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特表2022-516147歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質及びその応用
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  • 特表-歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質及びその応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質及びその応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20220216BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20220216BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20220216BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220216BHJP
   A61K 8/66 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/24
A61K8/55
A61Q11/00
A61K8/66
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538438
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2019124584
(87)【国際公開番号】W WO2020140706
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】201811650996.5
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521285403
【氏名又は名称】美釉(西安)生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】楊鵬
(72)【発明者】
【氏名】王▲どん▼
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB281
4C083AB282
4C083AB311
4C083AB312
4C083AC301
4C083AC311
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC861
4C083AC862
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD471
4C083AD472
4C083BB21
4C083BB41
4C083BB48
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE32
(57)【要約】
【課題】 歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質及びその応用。
【解決手段】 この鉱化物質は膜形成タンパク質(リゾチーム、ウシ血清アルブミン、インスリン、α-ラクトアルブミンなど)、アメロゲニンペプチド、水溶性リン酸塩、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩及びpH調整剤を含む。鉱化物質と超純水で希釈されたHEPESバッファ液を混合して嗽液を作ることができ、練り歯磨きを作るための補助的材料により補助されて練り歯磨き及び歯のエナメル質の脱灰を防止するための他の製品を作ることができる。膜形成タンパク質分子とトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩による相転移により、歯のエナメル質の表面にアメロゲニンペプチドを包む生物学的タンパク質二次元ナノフィルムが形成されるようにする。このフィルムは快速的に歯のエナメル質の表面に粘り付き、フィルムにより唾液に導かれてバイオミネラリゼーションを行い、歯のエナメル質の表面に新しく配向度の高いハイドロキシアパタイトが生み出すようにし、再びミネラリゼーションされたハイドロキシアパタイトが天然の歯のエナメル質と似るものであり、酸に腐食されて脱灰した歯のエナメル質を修復して虫歯の形成を予防する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の質量パーセントの成分を含むことを特徴とする歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質:
膜形成タンパク質5%~50%、アメロゲニンペプチド5%~40%、水溶性リン酸塩5%~30%、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩4%~20%、pH調整剤の1%~10%、
前記膜形成タンパク質はリゾチーム、ウシ血清アルブミン、インスリン及びα-ラクトアルブミンのいずれかまたは複数である。
【請求項2】
前記鉱化物質が下記の質量パーセントの成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質:
膜形成タンパク質20%~40%、アメロゲニンペプチド20%~30%、水溶性リン酸塩20%~30%、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩10%~15%、pH調整剤6%~8%。
【請求項3】
前記水溶性リン酸塩は二塩基性リン酸ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムのいずれかまたは2種であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質。
【請求項4】
前記pH調整剤は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムのいずれかまたは複数であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質。
【請求項5】
請求項1に記載の鉱化物質及び超純水で希釈されたHEPESバッファ液を含み、使用時に質量体積比1mg:4~15mLで均一に鉱化物質と超純水で希釈されたHEPESバッファ液を混合させて嗽液を取得することを特徴とする請求項1に記載の鉱化物質で調製した嗽液。
【請求項6】
前記嗽液はpH値が7~7.5であることを特徴とする請求項5に記載の嗽液。
【請求項7】
前記嗽液にサッカリンナトリウム及びソルボースも含有することを特徴とする請求項5に記載の嗽液。
【請求項8】
歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質に練り歯磨きを作るための補助的材料を入れ、鉱化物質と補助的材料との質量比が1:2~5であり、練り歯磨きの製造プロセスで練り歯磨きに製造されることを特徴とする請求項1に記載の鉱化物質で調製した練り歯磨き。
【請求項9】
前記補助的材料は摩擦剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、色素及び香料エッセンスのいずれかまたは複数であることを特徴とする請求項8に記載の練り歯磨き。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯のエナメル質の脱灰の技術分野、詳細にはリゾチーム、ウシ血清アルブミン、インスリン及びα-ラクトアルブミンなどの膜形成タンパク質及びアメロゲニンペプチドで調製した歯のエナメル質の脱灰を防止し、歯のエナメル質の再ミネラリゼーション機能を有する材料及びこの材料で調製した嗽液及び練り歯磨きなどに関わる。
【背景技術】
【0002】
歯のエナメル質は歯の最外層、歯の構成で最も硬い部分及び歯を保護する重要な部分であり、主な成分のハイドロキシアパタイトが口腔の正常なpH条件で極めて溶解し難いが、糖が様々な口腔細菌の働きで解糖を行う場合、生じた酸が歯に働き、最外層の歯のエナメル質の表面が脱灰して歯のエナメル質の中のエナメル柱の規則性の程度を壊して虫歯が形成する。これはハイドロキシアパタイトが酸性条件で溶解しやすいからである。唾液にあるカルシウム及びリン酸イオンが過飽和状態にあるので、唾液が脱灰作用を抵抗する歯のエナメル質を保護することに役に立つ上、酸が脱灰した歯に影響を与え、緩く再ミネラリゼーションをさせるようにすることもできる。普通の健康製品がフッ化物イオンにより再ミネラリゼーションの過程を強化して虫歯を予防する。
【0003】
自然界の様々な生理的機能では、タンパク質凝集体の自己組織化は特に普通である。例えば、歯のエナメルタンパク質は自己組織化でナノスフィアを形成できる。これらのナノスフィアシステムは組織化によりリボン構造を形成し、この自己組織化構成がテンプレートとしてとても重要に働き、ハイドロキシアパタイト結晶の成長により、歯のエナメル質のバイオミネラリゼーションを達成する。現在、自己組織化によるタンパク質二次元ナノフィルムは科学界で広く注目されている。特に相転移の過程に、疎水性粒子が自ら凝集して超分子凝集体を形成し、更に二次元ナノサイズのタンパク質フィルムを形成する。リゾチームは天然生体高分子であり、人間、鶏、牛、ネズミまたはラクダから抽出でき、コストが安く、取得しやすい。なお、リゾチームはアミノ酸の129個からなる単純塩基性グロブリンであり、化学的性質が安定しており、性質が変えられやすく、相転移行動が豊かである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質及びそれにより調製した嗽液または練り歯磨きを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明に用いられる歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質は、下記の質量パーセントの成分を含む。
【0006】
膜形成タンパク質を5%~50%、アメロゲニンペプチドを5%~40%、水溶性リン酸塩を5%~30%、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩を4%~20%、pH調整剤を1%~10%。
【0007】
本発明の歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質は望ましく下記の質量パーセントの成分を含む。
【0008】
膜形成タンパク質を20%~40%、アメロゲニンペプチドを20%~30%、水溶性リン酸塩を20%~30%、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩を10%~15%、pH調整剤を6%~8%。
【0009】
前記膜形成タンパク質はリゾチーム、ウシ血清アルブミン、インスリン及びα-ラクトアルブミンのいずれかまたは複数である。
【0010】
前記水溶性リン酸塩は二塩基性リン酸ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムのいずれかまたは2種である。
【0011】
前記pH調整剤は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムのいずれかまたは複数である。
【0012】
本発明による嗽液は、前記鉱化物質及び超純水で希釈されたHEPESバッファ液を含み、使用時に質量体積比1mg:4~15mLで均一に鉱化物質と超純水で希釈されたHEPESバッファ液を混合させて嗽液を取得する。
【0013】
前記嗽液はpH値が7~7.5である。
【0014】
前記嗽液にサッカリンナトリウム及びソルボースなど常に嗽液に用いられる他の添加物も含有する。
【0015】
本発明による練り歯磨きは、前記歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質に練り歯磨きを作るための補助的材料を入れたものであり、その中、鉱化物質と補助的材料との質量比が1:2~5であり、練り歯磨きの製造プロセスで練り歯磨きに製造される。
【0016】
前記練り歯磨きでは、前記補助的材料は摩擦剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、色素、香料エッセンスのいずれかまたは複数である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は膜形成タンパク質(リゾチーム、ウシ血清アルブミン、インスリン、α-ラクトアルブミンなど)の相転移により気体-液体、固体-液体界面に二次元ナノサイズタンパク質フィルムを形成する。このフィルムは表面に官能基がたくさんあり、フィルム表面の電位が正であり、静電気力で唾液中の過飽和カルシウム及びリン酸イオンをフィルムの表面に吸着し、ナノフィルムされたアメロゲニンペプチド及びリン酸塩により酸に腐食された歯のエナメル質の表面に対して再ミネラリゼーションを行い、再ミネラリゼーションのコーティングを生成して虫歯の形成を予防し、アメロゲニンペプチドで表面結晶のハイドロキシアパタイトの配向を調整し、ミネラリゼーションにより天然の歯のエナメル質と似た再ミネラリゼーションのコーティングを形成できる。
【0018】
本発明による嗽液は、膜形成タンパク質分子とトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩の相転移反応により生成したナノ粒子により、表面誘導の自己組織化で、酸に腐食された歯のエナメル質界面に、厚さが30~50nm程度にあるタンパク質フィルムを形成する。このフィルムは表面粗さが小さく、透明度が高く、接着力が良好であり、フッ化物イオンと同じである歯のエナメル質の表面再ミネラリゼーションを強化する新しいハイドロキシアパタイトの機能があり、主な成分がタンパク質及び塩であり、効果的に酸の腐食による歯のエナメル質の脱灰を防止し、虫歯の形成を予防する。本発明は、歯のエナメル質の表面の再ミネラリゼーション効果を大事にする。虫歯が最初に歯のエナメル質の表面の脱灰質に表現するので、表面に対して再ミネラリゼーションを行うと、歯に永久的構成損傷が生じるまで歯の腐食を阻止、修復でき、決まった期間にこの嗽液を利用すると、酸に腐食されて脱灰した歯のエナメル質の表面が再ミネラリゼーションでき、または正常な歯がミネラリゼーションして虫歯の形成を予防し、歯質の過敏を抑える事ができる。嗽液と歯を30秒~50秒程度に接触させ、溶液が口腔に入ってからそのpH値が変わらなく、うがいをする期間に、歯のエナメル質の表面にアメロゲニンペプチド及びリン酸塩を吸着したタンパク質相転移二次元ナノフィルムを形成し、歯表面に唾液で再ミネラリゼーションが発生できる。
【0019】
本発明による練り歯磨きは、水に浸してから歯のエナメル質の表面と接触して耐脱灰を生成し、再びミネラリゼーションされたタンパク質層を誘導する。歯を磨く過程に、歯と接触する練り歯磨きの成分の中のタンパク質及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩は反応して、タンパク質が歯のエナメル質の表面で相転移が発生し、歯の表面にアメロゲニンペプチドを包む生物学的タンパク質二次元ナノフィルムが生成するようにする。
【0020】
本発明による鉱化物質で調製した嗽液及び練り歯磨きは、主な成分がタンパク質であり、水溶性リン酸塩及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩の含量が少ないので、健康製品に用いられて人体に危害もない。本発明による鉱化物質は、歯のエナメル質の脱灰を防止するための他の製品の調製にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例8で調製した歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液でうがいをしてから歯のエナメル質の表面に形成した生物学的タンパク質二次元ナノフィルムの原子間力図。
図2】決まった期間に実施例8で調製した歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液を利用してから、人工唾液でミネラリゼーションされてから歯のエナメル質の表面に形成した再ミネラリゼーションコーティングの走査型電子顕微鏡写真。
図3】決まった期間に実施例8で調製した歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液を利用してから、人工唾液でミネラリゼーションされてから歯のエナメル質の表面に形成した再ミネラリゼーションコーティングに対するエネルギースペクトル分析。
図4】決まった期間に実施例8で調製した歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液を利用してから、人工唾液でミネラリゼーションされてから歯のエナメル質の表面に形成した再ミネラリゼーションコーティングの横断面の走査型電子顕微鏡写真。
図5】実施例8で調製した歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液を利用した細胞毒性試験の結果を示す図。
図6】実施例8で調製した歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液を利用した動物口腔の試験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
リゾチーム20mg、アメロゲニンペプチド10mg、二塩基性リン酸ナトリウム10mg、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩5.2mg及び重炭酸ナトリウム3.5mgを均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質を取得する。
【実施例2】
【0023】
リゾチーム100mg、アメロゲニンペプチド50mg、二塩基性リン酸ナトリウム40mg、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩10.5mg及び重炭酸ナトリウム4.5mgを均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質を取得する。
【実施例3】
【0024】
リゾチーム200mg、アメロゲニンペプチド100mg、二塩基性リン酸ナトリウム80mg、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩18.3mg及び重炭酸ナトリウム5.1mgを均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質を取得する。
【実施例4】
【0025】
リゾチーム20mg、アメロゲニンペプチド30mg、二塩基性リン酸ナトリウム30mg、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩15mg及び重炭酸ナトリウム5mgを均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質を取得する。
【実施例5】
【0026】
リゾチーム30mg、アメロゲニンペプチド20mg、二塩基性リン酸ナトリウム20mg及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩20mg及び重炭酸ナトリウム10mgを均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質を取得する。
【実施例6】
【0027】
リゾチーム5mg、アメロゲニンペプチド40mg、二塩基性リン酸ナトリウム30mg、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩20mg及び重炭酸ナトリウム5mgを均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質を取得する。
【実施例7】
【0028】
リゾチーム50mg、アメロゲニンペプチド5mg、二塩基性リン酸ナトリウム15mg、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩20mg及び重炭酸ナトリウム10mgを均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための鉱化物質を取得する。
【実施例8】
【0029】
本実施例の嗽液は、実施例1で取得した鉱化物質及び超純水で3倍に希釈された HEPESバッファ液からなり、使用時に鉱化物質2mgを超純水10mLで3倍に希釈されたHEPESバッファ液に入れ、更にサッカリンナトリウム8mg及びソルボース2mgを入れ、均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液を取得する。
【実施例9】
【0030】
本実施例の嗽液は、実施例2で取得した鉱化物質及び超純水で3倍に希釈されたHEPESバッファ液からなり、使用時に鉱化物質2mgを超純水20mLで3倍に希釈されたHEPESバッファ液に入れ、更にサッカリンナトリウム12mg及びソルボース4mgを入れ、均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液を取得する。
【実施例10】
【0031】
本実施例の嗽液は、実施例3で取得した鉱化物質及び超純水で3倍に希釈された HEPESバッファ液からなり、使用時に鉱化物質2mgを超純水30mLで3倍に希釈されたHEPESバッファ液に入れ、更にサッカリンナトリウム14.8mg及びソルボース6.3mgを入れ、均一に混合して歯のエナメル質の脱灰に耐えるための嗽液を取得する。
【0032】
本発明では、ウシ血清アルブミン、インスリン及びα-ラクトホワイトエッグで前記実施例1~9のリゾチームを替えることもでき、このソリューションも本発明の請求範囲にある。
【0033】
本発明の効果を証明するために、発明者は下記のとおりに実施例4で取得した嗽液に関する性能試験を行った。
【0034】
仕上げられた歯のエナメル質切片を酸で腐食してから嗽液に入れ、1分間浸漬し、うがいをする過程を真似る。図1によると、1分間経ってから歯のエナメル質の表面に厚さ30~50nmの生物学的タンパク質二次元ナノフィルムが生成された。次に、表面がフィルムで覆われた歯のエナメル質を人工唾液に入れ、37℃でバイオミネラリゼーションを行い、毎日1回、人工唾液を交換する。ミネラリゼーションの過程で、毎日歯のエナメル質を人工唾液から取り出し、超純水で洗浄し、前記嗽液に1分間浸漬してから人工唾液に移し、毎日2回この過程を繰り返す。2週間経ってから走査型電子顕微鏡で歯のエナメル質の再ミネラリゼーションコーティングの平面形態を観察し、スペクトラムアナライザーで再ミネラリゼーションコーティングに対する表面走査を行い、再ミネラリゼーションコーティングの元素を分析したところ、図2、3に示すとおりの結果であった。歯のエナメル質を粉砕するまで押し、走査型電子顕微鏡で歯のエナメル質の再ミネラリゼーションコーティングの断面形状を調べたところ、図4に示すとおりの結果であった。
【0035】
図2~4によると、生物学的タンパク質二次元ナノフィルムは、元の位置に成長する方法で歯のエナメル質で成長し、フィルムに覆われた歯のエナメル質は人工唾液でバイオミネラリゼーションを行うことができ、良好な配向のハイドロキシアパタイトを生成することができ、カルシウムとリンの比率も天然歯のエナメル質のカルシウムとリンの比率と一致し、酸に腐食された歯のエナメル質の表面に新しいハイドロキシアパタイトを再ミネラリゼーションして、歯のエナメル質の脱灰を防止し、虫歯を予防する。
【0036】
この嗽液のすべての成分で主な成分がタンパク質であるので、嗽液の中のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TECP)の濃度だけを制御し、MTT法で細胞の毒性を測定し、490nmの波長でマイクロプレートリーダーにより吸光度を測定する。吸光度は細胞の生存率に近く、細胞の生存率により細胞の毒性を判断し、細胞の生存率が高ければ高いほど細胞の毒性が低くなる。
【0037】
細胞の生存率=100%×([A]test / [A]control
【0038】
式中、[A]test:試験されるリゾチーム(ペプチド)膜(即ち、異なるトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩濃度で形成した膜)の吸光度、[A]control:リゾチーム(ペプチド)膜がない(即ち、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩がなければ、膜を形成できない)場合の吸光度。
【0039】
各濃度のサンプルを各々3回測定し、結果は図5に示すとおりである。図によると、0.5mmol/L~100mmol/LにあるTCEPで、細胞の相対的活性は大体同じであるが、小さな濃度または大きな濃度で、細胞活性は80%以上あるので、細胞の小さい毒性を示す。
【0040】
前記の表面がフィルムに覆われた歯のエナメル質をネズミの歯に締付け、フィルムに覆われた歯のエナメル質がネズミの口腔でバイオミネラリゼーションを行うようにする。30日後に歯のエナメル質の表面の形を調べたところ、結果が図6に示すとおりとなった。図によると、ネズミの歯に締付けられたフィルムに覆われた歯のエナメル質は、ネズミの口腔で配向度の高い再生ハイドロキシアパタイトをミネラリゼーションし出したので、タンパク質膜が体内でミネラリゼーションの作用を示しており、人体の口腔に応用できることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】