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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ヒータ一体型GCカラム装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/54 20060101AFI20220216BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20220216BHJP
   H05B 3/12 20060101ALI20220216BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G01N30/54 E
H05B3/14 F
H05B3/12 A
G01N30/60 Q
G01N30/54 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538012
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2019014088
(87)【国際公開番号】W WO2020138679
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0171725
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502235773
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン-オ
(72)【発明者】
【氏名】キム テマン
(72)【発明者】
【氏名】アン ジョン ロク
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ-ハ
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092QA10
3K092QB02
3K092QB14
3K092QC02
(57)【要約】
本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置は、高い熱伝導率により均一に温度を精密制御することができ、低い熱容量を持って迅速に温度を高速で上げたり下げたりすることができるため、測定時間が顕著に速いという効果を有する、ヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置に関する。GCカラムが均一な温度を有するボビンに接触していることで、各GCカラムに対する温度均一性に優れるという効果がある。また、本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置は、前記効果を有し、且つ、装置をさらに小型化できるという効果がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い熱伝導性を有する金属材質のボビンと、
前記ボビンの内面に形成された金属酸化被膜を含む絶縁層と、
前記絶縁層に接合され、カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブ-金属複合体の中から選択される何れか1つ以上を含む発熱層と、
前記発熱層に接して形成された金属電極と、
前記ボビンの外面に隣接して巻かれたGCカラムと、
を含む、ヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項2】
前記ボビンの外面と前記GCカラムとの間に形成される接合層をさらに含む、請求項1に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項3】
前記接合層は、耐熱性シリコーンまたはエポキシ樹脂からなる、請求項2に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項4】
前記接合層の平均厚さは10~200μmである、請求項2に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項5】
前記高い熱伝導性を有する金属は、銅、マグネシウム、アルミニウム、またはこれらを含む合金からなる、請求項1に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記ボビンの内面がアノダイジングされてなる金属酸化被膜である、請求項1に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項7】
前記発熱層は、カーボンナノチューブ-金属複合体を含み、前記カーボンナノチューブ-金属複合体の金属は、銀、白金、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、およびアルミニウムの中から選択される何れか1つまたは2つ以上を含む、請求項1に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項8】
前記発熱層は、面抵抗が2~15Ω/sqである、請求項6に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項9】
前記金属電極を覆ってなる貴金属層をさらに含む、請求項1に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項10】
前記絶縁層の平均厚さは2~100μmであり、
前記発熱層の平均厚さは20~100μmである、請求項1に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項11】
前記GCカラムは、充填カラムまたはキャピラリカラムである、請求項1に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【請求項12】
ボビンの内側または外側に備えられ、熱電対(Thermocouple)温度センサ、抵抗温度センサ(Resistive temperature detector、RTD)、およびサーミスタ(Thermistor)温度センサの中から選択される何れか1つまたは2つ以上を含む接触式温度検知器、および赤外線温度センサを含む非接触式温度検知器の中から選択される何れか1つ以上をさらに含む、請求項1に記載のヒータ一体型GCカラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ一体型GCカラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なガスクロマトグラフィカラム(Gas chromatography column、GC column)装置は、図1に示されたように、内部の空気を強制的に対流させて温度分布を減少させる強制対流式オーブン内に分離カラムを収容することで、分離カラムの温度が制御される。このような強制対流式オーブンによる分離カラムの加熱は、熱均一性に優れ、周囲温度の影響を大きく受けないという長所がある。
【0003】
しかしながら、オーブン自体の熱容量が大きいため、カラムの昇温速度および降温速度の制御が容易ではなく、精密な温度勾配の調節が難しく、装置が非常に大きくなるしかないという短所がある。このような強制対流式オーブンが備えられた装置は、温度の増加および減少、すなわち、温度が設定温度に変化するのにかかる反応時間が高いことにより、設定温度に安定化されるまでの時間に影響を与えて分析要求時間が増加することはいうまでもなく、分析の正確度も減少するようになる。
【0004】
最近、空気を介さずヒータからの熱伝導により分離カラムの温度を制御する熱伝導式温度調節ユニットを備えたガスクロマトグラフィ装置が提案された。このような熱伝導式温度調節ユニットは、対流式オーブンより熱容量が小さいため、より速い反応速度で温度を制御することができる。
【0005】
しかしながら、熱伝導率をより向上させるための技術的発展がさらに求められており、また、より精密な温度の制御が可能であり、高速温度勾配および測定時間の顕著な減少とともに、装置をさらに小型化できる技術的研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い熱伝導率により均一な温度を精密制御することができ、低い熱容量を持って迅速に温度を高速で上げたり下げたりすることができるため、測定時間が顕著に速いという効果を有する、ヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記効果を有し、且つ、各GCカラムに対する温度が均一であってカラムの分解能に優れるという効果を有する、ヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置を提供することにある。
【0008】
本発明のまた他の目的は、前記効果を有し、且つ、装置をさらに小型化できる構造を有する、ヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るヒータ一体型GCカラム装置は、高い熱伝導性を有する金属からなるボビンと、前記ボビンの内面に形成された金属酸化被膜を含む絶縁層と、前記絶縁層に接着されるカーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブ-金属複合体の中から選択される何れか1つ以上を含む発熱層と、前記発熱層に接して形成された電極と、前記ボビンの外面に隣接して巻かれたGCカラムと、を含む。
【0010】
本発明の一実施形態に係るヒータ一体型GCカラム装置は、前記ボビンの外面と前記GCカラムとの間に形成された接合層をさらに含むことができる。
本発明の一実施形態において、前記接合層は、高伝導性エポキシ樹脂からなることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記金属は、銅、マグネシウム、アルミニウム、またはこれらを含む合金であってもよい。
本発明の一実施形態において、前記接合層の平均厚さは10~500μmであってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記絶縁層は、前記ボビンの内面が酸化処理されてなる、銅酸化被膜、マグネシウム酸化被膜、アルミニウム酸化被膜であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記発熱層は、カーボンナノチューブ-金属複合体を含むことができ、前記カーボンナノチューブ-金属複合体の金属は、銀、白金、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、およびアルミニウムなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記発熱層は、面抵抗が2~15Ω/sqであってもよい。
本発明の一実施形態に係るヒータ一体型GCカラム装置は、前記金属電極を覆ってなる貴金属層をさらに含むことができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記絶縁層の平均厚さは2~100μmであってもよく、前記発熱層の平均厚さは20~100μmであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記GCカラムは、充填カラムまたはキャピラリカラムであってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係るヒータ一体型GCカラム装置は、ボビンの内側または外側に備えられ、熱電対(Thermocouple)温度センサ、抵抗温度センサ(Resistive temperature detector、RTD)、およびサーミスタ(Thermistor)温度センサなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含む接触式温度検知器、および赤外線温度センサを含む非接触式温度検知器の中から選択される何れか1つ以上をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置は、高い熱伝導率を有しているため、均一で且つ精密な温度制御が可能であり、低い熱容量を有しているため、高速温度勾配が可能であって測定時間が顕著に減少するという効果がある。
【0018】
本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置は、GCカラムが均一な温度を有するボビンに接触していることで、各GCカラムに対する温度が均一であって分解能に優れるという効果がある。
本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置は、前記効果を有し、且つ、装置をさらに小型化できるという効果がある。
【0019】
本発明で明らかに言及していない効果であるとしても、本発明の技術的特徴により期待される明細書に記載された効果およびその内在的な効果は、本発明の明細書に記載されたものと同様に取り扱われる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】強制対流式オーブンが備えられた従来のGCカラム装置システムを示したものである。
図2】本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置の断面を示した図である。
図3】本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置の断面を示した図である。
図4】本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置の断面を示した図である。
図5】本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置の斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置の実際イメージ(左側)および前記装置の断面を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るヒータ一体型ガスクロマトグラフィカラム装置について詳しく説明する。
本発明に記載されている図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるように例として提供されるものである。よって、本発明は、提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、前記図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示されてもよい。
【0022】
本発明で用いられる技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨を不要に濁す恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0023】
本発明で用いられる用語の単数の形態は、特に指示しない限り、複数の形態も含むものと解釈される。
本発明において、特に言及なしに用いられた%の単位は、他の定義がない限り、重量%を意味する。
【0024】
本発明に係るヒータ一体型GCカラム装置は、図2に一実施形態として示されたように、アルミニウム材質のボビン100と、前記ボビン100の内面120に形成されたアルミニウム酸化被膜を含む絶縁層400と、前記絶縁層400に積層され、カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブ-金属複合体の中から選択される何れか1つ以上を含む発熱層500と、前記発熱層500に接して形成された金属電極600と、前記ボビン100の外面110に隣接して巻かれたGCカラム300と、を含む。
【0025】
本発明に係るヒータ一体型GCカラム装置は、金属電極600に電気エネルギーが印加され、発熱層500において高いエネルギー効率で前記電気エネルギーが熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーは、ボビン100に伝達された後、GCカラム300に伝達されるか、または後述する接着層を経てGCカラム300に伝達される。この際、エネルギーの変換および伝達は、エネルギー損失を最小化して進行することで、時間当たりに変化可能な最大温度範囲が顕著に増加するという効果があり、より精密な温度調節が可能であり、全体GCカラム300に対する温度偏差を最小化できるように制御可能である。
【0026】
前記ボビン100は、内面120および外面110を有する通常のものであって、エネルギーが印加されて熱を外面110または外側に発散できるものであればよく、このようなボビン100は、ヒータ技術分野で通常用いられるため、特に制限されない。具体的な一実施形態として、内部に空間を有し、管状またはシリンダー状の構造を有する金属材質のボビン100であってもよい。
【0027】
前記ボビン100の規格、例えば、長さ、幅、厚さなどの大きさ、そして形状は、装置の規模に応じて適切に調節することができるため、大きく制限されないが、高い熱伝導率および低い熱容量を有する特性、および精密な温度の制御が可能であり、高速温度勾配および測定時間が顕著に減少する特性を効果的に実現するために小型化されることが好ましい。具体的な一実施形態として、前記ボビン100の平均厚さ、すなわち、ボビン100の外面110と内面120との間の平均距離は、装置規模に応じて適切に調節されてもよく、例えば100~500μmであってもよいが、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0028】
前記ボビン100は、ボビン100の内面120、具体的な一実施形態として、前記内面120の表面にアルミニウム酸化被膜が形成された絶縁層400を含む。このようにアルミニウム酸化被膜が内面120に形成されたアルミニウム材質のボビン100が前述した各層を含む構造を取ることで、低い熱容量(Low thermal mass)を持って高速温度勾配が可能であり、分析時間を減少させることができる。
【0029】
具体的に、前記絶縁層400は、前記ボビン100の内面120をアノダイジング(anodizing)処理してなるアルミニウム酸化被膜であってもよい。前記「アノダイジング」は、金属材質の表面を意図的に酸化(腐食)させて表面部に酸化膜を形成させるものであり、酸化膜自体が外部の影響から製品を保護する役割をし、その表面上に着色も可能にすることができる。アルミニウム金属の場合、通常、陽極酸化法を用いてもよく、陽極酸化法などを用いたアルミニウム金属のアノダイジング処理は、広く公知された技術に属するため、公知の多様な文献を参考にして適用すればよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記アルミニウム材質のボビン100は、種々のアルミニウム系金属から製造されたものが用いられてもよく、アルミニウム6061が挙げられるが、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0031】
本発明の一実施形態において、アルミニウム酸化被膜が内面120に形成されたアルミニウム材質のボビン100は、比熱容量(Specific heat capacity)が0.150~0.400cal/g・℃、一実施形態として0.214cal/g・℃であってもよいが、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0032】
前記GCカラム300は、前記ボビン100に巻き取られてボビン100の外面110に隣接して位置し、この際、GCカラム300の外面は、ボビン100の外面110に接するかまたは一定間隔離れて位置することができる。具体的に、図2および図3に一実施形態として示されたように、GCカラム300がボビン100に巻き取られる過程で初期に巻き取られたGCカラム300は、ボビン100の外面110に接して位置することができる。また、巻き取られたGCカラム300は、ボビン100の外面110に接して位置してもよいが、その後に巻き取られたGCカラム300は、初期に巻き取られたGCカラム300に接することができ、ボビン100の外面110から所定間隔離れて位置することができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係るヒータ一体型GCカラム装置は、図3に一実施形態として示されたように、前記ボビン100の外面110と前記GCカラム300との間に形成される接合層200をさらに含むことが好ましい。前記接合層200は、高熱伝導率および高弾性率を有することが好ましく、ボビン100の外面110とGCカラム300がさらに密着するように固定する役割はいうまでもなく、特に熱伝導率の向上の役割および急激な温度変化によるGCカラム300の膨張に応じた接触不良などの問題を防止できるという効果がある。
【0034】
詳細には、本発明に係るヒータ一体型GCカラム装置は、高い温度反応性を有することによって急激な温度変化が誘発され、よって、急激な温度変化に応じたGCカラム300の膨張が顕著に増加し得る。GCカラム300の急激な膨張は、装置の離隔、GCカラム300とボビン100との接触不良などの多様な問題を引き起こすため、GCカラム300とボビン100の外面110との間に高弾性の接着層を形成することで、GCカラム300とボビン100との離隔に応じた熱伝導率の低下を防止することができる。また、前述したように、GCカラム300は、ボビン100の外面110から所定間隔離れて位置することもできるため、この離隔位置に前記接合層200が形成される場合、ボビン100の熱エネルギーがGCカラム300にさらによく伝導できるようにするという効果がある。前記接合層200は、高熱伝導率および高弾性率を有するものであればよく、例えば、高伝導性の耐熱シリコーン、エポキシ樹脂、より好ましくは、高耐熱性/高弾性の改質されたシリコーン、エポキシ樹脂からなってもよいが、これは好ましい一実施形態として説明されたものに過ぎず、これと類似した効果を有するものであれば、多様な物質が用いられてもよいため、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記接合層200の平均厚さは、巻き取られるGCカラム300の体積に応じて適切に調節されてもよく、例えば100~500μm、具体的には100~200μmであってもよいが、これは好ましい一実施形態に過ぎず、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0036】
前記GCカラム300の直径は、通常用いられる規格であればよく、多様なGCカラム300が使用可能であるため特に制限されない。例えば、GCカラム300としては、充填カラム(Packed column)またはキャピラリカラム(Capillary column)が用いられてもよいが、この他に種々のGCカラム300が適用されても、本発明の効果がそのとおりに実現可能であり、本発明の技術的思想を害しないため、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0037】
前記発熱層500は、カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブ-金属複合体の中から選択される何れか1つまたは2つ以上を含み、この発熱層500は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ-金属複合体を含む面状発熱体からなるフィルム(薄膜)であってもよい。より好ましくは、前記フィルムは、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ-金属複合体を含み、シリコーン粘着剤を含むことができる。前記発熱層500がカーボンナノチューブ-金属複合体を含む場合、その金属は、銀、白金、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、およびアルミニウムなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含むことができる。
【0038】
好ましい一実施形態として、前記発熱層500は、高温安定性にシリコーン粘着剤をさらに含むことが好ましい。具体的に、前記発熱層500は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ-金属複合体20~80重量%、およびシリコーン粘着剤20~80重量%を含むことができる。しかし、これは好ましい一実施形態として説明されたものに過ぎず、本発明が必ずしもこれに制限されて解釈されるものではない。
【0039】
前記発熱層500は、特定の組成を有する組成物からなってもよく、組成物を用いて発熱層500を形成する方法は大きく制限されず、ボビン100に組成物を塗布した後に乾燥または熱処理する方法が挙げられる。この際、塗布条件(温度、湿度、時間など)、乾燥/熱処理条件(温度、湿度、時間など)は適切に調節されればよい。
【0040】
前記組成物の具体的な例は、韓国登録特許公報第10-1447478号のセラミックペースト組成物を参照することができ、AccuPasteTM CNT Heating Paste(TC-1010、Bioneer社製)であってもよい。詳細には、韓国登録特許公報第10-1447478号によると、セラミックペースト組成物は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ-金属複合体、およびシリコーン粘着剤を含み、場合に応じて、有機バインダー、分散剤、および有機溶媒などから選択される何れか1つまたは2つ以上をさらに含むことができる。
【0041】
前記組成物が有機バインダー、分散剤、有機溶媒などをさらに含む場合、組成物は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ-金属複合体1~50重量%、およびシリコーン粘着剤1~30重量%を含むことができ、有機バインダー1~20重量%、分散剤1~20重量%、および有機溶媒1~90重量%の中から選択される何れか1つまたは2つ以上をさらに含むことができる。しかし、これは好ましい一実施形態として説明されたものに過ぎず、本発明が必ずしもこれに制限されて解釈されるものではない。
【0042】
前記シリコーン粘着剤は、ケイ素(Si)原子と酸素(O)原子が交互になっているポリシロキサン主鎖を有する高分子であり、概してシリコーンは、それぞれのケイ素原子に通常2個のメチル、エチル、プロピルなどのアルキルまたはフェニル(-C)の有機原子団が結合されている構造であり、本発明に係るシリコーン粘着剤は、ポリシロキサン主鎖に水素、ヒドロキシ基、メチル基、またはフェニル基が結合されていてもよい。この際、ポリシロキサン主鎖、すなわち、SiOの含量は、全体シリコーン粘着剤100重量%に対して45~65重量%、好ましくは47~63重量%であることが好ましい。また、シリコーン粘着剤は、乾燥性を向上させ、且つ、優れた柔軟性のために、官能基であるヒドロキシ基を有するシラノール(Silanol)の含量が一定範囲を有することが好ましく、例えば、全体100重量%に対してシラノール基を0.1~10重量%含有してもよく、メチル基に対するフェニル基の割合が0.3~2.5モル比からなる群から選択されてもよい。しかし、これは好ましい一実施形態として説明されたものに過ぎず、本発明が必ずしもこれに制限されて解釈されるものではない。
【0043】
具体的な一実施形態として、前記有機バインダーは、エチルセルロースおよびニトロセルロースなどから選択される何れか1つ以上を含むことができる。具体的な一実施形態として、前記分散剤は、アミノ含有オリゴマーまたはポリマーのホスホラスエステル塩、リン酸のモノエステルまたはジエステル、酸性ジカルボン酸モノエステル、ポリウレタン-ポリアミン付加物、およびポリアルコキシル化モノアミンまたはジアミンなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含むことができる。具体的な一実施形態として、前記有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテル、およびテルピネオールなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含むことができる。しかし、これは具体的な一実施形態として説明されたものに過ぎず、本発明が必ずしもこれに制限されて解釈されるものではない。
【0044】
前記組成物の製造方法は、大きく制限されず、例えば、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ-金属複合体およびシリコーン粘着剤を含む混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液を分散するステップと、を含んで製造されてもよい。この際、前記混合溶液は、上述した有機バインダー、分散剤、および有機溶媒などから選択される何れか1つまたは2つ以上をさらに含むことができる。しかし、これは好ましい一実施形態として説明されたものに過ぎず、本発明が必ずしもこれに制限されて解釈されるものではない。
【0045】
前記カーボンナノチューブとしては、公知の種々のものが用いられてもよく、公知の多様な長さおよび幅を有するものが用いられてもよい。具体的に、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含むことができる。特性による分類として、前記カーボンナノチューブは、金属性カーボンナノチューブまたは半導体性カーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブの平均長さおよび平均直径は多様な大きさを有してもよく、例えば、平均長さは0.1~30μmおよび平均直径は0.1~10nmであってもよいが、これに制限されない。前述した内容のカーボンナノチューブは、具体的な一実施形態として説明のために記載したものであるため、本発明がこれに制限されて解釈されてはならない。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記発熱層500は、面抵抗が低いほど好ましく、例えば2~15Ω/sqであってもよいが、これは好ましい一実施形態に過ぎず、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記金属電極600は、発熱層500上に接して形成され、金属電極600は、1つまたは2つ以上、例えば、第1金属電極610および第2金属電極620が互いに離隔して発熱層500上に接して形成されてもよい。金属電極600は、一般的に用いられる電極であればよく、例えば、銅、鉄などの伝導性物質からなる電極であってもよいが、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。また、場合に応じて、エネルギー効率を向上させるために、前記金属電極600を覆う貴金属層700がさらに形成されてもよい。貴金属層700に用いられる金属の例として金、白金などが挙げられるが、この他にエネルギー効率を向上できる貴金属類であれば、特に制限なしに使用可能である。
【0048】
前記金属電極600は、多様な方法により発熱層500に接して形成されてもよく、例えば、メッキ法を用いて形成されてもよいが、この他に多様な方法により形成されてもよいため、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0049】
本発明の一実施形態において、前記絶縁層400の平均厚さは、陽極酸化程度に応じて適切に調節されてもよく、例えば2~100μm、具体的には5~50μmであってもよいが、これは好ましい一実施形態に過ぎず、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記発熱層500の平均厚さは、適切に調節されてもよく、例えば20~100μm、一実施形態として60μmであってもよいが、これは好ましい一実施形態に過ぎず、本発明がこれに制限されないことはいうまでもない。
【0051】
本発明の一実施形態に係るヒータ一体型GCカラム装置は、温度を検知する温度検知器800をさらに含むことができる。前記温度検知器としては、公知の多様な温度センサが用いられてもよく、具体的な一実施形態として、前記温度検知器800は、熱電対(Thermocouple)温度センサ、抵抗温度センサ(Resistive temperature detector、RTD)、およびサーミスタ(Thermistor)温度センサなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含む接触式温度検知器;および赤外線温度センサを含む非接触式温度検知器;の中から選択される何れか1つ以上をさらに含むことができる。また、前記温度検知器800は、装置の温度をセンシングできる位置であれば多様な部位に備えられてもよく、一実施形態として、ボビンの内側または外側に隣接して備えられてもよい。
【0052】
本発明に係るヒータ一体型GCカラム装置は、例えば17~25℃/sec、一実施形態として23℃/secの非常に速い昇温速度を有することができる。
【0053】
本発明に係るヒータ一体型GCカラム装置は、非常に高い熱均一性(Thermal homogeneity)を有することができる。
本発明に係るヒータ一体型GCカラム装置は、低い熱容量(Thermal mass)および高いエネルギー効率を有することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 キャリアガス(Carrier gas)
20 バルブ(Flow controller)
30 カラムオーブン(Column oven)
31 GCカラム(GC column)部
32 インジェクタポート(Injector port)
40 検出部(Detector)
50 記録部(Recorder)
100 ボビン
110 ボビンの外面
120 ボビンの内面
200 接合層
300 GCカラム
400 絶縁層
500 発熱層
610 第1金属電極
620 第2金属電極
700 貴金属層
800 温度検知器
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】