(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵セル用ホルダ構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/227 20210101AFI20220217BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220217BHJP
H01M 10/655 20140101ALI20220217BHJP
H01M 10/6572 20140101ALI20220217BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220217BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20220217BHJP
H01M 50/213 20210101ALN20220217BHJP
【FI】
H01M50/227
H01M10/613
H01M10/655
H01M10/6572
H01M50/204 401H
H01M10/625
H01M50/213
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021524394
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 IN2019050800
(87)【国際公開番号】W WO2020089936
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】201841041560
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521190819
【氏名又は名称】ティーブイエス モーター カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TVS MOTOR COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】‘Jayalakshmi Estates’, No.29 (Old No.8), Haddows Road, 600 006 Chennai, India
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ,マニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】サントッシュ バガワット,ガヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ブイ エス クマー,ガンダヴァラプ
(72)【発明者】
【氏名】スクデオラオ,マハジャン サブハッシュ
(72)【発明者】
【氏名】サブラモニアム,チタムバラム
(72)【発明者】
【氏名】ビナイ チャンドラカント,ハーン
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031BB01
5H031EE04
5H031HH00
5H031HH06
5H040AA28
5H040AS07
5H040AY05
5H040LL06
5H040NN00
(57)【要約】
本発明は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)と、前記1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204)を収容するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体(205)とを含むエネルギー貯蔵装置(200)に関する。本発明において、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、質量パーセントで、所定量の少なくとも1つの熱硬化性材料と、有効量の少なくとも1つの硬化剤と、所定量の相変化材料とを含有する組成物を含む。さらに、本発明は、高導電性、高熱吸収および放散能力、改良された冷却機構、高熱伝導性および1以上のエネルギー貯蔵セル間の電気的短絡を最小限のリスクとする特性を備えた、少なくともホルダ構造体(205)の製造方法を記述する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置(200)のエネルギー貯蔵セル(204)用のホルダ構造体(205)であって、前記ホルダ構造体(205)は、
所定の質量パーセント量の少なくとも一種の熱硬化性材料と、組成物を硬化させるのに有効な量の少なくとも一種の硬化剤との混合物、及び
所定の質量パーセント量の相変化材料、
を含む組成物を含有し、
前記相変化材料を前記混合物に所定の質量パーセント量で添加する前に、前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌されているホルダ構造体(205)。
【請求項2】
少なくとも一種の熱硬化性材料が、熱伝導性の液状エポキシ樹脂である請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項3】
混合物中における少なくとも一種の熱硬化性材料の含有量が、少なくとも5質量%である請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項4】
粒状の相変化材料が、混合物の少なくとも5質量%の量で添加されている請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項5】
少なくとも一種の硬化剤が、混合物の少なくとも1質量%の有効量で添加されている請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項6】
少なくとも一種の熱硬化性材料と少なくとも一種の硬化剤との混合物に、少なくとも一種の相変化材料を添加した後に、上記混合物が、少なくとも1つの支持構造体中で、第2の所定時間t2撹拌されて、均一な組成物が形成されている請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項7】
エネルギー貯蔵装置(200)のエネルギー貯蔵セル(204)用のホルダ構造体(205)であって、前記ホルダ構造体(205)は、
所定の質量パーセント量の少なくとも一種の熱硬化性材料と、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物を硬化させるのに有効な量の少なくとも一種の硬化剤との混合物、
所定の質量パーセント量の相変化材料、
所定の質量パーセント量の熱伝導性向上剤、及び
を含む組成物を含有し、
前記相変化材料および前記熱伝導性向上剤を所定の質量パーセント量で前記混合物に添加する前に、前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌されているホルダ構造体(205)。
【請求項8】
少なくとも一種の熱硬化性材料が、熱伝導性の液状エポキシ樹脂である請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項9】
熱伝導性向上剤が、非導電性材料である請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項10】
混合物中における少なくとも一種の熱硬化性材料の含有量が、少なくとも5質量%である請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項11】
粒状の相変化材料が、混合物の少なくとも5質量%の量で添加されている請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項12】
少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1質量%の有効量で添加されている請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項13】
熱伝導性向上剤が、少なくとも1質量%の量で添加されている請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項14】
少なくとも一種の熱硬化性材料と少なくとも一種の硬化剤との混合物に、相変化材料および熱伝導性向上剤を添加した後に、上記混合物が、少なくとも1つの支持構造体中で、第2の所定時間撹拌されて、均一な組成物が形成されている請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項15】
1以上のエネルギー貯蔵セル(204)と、
前記1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204a)を収容するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体(205)とを含み、
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、質量パーセントで、所定量の少なくとも一種の熱硬化性材料と有効量の少なくとも一種の硬化剤との混合物を含有する組成物を含み、
相変化材料を、所定の質量パーセント量で、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)の混合物に添加する前に、前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌されているエネルギー貯蔵装置(200)。
【請求項16】
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)が、外側ケーシング構造体(102)中に収容され、これらの間にペルチェ素子の形態の少なくとも1つの冷却部材が設けられている請求項15に記載のエネルギー貯蔵装置(200)。
【請求項17】
1以上のエネルギー貯蔵セル(204)と、
前記1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204a)を収容するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体(205)とを含み、
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、質量パーセントで、所定量の少なくとも一種の熱硬化性材料と有効量の少なくとも一種の硬化剤との均一な混合物を含有する組成物を含み、
相変化材料および熱伝導性向上剤を、所定の質量パーセント量で、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)の混合物に添加する前に、前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌されているエネルギー貯蔵装置(200)。
【請求項18】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)が、外側ケーシング構造体(102)中に収容され、これらの間にペルチェ素子の形態の少なくとも1つの冷却部材が設けられている請求項17に記載のエネルギー貯蔵装置(200)。
【請求項19】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の製造方法(300)であって:
少なくとも1つの支持構造体中に、質量パーセントで、少なくとも一種の熱硬化性材料および少なくとも一種の硬化剤を含む均一な混合物を含む組成物を供給する工程と、
前記混合物に含まれる前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤を、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌した後に、前記混合物に相変化材料を添加する工程と、
前記少なくとも一種の熱硬化性材料、前記少なくとも一種の硬化剤および前記相変化材料を含有する前記組成物を、第2の所定時間、撹拌する工程と、
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)を形成するために、所定の温度で前記組成物を硬化させる工程と、
前記少なくとも1つの支持構造体に含まれる前記組成物を機械加工して、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得る工程と、を含む方法(300)。
【請求項20】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、混合物中に少なくとも5質量%の量で少なくとも一種の熱硬化性材料を含む請求項19に記載の方法(300)。
【請求項21】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、混合物中に少なくとも5質量%の量で相変化材料を含む請求項19に記載の方法(300)。
【請求項22】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、少なくとも1質量%の有効量の少なくとも一種の硬化剤を含む請求項19に記載の方法(300)。
【請求項23】
少なくとも1つのホルダ構造体が、熱伝導性構造体である請求項19に記載の方法(300)。
【請求項24】
少なくとも一種の熱硬化性材料が、熱伝導性の液状エポキシ樹脂である請求項19に記載の方法(300)。
【請求項25】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得るために、組成物を相変化材料の溶融温度未満の温度で硬化させる請求項19に記載の方法(300)。
【請求項26】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の製造方法(300)であって:
少なくとも1つの支持構造体中に、質量パーセントで、少なくとも一種の熱硬化性材料および少なくとも一種の硬化剤を含む均一な混合物を含む組成物を供給する工程と、
前記混合物に含まれる前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤を、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌した後に、前記混合物に相変化材料および熱伝導性向上剤を添加する工程と;
前記少なくとも一種の熱硬化性材料、前記少なくとも一種の硬化剤および前記相変化材料を含有する前記組成物を、第2の所定時間、撹拌する工程と;
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)を形成するために、所定の温度で前記組成物を硬化させる工程と;
前記少なくとも1つの支持構造体に含まれる前記組成物を機械加工して、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得る工程と、を含む方法(300)。
【請求項27】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、混合物中に少なくとも5質量%の量で少なくとも一種の熱硬化性材料を含む請求項26に記載の方法(300)。
【請求項28】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、混合物中に少なくとも5質量%の量で相変化材料を含む請求項26に記載の方法(300)。
【請求項29】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、少なくとも1質量%の有効量の少なくとも一種の硬化剤を含む請求項26に記載の方法(300)。
【請求項30】
少なくとも1つのホルダ構造体が、熱伝導性構造体である請求項26に記載の方法(300)。
【請求項31】
少なくとも一種の熱硬化性材料が、熱伝導性の液状エポキシ樹脂である請求項26に記載の方法(300)。
【請求項32】
熱伝導性向上剤が、非導電性材料である請求項26に記載の方法(300)。
【請求項33】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、少なくとも1質量%の量で熱伝導性向上剤を含む請求項26に記載の方法(300)。
【請求項34】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得るために、組成物を相変化材料の溶融温度未満である所定の温度で硬化させる請求項26に記載の方法(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、エネルギー貯蔵装置に関する。より詳細には、本主題はエネルギー貯蔵セル用の少なくとも1つのホルダ構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛蓄電池は内燃機関用スタータモータの有用な動力源である。しかし、エネルギー密度が低く、熱を適切に放散できないため、電気自動車の動力源としては実用的ではない。特に、鉛蓄電池を用いた電気自動車は、充電が必要となるまでの期間が短く、有害物質を含んでいる。また、鉛蓄電池を用いた電気自動車は、加速が遅く、深放電への耐性が劣り、電池寿命が短い。従って、再充電可能であり、軽量であり且つエネルギー密度が高いリチウムイオン電池を含むエネルギー貯蔵パックが、自動車用途及び種々の商業的電子装置において普及しつつある。しかし、リチウムイオン電池を備えたエネルギー貯蔵パックを最適な動作温度で収容し作動させることは、電池が長期間に亘って充電を維持し、より速い充電を可能とするために非常に重要である。
【0003】
公知の電池パックは、直列又は並列接続のいずれか、又は直列接続と並列接続との組み合わせによって互いに電気的に接続された1以上のエネルギー貯蔵セルで構成される電池ユニットを含む。典型的には、電池パックは、優れた熱伝導性を示す材料からなる1以上のホルダ構造体を含む。そのような電池パック用のホルダ構造体は、1以上のエネルギー貯蔵セルを保持するように構成されている。しかしながら、電池パックの作動中、自動車に電力を供給するため、電池に電流が流れる。電池から電流が流れると、電池パック内で熱が発生する。また、電池パックを充電している間、この充電プロセス中に熱が同様に電池パック内に蓄積される。電池の充電中と同様に電池の放電中にも熱が発生して温度上昇をもたらし、電池の平均寿命や性能に深刻な影響を及ぼす。したがって、安全温度限界の逸脱、製造プロセスに起因したセルの短絡、過充電のいずれかが原因となって、またはセル用のホルダ構造体を製造するために使用された材料の種類に起因して、1以上のエネルギー貯蔵セルが熱暴走し、この熱暴走によって放出されたエネルギーによって、隣接するエネルギー貯蔵セルの熱暴走が引き起こされ、この連鎖反応は、電池パックを壊滅的に破壊する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面を参照して、詳細な説明を記載する。特徴や構成要素などを参照するために、図面全体に亘って同じ番号を使用する。
【0005】
【
図1】本発明の一実施態様による、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの斜視図である。
【0006】
【
図2】本発明の一実施態様による、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの分解図である。
【0007】
【
図3】本発明の一実施態様による、少なくとも1つのホルダ構造体を含む少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの分解図である。
【0008】
【
図4】本発明の一実施態様による、
図3の少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの少なくとも1つのホルダ構造体の斜視図である。
【0009】
【
図5】本発明の一実施態様による、
図4の少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの少なくとも1つのホルダ構造体および1以上のエネルギー貯蔵セルの分解図である。
【0010】
【
図6】本発明の一実施態様による、1以上のエネルギー貯蔵セルが収容されている少なくとも1つのホルダ構造体の斜視図である。
【0011】
【
図7】本発明の一実施態様による、少なくとも1つのホルダ構造体の製造方法を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既存のエネルギー貯蔵装置は、その中に1以上のエネルギー貯蔵セルを保持するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体を含む。典型的には、少なくとも1つのホルダ構造体は、高導電率の金属形態の剛性部材で構成される。このようなエネルギー貯蔵装置では、フィンの形態の冷却構造体が少なくとも1つのホルダ構造体の側壁の少なくとも一部に形成される。これにより、1以上のエネルギー貯蔵セルの充電および放電プロセス中に生成される熱は、冷却構造体を通して効果的に放散される。しかしながら、少なくとも1つのホルダ構造体は金属、好ましくはアルミニウムから構成され、金属と1以上のエネルギー貯蔵セルとが直接接触しているので、1以上のエネルギー貯蔵セルの充電および放電プロセス中に発生した熱が、セルと、相互接続プレートを含む他の1以上の電気部品との間の電気的短絡を引き起し、その結果、互いに隣接するセルの加熱により連鎖反応を生じ、エネルギー貯蔵装置の損傷に至る。
【0013】
エネルギー貯蔵装置中に1以上のエネルギー貯蔵セルを支持するための公知の構造体では、少なくとも1つのホルダ構造体は、相変化材料(PCM)からなる。相変化材料(PCM)は融解潜熱が高いので、大きな温度上昇を伴わずに、多くの熱を吸収することができる。エネルギー貯蔵装置の充電および放電の間、相変化材料は、1以上のエネルギー貯蔵セルによって生成された熱を吸収して、固体から液体に状態を変化させる。しかしながら、相変化材料は、熱伝導性が低く放熱特性が悪いために、元の固体状態に戻るのに長い時間を要し、その結果、エネルギー貯蔵装置を直ぐに充電することが困難となる。したがって、相変化材料(PCM)の熱伝導性を向上させるために、一種以上の熱伝導性向上添加剤、例えば、炭素繊維、グラファイト、アルミニウム発泡体などを、相変化材料(PCM)が添加される。しかしながら、これらの添加剤は導電性を有するため、添加剤を含む相変化材料は電気的絶縁性を失い、その結果、エネルギー貯蔵装置内で電気的短絡が生じて、ホルダ構造体が、その中に1以上のエネルギー貯蔵セルを貯蔵するのに適さなくなる。
【0014】
エポキシ樹脂材料は良好な熱伝導性を有することから、別の公知のエネルギー貯蔵装置では、少なくとも1つのホルダ構造体がエポキシ樹脂材料で構成される。1以上のエネルギー貯蔵セルのために冷却機構を改良することで、放熱特性が向上し、エネルギー貯蔵装置中でセル間の短絡が生じる危険性を軽減することができる。しかしながら、エポキシ樹脂は、熱吸収能力に乏しく、エポキシ樹脂材料からなる少なくとも1つのホルダ構造体を設計するのに適していない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的に鑑み、本発明は、高い熱伝導性、高い熱吸収及び放散能力、改良された冷却機構を有し、セル間の電気短絡のリスクを最小限とするエネルギー貯蔵装置用の改良された少なくとも1つのホルダ構造体を提供する。さらに、エネルギー貯蔵装置用の改良された少なくとも1つのホルダ構造体は、改良された熱的及び電気的特性を有し、これにより熱暴走を低減し、エネルギー貯蔵装置を損傷から保護する。より詳細には、これに限定されるものではないが、本発明は、1以上のエネルギー貯蔵セルを含むエネルギー貯蔵装置における熱暴走を低減するための、エネルギー貯蔵装置の新規で改良された少なくとも1つのホルダ構造体に関する。一実施態様によれば、本発明は、1以上のエネルギー貯蔵セルの充電および放電中であっても、許容範囲内で、1以上のエネルギー貯蔵セルを設置位置に保持するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体の改良に関する。
【0016】
本発明の一実施態様では、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置は、1以上のエネルギー貯蔵セルと、1以上のエネルギー貯蔵セルの少なくとも1つのエネルギー貯蔵セルを収容するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体とを含む。一実施態様では、1以上のエネルギー貯蔵セルを支持するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体は、所定の質量パーセント量の少なくとも1種の熱硬化性材料と、有効量の少なくとも1種の硬化剤との均一な混合物を含有する組成物を含み、硬化剤は、少なくとも1つのホルダ構造体の組成物を硬化させるためのものである。一実施態様では、所定の質量パーセント量の相変化材料を、少なくとも1つのホルダ構造体の組成物の混合物に添加する。別の実施態様では、相変化材料と共に所定の質量パーセント量の熱伝導性向上剤を少なくとも1つのホルダ構造体の組成物の混合物に添加して、これにより少なくとも1つのホルダ構造体の熱伝導性を向上させる。別の実施態様では、熱伝導性向上剤は、電気的に非導電性の材料である。さらに、別の実施態様では、熱伝導性向上剤は、セラミックなどを含む。より具体的には、本発明の一実施態様では、相変化材料を少なくとも1つのホルダ構造体の混合物に添加する前に、少なくとも一種の熱硬化性材料および少なくとも1種の硬化剤を、第1の所定時間、少なくとも1つの支持構造体内で共に撹拌する。少なくとも1種の熱硬化性材料と、少なくとも1種の硬化剤と、相変化材料とを含む少なくとも1つのホルダ構造体の組成物を、少なくとも1つの支持構造体内で第2の所定時間撹拌して、均一な組成物を形成する。一実施態様では、少なくとも1つの熱硬化性材料は、熱伝導性液状エポキシ樹脂である。一実施態様では、混合物中における少なくとも一種の熱硬化性材料の含有量は少なくとも5質量%であり、相変化材料は、粒状であり、混合物の少なくとも5質量%の量で添加される。一実施態様では、組成物中における少なくとも一種の硬化剤の有効量は、少なくとも1質量%である。別の実施態様では、熱伝導性向上剤は、非導電性材料であり、熱伝導性向上剤の含有量は少なくとも5質量%である。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の少なくとも1つのホルダ構造体は、その少なくとも一部と一体的に形成された1以上の収容部を含む。一実施態様では、1以上の収容部が1以上のエネルギー貯蔵セルを保持するように構成される。1以上の収容部は、1以上のエネルギー貯蔵セルの直径よりも大きい径寸法を有する。一実施態様によると、1以上のエネルギー貯蔵セルは、直列および並列の組み合わせなどの1以上の形態で1以上の収容部中に設置されるように構成されたリチウムイオン電池を含む。
【0018】
次に、本発明における少なくとも1つのホルダ構造体の製造方法を説明する。一実施態様によれば、前記方法は、少なくとも1種の熱硬化性材料と少なくとも1種の硬化剤との混合物を含む組成物を、この組成物を硬化させるための少なくとも1つの支持構造体に供給する工程と、混合物に含まれる少なくとも1種の熱硬化性材料と相変化材料とを第1の所定時間撹拌した後、混合物に相変化材料を添加する工程と、少なくとも1つのホルダ構造体を形成するために、所定の温度Tで熱硬化性材料を硬化させる工程と、少なくとも1つの支持構造体に含まれる組成物を機械加工して、少なくとも1つのホルダ構造体を得る工程と、少なくとも1つのホルダ構造体の少なくとも一部に一体的に形成された1以上の収容部に、1以上のエネルギー貯蔵セルの少なくとも1つのエネルギー貯蔵セルを配置する工程とを含む。一実施態様によれば、組成物を、相変化材料の溶融温度未満である所定の温度で硬化させて、少なくとも1つのホルダ構造体を得る。一実施態様では、少なくとも1つのホルダ構造体は熱伝導性構造体である。一実施態様によれば、少なくとも1つの支持構造体は、少なくとも1つのホルダ構造体を形成するための組成物を収容するように構成された少なくとも1つの容器を含む。一実施態様では、少なくとも1つの容器は、樹脂材料で構成される。別の実施態様では、少なくとも1つの容器は、金属を含む剛性部材で構成される。本発明の別の実施態様によれば、所定の質量パーセント量で相変化材料と共に熱伝導性向上剤を、少なくとも1つのホルダ構造体の組成物の混合物に添加して、これにより少なくとも1つのホルダ構造体の熱伝導性を向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明の一実施態様によれば、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックは、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置を収容するための外側ケーシング構造体を含む。少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック用の外側ケーシング構造体は、左右一対のカバー部材を含む。本発明の一実施態様では、ペルチェ素子の形態の少なくとも1つの冷却部材が、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置と、少なくとも1つのエネルギーパックの少なくとも1つのホルダ構造体との間に設けられる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の種々の他の特徴および利点について、添付の図面を参照して詳細に説明する。図面において、同じ参照番号は、概して、同一の、機能的に類似した、および/または構造的に類似した部材を示す。図面では、部材に対応した参照番号を左端に示している。添付した図面では、各図において、同じまたは類似の部材を特定するために同じ参照番号を使用している。なお、図面は、参照番号の向きの方向から見たものである。
【0021】
図1は、本発明の一実施態様による、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の斜視図である。一実施態様では、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)は、1以上のエネルギー貯蔵装置(200)を収容するために、外側ケーシング構造体(102)を含む(
図2に示す)。少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)用の外側ケーシング構造体(102)は、一対の左右のカバー部材(101L)(101R)を含む。
【0022】
図2は、本発明の一実施態様による、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の分解図である。一実施態様では、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)を収容するように構成された外側ケーシング構造体(102)は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも一方の開口側(102c)、(102d)を覆うように構成された一対の左右のカバー部材(101L)(101R)を含む。一実施態様では、外側ケーシングがその中に少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)を収容するように構成される。
【0023】
図3は、本発明の一実施態様による、少なくとも1つのホルダ構造体(205)を含むエネルギー貯蔵パック(100)の分解図である。本発明の一実施態様によれば、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)と、この1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の1以上のエネルギー貯蔵セル(204a)(
図5に示す)を収容するための少なくとも1つのホルダ構造体(205)とを含む。一実施態様では、少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物は、少なくとも5質量%の少なくとも1種の熱硬化性材料と、少なくとも1つのホルダ構造体の組成物を硬化させるために有効量の少なくとも1種の硬化剤との均一な混合物を含む。一実施態様によれば、少なくとも5質量%の相変化材料を少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物の混合物に添加する前に、少なくとも1つの支持構造体中で、少なくとも一種の熱硬化性材料および少なくとも一種の硬化剤を、第1の所定時間一緒に撹拌する。一実施態様では、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)は、1以上の相互接続プレート(202)、(203)を介して互いに電気的に接続される。一実施態様によれば、1以上の相互接続プレート(202)、(203)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)を互いに電気的に接続し、且つ1以上のエネルギー貯蔵セル(204)を上部ホルダ部材(201a)および下部ホルダ部材(201b)を介して電池管理システム(BMS)(図示せず)に電気的に接続する。一実施態様では、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも上部を、上部ホルダ部材(201a)および下部ホルダ(201b)上の1以上の相互接続プレート(202)、(204)を介して電気的に接続して、1以上のエネルギー貯蔵セルと少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)の電池管理システム(BMS)(図示せず)との間の電気的接続を確立する。
【0024】
図4は、本発明の一実施態様による、
図3のエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)の斜視図である。本発明の一実施態様では、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の1以上のエネルギー貯蔵セル(204)(
図5に示す)を保持するように構成される。一実施態様によると、少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、液状エポキシ樹脂などの少なくとも1種の熱硬化性材料、粒状の相変化材料、及び少なくとも1種の硬化剤を含有する組成物を含む。
【0025】
さらに
図4では、一実施態様によれば、少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、その少なくとも一部分に一体的に形成された1以上の収容部(400)を含む。一実施態様によれば、1以上の収容部は、その中に1以上のエネルギー貯蔵セル(204)(
図5に示される)の少なくとも一部を収容できる寸法とされる。さらに、一実施態様においては、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)(
図5に示す)は、1以上の形態で1以上の収容部(400)中に設置されるように構成されたリチウムイオン電池を含む。1以上の収容部(400)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)(
図5に示す)の1以上のエネルギー貯蔵セル(204a)(
図5に示す)の寸法よりもわずかに大きい径寸法を有する。
【0026】
図5は、本発明の一実施態様による、
図4のエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)および1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の分解図である。一実施態様では、1以上のエネルギー貯蔵セル(204a)が、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)中に設置されるように、1以上の収容部(400)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204a)の寸法よりもわずかに大きい径寸法を有するように構成される。
【0027】
図6は、本発明の一実施態様による、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)が内部に収容された少なくとも1つのホルダ構造体(205)の斜視図である。一実施態様によれば、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)(
図2に示される)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)中の所定の位置に設置される。本発明の一実施態様においては、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204a)が直列および並列形態を含む1以上の形態で配置される。
【0028】
図7により、本発明の一実施態様による、少なくとも1つのホルダ構造体の製造方法を説明する。一実施態様では、少なくとも1つのホルダ構造体(205)の製造方法(300)は、少なくとも1つの支持構造体中に、質量パーセントで、少なくとも1種の熱硬化性材料および相変化材料の均一な混合物を含む組成物を供給する工程1(301)と、混合物中に含まれている少なくとも1種の熱硬化性材料および少なくとも1種の硬化剤を少なくとも1つの支持構造体中で第1の所定時間一緒に撹拌した後、相変化材料を混合物に添加する工程2(302)と、少なくとも1種の熱硬化性材料、少なくとも1種の硬化剤および相変化材料を含む組成物を第2の所定時間撹拌する工程3(303)と、少なくとも1つのホルダ構造体(205)を形成するために組成物を高温で成形する工程4(304)と、少なくとも1つの支持構造体に含まれる組成物を機械加工して少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得る工程5(305)とを含む。
【0029】
有利には、少なくとも1つのエネルギー装置用の少なくとも1つのホルダ構造体を改良することで、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の1以上のエネルギー貯蔵セルの熱的なバランスが取れ、寿命、効率、および出力を最大にすることができる。さらに、上記製造方法の1以上の工程を介して少なくとも1つのホルダ構造体を得る場合には、少なくとも一種の熱硬化性材料、粒状の相変化材料、および少なくとも一種の硬化剤の組成物を含む改良された少なくとも1つのホルダ構造体を提供できる利点があり、上記少なくとも1つのホルダ構造体は、高い伝導性、高い熱吸収および放散能力、改良された冷却機構、及び高い熱伝導性を有し、セル間の電気短絡の危険性を低減することができる。したがって、一実施態様によれば、改良された少なくとも1つのホルダ構造体は、1以上の改良された熱的特性および電気的特性を有し、これにより、改良された性能を有すると共に連続的な再充電を行うことが可能な少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置を提供することができる。
【0030】
本発明の範囲から逸脱することなく、改良および変更を本明細書に組み入れることができる。
【手続補正書】
【提出日】2020-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置(200)のエネルギー貯蔵セル(204)用のホルダ構造体(205)であって、前記ホルダ構造体(205)は、
所定の質量パーセント量の少なくとも一種の熱硬化性材料と、組成物を硬化させるのに有効な量の少なくとも一種の硬化剤との混合物、及び
所定の質量パーセント量の相変化材料、
を含む組成物を含有し、
前記相変化材料を前記混合物に所定の質量パーセント量で添加する前に、前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌されているホルダ構造体(205)。
【請求項2】
少なくとも一種の熱硬化性材料が、熱伝導性の液状エポキシ樹脂である請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項3】
混合物中における少なくとも一種の熱硬化性材料の含有量が、少なくとも5質量%である請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項4】
粒状の相変化材料が、混合物の少なくとも5質量%の量で添加されている請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項5】
少なくとも一種の硬化剤が、混合物の少なくとも1質量%の有効量で添加されている請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項6】
少なくとも一種の熱硬化性材料と少なくとも一種の硬化剤との混合物に、少なくとも一種の相変化材料を添加した後に、上記混合物が、少なくとも1つの支持構造体中で、第2の所定時
間撹拌されて、均一な組成物が形成されている請求項1に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項7】
エネルギー貯蔵装置(200)のエネルギー貯蔵セル(204)用のホルダ構造体(205)であって、前記ホルダ構造体(205)は、
所定の質量パーセント量の少なくとも一種の熱硬化性材料と、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物を硬化させるのに有効な量の少なくとも一種の硬化剤との混合物、
所定の質量パーセント量の相変化材料、
所定の質量パーセント量の熱伝導性向上剤、及び
を含む組成物を含有し、
前記相変化材料および前記熱伝導性向上剤を所定の質量パーセント量で前記混合物に添加する前に、前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌されているホルダ構造体(205)。
【請求項8】
少なくとも一種の熱硬化性材料が、熱伝導性の液状エポキシ樹脂である請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項9】
熱伝導性向上剤が、非導電性材料である請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項10】
混合物中における少なくとも一種の熱硬化性材料の含有量が、少なくとも5質量%である請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項11】
粒状の相変化材料が、混合物の少なくとも5質量%の量で添加されている請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項12】
少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1質量%の有効量で添加されている請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項13】
熱伝導性向上剤が、少なくとも1質量%の量で添加されている請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項14】
少なくとも一種の熱硬化性材料と少なくとも一種の硬化剤との混合物に、相変化材料および熱伝導性向上剤を添加した後に、上記混合物が、少なくとも1つの支持構造体中で、第2の所定時間撹拌されて、均一な組成物が形成されている請求項7に記載のホルダ構造体(205)。
【請求項15】
1以上のエネルギー貯蔵セル(204)と、
前記1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204a)を収容するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体(205)とを含み、
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、質量パーセントで、所定量の少なくとも一種の熱硬化性材料と有効量の少なくとも一種の硬化剤との混合物を含有する組成物を含み、
相変化材料を、所定の質量パーセント量で、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)の混合物に添加する前に、前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌されているエネルギー貯蔵装置(200)。
【請求項16】
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)が、外側ケーシング構造体(102)中に収容され、これらの間にペルチェ素子の形態の少なくとも1つの冷却部材が設けられている請求項15に記載のエネルギー貯蔵装置(200)。
【請求項17】
1以上のエネルギー貯蔵セル(204)と、
前記1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204a)を収容するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体(205)とを含み、
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、質量パーセントで、所定量の少なくとも一種の熱硬化性材料と有効量の少なくとも一種の硬化剤との均一な混合物を含有する組成物を含み、
相変化材料および熱伝導性向上剤を、所定の質量パーセント量で、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)の混合物に添加する前に、前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤が、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌されているエネルギー貯蔵装置(200)。
【請求項18】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)が、外側ケーシング構造体(102)中に収容され、これらの間にペルチェ素子の形態の少なくとも1つの冷却部材が設けられている請求項17に記載のエネルギー貯蔵装置(200)。
【請求項19】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の製造方法(300)であって:
少なくとも1つの支持構造体中に、質量パーセントで、少なくとも一種の熱硬化性材料および少なくとも一種の硬化剤を含む均一な混合物を含む組成物を供給する工程と、
前記混合物に含まれる前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤を、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌した後に、前記混合物に相変化材料を添加する工程と、
前記少なくとも一種の熱硬化性材料、前記少なくとも一種の硬化剤および前記相変化材料を含有する前記組成物を、第2の所定時間、撹拌する工程と、
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)を形成するために、所定の温度で前記組成物を硬化させる工程と、
前記少なくとも1つの支持構造体に含まれる前記組成物を機械加工して、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得る工程と、を含む方法(300)。
【請求項20】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、混合物中に少なくとも5質量%の量で少なくとも一種の熱硬化性材料を含む請求項19に記載の方法(300)。
【請求項21】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、混合物中に少なくとも5質量%の量で相変化材料を含む請求項19に記載の方法(300)。
【請求項22】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、少なくとも1質量%の有効量の少なくとも一種の硬化剤を含む請求項19に記載の方法(300)。
【請求項23】
少なくとも1つのホルダ構造体が、熱伝導性構造体である請求項19に記載の方法(300)。
【請求項24】
少なくとも一種の熱硬化性材料が、熱伝導性の液状エポキシ樹脂である請求項19に記載の方法(300)。
【請求項25】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得るために、組成物を相変化材料の溶融温度未満の温度で硬化させる請求項19に記載の方法(300)。
【請求項26】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の製造方法(300)であって:
少なくとも1つの支持構造体中に、質量パーセントで、少なくとも一種の熱硬化性材料および少なくとも一種の硬化剤を含む均一な混合物を含む組成物を供給する工程と、
前記混合物に含まれる前記少なくとも一種の熱硬化性材料および前記少なくとも一種の硬化剤を、少なくとも1つの支持構造体中で、第1の所定時間一緒に撹拌した後に、前記混合物に相変化材料および熱伝導性向上剤を添加する工程と;
前記少なくとも一種の熱硬化性材料、前記少なくとも一種の硬化剤および前記相変化材料を含有する前記組成物を、第2の所定時間、撹拌する工程と;
前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)を形成するために、所定の温度で前記組成物を硬化させる工程と;
前記少なくとも1つの支持構造体に含まれる前記組成物を機械加工して、前記少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得る工程と、を含む方法(300)。
【請求項27】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、混合物中に少なくとも5質量%の量で少なくとも一種の熱硬化性材料を含む請求項26に記載の方法(300)。
【請求項28】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、混合物中に少なくとも5質量%の量で相変化材料を含む請求項26に記載の方法(300)。
【請求項29】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、少なくとも1質量%の有効量の少なくとも一種の硬化剤を含む請求項26に記載の方法(300)。
【請求項30】
少なくとも1つのホルダ構造体が、熱伝導性構造体である請求項26に記載の方法(300)。
【請求項31】
少なくとも一種の熱硬化性材料が、熱伝導性の液状エポキシ樹脂である請求項26に記載の方法(300)。
【請求項32】
熱伝導性向上剤が、非導電性材料である請求項26に記載の方法(300)。
【請求項33】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物が、少なくとも1質量%の量で熱伝導性向上剤を含む請求項26に記載の方法(300)。
【請求項34】
少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得るために、組成物を相変化材料の溶融温度未満である所定の温度で硬化させる請求項26に記載の方法(300)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、エネルギー貯蔵装置に関する。より詳細には、本主題はエネルギー貯蔵セル用の少なくとも1つのホルダ構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛蓄電池は内燃機関用スタータモータの有用な動力源である。しかし、エネルギー密度が低く、熱を適切に放散できないため、電気自動車の動力源としては実用的ではない。特に、鉛蓄電池を用いた電気自動車は、充電が必要となるまでの期間が短く、有害物質を含んでいる。また、鉛蓄電池を用いた電気自動車は、加速が遅く、深放電への耐性が劣り、電池寿命が短い。従って、再充電可能であり、軽量であり且つエネルギー密度が高いリチウムイオン電池を含むエネルギー貯蔵パックが、自動車用途及び種々の商業的電子装置において普及しつつある。しかし、リチウムイオン電池を備えたエネルギー貯蔵パックを最適な動作温度で収容し作動させることは、電池が長期間に亘って充電を維持し、より速い充電を可能とするために非常に重要である。
【0003】
公知の電池パックは、直列又は並列接続のいずれか、又は直列接続と並列接続との組み合わせによって互いに電気的に接続された1以上のエネルギー貯蔵セルで構成される電池ユニットを含む。典型的には、電池パックは、優れた熱伝導性を示す材料からなる1以上のホルダ構造体を含む。そのような電池パック用のホルダ構造体は、1以上のエネルギー貯蔵セルを保持するように構成されている。しかしながら、電池パックの作動中、自動車に電力を供給するため、電池に電流が流れる。電池から電流が流れると、電池パック内で熱が発生する。また、電池パックを充電している間、この充電プロセス中に熱が同様に電池パック内に蓄積される。電池の充電中と同様に電池の放電中にも熱が発生して温度上昇をもたらし、電池の平均寿命や性能に深刻な影響を及ぼす。したがって、安全温度限界の逸脱、製造プロセスに起因したセルの短絡、過充電のいずれかが原因となって、またはセル用のホルダ構造体を製造するために使用された材料の種類に起因して、1以上のエネルギー貯蔵セルが熱暴走し、この熱暴走によって放出されたエネルギーによって、隣接するエネルギー貯蔵セルの熱暴走が引き起こされ、この連鎖反応は、電池パックを壊滅的に破壊する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面を参照して、詳細な説明を記載する。特徴や構成要素などを参照するために、図面全体に亘って同じ番号を使用する。
【0005】
【
図1】本発明の一実施態様による、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの斜視図である。
【0006】
【
図2】本発明の一実施態様による、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの分解図である。
【0007】
【
図3】本発明の一実施態様による、少なくとも1つのホルダ構造体を含む少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの分解図である。
【0008】
【
図4】本発明の一実施態様による、
図3の少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの少なくとも1つのホルダ構造体の斜視図である。
【0009】
【
図5】本発明の一実施態様による、
図4の少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックの少なくとも1つのホルダ構造体および1以上のエネルギー貯蔵セルの分解図である。
【0010】
【
図6】本発明の一実施態様による、1以上のエネルギー貯蔵セルが収容されている少なくとも1つのホルダ構造体の斜視図である。
【0011】
【
図7】本発明の一実施態様による、少なくとも1つのホルダ構造体の製造方法を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既存のエネルギー貯蔵装置は、その中に1以上のエネルギー貯蔵セルを保持するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体を含む。典型的には、少なくとも1つのホルダ構造体は、高導電率の金属形態の剛性部材で構成される。このようなエネルギー貯蔵装置では、フィンの形態の冷却構造体が少なくとも1つのホルダ構造体の側壁の少なくとも一部に形成される。これにより、1以上のエネルギー貯蔵セルの充電および放電プロセス中に生成される熱は、冷却構造体を通して効果的に放散される。しかしながら、少なくとも1つのホルダ構造体は金属、好ましくはアルミニウムから構成され、金属と1以上のエネルギー貯蔵セルとが直接接触しているので、1以上のエネルギー貯蔵セルの充電および放電プロセス中に発生した熱が、セルと、相互接続プレートを含む他の1以上の電気部品との間の電気的短絡を引き起し、その結果、互いに隣接するセルの加熱により連鎖反応を生じ、エネルギー貯蔵装置の損傷に至る。
【0013】
エネルギー貯蔵装置中に1以上のエネルギー貯蔵セルを支持するための公知の構造体では、少なくとも1つのホルダ構造体は、相変化材料(PCM)からなる。相変化材料(PCM)は融解潜熱が高いので、大きな温度上昇を伴わずに、多くの熱を吸収することができる。エネルギー貯蔵装置の充電および放電の間、相変化材料は、1以上のエネルギー貯蔵セルによって生成された熱を吸収して、固体から液体に状態を変化させる。しかしながら、相変化材料は、熱伝導性が低く放熱特性が悪いために、元の固体状態に戻るのに長い時間を要し、その結果、エネルギー貯蔵装置を直ぐに充電することが困難となる。したがって、相変化材料(PCM)の熱伝導性を向上させるために、一種以上の熱伝導性向上添加剤、例えば、炭素繊維、グラファイト、アルミニウム発泡体などを、相変化材料(PCM)が添加される。しかしながら、これらの添加剤は導電性を有するため、添加剤を含む相変化材料は電気的絶縁性を失い、その結果、エネルギー貯蔵装置内で電気的短絡が生じて、ホルダ構造体が、その中に1以上のエネルギー貯蔵セルを貯蔵するのに適さなくなる。
【0014】
エポキシ樹脂材料は良好な熱伝導性を有することから、別の公知のエネルギー貯蔵装置では、少なくとも1つのホルダ構造体がエポキシ樹脂材料で構成される。1以上のエネルギー貯蔵セルのために冷却機構を改良することで、放熱特性が向上し、エネルギー貯蔵装置中でセル間の短絡が生じる危険性を軽減することができる。しかしながら、エポキシ樹脂は、熱吸収能力に乏しく、エポキシ樹脂材料からなる少なくとも1つのホルダ構造体を設計するのに適していない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的に鑑み、本発明は、高い熱伝導性、高い熱吸収及び放散能力、改良された冷却機構を有し、セル間の電気短絡のリスクを最小限とするエネルギー貯蔵装置用の改良された少なくとも1つのホルダ構造体を提供する。さらに、エネルギー貯蔵装置用の改良された少なくとも1つのホルダ構造体は、改良された熱的及び電気的特性を有し、これにより熱暴走を低減し、エネルギー貯蔵装置を損傷から保護する。より詳細には、これに限定されるものではないが、本発明は、1以上のエネルギー貯蔵セルを含むエネルギー貯蔵装置における熱暴走を低減するための、エネルギー貯蔵装置の新規で改良された少なくとも1つのホルダ構造体に関する。一実施態様によれば、本発明は、1以上のエネルギー貯蔵セルの充電および放電中であっても、許容範囲内で、1以上のエネルギー貯蔵セルを設置位置に保持するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体の改良に関する。
【0016】
本発明の一実施態様では、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置は、1以上のエネルギー貯蔵セルと、1以上のエネルギー貯蔵セルの少なくとも1つのエネルギー貯蔵セルを収容するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体とを含む。一実施態様では、1以上のエネルギー貯蔵セルを支持するように構成された少なくとも1つのホルダ構造体は、所定の質量パーセント量の少なくとも1種の熱硬化性材料と、有効量の少なくとも1種の硬化剤との均一な混合物を含有する組成物を含み、硬化剤は、少なくとも1つのホルダ構造体の組成物を硬化させるためのものである。一実施態様では、所定の質量パーセント量の相変化材料を、少なくとも1つのホルダ構造体の組成物の混合物に添加する。別の実施態様では、相変化材料と共に所定の質量パーセント量の熱伝導性向上剤を少なくとも1つのホルダ構造体の組成物の混合物に添加して、これにより少なくとも1つのホルダ構造体の熱伝導性を向上させる。別の実施態様では、熱伝導性向上剤は、電気的に非導電性の材料である。さらに、別の実施態様では、熱伝導性向上剤は、セラミックなどを含む。より具体的には、本発明の一実施態様では、相変化材料を少なくとも1つのホルダ構造体の混合物に添加する前に、少なくとも一種の熱硬化性材料および少なくとも1種の硬化剤を、第1の所定時間、少なくとも1つの支持構造体内で共に撹拌する。少なくとも1種の熱硬化性材料と、少なくとも1種の硬化剤と、相変化材料とを含む少なくとも1つのホルダ構造体の組成物を、少なくとも1つの支持構造体内で第2の所定時間撹拌して、均一な組成物を形成する。一実施態様では、少なくとも1つの熱硬化性材料は、熱伝導性液状エポキシ樹脂である。一実施態様では、混合物中における少なくとも一種の熱硬化性材料の含有量は少なくとも5質量%であり、相変化材料は、粒状であり、混合物の少なくとも5質量%の量で添加される。一実施態様では、組成物の混合物中における少なくとも一種の硬化剤の有効量は、少なくとも1質量%である。別の実施態様では、熱伝導性向上剤は、非導電性材料であり、混合物中における熱伝導性向上剤の含有量は、少なくとも1質量%である。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の少なくとも1つのホルダ構造体は、その少なくとも一部と一体的に形成された1以上の収容部を含む。一実施態様では、1以上の収容部が1以上のエネルギー貯蔵セルを保持するように構成される。1以上の収容部は、1以上のエネルギー貯蔵セルの直径よりも大きい径寸法を有する。一実施態様によると、1以上のエネルギー貯蔵セルは、直列および並列の組み合わせなどの1以上の形態で1以上の収容部中に設置されるように構成されたリチウムイオン電池を含む。
【0018】
次に、本発明における少なくとも1つのホルダ構造体の製造方法を説明する。一実施態様によれば、前記方法は、少なくとも1種の熱硬化性材料と少なくとも1種の硬化剤との混合物を含む組成物を、この組成物を硬化させるための少なくとも1つの支持構造体に供給する工程と、混合物に含まれる少なくとも1種の熱硬化性材料と相変化材料とを第1の所定時間撹拌した後、混合物に相変化材料を添加する工程と、少なくとも1つのホルダ構造体を形成するために、所定の温度Tで熱硬化性材料を硬化させる工程と、少なくとも1つの支持構造体に含まれる組成物を機械加工して、少なくとも1つのホルダ構造体を得る工程と、少なくとも1つのホルダ構造体の少なくとも一部に一体的に形成された1以上の収容部に、1以上のエネルギー貯蔵セルの少なくとも1つのエネルギー貯蔵セルを配置する工程とを含む。一実施態様によれば、組成物を、相変化材料の溶融温度未満である所定の温度で硬化させて、少なくとも1つのホルダ構造体を得る。一実施態様では、少なくとも1つのホルダ構造体は熱伝導性構造体である。一実施態様によれば、少なくとも1つの支持構造体は、少なくとも1つのホルダ構造体を形成するための組成物を収容するように構成された少なくとも1つの容器を含む。一実施態様では、少なくとも1つの容器は、樹脂材料で構成される。別の実施態様では、少なくとも1つの容器は、金属を含む剛性部材で構成される。本発明の別の実施態様によれば、所定の質量パーセント量で相変化材料と共に熱伝導性向上剤を、少なくとも1つのホルダ構造体の組成物の混合物に添加して、これにより少なくとも1つのホルダ構造体の熱伝導性を向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明の一実施態様によれば、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パックは、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置を収容するための外側ケーシング構造体を含む。少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック用の外側ケーシング構造体は、左右一対のカバー部材を含む。本発明の一実施態様では、ペルチェ素子の形態の少なくとも1つの冷却部材が、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置と、少なくとも1つのエネルギーパックの少なくとも1つのホルダ構造体との間に設けられる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の種々の他の特徴および利点について、添付の図面を参照して詳細に説明する。図面において、同じ参照番号は、概して、同一の、機能的に類似した、および/または構造的に類似した部材を示す。図面では、部材に対応した参照番号を左端に示している。添付した図面では、各図において、同じまたは類似の部材を特定するために同じ参照番号を使用している。なお、図面は、参照番号の向きの方向から見たものである。
【0021】
図1は、本発明の一実施態様による、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の斜視図である。一実施態様では、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)は、1以上のエネルギー貯蔵装置(200)を収容するために、外側ケーシング構造体(102)を含む(
図2に示す)。少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)用の外側ケーシング構造体(102)は、一対の左右のカバー部材(101L)(101R)を含む。
【0022】
図2は、本発明の一実施態様による、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の分解図である。一実施態様では、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)を収容するように構成された外側ケーシング構造体(102)は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも一方の開口側(102c)、(102d)を覆うように構成された一対の左右のカバー部材(101L)(101R)を含む。一実施態様では、外側ケーシングがその中に少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)を収容するように構成される。
【0023】
図3は、本発明の一実施態様による、少なくとも1つのホルダ構造体(205)を含むエネルギー貯蔵パック(100)の分解図である。本発明の一実施態様によれば、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)と、この1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の1以上のエネルギー貯蔵セル(204a)(
図5に示す)を収容するための少なくとも1つのホルダ構造体(205)とを含む。一実施態様では、少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物は、少なくとも5質量%の少なくとも1種の熱硬化性材料と、少なくとも1つのホルダ構造体の組成物を硬化させるために有効量の少なくとも1種の硬化剤との均一な混合物を含む。
一実施形態では、均一な混合物中における少なくとも一種の硬化剤の含有量は、少なくとも1質量%である。一実施態様によれば、少なくとも5質量%の相変化材料を少なくとも1つのホルダ構造体(205)の組成物の混合物に添加する前に、少なくとも1つの支持構造体中で、少なくとも一種の熱硬化性材料および少なくとも一種の硬化剤を、第1の所定時間
、例えば、約20分間~約90分間、一緒に撹拌する。
一実施形態では、熱伝動性向上剤を、混合物の少なくとも1質量%の量で、相変化材料と共に混合物に添加する。一実施態様では、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)は、1以上の相互接続プレート(202)、(203)を介して互いに電気的に接続される。一実施態様によれば、1以上の相互接続プレート(202)、(203)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)を互いに電気的に接続し、且つ1以上のエネルギー貯蔵セル(204)を上部ホルダ部材(201a)および下部ホルダ部材(201b)を介して電池管理システム(BMS)(図示せず)に電気的に接続する。一実施態様では、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも上部を、上部ホルダ部材(201a)および下部ホルダ(201b)上の1以上の相互接続プレート(202)、(204)を介して電気的に接続して、1以上のエネルギー貯蔵セルと少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)の電池管理システム(BMS)(図示せず)との間の電気的接続を確立する。
【0024】
図4は、本発明の一実施態様による、
図3のエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)の斜視図である。本発明の一実施態様では、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の1以上のエネルギー貯蔵セル(204)(
図5に示す)を保持するように構成される。一実施態様によると、少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、液状エポキシ樹脂などの少なくとも1種の熱硬化性材料、粒状の相変化材料、及び少なくとも1種の硬化剤を含有する組成物を含む。
熱伝動性向上剤は、例えば、セラミック、炭素繊維、黒鉛、アルミニウム発泡体などである。液状エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールF樹脂、ビスフェノールA樹脂、ノボラックなどである。相変化材料は、例えば、パラフィン系ワックスである。硬化剤は、例えば、脂肪族アミン、ポリアミド、芳香族アミンなどである。
【0025】
さらに
図4では、一実施態様によれば、少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、その少なくとも一部分に一体的に形成された1以上の収容部(400)を含む。一実施態様によれば、1以上の収容部は、その中に1以上のエネルギー貯蔵セル(204)(
図5に示される)の少なくとも一部を収容できる寸法とされる。さらに、一実施態様においては、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)(
図5に示す)は、1以上の形態で1以上の収容部(400)中に設置されるように構成されたリチウムイオン電池を含む。1以上の収容部(400)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)(
図5に示す)の1以上のエネルギー貯蔵セル(204a)(
図5に示す)の寸法よりもわずかに大きい径寸法を有する。
【0026】
図5は、本発明の一実施態様による、
図4のエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)および1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の分解図である。一実施態様では、1以上のエネルギー貯蔵セル(204a)が、少なくとも1つのエネルギー貯蔵パック(100)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)中に設置されるように、1以上の収容部(400)は、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204a)の寸法よりもわずかに大きい径寸法を有するように構成される。
【0027】
図6は、本発明の一実施態様による、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)が内部に収容された少なくとも1つのホルダ構造体(205)の斜視図である。一実施態様によれば、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置(200)(
図2に示される)の少なくとも1つのホルダ構造体(205)中の所定の位置に設置される。本発明の一実施態様においては、1以上のエネルギー貯蔵セル(204)の少なくとも1つのエネルギー貯蔵セル(204a)が直列および並列形態を含む1以上の形態で配置される。
【0028】
図7により、本発明の一実施態様による、少なくとも1つのホルダ構造体の製造方法を説明する。一実施態様では、少なくとも1つのホルダ構造体(205)の製造方法(300)は、少なくとも1つの支持構造体中に、質量パーセントで、少なくとも1種の熱硬化性材料および相変化材料の均一な混合物を含む組成物を供給する工程1(301)と、混合物中に含まれている少なくとも1種の熱硬化性材料および少なくとも1種の硬化剤を少なくとも1つの支持構造体中で第1の所定時間一緒に撹拌した後、相変化材料を混合物に添加する工程2(302)と、少なくとも1種の熱硬化性材料、少なくとも1種の硬化剤および相変化材料を含む組成物を第2の所定時間
、例えば、20分間~90分間、撹拌する工程3(303)と、少なくとも1つのホルダ構造体(205)を形成するために組成物を
、室温又は約120℃の高温で成形する工程4(304)と、少なくとも1つの支持構造体に含まれる組成物を機械加工して少なくとも1つのホルダ構造体(205)を得る工程5(305)とを含む。
【0029】
上記方法の実施形態の例示
本開示による一実施形態では、少なくとも1つのホルダ構造体(205)は、次の製造工程により得られる。熱硬化性材料は、例えば、ビスフェノールF樹脂などの液状エポキシ樹脂であり、硬化剤は、例えば、脂肪族アミンである。少なくとも1つの支持構造体中で、約94質量%の熱硬化性材料を、約1質量%の硬化剤と混合する。混合物を約40分間攪拌した後、攪拌した混合物に、5質量%の相変化材料、例えば、パラフィンワックスなどを添加する。熱硬化性材料、硬化剤、及び相変化材料の混合物を、さらに40分間攪拌する。攪拌した混合物を、支持構造体中で、室温(35~40℃)で、約24~48時間硬化させる。支持構造体中で混合物の硬化させた組成物を、ミルなどで機械加工して、ホルダ構造体(205)を形成する。
【0030】
本開示による他の実施形態では、少なくとも1つのホルダ構造体は、次の製造工程により得られる。熱硬化性材料は、例えば、ビスフェノールF樹脂などのエポキシ樹脂であり、硬化剤は、例えば、脂肪族アミンである。少なくとも1つの支持構造体中で、約87質量%の熱硬化性材料を、約3質量%の硬化剤と混合する。混合物を、約40分間攪拌した後、攪拌した混合物に、約5質量%の相変化材料、例えば、パラフィンワックスなどを添加する。さらに、相変化材料と共に、5質量%の熱伝動性向上剤、例えば、グラファイトなどを添加する。熱硬化性材料、硬化剤、相変化材料、及び熱伝動性向上剤の混合物を、さらに40分間攪拌する。攪拌した混合物を、支持構造体中で、所定の温度(120℃以下)で、24時間未満、硬化させる。支持構造体中で混合物の硬化させた組成物を、機械加工して、ホルダ構造体(205)を形成する。
【0031】
有利には、少なくとも1つのエネルギー装置用の少なくとも1つのホルダ構造体を改良することで、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の1以上のエネルギー貯蔵セルの熱的なバランスが取れ、寿命、効率、および出力を最大にすることができる。さらに、上記製造方法の1以上の工程を介して少なくとも1つのホルダ構造体を得る場合には、少なくとも一種の熱硬化性材料、粒状の相変化材料、および少なくとも一種の硬化剤の組成物を含む改良された少なくとも1つのホルダ構造体を提供できる利点があり、上記少なくとも1つのホルダ構造体は、高い伝導性、高い熱吸収および放散能力、改良された冷却機構、及び高い熱伝導性を有し、セル間の電気短絡の危険性を低減することができる。したがって、一実施態様によれば、改良された少なくとも1つのホルダ構造体は、1以上の改良された熱的特性および電気的特性を有し、これにより、改良された性能を有すると共に連続的な再充電を行うことが可能な少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置を提供することができる。
【0032】
本発明の範囲から逸脱することなく、改良および変更を本明細書に組み入れることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】