(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(54)【発明の名称】赤外線検出器の為の超広視野角アクセサリ
(51)【国際特許分類】
G02B 17/00 20060101AFI20220217BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20220217BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G02B17/00 A
G01J1/02 H
G01J1/02 W
G08B17/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539460
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(85)【翻訳文提出日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2020050310
(87)【国際公開番号】W WO2020144230
(87)【国際公開日】2020-07-16
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521295413
【氏名又は名称】セントレ サイエンティフィーク エ テクニーク デュ バティマン(シーエスティービー)
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】マルティンソンス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ルプレトレ,ピエール
【テーマコード(参考)】
2G065
2H087
5C085
【Fターム(参考)】
2G065AA11
2G065AB02
2G065BA13
2G065BA34
2G065BB13
2G065DA06
2G065DA18
2H087KA01
2H087KA12
2H087LA30
2H087NA03
2H087TA04
2H087TA06
2H087UA01
5C085AA03
5C085AA13
5C085AB09
5C085CA04
(57)【要約】
本発明は、検出器の視野の角度を増大させる為に、赤外線センサを備えられた該検出器上に配置されるように設計された光学デバイスであって、互いに向き合う2つの鏡を備えており、主鏡は広角視野から赤外線を収集して副鏡に戻し、該副鏡はそれを反射して赤外線検出器のセンサに戻す、上記光学デバイスに関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイス(10)であって、検出器(1)の視野の角度を増大させる為に、赤外線センサを備えられた前記検出器上に配置されることを意図されており、
-中心に円形の開口(14)を備えている、円形の全体形状の主鏡(11)と、
-中心に円形の開口(15)を備えている、円形の全体形状であり、前記主鏡の直径よりも小さい直径を持つ副鏡(12)と、
-前記主鏡の反射面(16)を前記副鏡の反射面(17)に対向して配置するように、前記主鏡と前記副鏡とを接続する為の少なくとも1つの接続手段(13)と
を備えており、
前記主鏡及び前記副鏡は赤外の放射を反射するように設計されており、
前記主鏡及び前記副鏡は、アフォーカルシステムを形成するように、及び複数の中心の円形の開口によって得られる前記画像の中心を有する連続的な超広角画像を形成するように構成されており、前記デバイスの前記視野の前記角度(α)は90°よりも大きい、
前記光学デバイス。
【請求項2】
前記デバイスの前記視野の前記角度(α)は140°よりも大きく、好ましくは165°よりも大きい、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記主鏡の前記反射面及び前記副鏡の前記反射面の各々が、下記の式によって定義されている放射プロファイルを有する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の光学デバイス
【数1】
ただし、zは前記鏡の前記中心までの放射距離rの関数としての前記プロファイルの高さであり、ρは正規化された放射座標であり、係数N,c,k,α
iは定数である。
【請求項4】
射出成形されたプラスチック、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリカーボネイト(PC)、の単片からなり、前記主鏡の及び前記副鏡の少なくとも表面がメタライズされている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記検出器の前記視野の前記角度を増大させるように配置された、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学デバイスを備えている赤外線検出器。
【請求項6】
請求項5に記載の赤外線検出器を備えている煙検出器。
【請求項7】
ホットスポットを検出し又は特定し、且つ壁温度の変化速度を測定する為の、請求項6に記載の煙検出器の使用方法。
【請求項8】
煙が充満した部屋における人の存在を検出し、且つ人の数を計数する為の、請求項6に記載の煙検出器の使用方法。
【請求項9】
赤外線暗視を用いて夜間運転を支援する為の、又は車両の内部における熱的快適性を管理する為の、又は歩行者及び自動車両を検出する為の、又は要注意の場所を監視する為の、請求項1~4のいずれか一項に記載の前記光学デバイスの使用。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学デバイスと、前記光学デバイスを赤外線検出器に取り付ける為の機構とを備えている、前記赤外線検出器上に配置されることを意図された光学アクセサリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線放射を反射するように又はそのような放射を集束させる若しくは発散させるように設計された1つ以上の光学コンポーネントを備えている光学システムの分野に関する。
【0002】
本発明は、より特には、レンズの使用なしに且つ視野の一部を覆い隠す効果なしに、赤外線検出器の視野を広げることを可能にする、単純で且つ安価な光学デバイスを提案することを追求する。
【0003】
本発明の観点の他において、本発明はまた、赤外線検出器と、本明細書において上記された光学デバイスとを備えている煙検出器を対象とする。
【0004】
本発明の観点の他において、本発明はまた、既存の赤外線検出器に取り付けられることができ又はそれから取り外されることができる光学アクセサリに関し、ここで、該光学アクセサリは本明細書において上記された光学デバイスを備えている。
【0005】
本発明によって目標とされる主な用途は、例えば64×64又は80×80の感知素子を備えている、中間解像度のセンサを備えている赤外線検出器の視野を広げることである。このタイプのセンサは、撮像用途を可能にする為に十分な解像度を有する。
【0006】
上記の主な用途を参照して説明されているけれども、本発明は、単純で且つ安価な様式において検出器の視野の角度を増大させる必要性がある任意のタイプの赤外線検出器に適用される。
【背景技術】
【0007】
赤外領域において動作するセンサを製造する為に用いられることのできる数多くの技術がある。従って、焦電型センサ(pyroelectric sensors)及びサーモパイル(thermopiles)が、ごく少数の感応性要素を慣用的に備えている非常に低解像度の検出器の為に広く用いられている。マイクロボロメータを組み込まれたセンサが、イメージャ(imagers)として用いられることのできる中解像度センサ及び高解像度センサにおいて採用されている。
【0008】
基本的な撮像機能、例えば赤外線源の場所を特定すること、を実現することのできる中間解像度のセンサへの関心が高まっている。
【0009】
そのようなセンサは、16×16ピクセル~80×80ピクセルに含まれる解像度を有し得、且つ上記された技術のうちの1つを用いて動作しうる。
【0010】
非常に低解像度の検出器の多くの機能の実行は、中間解像度のセンサの使用によって改良されることができる。加えて、このタイプのセンサは新しい用途を可能にする。
【0011】
焦電性タイプ(pyroelectric type)の、既存の赤外線センサの主な用途のうちの1つは、動き検出である。
【0012】
これは、例えば多数の建物において設置されている侵入防止検出器において採用されている原理である。
【0013】
侵入防止警報システムは典型的には、検出器の視野を定義する単純で且つ費用効果の高い光学デバイスに関連付けられた2又4の感応性要素を備えている焦電型センサに依拠する。この光学デバイスは、とりわけ、ポリエチレン(PE)で作られたフレネルレンズアレイ(Fresnel lens array)又は、各々がプラスチック、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)若しくはポリカーボネイト(PC)、から作られ、少なくともその機能性表面においてメタライズされた基板から作られたミラーの集合(collection of mirrors)でありうる。
【0014】
このタイプの侵入防止検出器は何ら放射を放出しないので、該侵入防止検出器が受動型検出器として認定されている。
【0015】
侵入防止検出器の動作は、センサの感応性要素の全てによって受けられる周囲の赤外フラックスの同時変動を観察することに依拠する。
【0016】
侵入防止検出器の為に、幾つかのありうる構成がある:天井取り付け型の場合には、視野は典型的には方位角で360°程度及び垂線の両側において仰角でおよそ45°であり、又は壁取り付け型の場合には、該検出器の視野は、それが設置されている部屋の壁の構成に従って決定されうる。
【0017】
用いられるセンサの低解像度の為に、これら検出器は、赤外線源の場所に関する情報を提供することができない。
【0018】
加えて、焦電性センサ技術に固有の制限が、静止している人又は走行速度で移動している人を検出することを不可能にする。具体的には、検出される為には、赤外フラックスにおける変動が、およそ0.5Hz~5Hzに含まれる周波数を有する必要がある。
【0019】
従って、動き検出器は、その使用を損なう可能性のある幾つかの制限に直面し、これらは、下記を包含する:
-潜在的に、幾つかの検出器のネットワークが用いられない限り、赤外信号の放射源の場所を特定することが不可能であるという事実。例えば、国際公開第2007/080241A1号パンフレット又は米国特許第8,514,280B2号明細書を参照、
-典型的には垂直に組み合わせられたやはり複数の検出器が用いられない限り、放射源の形状を特定して、確実な手法で、例えば人を動物と区別することが不可能であるという事実。例えば、欧州特許第2405413B1号明細書及び欧州特許出願公開第1341139A2号明細書を参照、
-動いていない人を検出することが不可能であるという事実、及び
-検出器が、温度が急変する静止放射源、例えばラジエータ、によって、又は暖気若しくは冷気の移動によって潜在的にトリガされうるという事実。
【0020】
本明細書において上記された赤外線検出器を用いる監視システムがまたあり、それはビデオ監視システムに接続され、そのトリガは該赤外線検出器のトリガによって制御される。
【0021】
映像システムによって得られた画像は、赤外線検出器のトリガの原因に関する疑いを排除することができるように、携帯電話、パーソナルコンピュータ、又は遠隔監視会社に送信されうる。
【0022】
この動作は警報の不適切なトリガのリスクを最小化するが、これは単純な赤外線検出器よりも遙かに複雑である監視システムという代償を伴う。
【0023】
この文脈において、中間解像度のセンサ、例えば感応性要素の64×64又は80×80のアレイを備えているセンサ、の使用は、とりわけ放射源の場所の特定及び形状認識という基本的な機能を可能にすることによって、動き検出器の上記された欠点を低減しうる。
【0024】
結果として、中間解像度の赤外線センサは、映像システムと赤外線検出器との接続を用いる監視システムが簡易化されることを可能にするであろう。なぜならば、このセンサは、該警報の不適切なトリガのリスクを同時に最小化しつつ、赤外線検出器及び映像システム及び映像システムの視野を照明するシステムに置き換えることができるであろうからである。
【0025】
中間解像度のセンサの赤外線センサはまた、個人のプライバシー及び機密性の問題に関連する課題を克服する。なぜならば、該センサの限定的な解像度のために、顔を認識することが不可能であるからである。
【0026】
赤外線検出器の他の用途は、ごく少数の感応性要素を備えており、それ故に、撮像及び場所特定能力を有しないセンサとは対照的に、中間解像度センサの使用の恩恵を受けるであろう。
【0027】
従って、火災警報の場合、熱源の存在を特徴付ける周囲温度における異常な上昇に感応する熱速度検出器がある。
【0028】
こうした検出器は、信頼性は高いが、熱源の場所を特定することができないという限りにおいて限定的である。撮像能力を備えられているセンサの使用は、たとえ限定的な撮像能力であっても、この欠点が克服されることを可能にするであろう。
【0029】
通常は照明の自動切り替えを制御する占有検出器(Occupancy detectors)がまた、中間解像度のセンサの恩恵を受けうる。
【0030】
動作中の侵入防止検出器と同様に、該占有検出器は、特に、静止している赤外線放射源、例えば静止姿勢をとっている人、には感応しない。それ故に、これは、実際には関係する室内に人がいるにも拘わらず、照明システムをオフにさせうる。
【0031】
他のシステム、例えば空調システム、は、例えば室内にいる人(occupants)の数を推定する為に、依然として低解像度撮像機能を用いうる。
【0032】
従って、三菱電機という会社は、垂直に配置された8つのサーモパイル(thermopiles)を備えているセンサを備えた空調装置を販売している。
【0033】
該センサは、モータによって回転されて、部屋を見回し且つ該部屋の赤外画像を構築する。
【0034】
そのようなシステムは、有利なことには、比較的複雑なモータ式駆動機構の導入を回避するように、広角視野を備えられた中間解像度のセンサに置き換えられうる。
【0035】
加えて、例えば保安上又はスペース管理上の理由で、人を計数する又は列を作って待っている人の列を管理するという用途について、拡大する恩恵が観察されうる。
【0036】
この文脈において、会社Irisysは、16×16ピクセルの解像度を有する焦電型センサを開発した。
【0037】
このセンサは、例えば店内で列を作って待っている人の列の上方に設置されることができ、50°~60°程度の限定的な角度の視野を得る為にゲルマニウム又はカルコゲナイドのガラスで作られたレンズに関連付けられている。
【0038】
該センサの解像度は、相対的に低いものの、それでも人の数及び待ち列内でのそれらの人の位置の良い近似を得る為には十分である。
【0039】
図1は、中間解像度のイメージャを備えており、且つ天井に固定されることを意図されている、従来技術に従う赤外線検出器1を概略的に図示する。
【0040】
赤外線放射は、光学システム2、入力での集束レンズと赤外線センサとをとりわけ備えている光学システム2、を通って検出器に入る。
【0041】
そのような検出器の視野の角度αは、慣用的に、70°~90°に含まれる。
【0042】
しかしながら、本明細書において上記された、基本的な撮像機能を実施することのできる中間解像度のセンサの使用は、商業的には挑戦的なままである。
【0043】
特に、目的とする用途の為に必要とされるこのタイプのセンサ及び広角赤外線光学コンポーネントの費用は、このタイプの解決策の商品化にとっての重大な障害を意味する。
【0044】
例えば、赤外線放射の為に適した光学部品、例えばゲルマニウム又はカルコゲナイドガラスで作られたレンズ、の高い費用故に、既存の中間解像度のイメージャを組み込んでいる検出器は典型的には、70°~90°程度の角度を超えない、相対的に限定的な視野を有している。
【0045】
最適化された非球面レンズを用いることによって120°もの角度を得ることは可能であるが、これはセンサの照光における有意な程度の歪み及び広範囲な不均一性という代償を伴う。
【0046】
それ故に、特に既存の解決策の欠点を克服する為に、既存の赤外線センサの視野の広さを改善する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
本発明の目的は、この必要性に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0048】
これを行う為に、本発明の1つの主題は、光学デバイスであって、検出器の視野の角度を増大させる為に、赤外線センサを備えられた該検出器上に配置されることを意図されており、
-中心に円形の開口(circular opening)を備えている、円形の全体形状の主鏡(primary mirror)と、
-中心に円形の開口を備えている、円形の全体形状であり、該主鏡の該直径よりも小さい直径を持つ副鏡(secondary mirror)と、
-該主鏡の反射面を該副鏡の該反射面に対向して配置するように、該主鏡と該副鏡とを接続する為の少なくとも1つの接続手段と、
を備えており、
該主鏡及び副鏡は該赤外の放射を反射するように設計されており、
該主鏡及び副鏡は、アフォーカル光学システム(afocal optical system)を形成するように、及び複数の中心の円形の開口によって得られる該画像の中心を有する連続的な超広角画像(very wide-angle image)を形成するように構成されており、該デバイスの該視野の該角度(α)は90°よりも大きい。
【0049】
従って、本発明は、本質的に、互いに対向する2つのミラーの使用からなり、該主鏡は広角視野から赤外線放射を集めて該副鏡へそれを渡し、該副鏡がそれを赤外線検出器に向かって反射する。
【0050】
中央開口(central openings)は、カセグレン式望遠鏡タイプ(Cassegrain telescope type)の慣用的な2枚のミラー光学システムによって生成されるもののような画像の中央部のいかなる不明瞭さ(obscuring)を回避することを可能にする。
【0051】
得られる画像は、これら鏡によって形成される周縁部(peripheral part)と、該中央開口を介してこれら鏡を通過する中央部(central part)とからなり、ここで、該画像は連続的であり、それはすなわち、周縁部と中央部との間に不連続がない。
【0052】
それは1次部材及び2次部材がアフォーカル光学システムを形成するという事実によって可能になる。それは、周縁部を形成する光線と中央部を形成する光線とが、本発明に従うデバイスが配置されることを意図された検出器のセンサの集束レンズによって、同じ様式で集束されることを可能にする。
【0053】
該主鏡と該副鏡とからなるアセンブリがアフォーカルである為には、該主鏡の曲率が該副鏡の曲率を補償することが必要である。従って、これら鏡は、入射光線を集束させることなしに該入射光線を反射するだけであり、該集束機能は、該検出器のレンズによって行われる。
【0054】
従って、単純で、小型で、且つ製造することが安価であるデバイスによって、連続的な超広角画像が形成される。
【0055】
本明細書において及び本発明の文脈において「連続的な超広角画像」によって意味されるものは、不連続性がなく、不明瞭さがなく、及び画角が非常に大きく、好ましくは少なくとも120°~最大360°、の画像である。
【0056】
これら鏡の反射面は、この機能を実施するように構成されている。
【0057】
有利なことには、本発明に従う光学デバイスによって得られる画像は、視野の潜在的な中央の不明瞭さによって引き起こされるシャドーゾーン(shadow zone)を含まず、具体的には、該主鏡及び該副鏡における中央開口の存在とこれら鏡の構成とが、連続的であり、それ故に画像の中央の中央不明瞭さ(central obscuration)を有し画像を得ることを可能にする。
【0058】
有利なことには、これら鏡の使用は、一方では高価な赤外レンズの使用を回避することを可能にし、及び、他方ではアフォーカル反射光学部品を得ることを可能にする。
【0059】
その上、該画像の非球面補正が得られうる。
【0060】
それ故に、本発明によれば、広い視野を有する赤外光学デバイスが得られ、それはまた、従来技術に従う赤外線検出器を用いて、画像の中央の中央不明瞭さを有しない、鮮明な、補正済みの画像が得られることを可能にする。加えて、レンズを伴う「魚眼」(fisheye)タイプの屈折パノラマ光学部品を備えているデバイスと比較して、デバイスの嵩高性が有意に低減される。
【0061】
一つの特定の実施態様に従うと、該デバイスの該視野の該角度は140°よりも大きく、好ましくは165°よりも大きい。
【0062】
本発明の具体的な実施態様に従うと、該主鏡の該反射面及び該副鏡の該反射面の各々が、下記の式によって定義される「拡張奇数次非球面」(extended odd asphere)という名前で知られている放射プロファイル(radial profile)を有する。
【数1】
【0063】
この式は、該鏡の該中心までの放射距離rの関数としての該プロファイルの該高さzを定義し、ρは該正規化された放射座標であり、係数N,c,k,αiは定数である。
【0064】
好ましくは、本発明に従う光学デバイスは、射出成形されたプラスチック、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリカーボネイト(PC)、の単片からなり、該主鏡及び該副鏡の少なくとも表面がメタライズされている。
【0065】
本発明はまた、該検出器の該視野の該角度を増大させるように配置された、本明細書において上記された光学デバイスを備えている赤外線検出器に関する。
【0066】
本発明は更に、本明細書において上記された赤外線検出器を備えている煙検出器に関する。
【0067】
本発明はまた、ホットスポットを検出し又は特定し、且つ壁温度の変化速度を測定する為の、この煙検出器の使用方法、並びに煙が充満した部屋における人の存在を検出し、且つ人の数を計数する為の、この煙検出器の使用方法に関する。
【0068】
本発明は、赤外線暗視を用いて夜間運転を支援する為の、又は車両の内部における熱的快適性を管理する為の、又は歩行者及び自動車両を検出する為の、又は要注意の場所を監視する為の、本明細書において上記された光学デバイスの使用に関する。
【0069】
最後に、本発明は、本明細書において上記された光学デバイスと、該光学デバイスを赤外線検出器に取り付ける為の機構とを備えている、赤外線検出器上に配置されることを意図された光学アクセサリに関する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】
図1は、従来技術に従う赤外線検出器の概略側面図である。
【
図2】
図2は、本発明に従う光学デバイスの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明に従う光学デバイスを断面視で示す。
【
図4】
図4は、従来技術に従う赤外線検出器において配置された、本発明に従う光学デバイスの概略図である。
【
図5】
図5は、従来技術に従う赤外線検出器において配置された、本発明に従う光学デバイスの側面図である。
【
図6】
図6は、従来技術に従う赤外線検出器によって得られる画像である。
【
図7】
図7は、本発明に従う光学デバイスが配置された、従来技術に従う赤外線検出器によって得られた画像のシミュレーションである。
【
図8】
図8は、本発明に従う光学デバイスを備えられた煙検出器を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本願の全体を通じて、「垂直」、「下方」、「上方」、「低」、「高」、「底」及び「頂」という用語は、天井に取り付けられ且つ地面の方を向いた動作の構成における赤外線検出器を参照して理解されるべきである。従って、或る動作構成において、該赤外線検出器のセンサは垂直方向で地面と向き合う。
【0072】
図1は前段部分において既に説明されており、それ故に、本明細書の下記ではコメントされていない。
【0073】
本発明に従う光学デバイスが、
図2から
図5を参照して今説明される。
【0074】
光学デバイス10は、主鏡11と、副鏡12と、該主鏡と該副鏡とを接続する為の接続手段13とを備えている。
【0075】
図示されている実施態様において、接続手段13は、等しい角度で分布された細長い形状の4つの支持部からなる剛性の接続手段であり、各接続手段は、その端部の一方によって該主鏡に取り付けられ且つその他方によって該副鏡に取り付けられる。
【0076】
主鏡11は、中央開口(central opening)14と反射面16とを備えている。副鏡12は、中央開口15と反射面17とを備えている。
【0077】
反射面16及び17は、互いに向き合って配置されている。
【0078】
中央開口14及び15は、互いに向き合い、及び有利なことには、垂直線に対して0°に近い傾斜角度を有する赤外線放射がそれらを通過することを可能にした。これは、光学光線の線が中央開口14,15を通過する光線を示す
図3において、より明確に視認できる。
【0079】
このようにして、本発明に従う光学デバイスは、副鏡12によって視野の中央の不明瞭さを回避する。
【0080】
反射面16,17は、非球面補正された、広角で、鮮明且つ連続的な画像を得ることを可能にするように構成される。
【0081】
図3において視認できるように、1次部材11の表面はとりわけ放射状に外側部分おいてにドームされたプロファイル(domed profile)を有する。このプロファイルは、入射光線が、たとえ高いかすめ入射角を有するものでさえも、該プロファイルが光線を検出器の光学システム2に向けるように設計された副鏡12に渡されるようになっている。
【0082】
このようにして、本発明に従う光学デバイスを備えた検出器の視野の角度αは好ましくは、140°~170°にまで達する。角度αはまた、180°を超えてもよく、しかし、それは天井取り付け型検出器にこの天井の一部を見ているようにさせるであろう。しかしながら、天井取り付け型検出器以外の用途の文脈では、角度は180°を超えることが有益でありうる。
【0083】
2枚の鏡11,12は有利なことには、アフォーカルデバイス(afocal device)を形成する。
【0084】
中央開口14,15及び反射面16,17は、該検出器によって受け取られる画像が連続的になるように構成される。
【0085】
具体的には、検出器1の光学システム2の赤外線センサは、一方では観察対象の環境から直接到来する放射を、中央開口14,15を通じて受け、他方では主鏡11及び副鏡12によって反射された放射を受ける。中央開口14,15及び反射面16,17の構成は、センサ上に形成される画像が連続的であるように定義される。
【0086】
特に、該主鏡の反射面は、その曲率が該副鏡の反射面の曲率を補償するように構成される。これら鏡は、入射放射を集束させることなく反射するのみであり、それ故に、アフォーカルシステムを形成する。それは、反射されることなく中央開口14,15を通過する、画像の中心を形成する光線によって、連続的な画像を得ることを可能にする。なぜならば、該光線は、それらが反射されたか否かに拘わらず、赤外線検出器の集束レンズによって同じように集束されるからである。
【0087】
例えば、この結果を達成する為には、該主鏡の「拡張奇数次非球面」プロファイルについての式の係数は下記でありうる:
N=4
正規化半径ρ:40.36mm
c=2.34×10-2mm-1
k=0
α1=-2.21mm
α2=-2.63×101mm
α3=1.25×101mm
α4=6.75mm
【0088】
対応する副鏡の「拡張奇数次非球面」プロファイルについての式の係数は下記でありうる:
N=4
正規化半径ρ:1037.5mm
c=2.66×10-3mm-1
k=0
α1=-6.02×101mm
α2=6.80×102mm
α3=6.23×104mm
α4=2.55×106mm
【0089】
その場合、該主鏡の直径は57mmであり得、該副鏡の直径は36.8mmであり得、及びこれら2枚の鏡の間の距離は23.8mmでありうる。
【0090】
図3は、該主鏡及び該副鏡の放射プロファイルの例を示す。
【0091】
光学デバイス10は好ましくは、射出成形されたプラスチック、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリカーボネイト(PC)、の単片からなる。その場合に、コンポーネント全体、又は最低でもこれら鏡の反射面は、入射赤外線の放射をもたらすことができるように、メタライズ(金属化)される。
【0092】
図4及び
図5は、赤外線検出器1に配置された、本発明に従う光学デバイス10を概略的に図示する。
【0093】
光学デバイス10を検出器1に固定する為に、取り付け機構が備えられうる。この機構は例えば、赤外線放射を効果的に伝導するように、典型的には0.5mmに近い小さな厚みを有するポリエチレン(PE)で作られた半透明の半球体のドームを備えている。
【0094】
該副鏡はドームの内面に固定されており、及びこのドームは検出器の基部に取り付けられており、従って該デバイスを覆う。
【0095】
図6は、従来技術に従う赤外線検出器によって取得される画像であり、ここで、視野が地面に向けられ且つその角度αが90°を超えない。
【0096】
図7は、比較の為に、
図6の画像を得る為に用いられている赤外線検出器に、本発明に従う光学デバイスを取り付けることによって得られる効果を再現したコンピュータシミュレーションの結果を示す。
【0097】
本発明に従う光学デバイスの使用によって、視野の角度がかなり増大されることが判るであろう。
【0098】
従って、本発明によれば、赤外線検出器の視野を増大させるために、レンズを含まない単純で、小型の光学デバイスが用いられることができる。
【0099】
これは、既存の検出器において設置されるアクセサリでありうる。光学デバイスを検出器に設置することは容易である。具体的には、既存の検出器の元々の集束レンズは、本発明に従う超広角の連続的な画像を得る動作を妨げない。
【0100】
加えて、追加的な電気接続が必要とされない。
【0101】
最後に、該光学デバイスの位置決めの精度は、赤外線センサの1つの感応性要素の大きさ程度である。64×64又は80×80の解像度を有するセンサについて、位置決めの精度は20~30μm程度であり、それは従来技術から知られている取り付け機構で容易に得られることができる。
【0102】
図8に示されている通り、本発明の他の観点は、下端の本発明に従う光検出器10と、赤外線検出器1と備えている煙検出器3に関する。
【0103】
煙検出器3は煙検出チャンバ30を備えており、煙検出機能は従来技術に従う煙検出器のそれと同一である。
【0104】
しかしながら、本発明に従う光学デバイスを備えられた赤外線検出器1を取り込むことが、多くの利点を提供する。第一に、それは一方では異常に熱いスポットを検出又はその場所を特定する、及び壁の熱速度監視を実施する、すなわち壁温度の増加率を監視する、煙検出器の能力を向上させる。
【0105】
赤外線での広い視野のおかげで、煙検出器3は、広大な区画を監視することによって火災前警報機能を実施することができる。
【0106】
次に、煙検出器が煙の存在を合図すると、搭載された赤外線検出器は、人の潜在的な存在を識別し、且つその人数を計数することができ、火災の事象において重要である、及び火災警報制御センタ又は救助チームにとって有益でありうる情報へのアクセスを提供する。具体的には、煙は、既存の映像監視システムによって用いられる可視光又は近赤外線よりも遥かに小さい程度で赤外線放射を遮断する。
【0107】
最後に、1つの同じ検出器内に幾つかの機能を取り込むことは、天井取り付け型検出器の見た目の悪い増殖を回避するという結果を有する。
【0108】
多くの場合に、煙検出器の取り付けは強制的である。ここで、煙検出器は通常、部屋の真ん中に設置される。なぜならば、これが広い視野を有するデバイスにとって良好な位置であるからである。
【0109】
それ故に、本発明に従う光学デバイスを備えられた赤外線検出器を煙検出器に取り込むことが特に有利である。
【0110】
本発明の他の変形及び利点は、本発明の範囲を逸脱することなく実現されうる。従って、本発明は、本明細書に記載された上記の例に限定されない。
【0111】
主な目標用途、すなわち部屋の天井に取り付けられる赤外線検出器の視野の角度を増大させるという用途、を参照して説明されたが、本発明は、単純且つ安価な光学デバイスを用いて赤外視認装置の視野を広げることが有利である任意の分野にまた当てはまる。
【0112】
例えば、説明された光学デバイスはまた、自動車及び輸送の分野で(例えば、赤外線暗視を用いて夜間運転支援の文脈において又は自動車両の内部における熱的快適性の管理の文脈において)、又はスマートシティの領域で(例えば、歩行者及び自動車両を検出する為の公共照明システムの文脈において又は要注意の場所の監視の文脈において)用いられうる。
【0113】
それはまた、部屋を照明する為の存在の検出の分野において用いられうる。有利なことに、本発明に従う光学デバイスを備えている単一の検出器が、大きな検出体積、例えば大会合場又は大きな家屋、をカバーしうる。
【国際調査報告】