラゾン」は、式=N-NH-の基を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「アミン」は、式-NH2、NHRまたはNR2の基を指し、ここで、RはC1-20ヒドロカルビル基である。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「イミン」は、式=N-の基を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシル」は、式-OHの基を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「ケタール」は、式-C(OR)2-の基を指し、各RはC1-20ヒドロカルビルであるか、または2つのR基が一緒になってヒドロカルビル環を形成する。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「チオール」は、式-SHの基を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「チオケタール」は、式-C(SR)2-の基を指し、ここで各RはC1-20ヒドロカルビルであるか、または2つのR基が一緒になってヒドロカルビル環を形成する。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「オキシム」は、式=N-O-の基を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「アミノキシ」または「ヒドロキシルアミン」は、式-O-NH2の基を指す。RO-NH2は、アルコキシルアミンを指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「Mn」は、ポリマーに適用される場合、ポリマーの数平均分子量を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「Mw」は、ポリマーに適用される場合、ポリマーの重量平均分子量を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「多分散性(polydispersity)」(PDまたは
【0077】
【0078】
とも呼ばれる)は、ポリマーの重量平均分子量と数平均分子量の比、すなわち、
【0079】
【0080】
を指す。これは、ポリマーサンプルの均一性の尺度である。低い多分散性は、ポリマーサンプル内の分子質量(molecular mass)の分布が狭いことを示し、高い多分散性は、ポリマーサンプル内の分子質量の分布が広いことを示す。
【0081】
抗体-薬物複合体
本発明は、(i)抗体またはその抗原結合フラグメント、(ii)低分子薬物などの1つまたは複数の生物活性部分に、任意にリンカーを介して共有結合している特定の繰り返し単位を含むポリマー、および(iii)ポリマーと抗体またはその抗原結合フラグメントの両方に共有結合しているポリマー-抗体リンカー部分を含む、抗体-薬物複合体に関する。生物活性部分をポリマー繰り返し単位に結合するためのリンカー基は、当技術分野でよく知られている。有利には、生物活性部分は、ポリマーと生物活性部分との間、またはリンカー基と生物活性部分との間の共有結合が切断されるまで、例えば、加水分解されるまで、ポリマーから放出されない。したがって、生物活性部分の放出位置および生物活性部分の放出速度は、ADCを作用部位に向ける抗体を選択し、ポリマーと生物活性部分の間、またはリンカー基と生物活性部分の間の結合の性質を調整することによって制御できる。
【0082】
本発明の抗体-薬物複合体は、以下を含む:
(i) 抗体またはその抗原結合フラグメント;
(ii) 式(I')の繰り返し単位を含むポリマー:
【0083】
【化4】
(式中、
各nおよび各pは独立して0または1~6の整数であり;
各mは独立して0または1~4の整数であり、好ましくは少なくとも1つのmは1であり;
Vは
【0084】
【0085】
であり;
--------は結合であり、存在しなくても、存在してもよく;
各D1は独立してOまたはL1-B1であり;
各D2は独立してOまたはL2-B2であり;
各D3は独立してOまたはL3-B3であり;
ここで、L1はリンカー基または結合であり、L2はリンカー基または結合であり、L3はリンカー基または結合であり、各B1、B2およびB3は生物活性部分であり;
ただし、ポリマー内の少なくとも1つのD1、D2またはD3基はOではなく、さらにD1、D2またはD3がOである場合、O原子とそれが結合する炭素原子の間に二重結合があり;
各qは1~8の整数であり;
XおよびYは、O、NH、NR'およびSから独立して選択され;
R'はC1-20ヒドロカルビルであり;
Qは-CH2(NMe(C=O)CH2)o-、-T1O(CH2CH2O)sT2-および-T1O(CH2CH2CH2O)sT2-から選択され、ここで、T1は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され、T2は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され;
oは0~100の整数であり;
sは0~150の整数である);および
(iii) 抗体とポリマーの両方に共有結合しているポリマー-抗体リンカー。
【0086】
好ましくは、ポリマーは式(I)の繰り返し単位を含む:
【0087】
【0088】
(式中、X、Y、D1、D2、D3、n、mおよびpは前記のとおりであり、Qは-T1O(CH2CH2O)sT2-および-T1O(CH2CH2CH2O)sT2-から選択される)。
【0089】
あるいは、ポリマーは式(I'')の繰り返し単位を含む:
【0090】
【0091】
(式中、X、Y、Q、D1、D2、D3、n、mおよびpは前記のとおりである)。好ましくは、式(I'')の繰り返し単位において、QはCH2(NMe(C=O)CH2)o-である。より好ましくは、QはCH2(NMe(C=O)CH2)o-であり、Yは-NMeである。
【0092】
抗体の構造的特徴
このセクションは、本発明の抗体-薬物複合体中に存在する抗体の可能な構造的特徴を説明する。
【0093】
本明細書で言及される用語「抗体」は、抗体全体および任意の抗原結合フラグメント(即ち、「抗原結合部分」)またはその単鎖、ならびにそれらの変異体を含む。抗体は、免疫グロブリン(Ig)と呼ばれることもある。抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)および重鎖定常領域から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)および軽鎖定常領域から構成される。重鎖と軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗原は、動物の体の免疫系に免疫応答を引き起こす任意の物質、例えば、化学物質、細菌、ウイルスまたは花粉である。VHおよびVL領域は、さらに相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する領域に細分することができる。抗体の定常領域は、免疫系のさまざまな細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0094】
抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってよい。典型的には、抗体はモノクローナル抗体である。あるいは、抗体はポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、異なるB細胞株に由来する抗体である。ポリクローナル抗体は、特定の抗原に対する異なる免疫グロブリン分子の混合物を含んでよい。ポリクローナル抗体は、抗原分子内の1つまたは複数の異なるエピトープに結合する異なる免疫グロブリン分子の混合物を含んでよい。ポリクローナル抗体は、目的の抗原による免疫化などの通常の方法によって製造することができる。例えば、抗体を発現できるマウスまたはヒツジを、免疫原性複合体で免疫化することができる。これらの動物は、任意にヒト抗体配列を発現することができてもよい。その後、血液を採取し、Ig画分を精製してポリクローナル抗体を抽出することができる。
【0095】
モノクローナル抗体(mAb)は、互いに同一の免疫グロブリン分子であり、特定のエピトープに対して単一の結合特異性と親和性を有する。本発明の抗体-薬物複合体に有用なmAbは、例えば、“Monoclonal Antibodies; A manual of techniques”, H Zola (CRC Press, 1988)および“Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Application”, SGR Hurrell (CRC Press, 1982)に開示される、従来のモノクローナル抗体方法論を含むさまざまな技術によって製造することができる。
【0096】
抗体の「抗原結合部分」という用語は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドのような抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合フラグメントの例には、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメントおよび単離された相補性決定領域 (CDR)が含まれる。scFvのような単鎖抗体ならびにVHHおよびラクダ科動物の抗体のような重鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれるものとする。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られている従来の技術を使用して得ることができ、フラグメントは、インタクト抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングすることができる。
【0097】
本明細書で定義される抗体「フラグメント」は、切断によって、例えば、そのNおよび/またはC末端から1つまたは複数のアミノ酸を除去することによって作製され得る。このようにして、最大10、最大20、最大30、最大40またはそれ以上のアミノ酸をN末端および/またはC末端から除去することができる。フラグメントは、1つまたは複数の内部欠失によっても生成され得る。フラグメントは、抗体または抗体変異体配列からの少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも105、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300または少なくとも400の連続したアミノ酸を含み得る。
【0098】
好ましくは、本発明の抗体-薬物複合体中の抗体は、ゲムツズマブ(Gemtuzumab)hP67.6ヒト化IgG4、ブレンツキシマブ(Brentuximab)キメラIgG1、トラスツズマブ(Trastuzumab)ヒト化IgG1、イノツズマブ(Inotuzumab)G5/44ヒト化IgG4、グレムバツムマブ(Glembatumumab)完全ヒトIgG1、アネツマブ(Anetumab)抗メソテリン完全ヒトIgG1、ミルベツキシマブ(Mirvetuximab)M9346Aヒト化IgG1、デパツキシズマブ(Depatuxizumab)(ABT-806)ヒト化IgG1、ロバルピツズマブ(Rovalpituzumab)(SC16)ヒト化IgG1、およびバダスツキシマブ(Vadastuximab)ヒト化IgG1から選択される。
【0099】
ポリマーの構造的特徴
このセクションは、本発明の抗体-薬物複合体中に存在するポリマーの可能な構造的特徴を説明する。
本発明の抗体-薬物複合体のポリマーは、以下に由来するか:
(i) 式(IIa)の化合物:
【0100】
【0101】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して脱離基であり、n、m、p、qおよびR'は、式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位について上記で定義したとおりである);
(ii) 式(IIb)の化合物:
【0102】
【0103】
(式中、X'およびY'は、OH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'およびNR'2から独立して選択され、QおよびR'は、式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位について上記で定義したとおりである);
(iii) 1つまたは複数の生物活性分子;および
(iv) 任意で、HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LGから選択される1つまたは複数の化合物(式中、L1はリンカー基であり、L2はリンカー基であり、L3はリンカー基であり、およびLGは付加脱離反応条件下での脱離基である);または
【0104】
以下に由来する:
(i) 式(IIa')の化合物:
【0105】
【0106】
(式中、R1は脱離基であり、X'はOH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'およびNR'2から選択され、n、m、p、qおよびR'は、式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位について上記で定義したとおりである);
(ii) 式(IIb')の化合物:
【0107】
【0108】
(式中、R2は脱離基であり、Y'はOH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'およびNR'2から選択され、QおよびR'は、式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位について上記で定義したとおりである);
(iii) 1つまたは複数の生物活性分子;および
(iv) 任意で、HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LGから選択される1つまたは複数の化合物(式中、L1はリンカー基であり、L2はリンカー基であり、L3はリンカー基であり、およびLGは付加脱離反応条件下での脱離基である)。
【0109】
本発明の抗体-薬物複合体のポリマーにおいて、qは1、2、3、4、5、6、7または8であってよい。しかし、好ましくは、qは1、2または3であり、さらにより好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。qが1より大きい整数である場合、式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位に存在する各n、mおよびpは、同一でも異なっていてもよい。
【0110】
好ましくは、qは1である。したがって、好ましくは、本発明の抗体-薬物複合体のポリマーは、式(IIc)または式(IIc')の化合物に由来する:
【0111】
【0112】
(式中、R1、R2、R'、X'、n、mおよびpは、式(IIa)および式(IIa')に関して上記で定義したとおりである)。
【0113】
本発明の抗体-薬物複合体のポリマーにおいて、各mは0、1、2、3または4であってよい。ただし、少なくとも1つのmは1、2、3または4である。好ましくは、少なくとも1つのmは1である。これにより、少なくとも1つのケト基が式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位に確実に存在する。好ましくは、各mは1または2であり、さらにより好ましくは各mは1である。mが1であり、nおよびpの両方が1以上である場合、ケト基は少なくとも1つの炭素原子によって離れており、これによりポリマーに結合した生物活性部分間の立体衝突が回避されると考えられる。
【0114】
本発明の抗体-薬物複合体のポリマーにおいて、各nは0、1、2、3、4、5または6である。好ましくは、各nは1、2または3であり、さらにより好ましくは1または2である。本発明の抗体-薬物複合体のポリマーにおいて、各pは0、1、2、3、4、5または6である。好ましくは、各pは0、1または2であり、さらにより好ましくは0または1である。なおより好ましくは、各pは0である。nおよびp基は、ケト基から間隔を置き、比較的多量の生物活性分子をポリマーに共有結合させることを有利に可能にする。
【0115】
ポリマーは、好ましくは、式(IIa)、(IIa')、(IIc)または(IIc')の化合物に由来する(式中、R1は、Cl、OH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'、NR'2、O-2-Cl-Trt、ODmb、O-2-PhiPr、O-EDOTn-Ph、OFm、ODmabおよびOCamから選択される)。さらにより好ましくは、R1は、OMe、OEt、OtBu、O-2-Cl-Trt、ODmb、O-2-PhiPr、O-EDOTn-Ph、OFm、ODmabおよびOCamから選択される。さらに好ましいポリマーは、式(IIa)または(IIc)の化合物、または式(IIb')の化合物に由来する(式中、R2は、Cl、OH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'、NR'2、O-2-Cl-Trt、ODmb、O-2-PhiPr、O-アリール-EDOTn、OFm、ODmabおよびOCamから選択される)。さらにより好ましくは、R2は、OMe、OEt、OtBu、O-2-Cl-Trt、ODmb、O-2-PhiPr、O-EDOTn-Ph、OFm、ODmabおよびOCamから選択される。R1およびR2は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。さらに好ましくはR1およびR2の両方がOMe、OEt、OtBu、O-2-Cl-Trt、ODmb、O-2-PhiPr、O-アリール-EDOTn、OFm、ODmabおよびOCamから選択される。式(IIa')の化合物の例は、アミノ-2-ケト酪酸である。
【0116】
本明細書で定義されるとおり、2-Cl-Trtは2-クロロトリチルを指す。本明細書で定義されるとおり、Dmbは2,4-ジメトキシベンジルを指す。本明細書で定義されるとおり、2-PhiPrは2-フェニルイソプロピルを指す。本明細書で定義されるとおり、Fmは9-フルオレニルメチルを指す。本明細書で定義されるとおり、Dmabは、4-(N-[1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)-3-メチルブチル]-アミノ)ベンジルを指す。本明細書で定義されるとおり、Camはカルバモイルメチルを指す。本明細書で定義されるとおり、アリール-EDOTnは、以下の式を有する部分を指す:
【0117】
【0118】
(式中、R3はHまたはOMeであり、R4はHまたはOMeであり、R5はHまたはOMeである)。好ましくは、R3、R4およびR5は、(a) R3、R4およびR5の全てがHである、 (b) R3、R4およびR5の全てがOMeである、(c) R3およびR4がOMeであり、R5 がHである、または(d) R3およびR4がHであり、R5がOMeであるように選択される。
【0119】
R1および/またはR2がR'基を含む場合、R'は好ましくはC1-20アルキル、より好ましくはC1-12アルキル、さらにより好ましくはC1-8アルキル、特に好ましくはC1-4アルキルである。適切なアルキル基の代表例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルが含まれる。メチル、エチルおよびtert-ブチルが特に好ましいアルキル基である。
【0120】
ポリマーは、好ましくは、式(IIb)または(IIb')の化合物に由来する(式中、T1は-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-または-CH2CH2CH2CH2-であり、より好ましくは、T1は-CH2CH2-または-CH2CH2CH2-である)。ポリマーは、好ましくは、式(IIb)または(IIb')の化合物に由来する(式中、T2は-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-または-CH2CH2CH2CH2-であり、より好ましくは、T2は-CH2CH2-または-CH2CH2CH2-である)。T1およびT2は、同一でも異なっていてもよい。好ましくは、T1およびT2は、同一である。典型的には、ポリマーは、式(IIb)の化合物に由来する(式中、T1およびT2の両方が-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-および-CH2CH2CH2CH2-から選択され、好ましくは、T1およびT2の両方が-CH2CH2-および-CH2CH2CH2-から選択され、より好ましくは、T1およびT2の両方が-CH2CH2CH2-である。あるいは、ポリマーは、式(IIb)または(IIb')の化合物に由来してもよい(式中、QはCH2(NMe(C=O)CH2)o-である)。
【0121】
ポリマーは、さらに好ましくは、式(IIb)の化合物に由来する(式中、X'はOH、OR'、NH2、またはNHR'である)。さらにより好ましくは、X'はOHまたはNH2である。さらに好ましいポリマーは、式(IIb)または(IIb')の化合物に由来する(式中、Y'はOH、OR'、NH2、またはNHR'である)。さらにより好ましくは、Y'はOHまたはNH2である。X'およびY'は、同一でも異なっていてもよいが、好ましくは同一である。さらにより好ましくは、X'およびY'は両方ともOHである。したがって、好ましい実施形態において、式(IIb)の化合物は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールである。好ましくは、この場合、式(IIb)の化合物は、PEG 400、PEG 500、PEG 600、PEG 1000、PEG 1500、PEG 2000、PEG 3000、PEG 4000およびPEG 5000から選択される。さらにより好ましくは、X'およびY'は両方ともNH2である。さらにより好ましくは、X'およびY'は両方ともNH2であり、T1およびT2の両方が-CH2CH2CH2-である。この場合、式(IIb)の化合物は、ポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)またはポリ(プロピレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)である。最も好ましくは、X'およびY'は両方ともNH2であり、Qは-CH2CH2CH2O(CH2CH2O)sCH2CH2CH2-である。この場合、式(IIb)の化合物はポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)である。好ましくは、(ポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)は1000から2000の分子量を有し、より好ましくは1500の分子量を有する、すなわち(ポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)末端) 1500である。別の好ましい実施形態において、ポリマーは、式(IIb')の化合物に由来する(式中、QはCH2(NMe(C=O)CH2)o-であり、Y'は-NH2または-NHR'であり、好ましくは-NHR'であり、より好ましくは-NHMeである)。さらにより好ましくは、Qは-CH2(NMe(C=O)CH2)o-であり、Y'は-NHMeであり、R2はOHまたはOR'である。この場合、式(IIb')の化合物は、ポリ(サルコシン)またはそのエステルである。好ましくは、ポリ(サルコシン)は、350~1800の分子量を有する。
【0122】
oは、好ましくは0~100、より好ましくは1~75、さらにより好ましくは2~50、最も好ましくは5~25の整数である。
【0123】
sは、好ましくは0~150、より好ましくは1~100、さらに好ましくは1~50、さらにより好ましくは1~35、さらにより一層好ましくは3~30、最も好ましくは5~21の整数である。
【0124】
好ましくは、ポリマーは、ジメチル-2-オキソ-グルタレートまたはジメチル-3-オキソ-グルタレートに由来する。さらに好ましいポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)に由来する。最も好ましくは、ポリマーは、ジメチル-2-オキソ-グルタレートおよびポリ(エチレングリコール)、ジメチル-2-オキソ-グルタレートおよびポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)、ジメチル-3-オキソ-グルタレートおよびポリ(エチレングリコール)、またはジメチル-3-オキソ-グルタレートおよびポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)に由来する。
【0125】
式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位において、破線の結合は存在しても、存在しなくてもよい。破線の結合が存在しない場合、部分D1、D2および/またはD3への単結合が存在する。破線の結合が存在する場合、部分D1、D2および/またはD3への二重結合、または部分D1、D2および/またはD3内の異なる原子への2つの単結合が存在する。D1、D2またはD3が酸素原子である場合、酸素原子とそれが結合している炭素原子との間に二重結合が存在する。好ましくは、D1がL1-B1、D2がL2-B2またはD3がL3-B3の場合、破線の結合が存在する。あるいは、D1がL1-B1、D2がL2-B2またはD3がL3-B3の場合、破線の結合が存在しない。
【0126】
好ましくは、式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位は、式(I-i')、例えば式(I-i)の繰り返し単位または式(I-I'')の繰り返し単位であり、ここで、式(I')、(I)または(I'')中のqは1である:
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
(式中、n、m、p、V、D1、D2、D3、X、Y、およびQは、式(I')、式(I)または式(I'')に関して上記で定義したとおりである)。
【0131】
式(I')、(I)、(I'')、(I-i')、(I-i)または(I-i'')のポリマー繰り返し単位において、各D1は独立してOまたはL1-B1であり、各D2は独立してOまたはL2-B2であり、各D3は独立してOまたはL3-B3であり、各L1、L2およびL3はリンカー基または結合であり、各B1、B2およびB3は生物活性部分(例えば、薬物)である。生物活性部分は、ポリマー繰り返し単位の主鎖、または存在する場合はリンカー基のいずれかと共有結合を形成する生物活性分子(例えば、薬物)に由来する部分である。ポリマー繰り返し単位またはリンカー基とB1、B2またはB3との間の結合が切断されると、生物活性分子である化合物H-B1、H-B2またはH-B3が放出される。したがって、本明細書で使用される場合、「生物活性分子」は、ポリマー繰り返し単位またはリンカー基にではなく、水素原子に結合している前記生物活性部分である。
【0132】
典型的には、各L1、L2およびL3は結合である。したがって、典型的には、L1は結合である。典型的には、L2は結合である。典型的には、L3は結合である。L1、L2またはL3が結合である場合、これは、D1、D2またはD3がそれぞれ、B1、B2またはB3、すなわち生物活性部分であることを意味する。この場合、当該生物活性部分は、典型的には、生物活性分子H-B1、H-B2またはH-B3と、ポリマー繰り返し単位が由来する式(IIa)、(IIa')、(IIc)または(IIc')の化合物中のカルボニル基、好ましくはケト基との反応によって得ることができる。典型的には、各B1、B2およびB3は、薬物分子内の求核剤と、ポリマー繰り返し単位が由来する式(IIa)、(IIa')、(IIc)または(IIc')の化合物中の求電子性カルボニル炭素原子との間の縮合によって得ることができる部分である。
【0133】
しかし、好ましくは、各L1、L2およびL3はリンカー基である。言い換えれば、典型的には、本発明の抗体-薬物複合体は、ポリマー主鎖と生物活性部分との間にリンカーを含む。したがって、好ましくは、L1はリンカー基である。好ましくは、L2はリンカー基である。好ましくは、L3はリンカー基である。L1、L2またはL3がリンカー基である場合、このリンカー基は、共有結合を介して生物活性部分をポリマー主鎖に接続するのに適した任意のリンカー基であってよい。そのようなリンカー基は当技術分野でよく知られている。好ましくは、L1は、14~4000 Da、より好ましくは28~2000 Da、さらにより好ましくは50~1000 Da、さらにより一層好ましくは100~500 Daの分子量を有する。好ましくは、L2は、14~4000 Da、より好ましくは28~2000 Da、さらにより好ましくは50~1000 Da、さらにより一層好ましくは100~500 Daの分子量を有する。好ましくは、L3は、14~4000 Da、より好ましくは28~2000 Da、さらにより好ましくは50~1000 Da、さらにより一層好ましくは100~500 Daの分子量を有する。
【0134】
好ましいリンカー基は、=N-NH-Z1-L'-Z2-、=N-O-Z1-L'-Z2-、=N-Z1-L'-Z2-、-NH-NH-Z1-L'-Z2-、-NH-O-Z1-L'-Z2-、-NH-Z1-L'-Z2-、-O-Z1-L'-Z2-、-S-Z1-L'-Z2-、
【0135】
【0136】
から選択される:
(式中、
L'は、結合、C1-20アルキレン、C1-20アルケニレン、C1-20アルキニレン、C6-10アリーレン(例えば、フェニレンまたはナフチレン)、C7-20アラルキレン、C3-10シクロアルキレン、C4-8ヘテロシクロアルキレン、C5-10ヘテロアリーレン、C6-20ヘテロアラルキレン、-(O-K)i-、-(NH-K)i-、-(NR'-K)i-、116~2000 Daの分子量を有するポリエステル、114~2000 Daの分子量を有するポリアミド、および部分-W-(ここで、H-W-OHは、アミノ酸または2~20個の天然または合成アミノ酸サブユニットを含むペプチドである)から選択され;
Z1は、-Z-(C=O)-、-Z-O(C=O)-、-Z-NH(C=O)-、-Z-NR'(C=O)-、-Z-S(C=O)-、-Z-(C=NH)-、-Z-O(C=NH)-、-Z-NH(C=NH)-、-Z-NR'(C=NH)-、-Z-S(C=NH)-および-Z-(C=NR')-、-K-(O-K)i-、-K-(NH-K)i-、-K-(NR'-K)i-、-K(C=O)-(O-K-(C=O))i-、-K(C=O)-(NH-K-(C=O))i-、-K(C=O)-(NR'-K-(C=O))i-、および部分-P-(ここで、H2N-P-OHは、アミノ酸または2~20個の天然または合成アミノ酸サブユニットを含むペプチドである)から選択され;
Z2は、結合、-OZ-、-NHZ-、-NR'Z-、-SZ-、-S-、-ZS-、-OZS-、-NHZS-、-NR'ZS-、-SZS-、-Z-(C=O)-、-Z-O(C=O)-、-Z-NH(C=O)-、-Z-NR'(C=O)-、-Z-S(C=O)-、-Z-(C=NH)-、-Z-O(C=NH)-、-Z-NH(C=NH)-、-Z-NR'(C=NH)-、-Z-S(C=NH)-、-Z-(C=NR’)-、-Z-O(C=NR')-、-Z-NH(C=NR')-、-Z-NR'(C=NR')-、-Z-S(C=NR')-、-OZ-(C=O)-、-OZ-O(C=O)-、-OZ-NH(C=O)-、-OZ-NR’(C=O)-、-OZ-S(C=O)-、-OZ-(C=NH)-、-OZ-O(C=NH)-、-OZ-NH(C=NH)-、-OZ-NR'(C=NH)-、-OZ-S(C=NH)-、-OZ-(C=NR')-、-OZ-O(C=NR')-、-OZ-NH(C=NR')-、-OZ-NR'(C=NR')-、-OZ-S(C=NR')-、-NHZ-(C=O)-、-NHZ-O(C=O)-、-NHZ-NH(C=O)-、-NHZ-NR'(C=O)-、-NHZ-S(C=O)-、-NHZ-(C=NH)-、-NHZ-O(C=NH)-、-NHZ-NH(C=NH)-、-NHZ-NR'(C=NH)-、-NHZ-S(C=NH)-、-NHZ-(C=NR')-、-NHZ-O(C=NR')-、-NHZ-NH(C=NR')-、-NHZ-NR'(C=NR')-、-NHZ-S(C=NR')-、-NR'Z-(C=O)-、-NR'Z-O(C=O)-、-NR'Z-NH(C=O)-、-NR'Z-NR'(C=O)-、-NR'Z-S(C=O)-、-NR'Z-(C=NH)-、-NR'Z-O(C=NH)-、-NR'Z-NH(C=NH)-、-NR'Z-NR'(C=NH)-、-NR'Z-S(C=NH)-、-NR'Z-(C=NR')-、-NR'Z-O(C=NR')-、-NR'Z-NH(C=NR')-、-NR'Z-NR'(C=NR')-、-NR'Z-S(C=NR')-、-SZ-(C=O)-、-SZ-O(C=O)-、-SZ-NH(C=O)-、-SZ-NR'(C=O)-、-SZ-S(C=O)-、-SZ-(C=NH)-、-SZ-O(C=NH)-、-SZ-NH(C=NH)-、-SZ-NR'(C=NH)-、-SZ-S(C=NH)-、-SZ-(C=NR')-、-SZ-O(C=NR')-、-SZ-NH(C=NR')-、-SZ-NR'(C=NR')-、-SZ-S(C=NR')-、-J-O(C=O)-、-O-J-O(C=O)-、-S-J-O(C=O)-、-NH-J-O(C=O)-、-NR'-J-O(C=O)-、76~2000 Daの分子量を有するポリエーテル(例、ポリ(アルキレングリコール))、75~2000 Daの分子量を有するポリアミン、116~2000 Daの分子量を有するポリエステル、114~2000 Daの分子量を有するポリアミド、および部分-W-(ここで、H-W-OHは、アミノ酸または2~20個の天然または合成アミノ酸サブユニットを含むペプチドである)から選択され;
Zは、C1-20アルキレン、C1-20アルケニレン、C1-20アルキニレン、C6-10アリーレン(例えば、フェニレンまたはナフチレン)、C7-20アラルキレン、C3-10シクロアルキレン、C4-8ヘテロシクロアルキレン、C5-10ヘテロアリーレン、およびC6-20ヘテロアラルキレンから選択され;
Jは、糖置換基および糖置換基に対してパラまたはオルトにメチレン基または部分-(CH=CH)k-CH2-を有するフェニル基であり、kは1~10の整数であり、さらに、当該メチレン基または部分-(CH=CH)k-CH2-は、生物活性部分B1、B2またはB3に近接する-O(C=O)-基に直接結合し、フェニル環の炭素は、生物活性部分B1、B2またはB3から遠位にあるリンカー基の残りに直接結合し;
各Kは、同一または異なり、C1-10アルキレンであり;
iは、1~100、好ましくは1~50、より好ましくは2~20の整数であり;
vは、0~4の整数であり、好ましくは1または2であり;
R'は、C1-20ヒドロカルビルである)。
【0137】
より好ましくは、リンカー基は=N-O-Z1-L'-Z2-であり、Z1およびL'は上記で定義したとおりであり、Z2は、-Z-(C=O)-、-Z-O(C=O)-、-Z-NH(C=O)-、-Z-NR'(C=O)-、-Z-S(C=O)-、-OZ-(C=O)-、-OZ-O(C=O)-、-OZ-NH(C=O)-、-OZ-NR'(C=O)-、-OZ-S(C=O)-、-NHZ-(C=O)-、-NHZ-O(C=O)-、-NHZ-NH(C=O)-、-NHZ-NR'(C=O)-、-NHZ-S(C=O)-、-NR'Z-(C=O)-、-NR'Z-O(C=O)-、-NR'Z-NH(C=O)-、-NR'Z-NR'(C=O)-、-NR'Z-S(C=O)-、SZ-(C=O)-、-SZ-O(C=O)-、-SZ-NH(C=O)-、-SZ-NR'(C=O)-、-SZ-S(C=O)-、-J-O(C=O)-、-O-J-O(C=O)-、-S-J-O(C=O)-、-NH-J-O(C=O)-、-NR'-J-O(C=O)-、116~2000 Daの分子量を有するポリエステル、114~2000 Daの分子量を有するポリアミド、および部分-W-から選択され、またはL'が部分-W-である場合、Z2はさらに結合であってもよい。好ましくは、リンカー基は=N-O-Z1-L'-Z2-であり、=N-O-部分から遠位にあるリンカーの末端は、カルボニル基で終結する。
【0138】
特に好ましいリンカー基は、=N-NH-CH2-(C=O)-Val-Cit-PAB-(C=O)-、=N-O-CH2-(C=O)-Val-Cit-PAB-(C=O)-、=N-CH2-(C=O)-Val-Cit-PAB-(C=O)-、-NH-NH-CH2-(C=O)-Val-Cit-PAB-(C=O)-、-NH-O-CH2-(C=O)-Val-Cit-PAB-(C=O)-および-NH-CH2-(C=O)-Val-Cit-PAB-(C=O)-から選択され、ここで、-Val-Cit-PAB-は以下の構造を有する。
【0139】
【0140】
これは、ポリマー-薬物複合体の分野でよく知られたリンカー基である。
【0141】
最も好ましくは、リンカー基は=N-O-CH2-(C=O)-Val-Cit-PAB-(C=O)-である。
【0142】
好ましくは、部分Jは、糖置換基に対してパラまたはオルトにメチレン基を有するフェニル基である。より好ましくは、メチレン基は糖置換基に対してパラである。さらにより好ましくは、部分Jの糖置換基は、糖のアノマー炭素原子にも直接結合している酸素原子を介してフェニル基に結合している。さらに一層好ましくは、糖置換基は六炭糖である。さらにより一層好ましくは、糖置換基は、グルクロン酸(β-グルクロニダーゼの作用により切断され得る)などの酵素の作用によりヒドロキシル置換基に変換され得る糖置換基から選択される。最も好ましくは、部分Jは以下の構造を有する。
【0143】
【0144】
部分Jを含む特に好ましいリンカー基は、以下の構造から選択され:
【0145】
【0146】
ここで、R6は任意のアミノ酸R基またはその誘導体から選択され、例えば、H、CH3、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、CH(CH3)CH2CH3、CH2Ph、CH2NH2、CH2OH、CH2SH、CH(OH)CH3、CH2CH2SCH3、CH2CONH2、CH2CH2CONH2、CH2COOH、CH2CH2COOH、(CH2)3NH(CN)NH2、(CH2)4NH2、(CH2)3NH2、
【0147】
【0148】
である。好ましくは、R6はH、CH3およびCH2NH2から選択され、より好ましくはCH2NH2である。
【0149】
-NH-NH-Z1-L'-Z2-、-NH-O-Z1-L'-Z2-および-NH-Z1-L'-Z2-から選択されるリンカー基を有するポリマー-薬物複合体は、それぞれ、式=N-NH-Z1-L'-Z2-、=N-O-Z1-L'-Z2-または=N-Z1-L'-Z2-のリンカーを有するポリマー-薬物複合体の還元によって得ることができる。
【0150】
誤解を避けるために、リンカー基の上記の定義において、描かれているリンカー基の左側(環状アセタールおよび環状チオアセタールについては、描かれているリンカー基の上部)が、抗体-薬物複合体のポリマー主鎖に結合し、描かれているリンカー基の右側(環状アセタールおよび環状チオアセタールについては、描かれているリンカー基の下部)が、生物活性部分B1、B2またはB3に結合する。上記のリンカー-Val-Cit-PAB-の描写において、左側はバリン(Val)への外部結合を示し、上部はパラ-アミノベンジルアルコール(PAB)への外部結合を示す。部分Jを含む好ましいリンカー基の上記の描写において、左下はポリマー主鎖への結合を示し、右上は生物活性部分B1、B2またはB3への結合を示す。
【0151】
典型的には、L'は、14~2000 Da、好ましくは28~1000 Da、より好ましくは50~500 Da、さらにより好ましくは100~300 Daの分子量を有する。典型的には、Z1は、14~2000 Da、好ましくは28~1000 Da、より好ましくは50~500 Da、さらにより好ましくは100~300 Daの分子量を有する。典型的には、Z2は、14~2000 Da、好ましくは28~1000 Da、より好ましくは50~500 Da、さらにより好ましくは100~300 Daの分子量を有する。
【0152】
L1、L2またはL3がリンカー基である場合、L1、L2またはL3は典型的には、式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LGの化合物に由来する。LGは、付加脱離反応条件下の脱離基である。付加脱離条件は当業者によく知られている。典型的には、付加脱離条件は、求核性(すなわち、電子が豊富な)部分が不飽和炭素原子に付加して、その炭素原子への共有結合のσ-結合を形成し、その結果、その炭素原子へのπ-結合が破壊され、その後の前記π-結合の再形成、および前記炭素原子と、典型的には正味の電子求引性部分である他の置換基の1つとの間のσ-結合の付随する切断により、その置換基を除去する。好ましくは、LGはハロ(好ましくはCl)、OH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'、NR'2、O-2-Cl-Trt、ODmb、O-2-PhiPr、O-EDOTn-Ph、OFm、ODmabおよびOCamから選択され、ここで、R'、2-Cl-Trt、Dmb、EDOTn-Ph、Fm、DmabおよびOCamは上記で定義したとおりである。
【0153】
典型的には、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、酸に不安定である。好ましくは、この場合、結合は、マクロファージのようなさまざまな細胞に見られるリソソーム、エンドソーム、ファゴソーム、ファゴリソソームおよびオートファゴソームのような細胞コンパートメントの酸性および/または加水分解環境で加水分解される。好ましくは、この場合、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、6未満のpH、さらにより好ましくは5未満のpHで加水分解される。酸性環境で加水分解される結合の例は、ヒドラゾン結合である。
【0154】
あるいは、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、中性条件で不安定である。好ましくは、この場合、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、中性pH、好ましくは6.5~7.5のpHで加水分解される。
【0155】
あるいは、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は塩基に不安定である。好ましくは、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、8より高いpH、さらにより好ましくは9より高いpHで加水分解される。
【0156】
結合が加水分解される最適なpHは、関連する結合の正確な化学的性質に依存するであろう。
【0157】
あるいは、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、酵素の存在下で加水分解される。好ましくは、この場合、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、カテプシンBによって加水分解される。カテプシンBによって酵素的に加水分解される結合の例は、ペプチド結合である。
【0158】
あるいは、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、加水分解に対して耐性がある。例えば、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、細胞内チオール(例えば、グルタチオン)とのジスルフィド交換によって切断され得る。この方法で切断可能な結合の例は、ジスルフィド結合である。あるいは、ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合は、細胞内のタンパク質分解によって切断され得る。この方法で切断可能な結合の例は、チオエーテル結合である。
【0159】
ポリマー繰り返し単位またはリンカー単位のいずれかとB1、B2またはB3との間の結合の切断により、前記生物活性分子(例えば、薬物)が放出される。好ましくは、ポリマー繰り返し単位と部分B1、B2またはB3との間にリンカー基がある。より好ましくは、繰り返し単位とリンカー部分L1、L2またはL3との間の結合は二重結合である。あるいは、L1、L2またはL3は結合であり、すなわち、ポリマー繰り返し単位と部分B1、B2またはB3との間に直接結合がある。この場合、好ましくは、繰り返し単位と部分B1、B2またはB3との間の結合は二重結合である。
【0160】
好ましくは、ポリマー繰り返し単位が由来する生物活性分子は、式(IIa)、(IIa')、(IIc)または(IIc')の化合物中に存在するケト基、またはリンカーL1、L2またはL3に存在するカルボニル基と共有結合を形成できる官能基を含む。より好ましくは、生物活性分子(例えば、薬物)は、少なくとも1つのヒドラジン基、少なくとも1つのヒドラジド基、少なくとも1つのアミン基、少なくとも1つのアミノオキシ基、少なくとも1つの、好ましくは2つのヒドロキシル基、または少なくとも1つの、好ましくは2つのチオール基を含む。さらにより好ましくは、ポリマー繰り返し単位が由来する生物活性分子は、リンカー部分L1、L2またはL3に存在するカルボニル基と、アミド結合、エステル結合、カルバメート結合またはカルボネート結合、好ましくはアミド結合を形成することができる。あるいは、ポリマー繰り返し単位が由来する生物活性分子は、リンカーL1、L2またはL3に存在するアミノ、ヒドロキシルまたはチオール基と共有結合を形成できる官能基を含む。この場合、好ましくは、生物活性分子(例えば、薬物)は、少なくとも1つのカルボン酸基または少なくとも1つのチオール基を含む。さらにより好ましくは、ポリマー繰り返し単位が由来する生物活性分子は、リンカー部分L1、L2またはL3に存在するヒドロキシル基とエステル結合を、リンカー部分L1、L2またはL3に存在するアミノ基とアミド結合を、リンカー部分L1、L2またはL3に存在するチオール基とチオエステル結合を、またはリンカー部分L1、L2またはL3に存在するチオール基とジスルフィド結合を形成することができる。
【0161】
より好ましくは、各D1およびD3はOである。したがって、好ましくは、少なくとも1つのD2はL2-B2である。一態様において、各D2はL2-B2である。
【0162】
一態様において、各D1およびD3はOであり、少なくとも1つのD2はL2-B2であり、ポリマー主鎖とD2との間の結合はヒドラゾンである。したがって、好ましくは、ポリマーは、式(IA)の繰り返し単位、例えば、式(Ia)の繰り返し単位を含む:
【0163】
【0164】
【0165】
(式中、n、m、p、q、V、X、YおよびQは、式(I')、(I)または(I'')に関して上記で定義したとおりであり、L”は結合または-Z1-L'-Z2-(上記で定義したとおりである)であり、Bは生物活性部分B2であるか、または、L”が結合である場合、Bは代わりにB-NH-Nが生物活性部分B2であるように定義され得る)。n、m、p、q、X、YおよびQのそれぞれの好ましい実体は、式(I')、(I)、(I'')、(IIa)、(IIa')、(IIb)、(IIb')、(IIc)および(IIc')のそれぞれに関して上記で記載したとおりである。
【0166】
L”が結合であり、インビボでC=N結合の加水分解によって生物活性部分が放出される場合、生物活性分子はB-NHNH2である。有利には、ヒドラゾン結合は、6未満のpHで加水分解する。式(IA)または(Ia)の繰り返し単位を含む好ましいポリマーにおいて、生物活性分子は、イソニアジド(isoniazid)、カルビドパ(carbidopa)、エンドララジン(endralazine)、ジヒドララジン(dihydralazine)、ヒドララジン(hydralazine)、ヒドラカルバジン(hydracarbazine)、フェニプラジン(pheniprazine)、ピルドララジン(pildralazine)、オクタモキシン(octamoxin)、合成ペプチド、合成オリゴヌクレオチド、炭水化物、ペプチド模倣物、抗体、ヒドラジンおよびそれらの混合物から選択される薬物である。
【0167】
別の態様において、式(IA)または(Ia)中のヒドラゾン結合はさらに還元され得る。ヒドラゾン結合の還元は、当技術分野で知られている任意の技術によって行うことができる。好ましくは、この態様において、ポリマーは式(IA')の繰り返し単位、例えば、式(Ia')の繰り返し単位を含む:
【0168】
【0169】
【0170】
(式中、すべての記号は、式(IA)または(Ia)に関して上記で定義したとおりである)。
【0171】
別の態様において、各D1およびD3はOであり、少なくとも1つのD2はL2-B2であり、ポリマー主鎖とD2との間の結合はイミンである。したがって、好ましくは、ポリマーは、式(IB)の繰り返し単位、例えば、式(Ib)の繰り返し単位を含む:
【0172】
【0173】
【0174】
(式中、n、m、p、q、X、YおよびQは、式(I')、(I)または(I'')に関して上記で定義したとおりであり、L”は結合または-Z1-L'-Z2-(上記で定義したとおり)であり、Bは生物活性部分B2であるか、または、L”が結合である場合、Bは代わりにB-Nが生物活性部分D2であるように定義され得る)。n、m、p、q、X、YおよびQのそれぞれの好ましい実体は、式(I')、(I)、(I'')、(IIa)、(IIa')、(IIb)、(IIb')、(IIc)および(IIc')のそれぞれに関して上記で記載したとおりである。
【0175】
L”が結合であり、生物活性部分がインビボでC=N結合の加水分解により放出される場合、生物活性分子はB-NH2である。式(IB)または(Ib)の繰り返し単位を含む好ましいポリマーにおいて、生物活性分子は、アルテプラーゼ(Alteplase)、アダリムマブ(Adalimumab)、ビバリルジン(Bivalirudin)、クロロプロカイン(Chloroprocaine)、ダプトマイシン(Daptomycin)、ドキサゾシン(Doxazosin)、エファビレンツ(Efavirenz)、ヒドロフルメチアジド(Hydroflumethiazide)、インダパミド(Indapamide)、インスリン デテミル(Insulin Detemir)、リシノプリル(Lisinopril)、ペプチド模倣物、プラゾシン(Prazosin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、低分子干渉RNA(small interfering RNA)、スルファメチルチアゾール(Sulfamethylthiazole)、スルファメトロール(Sulfametrole)、スルフィソミジン(Sulfisomidine)、トリパミド(Tripamide)、2-p-スルファニリルアニリノエタノール(2-p-Sulfanilylanilinoethanol)、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸(3-Amino-4-hydroxybutyric Acid)、3-アミノピリジン-2-カルボキシアルデヒド チオセミカルバゾン (3-AP)/3-アミノピリジン-4-メチル-2-カルボキシアルデヒド チオセミカルバゾン (3-Aminopyridine-2-carboxaldehyde thiosemicarbazone (3-AP)/3-Aminopyridine-4-methyl-2-carboxaldehyde thiosemicarbazone) (3-AMP/Triapine/OCX-191/OCX-0191)、4,4'-スルフィニルジアニリン(4,4'-Sulfinyldianiline)、4'-(メチルスルファモイル)スルファニルアニリド(4'-(Methylsulfamoyl)sulfanilanilide)、4'-スルファニリルスルファニルアミド(4'-Sulfanilylsulfanilamide)、4-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸(4-Amino-3-hydroxybutyric Acid)、4-スルファニルアミドサリチル酸(4-Sulfanilamidosalicylic acid)、5-ヒドロキシトリプトファン(5-Hydroxytryptophan)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(6-Diazo-5-oxo-L-norleucine)(DON)、9-アミノアクリジン(9-Aminoacrindine)、9-アミノカンプトテシン(9-Aminocamptothecin)、アバカビル(Abacavir)、アバタセプト(Abatacept)、アセジアスルホン(Acediasulfone)、アセトスルホン ナトリウム(Acetosulfone sodium)、アシクロビル(Acyclovir)、アデホビル(Adefovir)、アルフゾシン(Alfuzosin)、アマンタジン(Amantadine)、アムフェナク(Amfenac)、アミジノマイシン(Amidinomycin)、アミカシン(Amikacin)、アミノレブリン酸(Aminolevulinic Acid)、アムロジピン(Amlodipine)、アモキシシリン(Amoxicillin)、アンフェタミン(Amphetamine)、アンホマイシン(Amphomycin)、アムホテリシンB(Amphotericin B)、アンピシリン(Ampicillin)、アンプレナビル(Amprenavir)、アンシタビン(Ancitabine)、抗体、抗原、アルベカシン(Arbekacin)、アスポキシシリン(Aspoxicillin)、アザシチジン(Azacitidine)、アザセリン(Azaserine)、バカンピシリン(Bacampicillin)、バシトラシン(Bacitracin)、ベネキセートHCl(BenexateHCl)、ベンセラジド(Benserazide)、ベンゾカイン(Benzocaine)、ベンジルスルファミド(Benzylsulfamide)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ブレオマイシン(Bleomycins)、ブロジモプリム(Brodioprim)、ブロピリミン(Bropirimine)、ブナゾシン(Bunazosin)、ブチロシン(Butirosin)、カプレオマイシン(Capreomycin)、炭水化物、カルボプラチン(Carboplatin)、カルビシン(Carubicin)、カルモナム(Carumonam)、カスポファンギン(Caspofungin)、セファクロル(Cefaclor)、セファドロキシル(Cefadroxil)、セファトリジン(Cefatrizine)、セフカペン(Cefcapene)、セフクリジン(Cefclidin)、セフジニル(Cefdinir)、セフジトレン(Cefditoren)、セフェピム(Cefepime)、セフェタメト(, Cefetamet)、セフメノキシム(Cefinenoxime)、セフィキシム(Cefixime)、セフミノックス(Cefminox)、セフォジジム(Cefodizime)、セフォラニド(Ceforanide)、セフォセリス(Cefoselis)、セフォタキシム(Cefotaxime)、セフォチアム(Cefotiam)、セフォゾプラン(Cefozopran)、セフピロム(Cefpirome)、セフポドキシム(Cefpodoxime)、セフプロジル(Cefprozil)、セフロキサジン(Cefroxadine)、セフタジジム(Ceftazidime)、セフテラム(Cefteram)、セフチブテン(Ceftibuten)、セフチゾキシム(Ceftizoxime)、セフトリアキソン(Ceftriaxone)、セフゾナム(Cefuzonam)、セレコキシブ(Celecoxib)、セファレキシン(Cephalexin)、セファログリシン(Cephaloglycin)、セファロスポリンC(Cephalosporin C)、セファラジン(Cephradine)、セルトリズマブ(Certolizumab)、セトキシム(Cetoxime)、セトラキサート(Cetraxate)、セツキシマブ(Cetuximab)、クロルプログアニル(Chlorproguanil)、シドホビル(Cidofovir)、シラスタチン(Cilastatin)、クラドリビン(Cladribine)、クリナフロキサシン(Clinafloxacin)、クロパミド(Clopamide)、コレセベラム(Colesevelam)、コリスチン(Colistin)、シクラシリン(Cyclacillin)、シクログアニル(Cycloguanil)、シクロペンチアジド(Cyclopenthiazide)、サイクロセリン(Cycloserine)、シタラビン(Cytarabine)、ダプソン(Dapsone)、ダルベポエチン アルファ(Darbepoetin Alfa)、ダルナビル(Darunavir)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、デシタビン(Decitabine)、デノスマブ(Denosumab)、デキストロアンフェタミン(Dextroamphetamine)、デゾシン(Dezocine)、ジベカシン(Dibekacin)、ジデオキシアデノシン(Dideoxyadenosine)、ジソプロキシル(Disoproxil)、DNA、ドルナーゼ アルファ(Dornase Alfa)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ドキシサイクリン(Doxycycline)、エブロチジン(Ebrotidine)、エダトレキサート(Edatrexate)、エフロルニチン(Eflornithine)、エムトリシタビン(Emtricitabine)、エンテカビル(Entecavir)、エンビオマイシン(Enviomycin)、エピシリン(Epicillin)、エピナスチン(Epinastine)、エピルビシン(Epirubicin)、エポエチン アルファ(Epoetin Alfa)、エタネルセプト(Etanercept)、エタンブトール(Ethambutol)、エキセナチド(Exenatide)、ファムシクロ イミキモドビル(Famciclo Imiquimodvir)、ファモチジン(Famotidine)、フィルグラスチム(Filgrastim)、フィンゴリモド(Fingolimod)、フルシトシン(Flucytosine)、フルボキサミン(Fluvoxamine)、フォルダマー(foldamers)、葉酸(Folic acid)、ホルチミシン(Forimicins)、ガバペンチン(Gabapentin)、ガンマ-アミノ酪酸(gama-Aminobutyric acid)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ゲミフロキサシン(Gemifloxacin)、ゲンタマイシン(Gentamicin)、グラチラマー アセテート(Glatiramer Acetate)、ゴリムマブ(Golimumab)、ヒスタミン(Histamine)、4価ヒトパピローマ(Human Papilloma Quadrivalent)、ヒドロクロロチアジド(Hydrochlorothiazide)、イダルビシン(Idarubicin)、免疫グロブリン、インフリキシマブ(Infliximab)、インスリン アスパルト(Insulin Aspart)、インスリン グラルギン(Insulin Glargine)、インスリン リスプロ(Insulin Lispro)、インターフェロン ベータ-1a(Interferon beta-1a)、インターフェロン ベータ-1b(Interferon beta-1b)、イピリムマブ(Ipilimubab)、イルソグラジン(Irsogladine)、イセパマイシン(Isepamicin)、カナマイシン(Kanamycin(s))、ラミブジン(Lamivudine)、ラモトリギン(Lamotrigine)、ランレオチド(Lanreotide)、L-ドパ(L-DOPA)、レナリドミド(Lenalidomide)、レナンピシリン(Lenampicillin)、レボドパ(Levodopa)、レボチロキシン(Levothyroxine)、リラグルチド(Liraglutide)、リスデキサンフェタミン(Lisdexamfetamine)、ロラカルベフ(Loracarbef)、ライムサイクリン(Lymecycline)、マフェニド(Mafenide)、マンタジン(Mantadine)、メクロサイクリン(Meclocycline)、メルファラン(Melphalan)、メマンチン(Memantine)、メサラミン(Mesalamine)、メサラジン(Mesalazine)、メトホルミン(Metformin)、メタサイクリン(Methacycline)、メトトレキサート(Methotrexate)、アミノレブリン酸メチル(Methyl Aminolevulinate)、メチルドパ(Methyldopa)、ミボプラチン(Miboplatin)、ミクロノマイシン(Micronomicin)、マイクロRNA(microRNA)、ミカマイシン(Mikamycin)、ミルナシプラン(Milnacipran)、ミノサイクリン(Minocycline)、ミトグアゾン(Mitoguazone)、モルファジナミド(Morphazinamide)、mRNA、N4-ベータ-D-グルコシルスルファニルアミド(N4-beta-D-Glucosylsulfanilamide)、ナタリズマブ(Natalizumab)、ナタマイシン(Natamycin)、ネガマイシン(Negamycin)、ネオマイシン(Neomycin)、ネチルマイシン(Netilmicin)、ニムスチン(Nimustine)、ノラトレキセド(Nolatrexed)、ノミフェンシン(Nomifensine)、非リピンスキー分子(Non-Lipinski molecules)、ノプリスルファミド(Noprysulfamide)、N-スルファニリル-3,4-キシルアミド(N-Sulfanilyl-3,4-xylamide)、ナイスタチン(Nystatin)、オクトレオチド アセテート(Ocreotide Acetate)、オマリズマブ(Omalizumab)、オセルタミビル(Oseltamivir)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、パリビズマブ(Palivizumab)、p-アミノサリチル酸(p-Aminosalicylic acid)、p-アミノサリチル酸ヒドラジド(p-Aminosalicylic acid hydrazide)、パロモマイシン(Paromomycin)、パルサルミド(Parsalmide)、パズフロキサシン(Pazufloxacin)、ペグフィルグラスチム(Pegfilgrastim)、ペグインターフェロン アルファ-2a (Peginterferon alfa-2a)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、ペンシクロビル(Penciclovir)、ペプロマイシン(Peplomycin)、ペプチド、タンパク質、ペキシガナン(Pexiganan)、アミノサリチル酸フェニル(Phenyl aminosalicylate)、ピクロキシジン(Picloxydine)、ピラルビシン(Pirarubicin)、ピリトレキシム(Piritrexim)、ピバンピシリン(Pivampicillin)、ピブセファレキシン(Pivcefalexin)、ピボキシル(pivoxil)、PNA、ポリミキシン(Polymyxin)、プララトレキサート(Pralatrexate)、プレガバリン(Pregabalin)、プレガベリン(Pregabelin)、プリマキン(Primaquine)、プロカイン(Procaine)、プロパラカイン(Proparacaine)、プロポキシカイン(Propoxycaine)、プロキセチル(Proxetil)、p-スルファニリルベンジルアミン(p-Sulfanilylbenzylamine)、プロマイシン(Puromycin)、ピリメタミン(pyrimethamine)、キノシド(Quinocide)、ラモプラニン(Ramoplanin)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、リガデノソン(Regadenoson)、レマセミド(Remacemide)、レシキモド(Resiquimod)、リボスタマイシン(Ribostamycin)、リマンタジン(Rimantadine)、リストセチン(Ristocetin)、リツキシマブ(Rituximab)、ロトラキサート(Rotraxate)、S-アデノシルメチオニン(S-Adenosylmethionine)、サラセタミド(Salacetamide)、サンパトリラット(Sampatrilat)、セベラマー(Sevelamer)、シソマイシン(Sisomicin)、シタフロキサシン(Sitafloxacin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、低分子ヘアピンRNA (small hairpin RNA)、S-メチルメチオニン(S-Methylmethionine)、ソマトロピン(Somatropin)、スパルフロキサシン(Sparfloxacin)、ストレプトニグリン(Streptonigrin)、スクシスルホン(Succisulfone)、スクロフェニド(Suclofenide)、スルファベンズアミド(Sulfabenzamide)、スルファセタミド(Sulfacetamide)、スルファクロルピリダジン(Sulfachlorpyridazine)、スルファクリソイジン(Sulfachrysoidine)、スルファシチン(Sulfacytine)、スルファジアジン(Sulfadiazine)、スルファジクラミド(Sulfadicramide)、スルファジメトキシン(Sulfadimethoxine)、スルファドキシン(Sulfadoxine)、スルファエチドール(Sulfaethidole)、スルファグアニジン(Sulfaguanidine)、スルファグアノール(Sulfaguanole)、スルファレン(Sulfalene)、スルファメラジン(Sulfamerazine)、スルファメーター(Sulfameter)、スルファメタジン(Sulfamethazine)、スルファメチゾール(Sulfamethizole)、
スルファメトキサゾール(Sulfamethoxazole)、スルファメトキシピリダジン(ulfamethoxypyridazine)、スルファミドクリソイジン(Sulfamidochrysoidine)、スルファモキソール(Sulfamoxole)、スルファニルアミド(Sulfanilamide)、スルファニル酸(Sulfanilic acid)、スルファニリル尿素(Sulfanilylurea)、スルファペリン(Sulfaperine)、スルファフェナゾール(Sulfaphenazole)、スルファプロキシリン(Sulfaproxyline)、スルファピラジン(Sulfapyrazine)、スルファソミゾール(Sulfasomizole)、スルファシマジン(Sulfasymazine)、スルファチアゾール(Sulfathiazole)、スルファチオ尿素(Sulfathiourea)、スルファトラミド(Sulfatolamide)、スルフィソキサゾール(Sulfisoxazole)、スルホンアミド(Sulfonamide)、スルファメトミジン(Sulframethomidine)、スルタミシリン(Sultamicillin)、スルチアム(Sulthiame)、合成オリゴヌクレオチド、合成ペプチド、タフェノキン(Tafenoquine)、タランパネル(Talampanel)、タランピシリン(Talampicillin)、テイコプラニン(Teicoplanin)、テノホビル(Tenofovir)、テラゾシン(Terazosin)、テリパラチド(Teriparatide)、テトロキソプリム(Tetroxoprim)、チアミプリン(Thiamiprine)、チオグアニン(Thioguanine)、チゲモナム(Tigemonam)、チノリジン(Tinoridine)、チラパザミン(Tirapazamine)、トブラマイシン(Tobramycin)、トピラマート(Topiramate)、トスフロキサシン(Tosufloxacin)、トラニルシプロミン(Tranylcypromine)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、トリマゾシン(Trimazosin)、トリメトプリム(Trimethoprim)、トリメトレキサート(Trimetrexate)、トリトクアリン(Tritoqualine)、トロバフロキサシン(Trovafloxacin)、トロキサシタビン(Troxacitabine)、ツベラクチノマイシン(Tuberactinomycin)、ツベルシジン(Tubercidin)、チロシジン(Tyrocidine)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、バラシクロビル(Valacyclovir)、バルデコキシブ(Valdecoxib)、バルガンシクロビル(Valganciclovir)、バンコマイシン(Vancomycin)、ビダラビン(Vidarabine)、ビガバトリン(Vigabatrin)、ビンデシン(Vindesine)、ビオマイシン(Viomycin)、ザルシタビン(Zalcitabine)、ゾニサミド(Zonisamide)、およびそれらの混合物から選択される。
【0176】
別の態様において、式(IB)または(Ib)中のイミン結合はさらに還元され得る。イミン結合の還元は、当技術分野で知られている任意の技術によって行うことができる。好ましくは、この態様において、ポリマーは式(IB')の繰り返し単位、例えば、式(Ib')の繰り返し単位を含む:
【0177】
【0178】
【0179】
(式中、すべての記号は、式(IB)または(Ib)に関して上記で定義したとおりである)。
【0180】
別の態様において、各D1およびD3はOであり、少なくとも1つのD2はL2-B2であり、ポリマー主鎖とD2との間の結合はケタールを形成する。他の特に好ましいポリマーは、2つの生物活性部分を含み、ポリマー主鎖とD2との間の結合はケタールを形成する。したがって、好ましくは、ポリマーは、式(ICi)または(ICii)の繰り返し単位、例えば、式(Ici)または(Icii)の繰り返し単位を含む:
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
(式中、n、m、p、q、v、V、X、YおよびQは、式(I')、(I)または(I'')に関して上記で定義したとおりであり、L”は結合または-Z1-L'-Z2-(上記で定義したとおり)であり、Bは生物活性部分B2であるか、または、L”が結合である場合、Bは代わりにB-OまたはO-B-Oが生物活性部分B2であるように定義され得る)。n、m、p、q、v、V、X、YおよびQのそれぞれの好ましい実体は、式(I)、(I')、 (I'')、(IIa)、(IIa')、(IIb)、(IIb')、(IIc)および(IIc')のそれぞれに関して上記で記載したとおりである。L”が結合であり、インビボでC-O結合の加水分解によって生物活性部分が放出される場合、生物活性分子はB-OHまたはHO-B-OHである。
【0186】
式(ICi)、(Ici)、(ICii)または(Icii)の繰り返し単位を含む好ましいポリマーにおいて、生物活性分子は、2,4,6-トリブロモ-m-クレゾール(2,4,6-Tribromo-m-cresol)、21-アセトキシプレグネノロン(21-Acetoxypregnenolone)、2-p-スルファニリルアニリノエタノール(2-p-Sulfanilylanilinoethanol)、3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸(3-Amino-4-hydroxybutyric Acid,)、4-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸(4-Amino-3-hydroxybutyric Acid)、4-ヘキシルレゾルシノール(4-Hexylresorcinol)、4-スルファニルアミドサリチル酸(4-Sulfanilamidosalicylic acid)、5-(メチルアミノ)-2-デオキシウリジン(5-(methylamino)-2-deoxyuridine)(MADU)、5-ブロモサリチルヒドロキサム酸(5-Bromosalicylhydroxamic acid)、5-ヒドロキシトリプトファン(5-Hydroxytryptophan)、9-アミノカンプトテシン(9-Aminocamptothecin)、アバカビル(Abacavir)、アバタセプト(Abatacept)、アビラテロン(Abiraterone)、アセブトロール(Acebutolol)、アセトアミノフェン(Acetaminophen)、アセトアミノサロール(Acetaminosalol)、アクラシノマイシン(Aclacinomycins)、アシクロビル(Acyclovir)、アダリムマブ(Adalimumab)、アジュマリン(Ajmaline)、アルクロメタゾン(Alclometasone)、アルファ-ビサボロール(alfa-Bisabolol)、全てのエリスロマイシンエステル誘導体(all erythromycin ester derivatives)、アルプレノロール(Alprenolol)、アルテプラーゼ(Alteplase)、ビス(アセチルサリチル酸塩)アルミニウム(Aluminum bis(acetylsalicylate))、アミカシン(Amikacin)、アミノクロルテノキサジン(Aminochlorthenoxazin)、アミノプロピロン(Aminopropylon)、アモジアキン(amodiaquine)、アモスラロール(Amosulalol)、アモキシシリン(Amoxicillin)、アンプレナビル(Amprenavir)、アンシタビン(Ancitabine)、アニデュラファンギン(Anidulafungin)、アニレリジン(Anileridine)、アントラマイシン(Anthramycin)、抗体、抗原、アパルシリン(Apalcillin)、アピシクリン(Apicycline)、アルベカシン(Arbekacin)、アロチノロール(Arotinolol)、アルテミシニン アルコール(Artemisinin alcohol)、アルゾキシフェン(Arzoxifene)、アスポキシシリン(Aspoxicillin)、アタザナビル(Atazanavir)、アテノロール(Atenolol)、アトロラクタミド(Atrolactamide)、アザシチジン(Azacitidine)、アジダムフェニコール(Azidamfenicol)、アジスロマイシン(Azithromycin)、バンベルマイシン(Bambermycins)、バチマスタット(Batimastat)、ベベエリン(Bebeerines)、ベクロメタゾン ジプロピオネート(Beclomethasone Dipropionate)、ベフロキサトン(Befloxatone)、ベンセラジド(Benserazide)、ベンゾイルパス(Benzoylpas)、ベンジルモルヒネ(Benzylmorphine)、ベタメタゾン(Betamethasone)、ベタキソロール(Betaxolol)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ビアペネム(Biapenem)、ビマトプロスト(Bimatoprost)、ビソプロロール(Bisoprolol)、ブレオマイシン(Bleomycins)、ボセンタン(Bosentan)、ブロモサリチルクロルアニリド(Bromosalicylchloranilide)、ブロクスウリジン(Broxuridine)、ブセチン(Bucetin)、ブシンドロール(Bucindolol)、ブデソニド(Budesonide)、ブフェニオド(Bufeniode)、ブフェキサマク(Bufexamac)、ブニトロロール(Bunitrolol)、ブプラノロール(Bupranolol)、ブプレノルフィン(Buprenorphine)、ブプロピオン(Bupropion)、ブラマート(Buramate)、ブセレリン(Buserelin)、ブチロシン(Butirosin)、ブトフィロロール(Butofilolol)、ブトルファノール(Butorphanol)、カドララジン(Cadralazine)、カルステロン(Calusterone)、カペシタビン(Capecitabine)、カプレオマイシン(Capreomycin)、カプサイシン(Capsaicine)、カラゾロール(Carazolol)、カルビドパ(Carbidopa)、炭水化物、カルボマイシン(Carbomycin)、カルテオロール(Carteolol)、カルビシン(Carubicin)、カルベジロール(Carvedilol)、カスポファンギン(Caspofungin)、CC-1065、セファドロキシル(Cefadroxil)、セファマンドール(Cefamandole)、セファトリジン(Cefatrizine)、セフブペラゾン(Cefbuperazone)、セフォニシド(Cefonicid)、セフォペラゾン(Cefoperazone)、セフォセリス(Cefoselis)、セフピラミド(Cefpiramide)、セフプロジル(Cefprozil)、セリプロロール(Celiprolol)、セファピリン ナトリウム(Cephapirin sodium)、セルトリズマブ(Certolizumab)、セツキシマブ(Cetuximab)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、クロロブタノール(Chlorobutanol)、クロロキシレノール(Chloroxylenol)、クロロゾトシン(Chlorozotocin)、クロルフェネシン(Chlorphenesin)、クロルキナドール(Chlorquinadol)、クロルテトラサイクリン ダルホプリスチン(Chlortetracycline Dalfopristin)、クロモマイシン(Chromomycins)、シクレタニン(Cicletanine)、シクロピロクス(Ciclopirox)、シクロスポリン(Ciclosporine)、シドホビル(Cidofovir)、シンコニジン(Cinchonidine)、シンコニン(Cinchonine)、シラマドール(Ciramadol)、クラドリビン(Cladribine)、クラリスロマイシン(Clarithromycin)、クラブラン酸(clavulanic acid)、クリンダマイシン(Clindamycin)、クロベタゾン(Clobetasone)、クロホクトール(Clofoctol)、クロモサイクリン(Clomocycline)、クロキシキン(Cloxyquin)、コデイン(Codeine)、コレセベラム(Colesevelam)、コリスチン(Colistin)、シクロスポリン(Cyclosporin)、シタラビン(Cytarabine)、ダルベポエチン アルファ(Darbepoetin Alfa)、ダルナビル(Darunavir)、ダサチニブ(Dasatinib)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、デシタビン(Decitabine)、デフラザコート(Deflazacort)、デルモスタチン(Delmostatin)、デメクロサイクリン(Demeclocycline)、デノスマブ(Denosumab)、デオキシジヒドロストレプトマイシン(Deoxydihydrostreptomycin)、デソモルヒネ(Desomorphine)、デソニド(Desonide)、デスオキシメタゾン(Desoximetasone)、デスベンラファキシン(Desvenlafaxine)、デキサメタゾン(Dexamethasone)、デゾシン(Dezocine)、ジアチモスルホン(Diathymosulfone)、ジベカシン(Dibekacin)、ジダノシン(Didanosine)、ジデオキシアデノシン(Dideoxyadenosine)、ジエチルスチルベストロール(Diethylstilbestrol)、ジフロラゾン(Diflorasone)、ジフルコルトロン(Diflucortolone)、ジフルニサル(Diflunisal)、ゲンチジン酸(Gentisic acid)、ジフルプレドナート(Difluprednate)、ジヒドロアルテミシニン(Dihydroartemisinin)、ジヒドロコデイン(Dihydrocodeine)、ジヒドロモルヒネ(Dihydromorphine)、ジヒドロストレプトマイシン(Dihydrostreptomycin)、ジヒドロキシアルミニウム アセチルサリチレート(Dihydroxyaluminum acetylsalicylate)、ジレバロール(Dilevalol)、ジメフェプタノール(Dimepheptanol)、ジリスロマイシン(Dirithromycin)、ジタゾール(Ditazol)、DNA、ドセタキセル(Docetaxel)、ドルナーゼ アルファ(Dornase Alfa)、ドキシフルリジン(Doxifluridine)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ドキシサイクリン(Doxycycline)、ドロロキシフェン(Droloxifene)、ドロモスタノロン(Dromostanolone)、エクテイナスシジン(Ecteinascidins)、エドクスジン(Edoxudine)、エムトリシタビン(Emtricitabine)、エノシタビン(Enocitabine)、エノキサパリン(Enoxaparin)、エノキソロン(Enoxolone)、エンプロスチル(Enprostil)、エンタカポン(Entacapone)、エンテカビル(Entecavir)、エンビオマイシン(Enviomycin)、エパノロール(Epanolol)、エピネフリン(Epinephrine)、エピルビシン(Epirubicin)、エピチオスタノール(Epitiostanol)、エポエチン アルファ(Epoetin Alfa)、エプタゾシン(Eptazocine)、エルタペネム(Ertapenem)、エリスロマイシン(Erythromycin)、エストラムスチン(Estramustine)、エタネルセプト(Etanercept)、エタニダゾール(Etanidazole)、エチニル エストラジオール(Ethinyl Estradiol)、エトキサゼン(Ethoxazene)、エチルモルヒネ(Ethylmorphine)、エトフェナマート(Etofenamate)、エトノゲストレル(Etonogestrel)、エトポシド(Etoposide)、オイゲノール(Eugenol)、エベロリムス(Everolimus)、エキセナチド(Exenatide)、エゼチミブ(Ezetimibe)、フェンドサール(Fendosal)、フェノルドパム(Fenoldopam)、フェンペンタジオール(Fenpentadiol)、フェンレチニド(Fenretinide)、フェプラジノール(Fepradinol)、フェキソフェナジン(Fexofenadine)、フィルグラスチム(Filgrastim)、フィリピン(Filipin)、フラボピリドール(Flavopiridol)、フルピルチン(Flipirtine)、フロクタフェニン(Floctafenine)、フロモキセフ(Flomoxef)、フロクスウリジン(Floxuridine)、フルアザコート(Fluazacort)、フルコナゾール(Fluconazole)、フルドロコルチゾン(Fludrocortisone)、フルメタゾン(Flumethasone)、フルオシノロン(Fluocinolone)、フルオシノニド(Fluocinonide)、フルオコルチン ブチル(Fluocortin Butyl)、フルオコルトロン(Fluocortolone)、フルプレドニデン アセテート(Fluprednidene Acetate)、フルチカゾン プロピオネート(Fluticasone Propionate)、フォルダマー(foldamers)、ホルチミシン(Forimicins)、フォルメスタン(Formestane)、ホルモテロール(Formoterol)、ホスカルネット ナトリウム(Foscarnet sodium)、ホスフェストロール(Fosfestrol)、フロペネム(Fropenem)、フルベストラント(Fulvestrant)、ファンギクロミン(Fungichromin)、フロナジド(Furonazide)、フシジン酸(Fusidic acid)、ガランタミン(Galantamine)、ガンシクロビル(Ganciclovir)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ゲンタマイシン(Gentamicin)、グラフェニン(Glafenine)、グルカメタシン(Glucametacin)、グルコスルホン ナトリウム(Glucosulfone sodium)、グリコニアジド(Glyconiazide)、ゴリムマブ(Golimumab)、バルサラジド(Balsalazide)、ゴセレリン(Goserelin)、グラミシジン(Gramicidin(s))、グアメシクリン(Guamecycline)、ハルシノニド(Halcinonide)、ハロベタゾール プロピオネート(Halobetasol Propionate)、ハロファントリン(Halofantrine)、ハロメタゾン(Halometasone)、ハロプレドン アセテート(Halopredone Acetate)、4価ヒトパピローマ(Human Papilloma Quadrivalent)、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)、ヒドロモルフォン(Hydromorphone)、ヒドロキシペチジン(Hydroxypethidine)、ヒペリシン(Hypericin)、イブプロキサム(Ibuproxam)、イダルビシン(Idarubicin)、イドクスウリジン(Idoxuridine)、イミペネム(Imipenem)、免疫グロブリン、インデノロール(Indenolol)、インジナビル(Indinavir)、インフリキシマブ(Infliximab)、インスリン アスパルト(Insulin Aspart)、インスリン デテミル(Insulin Detemir)、インスリン グラルギン(Insulin Glargine)、インスリン リスプロ(Insulin Lispro)、インターフェロン ベータ-1a(Interferon beta-1a)、インターフェロン ベータ-1b(Interferon beta-1b)、イピリムマブ(Ipilimubab)、イプラトロピウム(Ipratropium)、イリノテカン(Irinotecan)、イセパマイシン(Isepamicin)、イソキシカム(Isoxicam)、カナマイシン(Kanamycin(s))、ケトキサール(Kethoxal)、ケトベミドン(Ketobemidone)、ラベタロール(Labetalol)、ラミブジン(Lamivudine)、ラタノプロスト(Latanoprost)、L-ドパ(L-DOPA)、ロイプロリド(Leuprolide)、レブクロマカリム(Levcromakalim)、レボドパ(Levodopa)、レボノルゲストレル(Levonorgestrel)、レボルファノール(Levorphanol)、レボチロキシン(Levothyroxine)、リンコマイシン(Lincomycin)、リラグルチド(Liraglutide)、ロピナビル(Lopinavir)、ロルノキシカム(Lornoxicam)、ロサルタン(Losartan)、ロテプレドノール エタボネート(Loteprednol Etabonate)、ルメファントリン(Lumefantrine)、ライムサイクリン(Lymecycline)、マンノムスチン(Mannomustine)、マリマスタット(Marimastat)、マジプレドン(Mazipredone)、メクロサイクリン(Meclocycline)、メフロキン(Mefloquine)、メレンゲストロール(Melengestrol)、メロキシカム(Meloxicam)、モメタゾン(Memetasone)、メノガリル(Menogaril)、メピンドロール(Mepindolol)、メプタジノール(Meptazinol)、
メルブロミン(Merbromin)、メロペネム(Meropenem)、メサラミン(Mesalamine)、メサラジン(Mesalazine)、メタゾシン(Metazocine)、メタサイクリン(Methacycline)、メチルドパ(Methyldopa)、メチルプレドニゾロン(Methylprednisolone)、メチプラノロール(Metipranolol)、メトポン(Metopon)、メトプロロール(Metoprolol)、メトロニダゾール(Metronidazole)、ミクロノマイシン(Micronomicin)、マイクロRNA(microRNA)、ミカマイシン(Mikamycin)、ミルテホシン(Miltefosine)、ミノサイクリン(Minocycline)、ミソプロストール(Misoprostol)、ミトブロニトール(Mitobronitol)、ミトラクトール(Mitolactol)、ミトキサントロン(Mitoxantrone)、モメタゾン フロエート(Mometasone Furoate)、モンテルカスト(Montelukast)、モピダモール(Mopidamol)、モプロロール(Moprolol)、モルヒネ(Morphine)、モキサラクタム(Moxalactam)、mRNA、N4-ベータ-D-グルコシルスルファニルアミド(N4-beta-D-Glucosylsulfanilamide)、ナジフロキサシン(Nadifloxacin)、ナドロール(Nadolol)、ナフトピジル(Naftopidil)、ナルブフィン(Nalbuphine)、ナタリズマブ(Natalizumab)、ネビボロール(Nebivolol)、ネガマイシン(Negamycin)、ネルフィナビル(Nelfinavir)、ネオマイシン(Neomycin)、ネチルマイシン(Netilmicin)、N-ヒドロキシエチルプロメタジン クロリド(N-Hydroxyethylpromethazine Chloride)、ニフルピリノール(Nifurpirinol)、ニフルトイノール(Nifurtoinol)、ニトラクリン(Nitracrine)、ニトロキソリン(Nitroxoline)、ノガラマイシン(Nogalamycin)、非リピンスキー分子(non-Lipinski molecules)、ノルジヒドログアイアレチン酸(Nordihydroguaiaretic Acid)、ノルレボルファノール(Norlevorphanol)、ノルモルヒネ(Normorphine)、ノボビオシン(Novobiocin)、オレアンドマイシン(Oleandomycin)、オリボマイシン(Olivomycins)、オルメサルタン(Olmesartan)、オルサラジン(Olsalazine)、オマリズマブ(Omalizumab)、オピプラモール(Opipramol)、オルノプロスチル(Ornoprostil)、オリザノールA(Oryzanol A)、ガナキソロン(Ganaxolone)、オキサセプロール(Oxaceprol)、オキサメタシン(Oxametacine)、オキシコドン ペンタゾシン(Oxycodone Pentazocine), オキシコドン(Oxycodone)、オキシモルフォン(Oxymorphone)、オキシフェンブタゾン(Oxyphenbutazone)、オキシテトラサイクリン(Oxytetracycline)、パクリタキセル(Paclitaxel)および他の公知のパクリタキセルアナログ、パクリタキセル、パリペリドン パルミテート(Paliperidone Palmitate)、パリペリドン(Paliperidone)、パリビズマブ(Palivizumab)、p-アミノサリチル酸ヒドラジド(p-Aminosalicylic acid hydrazide)、p-アミノサリチル酸(p-Aminosalicylic acid)、パニペネム(Panipenem)、パロモマイシン(Paromomycin)、ペシロシン(Pecilocin)、ペグフィルグラスチム(Pegfilgrastim)、ペグインターフェロン アルファ-2a(Peginterferon alfa-2a)、ペンブトロール(Penbutolol)、ペンシクロビル(Penciclovir)、ペントスタチン(Pentostatin)、ペプロマイシン(Peplomycin)、ペプチド模倣物、ペプチド、ペリソキサール(Perisoxal)、フェナクトロピニウム クロリド(Phenactropinium chloride)、フェナゾシン(Phenazocine)、フェナゾピリジン(Phenazopyridine)、フェノコール(Phenocoll)、フェノペリジン(Phenoperidine)、フェントラミン(Phentolamine)、アミノサリチル酸フェニル(Phenyl aminosalicylate)、フェニルラミドール(Phenylramidol)、フェニルサリチレート(Phenylsalicylate)、ピルドララジン(Pildralazine)、ピメクロリムス(Pimecrolimus)、ピンドロール(Pindolol)、ピパサイクリン(Pipacycline)、ピラルビシン(Pirarubicin)、ピロキシカム(Piroxicam)、p-ラクトフェネチド(p-Lactophenetide)、プラウノトール(Plaunotol)、プリカマイシン(Plicamycin)、PNA、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、ポリミキシン(Polymyxin)、ポサコナゾール(Posaconazole)、プレドニゾロン(Prednisolone)、プレドニゾン(Prednisone)、プリマイシン(Primycin)、プリスチナマイシン(Pristinamycin)、プロプラノロール(Propranolol)、タンパク質、プロトベラトリン(Protoveratrines)、ピューロマイシン(Puromycin)、ピリスクシデアノール(Pyrisuccideanol)、クエチアピン(Quetiapine)、エゼチミブ(Ezetimibe)、キニーネ(Quinine)、キヌプリスチン(Quinupristin)、ラロキシフェン(Raloxifene)、ラルテグラビル(Raltegravir)、ラモプラニン(Ramoplanin)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、ラニムスチン(Ranimustine)、ラノラジン(Ranolazine)、ラブコナゾール(Ravuconazole)、レスシメトール(Rescimetol)、レシキモド(Resiquimod)、レチノイン酸(Retinoic acid)(全てのtrans-レチノイン酸を含む)、リバビリン(Ribavirin)、リボスタマイシン(Ribostamycin)、リファブチン(Rifabutin)、リファラジル(Rifalazil)、リファミド(Rifamide)、リファンピシン(Rifampicin)、リファマイシンSV(Rifamycin SV)、リファペンチン(Rifapentine)、リファキシミン(Rifaximin)、リメキソロン(Rimexolone)、リオプロスチル(Rioprostil)、リセドロン酸(Risedronic Acid)、リストセチン(Ristocetin)、リチペネム(Ritipenem)、リトナビル(Ritonavir)、リツキシマブ(Rituximab)、ロリテトラサイクリン(Rolitetracycline)、ロキニメクス(Roquinimex)、ロサプロストール(Rosaprostol)、ロキサルソン(Roxarsone)、ロキシンドール(Roxindole)、ロキシスロマイシン(Roxithromycin)、ルビジェルビン(Rubijervine)、ルビテカン(Rubitecan)、S-アデノシルメチオニン(S-Adenosylmethionine)、サラゾスルファジミジン(Salazosulfadimidine)、サリシン(Salicin)、トラマドール(Tramadol)、サリチルアミド(Salicylamide)、サリチルアニリド(Salicylanilide)、サリナジド(Salinazid)、サルメテロール(Salmeterol)、サルサレート(Salsalate)、サンパトリラット(Sampatrilat)、サンサイクリン(Sancycline)、サキナビル(Saquinavir)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、セオカルシトール(Seocalcitol)、セベラマー(Sevelamer)、シッカニン(Siccanin)、シンバスタチン(Simvastatin)、シロリムス(Sirolimus)、シソマイシン(Sisomicin)、低分子ヘアピンRNA(small hairpin RNA)、低分子干渉RNA(small interfering RNA)、ソマトロピン(Somatropin)、ソリブジン(Sorivudine)、スペクチノマイシン(Spectinomycin)、スタブジン(Stavudine)、ストレプトリジギン(Streptolydigin)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、ストレプトニコジド(Streptonicozid)、ストレプトゾシン(Streptozocin)、スルファサラジン(Sulfasalazine)、スルフィナロール(Sulfinalol)、合成オリゴヌクレオチド、合成ペプチド、タクロリムス(Tacrolimus)、タクロリムス(Tacrolimus)、タリノロール(Talinolol)、テイコプラニン(Teicoplanin)、テリスロマイシン(Telithromycin)、テモポルフィン(Temoporfin)、テニポシド(Teniposide)、テノキシカム(Tenoxicam)、テヌアゾン酸(Tenuazonic Acid)、テルフェナジン(Terfenadine)、テリパラチド(Teriparatide)、テロフェナメート(Terofenamate)、テルタトロール(Tertatolol)、テストステロン(Testosterone)、チアンフェニコール(Thiamphenicol)、チオストレプトン(Thiostrepton)、チアゾフリン(Tiazofurin)、チモロール(Timolol)、チオトロピウム(Tiotropium)、チプラナビル(Tipranavir)、トブラマイシン(Tobramycin)、トルカポン(Tolcapone)、トロキサトン(Toloxatone)、トルテロジン(Tolterodine)、トポテカン(Topotecan)、Trans-レスベラトロール [(E)-3,4',5-トリヒドロキシスチルベン) (Trans-Resveratrol [(E)-3,4',5-trihydroxystilbene))、トラスツズマブ(Trastuzumab)、トラボプロスト(Travoprost)、トリアムシノロン(Triamcinolone)、トリフルリジン(Trifluridine)、トリマゾシン(Trimazosin)、トリモプロスチル(Trimoprostil)、トロスペクトマイシン(Trospectomycin)、トロキサシタビン(Troxacitabine)、ツベラクチノマイシン(Tuberactinomycin)、チロシジン(Tyrocidine)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、バルデコキシブ(Valdecoxib)、バルガンシクロビル(Valganciclovir)、バルルビシン(Valrubicin)、バンコマイシン(Vancomycin)、ベンラファキシン(Venlafaxine)、ビダラビン(Vidarabine)、ビミノール(Viminol)、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビンクリスチン(Vincristine)、ビンデシン(Vindesine)、ビオマイシン(Viomycin)、ビルギニアマイシン(Virginiamycin)、ボリコナゾール(Voriconazole)、キサントシリン(Xanthocillin)、キシボモール(Xibomol)、キシモプロフェン(Ximoprofen)、イングザオスA(Yingzhaosu A)、ザルシタビン(Zalcitabine)、ザナミビル(Zanamivir)、ジドブジン(Zidovudine)、ゾレドロン酸(Zoledronic Acid)、ゾレンドロン酸(Zolendronic Acid)、ゾルビシン(Zorubicin)、ゾスキダル(Zosuquidar)、およびそれらの混合物から選択される。
【0187】
別の態様において、各D1およびD3はOであり、少なくとも1つのD2はL2-B2であり、ポリマー主鎖とD2との間の結合はチオケタールを形成する。他の特に好ましいポリマーは、2つの生物活性部分を含み、ポリマー主鎖とD2との間の結合はチオケタールを形成する。したがって、好ましくは、ポリマーは、式(IDi)または(IDii)の繰り返し単位、例えば、式(Idi)または(Idii)の繰り返し単位を含む:
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
(式中、n、m、p、q、v、V、X、YおよびQは、式(I')、(I)または(I'')に関して上記で定義したとおりであり、L”は結合または-Z1-L'-Z2-(上記で定義したとおり)であり、Bは生物活性部分B2であるか、または、L”が結合である場合、Bは代わりにB-SまたはS-B-Sが生物活性部分B2であるように定義され得る)。n、m、p、q、v、V、X、YおよびQのそれぞれの好ましい実体は、式(I)、(I')、 (I'')、(IIa)、(IIa')、(IIb)、(IIb')、(IIc)および(IIc')のそれぞれに関して上記で記載したとおりである。L”が結合であり、インビボでC-O結合の加水分解によって生物活性部分が放出される場合、生物活性分子はB-SHまたはHS-B-SHである。
【0193】
式(IDi)または(IDii)の繰り返し単位、例えば、式(Idi)または(Idii)の繰り返し単位を含む好ましいポリマーにおいて、生物活性分子は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、ペプチド模倣物、抗体、抗原、合成オリゴヌクレオチド、アダリムマブ(Adalimumab)、エタネルセプト(Etanercept)、ペグフィルグラスチム(Pegfilgrastim)、リツキシマブ(Rituximab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、インスリン グラルギン(Insulin Glargine)、エポエチン アルファ(Epoetin Alfa)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、インターフェロン ベータ-1a(Interferon beta-1a)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、インスリン デテミル(Insulin Detemir)、インスリン アスパルト(Insulin Aspart)、インスリン リスプロ(Insulin Lispro)、フィルグラスチム(Filgrastim)、ダルベポエチン アルファ(Darbepoetin Alfa)、インターフェロン ベータ-1b(Interferon beta-1b)、アバタセプト(Abatacept)、リラグルチド(Liraglutide)、パリビズマブ(Palivizumab)、セツキシマブ(Cetuximab)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、デノスマブ(Denosumab)、4価ヒトパピローマ(Human Papilloma Quadrivalent)、ペグインターフェロン アルファ-2a(Peginterferon alfa-2a)、イピリムマブ(Ipilimubab)、免疫グロブリン、ドルナーゼ アルファ(Dornase Alfa)、セルトリズマブ(Certolizumab)、ナタリズマブ(Natalizumab)、ソマトロピン(Somatropin)、アルテプラーゼ(Alteplase)、ゴリムマブ(Golimumab)、およびそれらの混合物から選択される。
【0194】
あるいは、各D1およびD3はOであり、少なくとも1つのD2はL2-B2であり、ポリマー主鎖とD2との間の結合はオキシムである。したがって、好ましくは、ポリマーは、式(IE)の繰り返し単位、例えば、式(Ie)の繰り返し単位を含む:
【0195】
【0196】
【0197】
(式中、n、m、p、q、V、X、YおよびQは、式(I')、(I)または(I'')に関して上記で定義したとおりであり、L”は結合または-Z1-L'-Z2-(上記で定義したとおり)であり、Bは生物活性部分B2であるか、または、L”が結合である場合、Bは代わりにB-O-Nが生物活性部分D2であるように定義され得る)。n、m、p、q、V、X、YおよびQのそれぞれの好ましい実体は、式(I)、(I')、(I'')、(IIa)、(IIa')、(IIb)、(IIb')、(IIc)および(IIc')のそれぞれに関して上記で記載したとおりである。L”が結合であり、インビボでC=N結合の加水分解によって生物活性部分が放出される場合、生物活性分子はB-ONH2である。
【0198】
別の態様において、式(IE)または(Ie)中のオキシム結合はさらに還元され得る。オキシム結合の還元は、当技術分野で知られている任意の技術によって行うことができる。好ましくは、この態様において、ポリマーは式(IE')の繰り返し単位、例えば、式(Ie')の繰り返し単位を含む:
【0199】
【0200】
【0201】
(式中、すべての記号は、式(IE)または(Ie)に関して上記で定義したとおりである)。
【0202】
特に好ましいポリマーは、式(IE)の繰り返し単位を含み、より好ましくは、式(Ie)の繰り返し単位を含む。
【0203】
ポリマー-抗体リンカー部分の構造
このセクションは、本発明の抗体-薬物複合体中に存在するリンカー部分の可能な構造的特徴を説明する。
【0204】
本発明の抗体-薬物複合体におけるリンカー部分は、少なくとも2つの別個の反応性官能基(ポリマーと反応して共有結合を形成する1つの官能基、および抗体と反応して共有結合を形成するさらなる官能基)を有する任意の適切な化合物に由来し得る。抗体-薬物リンカー部分は、ポリマー主鎖を生物活性部分に結合するために使用される任意のリンカー基と同じであっても異なっていてもよい(そのようなリンカー基が存在する場合)。好ましくは、抗体-薬物リンカー部分は、ポリマー主鎖を生物活性部分に結合するために使用されるリンカー基とは異なる。
【0205】
典型的には、ポリマー-抗体リンカーは、式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位中の-CD1-部分の炭素原子、または式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位中のY基を介してポリマーに共有結合している。典型的には、ポリマー-抗体リンカーは、ポリマー末端の1つでポリマーに共有結合している。あるいは、ポリマー-抗体リンカーは、ポリマー末端から遠位にあるケト基との縮合によりポリマーに共有結合している。しかし、好ましくは、ポリマー-抗体リンカーは、ポリマー末端から遠位にあるケト基との縮合によってポリマーに共有結合していない。
【0206】
典型的には、ポリマー-抗体リンカーは、抗体の反応性アミノ酸側鎖、例えば、システイン残基のチオール基、リジン残基のアミノ基、グルタミン酸残基またはアスパラギン酸残基のカルボン酸基、セレノシステイン残基のセレノール基を介して、または抗体中のポリペプチドの1つの主鎖のN-末端を介して、または抗体のフラグメント結晶化可能(Fc)領域に存在するオリゴ糖のヒドロキシル基を介して、またはグリカンまたは非天然残基のアルデヒドまたはヒドロキシルアミン基を介して、またはグリカンまたは非天然残基のアルキンまたはアジド基を介して抗体に共有結合している、
【0207】
ポリマーおよび抗体は、リンカー部分の同じ原子に独立して共有結合してもよく、またはリンカー部分の異なる原子に独立して共有結合してもよい。好ましくは、ポリマーおよび抗体は、リンカー部分の異なる原子に独立して共有結合している。
【0208】
本発明の抗体-薬物複合体で使用するための適切なリンカー部分には、チオール、マレイミド、モノブロモマレイミド、マレイミド類似体、ビニルスルホン、ビス(スルホン)、アレンアミド、ビニル-ピリジン、デヒドロアラニン、アルケン、ペルフルオロ芳香族分子、ジュリア-コシエンスキー(Julia-Kocienski)試薬のようなスルホン試薬、N-ヒドロキシスクシンアミド-エステル活性化カルボキシレート種(N-hydroxysuccinamide-ester activated carboxylate species)、アルデヒド、ケトン、ヒドロキシルアミン、アルキンおよびアジドに由来するリンカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0209】
したがって、チオール、マレイミド、モノブロモマレイミド、マレイミド類似体、ビニルスルホン、ビス(スルホン)、アレンアミド、ビニル-ピリジン、デヒドロアラニン、アルケン、ペルフルオロ芳香族種(perfluoroaromatic species)、ジュリア-コシエンスキー試薬のようなスルホン試薬、N-ヒドロキシスクシンアミド-エステル活性化カルボキシレート種、アルデヒド、ケトン、ヒドロキシルアミン、アルキンおよびアジドの(a)ポリマー主鎖と(b)抗体の両方との反応は、適切なリンカー基Lをもたらす。ビス(スルホン)は、この状況では、(ビス-アルキル化)試薬として作用する。リンカーは、例えば光開始チオール-エン反応によってアルケンから誘導することができる。したがって、抗体上のチオール基は、アルケン官能基と反応して共有結合を生成することができる。デヒドロアラニンとの反応は、例えば抗体上のチオール基とのマイケル付加-脱離によって起こり得る。N-ヒドロキシスクシンアミド-エステル活性化カルボキシレート種は、抗体のリジン基と反応し得る。ケトン、アルデヒドおよび/またはヒドロキシルアミンは、オキシム結合形成またはヒドラジノ-ピクテ-スペングラー(HIPS)ライゲーションによって、グリカン修飾抗体または非天然残基にコンジュゲートすることができる。アルキンおよびアジドは、クリックケミストリー(アジド-アルキン環化付加)を介して、グリカン修飾抗体または非天然残基にコンジュゲートすることができる。
【0210】
抗体-薬物複合体の構造
最も好ましくは、本発明の抗体-薬物複合体は、式(III)または(IV)を有する:
【0211】
【0212】
(式中、
(I')は、式(I')の繰り返し単位、例えば、上記で定義された式(I)または式(I'')の繰り返し単位であり;
Abは、上記で定義された抗体またはその抗原結合フラグメントであり;
Lは、上記で定義されたポリマー-抗体リンカーであり;
R1は、OH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'およびNR'2から選択され;
Eは、HおよびR'から選択され;
R'は、上記で定義したとおりであり;
zは、2~50の整数である)。
【0213】
したがって、典型的には、本発明の抗体-薬物複合体は、式(III')または(IV')、例えば、式(IIIa)、(IIIb)、(IVa)または(IVb)を有する:
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
(式中、
Abは、上記で定義された抗体またはその抗原結合フラグメントであり;
Lは、上記で定義されたポリマー-抗体リンカーであり;
R1は、OH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'およびNR'2から選択され;
Eは、HまたはR'であり;
各n、m、p、q、V、X、Q、Y、D1、D2、D3およびR'は、上記で定義したとおりであり;
zは、2~50の整数である)。
【0221】
好ましくは、zは2~30、より好ましくは2~20、さらにより好ましくは2~15、最も好ましくは2~12の整数である。
【0222】
本発明の抗体-薬物複合体は、第二の標的化剤をさらに含み得る。好ましくは、標的化剤はポリマーに共有結合している。適切な標的化剤には、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、抗体、抗原、DNA、mRNA、低分子干渉RNA、低分子ヘアピンRNA、マイクロRNA、PNA、フォルダマー、炭水化物、炭水化物誘導体、非リピンスキー分子、合成ペプチドおよび合成オリゴヌクレオチドのような生体分子が含まれる。
【0223】
本発明の抗体-薬物複合体におけるポリマーは、典型的には、500~500,000 Da、より好ましくは1000~200,000 Da、さらにより好ましくは1500~36,000 Daの重量平均分子量を有する。好ましくは、ポリマーは、500~500,000 Da、より好ましくは1000~200,000 Da、さらにより好ましくは1500~25,000 Da、さらにより一層好ましくは2000~20,000 Daの数平均分子量を有する。好ましくは、ポリマーは、1~5、より好ましくは1.05~4.8、さらにより好ましくは1.1~2.4、さらにより一層好ましくは1.1~1.5の多分散性を有する。
【0224】
本発明の抗体-薬物複合体中に存在する生物活性部分は、好ましくは32~100,000 Daの分子量を有する。生物活性部分は、有機低分子、すなわち非ポリマーであってよい低分子薬物であってもよく、またはポリマーであってもよい。好ましくは、本発明の抗体-薬物複合体は、乾燥抗体-薬物複合体の重量に対して、0.5~90 wt%、より好ましくは0.75~70 wt%、さらにより好ましくは1~60 wt%、さらにより一層好ましくは1.5~50 wt%、さらにより好ましくは1.75~25 wt%、最も好ましくは2~10 wt%の生物活性部分を含む。本発明の抗体-薬物複合体の重要な利点は、比較的多量の生物活性分子をポリマーに組み込むことができる点である。さらに、複数のポリマーが単一の抗体に結合し得る。これらの要因は、結果として、高い生物学的活性分子の搭載量(loadings)を達成し得ることを意味する。典型的には、薬物対抗体比(drug-to-antibody ratio; DAR)は、4:1以上、好ましくは5:1以上、より好ましくは8:1以上、さらにより好ましくは10:1以上、さらにより一層好ましくは12:1以上、さらにより好ましくは15:1以上、最も好ましくは16:1以上、例えば20:1以上である。
【0225】
本発明の抗体-薬物複合体における各生物活性部分B1、B2および/またはB3は同じであってもよい。しかし、好ましくは、本発明の抗体-薬物複合体は、少なくとも2つの異なる生物活性部分、例えば、2、3または4つの異なる生物活性部分を含む。
【0226】
本発明の抗体-薬物複合体中に存在する好ましい生物活性部分は、抗感染薬、抗生物質、抗菌薬(antibacterial)、抗微生物薬(antimicrobial)、抗炎症薬、鎮痛薬、抗高血圧薬、抗真菌薬、抗結核薬、抗ウイルス薬、抗がん薬、抗血小板薬、抗マラリア薬、抗けいれん薬、心臓保護薬(cardio protective)、抗寄生虫薬、抗原虫薬、抗トリパノソーマ薬、抗住血吸虫症薬(antischistosomiasis)、抗腫瘍薬、抗緑内障薬、精神安定剤、催眠薬、抗けいれん薬、抗パーキンソン病薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗糖尿病薬または抗アレルギー薬から選択される薬物である。
【0227】
本発明の抗体-薬物複合体中に存在する特に好ましい生物活性部分は、オーリスタチン(auristatins)(例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)およびMMAF)、ドラスタチン(dolastatins)、メイタンシノイド(maytansinoids)(例えば、DM1およびDM4)、ツブリシン(tubulysins)、カリケアマイシン(calicheamicins)、デュオカルマイシン(duocarmycins)、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)、カンプトテシン(camptothecin)、カンプトテシンアナログ(camptothecin analogues)、アマトキシン(amatoxin)、ドキソルビシン(doxorubicin)およびα-アマニチン(α-amanitin)から選択される。
【0228】
典型的には、本発明の抗体-薬物複合体は、水への溶解度が少なくとも10 mg/mL、好ましくは少なくとも30 mg/mL、より好ましくは少なくとも50 mg/mL、さらにより好ましくは少なくとも75 mg/mL、最も好ましくは少なくとも100 mg/mLである。
【0229】
本発明はまた、ポリマーからの生物活性部分の放出がpH感受性であり、前記生物活性部分とポリマーの繰り返し単位またはそれが共有結合しているリンカー基との間の結合の性質に依存する、本明細書に記載の抗体-薬物複合体を提供する。
【0230】
あるいは、抗体は、代替形態の標的化剤によって置き換えられてもよい。したがって、本発明はまた、以下を含む標的化剤-薬物複合体を提供する:
(i) 標的化剤;
(ii) 式(I')の繰り返し単位を含むポリマー:
【0231】
【0232】
(式中、
各nおよび各pは独立して0または1~6の整数であり;
各mは独立して0または1~4の整数であり、好ましくは少なくとも1つのmは1であり;
Vは
【0233】
【0234】
であり;
--------は結合であり、存在しなくても、存在してもよく;
各D1は独立してOまたはL1-B1であり;
各D2は独立してOまたはL2-B2であり;
各D3は独立してOまたはL3-B3であり;
L1はリンカー基または結合であり、L2はリンカー基または結合であり、L3はリンカー基または結合であり、各B1、B2およびB3は生物活性部分であり;
ただし、ポリマー内の少なくとも1つのD1、D2またはD3基はOではなく、さらにD1、D2またはD3がOである場合、O原子とそれが結合する炭素原子の間に二重結合があり;
各qは1~8の整数であり;
XおよびYは、O、NH、NR'およびSから独立して選択され;
R'はC1-20ヒドロカルビルであり;
Qは-CH2(NMe(C=O)CH2)o-、-T1O(CH2CH2O)sT2-および-T1O(CH2CH2CH2O)sT2-から選択され、ここで、T1は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され、T2は二価のメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基から選択され;
oは0~100の整数であり;
sは0~150の整数である);および
(iii) 標的化剤とポリマーの両方に共有結合しているポリマー-標的化剤リンカー。
【0235】
好ましくは、ポリマーは式(I)の繰り返し単位を含む:
【0236】
【0237】
(式中、X、Y、D1、D2、D3、n、mおよびpは前記のとおりであり、Qは-T1O(CH2CH2O)sT2-および-T1O(CH2CH2CH2O)sT2-から選択される)。
【0238】
あるいは、ポリマーは、式(I'')の繰り返し単位を含む:
【0239】
【0240】
(式中、X、Y、Q、D1、D2、D3、n、mおよびpは前記のとおりである)。好ましくは、式(I'')の繰り返し単位において、Qは-CH2(NMe(C=O)CH2)o-である。より好ましくは、Qは-CH2(NMe(C=O)CH2)o-であり、Yは-NMeである。
【0241】
標的化剤は、ポリマーに共有結合している。適切な標的化剤には、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、抗体、抗原、DNA、mRNA、低分子干渉RNA、低分子ヘアピンRNA、マイクロRNA、PNA、フォルダマー、炭水化物、炭水化物誘導体、非リピンスキー分子、合成ペプチドおよび合成オリゴヌクレオチドのような生体分子が含まれる。
【0242】
ポリマー-標的化剤リンカーは、上記で定義されたポリマー-抗体リンカーと同じ構造のいずれかを想定することができる。
【0243】
最も好ましくは、本発明の標的化剤-薬物複合体は、式(V)または(VI)を有する:
【0244】
【0245】
【0246】
(式中、
(I')は、式(I')の繰り返し単位、例えば、上記で定義された式(I)または式(I'')の繰り返し単位であり;
Tarは、上記で定義された標的化剤であり;
Lは、上記で定義されたポリマー-標的化剤リンカーであり;
R1は、OH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'およびNR'2から選択され;
Eは、HおよびR'から選択され;
R'は、上記で定義したとおりであり;
zは、2~50の整数である)。
【0247】
したがって、典型的には、本発明の標的化剤-薬物複合体は式(V')または(VI')、例えば、式(Va)、(Vb)、(Via)または(VIb)を有する:
【0248】
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
(式中、
Tarは、上記で定義された標的化剤であり;
Lは、上記で定義されたポリマー-標的化剤リンカーであり;
R1は、OH、OR'、SH、SR'、NH2、NHR'およびNR'2から選択され;
Eは、HまたはR'であり;
各n、m、p、q、X、Q、Y、D1、D2、D3およびR'は、上記で定義したとおりであり;
zは、2~50の整数である)。
【0255】
好ましくは、zは2~30、より好ましくは2~20、さらにより好ましくは2~15、最も好ましくは2~12の整数である。本発明の標的化剤-薬物複合体におけるポリマーは、典型的には、500~500,000 Da、より好ましくは1000~200,000 Da、さらにより好ましくは1500~36,000 Daの重量平均分子量を有する。好ましくは、ポリマーは、500~500,000 Da、より好ましくは1000~200,000 Da、さらにより好ましくは1500~25,000 Da、さらにより一層好ましくは2000~20,000 Daの数平均分子量を有する。好ましくは、ポリマーは、1~5、より好ましくは1.05~4.8、さらにより好ましくは1.1~2.4、さらにより一層好ましくは1.1~1.5の多分散性を有する。
【0256】
本発明の標的化剤-薬物複合体中に存在する生物活性部分は、好ましくは32~100,000 Daの分子量を有する。生物活性部分は、有機低分子、すなわち非ポリマーであってよい低分子薬物であってもよく、またはポリマーであってもよい。好ましくは、本発明の標的化剤-薬物複合体は、乾燥抗体-薬物複合体の重量に対して、0.5~90 wt%、より好ましくは0.75~70 wt%、さらにより好ましくは1~60 wt%、さらにより一層好ましくは1.5~50 wt%、さらにより好ましくは1.75~25 wt%、最も好ましくは2~10 wt%の生物活性部分を含む。本発明の標的化剤-薬物複合体の重要な利点は、比較的多量の生物活性分子をポリマーに組み込むことができる点である。さらに、複数のポリマーが単一の標的化剤に結合し得る。これらの要因は、結果として、高い生物学的活性分子の搭載量(loadings)を達成し得ることを意味する。典型的には、薬物対標的化剤比(drug-to-targeting agent ratio)は、4:1以上、好ましくは5:1以上、より好ましくは8:1以上、さらにより好ましくは10:1以上、さらにより一層好ましくは12:1以上、さらにより好ましくは15:1以上、最も好ましくは16:1以上、例えば20:1以上である。
【0257】
本発明の標的化剤-薬物複合体における各生物活性部分B1、B2および/またはB3は同じであってもよい。あるいは、本発明の標的化剤-薬物複合体は、少なくとも2つの異なる生物活性部分、例えば、2、3または4つの異なる生物活性部分を含む。本発明の標的化剤-薬物複合体中に存在する好ましい生物活性部分は、抗体-薬物複合体に関して上記で記載したとおりである。
【0258】
典型的には、本発明の標的化剤-薬物複合体は、水への溶解度が少なくとも30 mg/mL、好ましくは少なくとも50 mg/mL、より好ましくは少なくとも75 mg/mL、最も好ましくは少なくとも100 mg/mLである。
【0259】
抗体-薬物複合体の製造方法
本発明はまた、本発明による抗体-薬物複合体の製造方法に関する。
【0260】
典型的には、そのような方法は次の工程を含む:
(a) 式(IIa)の化合物を式(IIb)の化合物と反応させること:
【0261】
【0262】
【0263】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(b) 工程(a)の生成物をポリマー-抗体リンカーと反応させること;
(c) 任意に、工程(b)の生成物を式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物と反応させること;
(d) 工程(c)の生成物を生物活性分子と反応させること、または工程(c)が実施されない場合は、工程(b)の生成物を生物活性分子と反応させること;および
(e) 工程(d)の生成物を抗体またはその抗原結合フラグメントと反応させること。
【0264】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 式(IIa)の化合物を式(IIb)の化合物と反応させること:
【0265】
【0266】
【0267】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(b) 任意に、工程(b)の生成物を式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物と反応させること;
(c) 工程(b)の生成物を生物活性分子と反応させること、または工程(c)が実施されない場合は、工程(b)の生成物を生物活性分子と反応させること;
(d) 工程(c)の生成物をポリマー-抗体リンカーと反応させること;および
(e) 工程(d)の生成物を抗体またはその抗原結合フラグメントと反応させること。
【0268】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 式(IIa)の化合物を式(IIb)の化合物および生物活性分子、および任意に、式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LGの化合物と反応させること:
【0269】
【0270】
【0271】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'、Q、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである);
(b) 工程(a)の生成物をポリマー-抗体リンカーと反応させること;および
(c) 工程(b)の生成物を抗体またはその抗原結合フラグメントと反応させること。
【0272】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 抗体またはその抗原結合フラグメントをポリマー-抗体リンカーと反応させること;
(b) 別個に、式(IIa)の化合物を式(IIb)の化合物と反応させること:
【0273】
【0274】
【0275】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(c) 工程(a)の生成物を工程(b)の生成物と反応させること;
(d) 任意に、工程(c)の生成物を式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物と反応させること;および
(e) 工程(d)の生成物を生物活性分子と反応させること、または工程(d)が実施されない場合は、工程(c)の生成物を生物活性分子と反応させること。
【0276】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 抗体またはその抗原結合フラグメントをポリマー-抗体リンカーと反応させること;
(b) 別個に、式(IIa)の化合物を式(IIb)の化合物と反応させること:
【0277】
【0278】
【0279】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(c) 任意に、工程(b)の生成物を式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物と反応させること;
(d) 工程(c)の生成物を生物活性分子と反応させること、または工程(c)が実施されない場合は、工程(b)の生成物を生物活性分子と反応させること;および
(d) 工程(a)の生成物を工程(d)の生成物と反応させること。
【0280】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 式(IIa')の化合物を式(IIb')の化合物と反応させること:
【0281】
【0282】
【0283】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(b) 工程(a)の生成物をポリマー-抗体リンカーと反応させること;
(c) 任意に、工程(b)の生成物を式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物と反応させること;
(d) 工程(c)の生成物を生物活性分子と反応させること、または工程(c)が実施されない場合は、工程(b)の生成物を生物活性分子と反応させること;および
(e) 工程(d)の生成物を抗体またはその抗原結合フラグメントと反応させること。
【0284】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 式(IIa')の化合物を式(IIb')の化合物と反応させること:
【0285】
【0286】
【0287】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(b) 任意に、工程(b)の生成物を式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物と反応させること;
(c) 工程(b)の生成物を生物活性分子と反応させること、または工程(c)が実施されない場合は、工程(b)の生成物を生物活性分子と反応させること;
(d) 工程(c)の生成物をポリマー-抗体リンカーと反応させること;および
(e) 工程(d)の生成物を抗体またはその抗原結合フラグメントと反応させること。
【0288】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 式(IIa')の化合物を式(IIb')の化合物および生物活性分子、および任意に、式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LGの化合物と反応させること:
【0289】
【0290】
【0291】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'、Q、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである);
(b) 工程(a)の生成物をポリマー-抗体リンカーと反応させること;および
(c) 工程(b)の生成物を抗体またはその抗原結合フラグメントと反応させること。
【0292】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 抗体またはその抗原結合フラグメントをポリマー-抗体リンカーと反応させること;
(b) 別個に、式(IIa')の化合物を式(IIb')の化合物と反応させること:
【0293】
【0294】
【0295】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(c) 工程(a)の生成物を工程(b)の生成物と反応させること;
(d) 任意に、工程(c)の生成物を式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物と反応させること;および
(e) 工程(d)の生成物を生物活性分子と反応させること、または工程(d)が実施されない場合は、工程(c)の生成物を生物活性分子と反応させること。
【0296】
あるいは、当該方法は以下の工程を含む:
(a) 抗体またはその抗原結合フラグメントをポリマー-抗体リンカーと反応させること;
(b) 別個に、式(IIa')の化合物を式(IIb')の化合物と反応させること:
【0297】
【0298】
【0299】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(c) 任意に、工程(b)の生成物を式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物と反応させること;
(d) 工程(c)の生成物を生物活性分子と反応させること、または工程(c)が実施されない場合は、工程(b)の生成物を生物活性分子と反応させること;および
(e) 工程(a)の生成物を工程(d)の生成物と反応させること。
【0300】
上記の実施形態のいずれかにおいて、方法が、(i)式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LGの化合物を中間生成物に加える工程、続いて(ii)生物活性分子を加える工程の2つの連続する工程を含む場合、前記方法の工程(i)および(ii)を、式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LGの化合物が最初に生物活性分子と反応して、式HL1-B1、HL2-B2またはHL3-B3の化合物を形成し、その後、生成した化合物HL1-B1、HL2-B2またはHL3-B3が中間生成物と反応するように修正することもできる。
【0301】
特に好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a) 式(IIa)の化合物を式(IIb)の化合物と反応させること:
【0302】
【0303】
【0304】
(式中、R1、R2、n、m、p、q、X'、Y'およびQは上記で定義したとおりである);
(b) 工程(a)の生成物をポリマー-抗体リンカーと反応させること;
(c) 式HL1-LG、HL2-LGまたはHL3-LG(式中、L1、L2、L3およびLGは上記で定義したとおりである)の化合物を生物活性分子と反応させること;
(d) 工程(b)の生成物を工程(c)の生成物と反応させること;および
(e) 工程(d)の生成物を抗体またはその抗原結合フラグメントと反応させること。
【0305】
本発明の好ましい方法において、生物活性分子は、本明細書で定義されるものであるか、または本明細書で定義される生物活性分子の保護バージョンである。当技術分野でよく知られている従来の保護基戦略を、重合、官能化およびコンジュゲーション反応において使用することができる。本発明のさらに好ましい方法において、抗体は本明細書で定義されるとおりである。本発明のさらに一層好ましい方法において、ポリマー-抗体リンカー部分は、本明細書で定義されるとおりである。
【0306】
本発明の方法における重合工程は、好ましくは酵素的に、または重縮合、フリーラジカル連鎖成長重合または開環重合によって、最も好ましくは酵素的に行われる。
【0307】
医薬組成物
本発明の抗体-薬物複合体は、医薬組成物に組み込まれ得る。したがって、本発明は、本明細書で定義される抗体-薬物複合体、および1つまたは複数の医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、任意の従来の方法で調製することができる。医薬組成物は、本明細書に記載の1つまたは複数の異なる抗体-薬物複合体を含み得る。適切な担体、希釈剤および賦形剤は当技術分野でよく知られている。
【0308】
本発明の医薬組成物は、経口、全身(例えば、経皮、鼻腔内、経粘膜または坐剤により)、または非経口(例えば、筋肉内、静脈内または皮下)のいずれか1つまたは複数の経路によって患者に投与することができる。本発明の組成物は、錠剤、ピル、カプセル、半固形剤、散剤、徐放性製剤、溶液、懸濁液、エリキシル、エアロゾル、経皮パッチ、生体接着性フィルム、または他の適切な組成物の形態をとることができる。製剤の選択は、薬物投与の様式(例えば、経口投与の場合、錠剤、ピルまたはカプセルの形態の製剤が好ましい)および原薬の生物学的利用能などのさまざまな要因に依存する。
【0309】
本発明の医薬組成物は、滑沢剤、増粘剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、充填剤、結合剤、防腐剤および吸着促進剤、例えば、表面浸透剤などの一般的な医薬賦形剤をさらに含んでもよい。可溶化剤および/または安定化剤、例えばシクロデキストリン(CD)も使用することができる。当業者は、自身の目的に基づいて適切な賦形剤を選択することができるであろう。本明細書に記載の医薬品に使用できる一般的な賦形剤は、さまざまなハンドブック(例えば、D.E. Bugay and W.P. Findlay (Eds) Pharmaceutical excipients (Marcel Dekker, New York, 999)、E-M Hoepfner, A. Reng and P.C. Schmidt (Eds) Fiedler Encyclopedia of Excipients for Pharmaceuticals, Cosmetics and Related Areas (Edition Cantor, Munich, 2002)およびH.P. Fielder (Ed) Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete (Edition Cantor Aulendorf, 1989))に列挙されている。
【0310】
本発明の医薬組成物は、当技術分野でよく知られた手順を使用することにより、患者への投与後に速放性、持続放出性または遅延放出性の抗体-薬物複合体を提供するように製剤化することができる。医薬組成物中の抗体-薬物複合体の濃度は、ポリマーの性質、ポリマーへの薬物搭載量、抗体の同一性、組成、投与様式、治療または診断される状態、および投与される対象を含めた多くの要因に依存し、当業者によく知られた技術による選択に応じて変更または調整され得る。
【0311】
抗体-薬物複合体の医薬用途
本明細書に記載の抗体-薬物複合体および医薬組成物は、医薬適用に有用である。したがって、本発明は、疾患または状態の治療を必要とする患者における疾患または状態の治療に使用するための、本明細書に記載の抗体-薬物複合体を提供する。典型的には、本明細書に記載の抗体-薬物複合体および医薬組成物は、炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎およびアテローム性動脈硬化症)、代謝障害(例えば、糖尿病、インスリン抵抗性、肥満)、がん、細菌感染症(例えば、結核、肺炎、心内膜炎、敗血症、サルモネラ症、腸チフス(チフス熱)、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患)、ウイルス感染症、心血管疾患、神経変性疾患、神経障害、行動および精神障害(behavioural and mental disorders)、血液疾患、染色体障害、先天性および遺伝性疾患、結合組織疾患、消化器疾患、耳、鼻および喉の疾患、内分泌疾患、環境疾患、眼疾患、女性生殖器疾患、真菌感染症、心疾患、遺伝性がん症候群、免疫系疾患、腎臓および泌尿器疾患、肺疾患、男性生殖器疾患、口腔疾患、筋骨格系疾患、骨髄異形成症候群、神経系疾患、新生児スクリーニング、栄養疾患、寄生虫疾患、希少がんおよび皮膚疾患から選択される疾患の治療に使用するためのものである。
【0312】
一般に、本発明の抗体-薬物複合体は、その中に含まれる生物活性分子の治療有効量を患者に送達するために、ヒト患者に投与される。
【0313】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、治療されている疾患の重篤度、期間、進行(progression)、または発症(onset)を低減するかまたは改善するために、治療されている疾患の進展(advancement)を抑制するために、治療されている疾患に関連する症状の軽減(regression)を起こすために、治療されている疾患に関連する症状の再発、進展(development)、発症または進行を抑制するために、または別の治療法の予防または治療効果を促進または改善するために十分な生物活性分子の量を指す。患者に投与される生物活性分子の正確な量は、疾患または状態の種類および重篤度、ならびに一般的健康状態、年齢、性別、体重および薬物への耐性などの患者の特性に依存するであろう。それはまた、治療されている疾患の程度、重篤度および種類にも依存するであろう。当業者は、これらのおよび他の因子に依存する適切な投与量を決定することができるであろう。
【0314】
本明細書で使用される場合、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」および「治療する(treating)」は、本発明によるフィルムを患者に投与した結果生じる、治療されている疾患の進行、重篤度および/または期間の低減もしくは改善、または治療されている疾患の1つまたは複数の症状(好ましくは、1つまたは複数の識別可能な症状)の改善を指す。
【0315】
本発明はまた、ヒト患者において本明細書に記載の疾患または状態を治療する方法を提供し、当該方法は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗体-薬物複合体を、疾患または状態の治療を必要とする患者に投与することを含む。
【0316】
本発明はまた、ヒト患者における本明細書に記載の疾患または状態を治療するための医薬を製造するための、本明細書に記載の抗体-薬物複合体の使用を提供する。
【0317】
本発明の任意の1つまたは複数の抗体-薬物複合体は、本発明のADCおよび/または他の薬物または医薬組成物が有用性を有し得る疾患または状態の治療において、1つまたは複数の他の薬物または医薬組成物と組み合わせて使用することもできる。
【0318】
1つまたは複数の他の薬物または医薬組成物は、全身(例えば、経皮、鼻腔内、経粘膜または坐剤により)、または非経口(例えば、筋肉内、静脈内または皮下)のいずれか1つまたは複数の経路によって患者に投与することができる。1つまたは複数の他の薬物または医薬組成物の組成物は、錠剤、ピル、カプセル、半固形剤、散剤、徐放性製剤、溶液、懸濁液、エリキシル、エアロゾル、経皮パッチ、生体接着性フィルム、または他の適切な組成物の形態をとることができる。製剤の選択は、薬物投与の様式(例えば、経口投与の場合、錠剤、ピルまたはカプセルの形態の製剤が好ましい)および原薬の生物学的利用能などのさまざまな要因に依存する。
【0319】
本明細書で引用される刊行物、特許公報および他の特許文書は、言及により全体が本明細書に組み込まれる。本明細書では、単数形の用語に対する任意の言及はまた、その複数形を包含する。「含む(comprising)」、「含む(comprise)」または「含む(comprises)」という用語が使用される場合、当該用語は、それぞれ「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」もしくは「からなる(consists of)」によって、またはそれぞれ「から実質的になる(consisting essentially of)」、「から実質的になる(consist essentially of)」もしくは「から実質的になる(consists essentially of)」によって置き換えることができる。数値範囲または単一の数値への任意の言及は、その範囲または単一の値のおよその値も含む。式(I')、(I)または(I'')の繰り返し単位を有するポリマーへの任意の言及は、特に断りのない限り、その生理学的に許容される塩も包含する。特に断りのない限り、任意の%の値は、問題になっている(1または複数の)成分の相対的な重量に基づいている。
【実施例】
【0320】
以下は本発明を説明する実施例である。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0321】
実施例1: ポリマーの調製
式(I')のポリマーを合成し、以下の合成工程により、その後の抗体へのコンジュゲーションのためにマレイミド基に結合させた。
【0322】
工程a: ポリアミド主鎖の合成
ポリアミドを、2-オキソグルタル酸ジメチルとポリ(エチレングリコール)ビス(3-アミノプロピル)末端Mn~1,500(PEG 1500 ジアミン)の2つのビルディングブロック間の酵素的重縮合によって合成した(スキーム1)。
【0323】
【0324】
スキーム1: ポリアミド1の合成
Candida Antarctica リパーゼB (CALB)を固定化酵素ビーズ(10 w/w% CALBおよび90 w/w% アクリル樹脂を含むNovozymTM 435, (N435))として、反応前日の2時間、デシケーターで真空下で乾燥し、デシケーターで一晩保管した。これを次いで、PEG 1500 ジアミンを含む丸底フラスコに加えた。最後に、1.0 当量の2-オキソグルタル酸ジメチルを丸底フラスコに加え、ゆっくりとした窒素気流を反応混合物に流し続けた。全体として、使用した酵素ビーズは、全モノマー重量の10%に相当した。反応の第1段階では、バルクを、毎分200回転(rpm)のマグネチックスターラーで攪拌しながら1時間、オイルバスを使用してホットプレート上で75℃に加熱した。次いで、ジフェニルエーテル(300% モノマー重量)を加えて粘度を下げ、反応の第2段階の間、攪拌を300 rpmに上げながら温度を105℃に上げた。耐薬品性ダイアフラム真空ポンプを容器に接続し、継続的に作動させた。24時間後、反応を停止し、クロロホルムを加えてクエンチした。ポリマー生成物が溶解するまで放置した後、溶液を綿繊維を通して濾過し、酵素ビーズを除去した。最後に、濾液をヘキサンで3回洗浄することにより精製し、固体沈殿物を得た。ポリアミド1をN2下で乾燥させ、次いで真空下で乾燥させて、暗褐色のアモルファス固体を得た(4バッチのポリマーの収率 = 55-71%)。
【0325】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して、ポリマーの分子量と多分散性を分析した。分析には、ガード付きの2つの分析用PLGel 10 μm MiniMix-B 250 x 4.6 mmカラムを使用した。流速0.3 mL min
-1のクロロホルムを使用し、システムをポリスチレン標準で校正した。サンプルをクロロホルムに溶解し、注入前に0.45 μm PTFEシリンジフィルターで濾過した(
図1を参照)。
【0326】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)も使用して、ポリマーの分子量と多分散性を分析した。SEC条件は、PL-アクアゲル-OH 30、8 μm、300 x 7.5 mmカラム、溶離液として0.5 ml min
-1の水、およびPEG標準であった。サンプルを水に溶解し、注入前に0.45 μm PESシリンジフィルターで濾過した。ポリアミド1のSECデータは、1 (Mn = 1 kDaと1.8 kDa)と8 (Mn = 13.9 kDa)の間の繰り返し単位を持つポリマーの分布を示した(
図2を参照)。
【0327】
ポリアミド1を、RP-HPLC(C18カラム、溶離液システムとしてH
2O (0.1% TFA)およびACN)によって特徴付けた。ポリアミド1のRP-HPLCクロマトグラムを
図3に示す。ポリアミド1はRT(保持時間) = 9.38分で溶出するピークを示す(
図3)。
【0328】
ポリアミド1を真空下で完全に乾燥させ、NMR分析のためにCDCl
3に溶解した(
図4を参照)。しかしながら、生成物は異なる鎖長の混合物であるため、シグナルを解釈するのは簡単ではない。シグナルの帰属を確認するには、さらなる分析が必要であり、暫定的な帰属は次のように記載される:
1H NMR: 3.80ppm (4nH, m); 3.63ppm (124nH, m); 3.45 (4nH, m); 3.21ppm (2nH, t); 2.65ppm (2nH, t); 1.81ppm (2nH, m).
【0329】
工程b: ポリアミドのマレイミド官能化
前のセクションに記載した工程の後に得られたポリアミド1を、マレイミド基で官能化した(スキーム2を参照)。
【0330】
【0331】
スキーム2: ポリアミド1のマレイミド官能化
ポリアミド1を60 mg.ml-1の濃度でジクロロメタンに溶解した。溶液を攪拌してポリマーを溶解させた後、1.5当量のDIPEAを加えて、溶液のpHを9.0より上にした。その後、1.5当量の3-マレイミドプロピオン酸 N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを窒素のベル下で保持し、秤量したものを反応混合物に加え、室温で3時間攪拌した。この後、丸底フラスコの内容物を少なくとも3倍容量のヘキサン中で沈殿させた。固体沈殿物をジクロロメタンに溶解し、ヘキサンでさらに2回洗浄した。最後に、ポリアミド2を窒素下で、次いで真空下で乾燥させた。ポリアミド合成とそれに続くマレイミド官能化の全収率は、平均して約50%であることがわかった。
【0332】
反応をRP-HPLCによってモニターした(
図5を参照)。ポリマーのピークは、時間0での9.38分と比較して、RT = 9.5分であり、わずかに長い保持時間にシフトした。3-マレイミドプロピオン酸NHSエステルを過剰に使用することを考慮すると、ヘキサン洗浄後、RT = 5.75分のピークがクロマトグラムで確認できる。
【0333】
工程c: マレイミド官能化ポリアミドの精製
マレイミド官能化ポリアミド2を、セミ分取RP-HPLCにより精製した(
図6を参照)。この方法では分子量によるポリマーの分離はできないが、この方法で残留する出発物質を除去することができる。ポリマーをACN:H
2O (50:50 v/v%)に50 mg mL
-1の濃度で溶解し、13000 rpmで10分間遠心分離した。上清を回収し、ACN:H
2O (0.1% TFA)を13分間で30から56%のグラジエントで4 mL.min
-1の流速で使用するセミ分取RP-HPLCシステムに注入した。ポリマーのピークの時間ベースのフラクションを集め、凍結乾燥してRP-HPLC精製物を得た。
【0334】
RP-HPLCで精製したポリマーのクロマトグラムは、RT = 9.52分に単一のピークを示す(
図7を参照)。ポリマーのピークも、精製工程の前よりシャープである(
図8を参照)。
【0335】
RP-HPLCによる精製後のポリアミド2の
1H-NMRスペクトルを
図9に示す。しかしながら、生成物は異なる鎖長の混合物であるため、シグナルを解釈するのは簡単ではない。シグナルの帰属を確認するには、さらなる分析が必要であり、暫定的な帰属は次のように記載される:
1H NMR: 6.68ppm (2H, s); 3.80ppm (4nH, m); 3.62ppm (124nH, m); 3.44 (4nH, m); 3.20ppm (2nH, t); 2.64ppm (2nH, t); 2.47ppm (2H, t); 1.80-1.73ppm (2nH, m).
【0336】
1H-NMRスペクトルは、マレイミド官能化ポリアミド2の形成に成功したことを確認する。精製後、マレイミド基の存在を確認する、単一のマレイミドのピークがδ = 6.68 ppmに残っている。
【0337】
マレイミド官能化ポリアミド2の水溶性の測定
水溶液中のポリアミド2の溶解度を試験した。
図10の写真に撮影したサンプルによって示されるように、粗製およびRP-HPLCで精製したポリアミド2は50 mg mL
-1以上の濃度で可溶性であった。
【0338】
実施例2: MMAEの調製
MMAEは、ポリアミド2へのコンジュゲーションのための薬物の例として選択された。
【0339】
自己崩壊性(self immolative)のp-アミノベンジルオキシカルボニル(p-aminobenyloxycarbonyl)(PABC)リンカーによって隔てられた、カテプシンB感受性バリン-シトルリン(Val-Cit)ジペプチドで修飾されたMMAEとして、MMAE毒剤を使用した。以下に詳述する合成手順によるオキシム結合形成によりMMAEのポリアミド2へのコンジュゲーションを可能にするために、リンカー(またはクロスリンカー)をMMAEに導入した。
【0340】
工程a: Fmoc-Val-Cit-PABC-MMAEからのFmocの除去
Fmoc-Val-Cit-PABC-MMAEからのFmocの除去は、ジエチルアミンの存在下で行った(スキーム3)。
【0341】
【0342】
スキーム3: Fmoc-Val-Cit-PABC-MMAEからのFmocの除去
135 mgのFmoc-Val-Cit-PABC-MMAE (MMAE)をパウダーボックス内で2 mLの無水DMFに溶解し、10 mL丸底フラスコ(round bottom flask, RBF)に移した。RBFをN2下に数分間置き、次いで335 μlのジエチルアミンを2回に分けて加えた。反応混合物を室温、N2下で2.5時間攪拌した。反応を順相TLC(シリカゲル60 F254)によってモニターした。反応を停止した後、適切なロータリーエバポレーターシステムを使用して、混合物を減圧下で濃縮した。黄色の残渣をジエチルエーテルで3回洗浄した。生成物3を黄色の固形オイルとして回収した。
【0343】
工程b: NHS活性化アミノキシクロスリンカーのMMAEへのカップリング
(Boc-アミノオキシ)酢酸 N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル活性化 (NHS-活性化アミノキシ)クロスリンカーをMMAE 3にカップリングした(スキーム4)。
【0344】
【0345】
スキーム4: MMAE 3へのアミノキシクロスリンカーカップリング
MMAE 3を2 mLのDMFに溶解し、N2下で撹拌した。21 mgのNHS活性化アミノキシクロスリンカーをガラスバイアルに秤量し、1 mLのDMFに溶解した。次いで、この溶液を反応容器に加えた。最後に、20 μLの DIPEA/DMF(50:50 v/v%)を反応混合物に加えた。反応物を室温、N2下で18時間攪拌した。反応を順相TLCでモニターした。18時間反応後、反応溶媒を真空下で留去して固体生成物を得た。生成物MMAE 4をジエチルエーテルで3回洗浄した。
【0346】
工程c: MMAE 4からのBoc除去
Boc保護基を、TFAの存在下でMMAE 4から除去した(スキーム5)。
【0347】
【0348】
スキーム5: MMAE 4からのBoc除去
45 mgのMMAE 4をRBFに入れ、次いで3 mLのDCM/TFA/TIS (82.5:15:2.5 v/v%)を加えた。RBFを氷浴に入れ、反応をTLCでモニターした。2.5時間後、反応溶媒を真空下で留去した。MMAE 5をジエチルエーテルで1回洗浄した後、オキシムカップリングのためにDMA(400 μL)に溶解した。LC-MSおよびHPLC分析のためにサンプルを採取した。LC-MSにより、所望の生成物MMAE 5がm/z = 598.95に観察されるピークとして得られたことを確認した(
図11を参照)。
【0349】
実施例3: ポリアミドへのMMAEコンジュゲーション
オキシム結合形成により、MMAE 5をポリアミド2にコンジュゲートした(スキーム6)。
【0350】
【0351】
スキーム6: オキシム結合形成によるポリアミド2へのMMAE 5コンジュゲーション
30 mgのポリアミド2を、1 mLのDMA中で完全に溶解するまで室温で攪拌した。次いで、この溶液を、200 μLのDMA中に推定20 mgのMMAE 5を含む反応容器に移した。追加の600 μLのDMAを加えた。最後に、200 μLのH2OをRBFに加えた。反応物を室温で24時間攪拌した。次いで、20 μLのアセトンを加えて反応をクエンチし、RP-HPLC精製のためにMMAEピークをより長い保持時間にシフトさせた。2 mLのDMA/H2O (90:10 v/v%)中の50 mgのMMAEポリアミド複合体6を、セミ分取RP-HPLC(C18カラム)によって精製した。
【0352】
RP-HPLCによる精製後のMMAEポリアミド複合体6の
1H NMRシグナルを
図12に示す。シグナルの帰属を確認するには、さらなる分析が必要であり、暫定的な帰属は次のように記載される:
1H NMRは、δ = 3.56 ppmのPEG基、δ = 6.75 ppm のマレイミド基、MMAE脂肪族(δ = 0.94-0.81 ppm)および芳香族(δ = 7.59-7.32 ppm)基の存在を特徴付けるシグナルを示した。
【0353】
実施例4: MMAEポリアミド複合体6のトラスツズマブへのコンジュゲーションによるADCの調製
MMAEポリアミド トラスツズマブADCは、マレイミド基を含むMMAEポリアミド複合体6のシステイン残基のチオール基へのコンジュゲーション、ジスルフィド結合の還元の後、チオエーテル結合の形成により生成された。。表1に記載されているように、部分的に還元されたハーセプチン(トラスツズマブ)と還元されていないハーセプチンを使用して、コンジュゲーション反応を設定した。
【0354】
【0355】
プロテインAカップリングビーズカラムを利用したIgG精製キットを使用して、過剰な複合体6を除去し、MMAEポリアミド トラスツズマブADCおよびカップリングされていないトラスツズマブのみを残した。
【0356】
実施例5: MMAEポリアミド トラスツズマブADCでの細胞生存率アッセイ
SKBR3細胞(乳がん細胞株)に対する活性についてMMAEポリアミド トラスツズマブADCを試験した(
図13を参照)。CellTitre Glo発光試薬を適用する前に、サンプルを細胞に72時間添加した。濃度はタンパク質のpMとして示す。
【0357】
MMAEポリアミド トラスツズマブADCは SKBR3細胞に対して活性であり、推定タンパク質濃度IC50は158.5 pMである。
【国際調査報告】