(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(54)【発明の名称】水中油型化粧料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20220217BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20220217BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220217BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20220217BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220217BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/89
A61Q1/00
A61Q17/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535088
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 IB2018001599
(87)【国際公開番号】W WO2020128557
(87)【国際公開日】2020-06-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】端 晃一
(72)【発明者】
【氏名】浅見 由利恵
(72)【発明者】
【氏名】郷原 英志
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC542
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083CC11
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
4C083FF04
(57)【要約】
水相及び油相から構成され、疎水化無機粉体、脂肪酸石鹸、ノニオン界面活性剤及び親水性高分子を含有する水中油型化粧料であって、非シリコーン油を含有する油剤を含み、油相及び水相に疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含み、疎水化顔料級酸化チタン粉体の油相中及び水相中の含有量は、それぞれ0.5質量%を超え5質量%未満及び2.5質量%を超え20質量%未満であり、ノニオン界面活性剤はHLB値が6~15であり、親水性高分子としてアミノアルキルスルホン酸ポリマーを含有し、非シリコーン油の合計の含有量が5質量%を超え30質量%未満である、水中油型化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相及び油相から構成され、疎水化無機粉体、脂肪酸石鹸、ノニオン界面活性剤及び親水性高分子を含有する、水中油型化粧料であって、
前記水相は水性媒体を、前記油相は非シリコーン油を含有する油剤を、それぞれ含み、
前記疎水化無機粉体は、少なくとも疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含み、同種又は異種の前記疎水化無機粉体が前記油相及び前記水相に存在しており、
前記疎水化顔料級酸化チタン粉体の前記油相中及び前記水相中の含有量は、前記水中油型化粧料の全量基準で、それぞれ0.5質量%を超え5質量%未満及び2.5質量%を超え20質量%未満であり、
前記ノニオン界面活性剤は、1種又は2種以上を含み、全体のHLB値が6~15であり、
前記親水性高分子は、アミノアルキルスルホン酸又はその塩を置換基として有するエチレン性不飽和化合物を繰返し単位として含む親水性高分子を含有し、
前記非シリコーン油の合計の含有量は、前記水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である、水中油型化粧料。
【請求項2】
前記疎水化酸化鉄粉体及び前記疎水化顔料級酸化チタン粉体は、
トリアルコキシアルキルシラン、ジメチルポリシロキサン、メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体、高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの塩及びアルキルチタネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む疎水化剤で疎水化されている、請求項1に記載の水中油型化粧料。
【請求項3】
前記油相に存在する前記疎水化酸化鉄粉体及び前記疎水化顔料級酸化チタン粉体は、
高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの塩、アルキルチタネート及びメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む疎水化剤で疎水化されている、請求項1又は2に記載の水中油型化粧料。
【請求項4】
前記水相に存在する前記疎水化酸化鉄粉体及び前記疎水化顔料級酸化チタン粉体は、
ジメチルポリシロキサン及びメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む疎水化剤で疎水化されている、請求項1又は2に記載の水中油型化粧料。
【請求項5】
前記非シリコーン油は、エステル油及び/又は炭化水素油である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項6】
ファンデーション、メークアップベース、コンシーラー又は日焼け止めとして用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型化粧料。
【請求項7】
水中油型化粧料の製造方法であって、
加温された、非シリコーン油を含有する油剤を、
前記油剤と同種又は異種の油剤中で剪断力を加えることにより疎水化無機粉体を分散させた分散体、及び、全体としてHLB値が6~15となる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤と混合させて、加温状態の油性成分を得る工程と、
前記油性成分を、
アミノアルキルスルホン酸又はその塩を置換基として有するエチレン性不飽和化合物を繰返し単位として含む親水性高分子と水性媒体を含有し、加温された水性成分中で撹拌して、水中油型分散物を得る工程と、
前記水中油型分散物を冷却し、前記疎水化無機粉体と同種又は異種の疎水化無機粉体を添加して、少なくともその一部を前記水性媒体に含有させる工程と、を備えており、
前記油性成分及び/又は水性成分は、脂肪酸石鹸を含有しており、
前記油性成分及び前記水性成分における前記疎水化無機粉体は、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有しており、前記水中油型化粧料の全量基準で、前記油性成分中の前記疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は0.5質量%を超え5質量%未満、前記水性成分中の前記疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は2.5質量%を超え20質量%未満であり、
前記非シリコーン油の合計の含有量は、前記水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である、製造方法。
【請求項8】
水中油型化粧料の製造方法であって、
加温された、非シリコーン油を含有する油剤を、
前記油剤と同種又は異種の油剤中で剪断力を加えることにより疎水化無機粉体を分散させた分散体、全体としてHLB値が6~15となる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤、及び、脂肪酸と混合させて、加温状態の油性成分を得る工程と、
前記油性成分を、
前記脂肪酸のカルボン酸アニオンと対となり脂肪酸石鹸を形成する塩基性化合物と、アミノアルキルスルホン酸又はその塩を置換基として有するエチレン性不飽和化合物を繰返し単位として含む親水性高分子と、水性媒体を含有し、加温された水性成分中で撹拌して、前記脂肪酸石鹸を形成させつつ水中油型分散物を得る工程と、
前記水中油型分散物を冷却し、前記疎水化無機粉体と同種又は異種の疎水化無機粉体を添加して、少なくともその一部を前記水性媒体に含有させる工程と、を備えており、
前記油性成分及び前記水性成分における前記疎水化無機粉体は、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有しており、前記水中油型化粧料の全量基準で、前記油性成分中の前記疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は0.5質量%を超え5質量%未満、前記水性成分中の前記疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は2.5質量%を超え20質量%未満であり、
前記非シリコーン油の合計の含有量は、前記水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である、製造方法。
【請求項9】
前記分散体が添加される前記油剤は、乳化助剤を含有する、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記分散体は、分散剤を含有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の製造方法で得ることのできる、水中油型化粧料。
【請求項12】
請求項1~6、11のいずれか一項に記載の水中油型化粧料を、ケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための化粧方法。
【請求項13】
前記水中油型化粧料は、それが適用されるケラチン物質に、みずみずしさ、ナリシング効果、隠蔽性及び持続性を提供する、請求項12に記載の化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型化粧料及び水中油型化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションは、シミや小皺を覆い隠し、肌の美観を高めるために使用される化粧料であり、メークアップの仕上がりに大きな影響を与えることから、その性能に対するユーザの注目度は非常に高い。
【0003】
ファンデーションには、ケーキタイプ、パウダータイプ、クリームタイプ、リキッドタイプ等があり、リキッドタイプのファンデーションとしては、油中水型エマルジョンをベースとするものと、水中油型エマルジョンをベースにするもの(例えば、特開2008-44901号公報又は同等物である米国特許8728503号に記載のもの)に大別できる。
[発明が解決しようとする課題]
【0004】
ファンデーションのベースとしては、油中水型エマルジョンを用いるもの(油中水型ファンデーション)が主流となっている。これは、メークアップの持続性(Lasting effect)や隠蔽性(Coverage effect)が高いことによる。
【0005】
油中水型ファンデーションでは、顔料は通常、連続相である油相に含まれており、この結果、肌に適用した場合、顔料等の成分が肌にすぐに固定されメークアップ効果が早期に生じる。
【0006】
一方で、ドライな感覚がどうしても生じてしまう問題がある。これは、油相を構成している成分として、軽い使用感を付与するために揮発性の油剤が用いられていることから、ファンデーションの適用中に肌の皮脂や水分を奪うことに基づくと考えられる。
【0007】
近年、ユーザは、メークアップ効果はもちろんのこと、スキンケア効果も有するファンデーションを嗜好する傾向にあり、このために油中水型ファンデーションに改善が図られている他、ベースとして水中油型エマルジョンを用いたもの(水中油型ファンデーション)も検討の対象となっている。
【0008】
しかしながら、水中油型ファンデーションは、連続相が水相であり親水性が高いため、耐水性及び肌への親和性が低く、メークアップ成分が簡単に肌から剥がれ落ちてしまい、持続性が得られないという問題がある。
【0009】
また、最近のユーザの嗜好に合わせて、十分なメークアップ効果を維持しながら、みずみずしさ(水感)(Fresh sensation)やナリシング効果(Nourishing effect)を発揮させようとしても、このような、相反する性能を両立させることは、従来の技術では不可能であった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、水中油型化粧料であって、(1)みずみずしさ(Freshsensation)、(2)ナリシング効果(Nourishing effect)、(3)隠蔽性(Coverage effect)及び(4)持続性(Lasting effect)のいずれにも優れる化粧料及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
[発明の概要]
本発明は、水相及び油相から構成され、疎水化無機粉体、脂肪酸石鹸、ノニオン界面活性剤及び親水性高分子を含有する、水中油型化粧料であって、水相は水性媒体を、油相は非シリコーン油を含有する油剤を、それぞれ含み、疎水化無機粉体は、少なくとも疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含み、同種又は異種の上記疎水化無機粉体が油相及び水相に存在しており、疎水化顔料級酸化チタン粉体の油相中及び水相中の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、それぞれ0.5質量%を超え5質量%未満及び2.5質量%を超え20質量%未満であり、ノニオン界面活性剤は、1種又は2種以上を含み、全体のHLB値が6~15であり、親水性高分子は、アミノアルキルスルホン酸又はその塩を置換基として有するエチレン性不飽和化合物を繰返し単位として含む親水性高分子を含有し、非シリコーン油の合計の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である、水中油型化粧料を提供する。
【0012】
本発明の水中油型化粧料は、上述のように水相を連続層とし、その中に油相が分散された構造を有しており、同種又は異種の疎水化無機粉体が油相と水相の両方に存在していることを特徴の一つとしている。また、疎水化無機粉体のうち特定種の含有量が所定の範囲内であり、所定の油剤、ノニオン界面活性剤及び親水性高分子を含有しており、油相を構成する油剤の含有量も上限及び下限を有している。
【0013】
本発明により、(1)みずみずしさ、(2)ナリシング効果、(3)隠蔽性及び(4)持続性を全て発揮させることが可能となった。すなわち、油中水型でしか得るのが困難だった十分な隠蔽性及び持続性を、水中油型で初めて達成し、みずみずしさとナリシング効果という、相反する性能の発現にも成功した。
【0014】
油相及び水相に存在する、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体は、トリアルコキシアルキルシラン、ジメチルポリシロキサン、メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体、高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの塩及びアルキルチタネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む疎水化剤で疎水化されていてもよい。
【0015】
なお、油相に存在する疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体は、高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの塩、アルキルチタネート及びメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む疎水化剤で疎水化されていることが好ましく、水相に存在する疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体は、ジメチルポリシロキサン及びメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
【0016】
このような疎水化無機粉体を用いることで上記(1)~(4)の特性が顕著となる。水中油型化粧料が、上記以外の疎水化無機粉体のみ含有している場合は、水中油型化粧料は、(3)隠蔽性及び(4)持続性の性能が悪く、(1)みずみずしさ及び(2)ナリシング効果とのバランスも得ることができない。
【0017】
非シリコーン油としては、エステル油及び/又は炭化水素油が有用である。油剤として、シリコーン油の含有を排するものではないが、油剤は非シリコーン油を必須成分として含む。非シリコーン油がエステル油及び/又は炭化水素油である場合は、上記(1)~(4)の性能が特に優れるようになる。
【0018】
水中油型化粧料の適用範囲は広範であり、特に、ファンデーション、メークアップベース(化粧下地)、コンシーラー又は日焼け止めとして用いると有効である。
【0019】
本発明は、水中油型化粧料の製造方法も提供する。
【0020】
すなわち、(A1)加温された、非シリコーン油を含有する油剤を、この油剤と同種又は異種の油剤中で剪断力を加えることにより疎水化無機粉体を分散させた分散体、及び、全体としてHLB値が6~15となる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤と混合させて、加温状態の油性成分を得る工程と、(A2)油性成分を、アミノアルキルスルホン酸又はその塩を置換基として有するエチレン性不飽和化合物を繰返し単位として含む親水性高分子と水性媒体を含有し、加温された水性成分中で撹拌して、水中油型分散物を得る工程と、(A3)水中油型分散物を冷却し、上記疎水化無機粉体と同種又は異種の疎水化無機粉体を添加して、少なくともその一部を水性媒体に含有させる工程と、を備えており、(a1)油性成分及び/又は水性成分は、脂肪酸石鹸を含有しており、(a2)油性成分及び水性成分における疎水化無機粉体は、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有しており、水中油型化粧料の全量基準で、油性成分中の疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は0.5質量%を超え5質量%未満、水性成分中の疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は2.5質量%を超え20質量%未満であり、(a3)非シリコーン油の合計の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である、水中油型化粧料の製造方法を提供する。
【0021】
本発明はさらに、水中油型化粧料の製造方法であって、(B1)加温された、非シリコーン油を含有する油剤を、この油剤と同種又は異種の油剤中で剪断力を加えることにより疎水化無機粉体を分散させた分散体、全体としてHLB値が6~15となる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤、及び、脂肪酸と混合させて、加温状態の油性成分を得る工程と、(B2)油性成分を、上記脂肪酸のカルボン酸アニオンと対となり脂肪酸石鹸を形成する塩基性化合物と、アミノアルキルスルホン酸又はその塩を置換基として有するエチレン性不飽和化合物を繰返し単位として含む親水性高分子と、水性媒体を含有し、加温された水性成分中で撹拌して、脂肪酸石鹸を形成させつつ水中油型分散物を得る工程と、(B3)水中油型分散物を冷却し、上記疎水化無機粉体と同種又は異種の疎水化無機粉体を添加して、少なくともその一部を水性媒体に含有させる工程と、を備えており、(b1)油性成分及び水性成分における疎水化無機粉体は、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有しており、水中油型化粧料の全量基準で、油性成分中の疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は0.5質量%を超え5質量%未満、水性成分中の疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は2.5質量%を超え20質量%未満であり、(b2)非シリコーン油の合計の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である、製造方法を提供する。
【0022】
上述の製造方法は、脂肪酸石鹸を添加するか(上記(a1))、脂肪酸石鹸の原料を添加し(上記(B1)の脂肪酸及び上記(B2)の塩基性化合物)、製造途中に脂肪酸石鹸とするか(上記(B2))、で異なっている他は同様の製法であり、上記のような工程を経ること、また上記のような原料を上記のようなタイミング及び用量で用いること等から、(1)~(4)の性能を有した水中油型化粧料が確実に製造可能となる。
【0023】
本発明はまた、本発明で規定する水中油型化粧料を、ケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための化粧方法に関する。「ケラチン物質」とは、皮膚及び/又は唇、好ましくは皮膚を意味する。水中油型化粧料は、それが適用されるケラチン物質に、(1)みずみずしさ、(2)ナリシング効果、隠(3)蔽性及び(4)持続性を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0025】
水中油型化粧料は、水相及び油相から構成されており、水相は、水性媒体、疎水化無機粉体及び親水性高分子を含む他、脂肪酸石鹸及びノニオン界面活性剤の少なくとも一部が含まれ得る。水相はさらにこれら以外の水溶性又は水分散性成分を含有していてもよい。
【0026】
油相は、油剤及び疎水化無機粉体を含む他、脂肪酸石鹸及びノニオン界面活性剤の少なくとも一部が含まれ得る。なお、油相はこれら以外の油溶性又は油分散性成分を含有していてもよい。
【0027】
まず油相について説明する。
【0028】
油相
油剤
油相を構成する油剤は、非シリコーン油を含有する油剤からなり、非シリコーン油の合計の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である。なお、非シリコーン油とは、シリコーン骨格を有しない油剤をいう。
【0029】
非シリコーン油の含有量が5質量%以下であると、ナリシング効果が劣るようになり、30質量%以上であると、みずみずしさを得ることができないようになる。また、油剤としてシリコーン系油剤のみを含有する場合は、水中油型化粧料の、みずみずしさ、ナリシング効果及び持続性のいずれもが劣るようになり、処方自体が困難になる場合もある。
【0030】
非シリコーン油としては、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液状油、揮発性油及びその混合物等の性状を問わず、炭化水素油、油脂、ロウ、硬化油、エステル油、脂肪酸、高級アルコール(C6及びそれ以上のアルコール)等が用いられる。
【0031】
具体的には、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン、イソテトラデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリブテン、水添ポリブテン等の炭化水素油;オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油、カメリア油、ローズピップ油、アボカド油等の油脂;ホホバ油、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル等のエステル油;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、及びこれらの混合物等を例示することができる。これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
上記のうち、極性油剤が好ましく、好適な極性油剤としては、油脂、エステル油、ラノリン誘導体が挙げられる。油脂としては、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油、カメリア油、ローズピップ油、アボカド油及びこれらの混合物が特に好ましい。エステル油としては、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びこれらの混合物が特に好ましい。ラノリン誘導体としては、酢酸ラノリン、ラノリンアルコールが特に好ましい。メトキシケイ皮酸エチルヘキシルは、紫外線吸収効果を持つ極性油剤であり特に好適である。
【0033】
非シリコーン油の含有量は、水中油型化粧料全量(全重量)を基準として、6質量%以上、7質量%以上、又は10質量%以上であってよく、28質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。非シリコーン油の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、6~28質量%、6~25質量%、6~20質量%、7~28質量%、7~25質量%、7~20質量%、10~28質量%、10~25質量%、10~20質量%であってもよい。
【0034】
疎水化無機粉体
油相には疎水化無機粉体が含まれており、疎水化無機粉体としては、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有している。また、疎水化顔料級酸化チタン粉体の油相中の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、0.5質量%を超え5質量%未満である。
【0035】
「疎水化」とは、以下に詳述する疎水化剤等で無機粉体を処理し、未処理の無機粉体の表面を改質して、疎水性を増加させることをいう。酸化チタン粉体は、平均粒径が200nm以上の顔料級酸化チタン粉体と、平均粒径が200nm未満(典型的には100nm以下)の微粒子酸化チタン粉体とに大別されるが、水中油型化粧料には、少なくとも顔料級酸化チタン粉体が含まれている必要がある。顔料級酸化チタン粉体が含まれている限りにおいて、水中油型化粧料は微粒子酸化チタンが含まれていてもよい。なお、疎水化顔料級酸化チタン粉体の平均粒径は、200~400nmであることが好ましく、疎水化酸化鉄粉体の平均粒径は、100~500nmであることが好ましい。
【0036】
疎水化顔料級酸化チタン粉体の油相中の含有量が、水中油型化粧料の全量基準で、0.5質量%以下の場合は、(3)隠蔽性及び(4)持続性が劣るようになり、5質量%以上の場合は、(1)みずみずしさ及び(2)ナリシング効果が劣るようになり、処方自体が困難になる場合もある。
【0037】
酸化鉄粉体及び顔料級酸化チタン粉体を疎水化する疎水化剤としては、シラン、シリコーン、フッ素系化合物、有機チタネート化合物、アミド又はその塩、金属石鹸、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ等を含む疎水化剤が挙げられる。疎水化剤は組み合わせて使用してもよい。
【0038】
シランとしては、トリアルコキシアルキルシランが、シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサン[ジメチコンと呼ばれる場合がある。]及びメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体[(ジメチコン/メチコン)コポリマー、又はメチルハイドロジェンポリシロキサンと呼ばれる場合がある。]が挙げられる。また、有機チタネートとしては、アルキルチタネートが、アミド塩としては、高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの塩が挙げられる。
【0039】
トリアルコキシアルキルシランとは、ケイ素原子に3つのアルコキシ基と1つのアルキル基が結合した化合物であり、アルコキシ基が粉体表面の水酸基又は他の反応性基と反応することにより、粉体表面を被覆する化合物である。トリアルコキシアルキルシランにおけるアルコキシ基は、炭素数1~3のアルコキシ基であるメトキシ、エトキシ、プロポキシ等が好ましい。また、トリアルコキシアルキルシランにおける、アルキル基は、炭素数6~18のアルキル基であるヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等が好ましい。
【0040】
このようなトリアルコキシアルキルシランとしては、例えば、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン等が挙げられ、油相中での分散性が良好となるため、トリエトキシオクチルシランが特に好ましい。トリアルコキシアルキルシランは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
アルキルチタネートは、例えば、長鎖カルボン酸型、ピロリン酸型、亜リン酸型、アミノ酸型等のアルキルチタネート等が挙げられるが、分散安定化の観点より、炭素数8~24のアルキル基を有するアルキルチタネートが好ましく、このような化合物としては、下記一般式(I)
(R1O)-Ti-(OCOR2)3 ・・・(I)
(式中、R1は炭素数1~4のアルキル基、R2は炭素数8~24のアルキル基を表し、これらのアルキル基は、直鎖でも分岐していてもよい。)で示される化合物が例示できる。
【0042】
アルキルチタネートは、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートとして、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられ、ピロリン酸型アルキルチタネートとして、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、亜リン酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、アミノ酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート等が挙げられ、これらより1種又は2種以上を用いることができる。これらのアルキルチタネートの中でも、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートを用いると、油相中での分散性が非常に優れたものとなるため好ましい。
【0043】
高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの塩は、高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの金属塩(特に、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルキル金属塩、又はアルキル土類金属塩)が好ましい。
【0044】
高級脂肪酸は、炭素数が12以上の脂肪酸を意味し、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、cis-9-オクタデセン酸、11-オクタデセン酸、cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸、9,12,15-オクタデカントリエン酸、6,9,12-オクタデカトリエン酸、9,11,13-オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、8,11-エイコサジエン酸、5,8,11-エイコサトリエン酸、5,8,11-エイコサテトラエン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、cis-15-テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸が例示可能である。
【0045】
一方、α-アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンが例示可能である。
【0046】
ジメチルポリシロキサンは、通常の油剤の用途に加えて、粉体に疎水性を付与するための表面処理剤として適用できる。メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体は、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンからなる共重合体であり、粉体に疎水性を付与し、しかも経時的に水素を発生し難い表面処理剤として用いることができる。
【0047】
油相に存在する疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体は、アルキルチタネート及び高級脂肪酸とα-アミノ酸からなるアミドの塩の少なくとも一方を含む疎水化剤で、非疎水化粉体を疎水化して得られることが好ましく、アルキルチタネート及び高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの塩の双方を含む疎水化剤で得られることが好ましい。アルキルチタネートとしては、トリイソステアリン酸イソプロピルチタンが、高級脂肪酸とα-アミノ酸から得られるアミドの塩としては、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウムが好適である。
【0048】
油相中に配合される疎水化無機粉体の疎水化処理量は、疎水化後の無機粉体の質量基準で、0.5質量%以上、1%質量%以上、又は2質量%以上であってよく、15%質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下であってよい。すなわち、疎水化無機粉体の疎水化処理量は、0.5~15質量%、0.5~12質量%、0.5~10質量%、1~15質量%、1~12質量%、1~10質量%、2~15質量%、2~12質量%、2~10質量%であってもよい。
【0049】
油相に存在する疎水化無機粉体の一成分である疎水化酸化鉄粉体は、複数種の混合物であってもよい。例えば、黒色の外観を生じる疎水化酸化鉄粉体(黒色疎水化酸化鉄粉体)、赤色の外観を生じる疎水化酸化鉄粉体(赤色疎水化酸化鉄粉体)及び黄色の外観を生じる疎水化酸化鉄粉体(黄色疎水化酸化鉄粉体)の混合物であってもよく、適用する肌等に合わせて色調を調製することができる。
【0050】
黒色疎水化酸化鉄粉体、赤色疎水化酸化鉄粉体及び黄色疎水化酸化鉄粉体の含有量は、いずれも、水中油型化粧料全量を基準として、0.2質量%以上、0.3質量%以上、又は0.4質量%以上であってよく、4質量%以下、3.5質量%以下、又は3質量%以下であってよい。すなわち、上記粉体の含有量は、いずれも、水中油型化粧料全量を基準として、0.2~4質量%、0.2~3.5質量%、0.2~3質量%、0.3~4質量%、0.3~3.5質量%、0.3~3質量%、0.4~4質量%、0.4~3.5質量%、好ましくは0.4~3質量%であってもよい。
【0051】
疎水化無機粉体の一成分である疎水化顔料級酸化チタン粉体の油相中の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.75質量%以上、1質量%以上、又は1.25質量%以上であってよく、4.75質量%以下、4.25質量%以下、又は3.75質量%以下であってよい。すなわち、疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は、いずれも、水中油型化粧料全量を基準として、0.75~4.75質量%、0.75~4.25質量%、0.75~3.75質量%、1~4.75質量%、1~4.25質量%、1~3.75質量%、1.25~4.75質量%、1.25~4.25質量%、好ましくは1.25~3.75質量%であってもよい。なお、疎水化顔料級酸化チタン粉体のうち疎水化された重量を除いた、顔料級酸化チタン粉体自体の含有量は、例えば、水中油型化粧料全量を基準として、0.47質量%を超え4.7質量%未満とすることができる。
【0052】
脂肪酸石鹸
油相は、脂肪酸石鹸の1種又は2種以上を含んでいてもよい、脂肪酸石鹸は、脂肪酸と、この脂肪酸のカルボン酸アニオンと対となり脂肪酸石鹸を形成する塩基性化合物(以下、単に「塩基性化合物」と呼ぶ場合がある。)とから形成されるものであり、脂肪酸と塩基性化合物は対となった状態(対の例:塩)で、水中油型化粧料の水相及び/又は油相に添加されてもよく、脂肪酸及び塩基性化合物を、それぞれ、油相を形成する原料(油性成分)及び水相を形成する原料(水性成分)に添加しておき、水中油型化粧料を最終的に調製する際に脂肪酸石鹸となるようにしてもよい。なお、脂肪酸石鹸は、油相と水相の界面に存在していてもよい。
【0053】
脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸は、室温(25℃)で固体であることが好ましく、このような観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸又はこれらの混合物が好適である。
【0054】
一方、脂肪酸石鹸を構成する塩基性化合物は、例えば、脂肪酸と塩等を形成するものであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、トロメタミン(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアミンが挙げられる。
【0055】
このように、脂肪酸石鹸は、脂肪酸の金属塩と脂肪酸のアンモニウム塩に大別可能である。
【0056】
脂肪酸の金属塩としては、ラウリン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ベヘン酸カリウム、オレイン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0057】
脂肪酸のアンモニウム塩としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びベヘン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つと、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、トロメタミン(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、トリエタノールアミン及びアミノメチルプロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1つとから形成される化合物が挙げられる。
【0058】
脂肪酸石鹸の前駆体である脂肪酸又は脂肪酸石鹸の合計の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよく、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。すなわち、脂肪酸石鹸の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.1~3質量%、0.1~2質量%、0.1~1質量%、0.2~3質量%、0.2~2質量%、0.2~1質量%、0.3~3質量%、0.3~2質量%、好ましくは0.3~1質量%であってもよい。
【0059】
ノニオン界面活性剤
油相は、ノニオン界面活性剤を1種又は2種以上含んでいてもよい。このノニオン界面活性剤は通常油相に存在するが、油相及び/又は水相に、或いは油相と水相の界面に存在していてもよい。
【0060】
ノニオン界面活性剤のHLB値(Hydrophile-Lipophile Balance、すなわち親水親油バランスを意味する。)は全体として、6~15の範囲内である。HLB値は全体として、7~12が好ましく、8~10がより好ましい。
【0061】
ここで、HLB値はGriffin法で測定が可能である他、HLB値は、有機概念図法(例えば、甲田善生 著、「有機概念図-基礎と応用-」11頁~17頁、三共出版 1984年発行)で得られる無機性値/有機性値(Inorganic-OrganicBalance(IOB)値)より算出されるものであり、以下の式で表される。
HLB値=IOB値×10
【0062】
なお、ノニオン界面活性剤が2種類以上の混合物である場合、HLB値は各成分のHLB値の加重平均として定義される。
【0063】
HLB値が全体として6~15であるノニオン界面活性剤は、例えば、HLB値が3~9のノニオン界面活性剤(以下「低HLBノニオン界面活性剤」と呼ぶ場合がある。)と、HLB値が10~18のノニオン界面活性剤(以下「高HLBノニオン界面活性剤」と呼ぶ場合がある。)と、を組み合わせることで得ることができる。
【0064】
低HLBノニオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリル型界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリヒドロキシステアリン酸、蔗糖脂肪酸エステル等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。これらの中でも、ポリグリセリル型界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリヒドロキシステアリン酸が、油相中での分散性を高め、安定性により優れるため好ましい。
【0065】
ポリグリセリル型界面活性剤としては、グリセリンの重合度は2~4が好ましく、このようなポリグリセリル型界面活性剤としては、イソステアリン酸ジグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル等が挙げられる。市販品としては、イソステアリン酸ポリグリセリルであるコスモール41V(日清オイリオグループ社製)、ジイソステアリン酸ポリグリセリルであるコスモール42V(日清オイリオグループ社製)を挙げることができる。
【0066】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。市販品としては、オレイン酸ソルビタンとしてコスモール182V(日清オイリオグループ社製)、セスキオレイン酸ソルビタンとしては、SPAN83(CRODA社製)、レオドールAO-15(花王社製)を挙げることができる。市販品としては、さらにCRODA社製のSPAN80(HLB値:4.3)、SPAN60(HLB値:4.7)を挙げることができる。
【0067】
ポリヒドロキシステアリン酸としては、水酸基は12位が好ましく、ヒドロキシステアリン酸の重合度は3~12が好ましく、更に好ましくは重合度4~8である。市販品としては、ARLACEL P-100(ユニケマ社製)を挙げることができる。
【0068】
高HLBノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等を例示することができ、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0069】
市販品としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、CRODA社製のTWEEN65(HLB値:10.5)、TWEEN21(HLB値:13.3)、TWEEN60(HLB値:14.9)、TWEEN80(HLB値:15.0)、TWEEN40(HLB値:15.6)、TWEEN20(HLB値:16.7)を挙げることができる。
【0070】
ノニオン界面活性剤を1種類用いて、HLB値を6~15にする場合、例えば、ソルビタン脂肪酸エステルである、CRODA社製のSPAN40(HLB値:6.7)、SPAN20(HLB値:8.6)や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、CRODA社製のCRODA社製のTWEEN65(HLB値:10.5)、TWEEN21(HLB値:13.3)、TWEEN60(HLB値:14.9)、TWEEN80(HLB値:15.0)が適用可能である。
【0071】
ノニオン界面活性剤の全体の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.1質量%以上、0.25質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってよい。すなわち、ノニオン界面活性剤の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.1~5質量%、0.1~3質量%、0.1~2質量%、0.25~5質量%、0.25~3質量%、0.25~2質量%、0.5~5質量%、0.5~3質量%、0.5~2質量%であってもよい。
【0072】
油溶性又は油分散性成分
油相は、上述の成分以外の油溶性又は油分散性成分を含有していてもよい。このような成分としては、乳化助剤、分散剤、油溶性紫外線吸収剤、油溶性ビタミン等が挙げられる。
【0073】
乳化助剤は通常油相に存在するが、油相及び/又は水相に、或いは油相と水相の界面に存在していてもよい。
【0074】
乳化助剤としては、例えば、炭素数12~22の直鎖状飽和アルコール、モノグリセリン脂肪酸エステルを用いることができる。
【0075】
炭素数12~22の直鎖状飽和アルコールとしては、ミリスチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールのいずれかを選択すると、経時安定性が特に良好な水中油乳化型組成物を得ることができ好ましい。より好ましいものはステアリルアルコールである。
【0076】
モノグリセリン脂肪酸エステルは、親油型であっても自己乳化型であってもよく、モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、脂肪酸石鹸の前駆体として上述したものが挙げられる。
【0077】
モノグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸グリセリル挙げられ、市販品としては、Nikkol MGS-ASEV(ニッコーケミカル社製)、ポエムV-100(理研ビタミン社製)がある。
【0078】
乳化助剤の合計の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.1質量%以上、0.25質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってよい。すなわち、乳化助剤の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.1~5質量%、0.1~3質量%、0.1~2質量%、0.25~5質量%、0.25~3%、0.25~2質量%、0.5~5質量%、0.5~3%、好ましくは0.5~2質量%であってもよい。
【0079】
油相は分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、水中油型化粧料の製造の際に、非シリコーン油剤中で剪断力を加えて疎水化無機粉体を分散させた分散体を得る際に、非シリコーン油剤に添加することができる。分散剤は通常油相に存在するが、油相及び/又は水相に、或いは油相と水相の界面に存在していてもよい。
【0080】
分散剤の種類は、上述したノニオン界面活性剤と同種のものを用いることができる。但し、油相中での分散性の観点から、低HLBノニオン界面活性剤(HLB値が3~5のノニオン界面活性剤)が好ましい。
【0081】
すなわち、分散剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリル型界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリヒドロキシステアリン酸、蔗糖脂肪酸エステル等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。具体例や好適例については、上記と同様である。
【0082】
分散剤の合計の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.01質量%以上、0.03質量%以上、又は0.05質量%以上であってよく、1質量%以下、0.5質量%以下、又は0.2質量%以下であってよい。すなわち、乳化助剤の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.01~1質量%、0.01~0.5質量%、0.01~0.2質量%、0.03~1質量%、0.03~0.5質量%、0.03~0.2質量%、0.05~1質量%、0.05~0.5質量%、好ましくは0.05~0.2質量%であってもよい。
【0083】
油相に含まれ得る油溶性紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート、3,4,5-トリメトキシケイ皮酸3-メチル-4-[メチルビス(トリメチルシリキシ)シリル]ブチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、4-(1,1-ジメチルエチル)-4’-メトキシジベンゾイルメタン、2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-プロペン酸-2-エチルヘキシルエステル、ジメチコジエチルベンザルマロネート、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0084】
次に、水相について説明する。
【0085】
水相
水相は、上述のように、水性媒体、疎水化無機粉体及び親水性高分子を含む他、脂肪酸石鹸及びノニオン界面活性剤の少なくとも一部が含まれ得る。水相はさらにこれら以外の水溶性又は水分散性成分を含有していてもよい。
【0086】
水性媒体
水性媒体は水を必須成分とする。水としては、蒸留水、精製水、温泉水、深層水の他、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水を用いることができる。
【0087】
水の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってよく、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。すなわち、水の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、20~80質量%、20~70質量%、20~60質量%、25~80質量%、25~70質量%、25~60質量%、30~80質量%、30~70質量%、好ましくは30~60質量%であってもよい。
【0088】
水相に含まれ得る水溶性又は水分散性成分としては、防腐剤、低分子モノアルコール(炭素数1~6のモノアルコール)、水溶性紫外線吸収剤、抗菌剤、抗炎症剤、水溶性ビタミン、アミノ酸等が挙げられる。水相には、脂肪酸石鹸及びノニオン界面活性剤のうち少なくとも一部の他、乳化助剤、分散剤が含まれる場合がある。
【0089】
防腐剤としては、フェノキシエタノール等のアリールオキシアルカノールが有用である。低分子モノアルコールとしてはエタノール、プロパノールが挙げられる。
【0090】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;フェニルベンゾイミダゾール-5-スルホン酸及びその塩、フェニレン-ビス-ベンゾイミダゾール-テトラスルホン酸及びその塩等のベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤;メチレンビス-ベンゾトリアゾリル-テトラメチルブチルフェノール等ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0091】
親水性高分子
水相は、親水性高分子を含有しており、親水性高分子としては、アミノアルキルスルホン酸又はその塩を置換基として有するエチレン性不飽和化合物を繰返し単位として含む親水性高分子(以下、「アミノアルキルスルホン酸ポリマー」と呼ぶ場合がある。)を必須成分として含む。なお親水性高分子には、水溶性高分子の他、水で膨潤したり、水で微分散する高分子も含まれる。
【0092】
アミノアルキルスルホン酸ポリマーとしては、N-ビニルピロリドンと、アミノアルキルスルホン酸又はその塩を置換基として有する(メタ)アクリルアミドとを繰返し単位として有する(メタ)アクリルポリマーが有用である。なお(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味し、類似の化合物についても同様である。
【0093】
上記置換基としては、アルキル置換タウリン基等のアルキル置換アミノアルキルスルホン酸基が挙げられる。アルキル置換タウリン基としては、ジメチルタウリン基(-NH-C(CH3)2-CH2-SO3H)が例示できる。このような親水性高分子で市販のものとしては、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー(商品名:ARISTOFLEX AVC、クラリアント社)がある。
【0094】
アミノアルキルスルホン酸ポリマーと併用可能な親水性高分子としては、(メタ)アクリル酸を繰返し単位として含む親水性高分子(以下、「アクリル酸ポリマー」と呼ぶ場合がある。)がある。アクリル酸ポリマーはホモポリマーであっても他のエチレン性不飽和化合物との共重合物であってもよい。また、アクリル酸ポリマーは非架橋タイプでも架橋タイプでもよい。架橋タイプとしては、架橋剤としてアリルショ糖やペンタエリスリトール等を含むカルボキシル基を有する高分子が挙げられる。このような親水性高分子で市販のものとしては、CARBOPOL 980(LUBRIZOl社製)がある。
【0095】
アクリル酸ポリマーはアミノアルキルスルホン酸ポリマーと併用して用いることができるが、アミノアルキルスルホン酸ポリマーを用いずにアクリル酸ポリマーを単独で用いると、(1)みずみずしさ、(2)ナリシング効果、(3)隠蔽性及び(4)持続性のいずれにも劣るようになるため、親水性高分子の選択は重要である。親水性高分子としては、アミノアルキルスルホン酸ポリマーを単独使用することが好ましい。
【0096】
親水性高分子の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.3質量%以上、0.5質量%以上、又は0.8質量%以上であってよく、5質量%以下、2.5質量%以下、又は2質量%以下であってよい。すなわち、親水性高分子の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、0.3~5質量%、0.3~2.5質量%、0.3~2質量%、0.5~5質量%、0.5~2.5質量%、0.5~2質量%、0.8~5質量%、0.8~2.5質量%、好ましくは0.8~2質量%であってもよい。
【0097】
疎水化無機粉体
水相には、油相に存在するのと同種又は異種の疎水化無機粉体が含まれており、疎水化無機粉体としては、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有している。また、疎水化顔料級酸化チタン粉体の水相中の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、2.5質量%を超え20質量%未満である。
【0098】
疎水化顔料級酸化チタン粉体の水相中の含有量が2.5質量%以下の場合は、(3)隠蔽性及び(4)持続性が劣るようになり、20質量%以上の場合は、(1)みずみずしさ及び(2)ナリシング効果が不十分になる。
【0099】
水相に配合される疎水化無機粉体の疎水化は、油相に配合される疎水化無機粉体の疎水化に用いられるのと同様の疎水化剤で行うことができる。すなわち、ケイ素系疎水化剤である、シランやシリコーン等、非ケイ素系疎水化剤である、フッ素系化合物、有機チタネート化合物、アミド又はその塩、金属石鹸、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ等を含む疎水化剤が適用できる。なお、疎水化剤は組み合わせて用いることができ、各成分の具体例及び好適例は上述の通りである。
【0100】
水相に存在する疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体は、ジメチルポリシロキサン及びメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む疎水化剤で、非疎水化粉体を疎水化して得られることが好ましい。特に、メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体を含む疎水化剤を用いることが好ましい。
【0101】
水相中に配合される疎水化無機粉体の疎水化処理量は、疎水化後の無機粉体の質量基準で、0.5質量%以上、0.75%質量%以上、又は1質量%以上であってよく、5%質量%以下、4質量%以下、又は3質量%以下であってよい。すなわち、疎水化無機粉体の疎水化処理量は、0.5~5質量%、0.5~4質量%、0.5~3質量%、0.75~5質量%、0.75~4質量%、0.75~3質量%、1~5質量%、1~4質量%、好ましくは1~3質量%であってもよい。
【0102】
水相には、メチルハイドロジェンポリシロサンを含む疎水化剤で非疎水化粉体を疎水化して得られた、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有させることが好ましい。特に好ましくは、1,3-ブチレングリコールにポリオキシエチレン-メチルポリシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサンを含む疎水化剤で疎水化された、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体が好ましい。この疎水化剤を用いた市販品としては、堺化学社製の、DIP T1(疎水化顔料級酸化チタン粉体)、DIP R1(赤色疎水化酸化鉄粉体)、DIP Y1(黄色疎水化酸化鉄粉体)、DIP K1(黒色疎水化酸化鉄粉体)がある。
【0103】
疎水化無機粉体の一成分である疎水化酸化鉄粉体は、複数種の混合物であってもよい。例えば、黒色疎水化酸化鉄粉体、赤色疎水化酸化鉄粉体、黄色疎水化酸化鉄粉体の混合物であってもよく、適用する肌等に合わせて色調を調製することができる。
【0104】
黒色疎水化酸化鉄粉体、赤色疎水化酸化鉄粉体及び黄色疎水化酸化鉄粉体の含有量は、いずれも、水中油型化粧料全量を基準として、0.2質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってよく、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってよい。すなわち、上記粉体の含有量は、いずれも、水中油型化粧料全量を基準として、0.2~5質量%、0.2~3質量%、0.2~2質量%、0.5~5質量%、0.5~3質量%、0.5~2質量%、1~5質量%、1~3質量%、好ましくは1~2質量%であってもよい。
【0105】
疎水化無機粉体の一成分である疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は、水中油型化粧料全量を基準として、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上であってよく、19質量%以下、17質量%以下、又は15質量%以下であってよい。すなわち、疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は、いずれも、水中油型化粧料全量を基準として、3~19質量%、3~17質量%、3~15質量%、4~19質量%、4~17質量%、4~15質量%、5~19質量%、5~17質量%、5~15質量%であってもよい。なお、疎水化顔料級酸化チタン粉体のうち疎水化された重量を除いた、顔料級酸化チタン粉体自体の含有量は、例えば、水中油型化粧料全量を基準として、1.85質量%を超え14.8質量%未満とすることができる。
【0106】
水中油型化粧料は、ファンデーション、メークアップベース、コンシーラー、日焼け止めとして、又は化粧料の原料組成物として用いることができる。またそれぞれの目的に合わせて形態(形状や粘度等)を変更したり、追加成分を添加できる。例えば、ファンデーションとして用いる場合、回転粘度計による回転数100rpm、25℃の粘度は、5000~30000mPa・sとすることができ、10000~20000mPa・sとすることが好ましい。
【0107】
水中油型化粧料は、例えば、疎水化無機粉体が分散された油性成分を得る工程と、水性成分中で油性成分を撹拌して水中油型分散物を得る工程と、上記疎水化無機粉体と同種又は異種の疎水化無機粉体を水中油型分散物に添加する工程と、を含む製造方法で製造可能である。
【0108】
この製造方法には、完成品の脂肪酸石鹸を油性成分及び/又は水性成分に添加する第一実施形態と、脂肪酸を油性成分に添加し、塩基性化合物を水性成分に添加し、両者の混合時に脂肪酸石鹸を形成させる第二実施形態が含まれる。
【0109】
第一実施形態の製造方法は、以下の(A1)~(A3)の工程を備えている。
(A1)加温された、非シリコーン油を含有する油剤を、この油剤と同種又は異種の油剤中で剪断力を加えることにより疎水化無機粉体を分散させた分散体、及び、全体としてHLB値が6~15となる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤と混合させて、加温状態の油性成分を得る工程、
(A2)油性成分を、アミノアルキルスルホン酸ポリマーと水性媒体を含有し、加温された水性成分中で撹拌して、水中油型分散物を得る工程、
(A3)水中油型分散物を冷却し、上記疎水化無機粉体と同種又は異種の疎水化無機粉体を添加して、少なくともその一部を水性媒体に含有させる工程。
【0110】
上記工程において、以下の(a1)~(a3)の要件が適用される。
(a1)油性成分及び/又は水性成分は、脂肪酸石鹸を含有する、
(a2)油性成分及び水性成分における疎水化無機粉体は、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有しており、水中油型化粧料の全量基準で、油性成分中の疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は0.5質量%を超え5質量%未満、水性成分中の疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は2.5質量%を超え20質量%未満である、
(a3)非シリコーン油の合計の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である。
【0111】
(A1)工程において、油剤は均一となるように加温する。加温温度は、用いる油剤の化学種に対応して適宜決定するが、通常は50~150℃の範囲で行うことができ、50~100℃で行うことが原料の安定性の点から好ましい。
【0112】
(A1)工程において、加温状態の油性成分を得るが、その加温温度は、上述した油剤の加温の温度範囲と同等である。
【0113】
(A1)工程において、油剤中で剪断力を加えることにより疎水化無機粉体を分散させる場合、疎水化無機粉体を油剤に添加して、三本ロールミル分散機またはビーズミル分散機等を用いて剪断力を加える方法が採用できる。三本ロールミルとしては、例えば、永瀬スクリーン印刷研究所製の、EXAKT 50I、EXACT 80E PLUS、EXACT 120EH-250、EXACT 120EH-450等が使用可能である。
【0114】
(A2)工程において、油性成分を加温された水性成分中で撹拌するが、この加温温度は、上述した非シリコーン系油剤の加温の温度範囲と同等である。撹拌は、例えばホモジナイザーを用いて行うことができる。ホモジナイザーとしては、みづほ工業社製、LR-1B、LR-2C等が使用可能である。
【0115】
(A3)工程において、水中油型分散物を冷却するが、この冷却は室温(例えば25℃)まで温度を下げればよい。また、水中油型分散物に疎水化無機粉体を添加するが、通常の攪拌機で混合を行えばよい。
【0116】
第二実施形態の製造方法は、以下の(B1)~(B3)の工程を備えている。
(B1)加温された、非シリコーン油を含有する油剤を、この油剤と同種又は異種の油剤中で剪断力を加えることにより疎水化無機粉体を分散させた分散体、全体としてHLB値が6~15となる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤、及び、脂肪酸を添加して、加温状態の油性成分を得る工程、
(B2)油性成分を、上記脂肪酸のカルボン酸アニオンと対となり脂肪酸石鹸を形成する塩基性化合物と、アミノアルキルスルホン酸ポリマーと、水性媒体を含有し、加温された水性成分中で撹拌して、脂肪酸石鹸を形成させつつ水中油型分散物を得る工程、
(B3)水中油型分散物を冷却し、上記疎水化無機粉体と同種又は異種の疎水化無機粉体を添加して、少なくともその一部を水性媒体に含有させる工程。
【0117】
上記工程において、以下の(b1)~(b2)の要件が適用される。
(b1)油性成分及び水性成分における疎水化無機粉体は、疎水化酸化鉄粉体及び疎水化顔料級酸化チタン粉体を含有しており、水中油型化粧料の全量基準で、油性成分中の疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は0.5質量%を超え5質量%未満、水性成分中の疎水化顔料級酸化チタン粉体の含有量は2.5質量%を超え20質量%未満である、
(b2)非シリコーン油の合計の含有量は、水中油型化粧料の全量基準で、5質量%を超え30質量%未満である。
【0118】
(B1)工程及び(B2)工程の加温は、それぞれ(A1)工程及び(A2)工程と同様にすることができ、(B3)工程の冷却は、(A3)工程と同様にすることができる。使用可能な攪拌機等も同様である。また(a1)~(a3)及び(b1)~(b2)における各成分の意義や好適例、好適な範囲等は、水中油型化粧料の実施形態で述べたとおりである。
本発明はまた、本発明で定義される水中油型化粧料をケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための化粧方法に関する。有利には、水中油型化粧品は、それが適用されるケラチン物質に、(1)みずみずしさ、(2)ナリシング効果、(3)隠蔽性及び(4)持続性を提供する。
【実施例】
【0119】
実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、%は、水中油型化粧料の総質量(重量)の重量%とも呼ばれる質量%で表される。
【0120】
(実施例1~8及び比較例1~13)
以下に示す方法により、水中油型化粧料を作製した。
すなわち、表1~3において「A」と記載したA成分を75℃まで加熱し、均一に溶解した。また表1~3において「B」と記載したB成分を分散機である3本ロールミルにて均一に分散した。次いで、A成分を均一に溶解したものの中に、B成分を均一分散したもの、更に、表1~3において「C」及び「D」と記載したC成分及びD成分を添加して、75℃とし油性成分とした。
【0121】
一方で、表1~3において、「E」、「F」及び「G」と記載した、E成分、F成分及びG成分を室温にて均一に溶解、分散し、75℃まで加熱して水性成分とした。そして、水性成分に油性成分を投入して、攪拌機であるホモミキサーで乳化した。その後、乳化物を室温まで冷却し、表1~3において「H」及び「I」と記載した、H成分及びI成分を順次投入して均一になるように攪拌し、容器に充填して、水中油型化粧料とした。
【0122】
なお成分の詳細情報(商品名、製造者等)を表4に示す。表5~7には、油剤の合計含有量(質量%)、非シリコーン油の合計含有量(質量%)、油相における疎水化顔料級酸化チタン含有量(質量%)、水相における疎水化顔料級酸化チタン含有量(質量%)、酸化チタン粉体の合計の含有量(質量%)、油相における酸化チタン粉体(疎水化剤除く)の含有量(質量%)、水相における酸化チタン粉体(疎水化剤除く)の含有量(質量%)を示している。
【0123】
(評価)
安定性評価:
透明容器に上記のように調製した化粧料を収容し、蓋をして密閉したうえで、50℃で1か月保管した。保管後、各化粧料の状況を目視で観察し、室温保管品(コントロール)と比較して、分離、粉体の凝集、結晶の析出がいずれも認められない場合は良好(OK)、室温保管品と比較して、分離、粉体の凝集、結晶の析出のいずれか一つでも観察される場合は不良(NG)と判断した。結果を表5~7に示す。
【0124】
官能評価:
みずみずしさ(水感)、ナリシング効果、隠蔽性及び持続性について、化粧品専門評価パネル10人(25歳-55歳)による肌への単回使用試験において、以下の基準にて評価した。結果を表5~7に示す。
A:非常に優れる
B:優れる
C:劣る
D:非常に劣る
【0125】
粘度:
回転粘度計(アントンパール株式会社製 Rheolab QC)を用いた剪断粘度測定により、(回転数100rpm)、25℃の粘度(mPa・s)を測定した。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【表7】
これら全ての結果は、特定の化合物と特定の質量%範囲との組み合わせを含む本発明の水中油型化粧料が、本発明の水中油型化粧料の重要な特徴を有さない全ての比較例(すなわち、本発明の水中油型化粧料の重要な化合物を含有せず、質量%範囲も特許請求の範囲の質量%範囲外である)と比較して、(1)みずみずしさ、(2)ナリシング効果、(3)隠蔽性及び(4)持続性に関して改善された特性を提供することを示す。
【国際調査報告】