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特表2022-516129インターフェロンを発現する腫瘍溶解性ウイルス及びその応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】インターフェロンを発現する腫瘍溶解性ウイルス及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220216BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220216BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220216BHJP
   C12N 15/21 20060101ALN20220216BHJP
   C12N 15/22 20060101ALN20220216BHJP
   C12N 15/23 20060101ALN20220216BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220216BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20220216BHJP
   C12N 15/20 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K35/761
A61P35/00
A61K48/00
C12N15/21
C12N15/22
C12N15/23
C12N15/113 Z
C12N15/34
C12N15/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538122
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2019127782
(87)【国際公開番号】W WO2020135390
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811603052.2
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521281933
【氏名又は名称】上海元宋生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】章 康健
(72)【発明者】
【氏名】方 先龍
(72)【発明者】
【氏名】顧 錦法
(72)【発明者】
【氏名】劉 新垣
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4C084AA13
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA55
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、インターフェロン配列を発現する腫瘍溶解性ウイルス、特に、インターフェロンを発現する融合タンパク質を含む腫瘍溶解性アデノウイルスを開示しており、該腫瘍溶解性ウイルスは、in vitro及びin vivoで腫瘍をよく効果的に阻害することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロンをコードする核酸配列を含む、腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項2】
前記ウイルスは、アデノウイルスである、請求項1に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項3】
前記ウイルスは、サービビン(survivin)プロモーターにより駆動されるE1A遺伝子を含み、好ましくは、ウイルスゲノムのE1Aの内因性プロモーターがサービビン(survivin)プロモーターで置換されるか、及び/又は
E1A遺伝子配列は、Rbタンパク質に結合するE1Aタンパク質の活性を低下させる又は完全に欠失させるように修飾され、好ましくは、前記修飾は、E1A遺伝子のE1Aタンパク質の122~129番目のアミノ酸をコードする塩基配列を削除し、例えば、SEQ ID NO:1で表される配列中の364~387bpの配列を削除する、請求項1又は2に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項4】
インターフェロンは、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン又はコンセンサスインターフェロン(例えば、インフェルゲン(INFERGEN))であり、好ましくは、前記インターフェロンをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:2、3又は4で表される、請求項1~3のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項5】
前記核酸配列は、プロモーターに作動可能に連結され、好ましくは、前記プロモーターは、CMVプロモーターである、請求項1~4のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項6】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、中国典型培養物保蔵センターに寄託され、寄託番号がそれぞれCCTCC NO:V201871、CCTCC NO:V201957又はCCTCC NO:V201958である、請求項1~5のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項7】
増殖性疾患を治療するための医薬品の調製における請求項1~6のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルスの使用であって、好ましくは、前記増殖性疾患は、がん、例えば、前立腺がん、乳がん、直腸がん・結腸がん、肺がん、肝がん、メラノーマ、リンパ腫、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、神経膠腫、子宮頸がん又は腎がんである、使用。
【請求項8】
薬学的有効量の請求項1~6のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス、さらに、任意選択で薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物は、静脈内、噴霧吸入、灌流又は腫瘍内経路によって投与されるように調製される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
約10~1012vp(例えば、1.5×1010vp)の前記腫瘍溶解性ウイルスを含む、請求項8又は9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス又は請求項8~10のいずれか1項に記載の医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、増殖性疾患を治療する方法であって、前記対象は、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒトであり、より好ましくは、前記増殖性疾患は、がん、例えば、前立腺がん、乳がん、直腸がん・結腸がん、肺がん、肝がん、メラノーマ、リンパ腫、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、神経膠腫、子宮頸がん又は腎がんである、方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス又は請求項8~10のいずれか1項に記載の医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、がん細胞の転移を予防又は阻害するための方法であって、前記対象は、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒトであり、前記がんは、例えば、前立腺がん、乳がん、直腸がん・結腸がん、肺がん、肝がん、メラノーマ、リンパ腫、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、神経膠腫、子宮頸がん又は腎がんである、方法。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス又は請求項8~10のいずれか1項に記載の医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、がんの再発を予防するための方法
であって、前記対象は、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒトであり、前記がんは、例えば、前立腺がん、乳がん、直腸がん・結腸がん、肺がん、肝がん、メラノーマ、リンパ腫、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、神経膠腫、子宮頸がん又は腎がんである、方法。
【請求項14】
約10~1012vp(例えば、1.5×1010vp)の前記腫瘍溶解性ウイルスを静脈内、噴霧吸入、灌流又は腫瘍内経路によって前記対象に投与し、各治療コースあたりの投与回数は1~6回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回又は6回)であり、前記投与は1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日又はそれ以上ごとに行う、又は1日1回、2回、3回、4回、5回、6回又はそれ以上であり、前記対象に投与される薬物治療コースは、1~12個(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個)である、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2018年12月26日に中国特許庁へ提出された、出願番号201811603052.2、発明の名称が「インターフェロンを発現する腫瘍溶解性ウイルス及びその応用」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、腫瘍溶解性ウイルスを利用した腫瘍治療の技術分野に関し、具体的には、本発明は、インターフェロンを発現する腫瘍溶解性アデノウイルス、その調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0003】
統計によると、世界中で毎年1200万人以上が癌と診断されており、がんは人類の健康及び発達に深刻な影響を及ぼす。医学的および環境的条件の影響を受けて、中国の癌死亡率は世界平均よりも高い。従来の腫瘍療法は、有効性が低く、死亡率が高く、予後の再発率が高いなどの欠点があるため、がんの治療に大きな課題をもたらす。例えば、腫瘍発生のごく初期の段階で、微小転移巣が生成され、腫瘍の元の部位から遠く離れた組織に局在化している。従って、癌が診断されたとき、多くのがん患者はすでに微小転移を起こしている。
幅広い展望を有する新たな治療法として、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞内の細胞を複製および溶解し、それにより腫瘍細胞を継続的に殺すことができる。さらに、腫瘍溶解性ウイルスは、がん抑制遺伝子などを運ぶこともでき、ウイルスで細胞を溶解するとともに、遺伝子の腫瘍細胞を殺す能力を発揮するため、治療効果を向上させる。
現在、腫瘍溶解性ウイルスの有効性を高めることにより臨床的成功の可能性を高めるための新しい方法を入手することが依然として緊急に必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、まず、腫瘍溶解性アデノウイルスゲノムの構造を改良することにより、ウイルスゲノムのE1A遺伝子の野生型プロモーターをサービビン(survivin)プロモーターで置換し、次いで、E1A遺伝子のE1Aタンパク質の122~129番目のアミノ酸をコードする24つの塩基対(364~387bp)を削除し、E1AはRbタンパク質に結合できないため、E2Fが放出されず、宿主細胞が細胞周期に入るのを促進でき、上記の改良された腫瘍溶解性アデノウイルスは、Rbの異常な腫瘍細胞でのみ選択的に複製することができる。
さらに、本発明は、インターフェロン(例えば、コンセンサスインターフェロン)をコードする核酸配列、特に、SEQ ID NO:2、3又は4で表される核酸配列をウイルスゲノムに導入する。その結果、このような腫瘍溶解性アデノウイルスはin vitro及びin vivoで優れた抗腫瘍効果を有することが発見している。本発明に係る腫瘍溶解性アデノウイルスは、注射部位から遠く離れた場所で腫瘍増殖をよく効果的に阻害でき、さらに腫瘍再発を効果的に防止できることは特に驚くべきことである。これは、臨床応用にとって計り知れない価値がある。以上の知見に基づいて、本発明が完了する。
本発明の第1の側面は、インターフェロンをコードする核酸配列を含む腫瘍溶解性ウイルスを提供する。
【0005】
一実施形態において、前記ウイルスは、アデノウイルスである。
他の一実施形態において、前記ウイルスは、サービビン(survivin)プロモーターにより駆動されるE1A遺伝子を含み、好ましくは、ウイルスゲノムのE1Aの内因性プロモーターがサービビン(survivin)プロモーターで置換され、及び/又は
E1A遺伝子配列は、Rbタンパク質に結合するE1Aタンパク質の活性を低下させる又は完全に欠失させるように修飾され、好ましくは、前記修飾では、E1A遺伝子においてE1Aタンパク質の122~129番目のアミノ酸をコードする塩基配列を削除し、例えば、SEQ ID NO:1で表される配列の364~387bpの配列を削除し、
ATGAGACATATTATCTGCCACGGAGGTGTTATTACCGAAGAAATGGCCGCCAGTCTTTTGGACCAGCTGATCGAAGAGGTACTGGCTGATAATCTTCCACCTCCTAGCCATTTTGAACCACCTACCCTTCACGAACTGTATGATTTAGACGTGACGGCCCCCGAAGATCCCAACGAGGAGGCGGTTTCGCAGATTTTTCCCGACTCTGTAATGTTGGCGGTGCAGGAAGGGATTGACTTACTCACTTTTCCGCCGGCGCCCGGTTCTCCGGAGCCGCCTCACCTTTCCCGGCAGCCCGAGCAGCCGGAGCAGAGAGCCTTGGGTCCGGTTTCTATGCCAAACCTTGTACCGGAGGTGATCGATCTTACCTGCCACGAGGCTGGCTTTCCACCCAGTGACGACGAGGATGAAGAGGGTGAGGAGTTTGTGTTAGATTATGTGGAGCACCCCGGGCACGGTTGCAGGTCTTGTCATTATCACCGGAGGAATACGGGGGACCCAGATATTATGTGTTCGCTTTGCTATATGAGGACCTGTGGCATGTTTGTCTACAGTAAGTGAAAATTATGGGCAGTGGGTGATAGAGTGGTGGGTTTGGTGTGGTAATTTTTTTTTTAATTTTTACAGTTTTGTGGTTTAAAGAATTTTGTATTGTGATTTTTTTAAAAGGTCCTGTGTCTGAACCTGAGCCTGAGCCCGAGCCAGAACCGGAGCCTGCAAGACCTACCCGCCGTCCTAAAATGGCGCCTGCTATCCTGAGACGCCCGACATCACCTGTGTCTAGAGAATGCAATAGTAGTACGGATAGCTGTGACTCCGGTCCTTCTAACACACCTCCTGAGATACACCCGGTGGTCCCGCTGTGCCCCATTAAACCAGTTGCCGTGAGAGTTGGTGGGCGTCGCCAGGCTGTGGAATGTATCGAGGACTTGCTTAACGAGCCTGGGCAACCTTTGGACTTGAGCTGTAAACGCCCCAGGCCATAA(SEQ ID NO: 1)。
【0006】
他の一実施形態において、インターフェロンは、αインターフェロン、βインターフェロン又はコンセンサスインターフェロン(例えば、インフェルゲン(INFERGEN))、好ましくは、前記インターフェロンをコードする核酸配は、例えば、SEQ ID NO:2、3又は4で表される。
他の一実施形態において、前記核酸配列は、プロモーターに作動可能に連結され、好ましくは、前記プロモーターは、CMVプロモーターである。
他の一実施形態において、前記腫瘍溶解性ウイルスは、寄託番号がCCTCC NO:V201957の腫瘍溶解性ウイルスであり、その寄託情報は、寄託機関:中国典型培養物保蔵センター、場所:中国武漢、寄託日:2019年8月27日、寄託名称:組換えヒト5型アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、寄託番号:CCTCC NO:V201957であり、又は
【0007】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、寄託番号がCCTCC NO:V201958の腫瘍溶解性ウイルスであり、その寄託情報は、寄託機関:中国典型培養物保蔵センター、場所:中国武漢、寄託日:2019年8月27日、寄託名称:組換えヒト5型アデノウイルスrAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、寄託番号CCTCC NO:V201958であるか、又は
前記腫瘍溶解性ウイルスは、寄託番号がCCTCC NO:V201871の腫瘍溶解性ウイルスであり、寄託情報は、寄託機関:中国典型培養物保蔵センター、場所:中国武漢、寄託日:2018年12月12日、寄託名称:組換えヒト5型アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、寄託番号CCTCC NO:V201871である。
本発明の第2の側面は、治療増殖性疾患を治療するための医薬品の調製における第1の側面に係る腫瘍溶解性ウイルスの使用を提供し、好ましくは、前記増殖性疾患は、がん、例えば、前立腺がん、乳がん、直腸がん・結腸がん、肺がん、肝がん、メラノーマ、リンパ腫、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、神経膠腫、子宮頸がん又は腎がんである。
【0008】
本発明に係る第3の側面は、薬学的有効量の第1の側面に係る腫瘍溶解性ウイルス、さらに、任意選択で薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
一実施形態では、前記医薬組成物は、静脈内、噴霧吸入、灌流又は腫瘍内経路によって投与されるように調製される。
他の一実施形態において、約10~1012vp(例えば、1.5×1010vp)の前記腫瘍溶解性ウイルスを含む。
【0009】
本発明に係る第4の側面は、第1の側面に係る腫瘍溶解性ウイルス又は第3の側面に係る医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む増殖性疾患を治療する方法であって、前記対象は、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒトであり、より好ましくは、前記増殖性疾患は、がん、例えば、前立腺がん、乳がん、直腸がん・結腸がん、肺がん、肝がん、メラノーマ、リンパ腫、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、神経膠腫、子宮頸がん又は腎がんである、方法を提供する。
本発明に係る第5の側面は、請求項1~6のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス又は請求項8~10のいずれか1項に記載の医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、がん細胞の転移を予防又は阻害するための方法であって、前記対象は、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒトであり、前記がんは、例えば、前立腺がん、乳がん、直腸がん・結腸がん、肺がん、肝がん、メラノーマ、リンパ腫、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、神経膠腫、子宮頸がん又は腎がんである方法を提供する。
本発明に係る第6の側面は、請求項1~6のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス又は請求項8~10のいずれか1項に記載の医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、がんの再発を予防するための方法であって、前記対象は、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒトであり、前記がんは、例えば、前立腺がん、乳がん、直腸がん・結腸がん、肺がん、肝がん、メラノーマ、リンパ腫、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、神経膠腫、子宮頸がん又は腎がんである方法を提供する。
【0010】
中でも、上記第4~6の側面に係る幾つかの具体的な実施形態において、約10~1012vp(例えば、1.5×1010vp)の前記腫瘍溶解性ウイルスを静脈内、噴霧吸入、灌流又は腫瘍内経路によって前記対象に投与し、治療コースあたりの投与回数1~6回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回又は6回)であり、前記投与は各1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日又はそれ以上ごとに行う、又は1日1回、2回、3回、4回、5回、6回又はそれ以上であり、前記対象に投与される薬物治療コースは、1~12個(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個)である。
本発明で提供される組換え腫瘍溶解性ウイルスは、良好な安全性および優れた抗腫瘍効果を有し、抗腫瘍効果は、既存の臨床的に適用される医薬品であるソラフェニブ及びゲムシタビンよりも有意に優れている。インターフェロンタンパク質及び腫瘍溶解性ウイルスの空ベクターを独立して投与することよりも、本発明で提供される組換え腫瘍溶解性ウイルスは、予想外の相乗効果を達成する。さらに、本発明に係る腫瘍溶解性ウイルスは、さらに、腫瘍の転移および再発を阻害する能力を示すため、幅広い臨床応用の見通しを有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、各種の腫瘍溶解性アデノウイルスゲノムの構造概略図を示す。
図2図2は、本発明に係る各腫瘍溶解性アデノウイルスによって運ばれる標的タンパク質のin vitro発現図を示す。
図3図3は、本発明に係る各腫瘍溶解性アデノウイルスによるMHC I発現の向上効果を示し、ここで、図3Aは、SW780細胞株での結果であり、図3Bは、MCF-7細胞株での結果を示す。
図4図4は、乳がん細胞株MDA-MB-231(A)及び正常な乳腺細胞株MCF-10Aの本発明に係る各腫瘍溶解性アデノウイルスの比複製能を示す。
図5図5は、腫瘍細胞に対する異なる構造を持つ組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの阻害効果の比較を示し、ここで、図5A及び5Bは、それぞれ、肝がん細胞株Huh-7及び大腸がん細胞株SW620に対する複製型及び非複製型組み換えアデノウイルスによる阻害効果の比較を示し、図5C及び5Dは、それぞれ、乳がん細胞株MDA-MB-231及び肺がん細胞株HCC827に対するインターフェロン配列保有の有無の腫瘍溶解性ウイルスの阻害効果の比較を示し、図5Eは、正常肝線維芽細胞株HLFに対する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの殺傷効果を示す。
図6図6は、ヌードマウス異種移植腫瘍モデルの腫瘍増殖に対する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの阻害効果を示す。ここで、図6Aは、SW620細胞株によるヌードマウス移植腫瘍のin vivoモデルの結果を示し、図6B及びCは、MDA-MB-231細胞株によるヌードマウス移植腫瘍のin vivoモデルの結果を示し、図6D及びEは、HCC827細胞株によるヌードマウス移植腫瘍のin vivoモデルの結果を示す。
図7図7は、乳がん細胞株HCC1806によるヌードマウス異種移植腫瘍モデルにおいて、本発明に係る組換え腫瘍溶解性アデノウイルスとブランク対照、rIFNタンパク質のみ、空のウイルスベクターのみ、rIFNタンパク質併用及び空のウイルスベクター併用との比較を示し、ここで、図7Aは、投与案を示し、図Bは、各実験群及び対照群の移植腫瘍の体積を示す。
図8図8は、本発明に係る各組換え腫瘍溶解性アデノウイルスのin vivo薬効を示し、図8Aは、注射側での腫瘍体積変化を示し、図8Bは、非注射側での腫瘍体積変化を示す。
図9図9は、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bによる腫瘍再発の予防効果を示す。図9Aは、HCC827ヌードマウス移植腫瘍のin vivoモデルでrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを注射して退縮されたマウス体内へHCC827細胞を再移植した効果、対照(PBS)群との比較を示す。図9Bは、実験群の異なるマウスの腫瘍変化データを示し、図5Cは、実験群と対照群のマウスの最終的腫瘍体積の統計的比較を示す。
図10図10は、ヒト化免疫系のマウス異種移植腫瘍モデルの腫瘍増殖に対する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの阻害効果を示す。ここで、図10A及びBは、投与側(右側)の腫瘍への阻害効果を示し、図10C及びDは、非投与側(左側)の腫瘍への阻害効果を示す。
図11図11は、ヌードマウスPDXモデルの腫瘍増殖に対する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの阻害効果を示す。ここで、図11Aは、肺扁平上皮細胞がんPDXモデルに対する該組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの阻害効果を示し、図11Bは、肺腺がんPDXモデルに対する該組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの阻害効果を示し、図11Cは、トリプルネガティブ乳がんPDXモデルに対する該組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの阻害効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願で使用される用語は、先行技術のものと同じ意味を有する。使用されている用語の意味を明確に示すために、本願での幾つかの用語の具体的な意味を以下に示す。本明細書の定義が該用語の従来の意味と矛盾する場合には、本条の定義が優先するものとする。
定義
特に断りがない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、本発明で使用することができる刊行物で報告された細胞株、ベクター、および方法を説明および開示する目的で、参照により本明細書に組み込まれる。ここでは何も認められていると見なすことはできず、本発明は、以前の発明に基づいてそのような開示に先行する権利を有しない。
「腫瘍溶解性ウイルス」という用語とは、正常細胞にまったくまたはほとんど影響を与えずに、癌または過剰増殖を伴う細胞で選択的に複製し、それによってその増殖を遅らせたり、死に至らしめることができるウイルスを指す。例示的な腫瘍溶解性ウイルスは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レオウイルス、麻疹ウイルス、レトロウイルス、インフルエンザウイルス、シンビスウイルス、ワクシニアウイルス及びアデノウイルスなどを含む。(例えば、Kirn et al.,Nat.Med.7:781)。 (2001)、 Coffey et al.,Science 282:1332(1998)、 Lorence et al.,Cancer Res.54:6017(1994)、及びPeng et al.,Blood 98:2002(2001))を参照。」
【0013】
「インターフェロン」という用語とは、複数の真核細胞がさまざまな環境刺激(ウイルス感染又はマイトジェンとの接触を含む。)への曝露後に産生した分泌型タンパク質のファミリーを指す。インターフェロンは、抗ウイルス作用に加えて、複数の細胞機能に影響を与えることが示されている。3つの主要なインターフェロンは、IFN-a、IFN-β及びIFN-γである。インターフェロンは、最初、その細胞由来源(白血球、線維芽細胞又はT細胞)によって分類されている。現在、白血球インターフェロンは、IFN-αと呼ばれ、線維芽細胞インターフェロンは、IFN-βと呼ばれ、T細胞インターフェロンは、IFN-γと呼ばれる。
「コンセンサスインターフェロン(consensus interferon)」という用語とは、アミノ酸配列が既知のヒトインターフェロンαの全サブタイプの大体の平均配列である合成インターフェロンを意味する。コンセンサスインターフェロンは天然のヒトIFN-αサブタイプよりも優れた(約5倍)抗ウイルス、抗増殖および激活NK細胞的活性を有することが報告されている。例示的なコンセンサスインターフェロンは、例えば、インフェルゲン(INFERGEN)があり、米国特許US4695623及びUS4897471に開示されている配列を参照する。
本開示は、先行技術で知られているインターフェロン配列を使用することができ、好ましい一実施形態において、本開示は、コンセンサスインターフェロンを使用している。
【0014】
出願者は、鋭意検討した結果、適切な核酸コード配列を選択すると、in vivoでのインターフェロンタンパク質の治療効果に影響を与えることを発見した。同一のインターフェロンタンパク質、例えば、コンセンサスインターフェロンは、腫瘍溶解性ウイルスベクターが異なるインターフェロンの核酸コード配列を保有する場合に、in vivoでの腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍溶解効果は、かなり異なる。しかも、出願者は、この効果の違いは、生物体のコドン使用選好性とは何の関係もないこと、即ち、ヒトの発現に最も適したコドンが使用されるかどうかによって引き起こされないことを発見した。一実施形態では、原核生物の発現に適したコドン(例えば、SEQ ID NO: 4で示されるIFN-3配列)を使用すると、優れた技術的効果も得られ、予期しない技術的効果が得られる。
本開示で使用されるコンセンサスインターフェロンのコード配列は、以下の通りである。
IFN-1:
ATGGCCCTGTCCTTCAGCCTGCTGATGGCCGTGCTGGTGCTGAGCTACAAGTCCATCTGCTCCCTGGGCATGTGTGATCTGCCTCAGACACACTCCCTGGGCAATAGAAGGGCCCTGATCCTGCTGGCCCAGATGAGAAGGATCAGCCCCTTCTCCTGCCTGAAGGATAGACACGATTTTGGCTTCCCTCAGGAGGAGTTCGACGGCAATCAGTTTCAGAAGGCCCAGGCCATCTCCGTGCTGCACGAGATGATCCAGCAGACCTTTAACCTGTTCTCCACAAAGGACTCCAGCGCCGCCTGGGACGAGTCCCTGCTGGAGAAGTTTTACACAGAGCTGTACCAGCAGCTGAACGATCTGGAGGCCTGCGTGATCCAGGAGGTGGGCGTGGAGGAGACCCCCCTGATGAATGTGGATTCCATCCTGGCCGTGAAGAAGTACTTTCAGAGAATCACCCTGTACCTGACCGAGAAGAAGTACAGCCCTTGTGCCTGGGAGGTGGTGAGAGCCGAGATCATGAGATCCTTTTCCCTGAGCACAAACCTGCAGGAGAGGCTGAGAAGGAAGGAGTGA (SEQ ID NO: 2)、
IFN-2:
ATGGCCCTGTCCTTCTCCCTGCTGATGGCCGTGCTGGTGCTGAGCTACAAGTCCATCTGCTCCCTGGGCATGTGCGACCTGCCTCAGACACACTCCCTGGGCAATAGGAGAGCCCTGATCCTGCTGGCCCAGATGAGGAGGATCTCCCCTTTTAGCTGCCTGAAGGATAGACACGATTTCGGCTTCCCTCAGGAGGAGTTCGATGGCAATCAGTTCCAGAAGGCCCAGGCCATCAGCGTGCTGCACGAGATGATCCAGCAGACCTTCAATCTGTTTAGCACCAAGGACTCCAGCGCCGCCTGGGACGAGTCCCTGCTGGAGAAGTTCTACACCGAGCTGTACCAGCAGCTGAACGACCTGGAGGCCTGCGTGATCCAGGAGGTGGGCGTGGAGGAGACCCCTCTGATGAATGTGGATAGCATCCTGGCCGTGAAGAAGTACTTTCAGAGAATCACACTGTACCTGACAGAGAAGAAGTACAGCCCCTGCGCCTGGGAGGTGGTGAGGGCTGAGATCATGAGGAGCTTTTCCCTGTCCACAAACCTGCAGGAGAGGCTGAGAAGGAAGGAGTGA (SEQ ID NO: 3)、
IFN-3:
ATGGCCCTGTCCTTTTCTTTACTGATGGCCGTGCTGGTGCTCAGCTACAAATCCATCTGTTCTCTGGGCATGTGCGACCTGCCGCAGACCCACTCCCTGGGTAACCGTCGTGCTCTGATCCTGCTGGCTCAGATGCGTCGTATCTCCCCGTTCTCCTGCCTGAAAGACCGTCACGACTTCGGTTTCCCGCAGGAAGAATTCGACGGTAACCAGTTCCAGAAAGCTCAGGCTATCTCCGTTCTGCACGAAATGATCCAGCAGACCTTCAACCTGTTCTCCACCAAAGACTCCTCCGCTGCTTGGGACGAATCCCTGCTGGAAAAATTCTACACCGAACTGTACCAGCAGCTGAACGACCTGGAAGCTTGCGTTATCCAGGAAGTTGGTGTTGAAGAAACCCCGCTGATGAACGTTGACTCCATCCTGGCTGTTAAAAAATACTTCCAGCGTATCACCCTGTACCTGACCGAAAAAAAATACTCCCCGTGCGCTTGGGAAGTTGTTCGTGCTGAAATCATGCGTTCCTTCTCCCTGTCCACCAACCTGCAGGAACGTCTGCGTCGTAAAGAATAA (SEQ ID NO: 4)。
【0015】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語とは、特定の目的を達成するために一緒に組み合わされた少なくとも1つの薬物と任意選択で薬学的に許容される担体又は添加剤との組み合わせを指す。幾つかの実施形態において、前記医薬組成物は、本発明の目的を達成するために一緒に働くことができる限り、時間及び/又は空間で分けられた組み合わせを含む。例えば、前記医薬組成物に含まれる成分は、対象に全体として投与するか、又は、個別に投与することもできる。前記医薬組成物に含まれる成分が対象に別々に投与される場合、前記成分は、同時にまたは連続して対象に投与されることができる。好ましくは、前記薬学的に許容される担体は、水、緩衝水溶液、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)のような等張塩溶液、グルコース、マンニトール、デキストロース、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセリン、ヒアルロン酸、又はポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール、トリグリセリドなどを含む。使用される薬学的に許容される担体のタイプは、本発明による組成物が経口、経鼻、腫瘍内、灌流、皮内、皮下、筋肉内または静脈内投与用に処方されるかどうかに特に依存する。本発明による組成物は、添加剤として、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、着色物質、矯味剤及び/又は芳香物質などを含むことができる。
「投与」とは、薬理学的に使用可能な方法で医薬組成物などの物質を対象に提供することを意味する。
対象に提供される医薬組成物の用量とは、投与される対象に有益であることを示すのに十分な用量を指し、本明細書中に「薬学的有効量」又は「有効量」とも呼ばれる。投与される実際量、ならびに投与の速度および時間経過は、治療される患者の状態および重症度に依存する。治療の処方(例えば、用量の決定など)は、最終的には一般開業医や他の医師の責任であり、通常は治療する病気、個々の患者の状態、送達部位、投与方法以及医師にとって何であるか既知の他の要因を考慮する。
【0016】
本発明に係る一実施形態において、医薬組成物は、10~1012vpの腫瘍溶解性ウイルスを含み、例えば、1×10、1.5×10、2×10、2.5×10、3×10、3.5×10、4×10、4.5×10、5×10、5.5×10、6×10、6.5×10、7×10、7.5×10、8×10、8.5×10、9×10、9.5×10、1×10、1.5×10、2×10、2.5×10、3×10、3.5×10、4×10、4.5×10、5×10、5.5×10、6×10、6.5×10、7×10、7.5×10、8×10、8.5×10、9×10、9.5×10、1×1010、1.5×1010、2×1010、2.5×1010、3×1010、3.5×1010、4×1010、4.5×1010、5×1010、5.5×1010、6×1010、6.5×1010、7×1010、7.5×1010、8×1010、8.5×1010、9×1010、9.5×1010、1×1011、1.5×1011、2×1011、2.5×1011、3×1011、3.5×1011、4×1011、4.5×1011、5×1011、5.5×1011、6×1011、6.5×1011、7×1011、7.5×1011、8×1011、8.5×1011、9×1011、9.5×1011又は1×1012vp、及び上記の2点の間の任意の用量である。
他の一実施形態において、対象に投与される腫瘍溶解性ウイルスの単回投与量は、10~1012vp、例えば、1×10、1.5×10、2×10、2.5×10、3×10、3.5×10、4×10、4.5×10、5×10、5.5×10、6×10、6.5×10、7×10、7.5×10、8×10、8.5×10、9×10、9.5×10、1×10、1.5×10、2×10、2.5×10、3×10、3.5×10、4×10、4.5×10、5×10、5.5×10、6×10、6.5×10、7×10、7.5×10、8×10、8.5×10、9×10、9.5×10、1×1010、1.5×1010、2×1010、2.5×1010、3×1010、3.5×1010、4×1010、4.5×1010、5×1010、5.5×1010、6×1010、6.5×1010、7×1010、7.5×1010、8×1010、8.5×1010、9×1010、9.5×1010、1×1011、1.5×1011、2×1011、2.5×1011、3×1011、3.5×1011、4×1011、4.5×1011、5×1011、5.5×1011、6×1011、6.5×1011、7×1011、7.5×1011、8×1011、8.5×1011、9×1011、9.5×1011又は1×1012vp、及び上記の2点の間の任意の用量である。治療コースあたりの投与回数は、1~6回、例えば、1回、2回、3回、4回、5回又は6回であり、2回の投与間隔は、1~7日、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日又は7日である。
本発明において、ウイルス用量の単位は、vp(ウイルス粒子数,viral particle)であり、ウイルス溶液に含まれるウイルス粒子の数を表し、ウイルス粒子の力価である。
【0017】
本明細書で使用される「対象」という用語とは、、温血哺乳動物、例えば、ヒト及び霊長類動物;鳥類;飼いならされた家畜又はファーム家畜、例えば、猫、犬、羊、山羊、牛、馬及び豚;実験室動物、例えば、マウス、ラット及びモルモット;魚;爬虫類;動物園の動物及び野生動物などを含む動物を意味する。
本開示で特定の値に言及している場合、特に断りがない限り、少なくともその値が含まれることに注意する必要がある。数値が近似値を表す場合、特定の数値が別の実施形態を形成することを理解すべきである。「約X」(ここで、Xは、数値である。)とは、挙げられた値±10%(両端を含む。)を意味する。存在する場合、すべての範囲が包括的で組み合わせ可能である。
本明細書で使用される用語、例えば、「含む」、「含み」、「含有」は、限定することを意図するものではない。なお、特に断りがない限り、「又は」、「或いは」とは、「及び/又は」を意味する。
【0018】
特に断りがない限り、本方法及び製品に関する実施形態で開示される任意の成分、要素、属性またはステップは、本明細書で開示される任意の他の方法および製品に適用することができる。
本開示における各特許、特許出願、引用された刊行物または説明は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施形態は、例としてのみ説明されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。上記の議論及びこれらの例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を決定することができ、その本質および範囲から逸脱することなく、さまざまな使用方法及び条件を適応させるために本発明に様々な変更および改良を加えることができる。
【0019】
材料及び方法
一、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B和rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの構築
上記の3つのウイルスの構築手順は、類似しており、それらの区別点が構築に使用されるコンセンサスインターフェロンのコード配列のみであり、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1は、SEQ IN NO:2で示されるコード配列を使用し、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1は、SEQ ID NO:3で示されるコード配列を使用し、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1は、SEQ ID NO:4で示されるコード配列を使用した。以下、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1の構築手順を例として、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの構築手順を詳しく説明するが、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1のコンセンサスインターフェロンのコード配列を他の2つの配列に置き換えられている限り、他の2つの腫瘍溶解性アデノウイルスの構築方法を得る。
【0020】
1、組換えプラスミドpShuttle-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの構築
5’末端にNotI制限酵素部位及び3’末端にXbaI制限酵素部位を有するヌクレオチド配列(SEQ ID NO:5で示される。)を合成することを遺伝子合成公司に委託し、ここで、コンセンサスインターフェロンは、SEQ ID NO: 4で示されるコード配列を使用する。
ataagaatgcggccgcctcgactaattccctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctcgtttagtgaaccgtcagatcgcctggagacgccatccacgctgttttgacctccatagaagacaccgggaccgatccagcctggggatcttcgagtcgtcaagcttgaattcgatccccgggctgcaggaattcccaatactatggccctgtccttttctttactgatggccgtgctggtgctcagctacaaatccatctgttctctgggcatgtgcgacctgccgcagacccactccctgggtaaccgtcgtgctctgatcctgctggctcagatgcgtcgtatctccccgttctcctgcctgaaagaccgtcacgacttcggtttcccgcaggaagaattcgacggtaaccagttccagaaagctcaggctatctccgttctgcacgaaatgatccagcagaccttcaacctgttctccaccaaagactcctccgctgcttgggacgaatccctgctggaaaaattctacaccgaactgtaccagcagctgaacgacctggaagcttgcgttatccaggaagttggtgttgaagaaaccccgctgatgaacgttgactccatcctggctgttaaaaaatacttccagcgtatcaccctgtacctgaccgaaaaaaaatactccccgtgcgcttgggaagttgttcgtgctgaaatcatgcgttccttctccctgtccaccaacctgcaggaacgtctgcgtcgtaaagaataaggatccatcgagcaacttgtttattgcagcttataatggttacaaataaagcaatagcatcacaaatttcacaaataaagcatttttttcactgcattctagttgtggtttgtccaaactcatcaatgtatcttatcatgtctggatcgtgtcgagcgcgttctttgaaagcagtcgagggggcgctaggtgtgggcagggacgagctggcgcggcgtcgctgggtgcaccgcgaccacgggcagagccacgcggcgggaggactacaactcccggcacaccccgcgccgccccgcctctactcccagaaggccgcggggggtggaccgcctaagagggcgtgcgctcccgacatgccccgcggcgcgccattaaccgccagatttgaatcgccggacccgttggcagaggtggcggcggcggcatacgtactgaaaatgagacatattatctgccacggaggtgttattaccgaagaaatggccgccagtcttttggaccagctgatcgaagaggtactggctgataatcttccacctcctagccattttgaaccacctacccttcacgaactgtatgatttagacgtgacggcccccgaagatcccaacgaggaggcggtttcgcagatttttcccgactctgtaatgttggcggtgcaggaagggattgacttactcacttttccgccggcgcccggttctccggagccgcctcacctttcccggcagcccgagcagccggagcagagagccttgggtccggtttctatgccaaaccttgtaccggaggtgatcgatccacccagtgacgacgaggatgaagagggtgaggagtttgtgttagattatgtggagcaccccgggcacggttgcaggtcttgtcattatcaccggaggaatacgggggacccagatattatgtgttcgctttgctatatgaggacctgtggcatgtttgtctacagtaagtgaaaattatgggcagtgggtgatagagtggtgggtttggtgtggtaattttttttttaatttttacagttttgtggtttaaagaattttgtattgtgatttttttaaaaggtcctgtgtctgaacctgagcctgagcccgagccagaaccggagcctgcaagacctacccgccgtcctaaaatggcgcctgctatcctgagacgcccgacatcacctgtgtctagagc (SEQ ID NO:5)
【0021】
NotI-XbaI制限酵素で二重消化し、消化した後に核酸フラグメントを回収し、酵素消化システムは、以下の通りである。
SEQ ID NO: 5で示される核酸フラグメント 10μL
NotI 0.5μL
XbaI 0.5μL
10×Buffer 2μL
ddH O 7μL
合計 20μL
37℃の水浴に2時間置いた。
pShuttle-E1A-E1Bプラスミドの構築
XhoI-MfeI制限酵素二重消化プラスミドpShuttle(上海吉然生物科技有限公司)及びアデノウイルスベクタープラスミドpXC2(中国科学院上海生命科学研究院生物化学・細胞生物学研究所の劉新垣院士からの寄贈)を使用し、酵素消化システムは、以下の通りである。
XhoI-MfeI制限酵素二重消化プラスミドpShuttleシステム:
pShuttle 10μL
XhoI 0.5μL
MfeI 0.5μL
10×Buffer 2μL
ddH O 7μL
合計 20μL

XhoI-MfeI制限酵素二重消化プラスミドpXC2システム:
pXC2 10μL
XhoI 0.5μL
MfeI 0.5μL
10×Buffer 2μL
ddH O 7μL
合計 20μL
【0022】
上記反応系を37℃の水浴に2h置き、次いでアガロースゲル電気泳動にかけ、それぞれpShuttleプラスミドが制限酵素で切断された大きな断片及びpXC2プラスミドが制限酵素で切断された小さな断片を回収した。その後、リガーゼを使用して上記回収産物を連結し、pShuttle-E1A-E1Bプラスミドとして構築し、中でも、連結反応系は、以下の通りである。
線状化プラスミドpShuttle 4μL
線状化プラスミドpXC2 2μL
Ligationhigh 4μL
Total 10μL
上記反応系を16℃の水浴に入れて2時間反応させた。連結産物は、プラスミドpShuttle-E1A-E1Bである。
NotI-XbaI制限酵素でpShuttle-E1A-E1Bプラスミドを二重消化し、大きな断片(ベクターフラグメント)を回収した。その後、Ligationhighリガーゼ(TOYOBO)を使用して制限酵素で切断された核酸フラグメントとベクターフラグメントを連結し、連結システムは、以下の通りである。
制限酵素切断後のpShuttle-E1A-E1Bプラスミド断片 0.5μL
制限酵素切断後の核酸フラグメント 5.5μL
Ligation high 4μL
Total 10μL
16℃の水浴に2時間置き、連結産物は、pShuttle-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bである。
【0023】
2、組換えプラスミドpAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの構築
(1)PmeI酵素を使用してpShuttle-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを単一の制限酵素で切断して線状化し、反応系は、以下の通りである。
pShuttle-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B 8μL
PmeI 1μL
10×Buffer 2μL
ddH O 9μL
合計 20μL
上記反応系を37℃の水浴に置いて1時間反応させた後、次のステップの脱リン酸化を施した。
(2)FastApを使用してステップ(1)で線状化されたpShuttle-IFN-3- SP-E1A(Δ24bp)-E1Bプラスミドを脱リン酸化し、反応系は、以下の通りである。
線状化プラスミドpShuttle-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B
8μL
FastAp 1μL
10×Buffer 2μL
ddH O 9μL
合計 20μL
上記反応系を37℃の水浴に1時間置いた後、次の形質転換実験を行った。
【0024】
(3)BJ5183コンピテントセルにおいてアデノウイルスバックボーンプラスミドと線状化pShuttle-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを組換えることにより、組換えプラスミドpAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bが得られ、具体的な手順は、以下の通りである。
1)前の実験での線状化pShuttle-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを取り、BJ5183コンピテントセルを形質転換し、プレートに塗り広げ、バクテリアを選び、一晩振とうし、
2)少量プラスミド抽出用キットを使用して細菌培養液からプラスミドを抽出した。
ここで、BJ5183コンピテントセルの調製方法は、中国特許出願CN201810651914.2を参照することができ、以下、簡単に説明した。
HindIII制限酵素でpBHGE3プラスミド(捷易生物から購入)を消化し、SpeI制限酵素でpAdEasy-1プラスミド(上海吉然生物科技有限公司から購入)を消化し、その後、上記の2つの制限酵素で切断されたプラスミドを大腸菌BJ5183株に形質転換し、相同組換えを起こし、E3領域を保有する組換えアデノウイルスバックボーンプラスミドを得、次いで、その組換えアデノウイルスバックボーンプラスミドを大腸菌DH5αに形質転換して増幅し、増幅された組換えアデノウイルスバックボーンプラスミドを得、次に前記組換えアデノウイルスバックボーンプラスミドをコンピテントセル化大腸菌BJ5183に形質転換し、組換えアデノウイルスバックボーンプラスミドを保有する大腸菌BJ5183株を得、さらにその大腸菌をコンピテントセル化することにより、ステップ1)で使用されるBJ5183コンピテントセルを得た。
【0025】
(4)制限酵素断片の同定。組換えプラスミドpAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bプラスミドをコンピテント化大腸菌DH5αに形質転換し、プレートに塗り広げた後にモノクローナルコロニーを選び、振とうして培養した後、プラスミドを抽出し、制限酵素断片を同定した。制限酵素反応は、以下の通りである。
pAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B 8μL
MluI 1μL
10×Buffer 2μL
ddH O 9μL
合計 20μL
上記反応系を37℃の水浴において30min反応させた後、電気泳動により同定した。
【0026】
3、組換えウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bのパッケージング
(1)細胞のプレーティング
HEK-293細胞を6ウェルプレートで2日目に細胞密度が60%~80%になるように培養した。
(2)PacI制限酵素により組換えプラスミドpAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを消化して線状化し、反応系は、以下の通りである。
pAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B 1μg
PacI 1μL
10×Buffer 2μL
ddHO 20μLまで追加
(3)プラスミドトランスフェクション及びウイルスパッケージング
Effectene Transfection Reagentトランスフェクションキットの取扱説明書に従って、ステップ(2)で線状化された組換えプラスミドpAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを1μg取り、ステップ(1)で得られた6ウェルプレートにプレーティングされたHEK-293細胞にトランスフェクトした。約7~10日後、細胞に完全に病理学的変化が発生する際に、ウイルス溶液を収集し、-80℃で保存して用意した。
【0027】
4、組換えウイルスの力価測定
ウイルス力価測定の原理は、ヘキソン染色陽性の細胞数を免疫細胞化学法に基づいて統計学的に計算して感染性を示すウイルスの数量を判定し、アデノウイルス力価測定キットの取扱説明書に従って小幅な増幅及び精製後のアデノウイルスについて力価を測定した。
【0028】
二、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの機能的検出
1、標的タンパク質発現レベルのウェスタンブロッティング検出
(1)細胞感染及びサンプル収集
6ウェルプレートにMDA-MB-231細胞をウェルあたり5×10cellsで培養し、COインキュベーターで翌日まで培養した。空ベクターとしての対照ウイルスrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及び組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを取り、それぞれ6ウェルプレートで培養したMDA-MB-231細胞を10 MOIの接種率で感染させ、各ウイルスあたり1ウェルに感染させ、COインキュベーターで24時間培養し続けた。その後、上清を捨て、ウェルあたり100 ul RIPAライセートで細胞をライセーションし、ライセートを収集して被験サンプルとした。
(2)タンパク質サンプルの前処理
BCAタンパク質定量キット(Thermoから購入)を使用してステップ(1)で収集された各サンプルのタンパク質の濃度を測定し、具体的な操作方法は、キットの取扱説明書を参照した。その後、測定結果に応じて、RIPAライセートを使用してタンパク質の濃度が一致するように各サンプルの濃度を調整した。次に、各サンプルに最終濃度が1×になるように適切な体積の5×SDSタンパク質用ローディングバッファー(Beyotime Biotechnologyから購入)を加えてよく混合し、100℃の金属浴で10min加熱した。サンプルは、ウェスタンブロット解析に直接使用するか、又は-20℃の冷蔵庫に保存した。
(3)ウェスタンブロット解析
前処理済みの各タンパク質サンプルを採取し、ウェルあたり20ugの総タンパク質のロード量でSDS-PAGEゲル電気泳動を行い、次いで、ゲル内のサンプルをBioradエレクトロポレーターを介してPVDFメンブレンに転写した。5%スキムミルクで30minブロックし、次いで、使用濃度まで希釈されたrIFN抗体(作製を華安生物に委託する。)、β-tubulin抗体(康為世紀から購入)を加え、シェーカーで4℃で一晩インキュベートした。一次抗体を捨て、PBSTバッファーで3回洗浄し、使用濃度に希釈された対応する二次抗体(碧雲日から購入)を加え、シェーカーで室温で2hインキュベートした。二次抗体を捨て、PBSTバッファーで3回洗浄し、ECL化学発光発色検出用キット(翌聖から購入)を使用して発色させ、具体的な操作は、キットの取扱説明書を参照した。
【0029】
2、インターフェロンによるMHC I発現の調節
(1)細胞プレーティング及びウイルス接種
24ウェルプレートにSW780、MCF-7細胞をウェルあたり1.5×10cellsで500ul/ウェルの培養系を培養し、COインキュベーターで翌日まで培養した。空ベクターとしての対照ウイルスrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及び組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを取り、それぞれ、1 MOIの接種率で上記24ウェルプレートで培養したがん細胞を感染させ、接種体積は、100ul/ウェルである。また、各種の細胞は、いずれもウイルスを加えないブランク対照群(PBS群)が設けられ、細胞の処置後に均一に穏やかに振とうし、COインキュベーターで24h培養し続けた。
(2)サンプル処理及びフローサイトメトリー解析
上記24h処理された細胞を取り、上清を捨て、1*PBSで1回洗浄した後、細胞剥離液accutaseを200ul/ウェルでサンプルウェルに加えた。すべての細胞が収縮して丸くなったら、穏やかに振とうして漂うようにした後、1*PBSを800ul加え、細胞の吹き飛ばしを5回繰り返し、細胞混合液を1.5ml EPチューブに移した。1500r/minで5min遠心分離し、上清を捨て、1*PBSを1ml加え、さらに1回洗浄して遠心分離した。次に、抗体ワーキング溶液(1ul抗体ストック溶液:240ul 1*PBS)を60ul/サンプルで上記洗浄遠心後の細胞に加え、均一に混合した後、室温、遮光下で30min染色し、同時に、未染色の細胞を陰性対照とした。染色終了後、1*PBSで1回洗浄して遠心分離し、室温で2% PFAにて10min固定した後、フローサイトメトリー解析(機器の操作手順に従って操作する。)を行い、ロード量は、体積として50ul/サンプルである。
【0030】
3、比複製能の測定
(1)細胞プレーティング及びウイルス接種
6ウェルプレートに乳がん細胞株MDA-MB-231、正常乳腺細胞株MCF-10Aを培養し、それぞれ1.2×10、8×10細胞/ウェルの密度でプレーティングし、2ml/ウェルの培養系を、COインキュベーターで翌日まで培養した。組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bをそれぞれ1 MOIの接種率で上記6ウェルプレートで培養した細胞を感染させ、各種のウイルスあたりtriplicateで感染させ、接種体積は100ul/ウェルであり、細胞を処置した後、均一に穏やかに振とうし、COインキュベーターで72h培養し続けた。
(2)サンプルの収集、前処理及び小分け包装
上記72h処理した細胞を取り、6ウェルプレートの周りにパラフィルムで密封した後、-80℃の冷蔵庫に保存した。室温から-80℃まで3回凍結融解処理を繰り返し、3回目の融解後、ピペットで細胞を吹き飛ばし、培地とよく混合した。培養過程での液体の蒸発を考慮して、最終的に各ウェルのサンプルの総体積を培地で2mlまで追加する必要があり、よく混合した後、3つの部分に分割し(1つの部分は、力価の検出に使用し、残りの2つの部分は、用意した。)、80℃の冷蔵庫に保存した。
【0031】
(3)サンプル力価の測定及び複製倍数の計算
Cell biolabs社のQuickTiterTM Adenovirus Titer Immunoassay Kitを使用して上記小分け包装のサンプルの1つの部分を選択して力価の検出を行った。測定の原理は、ヘキソン染色陽性の細胞数を免疫細胞化学法に基づいて統計学的に計算して感染性を示すウイルスの数量を判定し、具体的な操作方法は、以下の通りである。
1)293A細胞を2.5*10cells/ウェルの密度で24ウェルプレート(1ml/ウェル)に接種し、細胞が壁に付着した後(約24h)各ウェルに段階希釈された被験ウイルス100ulを加えた。ウイルスを加えないウェルをブランク対照として、各勾配ごとに細胞をduplicateで、37℃、5% COの条件下で培養し続けた。
2)2日間培養後、24ウェルプレートを取り出し、生物学的安全キャビネットで上清を吸引して捨て、-20℃で予冷したメタノールを500ul/ウェルの量で加え、-20℃の冷蔵庫で20min放置した。
3)細胞を1*PBSで3回穏やかに洗浄し、1% BSAで1hブロックした。
4)1% BSAを吸い出して捨て、予め希釈された一次抗体anti-Hexonを250ul/ウェルの量で加えて室温で1hインキュベートした。
5)細胞を1*PBSで3回穏やかに洗浄し、予め希釈された二次抗体(HRP)を250ul/ウェルの量で加え、室温で1hインキュベートした。
【0032】
6)細胞を1*PBSで3回穏やかに洗浄し、1*DABワーキング溶液を加え、室温で15min染色した。
7)細胞を1*PBSで2回穏やかに洗浄し、最後に、さらに細胞が乾燥しないように1*PBSを200ul/ウェルの量で加えた。
8)顕微鏡で写真を撮り、10倍の対物レンズ及び10倍の接眼レンズを使用し、各ウェルごとに9つの箇所(上、下、左、右、左上、左下、右上、右下及び直中の位置)のそれぞれを選択して写真を撮った。
9)対応する希釈勾配の下で、各視野に存在するウイルスユニットの数をカウントし、各視野あたり50個程度のウイルスユニットの勾配を、最良のカウント勾配とし、実際のカウントで得られた各視野の陽性点の平均数をYとすると、ウイルスの力価(ifu/ml)は、135.2×Y×希釈倍数である。
各サンプルの力価にサンプルの全体積2mlを掛けると、各サンプルウェルの総収量になった。最後に、複製倍数=総収量/初期接種量により各サンプルの複製倍数を計算した。
4、クリスタルバイオレット法による腫瘍溶解性ウイルスの安全性の検出
細胞を24ウェルプレートにプレーティングし、1日後に適切なMOIの被験組換えアデノウイルスを細胞に感染させ、37℃で4日間培養し続けた後、培地を捨て、各ウェルにクリスタルバイオレット染色液(2%クリスタルバイオレットを20%メタノールに溶解させた溶液)500μLを加え、30min染色し、余分な染色液を純粋な水で洗浄し、乾燥させた後、写真を撮った。
【0033】
5、in vivo薬効試験
SW620細胞ヌードマウス異種移植腫瘍モデル
実験ヌードマウスが6週齢になると、SW620腫瘍細胞を1×10個注射して腫瘍形成実験を行い、測定後、腫瘍サイズが80~100mm程度であり、身体的健康状態が良好であり、この場合、マウスをPBS群、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群及びAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群という3群にランダムに分け、すべてを、用量1.5×1010vp/匹/回、1日おきに1回、合計4回腫瘍内注射した。3日おきに腫瘍サイズを観察し測定した。
MDA-MB-231細胞ヌードマウス異種移植腫瘍モデル
実験ヌードマウスが5週齢になると、MDA-MB-231腫瘍細胞を2×10個注射して腫瘍形成実験を行い、測定後、腫瘍サイズが80~100mm程度であり、身体的健康状態が良好であり、この場合、マウスをPBS群(腫瘍内投与、1日おきに1回、合計4回)、陽性薬Sorafenib群(胃内投与、単回用量30mg/kg、1日1回、合計14日)及びrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群(腫瘍内投与、用量1.5×1010vp/匹/回、1日おきに1回、合計4回)という3群にランダムに分け、各群あたり8匹、3日おきに腫瘍サイズを観察し測定した。
HCC827細胞ヌードマウス異種移植腫瘍モデル
実験ヌードマウスが5週齢になると、HCC827腫瘍細胞を2×10個注射して腫瘍形成実験を行い、測定後、腫瘍サイズが80~100mm程度であり、身体的健康状態が良好であり、この場合、マウスをPBS群(n=8、腫瘍内投与、1日おきに1回、合計4回)、陽性薬Sorafenib群(n=5、胃内投与、用量30mg/kg、1日1回、合計14日)、陽性薬Gemcitabine群(n=5、尾静脈注射、用量120mg/kg、4日1回、合計4回)rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群(n=5、腫瘍内投与、用量1.5×1010vp/匹/回、1日おきに1回、合計4回)という4群にランダムに分け、3日おきに腫瘍サイズを観察し測定した。
【0034】
HCC1806細胞ヌードマウス異種移植腫瘍モデル
実験ヌードマウスが5週齢になると、HCC1806腫瘍細胞を2×10個注射して腫瘍形成実験を行い、測定後、腫瘍サイズが80~100mm程度であり、身体的健康状態が良好であり、この場合、マウスをウイルス保存液(Vehicle)群(n=5、腫瘍内投与、1日おきに1回、共5回)、組換えインターフェロンrIFN(20ug/匹/回)群(n=5、腹腔注射、1日おきに1回、共5回)、空ベクター腫瘍溶解性ウイルスrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群(n=5、腫瘍内投与、用量1.5×1010vp/匹/回、1日おきに1回、共5回)、空ベクターと組換えインターフェロンの併用投与rIFN+rAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群(n=5、空のウイルスベクター腫瘍内投与、用量1.5×1010vp/匹/回、1日おきに1回、共5回、rIFN腹腔注射、1日おきに1回、共5回)、組換え腫瘍溶解性ウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群(n=5、腫瘍内投与、用量1.5×1010vp/匹/回、1日おきに1回、共5回)という5群をランダムに分け、腫瘍溶解性ウイルスの初回投与は、群分けの当日であるが、組換えインターフェロンの初回投与は、群分けしの翌日であり、腫瘍溶解性ウイルスの投与後、3日ごとに1回腫瘍サイズを観察し測定した。
HCC827細胞ヒト化免疫系マウス異種移植腫瘍モデル
このモデルの作成は、澎立生物医薬技術(上海)有限公司に委託された。澎立生物が作成したCD34ヒト化マウスは、この実験に使用され、実験開始時の動物は、特定の病原微生物がいない(SPF)レベルであり、約22~23週齢であり、ヒト化免疫系の構築に成功する(ヒトCD45+細胞の比率は、15%を超える。)ことを確認した後、各マウスの左側及び右側にそれぞれHCC827腫瘍細胞を2×10個注射して腫瘍形成実験を行い、測定後、腫瘍サイズが80~100mm程度であり、身体的健康状態が良好であり、この場合、マウスをVehicle群(ウイルス凍結保存液、n=6、腫瘍内投与、1日おきに1回、合計5回)、陽性薬Gemcitabine群(Gemcitabine(R)ゲムシタビン、n=6、尾静脉注射、用量120mg/kg、4日1回、合計4回)、陽性対照PD-1抗体群(礼進生物医薬科技(上海)有限公司から寄贈、n=6、腹腔注射、用量10mg/kg、毎週2回、合計6回)及びrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群(n=6、腫瘍内投与、用量1.5×1010vp/匹/回、1日おきに1回、合計5回)という4群にランダムに分け、両側に腫瘍が形成され、右側のみが投与された。腫瘍サイズを毎週2回観察し測定した。
PDXヌードマウス異種移植腫瘍モデル
このモデルの作成は、上海立迪生物技術股▼分▲有限公司に委託された。1例のトリプルネガティブ乳がん、1例の肺扁平上皮細胞がん及び1例の肺腺がんPDXin vivo移植腫瘍の腫瘍塊を約3mm×3mm×3mm(約50~90mg)の腫瘍組織に切出し、5週齢のヌードマウスに皮下接種した。接種後のマウスを観察し、腫瘍の成長をモニタリングし、担癌マウスの平均腫瘍体積が約150mmに達すると、群分け及び投与観察を行った。各PDXモデルは、いずれも2群にランダムに分け、各群あたり3匹マウスがある。1群は、Vehicle群(ウイルス凍結保存液、腫瘍内投与、1日おきに1回、合計5回)であり、もう1群は、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群(腫瘍内投与、用量1.5×1010vp/匹/回、1日おきに1回、合計5回)である。腫瘍サイズを毎週2回観察し測定した。
【0035】
三、パイロットスケールの細胞収率の測定
継代培養されたHEK-293細胞を取り、DMEM培地(10% FBS含有)を使用して17つのT175(コーニングから購入)培養フラスコに拡大培養し、各フラスコ内の細胞が均一に分布するように注意した。ウイルスの接種前に、1つのT175培養フラスコをランダムに取り、元の培地を捨て、トリプシン5mlを加えて消化した後、細胞を収集し、適切に希釈し、次にセルカウンターを使用して細胞濃度を測定することにより、この時点で1つのT175培養フラスコ中の細胞数を計算した。その後、試験する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを取りVP検出(HPLC法)を行い、ウイルスシード濃度を得た。2つの試験する腫瘍溶解性アデノウイルスは、それぞれ400:1、800:1のウイルス/細胞比で4つのT175培養フラスコに接種し、群分けに記号を付けて、合計16つのT175培養フラスコである。CO2インキュベーターで42h培養した後、各群は2つのT175培養フラスコを収穫し、54h培養した後、各群は残りの2つのT175培養フラスコを収穫した。収穫時に、まず、フラスコから元の培養液を上清サンプルとして収集して、次に、各フラスコにウイルス保存液5mlを加え、全ての細胞を細胞サンプルとして15ml遠心チューブにこすり落とした。室温から-80℃まで3回凍結融解を繰り返し、遠心分離して上清2mlを収集してVP検出に適用した。上清サンプル及び細胞サンプルのVP検出結果の合計から各群の総収量を求め、接種時の細胞数で割って各群の単細胞収量を得た。
【0036】
実施例1 コンセンサスインターフェロン遺伝子を運ぶ組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの構築
コンセンサスインターフェロン遺伝子を運ぶ組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの構造及び構築方法は、野生型アデノウイルスに基づいて、E1Aタンパク質コード遺伝子のE1Aタンパク質の122~129番目のアミノ酸をコードする24塩基対(364~387bp)を削除した。上記セグメントを削除した後、E1Aタンパク質は、Rbタンパク質に結合できないため、E2Fを放出できず、宿主細胞が細胞周期に入るのを促進でき、以上の改良されたウイルスは、Rbの異常な腫瘍細胞でのみ選択的に複製することができる。E1Aの野生型プロモーターの代わりに腫瘍特異的サービビン(Survivin)プロモーターを使用し、さらにアデノウイルスの安全性及び標的化を増強させた。コンセンサスインターフェロン(INFERGEN)タンパク質の発現カセット配列(それぞれSEQ ID NO: 2、3及び4で示される。)を上記アデノウイルスベクターに挿入することにより、最終的にコンセンサスインターフェロン遺伝子を運ぶ組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B(SEQ ID NO:2で示される発現カセットを含む。)、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B(SEQ ID NO:3で示される発現カセットを含む。)及びrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B(SEQ ID NO:4で示される発現カセットを含む。)を得た。
次いで、以上の3つのウイルスを寄託し、寄託機関は、中国典型培養物保蔵センター(中国武漢)であり、具体的な寄託情報は、以下の通りである。
1)寄託日:2018年12月12日、寄託名称:組換えヒト5型アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、寄託番号がCCTCC NO:V201871、
2)寄託日:2019年08月26日、寄託名称:組換えヒト5型アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、寄託番号がCCTCC NO:V201957、
3)寄託日:2019年08月26日、寄託名称:組換えヒト5型アデノウイルスrAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、寄託番号がCCTCC NO:V201958。
さらに、対照として、rIFN発現カセットを含まない空のウイルスベクターrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを構築した。上記ウイルス構築体の構造は、図1に示した。
【0037】
実施例2 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの標的タンパク質発現レベル及び標的タンパク質機能解析
実施例1で構築された異なるコンセンサスインターフェロン発現カセットを含む組換え腫瘍溶解性アデノウイルス外因性治療遺伝子の発現能力、即ち、コンセンサスインターフェロンrIFNタンパク質を発現する能力を比較し、それぞれ、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及びrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを取り、10 MOTでヒト乳がん細胞株MDA-MB-231に感染させ、24時間感染後に細胞を溶解してタンパク質サンプルを収集し、Western Blotting解析を行った。
結果は、図2に示し、全てのrIFNコード配列を運ぶ組換え腫瘍溶解性ウイルスは、いずれも標的タンパク質rIFNを発現できるが、空のウイルスベクターには、検出可能なタンパク質バンドがなく、これは、実施例1で構築された組換え腫瘍溶解性ウイルスが細胞内で正常に機能できることを示した。さらに、図2から、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bが外因性治療遺伝子rIFNを発現するレベルが最も高く、次にrAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bであり、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bが最低であることを示した。これは、標的タンパク質コード配列の違いが標的タンパク質の発現に影響を与えることを示した。
次いで、上記の発現するrIFNタンパク質が正常な機能を持っているかどうかを検出した。インターフェロンは、I型主要組織適合遺伝子複合体(MHC I、HLA-ABCとも呼ばれる。)の発現をアップレギュレートできるためである。従って、以下、MHC Iの発現量の変化を基準として、各組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの発現する外因性組換えインターフェロンrIFNの機能を比較した。
組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及びrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを取り、それぞれ1 MOTでヒト膀胱がん細胞株SW780に感染させ、24時間感染後に細胞を収集し、染色後にフローサイトメトリーで解析した。結果は、図3Aに示し、MHC Iの発現がPBS群及び空のウイルスベクターrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群ではほとんど検出できないが、全てのrIFNを発現できる組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、いずれもMHC Iの発現を有意にアップレギュレートすることができることが分かった。これは、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスによって発現されたrIFNが正常な活性を有することを示した。中でも、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及びrAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1BよりもMHC Iの発現をさらに有意にアップレギュレートすることができることを示した。ヒト乳がん細胞株MCF-7では、同様の結果(図3B)を得た。
【0038】
実施例3 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの腫瘍標的化の測定
実施例1に記載されているように、3つの組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、いずれも複製の標的化の改造を受けているため、腫瘍細胞でのみ複製した。腫瘍細胞を効果的に標的として複製するかどうかは、腫瘍溶解性ウイルスの実際の臨床治療効果と密接に関連した。本実施例は、乳がん細胞株MDA-MB-231及び正常乳腺細胞MCF-10Aの各組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの複製能力を測定した。
本実施例において、ウイルスの複製能力は、「比複製能」及び「複製標的係数」として測定した。「比複製能」は、腫瘍溶解性アデノウイルスが宿主細胞に一定期間感染した後に産生した子孫ウイルスの数と元に感染されたウイルスの数の比であり、宿主細胞中での腫瘍溶解性アデノウイルスの複製能力を定量的に説明するために使用され、「複製標的係数」は、腫瘍溶解性アデノウイルスが腫瘍細胞における比複製能を正常細胞における比複製能で割ったものであり、腫瘍への腫瘍溶解性アデノウイルスの標的化複製を定量的に説明するために使用された。
具体的には、各組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、いずれも1 MOIで宿主細胞に感染し、72時間感染後、子孫ウイルスを収集し、次に子孫ウイルスの力価を測定し、元の感染力価に対して比複製能を得た。さらに、複製標的係数の定義に従って、各ウイルスの腫瘍細胞での複製能および正常細胞での比率から複製標的係数を計算した。
結果は、表1及び図4に示すように、これらの3つの組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、いずれもがん細胞株MDA-MB-231でより多く複製することができ、比複製能がいずれも高く、ここで、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及びrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bよりわずかに高いが、正常細胞株MCF-10A中での比複製能がいずれも低く、中でも、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B的比複製能は、最も低くなる。以上の結果より、これらの3つの組換え腫瘍溶解性アデノウイルスが正常細胞中でより弱い複製能力を持っていることを示した。rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、乳がん細胞株MDA-MB-231中での比複製能がrAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及びrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bよりわずかに低いが、乳腺正常細胞MCF-10Aで顕著に低い比複製能を持つため、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは最も高い複製標的係数23.36を有し、他の2つの組換え腫瘍溶解性アデノウイルスよりもはるかに高い。つまり、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの腫瘍細胞標的化が最も良く、最も高い安全性を有した。
【表1】
【0039】
実施例4 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスによるがん細胞の特異的殺傷
本実施例は、実施例2で検証された中程度の複製標的係数を有する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを例として、本発明に係る組換え腫瘍溶解性アデノウイルスががん細胞及び通常の細胞に及ぼす影響を研究した。対照として、本実施例は、E1領域が削除された非複製型アデノウイルスをさらに構築し、同時に該ベクターにIFN-3発現カセットを挿入してIFN-3遺伝子を保有する非複製型組換えアデノウイルスAd-IFN-3を得た(図1を参照)。
まず、肝がん細胞株Huh-7に対するrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及びAd-IFN-3のそれぞれの殺傷効果を研究した。図5Aに示すように、肝がん細胞に対するrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの殺傷能力は、非複製型ウイルスAd-IFN-3よりも有意に強く、MOIが1である場合には、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、Huh-7細胞の半分以上を殺傷することができ、MOIが10である場合のAd-IFN-3よりも優れた。
次いで、結腸がん細胞株SW620において、複製型と非複製型腫瘍溶解性アデノウイルスの殺傷効果を比較した。図5Bに示すように、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、結腸がん細胞株SW620を殺傷する能力が非複製型ウイルスAd-IFN-3よりも有意に強い。MOIが0.1である場合には、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、SW620細胞の約半分を殺傷でき、MOIが10である場合のAd-IFN-3よりも優れた。
次に、本実施例は、さらに、腫瘍溶解性アデノウイルスでのインターフェロン配列の運びの有無時に、がん細胞への殺傷効果を比較し、図5Cに示すように、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、乳がん細胞株MDA-MB-231を殺傷する能力が空ベクターとしての対照ウイルスrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bよりも有意に強い。MOIが0.5である場合には、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、MDA-MB-231細胞の約半分を殺傷でき、MOIが5である場合のrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bと基本的に一致した。
肺がん細胞株HCC827において、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bと空ベクターとしての対照ウイルスrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの殺傷効果を比較した。図5Dに示すように、結果は、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、肺がん細胞株HCC827を殺傷する能力が空ベクターとしての対照ウイルスrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bよりも有意に強イことを示した。MOIが5である場合には、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、ほぼ全てのHCC827細胞を殺傷でき、MOIが20である場合のrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの効果よりも強いことを示した。
逆に、正常細胞ヒト肝線維芽細胞株HLFは、図5Eに示すように、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及びそれに対応する空ベクターとしての対照ウイルスは、いずれもHLF細胞を殺傷していないことを示した。
以上の結果は、本発明に係る組換え腫瘍溶解性アデノウイルスが腫瘍細胞を特異的に殺傷することができるが、正常細胞にはほとんど影響を及ぼさず、良好な安全性を有することを示した。
【0040】
実施例5 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスによるヌードマウス移植腫瘍の増殖への有意な阻害
本実施例は、SW620ヌードマウス異種移植腫瘍モデルでのrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの腫瘍阻害を測定し、結果は、図6Aに示し、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、SW620ヌードマウス移植腫瘍in vivoモデルにおいてIFN-3遺伝子を保有する非複製型アデノウイルスAd-IFN-3よりも有意に優れた薬効も示した。
さらに、MDA-MB-231ヌードマウス移植腫瘍のin vivoモデルでの組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの効果を測定し、図6B及びCに示すように、該組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、特に優れた薬効を示し、移植された腫瘍のほとんどすべてが排除され、腫瘍阻害率は96.4%と高かった。
次に、HCC827ヌードマウス移植腫瘍のin vivoモデルでの組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bの効果を測定し、図6D及びEに示すように、該腫瘍溶解性アデノウイルスは、特に優れた薬効を示し、陽性対照薬であるソラフェニブ及びゲムシタビンよりも有意に優れ、移植された腫瘍のすべてが排除され、腫瘍阻害率は100%に達した。
【0041】
実施例6 腫瘍の阻害効果に対する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの相乗効果
本実施例は、本発明に係る組換え腫瘍溶解性アデノウイルス(rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B)が、rIFNタンパク質のみ、空ベクターとしての腫瘍溶解性ウイルスのみ、及びrIFNタンパク質と空ベクター腫瘍溶解性ウイルスの併用よりも良い効果を得られることを検証し、本発明の構造を有する組換え腫瘍溶解性ウイルスが予想外の相乗効果を達成できることを示した。
具体的には、免疫細胞浸潤の少ないトリプルネガティブ乳がんHCC1806ヌードマウス移植腫瘍を選択してin vivo薬効試験を行った。各ヌードマウスに2×10個のHCC1806細胞を皮下注射して皮下腫瘍を形成し、腫瘍体積が約90mmに達したときランダムに群分けし、投与処置を開始した。投与スケジュールは、図7Aに示し、Vehicle対照及び各組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、群分けの当日に投与を開始し、用量1.5×1010vp/回/匹(50μL/回/匹)、1日おきに1回、合計5回腫瘍内注射した。組換えインターフェロンタンパク質は、群分けの翌日に投与を開始し、用量20μg/回/匹、1日おきに1回、合計5回腹腔内注射した。腫瘍サイズを3日おきに1回測定した。
結果は、図7Bに示し、陰性対照Vehicleよりも、組換えインターフェロンタンパク質の単独投与では明らかな抗腫瘍効果がなく、それと比較して、空ベクターとしての腫瘍溶解性アデノウイルスのみは、一定の抗腫瘍効果を生じることができるが、さらに組換えインターフェロンタンパク質と空ベクター腫瘍溶解性アデノウイルスとを併用すると、それらのいずれかの単独使用よりも強い抗腫瘍効果を得ることができる。しかしながら、本発明に係る組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、最適の抗腫瘍効果を有し、両方の併用と比較して統計的に有意な差を有した(**)。以上の結果より、本発明で構築されたrIFN治療遺伝子を保有する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスが相乗効果を生み出すことを示した。
【0042】
実施例7 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスによるin vivoでの腫瘍細胞への全体的な抑制効果
本実施例は、in vivoでの腫瘍細胞に対する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの阻害が注射部位に限らず、非投与部位で驚くべき腫瘍抑制効果を生み出すこともできることを検証した。
具体的には、トリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231ヌードマウス異種移植腫瘍モデルを選択するとともに、さらに天然IFN-βを保有する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-β-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを構築して対照とした。各ヌードマウスの左側及び右側に皮下腫瘍を形成し、両側に2×10個のMDA-MB-231細胞を注射し、左側の腫瘍体積が約90mmに成長すると、群分けし、投与処置を開始した。Vehicle対照及び各組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、いずれも群分けの当日に投与を開始し、左側の腫瘍内に用量1.5×1010vp/回/匹(50μL/回/匹)、1日おきに1回、合計5回注射された。右側は投与せず、左右の腫瘍を3日ごとに1回測定した。
投与側(左側)では、図8Aに示すように、実験終了までに、各インターフェロン遺伝子を保有する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスはいずれも移植腫瘍をほぼ完全に排除でき、空ベクター腫瘍溶解性アデノウイルスも同様に移植腫瘍増殖への有意な阻害効果を示した。さらに、表2に示すように、投与後11日目(即ち、図8A及び表2の19日目)、陰性対照Vehicle群、空ベクターとしての腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群及び組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群は、いずれも移植腫瘍が排除されていないが、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群及び天然IFN-βを運ぶ組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-β-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群は、いずれも40%の移植腫瘍が排除され、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群のみは全ての移植腫瘍がいずれも排除された。実験の終わりに、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群およびrAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B群のみは全ての移植腫瘍がいずれも排除された。以上より、これらの組換え腫瘍溶解性アデノウイルスでは、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bが最も効果が速く、且つ最適の腫瘍阻害効果を達成できることが分かった(rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを並べて、両方とも腫瘍細胞を完全に排除した。)。
【表2】
非投与側(右側)は、図8Bに示すように、空ベクターとしての腫瘍溶解性アデノウイルスには腫瘍抑制効果がまったくなく、天然IFN-βを保有する組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-β-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは一定の抗腫瘍効果がある。rAd-IFN-β-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bよりも、本発明で構築された3つの組換え腫瘍溶解性ウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-2-SP-E1A(Δ24bp)-E1B、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、有意に優れた抗腫瘍効果をもたらし、統計的に有意差(*)を示した。上記の3つの組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの間で薬効の有意差はない。
以上から、本発明に係る組換え腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞を全体的に殺傷でき、局所注射部位に限定されないが、がんの臨床的治療に計り知れない価値があり、例えば、腫瘍転移の治療に適用することが分かった。
【0043】
実施例8 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスによる腫瘍再発の効果的な予防
本発明に係る腫瘍溶解性アデノウイルスの治療効果の持続期間を調査するために、実施例5でのrAd-IFN-3-SP-E1A(△24bp)-E1Bの腫瘍内注射により移植腫瘍が完全に退行したHCC827ヌードマウス異種移植腫瘍モデルマウスを選択して2×10個のHCC827腫瘍細胞を単側に再度注射して腫瘍形成実験を行った。対照群では、同じ週齢の未処置のヌードマウスに2×10個のHCC827腫瘍細胞を単側注射して腫瘍形成実験を行い、腫瘍形成後に、対照群及び実験群では、いずれも何の処置も施されなく、腫瘍体積を週に2回測定した。図9に示すように、結果は、対照群よりも、実験群での移植腫瘍の成長が有意に抑制され、平均体積が100mm未満にしか成長できず、その後、移植腫瘍が完全排除されるまで退行し始めることを示した。以上の結果は、rAd-IFN-3-SP-E1A(△24bp)-E1Bで治療されたマウスに明らかな免疫記憶があり、後期に現れるのと同様の腫瘍細胞を素早く取り除くことができ、腫瘍の再発を防ぐ効果があることを示した。
【0044】
実施例9 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bによるヒト化マウスの移植腫瘍の増殖への有意な阻害
ヒト免疫系により近い環境下での組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの抗腫瘍効果を測定するために、本実施例は、ヒト化免疫系のマウス異種移植腫瘍モデルで本発明に係る組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの腫瘍阻害能力を測定した(本実施例は、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを測定対象として選択する。)。ヒトHCC827細胞をヒト化免疫系のマウスの背部両側に皮下注射し、移植腫瘍を形成するが、右側の腫瘍のみに組換え腫瘍溶解性アデノウイルスを投与し、左側に何の処置も施されなかった。
結果は、図10に示すように、被験群の右側(投与側)の移植腫瘍に組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを腫瘍内注射した後、体積が徐々に縮小し始め、実験終了時に、腫瘍阻害率が96.4%に達し、陽性対照薬としてのゲムシタビン及びPD-1抗体タンパク質よりも有意に強く(図10A及びB)ことが分かった。実施例7の結果と類似して、被験群の左側(非投与側)の移植腫瘍は、右側に腫瘍内投与された後、体積も徐々に縮小し始め、実験終了時に、腫瘍阻害率が92.5%に達し、同様に陽性対照薬としてのゲムシタビン及びPD-1抗体タンパク質よりも有意に強く(図10C及びD)、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、人体に近い複雑な環境下でも、優れた腫瘍殺傷効果を示し、局所注射部位に限定されず、計り知れない臨床応用価値があることを示した。
【0045】
実施例10 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1BによるPDXヌードマウス移植腫瘍の増殖への有意な阻害
臨床的状況により近い条件下(腫瘍には高異質性を有する。)での組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの抗腫瘍効果をさらに調査するために、本実施例は、臨床的患者に由来する腫瘍移植(PDX)ヌードマウス異種移植腫瘍モデルで本発明に係る組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの腫瘍阻害能力を測定し(本実施例は、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bを測定対象として選択した。)、合計で肺腺がんPDX、肺扁平上皮細胞がんPDX及びトリプルネガティブ乳がんPDXのそれぞれ1例を選択して測定した。
結果は、図11に示すように、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bが肺腺がんPDX(図11 A)、肺扁平上皮細胞がんPDX(図11 B)及びトリプルネガティブ乳がんPDX(図11 C)モデルのいずれにも優れた腫瘍殺傷効果を示し、実験終了時に、腫瘍阻害率がそれぞれ98.7%、97.0%及び97.5%であることが分かった。組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、非常に不均一な臨床由来腫瘍の治療に使用されても、依然として優れた腫瘍殺傷効果を示すことが明らかになる。
【0046】
実施例11 組換え腫瘍溶解性アデノウイルスのパイロットスケールでの収率の測定
組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、医薬品として、大規模に生産できるようにするために発酵を必要とした。パイロットスケールの細胞収率は、発酵によって生産できるかどうかを判断するための基準であるだけでなく、薬剤経済学の重要な指標でもある。したがって、本実施例はパイロットスケールレベルで組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの細胞収率を測定した。
細胞収率の測定で使用される工学的細胞株は、当分野で一般的に使用されるATCC由来のHEK-293細胞であり、被験ウイルスは、異なる接種比(VP/cell)で一定数量の工学的細胞株に接種され、その後、接種後42、54時間で細胞を溶解して子孫ウイルスを収集し、子孫ウイルスのVP数を測定し、元に接種された細胞数で割って細胞収率を得た。
結果は、表3に示すように、測定された組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1B及びrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bがいずれも工業規模の細胞収率を達成できることが分かった。ここで、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、接種後42時間の収率が最高値に達したが、接種後54時間の細胞収率が逆に減少し、これは、該組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの発酵速度がより速いことを示し、工業的生産に発酵をより短時間で完了できるため、コストを節約できることを意味し、それに対して、rAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bは、接種後54時間の細胞収率がピークに達し、発酵速度がrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bよりも遅い。しかも、rAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bが42時間目に到達した収率のピークがrAd-IFN-3-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bが56時間目に到達した収率のピークよりも高く、これは、ウイルスの生産効率も高いことを意味した。以上より、細胞収率は、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスrAd-IFN-1-SP-E1A(Δ24bp)-E1Bがさらに優位に占めることが分かった。
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022516129000001.app
【国際調査報告】