(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】眼科用医薬組成物及び癌表面疾患の処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/573 20060101AFI20220216BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220216BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/4725 20060101ALI20220216BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20220216BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20220216BHJP
A61K 35/16 20150101ALI20220216BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220216BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220216BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K31/365
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/26
A61P27/02
A61K31/436
A61K31/4725
A61K38/13
A61K38/38
A61K35/16
A61K47/42
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/20
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537848
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 US2019064371
(87)【国際公開番号】W WO2020139525
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518425704
【氏名又は名称】サーフィス オフサルミクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SURFACE OPHTHALMICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ,カムラン
(72)【発明者】
【氏名】サアデ,デニス エリアス
(72)【発明者】
【氏名】リンドストロム,リチャード エル.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD24
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD51
4C076DD55
4C076DD59
4C076DD67
4C076EE07
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE32
4C076EE37
4C084AA02
4C084BA24
4C084BA44
4C084DA11
4C084DC50
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA331
4C084ZA332
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086BC30
4C086CB22
4C086DA10
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA33
4C087AA01
4C087BB35
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZA33
(57)【要約】
眼表面疾患を処置、防止及び/又は緩和できる、非常に低濃度の副腎皮質ステロイド(例えばベタメタゾン)と組み合わせて免疫抑制薬(例えばミコフェノール酸)を含む医薬組成物が記載される。組成物を製作する方法及びそれらを使用する方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)ミコフェノール酸又はその医薬的に許容される塩、誘導体若しくは類似体と、(ii)副腎皮質ステロイド又はその医薬的に許容される塩、誘導体若しくは類似体との組み合わせを含む第一成分であって、副腎皮質ステロイドが、約0.005重量%~0.05重量%の濃度で存在する第一成分と、
(b)脱イオン水及び緩衝塩類溶液からなる群より選択される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
ミコフェノール酸の医薬的に許容される塩が、ミコフェノール酸ナトリウム又はミコフェノール酸モフェチルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
副腎皮質ステロイドが、ベタメタゾンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ベタメタゾンの塩、誘導体又は類似体が、酢酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン及びジプロピオン酸ベタメタゾンからなる群より選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
第二成分の濃度が、約0.1重量%と約5.0重量%の間である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分をさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
第三成分の濃度が、約0.1重量%と約5.0重量%の間である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
デキストラン、デキストラン硫酸、塩化ナトリウム、デキストロース及びスクロースからなる群より選択される少なくとも1つの第四成分をさらに含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
第四成分の濃度が、約0.1重量%と約5.0重量%の間である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
タクロリムス、リフィテグラスト、シクロスポリン、ベタメタゾン以外の副腎皮質ステロイド、任意のそれらの医薬的に許容される塩若しくは類似体、アルブミン、血漿、多血小板血漿及び血清からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる化合物をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ベタメタゾン以外の副腎皮質ステロイドが、ロテプレドノール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンフレトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、デキサメタゾン、フルオロメトロン、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、コルチコール、コルチゾン、フルオロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン及びブデソニドからなる群より選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、チオグリセロール、システイン、アセチルシステイン、シスチン、ジチオエリトレイトール、ジチオトレイトール、グルタチオン、トコフェロール類、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム、チオ硫酸ナトリウム及びノルジヒドログアヤレチン酸からなる群より選択される少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ミコフェノール酸が、約0.05重量%から約1.0重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
第一成分が、0.3重量%のミコフェノール酸と、0.03重量%のベタメタゾンとを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
第一成分の濃度が、約0.001重量%と約75.0重量%の間である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
賦形剤又は界面活性剤の濃度が、約0.1重量%と約4.0重量%の間である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
副腎皮質ステロイドが、シクロスポリンであり、組成物が、
(a)グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分と;
(b)グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分と;
(c)非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤と
をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ミコフェノール酸の医薬的に許容される塩が、ミコフェノール酸ナトリウムであり、副腎皮質ステロイドが、ロテプレドノールエタボン酸エステルであり、組成物が、
(a)グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分と;
(b)グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分と;
(c)非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤と
をさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項21】
ミコフェノール酸の医薬的に許容される塩が、ミコフェノール酸ナトリウムであり、副腎皮質ステロイドの誘導体又は類似体が、リン酸ベタメタゾンナトリウムであり、組成物が、
(a)グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分と;
(b)グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分と;
(c)デキストラン、デキストラン硫酸、塩化ナトリウム、デキストロース及びスクロースからなる群より選択される少なくとも1つの第四成分と;
(d)非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤と
をさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ミコフェノール酸の医薬的に許容される塩が、ミコフェノール酸ナトリウムであり、副腎皮質ステロイドの誘導体又は類似体が、タクロリムス一水和物であり、組成物が、
(a)グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分と;
(b)グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分と;
(c)デキストラン、デキストラン硫酸、塩化ナトリウム、デキストロース及びスクロースからなる群より選択される少なくとも1つの第四成分と;
(d)アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、チオグリセロール、システイン、アセチルシステイン、シスチン、ジチオエリトレイトール、ジチオトレイトール、グルタチオン、トコフェロール類、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム、チオ硫酸ナトリウム及びノルジヒドログアヤレチン酸からなる群より選択される少なくとも1つの抗酸化剤と;
(e)非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤と
をさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項23】
必要とする哺乳動物対象における眼表面疾患を処置、防止及び/又は緩和する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1又は9に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項24】
投与が、対象の目への局所滴下又は直接注入による、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
眼表面疾患が、乾性角結膜炎、突発性ドライアイ疾患、不応性ドライアイ疾患、加齢性ドライアイ、神経障害性眼表面疾患、マイボーム腺疾患及び眼瞼炎からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
眼表面疾患が、乾性角結膜炎である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
必要とする哺乳動物対象における眼表面疾患を処置、防止及び/又は緩和する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項19~22のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項28】
投与が、対象の目への局所滴下又は直接注入による、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
眼表面疾患が、乾性角結膜炎、突発性ドライアイ疾患、不応性ドライアイ疾患、加齢性ドライアイ、神経障害性眼表面疾患、マイボーム腺疾患及び眼瞼炎からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
眼表面疾患が、乾性角結膜炎である、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月27日に出願された米国特許出願第62/785,312号の米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張し、この出願の内容全体は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、全般的に、眼科の分野、より具体的には哺乳動物における眼表面疾患、例えばドライアイ症候群を処置、軽減及び/又は防止するための組成物及び方法、並びにそのような組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
眼表面疾患、例えばドライアイ症候群は、涙液生成が減少する結果、不快感及び視力障害の症状として現れる眼の状態であり、この疾患がなければ安定な涙液層の1つ以上の成分の機能不全を特徴とする。涙液欠乏は、年齢、ホルモン変化、様々な自己免疫疾患及びその他の要因の結果として涙液の生成が乏しくなることにより引き起こされることがあり、ある種の薬物療法、例えばベータ遮断薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬の副作用でもあり得る。しかし、正常な涙液分泌をもたらす涙液層の正常で安定な状態は、目の屈折表面の潤滑及び維持のために重要である。
【0004】
眼表面疾患は、個体を苦しめることがあり、灼熱感、乾いた感覚及び刺激の持続からより重篤な症例では実質的な視力障害まで、様々な重篤度で視力が実質的に損なわれることがある。よって、このような疾患の処置及び治療のために、様々なアプローチが開発されている。典型的には、眼表面疾患の患者の大多数は、人工涙液を処方又は推奨される。また、頻繁に推奨される他の方法及び装置は、スクラブ、滴下剤、インサート、プラグ又は眼瞼湿布を含む。これらの製品は、免疫学的物質、自己合成血清、ムチン産生剤及び/又は潤滑剤を典型的に含む。このような療法がいくつか存在し、ある症例においてはいくらかの緩和をもたらし得るが、他の多くの場合では、これらは不十分であるか、又は高価すぎる。よって、よりよい代替組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本特許明細書は、現存する製剤の問題点及び欠点を有さずに、肯定的な患者転帰を達成できる眼表面疾患の処置、防止及び/又は緩和に用いるために適切な、このような医薬組成物、並びにそれを製作及び投与する方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示は、非常に低濃度の副腎皮質ステロイド(例えばベタメタゾン)を免疫抑制薬、例えばミコフェノール酸に加えることにより、眼表面疾患、例えばそれらに限定されないが、乾性角結膜炎、突発性ドライアイ疾患、不応性ドライアイ疾患、加齢性ドライアイ、神経障害性眼表面疾患、マイボーム腺疾患及び眼瞼炎を処置、防止及び/又は緩和するための優れたかつ/又は相乗的な有効性が得られることを見出したことに基づく。したがって、本発明は、(i)ミコフェノール酸又はその医薬的に許容される塩、誘導体若しくは類似体と、(ii)副腎皮質ステロイド又はその医薬的に許容される塩、誘導体若しくは類似体との組み合わせを含む第一成分であって、副腎皮質ステロイドが、約0.005重量%から0.05重量%の濃度で存在する第一成分と、脱イオン水及び緩衝塩類溶液からなる群より選択される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0007】
様々な実施形態において、組成物は、グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分をさらに含み得る。様々な実施形態において、組成物は、グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分をさらに含み得る。様々な実施形態において、組成物は、デキストラン、デキストラン硫酸、塩化ナトリウム、デキストロース及びスクロースからなる群より選択される少なくとも1つの第四成分をさらに含み得る。様々な実施形態において、組成物は、タクロリムス、リフィテグラスト、シクロスポリン、ベタメタゾン以外の副腎皮質ステロイド、任意のそれらの医薬的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル又はそれらの誘導体若しくは類似体、アルブミン、血漿、多血小板血漿及び血清からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる化合物をさらに含み得る。様々な実施形態において、組成物は、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、チオグリセロール、システイン、アセチルシステイン、シスチン、ジチオエリトレイトール、ジチオトレイトール、グルタチオン、トコフェロール類、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム、チオ硫酸ナトリウム及びノルジヒドログアヤレチン酸からなる群より選択される少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含み得る。様々な実施形態において、組成物は、非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤をさらに含んでよい。
【0008】
様々な実施形態において、副腎皮質ステロイドは、シクロスポリンであり、組成物は、(i)グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分と、(ii)グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分と、(iii)非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤とをさらに含む。
【0009】
様々な実施形態において、ミコフェノール酸の医薬的に許容される塩は、ミコフェノール酸ナトリウムであり、副腎皮質ステロイドは、ロテプレドノールエタボン酸エステルであり、組成物は、(i)グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分と、(ii)グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分と、(iii)非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤とをさらに含む。
【0010】
様々な実施形態において、組成物は、ミコフェノール酸ナトリウム及びリン酸ベタメタゾンナトリウムを含み、組成物は、(i)グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分と、(ii)グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分と、(iii)デキストラン、デキストラン硫酸、塩化ナトリウム、デキストロース及びスクロースからなる群より選択される少なくとも1つの第四成分と、(iv)非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤とをさらに含む。
【0011】
様々な実施形態において、組成物は、ミコフェノール酸ナトリウム及びタクロリムス一水和物を含み、組成物は、(i)グリセロール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つの第二成分と、(ii)グリコサミノグリカン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸からなる群より選択される少なくとも1つの第三成分と、(iii)デキストラン、デキストラン硫酸、塩化ナトリウム、デキストロース及びスクロースからなる群より選択される少なくとも1つの第四成分と、(iv)アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、チオグリセロール、システイン、アセチルシステイン、シスチン、ジチオエリトレイトール、ジチオトレイトール、グルタチオン、トコフェロール類、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム、チオ硫酸ナトリウム及びノルジヒドログアヤレチン酸からなる群より選択される少なくとも1つの抗酸化剤と、(v)非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、ポリカルボフィル重合体、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤又は界面活性剤とをさらに含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、様々な形の眼表面疾患、例えば乾性角結膜炎、突発性ドライアイ疾患、不応性ドライアイ疾患、加齢性ドライアイ、神経障害性眼表面疾患、マイボーム腺疾患及び眼瞼炎を処置、防止及び/又は緩和するための上記の組成物を用いる方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語及び定義
特に定義しない限り、本明細書に記載する分析化学、合成有機及び無機化学に関連して、またその実験手順及び技術において用いられる術語は、当該分野において知られているものである。標準的な化学記号を、そのような記号により表される完全名称と交換可能に用いる。よって、例えば用語「水素」及び「H」は、同一の意味を有すると理解される。化学合成、化学分析、組成物の処方及びそれらの試験のために、標準的な技術を用いることができる。上記の技術及び手順は、当該技術において公知の従来の方法に従って一般的に行うことができる。
【0014】
上記の全般的な記載及び以下の詳細な記載はともに、例示的で、説明のためだけのものであって、請求する発明を制限しないことが理解されるべきである。本明細書で用いる場合、単数形の使用は、そうでないと特に記載しない限り、複数を含む。本明細書において用いる章の見出しは、系統立てる目的のためだけであり、記載する主題を限定すると解釈されない。
【0015】
本明細書で用いる場合、そうでないと記載しない限り、「又は」は「及び/又は」を意味する。さらに、用語「含み(including)」及び他の形、例えば「含み(includes)」及び「含まれ(included)」の使用は、限定的でない。句「からなり」は、特許請求の範囲で特定しないいずれの要素、工程又は成分も除外する。句「から本質的になり」は、請求項の範囲を、具体的な材料又は工程と、請求する発明の基本的で新規な特徴に実質的に影響しないものに限定する。本開示は、これらの句のそれぞれの範囲に対応する発明の組成物及び方法の実施形態を企図する。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないと明らかに要求しない限り、複数形の言及を含む。よって、例えば「方法(the method)」の言及は、本開示を読む際に当業者に明らかになる本明細書に記載する種類の1つ以上の方法、及び/又は工程を含み、以下同様である。
【0017】
本明細書で用いる場合、「約」は、「約」と称される数値が、その数値の1から10%プラス又はマイナスした数値を含むことを意味する。例えば、「約」100度は、文脈に応じて、95~105度又はわずか99~101度を意味し得る。本明細書に記載される場合はいつでも、「1から20」又は「1~20」のような数値範囲は、示された範囲内の各整数に言及し、すなわち1のみ、2のみ、3のみ、などから20を含んで20のみまでを意味する。
【0018】
用語「塩」は、酸と塩基との中和反応の生成物であるイオン性化合物のことをいう。
【0019】
用語「溶媒和物」及び「水和物」は、本明細書において、化合物又は物質が、「溶媒和物」について溶媒、例えば水(「水和物」について}と物理的又は化学的に会合していることを示すために用いられる。
【0020】
用語「ミコフェノール酸」又は「MPA」は、IUPAC名6-(4-ヒドロキシ-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1H-2-ベンゾフラン-5-イル)-4-メチルヘキス-4-エン酸を有し、以下の化学構造:
を有する化合物のことをいう。
【0021】
用語「シクロスポリン」は、IUPAC名(3S,6S,9S,12R,15S,18S,21S,24S,30S,33S)-30-エチル-33-[(E,1R,2R)-1-ヒドロキシ-2-メチルヘキス-4-エニル]-1,4,7,10,12,15,19,25,28-ノナメチル-6,9,18,24-テトラキス(2-メチルプロピル)-3,21-ジ(プロパン-2-イル)-1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31-ウンデカアザシクロトリトリアコンタン-2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデコンを有し、以下の化学構造:
を有する化合物のことをいう。
【0022】
用語「副腎皮質ステロイド」は、合成されたもの及び脊椎動物の副腎皮質から得られたもの(糖質コルチコイド及びミネラルコルチコイドの両方を含む)の両方であって、化学構造:
を有するコルチコステロンの誘導体であるステロイドの亜属に属する任意のステロイドホルモンのことをいう。
【0023】
フジマイシン又はFK506としても知られる用語「タクロリムス」は、IUPAC名(-)-(3S,4R,5S,8R,9E,12S,14S,15R,16S,18R,26aS)-8-アリル-5,6,8,11,12,13,14,15,16,17,18,19,24,25,26,26a-ヘキサデカヒドロ-5,19-ジヒドロキシ-3-{(E)-2-[(1R,3R,4R)-4-ヒドロキシ-3-メチルシクロヘキシル]-1-メチルビニル}-14,16-ジメトキシ-4,10,12,18-テトラメチル-15,19-エポキシ-3H-ピリド[2,1-c][1,4]オキサアザシクロトリコサン-1,7,20,21(4H,23H)-テトロンを有し、以下の化学構造:
を有する化合物のことをいう。
【0024】
用語「アルブミン」は、血漿中で見出される任意の非グリコシル化タンパク質のことをいう。
【0025】
用語「血漿」は、血液の血漿、すなわち血液細胞の細胞外基質を含む液体のことをいう。
【0026】
用語「多血小板血漿」は、赤血球細胞を除いた、血液に由来する濃縮物のことをいう。
【0027】
用語「血清」は、血液の凝固過程で得られるタンパク質リッチな液体、すなわち凝固タンパク質を除いた血漿のことをいう。
【0028】
用語「グリコサミノグリカン」は、繰り返し二糖単位を含む任意の非分岐多糖のことをいう。
【0029】
用語「脱緊張剤(deturgescent agent)」は、角膜の透明度を確実にするために必要な程度の相対的脱水状態に目の角膜実質を維持できる化合物のことをいう。
【0030】
本発明の様々な実施形態において、許容される界面活性剤又は可溶化及び懸濁化剤は、非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、任意に部分的に架橋されたポリアクリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ジステアリン酸グリセリル、トリグリセロールモノオレエート及びそれらの組み合わせのいずれかであり得る。
【0031】
用語「眼表面疾患」(「ドライアイ」又は「ドライアイ症候群」を含む)は、低下した若しくは不十分な涙液生成又は増加した若しくは過剰な涙液層蒸発のいずれか又はその両方に関連するか又はそれを原因とし、充血した目、かゆみ及び目の灼熱感を特徴とする1又はいくつかの状態と定義される。眼表面疾患は、さらに、乾性角結膜炎、突発性ドライアイ疾患、不応性ドライアイ疾患、加齢性ドライアイ、神経障害性眼表面疾患、マイボーム腺疾患及び眼瞼炎を含むと定義される。
【0032】
用語「医薬組成物」は、疾患又は病態の医療診断、療法、処置又は防止用を意図する化学的若しくは生物学的化合物若しくは物質、又は2以上のそのような化合物若しくは物質の混合物若しくは組み合わせと定義される。
【0033】
用語「治療上有効量」は、研究者、医師又はその他の臨床家が意図する組織、システム、動物又はヒトの生物学的若しくは医療的応答を引き起こす化合物又は医薬組成物の量と定義される。よって、用語「治療的有効量」は、本明細書において、ある期間にわたって繰り返し患部に施用した場合に、疾患の状態の実質的な改善を引き起こす任意の量の製剤を表すために用いられる。この量は、処置される状態、状態の進行段階並びに施用する製剤の種類及び濃度とともに変動する。任意の所定の場合における適当な量は、当業者に容易に明らかになるか、又は慣例的な実験により決定できる。
【0034】
担体に関連して用いる場合の用語「医薬的に許容される」は、製剤の他の成分と両立でき、その受容者に対して有害でない、希釈剤又は賦形剤である担体と定義される。
【0035】
用語「組成物の投与」又は「組成物を投与し」は、本発明の化合物又は医薬組成物を、処置を必要とする対象に与える行為を含むと定義される。
【0036】
用語「対象」は、本明細書で用いる場合、それに対して主題の方法を行う任意の個体又は患者のことをいう。一般的に、対象はヒトであるが、当業者により認識されるように、対象は動物であり得る。
【0037】
本明細書で用いる場合、「処置」又は「処置し」は、望ましくない状態を有する対象又はシステムに組成物を投与することを意味する。状態は、疾患又は障害を含み得る。「防止」又は「防止し」は、その状態の危険性がある対象又はシステムに組成物を投与することを意味する。状態は、疾患又は障害への素因を含み得る。対象への組成物の投与の効果は(処置及び/又は防止のいずれか)、それらに限定されないが、状態の1つ以上の症状の停止、状態の1つ以上の症状の低減若しくは防止、状態の重篤度の低減、状態の完全消失、特定の事象若しくは特徴の進展若しくは進行の安定化若しくは遅延、又は特定の事象若しくは特徴が生じる見込みの最小化であり得る。
【0038】
B.発明の実施形態
副腎皮質ステロイド外用薬は、処置ガイドラインに含まれ、ドライアイ疾患の処置に広く用いられているので、非常に低濃度の副腎皮質ステロイド(例えばベタメタゾン)を免疫抑制薬、例えばミコフェノール酸に添加することは、標準的な処置プロトコールと比較して、優れたかつ/又は相乗的な有効性をもたらすことが期待される。このような処置に組込まれる非常に低濃度の副腎皮質ステロイドに鑑みて、安全性に対する負の影響は予期されない。このような組成物は、炎症性眼疾患の処置における使用について承認されている経口CELLCEPT(登録商標)単剤療法で証明されているように、ステロイド減量効果を最終的に導くとも予期される。
【0039】
したがって、本発明で提供する医薬組成物は、眼表面疾患、例えばそれらに限定されないが、乾性角結膜炎、突発性ドライアイ疾患、不応性ドライアイ疾患、加齢性ドライアイ、神経障害性眼表面疾患、マイボーム腺疾患及び眼瞼炎を処置、防止及び/又は緩和するために用いることができる。同様に、医薬組成物は、眼表面(例えば角膜及び結膜)の潤滑化、角膜脱緊張、細胞膜安定化のような多数の医療的利益をもたらすと期待されるので、医薬組成物は、他の眼科状態及び疾患の防止的及び治療的処置のために有用であり得る。本発明の組成物は、よって、このような疾患に苦しむ者に著しい緩和をもたらすと期待される。
【0040】
他の利益の中で、組成物を局所投与した後に、目における不快な「刺すような」感覚はない(すなわち、灼熱感はない)ことが期待される。したがって、本発明で提供する医薬組成物は、目の手術中に眼表面、角膜上皮細胞、角膜内皮細胞及び/又は他の眼組織を保護するためにも有用であり得、目への様々な損傷後の創傷治癒のために有用であり得、(例えば角膜移植手術中及び後の)角膜浮腫の低減のために有用であり得、かつ/或いはコンタクトレンズ装用などの前及び/又は後の眼表面の回復のために有用であり得る。
【0041】
様々な実施形態において、医薬組成物は、免疫抑制薬と約0.005重量%から約0.05重量%の副腎皮質ステロイドとの組み合わせを含むか、それからなるか又はそれから実質的になる第一成分を含む。様々な実施形態において、第一成分中の副腎皮質ステロイドの量は、約0.008重量%から約0.05重量%までの間、約0.009重量%から約0.05重量%までの間、約0.01重量%から約0.04重量%までの間、又は好ましくは約0.02重量%から約0.04重量%までの間であり得る。様々な実施形態において、第一成分中の副腎皮質ステロイドの量は、約0.03重量%である。
【0042】
様々な実施形態において、第一成分は、約0.05重量%から約1.0重量%までの間、例えば約0.08重量%から約0.8重量%までの間、約0.1重量%から約0.6重量%までの間、約0.2重量%から約0.5重量%までの間、又は好ましくは約0.25重量%から約0.4重量%までの間の質量濃度範囲で免疫抑制薬を含むことができる。様々な実施形態において、免疫抑制薬の約は、約0.3重量%である。
【0043】
組成物は、担体、例えば脱イオン水及び/又は緩衝塩類溶液をさらに含むことができる。様々な実施形態において、本発明の組成物で用いる緩衝塩類溶液は、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含む。よって、組成物中の第一成分の合計含量(第一成分中の薬剤の数に関わらず)は、約0.001重量%と約75.0重量%の間、例えば約0.01重量%と約50重量%の間、約0.1重量%と約50重量%の間、約0.2重量%と約25.0重量%の間、約0.25重量%と約1.0重量%の間、又は好ましくは約0.25重量%と約0.5重量%の間であり得る。
【0044】
本発明で提供する医薬組成物の第一成分において有用な例示的な免疫抑制薬は、それらに限定されないが、ミコフェノール酸、タクロリムス、シクロスポリン又は任意のそれらの医薬的に許容される塩若しくは誘導体を含む。様々な実施形態において、免疫抑制薬は、ポリカルボフィルベース製剤の一部又は非ポリカルボフィルベース製剤の一部のいずれかとして溶液又は懸濁物で存在し得るミコフェノール酸である。本発明の組成物において有用なミコフェノール酸の例示的な塩は、それらに限定されないが、ミコフェノール酸ナトリウム及びミコフェノール酸モフェチルを含む。
【0045】
本発明で提供する医薬組成物の第一成分において有用な例示的な副腎皮質ステロイドは、それらに限定されないが、ベタメタゾン、ロテプレドノール、ロテプレドノールエタボン酸エステル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンフレトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、デキサメタゾン、フルオロメトロン、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、コルチコール、コルチゾン、フルオロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン及びブデソニドを含む。様々な実施形態において、免疫抑制薬は、誘導体又は類似体、例えば、それらに限定されないが、酢酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン及び/又はジプロピオン酸ベタメタゾンであり得るベタメタゾンである。
【0046】
したがって、様々な実施形態において、組成物の第一成分は、ミコフェノール酸とベタメタゾンとの組み合わせを含むか、それからなるか又はそれから実質的になり、これらのそれぞれは、上記の様々な濃度範囲で含まれる。様々な実施形態において、第一成分は、約0.3重量%のミコフェノール酸と、約0.03重量%のベタメタゾンとを含み、タクロリムス、シクロスポリン、ベタメタゾン以外の副腎皮質ステロイド、任意のそれらの医薬的に許容される塩、水和物、溶媒和物、エステル又はそれらの誘導体若しくは類似体、アルブミン、血漿、多血小板血漿及び血清の1つ以上を場合によって含むことができる。様々な実施形態において、第一成分は、治療有効量のリフィテグラスト(XIIDA(登録商標)として市販されている)も含むことができ、リフィテグラストは、炎症細胞の結合を阻害することにより炎症を低減することが示され、ドライアイ疾患を処置するために用いられている。
【0047】
第一成分がベタメタゾン以外の追加の副腎皮質ステロイドを含むこれらの実施形態において、用いることができる副腎皮質ステロイドは、ロテプレドノール、ロテプレドノールエタボン酸エステル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンフレトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、デキサメタゾン、フルオロメトロン、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、コルチコール、コルチゾン、フルオロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン、ブデソニド又は任意のそれらの組み合わせのいずれかであり得る。
【0048】
本発明で提供する医薬組成物に含まれ得る第二成分は、潤滑剤であり、これは、グリセロール、グリセリン(glycerin)又はグリセリン(glycerine)からなる群より選択できる。代わりに、又はそれに加えて、潤滑剤は、1つ以上の二次潤滑剤を含むことができる。そのように用い得る、許容される二次潤滑剤の非限定的な例は、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルのいずれかを含む。様々な実施形態において、組成物中の第二成分の合計含量(用いる潤滑剤の合計数に関わらず)は、質量濃度で表して、約0.1重量%と約5.0重量%の間、例えば約1.0重量%と約4.0重量%の間、例えば好ましくは約1.0重量%であり得る。
【0049】
本発明で提供する医薬組成物に含まれ得る第三成分は、少なくとも1つのグリコサミノグリカンである。いずれの特定の又は具体的な機構にも拘束されないが、グリコサミノグリカンは、外傷に曝露されやすい内皮及び上皮細胞の保護に有用であり、かつ/又はそのような細胞の成長を促進し得ると理論づけることができる。用い得るグリコサミノグリカンの非限定的な例は、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラチン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸を含む。様々な実施形態において、そのように用い得るグリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸である。存在する場合に、組成物中のグリコサミノグリカンの合計含量は、質量濃度で表して、約0.1重量%と約5.0重量%の間、例えば約0.2重量%と約4.0重量%の間、例えば好ましくは約0.25重量%であり得る。
【0050】
本発明で提供する医薬組成物に含まれ得る第四成分は、少なくとも1つの脱緊張剤である。そのように用い得る許容される脱緊張剤のある非限定な例は、デキストラン硫酸である。デキストラン硫酸に加えて、又はその代わりに用い得るその他の許容される脱緊張剤の非限定的な例は、デキストラン、塩化ナトリウム、デキストロース及びスクロースのいずれかを含む。このような脱緊張剤は、目の角膜実質の脱水をもたらすために典型的に用いられるが、少なくとも1つの脱緊張剤を含めることが、様々な眼表面疾患、例えばドライアイ症候群の処置における転帰を改善するために有益であり得ることが、予期せぬことに見出された。組成物中の脱緊張剤の合計含量は、質量濃度で表して、約0.1重量%と約5.0重量%の間、例えば約0.2重量%と約4.0重量%の間、例えば好ましくは約0.25重量%であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、組成物は、アスコルビン酸誘導体、例えばアスコルビン酸、エリソルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウム;チオール誘導体、例えばチオグリセロール、システイン、、アセチルシステイン、シスチン、ジチオエリトレイトール、ジチオトレイトール及びグルタチオン;トコフェロール類;ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);亜硫酸塩、例えば硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム及びチオ硫酸ナトリウム;並びにノルジヒドログアヤレチン酸からなる群より選択される1つ以上の抗酸化剤も含み得る。
【0052】
上記のように、上記の成分に加えて、組成物は、担体も含む。様々な実施形態において、担体は、純脱イオン水であり、当業者に知られるように、緩衝塩類溶液をさらに含み得る。まだ他の実施形態において、担体は、水及び/又は緩衝塩類溶液に加えて、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤又は界面活性剤を場合によってさらに含み得る。様々な実施形態において、組成物中の賦形剤又は界面活性剤部分の合計含量(用いる賦形剤又は界面活性剤の数に関わらず)は、質量濃度で表して、約0.1重量%と約5.0重量%の間、例えば約0.1重量%と約4.0重量%の間、約0.2重量%と約4.0重量%のの間、約0.3重量%と約3.0重量%の間、約0.4重量%と約2.0重量%の間、又は好ましくは約0.5重量%と約1.0重量%の間であり得る。
【0053】
様々な実施形態において、賦形剤又は界面活性剤は、以下の一般構造:
HO-(CH2-CH2-O)x-(C3H6-O)y-(CH2-CH2-O)x-H
(式中、xは、少なくとも8の値を有する整数であり、yは、少なくとも38の値を有する整数である)を有する非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体であり得る。
【0054】
本発明の医薬組成物中で賦形剤又は界面活性剤として用い得る具体的な非イオンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のある非限定的な例は、ポリオキシプロピレン部分の分子量が約4,000ダルトンであり、約70%のポリオキシエチレン含量を有し、全体の分子量が約9,840ダルトンと約14,600ダルトンとの間である、商品名Poloxamer407(登録商標)及びPLURONIC(登録商標)F-127(ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール))の下で知られる製品である。用い得る非イオンポリ(オキシエチレン-コ-オキシプロピレン)ブロック共重合体の別の非限定的な例は、全体の分子量が約8400ダルトンである商品名Poloxamer188(P188)の下で知られる製品である。これらのそれぞれは、以下の化学構造:
(式中、P188について、x及びz=80かつy=27であり、P407について、x及びz=101かつy=56である)を有する。
【0055】
医薬製剤の賦形剤又は界面活性剤部分において用い得る別の種類の製品は、水溶性メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、例えばMETHOCEL(登録商標)ファミリーの製品、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース製品METHOCEL(登録商標)E4Mであり得る。組成物は、ある量の防腐剤、例えば塩化ベンザルコニウムも所望により含み得る。
【0056】
医薬組成物の賦形剤又は界面活性剤部分において用い得るさらに別の種類の製品は、様々な商品名、例えばFIBERCON(登録商標)、EQUALACTIN(登録商標)、KONSYL FIVER(登録商標)の下で入手可能なポリカルボフィル重合体製品(すなわち、ジビニルグリコールで架橋したポリアクリル酸に基づく重合体製品)であり得る。ポリカルボフィル製品を用いるならば、上記のように、ミコフェノール酸溶液の一部として存在することもできる。
【0057】
本発明で提供する医薬組成物で用い得るさらなる例示的な賦形剤又は界面活性剤は、それらに限定されないが、エデト酸二ナトリウム二水和物(EDTA)、ポリソルベート-80、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム及び無水リン酸一ナトリウムを含む。
【0058】
最後に、眼科組成物は、1リットル当たり約100と約500ミリオスモル(mOsm/L)の間、例えば約150mOsm/Lと約450mOsm/Lの間、例えば好ましくは約200mOsm/Lと約400mOsm/Lの間のモル浸透圧濃度を典型的に有する。浸透圧調節剤、例えば塩化ナトリウムも組成物において用い得る。
【0059】
さらなる実施形態によると、上記の医薬組成物を製作する方法が提供される。医薬製剤の成分を単一容器内で組み合わせ得る1バッチ製剤法を用いることができ、成分は、容器に同時に又は順次加えることができる。代わりに、医薬製剤の各成分を別の容器で組み合わせた後に、各容器の内容物を組み合わせることができる2又は多バッチ法を所望により用いることができる。得られる生成物を、次いで、滅菌し、単回容量バイアルに移した後に、バイアルの蓋をして密閉できる。様々な実施形態において、医薬組成物は、濾過滅菌又はオートクレーブできる。
【0060】
代わりに、1つ以上の成分(例えばベタメタゾン)の吸湿性が高い場合、製剤を調製する際にこれらの成分を正確に秤量することが困難なことがある。したがって、上記の医薬組成物を製作する方法は、さらに、固定量の成分(例えばベタメタゾン)を既知量の水に溶解し、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により成分(例えばベタメタゾン)の含量を分析することにより溶液濃度を決定することによる吸湿性が高い各成分(例えばベタメタゾン)のストック溶液の調製を含み得る。該成分(例えばベタメタゾン)は、次いで、その適当な濃度を達成するために必要なストック溶液の量を計算し、計算した量のストック溶液をバッチに加えることにより、バッチに加えることができる。
【0061】
したがって、上記の医薬組成物を製作する方法は、医薬組成物のほとんどの成分を、吸湿性成分(例えばベタメタゾン)の1又は複数の上で論じたストック溶液と単一容器内で組み合わせ、各成分が、容器に同時又は順次加えられる1バッチ製剤法を含むことができる。代わりに、吸湿性成分(例えばベタメタゾン)の1又は複数のストック溶液の調製を含んで、医薬製剤の各成分を別の容器で組み合わせた後に、各容器の内容物を組み合わせることができる2又は多バッチ法を所望により用いることができる。得られる生成物を、次いで、滅菌し、単回容量バイアルに移した後に、バイアルの蓋をして密閉できる。様々な実施形態において、医薬組成物は、濾過滅菌又はオートクレーブできる。
【0062】
当該技術において知られるように、ミコフェノール酸又はその塩を有効成分として、飽和レベルよりも低い溶存酸素濃度を有する水性媒体中に含むある種の医薬組成物は、飽和溶存酸素濃度を有する水性媒体を用いる製剤よりも安定であった。つまり、本明細書に記載する医薬組成物を調製する方法は、製剤から溶存酸素を除く工程をさらに場合によって含み得る。組成物からの溶存酸素の除去は、本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願公開第2017/006552号に記載されるように、媒体を真空にすること、及び/又は不活性雰囲気蒸留、凍結-融解脱気、脱気フィルタの使用などを含む任意の従来の手段により行うことができる。よって、このような組成物を調製する方法は、不透明(例えばアンバー)容器に組成物を包装して、組成物が実質的な量の光及び/又は不活性雰囲気に曝露されることを防止することをさらに含むことができる。様々な実施形態において、方法は、充填前に空の容器を不活性ガス、例えばN2でパージした後に、容器を医薬組成物で満たすことを含むことができる。容器は、充填時に不透明であり得、製剤が実質的な光に曝露されるのを防止するために、ラベル又は金属箔で包まれることができる。金属箔を含む容器は、雰囲気から容器への酸素透過性も有利に低減する。容器は、単回用量投与のための種類、例えば瓶、ジャー、アンプル、チューブ、シリンジ、エンベロープ、容器、単位用量容器若しくはバイアルであり得るか、又は容器は、複数回用量を保持できる種類、例えば再密閉可能なガラス若しくはプラスチックの滴瓶であり得る。複数回用量又は単回用量に関わらず瓶は、金属箔を含む積層パウチに包装して、雰囲気からの酸素への曝露を最小限にすることができる。さらに、パウチに不活性雰囲気を充填して、長期貯蔵時の酸素への曝露をさらに低減して、安定性を改善できる。最後に、当業者に知られる通常用いられる方法に従って、製品に対して完全無菌性及びエンドトキシン分析を行うことができる。
【0063】
様々な実施形態において、本明細書に記載する医薬製剤は、局所的、例えば目への滴下により送達若しくは投与できるか、又は目への直接注入により投与できる。通常の技術を有する医師は、そのように望まれ支持されるならば、任意の他の適切な方法、例えば眼科用ジェル又は軟膏による送達を処方できる。
【0064】
より具体的に、上記の眼科用組成物は、周期的な施用での単回投与量として投与できるか、又は特定の使用のために適切であれば、連続的若しくは実質的に連続的に眼組織上で維持することができる。例えば、組成物は、1日1回、又は5~10分の期間1分ごとに1回、又はより頻繁に、又はより少ない頻度で投与できる。説明のために、有効量の眼科用組成物は、必要に応じて、1日1から16回の間(例えば1日1から8回、1日1から6回、又は1日1から4回)、又はより頻繁に、又はより少ない頻度で施用できる。
【0065】
任意の特定の患者についての具体的な用量レベル及び投与の頻度が変動する可能性があり、用いる具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、身体全体の健康、性別、食餌、並びに処置される特定の疾患又は状態の重篤度を含む様々な要因に依存することが当業者に理解される。
【0066】
追加の実施形態において、医薬キットが提供される。キットは、医薬組成物の貯蔵のために認められた密閉容器であって、上記の医薬組成物の1つを含む容器を含む。組成物の使用についての指示及び組成物に関する情報が、キットに含まれる。キットにおいて有用な例示的な密閉容器は、それらに限定されないが、再利用可能な又は使い捨ての貯蔵瓶、再密閉可能な又は使い捨ての箔パウチなどを含む。
【0067】
以下の実施例は、本発明の利点及び特徴をさらに明らかにするために提供されるが、本発明の範囲を限定することを意図しない。実施例は、説明のみを目的とする。米国薬局方グレードの製品を用いて、以下に記載する製剤を調製した。
【実施例】
【0068】
C.実施例
実施例1 医薬組成物第1号の調製
以下に記載するようにして、医薬組成物を調製した。以下の成分を、記載する量で用いた:
(a)約0.321gのミコフェノール酸ナトリウム;
(b)約0.05%のシクロスポリン;
(c)約0.25gのコンドロイチン硫酸(ウシ);
(d)約0.10gの粉末エデト酸二ナトリウム二水和物;
(e)約0.2gのPLURONIC(登録商標)F-127;
(f)約1.0mLのグリセロール;
(g)約0.2%のポリソルベート-80;
(h)約0.125gのMETHOCEL(登録商標)E4M;及び
(i)約100mLの緩衝塩類溶液。
【0069】
ミコフェノール酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、エデト酸二ナトリウム二水和物、ポリソルベート-80及びPLURONIC(登録商標)F-127を、約90%の緩衝塩類溶液と組み合わせ、完全に溶解するまで撹拌した。撹拌を続けながら、METHOCEL(登録商標)E4Mを加えた後に、グリセロールを加えた。溶液のpHを、水酸化ナトリウム溶液を用いて、次いで、約6.8~7.2に調整し、残りの緩衝塩類溶液を加えた。
【0070】
この第一工程を、次いで、0.2ミクロンのフィルタを通して濾過し、撹拌を続けながらISO5環境に置いた。無菌技術を用いて、滅菌シクロスポリン粉末を、次いで、上記のようにして調製した滅菌溶液に加えた。最終生成物を、次いで、滅菌済み滴瓶又は単位用量バイアルに無菌的に充填して、密閉した。
【0071】
実施例2 医薬組成物第2号の調製
以下に記載するようにして、医薬組成物を調製した。以下の成分を、記載する量で用いた:
(a)約0.321gのミコフェノール酸ナトリウム粉末;
(b)約0.2gのロテプレドノールエタボン酸エステル;
(c)約0.25gのコンドロイチン硫酸(ウシ);
(d)約0.10gの粉末エデト酸二ナトリウム二水和物;
(e)約0.2gのPLURONIC(登録商標)F-127;
(f)約1.0mLのグリセロール;
(g)約0.1gのポリソルベート-80;
(h)約1gのポリビニルピロリドン;
(i)約0.125gのMETHOCEL(登録商標)E4M;及び
(j)約100mLの緩衝塩類溶液。
【0072】
ミコフェノール酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、エデト酸二ナトリウム無水物、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート-80及びPLURONIC(登録商標)F-127を、約90%の緩衝塩類溶液と組み合わせ、完全に溶解するまで撹拌した。撹拌を続けながら、METHOCEL(登録商標)E4Mを加えた後に、グリセロールを加えた。溶液のpHを、水酸化ナトリウム溶液を用いて、次いで、約5.6から5.8に調整し、残りの緩衝塩類溶液を加えた。
【0073】
得られた溶液を、次いで、0.2ミクロンのフィルタを通して濾過し、撹拌を続けながらISO5環境に置いた。無菌技術を用いて、滅菌ロテプレドノールエタボン酸エステル粉末を、次いで、上記の滅菌溶液に加えた。最終生成物を、次いで、滅菌済み滴瓶又は単位用量バイアルに無菌的に充填して、密閉した。
【0074】
実施例3 医薬組成物第3号の調製
以下に記載するようにして、医薬組成物を調製した。以下の成分を、記載する量で用いた:
(a)約0.321gのミコフェノール酸ナトリウム粉末;
(b)約0.01gのリン酸ベタメタゾンナトリウム粉末;
(c)約0.25gのコンドロイチン硫酸(ウシ);
(d)約0.25の粉末デキストラン70,000;
(e)約0.30gの粉末チオ硫酸ナトリウム五水和物;
(f)約0.20gのPLURONIC(登録商標)F-127;
(g)約1.0mLのグリセロール;
(h)約1.17gの無水リン酸二ナトリウム;
(i)約0.4gの無水リン酸一ナトリウム;
(j)約0.10gのMETHOCEL(登録商標)E4M;
(k)約40mLの緩衝塩類溶液;及び
(l)約100mLの滅菌注射用水。
【0075】
コンドロイチン硫酸、デキストラン、チオ硫酸ナトリウム及びPLURONIC(登録商標)F-127を、90%の緩衝塩類溶液及び約90%の水と組み合わせ、完全に溶解するまで撹拌した後に、撹拌を続けながらグリセロールを加えた。溶液のpHを、水酸化ナトリウム溶液を用いて、次いで、約7.0に調整した後に、ミコフェノール酸ナトリウムを導入した。1%ベタメタゾンのストック溶液を、1gmのリン酸ベタメタゾンナトリウム粉末を100mLの水に溶解し、ストック溶液の濃度をHPLCにより確認することにより調製した。1mlの1%ベタメタゾンストック溶液を、次いで、撹拌を続けながら混合物に加えた。
【0076】
撹拌を続けながら、ミコフェノール酸ナトリウムをゆっくりと加えた後に、METHOCEL(登録商標)E4Mを加え、pHを約7.3~7.4に調整し、残りの水を加えた。溶液を、次いで、滅菌滴瓶又は単位用量バイアルに、0.2ミクロンのフィルタを通して濾過した。
【0077】
実施例4 医薬組成物第4号の調製
以下に記載するようにして、医薬組成物を調製した。以下の製品を、記載する量で用いた:
(a)約0.321gのミコフェノール酸ナトリウム粉末;
(b)約0.0255gのタクロリムス一水和物粉末;
(c)約0.25gのコンドロイチン硫酸(ウシ);
(d)約0.25の粉末デキストラン70,000;
(e)約0.1gのエデト酸二ナトリウム粉末;
(f)約0.30gの粉末チオ硫酸ナトリウム五水和物;
(g)約0.20gのPLURONIC(登録商標)F-127;
(h)約1.0mLのポリソルベート-80;
(i)約4.0mLのポリエチレングリコール400MW;
(j)約1.0mLのグリセロール;
(k)約1.17gの無水リン酸二ナトリウム;
(l)約0.14gの無水リン酸一ナトリウム;
(m)約0.10gのMETHOCEL(登録商標)E4M;
(n)約40mLの緩衝塩類溶液;及び
(o)約100mLの滅菌注射用水。
【0078】
コンドロイチン硫酸、デキストラン、チオ硫酸ナトリウム及びPLURONIC(登録商標)F-127を緩衝塩類溶液及び約90%の水と組み合わせ、完全に溶解するまで撹拌した後に、撹拌を続けながらグリセロールを加えた。溶液のpHを、水酸化ナトリウム溶液を用いて、次いで、約7.0に調整した後に、ミコフェノール酸ナトリウムを導入した。
【0079】
撹拌を続けながら、ミコフェノール酸ナトリウム及びタクロリムス一水和物をゆっくり加えた後に、METHOCEL(登録商標)E4Mを加え、pHを約7.3~7.4に調整し、残りの水を加えた。溶液を、次いで、滅菌滴瓶又は単位用量バイアルに、0.2ミクロンのフィルタを通して濾過した。
実施例5~12 ミコフェノール酸及びリン酸ベタメタゾンナトリウムの注射用医薬製剤の調製
【0080】
コンドロイチン硫酸(製剤に応じて)、デキストラン、チオ硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム及びポロキサマー407を、約90%の水と組み合わせ、各成分が完全に溶解するまで撹拌した後に、撹拌を続けながらグリセロールを加えた。各溶液のpHを、水酸化ナトリウム溶液を用いて、次いで、約7.0に調整した後に、ミコフェノール酸ナトリウム及び/又はリン酸ベタメタゾンナトリウムを導入した。
【0081】
例えば、2.0%ベタメタゾンのストック溶液を、2.0gmのリン酸ベタメタゾンナトリウム粉末を約100mLの水に溶解し、ストック溶液の濃度をHPLCにより確認することにより調製した。10mlの2.0%ベタメタゾンストック溶液(製剤に応じて)を、次いで、撹拌を続けながら、0.2%ベタメタゾンの100gmの最終製剤のそれぞれの混合物に加えた。
【0082】
撹拌を続けながら、ミコフェノール酸ナトリウム及び/又はリン酸ベタメタゾンナトリウム(製剤に応じて)をゆっくりと加えた後に、残りの水を加え、pHを約7.3~7.4に調整した。各溶液を、次いで、滅菌アンバーガラス注射用バイアルに、0.2ミクロンのフィルタを通して濾過した。
【0083】
本発明を、上記の実施例を参照しながら説明したが、本発明の精神及び範囲内で変更及び変動が包含されると理解される。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【国際調査報告】