IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドンジン セミケム カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/075 20060101AFI20220216BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20220216BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220216BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220216BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G03F7/075 521
G03F7/023
G03F7/004 501
G03F7/004 506
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G09F9/30 348A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538380
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 KR2019018795
(87)【国際公開番号】W WO2020141854
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0174199
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】キム ドンミュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヒョクミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ テフン
(72)【発明者】
【氏名】シン キョンスン
(72)【発明者】
【氏名】イ ギソン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヒョンミン
(72)【発明者】
【氏名】パク アラム
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
5C094
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA06
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H225AF05P
2H225AM13P
2H225AM15P
2H225AM85P
2H225AN39P
2H225AN87P
2H225BA10P
2H225CA21
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
5C094AA33
5C094FB01
5C094FB15
5C094JA01
5C094JA20
(57)【要約】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、1種以上の反応性シランを重合して得られたシロキサン系重合体と、1種以上のヒドロキシフェニル基またはフェニル基を含む繰り返し単位を含むオレフィン系重合体と、1,2-キノンジアジド化合物と、溶媒と、を含む。本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、感度、耐熱変色性などの性能に優れているだけでなく、特に、著しい耐熱性により、これをディスプレイパネルに用いる場合、ひび割れ及び耐化学性が向上して優れたパネル信頼性を確保することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の下記一般式1で表される反応性シランを重合して得られたシロキサン系重合体と、
下記一般式2で表される繰り返し単位を含むか、あるいは、下記一般式2及び3で表される繰り返し単位を含むオレフィン系重合体と、
1,2-キノンジアジド化合物と、
溶媒と、
を含む、ポジ型感光性樹脂組成物:
[化学式1]
Si(R(R4-i …(1)
前記一般式1において、Rは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~15のアリール基であり、Rは、互いに独立して、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基またはアセトキシ基であり、iは、0~3の整数である。
[化学式2]
[化学式3]
【請求項2】
前記反応性シランは、1種以上の下記一般式1-1で表される反応性シランと、1種以上の下記一般式1-2で表される4官能反応性シランと、
を含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[化学式1-1]
(RSi(R4-n …(1-1)
[化学式1-2]
Si(R …(1-2)
前記一般式1-1及び一般式1-2において、Rは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~15のアリール基であり、Rは、互いに独立して、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシまたはアセトキシ基であり、前記Rは、互いに独立して、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基またはアセトキシ基のうちのいずれか一つであり、nは、1~3の自然数である。
【請求項3】
前記シロキサン系共重合体は、前記一般式1-1で表される反応性シラン及び前記一般式1-2で表される4官能反応性シランが2:8~8:2の重量比にて加水分解及び縮合重合されたものである、請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記オレフィン系重合体において、前記一般式2及び3で表される繰り返し単位は、99:1~60:40の比で提供される、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記シロキサン系重合体は、Si NMR分析結果において、(Q3+T3)の割合が全シリコンのうちの40%以上である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記シロキサン系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000~20,000であり、前記オレフィン系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000~30,000である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体は、95:5~10:90の重量比で提供される、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記1,2-キノンジアジド化合物は、下記一般式4で表されるフェノール化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸ハロゲン化合物とを反応させて得られたものである、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物:
[化学式4]
前記一般式4において、R~Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基またはヒドロキシ基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Rは、水素または炭素数1~4のアルキル基である。
【請求項9】
前記溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル及びジブチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールtert-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルへキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルへキシルエーテル、ジプロピレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルへキシルエーテル及びジプロピレングリコールメチルへキシルエーテルのうちの少なくとも一つ以上を含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体の総重量100重量部に対して、前記1,2-キノンジアジド化合物を5~50重量部含み、
前記溶媒は、固形分の含有量が10~50重量%となるように含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
ベンゾトリアジン系及びベンゾトリアゾール系のうちの少なくとも一つ以上のUV吸光剤をさらに含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記UV吸光剤は、前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体の総重量100重量部に対して、1~20重量部で提供される、請求項11に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いる、ディスプレイ素子のパターン形成方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化体を含む、ディスプレイ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体を含むことにより、感度、耐熱変色性、ガス放出、水分吸湿率など優れた性能を有するポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、液晶表示素子、OLED表示素子、集積回路素子には、層間に配置される配線の間を絶縁し、かつ、開口率を向上させるために感光性有機絶縁膜を用いている。液晶表示素子用層間絶縁膜としては、主としてアクリル系絶縁膜が適用されているが、耐熱性の低下によるガス放出(Outgassing)が引き続き問題となっている。なお、OLED表示素子用層間絶縁膜及び画素定義膜としてはポリイミドが適用されているが、感度、耐熱変色性、ガス放出、水分吸湿率などの課題が顕在している。近年には、OLED表示素子のパネル信頼性を確保するために、耐ひび割れ性及び耐化学性を有する材料へのニーズが高まりつつある。
【0003】
これに伴い、最近、シロキサン系及びオレフィン系の樹脂技術に基づいた材料への需要が大幅に増えつつあり、これに関する技術の開発が盛んに行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一課題は、感度、耐熱変色性、ガス放出、水分吸湿率などの性能に優れているだけでなく、特に、著しい耐熱性により、耐ひび割れ性及び耐化学性が向上して優れたパネル信頼性を確保することのできるポジ型感光性樹脂組成物を提供するところにある。
【0005】
本発明の他の課題は、前記ポジ型感光性樹脂組成物を用いたディスプレイ素子のパターン形成方法及びポジ型感光性樹脂組成物の硬化体を含むディスプレイ素子を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、1種以上の下記一般式1で表される反応性シランを重合して得られたシロキサン系重合体と、下記一般式2で表される繰り返し単位を含むか、あるいは、下記一般式2及び3で表される繰り返し単位を含むオレフィン系重合体と、1,2-キノンジアジド化合物と、溶媒と、を含むポジ型感光性樹脂組成物を提供する:
【0007】
[化学式1]
Si(R(R4-i …(1)
【0008】
前記一般式において、Rは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~15のアリール基であり、Rは、互いに独立して、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基またはアセトキシ基であり、iは、0~3の整数である。
【0009】
[化学式2]
【0010】
[化学式3]
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記反応性シランは、1種以上の下記一般式1-1で表される反応性シランと、1種以上の下記一般式1-2で表される4官能反応性シランと、を含んでいてもよい:
【0012】
[化学式1-1]
(RSi(R4-n …(1-1)
【0013】
[化学式1-2]
Si(R …(1-2)
【0014】
前記一般式1-1及び一般式1-2において、Rは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~15のアリール基であり、Rは、互いに独立して、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシまたはアセトキシ基であり、前記Rは、互いに独立して、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシまたはアセトキシ基のうちのいずれか一つであり、nは、1~3の自然数である。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記シロキサン系共重合体は、前記一般式1-1で表される反応性シラン及び前記一般式1-2で表される4官能反応性シランが2:8~8:2の重量比にて加水分解及び縮合重合されたものであってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記オレフィン系重合体において、前記一般式2及び3で表される繰り返し単位は、99:1~60:40の比にて与えられてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記シロキサン系重合体は、Si NMR分析結果において、(Q3+T3)の割合が全シリコンのうちの40%以上であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記シロキサン系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000~20,000であり、前記オレフィン系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000~30,000であってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体は、95:5~10:90の重量比にて与えられてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記1,2-キノンジアジド化合物は、下記一般式4で表されるフェノール化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸ハロゲン化合物とを反応させて得られたものであってもよい:
【0021】
[化学式4]
【0022】
前記一般式4において、R~Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基またはヒドロキシ基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Rは、水素または炭素数1~4のアルキル基である。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル及びジブチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールtert-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルへキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルへキシルエーテル、ジプロピレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルへキシルエーテル及びジプロピレングリコールメチルへキシルエーテルのうちの少なくとも一つ以上を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体の総重量100重量部に対して、前記1,2-キノンジアジド化合物を5~50重量部含み、前記溶媒は、固形分の含有量が10~50重量%となるように含んでいてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記ポジ型感光性樹脂組成物は、ベンゾトリアジン系及びベンゾトリアゾール系のうちの少なくとも一つ以上のUV吸光剤をさらに含んでいてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記UV吸光剤は、前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体の総重量100重量部に対して、1~20重量部にて与えられてもよい。
【0027】
本発明の他の態様は、前記ポジ型感光性樹脂組成物を用いるディスプレイ素子のパターン形成方法を提供する。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化体を含むディスプレイ素子を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物は、感度、耐熱変色性、ガス放出、水分吸湿率などの性能に優れているだけでなく、特に、著しい耐熱性により耐ひび割れ性及び耐化学性を向上することができる。
【0030】
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物は、ディスプレイ素子における層間絶縁膜、保護絶縁膜、ゲート絶縁膜だけでなく、平坦化膜、バンク、画素定義膜などにも好適に適用することができ、本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物を用いることにより、優れたパネル信頼性を確保することができる。
【0031】
本発明の効果は、前記の効果に何ら限定されることはなく、本発明の詳細な説明または特許請求の範囲に記載の発明の構成から推論可能なあらゆる効果を含むものと理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明について説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実現され得るので、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0033】
本発明に用いられる用語は、単に特定の実施形態について説明するために用いられるものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現には、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。本明細書における「含む」、「有する」などの用語は、明細書に記載されている特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらの組み合わせが存在することを示すためのものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除するものではないことを理解すべきである。
【0034】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0035】
本発明の一態様は、シロキサン系重合体と、オレフィン系重合体と、1,2-キノンジアジド化合物と、溶媒と、を含むポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0036】
本発明において用いられる前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体のハイブリッド組成物は、感度、解像度、接着力、透過度、耐熱変色性などの性能に優れているだけでなく、特に、著しい耐熱性によりガス放出を低減させ、低い水分吸湿率を保つことにより優れたパネル信頼性を確保できるバインダーとして機能することができる。
【0037】
本発明において用いられる前記シロキサン系重合体は、1種以上の下記一般式1で表される反応性シランを重合させることにより得られる:
【0038】
[化学式1]
Si(R(R4-i …(1)
【0039】
前記一般式において、Rは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~15のアリール基であり、Rは、互いに独立して、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基またはアセトキシ基であり、iは、0~3の整数である。
【0040】
より具体的には、前記反応性シランは、1種以上の下記一般式1-1で表される反応性シランと、1種以上の下記一般式1-2で表される4官能反応性シランと、を含んでいてもよい:
【0041】
[化学式1-1]
(RSi(R4-n …(1-1)
【0042】
[化学式1-2]
Si(R …(1-2)
【0043】
前記一般式1-1及び一般式1-2において、Rは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~15のアリール基であり、Rは、互いに独立して、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシまたはアセトキシ基であり、前記Rは、互いに独立して、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシまたはアセトキシ基のうちのいずれか一つであり、nは、1~3の自然数である。
【0044】
前記一般式1-1で表される反応性シランとしては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが挙げられ、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
前記一般式1-2で表される4官能反応性シランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラアセトキシシランなどが挙げられ、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
前記シロキサン系共重合体は、前記一般式1-1で表される反応性シラン及び前記一般式1-2で表される4官能反応性シランを2:8~8:2の重量比にて与えてこれを加水分解及び縮合重合させたものであってもよい。
【0047】
すなわち、前記一般式1-1で表される反応性シランは、シロキサン系重合体をなす総単量体に対して20~80重量部にて含まれていてもよい。前記一般式1-1で表される反応性シランの含有量が20重量部未満である場合には、フィルムの形成に際してひび割れが生じる虞があり、80重量部を超える場合には、重合に際して反応性が低下して分子量を制御し難くなる虞がある。
【0048】
また、前記一般式1-2で表される4官能反応性シランは、シロキサン系重合体をなす総単量体に対して80~20重量部にて含まれていてもよい。前記一般式1-2で表される4官能反応性シランの含有量が20重量部未満である場合には、感光性シロキサン樹脂組成物のパターン形成に際してアルカリ水溶液への溶解性が低下して不良を生じさせる虞があり、80重量部を超える場合には、重合に際して反応性が高いため分子量を制御し難く、生成されたシロキサンオリゴマーは、アルカリ水溶液への溶解性が高くなり過ぎてしまう虞がある。
【0049】
前記シロキサン系重合体は、i)前記一般式1-1で表される反応性シラン及びii)前記一般式1-2で表される4官能反応性シランとともに、iii)下記一般式5で表される反応性シランをさらに含んで、触媒の存在下で加水分解及び縮合重合を行い、未反応の単量体及び触媒を取り除いて得ることができる:
【0050】
[化学式5]
(RSi(R4-n …(5)
【0051】
前記一般式5において、Rは、それぞれ独立して、ビニル、3-アクリルオキシアルキル、3-メタクリルオキシアルキル、1-(p-ヒドロキシフェニル)アルキル、2-(p-ヒドロキシフェニル)アルキル、3-グリシドキシアルキル、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)アルキル、3-イソシアネートアルキルまたはオキセタンアルキルであり、Rは、炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシまたはアセトキシであり、nは、1~3の整数である。
【0052】
前記一般式5で表される反応性シランとしては、例えば、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、オキセタンエチルトリメトキシシランなどが挙げられ、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
前記一般式5で表される反応性シランまたはこれらの混合物を用いる場合、前記一般式5で表される反応性シランの含有量は、シロキサン系重合体をなす総単量体に対して5~50重量部であってもよい。一般式5で表される反応性シランの含有量が前記の範囲内である場合、接着性及び膜の硬化度がより一層良好になる。
【0054】
前記シロキサン系重合体は、前記のような反応性シランなどを水と酸もしくは塩基の触媒の存在下でバルク重合または溶液重合を行うことにより得られる。具体的に、前記シロキサン系重合体は、単量体として作用する前記反応性シランを加水分解及び縮合重合させ、未反応の単量体及び触媒を取り除く過程などを経て得ることができる。
【0055】
前記重合の際に使用可能な酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、シユウ酸、ギ酸、酢酸、シユウ酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸などが挙げられ、塩基触媒としては、例えば、アンモニア、有機アミン及びアルキルアンモニウムヒドロオキシド塩などが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して同時にまたは段階的に用いることができる。
【0056】
最終的に得られた前記シロキサン系重合体において、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000~20,000であってもよい。前記シロキサン系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が1,000未満である場合、ポジ型感光性樹脂組成物の評価に際して、現像工程の最中に残膜率が低下したり、耐熱性が低下し、水分吸湿率が低下するという不都合があり、20,000を超える場合には、ポジ型感光性樹脂組成物の感度が低下したり、パターンの現像性が低下するという不都合がある。
【0057】
前記シロキサン系重合体は、Si NMR分析結果において、(Q3+T3)の割合が全シリコンのうちの40%以上であってもよい。これは、前記シロキサン共重合体が梯子構造を含み、梯子構造を有するシロキサン系重合体の割合がSi(Silicon)NMR分析結果を基準として40%以上であることを意味する。前記シロキサン共重合体の梯子構造の割合が40%未満である場合、ストリッパー、エッチング液に対する耐化学性が低下する虞がある。
【0058】
本発明において用いられるオレフィン系重合体は、下記一般式2で表される繰り返し単位を含んでいてもよく、あるいは、下記一般式2及び3で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、前記オレフィン系重合体は、一般式2で表される繰り返し単位のみを含む単独重合体であってもよく、あるいは、一般式2で表される繰り返し単位及び一般式3で表される繰り返し単位を両方とも含む共重合体であってもよい:
【0059】
[化学式2]
【0060】
[化学式3]
【0061】
前記オレフィン系重合体において、前記一般式2で表される繰り返し単位及び一般式3で表される繰り返し単位は、99:1~60:40、好ましくは、99:1~70:30、より好ましくは、95:5~70:30の比にて与えられてもよい。前記比とは、両繰り返し単位のモル比のことをいい、例えば、2D-NMR(H-NMR、C-NMRなど)の分析結果から得られた結果を踏まえて確認可能である。
【0062】
前記オレフィン系重合体は、耐ひび割れ性及び耐化学性に優れており、これを用いた場合、ディスプレイにおいて優れたパネル信頼性を確保できるようにするバインダーとしての役割を果たす。
【0063】
前記オレフィン系重合体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000~30,000であってもよい。前記オレフィン系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が1,000未満である場合、ポジ型感光性樹脂組成物の評価に際して、現像工程の最中に残膜率が低下したり、耐熱性が低下するという不都合があり、30,000を超える場合には、ポジ型感光性樹脂組成物の感度が低下したり、パターンの現像性が低下するという不都合が生じることが懸念される。
【0064】
前記ポジ型感光性樹脂組成物において、前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体は、95:5~10:90、例えば、80:20~40:60の重量比にて与えられてもよい。前記オレフィン系重合体の含有量比が5未満である場合、ポジ型感光性樹脂組成物の評価に際して、耐化学性が低下したり、柔軟性が低下するという不都合があり、90を超える場合、現像速度が遅くなり、感度が低下するという不都合が生じることが懸念される。
【0065】
本発明において用いられる前記1,2-キノンジアジド化合物は、感光性化合物であって、下記一般式4で表されるフェノール化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸ハロゲン化合物とを反応させて得られたものであってもよい:
【0066】
[化学式4]
【0067】
前記一般式4において、R~Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基またはヒドロキシ基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Rは、水素または炭素数1~4のアルキル基である。
【0068】
前記1,2-キノンジアジド化合物は、フェノール化合物、ナフトキノンジアジドスルホン酸ハロゲンなどを弱い塩基の存在下で反応させて製造することができる。前記フェノール化合物とナフトキノンジアジドスルホン酸ハロゲン化合物で1,2-キノンジアジド化合物を合成する場合、そのエステル化度は、50~85%であってもよい。前記エステル化度が50%未満である場合には、残膜率が低下する虞があり、85%を超える場合には、保管安定性が低下する虞がある。
【0069】
前記1,2-キノンジアジド化合物は、1,2-キノンジアジド4-スルホン酸エステル、1,2-キノンジアジド5-スルホン酸エステル、1,2-キノンジアジド6-スルホン酸エステルなどを含むが、これに限定されるものではない。
【0070】
前記1,2-キノンジアジド化合物は、アミン及び/またはハロゲン系不純物の含有量がそれぞれ500ppm以下であってもよい。前記不純物の含有量が500ppmを超える場合には、保管安定性及びベーク散布が低下することが懸念される。
【0071】
前記1,2-キノンジアジド化合物は、前記シロキサン系重合体と前記オレフィン系重合体の総重量100重量部に対して、5~50重量部にて含まれていてもよい。前記1,2-キノンジアジド化合物の含有量が5重量部未満である場合には、露光部と非露光部との間の溶解度の差が小さくなってパターンを形成し難く、50重量部を超える場合には、短時間の間に光を照射する際に未反応の1,2-キノンジアジド化合物が多量残存し、現像液であるアルカリ水溶液への溶解度が低くなり過ぎて現像し難くなることが懸念される。
【0072】
本発明において用いられる前記溶媒は、ポジ型感光性樹脂組成物の平坦性を図り、また、コーティングムラを生じさせないようにして、均一なパターンプロフィール(pattern profile)を形成できるようにする。
【0073】
前記溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル及びジブチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールtert-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルへキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルへキシルエーテル、ジプロピレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルへキシルエーテル及びジプロピレングリコールメチルへキシルエーテルのうちの少なくとも一つ以上を含んでいてもよい。
【0074】
前記溶媒は、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分の含有量が10~50重量%となるように含まれていてもよい。前記固形分の含有量が10重量%未満である場合には、コーティング厚さが薄くなり過ぎて、コーティングの均一度が低下する虞があり、50重量%を超える場合には、コーティング厚さが厚くなり過ぎて、コーティングに際してコーティング装備の過負荷に繋がる虞がある。前記全組成物の固形分の含有量が10~25重量%である場合、スリットコータ(Slit Coater)において用いられ易く、25~50重量%である場合、スピンコータ(Spin Coater)やスリット&スピンコータ(Slit&Spin Coater)において用いられ易い。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、前記ポジ型感光性樹脂組成物は、ベンゾトリアジン系及びベンゾトリアゾール系のうちの少なくとも一つ以上のUV吸光剤をさらに含んでいてもよい。
【0076】
前記UV吸光剤は、露光の際に生じる紫外線などの波長により期待できなかった未パターン部への乱反射による重合反応を防ぐことができる。
【0077】
前記UV吸光剤は、前記シロキサン系重合体及びオレフィン系重合体の総重量100重量部に対して、1~20重量部にて与えられてもよい。前記UV吸光剤の含有量が1重量部未満である場合には、UV吸光効率が低下し、20重量部を超える場合には、全組成物の硬化度が低下し、低い感度により正常的な形状の実現が困難になる虞がある。本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、0.1~0.2μmのミリポアフィルタなどを用いてろ過した後に用いることが好ましい。
【0078】
本発明の他の態様は、前記ポジ型感光性樹脂組成物を用いるディスプレイ素子のパターン形成方法を提供する。
【0079】
前記パターン形成方法は、ディスプレイの製造工程において絶縁膜及びバンク、画素定義膜パターンを形成する方法における公知の方法により行われてもよい。
【0080】
具体的な一例を挙げると、前記ポジ型感光性樹脂組成物を用いてディスプレイ素子のパターンを形成する方法は、次のとおりである。
【0081】
まず、本発明の一実施形態に係るポジ型感光性樹脂組成物をスピンコート、スリット&スピンコート、スリットコート、ロールコートなどで基板の表面に塗布し、真空乾燥させた後、プレベークにより溶媒を取り除いて塗布膜を形成する。そのとき、前記プレベークは、100~120℃の温度で1~3分間行われてもよい。その後、予め用意されたパターンに応じて可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、エックス線などを前記形成された塗布膜に照射し、現像液で現像して不要な部分を取り除くことにより、所定のパターンを形成する。
【0082】
前記現像液としては、アルカリ水溶液を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミンなどの1級アミン類、ジエチルアミン、n-プロピルアミンなどの2級アミン類、トリメチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミンなどの3級アミン類、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類またはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩の水溶液などを用いることができる。そのとき、前記現像液は、アルカリ性化合物を0.1~5重量部の濃度に溶解させて使用し、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒及び界面活性剤を適量添加してもよい。
【0083】
前記のような現像液で現像した後、超純水で30~90秒間洗浄して不要な部分を取り除き且つ乾燥させてパターンを形成し、前記形成されたパターンに紫外線などの光を照射した後、パターンをオーブンなどの加熱装置により150~400℃の温度で30~90分間加熱処理して、最終パターンを得ることができる。
【0084】
本発明の他の態様は、前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化体を含むディスプレイ素子を提供する。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化体は、ディスプレイ素子における絶縁膜及び平坦化膜のうちの少なくとも一つ以上、より具体的は、ディスプレイ素子における層間絶縁膜、保護絶縁膜(Passivation)、ゲート絶縁膜、平坦化膜、バンク、画素定義膜などに好適に適用することができる。
【0086】
前記ポジ型感光性樹脂組成物は、感度、耐熱変色性、ガス放出、水分吸湿率などの性能に優れているだけでなく、特に、著しい耐熱性を有していることから、前記樹脂組成物の硬化体の耐ひび割れ性及び耐化学性が向上されて優れたパネル信頼性を確保することができる。
【0087】
以下、本発明の理解を助けるために、好適な実施例を示すが、これら実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例により限定されないことはいうまでもない。
【実施例
【0088】
製造例1.シロキサン系共重合体の製造
冷却管と撹拌器とを備えたフラスコに、反応性シランとして、それぞれフェニルトリエトキシシラン55重量部、テトラエトキシシラン20重量部、メチルトリエトキシシラン25重量部を入れ、溶媒としてメタノール100重量部を入れ、窒素置換した後、緩やかに攪拌した。前記反応溶液にさらに超純水50重量部と触媒としてのシユウ酸4重量部を投入してから、再び緩やかに攪拌した。1時間後に、前記反応容器を60℃まで昇温させて10時間の間にこの温度を保って重合させた後、常温まで冷却させて反応を終結した。0℃以下にさらに急冷して反応物の沈殿が起こるようにして、未反応の単量体及び触媒が含有されている上澄み液を取り除いた。
【0089】
未反応の単量体及び触媒が完全に取り除かれ切れるまでさらにメタノールを入れ、精製工程を繰り返し行った。精製工程後に、真空乾燥を行うことで、反応中に生成された残留アルコール系溶媒及び残留水分を取り除いて、シロキサン系共重合体を得た。
【0090】
GPC分析は、Watersの2695、PDA996装置で、KF-803、KF-802、KF-801カラムを用い、テトラヒドロフランを移動相とし、流量1ml/minの条件下で測定を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が3,000であるシロキサン系共重合体(A)を製造した。なお、シロキサン系共重合体(A)は、Si NMR分析のより、Q3+T3の割合が全体に対して50%であることを確認した。
【0091】
製造例2.フッ素基を含むシロキサン系共重合体の製造
前記合成例1において、メチルトリエトキシシランの代わりに、トリフルオロプロピルトリメトキシシランを用いたことを除いては、合成例1の方法と同様にして、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が3,000であるシロキサン系共重合体(B)を製造した。
【0092】
製造例3.1,2-キノンジアジド化合物の製造
下記一般式で表されるフェノール化合物1モル及び1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸[クロリド]2モルを縮合反応させて、エステル化度が67%である1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物を得た。
【0093】
【0094】
実施例1.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記製造例1において得たシロキサン系共重合体(A)95重量部、ポリヒドロキシスチレン(PHS)とスチレンとを9:1のモル比とし、換算重量平均分子量(Mw)が10,000であるオレフィン系共重合体5重量部及び前記製造例3において得た1,2-ナフトキノンジアジド化合物25重量部を入れ、固形分の含有量が25重量部となるようにプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに混合して溶解させた。次いで、0.1μmのミリポアフィルタでろ過して、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。
【0095】
実施例2.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例1において、シロキサン系共重合体90重量部とオレフィン系共重合体10重量部を用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0096】
実施例3.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例1において、シロキサン系共重合体80重量部とオレフィン系共重合体20重量部を用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0097】
実施例4.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例1において、シロキサン系共重合体70重量部とオレフィン系共重合体30重量部を用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0098】
実施例5.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例1において、シロキサン系共重合体50重量部とオレフィン系共重合体50重量部を用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0099】
実施例6.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例1において、シロキサン系共重合体30重量部とオレフィン系共重合体70重量部を用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0100】
実施例7.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例1において、シロキサン系共重合体10重量部とオレフィン系共重合体90重量部を用いたことを除いては、前記実施例1の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0101】
実施例8.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、換算重量平均分子量(Mw)が1,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0102】
実施例9.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、換算重量平均分子量(Mw)が5,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0103】
実施例10.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、換算重量平均分子量(Mw)が8,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0104】
実施例11.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、換算重量平均分子量(Mw)が15,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0105】
実施例12.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、換算重量平均分子量(Mw)が20,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0106】
実施例13.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、換算重量平均分子量(Mw)が30,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0107】
実施例14.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、ポリヒドロキシスチレン(PHS)とスチレンとが9.5:0.5のモル比にて重合され、かつ、換算重量平均分子量(Mw)が10,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0108】
実施例15.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、ポリヒドロキシスチレン(PHS)とスチレンとが8:2のモル比にて重合され、かつ、換算重量平均分子量(Mw)が10,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0109】
実施例16.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、ポリヒドロキシスチレン(PHS)とスチレンとが7:3のモル比にて重合され、かつ、換算重量平均分子量(Mw)が10,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0110】
実施例17.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、UV吸光剤として、3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパノン酸オクチルエステル10重量部をさらに用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0111】
実施例18.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例6において、UV吸光剤として、3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパノン酸オクチルエステル10重量部をさらに用いたことを除いては、前記実施例6の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0112】
実施例19.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例4において、UV吸光剤として、3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパノン酸オクチルエステル10重量部を用いたことを除いては、前記実施例4の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0113】
実施例20.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例3において、UV吸光剤として、3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパノン酸オクチルエステル10重量部を用いたことを除いては、前記実施例3の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0114】
実施例21.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例17において、UV吸光剤5重量部を用いたことを除いては、前記実施例17の方法と同様にして製造した。
【0115】
実施例22.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例17において、UV吸光剤20重量部を用いたことを除いては、前記実施例17の方法と同様にして製造した。
【0116】
実施例23.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例2において、シロキサン系共重合体97重量部とオレフィン系共重合体3重量部を用いたことを除いては、前記実施例2の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0117】
実施例24.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例2において、シロキサン系共重合体5重量部とオレフィン系共重合体95重量部を用いたことを除いては、前記実施例2の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0118】
実施例25.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、換算重量平均分子量(Mw)が500であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0119】
実施例26.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、換算重量平均分子量(Mw)が40,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0120】
実施例27.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、オレフィン系共重合体がポリヒドロキシスチレン(PHS)のみにより重合され、かつ、下記一般式で表される、換算重量平均分子量(Mw)が10,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0121】
実施例28.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、オレフィン系共重合体として、ポリヒドロキシスチレン(PHS)とスチレンとが6.5:4.5のモル比にて重合され、かつ、換算重量平均分子量(Mw)が10,000であるオレフィン系共重合体を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0122】
比較例1.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例5において、シロキサン系共重合体として、前記製造例2において製造したシロキサン系共重合体(B)を用いたことを除いては、前記実施例5の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0123】
比較例2.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例2において、シロキサン系共重合体100重量部を用い、かつ、オレフィン系共重合体は用いなかったことを除いては、前記実施例2の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0124】
比較例3.ポジ型感光性樹脂組成物の製造
前記実施例2において、シロキサン系共重合体は用いず、かつ、オレフィン系共重合体100重量部を用いたことを除いては、前記実施例2の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0125】
実験例1.ポジ型感光性樹脂組成物の物性の測定
前記実施例1~28及び比較例1~3に対して、感度、スカム(Scum)、解像度、耐熱変色性、耐熱性、ひび割れ、耐化学性、接着力などの物性を測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0126】
1.1.サンプルの準備
このために、ガラス(glass)基板の上に、スピンコータを用いて、前記実施例1~22及び比較例1~9において得たポジ型感光性樹脂組成物をそれぞれ塗布した後、真空乾燥させ、100℃で2分間ホットプレートの上においてプレベークして、膜厚が4.0μmである膜を形成した。
【0127】
1.2.感度
前記実験例1.1.において形成された膜に、所定のパターンマスク(pattern mask)を用いて、広帯域(Broadband)における強度が20mW/cm2である紫外線を5μmのコンタクトホール(Contact Hole)CD形成基準投与量(Dose)に見合う分だけ照射した後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38重量%の水溶液で23℃にて1分間現像し、超純水で1分間洗浄した。
【0128】
その後、前記において現像されたパターンに、広帯域における強度が20mW/cm2である紫外線を500mJ/cm2にて照射し、オーブンの中において230℃で60分間硬化させて、膜厚が3.5μmであり、かつ、コンタクトホールCDが5μmであるパターン膜を得た。
【0129】
1.3.スカム
前記実験例1.2.において感度を測定する際に形成されたパターンの内部をSEMにて観察して、ラインアンドスペース(Line&Space)及びコンタクトホールに残渣が存在するか否かを確認した。現像残渣が存在する場合にはX印を、現像残渣がパターンの境界部位にのみ存在する場合には△印を、現像残渣が存在しない場合には〇印を付けた。
【0130】
1.4.解像度
前記実験例1.2.において感度を測定する際に形成されたコンタクトホールのパターンの最小の大きさで測定した。
【0131】
1.5.耐熱変色性
前記実験例1.2.において感度を測定する際に形成された測定基板を300℃のオーブンにおいて60分間さらに硬化させて、硬化前後の400nmの透過率の変化により耐熱変色性を評価した。そのとき、変化率が3%未満である場合には◎印を、3~5%である場合には〇印を、5~10%である場合には△印を、10%を超える場合にはX印を付けた。
【0132】
1.6.耐熱性
耐熱性は、TGAを用いて測定した。前記実験例1.2.において感度を測定する際に形成されたパターン膜をサンプリングした後、TGAを用いて、常温から900℃まで1分当たりに10℃ずつ昇温させた。熱分解温度(Td)が450℃以上である場合には〇印を、熱分解温度(Td)が350~400℃である場合には△印を、熱分解温度(Td)が350℃未満である場合にはX印を付けた。
【0133】
1.7.ひび割れ
前記実験例1.2.における感度評価基板を目視で検査し、かつ、顕微鏡倍率の倍率を100倍にして観察して、ひび割れが観察される場合にはX印を、ひび割れがコーティングの周縁部においてのみ観察される場合には△印を、ひび割れが観察されない場合には〇印を付けた。
【0134】
1.8.耐化学性
前記実験例1.2.における感度評価基板を40℃でNMPに120秒間浸漬し、浸漬前後の硬化膜の膜厚の変化率を測定して、0~300Å未満である場合には〇印を、300~600Åである場合には△印を、600Å以上である場合にはX印を付けた。
【0135】
1.9.接着力
前記実験例1.2.における感度測定時の方法と同様にしてパターン膜を形成するが、10μmの線幅及びスリット幅が1:1である場合を基準として、ベーク温度に応じた接着力を比較した。そのとき、プレベーク90~100℃において接着力が確保される場合には〇印を、プレベーク105~115℃において接着力が確保される場合には△印を、プレベーク120℃以上において接着力が確保されるか、あるいは、そうではない場合にはX印を付けた。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
【表5】
【0141】
前記の表1から明らかなように、本発明に従い、実施例1~28において製造したポジ型感光性樹脂組成物は、解像度、感度、スカム、変色性、耐熱性、耐ひび割れ性などの特性に優れていた。
【0142】
それに対し、比較例1及び2のように、どちらか一方のレジンが用いられる場合に、特性が著しく低下することが分かり、シロキサンレジンにFが置換された場合であっても、特性が低下することが分かった。
【0143】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形できることを理解するであろう。よって、前述の実施形態はあくまで例示的なものであり、限定的なものではないことを理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素を分散して実施してもよく、同様に分散したものと説明されている構成要素を結合された形態に実施してもよい。
【0144】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態も本発明に含まれるものと解釈すべきである。
【国際調査報告】