IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニヴァーシティー オブ ユタ リサーチ ファウンデーションの特許一覧

特表2022-516083多発性硬化症及び他の脱髄性疾患の検出及び治療に有用な組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】多発性硬化症及び他の脱髄性疾患の検出及び治療に有用な組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220216BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220216BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20220216BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20220216BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220216BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20220216BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220216BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALN20220216BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALN20220216BHJP
   C07K 16/12 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
G01N33/53 N
C12Q1/04
A61K45/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P37/06
A61P29/00
A61P25/28
A61K31/407
A61K31/546
G01N33/53 M
G01N33/543 545A
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/689 Z
C07K16/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537182
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019068068
(87)【国際公開番号】W WO2020139782
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】62/785,377
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/875,779
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508087147
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】クリーセル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー ケイル エフ
(72)【発明者】
【氏名】ベタリヤ プリーティダ
(72)【発明者】
【氏名】グレンジャー ジェニファー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA06
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR77
4B063QS25
4B063QX01
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZA02
4C084ZB08
4C084ZB11
4C084ZB32
4C084ZB33
4C084ZB35
4C086AA01
4C086AA02
4C086CC08
4C086CC12
4C086CC14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA02
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
本明細書で開示されているのは、多発性硬化症を含む脱髄性疾患を有するまたは有すると疑われる対象にて1以上の微生物を検出する方法である。また、本明細書で開示されているのは、微生物の検出に基づいて、脱髄の悪化を発症している、または経験している対象を治療する方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において脱髄性疾患を診断する方法であって、前記方法が、
a)微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を前記対象から入手することと;
b)1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ前記微生物特異的抗体が、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、前記1以上の微生物捕捉剤と前記試料をインキュベートすることと;
c)前記試料にて前記1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することと;
d)前記1以上の微生物特異的抗体が前記試料に存在する場合に、前記対象を脱髄性疾患であると診断することとを含む、前記方法。
【請求項2】
対象において脱髄性疾患を検出する方法であって、前記方法が、
a)表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的な微生物特異的抗体を含むと疑われる試料を前記対象から得ることと;
b)1以上の微生物捕捉剤のそれぞれが1以上の微生物特異的抗体に特異的であり、且つ前記1以上の微生物特異的抗体が、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、前記1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の1以上に結合して混合生物試料を生成することを可能にする条件で前記試料を前記1以上の微生物捕捉剤と接触させることと;
c)前記1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の少なくとも1つに特異的に結合して検出可能な複合体を形成するような条件下で前記混合生物試料をインキュベートすることと;
d)前記検出可能な複合体の存在を検出し、それによって、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在を検出することとを含み、
その際、前記混合生物試料における表1のリストから選択された1以上の微生物の存在は対象における脱髄性疾患を検出する、前記方法。
【請求項3】
前記対象が脱髄性疾患を有すると疑われる、または脱髄性疾患を有するリスクがある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記試料における前記1以上の微生物特異的抗体に特異的であるさまざまな微生物捕捉剤を用いて、工程b)及びc)を繰り返すことを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記試料が脳組織、脳脊髄液、脊髄組織、または血液である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記脱髄性疾患が多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎または最初のエピソードからなる症候群である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記対象がヒトである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記対象に抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤またはそれらの組み合わせを投与することを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
検出された前記1以上の微生物特異的抗体または微生物が表1、表2または表8のリストから選択される細菌である場合、抗菌剤が前記対象に投与され;検出された前記1以上の微生物特異的抗体または微生物が表1、表2、または表8のリストから選択されるウイルスである場合、抗ウイルス剤が前記対象に投与され;あるいは検出された前記1以上の微生物特異的抗体または微生物が表1、表2、または表8のリストから選択される真菌である場合、抗真菌剤が前記対象に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、表2に列挙された前記微生物の1以上に特異的な1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
さらに、表8に列挙された前記微生物の1以上に特異的な1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
さらに、表2に列挙された微生物の群から選択される1以上の微生物の存在を検出することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
さらに、表8に列挙された微生物の群から選択される1以上の微生物の存在を検出することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記試料における前記微生物特異的抗体の1以上の量を決定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記試料における1以上の核酸配列を増幅することを含み、その際、前記1以上の核酸配列は表1、表2または表8における前記微生物の1以上に対応する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記1以上の核酸配列を特異的に増幅するプライマー対を用いて前記1以上の核酸配列が増幅される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに、表1、表2、または表8における前記微生物の1以上に対応する前記1以上の核酸配列の発現が、対照における表1、表2または表8の前記微生物の同じ1以上の核酸配列の発現レベルと比べて過剰発現しているかどうかを決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出する工程がマイクロアレイによって検出することを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記検出する工程がELISAによって検出することを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
検出された前記1以上の微生物がAkkermansia属に由来する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
対象にて脱髄性疾患を診断し、且つ治療する方法であって、前記方法が、
a)微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を前記対象から入手することと;
b)1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ前記微生物特異的抗体が、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、前記1以上の微生物捕捉剤と共に前記試料をインキュベートすることと;
c)前記試料にて前記1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することと;
d)前記1以上の微生物特異的抗体が前記試料に存在する場合に、前記対象を脱髄性疾患であると診断することと;
e)i)検出された前記1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択される細菌である場合、抗菌剤を
ii)検出された前記1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択されるウイルスである場合、抗ウイルス剤を
iii)検出された前記1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択される真菌である場合、抗真菌剤を、あるいは
v)それらの組み合わせを前記対象に投与することとを含む、前記方法。
【請求項22】
対象にて脱髄性疾患を検出し、且つ治療する方法であって、前記方法が、
a)表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的な微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を前記対象から得ることと;
b)1以上の微生物捕捉剤のそれぞれが1以上の微生物特異的抗体に特異的であり、且つ前記1以上の微生物特異的抗体が、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、前記1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の1以上に結合して混合生物試料を生成することを可能にする条件で前記試料を前記1以上の微生物捕捉剤と接触させることと;
c)前記1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の少なくとも1つに特異的に結合して検出可能な複合体を形成するような条件下で前記混合生物試料をインキュベートすることと;
d)前記混合生物試料における表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在が対象にて脱髄性疾患を検出する、前記検出可能な複合体の存在を検出し、それによって、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在を検出することと、
e)i)検出された前記1以上の微生物が表1、表2、または表8のリストから選択される細菌である場合、抗菌剤を
ii)検出された前記1以上の微生物が表1、表2、または表8のリストから選択されるウイルスである場合、抗ウイルス剤を
iii)検出された前記1以上の微生物が表1、表2、または表8のリストから選択される真菌である場合、抗真菌剤を、あるいは
v)それらの組み合わせを前記対象に投与することとを含む、前記方法。
【請求項23】
前記対象が脱髄性疾患を有すると疑われる、または脱髄性疾患を有するリスクがある、請求項21~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
さらに、前記試料にて前記1以上の微生物に特異的であるさまざまな抗体を用いて、工程b)及びc)を繰り返すことを含む、請求項21~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記試料が脳組織、脳脊髄液、脊髄組織、または血液である、請求項21~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記脱髄性疾患が多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎または最初のエピソードからなる症候群である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記対象がヒトである、請求項21~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
さらに、前記試料にて1以上の微生物の存在を検出することを含み、その際、前記1以上の微生物が表2の群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
さらに、前記試料にて1以上の微生物の存在を検出することを含み、その際、前記1以上の微生物が表8の群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
さらに、調べた前記微生物のそれぞれについて前記試料にて前記抗体のレベルを決定することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
さらに、試料における1以上の核酸配列を増幅することを含み、その際、前記1以上の核酸配列は表1、表2または表8における前記微生物の1以上に対応する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記1以上の核酸配列を特異的に増幅するプライマー対を用いて前記1以上の核酸配列が増幅される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
さらに、表1における前記微生物の1以上に対応する前記1以上の核酸配列の発現が、対照における表1の前記微生物の同じ1以上の核酸配列の発現レベルと比べて過剰発現しているかどうかを決定することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記検出する工程がマイクロアレイによって検出することを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項35】
前記検出する工程がELISAによって検出することを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項36】
検出された前記1以上の微生物がAkkermansia属に由来する、請求項21または22に記載の方法
【請求項37】
試料にて1以上の抗体を検出する方法であって、前記方法が
a)表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的な微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を対象から得ることと;
b)1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ前記1以上の微生物特異的抗体が、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、前記1以上の微生物捕捉剤と共に前記試料をインキュベートすることと;
c)前記試料にて前記1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することとを含む、前記方法。
【請求項38】
前記1以上の微生物特異的抗体の存在の検出が脱髄性疾患を示す、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記試料が、脱髄性疾患を発症するリスクがある、または脱髄性疾患を有すると疑われる対象からのものである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記対象がヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記脱髄性疾患が多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎または最初のエピソードからなる症候群である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項42】
前記試料が脳組織、脳脊髄液、脊髄組織、または血液である、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
さらに、表2の群から選択される前記1以上の微生物の存在を検出することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
さらに、表8の群から選択される前記1以上の微生物の存在を検出することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
さらに、前記試料における前記微生物特異的抗体の1以上の量を決定することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記検出する工程がマイクロアレイによって検出することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記検出する工程がELISAによって検出することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
さらに、前記試料における1以上の核酸配列を増幅することを含み、その際、前記1以上の核酸配列は表1における前記微生物の1以上に対応する、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
さらに、表1における前記微生物の1以上に対応する前記1以上の核酸配列の発現が、対照における表1の前記微生物の同じ1以上の核酸配列の発現レベルと比べて過剰発現しているかどうかを決定することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記検出する工程がハイブリッド形成反応によって検出することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ハイブリッド形成反応がさらに、前記試料を1以上のプライマーセットとハイブリッド形成させることを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ハイブリッド形成反応がポリメラーゼ連鎖反応である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリメラーゼ連鎖反応が逆転写ポリメラーゼ連鎖反応である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記検出する工程が発現された配列タグによって検出することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記検出する工程が局在化によって検出することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
検出された前記1以上の微生物がAkkermansia属に由来する、請求項37に記載の方法
【請求項57】
試料にて1以上の微生物を検出する方法であって、前記方法が
a)表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物を含有すると疑われる試料を対象から得ることと;
b)1以上の微生物捕捉剤が表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に結合する、前記1以上の微生物捕捉剤と共に前記試料をインキュベートすることと;
c)前記試料にて表1、表2、または表8のリストから選択される前記1以上の微生物の存在を検出することとを含む、前記方法。
【請求項58】
さらに、前記試料における前記1以上の微生物の量を決定することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記1以上の微生物の存在の検出が脱髄性疾患を示す、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記試料が、脱髄性疾患を発症するリスクがある、または脱髄性疾患を有すると疑われる対象からのものである、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記対象がヒトである、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記脱髄性疾患が多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎または最初のエピソードからなる症候群である、請求項59または60に記載の方法。
【請求項63】
前記試料が脳組織、脳脊髄液、脊髄組織、または血液である、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
さらに、表2の群から選択される前記1以上の微生物の存在を検出することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項65】
さらに、表8の群から選択される前記1以上の微生物の存在を検出することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項66】
前記検出する工程がマイクロアレイによって検出することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項67】
前記検出する工程がELISAによって検出することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項68】
さらに、前記試料における1以上の核酸配列を増幅することを含み、その際、前記1以上の核酸配列は表1における前記微生物の1以上に対応する、請求項57に記載の方法。
【請求項69】
さらに、表1における前記微生物の1以上に対応する前記1以上の核酸配列の発現が、対照における表1の前記微生物の同じ1以上の核酸配列の発現レベルと比べて過剰発現しているかどうかを決定することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項70】
前記検出する工程がハイブリッド形成反応によって検出することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項71】
前記ハイブリッド形成反応がさらに、前記試料を1以上のプライマーセットとハイブリッド形成させることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ハイブリッド形成反応がポリメラーゼ連鎖反応である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ポリメラーゼ連鎖反応が逆転写ポリメラーゼ連鎖反応である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記検出する工程が発現された配列タグによって検出することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項75】
前記検出する工程が局在化によって検出することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項76】
検出された前記1以上の微生物がAkkermansia属に由来する、請求項57に記載の方法
【請求項77】
多発性硬化症(MS)またはMS関連疾患の患者を治療する方法であって、前記方法が、
a)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択される細菌である場合、抗菌剤を投与すること;
b)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択されるウイルスである場合、抗ウイルス剤を投与すること;
c)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択される真菌である場合、抗真菌剤を投与すること;あるいは
d)a)、b)、またはc)の組み合わせを前記対象に投与することを含み;
その際、
i.微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を前記患者から入手することと;
ii.1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ前記微生物特異的抗体が、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、前記1以上の微生物捕捉剤と共に前記試料をインキュベートすることと;
iii.前記試料にて前記1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することとによって前記患者が、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、またはそれらの組み合わせを必要としていると特定される、前記方法。
【請求項78】
前記抗菌剤がメロペネムまたはセフトリアキソンである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記MS関連疾患が視神経脊髄炎(NMO)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、または最初のエピソードからなる症候群(CIS)である、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
さらに、表2のリストから選択される前記微生物の1以上に特異的な前記1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
さらに、表8のリストから選択される微生物の1以上に特異的な前記1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
さらに、前記試料における前記微生物特異的抗体の1以上の量を決定することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
さらに、前記試料における1以上の核酸配列を増幅することを含み、その際、前記1以上の核酸配列は表1における前記微生物の1以上に対応する、請求項77に記載の方法。
【請求項84】
前記1以上の核酸配列を特異的に増幅するプライマー対を用いて前記1以上の核酸配列が増幅される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
さらに、表1における前記微生物の1以上に対応する前記1以上の核酸配列の発現が、対照における表1の前記微生物の同じ1以上の核酸配列の発現レベルと比べて過剰発現しているかどうかを決定することを含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記試料が脳組織、脳脊髄液、脊髄組織、または血液である、請求項77に記載の方法。
【請求項87】
前記検出する工程がハイブリッド形成反応によって検出することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項88】
前記ハイブリッド形成反応がさらに、前記試料を1以上のプライマーセットとハイブリッド形成させることを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記検出する工程がポリメラーゼ連鎖反応によって検出することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項90】
前記検出する工程がマイクロアレイによって検出することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項91】
前記検出する工程がELISAによって検出することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項92】
検出された前記1以上の微生物がAkkermansia属に由来する、請求項77に記載の方法
【請求項93】
前記微生物捕捉剤が抗体またはプローブである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
さらに、1以上の微生物についてELISA指数を決定し、前記ELISA指数を前記対象のアルブミン指数と比較することを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
さらに、前記ELISA指数及び前記アルブミン指数の線形回帰分析を実行することを含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
さらに、プロット直線を生成することを含む、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記1以上の微生物について血清と比較する場合、前記アルブミン指数が9以下であり、且つELISA指数が前記プロットより上にあれば、CSFにおける1以上の微生物特異的抗体を示す、請求項96に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月27日に出願された米国仮出願第62/785,377号及び2019年7月18日に出願された米国仮出願第62/875,779号の利益を主張する。これらの先願出願の内容は、本明細書で参照することによってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、原因不明の慢性脱髄性疾患であり、米国では約40万人の脳と脊髄に影響を及ぼす。ジステンパー(イヌ)、麻疹(SSPE、ヒト)、JCウイルス(ヒト)、及びインフルエンザ(ヒト)を含む中枢神経系(CNS)の多数の感染症は脱髄の原因となり得る(Atkins,G.et al.Rev.Med.Virol,291-303.(2000))。微生物、特にウイルスは、地理的パターン、散発的な発生、及び移動試験を含む疾患の疫学に基づいて、MSの原因病原体として長い間疑われてきた(Kurtzke,J.Phys.Med.Rehab.Clin.N.Am.16,327-349(2005);Kurtzke,J.F.J.Neurovirol.6,Suppl.2,S134-140(2000);Meinl,E.Concepts of viral pathogesis of MS.Curr.Opin.Neurology,12,303-307(1999);及びMurray,J.Infection as a cause of multiple sclerosis.BMJ,325,1128(2002))。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を診断する方法であり、該方法は、a)微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を対象から得ることと;b)1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ微生物特異的抗体が、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、1以上の微生物捕捉剤と共に試料をインキュベートすることと;c)試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することと;d)1以上の微生物特異的抗体が試料に存在する場合に対象を脱髄性疾患であると診断することとを含む。
【0004】
本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を検出する方法であり、該方法は、a)表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的な微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を対象から得ることと;b)1以上の微生物捕捉剤のそれぞれが1以上の微生物特異的抗体に特異的であり、且つ1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合して混合生物試料を生成することを可能にする条件で試料を1以上の微生物捕捉剤と接触させることと;c)前記1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の少なくとも1つに特異的に結合して検出可能な複合体を形成するような条件下で前記混合生物試料をインキュベートすることと;d)前記検出可能な複合体の存在を検出し、それによって、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在を検出し、その際、前記混合生物試料における表1のリストから選択される1以上の微生物の存在が対象における脱髄性疾患を検出することとを含む。
【0005】
本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を診断し、且つ治療する方法であり、該方法は、a)微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を対象から得ることと;b)1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ微生物特異的抗体が、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、1以上の微生物捕捉剤と共に試料をインキュベートすることと;c)試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することと;d)1以上の微生物特異的抗体が試料に存在する場合に対象を脱髄性疾患であると診断することと;e)i)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択された細菌である場合に抗菌剤を、ii)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択されたウイルスである場合に抗ウイルス剤を、iii)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択された真菌である場合の抗真菌剤を、またはv)それらの組み合わせを対象に投与することとを含む。
【0006】
本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を検出し、且つ治療する方法であり、該方法は、a)表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を対象から得ることと;b)1以上の微生物捕捉剤のそれぞれが1以上の微生物特異的抗体に特異的であり、且つ1以上の微生物特異的抗体が、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合して混合生物試料を生成することを可能にする条件で試料を1以上の微生物捕捉剤と接触させることと;c)前記1以上の微生物捕捉剤が前記微生物特異的抗体の少なくとも1つに特異的に結合して検出可能な複合体を形成するような条件下で前記混合生物試料をインキュベートすることと;d)前記検出可能な複合体の存在を検出し、それによって、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在を検出し、その際、前記混合生物試料における表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在が対象における脱髄性疾患を検出することと;e)i)検出された1以上の微生物が表1、表2または表8のリストから選択された細菌である場合に抗菌剤を、ii)検出された1以上の微生物が表1または表2のリストから選択されたウイルスである場合に抗ウイルス剤を、iii)検出された1以上の微生物が表1、表2または表8のリストから選択された真菌である場合の抗真菌剤を、またはv)それらの組み合わせを対象に投与することとを含む。
【0007】
本明細書で開示されているのは、試料にて1以上の抗体を検出する方法であり、該方法は、a)表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を対象から得ることと;b)1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、1以上の微生物捕捉剤と共に試料をインキュベートすることと;及びc)試料中にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することとを含む。
【0008】
本明細書で開示されているのは、試料にて1以上の微生物を検出する方法であり、該方法は、a)表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物を含有すると疑われる試料を対象から得ることと;b)1以上の微生物捕捉剤が表1、表2、または表8のリストから選択される微生物の1以上に結合する、1以上の微生物捕捉剤と共に試料をインキュベートすることと;c)試料にて表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在を検出することとを含む。
【0009】
本明細書で開示されているのは、多発性硬化症(MS)またはMS関連疾患の患者を治療する方法であり、該方法は、a)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択される微生物である場合に抗菌剤を対象に投与すること、b)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択されるウイルスである場合に抗ウイルス剤を対象に投与すること、c)検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2、または表8のリストから選択される真菌である場合に抗真菌剤を対象に投与することと、またはd)対象にa)、b)またはc)の組み合わせを投与することを含み、その際、患者は、i)微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を患者から得ることと、ii)1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である、1以上の微生物捕捉剤と共に試料をインキュベートすることと、iii)試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することとによって抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤またはそれらの組み合わせを必要とすると特定される。
【0010】
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、複数の態様を例示し、説明と合わせて本発明の原則を説明する役割を果たす。
【0011】
本発明のさらなる利点は、一部は以下の説明において記載されることになり、一部は説明から明らかとなるか、または本発明を実施することにより知ることができるだろう。本発明の利点は、特に添付の特許請求の範囲で指摘されている要素及び組み合わせによって実現され、且つ達成されるであろう。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は双方とも主張されているように、例示及び説明にすぎず、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】微生物ファミリーの正規化ヒット率階層的クラスター3.0分析(de Hoon,M.J.,Imoto,S.,Nolan,J.& Miyano,S.Bioinformatics(Oxford,England)20,1453-1454,(2004))を示す図である。MS試料の少なくとも1つ(赤いバー)が対照のセットと比べて有意に過剰出現する(偽発見率、q<0.05)MS微生物またはMS微生物ファミリー(N=42)が示されている。正規化HRをLog2変換した。列は、列のすべてのセルから各列の平均値を差し引くことによって中央に配置した。黄色は平均値(黒)を超える増加を示す一方で、青色は減少を示す。図の右側には、4つのMS試料を含有し、対照を含有しない顕著なクラスターがある。
図2図2A及び図2Bは、MS微生物への代表的な読み取りペアマッピングを示す図である。Akkermansia(A)とLUZ24様ファージ(B)のゲノム(x軸)に沿った位置にマッピングされた一致した読み取りペアの数(y軸)を示す。示されているマッピングはMAPQフィルタリングなしでBowtie2.0アライメントによって行われた。図2Aは、ヒト対象MS-019の脳試料由来のAkkermansia muciniphilaの読み取りペアマッピングを示す。30万、100万、及び150万bpでのピークは16S及び23S rRNAにマッピングされる配列が含む。図2Bは、ヒト対象MS-053の脳試料由来のPseudomonasファージLUZ24様ウイルスの読み取りペアマッピングを示す。
図3】ヒトMS脳組織の免疫組織化学分析を示す。4人の脱髄対象、3人のてんかん対照、及び1人の脳膿瘍陽性対照に由来する5ミクロンのホルマリン固定パラフィン化脳組織切片を調べた。表示されている顕微鏡写真は代表的なものである。組織切片は、抗原賦活化とそれに続くカゼインブロッキングを用いて処理した。切片を、抗ペプチドグリカンmAb(MAB995または2E9)、抗CD68(マクロファージ、Abcam)、抗リゾチーム(マクロファージ及び好中球、Abcam)、またはアイソタイプ対照Ab(IgG1、Invitrogen)の同等希釈液と共に4度で一晩インキュベートした。切片は抗ヒトIgG・ビオチンとアビジン・HRPで発色させた。示されている画像は125倍に拡大されている。対象MS-019の脳組織は、2つの異なる抗ペプチドグリカンmAbによる特異的なペプチドグリカンの染色を示す。ペプチドグリカンのシグナルは、脳膿瘍陽性対照、検体MS-056、及びてんかん対照の対象040でも見られる。
図4】対象/試料に特異的なMS微生物を示す図である。検体については、分類群(NAME)は、偽発見率(q)が<0.05の対照とは有意に異なる。
図5】直接比較したCSF血清学の結果を示す図である。バックグラウンド調整がない4つの対照のセットと直接比較したODである。表示されたZスコア。
図6図6A図6Fは、個々の対象のアルブミン指数に対してプロットされた6つのMS微生物またはMS微生物ファミリーに対する髄液ELISA指数(抗体)を示す図である。ELISA指数(EI)は、MSまたは他の神経疾患の個々の対象のアルブミン指数(AI)と比較される。四角で囲まれた領域は、血液脳関門(BBB)が損なわれていないことを示す正常なアルブミン指数の領域(0~9)を示す。この直線は各抗原のEIとBBBが損なわれていないこととの関係を示す線形回帰である。四角で囲まれた領域内及び直線より上の値は、考えられる髄腔内抗体合成(すなわち、脱髄の原因)を示す。特に、対象10及び72はMS患者である一方で、82は抗MOG病である。図6AはAtopobiumについてのEI対AIを示す。図6BはBacteroidesについてのEI対AIを示す。図6CはAkkermansiaについてのEI対AIを示す。図6DはLactobacillusについてのEI対AIを示す。図6EはOdoribacterについてのEI対AIを示す。図6FはPseudomonasについてのEI対AIを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、本明細書に含まれる以下の本発明の詳細な説明、図面及び実施例を参照することによってより容易に理解することができる。
【0014】
本方法及び組成物を開示及び説明する前に、それらは、他に特定されない限り、特定の合成方法に限定されず、他に特定されない限り、特定の試薬にも限定されず、よって、当然のことながら、異なるものになってもよいことを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書に記載されているものと類似するまたは同等の任意の方法及び材料を本発明の実践または試験において使用することができるが、例示的な方法及び材料を本明細書に記載する。
【0015】
さらに、別段に明記しない限り、本明細書に記述されているいずれの方法も、その工程が特定の順序で実行されることを必要とすると解釈されることを決して意図するものではないことが理解されるべきである。したがって、方法の請求項がその工程が従うべき順序を実際に記載していない場合、または該工程が特定の順序に限定されるべきであることが請求項または説明に具体的に述べられていない場合、いかなる点でも順序が推測されることを決して意図しない。これは、工程の配置または操作の流れに関する論理的な問題、文法構成または句読法から派生する明らかな意味、及び本明細書に記載の態様の数または種類を含めた、任意のあり得る非明示的な解釈の根拠に対して成り立つ。
【0016】
本明細書で言及されるすべての刊行物は、それらの刊行物が引用される方法及び/または材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示に対してのみ提供される。明細書中、本発明を、先行発明を理由にそのような刊行物に先行する権利がないとする承認として解釈されるべきものは何もない。さらに、本明細書に提供する公開日は、実際の公開日と異なる場合があり、個別の確認が必要な場合がある。
【0017】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別途明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0018】
本明細書で使用される「または」という用語は、特定のリストの任意の1つの成員を意味する共に、そのリストの成員の任意の組み合わせも含む。
【0019】
範囲は、本明細書では、「約」もしくは「およそ」1つの特定の値から、及び/または「約」もしくは「およそ」別の特定の値までのように表され得る。かかる範囲が表される場合、さらなる態様は、該1つの特定の値から、及び/または該他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」または「およそ」を使用することによって、該特定の値がさらなる態様を形成することが理解される。さらに、該範囲の各々の端点は、他の端点との関連において、及び他の端点とは独立しての双方で重要であることがさらに理解されるであろう。また、本明細書で開示されている多くの値があること、及び各値もまた、該値自体に加えて、「約」その特定の値として本明細書で開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
【0020】
本明細書で使用される、「任意の」または「任意に」という用語は、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、ならびにその記載が、当該事象または状況が生じる場合及びそれが生じない場合を含むことを意味する。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「試料」という用語は、本明細書に記載されているようにアッセイされる、対象由来の組織または臓器;細胞(対象内、対象から直接採取、または培養にて維持された細胞もしくは培養細胞株由来の細胞のいずれか);細胞溶解物(もしくは溶解物画分)または細胞抽出物;あるいは、細胞または細胞物質(例えば、ポリペプチドもしくは核酸)由来の1以上の分子を含有する溶液を意味する。試料はまた、細胞または細胞成分を含有する任意の体液または排出物(例えば、血液、尿、糞便、唾液、涙液、胆汁、脳脊髄液、しかし、これらに限定されない)であってもよい。いくつかの態様では、試料は、脳、脊髄、脳脊髄液または血液から採取することができる。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は投与の標的、例えば、ヒトを指す。したがって、開示されている方法の対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類であることができる。「対象」という用語にはまた、飼育動物(例えば、ネコ、イヌ等)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ミバエ等)も含まれる。いくつかの態様では、対象は哺乳動物であることができる。いくつかの態様では、対象はヒトであることができる。この用語は、特定の年齢または性別を意味しない。したがって、雌雄にかかわらず、成人、小児、青年、及び新生児の対象、ならびに胎児が包含されることが意図される。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「患者」という用語は疾患または障害に罹患している対象を指す。「患者」という用語は、ヒト対象及び獣医学的対象を含む。開示されている方法のいくつかの態様では、「患者」は、例えば、投与する工程の前に多発性硬化症の治療が必要であると診断されている。開示されている方法のいくつかの態様では、「患者」は、例えば、投与する工程の前に脱髄性疾患の治療が必要であると診断されている。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「正常」という用語は脱髄性疾患を有さない、または脱髄性疾患を発症する高い易罹患性を有さない個人、試料、または対象を指す。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「易罹患性」という用語は、対象が疾患を発症する、または臨床的に疾患と診断される可能性を指す。例えば、脱髄性疾患(例えば、多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎または最初のエピソードからなる症候群)に対する易罹患性が高いヒト対象は、対象が脱髄性疾患(例えば、多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、または最初のエピソードからなる症候群)を発症する、または臨床的にそうであると診断される可能性が高いヒト対象を指すことができる。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「含むこと(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」態様を含むことができる。
【0027】
「特異的に結合する」とは、抗体がその同族の抗原を認識し、物理的に相互作用し(例えば、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である微生物特異的抗体)、且つ他の抗原を有意に認識せず、それと相互作用しないことを意味し;そのような抗体は当該技術分野で周知の技術によって生成されるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよい。
【0028】
「プローブ」、「プライマー」、またはオリゴヌクレオチドとは、相補性配列(「標的」)を含有する第2のDNA分子またはRNA分子と塩基対を形成することができる、定義された配列の一本鎖のDNA分子またはRNA分子を意味する。得られるハイブリッドの安定性は発生する塩基対形成の程度に左右される。塩基対形成の程度は、プローブと標的分子との間の相補性の程度及びハイブリッド形成条件のストリンジェンシーの程度のようなパラメーターによって影響を受ける。ハイブリッド形成のストリンジェンシーの程度は、温度、塩濃度、及びホルムアミドのような有機分子の濃度のようなパラメーターによって影響を受け、当業者に既知の方法によって決定される。微生物特異的抗体(微生物特異的抗体は、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である)に特異的なプローブまたはプライマーは、それらがハイブリッド形成する微生物特異的抗体の領域に対して少なくとも80%~90%の配列相補性、好ましくは少なくとも91%~95%の配列相補性、さらに好ましくは少なくとも96%~99%の配列相補性、及び最も好ましくは100%の配列相補性を有する。プローブ、プライマー、及びオリゴヌクレオチドは当業者に周知の方法によって放射性または非放射性のいずれかで検出可能に標識されてもよい。プローブ、プライマー、及びオリゴヌクレオチドは、核酸ハイブリッド形成を含む方法、例えば、核酸配列決定、逆転写及び/またはポリメラーゼ連鎖反応による核酸増幅、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、制限酵素断片多型(RFLP)分析、サザンハイブリッド形成、ノーザンハイブリッド形成、原位置ハイブリッド形成、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)に使用される。
【0029】
「特異的にハイブリッド形成する」とは、プローブ、プライマー、またはオリゴヌクレオチドが、高ストリンジェントな条件下で実質的に相補性の核酸(例えば、微生物特異的抗体)を認識し、物理的に相互作用し(すなわち、塩基対形成し)、且つ他の核酸と実質的に塩基対形成しないことを意味する。
【0030】
「高ストリンジェントな条件」とは、65℃の温度で0.5MのNaHPO4、pH7.2、7%SDS、1mMのEDTA、及び1%BSA(フラクションV)を含有する緩衝液にて、または42℃の温度で48%ホルムアミド、4.8×SSC、0.2MのTris-Cl、pH7.6、1×Denhardtの溶液、10%デキストラン硫酸、及び0.1%SDSを含む緩衝液にて少なくとも40ヌクレオチド長のDNAプローブを使用した結果得られるものに匹敵するハイブリッド形成を可能にする条件を意味する。例えば、PCR、ノーザン、サザン、または原位置のハイブリッド形成、DNA配列決定等のような高ストリンジェントなハイブリッド形成のための他の条件は、分子生物学の当業者に周知である。(例えば、F.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,NY,1998を参照のこと)。本明細書で使用されるとき「核酸」という用語は、DNAまたはRNAまたはDNA-RNAハイブリッド、一本鎖または二本鎖、センスまたはアンチセンスのいずれであれ、Watson-Crickの塩基対形成によって相補性の核酸とハイブリッド形成することができる天然に存在するまたは合成のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。本発明の核酸はまた、ヌクレオチド類似体(例えば、BrdU)、及び非ホスホジエステルヌクレオシド間結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはチオジエステル結合)も含むことができる。特に、核酸は、限定しないで、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNAまたはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「対照」は、正常な対象からの、または脱髄していないもしくは脱髄された組織からの試料である。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「過剰発現」は、正常な非脱髄組織で検出される発現よりも多い発現を意味する。例えば、過剰発現される核酸は、正常より約1標準偏差、または正常より約2標準偏差、または正常レベルの発現より約3標準偏差上回って発現されてもよい。したがって、対照レベルの発現を約3標準偏差上回って発現される核酸は過剰発現される核酸である。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「治療する」または「治療」という用語は、疾患、病的状態、または障害を治癒させる、寛解させる、安定化する、または予防する意図で行う患者の医療管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、疾患、病的状態、もしくは障害の改善を具体的に目的とする治療を含むと同時に、原因治療、すなわち、関連疾患、病的状態、もしくは障害の原因の除去を目的とする治療も含む。加えて、この用語は、緩和治療、すなわち、疾患、病的状態、または障害の治癒ではなくて症候の軽減のために考案された治療;予防的治療、すなわち、関連する疾患、病的状態、または障害の発症を最小限に抑えるまたは部分的にもしくは完全に抑制することを目的とする治療;及び、支援治療、すなわち、関連する疾患、病的状態、または障害の改善を目的とする別の特別な療法を補助するために採用される治療;及び支援治療、すなわち、関連する疾患、病的状態、または障害の改善を目的とする別の特別な療法を補助するために採用される治療を含む。種々の態様では、この用語は、哺乳類(例えば、ヒト)をはじめとする対象の任意の治療を包含し、(i)疾患の素因を有する可能性があるが、疾患であると診断されたことがまだない対象にて疾患が発症するのを防ぐこと;(ii)疾患を抑制すること、すなわち、疾患の発達を抑止すること;または(iii)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことを含む。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「予防する」または「予防すること」という用語は、ある物事が、特に有害作用により発生することを不可能にする、回避する、除去する、未然に防ぐ、停止させる、または妨害することを指す。減少させる、抑制する、または予防するが本明細書で使用されるとき、特に指示されない限り、他の2つの用語の使用も明確に開示されていることを理解すべきである。例えば、「予防する」とは、脱髄性疾患を発症する易罹患性が高い対象が脱髄性疾患を発症する可能性を最小限に抑えることを意味する。
【0035】
本明細書で使用される、用語「参照」、「参照発現」、「参照試料」、「参照値」、「対照」、「対照試料」等は、試料または1以上の微生物の発現レベルの文脈で用いられる場合、参照基準を指し、その際、該参照は、異なる組織(すなわち、同じ組織ではないが複数の組織)間で一定のレベルで発現され、実験条件によって影響を受けず、所定の病態(例えば、脱髄性疾患に罹患していない)の試料におけるレベルを示す。該参照値は、所定の基準値でも所定の基準値の範囲でもよく、無病、または所定の型もしくは重症度の病気を表す。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「診断された」という用語は、当業者、例えば、医師による身体検査を受けており、本明細書で開示されている化合物、組成物、または方法によって診断されるまたは治療されることが可能な状態を有することがわかっていることを意味する。例えば、本明細書で使用されるとき、「脱髄性疾患の障害があると診断された」は、当業者、例えば、医師による検査を受けており、本明細書で開示されている化合物または組成物よって診断されるまたは治療されることが可能な状態を有することがわかっていることを意味する。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「微生物」という用語は、微視的な生物(すなわち、肉眼で見るには小さすぎる生き物)を指す。一般に、「微生物」という用語は、さまざまなサイズや特徴を有することができるさまざまな生命体を記載するのに使用される。例えば、微生物は、細菌、古細菌、真菌、原生生物、ウイルス、及び微視的な動物を指すことができる。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「微生物捕捉剤」という用語は、少なくとも1つの微生物を(例えば、直接)結合するもしくは捕捉することができる、または表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である微生物特異的抗体を捕捉することができる(例えば、少なくとも1つの微生物を間接的に捕捉するまたは結合する)分子を指す。
【0039】
急性腫瘤形成性MSは、脱髄性疾患の一部の患者が大きな急性病変を呈し、浮腫及び/または画像検査におけるリング状造影に関連することが多い急性の腫瘍様変異型である(Kepes,J.J.Ann.Neurol.33,18-27,(1993);及びLucchinetti,C.F.et al.Brain,131,1759-1775,(2008))。この型の炎症性脱髄性疾患は、偽腫瘍性MS、移行性硬化症、びまん性骨髄破壊性硬化症、及びMarburg変異型MSとも呼ばれる。Kepes(Kepes,J.J.Ann.Neurol.33,18-27,(1993))による最初の説明は、いくつかのそのような患者はMSの発症に進むことを示唆していた。しかしながら、生検で確認されたCNS炎症性脱髄性疾患の168人の患者を対象としたさらに最近のはるかに大規模な試験では、そのような患者の大多数(79%)は続いて臨床的に明確なMS(Lucchinetti,C.F.et al.Brain,131,1759-1775,(2008))を発症することが示された。最初のエピソードからなる症候群(CIS)は、視神経炎のようなMSと両立し得る単一の発作を指す。CIS及び磁気共鳴画像(MRI)の病変を伴う患者の60~80パーセントは続いてMSを発症する一方で、およそ20~40パーセントは自己限定型過程を有する(Frohman,E.M.et al.Neurology,61,602-611(2003);Brex,P.A.et al.N.Engl.J.Med.346,158-164,(2002);及びOlek,M.in UpToDate,(ed Francisco Gonzalez-Scarano)(UpToDate,Waltham,MA,2011)。
【0040】
多発性硬化症(MS)の病理は、Lucchinetti(Popescu,B.F.,Pirko,I.及びLucchinetti,C.F.Continuum(Minneapolis,Minn.),19,901-921,(2013):「多発性硬化症(MS)の病理学的特徴は、プラークまたは病変と呼ばれるCNS内のミエリン喪失の複数の病巣領域である...によって上手くまとめられている。急性活動性MS病変は、古典的な「マクロファージの海」を形成する病変全体に均一に分布するマクロファージが大量に浸潤した過細胞性脱髄プラークである。これらのマクロファージは、破壊されたミエリン鞘の残遺物を取り込んで分解したことを示す(すなわち、活発な脱髄)、ミエリン残渣を含有する。
【0041】
脱髄の既知の感染性の原因及びMSプラークのマクロファージが優勢な病態を含むこれらの要因を考えると、脳実質内の微生物がMSの発症または既存のMS疾患の悪化を引き起こし得ることが本明細書で企図される。本明細書で開示されているのは、一次性脱髄脳試料の微生物配列含量が一連の対照におけるものと異なるかどうかを調べた結果である。そのような組織からのRNA抽出と大規模配列解析の実現可能性が実証された。
【0042】
本明細書で開示されているのは、個々の患者における多発性硬化症の微生物的原因を実証するために使用することができる方法である。最初の工程は、MSの脳病変からRNA配列決定データを取得し、その結果を一連の対照または参照試料と比較することだった。次に、MS群で有意に過剰出現している微生物分類群を用いて、MS微生物またはMS微生物ファミリーのリストを作成した。
【0043】
本明細書で開示されているのはまた、単独で、または個々の患者及びその後の治療の標的における多発性硬化症の微生物的原因を実証するために使用することができる本明細書に記載されている方法と組み合わせて使用することができる方法である。例えば、本明細書で開示されているのは、血液脳関門が損なわれていないことを評価するために使用することができる方法である。いくつかの態様では、前記方法を用いて、多発性硬化症や他の脱髄性疾患に関連し得る血液脳関門の漏出を検出する及び/または修正することができる。いくつかの態様では、前記方法を用いて、本明細書で開示されているMS微生物ファミリーのMS微生物のいくつかに向けられるMS患者のCSFにおける抗体が髄腔内抗体合成を指示するかどうかを決定することができる。
【0044】
本明細書に記載されているのは、一連のアッセイ(例えば、血清学的)で使用することができる一連の微生物試薬である。本明細書で開示されているのは、MS微生物またはMS微生物ファミリーの一部に対して向けられるMS患者のCSF中の抗体を検出するのに使用することができるアッセイである。MS微生物またはMS微生物ファミリーの例示的なリストを表1、表2及び/または表8と同様に図4及び/または図5にて提供する。本明細書で開示されている方法の結果を用いて、脱髄を発症している(すなわち、新たな発症)または脱髄の悪化(すなわち、再発)を経験しているMS及び関連疾患(例えば、急性散在性脳脊髄炎または視神経脊髄炎)の患者にて抗微生物療法を指図することができる。例えば、Akkermansia mucinophiliaに対するCSFの反応性がある患者は、この嫌気性細菌に対して不活性であると予測されるセフトリアキソンではなく、活性であると予測される静脈内メロペネムで治療されてもよい。
【0045】
本明細書に記載されているMS微生物またはMS微生物ファミリーを用いて、脱髄を引き起こしている本明細書で開示されているMS微生物またはMS微生物ファミリーの1以上を検出するための具体的なPCR試薬を開発することもできる。例えば、プライマーを開発して、これらのMSの原因となる生物を検出するのに使用することができる。CSF試料は、特異的な抗菌抗体とオリゴクローナルバンドが出現する前に、その経過の初期段階であり、且つ脱髄を発症している患者から使用することができる。特異的なPCRプライマーを開発し、脳組織、脊髄、CSF、または血液において本明細書で開示されているMS微生物またはMS微生物ファミリーを検出するのに使用することができる。1回の検査で多数のプライマーセットを多重化することができる。この場合もやはり、早期脱髄患者(または確立されたMSの発作を有する患者)のCSFにおける微生物DNA(または可能性は低いRNA)の検出を用いて特定の抗菌治療を指図することができる。
【0046】
本明細書に開示されている方法は、MSの推定される根本的な原因、及び視神経脊髄炎(NMO)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、及び最初のエピソードからなる症候群(CIS)を含むが、これらに限定されないいくつかの関連する脱髄障害を検出し、且つ治療するのに使用することができる。本明細書で開示されている方法の利点は、それらがCNSへの損傷を制限するまたは元に戻すのに役立つことができることである。例えば、Akkermansia mucinophiliaに対するCSFの反応性がある患者は、この嫌気性細菌に対して不活性であると予測されるセフトリアキソンではなく、活性があると予測される静脈内メロペネムで治療されてもよい。現在のMS治療は、治療の選択の根底にある特定の要因がなく、成功または失敗の合理的な期待がない場合、信頼性が低く一貫性がない。急性MS発作の現在の治療法には、深刻な副作用を有し得る、広く免疫抑制性である戦略(例えば、ステロイド、リツキシマブ)が含まれる。
【0047】
本明細書に記載されているのは、単独で、または一連のアッセイ(例えば、血清学的)で使用することができる方法及び微生物試薬である。本明細書に記載されているのは、本明細書に記載されているMS微生物またはMS微生物ファミリーのすべてではないがいくつかに対して向けられる、MS患者のCSF中の抗体を検出するために使用することができる方法である。
【0048】
本明細書に記載されているのは、単独で、または一連のアッセイと組み合わせて使用することができる方法である。本明細書に記載されているのは、微生物ELISA指数(EI)を決定し、EIの結果を対象のアルブミン指数と比較することを含む方法である。いくつかの態様では、前記方法を用いて、本明細書で開示されているMS微生物ファミリーのMS微生物の1以上に向けられるMS患者のCSFにおける抗体が髄腔内抗体合成を指示するかどうかを判定することができる。さらに、前記方法を用いて、本明細書に記載されている他の検出方法のいずれかを用いて検出されなかった可能性がある、または除外された対象を特定することができる。例えば、微生物ELISA指数(EI)を決定し、対象のEIの結果を対象のアルブミン指数と比較する開示されている方法を用いて、微生物ELISA指数(EI)のみを決定することと比べて脱髄性疾患の対象の特定を改善することができる。
【0049】
本明細書に記載されているアッセイ及び方法を用いて、脱髄を発症している(例えば、新たに発症する)または脱髄の悪化を経験している(例えば、再発する)MS及び関連疾患(すなわち、ADEM、NMO)の患者にて抗菌療法を指図することができる。例えば、Akkermansia mucinophiliaに対するCSFの反応性がある患者は、この嫌気性細菌に対して不活性であると予測されるセフトリアキソンではなく、活性があると予測される静脈内メロペネムで治療することができる。
【0050】
本明細書に記載されているMS微生物またはMS微生物ファミリーを用いて、脱髄を引き起こしている本明細書で開示されているMS微生物またはMS微生物ファミリーの1以上を検出するための特異的なPCR試薬を開発することもできる。プライマーを開発して、MSの原因となる生物を検出することができる。試薬(例えば、プライマー)は、特異的な抗菌抗体及びオリゴクローナルバンドが現れる前に、その経過の初期段階であり、脱髄を発症している患者のCSFに適用することができる。いくつかの態様では、多数のプライマーセットが単一の検査で多重化される。本明細書で開示されているのは、特定の抗菌治療を指図するのに使用することができる、早期脱髄患者(または確立されたMSの発作を有する患者)のCSFにおける微生物DNA(または可能性は低いRNA)の検出の方法である。
【0051】
本明細書に記載されているのは、MS、及び視神経脊髄炎(NMO)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)及び最初のエピソードからなる症候群(CIS)を含むが、これらに限定されない、いくつかの関連する脱髄障害の推定される根本原因を検出する、及び治療する方法である。
【0052】
本明細書に開示されているのは、本明細書に記載されているMS微生物またはMS微生物ファミリーの1以上に対して向けられる、MS患者のCSF中の抗体を検出するための血清学的アッセイである。本明細書で開示されているのは、脱髄を発症している(例えば、新たに発症する)またはその悪化を経験している(例えば、再発する)MS及び関連疾患(例えば、ADEM、NMO)の患者にて抗菌療法を指図する方法である。
表1.微生物の例。
1NCBI分類に分類されるとおりである。門は細菌及び真菌の微生物について列挙されているが、ウイルスについては列挙されていない。
2MicrobeWiki(https://microbewiki.kenyon.edu/index.php/MicrobeWiki)、命名法に則った原核生物の名前のリスト(LPSN,http://www.bacterio.net)、UniProt(https://www.uniprot.org)、及び他のオンライン情報源によって記載されたとおりである。
3治療薬は、PubMedの記事、微生物のWebサイト(Microbewiki等)、SanfordGuideのような種々のオンライン情報源を用いて決定した。
表2.微生物の例。



大規模配列決定データに由来するMS微生物またはMS微生物ファミリー。属レベルでMS微生物またはMS微生物ファミリーとしての資格を得るために、MS群由来の少なくとも1つの検体は、10以上のMAPQ値の対照群(251の別々の属)より有意に増加した(q<0.05)この分類群への読み取りペアマッピングを有した。示されているMS微生物属は、MS群(35属)のすべての検体の中で少なくとも100のマッピングされた読み取りを有していた。
【0053】
方法
本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を診断する及び/または検出する方法である。本明細書で開示されている方法は、微生物学的診断を行うために有用であることができる。本明細書に記載されている検出方法は、核酸のPCR増幅を介して直接、または開示されている微生物の1以上を特異的に結合する抗体またはペプチドを使用する直接検出を介して実施することができる。本明細書に記載されている検出方法は、微生物特異的抗体の1以上に特異的な抗体を検出することによっても実施することができる。例えば、本明細書で開示されているのは、1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合して混合生物試料を生成することを可能にする条件で試料を1以上の微生物捕捉剤と接触させることを含む方法であり、その際、1以上の微生物捕捉剤のそれぞれは1以上の微生物特異的抗体に特異的であり、且つ1以上の微生物特異的抗体は表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である。
【0054】
本明細書で開示されているのはまた、脱髄性疾患を発症するリスクがある対象を治療する方法、脱髄性疾患の対象を治療する方法、または脱髄性疾患を有すると疑われる対象を治療する方法である。1以上の微生物または1以上の微生物特異的抗体の存在が決定されると、適切な治療を提供するまたは施行することができる。
【0055】
本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を診断する及び/または検出する方法であり、その際、本明細書で開示されている方法を用いて抗体の髄腔内産生を判定することができる。本明細書で開示されている方法は、微生物学的診断を行うために有用であることができる。本明細書で開示されている方法はまた、本明細書に記載される他の方法のいずれにおいても特定されなかった脱髄性疾患の対象を特定するのに使用することもできる。本明細書で開示されている方法を用いて血液脳関門が損なわれていないことを判定することができる。本明細書に記載されている検出方法は、対象の微生物ELISA指数(EI)を対象のアルブミン指数(AI)と比較することができる。本明細書で開示されている方法は、開示されている微生物の1以上に結合するまたは特異的に結合する抗体を使用するELISAを介して実施することができる。例えば、本明細書で開示されているのは、1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合して混合生物試料を生成することを可能にする条件で試料を1以上の微生物捕捉剤と接触させることを含む方法であり、その際、1以上の微生物捕捉剤のそれぞれは1以上の微生物特異的抗体に特異的であり、且つ1以上の微生物特異的抗体は、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的である。EIは試料(例えば、CSFまたは脊髄液)における抗体の評価尺度である。いくつかの態様では、EI値は、損なわれていない血液脳関門を示す正常のAI(例えば、0~9)と比較することができる。アルブミン指数=CSFアルブミン(mg/L)/血清アルブミン(g/L)。AIは、血清アルブミン濃度に合わせて調整された、血液脳関門(BBB)の完全性の指数である。AIはBBB機能障害で上昇する。例えば、表1、表2及び/または表8のリストから選択される1以上の微生物についての対象のEIは、対象のAIに対してプロットすることができる。線形回帰分析を実行して、各抗原のEIとBBBが損なわれていないこと(アルブミン指数で評価されるような)との関係を示すことができる。線形回帰の直線またはプロット直線を生成し、調べられる各細菌抗原または微生物の「予想されるEI」を提供し、MS及び他の脱髄性疾患の対象に関連し得る漏出性BBBを正すのに使用することができる。回帰直線より上の値、特に正常なAI領域内の値(例えば、0~9)は髄腔内抗体合成の可能性(すなわち、脱髄の因果関係)を示す。いくつかの態様では、本明細書で開示されている方法は、単独で、または本明細書に記載されている他の方法のいずれかと組み合わせて使用することができる。
【0056】
診断の方法:本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を診断する方法である。いくつかの態様では、方法は対象から生体試料を得ることを含むことができる。いくつかの態様では、対象は、脱髄性疾患を有することが疑われ得る、または脱髄性疾患を有するリスクがあり得る。いくつかの態様では、方法は試料にて1以上の微生物の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、試料における1以上の微生物は表1、表2、または表8のリストから選択することができる。いくつかの態様では、1以上の微生物の存在は試料にて1以上の抗体の存在を検出することによって間接的に検出することができる。いくつかの態様では、1以上の抗体は試料における1以上の微生物に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法は対象を脱髄性疾患であると診断することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は表1または表2のリストから選択された1以上の微生物が試料中に存在する場合に、対象を脱髄性疾患であると診断することを含むことができる。
【0057】
いくつかの態様では、対象にて脱髄性疾患を診断する方法は、対象から試料を得ることを含むことができる。いくつかの態様では、試料は微生物特異的抗体を含有すると疑われ得る。いくつかの態様では、方法は試料を1以上の微生物捕捉剤と共にインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物捕捉剤は微生物特異的抗体の1以上に結合することができる。いくつかの態様では、微生物特異的抗体は、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法は試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は1以上の微生物特異的抗体が試料中に存在する場合に、対象を脱髄性疾患であると診断することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料を1以上の微生物捕捉剤とインキュベートする工程、及び異なる微生物捕捉剤を用いて試料における1以上の微生物特異的抗体の存在を検出する工程を繰り返すことを含むことができる。いくつかの態様では、さまざまな微生物捕捉剤は試料中の1以上の微生物特異的抗体に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、表1、表2、または表8に列挙された微生物の1以上に特異的な1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はマイクロアレイによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はELISAによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出される1以上の微生物はAkkermansia属に由来し得る。いくつかの態様では、診断する方法はさらに、試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出し、ELISA指数を決定し、ELISA指数をアルブミン指数と比較することを含むことができる。いくつかの態様では、EI比を決定することができる。いくつかの態様では、EI比は、血清と比べてCSFにて1以上の微生物に対する微生物特異的抗体が多いことを示す、>1.0であることができる。いくつかの態様では、EI比は、CSFよりも血清にて微生物特異的抗体が多いことを示す、<1.0であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、1以上の微生物についてELISA指数を決定し、線形回帰分析を実行し、プロット直線を生成することによってELISA指数を試料のAIと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、AIは9以下であることができ、ELISA指数は、1以上の微生物についての血清と比べてCSFにて1以上の微生物特異的抗体を示すプロット直線より上にあることができる。
【0058】
本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を診断する、且つ治療する方法である。いくつかの態様では、方法は対象から試料を得ることを含むことができる。いくつかの態様では、試料は微生物特異的抗体を含有すると疑われ得る。いくつかの態様では、この方法は試料を1以上の微生物捕捉剤と共にインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物捕捉剤は微生物特異的抗体の1以上に結合することができる。いくつかの態様では、微生物特異的抗体は、表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法は試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は対象を脱髄性疾患であると診断することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、1以上の微生物特異的抗体が試料中に存在する場合に対象を脱髄性疾患であると診断することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択される細菌である場合に抗菌剤を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択されるウイルスである場合に抗ウイルス剤を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択される真菌である場合に抗真菌剤を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、抗菌剤、抗ウイルス剤、または抗真菌剤の組み合わせを対象に投与することを含むことができる。いくつかの態様では、対象にて脱髄性疾患を診断する及び治療する方法はさらに、試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出し、ELISA指数を決定し、ELISA指数をアルブミン指数と比較することを含むことができる。いくつかの態様では、EI比を決定することができる。いくつかの態様では、EI比は、血清と比べてCSFにて微生物の1以上に対する微生物特異的抗体が多いことを示す、>1.0であることができる。いくつかの態様では、EI比は、CSFよりも血清にて微生物特異的抗体が多いことを示す、<1.0であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、1以上の微生物についてELISA指数を決定し、線形回帰分析を実行し、プロット直線を生成することによってELISA指数を対象のAIと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、対象のAIは9以下であることができ、ELISA指数は、1以上の微生物についての血清と比べて、CSFにて1以上の微生物特異的抗体を示すプロット直線より上にあることができる。
【0059】
間接的検出の方法:本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を検出する方法である。いくつかの態様では、対象にて脱髄性疾患を検出する方法は対象から試料を得ることを含むことができる。いくつかの態様では、試料は、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的な微生物特異的抗体を含有することが疑われ得る。いくつかの態様では、方法は、試料を1以上の微生物捕捉剤と接触させて混合生物試料を生成することを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物捕捉剤のそれぞれは1以上の微生物特異的抗体に特異的であることができる。いくつかの態様では、1以上の微生物特異的抗体は表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法は1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の少なくとも1つに特異的に結合して、検出可能な複合体を形成することができるような条件下で混合生物試料をインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、この方法は、検出可能な複合体の存在を検出し、それによって、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、混合生物試料における表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在は対象にて脱髄性疾患を検出することができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料を接触させる工程、及びさまざまな微生物捕捉剤を用いて混合生物試料をインキュベートする工程を繰り返すことを含むことができる。いくつかの態様では、さまざまな微生物捕捉剤は試料における1以上の微生物特異的抗体に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、表1、表2または表8に列挙された微生物の1以上に特異的な1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料における微生物特異的抗体の1以上の量を決定することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はマイクロアレイによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はELISAによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出される1以上の微生物はAkkermansia属に由来し得る。いくつかの態様では、方法はさらにELISA指数を決定することを含むことができる。いくつかの態様では、ELISA指数は、アルブミン指数に対して比較するまたはプロットすることができる。いくつかの態様では、EI比を決定することができる。いくつかの態様では、EI比は、血清と比べてCSFにて1以上の微生物に対する微生物特異的抗体が多いことを示す、>1.0であることができる。いくつかの態様では、EI比は、CSFよりも血清にて微生物特異的抗体が多いことを示す、<1.0であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、1以上の微生物についてELISA指数を決定し、線形回帰分析を実行し、プロット直線を生成することによってELISA指数を対象のAIと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、対象のAIは9以下であることができ、ELISA指数は、1以上の微生物についての血清と比べてCSFにて1以上の微生物特異的抗体を示すプロット直線より上にあることができる。
【0060】
本明細書で開示されているのは、対象にて脱髄性疾患を検出し、且つ治療する方法である。いくつかの態様では、方法は対象から試料を得ることを含むことができる。いくつかの態様では、試料は表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的な微生物特異的抗体を含有することが疑われ得る。いくつかの態様では、方法は、試料を1以上の微生物捕捉剤と接触させて混合生物試料を生成することを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物捕捉剤のそれぞれは1以上の微生物特異的抗体に特異的であることができる。いくつかの態様では、1以上の微生物特異的抗体は表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法は、前記1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の少なくとも1つに特異的に結合して、検出可能な複合体を形成することができるような条件下で混合生物試料をインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、この方法は、検出可能な複合体の存在を検出し、それによって、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、混合生物試料における表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在は対象にて脱髄性疾患を検出することができる。いくつかの態様では、方法は、検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択される細菌である場合に抗菌剤を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択されるウイルスである場合に抗ウイルス剤を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、検出された1以上の微生物特異的抗体が表1、表2または表8のリストから選択される真菌である場合に抗真菌剤を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、抗菌剤、抗ウイルス剤、または抗真菌剤の組み合わせを対象に投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は抗寄生虫剤を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤または抗真菌剤の組み合わせを対象に投与することを含むことができる。
【0061】
いくつかの態様では、さまざまな微生物捕捉剤は試料における1以上の微生物特異的抗体に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、表1、表2または表8に列挙された微生物の1以上に特異的な1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料における微生物特異的抗体の1以上の量を決定することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はマイクロアレイによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はELISAによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出される1以上の微生物はAkkermansia属に由来し得る。いくつかの態様では、方法はさらに、試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出し、ELISA指数を決定し、ELISA指数をアルブミン指数と比較することを含むことができる。いくつかの態様では、EI比を決定することができる。いくつかの態様では、EI比は血清と比べてCSFにて1以上の微生物に対する微生物特異的抗体が多いことを示す、>1.0であることができる。いくつかの態様では、EI比はCSFよりも血清にて微生物特異的抗体が多いことを示す、<1.0であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、1以上の微生物についてELISA指数を決定し、線形回帰分析を実行し、プロット直線を生成することによってELISA指数を対象のAIと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、対象のAIは9以下であることができ、ELISA指数は、1以上の微生物についての血清と比べて、CSFにて1以上の微生物特異的抗体を示すプロット直線より上であることができる。
【0062】
本明細書で開示されているのはまた、対象にて脱髄性疾患を診断する方法である。いくつかの態様では、方法は対象から試料を得ることを含むことができる。いくつかの態様では、対象は、脱髄性疾患を有することが疑われ得る、または脱髄性疾患を有するリスクがあり得る。いくつかの態様では、方法は試料にて1以上の微生物の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物は、表1、表2、または表8のリストから選択することができる。いくつかの態様では、方法は表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物が試料に存在する場合に対象を脱髄性疾患であると診断することを含むことができる。
【0063】
本明細書で開示されているのは、試料にて1以上の抗体を検出する方法である。いくつかの態様では、方法は対象から試料を得ることを含むことができる。いくつかの態様では、試料は、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的な微生物特異的抗体を含有することが疑われ得る。いくつかの態様では、方法は試料を1以上の微生物捕捉剤とインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物捕捉剤は微生物特異的抗体の1以上に結合することができる。いくつかの態様では、1以上の微生物特異的抗体は表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的であることができる。いくつかの態様では、方法は試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物特異的抗体の存在の検出は、脱髄性疾患を示すことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、表1、表2または表8に列挙された微生物の1以上に特異的な1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料における微生物特異的抗体の1以上の量を決定することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はマイクロアレイによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はELISAによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出される1以上の微生物はAkkermansia属に由来し得る。いくつかの態様では、方法はさらにELISA指数を決定することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はELISA指数をアルブミン指数と比較することができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出し、ELISA指数を決定し、ELISA指数をアルブミン指数と比較することを含むことができる。いくつかの態様では、EI比を決定することができる。いくつかの態様では、EI比は、血清と比べてCSFにて1以上の微生物に対する微生物特異的抗体が多いことを示す、>1.0であることができる。いくつかの態様では、EI比は、CSFよりも血清にて微生物特異的抗体が多いことを示す、<1.0であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、1以上の微生物についてELISA指数を決定し、線形回帰分析を実行し、プロット直線を生成することによってELISA指数を対象のAIと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、対象のAIは9以下であることができ、ELISA指数は、1以上の微生物についての血清と比べて、CSFにて1以上の微生物特異的抗体を示すプロット直線より上にあることができる。
【0064】
直接検出の方法:本明細書で開示されているのは、試料にて1以上の微生物を検出する方法である。いくつかの態様では、方法は対象から試料を得ることを含むことができる。いくつかの態様では、試料は表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物を含有することが疑われ得る。いくつかの態様では、方法は試料を1以上の微生物捕捉剤と共にインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物捕捉剤は表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物に結合することができる。いくつかの態様では、方法は試料にて表1、表2、または表8のリストから選択される1以上の微生物の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、表1、表2または表8に列挙された1以上の微生物の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料における微生物の1以上の量を決定することを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の微生物の存在を検出することは、脱髄性疾患を示す。いくつかの態様では、検出する工程はマイクロアレイによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はELISAによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出される1以上の微生物はAkkermansia属に由来し得る。いくつかの態様では、方法はさらにELISA指数を決定することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はELISA指数をアルブミン指数と比較することができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出し、ELISA指数を決定し、ELISA指数を対象のAIと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、EI比を決定することができる。いくつかの態様では、EI比は、血清と比べてCSFにて微生物の1以上に対する微生物特異的抗体が多いことを示す、>1.0であることができる。いくつかの態様では、EI比は、CSFよりも血清にて微生物特異的抗体が多いことを示す、<1.0であることができる。いくつかの態様では、方法はさらに、1以上の微生物についてELISA指数を決定し、線形回帰分析を実行し、プロット直線を生成することによってELISA指数を対象のAIと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、対象のAIは9以下であることができ、ELISA指数は、1以上の微生物についての血清と比べて、CSFにて1以上の微生物特異的抗体を示すプロット直線より上にあることができる。
【0065】
組織試料を得ること:対象の脳または脊髄組織、血液、及びCSFの試料の抽出及び採取の手順は、当該技術分野で知られている方法によって行うことができる。凍結組織検体も使用することができる。上記のように、組織試料はコア針生検を用いて対象から得ることができる。該試料は全細胞または細胞小器官であることができる。細胞は、組織を削り取ること、組織試料を処理して個々の細胞を遊離させること、または体液から細胞を単離することによって採取することができる。試料は、新鮮組織、乾燥組織、培養細胞または組織であることができる。試料は、未固定である、または固定されることができる。本明細書に記載されている方法を用いて、脳または脊髄の任意の部分を得て、評価することができる。
【0066】
本明細書で開示されているのは、試料内の微生物を検出する方法である。当業者によって理解されるように、試料溶液は、体液(血液、生検組織、CSFを含むがこれらに限定されない)を含むが、これらに限定されない、任意の数の供給源を含んでもよい。試料は1ミリリットル未満の範囲であることができ、さらに細菌濃度の範囲であることができる。さらに、試料は血液、脳組織、脊髄組織、またはCSFに存在することができる。
【0067】
本明細書で開示されている方法のいずれかでは、対象は脱髄性疾患を有すると疑われ得る。本明細書で開示されている方法のいずれかでは、対象は脱髄性疾患を有するリスクがあり得る。いくつかの態様では、脱髄性疾患は、多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、または最初のエピソードからなる症候群であり得る。いくつかの態様では、この対象はヒトであることができる。いくつかの態様では、試料は脳組織、脳脊髄液、脊髄組織または血液であることができる。
【0068】
本明細書で開示されている方法のいずれかでは、方法はさらに、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は抗寄生虫剤を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤または抗真菌剤の組み合わせを対象に投与することを含むことができる。いくつかの態様では、検出された1以上の微生物特異的抗体または微生物が表1、表2または表8のリストから選択される細菌であり得る場合、抗菌剤を対象に投与することができる。いくつかの態様では、検出された1以上の微生物特異的抗体または微生物が表1、表2または表8のリストから選択されたウイルスである場合、抗ウイルス剤を対象に投与することができる。いくつかの態様では、検出された1以上の微生物特異的抗体または微生物が表1、表2または表8のリストから選択される真菌である場合、抗真菌剤を対象に投与することができる。
【0069】
本明細書で開示されている方法のいずれかでは、方法はさらに、試料における1以上の核酸配列を増幅することを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の核酸配列は表1、表2または表8の微生物のうちの1以上に対応する。いくつかの態様では、1以上の核酸配列は、1以上の核酸配列を特異的に増幅することができるプライマー対を用いて増幅することができる。いくつかの態様では、方法はさらに、表1、表2または表8の微生物の1以上に対応する1以上の核酸配列の発現が、対照における表1、表2または表8の微生物の同じ1以上の核酸配列の発現レベルと比べて過剰発現しているかどうかを決定することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はハイブリッド形成反応によって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、ハイブリッド形成反応はさらに、試料を1以上のプライマーセットにハイブリッド形成させることを含むことができる。いくつかの態様では、ハイブリッド形成反応はポリメラーゼ連鎖反応であることができる。いくつかの態様では、検出する工程は発現された配列タグによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程は局在化によって検出することを含むことができる。
【0070】
いくつかの態様では、微生物捕捉剤は抗体、ペプチド、タンパク質またはプローブであることができる。いくつかの態様では、本明細書で開示されている1以上の微生物(例えば、表1、表2及び表8を参照のこと)を用いて、対象(例えば、MSを有する患者またはMSを有することが疑われる患者)のCSF由来の抗体の1以上に結合することができる。いくつかの態様では、細菌抗原は0.5のODで超音波処理することができ、シングルウェルプレートまたはマルチウェルプレートの底にコーティングすることができる。いくつかの態様では、細菌抗原はAkkermansia、Atopobium、Lactobacillus、Pseudomonas、Bacteroides及びNitrosospiraに由来し得る。
【0071】
本明細書に記載されている方法またはアッセイまたは試験のいずれかでは、陽性対照、陰性対照、またはその双方をさらに含めることができる。陽性対照の例には、市販のCSF製剤(Randox)及び抗Pseudomonas抗体(ThermoFisher製品#PA1-73116)が挙げられるが、これらに限定されない。陰性対照の例には、PBS及びIgGを枯渇させたRandox CSF(すべての抗体を欠いている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
いくつかの態様では、1以上の検出方法を用いて、本明細書で開示されている微生物の1以上に対する特異的なCSF抗体の結合を実証することができる。いくつかの態様では、MSまたは他の自己免疫疾患を患っている、またはそれを有する疑いのある対象にて1以上の微生物を調べることができる(及び/または検出することができる)。いくつかの態様では、検出の方法は間接的方法であることができる。いくつかの態様では、間接的方法はELISAであることができる。いくつかの態様では、ELISAを使用して2以上の微生物を調べることができる(及び/または検出することができる)。
【0073】
治療の方法:本明細書で開示されているのは、多発性硬化症(MS)またはMS関連疾患の患者を治療する方法である。いくつかの態様では、方法は抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤またはそれらの組み合わせを患者に投与することを含むことができる。いくつかの態様では、患者は、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、またはそれらの組み合わせを必要としていると特定することができる。いくつかの態様では、患者は、微生物特異的抗体を含有すると疑われる試料を患者から得ることと;1以上の微生物捕捉剤が微生物特異的抗体の1以上に結合し、且つ微生物特異的抗体が表1、表2または表8リストから選択される1以上の微生物に特異的である、1以上の微生物捕捉剤と試料をインキュベートすることと;試料中にて1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することとによって特定することができる。いくつかの態様では、抗菌剤は、メロペネムまたはセフトリアキソンであることができる。いくつかの態様では、MS関連疾患は、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、または最初のエピソードからなる症候群であることができる。いくつかの態様では、検出する工程はマイクロアレイによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はELISAによって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、検出される1以上の微生物はAkkermansia属に由来し得る。いくつかの態様では、試料は脳組織、脳脊髄液、脊髄組織または血液であることができる。
【0074】
いくつかの態様では、方法はさらに、表1、表2または表8のリストから選択される1以上の微生物に特異的な1以上の微生物特異的抗体の存在を検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料における微生物特異的抗体の1以上の量を決定することを含むことができる。いくつかの態様では、方法はさらに、試料における1以上の核酸配列を増幅することを含むことができる。いくつかの態様では、1以上の核酸配列は表1、表2、または表8の微生物の1以上に対応することができる。いくつかの態様では、1以上の核酸配列は、1以上の核酸配列を特異的に増幅することができるプライマー対を用いて増幅することができる。いくつかの態様では、方法はさらに、表1、表2、または表8の微生物の1以上に対応する1以上の核酸配列の発現が、対照における表1、表2または表8の微生物の同じ1以上の核酸配列の発現レベルと比べて過剰発現しているかどうかを決定することを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はハイブリッド形成反応によって検出することを含むことができる。いくつかの態様では、ハイブリッド形成反応はさらに、試料を1以上のプライマーセットとハイブリッド形成させることを含むことができる。いくつかの態様では、検出する工程はポリメラーゼ連鎖反応によって検出することを含むことができる。
【0075】
検出の方法:本明細書で開示されている1以上の微生物または微生物特異的抗体の存在または非存在または発現レベルは、直接的に(例えば、免疫アッセイ、質量分光分析)または間接的に(例えば、1以上の微生物に特異的である1以上の抗体の存在または非存在;タンパク質またはペプチドのmRNA発現を決定すること)決定することができる。質量分光分析の例には、EI、CI、MALDI、ESIのようなイオン化源、及びQuad、イオントラップ、TOF、FTまたはそれらの組み合わせのような分析、分光分析、同位体比質量分分光析(IRMS)、熱イオン化質量分光分析(TIMS)、スパーク光源質量分光分析、多重反応モニタリング(MRM)、またはSRMが挙げられるが、これらに限定されない。これらの技術のいずれかを予備分画または集積法と組み合わせて行うことができる。免疫アッセイの例には、免疫ブロット、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、放射性免疫アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。免疫アッセイ法は、検出のために抗体を使用し、抗原のレベルの測定は当該技術分野で既知である。抗体は、スティック、プレート、ビーズ、マイクロビーズ、またはアレイのような固体支持体に不動化することができる。
【0076】
本明細書で開示されている1以上の微生物または微生物特異的抗体の存在または非存在または発現レベルはまた、組織試料にて1以上の微生物に特異的である1以上の抗体の存在または非存在を決定することによって間接的に決定することもできる。RNA発現の方法には、細胞のmRNAの抽出及び遺伝子の全部または一部をコードする転写産物とハイブリッド形成する標識されたプローブを用いたノーザンブロット、遺伝子特異的プライマー、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いたmRNAの増幅と、それに続く種々の方法による遺伝子産物の定量的検出;細胞からのRNAの抽出(標識が続き、その後、当該遺伝子をコードするcDNAまたはオリゴヌクレオチドを探索するのに使用される);原位置ハイブリッド形成;ならびにレポーター遺伝子の検出が挙げられるが、それらに限定されない。
【0077】
タンパク質の発現レベルを測定する方法には、ウェスタンブロット、免疫ブロット、ELISA、放射性免疫アッセイ、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡検査、蛍光活性化細胞選別(FACS)、及びフローサイトメトリーが挙げられるが、これらに限定されない。方法はまた、酵素活性または他のタンパク質パートナーとの相互作用を含むが、これらに限定されない特定のタンパク質特性に基づくアッセイも含むことができる。結合アッセイもまた使用することができ、当該技術分野では周知である。例えば、BIAcore装置を用いて、2つのタンパク質間の複合体の結合定数を測定することができる。1つのタンパク質から別のタンパク質への結合を測定または検出するために適切な他のアッセイとしては、免疫アッセイ、例えば、ELISA及び放射性免疫アッセイが挙げられる。分光学的変化を観察することによる結合の測定が用いられる場合もあれば、当該タンパク質の光学特性が、蛍光、UV吸収、円偏光二色性、または核磁気共鳴(NMR)によって測定される場合もある。別の方法として、特定の抗体を用いた免疫アッセイを用いて、腫瘍細胞における特定のタンパク質の発現を検出することができる。
【0078】
開示されている方法はまた、1以上の微生物の特定(またはそのような特定の欠如)に基づく、所望の治療の感受性の定量化及び/または適性も提供する。前記情報は治療上の決定につながることができる。
【0079】
タンパク質アレイ:本明細書で開示されているのは、ポリペプチドまたはタンパク質のアレイである。いくつかの態様では、タンパク質アレイは、本明細書で開示されている微生物パネルの構成要素に特異的な抗体、アプタマー、及び他の同族の結合リガンドを含むプローブを含むことができる。タンパク質アレイ及びタンパク質アレイを構築する方法は当業者に周知である。
【0080】
好適であることができるタンパク質アレイの1つの型は不動化された「捕捉抗体」を使用する。ポリペプチドは、処理された表面(例えば、アミノシラン)によって、またはビオチン・ストレプトアビジン結合を介して固体基板(例えば、ガラス)に結合される。次にアレイを、時間、緩衝液成分、及び認識特異性に依存する方法で捕捉抗体に結合することができるプローブを含有する溶液と共にインキュベートする。次いで、プローブは、前もって標識されているのであれば直接視覚化することができ、または二次標識試薬(別の抗体等)に結合させることができる。可視化される捕捉抗体に結合するプローブの量は、利用する標識方法に左右され得る;一般に、標識の発光を励起し、及び検出するのに適切であるフィルターセットを使用するCCDイメージャーまたはレーザースキャナーを使用することができる。イメージャーは、検出された光子の量を、市販のソフトウェアパッケージを用いて分析することができる電子信号(多くの場合、8ビットまたは16ビットの尺度)に変換する。
【0081】
アレイの基板は、有機または無機、生物学的または非生物学的、またはこれらの材料の任意の組み合わせであることができる。基板は透明または半透明であることができる。アレイにおける基板として使用するのに好適な材料の例には、シリコン、シリカ、石英、ガラス、制御細孔ガラス、炭素、アルミナ、二酸化チタン、ゲルマニウム、窒化ケイ素、ゼオライト、及びガリウムヒ素;ならびに金、白金、アルミニウム、銅、チタン、及びそれらの合金を含む金属が挙げられるが、これらに限定されない。セラミック及びポリマーも基板として使用することができる。好適なポリマーには、ポリスチレン;ポリ(テトラ)フルオロエチレン;(ポリ)二フッ化ビニリデン;ポリカーボネート;ポリメタクリル酸メチル;ポリビニルエチレン;ポリエチレンイミン;ポリ(エーテルエーテル)ケトン;ポリオキシメチレン(POM);ポリビニルフェノール;ポリラクチド;ポリメタクリルイミド(PMI);ポリアルケンスルホン(PAS);ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル;ポリジメチルシロキサン;ポリアクリルアミド;ポリイミド;コブロックポリマー;及びEupergit(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。フォトレジスト、重合したLangmuir-Blodgett膜、及びLIGA構造も基板として役立つことができる。
【0082】
アレイはさらに、基板上に形成することができる、または基板に塗布することができるコーティングを含むことができる。基板は、物理蒸着(PVD)またはプラズマ化学気相堆積(PECVD)のいずれかに基づく薄膜技術を使用することによるコーティングによって修飾することができる。あるいは、プラズマ照射を用いて基板を直接活性化することができる。例えば、プラズマエッチング手順を用いて、ポリマー表面(すなわち、ヒドロキシル、カルボン酸、アルデヒド等のような極性官能基を露出させるためのポリスチレンまたはポリエチレン)を酸化することができる。
【0083】
コーティングは金属膜を含むことができる。金属膜の例には、アルミニウム、クロム、チタン、ニッケルステンレス鋼亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、マンガン、カドミウム、タングステン、コバルト、及びそれらの合金または酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、金属膜は貴金属膜であることができる。コーティングに使用することができる貴金属の例には、金、白金、銀、銅、及びパラジウムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、コーティングは金または金合金を含む。電子ビーム蒸着を用いて、表面に金の薄いコーティングを提供することができる。いくつかの態様では、金属膜は約50nmから約500nmの厚さであることができる。
【0084】
あるいは、コーティングは、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、水素化ケイ素、酸化インジウムスズ、酸化マグネシウム、アルミナ、ガラス、ヒドロキシル化表面、及びポリマーであることができる。
【0085】
本明細書に記載されているアレイは、指定可能な要素の集合を含むことができる。マイクロタイタープレート内に含有されるアレイ、または各要素が異なるX座標とY座標に存在することができる平面に印刷されるアレイのようなそのような要素は空間的に指定可能であることができる。あるいは、要素は、タグ、ビーズ、ナノ粒子、または物理的特性に基づいて指定可能であることができる。マイクロアレイは、当業者に既知の方法に従って調製することができる。本明細書で使用されるとき「アレイ」という用語は、複数の指定可能な要素を伴った任意の生物学的アッセイを指すことができる。いくつかの態様では、指定可能な要素は、ポリペプチド(例えば、抗体またはその断片)または核酸プローブであることができる。本明細書で使用されるとき、「要素」は、本明細書で開示されている1以上の微生物によって、本明細書で開示されている微生物のいずれかに関係するまたは関連するような、ポリペプチド断片またはそのようなポリペプチドをコードする転写物によって結合され得る任意のプローブ(ポリペプチドまたは核酸に基づく)を指す。分子は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、RNA、DNA、脂質、グリコシル化分子、炭水化物、リン酸化修飾を伴うポリペプチド、及びシトルリン修飾を伴うポリペプチド、アプタマー、酸化分子、及び他の分子であることができるが、これらに限定されない。
【0086】
本明細書に記載されている要素について、「位置指定可能性」は、場所、位置、タグ、切断可能なタグまたはマーカー、識別子、スペクトル特性、電気泳動特性、または要素の特定を可能にする他の物理的特性を指す。コーディングとしても知られる位置指定可能性の例は、分子の位置が固定され、その位置が独自性と相関している空間位置指定可能性である。この種の空間アレイは一般に、平面基板上に合成するまたはスポット形成することができ、例えば、マイクロアレイを生成し、その際、多数の異なる分子が小さな領域に密に配置される(例えば、cm2あたり少なくとも約400の異なる配列を含み、cm2あたり1000の配列、またはcm2あたり5000以上もの配列であることができる)。プレート内のウェルがそれぞれ別個のプローブを含有する、さらに密度の低いアレイ(例えば、ELISAまたはRIAのプレート)は、プレートあたり約96配列から、cm2あたり最大約100配列まで、マイクロアレイの密度までを含むことができる。他の空間アレイは光ファイバーを利用しており、その際、異なるプローブをファイバーに結合することができ、それを結合と分析のために束状構造に形成することができる。ポリペプチドの空間アレイの製造及び使用のための方法は当該技術分野で既知である。
【0087】
この種の空間コーディングアレイの代替は、分子「タグ」の使用であり、その際、標的プローブを検出可能な標識またはタグに連結することができ、それはプローブの配列に関するコード化された情報を提供することができる。これらのタグは要素から切断され、その後検出されて要素を特定することができる。いくつかの態様では、プローブのセットは、コード化されたビーズのセットに合成されるまたは付着されることができ、その際、各ビーズは別個のプローブに連結することができ、且つビーズは、付着されたプローブの特定を可能にする方法でコード化することができる。この種の「タグアレイ」では、結合の検出にフローサイトメトリーを使用することができる。例えば、蛍光コーディングを有するミクロスフェアは、特定のミクロスフェアを特定することができる。プローブは、「色分けされた」対象物に共有結合させることができる。標識された標的ポリペプチドはフローサイトメトリーによって検出することができ、ミクロスフェア上のコーディングを用いて、結合したプローブ(例えば、免疫グロブリン、免疫グロブリンの抗原結合断片、またはリガンド)を特定することができる。
【0088】
いくつかの態様では、アレイは、免疫グロブリン(例えば、抗体またはその抗原結合断片)アレイであることができる。本明細書で使用されるとき、「免疫グロブリンアレイ」は、試料内に含有されるポリペプチドの特定を可能にする方法で配置された標的ポリペプチドに結合することができる、空間的に分離された別個の分子実体のセットを指す。いくつかの態様では、アレイは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、RNA、DNA、脂質、グリコシル化分子、リン酸化修飾を伴うポリペプチド、及びシトルリン修飾を伴うポリペプチド、アプタマー、及び他の分子のうちの1以上を含むことができる。
【0089】
組成物
抗体:本明細書で開示されているのは、本明細書で開示されている微生物または微生物特異的抗体の1以上に特異的に結合することができる、単離された抗体、抗体断片及びそれらの抗原結合断片である。任意で、単離された抗体、抗体断片、またはそれらの抗原結合断片は中和抗体であることができる。
【0090】
本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は広い意味で使用され、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の双方を含む。損なわれていない免疫グロブリン分子に加えて、本明細書で開示されているのはまた、それら免疫グロブリン分子の抗体断片またはポリマー、及び本明細書で開示されているポリペプチドと相互作用するそれらの能力について選択される限り、免疫グロブリン分子またはその断片のヒト型またはヒト化型である。「抗体断片」は完全な抗体の一部である。完全抗体は2本の完全な軽鎖と2本の完全な重鎖を有する抗体を指す。抗体断片は1以上の鎖の全部または一部を欠いている。抗体断片の例には半抗体及び半抗体の断片が挙げられるが、これらに限定されない。半抗体は単一の軽鎖と単一の重鎖で構成される。2本の軽鎖及び2本の重鎖を有する抗体または抗体断片を還元することによって半抗体及び半抗体断片を生成することができる。そのような抗体断片は還元抗体と呼ばれる。還元抗体は露出した反応性のスルフヒドリル基を有する。これらのスルフヒドリル基は、反応性化学基または生体分子の抗体断片へのカップリングとして使用することができる。好ましい半抗体断片はF(ab)である。抗体または抗体断片のヒンジ領域は軽鎖が終了し、重鎖が続く領域である。
【0091】
本明細書で開示されている方法にて使用するための抗体断片は、抗原(例えば、本明細書に記載されている微生物特異的抗体、または微生物の1以上)に結合することができる。いくつかの態様では、抗体断片は抗原に特異的であることができる。抗体または抗体断片は、他のエピトープよりも1つのエピトープに有意に高い親和性で結合するならば、抗原に特異的である。抗原は、抗体断片が結合することができる任意の分子、化合物、組成物、またはその一部であることができる。例えば、抗原は本明細書に記載されている微生物特異的抗体である、または微生物の1以上であることができる。分析物は対象とする任意の分子、化合物または組成物であることができる。抗体または抗体断片は、本明細書に記載されている試験管内アッセイを用いて、または類似の方法によってそれらの所望の活性について調べることができる。
【0092】
本明細書で使用されるとき、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団内の個々の抗体は、抗体分子の小さなサブセットに存在してもよい天然に存在する考えられる変異を除いて同一である。開示されているのはまた、重鎖または軽鎖の一部が特定の種に由来するまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるまたは相同である一方で、鎖(複数可)の残りは別の種に由来するまたは別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるまたは相同である「キメラ」抗体、ならびに所望の拮抗活性を示す限りそのような抗体の断片である(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)を参照のこと)。
【0093】
モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を産生する任意の手順を用いて作製することができる。例えば、開示されているモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein,Nature,256:495(1975)によって記載されたもののようなハイブリドーマ方法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物が通常、免疫剤で免疫付与され、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する、または産生することができるリンパ球を導き出す。
【0094】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号(Cabilly et al.)に記載されたもののような組み換えDNA法により製造されてもよい。開示されているモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離し、且つ配列決定することができる。抗体または活性がある抗体断片のライブラリーはまた、例えば、Burtonらの米国特許第5,804,440号及びBarbasらの米国特許第6,096,441号に記載されているように、ファージディスプレイ技術を用いて生成し、スクリーニングすることもできる。
【0095】
試験管内の方法も一価抗体を調製するのに好適である。その断片、例えば、抗体のFv、Fab、Fab’または他の抗原結合部分を生成するための抗体の消化は当該技術分野で既知の日常的技法を用いて達成することができる。例えば、消化はパパインを用いて行うことができる。パパイン消化の例は1994年12月22日に公開されたWO94/29348、及び米国特許第4,342,566号に記載されており、その内容は、一価抗体を調製するための抗体のパパイン消化の教示について参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。抗体のパパイン消化は通常、それぞれが単一の抗原結合部位を持つFab断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び残りのFc断片を生成する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、且つ依然として抗原を架橋することができる断片が得られる。
【0096】
抗体または抗体断片の活性が修飾されていない抗体または抗体断片と比較して有意に変化または障害されていないという条件で、断片は、他の配列に結合されるか否かに関わらず、特定の領域または特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、または他の選択される修飾を含むこともできる。これらの修飾は、いくつかの追加の特性、例えば、ジスルフィド結合可能なアミノ酸を除去/付加すること、その生物寿命を増加させること、その分泌特性を変えること等を提供することができる。いずれの場合も、抗体または抗体断片は、その同族抗原への特異的結合のような生物活性特性を持たなければならない。抗体または抗体断片の機能的領域または活性領域は、タンパク質の特定領域の突然変異誘発と、それに続く発現及び発現したポリペプチドの検査によって特定されてもよい。そのような方法は、当該技術分野における熟練実践者には容易に明らかであり、抗体または抗体断片をコードする核酸の部位特異的突然変異誘発を含むことができる(Zoller,M.J.Curr.Opin.Biotechnol.3:348-354,1992)。
【0097】
本明細書で使用されるとき、「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語はまた、ヒト抗体またはヒト化抗体を指すこともできる。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、またはウサギに由来するもの)は、ヒトにおいて自然に抗原性であり、したがって、ヒトに投与された場合、望ましくない免疫応答を引き起こし得る。したがって、方法におけるヒト抗体またはヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が望ましくない免疫応答を引き起こす可能性を減らすのに役立つ。
【0098】
ヒト抗体は任意の技術を用いて調製することができる。ヒトモノクローナル抗体産生のための技術の例には、Cole et al.(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77,1985)及びBoerner et al.(J.Immunol.,147(1):86:95,1991)によって記載されたものが挙げられる。ヒト抗体(及びその断片)は、ファージディスプレイライブラリーを用いて生成することもできる(Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991))。
【0099】
ヒト抗体はトランスジェニック動物から入手することもできる。例えば、免疫付与に応答して、ヒト抗体の完全なレパトアを産生することができるトランスジェニック変異マウスが記載されている(例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551-255(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255,258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)を参照のこと)。具体的には、これらのキメラマウス及び生殖細胞系列変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J(H))遺伝子のホモ接合性欠失は、内在性抗体産生の完全な抑制を生じ、ヒト生殖細胞系列抗体遺伝子アレイのそのような生殖系列変異マウスへの導入の成功は、抗原負荷の際にヒト抗体の産生を生じる。所望の活性を有する抗体は、本明細書に記載されているように、Env-CD4-共受容体複合体を用いて選択される。
【0100】
任意で、ヒト抗体はヒトB細胞のエプスタインバーウイルス形質転換のための方法を用いてメモリーB細胞から作製することができる。(例えば、メモリーB細胞からヒトモノクローナル抗体を作製する方法を教示するために、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるTriaggiai et al.,An efficient method to make human monoclonal antibodies from memory B cells:potent neutralization of SARS,coronavirus,Nat.Med.2004,Aug;10(8):871-5.(2004)を参照のこと)。要するに、自然感染を生き延びた対象由来のメモリーB細胞は、照射された単核細胞とメモリーB細胞のポリクローナル活性化因子として作用するCpGオリゴヌクレオチドとの存在下で単離され、EBVによって不死化される。メモリーB細胞を培養し、特異的抗体の存在について分析する。次に、所望の特異性の抗体を産生する培養物由来のEBV-B細胞を、照射された単核細胞の存在下で限界希釈することによってクローン化し、クローニング効率を高めるためにCpG2006を添加して培養する。EBV-B細胞の培養後、モノクローナル抗体を単離することができる。そのような方法は、(1)生涯にわたって安定であり、末梢血から容易に単離することができるメモリーBリンパ球の不死化によって産生される抗体、及び(2)自然感染を生き延びた感作された天然宿主から単離された抗体を提供するので、異なる感受性を示すので異なる免疫応答を示し得る実験動物の免疫付与の必要性を排除する。
【0101】
抗体のヒト化技術は一般に、抗体分子の1以上のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作するための組み換えDNA技術の使用を伴う。したがって、非ヒト抗体(またはその断片)のヒト化形態は、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワークに組み込まれた非ヒト(ドナー)抗体由来の抗原結合部位の一部を含有するキメラの抗体または抗体鎖(またはその断片、例えば、Fv、Fab、FaB’、または抗体の他の抗原結合部分)である。
【0102】
ヒト化抗体を生成するために、レシピエント(ヒト)抗体分子の1以上の相補性決定領域(CDR)由来の残基を、所望の抗原結合特性(例えば、標的抗原に対する特定のレベルの特異性及び親和性)を有することが知られているドナー(非ヒト)抗体分子の1以上のCDR由来の残基で置き換える。場合によっては、ヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基は対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワークの配列にも見いだされない残基も含有してもよい。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入された1以上のアミノ酸残基を有する。実際に、ヒト化抗体は通常、いくつかのCDR残基及びおそらくいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体は一般に、抗体定常領域(Fc)、通常ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分を含有する(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988)、及びPresta,Curr.Struct.Biol.,2:593-596(1992))。
【0103】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該技術分野で周知である。例えば、ヒト化抗体は、Winter及び共同試験者(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986),Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988),Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988))の方法に従って、ヒト抗体の対応する配列の代わりに齧歯類のCDRまたはCDRの配列を使うことによって生成することができる。ヒト化抗体を製造するために使用することができる方法は、米国特許第4,816,567号(Cabilly et al.)、米国特許第5,565,332号(Hoogenboom et al.)、米国特許第5,721,367号(Kay et al.)、米国特許第5,837,243号(Deo et al.)、米国特許第5、939,598号(Kucherlapati et al.)、米国特許第6,130,364号(Jakobovits et al.)、及び米国特許第6,180,377号(Morgan et al.)にも記載されている。本明細書で開示されている抗体も対象に投与することができる。抗体送達のための核酸アプローチも存在する。本明細書で開示されているポリペプチドに対する広範に中和する抗体及び抗体断片はまた、抗体または抗体断片をコードする核酸調製物(例えば、DNAまたはRNA)として対象または対象に投与することができるので、対象自身の細胞が核酸を取り込み、コードされた抗体または抗体断片を産生し、分泌する。
【0104】
キット
いくつかの態様では、本明細書で開示されている1以上の微生物の存在または発現を検出する、増幅するまたは測定することができる1以上のプローブまたはプライマーを含むキットが開示されている。開示されているのはまた、本明細書で開示されている微生物捕捉剤、微生物または微生物特異的抗体のうちの1以上を含むキットである。
【0105】
本明細書で開示されているのは、本明細書に記載されている微生物の1以上とハイブリッド形成するまたは結合することができる1以上のプライマー、プローブ、ポリペプチド、または抗体を含む固体支持体である。固体支持体は、分析物及び分析物結合分子のような分子を関連付けることができる固体状態の基板または支持体である。分析物(例えば、ナノ粒子やタンパク質の石灰化)は、直接または間接的に固体支持体と関連付けることができる。例えば、分析物は固体支持体に直接不動化することができる。分析物捕捉剤(例えば、捕捉化合物)もまた、固体支持体上に不動化することができる。
【0106】
上述のように、当業者は、本明細書で開示されている1以上の微生物または微生物特異的抗体(タンパク質または核酸)の存在または発現レベルを任意の数の方法で決定することができる。試料内の生体マーカーのRNA産物のレベルを検出するまたは定量するために、マイクロアレイのようなアレイ、RT-PCR(定量的RT-PCRを含む)、ヌクレアーゼ保護アッセイ、ノーザンブロット分析を使用することができる。したがって、いくつかの態様では、微生物の1以上の発現レベルは、アレイ、マイクロアレイ、RT-PCR、定量的RT-PCR、ヌクレアーゼ保護アッセイまたはノーザンブロット分析を用いて決定することができる。
【0107】
アレイは固体支持体の形態である。アレイ検出器も、複数の異なる捕捉化合物または検出化合物がアレイ状、グリッド状または他の組織化されたパターンで結合している固体支持体の形態である。
【0108】
固体支持体で用いる固体状態の基板には、例えば、分子が結合することができる任意の固体物質を挙げることができる。そのような物質の例には、アクリルアミド、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリシリケート、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルソエステル、ポリプロピルフメレート、コラーゲン、グリコサミノグリカン及びポリアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。固体状態の基板は、薄膜、膜、ボトル、ディッシュ、繊維、織り繊維、成形ポリマー、粒子、ビーズ、微小粒子またはそれらの組み合わせを含む任意の有用な形態を有することができる。固体状態の基板及び固体支持体は、多孔性であることができ、または非多孔性であることができる。固体状態の基板の例は、マイクロタイターディッシュ(例えば、標準的な96ウェル型)である。マルチウェルスライドグラスも使用することができる。例えば、ウェルごとに1つのアレイを含有するものを使用し、アッセイの再現性の卓越した制御、向上したスループットと試料処理、及び自動化が容易さを可能にすることができる。
【0109】
異なる化合物をセットとして一緒に使用することができる。セットは、別々の反応で別々に使用される、またはアレイに不動化される化合物(例えば、微生物捕捉剤または微生物特異的抗体)のすべてまたはサブセットの混合物として使用することができる。別々にまたは混合物として使用される化合物は、例えば、固体支持体との会合または固体支持体上での不動化を介して物理的に分離することができる。アレイは、アレイ上の特定されたまたは事前に定義された位置に不動化された複数の化合物を含むことができる。アレイ上の事前に定義された各場所は一般に、1種類の成分を有することができる(すなわち、その場所にあるすべての成分は同じである)。各場所は成分の複数のコピーを有することができる。アレイにおける異なる成分の空間的分離は、本明細書で開示されているポリヌクレオチドまたはポリペプチドの別個の検出及び同定を可能にする。
【0110】
所与のアレイが単一のユニットまたは構造であることは必要とされない。化合物のセットは、任意の数の固体支持体に分配することができる。例えば、各化合物は、別個の反応の試験管もしくは容器、または別個のビーズもしくは微粒子に不動化することができる。遺伝子発現パネルまたはアレイまたは診断装置の開示されている方法及び使用のさまざまな態様は、固体支持体上に不動化されたさまざまな成分(例えば、さまざまなタンパク質に特異的なさまざまな化合物)と共に実施することができる。
【0111】
一部の固体支持体は、固体状態の基板に付着させた抗体のような捕捉化合物を有することができる。そのような捕捉化合物は、石灰化ナノ粒子または石灰化ナノ粒子上のタンパク質に特異的であることができる。次に、捕捉された石灰化したナノ粒子またはタンパク質は、抗体のような第2の検出化合物の結合によって検出することができる。検出化合物は、石灰化ナノ粒子上の同じタンパク質または異なるタンパク質に特異的であることができる。
【0112】
核酸、ペプチドまたは抗体(及び他のタンパク質)を固体状態の基板に不動化する方法は十分に確立されている。不動化は、例えば、標準的な不動化の化学的性質を用いて、アミノ化表面、カルボキシル化表面、またはヒドロキシル化表面に付着させることによって達成することができる。付着剤の例には、臭化シアン、スクシンイミド、アルデヒド、塩化トシル、アビジンビオチン、光架橋剤、エポキシド、マレイミド、及びN-[y-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル(GMBS)、及びヘテロ2官能性架橋剤が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、抗体の遊離アミノ基を固体状態の基板内に存在する反応性側基に化学的に架橋することによって基板に結合させることができる。抗体は、例えば、架橋剤としてそれぞれグルタルアルデヒド、カルボジイミド、またはGMBSを用いて、遊離のアミノ基、カルボキシル基、またはイオウ基を含有する基板に化学的に架橋することができる。この方法では、遊離抗体を含有する水溶液をグルタルアルデヒドまたはカルボジイミドの存在下で固体状態の基板とインキュベートすることができる。
【0113】
抗体または他のタンパク質を固体状態の基板に付着させる方法は、基板をアミノシランまたはチオールシランで官能化し、次いで官能化された基板をスベリン酸ビス-スルホ-スクシンイミジル(BS3)のようなホモ2官能性架橋剤またはGMBSのようなヘテロ2官能性架橋剤で活性化することである。GMBSとの架橋については、メルカプトプロピルトリメトキシシランの溶液(95%エタノールpH5.5中で1%vol/vol)に1時間浸漬することと、95%エタノールですすぐことと、120℃で4時間加熱することとによってガラス基板を化学的に官能化することができる。チオール誘導体化スライドは、1%ジメチルホルムアミド、99%エタノールにおけるGMBSの0.5mg/ml溶液に室温で1時間浸漬することによって活性化することができる。抗体またはタンパク質は活性化された基板に直接加えることができ、それを2%ウシ血清アルブミンのような薬剤を含有する溶液でブロックし、風乾することができる。他の標準的な不動化の化学は当業者によって知られている。
【0114】
固体支持体に不動化された各成分(例えば、抗体)は、固体支持体の異なる事前定義された領域に配置することができる。異なる事前定義された領域のそれぞれは互いに物理的に分離することができる。固体支持体の異なる事前定義された領域間の距離は固定することができ、または可変であることができる。例えば、アレイでは、各成分を互いに固定した距離に配置することができる一方で、ビーズに関連付けられた成分は固定した空間関係にはないであろう。複数の固体支持ユニット(例えば、複数のビーズ)の使用は変動する距離を生じることができる。
【0115】
成分は、任意の密度で固体支持体に会合するまたは不動化することができる。成分は、1立方センチメートルあたり400を超えるさまざまな成分の密度で固体支持体に不動化することができる。成分のアレイは任意の数の成分を有することができる。例えば、アレイは、固体支持体に不動化された少なくとも1,000のさまざまな成分、固体支持体に不動化された少なくとも10,000のさまざまな成分、固体支持体に不動化された少なくとも100,000のさまざまな成分、または固体支持体に不動化された少なくとも1,000,000のさまざまな成分を有することができる。
【0116】
さらに、本明細書に記載されている微生物はまた、髄鞘形成不全疾患に対する易罹患性またはその存在もしくは進行のためのマーカー(すなわち、生体マーカー)として使用することもできる。本明細書に記載されている方法及びアッセイは経時的に実施することができ、マーカーのレベルの変化を評価することができる。例えば、アッセイは、6ヵ月から1年の期間24~72時間ごとに実行することができ、その後、必要に応じて実行することができる。アッセイは、治療プロトコールの前に、最中に、または後で完了することもできる。全体で、本明細書で開示されている微生物または微生物特異的抗体は、脱髄性疾患の個人のリスクまたは進行をプロファイリングするために使用することができる。この文脈内で使用されるとき、「差次的に発現される」または「差次的発現」という用語は、生体マーカーの生成物(例えば、RNAまたは遺伝子産物)の発現レベルを測定することによってアッセイすることができる、本明細書で開示されている生体マーカーの発現レベルの差異、例えば、生体マーカーの発現されたメッセンジャーRNA転写物もしくはその一部、または発現されたタンパク質のレベルの差異を指す。いくつかの態様では、この差異は有意に異なる。
【0117】
感度を改善するために、本明細書で開示されている1を超える微生物を所与の試料内でアッセイすることができる。本明細書で提供されているさまざまなタンパク質、抗体、核酸に特異的な結合剤は、単一のアッセイ内で組み合わせることができる。さらに、複数のプライマーまたはプローブを同時に使用することができる。そのようなアッセイを支援するために、特定の生体マーカーはそのような検査の特異性に役立つことができる。
【0118】
一般に、本明細書で開示されているのは、患者における微生物(例えば、微生物(microorganism))及び微生物感染症(多微生物感染症を含む)の特定(診断を含む)のための方法である。試料内のさまざまな微生物を特定するために使用される種々の方法があり、例えば、特異性を提供する。いくつかの態様では、複数の検出面を使用することができる。いくつかの態様では、各検出面は、さまざまな具体的な微生物捕捉剤を有することができる。すなわち、1つの検出面は、特定の微生物の種または属に対する抗体を含む微生物捕捉剤を含んでもよく、別の検出面は異なる特定の種に対する異なる微生物捕捉剤を含んでもよい。いくつかの態様では、互いに流体的に分離されている複数の検出面;例えば、複数の検出モジュール、例えば、検出チャネルを使用することができ、その際、1つの試料を検出モジュールに分割することができ、次いで、評価のために、異なる条件、例えば、異なる微生物捕捉剤に供することができる。本明細書で概説されるように、複数の異なる検出面は、非特異的なまたは特異的な微生物捕捉剤を有することができる。
【0119】
いくつかの態様では、検出面(複数可)は、微生物または微生物特異的抗体の非特異的捕捉に依存することができるが、検出方法は、特異的結合リガンドに依存することができ;例えば、微生物の特定の種または属に対する微生物特異的抗体は、蛍光標識と共に使用することができる。いくつかの態様では、同時検出は通常、異なる標識を含有する異なる結合リガンドに依存する一方で、連続検出は、1以上の洗浄工程とそれに続き、同じ標識を持つ異なる結合リガンドを用いて行うことができる。本発明の別の態様は、特定の捕捉または特定の標識のいずれかの使用を回避する。いくつかの態様では、方法は、検出可能な変化または既知の変化に基づく検出面上での微生物の空間的分離を用いて微生物の具体的な特定を提供する。例えば、単一の微生物の分裂を検出する能力は、任意の数のパラメーター、特に、増殖速度、代謝活性の評価、異なる抗生物質による細胞殺傷の速度、ならびにサイズ、形状、及び同胞生物との関係を含むことができる微生物の形態(例えば、クラスターまたはチェーンへの増殖、表面での2次元増殖、または表面から離れた3次元増殖)を含むが、これらに限定されない速度論的パラメーターに基づく特定を可能にする。速度の評価に加えて、単一のデータポイント分析も行われてもよい(例えば、表面上での個々の微生物に関連する面積の増加(例えば、正の増殖)、停滞した面積(正の増殖なし)、または面積の喪失(例えば、負の増殖、アポトーシス及び/または死)。
【0120】
いくつかの態様では、本発明は、対象にて脱髄性疾患を検出するための固体支持体またはキットを提供する。いくつかの態様では、対象は、脱髄性疾患を有することが疑われ得る、または脱髄性疾患を有するリスクがある。いくつかの態様では、本発明は、試料にて1以上の抗体を検出するための固体支持体またはキットを提供する。いくつかの態様では、1以上の微生物特異的抗体の存在の検出は脱髄性疾患を示すことができる。いくつかの態様では、本発明は、試料にて1以上の微生物を検出するための固体支持体またはキットを提供する。いくつかの態様では、試料は、脱髄性疾患を発症するリスクがある、または脱髄性疾患を有することが疑われる対象に由来し得る。固体支持体またはキットは、表1、表2、または表8のリストから選択された1以上の微生物の存在を決定するのに有用であることができる核酸プローブ、抗体、微生物特異的抗体、プライマー、及び/または微生物捕捉剤を含むことができる。
【0121】
キットはまた、キットが容易に且つ効率的に使用され得るように、種々の補助物質に使用することができる試薬、例えば、溶媒、洗浄緩衝液等を含むこともできる。
【実施例
【0122】
実施例1:生存患者から得られた一次性脱髄脳検体における微生物配列のスペクトル及び細菌細胞壁抗原
【0123】
要約:多発性硬化症(MS)は脳と脊髄における複数の病変を特徴とする自己免疫疾患である。RNA配列決定を用いて、微生物配列を特定し、30のヒト脳生検検体におけるヒト遺伝子の発現パターンを特徴付けた。既知の微生物分類群に対して並べたRNAは、15のてんかん対照の群と比較して12の一次性脱髄(MS)脳検体のうち10で有意に集積され、11の異なる門に由来する29のMS微生物またはMS微生物ファミリーの属のリストにつながった。本明細書に記載されているMS微生物のほとんどは嫌気性細菌である。いくつかの共通のMS微生物またはMS微生物ファミリーがあったが、有意な微生物RNA集積を伴う10のMS試料のそれぞれは、MS微生物またはMS微生物ファミリーの異なるセットを有した。微生物配列決定の読み取りの割合は、対照(77.4PPM、p=0.016)と比べてMS群(128.8PPM)の方が大きかった。細菌のペプチドグリカンはいくつかのMS対象の脳組織切片で実証された。ヒトの遺伝子発現分析は、MS群における炎症関連経路の発現の増加を示した。このデータは、脱髄性脳病変が微生物のRNA配列と細菌抗原の存在に関連していることを示している。これは、MSが病変内の微生物の多様なセットの存在によって引き起こされることを示唆している。
【0124】
材料及び方法:対象:試験対象の特徴を表3に示す。11人の対象から配列決定のために12の脳生検試料を選択した。これらの11人の対象のうち10人からの生検は脱髄を示す病変を有した。別の対象(MS-062)は十分に確立された進行性MSを有した。これら11人の対象は、明確さと簡潔さのためにMS群として指定されている。(1人の対象、MS-021は3ヵ月の経過で2回生検された。)脳生検の所見は神経病理学者が審査した。MS対象の疾患経過は、単一の脱髄症状の発現から重度の劇症疾患(マールブルグ病または腫瘤形成性疾患)までに及んだ。臨床情報は、電子記録、紙の記録、及び治療を行う医師との議論からまとめられた。臨床診断及び画像所見はMS神経内科医が審査した。3人の対象は、他の神経疾患(OND)と呼ばれるいくつかの他の過程を示す脳生検の病変を有した。対照群は、発作を制御するために脳組織の一部を切除したてんかんの15人の対象から採取した組織からなる。MS及びONDの対象からの検体は白質だった一方で、てんかん対照の対象からの検体は主に大脳皮質(灰白質)からのものだった。
【0125】
検体の調製、RNA抽出、及びライブラリーの調製:脳生検ブロックを得た。複数の手順を用いて試料の外来性の汚染を防止した:新しい刃を持った専用ミクロトームを各検体に使用し、ベンチ領域を清浄にし、検体の処理の間で汚染除去し、組織の先頭の50ミクロンを捨て、滅菌使い捨て器具を用いて検体を取り扱い、検体間ではミクロトームをアルコールと漂白剤で消毒した。RNA抽出のために厚さ10μmの5つの切片を採取した。
【0126】
DNA分解酵素工程を含むQiagen FFPE RNAキットを用いて脳生検でRNA抽出を行った。これらのMS脳生検検体のうち12個からのRNAは品質管理に合格し、Illumina HiSeq 2500プラットフォームにて2回の別々の実行で配列決定されている。配列決定された12のMS試料のうち10は女性の対象からのものである。女性対象の1人(対象021)は3ヵ月間隔で2回生検された。微生物配列について試料を集積するために、RiboZero(Illumina Catalog #MRZH116)を用いて試料からヒトrRNAを物理的に枯渇させた。配列決定のために、無指向性の相補性DNAライブラリーを構築し、HiSeq-2500でペアエンド125bpの配列決定を実施した。同じ機器と手順を用いて15の対照てんかんFFPE試料を並行して処理し、且つ配列決定した。2つの慢性脳炎及び1つの無酸素性脳損傷の試料を配列決定して、他の神経疾患(OND)対照として役立てた。目に見える組織(すなわち、パラフィン)がないと定義された2つのブランク検体及びヒトゲノムまたはトランスクリプトームにマッピングされた試料の読み取りの<10%を配列決定し、分析に使用した。RNA-seqによって125bpのペアエンド読み取りが得られた。
【0127】
配列決定及び品質管理:ペアの125bpの読み取りの品質管理はSickleプログラムによって実施した。低品質のペアを除去し、端末の低品質のベースコールをトリミングした(Sickle:FastQファイルv.1.33(2011)用のスライディングウィンドウ、適応型、品質ベースのトリミングツール)。Sickleパラメーターは、ペアのいずれかのメンバーが長さ<40bpトリミングされたときに読み取りペアを破棄するように設定した。各試料のHQ読み取りペアを、Bowtie2(設定:-q--k1-phred33--局所)(Langmead,B.& Salzberg,S.L.Fast gapped-read alignment with Bowtie 2.Nat.Meth.9,357-359,doi:10.1038/nmeth.1923,http://www.nature.com/nmeth/journal/v9/n4/abs/nmeth.1923.html-supplementary-information(2012))を用いていくつかのデータベースに対して並べた。ヒトのゲノム及び/またはヒトのトランスクリプトーム(GRChアセンブリ)に対して並べた読み取りを宿主遺伝子発現の差異について別々に分析した。次に、残りの非ヒトの読み取りを、Fischer Labで編集された汎微生物データベースに対して並べた。汎微生物データベースには、非冗長ウイルスデータベース(完全な及び部分的なウイルス配列を含む)、GenBankにおける完全な細菌、古細菌、真菌、及び原生生物のゲノムが含まれている。この11Gbの汎微生物データベースは130万を超える配列記録を含有し、それぞれが10,654種を表すGenBank識別子(gi)によって特定される。Fischer(Fischer,K.F.The Panmicrobial Database,<http://pathogenomics.path.utah.edu/sequences/panmicrobial_nrdb.fasta.zip>(2017))。微生物の配列比較はBowtie2(設定:--end-to-end-phred33)でも実施した。同じ微生物配列に対して並ぶ読み取りペア(一致ペア)を数え、分析に進めた。
【0128】
RNA-seqは各試料で正確に同じ数のHQペアを生成しなかったので、汎微生物データベースにおける各配列に対して並べた試料由来の読み取り数を、高品質ペアの読み取り数(百万単位)で割ることによって正規化し、100万あたりのペア(PPM)を得た。これらの正規化されたヒット率(HR)は、各微生物分類群及び試料ごとに算出した。分類群PPMは、可能な場合は集計し、属及び科のレベルで分析した。2つの配列決定実行(実行1と実行2)からのデータを組み合わせて、分析した。実行2に固有の不自然な結果が観察され、実行1よりもProteobacteria門に並ぶ読み取りが多かった。この不自然な結果の影響を受けた分類群は、実行2のブランク(組織なし)検体のHRを実行1の対照試料のHRと比較することによってHR分析から除外した。次に、配列決定実行1の対照のその分類群の平均HRよりも大きい片方または双方のブランクにおけるHRを持つ分類群を除外した。ブランクは、目に見える組織を含まない登録された対象に由来する別個のFFPE脳生検検体だった。
【0129】
ヒトの遺伝子発現:Bowtie(v2.2.5.0)、tophat(v2.0.14)及びcuffdiff(v2.2.1)を用いて脱髄試料群及び対照試料群における既知のスプライス変異型の差次的発現レベルを算出した(Trapnell,C.et al.Nat.Biotech.28,511-515,(2010);及びTrapnell,C.et al.Differential analysis of gene regulation at transcript resolution with RNA-seq.Nat.Biotech.31,46-53,(2013)。Tophatは、「-no-novel-juncs」設定で実行した。Cuffdiffは各試料についてtophatの出力「accepted_hits.bam」ファイルで実行した。偽発見率(FDR)を<0.05に制御して、差次的に発現された転写物を群間で特定した。使用したトランスクリプトームモデルは、2014年5月23日のGRCh37Ensemblリリース75から導出した。差次的に発現する遺伝子の経路集積は、Cytoscape及びthe Reactome Curated経路データベース(Fabregat,A.et al.Nucleic Acids Res.44,D481-487,(2016))によって算出した。
【0130】
統計分析:試験集団の人口統計及び特性をANOVAを用いて比較し、次いで離散型変数(例えば、性別)についてはFisherの直接確率検定、またはMann-Whitneyの非パラメーター検定(例えば、年齢、採取年)で確認した(Lowry,R.VassarStats:Website for Statistical Computation,<http://vassarstats.net/>)。各MS脳試料についての微生物のリストは、データセット内の有意な外れ値を探すことによって導き出された。各試料についての各分類群からのHRは変換されたログ2だった。Zスコアは15の対照試料を予想される分布として用いて、すべてのMS試料について算出した。分析はファミリー及び属のレベルで実施した。Zスコアは正規分布を用いてp値に変換した。MS群にて過小出現ではなく、過剰出現している微生物配列に関心があったので、片側検定を実施した。多重比較を修正するために、Benjamini-Hochberg(Benjamini,Y.& Hochberg,Y.Journal of the Royal Statistical Society,Series B(Methodological)57,289-300(1995))の偽発見率制御法によってp値をq値に変換した。MS微生物またはMS微生物ファミリーは15の対照のセットと比較して少なくとも1つのMS試料にて有意に(q<0.05)過剰出現しているものとして定義され、HRは1.0PPM未満である。Python2.7を用いてHRに基づく有意性を算出した。HRの正規化、変換、及びZスコアの算出は、numpyとpandasを用いて実施し;p値及びq値は、scipy.stats(Oliphant,T.E.(2006);McKinney,W.in SciPy 2010;及びSciPy:Open source scientific tools for Python(2001))で算出した。
【0131】
免疫組織化学:対象MS-019及びMS-056、てんかん対照039及び040、及び脳膿瘍(陽性対照)に由来する5ミクロンの病理学的脳組織切片を調べた。組織切片は、抗原脱マスキング(Vector Laboratories、製品H3300)、続いて0.5%カゼインブロッキング(Sigma)を用いて処理した。切片を、抗ペプチドグリカンIgG1 mAb(EMD Millipore製品MAB995、Temecula,CA)、抗CD68(マクロファージ、ab955、Abcam、Cambridge,MA)、抗リゾチーム(マクロファージ及び好中球、ab108508、Abcam、ケンブリッジ、MA)、またはマウスアイソタイプ対照Ab(IgG1アイソタイプ対照、Invitrogen、カタログ番号MA5-14453)と共に4度で一晩インキュベートした。追加の抗ペプチドグリカンモノクローナル抗体(mAb 2E9)が提供された。2E9は、脾臓マクロファージにて腸内細菌叢由来の細菌抗原を検出するための試薬として1994年に最初に開発されたIgG3 mAbである(Kool,J.et al.Journal of Histochemistry & Cytochemistry,42,1435-1441,(1994))。このmAbは、脳組織におけるペプチドグリカンを示すのにも使用されている(Schrijver,I.A.et al.Brain,124,1544-1554(2001);及びBranton,W.G.et al.Scientific reports,6,37344,(2016))。切片は、ビオチン化抗マウスIgG抗体(BA-2000,Vector,California,USA)とストレプトアビジン・ペルオキシダーゼ(S5512,Sigma,St.St.Louis,MO,USA)とによって発色させた。Zeiss Axioplan顕微鏡で画像解析を行った。
【0132】
結果:試験集団:試験集団の特徴を表3に示す。年齢及び性別の分布には群間で有意差はなかった。脳検体の採取はMS群(中央値2007、p<0.001)と比べて対照群(中央値2012)では幾分後で実施された。これは、てんかんの外科的対照(さらに一般的)と比べて一次性脱髄検体(相対的に稀)が豊富であることに起因し、さらに最近のてんかん対照検体が登録された状況につながっている。対照群は、MS群(中央値1、p=0.005)と比べて脳検体採取の1ヵ月前に有意に多くの外科的処置を受けた(中央値2)。外科的処置の数が多いのは、てんかん原性焦点の切除前に対照で行われたマッピング処置によるものである。
【0133】
脳検体の特徴:この試験で使用された脳検体は、ホルマリン固定し、パラフィン包埋したFFPEだった。生検部位には、MS群及び他の神経疾患(OND)群の白質と灰白質の混合物が含まれていた。対照生検は主に皮質(灰白質)から採取した。MS群からの12の生検のうちの10は、MSと一致する脱髄の神経病理学的な読み取りデータを有した。最初の検体は診断が不十分(すなわち、正常な脳)であったため、対象の1人(MS-021)は2回生検された。十分に確立された進行性MSの別の対象(MS-062)は、血管周囲の炎症を示した灰白質から主になる生検を受けた。OND群の3人の対象は、最初に放射線と臨床所見に基づいてMSを有すると疑われたが、後に、その検体の神経病変に基づいて再分類された(すなわち、一次性脱髄ではない)。
【0134】
MS群及びOND群における臨床所見:MS群の11人の対象のうち6人は、記録にオリゴクローナルバンド(OCB)検査を有した。これらのうち、4つが陽性で、2つが陰性だった。1人のOND対象(OND-003)も、MSではなく急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と脳炎の最終的な診断にもかかわらず、陽性であったOCB検査を有した。MS群の11人の対象は多発性硬化症と一致する疾患を有し、6人は疾患修飾療法を受けた(表3)。対象の1人(MS-21)が数ヵ月間隔で2回の脳生検を実施したので、MS対象はMS試料よりも1人少なくなっている。
表3.試験集団の特徴。


1MSは一次性脱髄群を指す。OND=他の神経疾患;C=てんかん対照
2検体採取時に年齢(年)が報告される。
3病理学報告で指定されているような脳組織採取の部位。てんかんの対照部位は主に皮質に由来した。利用可能な場合、側性が提供される。
4神経病理学者によって記載されたようなMS及びONDの症例における読み取りデータ。臨床病理報告は、審査に利用できないこれらの群の検体から及び対照にて要約されている。FCD=限局性皮質異形成症
5医療記録及び治療神経科医との議論から評価。RRMS=再発寛解型MS;ADEM=急性散在性脳脊髄炎;CVA=脳血管発作(脳卒中)
6ND=検査されず
7MS神経内科医によって審査されたような、審査に利用できなければ医療記録に報告されたような脳MRI(及び/またはCT)所見。
8診断用脳生検後に提供される疾患修飾療法(DMT)。MS群の生検は診断を確立するためのものであったので、これらの対象はいずれも検体採取時に疾患修飾療法を受けていなかった。NTZ=ナタリズマブ;IFNb=インターフェロンベータ;DMF=フマル酸ジメチル;GA=酢酸グラタリマー、NOV=ノバントロン、AZP=アザチオプリン、RTX=リツキシマブ
【0135】
配列決定及び配列比較:32の試料(MS12、対照15、OND3、ブランク2)のうち、配列決定の総収量は1.06~2.96×108の高品質読み取りペア(HQペア)だった。試料群間でHQペアの数に有意差はなかった。全体として、配列決定の品質は高く、元のフィルタリングされていない読み取りペアの2.6%がデータセットから破棄された。残りのHQペアは、微生物とヒトのデータベースの配列比較に使用された。ほとんどのHQペア(95.7%)は完全長(125bp)だった。残りのトリミングされた読み取りの平均長(HQペアの4.3%)は123.9bpだった。
【0136】
ヒト及び微生物データベースに対する配列比較を表4に示す。ヒトゲノムに対して並べた読み取りは微生物分析から除外した。汎微生物データベースの単一配列に対して高い品質及び特異性でマッピングした30の実験試料からの合計216,159の一致して並んだペア(表5)。これらの微生物の読み取りのほとんどは細菌だった。それらは主にProteobacteria門(50.3%)、Actinobacteria門(20.3%)、Firmicutes門(16.2%)、Bacteroidetes門(4.6%)、または他の門(8.5%)由来のrRNA配列にマッピングされた。微生物読み取りの割合は、対照(77.4PPM、p=0.016)と比べてMS群(128.8PPM)の方が大きかった。
【0137】
表4.配列決定配列比較の概要。マッピングされた微生物の読み取りペアの総数は、マッピング品質(MAPQ)でフィルタリングする前に、Bowtie2.0によって報告されたように単一の並べた読み取りペアを用いて推定した。

1ヒトのゲノム/トランスクリプトームまたはPhiX内部配列決定対照のいずれかに対する一致した読み取りペアのマッピング
2汎微生物データベースに1回マッピングする一致した読み取りペア±平均の標準誤差(SEM)
3HQ読み取りペアで割った微生物一致読み取りペアの値に106を掛けたもの±SEM
*対照群と比較してP<0.05
表5.汎微生物データベースに対する配列比較の分類学的分布。

1細菌、古細菌、真菌、原生生物、及びウイルスを含む
21以上の試料が1以上のデータベース配列に整列する分類群(MAPQ値≧10)
【0138】
MS群で過剰出現している微生物配列の具体的な独自性を決定するために、データベースでの配列に対する配列比較の特異性の尺度であるMAPQ測定基準を用いて追加のフィルタリングを実行した(Trapnell,C.et al.Nat.Biotech.28,511-515,(2010);及びTrapnell,C.et al.Nat.Biotech,31,46-53,(2013))。ヒトによる読み取り、PhiX対照による読み取り、及びMAPQが10未満の読み取りはさらなる分析から除外した。残りの配列比較は、報告されたマッピングが汎微生物データベースにおける単一の最良の配列一致に対するものである90%を超える確率を有する。一致するペアがある場合、正しいマッピングの確率は99%を超える。MS試料の少なくとも1つにおける微生物配列の有意な過剰出現(q<0.05)は43の科及び84の属で見られた。科レベルの過剰出現を図1に示す。属レベルの過剰出現を表6に示す。
【0139】
表6.大規模配列決定データに由来するMS微生物またはMS微生物ファミリー。属レベルでMS微生物としての資格を得るために、MS群由来の少なくとも1つの検体は、10以上のMAPQ値(84の別々の属)の対照群より有意に増加した(q<0.05)この分類群への読み取りペアマッピングを有した。示されているMS微生物属は、MS群(29の属)のすべての検体の中で少なくとも100のマッピングされた読み取りを有していた。



1NCBI分類にて分類されたとおりである。門は細菌及び真菌の微生物について列挙されているが、ウイルスについては列挙されない。
2MS全体に由来する分類群(N=12)または対照群(N=15)にマッピングされた読み取りの総数。
3対照群(N=15)と比べてこの分類群への読み取りマッピングが有意に増加した(q<0.05)MS検体の数(12のうちの)
4ヒトの病原体として一般的に認識されている。
5MicrobeWiki(https://microbewiki.kenyon.edu/index.php/MicrobeWiki)、命名法に則った原核生物の名前のリスト(LPSN,http://www.bacterio.net)、UniProt(https://www.uniprot.org)、及び他のオンライン情報源によって記載されたとおりである。
【0140】
Akkermansia(試料MS-019)及びPseudomonasファージLUZ24様ウイルス(試料MS-053)についての読み取りペア配列比較の代表的なマッピングを図2に示す。これらのゲノム全体で観察されたRNA存在量の分布は予想される遺伝子発現と一致している。例えば、原核生物(Akkermansia)のマッピングはrRNA遺伝子内で集積されており、他の細菌遺伝子へのマッピングははるかに少ない。また、LUZ24様ウイルスについては、複製バクテリオファージで予想されるように、観察されたRNAの存在量は構造遺伝子にマッピングされる。
【0141】
MS微生物:各MS脳試料についての微生物のリストは、データセット内の有意な外れ値を探すことによって導き出された(分析の詳細については方法を参照のこと)。各検体を対照のセットと比較し、偽発見率(q<0.05)を用いて複数の比較を調整した(Benjamini,Y.& Hochberg,Y.Journal of the Royal Statistical Society.Series B(Methodological)57,289-300(1995))。42の微生物ファミリーに由来する配列がMS群の少なくとも1つの試料にて過剰出現していた。MS微生物には、1つの古細菌、35の細菌、2つの真菌、及び4つのウイルス科が含まれていた(図1)。
【0142】
MS試料の少なくとも1つにおける微生物配列の有意な過剰出現(q<0.05)は84の属でも見られた。リストは、MS群のメンバーの間で100以上のマッピングされた読み取りがある属を含むようにフィルタリングした。これは、11の異なる門からの29のMS微生物属のさらに扱いやすいリストにつながった(表6)。MS試料のセット全体でマッピングされた読み取りの数が最も多いMS微生物またはMS微生物ファミリーには、細菌属Nitrosospira、Atopobium、Fusobacterium、及びAggregatibacter、及び真菌属Ustilagoが含まれ、それぞれに1000を超えるマッピングされた読み取りがある。表6に列挙されたMS微生物には、26の細菌、2つの真菌、及び1つのウイルスの属が含まれる。84属の完全なリストは示されていない。
【0143】
MS微生物をランク付けする別の方法は、対照よりも有意に増加した検体の数によるものである:Bacteroides及びRubrobacter(5検体が増加);Ustilago、Lactococcus、Capnocytophaga、Thioalkalivibrio、及びAerococcus(4検体増加);ならびにAcidothermus及びTolumonas(3検体が増加)。MS微生物またはMS微生物ファミリーも対象(試料)ごとに列挙されている。(表3を参照のこと。対象MS-021は2回生検されたので、このデータは実際には検体固有である。)12人のMS対象のうち10人は、少なくとも1つの過剰出現した微生物属を有した。試料で観察された微生物候補の数は0から28に及んだ。
【0144】
MSクラスターの分析:4つのMS試料17、21-2、55、及び56は、図1の右側に表示されているように、科レベルでMS微生物の集積の類似パターンを示した。これらの試料をいくつかの技術的及び臨床的なパラメーターについてMS群内の他と比べた。「クラスター」(N=4)対「クラスターなし」(N=8)のMS亜群は総RNA収量でも、微生物画分でも有意差はなかった。4つのクラスター試料は、クラスターなし試料の8つのうち6つと比べて、病理学的分析でマクロファージが顕著だった(p=NS)。同様に、神経学的症状の発症日と脳生検の間の間隔は亜群間で差異はなかった。予想通り、クラスター群は、クラスターなし群(平均6.4、p=0.01)よりも属レベル(平均21.0)で有意に多くのMS微生物を有した。
【0145】
ヒトの差次的遺伝子発現:682の遺伝子がMS群と対照群(FDR<0.05)の間で差次的に発現されていることが見いだされた。対照試料と比較して、MS試料は多くの過剰発現した免疫関連遺伝子を有する。経路による集積の分析は、5つの免疫関連経路、1つの分泌経路、及び2つの細胞表面相互作用経路がMS試料で過剰発現している遺伝子について有意に集積されていることを示している(表7)。逆に、マクロファージを相対的に含まない対照試料は、神経遺伝子の相対的に高い発現及び神経経路の集積を示す。
【0146】
表7.MSで過剰発現したヒト遺伝子発現経路。Bowtie(v2.2.5.0)、tophat(v2.0.14)及びcuffdiff(v2.2.1)を用いて脱髄試料群及び対照試料群における既知のスプライス変異型の差次的発現レベルを算出した(Trapnell,C.et al.Nat.Biotech.28,511-515,(2010);及びTrapnell,C.et al.Nat.Biotech.31,46-53,(2013))。差次的に発現する遺伝子の経路集積は、Cytoscape及びthe Reactome Curated経路データベース(Fabregat,A.et al.Nucleic Acids Res.44,D481-487,(2016))によって算出した。


【0147】
免疫組織化学分析:残念ながら、MS群からの配列決定された検体のすべてがその後の免疫組織化学分析を可能にするのに十分な大きさであったわけではない。4つの検体を抗菌性(ペプチドグリカン)モノクローナル抗体及び対照による染色に供した。ペプチドグリカンは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の双方の構造的な細胞壁成分である。この分析の代表的な脳組織切片を対照と共に図3に示す。ペプチドグリカンのシグナルは、MS検体と別の脳膿瘍陽性対照検体の双方で実証された。いくつかのペプチドグリカンのシグナルはいくつかのてんかん対照検体でも観察されたが、染色のパターンははるかに限られていた。一致したIgG1アイソタイプ対照は抗ペプチドグリカンのシグナルの特異性を支持する。抗CD68及び抗リゾチームの染色はMS-019検体におけるマクロファージ及び好中球の存在を確認した。従来の神経病理学は、他のMS検体のほとんどにて活性化マクロファージの存在を示した。
【0148】
考察:RNA配列決定及び免疫組織化学は双方とも、対照とは異なるMS脳検体の多くに微生物が存在することを示唆している。MS微生物が検出された脳生検試料では、配列は細菌分類群の多様なセットにマッピングされた。試料は同じ細菌の特性を共有しておらず、すべての試料で単一の細菌分類群が見いだされたわけではない。このことは、MS疾患が病変内での種々の微生物の存在に関連すること、またはマクロファージ浸潤が病変への細菌輸送の経路を提供することを示唆している。これらの可能性は相互に排他的ではなく、微生物のRNAと細胞壁成分がどのように脳に到達するのか、及び微生物またはその成分の存在が疾患の発症または経過に影響を与えるかどうかを定義するために、さらなる試験が必要とされるであろう。
【0149】
この試験はいくつかの重要な制限を有する。第1に、対照検体はてんかんに冒された組織から採取された。したがって、対照検体は完全に正常な脳からのものではない。剖検試料は、正常な病理学的外観のために特別に選択されてもよいが、この試験の初期のいくつかのそのような試料の品質分析は、FFPE剖検脳試料からのRNAが非常に低品質であり、配列決定に使用するには質が低すぎることを示した。したがって、主に皮質(てんかん原性焦点)から採取されたてんかん対照と、皮質と白質の双方を含有するMS試料との間のいくつかのミスマッチは避けられなかった。微生物分析に対する生検部位の影響は排除することができない。第2に、MS患者の多くは何らかの疾患修飾療法(表3におけるDMT)を受けた一方で、てんかん対照の対象はまったく異なる薬物のセットでその状態を治療された。MS薬もてんかん薬も抗菌薬とは見なされていないので、これはありそうもないことであるが、試料の微生物組成に対するいくつかの薬物の影響を排除することはできない。最後に、対照と比較したMS試料の初期の採取日は、採取日と微生物のマッピングされた読み取りの間に認識できる関係がなかったので、おそらく結果にほとんどまたはまったく影響を有さなかった。
【0150】
ここに提示されたデータは、MS脳病変における分類学的に多様な生物、主に細菌に由来する微生物高分子の存在間の相関関係を明らかにしている。これは、いくつかの細菌ゲノム(例えば、Atopobium、Fusobacterium Akkermansia)への配列決定読み取りの明確なマッピングによって、及び数人の対象の病変内の細菌ペプチドグリカンの免疫組織化学的検出によって支持されている。ここで報告されたデータは、生きている微生物と、もはや生存できない微生物の残遺物(例えば、核酸、ペプチドグリカン)とを具体的に区別していない。しかしながら、MS脳試料の2つ(MS-021-2及びMS-053)におけるバクテリオファージ、LUZ24様ウイルスの存在は、その宿主であるPseudomonas aeruginosaも存在したことを暗示する。(グラム陰性菌配列がフィルターで除去された場合、Pseudomonas自体は最終分析から失われる可能性があった。)LUZ24様ウイルスは溶菌性(または毒性)であり、テンペレート(または溶原性)ではないバクテリオファージであるので、Pseudomonasも採取時のこれらの試料にて活発に複製していた可能性がある(Ceyssens,P.J.et al.Virology,377,233-238,(2008))。MS脳検体で複製細菌を非複製細菌から区別するには、さらに多くの作業が必要とするであろうが、マクロファージの浸潤及び脱髄を刺激するには、生存不能な細菌成分で十分であってもよい可能性がある。
【0151】
微生物RNAは対照検体でも観察され、これは免疫組織化学分析によっても裏付けられた。この理由は明確ではないが、てんかん対照で配置されたマッピング電極及び実施された公開手順に関係していてもよい。これらの公開手順はてんかん原性焦点を見つけ、マッピングし、除去するために必要だった。パイプラインに沿ったポイントでの汚染を排除するための努力がなされたが、FFPE検体自体は必ずしも完全に無菌であるわけではなく、または微生物RNAがないわけではなく、対照(てんかん)と対比した実験(MS)の試験設計の使用を必要とする。対照検体における微生物の読み取りも、脳組織内でのてんかん原性焦点について何かを語っていてもよい。
【0152】
MS微生物の多く(表6に列挙された)は嫌気性細菌属に由来する。これらの多くは共生細菌(例えば、Bifidobacterium、Atopobium)と見なされてもよく、それらがMSの病態形成に役割を担うかどうかは現在不明である。しかしながら、配列決定分析によって、脳膿瘍でも種々の嫌気性及び非病原性の細菌種が観察されている(Al Masalma,M.et al.Clinical infectious diseases:an official publication of the Infectious Diseases Society of America,54,202-210,(2012))。多くの脳膿瘍検体は培養で増殖せず、これらの病変の微生物学は複雑であるので、脳膿瘍内に見られる微生物は病理学的過程に何らかの役割を有してもよい。微生物学的複雑性のこの概念はMSにも適用されてもよい。
【0153】
MS群の検体のいくつかは、図1の右側にクラスターとして示されている、科レベルでのMS微生物の集積を有した。これらの4つの試料がなぜ他のMS脳生検試料よりも多数のMS微生物を有したのかは明らかでない。
【0154】
オランダのLamanのグループは、MSのドナーからの脳組織における免疫組織化学によって細菌抗原、特にペプチドグリカンを最初に示した(Schrijver,I.A.et al.Brain,124,1544-1554(2001))。著者らはまた、活動性MSの患者のCSFにおける抗ペプチドグリカン抗体も実証した。このグループはさらに次に、ペプチドグリカンがCNS自己免疫の発症に関与するという仮説を立てた(Visser,L.et al.Journal of immunology(Baltimore,Md.:1950)174,808-816(2005))。その時以来、Chris Powerが率いるカナダのグループは、MS患者の1人を含む、CNSの種々の疾患の患者からの脳組織にて細菌の配列を示した(Branton,W.G.et al.PLoS One 8,e54673,(2013))。さらに最近では、このグループは6つの剖検由来のMSと6つの対照脳試料でRNA配列決定を実施した(Branton,W.G.et al.Scientific reports,6,37344,(2016))。彼らの分析は、進行性MS及び対照脳試料におけるProteobacteria配列の優勢を明らかにし、3つの再発寛解型MS脳試料ではActinobacteria配列が優勢であった。これらの結果は、IHC及び遺伝子発現試験によって裏付けられ、MSに特徴的な脱髄病変内の微生物叢の破壊と一致すると解釈された。さらに多くの対照、さらに大規模な配列決定、異なるマッピングと分析方法、及び生きている対象からの固定パラフィン化検体が使用されたが、Powerのグループの知見は本明細書で開示されている報告に類似している。
【0155】
対照と比較したMS患者の糞便中のいくつかの細菌の集積は、他のグループによって観察されている(Cantarel,B.L.et al.Journal of investigative medicine:the official publication of the American Federation for Clinical Research,63,729-734,(2015);及びJangi,S.et al.Nature communications,7,12015,(2016))。Jangiらによる試験も健常な対照と比較したMS患者の糞便微生物叢を調べた配列決定試験であった。興味深いことに、2つの属-Akkermansia及びMethanobrevibacterにマッピングされた配列はMS患者の糞便で増加した。糞便ではなく脳組織検体での現在の配列決定試験でもMS微生物の間でAkkermansiaを特定した(表6を参照)。
【0156】
対象MS-21は数ヶ月の経過にわたって2回生検され、それ自体の意図しない対照として作用した。最初の生検(MS-21-1)は正常だった一方で、2回目の生検(MS-21-2)は明確な脱髄を示した。興味深いことに、5つのMS微生物は最初の(ほぼ正常な)生検にてマッピングされた相対的に少数の読み取り(それぞれ50以下)と共に検出された。しかしながら、2回目の罹患生検は28のMS微生物を明らかにし、これらのMS微生物のうち4つは、それぞれ100を超えるマッピングされた読み取りを有した。このデータは単一の対象からのものである一方で、それは脱髄病変が対照とは有意に異なる複数の種類のさらに多くの細菌に関連しているという仮説を裏付けている。
【0157】
ヒトの遺伝子発現分析は、対照と比較してMS対象の間で脳組織にて最も有意に過剰発現されたときのToll様受容体のカスケードと、エンドソームTLR経路の輸送及びプロセシングとを特定した。これらの経路には、双方とも細菌性病原体に対する免疫に関連するTLR2とTLR4、及びssRNA(ウイルス)に対する免疫に関連するTLR7が含まれる。他のグループは、MSとTLRの間に関連性があることを示している(Bustamante,M.F.et al.Ann.Neurol.70,634-645,(2011);Hamid,K.M.et al.Iranian journal of allergy,asthma,and immunology,15,75-81(2016);Hossain,M.J.,Tanasescu,R.& Gran,B.Oncotarget,6,35131-35132,(2015);Nyirenda,M.H.et al.J.Immunol.194,5761-5774,(2015);及びWhite,A.T.,Light,A.R.,Hughen,R.W.,Vanhaitsma,T.A.& Light,K.C.Psychosomatic medicine,74,46-54,(2012))。興味深いことに、MS患者のPBMCでは対照と比較してTLR4の発現が低いのに対して、本発明者らは冒された脳組織ではより高い発現を検出した(Hamid,K.M.et al.;及びIranian journal of allergy,asthma,and immunology,15,75-81(2016);及びWhite,A.T.,Light,A.R.,Hughen,R.W.,Vanhaitsma,T.A.& Light,K.C.Psychosomatic medicine,74,46-54,(2012))。
【0158】
MS病変で観察された微生物配列と抗原の供給源は現在不明である。少なくとも2つの可能性がある:1)細菌血症からの血行性播種、または2)微生物が浸潤性マクロファージによって持ち込まれた。細菌が実際に細菌血症からのMS病変に播種されているならば、これが以前に発見されていないのは奇妙だと思われる。しかしながら、この試験で特定されたMS微生物の多くは嫌気性である、または培養不可能でさえあり、脳膿瘍(脱髄とは異なる病理学的所見)からの微生物の回収は困難であることが多いことは十分に確立されている。マクロファージは、自己免疫プロセスの結果として、細菌のRNA及び抗原をこれらのMS病変に持ち込んでいてもよい。マクロファージ及び好中球は通常、開始剤ではなく組織損傷への応答側であると見なされる一方で、マクロファージは組織破壊に積極的に関与することができる(Dragomir,A.C.,Laskin,J.D.& Laskin,D.L.Toxicology and applied pharmacology,253,170-177,(2011);及びLaskin,D.L.,Pilaro,A.M.& Ji,S.Toxicology and applied pharmacology,86,216-226(1986))。
【0159】
いくつかの最近のマウスの試験は、正常な腸内細菌叢が、血液脳関門を通過し、パターン認識受容体Pglyrp2と相互作用するペプチドグリカンを介して脳の発達と行動に影響を与えることを示している(Arentsen,T.,Khalid,R.,Qian,Y.& Diaz Heijtz,R.Brain,behavior,and immunity,67,345-354,(2018);Arentsen,T.et al.Molecular psychiatry,22,257-266,(2017);及びDiaz Heijtz,R.et al.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,108,3047-3052,(2011))。ペプチドグリカンの供給源は発達中の正常な腸内細菌叢であると思われる。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE、MSに似た動物モデル疾患)を調べている別のグループは、ペプチドグリカンが受容体NOD1、NOD2、及びRIP2及び樹状細胞を介して作用して疾患を悪化させることを示した(Shaw,P.J.et al.Immunity,34,75-84,(2011))。TLR2及びNODも霊長類にてEAE疾患活性に介在すると思われる(Visser,L.et al.The American journal of pathology,169,1671-1685,(2006))。最後に、経口Lactobacillus paracaseiによるEAEマウスの治療は、疾患の重症度の評価基準を改善した(Libbey,J.E.et al.Beneficial microbes,9,495-513,(2018))。マウスにおけるこれらの興味深い知見のいずれかがヒトMSに直接適用されるかどうかは明らかではないが、それらはEAEの進行に対するペプチドグリカンとその検知分子の重要性を明らかにしている。
【0160】
感染が長期的な免疫機能障害をもたらす「免疫学的瘢痕化」の概念が提唱されている(Nathan,C.Science(New York,N.Y.),350,161,(2015)))。これは、微生物抗原の持続性がなくても、MSで発生する持続性または再発性の機能障害を説明するのに役立ち得る。本試験は、一般に診断目的で疾患経過の初期に行われる脳生検を含んでいた。
【0161】
実施例2:微生物配列脳検体のスペクトル
【0162】
表8はMS微生物のリストを提供する。偏りのない(大規模、次世代)RNA配列決定は、18のホルマリン固定し、パラフィン包埋した一次性脱髄脳検体(MS群)、16のてんかん脳検体(対照群)、及び2つのブランク(組織なし)で実施された。表8に含めるための基準には、(1)(a)MS:対照の比≧3.0;及び(b)MS:ブランクの比>1.5であるMS群での過剰発現;及び(2)MS群(N=16)のメンバーから合計された>1000の総読み取り(MAPQフィルタリングは実施されなかった)が含まれる。
表8.微生物の例。



*バクテリオファージの宿主細菌であるPseudomonas aeruginosaを調べた
【0163】
次に、繰り返し測定についてELISA指数(EI)を平均し、脱髄性疾患(DD、MS群)、他の神経疾患(OND群)、または正常なCSFを有することが予想されるシャント患者(対照群)の登録済みヒト対象間でCSFの血清学的反応を分類するために使用した。EI値は、実験OD値を3つのキャリブレーターCSF検体の平均ODで割ることによって決定した。陽性対照及び陰性対照は各CSF血清学的実行の妥当性を確認した。細菌抗原は以前の配列決定データから選択した。間接ELISAは、超音波処理して洗浄した細菌全体に対してCSF(原液)を用いて実施した。
【0164】
表9は、6つのMS微生物または微生物ファミリーに対するCSF血清学から集めた各群についての血清学データの要約を示す。表9は、MS、OND、及び対照群の間での抗体反応の質的な差異を示すために組織されている。データを統計的に分析し、MS群及びOND群が調べた抗原のほとんどについて対照よりも反応性が高いことを確認した。表8に提供されている結果は、活動性MSの患者の治療を指図するためのパネル型検査として使用することができる。
表9.血清学的要約。EI≦1.0=「-」、陰性;EI1.1~2.9=“+/-”,不確か;EI3.0~4.9=“+”,低陽性;EI≧5.0=“++”,高陽性。

ND=実施されず
陰性一致=CSFと血清にて同一バンド
【0165】
脱髄性疾患の評価におけるアルブミン指数と比較した微生物のELISA指数。図6はアルブミン指数と対比させたEIを示す。これらのデータは、対象の一部におけるMS微生物またはMS微生物ファミリーの一部に対する抗体の髄腔内合成の可能性を示している。例えば、この表で生成されたデータは、どの対象が所与の抗原に対して予想外に高い抗体レベルを有するかを提供し、血液脳関門を通過する血清からの抗体の漏出を説明する。そのような検査を用いて活動性MS患者の治療を指図することができる。
【0166】
さらに具体的には、図6は、アルブミン指数(AI)に対してプロットした6つのMS微生物候補抗原についての髄液ELISA指数(EI、抗体の尺度)を示す。ボックスは、血液脳関門(BBB)が損なわれていないことを示す正常なアルブミン指数領域(0~9)を示す。示した直線は、各抗原についてのEIとBBBが損なわれていないこと(アルブミン指数で評価されるような)との間の関係を示す線形回帰分析である。この直線は、調べた各細菌抗原について「予想されるEI」を提供し、MSや他の脱髄性疾患の患者に見られることが多い漏出性BBBを正すことを可能にする。回帰直線より上の値、及び特に、正常アルブミン指数で囲んだ領域内の値は、髄腔内抗体合成の可能性(すなわち、脱髄の因果関係)を示している。
【0167】
対象のアルブミン指数は次のように算出することができる:アルブミン指数=CSFアルブミン(mg/L)/血清アルブミン(g/L)。AIは、血清アルブミン濃度に対して調整されたBBBの完全性の指標である。AIはBBB機能障害で上昇するが、若干の制限がある。例えば、LeVine SM.Albumin and multiple sclerosis.BMC Neurol.2016,Apr.12;16:47.doi:10.1186/s12883-016-0564-9.PMID:27067000;PMCID:PMC48287
【0168】
ELISA指数は以下のように算出する/決定することができる。
細菌抗原の調製:選択基準:抗原を採取する前に、ELISAの最適化について種々のODを得るために連続希釈を実施した。細菌株は凍結乾燥、凍結乾燥培養物としてATCCから入手した。製品シートに指定された適切な培地とインキュベート条件を用いて、培養物を再水和した。生物は、凍結乾燥状態から出し、増殖の指数増殖期に入るとすぐにストック培養物を10%グリセロールの最終濃度にて-80℃で保存した。抗原採取を目的としたブロス培養物及びプレート培養物は、指数増殖期の間にまたはその直後に採取した。抗原を採取する前に、ブロス培養物からの細胞をPBSで洗浄し、約10e8~10e9の細胞に相当する1.0のODを得るためにプレート培養物とブロス培養物の双方から連続希釈を行った。液体中の細菌細胞の濃度を推定するために使用される一般的な測定基準である600nmでGen5 2.08ELISAプレートリーダーでプレートを読み取った。連続サイクル時間、40%のデューティサイクル、及びBranson Sonifier250にて位置4.5で細胞を10秒間超音波処理した。超音波処理した生物を次いで、将来の使用のために-80℃で保存した
【0169】
ELISAの最適化:平底96ウェルELISAプレートを使用し、50μL/ウェルの採取した抗原(超音波処理した細菌)でコーティングし、カバーし、4℃で一晩揺り動かした。Tween20(PBST)を伴ったリン酸緩衝生理食塩水でプレートを洗浄し(洗浄は100μL/ウェルの緩衝液で行った)、室温(RT)で1時間ブロックし、再度PBSTで洗浄した後、適切な一次抗体を適用し、それをRTで2時間揺り動かした。一次抗体のインキュベートに続いて、プレートをPBSTで洗浄し、適切な二次抗体を適用し、それをRTで1時間揺り動かした。二次抗体のインキュベートに続いて、プレートをPBST、その後、100μL/ウェルのTMBによって5分間洗浄した。100μL/ウェルの2規定の硫酸(2N HCl)によって反応を停止し、Gen5 2.08ELISAプレートリーダーにて450nmで読み取った。
【0170】
ELISA手順を最適化するために一連の工程を要した。1)種々の一次抗菌抗体を、強い及び弱い(バックグラウンドのすぐ上にある)陽性対照が得られる濃度からなる最良の陽性対照について評価した。これらの抗体は、モノクローナル抗ペプチドグリカン(mAb995)、モノクローナル抗LPS、及びポリクローナル抗pseudomonasからなった。2)抗菌抗体の使用に加えて、10mg/dlのIgGを陽性対照として有するヒトCSF対照であるRandox(Randox Laboratories Ltd、UK)、陰性対照としてRandoxを枯渇させたものも使用した。この枯渇はHiTrap Protein G HPキット(GE)で達成し、枯渇はHuman Total IgG Platinum ELISAキット(Affymetrix eBioscience)で検証した。最適な枯渇を得るには2回のパスで十分であると判断された。3)その後、種々のブロッキング剤を各抗体濃度で評価して、どれが最も効率的であるかを見いだし、それらには5×ELISA/ELISPOT希釈剤(Invitrogen)(ウシ血清で補完したPBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)中のブロッカーBLOTTO(ThermoScientific)、ブロッカーカゼイン(ThermoScientific)、及びスターティングブロッカー(ThermoScientific)が含まれた。4)前述の最適化と共に、次に抗原コーティング濃度を約0.5、約1.0及び約2.0のODを用いて調整した。実際、プレートはその後、指定された希釈:抗マウスIgG(Vector PI-2000、1:3000)、抗ウサギIgG(Vector PI-1000、1:3000)、及び抗ヒト(Jackson ImmunoResearch、1:10,000)での適切な二次抗体を伴った。これらの最適化工程は各細菌生物に対して行われた。
【0171】
最適化プロセス全体を通して、ウサギ抗-Pseudomonasポリクローナル抗体(ThermoFisher Scientific、Rockford,IL)は、強弱陽性双方の濃度はさまざまであるが、調べた生物にとって最適な一次抗菌抗体だった。調べた生物に特異的な抗体を使用することができる一方で、使用したポリクローナル抗体は細菌に共通する特徴を認識するためには十分であり、はるかに費用効果が高かった。およそ1.0のODが得られる抗体の連続希釈を強陽性対照として使用し、バックグラウンドのすぐ上にあるものを弱陽性対照として使用した。Randoxは、CSF試料の精度の制御を確立するためではあるが、陽性対照としても役立った。同様に、Randoxを枯渇させたものは陰性対照として役立ち、ELISA指数(EI)を算出するのに使用した。
【0172】
ELISAの分析:CSF及び希釈血清試料ごとに2つ組で実行し、対照は3つ組で実行した。EIを得るために、各実験試料と対照試料の平均ODを取得し、別名本発明者らの「カットオフキャリブレーター」として知られるRandoxを枯渇させたもので除算した。これは、再現性を示すために、またIgGの髄腔内合成を評価するためにそれぞれの患者の血清で繰り返された。これは、血清をCSFの同じ濃度まで希釈し、CSFのODの希釈血清のODに対する比率を使用することによって達成された。ODが1より大きいものはすべて髄腔内合成を示唆している(Halperin et al.1989)。
【0173】
アルブミン指数に対してEIを比較することを含む方法を用いて、脱髄がある患者における髄腔内抗体合成(例えば、本明細書で開示されている、例えば、表8に列挙されている1以上の微生物に対する抗体)を示すこと及び/または判定することができる。この方法を用いて治療を指図することができる。例えば、対象3は、いくつかの異なるMS候補抗原(例えば、Atopobium、Akkermansia、及Lactobacillus)に対して非常に高いEI値を示す。しかしながら、対象3のアルブミン指数も非常に高く(約30)、漏出性BBBを示す。さらに、Akkermansiaに対する対象3の抗体レベルは予想レベル(線形回帰直線)を上回っている。このデータは、対象3が、血清からの漏出だけで説明できるよりも多くのAkkermansiaに対する抗体を産生していることを示している。開示されている方法を使用して、脱髄の因果関係を証明し、次に治療を指図するために使用することができる抗体(すなわち、脳及び脊髄で作製された抗体)の髄腔内産生を評価することができる。
【0174】
抗体の髄腔内産生を決定するための他の方法が知られている。例えば、最も直接的な方法は、血清(通常は約1000mg/dl)及びCSF(通常は<5)双方における総IgG濃度を測定し、血清を適切に希釈し、総IgG濃度が同じであるCSFと血清の双方のEIを測定することである。この方法は「直接法」と呼ばれ、CSFのEIの血清のEIに対する比が1.0以下である。>1.0の比は髄腔内抗体産生を示す。
【0175】
CSFと血清の直接比較は、5つの細菌抗原(Akkermansia、Lactobacillus、Pseudomonas、Atopobium、及びBacteroides)に対する脱髄対象の一部について実施された。この分析は抗原の一部に対するMS対象82及び83について>1.0のCSF/血清のEI比を示した。他のEI比は<1.0だったということは、CSFよりも血清中の抗体が多いことを示している。
【0176】
しかしながら、微生物のEI対アルブミン指数の方法はCSFにおける抗体レベルが予想よりも高かった他のいくつかの対象を特定した。これらには、対象10(Atopobium、Akkermansia、Pseudomonas)、対象72(Akkermansia、Odoribacter)、対象13(Pseudomonas)、及び対象3(Akkermansia)が含まれる。この方法は、BBBが損なわれていないことを判定する既知の方法を用いて、さもなければ見逃され得る対象を特定するのに使用することができる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図4-7】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
【国際調査報告】