(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】頭頸部のがんを処置するための化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220216BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538494
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019086861
(87)【国際公開番号】W WO2020136147
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521285263
【氏名又は名称】インネート・ファルマ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ベナック
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・シャントゥー
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・ペロ
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・ロッシ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ヴィオー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、がん、頭頸部のがんを処置するためのILT-2標的薬剤の使用に関する。本発明は、がんを処置するためのILT-2標的薬剤と共に使用される有利な併用レジメンも提示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HNSCCを有するヒト個人の処置で使用するための、ヒトILT-2ポリペプチドに結合し、且つILT-2の阻害活性を中和する抗体であって、前記処置がセツキシマブと併用される抗体。
【請求項2】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、Fcドメインを欠く、又はFcドメインとFcγ受容体との間の結合性を低下させるように改変されているヒトFcドメインを有する、請求項1に記載の使用するための抗体。
【請求項3】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、HLAクラスI分子に対する可溶性ヒトILT-6タンパク質の結合を阻害しない、請求項1又は2に記載の使用するための抗体。
【請求項4】
HNSCCを有するヒト個人の処置で使用するための、ヒトILT-2ポリペプチドに結合し、且つILT-2の阻害活性を中和する抗体であって、FcドメインとFcγ受容体との間の結合性を低下させるように改変されているFcドメインを有する抗体。
【請求項5】
前記処置が、ヒトEGFRポリペプチドと結合し、且つEGFR発現腫瘍細胞を標的とするADCCを媒介する抗体と併用される、請求項4に記載の使用するための抗体。
【請求項6】
前記処置が、ヒトEGFRポリペプチドと結合し、且つヒトCD16Aポリペプチドと結合するFcドメインを含む抗体と併用される、請求項4に記載の使用するための抗体。
【請求項7】
ヒトEGFRポリペプチドと結合する前記抗体が、ヒトIgG1アイソタイプのFcドメインを含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
HNSCCを有するヒト個人の処置で使用するための、ヒトILT-2ポリペプチドに結合し、且つILT-2の阻害活性を中和する抗体であって、前記処置がセツキシマブと併用される抗体。
【請求項9】
個人が、HLA-G及び/又はHLA-A2陰性がんを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項10】
処置が、個人がHLA-G及び/又はHLA-A2陽性がんを有するか判定する事前の工程を必要としない、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項11】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、ヒトIgG1アイソタイプの抗体と比較して、ヒトCD16A、CD16B、CD32A、CD32B、及びCD64と結合する能力が低下している、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項12】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、配列番号1のILT2ポリペプチドに対する結合について、抗体12D12、3H5、27H5、26D8、27C10、若しくは18E1の重鎖及び軽鎖CDR、又は重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項13】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、Kabat残基N297においてN連結型グリコシル化を含み、且つKabat残基234及び235において、任意選択で、更に、Kabat残基331において、任意選択で、Kabat残基234、235、237において、並びにKabat残基330及び/又は331においてアミノ酸置換を含む改変されたヒトIgG1 Fcドメインを含み、任意選択で、Fcドメインが、L234A/L235E/P331S置換、L234F/L235E/P331S置換、L234A/L235E/G237A/P331S置換、又はL234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項14】
ILT2を発現するNK細胞がヒトドナーから精製され、及びその表面においてHLA-Gポリペプチドを発現する標的細胞と共にインキュベートされる4時間in vitro
51Cr放出細胞傷害性アッセイにおいて、ILT-2に結合する前記抗体が、NK細胞の細胞傷害性を強化する能力を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項15】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、HLAクラスI分子に対する可溶性ヒトILT-6タンパク質の結合を阻害しない、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項16】
ILT-2に結合する抗体が、配列番号46のアミノ酸配列を有する膜係留型単一ドメインILT2タンパク質と結合するが、しかし配列番号47、48、又は49のアミノ酸配列を有する膜係留型ドメインILT2タンパク質のいずれとも結合しない、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項17】
ILT-2に結合する抗体が、配列番号49のアミノ酸配列を有する膜係留型単一ドメインILT2タンパク質と結合するが、しかし配列番号46、47、又は48のアミノ酸配列を有する膜係留型ドメインILT2タンパク質のいずれとも結合しない、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項18】
(i)配列番号55に示す配列により定義されるILT2ポリペプチドのアミノ酸残基のセグメント内のエピトープ、又は(ii)配列番号56に示す配列により定義されるILT2ポリペプチドのアミノ酸残基のセグメント内のエピトープに結合する、請求項1から17のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項19】
突然変異E34A、R36A、Y76I、A82S、R84L (配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が、いずれの場合にも、抗体と配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較して低下している、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項20】
突然変異G29S、Q30L、Q33A、T32A、D80H(配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が、いずれの場合にも、抗体と配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較して低下している、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項21】
突然変異F299I、Y300R、D301A、W328G、Q378A、K381N (配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が、いずれの場合にも、抗体と配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較して低下している、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項22】
突然変異W328G、Q330H、R347A、T349A、Y350S、Y355A (配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が、いずれの場合にも、抗体と配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較して低下している、請求項1から18又は21のいずれか一項、に記載の使用するための抗体。
【請求項23】
更に、突然変異D341A、D342S、W344L、R345A、R347A (配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が、いずれの場合にも、抗体と配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較して低下している、請求項1から18、又は21若しくは22のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項24】
ILT-2に結合する抗体が、EGFRポリペプチドに結合する抗体と併用される場合、その表面においてHLA-G又はHLA-A2ポリペプチドを欠いているHNSCC標的細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を増加させる能力を有し、前記細胞傷害性が、ILT2を発現するNK細胞がヒトドナーから精製され、及び標的細胞と共にインキュベートされる4時間in vitro
51Cr放出細胞傷害性アッセイにおいて決定した場合、EGFRポリペプチドに結合する抗体を単独で用いた場合に観測される細胞傷害性と比較して、少なくとも50%、任意選択で70%、80%、90%、又は100%増加する、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項25】
標的細胞が、HN、FADU、又はCal27細胞である、請求項24に記載の使用するための抗体。
【請求項26】
ILT-2に結合する抗体が、抗体2H2B、48F12、3F5、12D12、3H5、27H5、26D8、27C10、又は18E1の重鎖及び軽鎖CDR1、2、及び3を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項27】
ILT-2に結合する抗体が、抗体2H2B、48F12、3F5、12D12、26D8、若しくは18E1、又はその機能保存的バリアントである、請求項1から26のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項28】
ILT-2に結合する抗体、及びEGFRに結合する抗体が、個別投与用として製剤化され、及び同時に又は連続して投与される、請求項1から27のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項29】
処置が、PD-1の阻害活性を中和する抗体と更に併用される、請求項1から28のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項30】
ILT-2に結合する抗体とEGFRに結合する抗体とを含む医薬組成物であって、ILT-2に結合する抗体が、FcドメインとFcγ受容体との間の結合性を低下させるように改変されているFcドメインを有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、あらゆる図面を含め、参考としてそのまま本明細書に組み込まれている、2018年12月26日出願の米国仮特許出願第62/784,862号の利益を主張するものである。
【0002】
配列リストの参照
本出願は、電子フォーマットによる配列リストと共に出願される。2019年12月20日付け作成の「LILRB1-HN_ST25」と題するファイル(サイズ184KB)として、配列リストが提供される。配列リストの電子フォーマットでの情報は、参考として本明細書にそのまま組み込まれている。
【0003】
本発明は、がん、頭頸部のがんを処置するためのILT-2標的薬剤の使用に関する。本発明は、がんを処置するためのILT-2標的薬剤と共に使用される有利な併用レジメンも提示する。
【背景技術】
【0004】
Ig様転写物(ILT)は、リンパ球阻害受容体、又はCD85に対応する白血球免疫グロブリン(Ig)様受容体(LIR/LILR)とも呼ばれる。この、タンパク質のファミリーは、19q13.4染色体に位置する10を超える遺伝子によりコードされ、また活性化メンバー及び阻害性メンバーの両方を含む。阻害性LILRは、その長い細胞質尾部を通じてシグナルを伝達し、リン酸化の際に、様々な細胞内シグナル経路の阻害を媒介するSHP-1及びSHP-2ホスファターゼを動員する2つ~4つの免疫受容体チロシンベース阻害ドメイン(ITIM)を含有する。ILT-2は、クラスI MHC抗原に対する受容体であり、また広範囲のHLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-G対立遺伝子を認識する。ILT-2 (LILRB1)は、H301/UL18(ヒトサイトメガロウイルスのクラスI MHCホモログ)に対する受容体でもある。リガンドが結合すると阻害シグナルを引き起こし、そして免疫応答を下方制御する。
【0005】
樹状細胞(DC)上での発現に加えて、ILT2タンパク質は、NK細胞において発現されることも報告されている。NK細胞は、骨髄においてリンパ球前駆細胞から発達する単核球であり、そして形態学的特徴及び生物学的特性には、クラスター決定因子(CD)であるCD16、CD56、及び/又はCD57の発現;細胞表面上におけるα/β又はγ/δ TCR複合体の不在;「自己」主要組織適合複合体(MHC)/ヒト白血球抗原(HLA)タンパク質を発現できない標的細胞に結合し及びそれを殺傷する能力;並びにNK受容体を活性化させるためのリガンドを発現する腫瘍細胞又はその他の罹患細胞を殺傷する能力が一般的に含まれる。NK細胞は、事前に免疫化又は活性化を必要とすることなく、数種類の腫瘍細胞系と結合し及びそれを殺傷するその能力により特徴づけられる。NK細胞は、免疫系に対して制御効果を発揮する可溶性タンパク質及びサイトカインも放出することができ、そして複数ラウンドの細胞分裂を行うことができ、また親細胞と類似した生物学的特性を有する娘細胞を生成することもできる。正常な健常細胞は、NK細胞による溶解から保護されている。
【0006】
その生物学的特性に基づき、NK細胞の調節に立脚する様々な治療戦略が当技術分野において提案されている。しかしながら、NK細胞活性は、刺激性シグナルと阻害性シグナルの両方を伴う複雑な機構により制御される。手短に述べると、NK細胞の溶菌活性は、標的細胞上のリガンドと相互作用した際に、正又は負の細胞内シグナルを伝達する様々な細胞表面受容体により制御される。これらの受容体により伝えられた正のシグナルと負のシグナルとの間のバランスが、NK細胞による標的細胞の溶解(殺傷)の成否を決定する。NK細胞の刺激性シグナルは、天然の細胞傷害性受容体(NCR)、例えばNKp30、NKp44、及びNKp46等;並びにNKG2C受容体、NKG2D受容体、特定の活性化キラーIg様受容体(KIR)、及びその他の活性化NK受容体により媒介され得る(Lanier、Annual Review of Immunology 2005; 23巻: 225~74頁)。
【0007】
その生物学的特性に基づき、ILTファミリーメンバーの調節、特に樹状細胞における、ILTによって媒介される寛容を緩和するためのILTの阻害剤を含むワクチン接種戦略に立脚する様々な戦略が当技術分野において提案されている。HLA-Gを免疫細胞、例えばNK細胞等の免疫細胞の阻害と関連付ける報告を考慮すれば、ILTファミリー及びそのリガンドも興味深い。Wanら(Cell Physiol Biochem 2017; 44巻: 1828~1841頁)は、HLA-G(ILT2、ILT4、及びKIR2DL4を含むいくつかの免疫受容体の天然リガンド)は、細胞表面発現型の受容体に結合することにより、多くの免疫細胞の機能を阻害し得ることを報告した。
【0008】
HLAクラスI分子とILTタンパク質との相互作用は複雑である。HLA-Gは、ILT2だけでなく、ILT4及びその他の受容体(例えば、KIRファミリーの受容体)とも結合する。更に、HLA-Gには多くのアイソフォームが存在し、β-2-ミクログロブリンと会合する形態HLA-G1(及びその可溶性の形態/分泌された形態HLA-G7)のみがILT2と結合する一方、すべての形態HLA-G1、-G2、-G3、-G4、-G5、-G6、及び-G7がILT4と会合する。同様に、ILT2及びILT4はHLA-Gだけでなく、その他のMHCクラスI分子とも結合する。ILT2及びILT4は、MHC分子のα3ドメイン及びβ2mサブユニットを認識するのに、その2つの膜遠位ドメイン(D1及びD2) (いずれも古典的及び非古典的MHCクラスI分子において保存されている)を使用する。Kirwan及びBurshtyn (J Immunol 2005; 175巻: 5006~5015頁)は、ILT2は、ILT2を過剰発現させたNK細胞系に対して阻害的役割を有することが判明したが、正常な(初代) NK細胞上のILT2の量は、ほとんどのMHC-I対立遺伝子の直接認識を可能にする閾値未満に維持されることを報告した。したがって、著者らは、正常なNK細胞においては、ILT2それ自体活性ではないが、しかし阻害性のKIR受容体と協働して、KIRのHLA-C分子との相互作用の機能的範囲を増加させ得ることを提案する。より最近では、Heidenreichらは、2012年に(Clinical and Developmental Immunology. Volume 2012, Article ID 652130))、ILT2単独では、ミエローマに対するNK細胞媒介性の細胞傷害に直接影響しないと結論付けた。
【0009】
HLA-Gと結合し又はそれを標的とする抗体又はその他の薬剤を使用し、これによりHLA-Gによって媒介される免疫抑制を除去し、そしてすべてのILT及びHLA-Gと相互作用するその他の受容体、例えばILT2、ILT4、KIR2DL4等をブロックすることにより、がんを処置することを様々な研究グループが提案した(例えば、国際公開第2018/091580号を参照)。しかしながら、HLA-Gを標的としたとしても、それは、ILT2とILTタンパク質のその他のHLAクラスIリガンドとの相互作用(もしあれば)を阻害しない。腫瘍エスケープにおいてHLA-Gが有する役割(案)と関連するILT受容体について興味が尽きないものの、ILT2の阻害をもたらす治療剤について臨床的発展は認められない。
【0010】
頭頸部の扁平上皮癌(HNSCC)は、年間約600,000例の発生率及び約50%の死亡率を有する。HNSCCに対する主要なリスク因子は、喫煙、飲酒、及びヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症である。その疫学及び病因の知識には進展がみられるにもかかわらず、多くの種類のHNSCCにおいてその生存率は、過去40年にわたりほとんど改善していない。HNSCC患者の全5年生存率は約50%にすぎない。タバコ、飲酒、及びウイルス性病原体が、HNSCC発症に対する主要なリスク因子である。これらのリスク因子は、遺伝的感受性と相まって、がん発症の多段階プロセスにおいて多数の遺伝的及びエピジェネティックな変化の蓄積を引き起こし、またそのようなHNSCCの分子発癌性の理解は、HNSCCを処置するための標的化薬剤の開発を目的として使用されている。
【0011】
HNSCCに対する処置として免疫療法を用いるアイディアは、数十年にわたり存在し、またHNSCCを処置する試みは、腫瘍特異的抗原を標的とすることを伴っていた。様々な固体がんに対するそのような免疫刺激性処置戦略の使用において改善が図られてきたが、頭頸部の扁平上皮癌(HNSCC)を有する患者に対するこれらの戦略の使用は立ち後れている。HNSCCに対する免疫療法的アプローチは、HNSCCにより誘発される顕著な免疫抑制(おそらくは免疫刺激的努力の有効性を減弱させる)により、特に複雑化している。HNSCCが抗腫瘍免疫応答を逃れる機構、例えばHLAクラスIの下方調節等のレビューが、Durayら、(2010) Clin. Dev. Immunol. Article ID 701657; 2010: 1~15頁に提示されている。
【0012】
抗EGFRモノクローナル抗体のセツキシマブは、EGF受容体経路の発がん性シグナル伝達のブロッキングを通じて、及びFcγ受容体によって媒介される抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発することにより作用すると考えられる。しかしながら、HNSCCにおいて、ADCCは、誘発される顕著な免疫抑制に影響を受けると考えられる。同時に、EGF受容体経路の発がん性シグナル伝達をブロックすると、腫瘍細胞において、MICA/B及びULBPタンパク質ファミリー(NK細胞及びT細胞のサブセット上の活性化受容体NKG2Dにより認識される)の主要組織適合複合体(MHC)クラスI関連抗原の転写後調節を引き起こす。特に、腫瘍細胞によるこのストレス関連抗原(NKG2Dの天然リガンドである)の発現は、臨床的EGFR阻害剤により減少し、したがってNK及びT細胞に対する腫瘍細胞の可視性を減少させるおそれがある(Vantouroutら、Sci. Transl. Med. 6: 231ra49(2014))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2018/091580号
【特許文献2】米国特許第5,567,610号
【特許文献3】米国特許第5,229,275号
【特許文献4】国際公開第2006/082515号
【特許文献5】国際公開第2008/017963号
【特許文献6】国際公開第2002/100348号
【特許文献7】国際公開第2004/056847号
【特許文献8】国際公開第2005/056606号
【特許文献9】国際公開第2005/012479号
【特許文献10】国際公開第2005/10151号
【特許文献11】米国特許第6,794,494号
【特許文献12】欧州特許第1454917号
【特許文献13】国際公開第2003/14159号
【特許文献14】国際公開第2002/092771号
【特許文献15】国際公開第2003/12072号
【特許文献16】国際公開第2002/066058号
【特許文献17】国際公開第2001/88138号
【特許文献18】国際公開第98/50433号
【特許文献19】国際公開第98/36074号
【特許文献20】国際公開第96/40210号
【特許文献21】国際公開第96/27010号
【特許文献22】米国特許第2002065398号
【特許文献23】国際公開第95/20045号
【特許文献24】欧州特許第586002号
【特許文献25】米国特許第5,459,061号
【特許文献26】米国特許第4,943,533号
【特許文献27】国際公開第2010/112413号
【特許文献28】国際公開第03101485号
【特許文献29】国際公開第2012/065950号
【特許文献30】米国特許第6737056号
【特許文献31】WO2011/066501
【特許文献32】米国特許第4,816,567号
【特許文献33】米国特許第6,162,963号
【特許文献34】国際公開第2006/121168号
【特許文献35】国際公開第2011/066389号
【特許文献36】米国特許第2013/034559号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Lanier、Annual Review of Immunology 2005; 23巻:225~74頁
【非特許文献2】Wanら、Cell Physiol Biochem 2017; 44巻: 1828~1841頁
【非特許文献3】Kirwan及びBurshtyn、J Immunol 2005; 175巻:5006~5015頁
【非特許文献4】Heidenreichら、Clinical and Developmental Immunology. Volume 2012, Article ID 652130
【非特許文献5】Durayら、(2010) Clin. Dev. Immunol. Article ID 701657; 2010: 1~15頁
【非特許文献6】Vantouroutら、Sci. Transl. Med. 6: 231ra49(2014)
【非特許文献7】Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988
【非特許文献8】Coliganら編、Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)
【非特許文献9】Muller、Meth. Enzymol. 92巻:589~601頁(1983)
【非特許文献10】Greenら、(1994) Nature Genet 7巻: 13頁
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【非特許文献13】McCaffertyら、(1990) Nature 348巻:552~553頁
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【非特許文献16】Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988
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【非特許文献25】Wardら、Nature, 341(1989), 544頁
【非特許文献26】Sivoriら、J. Exp. Med. 1997 ; 186巻: 1129~1136頁
【非特許文献27】Vitaleら、J. Exp. Med. 1998; 187巻:2065~2072頁
【非特許文献28】Pessinoら、J. Exp. Med. 1998; 188巻:953~960頁
【非特許文献29】Neriら、Clin. Diag. Lab. Immun. 2001 ;8巻: 1131~1135
【非特許文献30】Pendeら、J. Exp. Med. 1999; 190巻:1505~1516頁91頁
【非特許文献31】Strohl, W.、2009, Curr. Opin. Biotechnol. 20巻(6):685~691頁
【非特許文献32】Baudinoら、2008, J. Immunol. 181巻: 6664~69頁
【非特許文献33】Morrisonら、PNAS 6851頁(1984)
【非特許文献34】Jonesら、Nature, 321巻, 522頁(1986)
【非特許文献35】Reichmannら、Nature, 332巻, 323頁(1988)
【非特許文献36】Presta、Curr. Op. Struct. Biol., 2巻, 593頁(1992)
【非特許文献37】Verhoeyen et Science, 239巻, 1534頁
【非特許文献38】Simsら、J. Immunol. 151巻, 2296頁(1993)
【非特許文献39】Chothia及びLesk、J. Mol. 196巻, 1987, 901頁
【非特許文献40】Carterら、PNAS 89, 4285頁(1992)
【非特許文献41】Prestaら、J. Immunol., 151巻, 2623頁(1993)
【非特許文献42】Jakobovitzら、Nature 362巻(1993) 255頁
【非特許文献43】Remington、The Science and Practice of Pharmacy、19版、1995
【非特許文献44】Okazakiら、(2002) Curr. Opin. Immunol. 14巻: 391779~82頁
【非特許文献45】Bennettら、(2003) J Immunol 170巻:711~8頁
【非特許文献46】Freemanら、(2000) J Exp Med 192巻: 1027~34頁
【非特許文献47】Latchmanら、(2001) Nat Immunol 2巻:261~8頁
【非特許文献48】Carterら、(2002) Eur J Immunol 32巻:634~43頁
【非特許文献49】Dongら、(2002) Nat. Med. 8巻:787~9頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書において、本発明者らは、ヒトドナーから得られた一次NK細胞の腫瘍細胞に対する細胞傷害活性において、その増加を誘発することができる中和性、非FcγR結合性の特異的抗ILT2抗体について試験した。異なる起源のHNSCC細胞を試験したときに、その他の腫瘍型に由来する細胞とは異なり、HNSCC細胞はHLA-A2及びHLA-G(ILT2+NK及びT細胞の阻害を媒介する際に重要と考えられているILT2のリガンド)の表面発現について陰性であることを見出した。しかしながら、セツキシマブと中和性抗ILT2抗体とを併用すると、ヒトNK細胞による強い抗腫瘍活性を引き起こすことが観測された。併用は、NK細胞によるADCCを通じたがん細胞の溶解を引き起こすのに特に有効であった。結果は、HNSCC細胞は、NK細胞の細胞傷害性において強い阻害を誘発することができる、HLA-A2及びHLA-GではないILT2のリガンドを発現すること、またそのような阻害は、中和性抗ILT2抗体の使用を通じて克服することができることを示唆する。
【0016】
本明細書で使用される抗ILT-2抗体は、ILT2の発現が低レベルであり、またILT2上にもっぱら存在する(及び、例えばILT-1、4、-5、又は-6上には存在しない)特定のエピトープと結合する一次ヒトNK細胞(例えば、ドナー由来のNK細胞)において、NKによって媒介される強い細胞傷害活性を誘発する能力を有する抗体の例である。理論に拘泥するものではないが、ILT6はHLAクラスI分子に結合する可溶性タンパク質として天然に存在し、これによりNK及び/又はT細胞の表面上で阻害受容体(ILT2以外)の天然の阻害剤として作用するので、ILT6とは結合しないでILT2に結合することは、NK及び/又はCD8 T細胞活性のより強い増強を実現する上で長所を有し得る。使用される抗ILT-2抗体は、ヒトFcγ受容体との結合性を低下させ、及び/又は取り除くように改変された。
【0017】
HNSCCの処置で使用するための、EGFRに結合する抗体、例えばセツキシマブ、及びILT2中和剤(例えば、ILT2中和抗体)を含む併用処置が本明細書に提示される。そのような併用処置は、NK及びCD8 T細胞の細胞傷害性阻害を緩和し、並びに/或いは腫瘍細胞に対するNK及びCD8 T細胞の細胞傷害性を増強及び/又は強化するのに有用であり得る。1つの実施形態では、本開示の併用処置は、NK及び/又はCD8 T細胞の活性を強化する薬剤、例えばPD-1を中和する抗体、例えばPD-1に結合する抗体又はPD-L1に結合する抗体等の投与と更に併用されるとき、特に有利であり得る。
【0018】
1つの態様では、本発明は、HNSCCを処置及び/又は予防する方法、個人内の腫瘍細胞に対するNK及びCD8 T細胞の細胞傷害性を増強(又は強化)するための方法、並びに/或いは抗腫瘍免疫応答を、それを必要としている個人において誘発するための方法を提示し、該方法は、ILT-2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体)と併用して、EGFRに結合する薬剤(例えば、抗体)(例えば、セツキシマブ)を用いて個人を処置する工程を含む。任意の実施形態では、個人はHNSCCを有する。
【0019】
1つの実施形態では、医薬として使用するための、EGFRと結合する薬剤(例えば、セツキシマブ)が提示され、EGFRに結合する該薬剤は、ILT-2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体)と併用して投与される。1つの実施形態では、医薬は、HNSCCを有する個人において抗腫瘍免疫応答を誘発するためのものである。1つの実施形態では、医薬は、腫瘍細胞に対するNK及びCD8 T細胞の細胞傷害性を増強(又は強化)するためのものである。1つの実施形態では、医薬は、個人において腫瘍浸潤性のCD8+ T細胞及び/又はNK細胞の活性及び/又は数を増加させるためのものである。
【0020】
1つの実施形態では、がんの処置で使用するための、ILT2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体)が提示され、ILT-2を中和する該薬剤は、EGFRに結合する抗体(例えば、EGFRシグナル伝達を阻害する抗体、EGFRに対するEGFの結合を阻害する抗体、セツキシマブ)と併用使用される。
【0021】
任意の態様では、ILT-2の阻害活性を中和する薬剤、及びEGFRに結合する抗体が、PD-1の阻害活性を中和する薬剤、例えば、PD-1とPDL1との間の相互作用を阻害する抗PD-1又は抗PDL1抗体と更に併用して、個人を処置するのに使用される。
【0022】
任意の態様では、EGFRと結合する抗体は、ヒトCD16Aポリペプチドと結合するFcドメイン又はその部分を含み、そのような抗体は、EGFRを発現する細胞(例えば、HNSCC細胞)を標的とするADCCを媒介する能力を有する。任意の態様では、EGFRに結合する抗体は、EGFRを阻害する(例えば、細胞におけるEGFRシグナル伝達を阻害する)。任意の態様では、EGFRに結合する抗体は、EGFに対するEGFRの結合を阻害する。
【0023】
1つの態様では、本発明は、HNSCCを処置及び/又は予防するための方法、腫瘍細胞に対するNK及びCD8 T細胞の細胞傷害性を増強(又は強化)するための方法、並びに/或いは抗腫瘍免疫応答を、それを必要としている個人において誘発するための方法を提示し、前記個人は、HLA-A2及び/又はHLA-Gポリペプチドの発現(例えば、細胞表面発現)が失われている、又は低い腫瘍細胞により特徴づけられる腫瘍又はがんを有し、該方法は、ILT-2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体)と併用して、EGFRに結合する抗体を用いて、がんを有する個人を処置する工程を含む。
【0024】
HLA-A2及び/又はHLA-Gポリペプチドの発現とは独立してHNSCCを処置できれば、HLA-A2及び/又はHLA-G陽性のがんを有する個人に対する処置に制限を設けることなくHNSCCの処置が可能となる。1つの態様では、本発明は、HLA-A2及び/又はHLA-Gポリペプチドの発現を評価する事前の工程を設けずに(又はそれを要件とせずに)、HNSCCを有する個人を処置する方法を提示し、該方法は、ILT-2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体)と併用して、EGFRに結合する抗体を用いて前記個人を処置することを含む。1つの態様では、本発明は、HLA-A2及び/又はHLA-Gポリペプチドの発現レベルを評価する事前の工程を設けずに(又はそれを要件とせずに)、HNSCCを有する個人を処置する方法を提示し、該方法は、ILT-2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体)と併用して、EGFRに結合する抗体を用いて前記個人を処置することを含む。
【0025】
1つの態様では、本発明は、HLA-A2及び/又はHLA-Gポリペプチドの腫瘍細胞発現に基づき、個人が、処置に適するか判定する事前の工程を設けずに個人を処置する方法を提示し、該方法は、ILT-2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体)と併用して、EGFRに結合する抗体を用いて前記個人を処置する工程を含む。
【0026】
1つの態様では、本発明は、がん(例えば、HNSCC)を処置及び/又は予防するための方法、腫瘍細胞に対するNK及びCD8 T細胞の細胞傷害性を増強(又は強化)するための方法、並びに/或いは抗腫瘍免疫応答を、それを必要としている個人において誘発するための方法を提示し、該方法は、(i)腫瘍細胞(例えば、腫瘍細胞膜)上でのHLA-A2及び/又はHLA-Gポリペプチドの発現が低い又は検出不能であることにより特徴づけられるがん(例えば、HNSCC)を有する個人を特定する工程と、(ii) EGFRに結合する抗体、ILT-2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体又は抗体断片)を、個人に投与する工程とを含む。
【0027】
1つの実施形態では、個人内の腫瘍浸潤性CD8+ T細胞及び/又はNK細胞の細胞傷害活性及び/又は数を増加させる方法が提示され、該方法は、有効量のEGFRに結合する抗体(例えば、セツキシマブ)、及び有効量のILT-2の阻害活性を中和する薬剤を個人に投与する工程を含む。
【0028】
ILT-2の阻害活性を中和する薬剤(例えば、抗体)として、とりわけILT-2に結合する分子(例えば、抗体又は抗体断片)が挙げられる。ILT2を中和する薬剤は、細胞傷害性NKリンパ球及び/又はCD8 T細胞の活性を増強するその能力により特徴づけられ得る。ILT2を中和する薬剤は、別の態様では、任意選択で、特にCD8 T細胞を細胞傷害性のCD8 T細胞に分化及び/又は増殖させることにより、適応抗腫瘍免疫応答の発現を促進するその能力により特徴づけられ得る。
【0029】
1つの実施形態では、抗ILT2抗体、例えば抗体又は抗体断片は、ヒトILT2タンパク質に特異的に結合する、免疫グロブリン抗原結合ドメイン、任意選択で高度可変領域を含む。抗体は、ILT2タンパク質の阻害性シグナル伝達を中和する。任意の実施形態では、抗原結合ドメイン(又はそのようなドメインを含む抗体若しくはその他のタンパク質)は、ヒトILT1タンパク質に結合しないものとして特定され得る。任意の実施形態では、抗原結合ドメイン(又はそのようなドメインを含む抗体若しくはその他のタンパク質)は、ヒトILT4タンパク質に結合しないものとして特定され得る。任意の実施形態では、抗原結合ドメイン(又はそのようなドメインを含む抗体若しくはその他のタンパク質)は、ヒトILT5タンパク質に結合しないものとして特定され得る。任意の実施形態では、抗原結合ドメイン(又はそのようなドメインを含む抗体若しくはその他のタンパク質)は、ヒトILT6タンパク質に結合しないものとして特定され得る。1つの実施形態では、抗体は、可溶性ヒトILT6タンパク質と結合しない。任意の実施形態では、抗原結合ドメイン(又はそのようなドメインを含む抗体若しくはその他のタンパク質)は、HLAクラスI分子に対する可溶性ヒトILT6タンパク質の結合を阻害しないものとして特定され得る。任意の実施形態では、抗原結合ドメイン(又はそのようなドメインを含む抗体若しくはその他のタンパク質)は、ILT-1、ILT-3、ILT-5、ILT-6、ILT-7、ILT-8、ILT-9、ILT-10、及び/又はILT-11タンパク質のうちの1つ又は複数に結合しない(例えば、そのそれぞれとの結合性を欠いている)ものとして特定され得る; 1つの実施形態では、抗原結合ドメイン(又はそのようなドメインを含む抗体若しくはその他のタンパク質)は、ヒトILT-1、-4、-5、又は-6タンパク質(例えば、野生型タンパク質、配列番号3、5、6、及び7のアミノ酸配列をそれぞれ有するタンパク質)のいずれとも結合しない。本明細書における任意の実施形態では、任意のILTタンパク質(例えば、ILT-2)が、細胞(例えば、初代細胞又はドナー細胞、NK細胞、T細胞、DC、マクロファージ、単球、タンパク質を発現させた組換え宿主細胞)の表面において発現されるタンパク質として特定され得る。本明細書の別の実施形態では、任意のILTタンパク質(例えば、ILT-2)が、単離された組換え及び/又は膜結合型タンパク質として特定され得る。
【0030】
任意選択で、抗ILT2抗体は、ヒトILT2ポリペプチドに特異的に結合し、またILT2ポリペプチドの阻害活性を中和する抗体断片、完全長抗体、多重特異性又は二重特異性抗体として特定され得る。任意選択で、ILT2ポリペプチドは、細胞、任意選択でエフェクターリンパ球、NK細胞、T細胞、例えば初代NK細胞、ヒト個人に由来し、それから取得、精製、又は単離されたNK細胞又はNK細胞集団の表面において発現される(例えば、細胞のさらなる改変を伴わずに)。
【0031】
1つの態様では、ヒトILT2に特異的に結合する抗体は、その表面にILT2のリガンド(例えば、天然リガンド; HLAクラスIタンパク質) 、任意選択でHLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質、HLA-Fタンパク質、HLA-Gタンパク質を有する標的細胞に対するNK細胞(例えば、初代NK細胞)の活性(例えば、細胞傷害性)を強化する。任意選択で、標的細胞は、その表面においてHLA-Eタンパク質を更に有する。
【0032】
1つの実施形態では、ILT-2の阻害活性を中和する抗体は、ヒトILT2に特異的に結合し、及びILT2を発現するNK細胞が、ILT2のリガンド(例えば、天然リガンド; HLAタンパク質、HLA-Gタンパク質)を発現する標的細胞と共にインキュベートされる標準的4時間in vitro細胞傷害性アッセイにおいて、NK細胞(一次NK細胞)の細胞傷害性を強化及び/又は回復させる抗体(例えば、抗体断片又はそのような断片を含むタンパク質)である。1つの実施形態では、標的細胞は、NK細胞の添加前に51Crで標識され、次に殺傷(細胞傷害)が、細胞から媒体への51Crの放出量に比例するものとして推定される。1つの実施形態では、ILT-2の阻害活性を中和する抗体は、ヒトILT2に特異的に結合し、またILT2を発現するNK細胞がILT2のリガンドを発現する標的細胞と共にインキュベートされると、NK細胞の表面における細胞傷害性マーカーCD107又はCD137の発現を強化する抗体(例えば、抗体断片又はそのような断片を含むタンパク質)である。1つの実施形態では、抗体又は抗体断片は、ILT2を発現するNK細胞の細胞傷害性を、少なくともILT2を発現しないNK細胞について観察されるレベルまで、回復させる能力を有する(例えば、本明細書の実施例の方法に基づき決定される)。1つの実施形態では、標的細胞は、HLA-Gを発現させたK562細胞、任意選択で、更にHLA-G及びHLA-Eの両方を発現させたK562細胞である。1つの実施形態では、標的細胞は、HNSCC細胞、任意選択でHN、Cal27細胞、又はFaDu細胞である。
【0033】
本明細書における任意の態様では、NK細胞(例えば、初代NK細胞)は、ヒトドナーから精製され、任意選択で、使用前に、37℃、オーバーナイトにてインキュベートされた新鮮なNK細胞として特定され得る。本明細書における任意の態様では、NK細胞又は初代NK細胞は、ILT2を発現するものとして特定され得るが、例えばアッセイで使用するために、細胞はフローサイトメトリーによりILT2についてゲート化され得る。
【0034】
本明細書における任意の実施形態の別の態様では、ILT2と結合する抗体は、ILT2とそのHLAクラスIリガンド、特にHLA-A、HLA-B、HLA-F、及び/又はHLA-Gタンパク質との間の相互作用を阻害する(減少させる)能力を有するものとして特徴づけられ得る。1つの実施形態では、ILT2と結合する抗体は、ILT2とILT-2のHLAリガンド、特にHLA-A、HLA-B、及び/又はHLA-Gタンパク質を発現する標的細胞(例えば、腫瘍細胞)との間の相互作用を阻害する(減少させる)能力を有するものとして特徴づけられ得る。
【0035】
これらの態様は、本明細書に提示される本発明の説明においてより完全に記載され、また追加の態様、特徴、及び長所は、その説明から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】健常個体におけるILT2発現細胞のパーセントを示す図である。Bリンパ球及び単球は常にILT2を発現し、従来のCD4 T細胞及びCD4 Treg細胞はILT2を発現しないが、顕著な割合のCD8 T細胞(約25%)、CD3+ CD56+リンパ球(約50%)、及びNK細胞(約30%)はILT2を発現した。
【
図2ABC】健常個体と比較したがん患者のILT2発現細胞のパーセントを示す図であり、単球(
図2A)、B細胞(
図2B)、CD8 T細胞(
図2C)、CD4 γδ T細胞(
図2D)、CD16
+ NK細胞(
図2E)、及びCD16
- NK細胞(
図2F)を示す。見られるように、ILT2は再び、すべての単球及びB細胞で発現された。しかしNK細胞及びCD8 T細胞のサブセットでは、ILT2は3つの型のがん、即ちHNSCC、NSCLC、及びRCCからの細胞において、健常個体と比較して統計的に有意に高頻度で発現した。
【
図2DEF】健常個体と比較したがん患者のILT2発現細胞のパーセントを示す図であり、単球(
図2A)、B細胞(
図2B)、CD8 T細胞(
図2C)、CD4 γδ T細胞(
図2D)、CD16
+ NK細胞(
図2E)、及びCD16
- NK細胞(
図2F)を示す。見られるように、ILT2は再び、すべての単球及びB細胞で発現された。しかしNK細胞及びCD8 T細胞のサブセットでは、ILT2は3つの型のがん、即ちHNSCC、NSCLC、及びRCCからの細胞において、健常個体と比較して統計的に有意に高頻度で発現した。
【
図3】アイソタイプ対照と比較した、抗体の存在下におけるILT2発現NK細胞系によるK562-HLA-G/HLA-E腫瘍標的細胞の溶解の増加のパーセントを示す図である。抗体12D12、19F10a、及び市販の292319は、NK細胞の細胞傷害性を強化する能力において他の抗体よりも有意に効果的であった。
【
図4】細胞系の表面で発現したHLA-G又はHLA-A2と組換えILT2タンパク質との相互作用をブロックする3種の例示的な抗ILT2抗体のフローサイトメトリーで評価した能力を示す図である。12D12、18E1、及び26D8はそれぞれ、ILT2とHLA-G又はHLA-A2のそれぞれとの相互作用をブロックした。
【
図5A】初代NK細胞(2名のヒトドナーから)並びにHLA-E及びHLA-Gを発現させたK562腫瘍標的細胞を用いた、CD137を発現する全NK細胞の抗ILT2抗体によって媒介される増加のパーセントを示す代表的な図である。
図5Aは、上の2つのパネルに第1のドナーを、下の2つのパネルに第2のドナーを示す。
【
図5B】2名のヒトドナーからのNK細胞及びHLA-A2を発現しているB細胞系を用いた、CD137を発現しているILT2陽性(左側のパネル)及びILT2陰性(右側のパネル)のNK細胞の抗ILT2抗体によって媒介される増加のパーセントを示す代表的な図である。ILT2陽性NK細胞を用いるそれぞれのアッセイで、12D12、18E1、及び26D8は、抗体292139よりも大きな程度にNK細胞の細胞傷害性を増強した。
図5Bは、上の2つのパネルに第1のドナーを、下の2つのパネルに第2のドナーを示す。
【
図6A】細胞傷害性マーカーCD137の増加倍率で表した初代NK細胞の腫瘍標的細胞に対する細胞傷害性を強化する抗体の能力を示す図である。
図6Aは、HLA-G及びHLA-Eを発現しているK562標的細胞に対する5~12名の異なるドナーからの初代NK細胞を用いた、HLA-G発現標的細胞の存在下におけるNK細胞の活性化を強化する抗体の能力を示す。それぞれの場合に、12D12、18E1、及び26D8は、NK細胞傷害性のより強い強化を有していた。
【
図6B】細胞傷害性マーカーCD137の増加倍率で表した初代NK細胞の腫瘍標的細胞に対する細胞傷害性を強化する抗体の能力を示す図である。
図6Aは、HLA-A2を発現している標的B細胞に対する3~14名の異なるドナーからの初代NK細胞を用いた、HLA-G発現標的細胞の存在下におけるNK細胞の活性化を強化する抗体の能力を示す。それぞれの場合に、12D12、18E1、及び26D8は、NK細胞傷害性のより強い強化を有していた。
【
図7】細胞表面に係留されたILT2ドメイン断片タンパク質のサブセットに対する抗体の結合のフローサイトメトリーによって評価した代表的な例を示す図である。
【
図8A】細胞に係留された突然変異体ILT2タンパク質(突然変異体1及び2)への結合についての抗体3H5、12D12、及び27H5のフローサイトメトリーによるタイトレーションの代表的な例を示す図であり、これらの抗体が突然変異体2への結合性を失ったことを示す。
【
図8B】D4ドメイン突然変異体4-1、4-1b、4-2、4-4、及び4-5への結合についての、抗体26D8、18E1、及び27C10のフローサイトメトリーによるタイトレーションを示す図である。抗体26D8及び18E1は突然変異体4-1及び4-2への結合性を失い、26D8は突然変異体4-5への結合性を更に失った一方、抗体18E1は突然変異体4-5への結合性が減少した(しかし結合性を完全に喪失してはいない)。対照的に、初代NK細胞の細胞傷害性を増強しなかった抗体27C10は、突然変異体4-5への結合性を失ったが4-1又は4-2への結合性を保持していた。
【
図9A】ドメイン1(上部、暗灰色の陰影)及びドメイン2(下部、明灰色の陰影)を含むILT2分子の部分を表すモデルを示す図である。
【
図9B】ドメイン3(上部、暗灰色の陰影)及びドメイン4(下部、明灰色の陰影)を含むILT2分子の部分を表すモデルを示す図である。
【
図10A】細胞系の表面に発現したHLA-G又はHLA-A2と組換えILT2タンパク質との間の相互作用をブロックする3種の例示的な抗LT2抗体のフローサイトメトリーで評価した能力を示す図である。すべての抗体はHLA-G又はHLA-A2との相互作用をブロックしたが、対照抗体はブロックしなかった。抗体12D12、2H2B、48F12、及び3F5はNK細胞の細胞傷害性の増加に効果的であったが、1A9、1E4C、及び3A7Aは効果的でなかった。
【
図10B】細胞傷害性マーカーCD137の増加倍率で表した初代NK細胞の腫瘍標的細胞に対する細胞傷害性を評価することによって決定した、NK細胞によって媒介されるADCCを強化する抗ILT2抗体の能力を示す図である。抗体12D12、2H2B、48F12、及び3F5はNK細胞の細胞傷害性の増加に効果的であったが、1A9、1E4C、及び3A7Aは効果的でなかった。
【
図11A】細胞傷害性マーカーCD137の増加倍率で表した初代NK細胞の腫瘍標的細胞に対する細胞傷害性を評価することによって決定した、NK細胞によって媒介されるADCCを強化する抗ILT2抗体12D12、18E1、及び26D8の能力を示す図である。
図11Aは、3名の異なるヒトNK細胞ドナーにおける、腫瘍標的細胞に対するリツキシマブによって媒介される初代NK細胞のNK細胞活性化を強化する抗体12D12、18E1、及び26D8の能力を示す。
【
図11B】細胞傷害性マーカーCD137の増加倍率で表した初代NK細胞の腫瘍標的細胞に対する細胞傷害性を評価することによって決定した、NK細胞によって媒介されるADCCを強化する抗ILT2抗体12D12、18E1、及び26D8の能力を示す図である。
図11B、
図11C、及び
図11Dは、HN(
図11B)、FaDu(
図11C)、又はCal27(
図11D) HNSCC腫瘍標的細胞に対する、セツキシマブにより媒介される一次NK細胞のNK細胞活性化において、それを強化する抗体12D12、18E1、及び26D8の能力を示し、いずれの場合にも異なるヒトNK細胞ドナー3例を対象とする。
【
図11C】細胞傷害性マーカーCD137の増加倍率で表した初代NK細胞の腫瘍標的細胞に対する細胞傷害性を評価することによって決定した、NK細胞によって媒介されるADCCを強化する抗ILT2抗体12D12、18E1、及び26D8の能力を示す図である。
図11B、
図11C、及び
図11Dは、HN(
図11B)、FaDu(
図11C)、又はCal27(
図11D) HNSCC腫瘍標的細胞に対する、セツキシマブにより媒介される一次NK細胞のNK細胞活性化において、それを強化する抗体12D12、18E1、及び26D8の能力を示し、いずれの場合にも異なるヒトNK細胞ドナー3例を対象とする。
【
図11D】細胞傷害性マーカーCD137の増加倍率で表した初代NK細胞の腫瘍標的細胞に対する細胞傷害性を評価することによって決定した、NK細胞によって媒介されるADCCを強化する抗ILT2抗体12D12、18E1、及び26D8の能力を示す図である。
図11B、
図11C、及び
図11Dは、HN(
図11B)、FaDu(
図11C)、又はCal27(
図11D) HNSCC腫瘍標的細胞に対する、セツキシマブにより媒介される一次NK細胞のNK細胞活性化において、それを強化する抗体12D12、18E1、及び26D8の能力を示し、いずれの場合にも異なるヒトNK細胞ドナー3例を対象とする。
【
図12】HNSCC腫瘍細胞がフローサイトメトリーによって決定してHLA-G及びHLA-A2に対して一貫して陰性であるが、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cアレルに対して幅広く反応性である抗体による染色では陽性であることが見出されたことを示す図である。
【
図13】ヒトFcγ受容体に結合することができるマウスIgG2bフォーマット又はヒトFcγ受容体に結合することができないHUB3フォーマットにおける、HLA-A2発現B細胞に対するマクロファージによるADCPの、ILT2ブロック抗体による強化を示す図である。結果は、抗CD20抗体リツキシマブと組み合わせた増加倍率で示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味し得る。
【0038】
「~を含むこと(comprising)」が使用される場合、これは、任意選択で「~から実質的になる」又は「~からなる」と交換可能である。
【0039】
ヒトILT2は、リンパ球阻害受容体又は白血球免疫グロブリン(Ig)様受容体(LIR/LILR)ファミリーのメンバーである。ILT-2には6つのアイソフォームが含まれる。Uniprot識別番号Q8NHL6 (その全開示は参考として本明細書に組み込まれている)は、カノニカル配列と呼ばれ、650個のアミノ酸を含み、また下記のアミノ酸配列(残基1~23のシグナル配列を含む)を有する:
MTPILTVLIC LGLSLGPRTH VQAGHLPKPT LWAEPGSVIT QGSPVTLRCQ GGQETQEYRL
YREKKTALWI TRIPQELVKK GQFPIPSITW EHAGRYRCYY GSDTAGRSES SDPLELVVTG
AYIKPTLSAQ PSPVVNSGGN VILQCDSQVA FDGFSLCKEG EDEHPQCLNS QPHARGSSRA
IFSVGPVSPS RRWWYRCYAY DSNSPYEWSL PSDLLELLVL GVSKKPSLSV QPGPIVAPEE
TLTLQCGSDA GYNRFVLYKD GERDFLQLAG AQPQAGLSQA NFTLGPVSRS YGGQYRCYGA
HNLSSEWSAP SDPLDILIAG QFYDRVSLSV QPGPTVASGE NVTLLCQSQG WMQTFLLTKE
GAADDPWRLR STYQSQKYQA EFPMGPVTSA HAGTYRCYGS QSSKPYLLTH PSDPLELVVS
GPSGGPSSPT TGPTSTSGPE DQPLTPTGSD PQSGLGRHLG VVIGILVAVI LLLLLLLLLF
LILRHRRQGK HWTSTQRKAD FQHPAGAVGP EPTDRGLQWR SSPAADAQEE NLYAAVKHTQ
PEDGVEMDTR SPHDEDPQAV TYAEVKHSRP RREMASPPSP LSGEFLDTKD RQAEEDRQMD
TEAAASEAPQ DVTYAQLHSL TLRREATEPP PSQEGPSPAV PSIYATLAIH
(配列番号1)。
リーダー配列を含まないILT2アミノ酸配列を以下に示す:
GHLPKPTLWA EPGSVITQGS PVTLRCQGGQ ETQEYRLYRE KKTALWITRI PQELVKK
GQFPIPSITW EHAGRYRCYY GSDTAGRSES SDPLELVVTG AYIKPTLSAQ PSPVVNSGGN
VILQCDSQVA FDGFSLCKEG EDEHPQCLNS QPHARGSSRA IFSVGPVSPS RRWWYRCYAY
DSNSPYEWSL PSDLLELLVL GVSKKPSLSV QPGPIVAPEE TLTLQCGSDA GYNRFVLYKD
GERDFLQLAG AQPQAGLSQA NFTLGPVSRS YGGQYRCYGA HNLSSEWSAP SDPLDILIAG
QFYDRVSLSV QPGPTVASGE NVTLLCQSQG WMQTFLLTKE GAADDPWRLR STYQSQKYQA
EFPMGPVTSA HAGTYRCYGS QSSKPYLLTH PSDPLELVVS GPSGGPSSPT TGPTSTSGPE
DQPLTPTGSD PQSGLGRHLG VVIGILVAVI LLLLLLLLLF LILRHRRQGK HWTSTQRKAD
FQHPAGAVGP EPTDRGLQWR SSPAADAQEE NLYAAVKHTQ PEDGVEMDTR SPHDEDPQAV
TYAEVKHSRP RREMASPPSP LSGEFLDTKD RQAEEDRQMD TEAAASEAPQ DVTYAQLHSL
TLRREATEPP PSQEGPSPAV PSIYATLAIH
(配列番号2)。
【0040】
本発明の文脈において、「~を中和する」又は「ILT2の阻害活性を中和する」とは、ILT2タンパク質が、免疫細胞応答(例えば、細胞傷害応答)を引き起こす細胞内プロセスに負の影響を及ぼすその能力において阻害されるプロセスを指す。例えば、ILT-2の中和は、例えば、標準的なNK細胞又はT細胞に基づく細胞傷害性アッセイ(ILT陽性リンパ球によるHLA陽性細胞の殺傷を刺激する治療用化合物の能力が測定される)において測定可能である。1つの実施形態では、抗体調製物は、ILT2制限リンパ球の細胞傷害性において少なくとも10%の増強、任意選択でリンパ球細胞傷害性において少なくとも40%若しくは50%の増強、又は任意選択でNK細胞傷害性において少なくとも70%の増強を引き起こす(記載される細胞傷害性アッセイを参照)。1つの実施形態では、抗体調製物は、ILT2制限リンパ球によるサイトカイン放出において少なくとも10%の増強、任意選択でサイトカイン放出において少なくとも40%若しくは50%の増強、又は任意選択でサイトカイン放出において少なくとも70%の増強を引き起こす(記載される細胞傷害性アッセイを参照)。1つの実施形態では、抗体調製物は、ILT2制限リンパ球による細胞傷害性のマーカー(例えば、CD107及び/又はCD137)の細胞表面発現において少なくとも10%の増強、任意選択で少なくとも40%若しくは50%の増強、又は任意選択で細胞傷害性のマーカー(例えば、CD107及び/又はCD137)の細胞表面発現において少なくとも70%の増強を引き起こす。
【0041】
ILT2分子のその天然リガンド(例えば、HLA分子)に対する結合を「ブロックする」又は「阻害する」抗ILT2抗体の能力とは、抗体は、可溶性又は細胞表面会合性ILT2及び天然リガンド(例えば、HLA分子、例えばHLA-A、HLA-B、HLA-F、HLA-G)を使用するアッセイにおいて、リガンド(例えば、HLA分子)に対するILT2分子の結合性を、用量依存性の様式で、検出可能に低下させることができることを意味し、その場合、ILT2分子は、抗体が存在しなければ、リガンド(例えば、HLA分子)と検出可能に結合する。
【0042】
本明細書全体において、抗ILT2結合性薬剤(例えば、抗体)を参照しながら「がんの処置」等が記載される場合は常に、(a)がんを処置する方法であって、抗ILT2結合性薬剤(好ましくは、薬学的に許容される担体材料内の)を、そのような処置を必要とする個人、哺乳動物、特にヒトに対して、がんの処置を可能にする用量(治療有効量)で、好ましくは本明細書で定義するような用量(量)で投与する工程を含む(少なくとも1つの処置について)方法; (b)がんを処置するための抗ILT2結合性薬剤の使用、又は前記処置で(特にヒトにおいて)使用される抗ILT2結合性の薬剤; (c)がん処置用の医薬製剤を製造するための抗ILT2結合性薬剤の使用、がん処置用の医薬製剤を製造するために抗ILT2結合性薬剤を使用する方法であって、抗ILT2結合性薬剤を薬学的に許容される担体と共に混合する工程を含む方法、又は有効用量の抗ILT2結合性薬剤(がんの処置に適する)を含む医薬製剤;或いは(d)本出願が申請される国において特許取得を可能にする、本発明の主題に基づくa)、b)、及びc)の任意の組合せを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合ドメイン」とは、エピトープと免疫特異的に結合する能力を有する三次元構造を含むドメインを指す。したがって、1つの実施形態では、前記ドメインは、高度可変領域、任意選択で抗体鎖のVHドメイン及び/又はVLドメイン、任意選択で少なくともVHドメインを含み得る。別の実施形態では、結合ドメインは、抗体鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み得る。別の実施形態では、結合ドメインは、非免疫グロブリンスキャフォールドに由来するポリペプチドドメインを含み得る。
【0044】
用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は、本明細書において交換可能に使用されるように、抗体全体及び任意の抗原結合断片又はその単鎖を含む。代表的な抗体は、ジスルフィド結合により相互連結した少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。代表的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一の対のポリペプチド鎖から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のN末端が、抗原認識に主に関与する、約100~110個又はそれより多くのアミノ酸からなる可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、これらの軽鎖及び重鎖をそれぞれ指す。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、「α」、「δ」、「ε」、「γ」、及び「μ」とそれぞれ呼ばれる。これらのうちのいくつかは、サブクラス又はアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4等に更に分割される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構造は周知されている。IgGは、生理学的状況において最も一般的な抗体であり、また検査室の現場において最も容易に作製されるので、本明細書で採用される抗体の代表的なクラスである。任意選択で、抗体はモノクローナル抗体である。抗体の具体例は、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、さもなければヒトに適する抗体である。「抗体」には、本明細書に記載の抗体のいずれかを問わず、その任意の断片又は誘導体も含まれる。
【0045】
用語「~と特異的に結合する」とは、抗体は、組換え形態のタンパク質、その中のエピトープ、又は単離された標的細胞の表面上に存在する天然型のタンパク質を使用して評価した場合、好ましくは競合結合アッセイにおいて、結合パートナー、例えばILT2と結合することができることを意味する。特異的結合を確認するための競合結合アッセイ及びその他の方法は、以下に更に記載されるが、また当技術分野において周知されている。
【0046】
抗体が特定のモノクローナル抗体「と競合する」というとき、それは、抗体は、組換えILT2分子又は表面に発現されたILT2分子を使用する結合アッセイにおいて、モノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が、結合アッセイにおいて、ILT2ポリペプチド又はILT2発現細胞に対する参照抗体の結合性を低下させる場合、抗体は参照抗体とそれぞれ「競合する」といえる。
【0047】
用語「親和性」とは、本明細書で使用される場合、エピトープに対する抗体の結合性の強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag] / [Ab-Ag]として定義される解離定数Kdにより与えられ、式中、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は未結合抗体のモル濃度であり、及び[Ag]は未結合抗原のモル濃度である。親和定数Kaは、1/Kdにより定義される。mAbの親和性を決定する方法は、Harlowら, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988)、Coliganら編., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993),及びMuller, Meth. Enzymol. 92巻: 589~601頁(1983)に見出すことができ、それら参考資料は、参考として本明細書にそのまま組み込まれている。mAbの親和性を決定するための当技術分野において周知の1標準法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング法(例えばBIAcore(商標) SPR分析デバイスを用いた分析等による)の使用である。
【0048】
本明細書の文脈において、「決定因子」とは、ポリペプチド上の相互作用部位又は結合部位を指す。
【0049】
用語「エピトープ」とは抗原決定基を指し、抗体が結合する抗原上のエリア又は領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、並びに特異的抗原結合抗体又はペプチドにより有効にブロックされるアミノ酸残基、即ち抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基を含み得る。それは、例えば抗体又は受容体と結合することができる複雑な抗原分子上の最も単純な形態又は最小の構造的エリアである。エピトープは、直鎖状又は高次構造的/構造的であり得る。用語「直鎖状エピトープ」は、アミノ酸の直鎖状配列(一次構造)上の連続するアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。用語「高次構造的又は構造的エピトープ」は、すべて連続的ではなく、したがって分子のフォールディングにより互いに近接するようになったアミノ酸の直鎖状配列の分離した部分(二次、三次、及び/又は四次構造)を占めるアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。高次構造エピトープは3次元構造に立脚する。用語「高次構造的」は、したがって「構造的」と多くの場合交換可能に使用される。
【0050】
ILT2発現細胞に関して、用語「枯渇させる」又は「枯渇させること」とは、サンプル中又は対象内に存在するそのようなILT2発現細胞の数に負の影響を及ぼすようにするために、殺傷、除去、溶解、又はそのような殺傷、除去、若しくは溶解の誘発を引き起こすプロセス、方法、又は化合物を意味する。「非枯渇性」とは、プロセス、方法、又は化合物を引用する場合、プロセス、方法、又は化合物が枯渇性ではないことを意味する。
【0051】
用語「薬剤」は、化学物質、化学物質の混合物、生物学的マクロ分子、又は生体物質から作製される抽出物を表すために、本明細書において使用される。用語「治療剤」とは、生物学的活性を有する薬剤を指す。
【0052】
本明細書の目的に照らし、「ヒト化」又は「ヒト」抗体とは、1つ又は複数のヒト免疫グロブリンの定常及び可変フレームワーク領域が、動物免疫グロブリンの結合領域、例えばCDRと融合している抗体を指す。そのような抗体は、結合領域の起源となるヒト以外の抗体の結合特異性を維持しつつも、しかしヒト以外の抗体に対する免疫反応を回避するように設計される。そのような抗体は、抗原投与に応答して特異的ヒト抗体を生成するように「工学操作された」遺伝子導入マウス又はその他の動物から取得可能である(例えば、その全教示が本明細書において参考として組み込まれている、Greenら、(1994) Nature Genet 7巻: 13頁; Lonbergら、(1994) Nature 368巻:856頁; Taylorら、(1994) Int Immun 6巻:579頁を参照)。完全ヒト抗体も、遺伝子又は染色体トランスフェクション法、並びにファージディスプレイ技術により構築可能であり、そのすべては当技術分野において公知である(例えば、McCaffertyら、(1990) Nature 348巻:552~553頁を参照)。ヒト抗体は、in vitroでの活性化B細胞によっても生み出され得る(例えば、米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照、参考としてそのまま組み込まれている)。
【0053】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が異なる若しくは相違したクラス、エフェクター機能、及び/若しくは種の定常領域とリンクするように、定常領域又はその一部分が相違、置換、若しくは交換している抗体、又はキメラ抗体に新たな特性を付与する完全に異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物等である;或いは(b)可変領域又はその一部分が、異なる又は相違した抗原特異性を有する可変領域に変化し、それと置換、又は交換している抗体分子である。
【0054】
用語「高度可変領域」とは、本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。高度可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」(例えば、軽鎖可変ドメイン内の残基24~34 (L1)、50~56 (L2)、及び89~97 (L3)、並びに重鎖可変ドメイン内の31~35 (H1)、50~65 (H2)、及び95~102 (H3); Kabatら、1991)に由来するアミノ酸残基、及び/又は「高頻度可変性ループ」(例えば、軽鎖可変ドメイン内の残基26~32 (L1)、50~52 (L2)、及び91~96 (L3)、並びに重鎖可変ドメイン内の26~32 (H1)、53~55 (H2)、及び96~101 (H3); Chothia及びLesk、J. Mol. Biol 1987年; 196巻:901~917頁)に由来するアミノ酸残基、又は抗原結合に関与する不可欠なアミノ酸を決定するための類似したシステムを一般的に含む。一般的に、この領域内のアミノ酸残基のナンバリングは、Kabatら(前出)に記載の方法により実施される。本明細書における慣用句、例えば「Kabatの位置」、「Kabatに因む可変ドメイン残基ナンバリング」、及び「Kabatに基づく」等は、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに対するこのナンバリングシステムを指す。Kabatナンバリングシステムを使用しつつ、ペプチドの実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRにおいて、その短縮、それへの挿入に対応するより少ない又は追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後に単一のアミノ酸の挿入(Kabatに基づく残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatに基づく残基82a、82b、及び82c等)を含有し得る。残基のKabatナンバリングは、抗体の配列について、「標準的」Kabatナンバリングがなされた配列と相同性を有する領域においてアライメントすることにより、所定の抗体について決定され得る。
【0055】
「フレームワーク」又は「FR」残基とは、本明細書で使用される場合、CDRとして定義される領域を除いた抗体可変ドメインの領域を意味する。各抗体可変ドメインフレームワークは、CDR (FR1、FR2、FR3、及びFR4)により分離された連続領域に更に細分化され得る。
【0056】
用語「Fcドメイン」、「Fc部分」、及び「Fc領域」とは、抗体重鎖のC末端断片、例えば、ヒトγ(ガンマ)重鎖のアミノ酸(aa)約230~aa約450、又は別の種類の抗体重鎖(例えば、ヒト抗体のα、δ、ε、及びμ)内のそのカウンターパート配列、又は天然に存在するそのアロタイプを指す。別途規定しない限り、免疫グロブリンに対する一般的に受け入れられているKabatアミノ酸ナンバリングが、本開示全体を通じて使用される(Kabatら、(1991) Sequences of Protein of Immunological Interest, 5th ed., United States Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MDを参照)。
【0057】
用語「単離された」、「精製された」、又は「生物学的に純粋な」とは、その天然の状態において見出されるような、通常それに随伴する成分を実質的又は本質的に含まない物質を指す。純度及び均一性は、分析化学技術、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高性能液体クロマトグラフィー等を使用して一般的に決定される。調製物中に存在する主要な種であるタンパク質は実質的に精製される。
【0058】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書では交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。該用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーの人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーに適用される。
【0059】
用語「組換え」は、例えば細胞、又は核酸、タンパク質、又はベクターを参照しながら使用されるとき、細胞、核酸、タンパク質、又はベクターは、異種の核酸若しくはタンパク質の導入、又は天然型の核酸若しくはタンパク質の変更により改変されていること、或いは該細胞がそのように改変された細胞に由来することを表す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然型(非組換え)の形態においては見出されない遺伝子を発現する、又はそうでなければ、発現状態又は完全に非発現状態において異常に発現される天然型の遺伝子を発現する。
【0060】
本明細書の文脈において、ポリペプチド又はエピトープに「結合する」抗体という用語は、特異性及び/又は親和性を伴い前記決定因子に結合する抗体を指す。
【0061】
用語「同一性」又は「同一の」とは、2つ又はそれより多くのポリペプチドの配列間の関連性において使用されるとき、2つ又はそれより多くのアミノ酸残基からなる複数のストリング間の一致数により決定される、複数のポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、2つ又はそれより多くの配列のうち、より小さい方にギャップアライメント(もしあれば)を施して(特定の数学的モデル又はコンピュータープログラム(即ち、「アルゴリズム」)によりなされる)、それらの間の一致の割合(%)を測定する。関連するポリペプチドの同一性は、公知の方法により容易に計算され得る。そのような方法として、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York, 1991;及びCarilloら、SIAM J. Applied Math. 48巻, 1073頁(1988)に記載されている方法が挙げられるが、但しこれらに限定されない。
【0062】
同一性を決定するための方法は、試験される配列間の一致が最大となるように設計される。同一性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータープログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するためコンピュータープログラム法には、GAP (Devereuxら、Nucl. Acid. Res. 12巻, 387頁(1984); Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)、BLASTP、BLASTN、及びFASTA (Altschulら、J. Mol. Biol. 215巻, 403~410頁(1990))を含む、GCGプログラムパッケージが含まれる。BLASTXプログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)、及びその他のソース(BLASTマニュアル、Altschulら、NCB/NLM/NIH Bethesda、Md. 20894; Altschulら、前出)より公的に利用可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも、同一性を決定するのに使用され得る。
【0063】
抗EGFR抗体
上皮増殖因子受容体(EGFR; ErbB-1;ヒトにおけるHER1)は膜貫通タンパク質であり、細胞外タンパク質リガンドの上皮増殖因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーに対する受容体である。ADCCを媒介するいくつかの抗EGFR抗体が公知である。本開示に基づき使用される抗EGFR抗体は、例えば、国際公開第2006/082515号及び同第2008/017963号、同第2002/100348号、同第2004/056847号、同第2005/056606号、同第2005/012479号、同第2005/10151号、米国特許第6,794,494号、欧州特許第1454917号、国際公開第2003/14159号、同第2002/092771号、同第2003/12072号、同第2002/066058号、同第2001/88138号、同第98/50433号、同第98/36074号、同第96/40210号、同第96/27010号、米国特許第2002065398号、国際公開第95/20045号、欧州特許第586002号、米国特許第5,459,061号又は同第4,943,533号(これらの本開示は本明細書において参考として組み込まれている)に記載されるような抗体であり得る。EGFRに結合し、及び/又はそれを阻害する薬剤は、したがって抗EGFR抗体、例えばキメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体であり得る。本開示の方法で使用される抗EGFR抗体は、EGFRに含まれる1つ又は複数のエピトープに対して任意の適する親和性及び/又はアビディティーを有し得る。好ましくは、使用される抗体は、最大10-8M、好ましくは最大10-10Mの平衡解離定数(KD)を有してヒトEGFRに結合する。1つの実施形態では、抗EGFR抗体は、Fcγ(例えば、CD16)結合性を保持するFcドメインを含む。1つの実施形態では、抗EGFR抗体は、ヒトIgG1又はIgG3アイソタイプのFcドメインを含む。
【0064】
Fcドメイン又はその部分を含む抗EGFR抗体は、抗原結合ドメインを介してEGFRと、及びFcドメインを介してFcγ受容体(例えば、CD16A)との結合性を示す。1つの実施形態では、腫瘍細胞に対するそのADCC活性は、CD16Aにより少なくとも一部分媒介される。1つの実施形態では、追加の治療剤は、天然型又は改変されたヒトFcドメイン、例えばヒトIgG1又はIgG3抗体由来のFcドメインを有する抗体である。用語「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」は、当技術分野において十分理解されている用語であり、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす、細胞によって媒介される反応を指す。ADCCを媒介する非特異的細胞傷害性細胞として、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、DC、及び好酸球が挙げられる。用語「ADCC誘発性抗体」とは、当業者にとって公知のアッセイにより測定されるADCCを示す抗体を指す。そのような活性は、Fc領域と様々なFcRとの結合により一般的に特徴づけられる。特別な機構のいずれの制約も受けないとすれば、ADCCを示す抗体の能力は、例えば、そのサブクラス(例えばIgG1又はIgG3等)の恩恵、Fc領域に導入された突然変異、又は抗体のFc領域内の炭化水素パターンに対する改変の恩恵により得られるものと、当業者は認識する。
【0065】
c225抗体(セツキシマブ、ERBITUX(登録商標))は、本開示の方法に基づき使用され得る抗EGFR抗体の例である;セツキシマブは、EGFによって媒介される腫瘍細胞増殖をin vitroで阻害することが実証され、そして2003年に市販認証を受けた。セツキシマブは、内因性リガンドよりもおよそ5~10倍高い親和性を有してEGFRと結合する。セツキシマブは、内因性EGFRリガンドの結合をブロックして受容体の機能阻害を引き起こす。これは、上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的とするキメラのヒト/マウスモノクローナル抗体である。その他の抗EGFR抗体は、セツキシマブの全生物学的活性、例えばEGFRのリガンド結合を阻止すること、EGFR受容体の活性化を阻止すること、及びEGFR経路の下流シグナル伝達をブロックして細胞増殖の破綻を引き起こすこと等の一部又は全部を共有することが公知である。本開示で使用される抗体のその他の例として、ザルツムマブ(2F8、国際公開第02/100348号及び同第04/056847号に記載されている)、ニモツズマブ(h-R3)、パニツムマブ(ABX-EGF)、及びマツズマブ(EMD72000)、ラットICR62抗体のCDRを有する抗体(国際公開第2010/112413号)、ネシツムマブ(IMC-11F8、Eli Lilly社)、若しくはこれらのうち、そのいずれかのバリアント抗体、又はこれらのいずれかと競合することができる抗体、例えばこれらのいずれかと同一のエピトープを認識する抗体等が挙げられる。競合は任意の適する技術により判定され得る。1つの実施形態では、競合はELISAアッセイにより判定される。多くの場合、競合は、ELISA分析により決定される、5%、10%、又は25%よりも有意に大きい相対的阻害により明らかとなる。セツキシマブは、1週間毎に250mg/m2の用量で投与可能であり、任意選択で、セツキシマブは、初期用量として400mg/m2の用量で、その後1週間毎に250mg/m2の用量で少なくとも1回投与される。
【0066】
セツキシマブの重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を以下に示す。
セツキシマブ重鎖:
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSNDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSAASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号214)
セツキシマブ軽鎖:
DILLTQSPVILSVSPGERVSFSCRASQSIGTNIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVESEDIADYYCQQNNNWPTTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号215)
【0067】
抗ILT2抗体
ILT-2の阻害活性を中和する抗ILT-2抗体は、ヒトILT-2受容体の細胞外部分に結合し、そしてILT2陽性細胞、例えばNK細胞の表面上で発現するヒトILT2受容体の阻害活性を低下させる。1つの実施形態では、薬剤は、ILT-2に対する結合においてHLA-Gと競合し、即ち該薬剤は、ILT-2とそのHLAリガンド(例えば、HLA-G)との間の相互作用をブロックする。
【0068】
ILT-2中和活性について次に試験され得る抗ILT2抗体の出発点として、例えば古典的な免疫化プロトコール(例えば、マウス又はラットを対象とする)により生成される抗体、又は例えば(Wardら、Nature, 341(1989), 544頁)において開示される、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン配列のライブラリーから選択される抗体を挙げることができる。抗体は、ILT2ポリペプチドに対する最大結合を実現するのに必要とされる濃度を求めるために、ILT2タンパク質上にタイトレーションされ得る。ひとたび、ILT2に結合する能力を有し、及び/又はその他の所望の特性を有するものとして抗体が特定されると、該抗体は、その他のILT2ポリペプチド及び/又はその他の無関係のポリペプチドを含むその他のポリペプチドと結合するその能力についても、本明細書に記載される方法を含む標準法を使用して一般的に評価される。理想的には、抗体はILT2に対してのみ実質的親和性を有して結合し、且つ無関係のポリペプチドに対して、又はその他のILTタンパク質、特にILT-1、-3、-4、-5、-6、-7、及び/又は-8に対して有意なレベルで結合しない。しかしながら、ILT2に対する親和性(例えば、SPRにより決定されるKD)が、その他のILT及び/又はその他の無関係のポリペプチドに対する親和性よりも実質的に大きい(例えば、10×、100×、1000×、10,000×、又はそれ超)限り、抗体は本方法における使用に適するものと認識される。
【0069】
本明細書における任意の実施形態では、抗体は、ヒトILT2ポリペプチドに対する結合性について、1×10-8M未満、任意選択で1×10-9M未満、又は約1×10-8M~約1×10-10M、又は約1×0-9M~約1×10-11Mの結合親和性に対応するKDにより特徴づけられ得る。1つの実施形態では、親和性は1価の結合親和性である。1つの実施形態では、親和性は2価の結合親和性である。
【0070】
本明細書における任意の実施形態では、抗体は、結合親和性について、2nM未満、任意選択で1nM未満の1価のKDにより特徴づけられ得る。
【0071】
本明細書における任意の実施形態では、抗体は、SPRにより決定される1:1結合フィットにより特徴づけられ得る。本明細書における任意の実施形態では、抗体は、約1E-2未満、任意選択で約1E-3未満の解離速度又はオフレート(kd(1/s))により特徴づけられ得る。
【0072】
本明細書における任意の実施形態では、結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニングにより(例えば、BIAcore(商標) SPR分析デバイスを用いた分析等により)決定される1価の結合として特定され得る。本明細書における任意の実施形態では、1μg/mLの抗ILT2抗体がプロテインAチップ上に捕捉され、そして捕捉された抗体上に組換えヒトILT2タンパク質(例えば、四量体ILT2タンパク質)が注入されるとき、結合親和性はSPRによる決定に従い特定され得る。
【0073】
親和性は、1μg/mLの抗ILT2抗体がプロテインAチップ上に捕捉され、そして捕捉された抗体上に組換えヒトILT2タンパク質が注入されたとき、SPRによる決定に従い特定され得る。
【0074】
抗ILT2抗体は、ヒトFcγ受容体に対する特異的結合性が低下し、又はそれを実質的に欠くように、非枯渇抗体として調製され得る。そのような抗体は、CD16、及び任意選択で、更にその他のFcγ受容体とは結合しない、又はそれに対する結合親和性が低いことが公知である様々な重鎖の定常領域を含み得る。1つのそのような例は、CD16との結合性が本来低下しているが、しかしその他の受容体、例えばCD64等との有意な結合性を保持する野生型ヒトIgG4定常領域である。或いは、定常領域を含まない抗体断片、例えばFab又はF(ab')2断片等が、Fc受容体との結合を回避するのに使用可能である。Fc受容体結合性は、例えば、BIACOREアッセイにおける、Fc受容体タンパク質に対する抗体の結合性の試験を含む、当技術分野において公知の方法に基づき評価可能である。Fc部分がFc受容体との結合性を減少させ、最低限に抑え、又は除去するように改変されている任意の抗体アイソタイプ(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)が使用可能である(例えば国際公開第03101485号を参照)。Fc受容体との結合性を評価するためのアッセイ、例えば細胞に基づくアッセイ等が、当技術分野において周知されており、また例えば国際公開第03101485号に記載されている。
【0075】
試験抗体がヒトILT2に対するHLAクラスIリガンドの結合性に影響を及ぼすか、その影響を評価するためにも、クロスブロッキングアッセイが使用可能である。例えば、抗ILT2抗体調製物がHLAクラスI分子とのILT2相互作用を低下させ又はブロックするか判定するために、下記の試験が実施可能である:ある用量範囲の抗ヒトILT2 Fabを、室温で30分、用量固定式でヒトILT2-Fcと共に同時インキュベートし、次にHLAクラスlリガンド発現細胞系上に添加し1時間おく。染色バッファー中で細胞を2回洗浄した後、PEカップリングしたヤギ抗マウスIgG Fc断片二次抗体を染色バッファー内で希釈してそれを細胞に添加し、そしてプレートを、追加の30分間、4℃でインキュベートする。細胞を2回洗浄し、そしてHTFCプレートリーダーを備えるAccury C6フローサイトメーター上で分析する。試験抗体が存在しない場合、ILT2-Fcは細胞と結合する。HLAクラスIに対するILT2の結合をブロックするILT2-Fcと共に事前インキュベートした抗体調製物の存在下では、細胞に対するILT2-Fcの結合性低下が認められる。
【0076】
1つの態様では、抗体は、D1ドメインを欠くように改変されたILT2タンパク質に対して結合性を欠く。1つの態様では、抗体は、完全長野生型ILT2ポリペプチドに結合するが、しかし配列番号1のアミノ酸配列の残基24~121のセグメントを欠くように改変されたILT2タンパク質に対して結合性を欠く。別の態様では、抗体は、完全長野生型ILT2ポリペプチドと結合するが、しかしD4ドメインを欠くように改変されたILT2タンパク質に対する結合性は低下している。1つの態様では、抗体は、完全長野生型ILT2ポリペプチドと結合するが、しかし配列番号1のアミノ酸配列の残基322~458のセグメントを欠くように改変されたILT2タンパク質に対して結合性を欠く。
【0077】
ILT2突然変異体を発現するようにトランスフェクトされた細胞に対する抗ILT2抗体の結合性は測定可能であり、また抗ILT2抗体が野生型ILT2ポリペプチド(例えば、配列番号1)を発現する細胞と結合する能力と比較することができる。抗ILT2抗体と突然変異体ILT2ポリペプチドとの間の結合性の低下は、結合親和性の低下(例えば、公知の方法、例えば特定の突然変異体を発現する細胞を試験するFACS等により、又は突然変異体ポリペプチドに対する結合性を試験するBiacore(商標)(SPR)により測定される)、及び/又は抗ILT抗体の全結合能力の低下(例えば、ポリペプチド濃度に対する抗ILT2抗体濃度のプロットにおいてBmaxの減少により証明される)が認められることを意味する。結合性が有意に低下するということは、突然変異した残基は、抗ILT2抗体に対する結合に直接関与していること、又は抗ILT2抗体がILT2に結合するときに、結合タンパク質のすぐ近傍にあることを示唆する。
【0078】
いくつかの実施形態では、結合性の有意な低下とは、抗ILT2抗体と突然変異体ILT2ポリペプチドとの間の結合親和性及び/又は能力が、抗体と野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較して、それより40%を上回り、50%を上回り、55%を上回り、60%を上回り、65%を上回り、70%を上回り、75%を上回り、80%を上回り、85%を上回り、90%を上回り、又は95%を上回り低下していることを意味する。特定の実施形態では、結合性は検出限界未満まで低下する。いくつかの実施形態では、突然変異体ILT2ポリペプチドに対する抗ILT2抗体の結合性が、抗ILT2抗体と野生型ILT2ポリペプチドとの間で観察される結合性の50%未満(例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、又は10%未満)であるとき、結合性の有意な低下が証明される。
【0079】
ひとたびILT2に対して所望の結合性を有する抗原結合化合物が得られたら、ILT2を阻害するその能力について評価され得る。例えば、抗ILT2抗体が、HLAリガンド(例えば、細胞上に存在するような)により誘発されたILT2活性化を低下させ、又はブロックする場合には、ILT2制限リンパ球の細胞傷害性を増加させることができる。これは代表的な細胞傷害性アッセイにより評価可能であり、その例は以下に記載されている。
【0080】
ILT2によって媒介されるシグナル伝達を低下させる抗体の能力は、例えばILT2を発現するNK細胞及びILT2のHLAリガンドを発現する標的細胞を使用して、標準的な4時間in vitro細胞傷害性アッセイにおいて試験可能である。ILT2がHLAリガンドを認識し、リンパ球によって媒介される細胞溶解を阻止する阻害性シグナル伝達の開始及び伝播を引き起こすので、そのようなNK細胞はリガンドを発現する標的を有効に殺傷しない。そのようなアッセイは、初代NK細胞、例えばドナーから精製され、使用前に37℃、オーバーナイトでインキュベートされた新鮮なNK細胞を使用して実施可能である。そのようなin vitro細胞傷害性アッセイは、例えば、Coliganら編、Current Protocols In Immunology, Greene Publishing Assoc and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)に記載されているように、当技術分野において周知されている標準法により実施可能である。標的細胞は、NK細胞添加前に51Crで標識され、次に殺傷の結果として、細胞から媒体に51Crが放出され、その放出量に比例して殺傷が推定される。ILT2タンパク質がHLAクラスIリガンド(例えば、HLA-G)に結合するのを阻止する抗体を添加すると、その結果、ILT2タンパク質を経由する阻害性シグナル伝達の開始及び伝播が阻止される。したがって、そのような薬剤を添加すると、その結果、標的細胞の、リンパ球によって媒介される殺傷増加が引き起こされる。これにより、この工程は、例えば、リガンド結合をブロックすることによってILT2によって媒介される負のシグナル伝達を阻止する薬剤を特定する。具体的な51Cr放出細胞傷害性アッセイでは、ILT2発現NKエフェクター細胞は、HLAリガンド陰性標的細胞を殺傷することができるが、しかしHLAリガンド発現コントロール細胞の殺傷はそれほど十分でない。つまり、ILT2を経由するHLA誘発性の阻害性シグナル伝達に起因して、NKエフェクター細胞はHLAリガンド陽性細胞をそれほど有効には殺傷しない。そのような51Cr放出細胞傷害性アッセイにおいて、遮断性の抗ILT2抗体を用いてNK細胞を事前インキュベートすれば、HLAリガンド発現細胞は、抗体濃度に依存する様式でより有効に殺傷される。
【0081】
抗体の阻害活性(即ち、細胞傷害性強化能力)は、例えばSivoriら、J. Exp. Med. 1997 ; 186巻: 1129~1136頁(その開示は本明細書において参考として組み込まれている)に記載されているように、例えばその細胞内遊離カルシウムに対する効果により、又はNK細胞の細胞傷害性活性化のマーカー、例えば脱顆粒マーカーCD107若しくはCD13の発現等に対する効果により、いくつかのその他の方法のいずれかにおいてやはり評価され得る。NK又はCD8T細胞の活性は、標的細胞、例えばP815、K562細胞等、又はSivoriら、J. Exp. Med. 1997;186巻: 1129~1136頁; Vitaleら、J. Exp. Med. 1998; 187巻:2065~2072頁; Pessinoら、J. Exp. Med. 1998; 188巻:953~960頁; Neriら、Clin. Diag. Lab. Immun. 2001 ;8巻: 1131~1135; Pendeら、J. Exp. Med. 1999; 190巻:1505~1516頁(そのそれぞれの全開示は参照により本明細書に組み込まれている)に開示されるような、適当な腫瘍細胞を殺傷するようにNK細胞を刺激する抗体の能力を評価するために、例えば任意のその他のパラメーターを測定する、任意の細胞に基づく細胞傷害性アッセイを使用してやはり評価され得る。
【0082】
1つの実施形態では、抗体調製物は、ILT2制限リンパ球の細胞傷害性において少なくとも10%の増強、好ましくはNK細胞傷害性において少なくとも30%、40%、若しくは50%の増強、又はより好ましくはNK細胞傷害性において少なくとも60%若しくは70%の増強を引き起こす。
【0083】
細胞傷害性リンパ球の活性は、サイトカイン放出アッセイを使用して対処することもでき、その場合、NK細胞は、NK細胞のサイトカイン産生(例えば、IFN-γ及びTNF-α産生)を刺激するために抗体と共にインキュベートされる。代表的プロトコールでは、PBMCからのIFN-γ産生は、培養4日後に細胞表面及び細胞質内染色及びフローサイトメトリーによる分析により評価される。手短に述べると、Brefeldin A (Sigma Aldrich社)が、培養の最後の4時間において、最終濃度5μg/mlで添加される。次に、細胞を抗CD3及び抗CD56 mAbと共にインキュベートした後、透過処理(IntraPrep(商標); Beckman Coulter社)、及びPE-抗IFN-γ又はPE-IgG1 (Pharmingen社)を用いた染色が行われる。ポリクロナール活性化NK細胞からのGM-CSF及びIFN-γ産生が、ELISA (GM-CSF: DuoSet Elisa、R&D Systems社、Minneapolis、MN、IFN-γ: OptEIAセット、Pharmingen社)を使用して上清において測定される。
【0084】
1つのアプローチにおいて、抗体は、本明細書に記載される抗体、例えば12D12、26D8、18E1、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12のいずれかと同一である、ILT2ポリペプチドの表面上の領域又はエピトープに対する結合性(例えば、エピトープ又は結合領域に狙いを定めたスクリーニング)に基づき、任意選択で同定及び選択され得る。1つの態様では、抗体は、抗体12D12、26D8、18E1、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12のうちのいずれかと実質的に同一のエピトープに結合する。1つの実施形態では、抗体は、抗体12D12、26D8、18E1、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12と結合するエピトープと少なくとも部分的に重複し、又はそのエピトープ内の少なくとも1つの残基を含む、ILT2のエピトープと結合する。抗体と結合する残基は、ILT2ポリペプチドの表面上、例えば細胞表面上で発現するILT2ポリペプチド抗上に存在するものとして特定され得る。
【0085】
ILT2上の特定の部位に対する抗ILT2抗体の結合性は、野生型ILT2ポリペプチド(例えば、配列番号1)と結合する抗ILT2抗体の能力と比較して、ILT2突然変異体でトランスフェクトされた細胞に対する抗ILT2抗体の結合を測定することにより評価可能である。抗ILT2抗体と突然変異体ILT2ポリペプチド(例えば、表6の突然変異体)との間の結合性の低下は、結合親和性の低下(例えば、特定の突然変異体を発現する細胞を試験するFACSのような公知の方法により、又は突然変異体ポリペプチドに対する結合性を試験するBiacoreにより測定される)、及び/又は抗ILT2抗体の全結合能力の低下(例えば、ポリペプチド濃度に対する抗ILT2抗体濃度のプロットにおけるBmaxの減少により証明される)が存在することを意味する。結合性の有意な低下は、突然変異した残基は抗ILT2抗体に対する結合に直接関与していること、又は抗ILT2抗体がILT2と結合するときに、結合タンパク質のすぐ近傍にあることを示唆する。
【0086】
いくつかの実施形態では、結合性の有意な低下は、抗ILT2抗体と突然変異体ILT2ポリペプチドとの間の結合親和性及び/又は結合能力が、抗体と野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較して、40%を上回り、50%を上回り、55%を上回り、60%を上回り、65%を上回り、70%を上回り、75%を上回り、80%を上回り、85%を上回り、90%を上回り、又は95%を上回り低下していることを意味する。特定の実施形態では、結合性は検出限界未満まで低下する。いくつかの実施形態では、結合性の有意な低下は、突然変異体ILT2ポリペプチドに対する抗ILT2抗体の結合性が、抗ILT2抗体と野生型ILT2ポリペプチドとの間で観察された結合性の50%未満(例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、又は10%未満)であるときに証明される。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗体12D12、26D8、18E1、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12が結合するアミノ酸残基を含むセグメント内の残基が異なるアミノ酸と置換している突然変異体ILT2ポリペプチドに対して、そのような置換を含まない野生型ILT2ポリペプチド(例えば、配列番号1のポリペプチド)に対する結合性と比較して、有意に低下した結合性を示す抗ILT2抗体が提供される。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗体12D12、26D8、又は18E1が結合するILT2上のエピトープに結合する抗ILT2抗体(例えば、12D12、26D8、又は18E1以外)が提供される。
【0089】
本明細書における任意の実施形態では、抗体は、GHI/75、292319、HP-F1、586326、及び292305 (又はそのCDRを共有する抗体)以外の抗体として特徴づけられ得る。
【0090】
1つの態様では、抗ILT2抗体は、ヒトILT2タンパク質のD1ドメイン(ドメイン1)上、又はその中に配置されるエピトープに結合する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、ヒトILT2タンパク質のD1ドメイン(ドメイン1)上のエピトープに対する結合について、抗体12D12と競合する。
【0091】
D1ドメインは、
GHLPKPTLWAEPGSVITQGSPVTLRCQGGQETQEYRLYREKKTALWITRIPQELVKKGQFPIPSITWEHAGRYRCYYGSDTAGRSESSDPLELVVTGA(配列番号55)
のアミノ酸配列に対応する、又はそれを有するものとして定義され得る。
【0092】
1つの態様では、抗ILT2抗体は、E34、R36、Y76、A82、及びR84 (配列番号2を参照)からなる群から選択される残基に突然変異を有するILT2ポリペプチドに対する結合性が低下しており、任意選択で結合性が失われている;任意選択で、突然変異体ILT2ポリペプチドは、突然変異E34A、R36A、Y76I、A82S、R84Lを有する。1つの実施形態では、抗体は更に、G29、Q30、Q33、T32、及びD80 (配列番号2を参照)からなる群から選択される1つ又は複数(又はそのすべて)の残基に突然変異を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が低下しており、任意選択で、突然変異体ILT2ポリペプチドは、突然変異G29S、Q30L、Q33A、T32A、D80Hを有する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、突然変異G29S、Q30L、Q33A、T32A、E34A、R36A、Y76I、A82S、D80H、及びR84Lを有するILT2ポリペプチドに対する結合性が低下しており、任意選択で結合性が失われている。いずれの場合にも、結合性の減少又は喪失は、抗体と配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較すれば特定され得る。
【0093】
1つの態様では、抗ILT2抗体は、E34、R36、Y76、A82、及びR84 (配列番号2を参照)からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含む、ILT2上のエピトープに結合する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、G29、Q30、Q33、T32、及びD80 (配列番号2を参照)からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープに結合する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、(i) E34、R36、Y76、A82、及びR84からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)、及び(ii) G29、Q30、Q33、T32、及びD80からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープに結合する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、G29、Q30、Q33、T32、E34、R36、Y76、A82、D80、及びR84からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープに結合する。
【0094】
1つの態様では、抗ILT2抗体は、ヒトILT2タンパク質のD4ドメイン(ドメイン4)上又はその中に配置されるエピトープに結合する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、ヒトILT2タンパク質のD4ドメイン(ドメイン4)上のエピトープに対する結合について、抗体26D8及び/又は18E1と競合する。
【0095】
D4ドメインは、
FYDRVSLSVQPGPTVASGENVTLLCQSQGWMQTFLLTKEGAADDPWRLRSTYQSQKYQAEFPMGPVTSAHAGTYRCYGSQSSKPYLLTHPSDPLELVVSGPSGGPSSPTTGPTSTSGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRH(配列番号56)
のアミノ酸配列に対応する又はそれを有するものとして定義され得る。
【0096】
1つの態様では、抗ILT2抗体は、F299、Y300、D301、W328、Q378、及びK381 (配列番号2を参照)からなる群から選択される残基に突然変異を有するILT2ポリペプチドに対する結合性が低下しており、任意選択で結合性が失われている;任意選択で、突然変異体ILT2ポリペプチドは、突然変異F299I、Y300R、D301A、W328G、Q378A、K381Nを有する。1つの実施形態では、抗体は更に、W328、Q330、R347、T349、Y350、及びY355 (配列番号2を参照)からなる群から選択される1つ又は複数(又はそのすべて)の残基に突然変異を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が低下しており、任意選択で、突然変異体ILT2ポリペプチドは、突然変異W328G、Q330H、R347A、T349A、Y350S、Y355Aを有する。1つの実施形態では、抗体は更に、D341、D342、W344、R345、及びR347 (配列番号2を参照)からなる群から選択される1つ又は複数(又はそのすべて)の残基に突然変異を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が低下しており、任意選択で、突然変異体ILT2ポリペプチドは、突然変異D341A、D342S、W344L、R345A、R347Aを有する。1つの実施形態では、抗体は、突然変異: F299I、Y300R、D301A、W328G、Q330H、R347A、T349A、Y350S、Y355A、Q378A、及びK381Nを有する突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が低下している。1つの実施形態では、抗体は、突然変異F299I、Y300R、D301A、W328G、D341、D342、W344、R345、R347、Q378A、及びK381Nを有する突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が低下している。1つの実施形態では、抗体は、突然変異: F299I、Y300R、D301A、W328G、Q330H、D341A、D342S、W344L、R345A、R347A、T349A、Y350S、Y355A、Q378A、及びK381Nを有する突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が低下している。いずれの場合にも、結合性の減少又は喪失は、抗体と配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性を比較すれば特定され得る。
【0097】
1つの態様では、抗ILT2抗体は、F299、Y300、D301、W328、Q378、及びK381 (配列番号2を参照)からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープに結合する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、W328、Q330、R347、T349、Y350、及びY355 (配列番号2を参照)からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープに結合する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、D341、D342、W344、R345、及びR347 (配列番号2を参照)からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープに結合する。
【0098】
1つの態様では、抗ILT2抗体は、F299、Y300、D301、W328、Q330、D341、D342、W344、R345、R347、T349、Y350、Y355、Q378、及びK381からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープに結合する。
【0099】
1つの態様では、抗ILT2抗体は、(i) F299、Y300、D301、W328、Q378、及びK381からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)、及び(ii) Q330、R347、T349、Y350、及びY355からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープに結合する。1つの態様では、抗ILT2抗体は、(i) F299、Y300、D301、W328、Q378、及びK381からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)、(ii) Q330、R347、T349、Y350、及びY355からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)、並びに(iii) D341、D342、W344、R345、及びR347からなる群から選択されるアミノ酸残基(例えば、それらの残基のうちの1、2、3、4、又は5個)を含むILT2上のエピトープと結合する。
【0100】
抗体CDR配列
抗体26D8の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号12(Table A(表1)も参照)として表示しており、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号13(Table A(表1)も参照)として表示している。特定の実施形態では、モノクローナル抗体26D8と本質的に同じエピトープ又は決定基に結合する抗体が提供される。任意選択で、抗体は抗体26D8の超可変領域を含む。本明細書の実施形態のいずれでも、抗体26D8はアミノ酸配列及び/又はそれをコードする核酸の配列によって特徴づけられ得る。一実施形態では、モノクローナル抗体は26D8のFab又はF(ab')2部分を含む。26D8の重鎖可変領域を含む抗体又は抗体断片も提供される。一実施形態によれば、抗体又は抗体断片は、26D8の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。26D8の可変軽鎖可変領域又は26D8の軽鎖可変領域のCDRの1つ、2つ、又は3つを更に含む抗体又は抗体断片も提供される。HCDR1、HCDR2、HCDR3、及びLCDR1、LCDR2、LCDR3の配列は、任意選択ですべてが(又はそれぞれが独立して)Kabat番号付けシステムの配列、Chotia番号付けシステムの配列、IMGT番号付けの配列、又はその他の任意の好適な番号付けシステムの配列であると特定することができる。任意選択で前記軽鎖又は重鎖のCDRの任意の1つ又は複数は、1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つ、又はそれ以上のアミノ酸の改変(例えば置換、挿入、又は欠失)を含んでよい。
【0101】
別の態様では抗体が提供され、抗体又は抗体断片は、アミノ酸配列EHTIH(配列番号14)又はその少なくとも3個、4個、若しくは5個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい26D8のHCDR1領域、アミノ酸配列WFYPGSGSMKYNEKFKD(配列番号15)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい26D8のHCDR2領域、アミノ酸配列HTNWDFDY(配列番号16)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい26D8のHCDR3領域、アミノ酸配列KASQSVDYGGDSYMN(配列番号17)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい26D8のLCDR1領域、アミノ酸配列AASNLES(配列番号18)又はその少なくとも4個、5個、若しくは6個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい26D8のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEEPWT(配列番号19)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、若しくは8個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい26D8のLCDR3領域を含む。
【0102】
抗体18E1の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号20(Table A(表1)も参照)として表示しており、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号21(Table A(表1)も参照)として表示している。特定の実施形態では、モノクローナル抗体18E1と本質的に同じエピトープ又は決定基に結合する抗体が提供される。任意選択で、抗体は抗体18E1の超可変領域を含む。本明細書の実施形態のいずれでも、抗体18E1はアミノ酸配列及び/又はそれをコードする核酸の配列によって特徴づけられ得る。一実施形態では、モノクローナル抗体は18E1のFab又はF(ab')2部分を含む。18E1の重鎖可変領域を含む抗体又は抗体断片も提供される。一実施形態によれば、抗体又は抗体断片は、18E1の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。18E1の可変軽鎖可変領域又は18E1の軽鎖可変領域のCDRの1つ、2つ、又は3つを更に含む抗体又は抗体断片も提供される。HCDR1、HCDR2、HCDR3、及びLCDR1、LCDR2、LCDR3の配列は、任意選択ですべてが(又はそれぞれが独立して)Kabat番号付けシステムの配列、Chotia番号付けシステムの配列、IMGT番号付けの配列、又はその他の任意の好適な番号付けシステムの配列であると特定することができる。任意選択で前記軽鎖又は重鎖のCDRの任意の1つ又は複数は、1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つ、又はそれ以上のアミノ酸の改変(例えば置換、挿入、又は欠失)を含んでよい。
【0103】
別の態様では抗体が提供され、抗体又は抗体断片は、アミノ酸配列AHTIH(配列番号22)又はその少なくとも3個若しくは4個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい18E1のHCDR1領域、アミノ酸配列WLYPGSGSIKYNEKFKD (配列番号23)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい18E1のHCDR2領域、アミノ酸配列HTNWDFDY (配列番号24)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい18E1のHCDR3領域、アミノ酸配列KASQSVDYGGASYMN (配列番号25)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい18E1のLCDR1領域、アミノ酸配列AASNLES (配列番号26)又はその少なくとも4個、5個、若しくは6 10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい18E1のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEEPWT (配列番号27)又はその少なくとも4個、5個、6個、若しくは7個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい18E1のLCDR3領域を含む。
【0104】
抗体12D12の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号28(Table A(表1)も参照)として表示しており、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号29(Table A(表1)も参照)として表示している。特定の実施形態では、モノクローナル抗体12D12と本質的に同じエピトープ又は決定基に結合する抗体が提供される。任意選択で、抗体は抗体12D12の超可変領域を含む。本明細書の実施形態のいずれでも、抗体12D12はアミノ酸配列及び/又はそれをコードする核酸の配列によって特徴づけられ得る。一実施形態では、モノクローナル抗体は12D12のFab又はF(ab')2部分を含む。12D12の重鎖可変領域を含む抗体又は抗体断片も提供される。一実施形態によれば、抗体又は抗体断片は、12D12の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。12D12の可変軽鎖可変領域又は12D12の軽鎖可変領域のCDRの1つ、2つ、又は3つを更に含む抗体又は抗体断片も提供される。HCDR1、HCDR2、HCDR3、及びLCDR1、LCDR2、LCDR3の配列は、任意選択ですべてが(又はそれぞれが独立して)Kabat番号付けシステムの配列、Chotia番号付けシステムの配列、IMGT番号付けの配列、又はその他の任意の好適な番号付けシステムの配列であると特定することができる。任意選択で前記軽鎖又は重鎖のCDRの任意の1つ又は複数は、1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つ、又はそれ以上のアミノ酸の改変(例えば置換、挿入、又は欠失)を含んでよい。
【0105】
別の態様では抗体又は抗体断片が提供され、抗体又は抗体断片は、アミノ酸配列SYWVH (配列番号30)又はその少なくとも3個若しくは4個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい12D12のHCDR1領域、アミノ酸配列VIDPSDSYTSYNQNFKG (配列番号31)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい12D12のHCDR2領域、アミノ酸配列GERYDGDYFAMDY (配列番号32)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい12D12のHCDR3領域、アミノ酸配列RASENIYSNLA (配列番号33)又はその少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい12D12のLCDR1領域、アミノ酸配列AATNLAD (配列番号34)又はその少なくとも4個、5個、若しくは6個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよい12D12のLCDR2領域、アミノ酸配列QHFWNTPRT (配列番号35)又はその少なくとも4個、5個、6個、若しくは7個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい12D12のLCDR3領域を含む。
【0106】
それぞれのVH及びVL並びに抗体3H5、27C10、及び27H5は、それぞれ配列番号36~37、38~39、及び40~41で示す。抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びLCDR1、LCDR2、LCDR3の配列は、任意選択ですべてが(又はそれぞれが独立して)Kabat番号付けシステムの配列、Chotia番号付けシステムの配列、IMGT番号付けの配列、又はその他の任意の好適な番号付けシステムの配列であると特定することができる。
【0107】
本明細書の実施形態のいずれかの別の態様では、重鎖CDR(例えばCDR1、2、及び/又は3)は、マウスIGHV1(例えばIGHV1-66若しくはIGHV-1-66*01、又はIGHV1-84若しくはIGHV1-84*01)遺伝子によって、又はこれに対応する若しくはこれと少なくとも80%、90%、95%、98%、若しくは99%同一のラット、非ヒト霊長類、若しくはヒトの遺伝子によって、コードされ、又はそれに由来すると特徴づけられ得る。本明細書の実施形態のいずれかの別の態様では、軽鎖CDR(例えばCDR1、2、及び/又は3)は、マウスIGKV3遺伝子(例えばIGKV3-4若しくはIGKV3-4*01、又はIGKV3-5若しくはIGKV3-5*01遺伝子)によって、又はこれに対応する若しくはこれと少なくとも80%、90%、95%、98%、若しくは99%同一のラット、非ヒト霊長類、若しくはヒトの遺伝子によってコードされ、又はそれに由来すると特徴づけられ得る。
【0108】
本明細書の実施形態のいずれかの別の態様では、重鎖CDR(例えばCDR1、2、及び/又は3)は、マウスIGHV2(例えばIGHV1-3若しくはIGHV1-3*01)遺伝子によって、又はこれに対応する若しくはこれと少なくとも80%、90%、95%、98%、若しくは99%同一のラット、非ヒト霊長類、若しくはヒトの遺伝子によって、コードされ、又はそれに由来すると特徴づけられ得る。本明細書の実施形態のいずれかの別の態様では、軽鎖CDR(例えばCDR1、2、及び/又は3)は、マウスIGKV10遺伝子(例えばIGKV10-96若しくはIGKV10-96*02遺伝子)によって、又はこれに対応する若しくはこれと少なくとも80%、90%、95%、98%、若しくは99%同一のラット、非ヒト霊長類、若しくはヒトの遺伝子によって、コードされ、又はそれに由来すると特徴づけられ得る。
【0109】
本明細書の実施形態のいずれかの別の態様では、重鎖CDR(例えばCDR1、2、及び/又は3)は、マウスIGHV1又はIGHV1-84遺伝子(例えばIGHV1-84*01遺伝子)によってコードされると特徴づけられ得る。本明細書の実施形態のいずれかの別の態様では、軽鎖CDR(例えばCDR1、2、及び/又は3)は、マウスIGKV3又はIGKV3-5遺伝子(例えばIGKV3-5*01)によってコードされると特徴づけられ得る。
【0110】
本明細書の実施形態のいずれかの別の態様では、12D12、26D8、18E1、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12の重鎖及び軽鎖のCDR1、2、及び3のいずれかは、その少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の連続するアミノ酸の配列によって、及び/又は対応する配列番号に列挙された特定のCDR又はCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するとして、特徴づけられ得る。
【0111】
任意選択で、いずれかの実施形態では、12D12、26D8、18E1、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12抗体は、任意選択でエフェクター機能(ヒトFcγ受容体への結合)を低下させるためのアミノ酸置換を更に含むヒトIgG型、任意選択でヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプの免疫グロブリン重鎖定常領域に融合したそれぞれの抗体の抗原結合領域(例えば重鎖CDR1、2、及び3)の一部又は全部を含む重鎖を有するとして特定することができる。任意選択で、いずれかの実施形態では、12D12、26D8、18E1、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12抗体は、ヒトカッパ型の免疫グロブリン軽鎖定常領域に融合したそれぞれの抗体の抗原結合領域(例えば軽鎖CDR1、2、及び3)の一部又は全部を含む軽鎖を有するとして特定することができる。
【0112】
抗体2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、及び48F12のそれぞれの重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列をTable A(表1)に列挙する。特定の実施形態では、モノクローナル抗体2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12と本質的に同じエピトープ又は決定基に結合する抗体が提供される。任意選択で抗体は抗体2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12の超可変領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかでは、抗体26D8はアミノ酸配列及び/又はそれをコードする核酸配列によって特徴づけられ得る。一実施形態では、モノクローナル抗体は2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12のFab又はF(ab')2部分を含む。2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12の重鎖可変領域を含む抗体又は抗体断片も提供される。一実施形態によれば、抗体又は抗体断片は、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、若しくは48F12、又は2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、若しくは48F12の軽鎖可変領域のCDRの1つ、2つ、若しくは3つを更に含む抗体又は抗体断片も提供される。HCDR1、2、3、及びLCDR1、2、3の配列は任意選択ですべてが(又はそれぞれが独立して)Kabat番号付けシステムの配列、Chotia番号付けシステムの配列、IMGT番号付けの配列、又はその他の任意の好適な番号付けシステムの配列であると特定することができる。任意選択で前記軽鎖又は重鎖のCDRの任意の1つ若しくは複数は、1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つ、又はそれ以上のアミノ酸の改変(例えば置換、挿入、又は欠失)を含んでよい。
【0113】
別の態様では、
アミノ酸配列NYYMQ(配列番号139)又はその少なくとも3個、4個、若しくは5個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよく、任意選択でHCDR1(又はVH)がKabat位置32、33、34、及び/又は35においてアミノ酸置換を含み、任意選択でHCDR1(又はVH)がKabat位置32、33、34、及び/又は35において少なくとも2つの芳香族残基(例えばY、H、又はF)を含み、任意選択でHCDR1(又はVH)がKabat位置32において芳香族残基及び/又は35において芳香族残基、N、又はQを含む、2H2BのHCDR1領域(Kabat位置31~35)、
アミノ酸配列WIFPGSGESSYNEKFKG (配列番号140)若しくはWIFPGSGESNYNEKFKG (配列番号161)又はその少なくとも4、5、6、7、8、9、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよく、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよく、任意選択でHCDR2(又はVH)がKabat位置52A、54、55、56、57、58、60、及び/又は65においてアミノ酸置換を含み、任意選択で52Aにおける残基がP又はLであり、任意選択で54における残基がG、S、N、又はTであり、任意選択で55における残基がG、N、又はYであり、任意選択で56における残基がE又はDであり、任意選択で57における残基がS又はTであり、任意選択で58における残基がS、K、又はNであり、任意選択で60における残基がN又はSであり、任意選択で65における残基がG又はVである、2H2BのHCDR2領域(Kabat位置50~65)、
アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)又はその少なくとも4、5、6、7、8、9、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよく、任意選択でHCDR3(又はVH)がKabat位置95においてアミノ酸置換を含み、任意選択で95における残基がT又はSであり、任意選択でHCDR3(VH)がKabat位置101においてアミノ酸置換を含み、任意選択で101における残基がG又はVである、2H2BのHCDR3領域(Kabat位置95~102)、
アミノ酸配列IPSESIDSYGISFMH (配列番号142)又はその少なくとも4、5、6、7、8、9、若しくは10個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよく、任意選択でLCDR1(又はVL)がKabat位置24、25、26、27、27A、28、33、及び/又は34においてアミノ酸置換を含み、任意選択で24における残基がI又はRであり、任意選択で25における残基がA、P、又はVであり、任意選択で26における残基がS又はNであり、任意選択で27における残基がE又はDであり、任意選択で27Aにおける残基がS、G、T、I、又はNであり、任意選択で28における残基がY又はFであり、任意選択で33における残基がM、I、又はLであり、任意選択で34における残基がH又はSであり、任意選択でLCDR1(又はVL)がKabat位置29、30、31、及び/又は32においてアミノ酸欠失を含む、2H2BのKabat LCDR1領域(Kabat位置34~34)、
アミノ酸配列RASNLES (配列番号143)又はその少なくとも4、5、若しくは6個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよく、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が異なるアミノ酸で置換されていてもよく、任意選択でLCDR2(又はVL)がKabat位置50、53、及び/又は55においてアミノ酸置換を含み、任意選択で50における残基がR又はGであり、任意選択で53における残基がN、T、又はIであり、任意選択で54における残基がD、E、又はVである、2H2BのKabat LCDR2領域(Kabat位置50~56)、
アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号144)又はその少なくとも4、5、6、7、若しくは8個の連続するアミノ酸の配列を含み、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ若しくは複数が欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよく、任意選択でLCDR3(又はVL)がKabat位置91、94、及び/又は96においてアミノ酸置換を含み、任意選択で91における残基がS又はTであり、任意選択で94における残基がD又はAであり、任意選択で96における残基がF又はWである、2H2BのKabat LCDR3領域(Kabat位置89~97)
を含む、抗体又は抗体断片(又はそのそれぞれのVH若しくはVLドメイン)が提供される。
【0114】
別の態様では、アミノ酸配列NFYIH(配列番号145)を含む2A8AのHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGETKFNEKFKV(配列番号146)を含む2A8AのHCDR2領域、アミノ酸配列SWNYDARWGY(配列番号147)を含む2A8AのHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSYGISFLH(配列番号148)を含む2A8AのLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES(配列番号149)を含む2A8AのLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT(配列番号150)を含む2A8AのLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0115】
別の態様では、アミノ酸配列NYYVQ (配列番号151)を含む2C4のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGETNYNEKFKA (配列番号152)を含む2C4のHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む2C4のHCDR3領域、アミノ酸配列RPSENIDSYGISFMH (配列番号181)を含む2C4のLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES(配列番号149)を含む2C4のLCDR2領域、アミノ酸配列QQTNEDPFT (配列番号153)を含む2C4のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0116】
別の態様では、アミノ酸配列NYYMQ (配列番号154)を含む2E2BのHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGGGESNYNEKFKG (配列番号155)を含む2E2BのHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む2E2BのHCDR3領域、アミノ酸配列IPSESIDSYGISFMH (配列番号156)を含む2E2BのLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES(配列番号149)を含む2E2BのLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む2E2BのLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0117】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIQ (配列番号157)を含む2C8のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGNGETNYNEKFKG (配列番号158)を含む2C8のHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む2C8のHCDR3領域、アミノ酸配列RANESIDSYGISFMH (配列番号159)を含む2C8のLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLDS (配列番号160)を含む2C8のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む2C8のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0118】
別の態様では、アミノ酸配列NYYMQ(配列番号154)を含む2E2CのHCDR1領域;アミノ酸配列WIFPGGGESNYNEKFKG(配列番号161)を含む2E2CのHCDR2領域;アミノ酸配列TWNYDARWGY(配列番号141)を含む2E2CのHCDR3領域;アミノ酸配列IPSESIDSYGISFMH(配列番号162)を含む2E2CのLCDR1領域;アミノ酸配列RASNLES(配列番号149)を含む2E2CのLCDR2領域;アミノ酸配列QQSNEDPFT(配列番号150)を含む2E2CのLCDR3領域を含む抗体又は抗体断片が提示される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙された配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸からなる配列として特徴づけられ得るが、任意選択で、これらのアミノ酸のうちの1つ又は複数は、削除され又は異なるアミノ酸により置換され得る。
【0119】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIH (配列番号163)を含む2A9のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGETNYNEKFKV (配列番号164)を含む2A9のHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む2A9のHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSYGISFMH (配列番号165)を含む2A9のLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)を含む2A9のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む2A9のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0120】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIH(配列番号163)を含む2E11のHCDR1領域;アミノ酸配列WIFPGSGDTNYNEKFKG(配列番号166)を含む2E11のHCDR2領域;アミノ酸配列TWNYDARWGY(配列番号141)を含む2E11のHCDR3領域;アミノ酸配列RVSESIDSYGISFMH(配列番号167)を含む2E11のLCDR1領域;アミノ酸配列RASTLES(配列番号168)を含む2E11のLCDR2領域;アミノ酸配列QQSNEDPFT(配列番号150)を含む2E11のLCDR3領域を含む抗体又は抗体断片が提示される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙された配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸からなる配列として特徴づけられ得るが、任意選択で、これらのアミノ酸のうちの1つ又は複数は、削除され又は異なるアミノ酸により置換され得る。
【0121】
別の態様では、アミノ酸配列NFYIH (配列番号145)を含む2E8のHCDR1領域;アミノ酸配列WIFPGNGETNYSEKFKG(配列番号169)を含む2E8のHCDR2領域;アミノ酸配列TWNYDARWVY(配列番号170)を含む2E8のHCDR3領域;アミノ酸配列RASDGIDSYGISFMH(配列番号171)を含む2E8のLCDR1領域;アミノ酸配列RASILES(配列番号172)を含む2E8のLCDR2領域;アミノ酸配列QQTNEDPFT(配列番号153)を含む2E8のLCDR3領域を含む抗体又は抗体断片が提示される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙された配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸からなる配列として特徴づけられ得るが、任意選択で、これらのアミノ酸のうちの1つ又は複数は、削除され又は異なるアミノ酸により置換され得る。
【0122】
別の態様では、アミノ酸配列NFYIH (配列番号145)を含む2H12のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGNGETNYSEKFKG (配列番号173)を含む2H12のHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む2H12のHCDR3領域、アミノ酸配列RASDGIDSYGISFMH (配列番号174)を含む2H12のLCDR1領域、アミノ酸配列RASTLES (配列番号168)を含む2H12のLCDR2領域、アミノ酸配列QQTNEAPFT (配列番号175)を含む2H12のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0123】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIN (配列番号176)を含む1E4BのHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGNGDTNYNEKFKG (配列番号177)を含む1E4BのHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む1E4BのHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSYMS (配列番号178)を含む1E4BのLCDR1領域、アミノ酸配列GASNLES (配列番号179)を含む1E4BのLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPWT (配列番号180)を含む1E4BのLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0124】
別の態様では、アミノ酸配列NFYIH (配列番号145)を含む3E5のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGTGETNFNEKFKV (配列番号182)を含む3E5のHCDR2領域、アミノ酸配列SWNYDARWGY (配列番号183)を含む3E5のHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSFGISFMH (配列番号184)を含む3E5のLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)を含む3E5のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEAPFT (配列番号185)を含む3E5のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0125】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIH (配列番号163)を含む3E7AのHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGETNFNEKFKG (配列番号186)を含む3E7AのHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む3E7AのHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSYGISFMH (配列番号187)を含む3E7AのLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)を含む3E7AのLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む3E7AのLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0126】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIH (配列番号163)を含む3E7A又は3E7BのHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGETNFNEKFKG (配列番号188)を含む3E7A又は3E7BのHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む3E7A又は3E7BのHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSYGISFMH (配列番号189)を含む3E7A又は3E7BのLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)又はRASNLVS(配列番号190)を含む3E7A又は3E7BのLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む3E7A又は3E7BのLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0127】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIH (配列番号163)を含む3E9BのHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGETNYNEKFKG (配列番号191)を含む3E9BのHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む3E9BのHCDR3領域、アミノ酸配列RASETIDSYGISFMH (配列番号192)を含む3E9BのLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)を含む3E9BのLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む3E9BのLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0128】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIQ (配列番号157)を含む3F5のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGNNETNYNEKFKG (配列番号193)を含む3F5のHCDR2領域、アミノ酸配列SWNYDARWGY (配列番号147)を含む3F5のHCDR3領域、アミノ酸配列RASEIIDSYGISFMH (配列番号194)を含む3F5のLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)を含む3F5のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む3F5のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0129】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIH (配列番号163)を含む4C11BのHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGETNYSEKFKG (配列番号195)を含む4C11BのHCDR2領域、アミノ酸配列SWNYDARWGY (配列番号147)を含む4C11BのHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSYGISFMH (配列番号196)を含む4C11BのLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)を含む4C11BのLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む4C11BのLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0130】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIQ(配列番号157)を含む4E3A又は4E3BのHCDR1領域;アミノ酸配列WIFPGSGETNYNENFKA(配列番号197)、又はWIFPGSGETNYNENFRA(配列番号198)を含む4E3A又は4E3BのHCDR2領域;アミノ酸配列TWNYDARWGY(配列番号141)を含む4E3A又は4E3BのHCDR3領域;アミノ酸配列RPSENIDSYGISFMH(配列番号199)を含む4E3A又は4E3BのLCDR1領域;アミノ酸配列RASNLES(配列番号149)を含む4E3A又は4E3BのLCDR2領域;アミノ酸配列QQSNEDPFT(配列番号150)を含む4E3A又は4E3BのLCDR3領域を含む抗体又は抗体断片が提示される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙された配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸からなる配列として特徴づけられ得るが、任意選択で、これらのアミノ酸のうちの1つ又は複数は、削除され又は異なるアミノ酸により置換され得る。
【0131】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIH (配列番号163)を含む4H3のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGDTNYNEKFKG (配列番号200)を含む4H3のHCDR2領域、アミノ酸配列TWNYDARWGY (配列番号141)を含む4H3のHCDR3領域、アミノ酸配列RVSESIDSYGISFMH (配列番号201)を含む4H3のLCDR1領域、アミノ酸配列RASTLES (配列番号168)を含む4H3のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む4H3のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0132】
別の態様では、アミノ酸配列NYYIH (配列番号163)を含む5D9のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFLGSGETNYNEKFKG (配列番号202)を含む5D9のHCDR2領域、アミノ酸配列SWNYDARWGY (配列番号147)を含む5D9のHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSYGISFIH (配列番号203)を含む5D9のLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)を含む5D9のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む5D9のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0133】
別の態様では、アミノ酸配列NFYIH (配列番号145)を含む6C6のHCDR1領域、アミノ酸配列WIFPGSGETNYNERFKG (配列番号204)を含む6C6のHCDR2領域、アミノ酸配列SWNYDARWGY (配列番号147)を含む6C6のHCDR3領域、アミノ酸配列RASESIDSYGISFMH (配列番号205)を含む6C6のLCDR1領域、アミノ酸配列RASNLES (配列番号149)を含む6C6のLCDR2領域、アミノ酸配列QQSNEDPFT (配列番号150)を含む6C6のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0134】
別の態様では、アミノ酸配列NFYIH(配列番号145)を含む2D8のHCDR1領域;アミノ酸配列WIFPGSGETNFNEKFKV(配列番号206)を含む2D8のHCDR2領域;アミノ酸配列SWNYDARWGY(配列番号147) を含む2D8のHCDR3領域;アミノ酸配列RASESVDSYGISFMH(配列番号 207)を含む2D8のLCDR1領域;アミノ酸配列RASILES(配列番号172)を含む2D8のLCDR2領域;アミノ酸配列QQSNEDPFT(配列番号150)を含む2D8のLCDR3領域を含む抗体又は抗体断片が提示される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙された配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸からなる配列として特徴づけられ得るが、任意選択で、これらのアミノ酸のうちの1つ又は複数は、削除され又は異なるアミノ酸により置換され得る。
【0135】
別の態様では、アミノ酸配列SYGVS (配列番号208)を含む48F12のHCDR1領域、アミノ酸配列IIWGDGSTNYHSALVS (配列番号209)を含む48F12のHCDR2領域、アミノ酸配列PNWDYYAMDY (配列番号210)を含む48F12のHCDR3領域、アミノ酸配列RASQDISNYLN (配列番号211)を含む48F12のLCDR1領域、アミノ酸配列YTSRLHS (配列番号212)を含む48F12のLCDR2領域、アミノ酸配列QQGITLPLT (配列番号213)を含む48F12のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体断片が提供される。任意選択で、任意のCDR配列は、列挙した配列の少なくとも4、5、6、又は7個の連続するアミノ酸の配列として特徴づけられ得、任意選択でこれらのアミノ酸の1つ又は複数は欠失し又は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0136】
抗体、例えば12D12、26D8、18E1、27C10、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12のいずれかにおいて、特定した可変領域及びCDR配列は、配列の改変、例えば置換(1、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上の置換)を含み得る。一実施形態では、重鎖及び軽鎖のCDR1、2、及び/又は3のいずれか1つ又は複数(又はすべて)は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のアミノ酸置換を含み、任意選択で、置換された残基はヒト起源の配列に存在する残基である。一実施形態では、置換は保存的改変である。保存的配列改変は、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に顕著に影響し又はこれを変更しないアミノ酸の改変を指す。そのような保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、及び欠失が含まれる。改変は当技術で既知の標準的な手法、例えば部位指向的突然変異生成及びPCR媒介突然変異生成によって抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、典型的にはアミノ酸残基が同様の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。特定した可変領域及びCDR配列は、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を含み得る。置換が行われる場合には、好ましい置換は保存的改変ということになる。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。したがって、抗体のCDR領域の中の1つ又は複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、変更された抗体は本明細書に記載したアッセイを用いて、保持された機能(即ち、本明細書で説明した特性)について試験することができる。
【0137】
任意選択で、いずれの実施形態においても、VHはKabat位置32、33、34、及び/又は35においてアミノ酸置換を含み得る。VHは、Kabat位置52A、54、55、56、57、58、60、及び/又は65においてアミノ酸置換を含み得る。いずれの実施形態においても、VHはKabat位置95及び/又は101においてアミノ酸置換を含み得る。いずれの実施形態においても、VLはKabat位置24、25、26、27、27A、28、33、及び/若しくは34においてアミノ酸置換を、並びに/又はKabat位置29、30、31、及び/若しくは32においてアミノ酸欠失を含み得る。いずれの実施形態においても、VLはKabat位置50、52、及び/又は55においてアミノ酸置換を含み得る。いずれの実施形態においても、VLはKabat位置91、94、及び/又は96においてアミノ酸置換を含み得る。
【0138】
任意選択で、本明細書におけるいずれの実施形態においても、抗ILT2抗体は、本明細書に記載した抗体、重鎖及び/若しくは軽鎖、CDR、又はそれらの可変領域のいずれかの機能保存的バリアントであるとして特徴づけられ得る。「機能保存的バリアント」は、タンパク質又は抗体の中の所与のアミノ酸残基が、同様の特性(例えば極性、水素結合能力、酸性、塩基性、疎水性、芳香族性、その他)を有するアミノ酸によるアミノ酸の置換えを含むがこれらに限定されない、ポリペプチドの全体のコンフォメーション及び機能を変更せずに変化したバリアントである。保存されていると示されたアミノ酸以外のアミノ酸はタンパク質において異なり、したがって同様の機能を有する任意の2つのタンパク質の間のタンパク質又はアミノ酸の配列の類似性パーセントは変化し、例えば類似性がMEGALIGNアルゴリズムに基づくCluster Method等のアラインメントスキームに従って決定して、例えば70%~99%であってよい。「機能保存的バリアント」は、BLAST又はFASTAアルゴリズムによって決定して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、更に好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有し、それが比較される天然の又は親のタンパク質(例えばその重鎖若しくは軽鎖、又はCDR若しくは可変領域)と同じ又は実質的に同様の特性又は機能を有するポリペプチドも含む。一実施形態では、抗体は、抗体2H2B、48F12、3F5、12D12、26D8、又は18E1の重鎖可変領域の機能保存的バリアントである重鎖可変領域、及びそれぞれの2H2B、48F12、3F5、12D12、26D8、又は18E1抗体の軽鎖可変領域の機能保存的バリアントである軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗体は、本明細書で開示したヒト重鎖定常領域、任意選択でヒトIgG4定常領域、任意選択で改変されたIgG(例えばIgG1)定常領域、例えば配列番号42~45のいずれかの定常領域に融合した抗体2H2B、48F12、3F5、12D12、26D8、又は18E1の重鎖可変領域の機能保存的バリアントである重鎖、及びヒトCカッパ軽鎖定常領域に融合したそれぞれの2H2B、48F12、3F5、12D12、26D8、又は18E1の軽鎖可変領域の機能保存的バリアントである軽鎖を含む。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
一実施形態では、抗ILT2抗体がヒトFcγ受容体、例えばCD16A、CD16B、CD32A、CD32B、及び/又はCD64のいずれか1つ又は複数との実質的に特異的な結合性を有しないように抗ILT2抗体を調製することができる。そのような抗体は、Fcγ受容体への結合性を欠くか、低い結合性を有することが知られている種々の重鎖の定常領域を含み得る。或いは、Fc受容体の結合を避けるために、定常領域、例えばF(ab')2断片を含まない(又はその一部を含む)抗体断片を用いることができる。Fc受容体の結合は、例えばBIACOREアッセイにおけるFc受容体タンパク質への抗体の結合性の試験を含む当技術で既知の方法に従って評価可能である。また一般に、Fc受容体への結合を最小化又は除去するために(例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上のアミノ酸置換を導入することによって)Fc部分を改変した任意の抗体IgGアイソタイプを用いることができる(例えばその開示が参照により本明細書に組み込まれるWO 03/101485を参照されたい)。Fc受容体の結合を評価するための細胞系アッセイ等のアッセイは当技術で公知であり、例えばWO03/101485に記載されている。
【0147】
一実施形態では、抗体は、エフェクター細胞と最小の相互作用を有する抗体をもたらすFc領域における1つ又は複数の突然変異を含み得る。エフェクター機能の低下又は消滅は、抗体のFc領域内の突然変異により引き起こすことができ、また当技術分野において記載されている: N297A突然変異、LALA突然変異、(Strohl, W.、2009, Curr. Opin. Biotechnol. 20巻(6):685~691頁)、及びD265A(Baudinoら、2008, J. Immunol. 181巻: 6664~69頁)。Heusserらの国際公開第2012/065950号も参照。これらの本開示は本明細書において参考として組み込まれている。一実施形態では、抗体はヒンジ領域に1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、抗体はIgG1又はIgG2であり、残基233~236、任意選択で233~238(EUの番号付け)に1つ、2つ、又は3つの置換を含む。一実施形態では、抗体はIgG4であり、残基327、330、及び/又は331(EUの番号付け)に1つ、2つ、又は3つの置換を含む。FcγR相互作用が低下している改変されたFc IgG1抗体の例は、IgG1 Fcアミノ酸配列においてL234A及びL235A突然変異を含むLALA突然変異体である。Fc低下突然変異の別の例は、例えばDAPA(D265A、P329A)突然変異としてIgG1抗体で用いられる残基D265における、又はD265及びP329における突然変異である(米国特許第6737056号)。別の改変されたIgG1抗体は残基N297に突然変異を含み(例えばN297A、N297S突然変異)、これは無グリコシル化/非グリコシル化抗体をもたらす。他の突然変異は、残基L234及びG237における置換(L234A/G237A)、残基S228、L235、及びR409における置換(S228P/L235E/R409K、T、M、L)、残基H268、V309、A330、及びA331における置換(H268Q/V309L/A330S/A331S)、残基C220、C226、C229、及びP238における置換(C220S/C226S/C229S/P238S)、残基C226、C229、E233、L234、及びL235における置換(C226S/C229S/E233P/L234V/L235A)、残基K322、L235、及びL235における置換(K322A/L234A/L235A)、残基L234、L235、及びP331における置換(L234F/L235E/P331S)、残基234、235、及び297における置換、残基E318、K320、及びK322における置換(L235E/E318A/K320A/K322A)、残基における置換(V234A、G237A、P238S)、残基243及び264における置換、残基297及び299における置換、EU番号付けシステムによって定義される残基233、234、235、237、及び238がPAAAP、PAAAS、及びSAAASから選択される配列を含む置換を含む(WO2011/066501を参照されたい)。
【0148】
一実施形態では、抗体は、以下のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%、95%、若しくは99%同一であるがKabat位置234、235、及び331(下線部)のアミノ酸残基を保持しているアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0149】
【0150】
一実施形態では、抗体は、以下のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%、95%、若しくは99%同一であるがKabat位置234、235、及び331(下線部)のアミノ酸残基を保持しているアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0151】
【0152】
一実施形態では、抗体は、以下のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%、95%、若しくは99%同一であるがKabat位置234、235、237、330、及び331(下線部)のアミノ酸残基を保持しているアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0153】
【0154】
一実施形態では、抗体は、以下のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%、95%、若しくは99%同一であるがKabat位置234、235、237、及び331(下線部)のアミノ酸残基を保持している配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0155】
【0156】
抗体の断片及び誘導体(本出願で使用される場合、別途記載されなければ又は文脈より明らかに矛盾しなければ、用語「抗体」又は「抗体(複数)」に包含される)が、当技術分野において公知である技術により生成可能である。「断片」は、天然の抗体の一部分、一般的に抗原結合部位又は可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディ;(1)単鎖Fv分子、(2)関連する重鎖部分を有さない、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有する1つの軽鎖可変ドメイン又はその断片のみを含有する単鎖ポリペプチド、及び(3)関連する軽鎖部分を有さない、重鎖可変領域の3つのCDRを含有する1つの重鎖可変領域又はその断片のみを含有する単鎖ポリペプチドを非限定的に含む、連続するアミノ酸残基の1つの途切れのない配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体断片(本明細書では「単鎖抗体断片」又は「単鎖ポリペプチド」と呼ぶ);並びに抗体断片から形成された多重特異性(例えば、二重特異性)抗体が挙げられる。特にナノボディ、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体又は「dAb」が挙げられる。
【0157】
特定の実施形態では、抗体を産生するハイブリドーマのDNAが、発現ベクター中への挿入前に、例えばヒト以外の相同配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインに対応するコーディング配列に置換することによって(例えば、Morrisonら、PNAS 6851頁(1984))、又は非免疫グロブリンポリペプチドに対するコーディング配列の全部又は一部を、免疫グロブリンコーディング配列に共有結合させることによって改変され得る。このようにして、オリジナルの抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体が調製される。一般的に、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインについて置換される。
【0158】
任意選択で、抗体はヒト化される。「ヒト化された」形態の抗体は、マウス免疫グロブリンに由来する配列を最低限度で含有する特異的キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖又は断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2、又は抗体のその他の抗原結合性の部分配列等)である。ほとんどの部分において、ヒト化抗体は、オリジナルの抗体の所望の特異性、親和性、及び能力を維持しつつ、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基がオリジナルの抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換わっているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0159】
いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応するヒト以外の残基に置き換わり得る。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はインポートされたCDR若しくはフレームワーク配列のいずれにおいても見出されない残基を含み得る。このような改変は、抗体性能を更に洗練化及び最適化するためになされる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ及び一般的に2つの可変ドメインについて、その実質的にすべてを含み、その場合、すべて又は実質的にすべてのCDR領域がオリジナルの抗体のCDRに対応し、またFR領域のすべて又は実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分もやはり含むのが最適である。さらなる詳細については、Jonesら、Nature, 321巻, 522頁(1986); Reichmannら、Nature, 332巻, 323頁(1988); Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2巻, 593頁(1992); Verhoeyen et Science, 239巻, 1534頁;及び米国特許第4,816,567号を参照。その全開示は本明細書において参考として組み込まれている。抗体をヒト化するための方法は当技術分野において周知されている。
【0160】
軽鎖及び重鎖のいずれにおいても、ヒト化抗体を作る際に使用されるヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに照らしてスクリーニングされる。次にマウスの配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体用のヒトフレームワーク(FR)として受け入れられる(Simsら、J. Immunol. 151巻, 2296頁(1993); Chothia及びLesk、J. Mol. 196巻, 1987, 901頁)。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定の部分集団に属する全ヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特別なフレームワークを使用する。同一のフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体で使用可能である(Carterら、PNAS 89, 4285頁(1992); Prestaら、J. Immunol., 151巻, 2623頁(1993))。
【0161】
ILT-2受容体に対して高親和性を保持し、またその他の好ましい生物学的特性を保持しつつ、抗体がヒト化されることが更に重要である。この目標を実現するために、1つの方法によれば、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念上のヒト化生成物を分析するプロセスにより調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、また当業者にとってなじみ深い。選択された免疫グロブリン配列候補について、その可能性が高い三次元構造を具象化及び表示するコンピュータープログラムが利用可能である。このような表示を検討すれば、免疫グロブリン配列候補の機能において、残基がおそらくは有するであろう役割を分析すること、即ち免疫グロブリン候補がその抗原と結合する能力に影響を及ぼす残基について分析することが可能になる。このように、所望の抗体特性、例えば標的抗原に対する親和性の向上等が達成されるように、FR残基がコンセンサス配列及びインポート配列から選択及び統合され得る。一般的に、CDR残基が、抗原結合に対する影響に直接及び最も実質的に関与している。
【0162】
「ヒト化」モノクローナル抗体を作製する別の方法は、免疫化で使用されるマウスとしてXenoMouse(Abgenix社、Fremont、CA)を使用することである。XenoMouseは、その免疫グロブリン遺伝子が機能的なヒト免疫グロブリン遺伝子に置き換わったマウスに基づくマウス宿主である。したがって、このマウスにより又はこのマウスのB細胞から作製されたハイブリドーマ内で産生される抗体は、すでにヒト化されている。XenoMouseは、本明細書において参考としてそのまま組み込まれている米国特許第6,162,963号に記載されている。
【0163】
ヒト抗体は、様々なその他の技術に基づき、例えば免疫化のために、ヒト抗体レパートリーを発現するように工学操作されたその他の遺伝子導入動物を使用することにより(Jakobovitzら、Nature 362巻(1993) 255頁)、又はファージディスプレイ法を使用する抗体レパートリーの選択等により、やはり生成され得る。そのような技術は当業者にとって公知であり、また本出願に開示されるように、モノクローナル抗体から開始して実施され得る。
【0164】
組成物及びキット
EGFR結合抗体及び/又はILT-2中和剤、例えば抗ILT-2抗体等を含む医薬組成物も本明細書に提示される。特に、1つの態様では、中和性の抗EGFR抗体及び中和性の抗ILT-2抗体、及び任意選択で、更に薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物が提示される。
【0165】
抗EGFR抗体及び/又はILT-2中和抗体が、1mg/ml~500mg/mlの濃度で医薬製剤に組込み可能であり、前記製剤は、2.0~10.0のpHを有する。
【0166】
抗EGFR抗体及び抗ILT-2薬剤は、同一又は個別の医薬製剤に含まれ得る。
【0167】
製剤は、緩衝システム、保存剤、等張剤、キレート化剤、安定剤、及び界面活性剤を更に含んでよい。一実施形態では、医薬製剤は水性製剤、即ち水を含む製剤である。そのような製剤は典型的には溶液又は懸濁液である。さらなる実施形態では、医薬製剤は水溶液である。用語「水性製剤」は、少なくとも50w/w%の水を含む製剤として定義される。同様に、用語「水溶液」は、少なくとも50w/w%の水を含む溶液として定義され、用語「水性懸濁液」は、少なくとも50w/w%の水を含む懸濁液として定義される。
【0168】
別の実施形態では、医薬製剤は凍結乾燥された製剤であり、医師又は患者は使用前に、それに溶媒及び/又は希釈剤を添加する。
【0169】
別の実施形態では、医薬製剤は前もって溶解することなしに即使用される、乾燥された(例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥された)製剤である。
【0170】
さらなる態様では、医薬製剤はそのような抗体及び緩衝剤の水溶液を含み、抗体は1mg/ml又はそれ以上の濃度で存在し、前記製剤は約2.0~約10.0のpHを有する。
【0171】
別の実施形態では、製剤のpHは約2.0~約10.0、約3.0~約9.0、約4.0~約8.5、約5.0~約8.0、及び約5.5~約7.5からなるリストから選択される範囲にある。
【0172】
さらなる実施形態では、緩衝剤は酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定の緩衝剤のそれぞれの1つが、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0173】
さらなる実施形態では、製剤は薬学的に許容される保存剤を更に含む。さらなる実施形態では、製剤は等張剤を更に含む。さらなる実施形態では、製剤はキレート化剤を更に含む。本発明のさらなる実施形態では、製剤は安定剤を更に含む。本発明のさらなる実施形態では、製剤は界面活性剤を更に含む。便利のため、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、19版、1995を参照する。
【0174】
本発明の医薬製剤中に他の成分が存在することも可能である。そのような追加の成分には、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、増量剤、浸透圧調整剤、キレート化剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン、ゼラチン、又はタンパク質)、及び両性イオン(例えばベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン、及びヒスチジン等のアミノ酸)が含まれ得る。そのような追加の成分は、当然ながら本発明の医薬製剤の全体の安定性に有害な影響を与えるべきではない。
【0175】
本発明による医薬組成物の投与は、任意の適する投与経路、例えば静脈内を通じてなし得る。好適な抗体製剤は、その他のすでに開発された治療用モノクローナル抗体と共に、経験を審査することによっても決定可能である。
【0176】
キット、例えば:
(i)抗EGFR抗体、及びILT-2中和剤、例えば抗ILT-2抗体等を含有する医薬組成物、又は
(ii)ILT-2中和剤、例えば抗ILT-2抗体等を含有する第1の医薬組成物、及び抗EGFR抗体を含有する第2の医薬組成物、又は
(iii)抗体を含有する医薬組成物、及び抗EGFR抗体を含有する第2の医薬組成物、及びILT-2中和剤、例えば抗ILT-2抗体等と共に前記抗EGFR抗体を投与するための指示書、又は
(iv) ILT-2中和剤、例えば抗ILT-2抗体等を含有する医薬組成物、及び抗EGFR抗体と共に前記ILT-2中和剤抗体を投与するための指示書
を含むキットも提示される。
【0177】
医薬組成物は、任意選択で、薬学的に許容される担体を含むものとして特定され得る。抗EGFR抗体又は抗ILT-2抗体は、任意選択で、本明細書における方法のいずれかで使用する場合、それに適合する治療有効量中に存在するものとして特定され得る。キットは、任意選択で、実践者(例えば、医師、看護士、又は患者)が、がんを有する患者に、その中に含まれる組成物を投与するのを可能にする指示書(例えば投与スケジュールを含む)も含み得る。任意の実施形態では、キットは、任意選択で、前記抗EGFR抗体を、前記抗ILT-2抗体と同時に、個別に、又は連続して投与するための指示書を含み得る。任意の実施形態では、キットは、任意選択で、がん(例えば、本明細書において更に記載されるがん)の処置で使用するための指示書を含み得る。任意の実施形態では、キットは、任意選択で、例えば結腸直腸癌の処置で使用するための指示書を含み得る。キットはシリンジも含み得る。
【0178】
任意選択で、キットは、上記提示の方法に基づき単回投与するための、有効量の抗EGFR抗体及び/又は抗ILT-2抗体をそれぞれ含有する単回投与医薬組成物の複数パッケージを含む。医薬組成物を投与するのに必要な装置又はデバイスもやはりキットに含まれ得る。例えば、キットは、ある量の抗EGFR抗体又は抗ILT-2抗体を含有する1つ又は複数の事前充填されたシリンジを提供し得る。
【0179】
悪性腫瘍の診断、予後予測、及び処置
個人におけるHNSCCがんを診断、予後予測、モニタリング、及び処置するのに有用な方法が記載される。個人における頭頸部のがんを診断、予後予測、モニタリング、及び処置するのに有用な方法が記載される。HNSCCは、頭部又は頸部領域において発生する扁平上皮細胞又は類基底の腫瘍であり、鼻腔、副鼻腔、口唇、口及び口腔、唾液腺、咽頭、又は喉頭の腫瘍が含まれる。抗ILT-2薬剤は、例えば、口腔・咽頭腫瘍、喉頭の腫瘍、口腔の腫瘍、及び下咽頭の腫瘍の処置において特に有用であり得る。そのような腫瘍は、腫瘍学分野の専門家、例えば内科医、腫瘍内科医、組織病理学者、及び腫瘍学の臨床医等によりルーチン的に同定される。HNSCCの処置には、その前悪性病変の処置も含まれる。HNSCCの前悪性病変として、例えば異形成、過形成、白板症、紅板症、又は毛舌症を挙げることができる。方法は、個人において、抗腫瘍免疫応答を強化及び/又は誘発することを目的とし得る。方法は、HNSCCを有する個人において、NK及び/又はCD8 T細胞(任意選択で、腫瘍浸潤性のNK及び/又はCD8 T細胞)の活性(例えば、がん細胞に対する細胞傷害活性)を強化及び/又は増強することを目的とし得る。任意選択で、抗腫瘍免疫応答は、少なくとも部分的にNK及び/又はCD8 T細胞により媒介される。別の実施形態では、方法は、EGFRに結合する抗体(例えば、セツキシマブ)により媒介される抗腫瘍免疫応答を強化及び/又は増強することを目的とし得る。
【0180】
1つの実施形態では、腫瘍又はがんは、例えばHLA-A及び/又はHLA-G発現腫瘍細胞を検出することにより、例えば免疫組織化学により評価した場合、HLA-A及び/又はHLA-Gの発現が失われている又は低いことにより特徴づけられることが公知である。1つの実施形態では、腫瘍、がんは、HLA-E発現により特徴づけられることが公知である。
【0181】
1つの実施形態では、抗EGFR抗体と併用されるILT-2中和抗体の使用が提示される。1つの実施形態では、HNSCCを有利に処置するために、本明細書に記載されるようなPD-1の阻害活性を中和する抗体と併用されるILT-2中和抗体の使用が提示される。
【0182】
1つの態様では、HLA-G陽性がんは、例えば腫瘍細胞の表面におけるHLA-A(例えば、HLA-A2)及び/又はHLA-Gの発現が失われている又は低レベルであることにより一般的に又は通常的に特徴づけられるタイプのがんであり、又はそのようなことが公知のプロファイルを有する。したがって、個人、又は個人から得られた生体サンプルを試験する工程に対する要件は存在しない。別の態様では、腫瘍又はがんがHLA-G及び/又はHLA-A2陽性又は陰性であるか判定するために、腫瘍又は腫瘍環境において、HLA-G及び/又はHLA-A2発現腫瘍細胞を検出することができる。1つの実施形態では、HLA-G及び/又はHLA-A2陰性がんは、HLA-G及び/又はHLA-A2発現細胞を実質的に欠くものと判定された(例えば、腫瘍生検内でのHLA-G及び/又はHLA-A2のin vitro検出により)腫瘍により特徴づけられる。1つの態様では、ILT-2中和抗体と抗EGFR抗体との併用が、HLA-G及びHLA-A2陰性腫瘍又はがんを有する個人を処置するのに使用される。1つの態様では、ILT-2中和抗体と抗EGFR抗体との併用が、HLA-G陰性腫瘍又はがんを有する個人を処置するのに使用される。1つの態様では、ILT-2中和抗体と抗EGFR抗体との併用が、HLA-A2陰性腫瘍又はがんを有する個人を処置するのに使用される。1つの態様では、ILT-2中和抗体と抗EGFR抗体との併用が、HLA-E陽性、HLA-G及び/又はHLA-A2陰性腫瘍又はがんを有する個人を処置するのに使用される。1つの態様では、ILT-2中和抗体と抗EGFR抗体との併用が、HLA-A2陰性腫瘍若しくはがんを有する個人、及び/又はHLA-G陰性腫瘍又はがんを有する個人を含む(又は含み得る)個人の集団を処置するのに使用される。
【0183】
個人が、HLA-G及び/又はHLA-A2ポリペプチドを発現する細胞により特徴づけられるがんを有するか判定する工程は、例えば、がん環境(例えば、腫瘍又は腫瘍隣接組織)に由来する細胞を含む個人から生体サンプルを取得する工程(例えば、生検を実施することにより)、前記細胞を、HLA-Gポリペプチドに結合する抗体、及び/又はHLA-A2ポリペプチドに結合する抗体と接触させる工程、並びに細胞がその表面上でHLA-G及び/又はHLA-A2を発現するか検出する工程を含み得る。任意選択で、個人がHLA-G及び/又はHLA-A2を発現する細胞を有するか判定する工程は、免疫組織化学アッセイを実施する工程を含む。
【0184】
本明細書で使用される場合、補助的投与又は併用投与(同時投与)は、同一又は異なる投与剤形で化合物を同時投与すること、又は化合物を個別に投与すること(例えば、連続投与)を含む。したがって、抗EGFR抗体はILT-2中和抗体と併用使用可能である。例えば、抗EGFR抗体及び抗ILT2抗体は、単一製剤で同時に投与され得る。或いは、抗EGFR抗体及び抗ILT-2抗体は、個別に投与されるように製剤化され得るが、また同時又は連続して投与される。
【0185】
別途明記しない限り、本明細書に記載される処置レジメン及び方法のいずれも、個人から得られた生体サンプル(例えば、がん細胞、がん組織、又はがん隣接組織を含む生体サンプル)中の細胞上でHLA分子が発現しているか検出する事前の工程を設け、又は設けずに使用され得る。1つの実施形態では、本明細書に開示される方法で処置されるがんは、HLA-Eにより特徴づけられるがんである。1つの実施形態では、がんは、HLA-E発現細胞の存在により一般的に特徴づけられることが公知の腫瘍又はがんである。
【0186】
別の実施形態では、ILT2中和抗体と抗EGFR抗体とを併用する、本明細書に記載される処置レジメン及び方法は、ヒトPD-1の阻害活性を中和する薬剤、例えばPD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する薬剤と更に併用して有利に使用され得る。ヒトPD-1の阻害活性を中和する薬剤又は抗体の例として、PD1又はPD-L1と結合する抗体が挙げられる。多くのそのような抗体は公知であり、また例えば、そのような薬剤が一般的に使用される代表的な量及び/又は頻度で使用可能である。1つの実施形態では、第2又は追加の第2の治療剤は、PD-1軸を阻害する(即ち、PD-1又はPD-L1を阻害する)薬剤(例えば、抗体)である。
【0187】
PD-1は、受容体のCD28ファミリーの阻害性メンバー(CD28、CTLA-4、ICOS、及びBTLAも含まれる)である。PD-1は、活性化B細胞、T細胞、及び骨髄細胞上で発現している(Okazakiら、(2002) Curr. Opin. Immunol. 14巻: 391779~82頁; Bennettら、(2003) J Immunol 170巻:711~8頁)。PD-1に対する2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2(PD-1に結合するとT細胞の活性化を下方制御することが明らかにされている)が同定されている(Freemanら、(2000) J Exp Med 192巻: 1027~34頁; Latchmanら、(2001) Nat Immunol 2巻:261~8頁; Carterら、(2002) Eur J Immunol 32巻:634~43頁)。PD-L1は、様々なヒトのがん内に豊富に存在する(Dongら、(2002) Nat. Med. 8巻:787~9頁)。PD-1とPD-L1との間の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体によって媒介される増殖の減少、及びがん性細胞による免疫回避を引き起こす。免疫抑制は、PD-1のPD-L1との局所的相互作用を阻害することにより反転し得るが、またその効果は、PD-1のPD-L2との相互作用もやはりブロックされるとき、加算的である。PD-1の遮断は、有利には、PD-L1誘発型のPD-1シグナル伝達を、例えばその天然リガンドPD-L1との相互作用をブロックすることにより阻止する抗体の使用を伴い得る。1つの態様では、抗体はPD-1と結合し(抗PD-1抗体)、そのような抗体は、PD-1とPD-L1との間及び/又はPD-1とPD-L2との間の相互作用をブロックし得る。別の態様では、抗体は、PD-L1と結合し(抗PD-L1抗体)、そしてPD-1とPD-L1との間の相互作用をブロックする。
【0188】
現在のところ、市販又は臨床評価されている、PD-1/PD-L1経路をブロックする薬剤が少なくとも6つ存在し、そのいずれも、本開示の抗ILT2抗体との併用において有用であり得る。1つの薬剤は、BMS-936558 (ニボルマブ/ONO-4538、Bristol-Myers Squibb社;以前はMDX-1106)である。ニボルマブ(商標名オプジーボ(登録商標))は、PD-1及びCD80の両方に対するPD-L1リガンドの結合を阻害する、FDA承認済みの完全ヒトIgG4抗PD-L1 mAbであり、また国際公開第2006/121168号において抗体5C4として記載されており、その開示は参考として本明細書に組み込まれている。メラノーマ患者の場合、最も顕著なORは、3mg/kgの用量の時に観察された一方、その他のがん型では10mg/kgであった。ニボルマブは、がん進行まで、3週間毎に10mg/kgで一般的に投与される。別の薬剤は、AstraZeneca社/Medimmune社により開発された抗PD-L1であり、また国際公開第2011/066389号及び米国特許第2013/034559号に記載されているデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標)、MEDI-4736)である。別の薬剤は、MK-3475 (Merck社製のヒトIgG4抗PD1 mAb)であり、ランブロリズマブ又はペンブロリズマブ(商標名Keytruda(登録商標))とも呼ばれ、黒色腫の処置についてFDAより承認されており、またその他のがんにおいて試験中である。ペンブロリズマブは、疾患進行まで、2又は3週間毎に、2mg/kg又は10mg/kgで試験された。別の薬剤は、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、MPDL3280A/RG7446、Roche社/Genentech社)、即ちFcγR結合性を最低限に抑えることにより有効性及び安全性を最適化するように設計された工学操作されたFcドメインを含有し、そしてその結果としての抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を内包するヒト抗PD-L1 mAbである。1以下、10、15、及び25mg/kgの用量のMPDL3280Aが、最長1年間、3週間毎に投与された。第III相トライアルにおいて、MPDL3280Aが、NSCLCを対象に、3週間毎に、静脈内輸液により1200mgで投与される。その他の態様では、処置又は使用は、任意選択で、PD-1軸を阻害する抗体又はその他の薬剤と組み合わせない(又はそれを用いた処置を除く)ように指定され得る。
【0189】
本開示は、がんを有するヒト個人を処置する際に使用される、NK細胞においてILT-2と結合し、及びILT-2の阻害活性を中和する抗体である薬剤も提示するが、ILT-2に結合する前記抗体は、抗EGFR抗体と併用して投与される。
【0190】
例えば、
前記個人が、HNSCC、任意選択で転移性及び/又は再発性のHNSCCを有する、上記記載の使用するための薬剤;
前記抗EGFR抗体が、EGFRを阻害する抗体である、上記記載の使用するための薬剤;
前記ILT-2中和剤が、ヒトILT-2タンパク質、任意選択でヒト又はヒト化の抗ILT-2抗体に結合する抗体である、上記記載の使用するための薬剤;
前記ILT-2中和剤が、HLA-G1に対するILT-2の結合を阻害する能力を有する抗体である、上記記載の使用するための薬剤;
前記ILT-2中和剤が、(a)配列番号14~16の配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2、及びH-CDR3ドメインと、配列番号17~19の配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2、及びL-CDR3ドメインのそれぞれ;又は(b)配列番号22~24の配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2、及びH-CDR3ドメインと、配列番号25~27の配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2、及びL-CDR3ドメインのそれぞれ;又は(c)配列番号30~32の配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2、及びH-CDR3ドメインと、配列番号33~35の配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2、及びL-CDR3ドメインのそれぞれを含む、上記記載の使用するための薬剤;
前記抗EGFR抗体及びILT-2に結合する前記抗体が、同時に、個別に、又は連続して投与される、上記記載の使用するための薬剤;
前記抗EGFR抗体及びILT-2に結合する前記抗体が、個別投与用として製剤化され、及び同時に又は連続して投与される、上記記載の使用するための薬剤;並びに/或いは
前記抗EGFR抗体が、0.1~10mg/kgの範囲の用量で投与され、及びILT-2に結合する前記抗体が、1~20mg/kgの範囲の用量で投与される、上記記載の使用するための薬剤
も提示される。1つの実施形態では、ILT-2中和抗体は、免疫細胞(例えば、CD8 T細胞、NK細胞)の腫瘍中への浸潤を誘発する又は増加させる量で投与可能である。
【0191】
併用処置法では、抗EGFR抗体が、ILT-2中和抗体と併用して投与されるとき、抗EGFR抗体及びILT-2中和抗体は、個別に、共に、若しくは連続して、又はカクテルの状態で投与可能である。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、ILT-2中和抗体の投与前に投与される。例えば、抗EGFR抗体は、ILT-2中和抗体の投与前のおよそ0~30日間投与可能である。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、抗ILT2抗体の投与前、約30分~約2週間、約30分~約1週間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~1日、又は約1~5日間投与される。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、ILT2中和抗体の投与と同時に投与される。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、ILT2中和抗体の投与の後に投与される。例えば、抗EGFR抗体は、ILT2中和抗体の投与後、およそ0~30日間投与可能である。いくつかの実施形態では、抗EGFR抗体は、ILT2中和抗体の投与の後、約30分~約2週間、約30分~約1週間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~1日、又は約1~5日間投与される。
【実施例】
【0192】
(実施例1)
ILT2(LILRB1)は健常ヒトドナーメモリーCD8 T細胞及びCD56dim NK細胞上に発現する
末梢血単核球上のLILRB1の発現を、健常ヒトドナーからの新鮮全血のフローサイトメトリーによって決定した。NK集団はCD3-CD56+細胞として決定した(抗CD3 AF700-BioLegend社 #300424、抗CD56 BV421-BD Biosciences社 #740076)。NK細胞の中で、CD56brightサブセットはCD16-細胞として同定し、CD56dimサブセットはCD16+細胞として同定した(抗CD16 BV650-BD Biosciences社 #563691)。CD4+及びCD8+ T細胞はそれぞれ、CD3+CD56-CD4+細胞及びCD3+CD56-CD8+細胞として同定した(CD3-上記参照、CD4 BV510-BD Biosciences社 #740161、CD8 BUV737-BD Biosciences社 #564629)。CD4+ T細胞集団の中で、Tconv及びTregはそれぞれ、CD127+CD25-/low及びCD127lowCD25high細胞として同定した(CD127 PE-Cy7-BD Biosciences社 #560822、CD25 VioBright-Miltenyi Biotec社 #130-104-274)。CD8+ T細胞集団の中で、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、及びエフェクターメモリーT細胞の集団はそれぞれ、CD45RA+CCR7+、CD45RA-CCR7+、CD45RA-CCR7-、CD45RA+CCR7-細胞として同定した(CD45RA BUV395-BD Biosciences社 #740298、CCR7 PerCP-Cy5.5-BioLegend社 #353220)。「CD3+CD56+ ly」と命名した集団は、NKT細胞及びγδT細胞を含む異種細胞集団であった。単球はCD3-CD56-CD14+細胞として同定し(CD14 BV786 - BD Biosciences社 #563691)、B細胞はCD3-CD56-CD19+細胞として同定した(CD19 BUV496 - BD Biosciences社 #564655)。抗LILRB1抗体(クローンHP-F1 - APC - BioLegend社 #17-5129-42)を用いた。全血を染色抗体混合物と共に暗所、室温で20分インキュベートし、次いで提供者のTDSに従ってOptilyse C (Beckman Coulter社 #A11895)で赤血球を溶解した。細胞をPBSで2回洗浄し、Fortessaフローサイトメーター(BD Biosciences社)で蛍光を顕示した。
【0193】
結果を
図1に示す。Bリンパ球及び単球は一般に常にILT2を発現する一方、従来型のCD4 T細胞及びCD4 Treg細胞はILT2を発現しなかったが、顕著な割合のCD8 T細胞(約25%)、CD3+CD56+リンパ球(約50%)、及びNK細胞(約30%)がILT2を発現し、そのようなCD8 T細胞及びNK細胞の集団のそれぞれの割合は、例えば腫瘍細胞上に存在するHLAクラスIリガンドの機能として、ILT2によって阻害され得ることが示唆された。
【0194】
CD8 T細胞の中で、ILT2の発現はナイーブ細胞上には存在しなかったが、CD8 T細胞のエフェクターメモリー分画には存在し、セントラルメモリーCD8 T細胞上にはより少ない程度に存在した。NK細胞の中では、ILT2の発現は本質的にCD16+サブセット(CD56dim)上のみであり、CD16- NK細胞(CD56bright)上では頻度がより少なかった。
【0195】
(実施例2)
ILT2は多数のヒトがんにおいて上方制御される
単球、B細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、並びにCD16-及びCD16+のNK細胞の両方におけるILT2の発現を、ヒトがん患者ドナーの全血から精製した末梢血単核球(PBMC)におけるフローサイトメトリーによって決定した。実施例1で詳細を述べた同じ抗体混合物を用いて細胞集団を同定し、ILT2の発現を評価した。PBMCを抗体混合物と共に暗所、4℃で20分インキュベートし、染色緩衝液中で2回洗浄し、Fortessaフローサイトメーターによって蛍光を測定した。
【0196】
がん患者試料からの結果を
図2に示す。見られるように、ILT2は再びすべての単球及びB細胞上で発現した。しかしリンパ球のサブセット、NK細胞、及びCD8 T細胞上では、ILT2は3種類のがん、即ちHNSCC、NSCLC、及びRCCからの細胞の上で統計的有意に、より頻度高く発現した。ILT2は卵巣がんにおいても上方制御されたが、より多数の患者試料について研究する必要がある。がん患者試料におけるILT2のこの発現の増加は、頭頸部がん(HNSCC)、肺がん(NSCLC)、及び腎がん(RCC)におけるCD8 T細胞、γδ T細胞(αβ T細胞では発現なし)、及びCD16+ NK細胞で観察された。
【0197】
(実施例3)
抗ILT2抗体の産生
材料及び方法
ILT2_6xHis組換えタンパク質のクローニング及び生成
ILT2タンパク質(Uniprotアクセス番号Q8NHL6)を、Nrul及びBamHI制限部位の間でpTT-5ベクターにクローニングした。重鎖ペプチドリーダーを用いた。PCRは以下のプライマーを用いて実施した。
ILT-2_For_ACAGGCGTGCATTCGGGGCACCTCCCCAAGCCCAC (配列番号57)
ILT-2_Rev_CGAGGTCGGGGGATCCTCAATGGTGGTGATGATGGTGGTGCCTTCCCAGACCACTCTG (配列番号58)
【0198】
精製のために6xHisタグをタンパク質のC末端部分に付加した。過渡的生成のために、産生されたベクターをEXPI293細胞にトランスフェクトした。Ni-NTAビーズを用いて上清からタンパク質を精製し、SECを用いてモノマーを精製した。
【0199】
ILT2_6xHis組換えタンパク質のアミノ酸配列を以下に示す。
GHLPKPTLWAEPGSVITQGSPVTLRCQGGQETQEYRLYREKKTALWITRIPQELVKKGQFPIPSITWEHAGRYRCYYGSDTAGRSESSDPLELVVTGAYIKPTLSAQPSPVVNSGGNVILQCDSQVAFDGFSLCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPSRRWWYRCYAYDSNSPYEWSLPSDLLELLVLGVSKKPSLSVQPGPIVAPEETLTLQCGSDAGYNRFVLYKDGERDFLQLAGAQPQAGLSQANFTLGPVSRSYGGQYRCYGAHNLSSEWSAPSDPLDILIAGQFYDRVSLSVQPGPTVASGENVTLLCQSQGWMQTFLLTKEGAADDPWRLRSTYQSQKYQAEFPMGPVTSAHAGTYRCYGSQSSKPYLLTHPSDPLELVVSGPSGGPSSPTTGPTSTSGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRHHHHHHH(配列番号59)
【0200】
細胞表面においてILTファミリーメンバーを発現するCHO及びKHYG細胞系の産生
以下のプライマーを用いるPCRにより、ILT-2の完全形を増幅した。
ILT-2_For ACAGGCGTGCATTCGGGGCACCTCCCCAAGCCC (配列番号60)及び
ILT-2_Rev_ CCGCCCCGACTCTAGACTAGTGGATGGCCAGAGTGG (配列番号61)
PCR産物を適切な制限部位で発現ベクターに挿入した。重鎖ペプチドリーダーを用いた。次いでベクターをCHO及びKHYG細胞系にトランスフェクトして、細胞表面でILT-2タンパク質を発現する安定なクローンを得た。次いでこれらの細胞をハイブリドーマのスクリーニングに用いた。ILT-1、ILT-3、ILT-4、ILT-5、ILT-6、ILT7、及びILT-8を発現する細胞を含む他のILTファミリーメンバーを発現するCHO細胞を同様に調製した。ILT-1、ILT-3、ILT-4、ILT-5、及びILT-6を発現する細胞を調製するために用いたILTタンパク質のアミノ酸配列を下のTable 4(表5)に提供する。
【0201】
細胞表面においてHLA-Gを発現するK562細胞系の産生
以下のプライマーを用いるPCRにより、HLA-G(Genbankアクセス番号NP_002118.1、配列を以下に示す)の完全形を増幅した。
HLA-G_For 5' CCAGAACACAGGATCCGCCGCCACCATGGTGGTCATGGCGCCC 3' (配列番号62)
HLA-G_Rev_5' TTTTCTAGGTCTCGAGTCAATCTGAGCTCTTCTTTC 3' (配列番号63)
PCR産物をBamHIとXhol制限部位との間でベクターに挿入し、HLA-Eを発現しなかった又はHLA-Eを安定に過発現するように操作したK562細胞系に形質導入するために用いた。
HLA-Gアミノ酸配列
1 MVVMAPRTLF LLLSGALTLT ETWAGSHSMR YFSAAVSRPG RGEPRFIAMG YVDDTQFVRF
61 DSDSACPRME PRAPWVEQEG PEYWEEETRN TKAHAQTDRM NLQTLRGYYN QSEASSHTLQ
121 WMIGCDLGSD GRLLRGYEQY AYDGKDYLAL NEDLRSWTAA DTAAQI SKRK CEAANVAEQR
181 RAYLEGTCVE WLHRYLENGK EMLQRADPPK THVTHHPVFD YEATLRCWAL GFYPAEI ILT
241 WQRDGEDQTQ DVELVETRPA GDGTFQKWAA VVVPSGEEQR YTCHVQHEGL PEPLMLRWKQ
301 SSLPTIPIMG IVAGLVVLAA VVTGAAVAAV LWRKKSSD(配列番号10)
HLA-Eアミノ酸配列(Uniprot P13747)
MVDGTLLLLL SEALALTQTW AGSHSLKYFH TSVSRPGRGE PRFISVGYVD
DTQFVRFDND AASPRMVPRA PWMEQEGSEY WDRETRSARD TAQIFRVNLR
TLRGYYNQSE AGSHTLQWMH GCELGPDGRF LRGYEQFAYD GKDYLTLNED
LRSWTAVDTA AQISEQKSND ASEAEHQRAY LEDTCVEWLH KYLEKGKETL
LHLEPPKTHV THHPISDHEA TLRCWALGFY PAEITLTWQQ DGEGHTQDTE
LVETRPAGDG TFQKWAAVVV PSGEEQRYTC HVQHEGLPEP VTLRWKPASQ
PTIPIVGIIA GLVLLGSVVS GAVVAAVIWR KKSSGGKGGS YSKAEWSDSA
QGSESHSL(配列番号11)
【0202】
免疫及びスクリーニング
免疫は、Balb/cマウスをILT-2_6xHisタンパク質で免疫することによって実施した。免疫プロトコールの後、マウスを犠牲死させて融合を実施し、ハイブリドーマを得た。ハイブリドーマの上清を用いてCHO-ILT2及びCHO-ILT4細胞系を染色し、フローサイトメトリー実験においてモノクローナル抗体の反応性を確認した。手短に述べると、細胞を50μlの上清と共に4℃で1時間インキュベートし、3回洗浄して、AF647に連結した二次抗体ヤギ抗マウスIgG Fc特異的抗体を用いた(Jackson Immunoresearch社、JI115-606-071)。30分間の染色の後、細胞を3回洗浄し、FACS CANTO II (Becton Dickinson社)を用いて分析した。
【0203】
約1500種のハイブリドーマ上清をスクリーニングして、ILT2に結合し、ILT2とHLA-Gとの相互作用をブロックする能力を有する抗体を生成するハイブリドーマを同定した。手短に述べると、6xHisタグ付けした組換えILT2を50μlのハイブリドーマ上清と室温で20分インキュベートした後、HLA-Gを発現している105個のK562細胞とインキュベートした。次いで細胞を1回洗浄し、ウサギ抗6xHIS(Bethyl lab社、A190-214A)抗体及びPEに連結した抗ウサギIgG F(ab')2抗体(Jackson lab社、111-116-114)から作成した二次複合体とインキュベートした。30分の染色の後、細胞をPBSで1回洗浄し、Cell Fix(Becton Dickinson社、340181)で固定した。分析はFACS CANTO IIフローサイトメーターで実施した。
【0204】
このアッセイは、ILT2とそのHLAクラスIリガンドHLA-Gとの相互作用をブロックする際に極めて有効である抗ILT2抗体のパネルの特定を可能にした。抗体3H5、12D12、26D8、18E1、27C10、27H5、1C11、1D6、9G1、19F10a、及び27G10を、良好なブロック活性を有するとして同定し、したがってさらなる研究のために選択した。
【0205】
得られる抗体を、ヒトFcγ受容体CD16A、CD16B、CD32A、CD32B、及びCD64への結合性の欠失をもたらすFcドメインの突然変異L234A/L235E/G237A/A330S/P331S (Kabat EU番号付け)を有する重鎖を有する改変されたヒトIgG1抗体として生成した。これらのFcドメインが突然変異したL234A/L235E/G237A/A330S/P331S抗体を本明細書に記載した他のすべての実験に用いた。手短に述べると、それぞれの抗体のVH及びVk配列(本明細書に示すVH及びVk可変領域)を、上述の突然変異を含むhuIgG1定常ドメイン及びhuCk定常ドメインをそれぞれ含む発現ベクターにクローニングした。得られた2つのベクターをCHO細胞系に共トランスフェクトした。確立した細胞のプールを用いてCHO培地中で抗体を生成させた。
【0206】
(実施例4)
改変したヒトIgG1 FcドメインのFcγRへの結合
実施例3で採用したL234A/L235E/G237A/A330S/P331S Fcドメイン、並びに他のFc突然変異及び野生型の抗体を、以下のようにヒトFcγ受容体への結合を判断するためにすでに評価した。
【0207】
SPR(表面プラスモン共鳴)測定を、Biacore T100装置(Biacore GE Healthcare社)で、25℃で実施した。すべてのBiacore実験では、HBS-EP+(Biacore GE Healthcare社)及び10mMのNaOH、500mMのNaClをそれぞれ運転緩衝液及び再生緩衝液として供した。Biacore T100評価ソフトウェアを用いてセンサログラムを分析した。組換えヒトFcR'(CD64、CD32a、CD32b、CD16a、及びCD16b)をクローニングし、生成し、精製した。
【0208】
試験した抗体には、野生型ヒトIgG1ドメインを有する抗体、S241P置換を有するヒトIgG4ドメインを有する抗体、N297S置換を有するヒトIgG1抗体、L234F/L235E/P331S置換を有するヒトIgG1抗体、L234A/L235E/P331S置換を有するヒトIgG1抗体、L234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換を有するヒトIgG1抗体、及びL234A/L235E/G237A/P331S置換を有するヒトIgG1抗体が含まれていた。
【0209】
抗体を、センサーチップCM5の上のデキストラン層中のカルボキシル基に共有結合で固定化した。チップの表面をEDC/NHS(N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare社))で活性化した。抗体をカップリング緩衝液(10mMの酢酸塩、pH5.6)中で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち800~900RU)に達するまで注入した。残存する活性基の不活化は、100mMのエタノールアミン(pH8)(Biacore GE Healthcare社)を用いて実施した。
【0210】
一価の親和性の検討を、(メーカー推奨による)古典的な速度論ウィザードに従って判断した。可溶性分析物質(FcR)を、CD64については0.7~60nM、他のすべてのFcRについては60~5000nMの範囲で段階希釈して固定化二重特異的抗体に注入し、再生の前に10分間、解離させた。CD64については1:1速度論的結合モデルを用い、他のすべてのFcRについては定常状態親和性モデルを用いて、全体のセンサログラムの組を適合させた。
【0211】
結果を下のTable 7(表9)に示す。結果より、完全長の野生型ヒトIgG1はすべてのヒトFcγ受容体に結合し、ヒトIgG4は特に顕著にFcγRI(CD64)に結合した(KDをTable 7(表9)に示す)一方、L234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換及びL234A/L235E/G237A/P331S置換はCD64並びにCD16aへの結合性を無効にしたことが示された。
【0212】
(実施例5)
NK細胞の溶解を強化するILT2ブロッキング抗体の能力
NK細胞の活性化のILT2媒介阻害を制御する抗ILT2抗体の能力を、抗体の存在下で標的細胞を溶解する実施例3に記載したILT2発現KHYG細胞の処理能力によって決定した。エフェクター細胞は、ILT2及び対照としてのGFPを発現するKHYG細胞であり、標的細胞は、HLA-Gを発現するようにした51Cr担持K562細胞系(ATCC(登録商標) CCL-243(商標))であった。エフェクター細胞と標的細胞を1:10の比で混合した。抗体をエフェクター細胞と共に37℃で30分、予めインキュベートし、次いで標的細胞を37℃で4時間、共インキュベートした。TopCount NXT (Perkin Elmer社)を用いる共培養上清中の51Crの放出によって、標的細胞の特異的溶解を計算した。
【0213】
この実験では、実施例2で同定した抗体3H5、12D12、26D8、18E1、27C10、27H5、1C11、1D6、9G1、19F10a、27G10、並びに市販の抗体GHI/75 (マウスlgG2b、Biolegend社、#333720)、292319 (マウスIgG2b、Bio-Techne社、#MAB20172)、HP-F1 (マウスlgG1、eBioscience社、#16-5129-82)、586326 (マウスlgG2b、Bio-Techne社、#MAB30851)、及び292305 (マウスlgG1、Bio-Techne社、#MAB20171)を評価した。
【0214】
結果を
図3に示す。ILT2/HLA-Gブロッキング抗体の大部分は、K562-HLA-G腫瘍標的細胞に対するNK細胞系による細胞傷害性のパーセントの顕著な増加を示した。しかし、ある種の抗体はNK細胞の細胞傷害性の増加が特に強力であった。抗体12D12、19F10a、及び市販の292319は、標的細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を強化する能力において他の抗体より顕著に効果的であった。抗体18E1、26D8は効果がやや低かったが、細胞傷害性の強化剤としての活性を示し、3H5及び市販の抗体HP-F1がより低くこれに続いた。27C10、27H5、1C11、1D6、9G1、及び市販の抗体292305、586326、GHI/75を含む他の抗体は、標的細胞に対する細胞傷害性を誘発する能力において18E1、26D8よりかなり活性が低かった。
【0215】
(実施例6)
HLAクラスI分子へのILT2の結合の遮断
HLA/ILT2ブロッキングアッセイ
細胞系の表面に発現したHLA-G又はHLA-A2と組換えILT2タンパク質との間の相互作用をブロックする抗ILT2抗体の能力をフローサイトメトリーによって判断した。手短に述べると、BirAタグ付けしたILT2タンパク質をビオチン化して、ILT2タンパク質あたり1ビオチン分子を得た。APCコンジュゲートしたストレプトアビジン(SA)をビオチン化ILT2タンパク質と混合(比はILT2タンパク質4個あたりストレプトアビジン1個)して、テトラマーを形成させた。抗ILT2抗体(12D12、18E1、26D8)をILT2-SAテトラマーと共に、染色緩衝液中4℃で30分インキュベートした。Ab-ILT2-SA複合体を、HLA-G又はHLA-A2を発現している細胞に添加し、4℃で1時間インキュベートした。細胞上の複合体の結合を、HTFCプレートローダーを備えたAccury C6フローサイトメーターで評価し、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0216】
このアッセイは、ILT2とそのHLAクラスIリガンドHLA-Gとの相互作用をブロックする際に極めて有効である抗ILT2抗体のパネルの特定を可能にした。抗体3H5、12D12、26D8、18E1、27C10、27H5、1C11、1D6、9G1、19F10a、及び27G10はすべて、HLA-G及びHLA-A2へのILT2の結合をブロックした。
図4に、抗体12D12、18E1、及び26D8の代表的な結果を示す。
【0217】
(実施例7)
フローサイトメトリーによるILT2発現細胞上の抗体のタイトレーション
NK細胞傷害性の誘発における相違を説明するため、未標識の抗体3H5、12D12、26D8、18E1、27C10、27H5、1C11、1D6、9G1、19F10a、及び27G10、並びに市販の抗体GHI/75、292319、HP-F1、586326、及び292305を、ヒトILT-2を発現するように改変したCHO細胞への結合性についての実験で試験した。細胞を、30μg/ml~5×10-4μg/mlの種々の濃度の未標識抗ILT2抗体と4℃で30分間インキュベートした。染色緩衝液で洗浄した後、細胞をヤギ抗ヒトH+L AF488二次抗体(Jackson Immunoresearch社、#109-546-088)、又は市販の抗体についてはヤギ抗マウスH+L AF488二次抗体(Jackson Immunoresearch社、#115-545-146)と共に4℃で30分間インキュベートした。HTFCプレートローダーを備えたAccury C6フローサイトメーターで蛍光を測定した。
【0218】
結果を下のTable 1(表2)に示す。他の抗体より1ログ大きい範囲のEC50を有していた抗体GHI/75を除いて、残りの抗体はすべて同程度のEC50値を示し、結合親和性の相違はNK細胞の細胞傷害性を強化する能力における観察された相違を説明しないことが示唆された。
【0219】
【0220】
(実施例8)
一価親和性の決定
抗体3H5、12D12、26D8、18E1、27C10、27H5、1C11、1D6、9G1、19F10a、及び27G10、並びに市販の抗体GHI/75、292319、及びHP-F1を、ヒトILT2タンパク質に対する結合親和性について試験した。
【0221】
SPR(表面プラスモン共鳴)法を用いて、抗体3H5、12D12、26D8、18E1、27C10、27H5、1C11、1D6、9G1、19F10a、27G10(すべてヒトIgG1アイソタイプ)を試験した。測定は、Biacore T200装置(Biacore GE Healthcare社)で、25℃で実施した。すべてのBiacore実験では、HBS-EP+(Biacore GE Healthcare社)及び10mMのNaOHをそれぞれ運転緩衝液及び再生緩衝液として供した。Biacore T100評価ソフトウェアを用いてセンサログラムを分析した。プロテインAはGE Healthcare社から購入した。ヒトILT2組換えタンパク質は、Innate Pharma社でクローニングし、生成し、精製した。プロテインAタンパク質を、センサーチップCM5の上のデキストラン層中のカルボキシル基に共有結合で固定化した。チップの表面をEDC/NHS(N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare社))で活性化した。プロテインAをカップリング緩衝液(10mMの酢酸塩、pH5.6)中で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち600RU)に達するまで注入した。残存する活性基の不活化は、100mMのエタノールアミン(pH8)(Biacore GE Healthcare社)を用いて実施した。2μg/mlの抗ILT2抗体をプロテインAチップに捕捉し、捕捉された抗体の上に組換えヒトILT2タンパク質を250nM~1.95nMの範囲の異なる濃度で注入した。ブランク差引きのため、ILT2タンパク質を運転緩衝液で置き換えて再びサイクルを実施した。一価親和性の分析は、メーカーの推奨による通常のCapture-Kineticプロトコール(Biacore GE Healthcare社速度論ウィザード)に従って行った。1.95nM~250nMの範囲の、ヒトILT2タンパク質の7種の連続希釈物を、捕捉した抗体の上に逐次的に注入し、再生の前に10分間、解離させた。1:1速度論的結合モデル又は2状態反応モデルを用い、曲線のプロファイルの関数として、全体のセンサログラムの組を適合させた。
【0222】
OCTET分析を用いて、抗体GHI/75、292319、及びHP-F1(すべてマウスアイソタイプ)を評価した。測定はOCTET RED96システム(Fortebio社)で実施した。すべてのBiacore実験で、動力学緩衝液10X(Fortebio社)及び10mM、pH1.8のグリシンを、それぞれ運転緩衝液及び再生緩衝液として供した。グラフはData Analysis 9.0ソフトウェアで分析した。抗マウスIgG Fcキャプチャー(AMC)バイオセンサーを用いた。5μg/mLの抗ILT2抗体を、抗マウスIgG Fcキャプチャー(AMC)バイオセンサーに捕捉させた。組換えヒトILT2タンパク質の7種の希釈物を注入した(292319及びHP-F1については1000nM~15.625nM、GHI-75については100nM~1.5625nM)。曲線はモデル1:1を用いて適合させた。
【0223】
結果を下のTable 2(表3)に示す。KDの相違は一般にNK細胞の細胞傷害性を強化する能力における相違と相関するようには見られない。したがって結合親和性はNK細胞の細胞傷害性を強化する抗体の能力における相違を説明しない。
【0224】
【0225】
(実施例9)
初代ヒトNK細胞における細胞傷害性を増加する抗体の同定
本発明者らは、従来の抗体にNK細胞のILT2を中和する能力がなかったことが、例えばその表面により高いレベルのILT2を発現する高度に選択され又は改変されたNK細胞系と比較した初代NK細胞におけるILT2の発現の相違に関連しているかもしれないという可能性を考慮した。本発明者らは、数名の健常ヒトドナーからの初代NK細胞における抗体を研究して選択した。実施例5の抗ILT2抗体の効果を、NK細胞上のCD137の表面発現を評価する活性化アッセイによって研究した。それぞれの場合に、初代NK細胞(ドナーから精製した新鮮なNK細胞として)をエフェクター細胞として用い、HLA-E/Gを発現するK562細胞(慢性骨髄性白血病(CML))を標的として用いた。その結果、標的はILT2のリガンドであるHLA-Gだけでなく、広範囲のがん細胞の表面に発現するHLAクラスIリガンドであり、NK細胞及びCD8 T細胞の表面上の阻害性受容体と相互作用し得るHLA-Eをも発現した。
【0226】
手短に述べると、NK細胞の活性化に対する抗ILT2抗体の効果を、全NK細胞、ILT2陽性NK細胞、及びILT2陰性NK細胞におけるCD137の発現のフローサイトメトリーによる分析によって決定した。エフェクター細胞は初代NK細胞(ドナーから精製した新鮮なNK細胞、使用前インキュベーション37℃、一夜)であり、標的細胞(K562 HLA-E/G細胞系)を1:1の比で混合した。CD137のアッセイは、96Uウェルプレートで、完全RPMI中、最終200μL/ウェルとして行った。抗体をエフェクター細胞と共に37℃で30分間、予めインキュベートし、標的細胞を37℃で一夜、共インキュベートした。以下のステップは、遠心分離500gで3分、染色緩衝液(SB)で2回洗浄、50μLの染色抗体混合物(抗CD3 Pacific blue - BD Biosciences社、抗CD56-PE-Vio770 - Miltenyi Biotec社、抗CD137-APC - Miltenyi Biotec社、抗ILT2-PE クローンHP-F1 - eBioscience社)の添加、4℃、30分のインキュベーション、SBによる洗浄2回、SBによるペレットの再懸濁、及びCanto II(HTS社)による蛍光の顕示であった。陰性対照はNK細胞対K562-HLA-E/G単独、アイソタイプ対照の存在下であった。
【0227】
図5Aは、2名のヒトドナーからのNK細胞並びにHLA-E及びHLA-Gを発現させたK562腫瘍標的細胞を用いた、CD137を発現する全NK細胞の抗ILT2抗体によって媒介される増加のパーセントを示す代表的な図である。
図5Bは、2名のヒトドナーからのNK細胞及びHLA-A2を発現しているB細胞系を用いた、CD137を発現しているILT2陽性(左側のパネル)及びILT2陰性(右側のパネル)のNK細胞の抗ILT2抗体によって媒介される増加のパーセントを示す代表的な図である。
【0228】
驚くべきことに、NK細胞系の細胞傷害性の強化において最も効果的であった抗体が、必ずしも初代ヒトNK細胞の活性化をすることができないということが観察された。NK細胞系の細胞傷害性の強化において最も効果的であった抗体12D12、19F10a、及び292319の中で、19F10aと292319の両方は、アイソタイプ対照抗体と比較して、初代NK細胞すべてを活性化する能力に実質的に欠けていた。
【0229】
一方、抗体12D12、18E1、及び26D8は、初代NK細胞の強い活性化を示した。ILT2陽性NK細胞の研究は、これらの抗体が標的細胞に対するNK細胞の活性化において2倍の増加を媒介したことを示した。対照として、CD137を発現するILT2陰性NK細胞のパーセントは、抗体によって影響されなかった。
【0230】
図6A及び
図6Bは、細胞傷害性マーカーCD137の増加倍率で表した初代NK細胞の腫瘍標的細胞に対する細胞傷害性を強化する抗体の能力を示す。
図6Aは、HLA-G及びHLA-Eを発現しているK562標的細胞に対する5~12名の異なるドナーからの初代NK細胞を用いた、HLA-G発現標的細胞の存在下におけるNK細胞の活性化を強化する抗体の能力を示す。
図6Aは、HLA-A2を発現している標的B細胞に対する3~14名の異なるドナーからの初代NK細胞を用いた、HLA-G発現標的細胞の存在下におけるNK細胞の活性化を強化する抗体の能力を示す。それぞれの場合に、12D12、18E1、及び26D8は、実施例5でNK細胞系を用いた場合に最も強いNK細胞傷害性の強化を示した抗体の中にあった抗体の1つ(292319)と比較して、より大きなNK細胞傷害性の強化を有していた。
【0231】
(実施例10)
ILTファミリーメンバーへの結合の特徴分析
抗体の結合特異性を更に特徴分析するため、様々なILTファミリータンパク質を発現させた細胞への結合性について、フローサイトメトリーによって抗体を試験した。上記のILT2(LILRB1)発現細胞に加えて、ヒトILT1 (LILRA2)、ILT3 (LILRB4)、ILT4 (LILRB2)、ILT5 (LILRB3)、ILT6 (LILRA3)、ILT7 (LILRA4)、又はILT8 (LILRA6)を発現する細胞を産生させた。
【0232】
ヒトILT遺伝子は、下のTable 3(表4)に記載したプライマーを用いるPCRによって増幅した。PCR産物を適切な制限部位で発現ベクターに挿入した。重鎖ペプチドリーダーを用い、アミノ酸配列GKPIPNPLLGLDST(配列番号80)を有するV5タグをN末端に付加した(Table 4(表5)の配列には示していない)。本明細書で用いた様々なヒトILTタンパク質についてのアミノ酸配列を、下のTable 4(表5)に示す。次いでベクターをCHO細胞系にトランスフェクトして、細胞表面に様々なILTタンパク質を発現する安定なクローンを得た。
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
手短に述べると、フローサイトメトリースクリーニングのため、抗体をそれぞれのILT発現CHO細胞系(CHO ILT1細胞系、CHO ILT2細胞系、CHO ILT3細胞系、CHO ILT4細胞系、CHO ILT5細胞系、CHO ILT6細胞系、CHO ILT7細胞系、CHO ILT8細胞系)と共に1時間インキュベートし、染色緩衝液で2回洗浄し、PEで標識したヤギ抗マウスIgG H+L ポリクローナル抗体(pAb)(市販の抗体について、Jackson Immunoresearch社、#115-116-146)、又はPEで標識したヤギ抗ヒトIgG H+L pAb(キメラ抗体について、Jackson Immunoresearch社、#109-116-088)によって顕示し、染色緩衝液で2回洗浄し、HTFCプレートローダーを備えたAccury C6フローサイトメーターで染色を取得し、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0238】
結果は、抗ILT2抗体の多くが単独で(即ちILT2/ILT6の交差反応)、又はILT4若しくはILT5へのさらなる結合(即ちILT2/ILT4/ILT6又はILT2/ILT5/ILT6の交差反応)と共に、ILT2に加えてILT6(LILRA3)にも結合したことを示した。抗体1C11、1D6、9G1、19F10a、27G10、市販の抗体586326及び292305は、ILT2に、またILT6にも結合した。抗体586326はILT2及びILT6に加えてILT4にも更に結合し、抗体292305はILT2及びILT6に加えてILT5に更に結合した。最後に、市販の抗体292319はILT2に加えてILT1に結合した(ILT1/ILT2の交差反応)。しかしながら、3H5、12D12、26D8、18E1、27C10、及び27H5により例示される抗体のサブセットは、ILT2とのみ結合し、且つその他のILTファミリーメンバータンパク質とは結合しなかった。
【0239】
(実施例11)
エピトープマッピング
係留されたILT2ドメイン断片タンパク質
ILT2タンパク質の産生
様々なヒトILT2ドメインD1(配列番号1で示される配列の残基24~121に対応)、D2(配列番号1で示される配列の残基122~222に対応)、D3(配列番号1で示される配列の残基223~321に対応)、D4(配列番号1で示される配列の残基322~458に対応)をコードする核酸配列及びその組合せを、下の表に記載したプライマーを用いるPCRによって増幅した。PCR産物を適切な制限部位で発現ベクターに挿入した。重鎖ペプチドリーダーを用い、N末端にV5タグを付加して、細胞の表面における発現をフローサイトメトリーによって確認した。D4ドメインが後に続かないドメインのすべてについては、細胞膜における係留を可能にするために、CD24 GP1アンカーを付加した。得られる様々なヒトILT2ドメイン断片含有タンパク質のアミノ酸配列を、下のTable 5(表6)に示す。次いでベクターをCHO細胞系にトランスフェクトして、細胞表面に様々なILT2ドメインタンパク質を発現する安定なクローンを得た。
【0240】
【0241】
【0242】
結果
ILT2選択的抗体を、係留した様々なILT2断片への結合性についてフローサイトメトリーによって試験した。3H5、12D12、及び27H5はすべて、ILT2のD1ドメインに結合した。これらの抗体は、D1ドメインを欠くILT2タンパク質(配列番号47~49、51、52、及び54のタンパク質)を発現する細胞のいずれにも結合することなく、ILT2のD1ドメインを含むタンパク質(配列番号46、50、及び53のタンパク質)を発現する細胞すべてに結合した。即ち抗体3H5、12D12、及び27H5は、配列番号1で示される配列の残基24~121によって定義されるILT2のドメイン(ドメインD1とも称する)に結合する。抗体26D8、18E1、及び27C10はすべて、ILT2のD4ドメインに結合した。これらの抗体は、D4ドメインを欠くILT2タンパク質(配列番号46~28、50、51、又は53のタンパク質)を発現する細胞のいずれにも結合することなく、ILT2のD4ドメインを含むタンパク質(配列番号49、52、及び54)を発現するすべての細胞に結合した。即ち抗体26D8、18E1、及び27C10は、配列番号1で示される配列の残基322~458によって定義されるILT2のドメインに結合する。
図7は、配列番号46の係留したILT2ドメインD1断片タンパク質(左側のパネル)、配列番号48のD3ドメイン断片タンパク質(中央のパネル)、及び配列番号49のD4ドメインタンパク質(右側のパネル)への抗体の結合の代表的な例を示す。
【0243】
ILT2の点突然変異の研究
密接に関連するILT6に結合することなくILT2に結合する抗体の同定により、露出してILT2とILT6との間で異なるアミノ酸におけるILT2の突然変異を設計することが可能になった。したがって、ILT6と交差反応しなかった抗ILT2抗体を、ILT2のD1、D2、又はD4ドメインにアミノ酸置換を有する様々なILT2突然変異体への結合性の喪失についてマッピングすることができる。ILT2突然変異体への結合性の喪失は、ヒトILT6への結合性の喪失と共に、NK細胞の細胞傷害性を強化する抗体が結合するILT2のエピトープの同定に役立ち得る。
【0244】
ILT2突然変異体の産生
ILT2突然変異体をPCRによって産生させた。増幅した配列をアガロースゲルにかけ、Macherey Nagel PCR Clean-Up Gel Extraction キット(参照番号 740609)を用いて精製した。次いでそれぞれの突然変異体について産生した精製PCR産物を、ClonTech InFusionシステムを用いて発現ベクターにライゲートした。突然変異した配列を含むベクターをMiniprepとして調製し、シーケンシングした。シーケンシングの後、突然変異した配列を含むベクターを、Promega PureYield(商標) Plasmid Midiprep Systemを用いてMidiprepとして調製した。HEK293T細胞をDMEM培地(Invitrogen社)中で増殖させ、Invitrogen社のLipofectamine 2000を用いてベクターをトランスフェクトし、CO2インキュベーター中、37℃で48時間インキュベートして、トランスジーンの発現について試験した。突然変異体は、下の表に示すように、Hek293T細胞にトランスフェクトした。標的アミノ酸突然変異を、下のTable 6(表7)に示す。この表は、野生型ILT2に存在する残基/残基の位置/突然変異体ILT2に存在する残基を列挙しており、位置参照は左の欄に配列番号2で示されるリーダーペプチドを欠くILT2タンパク質、又は右の欄に配列番号1で示されるリーダーペプチドを有するILT2タンパク質である。
【0245】
【0246】
結果
ILT2選択的抗体を、突然変異体のそれぞれに対する結合性についてフローサイトメトリーによって試験した。最初の実験は、1つの濃度において1つ又はいくつかの突然変異体への結合性を喪失する抗体を決定するために実施した。結合性の喪失を確認するため、その結合性がILT2の突然変異によって影響されると思われる抗体について、抗体のタイトレーションを行った。試験した抗体の結合性の喪失又は低下は、特定の突然変異体の1つ若しくは複数、又はそのすべてが抗体のコアエピトープに重要であることを示し、したがってILT2の結合の領域を同定することが可能になった。
【0247】
抗体3H5、12D12、及び27H5は、これら3つの抗体がILT2のドメイン1(D1ドメイン)の残基34、36、76、82、及び84においてアミノ酸置換(置換E34A、R36A、Y76I、A82S、R84L)を有する突然変異体2への結合性を喪失したので、ILT2のドメイン1におけるエピトープに結合した。12D12及び27H5は他のいずれの突然変異体にも結合性を喪失しなかったが、3H5も、残基29、30、33、32、80にアミノ酸置換(置換G29S、Q30L、Q33A、T32A、D80H)を有する突然変異体1への結合性の低下(部分的喪失)を有していた。したがって、これらのアミノ酸残基は、ヒトILT6ポリペプチドへの結合性の欠如と共に、初代NK細胞の細胞傷害性を強化する抗ILT2抗体を特徴づけるエピトープを同定することができる。
【0248】
図8Aは、突然変異体1及び2への結合についての抗体3H5、12D12、及び27H5のフローサイトメトリーによるタイトレーションの代表的な例を示す。
図9Aは、ドメイン1(上部、暗灰色の陰影)及びドメイン2(下部、明灰色の陰影)を含むILT2分子の部分を表すモデルを示す。図は、突然変異体1(M1)及び突然変異体2(M2)において置換されたアミノ酸残基によって定義される抗体の結合部位を示す。
【0249】
抗体26D8、18E1、及び27C10はすべて、ILT2のドメインD4でエピトープに結合した。抗体26D8及び18E1は突然変異体4-1及び4-2への結合性を喪失していた。突然変異体4-1は残基299、300、301、328、378、及び381にアミノ酸置換(置換F299I、Y300R、D301A、W328G、Q378A、K381N)を有している。突然変異体4-2は残基328、330、347、349、350、及び355にアミノ酸置換(置換W328G、Q330H、R347A、T349A、Y350S、Y355A)を有している。26D8は更に突然変異体4-5への結合性を喪失しており、抗体18E1は突然変異体4-5への結合性が低下している(結合性の完全喪失ではないが)。27C10も突然変異体4-5への結合性を喪失したが、他のいずれの突然変異体への結合性も喪失していなかった。突然変異体4-5は残基341、342、344、345及び347にアミノ酸置換(置換D341A、D342S、W344L、R345A、R347A)を有している。26D8及び18E1は他のいずれの突然変異体への結合性も喪失していなかった。したがって、これらのアミノ酸残基は、ヒトILT6ポリペプチドへの結合性の欠如と共に、初代NK細胞の細胞傷害性を強化する抗ILT2抗体を特徴づけるエピトープを同定することができる。
【0250】
図8Bは、D4ドメイン突然変異体4-1、4-1b、4-2、4-4、及び4-5への結合についての、抗体26D8、18E1、及び27C10のフローサイトメトリーによるタイトレーションの代表的な例を示す。
【0251】
図9Bは、ドメイン3(上部、暗灰色の陰影)及びドメイン4(下部、明灰色の陰影)を含むILT2分子の部分を表すモデルを示す。図は、すべてがILT2のドメイン4の中に位置する、突然変異体4-1、4-2、及び4-5において置換されたアミノ酸残基によって定義される抗体の結合部位を示す。初代NK細胞の細胞傷害性を増強する抗体26D8、18E1は、突然変異体4-5によって定義される部位に結合することなく、突然変異体4-1及び4-2によって定義される部位に結合する。一方、初代NK細胞の細胞傷害性を増強しない抗体27C10は、突然変異体4-5によって定義される部位に結合する。
【0252】
(実施例12)
ILT2-HLA-Gブロッキング抗体による初代ヒトNK細胞の細胞傷害性の強化についての親和性結合の閾値
初代NK細胞の細胞傷害性の強化において高度に活性であった抗ILT2抗体の活性の根底にある機構をより良く理解するため、実施例3に記載した方法を用い、実施例10の密接に関連するILTファミリーメンバーへの結合についてのさらなるスクリーニングと組み合わせて、さらなる免疫及びスクリーニングを行った。
【0253】
ILT2_6XHisタンパク質でBalb/cマウスを免疫した。免疫プロトコールの後、マウスを犠牲死させて融合を実施し、ハイブリドーマを得た。ハイブリドーマの上清を用いて実施例10に記載したILT2発現CHO細胞系(それぞれがILT1 (LILRA2)、ILT3 (LILRB4)、ILT4 (LILRB2)、ILT5 (LILRB3)、ILT6 (LILRA3)、又はILT7 (LILRA4)の1つを発現しているCHO系)を染色し、フローサイトメトリー実験においてモノクローナル抗体の反応性を確認した。手短に述べると、細胞を50μlの上清と共に4℃で1時間インキュベートし、3回洗浄して、AF647に連結した二次抗体ヤギ抗マウスIgG Fc特異的抗体を用いた(Jackson Immunoresearch社、JI115-606-071)。30分間の染色の後、細胞を3回洗浄し、FACS CANTO II (Becton Dickinson社)を用いて分析した。
【0254】
抗体をクローニング及びスクリーニングして、ヒトILT1、ILT3、ILT4、ILT5、ILT6、又はILT7に結合せずにILT2に結合し、ILT2とHLA-Gとの相互作用をブロックする能力を有する抗体を生成するハイブリドーマを同定した。手短に述べると、組換えビオチン化ILT2をAPCコンジュゲートしたストレプトアビジンと4℃で20時間インキュベートした後、精製した抗ILT2抗体を添加した。20分後、複合体を、HLA-Gを発現している5×104個のK562細胞又はHLA-A2を発現しているWIL2-NS細胞と4℃で更に30分インキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、Cell Fix(Becton Dickinson社、340181)で固定した。分析はFACS CANTO IIフローサイトメーターで実施した。
【0255】
細胞系の表面に発現したHLA-G又はHLA-A2と組換えILT2タンパク質との相互作用をブロックする抗ILT2抗体の能力を、実施例5に記載したようにフローサイトメトリーによって評価した。これらのアッセイにより、ILT2とそのHLAクラスIリガンドであるHLA-Gとの相互作用のブロックにおいて高度に効果的であった抗ILT2抗体のパネルの同定が可能になった。抗体12D12、2A8A、2A8B、2A9、2B11、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2G5、2H2A、2H2B、2H12、1A9、1A10B、1A10C、1A10D、1E4B、1E4C、3A7A、3A7B、3A8、3B5、3E5、3E7A、3E7B、3E9A、3E9B、3F5、4A8、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5C5、5D9、6C6、10H1、48F12、15D7、2C3はすべて、HLA-G及びHLA-A2へのILT2の結合をブロックした。
図10Aは、抗体12D12、2H2B、48F12、1E4C、1A9、3F5、及び3A7Aについての代表的な結果を示す。得られる抗体を、
図11に示すようにフローサイトメトリーによって様々な係留型ILT2断片及びILT2点突然変異体への結合性について試験し、突然変異L234A/L235E/G237A/A330S/P331Sを有するヒトIgG1 Fcドメインを有する改変されたキメラ抗体として提示した。
【0256】
初代ヒトNK細胞における細胞傷害性を増加させる抗ILT2抗体の能力を、実施例9のようにして試験した。手短に述べると、NK細胞の活性化に対する抗ILT2抗体の効果を、全NK細胞、ILT2陽性NK細胞、及びILT2陰性NK細胞におけるCD137の発現のフローサイトメトリーによって決定した。エフェクター細胞は初代NK細胞(ドナーから精製した新鮮なNK細胞、使用前インキュベーション37℃、一夜)であり、標的細胞(WIL2-NS細胞系)を1:1の比で混合した。
【0257】
図10Bは、2名のヒトドナーからのNK細胞及びHLA-A2を内因的に発現するWIL2-NSを用いた、抗ILT2抗体12D12、2H2B、48F12、1E4C、1A9、3F5、及び3A7Aによって媒介される、CD137を発現する全NK細胞のパーセントの増加を示す代表的な図である。抗体は初代NK細胞の強い活性化を示した。ILT2陽性NK細胞の研究により、これらの抗体が標的細胞に対するNK細胞の活性化の強い増加を媒介することが示された。点突然変異体上のエピトープの特徴分析により、抗体3H5、12D12、及び27H5と同様に、ドメイン結合性について試験した抗体2H2B、48F12、及び3F5はすべて、ILT2のD1ドメインに結合することが示された。これらの抗体は、D1ドメインを欠くILT2タンパク質(配列番号47~49、51、52、及び54のタンパク質)を発現する細胞のいずれとも結合することなく、ILT2のD1ドメインを含むタンパク質(配列番号46、50、及び53のタンパク質)を発現するすべての細胞に結合した。ILT2点突然変異体への結合性について試験した場合、抗体12D12、2H2B、48F12、1E4C、1A9、3F5、及び3A7AはILT2のドメインD1のエピトープと結合し、ILT2のドメイン1(D1ドメイン)の残基34、36、76、82、及び84にアミノ酸置換(置換E34A、R36A、Y76I、A82S、R84L)を有する突然変異体2への結合性を喪失していた。
【0258】
これらの結果より、驚くべきことに、細胞の表面に発現したHLA-G又はHLA-A2の間の相互作用のブロックに効果的でILT2のD1ドメインの同じ区域に結合するいくつかの抗体が、初代ヒトNK細胞の増加を媒介し又はその細胞傷害性を回復することが必ずしもできないという観察がもたらされた。特に、
図10Bに示すように、抗体1E4C、1A9、及び3A7Aは、他の抗体と同じマウスV遺伝子組合せからのものであるにも関わらず(1E4C、1A9、及び3A7AはIGKV3-5*01と組み合わせたIGHV1-66*01又はIGHV1-84*01からのものであった)、アイソタイプ対照抗体と比較して初代NK細胞すべてを活性化する能力を実質的に欠いていた。エピトープマッピングが示したところによると、これらの抗体はまさにILT2のD1ドメインに結合し、D1ドメインを欠くILT2タンパク質(配列番号47~49、51、52、及び54のタンパク質)を発現する細胞のいずれにも結合せず、ILT2のD1ドメインを含むタンパク質(配列番号46、50、及び53のタンパク質)を発現するすべての細胞に結合し、またILT2のドメイン1(D1ドメイン)の残基34、36、76、82、及び84にアミノ酸置換(置換E34A、R36A、Y76I、A82S、R84L)を有する突然変異体2への結合性の喪失を示した。
【0259】
これらの抗D1エピトープ抗体がなぜ初代NK細胞におけるNK細胞の細胞傷害性を強化するように機能しないのかに関する検討の一部として、本発明者らは、初代NK細胞を活性化したいくつかの抗体について、(強力なILT2-HLA-Gブロッカーであるにも関わらず)初代NK細胞を活性化しなかった密接に関連する可変領域配列を有する他の抗体もあることを観察した。したがって、(特にCDR残基における)相違が抗体の親和性に影響している可能性がある。同じ可変領域遺伝子に由来するCDRを有する抗体をグループ分けし、実施例8の方法を用いて、ヒトILT2に対する抗体の一価結合親和性について更に特徴分析した。手短に述べると、1μg/mLの抗ILT2抗体をプロテインAチップに捕捉させ、捕捉された抗体の上に組換えヒトILT2タンパク質を5μg/mLで注入した。ブランク差引きのため、ILT2タンパク質を運転緩衝液で置き換えて再びサイクルを実施した。一価親和性の分析は、メーカーの推奨による通常のCapture-Kineticプロトコール(Biacore GE Healthcare社速度論ウィザード)に従って行った。結果を下のTable 5(表8)に示す。HLA-G及びHLA-A2をブロックしたが初代ヒトNK細胞の細胞傷害性を強化しなかった抗体1E4C、1A9、及び3A7Aは、迅速にILT2タンパク質と係合した(Table 5(表8)のka)が、初代ヒトNK細胞の細胞傷害性を強化することができる抗体と比較して速い解離によって特徴づけられた。特に、1E4C、1A9、及び3A7Aは、2つの相、即ち第1の速い「kd1」相及び第2の遅い「kd2」相で抗体が解離する2状態反応によって特徴づけられた。1E4C、1A9、及び3A7Aについての第1の相は、1E-2より大きなkdによって特徴づけられた。したがって、in vitroアッセイにおいてILT2-HLA-G/A2相互作用をブロックするためには強い結合親和性(速度における)で十分であるが、NK細胞の細胞傷害性を強化するためには低い解離速度が必要であると思われる。様々なD1ドメインエピトープ抗体の間のKDの相違も一般に観察されたが、kdよりは重要性が低い。結果は、ILT2とそのHLAリガンドとの相互作用を強力にブロックする抗D1ドメインエピトープ抗体の能力にも関わらず、初代NK細胞においてNK細胞の細胞傷害性を強化するために必要な親和性の閾値が存在することを示している。
【0260】
抗体2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H12、1A10D、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、及び6C6は、マウスIGHV1-66*01遺伝子に由来する重鎖可変領域/CDR及びマウスIGKV3-5*01遺伝子に由来する軽鎖可変領域/CDRを有していた。1E4Bは、マウスIGHV1-66*01遺伝子に由来する重鎖可変領域/CDR及びマウスIGKV3-4*01に由来する軽鎖可変領域/CDRを有していた。2H2Bは、マウスIGHV1-84*01遺伝子に由来する重鎖可変領域/CDR及びマウスIGKV3-5*01遺伝子に由来する軽鎖可変領域/CDRを有していた。初代NK細胞を活性化した抗体は、Kabat位置32~35、52A、54、55、56、57、58、60、65、95、及び101としてそのVH及びHCDRにおける種々の位置に存在する可変残基並びにKabat位置24、25、26、27、27A、28、33、34、50、53、55、91、94、及び96としてそのVL及びLCDRにおける種々の位置に存在する可変残基を示した。
【0261】
48F12は、マウスIGHV2-3*01遺伝子に由来する重鎖可変領域/CDR及びマウスIGKV10-96*02遺伝子に由来する軽鎖可変領域/CDRを有していた。
【0262】
NK細胞の細胞傷害性を強化する抗D1エピトープ抗体12D12、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H2B、2H12、1A10D、1 E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、3F5、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、又は48F12は、残基34、36、76、82、及び84におけるアミノ酸置換(置換E34A、R36A、Y76I、A82S、R84L)を有するILT2突然変異体2を発現する細胞への結合性の喪失、ヒトILT-6ポリペプチドへの結合性の喪失、並びに1:1の結合フィット及び/又は1E-2若しくは1E-3未満の解離若しくはオフレート(kd(1/s))(SPRによって決定される一価結合親和性アッセイ)によって特徴づけられた。
【0263】
【0264】
(実施例13)
抗体はNK細胞媒介ADCCを強化する
抗ILT2抗体は腫瘍細胞に対するリツキシマブのNK細胞の細胞傷害性を強化する
NK細胞の活性化に対する抗ILT2抗体の効果を、ヒト腫瘍細胞からのNK細胞、ILT2陽性NK細胞、及びILT2陰性NK細胞におけるCD137の発現のフローサイトメトリーによる分析によって決定した。
【0265】
腫瘍標的細胞は、ILT-2がサイレントのWIL2-NS腫瘍標的細胞であった。エフェクター細胞(ヒト健常ドナーから精製した新鮮なNK細胞)と腫瘍標的細胞を1:1の比で混合した。CD137のアッセイは、96Uウェルプレートで、完全RPMI中、最終200μL/ウェルとして行った。用いた抗体には、濃度0.001μg/mLのリツキシマブと組み合わせた濃度10μg/mLの抗ILT2抗体12D12、18E1、及び26D8、アイソタイプ対照抗体が含まれていた。抗体をエフェクター細胞と共に37℃で30分間、予めインキュベートし、次いで標的細胞を37℃で一夜、共インキュベートした。以下のステップは、遠心分離400gで3分、染色緩衝液(SB)で2回洗浄、50μLの染色抗体混合物(抗CD3 Pacific blue - BD Biosciences社、抗CD56-PE-Vio770 - Miltenyi Biotec社、抗CD137-APC - Miltenyi Biotec社、抗ILT2-PE - クローンHP-F1、eBioscience社)の添加、4℃、30分のインキュベーション、SBによる洗浄2回、Cellfix-Becton Dickinson社によるペレットの再懸濁、及びFACS Canto IIフローサイトメーター(Becton Dickinson社)による蛍光の顕示であった。陰性対照はNK細胞対標的細胞単独及びアイソタイプ対照の存在下であった。
【0266】
抗ILT2抗体は、リツキシマブによって媒介されるNK細胞の細胞傷害性の強い増加を媒介することができた。驚くべきことに、抗ILT2抗体とリツキシマブの組合せは、いずれかの薬剤がそれ自体で媒介することができたよりも強い全NK細胞活性の活性化をもたらした。
図11Aは、5名のヒトドナーにおける、抗ILT2抗体がある場合とない場合のリツキシマブ及び腫瘍標的細胞とのインキュベーションに続くNK細胞の活性化におけるリツキシマブ単独に対する(培地と比較した)増加倍率を示す。抗ILT2抗体12D12、18E1、及び26D8のそれぞれは、リツキシマブ単独によって媒介されるNKの細胞傷害性の増加をもたらした。組合せによって、NK細胞のLILRB1+集団及びNK細胞集団全体におけるリツキシマブのNK細胞の細胞傷害性が増加した。
【0267】
抗ILT2抗体は腫瘍細胞に対するセツキシマブのNK細胞の細胞傷害性を強化する
NK細胞の活性化に対する抗ILT2抗体の効果を、ヒト腫瘍細胞からのNK細胞、ILT2陽性NK細胞、及びILT2陰性NK細胞におけるCD137の発現のフローサイトメトリーによる分析によって決定した。
【0268】
腫瘍標的細胞は、HN(ヒト口腔扁平上皮癌、DMSZ(登録商標)ACC417)、FaDu(ヒト咽頭組織、HNSCC、ATCC(登録商標)HTB-43)、又はCal27(ヒト舌組織、HNSCC、ATCC(登録商標)CRL-2095(商標))であった。エフェクター細胞(ヒト健常ドナーから精製した新鮮なNK細胞)と腫瘍標的細胞を1:1の比で混合した。CD137のアッセイは、96Uウェルプレートで、完全RPMI中、最終200μL/ウェルとして行った。用いた抗体には、濃度0.01μg/mLのセツキシマブと組み合わせた濃度10μg/mLの抗ILT2抗体12D12、18E1、及び26D8、アイソタイプ対照抗体が含まれていた。抗体をエフェクター細胞と共に37℃で30分間、予めインキュベートし、次いで標的細胞を37℃で一夜、共インキュベートした。以下のステップは、遠心分離400gで3分、染色緩衝液(SB)で2回洗浄、50μLの染色抗体混合物(抗CD3 Pacific blue - BD Biosciences社、抗CD56-PE-Vio770 - Miltenyi Biotec社、抗CD137-APC - Miltenyi Biotec社、抗ILT2-PE - クローンHP-F1、eBioscience社)の添加、4℃、30分のインキュベーション、SBによる洗浄2回、Cellfix-Becton Dickinson社によるペレットの再懸濁、及びFACS Canto IIフローサイトメーター(Becton Dickinson社)による蛍光の顕示であった。陰性対照はNK細胞対標的細胞単独及びアイソタイプ対照の存在下であった。
【0269】
図12に示すように、HNSCC腫瘍細胞はフローサイトメトリーによって決定して、HLA-G及びHLA-A2については一貫して陰性であることが見出された。しかし、ILT2の主要な既知のリガンドが存在しないにも関わらず、抗ILT2抗体は、セツキシマブによって媒介されるNK細胞の細胞傷害性の強い増加を媒介することができた。驚くべきことに、抗ILT2抗体とセツキシマブの組合せは、いずれかの薬剤がそれ自体で媒介することができたよりも強い全NK細胞活性の活性化をもたらした。
図11Bは、3名のヒトドナーにおける、抗ILT2抗体がある場合とない場合のセツキシマブ及びHN腫瘍標的細胞とのインキュベーションに続くNK細胞の活性化におけるセツキシマブ単独に対する(培地と比較した)増加倍率を示す。
図11Cは、3名のヒトドナーにおける、抗ILT2抗体がある場合とない場合のセツキシマブ及びFaDu腫瘍標的細胞とのインキュベーションに続くNK細胞の活性化におけるセツキシマブ単独に対する(培地と比較した)増加倍率を示す。
図11Dは、3名のヒトドナーにおける、抗ILT2抗体がある場合とない場合のセツキシマブ及びCal27腫瘍標的細胞とのインキュベーションに続くNK細胞の活性化におけるセツキシマブ単独に対する(培地と比較した)増加倍率を示す。抗ILT2抗体12D12、18E1、及び26D8のそれぞれは、セツキシマブ単独によって媒介されるNKの細胞傷害性の増加をもたらした。組合せによって、NK細胞のLILRB1+集団及びNK細胞集団全体におけるセツキシマブのNK細胞の細胞傷害性が増加した。
【0270】
(実施例14)
マクロファージ媒介ADCPの強化
抗体を、抗体依存性細胞性ファゴサイトーシスを強化する能力について試験した。
【0271】
手短に述べると、健常ドナーからの単球誘導マクロファージを、平底96ウェルプレート中、100ng/mLのM-CSFを添加した完全RPMI中で6~7日培養して得た(40000細胞/ウェル)。抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)実験は、標的細胞を標識するために用いる色素との干渉を避けるためにフェノールレッドなしのRPMI中で実施した。マクロファージは、抗体及び標的細胞を添加する前に、FBSを含まないRPMI中で2時間、飢餓状態にした。用量範囲のリツキシマブ(10~1~0.1μg/mL)及び固定用量の抗ILT2抗体又は対照抗体(10μg/mL)をマクロファージに添加した。30000細胞/ウェルのHLA-A2発現標的細胞を、ph-Rodo Red試薬(これはマクロファージによるファゴサイトーシスの際にエンドサイトーシスビシクルの酸性pHにおいて蛍光を発する)を用いて標識し、マクロファージに添加して、Incucyte-S3イメージャー中で3~6時間インキュベートした。画像は30分毎に取得した。ADCPは、全赤色対象物統合強度(total red objet integrated intensity)(RCU×μm2/画像)測定を用いて定量した。
【0272】
次いで、市販の抗ILT2抗体GHI/75(マウスIgG2アイソタイプ)及びヒトFcγRへの結合性を実質的に除去するためにL234A/L235E/G237A/A330S/P331S突然変異の導入によって改変したヒトIgG1 Fcドメインを有するそのバリアント(「HUB3」)を、リツキシマブ単独と比較した、HLA-A2発現B細胞のマクロファージによるリツキシマブ媒介ファゴサイトーシスを増加させる能力について試験した。
【0273】
結果を
図13に示す。ILT2ブロッキング抗体GHI/75(市販の抗体、マウスIgG2アイソタイプ)は、HLA-A2発現B細胞(B104細胞)に対するマクロファージ中の抗CD20抗体リツキシマブによって媒介されるADCPを強化した。対照的に、L234A/L235E/G237A/A330S/P331S突然変異を含むヒトIgG1 Fc改変GHI/75バリアント(
図12のHUB3)は、リツキシマブによって媒介されるADCPを強化する能力の低下を示した。
【0274】
したがって、抗ILT2抗体のFcドメインとFcγとの間の相互作用は、観察されたマクロファージ媒介細胞死において重要な役割を演じ得る。このことは、ADCPを媒介するためにFcγRに結合するFcドメイン(例えば天然のIgG1ドメイン)の維持又は包含を通してADCPを媒介する抗ILT2抗体の能力を調節できる可能性を開くものである。
【0275】
【0276】
本明細書で引用した刊行物、特許出願、及び特許を含むすべての参照文献は、本明細書の他の箇所でなされた特定の書類のいずれの個別に提供された組込みにも関わらず、それぞれの参照文献が参照により個別に且つ具体的に組み込まれていることが示され、本明細書において全体が(法により許される最大の程度に)説明された場合と同程度に、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0277】
他に述べない限り、本明細書で提供するすべての正確な値は、対応する近似値を代表する(例えば、特定の因子又は測定に関して提供されるすべての正確な例示的な値は、適切な場合には「約」によって修飾された、対応する近似的な測定をも提供すると考えることができる)。「約」が、数と関連付けて使用される場合、これは所定の数の±10%に対応する数値を含むものとして特定され得る。
【0278】
要素(単数又は複数)に関して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、又は「含む(containing)」等の用語を用いる本発明の任意の態様又は実施形態の本明細書における記載は、他に指示され又は文脈により明白に否定されない限り、その特定の要素(単数又は複数)「からなる」、「から本質的になる」、又は「を実質的に含む」本発明の同様の態様又は実施形態の支持を提供することを意図している(例えば、特定の要素を含むと本明細書に記載された組成物は、他に指示され又は文脈により明白に否定されない限り、その要素からなる組成物を記載しているとも理解すべきである)。
【0279】
本明細書で提供したあらゆる実施例、又は例示的な言語(例えば「等」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、他に主張しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中の言語は、主張していないいずれの要素も本発明の実施に必須であることを示していると解釈すべきではない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HNSCCを有するヒト個人の処置で使用するための、ヒトILT-2ポリペプチドに結合し、且つILT-2の阻害活性を中和する抗体であって、前記処置がセツキシマブと併用される抗体。
【請求項2】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、Fcドメインを欠く、又はFcドメインとFcγ受容体との間の結合性を低下させるように改変されているヒトFcドメインを有する、請求項1に記載の使用するための抗体。
【請求項3】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、HLAクラスI分子に対する可溶性ヒトILT-6タンパク質の結合を阻害しない、請求項1又は2に記載の使用するための抗体。
【請求項4】
個人が、HLA-G及び/又はHLA-A2陰性がんを有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項5】
処置が、個人がHLA-G及び/又はHLA-A2陽性がんを有するか判定する事前の工程を必要としない、請求項1から
4のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項6】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、Kabat残基N297においてN連結型グリコシル化を含み、且つKabat残基234及び235において、任意選択で、更に、Kabat残基331において、任意選択で、Kabat残基234、235、237において、並びにKabat残基330及び/又は331においてアミノ酸置換を含む改変されたヒトIgG1 Fcドメインを含み、任意選択で、Fcドメインが、L234A/L235E/P331S置換、L234F/L235E/P331S置換、L234A/L235E/G237A/P331S置換、又はL234A/L235E/G237A/A330S/P331S置換を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項7】
ILT2を発現するNK細胞がヒトドナーから精製され、及びその表面においてHLA-Gポリペプチドを発現する標的細胞と共にインキュベートされる4時間in vitro
51Cr放出細胞傷害性アッセイにおいて、ILT-2に結合する前記抗体が、NK細胞の細胞傷害性を強化する能力を有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項8】
ヒトILT-2ポリペプチドに結合する抗体が、HLAクラスI分子に対する可溶性ヒトILT-6タンパク質の結合を阻害しない、請求項1から
7のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項9】
ILT-2に結合する抗体が、配列番号46のアミノ酸配列を有する膜係留型単一ドメインILT2タンパク質と結合するが、しかし配列番号47、48、又は49のアミノ酸配列を有する膜係留型ドメインILT2タンパク質のいずれとも結合しない、請求項1から
8のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項10】
ILT-2に結合する抗体が、配列番号49のアミノ酸配列を有する膜係留型単一ドメインILT2タンパク質と結合するが、しかし配列番号46、47、又は48のアミノ酸配列を有する膜係留型ドメインILT2タンパク質のいずれとも結合しない、請求項1から
9のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項11】
(i)配列番号55に示す配列により定義されるILT2ポリペプチドのアミノ酸残基のセグメント内のエピトープ、又は(ii)配列番号56に示す配列により定義されるILT2ポリペプチドのアミノ酸残基のセグメント内のエピトープに結合する、請求項1から
10のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項12】
(i)突然変異E34A、R36A、Y76I、A82S、R84L (配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチド
、(ii)突然変異G29S、Q30L、Q33A、T32A、D80H(配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチド、(iii)突然変異F299I、Y300R、D301A、W328G、Q378A、K381N (配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチド、又は(iv)突然変異W328G、Q330H、R347A、T349A、Y350S、Y355A (配列番号2を参照)を含む突然変異体ILT2ポリペプチドに対する結合性が、いずれの場合にも、抗体と配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型ILT2ポリペプチドとの間の結合性と比較して低下している、請求項1から
11のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項13】
ILT-2に結合する抗体が、EGFRポリペプチドに結合する抗体と併用される場合、その表面においてHLA-G又はHLA-A2ポリペプチドを欠いているHNSCC標的細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を増加させる能力を有し、前記細胞傷害性が、ILT2を発現するNK細胞がヒトドナーから精製され、及び標的細胞と共にインキュベートされる4時間in vitro
51Cr放出細胞傷害性アッセイにおいて決定した場合、EGFRポリペプチドに結合する抗体を単独で用いた場合に観測される細胞傷害性と比較して、少なくとも50%、任意選択で70%、80%、90%、又は100%増加する、請求項1から
12のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項14】
標的細胞が、HN、FADU、又はCal27細胞である、請求項24に記載の使用するための抗体。
【請求項15】
ILT-2に結合する抗体が、抗体
12D12、26D8、18E1、2A8A、2A9、2C4、2C8、2D8、2E2B、2E2C、2E8、2E11、2H2A、2H12、1A10D、1E4B、3E5、3E7A、3E7B、3E9B、4C11B、4E3A、4E3B、4H3、5D9、6C6、2H2B、48F12、3F5、12D12、3H5、27H5、26D8、27C10、又は18E1の重鎖及び軽鎖CDR1、2、及び3を含む、請求項1から
14のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項16】
ILT-2に結合する抗体が、抗体2H2B、48F12、3F5、12D12、26D8、若しくは18E1、又はその機能保存的バリアントである、請求項1から
15のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【請求項17】
ILT-2に結合する抗体、及びEGFRに結合する抗体が、個別投与用として製剤化され、及び同時に又は連続して投与される、請求項1から
16のいずれか一項に記載の使用するための抗体。
【国際調査報告】