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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】視力を改善するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20220216BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220216BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P27/02
A61K39/395 H
A61K39/395 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539033
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2020050032
(87)【国際公開番号】W WO2020141483
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】62/788,037
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516300656
【氏名又は名称】メゾブラスト・インターナショナル・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィウ・イテスク
【テーマコード(参考)】
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087CA04
4C087MA16
4C087MA58
4C087NA14
4C087ZA33
(57)【要約】
本開示は、眼疾患を被っている対象における視力を改善する方法であって、対象に間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を視力を改善するのに十分な量で投与する工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼疾患を被っている対象における視力を改善する方法であって、対象に間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を視力を改善するのに十分な量で投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
眼疾患が、視神経の変性に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
眼疾患が、視神経の光受容器の変性に関連する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象が、眼組織における血管新生を低減するために抗VEGF剤で以前に治療されている、請求項4に記載の方法。
【請求項5】
対象が、少なくとも1か月間、又は少なくとも2か月間、又は少なくとも3か月間、抗VEGF剤の毎月の投薬で治療されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
剤が、抗VEGF抗体又はその断片である、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
間葉系前駆細胞又は幹細胞が、免疫選択によって単離される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
免疫選択された細胞が、投与の前に培養拡大される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
間葉系前駆細胞又は幹細胞が、培養拡大された間葉系幹細胞である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
MLPSCが、350,000細胞未満、又は250,000細胞未満、又は100,000細胞未満、又は95,000細胞未満、又は90,000細胞未満、又は80,000細胞未満、又は75,000細胞未満、又は70,000細胞未満の用量で対象に投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
MLPSCが、硝子体液1mLあたり100,000細胞未満、又は硝子体液1mLあたり75,000細胞未満、又は硝子体液1mLあたり50,000細胞未満、又は硝子体液1mLあたり25,000細胞未満、又は硝子体液1mLあたり20,000細胞未満の用量で対象に投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
MLPSCが、硝子体液1mLあたり約24,500個のMPCの用量で対象に投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
MLPSCが、単回投薬として投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
MLPSCが、硝子体内に投与される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
MLPSCの投与が、少なくとも3か月の期間、又は少なくとも6か月の期間、又は少なくとも12か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも24か月の期間にわたって、複合NEI VFQ-25スコアにおいてベースラインからの少なくとも10ポイントの改善をもたらす、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
MLPSCの投与が、3か月の期間内、光コヒーレンストモグラフ(OCT)の低減をもたらす、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、視力を改善するための間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む細胞療法生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の複雑な感覚器官として、眼は、その正常に機能する能力に影響を与える多数の疾患及び他の有害な状態を経験し得る。これらの状態の多くは、特定の眼細胞及びそれらの細胞で構成される組織の損傷又は変性に関連する。一例として、視神経及び網膜の疾患並びに変性状態は、世界中の失明の主要な原因である。角膜、水晶体及び関連する眼組織の損傷又は変性は、視力喪失の別の重要な原因を示す。網膜は、光信号を神経信号に変換する細胞の交互の7層及びプロセスを含む。網膜の光受容器及び隣接する網膜色素上皮(RPE)は、多くの障害において、遺伝子突然変異又は環境条件(年齢を含む)に起因して不均衡になる機能単位を形成する。これは、光受容器の喪失をもたらす:アポトーシス又は二次変性により、視力の進行性劣化、一部の例では、失明につながる(概説、例えば、Lund, R. Dら、2001、Progress in Retinal and Eye Research 20:415~449を参照されたい)。このパターンに当てはまる2つのクラスの眼障害は、加齢性黄斑変性症(AMD)及び網膜色素変性症(RP)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第1994/026877号
【特許文献2】米国特許第5173414号
【特許文献3】米国特許第5139941号
【特許文献4】国際公開第92/01070号
【特許文献5】国際公開第93/03769号
【特許文献6】米国特許第5,837,539号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lund, R. Dら、2001、Progress in Retinal and Eye Research 20:415~449
【非特許文献2】「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)
【非特許文献3】Mangioneら、Arch Ophthamol. 116:1496~1505(1998)
【非特許文献4】Mangioneら、Arch Ophthamol. 119:1050~1058(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Lucentis(登録商標)等の抗VEGF剤を含む治療剤は、過剰なVEGF産生が異常な漏出性の脈管構造及び血管外液の蓄積をもたらす湿性血管新生AMD等の状態を治療するために使用されているが、視神経の疾患及び変性状態を伴う患者の視力を直接改善するのに有効な治療的処置に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、眼障害を被っている患者における視力を改善するための、市販のエクスビボで拡大された同種間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)生成物の使用に関する。
【0007】
したがって、本開示は、眼疾患を被っている対象における視力を改善する方法であって、対象に間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を視力を改善するのに十分な量で投与する工程を含む、方法を提供する。
【0008】
一実施形態では、眼疾患は、視神経の炎症又は変性に関連する。
【0009】
別の実施形態では、眼疾患は、視神経の光受容器の炎症又は変性に関連する。
【0010】
別の実施形態では、対象は、眼組織における血管新生、異常な漏出性の脈管構造及び血管外液の蓄積を低減するために抗VEGF剤で以前に治療されている。
【0011】
別の実施形態では、対象は、少なくとも1か月間、又は少なくとも2か月間、又は少なくとも3か月間、抗VEGF剤の毎月の投薬で治療されている。
【0012】
別の実施形態では、剤は、抗VEGF抗体又はその断片である。例えば、抗VEGF剤は、Lucentis(登録商標)であり得る。
【0013】
別の実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、免疫選択によって単離される。
【0014】
一実施形態では、単離された細胞の集団は、培養拡大された間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む。代替の実施形態では、単離された細胞の集団は、新たに単離された間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む。
【0015】
一実施形態では、MLPSCは、免疫選択によって単離される。一実施形態では、細胞は、TNAPの発現のために免疫選択されている。一実施形態では、免疫選択された細胞は、TNAP及びSTRO-1を共発現する。一実施形態では、免疫選択された細胞は、TNAP及びSTRO-1brightを共発現する。一実施形態では、免疫選択された細胞は、投与の前に培養拡大される。
【0016】
一実施形態では、MLPSCは間葉系幹細胞である。一実施形態では、間葉系幹細胞は、投与の前に培養拡大される。
【0017】
一実施形態では、MLPSCは、組成物の全細胞集団の少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は100%を占める。
【0018】
一実施形態では、組成物は、MLPSC及び凍結保存剤を含む。
【0019】
一実施形態では、組成物中の凍結保存剤は、DMSO又はProfreeze(登録商標)である。
【0020】
一実施形態では、組成物は、42.5%(v/v)Profreeze(登録商標)/50%αMEM(v/v)/7.5%(v/v)DMSO中にMLPSCを含む。
【0021】
別の実施形態では、MLPSCは、350,000細胞未満、又は250,000細胞未満、又は100,000細胞未満、又は95,000細胞未満、又は90,000細胞未満、又は80,000細胞未満、又は75,000細胞未満、又は70,000細胞未満の用量で対象に投与される。
【0022】
別の実施形態では、MLPSCは、硝子体液1mLあたり100,000細胞未満、又は硝子体液1mLあたり75,000細胞未満、又は硝子体液1mLあたり50,000細胞未満、又は硝子体液1mLあたり25,000細胞未満、又は硝子体液1mLあたり20,000細胞未満の用量で対象に投与される。
【0023】
別の実施形態では、MLPSCは、硝子体液1mLあたり約24,500個のMPCの用量で対象に投与される。
【0024】
別の実施形態では、MLPSCは、単回投薬として投与される。
【0025】
別の実施形態では、MLPSCは、硝子体内に投与される。例えば、MLPSCは、硝子体内注射によって投与され得る。
【0026】
別の実施形態では、MLPSCの投与は、少なくとも3か月の期間、又は少なくとも6か月の期間、又は少なくとも12か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも24か月の期間にわたって、複合NEI VFQ-25スコアにおいてベースラインからの少なくとも10ポイントの改善をもたらす。
【0027】
別の実施形態では、MLPSCの投与は、3か月の期間内、光コヒーレンストモグラフ(OCT)の低減をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1Aは、「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)からの図である。ANCHOR:12か月での総合複合スコア(1A)に対して、≧15文字を獲得する患者、<15文字を獲得又は喪失する患者、及び≧15文字を喪失する患者についてのNEI VFQ-25スコアの最小二乗平均変化。エラーバーは95%を表す。図1Bは、「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)からの図である。ANCHOR:12か月での3つの事前に指定したサブスケール: 近くの活動(1B)に対して、≧15文字を獲得する患者、<15文字を獲得又は喪失する患者、及び≧15文字を喪失する患者についてのNEI VFQ-25スコアの最小二乗平均変化。エラーバーは95%を表す。図1Cは、「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)からの図である。ANCHOR:12か月での3つの事前に指定したサブスケール:遠くの活動(1C)に対して、≧15文字を獲得する患者、<15文字を獲得又は喪失する患者、及び≧15文字を喪失する患者についてのNEI VFQ-25スコアの最小二乗平均変化。エラーバーは95%を表す。図1Dは、「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)からの図である。ANCHOR:12か月での3つの事前に指定したサブスケール:視力特異的依存性(1D)に対して、≧15文字を獲得する患者、<15文字を獲得又は喪失する患者、及び≧15文字を喪失する患者についてのNEI VFQ-25スコアの最小二乗平均変化。エラーバーは95%を表す。
図2図2Aは、「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)からの図である。MARINA:12か月での総合複合スコア(2A)に対して、≧15文字を獲得する患者、<15文字を獲得又は喪失する患者、及び≧15文字を喪失する患者についてのNEI VFQ-25スコアのベースラインからの最小二乗平均変化。エラーバーは平均の95%CIを表す。図2Bは、「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)からの図である。MARINA:12か月での3つの事前に指定したサブスケール:近くの活動(2B)に対して、≧15文字を獲得する患者、<15文字を獲得又は喪失する患者、及び≧15文字を喪失する患者についてのNEI VFQ-25スコアのベースラインからの最小二乗平均変化。エラーバーは平均の95%CIを表す。図2Cは、「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)からの図である。MARINA:12か月での3つの事前に指定したサブスケール:遠くの活動(2C)に対して、≧15文字を獲得する患者、<15文字を獲得又は喪失する患者、及び≧15文字を喪失する患者についてのNEI VFQ-25スコアのベースラインからの最小二乗平均変化。エラーバーは平均の95%CIを表す。図2Dは、「Responsiveness of NEI VFQ-25 to Changes in Visual Acuity in Neovascular AMD: Validation Studies from Two Phase 3 Clinical Trials」(Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 2009;50(8)3629~3635. doi:10.1167/iovs.08-3225.)からの図である。MARINA:12か月での3つの事前に指定したサブスケール:視力特異的依存性(D2)に対して、≧15文字を獲得する患者、<15文字を獲得又は喪失する患者、及び≧15文字を喪失する患者についてのNEI VFQ-25スコアのベースラインからの最小二乗平均変化。エラーバーは平均の95%CIを表す。
図3】3回の毎月のLucentis(登録商標)注射、及びその後の単回硝子体内MPC注射又はプラセボのいずれかでの治療後の光コヒーレンストモグラフ(OCT)によって測定された新生血管膜厚さの変化を示す図である。
図4】視力についての有効性の結果:Lucentis(登録商標)単独及びLucentis(登録商標)+MPCで治療された患者についての中位値を示す図である。
図5】Lucentis(登録商標)で処置された患者における単回硝子体内MPC注射は、NEI VFQ-25の有意な改善をもたらすことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一般的な実装方法及び定義
本明細書全体で、特に断りがない限り、又は文脈上別段の定めがない限り、単一の工程、物質の組成物、工程群又は物質の組成物群への言及は、それらの工程の1つ及び複数(すなわち、1つ以上)、物質の組成物、工程群、又は物質の組成物群を包含するようになる。
【0030】
当業者は、本明細書に記載される開示は、具体的に記載されたもの以外の変形及び修飾に対して感受性であることを理解する。本開示は、全てのこのような変形及び修飾を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において言及又は指示される工程、特徴、組成物及び化合物の全て、個々に又は集合的に、及び前記工程又は特徴のいずれか及び全ての組合せ又は任意の2つ以上を含む。
【0031】
本開示は、例示の目的のみを意図した、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。機能的に同等な生成物、組成物及び方法は、明らかに本開示の範囲内にある。
【0032】
本明細書に開示されるいずれの例も、特に明記しない限り、他のいずれの例にも準用されるものと解釈されるものとする。
【0033】
別途明確に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有するものと解釈されるものとする(例えば、細胞培養、分子遺伝学、幹細胞分化、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学)。
【0034】
特に断らない限り、本開示において利用される幹細胞、細胞培養、及び外科技術は、当業者に周知である標準的な手順である。このような技術は、Perbal、1984; Sambrook & Green、2012; Brown、1991; Glover & Hames、1995及び1996; Ausubel.、1987(現在までの全ての改訂を含む)、Harlow & Lane、1988;及びColiganら、1991(現在までの全ての改訂を含む)等の供給源における文献全体で記載及び説明される。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数及び単数形の用語「1つ(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、例えば場合により、その内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0036】
用語「対象」とは、本明細書で使用される場合、ヒト及び非ヒト動物を含む哺乳動物を指す。より特定的には、哺乳動物はヒトである。「対象」、「患者」又は「個人」等の用語は、文脈上、本開示において互換的に使用することができる用語である。特定の例では、対象は、成人又は子供(小児)対象であり得る。
【0037】
「有効量」とは、所望の治療的又は予防的結果を達成するために、必要な投薬量及び時間での少なくとも有効な量を指す。有効量は、1つ以上の投与において提供することができる。本開示のいくつかの例では、用語「有効量」は、先に記載されたような疾患又は状態の治療を実施するのに必要な量を指すために使用される。有効量は、治療される疾患又は状態に応じて、また、体重、年齢、人種的背景、性別、健康状態及び/又は身体的状態、並びに治療される哺乳動物に関連する他の要因に応じて変化し得る。典型的には、有効量は、開業医による日常的な試行及び実験によって決定することができる比較的広い範囲(例えば、「投薬量」の範囲)に入る。有効量は、治療期間にわたって、単回投薬又は反復投薬で1回若しくは数回投与することができる。
【0038】
用語「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味するものと理解されるものとし、両者の意味又はいずれかの意味に対する明示的な裏付けを提供するものと解釈されるものとする。
【0039】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の記載がない限り、指定された値の+/-10%、より好ましくは+/-5%を指す。
【0040】
本明細書全体で、用語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変形は、記述された要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程のグループを包含することを意味するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程のグループを排除することは意味しないものと理解される。
【0041】
間葉系前駆細胞又は幹細胞
本明細書で使用される場合、用語「間葉系前駆細胞又は幹細胞」とは、多能性を維持しながら自己再生する能力、及び間葉起源、例えば骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞及び腱、又は非中胚葉起源、例えば肝細胞、神経細胞及び上皮細胞のいずれかの多数の細胞型に分化する能力を有する未分化多分化能細胞を指す。
【0042】
用語「間葉系前駆細胞又は幹細胞」は、親細胞とその未分化子孫の両方を含む。この用語はまた、間葉前駆細胞(MPC)、多分化能間質細胞、間葉系幹細胞、血管周囲間葉前駆細胞、及びそれらの未分化子孫を含む。
【0043】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、自家、同種、異種、同系(syngeneic)又は同系(isogeneic)であり得る。自己細胞は、それらが再移植される同じ個体から単離される。同種細胞は、同種のドナーから分離される。異種細胞は、別の種のドナーから単離される。同系(syngeneic)又は同系(isogeneic)の細胞は、双生児、クローン、又は高度に近交系の研究動物モデル等の遺伝的に同一の生物から単離される。
【0044】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、主として骨髄に存在するが、例えば、臍帯血及び臍帯、成体末梢血、脂肪組織、骨梁及び歯髄を含む多様な宿主組織に存在することも示されている。
【0045】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、宿主組織から単離され、免疫選択によって富化され得る。例えば、対象からの骨髄吸引物は、STRO-1又はTNAPに対する抗体を用いて更に処理されて、間葉系前駆細胞又は幹細胞の選択を可能にすることができる。一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、Simmons & Torok-Storb、1991に記載されるSTRO-1抗体を用いることによって富化することができる。
【0046】
STRO-1+細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靭帯、腱、骨格筋、真皮、及び骨膜に見出される細胞であり、中胚葉及び/又は内胚葉及び/又は外胚葉等の生殖系列に分化することができる。したがって、STRO-1+細胞は、限定されないが、脂肪、骨、軟骨、弾性、筋肉、及び線維性結合組織を含む、多数の細胞型に分化することができる。これらの細胞が侵入する特異的な系統-関与及び分化経路は、増殖因子、サイトカイン、及び/又は宿主組織によって確立された局所的微小環境条件等の機械的影響及び/又は内因性の生物活性因子からの種々の影響に依存する。
【0047】
用語「豊富化された」は、本明細書で使用される場合、細胞の未処理集団(例えば、それらの天然環境における細胞)と比較した場合に、1つの特定の細胞型の割合又は多数の特定の細胞型の割合が増加する細胞の集団を記載する。一例では、STRO-1+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%のSTRO-1+細胞を含む。この点に関して、用語「STRO-1+細胞について富化された細胞の集団」は、用語「X%のSTRO-1+細胞を含む細胞の集団」を明示的に支持するために用いられ、X%は、本明細書に記載されるパーセンテージである。STRO-1+細胞は、一部の例では、クローン原性コロニー、例えば、CFU-F(線維芽細胞)又はそのサブセット(例えば、50%若しくは60%若しくは70%若しくは70%若しくは90%若しくは95%)を形成することができ、この活性を有することができる。一例では、TNAP+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%のTNAP+細胞を含む。この点に関して、用語「TNAP+細胞について富化された細胞の集団」は、用語「X%のTNAP+細胞を含む細胞の集団」を明示的に支持するために用いられ、X%は、本明細書に記載されるパーセンテージである。一例では、STRO-1+及びTNAP+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%のSTRO-1+及びTNAP+細胞を含む。この点に関して、用語「STRO-1+及びTNAP+細胞について富化された細胞の集団」は、用語「X%のSTRO-1+及びTNAP+細胞を含む細胞の集団」を明示的に支持するために用いられ、X%は、本明細書に記載されるパーセンテージである。
【0048】
一例では、細胞集団は、選択可能な形態でSTRO-1+細胞を含む細胞調製物から富化される。この点に関して、用語「選択可能な形態」は、細胞がSTRO-1+細胞の選択を可能にするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解される。マーカーはSTRO-1であり得るが、必ずしもそうである必要はない。例えば、本明細書に記載及び/又は例示されるように、STRO-2及び/又はSTRO-3(TNAP)及び/又はSTRO-4及び/又はVCAM-1及び/又はCD146及び/又は3G5を発現する細胞(例えば、MPC)はまた、STRO-1を発現する(及びSTRO-1brightであり得る)。したがって、細胞がSTRO-1+であるという表示は、細胞がSTRO-1発現によって選択されることを意味しない。一例では、細胞は、少なくともSTRO-3発現に基づいて選択され、例えば、それらはSTRO-3+(TNAP+)である。
【0049】
細胞又はその集団の選択への言及は、必ずしも特定の組織源からの選択を必要としない。本明細書に記載されるように、STRO-1+細胞は、多種多様な供給源から選択されるか又はそれから単離されるか又はそれから富化され得る。とは言え、一部の例では、これらの用語は、STRO-1+細胞、又は脈管形成された組織、又は周皮細胞(例えば、STRO-1+周皮細胞)を含む組織、又は本明細書に記載される組織を含む任意の1つ又はそれより多くの組織からの選択を支持する。
【0050】
一例では、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+からなる群から個別に又は集合的に選択される1つ以上のマーカーを発現する。
【0051】
「個別に」とは、本開示が、記載されたマーカー又はマーカーのグループを別々に包含すること、及び、個々のマーカー又はマーカーのグループが本明細書に別々に列挙されない場合があるにもかかわらず、添付の特許請求の範囲が、このようなマーカー又はマーカーのグループを互いに別々に及び分割して定義することができることを意味する。
【0052】
「集合的に」とは、本開示が、記載されたマーカー若しくはマーカーのグループの任意の数又は組合せを包含すること、及び、このようなマーカー若しくはマーカーのグループの数又は組合せが本明細書に具体的に列挙されない場合があるにもかかわらず、添付の特許請求の範囲が、このようなコンビネーション又はサブコンビネーションを、マーカー又はマーカーのグループの任意の他のコンビネーションから別々に及び分離して定義することができることを意味する。
【0053】
所与のマーカーについて「陽性」であると称される細胞は、マーカーが細胞表面上に存在する程度に依存して、そのマーカーの低(lo又はdim又はdull)、中間(median)、又は高(bright、bri)レベルのいずれかを発現することができ、これらの用語は、細胞の選別プロセス又は細胞のフローサイトメトリー分析において使用される蛍光又は他のマーカーの強度に関する。低(lo又はdim又はdull)、中間(median)、又は高(bright、bri)の区別は、選別又は分析される特定の細胞集団上で使用されるマーカーとの関連で理解される。与えられたマーカーに対して「陰性」であると呼ばれる細胞は、必ずしもその細胞が完全に存在しないということではない。この用語は、マーカーがその細胞により比較的非常に低いレベルで発現され、検出可能に標識された場合に非常に低いシグナルを生成すること、又はバックグラウンドレベル、例えばアイソタイプ対照抗体を用いて検出されたレベルを超えて検出不可能であることを意味する。
【0054】
用語「bright」又はbriは、本明細書で使用される場合、検出可能に標識された場合に比較的高いシグナルを生成する細胞表面上のマーカーを指す。理論によって制限されることを望まないが、「bright」細胞は、試料中の他の細胞よりも多くの標的マーカータンパク質(例えば、STRO-1抗体によって認識される抗原)を発現することが提案される。例えば、STRO-1bri細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析によって決定した場合、FITCをコンジュゲートさせたSTRO-1抗体で標識されると、非bright細胞(STRO-1lo/dim/dull/intermediate/median)よりも大きな蛍光シグナルを産生する。一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、骨髄から単離され、STRO-1+細胞の選択によって富化される。この例では、「bright」細胞は、開始試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の例では、「bright」細胞は、開始試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、又は少なくとも約2%を構成する。一例では、STRO-1bright細胞は、「バックグラウンド」、すなわち、STRO-1-である細胞と比較して、STRO-1表面発現の2logの大きさの高い発現を有する。対照的に、STRO-1lo/dim/dull及び/又はSTRO-1intermediate/median細胞は、2log未満の規模で、より高いSTRO-1表面発現の発現を示し、典型的には約1log又は「バックグラウンド」未満である。
【0055】
一例では、STRO-1+細胞はSTRO-1brightである。一例では、STRO-1bright細胞は、STRO-1lo/dim/dull又はSTRO-1intermediate/median細胞と比較して優先的に富化される。
【0056】
一例では、STRO-1bright細胞は、更に、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)及び/又はCD146+のうちの1つ以上である。例えば、細胞は、1つ以上の前述のマーカーについて選択され、及び/又は1つ以上の前述のマーカーを発現するように示される。この点に関して、マーカーを発現することが示された細胞は、特異的に試験する必要はなく、むしろ以前に富化された又は単離された細胞を試験することができ、その後、また、同じマーカーを発現すると合理的に推定することができる。
【0057】
一例では、STRO-1bright細胞は、血管周囲マーカー3G5の存在によって特徴付けられる、国際公開第2004/85630号に定義される血管周囲間葉前駆細胞である。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「TNAP」は、組織非特異的アルカリホスファターゼの全てのアイソフォームを包含することが意図される。例えば、この用語は、肝臓アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)及び腎臓アイソフォーム(KAP)を包含する。一例では、TNAPはBAPである。一例では、TNAPとは、寄託受託番号PTA-7282に基づくブダペスト条約の規定に基づいて、2005年12月19日にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されたSTRO-3抗体に結合することができる分子を指す。
【0059】
更に、一例では、STRO-1+細胞は、クローン原性CFU-Fを生じさせることができる。
【0060】
一例では、STRO-1+細胞のかなりの割合が、少なくとも2つの異なる生殖系列に分化することができる。細胞が関与し得る系統の非限定的な例には、骨前駆細胞;胆管上皮細胞及び肝細胞に対して多分化能である肝細胞前駆体;オリゴデンドロサイト及び星状細胞に進行するグリア細胞前駆体を生成し得る神経制限細胞;ニューロンに進行するニューロン前駆体;心筋及び心筋細胞の前駆体、グルコース応答性インスリン分泌性膵ベータ細胞系が含まれる。他の系統には、限定されないが、象牙芽細胞、象牙質産生細胞及び軟骨細胞、並びに以下:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト等の皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、腎管上皮細胞、平滑筋及び骨格筋細胞、精巣前駆細胞、血管内皮細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管、上皮、グリア、神経細胞、星状細胞及び希突起膠細胞の前駆細胞が含まれる。
【0061】
一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は間葉系幹細胞(MSC)である。MSCは、均一組成物であり得るか又はMSCに富化された混合細胞集団であり得る。均一なMSC組成物は、接着した骨髄又は骨膜細胞を培養することによって得ることができ、MSCは、固有のモノクローナル抗体で同定される特異的な細胞表面マーカーによって同定され得る。プラスチック接着技術を用いてMSCに富化された細胞集団を得るための方法は、例えば、米国特許第5486359号に記載される。従来のプラスチック接着単離によって調製されたMSCは、CFU-Fの非特異的なプラスチック接着特性に依存している。MSCの代替供給源としては、限定されないが、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨、及び軟骨膜が挙げられる。
【0062】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、対象への投与前に凍結保存することができる。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、健康なボランティアの骨髄から富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来するマスター細胞バンクから得られる。このような供給源に由来する間葉系前駆細胞又は幹細胞の使用は、間葉系前駆細胞又は幹細胞ドナーとしての役割を果たすことができ、又は直ちに治療を必要とし、間葉系前駆細胞又は幹細胞を生成するのに要する時間中に、再発、疾患に関連した衰退若しくは死亡のリスクが高い、利用可能な適切な家族メンバーを有しない対象にとって特に有利である。
【0064】
本発明者らは、本開示の間葉系前駆細胞が、凍結保存及び解凍後に、T細胞の増殖を阻害するそれらの能力に関して予想外の高い効力を有することを示す。対照的に、以前の開示は、凍結保存された間葉系幹細胞が、解凍後に免疫抑制特性が損なわれることを示すことを教示する(Francoisら、2012;Chinnaduraiら、2016)。
【0065】
単離又は濃縮された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、培養により、エクスビボ又はインビトロで拡大することができる。当業者に理解されるように、単離又は富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、凍結保存され、解凍され、次に、培養によりエクスビボ又はインビトロで更に拡大され得る。
【0066】
培養された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、インビボでの細胞とは表現型的に異なる。例えば、一実施形態では、それらは、以下のマーカー、CD44、NG2、DC146及びCD140bのうちの1つ以上を発現する。
【0067】
培養された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、インビボにおいて細胞と生物学的に異なり、インビボで大部分が非周期(休止)細胞と比較してより高い増殖速度を有する。
【0068】
一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞について富化された細胞集団は、血清が補足された培養培地、例えば、10%ウシ胎児血清(FBS)及び2mMグルタミンが補足されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、約6000~7000個の生存細胞/cm2で播種され、一晩、37℃、20%O2で培養容器に接着させる。一実施形態では、細胞は、約6000、6100、6200、6300、6400、6500、6600、6700、6800、6810、6820、6830、6840、6850、6860、6870、6880、6890、6890、6900、6910、6920、6930、6940、6970、6980、6990、又は7000個の生存細胞/cm2、好ましくは約6850~6860個の生存細胞/cm2で播種される。次に、培養培地を置換し、T細胞との共培養及びT細胞により発現されるIL-2Rαの量を決定する前に、細胞を計68~72時間、37℃、5%O2で培養する。
【0069】
組成物及び投与
間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む組成物は、薬学的に許容される担体中で調製され得る。用語「薬学的に許容される担体」とは、本明細書で使用される場合、間葉系前駆細胞又は幹細胞の貯蔵、投与を容易にし、及び/又は生物学的活性を維持する物質の組成物を指す。
【0070】
一例では、担体は、レシピエントにおいて顕著な局所的又は全身的な有害作用を生じさせない。薬学的に許容される担体は、固体であるか又は液体であり得る。薬学的に許容される担体の有用な例としては、限定されないが、間葉系前駆細胞又は幹細胞の生存率及び活性に影響を与えない希釈剤、溶媒、界面活性剤、賦形剤、懸濁剤、緩衝剤、滑沢剤、アジュバント、ビヒクル、乳化剤、吸収剤、分散媒、被覆剤、安定剤、保護コロイド、接着剤、増粘剤、チキソトロピック剤、浸透剤、封鎖剤、足場、等張性及び吸収遅延剤が挙げられる。適切な担体の選択は、当業者の技術の範囲内である。
【0071】
本開示の組成物は、簡便には単位投薬形態で提供することができ、当該技術分野において周知である任意の方法によって調製することができる。用語「投薬単位形態」とは、本明細書で使用される場合、治療される対象のための単一投薬量として適した物理的に離散した単位を指し;各単位は、薬学的担体と関連して所望の治療効果又は予防効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。間葉系前駆細胞又は幹細胞の用量は、治療されるべき対象の疾患状態、年齢、性別、及び体重等の因子に応じて変化し得る。
【0072】
用語「対象」とは、動物、好ましくは、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット又はマウス)及び霊長類(例えば、サル又はヒト)を含む哺乳動物を指す。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0073】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、組成物の細胞集団の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%を占める。
【0074】
本開示の組成物は凍結保存することができる。間葉系前駆細胞又は幹細胞の凍結保存は、当該技術分野において公知である低速冷却方法又は「高速」凍結プロトコルを用いて行うことができる。好ましくは、凍結保存の方法は、非凍結細胞と比較して、凍結保存された細胞の類似の表現型、細胞表面マーカー及び増殖速度を維持する。
【0075】
凍結保存組成物は、凍結保存溶液を含み得る。凍結保存溶液のpHは、典型的には6.5~8、好ましくは7.4である。
【0076】
凍結保存溶液は、無菌の非発熱性等張液、例えば、PlasmaLyteA(商標)等を含み得る。100mLのPlasmaLyteA(商標)は、526mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl);502mgのグルコン酸ナトリウム(C6H11NaO7)、368mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP(C2H3NaO2・3H2O);37mgの塩化カリウム、USP(KCl);及び30mgの塩化マグネシウム、USP(MgCl2・6H2O)を含む。これは抗菌剤を含まない。pHを水酸化ナトリウムで調整する。pHは7.4(6.5~8.0)である。
【0077】
凍結保存溶液は、Profreeze(商標)を含み得る。凍結保存溶液は、追加的に又は代替的に培養培地を含み得る。
【0078】
凍結を容易にするために、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の凍結保護剤が、通常、凍結保存溶液に添加される。理想的には、凍結保護剤は細胞及び患者に対して非毒性であり、非抗原性であり、化学的に不活性であり、解凍後に高い生存率をもたらし、洗浄せずに移植を可能にすべきである。しかしながら、最も一般的に使用される凍結保護剤であるDMSOは、いくらかの細胞毒性を示す。ヒドロキシレチルデンプン(HES)は、凍結保存溶液の細胞毒性を低減するために、代用物として、又はDMSOと組み合わせて使用することができる。
【0079】
凍結保存溶液は、DMSO、ヒドロキシエチルデンプン、ヒト血清成分及び他のタンパク質バルキング剤のうちの1つ以上を含み得る。一例では、凍結保存溶液は、約5%ヒト血清アルブミン(HSA)及び約10%DMSOを含む。凍結保存溶液は、更に、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)及びトレハロースのうちの1つ以上を含み得る。
【0080】
一実施形態では、細胞は、42.5%Profreeze(商標)/50%αMEM/7.5%DMSO中に懸濁され、制御された速度の冷凍庫で冷却される。
【0081】
凍結保存組成物は、解凍することができ、対象に直接投与することができる。或いは、凍結保存組成物は、解凍することができ、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、投与の前に代替の担体に再懸濁させることができる。
【0082】
遺伝子組換え細胞
一実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は遺伝子組換えされない。一実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、例えば、目的のタンパク質、例えば、治療的及び/若しくは予防的利益を提供するタンパク質を発現並びに/又は分泌するように遺伝子組換えされる。
【0083】
細胞を遺伝子組換えするための方法は、当業者に明らかである。例えば、細胞中で発現される核酸は、細胞中での発現を誘導するためのプロモーターに作動可能に連結される。例えば、核酸は、例えば、ウイルスプロモーター、例えば、CMVプロモーター(例えば、CMV-IEプロモーター)又はSV-40プロモーター等の対象の様々な細胞中で作動可能なプロモーターに連結される。追加の適切なプロモーターは、当該技術分野において公知である。
【0084】
好ましくは、核酸は、発現構築物の形態で提供される。用語「発現構築物」とは、本明細書で使用される場合、細胞中で作動可能に接続された核酸(例えば、レポーター遺伝子及び/又はカウンター選択可能レポーター遺伝子)において発現を与える能力を有する核酸を指す。本開示との関連内で、発現構築物は、プラスミド、バクテリオファージ、ファージミド、コスミド、ウイルスサブゲノム若しくはゲノム断片、又は発現可能な形式で異種DNAを保持及び/若しくは複製できる他の核酸を含み得るか、或いはこれらであり得ることが理解されるべきである。
【0085】
本発明を実行するための適切な発現構築物を構築するための方法は、当業者に明らかであり、例えば、Ausubel F. M.、1987(現在までの全ての改訂を含む);又はSambrook及びGreen、2012に記載されている。例えば、発現構築物の各々の成分は、例えば、PCRを使用して適切な鋳型核酸から増幅され、その後、例えば、プラスミド又はファージミド等の適切な発現構築物にクローニングされる。
【0086】
そのような発現構築物のために適切なベクターは、当該技術分野において公知であり、及び/又は本明細書に記載する。例えば、哺乳動物細胞における本発明の方法のために適切な発現ベクターは、例えば、pcDNAベクター一式のベクター(Invitrogen社)、pCIベクター一式のベクター(Promega社)、pCMVベクター一式のベクター(Clontech社)、pMベクター(Clontech社)、pSIベクター(Promega社)、VP 16ベクター(Clontech社)、又はpcDNAベクター一式のベクター(Invitrogen社)である。
【0087】
当業者は、追加ベクター、及び例えば、Invitrogen Corporation社、Clontech社又はPromega社等のそのようなベクターの供給源を承知している。
【0088】
単離された核酸分子又はそれを含む遺伝子構築物を発現のための細胞に導入するための手段は、当業者に公知である。所与の生物に対して使用される技術は、公知の成功技術に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段としては、特に、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランによって媒介されるトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco社、MD、USA)及び/又はセルフェクチン(Gibco社、MD、USA)を使用する等のリポソームによって媒介されるトランスフェクション、PEG媒介DNA取り込み、エレクトロポレーション、並びにDNAでコーティングされたタングステン又は金粒子(Agracetus Inc.社、WI、USA)を使用する等の微小粒子照射が挙げられる。
【0089】
或いは、本発明の発現構築物はウイルスベクターである。適切なウイルスベクターは、当該技術分野において公知であり、市販されている。核酸を送達するため及びその核酸を宿主細胞ゲノムに組み込むための従来ウイルスに基づく系としては、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。或いは、アデノウイルスベクターは、エピソームが残る核酸を宿主細胞に導入するために有用である。ウイルスベクターは、標的細胞及び組織への遺伝子移入の高効率で多用途の方法である。更に、高形質導入効率は、多くの異なる細胞型及び標的組織において観察されている。
【0090】
例えば、レトロウイルスベクターは、一般的に、6~10kbまでの外来配列のパッケージング容量を有するシス作用性長い末端反復配列(LTR)を含む。最小限のシス作用性LTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、これを、次いで、発現構築物を標的細胞に組み込むために使用して、長期発現を提供する。広く使用されるレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SrV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組合せに基づくものが挙げられる(例えば、国際公開第1994/026877号; Buchschacher及びPanganiban、1992; Johannら、1992; Sommerfelt及びWeiss、1990; Wilsonら、1989; Millerら、1991; Lynchら、1991; Miller及びRosman、1989; Miller、1990; Scarpaら、1991; Burnsら、1993を参照されたい)。
【0091】
種々のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター系も、核酸送達のために開発されている。AAVベクターは、当該技術分野において公知の技術を使用して容易に構築することができる(例えば、米国特許第5173414号及び同第5139941号;国際公開第92/01070号及び同第93/03769号;Lebkowskiら、1988;Vincentら、1990;Carter、1992;Muzyczka、1992;Kotin、1994;Shelling及びSmith、1994;Zhouら、1994を参照されたい)。
【0092】
本発明の発現構築物を送達するために有用な追加のウイルスベクターとしては、例えば、ワクシニアウイルス及び鳥類のポックスウイルス等のポックスウイルスファミリー、若しくはアルファウイルス、又はコンジュゲートウイルスベクター(例えば、Fisher-Hochら、1989に記載のもの)に由来するものが挙げられる。
【0093】
当業者は、本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上記された実施形態に対して多数の変形及び/又は修飾を行うことができることを理解する。したがって、本実施形態は、全ての点において、例示的であり、限定的ではないと考えるべきである。
【実施例
【0094】
(実施例1)
材料及び方法
プラスチック接着技術を使用して調製された間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)
MLPSCを、米国特許第5,837,539号に記載のようにして、骨髄からデノボで生成させた。約80~100mlの骨髄を、滅菌ヘパリン含有シリンジに吸引し、MSC生成のためにMDACC Cell Therapy Laboratory社に送った。骨髄単核細胞を、ficoll-hypaqueを使用して単離し、ゲンタマイシン、グルタミン(2mM)及び20%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone社)を含有するアルファ改変MEM(αMEM)を含むMLPSC拡大培地をフラスコあたり50ml有する2つのT175フラスコに入れた。
細胞を、37℃、5%CO2で2~3日間培養し、その時間で非接着細胞を除去し、残った接着細胞を、細胞が70%以上のコンフルエンスに達するまで(7~10日)、連続培養し、次いで、細胞を、トリプシン処理し、拡大培地(フラスコあたり50mlの培地)を有する6つのT175フラスコに交換した。
【0095】
間葉系前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)の免疫選択
健常成人ボランティア(20~35歳)から骨髄(BM)を採取した。簡単に説明すると、40mlのBMを後腸骨稜からリチウム-ヘパリン抗凝固剤含有チューブに吸引する。
【0096】
骨髄単核細胞(BMMNC)は、Zannettinoら、1998によって既に記載されているLymphoprep(商標)(Nycomed Pharma社、Oslo、Norway)を用いた密度勾配分離によって調製された。400×gで30分間、4℃にて遠心分離した後、バフィー層を移動ピペットで除去し、5%ウシ胎児血清(FCS、CSL Limited社、Victoria, Australia)を含有するHank's平衡塩溶液(HBSS;Life Technologies社、Gaithersburg, MD)で構成される「HHF」中で3回洗浄する。
【0097】
STRO-3+(又はTNAP+)細胞は、Gronthos & Simmons、1995; 及びGronthos、2003によって既に記載される磁気活性化細胞選別によって単離された。簡単に説明すると、約1~3×108個のBMMMNCは、HHF中の10%(v/v)正常ウサギ血清からなるブロッキング緩衝液中で氷上にて20分間インキュベートされる。細胞は、ブロッキング緩衝液中の10μg/ml溶液のSTRO-3 mAbの200μlとともに氷上で1時間インキュベートされる。その後、細胞は、400×gでの遠心分離によりHHF中で2回洗浄される。HHF緩衝液中のヤギ抗マウスγ-ビオチン(Southern Biotechnology Associates社, Birmingham, UK)の1/50希釈液を添加し、細胞を氷上で1時間インキュベートする。細胞は、上記のようにMACS緩衝液(1%BSA、5mM EDTA及び0.01%アジ化ナトリウムを補足したCa2+及びMg2+を含まないPBS)中で2回洗浄され、最終容量の0.9ml MACS緩衝液中に再懸濁される。
【0098】
100μlのストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec社; Bergisch Gladbach, Germany)を細胞懸濁液に添加し、氷上で15分間インキュベートする。細胞懸濁液を2回洗浄し、0.5mlのMACS緩衝液中に再懸濁し、続いてミニMACSカラム(MSカラム、Miltenyi Biotec社)上に装填し、0.5mlのMACS緩衝液を用いて3回洗浄して、STRO-3 mAbに結合しない細胞(2005年12月19日に受託番号PTA-7282でAmerican Type Culture Collection (ATCC)に寄託された-国際公開第2006/108229号を参照されたい)を回収した。更に1mlのMACS緩衝液を添加した後、カラムを磁石から除去し、TNAP+細胞を陽圧によって単離する。各画分からの細胞のアリコートをストレプトアビジン-FITCで染色し、純度をフローサイトメトリーにより評価することができる。
【0099】
(実施例2)
臨床研究
臨床研究の設計
本研究の目的は、Lucentis(登録商標)治療を受けている対象における93,750個の同種MPCの単回硝子体内注射の安全性及び実現可能性を評価することである。
【0100】
別の目的は、視力、総合平均複合国立眼科学会視覚機能質問票(NEI VFQ-25)及び光コヒーレンストモグラフ(OCT)における硝子体内MPCの機能的有効性を調査することである。
【0101】
別の目的は、血管の漏出を防止するために必要な多くの抗VEGF注射を低減することである。
【0102】
治験設計:Lucentis(登録商標)治療の3回の毎月の注射後に新たに診断された新生血管AMDを有する対象における、同種MPCの単回硝子体内注射の安全性及び実現可能性を取り扱うフェーズIb/IIaの無作為化プラセボ対照研究。
【0103】
プロトコル: 全ての患者は、3回の毎月の硝子体内Lucentis(登録商標)注射を受けた。4か月目に、全ての患者(N=9)を、単回MPC注射又はプラセボに2:1に無作為化する。
【0104】
治験生成物及び投与
治験生成物は、STRO-3選択同種MPCであり、これは、培養拡大され、その後凍結保存された成人骨髄単核細胞に由来した。同種MPCを、5mLの容量中3000万個及び9000万個の有核細胞の濃度で処方し、7.5%ジメチルスルホキシド/50%アルファ改変イーグル培地及び42.5%ProFreeze(登録商標)中で凍結保存した。
【0105】
治験生成物を、使用する準備が整うまで、-140℃~196℃の液体窒素の気相中で保存した。治験生成物を適切に同定し、他の生成物から隔離しなければならなかった。
【0106】
この研究のための用量は、93,750個のMPC(1mLのバッグあたり300万個のMPCから0.03mL)及び312,500個のMPC(1mLのバッグあたり600万個のMPCから0.05mL)であった。用量が、眼の硝子体容量に対して表される場合、この研究における開始用量は、硝子体液1mLあたり約24,500個のMPCである。
【0107】
国立眼科学会視覚機能質問票(NEI VFQ-25)
NEI VFQ-25は、患者の視覚関連機能の知覚を測定するために開発された。例えば、(Mangioneら、Arch Ophthamol. 116:1496~1505(1998);及びMangioneら、Arch Ophthamol. 119:1050~1058(2001)を参照されたい。
【0108】
Sunerら、2009年(Sunerら、Inv Ophthamol. & Visula science, 50(8):3629~3635)によって公開された結果は、新生血管AMD集団における視覚関連機能の応答及び感覚測定としてのNEI VFQ-25の使用を裏付ける。ANCHOR(図1)及びMARINA(図2)のデータに基づいて、NEI VFQ-25スコアの4~6ポイントの変化は、BCVAの15文字の変化に対応する臨床的に意味を持つ変化を表す。
【0109】
NEI VFQ-25は、MARINA及びANCHORの治験における視力の臨床的意味を持つ変化に対する応答及び感度を実証した。複合スコア、並びに近くの活動、遠くの活動及び視覚特異的依存性の3つの事前に指定されたエンドポイントにおいて、3つの視力下位群(≧15文字の獲得、<15文字の喪失若しくは獲得、又は≧15文字の喪失)の間に著しい相違がある。この研究は、NEI VFQ-25が、新生血管AMDのための薬理学治療を受けている患者における視力の変化に応答する証拠を提供する。
【0110】
臨床研究の結果
図3は、3回の毎月のLucentis(登録商標)注射、続いて4か月目に単回硝子体内MPC注射又はプラセボのいずれかを受けた患者における光コヒーレンストモグラフィー(OCT)における変化を示す。両方の患者群は、OCTによって測定されるように、各群における3回の毎月のLucentis(登録商標)注射の同様の治療効果と一致して、3か月まで網膜厚さの同様の有意な低減を示した。これは、炎症に関連する異常な血管新生及び血管周囲の血管外液の蓄積が、MPC注射の前に有意に低減されたことを示す。4か月目以降、OCTの変化の程度は群間で異ならず、MPC注射がLucentis(登録商標)での初期治療を超えて異常な血管新生及び血管漏出を更に増大させなかったことを示す。
【0111】
図4は、ベースラインからの視力スコアの観点での有効性の結果を示す。結果は、Lucentis(登録商標)単独で治療された患者、及びLucentis(登録商標)及びMPCの単回注射で治療された患者についての平均値を示す。12か月にわたって視力の有意な悪化を示したLucentis(登録商標)単独群と比較すると、単回MPC注射を受けた群は、この期間にわたって視力の維持を実証した。
【0112】
図5は、プラセボを受けた対照のLucentis(登録商標)で治療された患者と比較して、Lucentis(登録商標)で治療された患者における単回硝子体内MPC注射後のNEI VFQ-25の結果を示す。
【0113】
これらの結果は、Lucentis(登録商標)治療後のMPC注射が、以下において有効であることを示す
i. 12か月にわたる視力の喪失の予防及び安定化;並びに
ii.Lucentis(登録商標)群のみにおける3ポイントの喪失と比較して、MPC+Lucentis(登録商標)群における複合NEI VFQ-25スコアにおいてベースラインから11ポイントの改善が、MPC群が12か月にわたって少なくとも15文字の視力の改善を経験する可能性があるが、対照群は同じ量まで視力を喪失する可能性がある。
【0114】
これらの結果は、Lucentis(登録商標)で血管新生成分が十分に治療され、血管漏出及び血管周囲液によって引き起こされる新生血管膜の炎症性肥厚を適切に反転させた新生血管AMDの患者において、単回MPC注射が、プラセボを受けたLucentis(登録商標)で治療された患者と比較して、視力の改善において有効であることを示す。両方の群がその後必要により同じ数の追加のLucentis(登録商標)注射を受け続けるので、これは、MPCが、眼に存在する任意の血管新生又は炎症が以前の毎月のLucentis(登録商標)の注射で適切に治療されていたため、視神経に直接作用することによって視力を改善していることを示す。
【0115】
[参考文献]
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】