(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(54)【発明の名称】セリウム共触媒を使用してジカルボン酸を生成するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/265 20060101AFI20220217BHJP
C07C 63/26 20060101ALI20220217BHJP
B01J 27/25 20060101ALI20220217BHJP
B01J 31/32 20060101ALI20220217BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220217BHJP
【FI】
C07C51/265
C07C63/26 F
B01J27/25 Z
B01J31/32 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539431
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 IB2019061047
(87)【国際公開番号】W WO2020144517
(87)【国際公開日】2020-07-16
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアン セルバクマル
(72)【発明者】
【氏名】サテュ ナヴィーン ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ スマン クマル
(72)【発明者】
【氏名】ダス デバシシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハシュミ シェド アズハル
(72)【発明者】
【氏名】パタス プラサンナ クマル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21B
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BB12B
4G169BC43A
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4G169BC62A
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4H006AA02
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4H006BA08
4H006BA16
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA37
4H006BB17
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC32
4H006BC34
4H006BC35
4H006BD70
4H006BE30
4H006BJ50
4H006BS30
4H039CA65
4H039CC30
(57)【要約】
ジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法は、ジメチル芳香族化合物および酸化剤を、触媒および共触媒の存在下で溶媒中にて反応させ、芳香族ジカルボン酸を含む反応生成物を生成させる工程を含む。触媒はコバルト、マンガン、および臭素を含む。コバルト対マンガンの重量比は、1:1以上である。共触媒は、セリウムまたは鉄の少なくとも1つを含む。共触媒は、ジメチル芳香族化合物および溶媒の総重量に基づき、10ppmから200ppmの範囲の量で存在する。芳香族ジカルボン酸は、反応生成物中に、反応生成物中の固体の総重量に基づき、70wt%以上、または90wt%以上の量で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法であって、
前記ジメチル芳香族化合物および酸化剤を、触媒および共触媒の存在下で溶媒中にて反応させ、芳香族ジカルボン酸を含む反応生成物を生成させる工程
を含み、
前記触媒は、コバルト、マンガン、および臭素を含み、
コバルト対マンガンの重量比は、1:1以上、または2:1以上、好ましくは3:1以上であり、
前記共触媒は、セリウムまたは鉄の少なくとも1つを含み、好ましくはセリウムを含み、
前記共触媒は、前記ジメチル芳香族化合物および前記溶媒の総重量に基づき、10ppmから200ppm、または20ppmから190ppm、好ましくは30ppmから180ppmの範囲の量で存在し、
好ましくは、前記芳香族ジカルボン酸は、前記反応生成物中に、前記反応生成物中の固体の総重量に基づき、70wt%以上、または90wt%以上、好ましくは92wt%以上、より好ましくは94wt%以上の量で存在する、方法。
【請求項2】
前記ジメチル芳香族化合物は、パラ-キシレン、メタ-キシレン、オルト-キシレン、2,6-ジメチルナフタレン、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせ、好ましくはパラ-キシレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コバルトおよびマンガンの総量は、前記ジメチル芳香族化合物および前記溶媒の総重量に基づき、1,000ppm以下、または900ppm以下、好ましくは800ppm以下であり、および/または、臭素は、前記ジメチル芳香族化合物および前記溶媒の総重量に基づき、800ppm以下、または600ppm以下、好ましくは400ppm以下の量で存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記共触媒はセリウムを含み、好ましくは、前記共触媒はセリウムである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記臭素は臭化水素酸を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応生成物中に存在する一酸化炭素および二酸化炭素の総モル数は、前記触媒および前記共触媒の存在を除くジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法から得られた反応生成物中に存在する一酸化炭素および二酸化炭素の総モル数と比べて、5モル%以上、または10モル%以上、好ましくは15モル%以上だけ低減される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
C
10+炭化水素は、前記反応生成物中に、前記反応生成物中の固体の総重量に基づき、1.5wt%以下、または1.0wt%以下、好ましくは0.5wt%以下の量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒は銅を含まない、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒は、水およびC
1-C
7脂肪族カルボン酸の少なくとも1つ、好ましくは酢酸を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
溶媒対ジメチル芳香族化合物の前記重量比は、15:1から1:1、または10:1から1:1、好ましくは5:1から1:1の範囲にある、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
臭素対コバルトおよびマンガンのモル比は、0.3:1から3:1、または0.3:1から2:1、好ましくは0.3:1から1:1の範囲にある、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応は、170℃から200℃、または180℃から200℃、好ましくは190℃から200℃の範囲の温度で実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応は、1メガパスカルから1.8メガパスカル、または1メガパスカルから1.7メガパスカル、好ましくは1メガパスカルから1.6メガパスカルの範囲の圧力で実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応は、連続撹拌槽反応器内で実施され、滞留時間は、20分から200分、または40分から150分、好ましくは60分から100分の範囲にある、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応中、前記ジメチル芳香族化合物、前記酸化剤、前記触媒、前記共触媒、および前記溶媒を含む反応混合物は、酢酸アンモニウム、メタ-キシレン、ならびに臭化物アニオンおよびヨウ化物アニオンを含むイオン性液体を実質的に含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応生成物を結晶化させる工程をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒、前記触媒、および前記共触媒を前記反応生成物から分離する工程、および前記溶媒、前記触媒、および前記共触媒を前記反応工程にリサイクルさせる工程をさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ジメチル芳香族化合物および水素を水素化触媒の存在下で反応させる工程をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ジメチル芳香族化合物の酸化のための触媒系であって、
コバルト、マンガン、および臭素を含み、コバルト対マンガンの重量比は1:1以上、または2:1以上、好ましくは3:1以上である触媒、および
セリウムまたは鉄の少なくとも1つを含む、好ましくはセリウムを含む共触媒
を含む、触媒系。
【請求項20】
ジメチル芳香族化合物の酸化のための反応混合物であって、
請求項19に記載の触媒系、
前記ジメチル芳香族化合物、
酸化剤、および
溶媒
を含み、
前記共触媒は、前記ジメチル芳香族化合物および前記溶媒の総重量に基づき、10ppmから200ppm、または20ppmから190ppm、好ましくは30ppmから180ppmの範囲の量で存在し、
コバルトおよびマンガンの総量は、前記ジメチル芳香族化合物および前記溶媒の総重量に基づき、1,000ppm以下、または900ppm以下、好ましくは800ppm以下であり、
臭素は、前記ジメチル芳香族化合物および前記溶媒の総重量に基づき、800ppm以下、または600ppm以下、好ましくは400ppm以下の量で存在し、ならびに
臭素対コバルトおよびマンガンのモル比は、0.3:1から3:1、または0.3:1から2:1、好ましくは0.3:1から1:1の範囲にある、反応混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウム共触媒を使用してジカルボン酸を生成するための方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本国際出願は、2019年1月8日に出願された米国仮特許出願第62/789,583号(参照により本明細書に組み込まれる)に対し優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸)は触媒の存在下でのジメチル芳香族化合物(例えば、パラ-キシレン)の酸化により生成させることができる。反応は通常、溶媒、例えば、酢酸の存在下で実施される。ジメチル芳香族の対応するジカルボン酸への酸化は、多くの中間の工程を介して進行する。非効率的な触媒および/または酸化プロセスは、生成物中の不純物としての中間体の形成につながる。その上、高圧かつ高温で実施される酸化プロセスは、最終生成物(すなわち、芳香族ジカルボン酸)の過酸化、およびまた、溶媒、例えば、酢酸の燃焼によりCOx形成につながる。副産物形成および/または過酸化の結果、ジメチル芳香族化合物および溶媒の消費は不必要に増加する。
【0004】
米国特許番号5,453,538号は、コバルト-マンガン触媒と共にセリウムを使用することにより促進される、低い臭素対金属比を使用する、芳香族ジカルボン酸の製造のためのプロセスを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,453,538号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セリウム共触媒を使用してジカルボン酸を生成するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法であって、
前記ジメチル芳香族化合物および酸化剤を、触媒および共触媒の存在下で溶媒中にて反応させ、芳香族ジカルボン酸を含む反応生成物を生成させる工程
を含み、
前記触媒は、コバルト、マンガン、および臭素を含み、
コバルト対マンガンの重量比は、1:1以上、または2:1以上、好ましくは3:1以上であり、
前記共触媒は、セリウムまたは鉄の少なくとも1つを含み、好ましくはセリウムを含み、
前記共触媒は、前記ジメチル芳香族化合物および前記溶媒の総重量に基づき、10ppmから200ppm、または20ppmから190ppm、好ましくは30ppmから180ppmの範囲の量で存在し、
好ましくは、前記芳香族ジカルボン酸は、前記反応生成物中に、前記反応生成物中の固体の総重量に基づき、70wt%以上、または90wt%以上、好ましくは92wt%以上、より好ましくは94wt%以上の量で存在する、方法である。
【0008】
下記図は例示的な実施形態であり、そこでは、同様の要素には同様の番号が付される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】パラ-キシレンを酸化させてテレフタル酸を得るための方法の一実施形態のプロセスフロー図である。
【
図2A】比較例Aおよび実施例1における反応生成物の総モル数に基づく、副産物として形成された一酸化炭素および二酸化炭素(集合的に「COx」)のモルパーセント、および、比較例Aと比べた実施例1におけるCOxのモル数のパーセント低減のグラフ図である。
【
図2B】比較例Bおよび実施例2における反応生成物の総モル数に基づく、副産物として形成されたCOxのモルパーセント、および、比較例Bと比べた実施例2におけるCOxのモル数のパーセント低減のグラフ図である。
【
図3】比較例A-Bおよび実施例1-2における、反応生成物の総重量に基づく、副産物として形成されたC
10+炭化水素の重量パーセント、および、比較例Aと比べた比較例Bおよび実施例1-2におけるC
10+炭化水素の量のパーセント低減のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記および他の特徴は下記詳細な説明、実施例、および特許請求の範囲により例示される。
【0011】
ジメチル芳香族化合物を酸化させ、選択的に芳香族ジカルボン酸を生成させるための改善された方法、特に、前記不利点を軽減する方法を提供することが望ましいであろう。したがって、本明細書では、ジメチル芳香族化合物を酸化させ、芳香族ジカルボン酸を得るための方法が開示される。望ましくは、方法は、ジメチル芳香族化合物をコバルトおよびマンガンを1:1以上の重量比で含む触媒、ならびに、セリウムを含む共触媒の存在下で酸化させることにより、ジメチル芳香族化合物および溶媒を消費して副産物を形成させる望ましくない副反応を低減させる。ジメチル芳香族化合物を酸化させるための以前の方法は副反応、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、またはC10+炭化水素(例えば、中間体または「重質物」)などの副産物を形成する溶媒の酸化またはジメチル芳香族化合物の過酸化に苦しんだ。これらの副反応は、ジメチル芳香族化合物および溶媒の消費の増加という結果になった。例えば、本開示の方法と比べて、およそ0.010モル%多いジメチル芳香族化合物およびおよそ0.016モル%多い溶媒が以前の方法により、消費される可能性がある。
【0012】
本明細書では、「過酸化」という句は、テレフタル酸および酢酸のCOxへの酸化を示す。
【0013】
本開示の方法では、ジメチル芳香族化合物は、コバルトおよびマンガンを1:1以上、または2:1以上、好ましくは3:1以上の重量比で含む触媒、およびセリウムを含む共触媒の存在下で酸化される。驚いたことに、そのような触媒および共触媒は、そのような触媒および共触媒の存在を除く(例えば、1:1未満のコバルト対マンガンの重量比を含み、セリウム共触媒を含まない)ジメチル芳香族化合物を酸化させるための以前の方法と比べて、反応物および溶媒の損失を低減させ、芳香族ジカルボン酸に対する選択性を増加させ、反応生成物中の一酸化炭素、二酸化炭素、およびC10+炭化水素の少なくとも1つの量を低減させ、ならびに、芳香族ジカルボン酸の純度を増加させることが見出された。
【0014】
例えば、本開示の方法は、下記の少なくとも1つを達成することができる:(i)そのような触媒および共触媒の存在を除くジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法から得られる反応生成物中に存在する一酸化炭素および二酸化炭素の総モル数と比べて、5モル%以上、または10モル%以上、好ましくは15モル%以上の、形成される二酸化炭素および一酸化炭素の総モル数の低減、(ii)そのような触媒および共触媒の存在を除くジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法から得られる反応生成物中に存在するC10+炭化水素の総量と比べて、10重量パーセント(wt%)以上、または20wt%以上、好ましくは30wt%以上の、形成されるC10+炭化水素の量の低減、ならびに、(iii)そのような触媒および共触媒の存在を除くジメチル芳香族化合物を酸化させるための以前の方法から得られる反応生成物中に存在する芳香族ジカルボン酸のモル数と比べて、0.5モル%以上、または1.0モル%以上、好ましくは1.5モル%以上の、生成される芳香族ジカルボン酸のモル数の増加。
【0015】
その上、驚いたことに、本開示で記載される触媒および共触媒を使用しない以前の方法と比べて、触媒の量を低減させることができたことが見出された。例えば、本方法により、触媒1ミリグラムにつき生成される芳香族ジカルボン酸のモル数を維持しながら、触媒中のマンガンおよび臭素の少なくとも1つの使用量を低下させることができる。存在するマンガンの量の低減は、そのような触媒および共触媒の存在を除くジメチル芳香族化合物を酸化させるための以前の方法において存在するマンガンのモル数と比べて、25wt%以上、または50wt%以上、または75wt%以上とすることができる。望ましくは、存在する臭素の量の低減は、酸化のために使用される装置の腐食を低減、軽減、または回避することができ、または、装置のために異なる構成材料の使用を可能にする。存在する臭素の量の低減は、そのような触媒および共触媒の存在を除くジメチル芳香族化合物を酸化させるための以前の方法において存在する臭素のモル数と比べて、25wt%以上、または50wt%以上、または75wt%以上とすることができる。
【0016】
上述のように、ジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法は、ジメチル芳香族化合物および酸化剤を、触媒および共触媒の存在下で溶媒中にて反応させ、芳香族ジカルボン酸を含む反応生成物を生成させる工程を含むことができる。
【0017】
ジメチル芳香族化合物はキシレン(例えば、パラ-キシレン、メタ-キシレン、およびオルト-キシレンの少なくとも1つ)、および2,6-ジメチルナフタレンの少なくとも1つ、好ましくはパラ-キシレンを含むことができる。
【0018】
ジメチル芳香族化合物の酸化を触媒するために、触媒が使用される。触媒はコバルト、マンガン、および臭素を含むことができる。触媒は非担持とすることができ、コバルト、マンガン、および臭素の供給源は合わせることができ、触媒混合物として触媒が形成される。触媒のために使用されるコバルトおよびマンガンの供給源は、それぞれ、コバルト(例えば、酢酸コバルト(II)四水和物)およびマンガン(例えば、酢酸マンガン(II)四水和物)の塩を含むことができる。臭素源は、臭化水素酸、臭化ナトリウム、臭化アンモニウム、テトラブロモエタン、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせとすることができる。他の触媒源としては、金属臭化物(例えば、MnBr2、CoBr2、など)および金属硝酸塩が挙げられる。望ましくは、臭素は、固体の少なくとも1つとすることができ、または、溶媒に溶解することができる。
【0019】
望ましくは、触媒は1:1以上、または2:1以上、好ましくは3:1以上の重量比のコバルト対マンガンを含むことができる。コバルトおよびマンガンの総量は、ジメチル芳香族、酢酸および水を含む反応混合物の総重量に基づき、1,000重量百万分率(ppm)以下、または900ppm以下、好ましくは800ppm以下とすることができる。
【0020】
臭素は、ジメチル芳香族、酢酸および水を含む反応混合物の総重量に基づき、800ppm以下、または400ppm以下、好ましくは200ppm以下の量で存在することができる。触媒は、0.3:1から3:1、または0.3:1から2:1、好ましくは0.3:1から1:1の範囲の臭素対(コバルトおよびマンガン)のモル比を含むことができる。
【0021】
望ましくは、様々な実施形態では、反応中、反応混合物(例えば、ジメチル芳香族化合物、酸化剤、触媒、共触媒、および溶媒を含む)は、酢酸アンモニウム、メタ-キシレン、および臭化物アニオンまたはヨウ化物アニオンの少なくとも1つを含むイオン性液体を実質的に含まず、酢酸アンモニウム、メタ-キシレン、および臭化物アニオンを含むイオン性液体を実質的に含まない。本明細書では、「を実質的に含まない」という句は、ジメチル芳香族化合物、酸化剤、触媒、共触媒、および溶媒中に不純物の存在を認める。言い換えれば、反応中、酢酸アンモニウム、メタ-キシレン、および臭化物アニオンおよびヨウ化物アニオンの少なくとも1つを含むイオン性液体はいずれも微量不純物以外には存在しない。それらは意図的に添加される化合物ではない。
【0022】
触媒に加えて、方法は共触媒を使用する。望ましくは、共触媒はセリウムを含む。セリウムは、ジメチル芳香族化合物および溶媒の総重量に基づき、10ppmから200ppm、または20ppmから190ppm、好ましくは30ppmから180ppmの範囲の量で存在することができる。
【0023】
溶媒は下記の少なくとも1つを含むことができる:水、C1-C7脂肪族カルボン酸、芳香族酸、および超臨界CO2、好ましくは酢酸。溶媒は水溶液とすることができる。望ましくは、溶媒対ジメチル芳香族化合物の重量比は15:1から1:1、または10:1から1:1、好ましくは5:1から1:1の範囲とすることができる。
【0024】
ジメチル芳香族化合物を酸化させるために、方法は酸化剤を使用する。酸化剤としては、過酸化水素、二原子酸素、オゾン、アントラキノン、C2-32アルキルペルオキシド、C2-32アルキルヒドロペルオキシド、C2-32ケトンペルオキシド、C2-32ジアシルペルオキシド、C3-22ジペルオキシ、ケタール、C2-32ペルオキシエステル、C2-32ペルオキシジカーボネート、C2-32ペルオキシ酸、C6-32過安息香酸、C2-32過酸、ペルヨージナン、過ヨウ素酸、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせ、好ましくは二原子酸素(例えば、空気中)が挙げられる。
【0025】
望ましくは、ジメチル芳香族化合物と酸化剤の反応は、170℃から200℃、または180℃から200℃、または190℃から200℃の範囲の温度で実施することができる。
【0026】
ジメチル芳香族化合物と酸化剤の反応は1メガパスカル(mPa)から1.8mPa、または1mPaから1.7mPa、好ましくは1mPaから1.6mPaの範囲の圧力で実施することができる。
【0027】
反応器内でのジメチル芳香族化合物と酸化剤の反応の滞留時間は20分から200分、または40分から150分、好ましくは60分から100分の範囲とすることができる。
【0028】
ジメチル芳香族化合物の反応は、本開示で記載される条件下で動作することができる任意の反応器、例えば、バッチ反応器、連続、または半連続反応器において実施することができる。反応器はジメチル芳香族化合物、溶媒、触媒、および共触媒の少なくとも1つをある期間連続して供給するための入口、および、ある期間または特定の時点(複数可)に反応生成物を連続して除去するための出口を含むことができる。望ましくは、ジメチル芳香族化合物と酸化剤の反応は連続撹拌槽反応器において実施することができる。
【0029】
芳香族ジカルボン酸は反応生成物中に、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により周囲温度で測定された、反応生成物中の固体の総重量に基づき、70wt%以上、または90wt%以上、好ましくは92wt%以上、より好ましくは94wt%以上の量で存在することができる。
【0030】
望ましくは、本方法により、C10+炭化水素が反応生成物中に、例えば、HPLCにより周囲温度で測定した、反応生成物中の固体の総重量に基づき、1.5wt%以下、または1.0wt%以下、好ましくは0.5wt%以下の量で存在するという結果が得られる。本開示で記載される触媒および共触媒はC10+炭化水素の形成の防止に寄与することができる。本明細書では「C10+炭化水素」は、10個以上の炭素原子を含む炭化水素を示す。いくつものC10+炭化水素、例えば、少なくとも5個の異なるC10+炭化水素、または少なくとも15個の異なるC10+炭化水素、または少なくとも20個の異なるC10+炭化水素が反応生成物中に存在し得る。
【0031】
方法は、溶媒、触媒、および共触媒を反応生成物から分離する工程、および溶媒、触媒、および共触媒を、ジメチル芳香族化合物を反応させる工程にリサイクルさせる工程をさらに含むことができる。例えば、分離工程は、芳香族ジカルボン酸を結晶化し、芳香族ジカルボン酸結晶を得る工程を含むことができる。次いで、芳香族ジカルボン酸結晶を溶媒、触媒、および共触媒から分離することができる。例えば、触媒および共触媒は、溶媒中に溶解している可能性があり、分離は濾過または任意の他の固液分離法を介することができる。芳香族ジカルボン酸を結晶化する工程は少なくとも1段階、または少なくとも2段階、好ましくは少なくとも3段階とすることができる。
【0032】
方法は、反応生成物と水素を水素化触媒の存在下で反応させる工程をさらに含むことができる。例えば、方法は、芳香族ジカルボン酸結晶と水素を水素化触媒の存在下で反応させ、芳香族ジカルボン酸結晶を精製する工程を含むことができる。水素化触媒は、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。水素化触媒は、二酸化ケイ素、珪藻土、二酸化チタン、炭素、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素(silicic carbide)、酸化アルミニウム、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせなどの担体上に担持させることができる。望ましくは、水素化触媒は炭素担体担持パラジウムとすることができる。よって、芳香族ジカルボン酸結晶の純度および芳香族ジカルボン酸の収率は改善することができる。
【0033】
上記方法によるジメチル芳香族化合物の酸化のための反応混合物は、ジメチル芳香族化合物、酸化剤、触媒、共触媒、水、および溶媒を含むことができる。
【0034】
反応生成物は上記方法により、または、上記反応混合物を使用して生成させることができる。
【0035】
本明細書で開示される構成要素、プロセス、および装置のより完全な理解は、添付の図面を参照することにより得ることができる。これらの図(figure)(本明細書では「図(FIG.)」とも呼ばれる)は、本開示を説明することの利便性および容易さに基づく単なる概略図であり、よって、装置またはその構成要素の相対的なサイズおよび寸法を示すこと、および/または、例示的な実施形態の範囲を規定もしくは制限することは意図されない。明確にするために、特定の用語が下記記載において使用されるが、これらの用語は、図面における例解のために選択された実施形態の特定の構造のみを示すことが意図され、本開示の範囲を規定もしくは制限することは意図されない。図面および下記記載では、同様の数字表示は、同様の機能の構成要素を示すことが理解されるべきである。
【0036】
図1に示されるように、テレフタル酸生産設備は、反応器10を含むことができる。パラ-キシレン、溶媒、触媒、および共触媒を含む反応混合物6は、反応器10に送り込むことができる。酸化剤8もまた、反応器10に送り込むことができる。パラ-キシレンと酸化剤8が反応すると、テレフタル酸を含む反応生成物12は反応器10から除去することができる。反応生成物12は、第1の晶析装置20に送り込むことができ、第1の結晶化ストリーム22が生成される。第1の結晶化ストリーム22は、第2の晶析装置30に送り込むことができ、第2の結晶化ストリーム32が生成される。第2の結晶化ストリーム(crystallizer stream)32は、第3の晶析装置40に送り込むことができ、結晶化テレフタル酸を含む第3の結晶化ストリーム42が生成される。溶媒、触媒、および共触媒ストリーム44は、第3の結晶化ストリーム42から、分離し、反応混合物6にリサイクルさせることができる。
【実施例】
【0037】
この開示は非限定的である下記実施例によりさらに説明される。
【0038】
表1に列挙される下記成分を実施例で使用した。明確に別記されない限り、各成分の量は下記実施例において、組成物の総重量に基づき、重量パーセントで示される。
【0039】
【0040】
<実施例1-2および比較例A-B>
実施例1-2および比較例A-Bでは、パラ-キシレンを酢酸中、異なる組成の触媒および共触媒の存在下で酸化させた。酸化反応を半連続流撹拌槽反応器において空気の存在下で実施させた。実施例1-2では、セリウムを、パラ-キシレン、水および酢酸の総重量に基づき、50ppmの量で使用した。比較例A-Bでは、セリウム共触媒を使用しなかった。実施例2および比較例Bでは、実施例1および比較例Aよりも少量の触媒を含めた。実施例および比較例における、使用した触媒、共触媒、および溶媒の量、溶媒対パラ-キシレンの重量比、および反応条件を表2にまとめて示す。
【0041】
【0042】
図2Aに示されるように、約10モル%の生成された一酸化炭素および二酸化炭素(COx)の総量の低減が比較例Aと比べた実施例1において見られた。
図2Bに示されるように、約8モル%の生成された一酸化炭素および二酸化炭素(COx)の総量の低減が比較例Bと比べた実施例2において見られた。このように、触媒およびセリウムは、溶媒および生成物テレフタル酸の一酸化炭素および二酸化炭素への酸化を低減させた。また、酸化反応中の触媒およびセリウムの存在は、テレフタル酸選択性に著しくは影響せず、テレフタル酸選択性は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができ、固体生成物のみ(すなわち、ガス状生成物ではない)に基づいて計算することができる。例えば、本開示の方法は、およそ96.5wt%のテレフタル酸の純度を達成することができる。
【0043】
図3に見られるように、触媒の量の低減および共触媒の使用は、C
10+炭化水素の形成を低減させた。C
10+炭化水素の生成のこの減少は、パラ-キシレン消費率を低減させる。
【0044】
実施例3-27では、パラ-キシレンを酢酸中、異なる組成の触媒および共触媒の存在下で酸化させた。酸化反応を半連続流撹拌槽反応器において空気の存在下で実施させた。触媒中の金属の量は、パラ-キシレン、水および酢酸の総重量に基づいた。実施例3-10についての反応は170℃の温度で実施し、実施例11-26については、190℃で実施した。実施例は全て1.3mPaの圧力で実施した。
【0045】
試験したCoおよびMnの組成は、2つのレベル、400:400のCo:Mnおよび300:100のCo:Mnとしたが、Brは166から730ppmまで変化させた。結果から、共触媒なし(ゼロ)での反応の性能と比較した、共触媒の性能が示される。
【0046】
初期実験をp-キシレン酸化プロセスについて、温度170℃で、50ppmの各Zr、Pd、Mo、Ce、またはAgを共触媒として使用して、実施した。結果から、共触媒としてのCeの使用で、COx形成量の減少が示された。全ての金属の中で、Zrはより少ない量の4-CBAを提供したが、それはより高い量のCoxを提供した。4-CBAは望まれない不純物であり、170℃で実施された反応では約4wt%となる。より低い量の4-CBAが190℃で実施された反応で生成されたことが見出された。そのため、4-CBA生成の低減ではより高い反応温度が有益である。
【0047】
表3で報告されるように、50ppmのFe、Ag、CeおよびCuを共金属としてCo-Mn-Brと共に190℃で試験した。研究した異なる金属の中で、銅を共触媒として使用して実施した実験は不完全な酸化を示し、すなわち、生成物分布分析により、所望の最終生成物、テレフタル酸(TPA)よりも多くの、p-トルイル酸および4-CBAなどの中間生成物が証明される。
【0048】
特に190℃反応温度では、より少ないCOx形成の観点から、FeおよびCeは、p-キシレン酸化についての共触媒として有望な候補であることが見出されている。これらの材料を共触媒として使用した場合:
・FeはCOxおよび重質物形成の減少を示したが、4-CBA形成はより高くなる。
・Ceは、COxおよび4-CBA形成の低減を示したが、重質物形成はより高くなる。
【0049】
低減させた量のCo、Mn、およびBrでの共触媒の役割を、Fe、Ce、Zr、およびRuを使用して評価した。それぞれ、300-100-332のCo-Mn-Brの低減させた量での、p-キシレン酸化生成物分布について、Fe+CeおよびFe+Zrの組み合わせもまた研究した。結果は全て、FeおよびCeの存在は、COxおよび重質物形成を低減させることができたことを示した。4-CBA形成は、Zrを共触媒として使用すると、低減されるが、COxおよび重質物形成はより高くなった。
【0050】
【0051】
よって、Co-Mn-Br触媒における少量の共触媒の存在は広範囲の性能を示した。パラキシレン酸化について、Co-Mn-Br触媒系に共触媒を組み入れることによる消費率改善および不純物低減が明確に示される。この研究はまた、反応温度がTPA品質および重質物形成に対してより多くの影響を有することを証明する。共触媒としてのCuは、パラキシレン酸化プロセスにおいて阻害役割を示した。試験した様々な共触媒の中で、FeおよびCeは、生成物品質を増加させることにより有望な性能を示した。
【0052】
実施例において示されるように、コバルトおよびマンガンを1:1以上、または2:1以上、好ましくは3:1以上の重量比で含む触媒ならびにセリウムを含む共触媒を使用する本方法は、そのような触媒および共触媒の存在を除くジメチル芳香族化合物を酸化させるための以前の方法と比べて、使用する反応物および溶媒の量を低減させ、芳香族ジカルボン酸に対する選択性を増加させ、反応生成物中の一酸化炭素、二酸化炭素、およびC10+炭化水素の少なくとも1つの量を低減させ、芳香族ジカルボン酸の純度を増加させることができる。その上、触媒の量、好ましくは臭素の量は、そのような以前の方法と比べて低減させることができる。
【0053】
この開示はさらに、下記態様を包含する。
【0054】
態様1.ジメチル芳香族化合物および酸化剤を、触媒および共触媒の存在下で溶媒中にて反応させ、芳香族ジカルボン酸を含む反応生成物を生成させる工程を含む、ジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法であって、触媒はコバルト、マンガン、および臭素を含み、コバルト対マンガンの重量比は1:1以上、または2:1以上、好ましくは3:1以上であり、共触媒はセリウムまたは鉄の少なくとも1つを含み、好ましくはセリウムを含み、共触媒は、ジメチル芳香族化合物および溶媒の総重量に基づき、10ppmから200ppm、または20ppmから190ppm、好ましくは30ppmから180ppmの範囲の量で存在し、芳香族ジカルボン酸は、反応生成物中に、反応生成物中の固体の総重量に基づき、70wt%以上、または90wt%以上、好ましくは92wt%以上、より好ましくは94wt%以上の量で存在する、方法。
【0055】
態様2.ジメチル芳香族化合物は、パラ-キシレン、メタ-キシレン、オルト-キシレン、2,6-ジメチルナフタレン、または前記の少なくとも1つを含む組み合わせ、好ましくはパラ-キシレンを含む、態様1の方法。
【0056】
態様3.コバルトおよびマンガンの総量は、ジメチル芳香族化合物および溶媒の総重量に基づき、1,000ppm以下、または900ppm以下、好ましくは800ppm以下である、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0057】
態様4.臭素は、ジメチル芳香族化合物および溶媒の総重量に基づき、800ppm以下、または600ppm以下、好ましくは400ppm以下の量で存在する、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0058】
態様5.臭素は臭化水素酸を含む、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0059】
態様6.反応生成物中に存在する一酸化炭素および二酸化炭素の総モル数は、触媒および共触媒の存在を除くジメチル芳香族化合物を酸化させるための方法から得られた反応生成物中に存在する一酸化炭素および二酸化炭素の総モル数と比べて、5モル%以上、または10モル%以上、好ましくは15モル%以上だけ低減される、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0060】
態様7.C10+炭化水素は反応生成物中に、反応生成物中の固体の総重量に基づき、1.5wt%以下、または1.0wt%以下、好ましくは0.5wt%以下の量で存在する、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0061】
態様8.酸化剤は空気を含む、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0062】
態様9.溶媒は、水およびC1-C7脂肪族カルボン酸の少なくとも1つ、好ましくは酢酸を含む、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0063】
態様10.溶媒対ジメチル芳香族化合物の重量比は15:1から1:1、または10:1から1:1、好ましくは5:1から1:1の範囲にある、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0064】
態様11.臭素対コバルトおよびマンガンのモル比は0.3:1から3:1、または0.3:1から2:1、好ましくは0.3:1から1:1の範囲にある、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0065】
態様12.反応は170℃から200℃、または180℃から200℃、好ましくは190℃から200℃の範囲の温度で実施される、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0066】
態様13.反応は、1メガパスカルから1.8メガパスカル、または1メガパスカルから1.7メガパスカル、好ましくは1メガパスカルから1.6メガパスカルの範囲の圧力で実施される、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0067】
態様14.反応は連続撹拌槽反応器内で実施され、滞留時間は20分から200分、または40分から150分、好ましくは60分から100分の範囲にある、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0068】
態様15.反応中、ジメチル芳香族化合物、酸化剤、触媒、共触媒、および溶媒を含む反応混合物は、酢酸アンモニウム、メタ-キシレン、および臭化物アニオンまたはヨウ化物アニオンの少なくとも1つを含むイオン性液体を実質的に含まず、好ましくは、反応混合物は、酢酸アンモニウム、メタ-キシレン、および臭化物アニオンを含むイオン性液体を実質的に含まず、より好ましくは、酢酸アンモニウム、メタ-キシレン、および臭化物アニオンを含むイオン性液体を含まない、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0069】
態様16.反応生成物を結晶化させる工程をさらに含む、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0070】
態様17.溶媒、触媒、および共触媒を反応生成物から分離する工程、および溶媒、触媒、および共触媒を反応工程にリサイクルさせる工程をさらに含む、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0071】
態様18.ジメチル芳香族化合物および水素を水素化触媒の存在下で反応させる工程をさらに含む、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0072】
態様19.反応混合物(ジメチル芳香族化合物、酸化剤、触媒、共触媒、および溶媒を含む)は、反応混合物の総重量に基づき、1,000ppm以下、好ましくは900ppm以下、より好ましくは800ppm以下の総量のコバルトおよびマンガンを含む、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0073】
態様20.触媒は0.3:1から3:1、好ましくは0.3:1から2:1、より好ましくは0.3:1から1:1の範囲のモル比の臭素対(コバルトおよびマンガン)を含む、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0074】
態様21.触媒はCuを含まない、前記態様のいずれか1つ以上の方法。
【0075】
態様22.前記態様のいずれか1つ以上の方法によるジメチル芳香族化合物の酸化のための反応混合物であって、ジメチル芳香族化合物、酸化剤、触媒、共触媒、および溶媒を含む、反応混合物。
【0076】
態様23.態様1-21のいずれか1つ以上の方法により、または態様22の反応混合物を使用して生成された反応生成物。
【0077】
態様24.ジメチル芳香族化合物の酸化のための触媒系であって、コバルト、マンガン、および臭素を含む触媒であって、コバルト対マンガンの重量比は1:1以上、または2:1以上、好ましくは3:1以上である触媒、ならびにセリウムまたは鉄の少なくとも1つを含む、好ましくはセリウムを含む共触媒を含む、触媒系。
【0078】
態様25.ジメチル芳香族化合物の酸化のための反応混合物であって、態様24の触媒系、ジメチル芳香族化合物、酸化剤、および溶媒を含み、共触媒は、ジメチル芳香族化合物および溶媒の総重量に基づき、10ppmから200ppm、または20ppmから190ppm、好ましくは30ppmから180ppmの範囲の量で存在し、コバルトおよびマンガンの総量は、ジメチル芳香族化合物および溶媒の総重量に基づき、1,000ppm以下、または900ppm以下、好ましくは800ppm以下であり、臭素は、ジメチル芳香族化合物および溶媒の総重量に基づき、800ppm以下、または600ppm以下、好ましくは400ppm以下の量で存在し、臭素対コバルトおよびマンガンのモル比は0.3:1から3:1、または0.3:1から2:1、好ましくは0.3:1から1:1の範囲にある、反応混合物。
【0079】
組成物、方法、および物品は、代替的に、本明細書で開示される任意の適切な構成要素または工程を含み、これから構成され、またはこれから本質的に構成され得る。組成物、方法、および物品は加えて、またはその代わりに、さもなければ組成物、方法、および物品の機能または目的の達成に必要ではない工程、構成要素、材料、材料成分、アジュバント、または種を欠く、または実質的に含まないように策定され得る。
【0080】
単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で明確に別記されない限り、複数の指示対象を含む。「または」は、文脈により明確に別記されない限り、「および/または」を意味する。「第1の」、「第2の」など、「一次」、「二次」などの用語は、本明細書では、いずれの順序、量、または重要性も示さず、むしろ、1つの要素を別の要素と識別するために使用される。
【0081】
同じ構成要素または特性に関する全ての範囲の終点は包含され、独立して組み合わせ可能である(例えば、「25wt%以下、または5wt%から20wt%の範囲」は終点、および「5wt%から25wt%」の範囲の中間値全てを包含する、など)。より広い範囲に加えてより狭い範囲またはより特定的な群の開示は、より広い範囲またはより大きな群を否認しない。
【0082】
添え字「(複数可)」は、それが修飾する用語の単数形および複数形の両方を含むことを意図し、よって、少なくとも1つのその用語を含む(例えば、着色剤(複数可)は少なくとも1つの着色剤を含む)。「任意的な」または「任意で」は、その後に記載される事象または状況が起こり得る、または起こり得ないこと、および、その記載は、事象が起こる場合および事象が起こらない場合を含むことを意味する。別に規定されない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は、この開示が属する分野の当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。「組み合わせ」はブレンド、混合物、合金、反応生成物、などを含む。
【0083】
説明目的で、典型的な実施形態について明記してきたが、前記記載は本明細書における範囲を制限すると考えるべきではない。したがって、様々な改変、適合、および代替は、本明細書における精神および範囲から逸脱せずに、当業者には思い付くことができる。
【国際調査報告】