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特表2022-516202ハイブリッド推進システム、水素エンジンのピストンを爆発燃焼の影響から保護する方法及び水素エンジンを動力とするヘリコプターのインペラーシャフト上に追加的な周期的トルクを与える方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ハイブリッド推進システム、水素エンジンのピストンを爆発燃焼の影響から保護する方法及び水素エンジンを動力とするヘリコプターのインペラーシャフト上に追加的な周期的トルクを与える方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/28 20060101AFI20220216BHJP
   F02B 75/24 20060101ALI20220216BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20220216BHJP
   F01B 7/16 20060101ALI20220216BHJP
   F01B 9/02 20060101ALI20220216BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20220216BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20220216BHJP
   F02M 25/038 20060101ALI20220216BHJP
   F02F 1/00 20060101ALI20220216BHJP
   F16C 29/02 20060101ALI20220216BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
F02B75/28 C
F02B75/24
F02B75/32 A
F01B7/16
F01B9/02
F02B43/00 Z
F02M21/02 G
F02M25/038
F02F1/00 G
F16C29/02
B64C27/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547033
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 PL2018000099
(87)【国際公開番号】W WO2020080963
(87)【国際公開日】2020-04-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521167682
【氏名又は名称】ガジュ-ヤブウォニスキ、ヴォイチェフ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ガジュ-ヤブウォニスキ、ヴォイチェフ
【テーマコード(参考)】
3G024
3J104
【Fターム(参考)】
3G024AA22
3G024DA20
3G024EA12
3G024GA18
3G024HA12
3J104AA41
3J104AA43
3J104AA63
3J104AA69
3J104AA75
3J104EA10
(57)【要約】
【解決手段】本システムは、対向するピストンエンジンを備える。ピストン(1)は、頂部ピストン(1a)と、スプリング(1b)と、底部ピストン(1c)と、から構成される。シリンダー(3)は、圧縮空気の入口チャネル(8)と、出口チャネル(10)と、燃料噴射装置(12)と、水蒸気噴射装置(13)と、点火要素(14)と、を有する。二連クランクシャフト(15)が、クラッチ(20a、20b)を介してインペラー(22)に接続された出力シャフト(19a、19b)と組み合わされる。インペラーの周囲のローターリム(26)は、磁気双極子(28)を含む。ステーターリム(27)は、誘導コイル(29)を有する。ある方法は、2つのハーフピストン間に配置されたばねの弾性を利用することに関する。さらにハーフピストンは、圧縮空気の噴射により冷却される。別の方法は、インペラーのエネルギーの一部を、エネルギーを回収及び伝達するためのシステムに伝えることに関する。インペラーシャフトのトルクが不十分な場合、このエネルギーが利用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素燃料エンジンを備えたハイブリッド推進システムであって、
補助電気機器を備えた1ストローク二重反転内燃エンジンと、2室シリンダーの内部に配置された一対の二重往復ピストンと、を備え、
前記2室シリンダーの内面はダイヤモンドコーティングで覆われ、
前記2室シリンダーは、互いに対向してエンジンケースの内部に固定され、
前記2室シリンダーは、ヘッドによって外部から封鎖され、
前記2室シリンダーが前記エンジンケースに固定される部分では、前記シリンダーは、内部に摺動リニア軸受を備えた隔壁によって封鎖され、
プッシュロッドが、前記摺動リニア軸受を通って前記エンジンケースに導かれ、
前記2室シリンダーの壁の中央部に、ファンに接続された掃気の入口チャネルと、排気システムに接続された燃焼廃棄物及び掃気の出口チャネルと、が存在し、
前記2室シリンダーの各々のヘッド及び前記隔壁には、燃料噴射装置と、水蒸気噴射装置と、点火要素と、が存在し、
前記2室シリンダーの対の各々に配置されたピストン同士は、前記エンジンケース内に配置された二連クランクシャフトを用いて接続され、
前記二重往復ピストン(1)の各々は、頂部ピストン(1a)と、補償ばね(1b)によって前記頂部ピストン(1a)から隔てられた底部ピストン(1c)と、から構成され、
前記頂部ピストン(1a)及び前記底部ピストン(1c)は、前記頂部ピストン(1a)及び前記底部ピストン(1c)にそれぞれ設けられた頂部摺動軸受(1d)及び底部摺動軸受(1e)を通って摺動可能に、前記プッシュロッド(7)上に配置され、
前記プッシュロッド(7)上に固定的に配置された頂部リミッタ(1f)及び底部リミッタ(1g)が存在し、
前記頂部リミッタ(1f)及び前記底部リミッタ(1g)は、前記頂部ピストン(1a)及び前記底部ピストン(1c)の外面に対して調整されることを特徴とするハイブリッド推進システム。
【請求項2】
第1の出力シャフト(19a)及び第2の出力シャフト(19b)が、前記二連クランクシャフト(15)から突出し、
前記第1の出力シャフト(19a)及び前記第2の出力シャフト(19b)は、それぞれ第1のクラッチ(20a)及び第2のクラッチ(20b)を介して、それぞれ第1のインペラーシステム(21a)及び第2のインペラーシステム(21b)に接続されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド推進システム。
【請求項3】
前記第2のインペラーシステム(21b)は、前記第1のインペラーシステム(21a)と同一であり、
前記第1のインペラーシステム(21a)及び第2のインペラーシステム(21b)は、別々のマルチブレードインペラー(22)から構成され、
前記マルチブレードインペラー(22)は、前記第1のクラッチ(20a)及び前記第2のクラッチ(20b)の対応するシャフト(23)に固定されることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド推進システム。
【請求項4】
前記第2のインペラーシステム(21b)は、前記第1のインペラーシステム(21a)と同一であり、
前記第1のインペラーシステム(21a)及び第2のインペラーシステム(21b)は、2つのマルチブレードインペラー(22)の対を構成し、
前記マルチブレードインペラー(22)のドライブシャフト(24)は、それぞれ第1の伝達ベルト(25a)及び第2の伝達ベルト(25b)を介して、それぞれのシャフト(23)に配備された第1のクラッチ(20a)及び第2のクラッチ(20b)に接続されることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド推進システム。
【請求項5】
前記マルチブレードインペラー(22)のブレードの端部は、ローターホイールリム(26)に固定され、
前記ローターホイールリム(26)は、ステーターホイールリム(27)に偏心的に配置され、
前記ローターホイールリム(26)と前記ステーターホイールリム(27)との最小間隔は、前記ローターホイールリム(26)が自由に回転できる大きさに維持され、
前記ローターホイールリム(26)の各々には、ネオジウム磁石の形をした磁気双極子(28)が、円周方向に均等に取り付けられ、
ステーターホイールリム(27)の各々には、誘導コイルが円周方向に均等に取り付けられ、
上記の構成全体により、前記マルチブレードインペラー(22)に接続された電気機器システムが形成され、
前記ステーターホイールリム(27)の各々のすべての誘導コイル(29)は、個別の交換システム(30)と接続され、
前記交換システム(30)は、電気エネルギーを回収及び伝達するための共通システム(31)に接続され、
前記交換システム(30)及び前記共通システム(31)は、制御システム(32)に接続されることを特徴とする請求項3又は4に記載のハイブリッド推進システム。
【請求項6】
水素エンジンのピストンを爆発燃焼の影響から保護する方法であって、
水素混合物の点火の結果前記ピストン上で急激に増加する圧力の部分的動力化を実現するために、前記ピストンがシリンダーの閉鎖された領域を運動中に、補償ばねの弾性力及び前記ピストンを構成する頂部ピストンと底部ピストンとの間に生じるエアバッグ効果を利用するステップと、
前記ピストンの温度を低下させるために、前記ピストンが前記シリンダー内を運動中に、前記ピストンの特定の位置において、圧縮空気の噴射により前記頂部ピストン及び前記底部ピストンを掃気するステップと、を備え、
前記補償ばねは、前記頂部ピストンと前記底部ピストンとの間でプッシュロッド上に配置され、
前記頂部ピストン及び前記底部ピストンの少なくとも一方は、他方に向けて運動可能であることを特徴とする方法。
【請求項7】
水素エンジンを動力とするヘリコプターのインペラーシャフト上に追加的な周期的トルクを与える方法であって、
インペラートルクのエネルギーの一部を、電磁誘導を用いて、磁気双極子を備えたインペラーブレードの端部から、前記磁気双極子の回転経路の周囲に配置された電気的ネットワークに伝えるステップと、
誘導コイルの周囲に電流を供給するステップと、
前記エネルギーを、電気エネルギー回収及び伝達システムに伝えるステップと、
インペラーシャフト上のトルクが不十分な場合、電気エネルギーを、前記電気エネルギー回収及び伝達システムから前記誘導コイルに戻すステップと、を備え、
前記誘導コイルは、回転する前記磁気双極子に電磁力を発生させることにより、インペラーシャフト上のトルクを発生させることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水素燃料エンジンを備えたハイブリッド推進システム、こうしたエンジンのピストンを爆発燃焼の影響から保護する方法、及び特にこうしたエンジンを用いるヘリコプターに関しインペラーシャフト上に追加的な周期的トルクを与える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願公開第2017/039464号に記載の水素エンジンは、エンジンケース(その内面はダイヤモンドコーティングで覆われている)に取り付けられ一対の2室シリンダーと、当該シリンダー内部に配置される二重往復ピストンと、を備える。シリンダー及びピストンは、二連クランクシャフト(これはエンジンケース内に配置される)の回転軸方向に180度の角度で互いに逆方向に配置されるか、互いにV字型をなすように配置される。クランクシャフトは、2つの同一のクランク要素(これらは共通の回転軸に沿って互いに逆方向に導かれる)で構成される。これら2つのクランク要素同士は、スペーサー軸受を用いて、前述の回転軸の周りに二重反転可能に接続される。さらにクランクシャフトは、両側からの駆動力を伝達する2つのシャフトを有する。クランクシャフトのカップリング機能は、2つの同一のコネクティングロッドの対を用いることによって実現する。各コネクティングロッドの一端は、逆回転クランク要素の1つに回転可能に接続される。各コネクティングロッドの他端は、2つの横シャフトの1つに往復運動可能に接続される。各コネクティングロッドは、横シャフトに垂直なプッシュロッドを通して、ピストンの1つに固定的に接続される。各シリンダー壁(その内面はダイヤモンドコーティングで覆われている)の中央部に、掃気の入口チャネルと、燃焼生成物及び掃気の出口チャネルと、がある。各シリンダーの頭部及び下部区画には、燃料噴射装置、水蒸気噴射装置及び点火要素が存在する。下部区画の中央部には、区画の摺動リニア軸受が埋め込まれる。この摺動リニア軸受を通して、プッシュロッドが運動する。摺動リニア軸受は、下方から環状封止リングを具備され、環状封止リングの上方で摺動軸受の残余部分上において、その壁と弁ロッドクラフトの表面との間に潤滑マイクロスロットが形成される。各シリンダーに割り当てられた水蒸気噴射装置は、それらの水蒸気ケーブルにより、水蒸気を投与するためのデバイスに接続され、一方でデバイスは、排気管上に装着された水蒸気発生器の適切なシリンダーから駆動される。さらに各排気管上に熱電対が設置され、その通路の観点から発電機タービン及び支援ファンのタービンが装着される。支援ファンは、反対側のシリンダーに割り当てられた主ファンを介して、掃気をこのシリンダーの圧縮空気の入口チャネルに導く。タービンの電気出力部は、熱電対の電気出力部と並列に連結され、かつ電気出力部は、交流電源から送達されたエネルギーを用いてHHO発生器の電気エネルギーを供給するアキュムレータに導かれる。酸素を有するHHO発生器のガス管は、紫外線発生装置に導かれ、その場所からガス管は三方ガスコネクタの入口の1つにさらに導かれ、三方ガスコネクタの第2の入口に、水素を有するガス管がHHO発生器から移動される。ガスコネクタの出口は、圧縮機を介してすべての個々の燃料供給装置の入口に平行に接合される。個々の燃料供給装置の出口は、燃料供給装置に割り当てられるエンジンのすべての燃料噴射装置に接続される。
【0003】
さらに、ドイツのAirstier社のドローン用推進システムは、4つのプロペラを駆動するための4つの個別の燃焼エンジンと、それらに組み合わされた4つの補助電気エンジンと、を備える。これにより、空中での安定性と操作性が向上する。
【0004】
米国特許第6918382号に記載の水素燃料によって駆動される内燃機関エンジンは、制御された量の水素供給がされ、スクーターの動力に使われる。水素燃料供給量制御システムにより、複数のパラメータを考慮してエンジンスロットルに燃料が供給される。このパラメータは、水素貯蔵システム内の水素量を含み、マイクロコントローラ及び多くのセンサを備えた水素燃料計測システムを用いて制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、HHO発生器を用いて水素燃料を製造及び使用する方法であって、オルタネーターからエネルギーを供給した後、燃料タンクからの水を電気分解するものが知られている。この処理により、非爆発性の水素と酸素との混合物が発生する。この混合物は、吸気及び通常のエンジン燃料とともに、エンジンの燃料システムに直接供給される。この既知の方法により、内燃機関における通常の燃料使用量を削減することができるが、ゼロにすることはできない。
【0006】
水素混合物を動力とする既知のエンジンのシリンダー室内の燃焼プロセスは、シリンダーの燃焼室内で最高7000℃の水素の爆発燃焼が発生することを特徴とする。こうした現象は、エンジン部品耐久性(特にピストンなどの可動部品の寿命と安定性)にとって不利である。この課題は、以下の本発明に係るハイブリッド推進システム及びそれに対応する方法によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハイブリッド推進システムは、特に水素燃料のための1ストローク二重反転エンジンを備える。この1ストローク二重反転エンジンは、一対の二重往復ピストンを有する。これらの二重往復ピストンは、互いに対向してエンジンケースの内部に固定される2室シリンダーの内部に配置される。シリンダーは、ヘッドによって外部から封鎖されている。一方、シリンダーがエンジンケースに固定される部分では、シリンダーは、内部に摺動リニア軸受を備えた隔壁によって封鎖されている。プッシュロッドが、摺動リニア軸受を通ってエンジンケースに導かれる。各ピストンは、頂部ピストンと、補償ばねによって頂部ピストンから隔てられた底部ピストンと、から構成される。頂部ピストン及び底部ピストンは、頂部ピストン及び底部ピストンにそれぞれ設けられた頂部摺動軸受及び底部摺動軸受を通って摺動可能に、プッシュロッド上に配置される。さらに、プッシュロッド上に固定的に配置された頂部リミッタ及び底部リミッタが存在する。頂部リミッタ及び底部リミッタは、頂部ピストン及び底部ピストンの外面に対して調整される。シリンダーの壁の中央部に入口チャネル及び出口チャネルが存在する。入口チャネルにはファンの出口から掃気が供給され、出口チャネルは掃気と及び燃焼生成物を排気管を通して排気するのに役立つ。各シリンダーのヘッド及び隔壁には、燃料噴射装置と、水蒸気噴射装置と、点火要素と、が存在する。シリンダーの対の各々に配置されたピストン同士は、エンジンケース内に配置された二連クランクシャフトを用いて接続される。クランクシャフトは、第1のクランクシャフトと、第2のクランクシャフトと、から構成される。第1のクランクシャフト及び第2のクランクシャフトは、共通の回転軸に沿って互いに逆に配置される。第1のクランクシャフト及び第2のクランクシャフト同士は、スペーサー軸受を用いて、前述の共通の回転軸の周りに二重反転可能に接続される。ピストンの対の各々に関するクランクシャフトのカップリング機能は、2つの同一のコネクティングロッドの対を用いることによって実現する。このコネクティングロッドは、第1のコネクティングロッドと、第2のコネクティングロッドと、から構成される。一対の第1のコネクティングロッド及び第2のコネクティングロッドの一端は、それぞれ第1のクランクシャフト及び第2のクランクシャフトに偏心的に接続される。一対の第1のコネクティングロッド及び第2のコネクティングロッドの他端は、2つの横シャフトの1つに往復運動可能に接続される。2つの横シャフトの各々は、横シャフトに垂直なプッシュロッドを通して、2つのピストン1の1つに固定的に接続される。2つのピストンは、対向するシリンダーの内部に配置される。第1の出力シャフト及び第2の出力シャフトが、それぞれ第1のクランクシャフト及び第2のクランクシャフトから突出する。第1の出力シャフト及び第2の出力シャフトは、それぞれ第1のクラッチ及び第2のクラッチを介して、それぞれ第1のインペラーシステム及び第2のインペラーシステムに接続される。
【0008】
第1の実施の形態では、第2のインペラーシステムは、第1のインペラーシステムと同一である。第1のインペラーシステム及び第2のインペラーシステムは、別々の(好ましくはマルチブレードの)インペラーを構成する。インペラーは、第1のクラッチ及び第2のクラッチの対応するシャフトに固定される。
【0009】
別の実施の形態では、第2のインペラーシステムは、第1のインペラーシステムと同一である。第1のインペラーシステム及び同一の第2のインペラーシステムは、2つのマルチブレードインペラーの対を構成する。マルチブレードインペラーのドライブシャフトは、それぞれ第1の伝達ベルト及び第2の伝達ベルトを介して、それぞれのシャフトに配備された第1のクラッチ及び第2のクラッチに接続される。
【0010】
各インペラーのブレードの端部は、ローターのホイールリムに固定される。ローターのホイールリムは、ステーターのホイールリムに偏心的に配置される。ローターのホイールリムとステーターのホイールリムとの最小間隔は、ローターリムが自由に回転できる大きさに維持される。各ローターリムには、ネオジウム磁石の形をした磁気双極子が、円周方向に均等に取り付けられる。一方各ステーターのリムには、誘導コイルが、円周方向に均等に取り付けられる。各ステーターリムのすべての誘導コイルは、個別の交換システムと接続される。これらの交換システムは、電気エネルギーを回収及び伝達するための共通システムに接続される。交換システム及び共通システムは、制御システムに接続される。全体として、インペラーに接続された電気機器システムが形成される。さらに必要に応じて、このシステムは、インペラーの補助駆動エンジン又は飛行中にエネルギーを貯蔵するジェネレータとしての役割を果たす。
【0011】
水素エンジンのピストンを爆発燃焼の影響から保護する方法は、
水素混合物の点火の結果ピストン上で急激に増加する圧力の部分的動力化を実現するために、ピストンがシリンダーの閉鎖された領域を運動中に、補償ばねの弾性力及びピストンを構成する頂部ピストンと底部ピストンとの間に生じるエアバッグ効果を利用するステップと、
ピストンの温度を低下させるために、ピストンがシリンダー内を運動中に、ピストンの特定の位置において、圧縮空気の噴射により頂部ピストン及び底部ピストンを掃気するステップと、を備え、
補償ばねは、頂部ピストンと底部ピストンとの間でプッシュロッド上に配置され、
頂部ピストン及び底部ピストンの少なくとも一方は、他方に向けて運動可能であることを特徴とする。
【0012】
水素エンジンを動力とするヘリコプターのインペラーシャフト上に追加的な周期的トルクを与える方法は、
インペラートルクのエネルギーの一部を、電磁誘導を用いて、磁気双極子を備えたインペラーブレードの端部から、磁気双極子の回転経路の周囲に配置された電気的ネットワークに伝えるステップと、
誘導コイルの周囲に電流を供給するステップと、
エネルギーを、電気エネルギー回収及び伝達システムに伝えるステップと、
インペラーシャフト上のトルクが不十分な場合、電気エネルギーを、電気エネルギー回収及び伝達システムから誘導コイルに戻すステップと、を備え、
誘導コイルは、回転する磁気双極子に電磁力を発生させることにより、インペラーシャフト上のトルクを発生させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る水素エンジンを備えたハイブリッド推進システムは、任意の陸上車両、海上及び海中船などを駆動するために燃焼機関と電気システムとを組み合わせるため、これらの乗り物にあわせて設計することができる。このシステムは、ヘリコプターに用いたとき、内燃機関エンジンが故障した場合にも安全な飛行を可能とする。このような故障時、内燃機関エンジンの推進機能は電気機器に取って代わられる。この電気機器は電気駆動エンジンとして機能し、安全な着陸を可能とする。こうした電気駆動エンジンの動力を個別に制御することも可能である。これは本発明の最大の利点である。この場合の別の利点として、最適な駆動方法の選択と消費燃料を最小化できるということもある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面を参照しながら、本発明を実施の形態で説明する。
図1】水素エンジンの模式図である。
図2】一対のピストンとクランクシャフトの図である。
図3】ピストンの片側断面図である。
図4】インペラーシステムを備えた内燃機関エンジンの圧縮の一般概念を示す図である。
図5】第1の実施の形態に係る推進システムにおいて、制御システムに接続されたインペラーシステムを上から見たときの模式図である。
図6】第1の実施の形態に係る推進システムにおいて、インペラーシステムを横から見たときの模式図である。
図7】第2の実施の形態に係る推進システムにおいて、インペラーシステムを横から見たときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
推進システムは、特に水素燃料のための1ストローク二重反転エンジンを備える。この1ストローク二重反転エンジンは、一対の二重往復ピストン1を有する。これらの二重往復ピストンは、互いに対向してエンジンケース2の内部に固定される2室シリンダー3の内部に配置される。シリンダー3の内面は、ダイヤモンドコーティングで覆われる。
【0016】
ダイヤモンドコーティングされたシリンダーの被覆壁は、水素燃料の燃焼中に発生する高温からシリンダーを保護するための既知の方法である。シリンダー3は、ヘッド4によって外部から封鎖されている。一方、シリンダー3がエンジンケース2に固定される部分では、シリンダー3は、内部に摺動リニア軸受6を備えた隔壁5によって封鎖されている。プッシュロッド7が、摺動リニア軸受6を通ってエンジンケース2に導かれる。各ピストン1は、頂部ピストン1aと、補償ばね1bによって頂部ピストン1aから隔てられた底部ピストン1cと、から構成される。頂部ピストン1a及び底部ピストン1cは、頂部ピストン1a及び底部ピストン1cにそれぞれ設けられた頂部摺動軸受1d及び底部摺動軸受1eを通って摺動可能に、プッシュロッド7上に配置される。さらに、プッシュロッド7上に固定的に配置された頂部リミッタ1f及び底部リミッタ1gが存在する。頂部リミッタ1f及び底部リミッタ1gは、頂部ピストン1a及び底部ピストン1cの外面に対して調整される。シリンダー3の壁の中央部に入口チャネル8及び出口チャネル10が存在する。入口チャネル8にはファン9の出口から掃気が供給され、出口チャネル10は掃気と及び燃焼生成物を排気管11を通して排気するのに役立つ。各シリンダー3のヘッド4及び隔壁5には、燃料噴射装置12と、水蒸気噴射装置13と、点火要素14と、が存在する。シリンダー3の対の各々に配置されたピストン1同士は、エンジンケース2内に配置された二連クランクシャフト15を用いて接続される。クランクシャフト15は、第1のクランクシャフト15aと、第2のクランクシャフト15bと、から構成される。第1のクランクシャフト15a及び第2のクランクシャフト15bは、共通の回転軸に沿って互いに逆に配置される。第1のクランクシャフト15a及び第2のクランクシャフト15b同士は、スペーサー軸受16を用いて、前述の共通の回転軸の周りに二重反転可能に接続される。ピストン1の対の各々に関するクランクシャフト15のカップリング機能は、2つの同一のコネクティングロッドの対を用いることによって実現する。このコネクティングロッドは、第1のコネクティングロッド17aと、第2のコネクティングロッド17bと、から構成される。一対の第1のコネクティングロッド17a及び第2のコネクティングロッド17bの一端は、それぞれ第1のクランクシャフト15a及び第2のクランクシャフト15bに偏心的に接続される。一対の第1のコネクティングロッド17a及び第2のコネクティングロッド17bの他端は、2つの横シャフト18の1つに往復運動可能に接続される。2つの横シャフト18の各々は、横シャフト18に垂直なプッシュロッド7を通して、2つのピストン1の1つに固定的に接続される。2つのピストン1は、対向するシリンダー3の内部に配置される。第1の出力シャフト19a及び第2の出力シャフト19bが、それぞれ第1のクランクシャフト15a及び第2のクランクシャフト15bから突出する。第1の出力シャフト19a及び第2の出力シャフト19bは、それぞれ第1のクラッチ20a及び第2のクラッチ20bを介して、それぞれ第1のインペラーシステム21a及び第2のインペラーシステム21bに接続される。
【0017】
第1の実施の形態では、第2のインペラーシステム21bは、第1のインペラーシステム21aと同一である。第1のインペラーシステム21a及び第2のインペラーシステム21bは、別々の(好ましくはマルチブレードの)インペラー22を構成する。インペラー22は、第1のクラッチ20a及び第2のクラッチ20bの対応するシャフト23に固定される。
【0018】
別の実施の形態では、第2のインペラーシステム21bは、第1のインペラーシステム21aと同一である。第1のインペラーシステム21a及び第2のインペラーシステム21bは、2つのマルチブレードインペラー22の対を構成する。マルチブレードインペラー22のドライブシャフト24は、それぞれ第1の伝達ベルト25a及び第2の伝達ベルト25bを介して、それぞれのシャフト23に配備された第1のクラッチ20a及び第2のクラッチ20bに接続される。各インペラー22のブレードの端部は、ローターのホイールリム26に固定される。ローターのホイールリム26は、ステーターのホイールリム27に偏心的に配置される。ローターのホイールリム26とステーターのホイールリム27との最小間隔は、ローターリム26が自由に回転できる大きさに維持される。各ローターリム26には、ネオジウム磁石の形をした磁気双極子28が、円周方向に均等に取り付けられる。一方各ステーターのリム27には、誘導コイルが、円周方向に均等に取り付けられる。各ステーターリムのすべての誘導コイル29は、個別の交換システム30と接続される。これらの交換システム30は、電気エネルギーを回収及び伝達するための共通システム31に接続される。交換システム30及び共通システム31は、制御システム32に接続される。全体として、インペラー22に接続された電気機器システムが形成される。さらに必要に応じて、このシステムは、インペラー22の補助駆動エンジン又は飛行中にエネルギーを貯蔵するジェネレータとしての役割を果たす。
【0019】
対向ピストンに関しては特定の動作段階におけるエンジンの動作は同一であるが、その動作サイクルに関しては180度の位相差で運動する。従って協調動作するエンジンのサブシステムに関して、対応するピストンを備えたシリンダー3の1つの動作を説明すれば十分である。
【0020】
圧縮された水素燃料が、燃料噴射装置12により、ピストン1の上部のシリンダー3の空間(これは、頂部燃焼室を形成する)に供給される。ピストン1のTDCで燃料が、スパークプラグのスパークにより点火される。頂部燃焼室の温度が最高温度の約7000℃に達すると、水蒸気噴射装置13により水蒸気が噴射される。これにより、燃焼室は約3500℃に冷却される。これと同時に水蒸気は、酸素と水素とに分解する。燃焼室に追加の燃料が供給されると、自然発火、誘導爆発及びシリンダー3内の急激な圧力上昇が発生する。ピストン1は、隔壁に向けて強制的にストロークされる。その後、補償ばね1bの弾性力(及び頂部ピストン1aと底部ピストン1cとの間に生じるエアバッグ効果)により、頂部ピストン1a上での燃焼ガスの圧力の急上昇は緩和される。このとき補償ばね1bは、底部ピストン1cによって支えられる。底部ピストン1cは、底部リミッタ1gによりブロックされる。底部ピストン1cに影響を与える力は、底部リミッタ1gを介して、プッシュロッド7に伝えられる。これによりプッシュロッド7は、隔壁5に向けて運動する。ピストン1の中央部が入口チャネル8及び出口チャネル10の軸の位置にあるとき、頂部ピストン1aと底部ピストン1cとの間の最小距離(これは、圧縮された補償ばね1bの厚さによって決まる)が保たれる。その後、頂部ピストン1aと底部ピストン1cとの間でピストン1内の自由空間が形成される。これにより、ファン9から入口チャネル8に供給される圧縮された掃気を用いて、頂部ピストン1a及び底部ピストン1cの内面の冷却が可能となる。ピストン1のさらなる運動中に、シリンダー3の頂部燃焼室は、入口チャネル8及び出口チャネル10に接続される。その結果、前述の燃焼室及び頂部ピストン1aの外面から燃焼生成物が清浄される。そしてシリンダー3の壁が冷却される。シリンダーの燃焼室を清浄し掃気する圧縮空気は、入口チャネル8に取り付けられたファン9によってもたらされる。
【0021】
さらにエンジンのこの動作段階において、底部燃料噴射装置12から、ピストン1より下部にあるシリンダー3の空間に、燃料が供給される。ピストン1が隔壁5に向けて下方にさらに運動している間、燃料は圧縮される。ピストン1がTDCに近づくと、底部点火プラグから燃料に点火がされ、前述と同じプロセスが繰り返される。その結果、水蒸気噴射装置13により、底部燃焼室に水蒸気が供給される。水蒸気は、酸素と水素とに分解する。このようにして燃料が燃焼し、ピストン1がヘッド4に向けて上方にストロークする。頂部ピストン1aと同様に、補償ばね1bの弾性力(及び頂部ピストン1aと底部ピストン1cとの間に生じるエアバッグ効果)により、底部ピストン1c上での燃焼ガスの圧力の急上昇は緩和される。このとき補償ばね1bは、ブロックされた頂部ピストン1aによって支えられる。頂部ピストン1aに影響を与える力は、頂部リミッタ1fを介して、プッシュロッド7に伝えられる。これによりプッシュロッド7は、ヘッド4に向けて運動する。ピストンの下方への運動のときと同様、ピストン1の中央部が入口チャネル8及び出口チャネル10の軸の位置にあるとき、入口チャネル8に供給された圧縮空気により、頂部ピストン1a及び底部ピストン1cの内面が冷却される。ピストン1のさらなる運動中に、シリンダー3の底部燃焼室は、入口チャネル8及び出口チャネル10に接続される。その結果、圧縮空気の噴出により、前述の燃焼室及び底部ピストン1cの外面から燃焼生成物が清浄される。そしてシリンダー3の壁が冷却される。このようにして1サイクルの全体が実現する。この間、プッシュロッド7は、線形な往復ストローク運動をする。プッシュロッド7の底部端は、隔壁5に配置された摺動リニア軸受6を通ってエンジンケース2に導かれる。第1のコネクティングロッド17a及び第2のコネクティングロッド17b(これらは互いに接続される)の対を通って対向するシリンダー3の対から突出するプッシュロッド7により、第1のクランクシャフト15a及び第2のクランクシャフト15b(これらは、クランクシャフト15を形成する)の二重反転回転運動が可能となる。この運動は、第1の出力シャフト19a及び第2の出力シャフト19b(これらは、互いに反転回転し対向する)を介して、第1のクラッチ20a及び第2のクラッチ20bの入力部に伝えられる。第1のクラッチ20a及び第2のクラッチ20bは、反転回転駆動力を第1のインペラーシステム21a及び第2のインペラーシステム21bに伝える。
【0022】
本発明の第1の実施の形態では、駆動力は、マルチブレードインペラーシステム20の各々(これらはそれぞれ、第1のクラッチ20a及び第2のクラッチ20bのシャフト23に固定される)に直接伝えられる。
【0023】
別の実施の形態では、駆動力は、第1の伝達ベルト25a及び第2の伝達ベルト25bを用いて、ドライブシャフト24を介して、マルチブレードインペラーシステムの2つの対22に伝えられる。マルチブレードインペラー22の使用は、ローターリム26を複数のスポットで接続する必要性に由来する。これは、ローターの構造全体の堅牢化を目的とする。
【0024】
各インペラー22のブレードは起動時に、縁部に取り付けられたローターリム26とともに回転する。ローターリム26は、同じ向きに設置された磁気双極子28のストリングを備える。磁気双極子28のストリングは、その磁場により、ステーターリム27に取り付けられた誘導コイル29に影響を与える。このようにして形成される電気機器は、必要に応じて電流(この電流は、交換システム30を介して、エネルギーを回収及び伝達するためのシステム31に伝えられる)を発生し、バッテリー(図示せず)を充電することができる。あるいはこの電気機器は、内燃推進エンジンを補助する電気モータシステムを構成することができる。この電気モータシステムは、回収した電気エネルギーを利用する(内燃推進エンジンの起動システムを含む)。上記のインペラー22に接続された電気機器システムを利用して内燃推進エンジンを補助することにより、ヘリコプターを安全かつ穏やかに着陸させることが可能となる。なぜなら、ヘリコプターのメイン内燃推進機能が故障した場合、インペラー22の補助的な電気推進機能が得られるからである。内燃推進エンジンとインペラー22に接続された電気推進エンジンとを相互接続することにより、これらの推進エンジンの間でエネルギーを交換することができ、燃料消費を最小化することができる。
図1
図2
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【国際調査報告】