(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】再分散性三層型化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/03 20060101AFI20220218BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220218BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220218BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220218BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
A61K8/03
A61K8/73
A61K8/34
A61Q1/00
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534392
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 IB2018001600
(87)【国際公開番号】W WO2020128558
(87)【国際公開日】2020-06-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】北村 三矢子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB332
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC342
4C083AC372
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD301
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB11
4C083BB26
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC19
4C083CC23
4C083DD05
4C083EE06
4C083EE12
(57)【要約】
水相と、油相と、平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子と、を含有する、再分散性三層型化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と、油剤と、平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子と、を含有する、再分散性三層型化粧料。
【請求項2】
前記多糖類は、寒天、カラギナン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドガム、マンナン、ローカストビーンガム及びこれらの混合物、特に寒天、カラギナン及びジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種、より好ましくは寒天である、請求項1に記載の再分散性三層型化粧料。
【請求項3】
前記三層型化粧料の粘度は、25℃において、1cP以上200cP以下である、請求項1又は2に記載の再分散性三層型化粧料。
【請求項4】
前記水相は、ポリオール、特に、ジオール、トリオール及びこれらの混合物、特に、ブチレングリコール(1,3-ブチレングリコール)、ペンチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリオールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の再分散性三層型化粧料。
【請求項5】
前記水相は、モノアルコール、特に、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群より選択されるモノアルコール、好ましくはエタノールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の再分散性三層型化粧料。
【請求項6】
前記水相は、アリールオキシアルカノール、好ましくはフェノキシエタノールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の再分散性三層型化粧料。
【請求項7】
前記油剤が、極性油、非極性油、及びシリコーン油からなる群より選択される少なくとも2種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の再分散性三層型化粧料。
【請求項8】
化粧水、クレンジングローション、洗顔料、美容液、化粧下地、ローションミスト、又は日焼け止め等である、請求項1~7のいずれか一項に記載の再分散性三層型化粧料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の再分散性三層型化粧料をケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための化粧方法。
【請求項10】
前記再分散性三層型化粧料が使用前に振盪される、請求項9に記載の化粧方法。
【請求項11】
前記再分散性三層型化粧料が、それが適用されるケラチン物質、特に皮膚に、潤い持続性及び滑らかさを付与する、請求項9又は10に記載の化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再分散性三層型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
多層型化粧料は、複数の層(例えば、粉末層及び/又は油層と、水層とからなる多層の層)から構成される化粧料である。多層型化粧料は優れた美的外観を有しており、消費者を引き付けることができるため、多層型化粧料に関する技術手段についてこれまでにも種々の開発がなされている。
【0003】
例えば、特開2013-177366号公報(対応EP2810639B1)には、(A)コハク酸及び/又はその塩、(B)ベントナイト、(C)親水性界面活性剤、を含む、再分散型粉末分散化粧料が開示されている。しかし、ベントナイト、セルロース及び合成ポリマー等の特定の粉末を含む水層及び粉末層から構成される多層化粧料では、粉末層の湿潤性のために成分が皮膚上に吸着され、消費者が求める潤いの持続性に影響を及ぼすことが多い。
【0004】
また、特開2007-126394号公報には、特定のポリエチレンオキサイドマクロモノマー、疎水性モノマー、及び架橋性モノマーを重合して得られる共重合体と、液状油分を5~40質量%含有し、界面活性剤の含有量が所定の範囲内である多層型化粧料が開示されている。特開2007-126394号公報には、次の成分(a)~(d);(a)25℃における粘度が30~400mm2/sである非揮発性炭化水素油(b)25℃における粘度が30~400mm2/sであるシリコーン油(c)水(d)イソステアリン酸とポリグリセリンとのエステルを含有することを特徴とする多層型化粧料が開示されている。
【0005】
しかし、そのような水層と油層を含む多層型化粧料は、油性のべたつき感を生じやすく、消費者が求める滑らかさに影響を与える。
【0006】
したがって、潤いの持続性及び滑らかさの両方の点で改善された多層型化粧料を提供する必要性が依然として存在する。
【0007】
本発明者らの検討により、所定のゲル粒子と、水相と、油剤とから構成される新たな再分散性三層型化粧料が見いだされ、この三層型化粧料は、潤いの持続性及び滑らかさの両方が向上していることが判明した。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、水相と、油剤と、平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子と、を含有する、再分散性三層型化粧料に関する。
本発明の「再分散性三層型化粧料」という表現は、組成物が、使用のために振盪された場合、水相及び/又は油相に多糖類のゲル粒子(下層)が良好に再分散する一方で、使用されていないときに透明な上清(水層及び油層)を与えることができることを意味する。そのため、静置(不使用)及び撹拌(振とう)により、水相及び/又は油相中でゲル粒子の沈降及び分散が繰り返し生じる。
本発明の「三層型」化粧料という用語は、組成物が、静置した(使用していない)ときに、3つの視覚的に異なる層、すなわち、油相を含む上層、水相を含む中間層、及び多糖ゲル粒子を含む下層を呈することを意味する。本発明の再分散性三層型化粧料は、潤いの持続性及び滑らかさが向上している。
【0009】
多糖類として、寒天を用いることができる。この場合、ゲル粒子は、ゲル形成用水相(第2の層)により膨潤させた寒天をゲル化した寒天ゲルの粉砕物を用いることができる。
【0010】
三層型化粧料の粘度は、25℃において、1cP以上200cP以下であってよい。
【0011】
水相は、ポリオールを含んでいてよく、モノアルコールを含んでいてよい。また、水相は、フェノキシエタノール等のアリールオキシアルカノールを含んでいてよい。三層型化粧料において、油剤は、極性油、非極性油、及びシリコーン油からなる群より選択される少なくとも2種を含んでいてよい。この場合、潤いの持続性及び滑らかさがより一層優れたものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、潤いの持続性及び滑らかさが向上している再分散性三層型化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態の再分散性三層型化粧料は、水相(第2の層、つまり中間層)と、油相(第1の層、つまり上層)と、平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子(第3の層、つまり下層)と、を含有する。本明細書において、「三層型化粧料」という用語は、使用していないときに、三つの視覚的に異なる層、つまり、水相及び油相から分離した複数のゲル粒子を有する化粧料を意味する。
【0015】
本実施形態の三層型化粧料は、静置(不使用)及び撹拌(振とう)により、水相及び/又は油剤中でゲル粒子の沈降及び分散が繰り返し生じる。すなわち、静置時(例えば、容量120mLの容器に100mL程度容れて一日分以上静置したとき)においては、ゲル粒子は水相及び/又は油相中で沈降するため、三層型化粧料は、外観上、複数のゲル粒子の集合体によって形成される下層と、下層上に存在し、水相から構成される中間層と、油剤から構成される上層とを含んでいる。なお、三層型化粧料の通常の保管温度(例えば5~30℃程度の室温)及び保管時間(例えば3年)において、ゲル粒子は水相に溶出して形状を失うことはなく、粒子同士で接着して凝集体(塊)を形成しないような成分からなっている。また、水相はゲル粒子間に存在していてもよい。一方、撹拌(振とう)時においては、ゲル粒子が水相及び/又は油相中で分散されるため、三層型化粧料(振とう時における三層型化粧料)は、水相と、油相と、水相及び/又は油相中に分散されたゲル粒子とを含んでいる。
【0016】
水相は、水のみからなるものであっても、水と水に可溶性の成分とからなってもよい。水に可溶性の成分とは、水100gに対して0.1g以上溶解するものを意味する。
【0017】
水に可溶性の成分としては、ポリオール、モノアルコール(但し、後述する防腐剤に該当するものを除く。)、防腐剤、塩析剤、pH調整剤、界面活性剤、美白剤、抗炎症剤、着色剤、ゲル化能を有さない多糖類(例えば、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、サクシノグリカン)等が挙げられる。
【0018】
ポリオールの価数は、例えば、2~4、又は2~3であってよい。すなわち、ポリオールは、ジオール及び/又はトリオールを含んでいてよい。ポリオールとしては、ブチレングリコール(1,3-ブチレングリコール)、ペンチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)等のジオール、グリセリン等のトリオールが例示できる。ポリオールは、これら1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
水相がポリオールを含む又はからなる場合、ポリオールの総含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、1~30質量%、5~20質量%、又は7~15質量%であってよい。「質量%」という用語は、重量%とも呼ばれる。
【0020】
モノアルコール(C1-C5)としてはエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。特定の実施形態では、モノアルコールはエタノールである。モノアルコールは、これら1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水相がモノアルコールを含む又はからなる場合、モノアルコールの含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、1~20質量%、2~15質量%又は3~10質量%であってよい。
【0021】
防腐剤としては、フェノキシエタノール等のアリールオキシアルカノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウムが挙げられる。水相は、防腐剤として、アリールオキシアルカノールを含んでいてよく、フェノキシエタノールを含むことが好ましい。防腐剤は、これら1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水相が防腐剤を含む場合、防腐剤の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、0.01~5質量%、0.01~2質量%、0.1~2質量%、0.5~2質量%、又は0.7~2質量%であってよい。
【0022】
塩析剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。水相が塩析剤を含む場合、塩析剤の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、0.1~10質量%、0.5~5質量%、又は0.7~3質量%であってよい。
【0023】
水相の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、70.0~95.0質量%、又は75.0~90.0質量%であってよい。
油相(第1の層、つまり上層)
【0024】
油相は、一般的には、液状油剤(例えば、5~30℃程度の室温において液状である油剤)を含む。また、油剤は、水より比重が小さくてよい。油剤としては、極性油剤、非極性油剤、シリコーン油剤等が挙げられる。油剤は揮発性油剤であっても、不揮発性油剤であってもよい。
【0025】
油剤としては、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸セテアリル、エチルヘキサン酸セテアリル、オレイン酸エチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸アルキル(C12-15)、リンゴ酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリエチルヘキサノイン(トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ホホバ(Simmondsia Chinensis)種子油、オリーブ果実油、ヒマワリ種子油、メドウフォーム油、コメヌカ油、サフラワー油、トコフェロール等の極性油剤、イソドデカン、イソヘキサデカン、(C9-12)アルカン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、オレフィンオリゴマー、スクワラン等の非極性溶媒が挙げられる。好適な極性油剤としては、イソノナン酸イソノニル、トリエチルヘキサノイン、ホホバ種子油が挙げられる。好適な非極性油剤としては、スクワラン、イソドデカン、水添ポリイソブテンが挙げられる。
【0026】
油剤としては、更にシリコーン油剤が挙げられる。シリコーン油剤は、揮発性シリコーン油剤であってもよく、不揮発性シリコーン油剤であってもよい。シリコーン油剤としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルトリメチコン、シクロペンタシロキサン、フェニルトリメチコン等が挙げられる。好適なシリコーン油剤としては、メチルトリメチコン、シクロペンタシロキサン、ジメチコンが挙げられる。
【0027】
油剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。油剤は、潤いの持続性がより一層向上する観点から、極性油を含んでいてよく、明瞭な境界面を有する三層型化粧料が得られやすい観点から、非極性油及び/又はシリコーン油を含んでいてよい。油剤は、極性溶媒のみからなっていてよく、非極性溶媒のみからなっていてもよく、極性溶媒、非極性溶媒及びシリコーン油剤からなる群より選択される少なくとも2種を含む混合溶媒であってもよい。
【0028】
油剤は、潤いの持続性又は滑らかさにより一層優れる観点から、極性油剤、非極性油剤及びシリコーン油剤からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。油剤は、イソノナン酸イソノニル、イソドデカン、メチルトリメチコン、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、トリエチルヘキサノイン、スクワラン、ホホバ種子油、及び水添ポリイソブテンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。油剤は、潤いの持続性及び滑らかさにより一層優れる観点から、イソノナン酸イソノニル又は水添ポリイソブテンを含んでいてよく、極性溶媒及び非極性溶媒を含んでいてよく、トリエチルエキサノイン及びイソノナン酸イソノニルからなる群より選択される少なくとも1種の極性溶媒と、スクワラン、イソドデカン及び水添ポリイソブテンからなる群より選択される1種の非極性溶媒とを含んでいてよく、トリエチルエキサノイン及びスクワランを含んでいてよく、イソノナン酸イソノニルと、イソドデカン及び水添ポリイソブテンからなる群より選択される少なくとも1種の非極性溶媒と、を含んでいてよい。油剤が、極性溶媒及び非極性溶媒を含む場合、極性溶媒と非極性溶媒との含有質量比(極性溶媒:非極性溶媒)は、例えば、1:9~9:1、1:5~5:1又は1:3~3:1であってよい。
【0029】
油剤の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、1.0~40質量%、5.0~30.0質量%、又は10.0~20.0質量%であってよい。
多糖類のゲル粒子(第3の層、つまり下層)
【0030】
ゲル粒子は、ゲル化能を有する多糖類、第3の層においてゲルを形成させるための溶媒(第3の層のゲル形成用水相)を含む。ゲル化能を有する多糖類(以下、単に「多糖類」ともいう。)としては、例えば、寒天、カラギナン(例えばカッパカラギナン、イオタカラギナン)、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドガム、マンナン、ローカストビーンガム及びこれらの混合物等が挙げられる。多糖類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。多糖類は、寒天、カラギナン及びジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、寒天であることがより好ましい。第3の層のゲル形成用水相としては、水相(第2の層)として例示される成分を用いることができる。ゲル形成用水相(第3の層)は、上述した水相(第2の層)と同種の成分を用いてもよく、異種の成分を用いてもよい。特定の実施形態では、多糖類ゲルの形成に使用される溶媒は水である。
【0031】
ゲル粒子は、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、ゲル化能を有する多糖類を、必要に応じ加熱することにより第3の層の水相(第3の層のゲル形成用水相)で膨潤させる。多糖類を膨潤させる際の温度は、例えば、70~100℃であってよく、80~90℃であってもよい。多糖類の膨潤は、攪拌しながら行ってよく、例えば、回転数1000~5000rpmの条件で攪拌しながら行ってよい。膨潤させた多糖類を、静置して冷却した後破砕することにより、又は、撹拌しながら冷却することにより平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子が得られる。粉砕は、例えば、ホモジナイザー、ディスパー、ブレンダーを用いて行うことができる。粉砕は、回転数5000rpm~20000rpmの条件で攪拌することにより行うことができる。ゲル粒子の製造過程において、必要に応じ、ゲル化剤(例えば、塩化カルシウム、塩化カリウム)を用いてもよい。多糖類をゲル化させる際にゲル化剤を用いる場合、多糖類のゼリー強度が、例えば、1.5質量%多糖類濃度で、500g/cm2以上1000g/cm2以下となるようにゲル化剤を使用してよい。なお、このゲル粒子は、化粧料用の増粘剤として有効な程度の増粘作用を有しない。
【0032】
多糖類として、寒天を用いる場合、ゲル粒子は、寒天ゲルの粉砕物を用いることができる。寒天ゲルは、第3の層のゲル形成用相により膨潤させた寒天をゲル化したものを用いることができる。寒天ゲルの粉砕物は、膨潤させた寒天を、静置して冷却した後破砕することにより、又は、撹拌しながら冷却することにより得られる。
【0033】
多糖類として、カラギーナン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドガム、マンナン及びローカストビーンガムからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いる場合、ゲル粒子は、第3の層のゲル形成用水相により膨潤させた多糖類をゲル化した多糖類ゲルの粉砕物を用いることができる。この場合、ゲル化は、ゲル化剤を加えることにより実施することができる。
【0034】
ゲル粒子の平均粒径は、0.1μm以上、1μm以上、5μm以上、10μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、又は80μm以上であってよく、1000μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、又は120μm以下であってよい。ゲル粒子の平均粒径は、0.1~1000μmであり、1~500μm、5~400μm、10~300μm、50~250μm、60~200μm、70~150μm又は80~120μmであってよい。本明細書において、「平均粒径」とは、レーザー回折/散乱式粒子分布測定装置(Laser scattering particle size distribution analyzer)により測定される値として定義される。ゲル粒子の平均粒径は、例えば、多糖類のゲル粒子の製造条件(粉砕の条件等)を調整することにより、上記範囲内に調整することができる。
【0035】
多糖類が寒天である場合、多糖類のゼリー強度(つまり、ゲル化強度)は、1.5質量%多糖類濃度で、500g/cm2以上、600g/cm2以上、650g/cm2以上、又は700g/cm2以上であってよく、1000g/cm2以下、900g/cm2以下、800g/cm2以下、又は750g/cm2以下であってよい。多糖類が寒天である場合、多糖類のゼリー強度は、滑らかさにより優れる観点から、1.5質量%多糖類濃度で、500g/cm2以上1000g/cm2以下、600g/cm2以上900g/cm2以下、650g/cm2以上800g/cm2以下、700g/cm2以上800g/cm2以下であってよい。
【0036】
ゼリー強度(つまり、ゲル化強度)は、1.5%濃度水溶液におけるゲル強度として測定される。すなわち、ゼリー強度は、多糖類を精秤し、イオン交換水を加えて十分吸水させる。次いで温イオン交換水を加えて内容量を調整し、熱水浴にて加熱溶解する。加熱中に蒸発した水分を補うために、イオン交換水を補充して内容量を調整し、ガラス容器)の上部にテープを巻きつけたものに流し入れる。室温にて放冷し、ふたをして20℃の恒温室で一晩放置する。ガラス容器からテープを取り外し、カッターで容器からはみ出している容器縁部上のゼリーをカットして廃棄する。得られたゼリーのカット面の強度をテクスチャーアナライザー等で測定する。すなわち、面積1cm2の円筒形プランジャーを装着し、試料台を適当な上昇速度で動かすことにより、ゼリーが破断されるまでの力を測定する。
【0037】
多糖類の重量平均分子量は、ゲル粒子がより一層沈降しやすくなる観点から、15万以上、20万以上、25万以上又は30万以上であってよく、滑らかさにより優れる(ざらつきがより一層抑制される)観点から、50万以下、45万以下、40万以下、又は35万以下であってよい。多糖類の重量平均分子量は、15万以上50万以下、15万以上45万以下、15万以上40万以下、15万以上35万以下、20万以上50万以下、20万以上45万以下、20万以上40万以下、20万以上35万以下、25万以上50万以下、25万以上45万以下、25万以上40万以下、25万以上35万以下、30万以上50万以下、30万以上45万以下、30万以上40万以下、又は30万以上35万以下であってよい。
【0038】
多糖類の重量平均分子量は、HPLCによるゲル浸透クロマトグラフィー法に従って測定することができる。例えば、多糖類を蒸留水に95~97℃で溶解した後、50℃まで冷却して測定用サンプルとし、このサンプルを用いてゲル浸透クロマトグラフィー法で測定する。液体クロマトグラフィーの装置の一例を挙げると、島津製作所社製、LC-10AT VP,RID-10A、検出器に示差屈折計、カラムに東ソー社製TOSOH TSK-GEL for HPLC,TSK-GEL GMPWXL等を使用し、展開溶媒に0.1M硝酸ナトリウム等を用い、温度一定の下で測定する。寒天の重量平均分子量を決定するために、分子量が既知のプルラン(例えばShodex STANDARD P-82)を標準サンプルとして用いる。標準サンプルを蒸留水に溶解し、同条件にてHPLCによるゲル浸透クロマトグラフィー法で測定する。
【0039】
多糖類の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.20質量%以上、0.30質量%以上又は0.40質量%以上であってよく、2.0質量%以下、1.0質量%以下、0.8質量%以下又は0.6質量%以下であってよい。多糖類の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、0.05~2.0質量%、特に、0.10~1.0質量%、0.20~0.8質量%、又は0.40~0.6質量%であってよい。
【0040】
多糖類のゲル粒子の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であってよく、50質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下であってよい。第1の層の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、5~50質量%、特に、10~30質量%、又は15~25質量%であってよい。
【0041】
三層型化粧料は、上述した成分以外に、例えば、香料を含んでいてよい。香料の含有量は、香料の種類に応じて、適宜設定してよい。例えば、香料の含有量は、三層型化粧料全質量を基準として、0.001~1.0質量%又は特に0.01~0.5質量%であってよい。香料は、油相及び水相の一方又は両方に溶解していてよい。
【0042】
三層型化粧料の粘度は、25℃において、200cP以下、100cP以下、50cP以下又は10cP未満であってよく、例えば、1cP以上又は5cP以上であってよい。三層型化粧料の粘度は、25℃において、1cP以上200cP以下、1cP以上100cP以下、1cP以上50cP以下、1cP以上10cP未満、5cP以上200cP以下、5cP以上100cP以下、5cP以上50cP以下、又は5cP以上10cP未満であってよい。
【0043】
三層型化粧料の粘度の測定は回転粘度計(アントンパール株式会社製 Rheolab QC)を用いた剪断粘度測定により、回転数100rpm、25℃の条件で実施することができる。このような範囲の粘度を有することで、三層型化粧料の安定性が向上し、使用感にも優れるようになる。
【0044】
再分散性三層型化粧料は、例えば、第2の層の水相と、第1の層の油相と、第3の層のゲル粒子とを混合、撹拌することで得ることができる。
【0045】
本実施形態の再分散性三層型化粧料は、化粧水、クレンジングローション、洗顔料、美容液、化粧下地、ローションミスト、日焼け止め等の用途に好適に用いることができる。
本発明はまた、本発明で定義される再分散性三層型化粧料をケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための化粧方法に関する。
「ケラチン物質」とは、皮膚及び/又は唇、好ましくは皮膚を意味する。
再分散性三層型化粧料は、通常、使用前に振盪される。
特に、本発明の再分散性三層型化粧料は、それが適用されるケラチン物質、特に皮膚に対して潤い持続性及び滑らかさを有利に付与する。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。反対の指示がない限り、%は、組成物の総重量の重量%とも称される質量%である。
【0047】
以下の多糖類を準備した。
・寒天1(商品名:伊那寒天 CS-7、伊那食品工業株式会社製、INCI名:AGAR、ゼリー強度(1.5質量%濃度):730±20(g/cm3)、重量平均分子量:30万)
・寒天2(商品名:伊那寒天 CS-310、伊那食品工業株式会社製、INCI名:AGAR、ゼリー強度(1.5質量%濃度):100±50(g/cm3)、重量平均分子量:10万)
・寒天3(商品名:伊那寒天 CS-33、伊那食品工業株式会社製、INCI名:AGAR、ゼリー強度(1.5質量%濃度):850±50(g/cm3)、重量平均分子量:70万)
・カラギナン(商品名:GENUGEL(登録商標) SWG-J、タイプ:カッパ、CPKelco社製、INCI名:CARRAGEENAN (Kappa))
・ジェランガム(商品名:KELCOGEL、CPKelco社製、INCI名:GELLAN GUM(LA type))
【0048】
寒天のゼリー強度は、特許第5914961号公報に記載の方法に準じて測定された値である。重量平均分子量は、特許第5914961記載の重量平均分子量の測定方法に準じて測定された値である。
【0049】
上記多糖類から、以下の方法により、多糖類のゲル粒子を調製した。まず、水(第3の層のゲル形成用水相)と、多糖類とを混合し、90℃、3000rpmの条件で攪拌しながら、多糖類を膨潤させた。寒天の場合は静置して冷却し、ゲル(多糖類濃度4質量%)を得た。カッパカラギーナンの場合は塩化カリウムを、ジェランガムの場合は塩化カルシウムをゲル化剤としてそれぞれ加えて混合し、ゲル(多糖類濃度4質量%)を得た。このゲルに水(第3の層のゲル形成用水相)を加え、ワーリングブレンダーで18000rpm、2分間の条件で、粉砕して多糖類のゲル粒子を調製した(多糖類濃度2質量%)。
【0050】
上記方法により得た各種多糖類のゲル粒子に表1~3に示す組成の水相(第2の層)及び油相(第1の層)を添加し、攪拌することによって、実施例の三層型化粧料を調製した。実施例の三層型化粧料において、多糖類の含有量は、三層型化粧料全質量に対して、表1~3に示す量であった。
【0051】
ベントナイト及びカオリン(粉末相)と、表1に示す組成の水相と混合・分散した後に油相と混合し、比較例1~2の三層型化粧料を調製した。比較例3~5の化粧料として、表1~2に示す組成の化粧料を準備した。
【0052】
寒天(商品名:伊那寒天 CS-7、伊那食品工業株式会社製)と水とを混合し、90℃、3000rpmの条件で攪拌しながら、寒天を膨潤させた。膨潤させた寒天に、表2に示す組成の水相及び油相を添加し、攪拌することによって、比較例6の化粧料を調製した。
【0053】
実施例1~4及び8~21において、寒天のゲル粒子の平均粒径は、100μmであった。実施例5においてカラギナンのゲル粒子の平均粒径は、100μmμmであり、実施例6においてジェランガムのゲル粒子の平均粒径は、100μmであった。これらのゲル粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子分布測定装置(Laser scattering particle size distribution analyzer)により測定した。
【0054】
三層型化粧料の粘度測定は、以下の方法により実施した。回転粘度計(アントンパール株式会社製 Rheolab QC)を用いた剪断粘度測定により、(回転数100rpm)、25℃の粘度を測定した。
【0055】
実施例及び比較例の化粧料について、「分離」、「再分散性」、「潤い持続性」及び「滑らかさ」の項目について、以下の基準に基づいて評価した。「潤い持続性」及び「滑らかさ」の項目については、化粧品専門評価パネルによる肌への単回使用試験により評価した。
(1)分離
振とう混合した後に室温にて一日静置し、その外観を目視にて評価した。
A:静置して半日以内に、均一な上層と均一な中間層と間、及び、均一な中間層と均一な下層と間に明瞭な境界面が観察できる
B:静置して一日以内に、均一な上層と均一な中間層と間、及び、均一な中間層と均一な下層と間に明瞭な境界面が観察できる
C:振とう・静置して一日以内に上層、中間層及び下層の境界面が観察できるが不明瞭であり、上層、中間層又は下層が不均一である
D:振とう・静置して一日以内に上層、中間層、下層の境界面が観察できない
(2)再分散性
振とう混合した後に25℃にて1ヶ月静置し、再度振とうした。
A:10回以下で均一に分散した
B:10~20回以下で均一に分散した
C:20回以上で分散したが不均一であった
D:再分散しなかった
(3)潤い持続性
A:潤いの持続性を強く感じる
B:潤いの持続性を感じる
C:潤いの持続性をほとんど感じない
D:潤いの持続性を全く感じない
(4)滑らかさ
A:滑らかさを強く感じる
B:滑らかさを感じる
C:滑らかさをほとんど感じない
D:滑らかさを全く感じない
【0056】
【表1】
用語「rem.」は、「qs100」を意味する。
【0057】
【0058】
【0059】
これらの結果は、水相と、油相と、0.1~1000μmの平均粒径を有する多糖ゲル粒子とを含む本発明の再分散性三層型化粧料が、良好に再分散可能であり、二層型化粧料(比較例1、2、3及び4)と比較して潤いの持続性及び滑らかさが向上していることを示した。
【国際調査報告】