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特表2022-516040電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20220216BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220216BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20220216BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L5/00 F
A23L5/10 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021536404
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2019083288
(87)【国際公開番号】W WO2020126436
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18215630.7
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19189901.2
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521271624
【氏名又は名称】クリスプ・センセーション・ホールディング・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Crisp Sensation Holding B.V.
【住所又は居所原語表記】Valeton 3,5301 LW Zaltbommel,the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ヘルミンク、トム
(72)【発明者】
【氏名】カルスベーク、ヤスペル・ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ドンケラール、ラウラ・ヘンリエッタ・ヘラルディーナ
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B035LC12
4B035LE17
4B035LG04
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG21
4B035LG22
4B035LG24
4B035LG25
4B035LG26
4B035LG27
4B035LG28
4B035LG35
4B035LG47
4B035LP07
4B035LP16
4B035LP26
4B035LP35
4B035LP43
4B036LE04
4B036LF13
4B036LH05
4B036LH11
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH15
4B036LH22
4B036LP03
4B036LP12
4B036LP17
(57)【要約】
本発明は、電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品を製造する方法であって、
a)具材組成物を準備すること、
b)穀粉を40~70重量%、脂肪を10~40重量%及び水を12~40重量%含む、塑性変形可能な穀粉生地を準備すること、
c)一塊の具材組成物を穀粉生地の層で包んで、包まれた具材を製造すること、ここで、一塊の具材組成物の重量は5~90gであり、生地の層の平均厚さは0.5~2mmである、
d)包まれた具材の表面を接着組成物でプレコーティングして、プレコーティングされた製品を製造すること、
e)プレコーティングされた製品の表面にクラムを付けて、パン粉付き製品を製造すること、
f)パン粉付き製品を揚げて、フライ製品を製造すること、
g)フライ製品をコア温度が-12℃未満となるまで冷凍すること、を含む方法に関する。
たとえパン粉付き冷凍食品を冷凍庫で半年まで保存したとしても、当該冷凍食品を電子レンジで加熱して、サクサクした外皮を有する調理済み製品を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品を製造する方法であって、
a)含水量が少なくとも約40重量%の具材組成物を準備すること、
b)穀粉を40~70重量%、脂肪を10~40重量%及び水を12~40重量%含む、塑性変形可能な穀粉生地を準備すること、
c)一塊の前記具材組成物を前記穀粉生地の層で包んで、包まれた具材を製造すること、ここで、前記一塊の具材組成物の重量は5~90gであり、前記生地の層の平均厚さは0.5~2mmである、
d)前記包まれた具材の表面を接着組成物でプレコーティングして、プレコーティングされた製品を製造すること、
e)前記プレコーティングされた製品の表面にクラムを付けて、パン粉付き製品を製造すること、
f)前記パン粉付き製品を揚げて、フライ製品を製造すること、
g)前記フライ製品をコア温度が-12℃未満となるまで冷凍すること、を含む方法。
【請求項2】
前記具材組成物の含水量は約50~約90重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生地は脂肪を15~35重量%含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生地に含まれる前記脂肪の融点は少なくとも40℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生地の層の平均厚さは0.75~1.5mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記具材組成物の含水量は少なくとも60重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記具材組成物は、ゼラチン、並びに/又はデンプン、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、ペクチン、アルギン酸塩、アラビアゴム、ジェラン、カラギーナン、ガラクトマンナン、キサンタンガム及びそれらの組合せから選択される多糖類を水の重量に対して少なくとも4重量%含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記具材組成物は、デンプン、加工デンプン又はそれらの組合せを水の重量に対して少なくとも4重量%含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記具材組成物は、グリセロールと水とを1:9~2:1の重量比で含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着組成物は、多糖類、タンパク質及びそれらの組合せから選択される親水コロイドを0.3~10重量%含む水性流体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記クラムの含水量は10重量%未満であって、前記クラムは、直径が0.5~3mmの調理済み生地の粒子を少なくとも80重量%含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記フライ製品は極低温冷凍によって冷凍する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって得られる電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品。
【請求項14】
請求項13に記載の電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品を調理する方法であって、前記食品をコア温度が少なくとも60℃となるまで加熱することを含む、方法。
【請求項15】
前記食品をマイクロ波放射に曝露することによって加熱することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を含んだ具材を含む電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品を製造する方法であって、
a)水を含んだ具材組成物を準備すること、
b)塑性変形可能な穀粉生地を準備すること、
c)一塊の具材組成物を穀粉生地の層で包んで、包まれた具材を製造すること、
d)包まれた具材の表面を接着組成物でプレコーティングして、プレコーティングされた製品を製造すること、
e)プレコーティングされた製品の表面にクラムを付けて、パン粉付き製品を製造すること、
f)パン粉付き製品を揚げて、フライ製品を製造すること、
g)フライ製品を冷凍すること、を含む方法に関する。
【0002】
本発明は更に、上述の製造方法によって得られる電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品、及び当該電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品をコア温度が少なくとも60℃となるまで加熱することによって調理する方法に関する。
【0003】
本発明の電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品は、冷凍庫で半年まで保存することができ、電子レンジで加熱して、外皮がサクサクした調理済み製品を製造することを可能にする。
【背景技術】
【0004】
魚、魚介、家禽、赤身肉、野菜、ラグー等の具材を有する、バッター及びパン粉(クラム)が施されたフライ食品は、サクサクした食感及び黄金色の外観で人気がある。そのようなコーティングが施された食品は、一般に、様々な組合せのコーティング材料が施される食品基材を含む。コーティング材料は、天ぷら衣又は結合用バッター、接着用バッター、プレダスト及びパン粉を含む。
【0005】
バッター及びパン粉が施されたフライ食品のサクサクした食感は、フライ製品の調理後、特に基材(具材)の水分が多い場合に、急速に消失する。このサクサク感の消失は、歯応えの良いクラム層が水分を吸収することによって起こる。フライ後、水分は具材からクラム層に向かって移動し、乾燥した硬質のクラム粒子によって吸収される。これらの硬質剛性粒子は水分を吸収することによって弾性変形可能な粒子に変化する。この変化の影響は、消費者にとって非常に顕著である。
【0006】
水を含んだ具材を含むパン粉付き冷凍食品であって、電子レンジで再加熱して、冷凍庫で半年まで保存した後であっても外皮がサクサクした調理済み製品を製造することができるパン粉付き冷凍食品を提供することは、冷凍温度が水分の移動を妨げることはできないため、大変な課題である。実際に、クラム層による著しい水分吸収はパン粉付き冷凍食品の冷凍保存中に生じ、当該水分吸収はマイクロ波加熱された製品の食味、特にサクサク感に悪影響を及ぼす。
【0007】
湿った具材を含むパン粉付き冷凍食品の加熱にマイクロ波放射を使用することにもまた問題がある。マイクロ波放射は、具材中の水分を優先的に加熱し、特に水分が蒸気に変化した場合に、乾燥したクラム層へ水分を移動させる。上記のとおり、クラム層による水分吸収によって、クラム層のサクサク感は損なわれる。この問題は、パン粉付き冷凍食品をフライ鍋で調理するときには見られない。なぜならば、フライ調理では当該食品は外側から内側に向けて加熱され、熱い油と直接接触することによって水分が外皮から急速に蒸発するからである。
【0008】
国際公開第2012/101025号は、マイクロ波利用可能な冷凍衣付食品の製造方法であって、
固形又は固化した基材片を準備する工程、
当該基材片を水性プレコーティング液でコーティングし、プレコーティング片を形成する工程、
当該プレコーティング片に結合用パン粉のコーティングを施し、パン粉コーティング片を形成する工程、
当該パン粉コーティング片にバッターを施し、バッターコーティング片を形成する工程、
当該バッターコーティング片に被覆用パン粉のコーティングを施し、衣付片を形成する工程、
当該衣付片を揚げる工程、
当該フライコーティング片を凍結する工程、を含む方法を記載している。
【0009】
国際公開第2012/175930号は、電子レンジ調理可能な、又は再加熱可能な、食料品をコーティングする方法であって、
食用固体基材を水性プレコーティング組成物で予めコーティングする工程、
細粉パン粉の層を形成する工程、
水を55~80重量%、及び材料混合物を乾燥重量で20~45重量%含むコーティング組成物を塗布する工程であって、
当該材料混合物は、
大豆粉、トウモロコシ粉、米粉及び小麦粉から選択される1以上の粉を含む粉構成要素35~60重量%と、
非加工デンプン15~35重量%と、
ゲル化剤0.1~5重量%と、
加工デンプン0~15重量%と、
他の食用成分0~35重量%を含む、工程、
別のパン粉の層を形成する工程、を含む方法を記載している。
【0010】
国際公開第2017/118746号は、マイクロ波又は熱による再加熱可能又は調理可能な食品の製造方法であって、
固形又は固化した基材を準備する工程、
当該基材に第1水性コーティングを施す工程、
エチルセルロース、粒状穀粉成分、及び任意の1以上の更なる食用成分を含む内側コーティング層を施して、エチルセルロースでコーティングされたコアを形成する工程、
当該エチルセルロースでコーティングされたコアに第2水性コーティングを施す工程、
被覆用粒状穀粉成分を塗布してパン粉付き製品を形成する工程、
当該パン粉付き製品を揚げる工程、
フライ製品を冷凍する工程、を含む方法を記載している。
【0011】
米国特許出願公開第2004/0156954号明細書は、具材を含んだ電子レンジ調理可能な冷凍生地製品であって、
生地内で分散された穀粉、水、及びコーンミールを含む予め調理された生地と、
サクサク感維持剤を含む具材と、
を含み、
ここで、当該サクサク感維持剤は、平均粒径が約1mm~約7mmであるパン粉を含む、電子レンジ調理可能な冷凍生地製品を記載している。
【0012】
米国特許第6503546号明細書は、フィリングを含んだペストリー製品であって、
穀粉40~60%、第1脂肪20~40%、及び水10~25%を含む生の未焼成ペストリー生地と、
含水率が80~85%であり、加熱速度を十分に遅くして沸騰を抑制又は回避するフィリングと、
第2脂肪80~98%、膜形成タンパク質、及び親水コロイドを含む水分バリア層と、
を含み、
ここで、当該ペストリー製品は電子レンジで全体が焼かれ、
当該水分バリア層はフィリングとペストリー生地との間に配置され、実質的に、電子レンジ調理中にフィリングの水分がペストリー生地と接触することを防いでペストリー生地が電子レンジによる焼成中にサクサクになることを可能にする、ペストリー製品を記載している。
【0013】
Hot Pockets(登録商標)は、一般的に1種以上のチーズ、肉、又は野菜を含む電子レンジ調理可能なターンオーバー及びポケットサンドイッチの米国ブランドである。Hot Pockets(登録商標)は、Chef America Inc.においてポール・メラージ及び弟のデイヴィッドによって開発された。Chef America Inc.は、電子レンジで調理したときにカルツォーネ風のサンドイッチをサクサクした状態に保つ包装スリーブ及び生地製法を発明した。
【発明の概要】
【0014】
本発明者らは、水を含んだ具材を含むパン粉付き冷凍食品であって、電子レンジで再加熱して、冷凍庫で半年まで保存した後であっても外皮がサクサクした調理済み製品を製造することができるパン粉付き冷凍食品の製造を可能にする方法を開発した。当該方法は、
a)含水量が少なくとも約40重量%の具材組成物を準備すること、
b)穀粉を約40重量%~約70重量%、脂肪を約10重量%~約40重量%及び水を約12重量%~約40重量%含む、塑性変形可能な穀粉生地を準備すること、
c)一塊の具材組成物を穀粉生地の層で包んで、包まれた具材を製造すること、ここで一塊の具材組成物の重量は約5g~約90gであり、生地の層の平均厚さは約0.5mm~約2mmである、
d)包まれた具材の表面を接着組成物でプレコーティングして、プレコーティングされた製品を製造すること、
e)プレコーティングされた製品の表面にクラムを付けて、パン粉付き製品を製造すること、
f)パン粉付き製品を揚げて、フライ製品を製造すること、
g)フライ製品をコア温度が約-12℃未満となるまで冷凍すること、
を含む。
【0015】
少量の具材を、脂肪含有量が約10重量%~約40重量%の薄い生地層で包み、続いてプレコーティングし、クラムをまぶし、揚げることによって、焼いた(baked)生地層を含むサクサクした外皮を有するフライ製品が得られる。このフライ製品は、半年まで冷凍保存することができ、その間、焼いた(baked)生地層は水分が具材から外側のクラム層へ移動するのを効果的に防止する。従って、冷凍製品を電子レンジで加熱して、冷凍庫で半年まで保存した後であっても外皮がサクサクした調理済み製品を製造することができる。この点で、本発明の電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品は、ドウ生地の代わりにバッターを使用して調理した同様の電子レンジ調理可能な冷凍製品よりも優れている。
【0016】
理論に束縛されることを望むものではないが、高脂肪含有量の薄い生地層と少量の具材とを一緒に使用することが、本発明のパン粉付きフライ食品の非常に優れた冷凍保存安定性に関係していると考えられている。バッターと比較して、ドウ生地層は、冷凍保存及びマイクロ波加熱中にクラム層が水分を吸収するのをより効果的に防止する。更に、ドウ生地層は薄いので、クラム層のサクサク感に顕著な影響を及ぼさない。
【0017】
また、本発明は上述の方法によって得られる電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品と、このような電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品をコア温度が少なくとも60℃となるまで加熱することによって調理する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従って、本発明の第1の側面は、電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品を製造する方法であって、
a)含水量が少なくとも約40重量%の具材組成物を準備すること、
b)穀粉を約40重量%~約70重量%、脂肪を約10重量%~約40重量%及び水を約12重量%~約40重量%含む、塑性変形可能な穀粉生地を準備すること、
c)一塊の具材組成物を穀粉生地の層で包んで、包まれた具材を製造すること、ここで一塊の具材組成物の重量は約5g~約90gであり、生地の層の平均厚さは約0.5mm~約2mmである、
d)包まれた具材の表面を接着組成物でプレコーティングして、プレコーティングされた製品を製造すること、
e)プレコーティングされた製品の表面にクラムを付けて、パン粉付き製品を製造すること、
f)パン粉付き製品を揚げて、フライ製品を製造すること、
g)フライ製品をコア温度が約-12℃未満となるまで冷凍すること、
を含む方法に関する。
【0019】
本明細書で使用される「穀粉生地」という用語は、大部分が穀粉と水からなり、混練又は延ばすことができる十分に固い混合物を指す。この点で、穀粉生地は、大部分が穀粉と水からなるものの、通常ドウ生地よりも含水量が高く流し込むことができる混合物であるバッターとは異なる。
【0020】
本明細書で使用される「生地」又は「ドウ生地」という用語は、1以上の脂肪層を含む積層型生地も包含する。従って、積層型生地の層を使用して、包まれた具材を製造することができる。
【0021】
本明細書で使用される「脂肪」という用語は、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸及びリン脂質から選択される脂肪を指す。
【0022】
生地の脂肪含有量は、積層型生地の任意の薄い脂肪層に含有される脂肪を含む。
【0023】
本明細書において粒状材料の粒度分布について言及する場合はいつでも、粒度(又は粒径)分布は、メッシュサイズが異なる篩のセットを使用して決定される。
【0024】
本発明の方法は、上述の工程a)~g)に加えて追加の工程を含んでもよい。本方法は、例えば、生地、接着組成物及びクラムのそれぞれの層に加えて、1以上の層を追加することを含んでもよい。
【0025】
生地の脂肪含有量は、長期保存後マイクロ波加熱された食品のサクサク感に影響を及ぼし得る。生地は、脂肪を好ましくは約15重量%~約35重量%、より好ましくは約20重量%~約30重量%、最も好ましくは約22重量%~約28重量%含む。
【0026】
生地に含まれる脂肪が少なくとも約40℃、より好ましくは約42℃~約70℃、最も好ましくは約45℃~約55℃の融点を有する場合、冷凍安定性において特に良好な結果をもたらすことができる。生地の調製に使用することができる脂肪の例としては、水素添加植物油、パームステアリン及びこれらの混合物から選択される高融点脂肪、並びにこれらの高融点脂肪と植物油(例えばヒマワリ油、大豆油、ナタネ油、綿実油、ベニバナ油、オリーブ油及びこれらの混合物)とのブレンドが挙げられる。脂肪の融点は、ISO 6321:2002によって決定される。
【0027】
トリグリセリド及びジグリセリドは、生地に含まれる脂肪の少なくとも約90重量%を構成することが好ましい。トリグリセリドは、当該脂肪の少なくとも約80重量%を構成することが好ましく、少なくとも約85重量%を構成することがより好ましい。
【0028】
生地の含水量は、好ましくは約15重量%~約30重量%、より好ましくは約16重量%~約27重量%、最も好ましくは約17重量%~約24重量%である。
【0029】
生地は、穀粉を好ましくは約35重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%、最も好ましくは約48重量%~約52重量%含有する。生地の調製に使用することができる穀粉の例としては、小麦粉、ライ麦粉、米粉、大麦粉、トウモロコシ粉、オート麦粉及びそれらの組合せが挙げられる。穀粉の、好ましくは少なくとも約65重量%、より好ましくは少なくとも約75重量%、最も好ましくは少なくとも約85重量%が小麦粉である。
【0030】
本方法で使用される生地は積層型又は非積層型の生地であってもよい。生地は非積層型の生地であることが好ましい。
【0031】
生地の穀粉成分は、かなりの量のグルテンを含有することが好ましい。生地の調製中、グルテンは膨潤して細かなストランドの連続した網状組織を形成する。この疎水性タンパク質の網状組織は、水の移動を損なうと考えられている。生地は、(グルテンを含む)穀粉において少なくとも約8重量%のグルテンを含有することが好ましい。生地は、穀粉において約9重量%~約14重量%のグルテンを含有することがより好ましく、約11重量%~約14重量%のグルテンを含有することが最も好ましい。
【0032】
冷凍庫での長期保存後マイクロ波加熱された製品のサクサク感は、生地層の厚さに左右される。生地層は、好ましくは約0.6mm~約1.8mmの平均厚さ、より好ましくは約0.75mm~約1.5mmの厚さ、最も好ましくは約0.8mm~約1.2mmの厚さを有する。
【0033】
生地層の最小厚さは、好ましくは約0.2mm、より好ましくは0.4mm、最も好ましくは0.5mmである。
【0034】
生地層の最大厚さは、好ましくは5mm、より好ましくは4mm、最も好ましくは3mmである。
【0035】
生地層は、他の領域よりも厚い領域を含んでもよく、例えば、その領域において2枚の生地層が部分的に重なるように又は覆い被さるように配置されてもよい。当該より厚い領域は、具材組成物の表面の僅かな部分のみ覆うことが好ましい。基材の表面の、好ましくは約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満が、2mmを超える厚さを有する生地層によって覆われている。
【0036】
一塊の具材組成物の大きさもまた、長期冷凍保存後マイクロ波加熱された製品のサクサク感に影響を及ぼす。一塊の具材組成物の重量は、好ましくは約7g~約80g、より好ましくは約8g~約60g、最も好ましくは約10g~約40gである。
【0037】
特に好ましい態様によれば、生地層のミリメートル単位の平均厚さ(D)は、以下の式によって表されるように、一塊の具材組成物のグラム単位の重量(F)に比例している。
0.01≦(D/F≦0.2、
より好ましくは0.03≦(D/F≦0.1
【0038】
具材組成物は少なくとも約0.4の水分活性を有することが好ましい。本発明の利点は、具材組成物の含水量が高い場合に特に認められる。従って、好ましい態様では、具材組成物は、少なくとも約0.7の水分活性、より好ましくは約0.8~約1の水分活性、最も好ましくは約0.9~約1の水分活性を有する。
【0039】
具材組成物の含水量は、典型的には、約50重量%~約90重量%、最も好ましくは約60重量%~約80重量%である。
【0040】
具材組成物は、魚、肉、家禽、貝、エビ、チーズ、ラグー、野菜、キノコ類及びそれらの組合せから選択される食材を、好ましくは少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約60重量%、最も好ましくは少なくとも約80重量%含む。
【0041】
具材組成物は、特にみじん切り又は粉砕した断片で構成されている場合、具材組成物を一塊に分ける前に、例えば浸漬、浸透又は注入(例えば真空パルス注入)によって安定剤組成物を染み込ませていることが好ましい。好適な安定剤組成物の例としては、国際公開第97/03572号に記載されているものを挙げることができる。
【0042】
具材組成物中の水分による電子レンジ調理可能な製品の冷凍安定性への悪影響は、水を結合する多糖類又はタンパク質の相当量を含ませることによって軽減することができる。従って、具材組成物は、ゼラチン、並びに/又はデンプン、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、ペクチン、アルギン酸塩、アラビアゴム、ジェラン、カラギーナン、ガラクトマンナン、キサンタンガム及びそれらの組合せから選択される多糖類を、水の重量に対して好ましくは少なくとも約3重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%、最も好ましくは少なくとも約7重量%含む。
【0043】
特に好ましい態様によれば、具材組成物は、デンプン、加工デンプン又はそれらの組合せを、水の重量に対して少なくとも約3重量%、より好ましくは約4重量%~約10重量%、最も好ましくは約5重量%~約8重量%含有する。
【0044】
電子レンジ調理可能な製品の冷凍安定性は、具材組成物にグリセロールを含ませることによって向上することができる。有利には、具材組成物は、グリセロール及び水を約1:9~約2:1の重量比で含有する。具材組成物は、グリセロール及び水を、より好ましくは約1:8~約1:1の重量比、最も好ましくは約1:7~約1:2の重量比で含有する。
【0045】
具材組成物は、生地層で包む前に調理することが有利であり得る。これにより、製品を長時間揚げたり、冷凍状態から完全に調理したりする必要がなくなる。
【0046】
本方法においては、様々な方法によって一塊の具材組成物を生地層で包むことができる。
【0047】
一態様によれば、以下の方法で一塊の具材組成物を穀粉生地の層で包む:
穀粉生地をシート化して下側生地シート及び上側生地シートを形成し;
下側生地シート上に一定のパターンで具材を載せ;
その上に上側生地シートを載せ;
所定の領域において生地シートに圧力をかけて、具材の周囲において融合された生地シート間に具材を閉じ込め;
融合された生地シートを所定のパターンにカットして、包まれた具材を製造する。
【0048】
別の態様によれば、以下の方法で一塊の具材組成物を穀粉生地の層で包む:
穀粉生地を生地シートにし;
生地シート上に具材を載せ;
生地シートを折り畳んで具材を包み;
生地シートが重なり合う領域に圧力をかけて、生地の内側に具材を閉じ込める。
【0049】
更に別の態様によれば、以下の方法で一塊の具材組成物を穀粉生地の層で包む:
穀粉生地を生地シートにし;
生地シートを所定の水平速度で搬送し;
具材を生地シート上に一定の間隔で一つながりとなるように載せ;
生地シートの側部を具材を囲むように持ち上げて、重なり合う側部を具材の上方で圧着し;
具材間の生地シートを圧着して、生地の内側に具材を閉じ込め;
閉じ込めた具材間の生地の圧着領域をカットして、包まれた具材を解放する。
【0050】
更に別の態様によれば、以下の方法で一塊の具材組成物を穀粉生地の層で包む:
穀粉生地を押出機に供給し;
具材を押出機に供給し;
穀粉生地と具材とを長手方向に一つながりで連続的に共押出しし、別個の具材を穀粉生地内に配置して穀粉生地で囲み;
具材間の、囲んでいる穀粉生地を圧着して、生地の内側に具材を閉じ込め;
閉じ込めた具材間の穀粉生地の圧着領域をカットして、包まれた具材を解放する。
【0051】
本方法において、包まれた具材は接着組成物でプレコーティングして、次の工程で用いるクラムを、具材を囲んだ生地に確実に付着させる。これは、接着性の水性液体としての接着組成物を用いることによって実現することができる。
【0052】
特に好ましい態様によれば、接着組成物は、多糖類、タンパク質及びそれらの組合せから選択される親水コロイドを約0.3重量%~約10重量%、より好ましくは約0.4重量%~約5重量%、最も好ましくは約0.5重量%~約3重量%含む水性流体である。接着組成物において好適に用いられる親水コロイドの例としては、加工デンプン、加工セルロース、キサンタンガム、卵アルブミン及びそれらの組合せが挙げられる。
【0053】
接着組成物は、脂肪を好ましくは約1重量%~約15重量%、より好ましくは約2重量%~約12重量%、最も好ましくは約3重量%~約10重量%含有する。
【0054】
包まれた具材に塗布する接着組成物は、通常、水を少なくとも約80重量%、より好ましくは約88重量%~約96重量%含有する。液垂れを最小限に抑え、クラムの接着性を最大限高めるにするために、3番スピンドルを付けたブルックフィールド粘度計を使用して60rpmかつ20℃で測定したときの接着組成物の最小粘度は、300cPであることが好ましい。当該粘度は、約400cP~約2000cPであることがより好ましく、約500cP~約1500cPであることが最も好ましい。
【0055】
包まれた具材は、好適には、接着組成物を噴霧する又は刷毛で塗ることによって、接着組成物でプレコーティングすることができる。また、プレコーティングは、接着組成物で満たされた槽又は落下する接着組成物のカーテンに、包まれた具材を通過させることによって達成することができる。
【0056】
プレコーティングされた製品に塗布されるクラムの含水量は、好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約8重量%未満、更に好ましくは約6重量%未満、最も好ましくは約4重量%未満である。
【0057】
別の好ましい態様によれば、クラムは、直径が約0.5mm~約3mm、より好ましくは約1mm~約2.8mm、最も好ましくは約1.2mm~約2.7mmの調理済み(cooked)生地の粒子を少なくとも約80重量%含む。
【0058】
本発明に従って使用するクラムは、好ましくは、デンプンを少なくとも約50重量%含有する。当該クラムは、デンプンをより好ましくは約55重量%~約85重量%、最も好ましくは約65重量%~約75重量%含有する。
【0059】
クラムのグルテン含有量は、好ましくは約5重量%~約20重量%、より好ましくは約5重量%~約12重量%、最も好ましくは約7重量%~約11重量%である。
【0060】
特に好ましい態様によれば、本方法で使用するクラムは、穀粉、水及び追加の成分(任意)の混合物を押出し、押出物を粉砕することによって得られる。この混合物は、天然ガム、変性ガム、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸塩、アラビノガラクタン、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、キサンタン、加工デンプン及びそれらの組合せから選択される親水コロイドの穀粉を少なくとも約0.1重量%、より好ましくは約0.2重量%~約6重量%、最も好ましくは約0.25重量%~約4重量%含有する。親水コロイドは、天然ガム及びそれらの組合せから選択されることが好ましい。親水コロイドとして好適に用いることができる天然ガムの例としては、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アラビアゴム、トラガカント、カラヤガム、ガティガム、キサンタンガム及びそれらの組合せが挙げられる。親水コロイドは、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム及びそれらの組合せから選択されることが最も好ましい。
【0061】
本方法において使用するクラムは国際公開第2010/001101号に記載されている方法によって好適に製造することができ、その開示の内容は、あらゆる目的において本明細書で援用する。
【0062】
本方法では、好適には、第1コンベアと、第1コンベアの端部の下方に位置しクラム粒子の流れの下方に位置する第2無端コンベアとを備え、具材が第1コンベアから第2コンベア上の粒子層に落下するように構成されたクラムコーティング装置を用いることができる。第2コンベアがコンベア表面に落下するクラムのカーテンを通過することで、具材がクラム上に落下して、クラムが接着組成物の表面層に付着し、落下するクラム粒子のカーテンで具材がコーティングされてもよい。クラムコーティング装置は、コンベア上の具材の通過経路に広がるクラムのカーテンを供給するために、コンベア全体に広がる流出口を有するディスペンサを備えてもよい。ローラをコーティングされた具材に当接するように出口側かつコンベアの上方に配置して、細かなクラムの付着性を高めてもよい。
【0063】
本方法は、複数のクラム層を施すことを含んでもよい。例えば、接着組成物によるプレコーティングに続いて、細かなクラムの層を施し、その後接着組成物を更にコーティングして粗いクラムを付着させてもよい。これらのクラム層は共に、フライ後に歯応えの良いクラム層を形成する。
【0064】
パン粉付き製品の調製において、具材組成物約100重量部を、生地約20重量部~約200重量部、接着組成物約5重量部~約45重量部及びクラム約5重量部~約80重量部と組み合わせることが好ましい。具材組成物約100重量部を、生地約75重量部~約135重量部、接着組成物約20重量部~約40重量部及びクラム約30重量部~約60重量部と組み合わせることがより好ましい。
【0065】
一塊の具材組成物を生地で包む前に、具材組成物上にコーティング層を施すことが有利であり得る。そのようなコーティング層は、具材組成物から生地層への水分の移動を抑制する追加の水分バリア層として作用することができる。
【0066】
本方法におけるパン粉付き製品は、温度が好ましくは150℃~280℃、より好ましくは160℃~220℃、最も好ましくは170℃~210℃の油で揚げる。
【0067】
パン粉付き製品は、好ましくは0.5~4分間、より好ましくは1~3分間、最も好ましくは1.5~2.5分間、熱油と接触させることによって揚げることができる。
【0068】
フライ工程の最後には、フライ製品はコア温度が好ましくは少なくとも約70℃、より好ましくは少なくとも約72℃、最も好ましくは約75℃~約95℃に達する。
【0069】
パン粉付き製品は、例えばコンベアベルトを用いて熱油浴を通過させることにより熱油に浸漬することで、好適に揚げられる。フライ装置は、好ましくは、両層が油面下を通過する平行な無端ベルト二層を含み、下層により運ばれる製品は上層に接触することにより、フライ中の浮き上がりが防止される。コンベアベルトは、ワイヤスクリーン又は他の有孔構造を有してもよい。
【0070】
特に好ましい態様によれば、フライ製品は、熱い揚げ油から離した後、約10分以内、より好ましくは約5分以内、最も好ましくは約2分以内に、冷凍庫に入れる。
【0071】
本方法の特に好ましい態様においては、冷凍庫に入れるときには、フライ製品はコア温度が少なくとも約60℃、より好ましくは少なくとも約70℃、最も好ましくは少なくとも約72℃である。
【0072】
望ましくない水分の移動及び凝集を最小限に抑えるために、フライ製品はできるだけ迅速に冷凍すべきである。従って、非常に好ましい態様においては、フライ製品は極低温冷凍によって冷凍する。フライ製品の極低温冷凍は、好ましくは液体窒素又は液体二酸化炭素、最も好ましくは液体窒素の使用を含む。
【0073】
フライ製品は、コア温度が好ましくは-15℃未満、より好ましくは-20℃未満、最も好ましくは-22℃未満となるまで液体窒素と接触させる。
【0074】
フライ製品は、冷凍前又は冷凍後に包装することが好ましい。フライ製品は、冷凍後に包装することが最も好ましい。
【0075】
冷凍製品は、当該製品を完全に包み込む最小の球状又は楕円状の包装材の体積の少なくとも50%に相当する体積を有する一定の形状を有していることが好ましい。
【0076】
冷凍製品の包装は、製品に水が凝着することを防ぐために、含水量が非常に低い雰囲気下で行われることが好ましい。従って、湿度が10%未満の大気の下、又は窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、アルゴン及びそれらの組合せから選択される気体の下で冷凍製品を包装することが好ましい。気体は窒素、二酸化炭素及びそれらの組合せから選択されることがより好ましい。気体は窒素であることが最も好ましい。
【0077】
特に好ましい態様によれば、本発明の冷凍食品は、電子レンジ、又はマイクロ波と従来型の加熱とを組み合わせたオーブン若しくはマイクロ波と高周波(RF)加熱とを組み合わせたオーブンで食品を加熱することを指示する包装材で包装する。
【0078】
本発明の別の側面は、本明細書において上述した方法によって得られる電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品に関する。
【0079】
本発明に係る電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品の例としては、チキンナゲット、チーズバイト、フィッシュ・フィンガー、コロッケ及びビターバレンが挙げられる。
【0080】
本発明の更に別の側面は、本発明の電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品を調理する方法であって、当該食品をコア温度が少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも50℃、最も好ましくは60℃~105℃となるまで加熱することを含む、方法に関する。
【0081】
特に好ましい態様によれば、本方法は、上記食品をマイクロ波放射に曝露することによって加熱することを含む。当該食品は、電子レンジ又は電子レンジと熱オーブンとを組み合わせたオーブンでマイクロ波放射に曝露してもよい。
【0082】
本発明を以下の非限定的な実施例によって更に説明する。
【実施例
【0083】
以下に記載の手順でパン粉付き冷凍食品を準備した。
【0084】
生地の調製
生地のレシピを表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
生地を以下のとおりに調製する。
全ての材料を秤量する。全ての乾燥材料をキッチンエイド(KitchenAid)に導入し、水を加え、全ての材料がよく混ざり合うまで、速度「1」で2分間ドゥフックを用いて混合する。速度を「2」にし、更に3分間混合する。
混合物を200gの断片に分割する。
設定「1」でパスタローラー(KitchenAid、5KSMPRAパスタローラー)を使って練り、折り畳んで設定「1」で再度練り、生地を折り畳む。
封をした袋で包み、冷蔵庫に一晩保存する。
パスタ機で生地を延ばし、生地が通過する毎に1設定分隙間を狭くする(設定「1」から開始)。設定「3」のときに、細長い生地片を2つにカットし、設定「6」(シート厚さ:1.15mm)まで各片を個別に延ばす。
【0087】
具材組成物の調製
具材組成物の調製に使用するドライミックスのレシピを表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
具材組成物は、全ての乾燥材料を混合し、続いて水を加えることによって調製する(ドライミックス23重量部及び水77重量部)。
【0090】
一塊の具材組成物の生地包み
第1生地シートをトレイに置き、一塊の具材組成物を当該生地シートに載せる。水を第1生地シートにスプレーして、第1生地シートを、上に置いた第2生地シートにくっつける。2枚の生地シートを一緒に具材の周囲でプレスし、ラビオリ状の具材を包んだ生地を切断によって取り除く。
【0091】
クラム付け
具材を包んだ生地を接着組成物でプレコーティングする。接着組成物のレシピを表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
まず乾燥材料を混合し、続いて油を加えて水を加えることによって、接着組成物を調製する。乾燥材料が完全に水和するまで(10~20分間)混合を続ける。
【0094】
具材を包んだ生地を、数秒間、接着組成物中に完全に浸漬する。次に、プレコーティングされた製品を取り出し、薄いコーティング層が残るまで水気を切る。
【0095】
国際公開第2010/001101号に記載されている方法で調製した粗いクラム(粒径1.5mm~2.5mm)の厚い層の上にプレコーティングされた製品を置き、製品の上部を同じ粗いクラムで覆い、軽い圧力を加えることによって、プレコーティングされた製品に粗いクラムをつける。その後、製品を裏返し、クラムが付いていない側を下に向けてクラム層の上に再び置く。再度、製品の上部をクラムで覆い、続いて軽い圧力を加え、完全にクラムが付いた製品を取り出す。
【0096】
フライ揚げ及び冷凍
完全にクラムが付いた製品を180℃の油で揚げ、フライ後2分以内に窒素フリーザーに入れる。
【0097】
窒素フリーザーを-90℃に設定し、凍結時間を12分とする。窒素フリーザーから取り出したときの冷凍製品のコア温度は-24℃未満である。
【0098】
包装及び保存:
冷凍後、試料を直ちに防水性の包装材で包装する。試料を-24℃で保存する。
【0099】
マイクロ波加熱
パン粉付き冷凍食品を消費するために、冷凍状態(-24℃)で電子レンジに入れ、900W(製品の熱容量に依存する)で60~80秒間加熱することによって調理する。マイクロ波加熱後の製品のコア温度は60℃を超える。
【0100】
実施例1
本発明に係るパン粉付き冷凍食品(製品1)を、上述の手順で、一塊の具材組成物20gを用いて調製した。
【0101】
本発明によらないパン粉付き冷凍食品(製品A)を、一塊の冷凍具材組成物20gを接着組成物でコーティングし、続いて細かなクラムを付け、接着組成物でコーティングし、製品1の準備の際に使用したものと同じ粗いクラムを付けることによって、準備した。細かなクラムは国際公開第2010/001101号に記載のとおりに製造し、続いて粉砕し、粒径が0.8mm~1.5mm未満のクラムにふるい分けした。
【0102】
製品1及び製品Aの両者を180℃で2分間揚げ、-90℃で12分間冷凍した。次に、両製品を+4℃で保存して、水分移動を加速させた。
【0103】
クラムの含水量を経時的に測定した。結果を表4に示す。
【0104】
【表4】
【0105】
このデータは、生地層が水分バリア層として作用し、水分の移動を防止することを示す。
【0106】
実施例2
本発明に係るパン粉付き冷凍食品を、上述の手順で、一塊の具材組成物8gを使用し、フライ時間を2.5分とし、2種類の異なる生地(1種類は脂肪含有量が約15重量%の生地、もう1種類は脂肪含有量が約25重量%の生地)を使用して調製した。これら2種類の生地の組成を表5に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
2種類のパン粉付き冷凍食品を、-24℃で4、8、12、16及び20週間保存した後、消費するために電子レンジで調理した。訓練を受けたパネリストが、調理済み製品のサクサク感及び靱性を採点し評価した。これらの2つの特性を表6に示す1~5段階で採点した。
【0109】
【表6】
【0110】
パネルによる評価結果を表7に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
実施例3
本発明に係るパン粉付き冷凍食品を、上述の手順で、一塊の具材組成物8gを使用し、フライ時間を2.5分とし、脂肪含有量が20%~35%の4種類の異なる生地を使用して調製した。
【0113】
これら2種類の生地の組成を表8に示す。
【0114】
【表8】
【0115】
4種類のパン粉付き冷凍食品を、-24℃で4、8、12及び16週間保存した後、消費するために電子レンジで調理した。調理済み製品を、訓練を受けたパネリストが評価した。脂肪含有量25重量%の生地を用いて製造された製品は、当該製品が長期冷凍保存後によりサクサクしているという点で他の3種類の製品より優れていることが分かった。
【0116】
実施例4
本発明に係るパン粉付き冷凍食品を、上述の手順で、一塊の具材組成物8gを使用し、フライ時間を2.5分とし、4種類の異なる生地を使用して調整した。生地は、調製の際に4種類の異なる脂肪を使用する点で異なっていた。これらの4種類の異なる脂肪に関する詳細を表9に示す。
【0117】
【表9】
【0118】
4種類のパン粉付き冷凍食品を、-24℃で4、8、12、16及び20週間保存した後、消費するために電子レンジで調理した。調理済み製品を、実施例2と同じ方法で、訓練を受けたパネリストが評価した。(C=サクサク感;T=靭性)。結果を表10に示す。
【0119】
【表10】
【0120】
種類「4」の脂肪を含有する製品は、口の中に蝋のような感触が残ることが分かった。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ調理可能なパン粉付き冷凍食品を製造する方法であって、
a)含水量が少なくとも約40重量%の具材組成物を準備すること、
b)穀粉を40~70重量%、脂肪を10~40重量%及び水を12~40重量%含む、塑性変形可能な穀粉生地を準備すること、
c)一塊の前記具材組成物を前記穀粉生地の層で包んで、包まれた具材を製造すること、ここで、前記一塊の具材組成物の重量は5~90gであり、前記生地の層の平均厚さは0.5~2mmである、
d)前記包まれた具材の表面を接着組成物でプレコーティングして、プレコーティングされた製品を製造すること、
e)前記プレコーティングされた製品の表面にクラムを付けて、パン粉付き製品を製造すること、
f)前記パン粉付き製品を揚げて、フライ製品を製造すること、
g)前記フライ製品をコア温度が-12℃未満となるまで冷凍すること、を含む方法。
【請求項2】
前記具材組成物の含水量は約50~約90重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生地は脂肪を15~35重量%含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生地に含まれる前記脂肪の融点は少なくとも40℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生地の層の平均厚さは0.75~1.5mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記具材組成物の含水量は少なくとも60重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記具材組成物は、ゼラチン、並びに/又はデンプン、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、ペクチン、アルギン酸塩、アラビアゴム、ジェラン、カラギーナン、ガラクトマンナン、キサンタンガム及びそれらの組合せから選択される多糖類を水の重量に対して少なくとも4重量%含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記具材組成物は、デンプン、加工デンプン又はそれらの組合せを水の重量に対して少なくとも4重量%含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記具材組成物は、グリセロールと水とを1:9~2:1の重量比で含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着組成物は、多糖類、タンパク質及びそれらの組合せから選択される親水コロイドを0.3~10重量%含む水性流体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記クラムの含水量は10重量%未満であって、前記クラムは、直径が0.5~3mmの調理済み生地の粒子を少なくとも80重量%含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記フライ製品は極低温冷凍によって冷凍する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】